日本語でわかる最新の海外医学論文|page:382

市中肺炎入院の抗菌薬投与、3日間は8日間に非劣性/Lancet

 臨床的安定性の基準を満たす市中肺炎入院患者の抗菌薬治療では、15日後の治癒に関して、βラクタム系抗菌薬の3日間投与は8日間投与に対し非劣性であり、30日時の治癒、死亡、治療関連有害事象などには両群間に差はないことが、フランス・パリ・サクレー大学のAurelien Dinh氏らが行った「Pneumonia Short Treatment(PTC)試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2021年3月27日号に掲載された。成人の市中肺炎に関する米国のガイドラインでは、5日間以上の抗菌薬治療と臨床的安定性基準に準拠した治療中止が推奨されているのに対し、欧州では8日間投与が推奨されており、至適な治療期間は十分に確立されていない。市中肺炎入院患者の抗菌薬治療期間が短縮されれば、抗菌薬消費量の削減に役立ち、結果として薬剤耐性菌、有害事象、関連費用の削減がもたらされると考えられている。

抗肥満薬としてのGLP-1受容体作動薬セマグルチドの有効性(解説:住谷哲氏)-1375

高血圧、高脂血症および2型糖尿病などの生活習慣病の多くは肥満と関連している。さらに肥満を改善すれば高血圧、高脂血症および2型糖尿病の改善がみられることも少なくない。高血圧には降圧薬、高脂血症にはスタチンやフィブラート製剤、2型糖尿病には血糖降下薬が使用可能であるが、肥満に対する治療薬としてわが国で認可されているのは食欲抑制剤としてのマジンドール(商品名:サノレックス)のみである。肥満大国の米国ではこれに加えて、腸管からの脂肪吸収を抑制するリパーゼ阻害薬であるorlistat(商品名:Xenical)、中枢神経系に作用するphentermine/topiramate(商品名:Qsymia)、naltrexone/bupropion(商品名:Contrave)も販売されているがいずれも副作用が問題で長期使用できる薬剤ではない。

新型コロナワクチン対応シリンジが承認取得、1瓶で7回採取可能/ニプロ

 ニプロ株式会社(大阪市北区)は4月12日のプレスリリースで、新型コロナワクチン接種に伴う需要に応えて開発した「ニプロVAシリンジ」について、3月25日付で承認事項一部変更承認を取得したと発表した。  現在、国内で承認され接種可能なファイザー社製の新型コロナワクチンは筋肉注射が前提であることから、同シリンジは筋肉に確実に届くよう針長を25mmとし、薬液吸引および注入時の操作性などを考慮し、25G(0.5mm)の針を採用した。また、針と外筒を一体型にすることでローデッド化を実現。

新型コロナワクチンによるアナフィラキシー、高齢者での管理は?

 COVID-19ワクチンによるアナフィラキシーの発生頻度は10万回に1回~100万回に5回程度と稀であるものの、高齢者のアナフィラキシーの管理はとくに慎重に対応する必要がある。欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI)、欧州老年医学会(EuGMS)らは合同のワーキンググループを発足、COVID-19ワクチンによる高齢者のアナフィラキシーの管理に関する公式見解(position paper)を、Allergy誌オンライン版2021年 4月2日号に報告した。position paperは下記5項目で構成され、それぞれ推奨事項が提案されている。

家族性大腸腺腫症に対する低用量アスピリンへの期待(J-FAPP Study IV)

 家族性大腸腺腫症(FAP)患者における低用量アスピリンの使用によりポリープ再発を有意に抑制させたことが、石川 秀樹氏(京都府立医科大学大学院医学研究科分子標的予防医学 特任教授)、武藤 倫弘氏(同 教授)ら研究グループの『大腸がん超高危険度群におけるがんリスク低減手法の最適化に関する研究』から示唆された。この報告はLancet Gastroenterology & Hepatology誌4月1日号オンライン版に掲載された。  FAPでは大腸がんの前がん病変である腺腫が100個以上発生するため、がん予防法として20歳以降に大腸切除術が行われる。しかし、術後QOLの低下、デスモイド腫瘍発生などの問題をはらんでおり、内科的予防法が模索されている。

