内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:160

日本人は肥満が重症コロナ転帰不良のリスク因子でない?

 アジア人の肥満は、人工呼吸器を要する重症新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者において、転帰不良のリスク因子ではないことを示唆するデータが、国内多施設共同研究の結果として報告された。東京医科大学病院救命救急センターの下山京一郎氏らによる論文が、「Scientific Reports」に7月24日掲載された。  COVID-19パンデミックの比較的初期の段階で、肥満が重症化リスク因子の一つであると報告された。しかし重症化して人工呼吸器を要した患者において、肥満が予後に影響を与えるのかは未解明であった。また、アジア人においては大規模なコホート研究がされておらず、知見がより少ない。これを背景として下山氏らは、国内のCOVID-19治療に関するレジストリである「J-RECOVER」のデータを用いた過去起点コホート研究により、ICUに収容され人工呼吸器を要した患者の転帰に肥満が関与しているか否かを検討した。J-RECOVERは国内66施設が参加して実施され、2020年1~9月に退院したCOVID-19症例4,700件の診療報酬包括評価(DPC)データや治療転帰などの情報が登録されている。

新型コロナBA.2.86「ピロラ」、きわめて高い免疫回避能/東大医科研

 2023年9月時点、新型コロナウイルスの変異株は、オミクロン株XBB系統のEG.5.1が世界的に優勢となっている。それと並行して、XBB系統とは異なり、BA.2の子孫株のBA.2.86(通称:ピロラ)が8月中旬に世界の複数の地域で検出され、9月下旬時点で、主に南アフリカにおいて拡大し、英国やヨーロッパでも広がりつつある。BA.2.86は、BA.2と比較して、スパイクタンパク質に30ヵ所以上の変異が認められる。世界保健機構(WHO)は、BA.2.86を「監視下の変異株(VUM)」に指定した。東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らの研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、BA.2.86の流行拡大のリスク、ワクチンやモノクローナル抗体薬の効果を検証し、その結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2023年9月18日号に掲載された。

豆乳の摂取と認知症リスク低下との関連が認められた

 これまでの研究において、ミルク(milk)の摂取は認知機能低下を予防可能であるかが調査されてきた。しかし、その結果は一貫していない。その理由として、これまで研究の多くは、ミルクそれぞれの役割を無視していることが重要なポイントであると考えられる。そこで、中国・中山大学のZhenhong Deng氏らは、各種ミルクの摂取と認知症リスクとの関連を調査した。その結果、豆乳(soy milk)の摂取と認知症(とくに非血管性認知症)リスク低下との関連が認められた。Clinical Nutrition誌オンライン版2023年8月31日号の報告。

夜型生活は糖尿病リスクを高める

 生活パターンが夜型の女性は、糖尿病になりやすいことを示すデータが報告された。生活習慣関連リスク因子の影響を調整しても、有意な差が認められるという。米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のSina Kianersi氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月12日掲載された。  この研究は、米国で行われている看護師対象研究(Nurses’ Health Study II)のデータを用いて行われた。2009年時点で、がん、心血管疾患、糖尿病の既往歴のなかった45~62歳の女性看護師6万3,676人を2017年まで追跡。アンケートで把握したクロノタイプは、35%が朝型、11%が夜型で、その他は朝型でも夜型でもないと判定されていた。

フルチカゾン、コロナ軽~中等度の症状回復に効果なし/NEJM

 軽症~中等症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者をフルチカゾンフランカルボン酸エステル吸入薬で14日間治療しても、プラセボと比較して回復までの期間は短縮しないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照プラットフォーム試験「ACTIV-6試験」の結果で示された。米国・ミネソタ大学のDavid R. Boulware氏らが報告した。軽症~中等症のCOVID-19外来患者において、症状消失までの期間短縮あるいは入院または死亡回避への吸入グルココルチコイドの有効性は不明であった。NEJM誌2023年9月21日号掲載の報告。

