腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

慢性腎臓病の入院抑制を意図した電子記録+診療推進者介入の効果は証明されず(解説:浦信行氏)

慢性腎臓病(CKD)、2型糖尿病、高血圧は腎不全に至る3大疾患であるが、これらを合併した症例に1年間の電子記録+診療推進者介入が入院を減少させるかを、非盲検クラスター無作為化試験で検討した成績がNEJM誌に報告された。その結果は4月17日公開のジャーナル四天王に詳述されているが、主要アウトカムと副次アウトカムのいずれも通常ケア群に対して有意な効果を示さなかった。結果は1年という比較的短期間の検討であることが影響した可能性は否定できない。加えて腎機能障害の程度もeGFRで49mL/min程度、HbA1cで7.5%前後、血圧は133/73mmHg前後といずれも比較的コントロールされており、また使用薬剤もRA系阻害薬が68%ほどの症例に使用されており、通常ケア群においても良好な治療がなされていることで差がつきにくかった要素もあると思われる。関与した診療推進者は看護師あるいは薬剤師であった点も介入の限界をうかがわせる。腎機能障害に対する運動療法の効果や栄養摂取バランスの効果も注目されるようになった昨今、介入者がリハビリ職や栄養士であればどうであったか。フレイルやサルコペニア、栄養バランスに介入する試みであれば、違った結果を見られたかもしれない。BMIは33と肥満者が多いが、サルコペニア肥満も機序は異なるが心血管疾患の有意なリスクである。

新型のリブレ2はスキャン不要で1分ごとに測定/アボットジャパン

 アボットジャパンは、3月28日に糖尿病管理のための持続グルコース測定器「FreeStyleリブレ2」の新発売に合わせて、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、本機の新しい機能や特徴の説明、血糖変動の可視化がいかに重要か糖尿病専門医の講演、トークセッションなどが行われた。  FreeStyleリブレは、持続グルコース測定技術を用いたデバイスで、60ヵ国以上、550万人以上の人々に使用されている。  本機は上腕の後ろ側に専用センサーを装着し、スマートフォンあるいは専用リーダーをセンサーにかざすと、その画面に測定値が表示されるもの。また、衣服の上からも読み取ることができ、1つのセンサーで最長14日間24時間グルコースプロファイルを記録することができる。

診療ファシリテーターの介入、CKDや高血圧患者の入院は減少せず/NEJM

 腎機能障害をもたらす3疾患(慢性腎臓病[CKD]、2型糖尿病、高血圧)を有する患者のケアに対し、電子健康記録(electronic health record:EHR)に基づくアルゴリズムと、医療従事者を支援する診療ファシリテーターを導入する介入は、通常ケアと比較して、1年の時点での入院の減少に至らないことが、米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのMiguel A. Vazquez氏らが実施した「ICD-Pieces試験」で示された。研究の詳細は、NEJM誌2024年4月4日号に掲載された。

亜鉛欠乏症、日本人の特徴が明らかに

 亜鉛欠乏症は、免疫機能の低下、味覚障害、嗅覚障害、肺炎、成長遅延、視覚障害、皮膚障害などに影響を及ぼすため、肝疾患や慢性腎臓病などをはじめとするさまざまな疾患を管理するうえで、血清亜鉛濃度の評価が重要となる。今回、横川 博英氏(順天堂大学医学部総合診療科学講座 先任准教授)らが日本人患者の特徴と亜鉛欠乏との相関関係を調査する大規模観察研究を行った。その結果、日本人の亜鉛欠乏患者の特徴は、男性、入院患者、高齢者で、関連する病態として呼吸器感染症や慢性腎臓病などが示唆された。Scientific reports誌2024年2月2日号掲載の報告。

小林製薬サプリ摂取者、経過観察で注意すべき検査項目・フォローの目安

 小林製薬が販売する機能性表示食品のサプリメント『紅麹コレステヘルプ(以下、サプリ)』による腎機能障害の発生が明らかとなってから約2週間が経過した。先生の下にも本サプリに関する相談が寄せられているだろうか。日本腎臓学会が独自で行った本サプリと腎障害の関連について調査したアンケートの中間報告から、少しずつサプリ摂取患者の臨床像が明らかになってきている。

