脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:76

脳卒中治療の進歩により死亡率はどこまで減少したか?(解説:有馬久富氏)-1067

イングランド全域における脳卒中による死亡率の推移がBMJに掲載された。その結果によると、2001~10年までの10年間に脳卒中による年齢調整死亡率は半減した。その多く(7割程度)は致死率の低下によりもたらされており、神経画像診断の進歩・脳梗塞に対する血栓溶解療法の適応拡大・血管内治療の出現など脳卒中治療の改善が大きく寄与したものと考えられる。一方、脳卒中発症率の推移をみると、10年間に約2割程度しか減少していない。さらに悪いことに、55歳未満では脳卒中発症率が増加していた。INTERSTROKE研究2)で示唆されたように脳卒中発症の9割が予防できるにもかかわらず、十分に予防できていないのは非常に残念である。

日本における認知障害から認知症までの診断経路

 米国・メルクアンドカンパニーのChristopher M. Black氏らは、日本における認知障害から認知症までの診断経路を定量化するため、検討を行った。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌オンライン版2019年5月22日号の報告。  認知障害患者とその担当医を対象とした、実臨床の横断的調査を実施した。  主な結果は以下のとおり。 ・医師106人より1,107例の患者データが提供された。 ・最初の症状発現から診察に訪れるまでの平均期間は、7.4±6.9ヵ月であり、診察時に中等度または重度の認知障害が認められた患者の割合は、42%であった。

軽症脳卒中/TIA患者への血小板反応性が低い薬物療法は?/BMJ

 チカグレロル+アスピリン併用療法を受けた軽症脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)患者、とくにCYP2C19機能喪失型変異保有者では、クロピドグレル+アスピリン併用療法を受けた患者と比較して、高い血小板反応性を示す患者の割合が低いことが示された。中国・首都医科大学のYilong Wang氏らが、軽症脳卒中/TIA患者を対象にチカグレロル+アスピリンのクロピドグレル+アスピリンに対する優越性を検証する第II相非盲検(評価者盲検)無作為化比較試験「Platelet Reactivity in Acute Stroke or Transient Ischaemic Attack trial:PRINCE試験」の結果を報告した。急性冠症候群においては、チカグレロル+アスピリン併用はクロピドグレル+アスピリン併用と比較し、CYP2C19の変異の有無にかかわらず有効であることが示されているが、軽症脳卒中/TIA患者では検証されていなかった。BMJ誌2019年6月6日号掲載の報告。

メタゲノム解析による中枢神経感染症の原因診断(解説:吉田敦氏)-1068

髄膜炎・脳炎といった中枢神経感染症では、速やかな原因微生物の決定と、適切な治療の開始が予後に大きな影響を及ぼす。ただし現実として、原因微生物が決定できない例のみならず、感染症と判断することに迷う例にも遭遇する。抗菌薬の前投与があれば、脳脊髄液(CSF)の培養は高率に偽陰性となるし、CSFから核酸ないし抗原検査で決定できる微生物の種類も限られている。このような例について、病原微生物の種類によらず遺伝子を検出できる次世代シークエンサー(NGS)によるメタゲノム解析を用いれば、原因微生物を決定でき、マネジメントも向上するのではないか―という疑問と期待はかねてから存在していた。

脳脊髄液のメタゲノムNGSで中枢神経系感染症の診断精度向上/NEJM

 特発性髄膜炎や脳炎、脊髄炎の患者において、脳脊髄液(CSF)のメタゲノム次世代シークエンシング(NGS)を行うことで、他の検査では診断されなかった中枢神経系感染症を検出でき、診断精度が上がることが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校の Michael R. Wilson氏らが、204例の患者を対象に行った多施設共同前向き試験の結果で、NEJM誌2019年6月13日号で発表した。CSFのメタゲノムNGSは、単回テストでさまざまな種類の病原体を特定できるとされている。

中高年ハイリスク2型DMにデュラグルチドが有用/Lancet

 心血管疾患の既往または心血管リスク因子を有する2型糖尿病の中年~高齢患者の血糖コントロールにおいて、デュラグルチド(商品名:トルリシティ)皮下注は有用なマネジメントの方法となりうることが、カナダ・マックマスター大学のHertzel C. Gerstein氏らが実施した「REWIND試験」で示された。研究の詳細はLancet誌オンライン版2019年6月10日号に掲載された。デュラグルチドは多くの国で、2型糖尿病患者の高血糖のマネジメントに資するとして承認を得ている、長時間作用型のGLP-1受容体作動薬であり、心血管疾患の既往のある患者において、心血管アウトカムの改善効果が報告されている。

日本人高齢者におけるアルコール摂取と認知症

 岡山大学のYangyang Liu氏らは、日本人高齢者におけるアルコール摂取の量や頻度と認知症発症との関連を評価するため、長期間のフォローアップを行った大規模サンプルデータを用いて検討を行った。Geriatrics & Gerontology International誌オンライン版2019年6月7日号の報告。  本研究は、日本で実施されたレトロスペクティブコホート研究。日本人高齢者5万3,311人を、2008~14年までフォローアップを行った。アルコール摂取の量や頻度は、健康診断質問票を用いて評価した。認知症発症は、介護保険の認知症尺度を用いて評価した。性別によるアルコール摂取のカテゴリー別の認知症発症率の調整ハザード比(aHR)、95%信頼区間(CI)を算出するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。

緑茶摂取と認知症リスクに関するシステマティックレビュー

 認知症への対策は、緊急を要する大きな問題となっている。いくつかの研究において、食事での要因の影響により、認知症が予防できる可能性が示唆されている。サントリーワールドリサーチセンターのSaki Kakutani氏らは、緑茶に焦点を当て、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、軽度認知障害(MCI)、認知障害との関連を調査した観察研究のシステマティックレビューを実施した。Nutrients誌2019年5月24日号の報告。  PubMedより、2018年8月23日までの研究を検索し、お茶と認知機能との関連を調査した文献のリファレンスまたはレビューを調べた。次いで、緑茶の摂取と認知症、アルツハイマー病、MCI、認知障害との関連性を評価するオリジナルデータが、抽出した文献に含まれているかを調査した。

血栓溶解療法は睡眠中の発症例では何時間以内まで有効か?(解説:内山真一郎氏)-1063

EXTENDは、発症後4.5~9.0時間以内か、睡眠の中間時刻から9時間以内の覚醒時に発症していた脳梗塞のうち、自動灌流画像解析装置(RAPID)で救済しうる血流低下部位がある症例において、アルテプラーゼかプラセボを無作為割り付けして投与し、90日後の転帰良好例(改訂ランキン尺度が0または1)の割合を比較した介入試験であった。この試験にはオーストラリアと台湾の10施設ずつと、ニュージーランドとフィンランドの1施設ずつが参加した。

適応拡大に向けた朗報!〜論文を読み解く上で重要な“国民性”〜(解説:西垣和彦氏)-1062

明らかな原因が見当たらない脳梗塞である塞栓源不明脳塞栓症に対する、ダビガトランの再発予防効果を検証する国際共同臨床試験RE-SPECT ESUS試験が発表された。さらに日本脳卒中学会2019で、RE-SPECT ESUS日本人サブグループ解析も発表され、この分野は大変注目されている。脳梗塞は世界各国の死因の上位を占める重篤な疾患である。とくに日本を含めた東アジアでの罹患率が高く、わが国の死因順位第4位が脳血管疾患である。脳梗塞の最も重要な問題点は、脳梗塞後遺症のため介護が必要となる可能性が高いことであり、超高齢社会を迎えるわが国の最重要疾患と位置付けられる。