神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:104

日本人高齢者における幼少期の社会経済的状況と認知症の主観的症状との関係

 西洋諸国において、小児期の社会経済的な困難と認知症や認知機能低下との関連を示唆するエビデンスが増加している。しかし、非西洋諸国において、この関連性に関する研究は行われていない。東京大学の村山 洋史氏らは、地域社会に暮らす日本人高齢者における小児期の社会経済的な状態(SES)と認知症の主観的な症状との関連を調査し、この関連性が年齢や性別により変動するかを検討した。Journal of Epidemiology誌オンライン版2018年10月20日号の報告。

世界で最も高齢化している日本における認知症の推定コスト

 認知症は世界的に重要な問題となっており、そのコストは、2015年で8,180億USドルと推定されている。そして、世界で最も高齢化の進む日本において、この問題は重要である。しかし、日本における認知症の社会的コストは、あまりよくわかっていない。慶應義塾大学の佐渡 充洋氏らは、社会的視点から認知症のコストを算出するため、検討を行った。PLOS ONE誌2018年11月12日号の報告。  有病率に基づくアプローチを用いて社会的視点からコストの推定を行った。コストを推定するためのパラメータの主なデータソースは、全国データベース、医療の利用には全国の代表的な個人レベルのデータベース、介護給付費等実態調査、長期の公的な介護の利用には個人レベルの2次データに基づく全国調査、非公式の介護の費用には同介護時間の調査結果であった。得られたパラメータより認知症コストを推定するために、確率論的モデリングを用いて分析を行った。また、将来のコスト予測も行った。

ローランドてんかんに対するレベチラセタムと従来薬の有効性比較

 レべチラセタム(LEV)はカルバマゼピン(CBZ)やバルプロ酸ナトリウム(VPA)と比較して、良性ローランドてんかんにおけるローランド発射(RD)を抑制する効果が優れていることが、山梨大学の金村 英秋氏らの研究によって明らかになった。Seizure誌2018年11月号に掲載。  中心・側頭部に棘波をもつ良性ローランドてんかんは、小児の特発性部分てんかんの1つである。本研究では、小児における非定型進化を予防するためのLEVの有効性を、従来の抗てんかん薬(AED)と比較するために、小児の良性ローランドてんかんにおける発作間脳波(EEG)上のRDの低減における、従来薬であるCBZおよびVPAとLEVの有効性を比較した。

長期ベンゾジアゼピン使用者における認知症リスク~メタ解析

 ベンゾジアゼピン(BDZ)と認知症リスクに関する報告には、相反するエビデンスが存在する。中国・四川大学のQian He氏らは、BDZの長期使用と認知症リスクとの関連を調査するためにメタ解析を行った。Journal of clinical neurology誌オンライン版2018年10月26日号の報告。  2017年9月までの関連文献をPubMed、Embaseデータベースよりシステマティックに検索を行った。文献検索は、BDZの長期使用と認知症リスクとの関連を分析した観察研究にフォーカスした。プールされた率比(RR)および95%信頼区間(CI)は、ランダム効果モデルを用いて評価した。結果のロバスト性は、サブグループ解析および感度分析で確認した。

ベンゾジアゼピン使用と認知症リスクとの関連性が示唆された

 ベンゾジアゼピンの使用は、メンタルに関連する混乱や遅延を潜在的に引き起こす可能性がある。これらのよく知られているベンゾジアゼピンの副作用は、認知症と診断されるリスクの増加と関連しているといわれている。韓国・成均館大学校のKyung-Rock Park氏らは、ベンゾジアゼピンと認知症との関連について評価を行った。International Journal of Clinical Pharmacy誌オンライン版2018年10月26日号の報告。  2002~13年の韓国医療データベースよりデータを抽出した。ベンゾジアゼピン使用が認知症リスク増加と関連しているかを調査するため、Sequence symmetry analysis(SSA)を行った。新規のベンゾジアゼピン使用者と新規に認知症と診断された患者(ICD-10:F00~03、G30、G318)を定義した。ベンゾジアゼピンは、作用時間に基づき長時間作用型と短時間作用型の2群に分類した。結果の非因果的解釈の可能性を除外するため、抗うつ薬、オピオイド鎮痛薬、スタチンの使用者を活性比較者とした。関連性を同定するため、時間傾向調整順序比(ASR)と95%信頼区間(CI)を用いた。主要アウトカム指標は、ASRとした。

