日本語でわかる最新の海外医学論文|page:255

乳がん治療におけるタキサン3剤の末梢神経障害を比較

 乳がん治療におけるnab-パクリタキセル、パクリタキセル、ドセタキセルによる化学療法誘発性末梢神経障害の患者報告を比較したコホート研究の結果を、中国・Chinese Academy of Medical Sciences and Peking Union Medical CollegeのHongnan Mo氏らが報告した。化学療法誘発性末梢神経障害はnab-パクリタキセル群よりパクリタキセル群およびドセタキセル群で有意に少なく、nab-パクリタキセルでは主に感覚神経障害である手足のしびれ、パクリタキセルおよびドセタキセルでは主に運動神経障害および自律神経障害が報告された。また、感覚神経障害よりも運動神経障害のほうが早く報告されていた。JAMA Network Open誌2022年11月2日号に掲載。

アスピリン潰瘍出血、ピロリ除菌での予防は一時的?/Lancet

 Helicobacter pylori(H. pylori)除菌は、アスピリンによる消化性潰瘍出血に対する1次予防効果があるものの、その効果は長期間持続しない可能性があることが、英国・ノッティンガム大学のChris Hawkey氏らが英国のプライマリケア診療所1,208施設で日常的に収集された臨床データを用いて実施した、無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Helicobacter Eradication Aspirin Trial:HEAT試験」の結果、明らかとなった。アスピリンによる消化性潰瘍は、H. pylori感染と関連していることが知られていた。Lancet誌2022年11月5日号掲載の報告。

治療抵抗性うつ病、psilocybin単回投与の有効性は/NEJM

 治療抵抗性うつ病治療への使用が検討されているpsilocybinについて、25mg単回投与は同1mg単回投与と比較して、3週時までのうつ病スコアが有意に低下したが、有害事象と関連していた。英国・COMPASS PathfinderのGuy M. Goodwin氏らが、欧州および北米の10ヵ国22施設で実施されたpsilocybinの第II相無作為化二重盲検用量設定試験の結果を報告した。NEJM誌2022年11月3日号掲載の報告。  研究グループは、2019年3月1日~2021年9月27日の期間に、臨床評価に基づき精神病性の特徴を伴わない大うつ病性障害のDSM-5診断基準を満たし、現在のうつ病エピソードに対してMGH-ATRQに基づく用量と治療期間(8週以上)による2~4回の適切な治療を行うも効果が不十分であった18歳以上の治療抵抗性うつ病患者を対象に、心理学的サポートに加えてpsilocybinの合成製剤であるCOMP360を25mg、10mgまたは1mg(対照)の単回投与を受ける群に、1対1対1の割合で無作為に割り付けた。

高齢化率世界一の日本のコロナ禍超過死亡率が低いのは?/東京慈恵医大

 新型コロナウイルス感染症流行前の60歳平均余命が、コロナ禍超過死亡率と強く相関していたことを、東京慈恵会医科大学分子疫学研究部の浦島 充佳氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2022年10月19日掲載の報告。  新型コロナウイルス感染症は高齢者において死亡リスクがとくに高いため、世界一の高齢者大国である日本ではコロナの流行によって死亡率が高くなることが予想されていたが、実際には死亡率の増加が最も少ない国の1つである。

フォシーガ、心不全に関する新たなエビデンスをAHA2022で発表/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日のプレスリリースで、第III相DELIVER試験において、フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)によって駆出率が軽度低下または保持された心不全患者の症状の負担感および健康関連の生活の質(QOL)を改善したと発表した。  第III相DELIVER試験の事前に規定された解析結果から、プラセボ群と比較して標準治療にフォシーガを追加した併用療法(フォシーガ群)で、症状負荷、身体的制限およびKCCQ平均スコアによる評価においてQOLが改善した。

