日本語でわかる最新の海外医学論文|page:202

小児の消化管アレルギー患者の約半数は新生児期に発症/国立成育医療研究センター

 新生児、小児では消化管は発達途上であり、アレルギーを発症しやすいことが知られている。一方でわが国には、新生児、乳児の消化管アレルギーについて全国を対象にした疫学研究は行われていなかった。そこで、国立成育医療研究センター研究所 好酸球性消化管疾患研究室の鈴木 啓子氏らの研究グループは、日本で初めて2歳未満の新生児、乳児の消化管アレルギー(食物蛋白誘発胃腸症)に関する全国疫学調査を実施。その結果、新生児、乳児の消化管アレルギーの約半数は生後1ヵ月までの新生児期に発症していることが判明した。Allergology International誌オンライン版2023年10月30日号からの報告。

腎移植患者に対する帯状疱疹ワクチン接種の推奨/日本臨床腎移植学会

 日本臨床腎移植学会は、2023年11月7日付の「腎移植患者における帯状疱疹予防に関するお知らせ」にて、腎移植患者に対する帯状疱疹発症予防のための乾燥組換え帯状疱疹ワクチン(商品名:シングリックス筋注用、製造販売元:グラクソ・スミスクライン)の接種を積極的に検討するよう同学会の会員に向けて通達した。  米国疾病予防管理センター(CDC)の勧告や海外の最新のガイドラインにおいて、固形臓器移植患者に対するワクチンの接種は、原則、移植前に接種するよう推奨されており、移植前にワクチン接種が不可能な場合は、移植後少なくとも6~12ヵ月後に接種することが望ましいとされている。

新規統合失調症患者に使用される抗精神病薬の有効性と忍容性~メタ解析

 英国・ウルバーハンプトン大学のZina Sherzad Qadir氏らは、PRISMA-P声明に従って、統合失調症治療に使用される経口抗精神病薬の有効性および忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Pharmacy(Basel、Switzerland)誌2023年11月10日号の報告。  主要アウトカムは、症状の改善、副作用に対する忍容性、治療中止理由により測定された臨床反応とした。  主な結果は以下のとおり。 ・21件の研究を分析に含めた。 ・個々の患者における治療反応は、アリピプラゾールvs.ziprasidoneおよびクエチアピン(CDSS:p=0.04、BPRS:p=0.02、YMRS:p=0.001)、ziprasidone vs.クエチアピン(CGI:p=0.02、CDSS:p=0.02)で認められた。 ・アリピプラゾールは、リスペリドン、ziprasidone、クエチアピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・クエチアピンは、アリピプラゾール、ziprasidone、リスペリドンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・ziprasidoneは、クエチアピン、ハロペリドール、オランザピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・リスペリドンは、オランザピンよりも忍容性が高かった(p=0.03)。 ・ハロペリドールは、オランザピン、クエチアピンよりも忍容性が高かった(p<0.05)。 ・オランザピンは、クエチアピンよりも治療中止リスクが低かった(p<0.05)。

低リスク骨髄異形成症候群、imetelstatが有望/Lancet

 赤血球造血刺激因子製剤(ESA)が無効または適応とならない、多量の輸血を受けた低リスク骨髄異形成症候群(LR-MDS)の治療において、テロメラーゼ阻害薬imetelstatはプラセボと比較して、赤血球輸血非依存(RBC-TI)の割合が有意に優れ、Grade3、4の有害事象の頻度が高いものの管理可能であることが、ドイツ・ライプチヒ大学病院のUwe Platzbecker氏らが実施した「IMerge試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2023年12月1日号で報告された。  IMerge試験は、17ヵ国118施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年9月~2021年10月に患者の登録が行われた(Janssen Research & DevelopmentとGeronの助成を受けた)。

LVADにおいても抗血栓療法の常識を疑う時代(解説:絹川弘一郎氏)

