進行期CKDにRA系阻害薬は有益か?―STOP ACEi試験が教えてくれた―(解説:石上友章氏)
CKD診療は、心血管イベント抑制と腎保護を両立させることを目標としている。RA系阻害薬は、CKD診療の標準治療の1つである。一方で、内因性のレニン・アンジオテンシン系には、腎血行動態の恒常性を保つ作用があり、RA系阻害薬の使用により、血清クレアチニンが上昇し、推定GFRが低下することが知られている。こうした変化は、腎血行動態上の変化であって、機能的であり、一過性の変化であることから、必ずしも有害ではないのではないかと許容されてきた。本邦の高血圧診療ガイドラインであるJSH2014においても、「RA系阻害薬は全身血圧を降下させるとともに、輸出細動脈を拡張させて糸球体高血圧/糸球体過剰濾過を是正するため、GFRが低下する場合がある。しかし、この低下は腎組織障害の進展を示すものではなく、投与を中止すればGFRが元の値に戻ることからも機能的変化である」(JSH2014, p.71.)とある。一方で、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学校のSchmidt M氏らが、RAS阻害薬(ACE阻害薬、ARB)の服用を開始した12万例超について行ったコホート試験の結果は、こうした軽微なCrの上昇・推定GFRの低下が、必ずしも無害ではないことを示している(Schmidt M, et al. BMJ. 2017;356:j791.PMID: 28279964)。