労働者の不眠症に対し認知行動療法は有効か?~メタ解析

 不眠症に対する認知行動療法(CBT-I)は、第1選択の治療として推奨されているが、労働者の不眠症に対する有効性は、よくわかっていない。東京医科大学の高野 裕太氏らは、労働者の不眠症状のマネジメントにおけるCBT-Iの有効性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Sleep Medicine Reviews誌オンライン版2023年8月22日号の報告。  3つの電子データベース(PubMed、PsycINFO、Embase)より文献検索を行った。  主な結果は以下のとおり。 ・21件の研究をメタ解析に含めた。 ・全体としてCBT-Iは、対照群と比較し、不眠症状の有意な改善が認められた。

過去30年で50歳未満のがん患者が大幅に増加

 50歳未満のがん患者が世界的に急増しているとの研究結果が報告された。過去30年間で、この年齢層の新規がん患者が世界で79%増加しており、また、若年発症のがんによる死亡者数も28.5%増加したことが明らかになったという。英エディンバラ大学のXue Li氏らによるこの研究の詳細は、「BMJ Oncology」に9月5日掲載された。  研究グループによると、がんは高齢者に多い疾患であるが、1990年代以降、世界の多くの地域で50歳未満のがん患者の数が増加していることが複数の研究で報告されているという。Li氏らは、2019年の世界の疾病負担(Global Burden of Disease;GBD)研究のデータを用いて、若年発症のがんの世界的な疾病負担について検討した。GBD 2019から、204の国と地域における14〜49歳の人での29種類のがんの罹患率や死亡率、障害調整生存年(DALY)、リスク因子に関するデータを抽出し、1990年から2019年の間にこれらがどのように変化したかを推定した。

難治性慢性咳嗽に対するゲーファピキサント、9試験をメタ解析/JAMA

 選択的P2X3受容体拮抗薬ゲーファピキサント45mgの1日2回経口投与は、プラセボと比較し咳嗽頻度、咳嗽重症度および咳嗽特異的QOLを改善するもののその効果は小さい可能性が高く、一方で有害事象、とくに味覚に関連する有害事象のリスクが高いことが、カナダ・マクマスター大学のElena Kum氏らによるシステマティック・レビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。ゲーファピキサントは、難治性または原因不明の慢性咳嗽に対する初の治療薬として開発され、日本およびスイスでは承認されているが、米国、欧州、カナダなどでは規制当局の審査中である。JAMA誌2023年9月11日号掲載の報告。

動かないと認知症になる?―人類史の視点から(解説:岡村毅氏)

いわゆる「座位行動」の研究である。座位行動とは、座ることに代表されるエネルギー消費量が1.5メッツ以下の行動を指すもので、実際には座っているとは限らない。デスクに座ってコンピュータで作業をする、ソファでだらだらテレビを見る、床に寝転がって本を読む、などはすべて該当する。厚生労働省によると、健康によいとされる3メッツ以上の中高強度身体活動は、1日の起きている時間のうち、わずか3~8%程度だという。一方で座位行動は起きている時間のうちの6割近くを占めるという(引用)。

COVID-19罹患後に高血圧リスク上昇の懸念

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患後の人は、高血圧の新規発症リスクが高いことを示唆するデータが報告された。そのリスクの程度は、インフルエンザ感染後に認められる高血圧発症リスクよりも高いという。米アルバート・アインシュタイン医科大学モンテフィオーレ医療センターのTim Duong氏らの研究によるもので、詳細は「Hypertension」に8月21日掲載された。  高血圧患者はCOVID-19罹患時の重症化リスクが高い傾向のあることが知られているが、その反対にCOVID-19罹患が高血圧発症リスクを押し上げるのか否かは、従来明らかでなかった。論文の上席著者であるDuong氏によると、「COVID-19罹患後に高血圧リスクが上昇することを示したのは、恐らく本研究が初めて」という。