腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:25

急性上部消化管出血に対する緊急内視鏡の適切な施行時期は(解説:上村直実氏)-1225

吐血や下血を主訴とする急性上部消化管出血の死亡率および外科的手術を減少するために、発症から24時間以内の緊急内視鏡検査が推奨されている。日本の臨床現場でも緊急内視鏡の施行が早ければ早いほど救命率が増加すると考えられているものの、緊急内視鏡検査をいつでも施行できる診療体制を有する施設は限られていることも事実である。 最近、重篤な急性上部消化管出血症例を対象として緊急内視鏡検査の適正な時期を検証する目的で、消化器科へ紹介された後6時間以内に検査する緊急施行群と6時間から24時間以内の早期施行群に分けたRCTが行われた結果、検査施行時期が生命予後や再出血率に影響しないことがNEJM誌に発表された。

衝撃のISCHEMIA:安定冠動脈疾患に対する血行再建は「不要不急」なのか?(解説:中野明彦氏)-1224

安定型狭心症に対する治療戦略は1970年代頃からいろいろな構図で比較されてきた。最初はCABG vs.薬物療法、1990年代はPCI(BMS) vs.CABG、そして2000年代後半からPCI(+OMT)vs.OMT(最適な薬物療法)の議論が展開された。PCI vs.OMTの代表格がCOURAGE試験(n=2,287)1)やBARI-2D(n=2,368)、FAME2試験(n=888)である。とりわけ米国・カナダで行われ、総死亡+非致死性心筋梗塞に有意差なしの結果を伝えたCOURAGE試験のインパクトは大きく、米国ではその後の適性基準見直し(AUC:appropriate use criteria)や待機的PCI数減少につながった。一方COURAGEはBMS時代のデータであり、症例選択基準やPCI精度にバイアスが多いなど議論が沸騰、結局「虚血領域が広ければPCIが勝る」とのサブ解析2)が出て何となく収束した。しかしこの仮説は後に否定され3)、本試験15年後のfollow-up4)も結論に変化はなかった。

今、私たちは冠動脈疾患治療の分岐点にいる(解説:野間重孝氏)-1219

至適内科治療(optimal medical therapy:OMT)という言葉がある。虚血性心疾患は典型的な複合因子的疾患であり、単に血圧を下げるとか禁煙してもらうというだけでは発症予防(1次予防)もその進展の予防(2次予防)もできない。主立った因子をすべてコントロール、それもエビデンスのある薬剤・方法を用いて複合的にコントロールすることによって虚血性心疾患の1次・2次予防をしようという考え方である。90年代の半ば過ぎに確立され、その後種々の改良・改変を加えられたが、その大体の考え方は変わっていない。そこに至るには危険因子の徹底的な洗い出し、それに対する対処とそのエビデンスの蓄積があったことは言うまでもない。世紀をまたぐころにはOMTは虚血性心疾患治療の基礎として確立されたばかりでなく、血行再建術の代替えにもなりうるとも考えられるまでになった。心筋梗塞、不安定狭心症などのいわゆる急性冠症候群(ACS)では血行再建術が絶対適応となっているが、安定狭心症に対しては血行再建術と同程度の治療効果が得られることが期待されるまでになった。この方面での治験のエンドポイントは死亡+非致死的心筋梗塞の発生に置かれることが多いが、いろいろな比較試験でコントロールにされたOMT群の発症率はいずれにおいても20%を切る結果(18%~19%程度)が示されている。

進行性腎障害伴う安定冠動脈疾患に侵襲的戦略は有効か/NEJM

 進行性腎障害を伴う安定冠動脈疾患で、中等度~重度の虚血を呈する患者の治療において、侵襲的戦略は保存的戦略に比べ、死亡および非致死的心筋梗塞のリスクを低減しないことが、米国・ニューヨーク大学のSripal Bangalore氏らの検討(ISCHEMIA-CKD試験)で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2020年3月30日号に掲載された。安定冠動脈疾患患者における血行再建術の効果を評価する臨床試験では、通常、進行性の慢性腎臓病患者は除外される。また、1992年の腎移植候補の患者26例の無作為化試験では、血行再建術は薬物療法に比べ心血管死および心筋梗塞のリスクが低いと報告されているが、この30年間で、これらの治療法は劇的に進歩しており、あらためて侵襲的戦略の有益性の検証が求められている。