 最近ステントの抗血栓療法について、相次いでDAPTの常識が緩和される方向にデータが出てきている。その流れはLVADにも及んできた。このMandeep R. Mehra氏のJAMA誌の論文は、HeartMate3新規植込み患者において通常の抗血栓療法(ワルファリン[INR:2~3]と低用量アスピリン)とアスピリンなしの抗血栓療法(ワルファリン[INR:2~3]とプラセボ)をダブルブラインドで割り付けし、その後の有害事象フリーの生存率を主要エンドポイントとして12ヵ月間比較したものである。ここで言う有害事象は、LVADの場合、とくにhemocompatibility-related adverse eventと呼ばれ、脳卒中・ポンプ血栓・大出血・末梢塞栓症が含まれる。

ヘムライブラ、重症血友病Aの乳児に対する早期予防投与でベネフィット/中外

 中外製薬は、未治療または治療歴の短い血液凝固第VIII因子に対するインヒビター非保有の重症血友病Aの乳児を対象とした第III相HAVEN 7試験の主要解析において、へムライブラ(一般名:エミシズマブ)の有効性および安全性が裏付けられたことを発表した。生後12ヵ月までの乳児において、ヘムライブラが臨床的意義のある出血コントロールを達成し、忍容性も良好であったことが示されたこの新しいデータは、2023年12月9日~12日にカリフォルニア州サンディエゴで開催された第65回米国血液学会(ASH:American Society of Hematology)年次総会で発表され、プレスプログラムにも採択された。  重症血友病Aによる乳児とその保護者や介護者への負担は大きい。これまでに複数の臨床試験により、早期からの出血抑制を目的とする治療が、長期にわたり転帰を改善し、かつ頭蓋内出血のリスクを低下させることが示されている。このことから、世界血友病連盟(WFH:World Federation of Hemophilia)の治療ガイドラインでは、定期的な出血抑制を目的とする治療を低年齢で開始することが血友病の標準治療とされている。ところが、多くの血友病Aの乳児では、生後1年までは出血抑制を目的とする治療が開始されていない。ヘムライブラは、すでに乳児に対しても承認、使用されており、出生時から皮下投与が可能である。また、維持投与においては複数のさまざまな投与間隔レジメンにより柔軟な治療選択が可能な薬剤である。

TN乳がん術前免疫化療前・後のニボルマブ単剤、pCRに有意差なし(BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N)/SABCS2023

 StageI~IIBのトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者に対して、12週間の非アンスラサイクリン系抗がん剤+ニボルマブの術前補助療法の前または後にニボルマブ単剤治療を組み合わせた第II相BCT1902/IBCSG 61-20 Neo-N試験の結果、ニボルマブ単剤治療の順番にかかわらず有望な病理学的完全奏効(pCR)率を示したことを、オーストラリア・Newcastle大学のNicholas Zdenkowski氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023、12月5~9日)で発表した。 ・対象:StageI~IIBのTNBC患者 108例

NAFLD、発症年齢が早いほどがんリスク上昇

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD、欧米では2023年6月より病名と分類法を変更)の発症年齢は低下傾向にあるが、年齢が異なる約6万4,000例を対象としたコホート研究において、NAFLDはがんリスク上昇と関連し、発症年齢が若いほどがんリスクが高いことが示された。中国・首都医科大学のChenan Liu氏らによる本研究の結果はJAMA Network Open誌2023年9月25日号に掲載された。

アルツハイマー病リスクに対する身体活動の影響~メタ解析

 すべての原因による死亡率や認知症を減少させるために、身体活動(PA)は有用である。しかし、アルツハイマー病リスクに対するPAの影響については、議論の余地が残っている。中国医科大学付属第一医院のXiaoqian Zhang氏らは、アルツハイマー病発症とPAとの根本的な影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Ageing Research Reviews誌オンライン版2023年11月17日号の報告。  2023年6月までに公表された研究をPubmed、Embase、Cochrane Library、Web of Scienceより検索した。ランダム効果モデルを用いて、エフェクトサイズ(ハザード比[HR]、95%信頼区間[CI])を算出した。

早期乳がん、術前MRIで術後放射線療法の省略を判定可能?(PROSPECT)/Lancet

 MRI検査で単病巣性の乳がん(unifocal breast cancer)が認められた病状良好な女性患者は、術後の放射線療法を安全に省略できることが示された。オーストラリア・王立メルボルン病院のGregory Bruce Mann氏らが、多施設共同前向き2アーム非無作為化試験「PROSPECT試験」の結果を報告した。早期乳がんに対する術後の乳房放射線治療は、標準的な乳房温存療法として行われているが、多くの女性にとって過剰治療となる可能性が示唆されている。また、乳房MRIは、局所腫瘍の最も感度の高い評価法である。本試験は、MRIと病理学的所見の組み合わせによって、放射線治療を安全に回避可能な局所乳がんを有する女性の特定が可能であることを見極める目的で行われた。Lancet誌オンライン版2023年12月5日号掲載の報告。