新経口薬camizestrant、ER+進行乳がんでフルベストラントに対しPFS延長/AZ

 アストラゼネカは2022年11月8日、次世代経口選択的エストロゲン受容体分解薬(SERD)であるcamizestrantが、進行乳がんに対して内分泌療法による治療歴があり、エストロゲン受容体(ER)陽性の局所進行または転移乳がんを有する閉経後の患者を対象に、フルベストラント500mgと比較して、75mgおよび150mgの両用量で主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)において、統計学的に有意かつ臨床的に意義のある延長を示したと発表した。なお、camizestrantの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去の試験で認められたものと一貫しており、新たな安全性上の懸念は確認されていない。  Camizestrantは、強力で経口投与可能なSERDかつERへの完全拮抗薬であり、ER活性型変異を含む幅広い前臨床モデルで抗がん活性を示している。第I相臨床試験(SERENA-1試験)では、camizestrantの忍容性が良好であり、単剤療法またはCDK4/6阻害剤パルボシクリブとの併用療法として投与したときに有望な抗腫瘍プロファイルを有することが示されている。

統合失調症に対するアリピプラゾールの適切な投与量~メタ解析

 薬理学の基本は、薬物の血中濃度と効果との関係であると考えられるが、多くの臨床医において、血中濃度測定の価値は疑問視されているのが現状である。そのため、治療基準用量の検討が、十分に行われていないことも少なくない。ドイツ・ハイデルベルク大学のXenia M. Hart氏らは、統合失調症および関連障害患者における脳内の受容体をターゲットとする抗精神病薬アリピプラゾールの血中濃度と臨床効果および副作用との関連を評価するため、プロトタイプメタ解析を実施した。その結果、ほとんどの患者において、アリピプラゾール10mgでの開始により血中および脳内の有効濃度に達することが示唆された。Psychopharmacology誌2022年11月号の報告。

5~17歳の年齢別、オミクロン株へのワクチン有効性と持続性/NEJM

 カタールにおいて、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のBNT162b2(ファイザー製)ワクチンの小児・青少年への実社会における有効性を検証したところ、小児へのワクチン接種によるオミクロン変異株への保護効果は中程度で、2回目接種後は急速に低下し3ヵ月で保護効果がほぼ認められなくなっていた。青少年については、おそらく投与した抗原量が多いことから、小児よりも強力で持続性のある保護効果が認められたという。カタール・コーネル大学のHiam Chemaitelly氏らが、3つのコホートについて後ろ向き標的コホート試験を行い明らかにした。BNT162b2ワクチンは、小児(5~11歳)と青少年(12~17歳)では、投与される抗原量が異なる。NEJM誌オンライン版2022年11月2日号掲載の報告。

急性脳梗塞で血管内治療後の降圧コントロール、厳格vs.標準/Lancet

 頭蓋内主要動脈閉塞による急性虚血性脳卒中に対する血管内血栓除去術で再灌流に成功した成人患者に対し、収縮期血圧目標値を120mmHg未満とする厳格な降圧コントロールは、140~180mmHgとする降圧コントロールに比べ、90日後の機能回復などのアウトカムは不良であることが、中国・海軍軍医大学のPengfei Yang氏らが、821例を対象に行った無作為化比較試験の結果、示された。急性虚血性脳卒中に対する血管内血栓除去後の至適収縮期血圧については不明であったが、結果を踏まえて著者は、「機能回復のためには厳格な降圧コントロールは避けるべき」とまとめている。Lancet誌2022年11月5日号掲載の報告。

妊娠高血圧症候群と長期的な児への影響(解説:三戸麻子氏)

 妊娠高血圧症候群は母児ともにadverse pregnancy outcomeの合併が多く、死亡率も高い代表的な妊娠合併症である。その影響は周産期のみならず出産後長期的な健康にも及び、妊娠高血圧症候群に罹患した女性では、将来高血圧や糖尿病などの生活習慣病や脳心血管病のリスクが高い。またその児においても、メタボリック症候群や免疫系の異常、精神神経疾患のリスクが高いことが報告されている。しかし児の出生後長期的な全死亡についてはほとんど報告がなかった。

海外の著名医師が日本に集結、Coronary Week 2022開催について【ご案内】

 2022年12月1日(木)~3日(土)、The 8th International Coronary Congress(ICC2022)をJPタワーホール&カンファレンスにて開催する。本会は初の試みである「Coronary Week 2022」として、第25回日本冠動脈外科学会学術大会および第34回日本冠疾患学会学術集会と同時開催する。現在、以下24名のInternational Facultyの来日が決定している。

