腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:44

心筋梗塞のリスクはCKDが糖尿病よりも高い、約127万人のコホート試験

 心筋梗塞による入院のリスクは、心筋梗塞の既往歴がある場合に最も高いが、既往歴がない場合はCKDが糖尿病よりも高リスクであることが、カナダ・Alberta大学のMarcello Tonelli氏らAlberta Kidney Disease Network(AKDN)の検討で示された。糖尿病の冠動脈イベントのリスクは心筋梗塞の既往歴に匹敵すると考えられている。慢性腎臓病(CKD)も冠動脈イベントのリスクが高い(とくに蛋白尿がみられる場合)とされるが、CKDによる冠動脈イベントのリスク等価性を糖尿病と比較した試験はなかったという。Lancet誌2012年9月1日号(オンライン版2012年6月19日号)掲載の報告。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(13)〕 心房細動診療のピットフォール―心房細動で出血死させないために。CKDに配慮したリスク評価を!

 非弁膜症性心房細動(NVAF)に伴う心原性塞栓による脳梗塞は、中大脳動脈などの主要動脈の急性閉塞による発症が多いため、アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞に比べて梗塞範囲が大きく、救命された場合でも後遺症による著しいADLの低下を招きやすい。周術期の肺血栓塞栓症同様に、予防が重要である。

CKDを有する心房細動患者では脳卒中・全身性血栓塞栓症・出血リスクが高い

 デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院のJonas Bjerring Olesen氏らが13万人強のデンマークナショナルレジストリデータを解析した結果、心房細動患者において、慢性腎臓病(CKD)は、脳卒中、全身性血栓塞栓症、出血のリスクを増大することが明らかにされた。また、CKD患者では、ワルファリン治療、アスピリン治療は出血リスクを増大するが、脳卒中あるいは全身性血栓塞栓症リスクはワルファリン治療によって低下が認められることも報告された。心房細動およびCKDは、脳卒中や全身性血栓塞栓症リスクを増大することが知られている。しかし、これらのリスクや抗血栓治療の影響について、両疾患を有する患者ではこれまで十分に調査されていなかった。NEJM誌2012年8月16日号掲載報告より。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(6)〕 女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

 急性腎盂腎炎の治療は、原因菌に感受性のある抗生物質を10~14日間投与するプロトコールが、本邦で長らく用いられてきた方法であろう。第一選択の薬剤は培養検査の結果が判明するまで、βラクタムあるいはニューキノロンが選択されるが、院内感染症対策部門の意向も取り入れて選ばれることと思う。

 『あめいろぐピックアップ』(第三回)透析をやめるとき

 Medical U of South Carolinaで腎臓内科研修中 サウスキャロライナ医科大学腎臓内科 三枝 孝充(さいぐさ たかみつ) 2012年8月20日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 ※本記事は、MRIC by 医療ガバナンス学会より許可をいただき、同学会のメールマガジンで配信された記事を転載しております。 紹介:「あめいろぐ http://ameilog.com/ 」は米国で働く日本人医療従事者による情報発信ブログポータルサイトです。米国で活躍する様々な専門科の医師やコメディカルが、現場から生き生きとした情報を日々発信しています。このシリーズでは、その中から選りすぐりの記事を皆さまにお届けします。 「透析をやめるとき」 余命6ヶ月といわれた癌患者に積極的な治療でなく緩和医療(palliative care)をオファーすることに抵抗は少ないと思いますが、余命が同程度と思われるESRD(末期腎不全)患者に透析を提供しないまたは透析をやめることに抵抗を感じる人は多いと思います。

女性の急性腎盂腎炎、抗菌薬の7日間投与が有効

 急性腎盂腎炎の女性患者に対するシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンなど)の7日間投与は有効かつ安全な治療法であることが、スウェーデン・Sahlgrenska大学病院のTorsten Sandberg氏らの検討で示された。尿路感染症の最大の原因は腸内細菌の抗菌薬に対する耐性化であり、対策としては投与期間の短縮など、抗菌薬の消費量の抑制が重要だという。急性腎盂腎炎は成人女性に高頻度にみられる感染症だが、その治療法に関する対照比較試験は少なく、抗菌薬治療の至適投与期間は確立されていない。Lancet誌2012年8月4日号(オンライン版2012年6月21日号)掲載の報告。

妊娠高血圧腎症の診断、スポット尿による尿蛋白/クレアチニン比が有用

妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦では、スポット尿を用いた尿蛋白/クレアチニン比の評価が、重度蛋白尿の検査法として有用なことが、英国・バーミンガム大学のR K Morris氏らの検討で示された。妊娠高血圧腎症は多系統的血管内皮障害(multisystem endothelial disease)で、糸球体血管内皮症を来し、重症化すると腎機能障害や腎不全に至る。妊婦および周産期の合併症や死亡の主な原因で、妊婦の2~8%が罹患するという。スポット尿検体を用いた尿蛋白/クレアチニン比は24時間尿蛋白の予測値とよく相関し、妊娠高血圧腎症の診断法として有望視されている。BMJ誌2012年7月21日号(オンライン版2012年7月9日号)掲載の報告。

CKD診断のためのGFR推定式、クレアチニン+シスタチンCが有用である可能性

慢性腎臓病(CKD)の診断指標である糸球体ろ過量(GFR)の推定について、血清クレアチニンまたはシスタチンCいずれか単独マーカーの値に基づく推定よりも、両者を組み合わせての推定が優れることが報告された。米国・タフツ医療センターのLesley A. Inker氏らCKD疫学共同研究グループの横断解析の結果で、「CKDの確認検査には複合推定式が有用かもしれない」と結論している。GFRの推定は血清クレアチニンに基づく推定式がルーチンに用いられているが、不正確でCKDの過剰診断につながる可能性が示唆されている。代替マーカーとして登場したのがシスタチンCで、Inker氏らはその有効性を検討するため、シスタチンC単独と、シスタチンCと血清クレアチニンとを組み合わせについて検証した。NEJM誌2012年7月5日号掲載報告より。

CKDが心筋梗塞発症に与える影響は、糖尿病より大きい

糖尿病患者が、心筋梗塞既往者と同等の心血管イベントリスクを有することはよく知られている。一方で、慢性腎臓病(CKD)と糖尿病が、それぞれ心血管イベントリスクに与える影響を比較した検討はこれまでなかった。今回、Tonelli M氏らによりこの検討がなされ、Lancet誌オンライン版2012年6月18日付に報告された。これにより、CKDが心筋梗塞発症に与える影響は糖尿病よりも大きい、という結果が明らかになった。カナダのアルバータ州の約127万人の住民データベースをもとに行われたコホート研究。

腎不全の未治療率、年齢が高いほど高率

腎不全の未治療率は、年齢が高齢になるほど、より若い人に比べて高いことが、カナダ・カルガリー大学のBrenda R. Hemmelgarn氏らによる当地の住民約182万人について行った一般住民対象コホート試験の結果、明らかにされた。eGFR値が15~29mL/min/1.73m2のグループでは、腎不全未治療率は85歳以上が18~44歳の5倍以上だったという。Hemmelgarn氏らは、高齢者の腎不全研究は透析開始に焦点が集まっており、未治療高齢者の疾患負荷について軽視されているのではないかとして、年齢と腎不全治療との関連について検討した。JAMA誌2012年6月20日号掲載より。