脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:60

6時間以上経過した脳主幹動脈閉塞患者に対する血管内治療の有効性について、さらに強いエビデンスとなる結果(解説:高梨成彦氏)

本研究は発症から6~24時間経過した主幹動脈閉塞患者に対する経皮的脳血栓回収術についての6試験のデータを対象としたメタアナリシスである。505症例のデータが解析され、主要評価項目である90日後のmRSの改善について血管内治療の有効性が確認され、調整済みオッズ比は2.54と高いものであった。また副次評価項目である90日後の死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率には差はなかった。本試験の意義はサブグループにおいても均一な結果が示されたことで、年齢(<70/70~80/>80)、性別、脳卒中の重症度(NIHSS ≦17/≧18)、閉塞部位(ICA/M1)、ASPECTS(≦7/≧8)、発症形態(眼前発症/wake-up stroke)、いずれの群でも血管内治療の有効性が示された。すでに脳卒中ガイドラインにもあるように、発症から6時間以上経過した患者についての血管内治療は実施されているものの、高齢者や重症患者であっても治療をためらう必要はないということが明確に示された意義は大きい。ただし、軽症群にNIHSS 5点以下の患者は含まれておらず、ASPECTSが低値の群に0~5点は含まれていないことは留意する必要がある。

日本におけるコミュニティレベルの学力と認知症リスク

 コミュニティレベルの学力と認知症リスクとの関連は、あまり知られていない。浜松医科大学の高杉 友氏らは、認知症発症リスクに対し、コミュニティレベルでの低学歴の割合が影響を及ぼすかについて、検討を行った。また、都市部と非都市部における潜在的な関連性の違いについても、併せて検討した。BMC Geriatrics誌2021年11月23日号の報告。  日本老年学的評価研究(JAGES)より、2010~12年にベースラインデータを収集し、6年間のプロスペクティブコホートを実施した研究のデータを分析した。対象は、7県16市町村のコニュニティ346ヵ所の身体的および認知機能的な問題を有していない65歳以上の高齢者5万1,186人(男性:2万3,785人、女性:2万7,401人)。認知症発症率は、日本の介護保険制度から入手したデータを用いて評価した。教育年数を9年以下と10年以上に分類し、個々の学力レベルをコミュニティレベルの独立変数として集計した。共変量は、まず年齢および性別を用い(モデル1)、次いで収入、居住年数、疾患、アルコール、喫煙、社会的孤立、人口密集度を追加した(モデル2)。欠落データに対する対処として、複数の代入を行った。コミュニティおよび個人における2つのレベルでの生存分析を実施し、ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算出した。

正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴

 正常な老化と認知症による認知機能の変化に関してその根底にあるメカニズムを解明するためには、脳ネットワークの空間的関係とそのレジリエンスのメカニズムを理解する必要がある。藤田医科大学の渡辺 宏久氏らは、正常な老化と初期認知症における脳ネットワークの特徴について報告を行った。Frontiers in Aging Neuroscience誌2021年11月22日号の報告。  主な内容は以下のとおり。 ・異種感覚統合(multisensory integration)やデフォルト・モード・ネットワークなどの脳のハブ領域は、ネットワーク内およびネットワーク間の伝達において重要であり、老化の過程においても良好に維持され、これは代謝プロセスにおいても重要な役割を担っている。 ・一方、これらの脳のハブ領域は、アルツハイマー病などの神経変性認知症の病変に影響を及ぼす部位である。 ・聴覚、視覚、感覚運動のネットワークなどに問題が生じた一次情報処理ネットワークは、異種感覚統合ネットワークの過活動や認知症を引き起こす病理学的タンパク質の蓄積につながる可能性がある。

抗ムスカリンOAB治療薬と認知症発症リスク

 過活動膀胱(OAB)治療薬の使用による認知症発症リスクへの影響については、明らかになっていない。カナダ・トロント大学のRano Matta氏らは、抗ムスカリンOAB治療薬の使用と認知症発症リスクとの関連について、β-3アゴニストであるミラベグロンと比較し、検討を行った。European Urology Focus誌オンライン版2021年11月3日号の報告。  カナダ・オンタリオ州でOAB治療薬を使用した患者を対象に、人口ベースのケースコントロール研究を実施した。対象は、過去6~12ヵ月間で抗ムスカリンOAB治療薬またはミラベグロンを使用し、2010~17年に認知症およびアルツハイマー病と診断された66歳以上の患者1万1,392例と年齢および性別がマッチした非認知症患者2万9,881例。人口統計学および健康関連の特性に応じて調整し、認知症のオッズ比(OR)を算出した。