オミクロン株BA.4/5の病原性と増殖性、デルタ株よりも低いか/Nature

 東京大学医科学研究所の河岡 義裕氏らの研究グループは、新型コロナウイルスのオミクロン株BA.4/5について、感染した患者の臨床検体からウイルスを分離し、その性状についてハムスターを用いてin vivoで評価した。デルタ株およびBA.2と比較したところ、BA.4およびBA.5のハムスターにおける増殖性と病原性は、いずれもBA.2と同程度であったが、デルタ株と比べると低いことなどが明らかになった。本研究は、東京大学、国立国際医療研究センター、米国ウィスコンシン大学、国立感染症研究所、米国ユタ州立大学の共同で行われ、Nature誌オンライン版11月2日号に掲載された。  主な結果は以下のとおり。

乳がんの再発恐怖を認知行動療法アプリが軽減/名古屋市⽴⼤学ほか

 患者自身で認知行動療法を実施できるスマートフォンアプリを用いることで、乳がん患者の再発に対する恐怖が軽減したことを、名古屋市立大学大学院精神・認知・行動医学分野の明智 龍男氏らの共同研究グループが発表した。スマートフォンのアプリを用いることで通院などの負担を大きく軽減でき、場所や時間を選ばずに苦痛を和らげるための医療を受けられることが期待される。Journal of Clinical Oncology誌オンライン版11月2日掲載の報告。

近年の米国うつ病有病率―2015~20年調査

 うつ病は一般的に認められる精神疾患だが、致死的な状態を引き起こす可能性がある。COVID-19パンデミックによるうつ病問題の深刻化が、いくつかのデータで示されている。米国・ニューヨーク市立大学のRenee D. Goodwin氏らは、米国におけるCOVID-19パンデミックがメンタルヘルスへ及ぼす影響に対し包括的に対処するため、パンデミック前のうつ病有病率の定量化を試みた。その結果、2015~19年にかけて、うつ病治療件数が相応に増加していないにもかかわらず、うつ病患者の増加が認められており、2020年には過去1年間のうつ病患者数が米国人の10人に1人、青年および若年成人では5人に1人にまで増加していることが明らかとなった。結果を踏まえ著者らは、このメンタルヘルスに関する危機的状況に対処するため、エビデンスに基づく予防や介入、多面的な公衆衛生キャンペーンなどの対策が早急に必要であろうと述べている。American Journal of Preventive Medicine誌2022年11月号の報告。

ICUせん妄患者へのハロペリドール、生存や退院増につながらず/NEJM

 せん妄を有する集中治療室(ICU)入室患者において、ハロペリドールによる治療はプラセボと比較して、生存日数の有意な延長および90日時点の有意な退院数増大のいずれにも結び付かないことが示された。デンマーク・Zealand University HospitalのNina C. Andersen-Ranberg氏らが多施設共同盲検化プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。ハロペリドールはICU入室患者のせん妄治療にしばしば用いられるが、その効果に関するエビデンスは限定的であった。NEJM誌オンライン版2022年10月26日号掲載の報告。  研究グループは、急性症状でICUに入室したせん妄を有する18歳以上の成人患者を対象に、ハロペリドール治療がプラセボ治療と比較して、生存日数および退院数を増大するかどうかを検討した。試験は2018年6月14日~2022年4月9日に、デンマーク、フィンランド、英国、イタリア、スペインのICUで行われた。

EVARデバイス監視モデルがリスク評価に有望/BMJ

 腹部大動脈瘤の血管内修復術(EVAR)後の長期にわたるデバイス(グラフト)監視に、リンク登録した医療費支払請求データを活用したところ、個々のデバイスの再手術リスクを特定したことが示された。米国・ダートマス-ヒッチコック・メディカルセンターのPhilip Goodney氏らによる検討の結果で、著者は「デバイスメーカーおよび規制当局は、リンク登録データソースを活用すれば、心血管手術後の実臨床における長期アウトカムの積極的なモニタリングが可能である」と述べ、今回の検討結果が、将来的なデバイス監視モデルになりうることを示唆した。BMJ誌2022年10月25日号掲載の報告。  研究グループは、実臨床での大動脈エンドグラフトの長期アウトカム(腹部大動脈瘤の再手術およびlate破裂)の評価に、リンク登録医療費支払いデータを用いることを検討する観察サーベイランス試験を行った。米国メディケア医療費とリンクするVascular Quality Initiative Registryを設定(2003~18年、282施設が参加)し検討した。