血清尿酸値と認知症リスク~メタ解析

 中国医科大学のZhike Zhou氏らは、血清尿酸値(UA)と認知症およびそのサブタイプのリスクとの関連を調査するため、メタ解析を実施した。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年2月25日号の報告。  Embase、PubMed、Web of Scienceより、2020年7月までに公表された文献を検索した。標準平均差(SMD)および95%信頼区間(CI)を算出するため、変量効果モデルを用いた。  主な結果は以下のとおり。 ・適格基準を満たした研究は23件(5,575例)であった。 ・全体として、認知症患者のUAレベルは、非認知症患者と比較し、低かった(SMD:-0.32、95%CI:-0.64~-0.01、p=0.04)。 ・認知症タイプのサブグループ解析では、UAとアルツハイマー病(AD)およびパーキンソン病認知症(PDD)との関連が認められたが、血管性認知症(VaD)との関連は認められなかった。

コロナ禍の献血不足を救う?自己血輸血の効果を検証

 新型コロナウイルス感染症の影響はさまざまな側面で現れているが、献血の減少もその1つに挙げられる。保存血液の使用機会の多い外科領域では、現状に鑑みた効率的な保存血液の使用を検討する必要がある。欧米では、血液製剤の使用を減らすために希釈式自己血輸血が活用されている。京都大学の今中 雄一氏ら研究グループは、国内で手術を受けた患者の保存血液使用率について、希釈式自己血輸血を受けた患者と受けていない患者とで比較したところ、自己血輸血を受けている患者では赤血球製剤使用率が約2割少ないことがわかった。本結果は、PLOS ONE誌オンライン版2021年3月10日号に掲載された。

FDA、再発・難治多発性骨髄腫に対するイサツキシマブのカルフィルゾミブ・デキサメタゾンとの併用を承認 /サノフィ

 サノフィは、2021年3月31日、米国食品医薬品局(FDA)が前治療歴が1~3の再発又は難治性多発性骨髄腫の成人患者に対してカルフィルゾミブ・デキサメタゾン併用療法に追加する医薬品としてイサツキシマブ(商品名:サークリサ)を承認したと発表。  イサツキシマブはすでに、レナリドミドとプロテアソーム阻害薬を含む2レジメン以上の前治療歴を有する再発・難治多発性骨髄腫の成人患者に対して、ポマリドミド・デキサメタゾン併用療法に追加して用いる医薬品として承認されている。

JAK阻害薬upadacitinib、対アダリムマブの優越性は?/NEJM

 乾癬性関節炎患者の治療において、ウパダシチニブはプラセボおよびアダリムマブと比較して、12週時に米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善(ACR20)を達成した患者の割合が高いが、プラセボに比べ有害事象が高頻度にみられることが、英国・グラスゴー大学のIain B. McInnes氏らが行った「SELECT-PsA 1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年4月1日号に掲載された。ウパダシチニブは、可逆的な経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、関節リウマチの治療薬として承認されている。また、アダリムマブは、腫瘍壊死因子α阻害薬であり、関節リウマチおよび乾癬性関節炎の治療に使用されている。

ファイザー社ワクチン6ヵ月後も有効、南ア変異株にも

 米国・Pfizer社は4月1日付のプレスリリースで、同社とBioNTech(ドイツ)が開発した新型コロナウイルスワクチン(BNT162b2、商品名:コミナティ筋注)について、第III相臨床試験で観察されたワクチンの有効性に関する最新の分析結果を発表した。それによると、2回目のワクチン接種から6ヵ月後までの有効性は91.3%であり、南アフリカにおいて流行が確認されている変異株B.1.351系統のCOVID-19症例の予防に対しても有効性を示したという。