進行胃がん1次治療、CapeOXへのsintilimab上乗せでOS改善(ORIENT-16)/JAMA

 切除不能な局所進行または転移のある胃・胃食道接合部がんの1次治療において、化学療法へのsintilimabの上乗せはプラセボと比較して、すべての患者およびPD-L1複合陽性スコア(CPS)5以上の患者の全生存期間(OS)を有意に改善したことが示された。中国・Chinese PLA General HospitalのJianming Xu氏らが同国の62病院で行った第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ORIENT-16試験」の結果を報告した。胃・胃食道接合部がんと診断される人は、世界で年間100万人以上に上るが有効な治療はほとんどない。sintilimabは、プログラム細胞死1(PD-1)に結合する組換えヒトIgG4モノクローナル抗体で、化学療法との併用による有望な有効性が示されていた。JAMA誌2023年12月5日号掲載の報告。

BMIが高いとコロナワクチンの抗体応答が低い

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンが普及し、その効果に関してさまざまな報告がなされている。ワクチンと体型、とくにBMI高値の肥満の人にはどのように関係するのであろう。この疑問に対し、オーストラリア・クイーンズ大学化学・分子バイオサイエンス学部のMarcus Zw Tong氏らの研究グループは、COVID-19から回復した被検者から血液サンプルを採取し、ワクチン接種前後の抗体反応を測定・解析した。その結果、高いBMIがワクチンの抗体応答低下と関連することが示唆された。Clinical & Translational Immunology誌2023年12月3日号の報告。

高リスク早期乳がんへの術後アベマシクリブ併用、再発スコアによらず有効(monarchE)/SABCS2023

 HR+/HER2-リンパ節転移陽性の高リスク早期乳がんに対する術後内分泌療法(ET)にアベマシクリブ追加の有用性を検討したmonarchE試験では、無浸潤疾患生存期間(iDFS)と無遠隔再発生存期間(DRFS)が有意かつ臨床的に意義のある改善が示され、さらに併用療法終了から5年後にiDFSとDRFSの絶対的ベネフィットがさらに大きくなったことが報告されている。今回、原発腫瘍組織の分子プロファイルと臨床転帰の関連について検討した結果を、英国・The Royal Marsden Hospital, Institute of Cancer ResearchのNicholas C. Turner氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。

統合失調症患者の服薬順守の予測因子~大規模コホート

 統合失調症は、重度の精神疾患の中で最も顕著な服薬アドヒアランスの課題を有する疾患であるが、患者の服薬アドヒアランスの予測や改善に関する利用可能なプロスペクティブ研究のデータは限られている。フランス・ボルドー大学のDavid Misdrahi氏らは、大規模コホートにおける1年間の服薬アドヒアランスの予測因子を特定するため、クラスタリング分析を用いた検討を行った。Translational Psychiatry誌2023年11月7日号の報告。  統合失調症を専門とする10施設より募集した外来患者を対象に、臨床医と患者による服薬アドヒアランス測定を含む1日の標準化バッテリーで評価を行った。2段階クラスタリング分析および多変量ロジスティック回帰を用いて、服薬アドヒアランス評価スケール(MARS)とベースラインの予測因子に基づいた服薬アドヒアランスのプロファイルを特定した。

重症ARDS、ECMO中の腹臥位は無益/JAMA

 重症急性呼吸窮迫症候群(ARDS)で静脈脱血・静脈送血の体外式膜型人工肺(VV-ECMO)による治療を受けている患者において、腹臥位療法は仰臥位療法と比較し、ECMO離脱成功までの期間を短縮しなかった。フランス・ソルボンヌ大学のMatthieu Schmidt氏らが、同国14施設の集中治療室(ICU)で実施した医師主導の無作為化並行群間比較試験「PRONECMO試験」の結果を報告した。腹臥位療法は重症ARDS患者の転帰を改善する可能性が示唆されているが、VV-ECMOを受けているARDS患者に対して、仰臥位療法と比較し臨床転帰を改善するかどうかは不明であった。JAMA誌オンライン版2023年12月1日号掲載の報告。

