低用量アスピリンの常用、がん死リスクを長期に抑制

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/01/20

 



低用量アスピリンの毎日服用により、食道がん、膵がん、肺がん、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんなどの主要ながんによる死亡が有意に抑制されることが、イギリス・オックスフォード大学脳卒中予防研究部門のPeter M Rothwell氏らが実施した血管イベント予防に関する無作為化試験のメタ解析で示された。すでに、アスピリンを5年以上毎日服用すると結腸・直腸がんのリスクが低減することが無作為化試験などで示されている。加えて、アスピリンは他臓器のがん、特に消化管のがんのリスクを抑制する可能性を示唆するエビデンスがあるが、ヒトでは確証されていないという。Lancet誌2011年1月1日号(オンライン版2010年12月7日号)掲載の報告。

アスピリン治療が平均4年以上の無作為化試験が対象




研究グループは、血管イベントの予防効果に関してアスピリンと対照を比較した無作為化試験の、試験期間中および試験後のがん死について調査を行った。

平均治療期間が4年以上にわたるアスピリン常用(毎日服用)例とアスピリン非服用例を比較した無作為化試験の個々の患者データを用い、予定治療期間との関連において消化器がんまたは非消化器がんによる死亡のリスクに及ぼすアスピリンの効果を評価した。

イギリスの3つの大規模試験では、死亡診断書およびがんレジストリーから、個々の患者の試験終了後の長期フォローアップ・データが得られ、これを用いて20年がん死リスクの評価を行った。

日本のJPAD試験を含む8試験、約2万5,500例の解析で、がん死リスクが21%低下




適格基準を満たした8つの試験(BDAT、UK-TIA、ETDRS、SAPAT、TPT、JPAD、POPADAD、AAA試験に参加した2万5,570例、がん死674例)では、アスピリン群でがん死が有意に低下していた[オッズ比:0.79(95%信頼区間:0.68~0.92)、p=0.003]。

SAPAT試験を除く7試験(2万3,535例、がん死657例)から得られた個々の患者データの解析では、明確なアスピリンのベネフィットはフォローアップ期間が5年を経過した後に認められた[全がんのハザード比:0.66(95%信頼区間:0.50~0.87)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.46(95%信頼区間:0.27~0.77)、p=0.003]。

20年間にがんで死亡するリスク(3試験の1万2,659例、死亡1,634例)はアスピリン群が対照群に比べて有意に低く[全固形がんのハザード比:0.80(95%信頼区間:0.72~0.88)、p<0.0001、消化器がんのハザード比:0.65(同:0.54~0.78)、p<0.0001]、ベネフィットは治療期間が長くなるに従って増大した[治療期間≧7.5年における全固形がんのハザード比:0.69(95%信頼区間:0.54~0.88)、p=0.003、消化器がんのハザード比:0.41(同:0.26~0.66)、p=0.0001]。

死亡リスクの抑制効果が現れるまでの治療期間は、食道がん、膵がん、脳腫瘍、肺がんが約5年であったが、胃がん、結腸・直腸がん、前立腺がんではさらに長期間を要した。肺がんと食道がんではベネフィットは腺がんに限られ、全体の20年がん死リスクの抑制効果は腺がんで最も大きかった[ハザード比:0.66(95%信頼区間:0.56~0.77)、p<0.0001]。

ベネフィットはアスピリンの用量(75mg超)、性別、喫煙状況とは関連しなかったが、無作為割り付け時の年齢が高いほど改善され、20年がん死の絶対リスクの低下率は55歳未満が1.41%、55~64歳が4.53%、65歳以上は7.08%に達しており、全体では3.49%であった。

著者は、「低用量アスピリンの毎日服用により、試験期間中および終了後において、いくつかの主要ながんによる死亡が抑制された。ベネフィットは治療期間が長くなるほど増大し、個々の試験を通じて一貫していた」と結論し、「これらの知見は、アスピリンの使用ガイドラインや、発がんおよび薬剤に対するがんの感受性のメカニズムの解明において重要である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)