男性医師と女性医師によるコリンエステラーゼ阻害薬の処方実態比較

 男性医師と女性医師では、患者をケアする方法にわずかではあるが重大な違いがあるといわれており、女性医師は、ベストプラクティスの推奨事項を遵守する傾向が強いとするエビデンスもある。カナダ・トロント大学のPaula A. Rochon氏らは、認知症のマネジメントにおいて推奨用量より低用量でのコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)による薬物療法を開始することで、男性医師と女性医師で処方実態に違いがあるかを検討した。PLOS ONE誌2018年10月22日号の報告。

在宅医療で使う漢方薬の役割と活用法

 2018年10月24日、漢方医学フォーラムは、都内で第138回目のプレスセミナーを開催した。当日は、在宅医療における漢方薬の役割について講演が行われた。  講演では、北田 志郎氏(大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 准教授/あおぞら診療所 副院長)を講師に迎え、「地域包括ケアシステムと漢方~“暮らしのなかでいのちを支える” 在宅医療で発揮される漢方薬の役割~」をテーマに講演が行われた。

アルツハイマー病治療薬メマンチンの有効性と安全性

 現在、アルツハイマー病に対する薬物治療には5つの選択肢が存在する。コリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンによる治療、メマンチン治療およびメマンチンとコリンエステラーゼ阻害薬の併用療法である。最良の治療方法の選択は、ランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタ解析によって得られたエビデンスに基づいている。藤田医科大学の松永 慎史氏らは、アルツハイマー病の薬物治療における安全性と有効性に関するメタ解析のエビデンスを用いて、これらの治療法のリスクとベネフィットの分析を行った。Expert Opinion on Drug Safety誌2018年10月号の報告。

治療困難な反復性片頭痛、erenumabは選択肢に/Lancet

 2~4種の予防的片頭痛治療が奏効しない/忍容性がない治療困難な反復性片頭痛(episodic migraine)に対し、新たな抗CGRP受容体抗体erenumabの140mg投与は、プラセボと比較し片頭痛を減らす効果が認められ、忍容性および安全性は同等であることが示された。ドイツ・Charite Universitatsmedizin BerlinのUwe Reuter氏らが、第III相の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「LIBERTY試験」の結果を報告した。片頭痛持ちの患者のうち、経口の予防的治療が奏効しない/忍容性がないという人はかなりの割合で存在する。先行研究で、erenumabは片頭痛への予防的治療の有効性が認められており(反復性片頭痛、慢性片頭痛[Tepper S, et al. Lancet Neurol. 2017;16:425-434.]ともに)、研究グループは、治療困難な片頭痛へのerenumabの有効性と忍容性を検討した。Lancet誌オンライン版2018年10月22日号掲載の報告。

抗肥満薬であるlorcaserinは日本でも使用できるのだろうか(解説:吉岡成人氏)-942

肥満治療の基本は、食事療法と運動療法であり、非薬物療法を3ヵ月をめどに行ったうえでも、改善が認められない場合に薬物治療が考慮される。しかし、日本で使用が可能な薬剤はマジンドールしかない。米国では、膵リパーゼ阻害薬で腸管からの脂肪吸収を抑制する作用を持ったorlistatも発売されているが、日本での発売の予定はない。脳内で摂食亢進や快楽・報酬系に作動するカンナビノイド受容体の拮抗薬であるrimonabantは、自殺企図を含む重篤な精神疾患を引き起こすことから2008年に開発が中止となっている。また、ノルアドレナリンとセロトニンの再吸収取り込み阻害薬であるsibutramineは、血圧の上昇や心筋梗塞、脳卒中のリスク増加のため2010年に欧米の市場から撤退している。このように、抗肥満薬は開発・中断を繰り返しており、臨床の現場で応用されることがきわめて難しい薬剤となっている。