糖毒性glucose toxicityと進行性β細胞機能不全との関係-再考が必要か?-(解説:住谷哲氏)

1型糖尿病患者のβ細胞機能は診断時に完全に廃絶しているわけではなく、診断後次第に低下していくことが知られている。この進行性β細胞機能不全のメカニズムは明らかではないが、自己免疫および糖毒性glucose toxicityの2つが関与していると考えられている。1型糖尿病診断直後からの抗TNF-α抗体ゴリムマブの投与により、β細胞機能不全の進行が抑制されることが報告されている。糖毒性については、高血糖に起因する細胞内酸化ストレスなどを介してβ細胞機能不全が進行するため、診断直後からの厳格な血糖管理がその進行を抑制するために有効である、と考えられてきた。しかしこの考えを支持するエビデンスは実は十分ではない。いくつかの介入試験がこれまでに報告されているが、その結果はcontroversialである。そこで本試験ではHybrid closed loop(HCL)を用いた厳格な血糖コントロールが、診断直後の1型糖尿病患者における進行性β細胞機能不全を抑制するか否かを検討した。

ラブリズマブ、視神経脊髄炎スペクトラム障害患者で73週間再発ゼロを達成/アレクシオン

 アレクシオンは、2022年11月2日付のプレスリリースで、第III相CHAMPION-NMOSD試験において、ラブリズマブを投与された抗アクアポリン4抗体陽性の視神経脊髄炎スペクトラム障害(以下、NMOSD)成人患者群が、外部対照であるエクリズマブのPREVENT試験のプラセボ群と比較して、再発リスクが有意に低いことが示されたことを2022年欧州多発性硬化症学会(ECTRIMS)会議で発表されたと報告した。  CHAMPION-NMOSD試験は、成人患者(58例)を対象としてラブリズマブの安全性および有効性を評価する非盲検第III相多施設国際共同試験である。NMOSDの再発は長期的な機能障害をもたらす可能性があり、またすでに有効な治療選択肢が存在していたため、本試験では倫理的理由からプラセボ対照群が設定されず、ラブリズマブ投与群は、外部対照としてエクリズマブのPREVENT試験のプラセボ群と比較された。本試験の主要評価項目は、独立評価委員会により判定された初回の治験中再発までの期間と設定されており、ラブリズマブを投与された患者は全員、73週(中央値)にわたる治療期間を再発と判定されることなく経過した(再発リスク低下率:98.6%、ハザード比:0.014[95%信頼区間[CI]:0.000~0.103]、p<0.0001)。48週時点の無再発率は、外部対照のプラセボ群では63%であったのに対し、ラブリズマブ群では100%であった。また本試験では、独立評価委員会により判定された治験中再発の年間再発率(判定された再発数の合計を患者年数の合計で割った値)や、Hauser Ambulation Index(可動性の評価尺度)で測定された可動性(歩行機能)のベースラインからの臨床的に重要な悪化などの副次評価項目も達成された。

iPhoneを使った眼科検査の精度はいかに?

 モバイル網膜カメラで撮影した画像は視神経乳頭陥凹拡大の検出において、対面診療での眼科検査と比較して、有用であることが報告された。Cureus誌2022年8月17日号掲載の報告。  米国および世界における失明は予防可能であるが、健康保険の欠如や健康リテラシーの低さにより、眼科医療を受けられない人々が多く存在する。米国・NewYork-Presbyterian/Weill Cornell Medical CenterのDu Cheng氏らはiPhoneなどのデバイスおよび3Dプリンターでモバイル網膜カメラを開発し、ニューヨーク市で眼科検査のスクリーニングイベントを実施した。

非感情性精神病患者の就労に対する抗精神病薬の影響

 抗精神病薬の使用が初回エピソード非感情性精神病(nonaffective psychosis)の就労障害低下と関連しているかを明らかにするため、カナダ・オタワ大学のMarco Solmi氏らは、検討を行った。その結果、初回エピソード非感情性精神病に対する抗精神病薬(とくに長時間作用型注射剤)の使用は、未使用の場合と比較し、就労障害リスクを30~50%低下させ、この影響は初回診断5年超でも継続していることを報告した。このことから著者らは、非感情性精神病の初回エピソード後、できるだけ早期に抗精神病薬治療を開始することの意義を強調した。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2022年10月6日号の報告。