成人不眠症に対するレンボレキサントの長期有効性、安全性~第III相臨床試験

 レンボレキサント(LEM)は、成人の不眠症治療薬として日本、米国、カナダで承認されているデュアルオレキシン受容体拮抗薬である。LEMを最大12ヵ月間継続使用した際の有効性および安全性を評価したE2006-G000-303研究(Study 303;SUNRISE-2)の結果を、英国・エーザイのJane Yardley氏らが報告した。Sleep Medicine誌オンライン版2021年2月1日号の報告。  Study 303は、2つの治療期間における12ヵ月間グローバル多施設共同ランダム化二重盲検並行群間第III相臨床試験として実施された。治療期間1(前半6ヵ月間)では、成人不眠症患者949例(完全分析セット)を対象に、プラセボ群、LEM 5mg群、LEM 10mg群にランダムに割り付けた。治療期間2(後半6ヵ月間)では、プラセボ群を再びLEM 5mg群とLEM 10mg群にランダムに割り付け、治療期間1のLEM 5mg群およびLEM 10mg群は、そのまま治療を継続した(LEM 5mg群:251例、LEM 10mg群:226例)。エンドポイントである入眠および睡眠維持は、毎日の電子睡眠日誌のデータより分析した。治療に起因する有害事象(TEAE)のモニタリングを行った。

オマリズマブ、免疫チェックポイント阻害薬および抗HER2薬のそう痒症を改善/Ann Oncol

 IgE阻害薬オマリズマブ(商品名:ゾレア)はアトピー性皮膚炎、蕁麻疹などのそう痒症に有効である。がん領域におけるそう痒関連皮膚有害事象(paCAE)は、免疫チェックポイント阻害薬や抗HER2薬で多くみられる。これらの薬剤による難治性paCAEを伴うがん患者に対してオマリズマブを評価する多施設後ろ向き研究の結果が発表された。

ミドリムシ摂取でコロナ禍の不安疲労が解消する?

 コロナ自粛により自律神経が乱れ、多くの日本国民が不安や疲労に苛まれている。これを打破するために、一躍ブームとなったミドリムシが改めて見直されるかもしれないー。3月17日、『コロナ禍における新たな社会課題「不安疲労」の実態と「腸ツボ」刺激によるアプローチ~多糖成分パラミロン最新研究報告~』(主催:パラミロン研究会)が開催。久保 明氏(東海大学医学部客員教授/内分泌・糖尿病専門医)と内藤 裕二氏(京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学 准教授)らが登壇し、ミドリムシの生成物がいかに現代社会に必要か解説した。

開発中のRNAi治療薬、原発性高シュウ酸尿症I型に有効/NEJM

 開発中のRNA干渉(RNAi)治療薬lumasiranは、原発性高シュウ酸尿症I型(PH1)の進行性腎不全の原因である尿中へのシュウ酸排泄量を減少させ、投与を受けた患者の大多数で、6ヵ月の治療後、同排泄量は正常またはほぼ正常値となっていた。オランダ・アムステルダム大学のSander F. Garrelfs氏らILLUMINATE-A研究グループが、第III相の二重盲検無作為化試験の結果を報告した。PH1は、まれな遺伝性疾患であり、シュウ酸が肝臓で過剰に産生されることで腎結石、腎石灰化症、腎不全および全身性のシュウ酸症を引き起こす。lumasiranは、グリコール酸オキシダーゼを標的とすることで肝臓でのシュウ酸産生を抑制する新たなRNAi治療薬である。NEJM誌2021年4月1日号掲載の報告。

COVID-19、退院後もさまざまな臓器疾患リスクと関連/BMJ

 COVID-19元入院患者は一般集団と比較して、予想される多臓器の機能障害(とくに呼吸器と心血管代謝)のリスクが高いことが、英国国家統計局のDaniel Ayoubkhani氏らによる検討で明らかにされた。同リスクの増大は高齢者に限ったものではなく、また特定の人種・民族に認められるものでもないという。これまでに心血管系・代謝系・腎臓系・肝臓系に影響を与える肺外機能障害と、COVID-19との関連の可能性が指摘されており、最近のエビデンスとして、COVID-19で入院した患者は、退院後に死亡および再入院する割合が高いことが示されているが、多臓器疾患の長期疫学については定量化されていなかった。結果を踏まえて著者は、「post-covid syndromeの診断・治療・予防は、特定の臓器・疾患に限定することなく統合的なアプローチで臨むことが必要であるとともに、リスク因子を確定するための研究が急がれる」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。