ISCHEMIA試験、狭心症関連の健康状態の比較/NEJM

 中等度〜重度の虚血を認める安定虚血性心疾患を有する進行性慢性腎臓病(CKD)患者において、初期の侵襲的治療戦略(血管造影+血行再建術+ガイドラインに基づく薬物療法)は、保存的治療戦略(ガイドラインに基づく薬物療法)と比較し、狭心症関連の健康状態に対して実質的または持続的な有益性を示さなかった。米国・ミズーリ大学カンザスシティー校のJohn A. Spertus氏らが、「ISCHEMIA-CKD試験」の副次目的である狭心症関連の健康状態の評価に関する解析結果を報告した。ISCHEMIA-CKD試験の主要目的である予後(死亡または心筋梗塞)への影響についても、侵襲的治療戦略は保存的治療戦略と比較して、イベントの有意なリスク低下は確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2020年3月30日号掲載の報告。

世界のCKD患者、27年間で3割増/Lancet

 2017年の世界の慢性腎臓病(CKD)の推定有病率は9.1%で、1990年から29.3%増大していたことが明らかにされた。また、同年の全世界のCKDによる推定死亡者数は120万人に上ることも示され、CKDの疾病負荷は、社会人口指数(SDI)五分位のうち低いほうから3つに該当する国に集中しているという。イタリア・Mario Negri研究所のBoris Bikbov氏ら「GBD Chronic Kidney Disease Collaboration」研究グループが、システマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。ヘルスシステムの計画策定には、CKDを注意深く評価する必要があるが、CKDに関する罹患率や死亡率といったデータは乏しく、多くの国で存在すらしていないという。研究グループは、世界的、および地域、国ごとのCKDの疾病負荷の状況、さらには腎機能障害に起因した心血管疾患および痛風の疾病負荷を調べるGlobal Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study 2017を行った。Lancet誌オンライン版2020年2月13日号掲載の報告。

COVID-19、重症肺炎の臨床経過や投与薬剤は?/Lancet

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)関連肺炎の重症例について、臨床経過・転帰などを調査する目的で中国・華中科技大学のXiaobo Yang氏らがレトロスペクティブスタディを実施。その結果、SARS-CoV-2感染症による重症肺炎患者の死亡率の高さが明らかとなった。また、死亡者の生存期間は集中治療室(ICU)入室後1〜2週間以内の可能性があり、併存疾患や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有する高齢者(65歳以上)では死亡リスクの上昇もみられた。Lancet誌オンライン版2020年2月24日号掲載の報告。

長期透析中AF患者へのDOAC、臨床的メリットは

 脳卒中リスク低減のため、心房細動(AF)には直接経口抗凝固薬(DOAC)が推奨されているが、長期間に渡って透析治療を受けている患者は出血リスクが高く、臨床的メリットは不明である。米国・マウントサイナイ・ベスイスラエル病院の工野 俊樹氏らは、長期透析中のAF患者に対するDOACの有効性および安全性についてネットワークメタ解析の手法を用いて調査を行った。Journal of American College of Cardiology誌オンライン版2020年1月28日号に掲載。

ビタミンDとオメガ3脂肪酸は糖尿病性腎臓病の進展を抑制しない(解説:住谷哲氏)-1183

ビタミンDまたはオメガ3脂肪酸が健常人の心血管イベントやがんの発症を抑制するか否かを検討した大規模無作為化試験VITALの結果はすでに報告されているが、残念ながらビタミンDおよびオメガ3脂肪酸の両者ともに心血管イベントもがんも抑制しなかった。本試験はこのVITALに組み込まれた糖尿病患者を対象としたsupplementary trial VITAL-DKDであり、主要評価項目は治療開始5年後のeGFRの低下である。この試験の背景には動物実験でビタミンDの投与が(1)レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を抑制する、(2)腎臓での炎症および線維化を抑制する、(3)ポドサイトのアポトーシスを抑制する、(4)アルブミン尿および糸球体硬化の程度を軽減すること、ならびにオメガ3脂肪酸が抗炎症作用および抗血栓作用を有することがある。

尿酸値を本気で下げる方法とは?

 高尿酸血症の治療には食生活を中心とした生活習慣改善が欠かせないが、無症状の場合も多く、継続的に取り組むことは容易ではない。患者を“本気にさせる”尿酸値を下げる方法や、乳酸菌による尿酸値の上昇抑制効果とは? 2019年11月29日、「疾病リスクマーカーとして注目すべき尿酸値に関する新知見」と題したメディアセミナー(主催:明治)が開催された。久留 一郎氏(鳥取大学大学院医学系研究科)、野口 緑氏(大阪大学大学院医学系研究科)、藏城 雅文氏(大阪市立大学大学院医学研究科)が登壇し、高尿酸値と疾病リスクの関係や患者指導のポイント、生活習慣改善にまつわる新旧のエビデンスについて講演した。