高齢AF患者、リバーロキサバンvs.アピキサバン/JAMA

 65歳以上の心房細動患者に対し、リバーロキサバンはアピキサバンに比べて、主要な虚血性または出血性イベントリスクを有意に増大することが、米国・ヴァンダービルト大学のWayne A. Ray氏らが米国のメディケア加入者約58万例について行った後ろ向きコホート試験の結果、示された。リバーロキサバンとアピキサバンは、心房細動患者の虚血性脳卒中予防のために最も頻繁に処方される経口抗凝固薬だが、有効性の比較については不明であった。JAMA誌2021年12月21日号掲載の報告。

認知症の急速な進行に関する原因調査

 急速進行性認知症(RPD)は、1~2年以内に急速な認知機能低下が認められ認知症を発症する臨床症候群である。RPDの評価に関する進歩は著しく、その有病率は時間とともに変化する可能性がある。ギリシャ・Attikon University HospitalのPetros Stamatelos氏らは、RPD診断の近年の進歩を考慮し、以前の結果と比較したRPD原因となる疾患の頻度を推定した。Alzheimer Disease and Associated Disorders誌2021年10~12月号の報告。  5年間でRPDの疑いによりAttikon University Hospitalに紹介された患者47例を対象に、医療記録をレトロスペクティブに検討した。

片頭痛に対する抗CGRP抗体の有効性と忍容性

 反復性および慢性片頭痛の予防には、いくつかの薬剤が利用可能である。どの治療を、どのタイミングで選択するかを決定することは簡単ではなく、一般的な有効性、忍容性、重篤な有害事象の可能性、併存疾患、コストなどさまざまな因子に基づいて検討される。ベルギー・ブリュッセル自由大学のFenne Vandervorst氏らは、新たに片頭痛予防の選択肢の1つとして加わったカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体に対するモノクローナル抗体の有効性、忍容性について検討を行った。The Journal of Headache and Pain誌2021年10月25日号の報告。

今後25年間の日本における認知症有病率の予測

敦賀市立看護大学の中堀 伸枝氏らは、富山県認知症高齢者実態調査の認知症有病率データと人口予測データを用いて、日本における認知症有病率の将来予測を行った。BMC Geriatrics誌2021年10月26日号の報告。  まず、1985、90、96、2001、14年の富山県認知症高齢者実態調査のデータを用いて、性別・年齢別の認知症推定将来有病率を算出した。次に、2020~45年の47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口に性別年齢を掛け合わせ、合計することで認知症患者数を算出した。認知症の推定将来有病率は、算出された認知症患者数を47都道府県それぞれの65歳以上の推定将来人口で除することで算出した。また、2020~45年の47都道府県それぞれの認知症推定将来有病率は、日本地図上に表示し、4段階で色分けした。

PFO閉鎖術で脳梗塞再発予防効果が得られる患者は?/JAMA

 18~60歳の卵円孔開存(PFO)関連脳梗塞患者において、PFOのデバイス閉鎖による脳梗塞再発リスクの低減効果は、脳梗塞とPFOの因果関係の確率で分類されたグループにより異なることが示された。この分類法は個別の治療意思決定に役立つ可能性があるという。米国・タフツ医療センターのDavid M. Kent氏らが、「Systematic, Collaborative, PFO Closure Evaluation(SCOPE)コンソーシアム」によるメタ解析の結果を報告した。PFOに関連する脳梗塞は、18~60歳の成人における脳梗塞の約10%を占める。PFOのデバイス閉鎖は脳梗塞の再発リスクを減少させるが、どのような治療法が最適かは不明であった。JAMA誌2021年12月14日号掲載の報告。

「頭痛の診療ガイドライン」8年ぶり改訂、ポイントは

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を標的とした新規薬剤の片頭痛予防薬としての相次ぐ承認、2018年の「国際頭痛分類 第3版(ICHD-3)」の発表等、頭痛診療における重要な変化を反映する形で、8年ぶりの改訂となった「頭痛の診療ガイドライン 2021」が10月に刊行された。ガイドライン作成委員会委員長を務めた荒木 信夫氏(よみうりランド慶友病院 委員長)に、改訂のポイントについてインタビューを行った(zoomによるリモート取材)。  本ガイドラインは前回の「慢性頭痛の診療ガイドライン 2013」をもとに改訂が行われているが、二次性頭痛の項目を加え、その記載を大幅に拡充したことから、タイトルは従来の「慢性頭痛」から「頭痛」に変更されている。