CKDへの適応が追加されたエンパグリフロジンへの期待/ベーリンガーインゲルハイム・リリー

 SGLT2阻害薬エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)に、2024年2月、慢性腎臓病(CKD)の適応が追加された。この適応追加に関連して日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、プレスセミナーを共同開催した。セミナーでは、CKDの概要と最新治療、エンパグリフロジンのCKDに対するEMPA-KIDNEY試験の結果などについて講演が行われた。  はじめに「慢性腎臓病のアンメットニーズと最新治療」をテーマに岡田 浩一氏(埼玉医科大学医学部腎臓内科 教授)が講演を行った。  腎炎、糖尿病、高血圧、加齢など腎疾患の原因はさまざまあるが、終末期では末期腎不全となり透析へと進展する。この腎臓疾患の原因となる病気の発症から終末期までを含めてCKDとするが、CKDの診療には次の定義がある。

低所得者、腎機能低下・透析開始リスクが1.7倍に/京都大学

 これまでの研究により、慢性腎臓病(CKD)の発症や進行には社会経済要因(所得、教育歴、居住地など)との関連がみられ、社会経済的地位の低い人ほどリスクが高いことが示されてきた。しかし、皆保険制度のある日本での状況はわかっていなかった。  京都大学の石村 奈々氏らは全国健康保険協会(協会けんぽ)の生活習慣病予防健診および医療レセプトのデータ(約560万人分)を用いて、収入と腎機能低下の関連を調査した。本研究の結果は、JAMA Health Forum誌オンライン版2024年3月1日号に掲載された。

シスプラチン投与後の重篤AKI、簡易リスクスコアを開発/BMJ

 シスプラチン静脈内投与後の重篤な急性腎障害(CP-AKI)を予測する、新たなリスクスコアが開発された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShruti Gupta氏らによる検討で、投与患者から容易に取得できる9つの共変量を用いた簡易リスクスコアが、従来モデルと比べて、死亡と強く関連する重篤なCP-AKIのリスクを高精度に予測可能であることが検証できたという。BMJ誌2024年3月27日号掲載の報告。  研究グループは、全米6ヵ所の主要ながんセンターを通じて、2006~22年に初回シスプラチン静脈内投与を受けた18歳以上の成人患者を対象に、重篤なCP-AKI発症に関する予測モデルの開発とその評価を行った。

日本人中年男性の飲酒量と糸球体過剰濾過の関係~関西ヘルスケアスタディ

 糸球体濾過量(GFR)は低値だけでなく、その数値が著しく高い糸球体過剰濾過についてもその後の腎機能低下や心血管疾患との関連が報告されている。大阪公立大学の柴田 幹子氏らは、健康な中年男性における飲酒パターンと糸球体過剰濾過リスクとの関連を評価した前向きコホート研究の結果を、Journal of Epidemiology誌2024年3月5日号に報告した。  本研究では、腎機能が正常で蛋白尿や糖尿病がなく、登録時に降圧薬使用のない日本人中年(40~55歳)男性8,640人を前向きに6年間追跡調査。飲酒量に関するデータはアンケートによって収集され、週当たりの飲酒頻度(1~3日、4~7日)および1日当たりの飲酒量(エタノール量0.1~23.0g、23.1~46.0g、46.1~69.0g、≧69.1g)で層別化された。糸球体過剰濾過は推定糸球体濾過量(eGFR)≧117mL/min/1.73m2と定義され、この値はコホート全体における上位2.5thパーセンタイル値に相当した。

小林製薬のサプリ問題、日本腎臓学会がアンケート中間報告

 小林製薬が製造販売する『紅麹コレステヘルプ』摂取者の腎障害を含む健康被害の報告が相次いでいる―。これを受け、日本腎臓学会は3月29日より学会員を対象とした「紅麹コレステヘルプに関連した腎障害に関する調査研究」アンケートを開始。中間報告として、3月31日19時時点で47例の報告が寄せられ、本アンケートでは死亡例はなかったことを明らかにした。