日本人青年におけるインターネット依存とメンタルヘルスとの関連

 インターネット依存とメンタルヘルスの不調は、青年期の大きな問題である。日本大学の大塚 雄一郎氏らは、インターネット依存とメンタルヘルスの不調が、互いにリスク因子となりうる双方向の関連性を示すかどうかについて、検討を行った。Iranian Journal of Public Health誌2020年11月号の報告。  本縦断的学校ベース調査では、日本の中都市の高等学校8校より1年生1,547人をベースライン対象とし、1年間のフォローアップ調査を行った。インターネット依存は、Youngのインターネット依存尺度日本語版を、メンタルヘルスは、12項目GHQ精神健康調査を用いて評価した。インターネット依存が青年のメンタルヘルスの不調と関連するか、またメンタルヘルスの不調がインターネット依存の発症と関連するかを調査するため、共変量を含む回帰分析を行った。

非浸潤性乳がん患者、乳がん以外の浸潤性がんリスクが1.6倍

 非浸潤性乳がん(BCIS)患者は浸潤性乳がんリスクが高いという報告があるが、乳がんを除く浸潤性がんの潜在リスクに関する報告は一致していない。今回、スイス・チューリッヒ大学のNena Karavasiloglou氏らが、組織的なマンモグラフィ検診プログラムのないチューリッヒ州におけるBCIS患者のデータを調査したところ、BCIS患者は一般集団に比べ、浸潤性乳がんは6.85倍、乳がんを除く浸潤性がんは1.57倍、リスクが高いことが示された。また、70歳以上でのBCIS診断が乳がんを除く浸潤性がんのリスクと関連していたが、浸潤性乳がんとは関連していなかった。Frontiers in Oncology誌2021年3月18日号に掲載。

化学放射線療法後の食道がん切除例、ニボルマブ術後補助療法は?/NEJM

 導入補助化学放射線療法後に食道がん/食道胃接合部がんを切除した患者において、術後補助療法としてのニボルマブはプラセボと比較して無病生存(DFS)期間を有意に延長した。米国・ベイラー医科大学医療センターのRonan J. Kelly氏らが、第III相の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「CheckMate 577試験」の結果を報告した。食道がん/食道胃接合部がんに対し術前補助化学放射線療法および手術を行っても、再発リスクが高いままの患者に対する術後補助療法は確立されていなかった。NEJM誌2021年4月1日号掲載の報告。  研究グループは、術前補助化学放射線療法を受け病理学的完全奏効が得られずR0切除を行ったステージII/IIIの食道がん/食道胃接合部がん患者を、ニボルマブ群(240mgを2週ごと16週間、その後480mgを4週ごと投与)またはプラセボ群に2対1の割合で無作為に割り付け、再発または忍容できない毒性が認められるまで、あるいは患者が同意を撤回するまで、最長1年間、投与を継続した。

英国のCOVID-19検査・追跡・隔離システム、順守率低調/BMJ

 COVID-19パンデミックの当初11ヵ月間における英国での検査・追跡・隔離システムの順守について調査した結果、経時的に多少の改善は認めるものの順守率は低調だったという。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのLouise E. Smith氏らが、オンライン調査の結果を報告した。検査・追跡・隔離システムは全英のCOVID-19回復戦略の柱の1つであり、このシステムの成功は、症状が認められた場合は隔離し、発症した場合は検査し、感染が確認されたら濃厚接触者の情報提供を得ることに依存している。著者は、「実用的なサポートと金銭的補償がシステムの順守を改善する可能性がある。男性、若年層、医療福祉関連等の労働者を対象としたメッセージや政策も必要かもしれない」とまとめている。BMJ誌2021年3月31日号掲載の報告。

認知症、脳・心血管疾患、1型糖尿病などがCOVID-19重症化リスクに追加/CDC

 米国疾病予防管理センター(CDC)は、3月29日、成人において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスクとなる病状リストにいくつかの新しい項目を追加した。以前から可能性が指摘されていた、「1型糖尿病(2型糖尿病に追加)」「中等度~重度の喘息」「肝疾患」「認知症またはその他の神経学的疾患」「脳卒中・脳血管疾患」「HIV感染症」「嚢胞性線維症」「過体重(肥満に追加)」のほか、新しく「薬物依存症」がリストアップされた。新しいリストでは、特定のカテゴリごとに病状が記載されている。