FRα高発現プラチナ抵抗性卵巣がん、FRα標的ADC MIRVがOS・PFS改善(MIRASOL)/NEJM

 葉酸受容体α(FRα)高発現プラチナ製剤抵抗性の高異型度漿液性卵巣がん患者において、mirvetuximab soravtansine-gynx(MIRV)は、化学療法と比較して無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)および客観的奏効率(ORR)を有意に改善したことが、米国・オクラホマ大学ヘルスサイエンスセンターのKathleen N. Moore氏らにより21ヵ国253施設で実施された無作為化非盲検第III相試験「MIRASOL試験」の結果で示された。MIRVは、FRα抗体に微小管阻害剤を結合させたFRαを標的とするファーストインクラスの抗体薬物複合体で、米国では2022年11月14日に「SORAYA試験」の結果に基づき、1~3レジメンの前治療のあるFRα高発現プラチナ製剤抵抗性卵巣がんの治療薬として、迅速承認されている。NEJM誌2023年12月7日号掲載の報告。

レカネマブ薬価決定、アルツハイマー病治療薬として12月20日に発売/エーザイ

 エーザイとバイオジェンは12月13日付のプレスリリースにて、アルツハイマー病の新たな治療薬であるヒト化抗ヒト可溶性アミロイドβ凝集体モノクローナル抗体のレカネマブ(商品名:レケンビ点滴静注200mg、同500mg)について、薬価基準収載予定日である12月20日より、日本で発売することを発表した。米国に次いで2ヵ国目となる。薬価は200mgが4万5,777円/バイアル、500mgが11万4,443円/バイアル。用法・用量は、10mg/kgを2週間に1回、約1時間かけて点滴静注で、患者が体重50kgの場合、年間約298万円になる。保険適用となり、さらに、治療費が高額になった場合は高額療養費制度も利用できる。

HER2+進行乳がん高齢患者への1次治療、T-DM1 vs.標準治療(HERB TEA)/SABCS2023

 HER2陽性進行乳がん患者の1次治療として標準的なHPD(トラスツズマブ+ペルツズマブ+ドセタキセル)療法は、高齢患者では有害事象により相対用量強度を維持できないケースやQOLが損なわれるケースがある。そのため、毒性は低く、有効性は劣らない高齢者における新たな治療オプションが求められる。国立国際医療研究センター病院の下村 昭彦氏は、HPD療法とトラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)を比較した第III相HERB TEA試験(JCOG1607)の結果を、サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で報告した。

長期服用でCVD死亡率を高める降圧薬は?~ALLHAT試験2次解析

 米国・テキサス大学ヒューストン健康科学センターのJose-Miguel Yamal氏らは降圧薬による長期試験後のリスクを判定するため、ALLHAT試験の2次解析を実施。その結果、心血管疾患(CVD)の死亡率は全3グループ(サイアザイド系利尿薬[以下、利尿薬]、カルシウムチャネル拮抗薬[CCB]、アンジオテンシン変換酵素[ACE]阻害薬)で同様であることが明らかになった。なお、ACE阻害薬は利尿薬と比較して脳卒中リスクを11%増加させた。JAMA Network Open誌12月1日号掲載の報告。

慢性期双極性障害患者における糖尿病の有病率、ホモシステインとの相関関係

 双極性障害患者において、糖尿病の合併は、罹患率や死亡率の増加に影響を及ぼす可能性がある。中国・遼寧師範大学のLi Mu氏らは、慢性期双極性障害患者の糖尿病の有病率およびホモシステインとの相関関係を調査した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2023年11月20日号の報告。  双極性障害入院患者195例を対象に、横断的調査を実施した。双極性障害患者における糖尿病の有病率およびその臨床人口統計とホモシステインとの関連を調査した。対象患者の人口統計学的特徴、身体計測変数、臨床変数、血漿ホモシステインレベルは、アンケート、臨床測定、臨床検査により収集し、評価を行った。