消化器科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:30

働き盛りに発症が多いIBDには社会の理解が必要/ヤンセン

 ヤンセンファーマは、5月19日の「世界IBD(炎症性腸疾患)デー」に合わせIBD患者の就労上の課題、その解決に向けた取り組みの啓発にメディアセミナーを開催した。  IBDは小腸や大腸の粘膜に慢性炎症や潰瘍を引き起こす国の指定難病で、現在国内には患者が約29万人いると推定される。発症年齢のピークは男女ともに10代後半~30代前半で、治療と仕事の両立が患者にとっては課題となる。  メディアセミナーでは、専門医による治療と仕事の両立での課題、患者視点による就労上の問題や患者アンケ―トの結果、ヤンセンファーマが推進する「IBDはたらくプロジェクト」で行なったIBD患者の就労に関する調査結果などが講演された。

PPIとH2ブロッカーで頭痛リスク上昇か

 胸焼けを抑えるための薬を服用している人は、服用していない人に比べて片頭痛やその他の重度の頭痛のリスクが高い可能性のあることが、新たな研究で示唆された。このようなリスク上昇は、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やH2受容体拮抗薬(H2ブロッカー)、制酸薬など、検討した全ての種類の胃酸分泌抑制薬で認められたという。米メリーランド大学栄養学・食品科学部門のMargaret Slavin氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に4月24日掲載された。  Slavin氏は、「胃酸分泌抑制薬は幅広い用途で使用されている。この薬剤と片頭痛や重度の頭痛との潜在的な関連を考慮すると、今回の研究結果はさらなる調査実施の必要性を示したものだと言えるだろう」と述べる。同氏はさらに、「胃酸分泌抑制薬に関しては、しばしば過剰処方が指摘されている。また、PPIの長期使用により認知症リスクなど他のリスクが上昇する可能性を示唆する新たな研究結果も報告されている」と付け加えている。

Grade1のILD回復後のT-DXdによる再治療、7割弱でILD再発なし/ESMO BREAST 2024

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)によるがん治療におけるGrade1の間質性肺疾患(ILD)発症後、回復および適切な管理の実施後であれば、T-DXd再投与が有用な可能性が示唆された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S.Rugo氏が乳がん、肺がん、胃がんなど9つの臨床試験の後ろ向きプール解析結果を欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2024、5月15~17日)で報告した。T-DXdによる再治療を受けた患者の約69%は減量しておらず、約67%はILDの再発がなかった。また約18%は1年超再治療を継続していた。

ゾルベツキシマブ併用化学療法への適切な制吐薬の対応/日本癌治療学会

 5月22日に薬価収載された「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を適応症とする抗Claudin18.2抗体薬ゾルベツキシマブ。本薬はCLDN18.2陽性(免疫染色にて75%以上のがん細胞において発現が2+以上)の治癒切除不能な進行・再発の胃がんの治療成績の向上が期待される。その一方で、臨床試験の段階で催吐性が高いことも報告されていた。  この背景を踏まえ、今回、制吐薬適正使用ガイドライン改訂ワーキンググループの青儀 健二郎氏(同 委員長)らは、ゾルベツキシマブの導入に際して日常診療において適切な制吐療法を遅滞なく行うことができるよう、『HER2陰性CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対するゾルベツキシマブ併用一次化学療法における制吐療法』に関する速報を日本癌治療学会のホームページに公開した。

がん診療に携わるすべての人のレベルアップ目指しセミナー開催/TCOG

 東京がん化学療法研究会(TCOG)は、第24回臨床腫瘍夏期セミナーをオンラインで開催する。  同セミナーは、がん診療に携わる医師、薬剤師、看護師、臨床研究関係者、製薬会社、CROなどを対象に、治療の最新情報、臨床研究論文を理解するための医学統計などさまざまな悪性腫瘍の基礎知識から最新情報まで幅広く習得できるよう企画している。

1回の肉抜きの食事が肝硬変患者のアンモニア濃度を抑制

 進行した肝硬変では、血液中のアンモニア濃度が危険なレベルまで上昇することがあるが、1食でも肉を抜くことで、そのリスクを抑制できる可能性が新たな研究で示された。論文の上席著者で、米バージニアコモンウェルス大学の消化器内科医であるJasmohan Bajaj氏らによるこの研究結果は、「Clinical and Translational Gastroenterology」に5月2日掲載された。Bajaj氏は、「たまに食事を肉なしにするというようなちょっとした食生活の変化でも、肝硬変患者の体内で有害な血液中のアンモニア濃度が下がり、肝臓に良い影響がもたらされる可能性のあることが分かり、心躍る思いだった」と話している。

IBSの治療、食事法の効果が薬を上回る?

 腹痛などの過敏性腸症候群(IBS)の症状を軽減する最善の治療法は適切な食事法であることを示唆する結果が、ヨーテボリ大学サールグレンスカアカデミー(スウェーデン)のSanna Nybacka氏らが実施した臨床試験で示された。同試験では、IBSの症状に対する治療法として2種類の食事法の方が標準的な薬物治療よりも優れていることが示された。詳細は、「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に4月18日掲載された。  IBSは、消化器疾患の中で最も高頻度に生じる上に、治りにくい疾患の一つだ。米国人のIBSの有病率は約6%で、患者数は男性よりも女性の方が多い。IBSの症状は、腹痛、腹部膨満感、下痢、便秘などの無視しがたいもので、死に至る場合もある。IBSに対しては、食事の改善のほか、便秘薬や下痢止め薬、特定の抗うつ薬、腸管内の水分の分泌を促し腸の動きを活発にする作用があるリナクロチドやルビプロストンなどの薬物による治療が行われる。

術後の静脈血栓塞栓リスク、最も高いがんは?

 がん手術後の静脈血栓塞栓のリスク増加を、がん種別に評価した研究結果が発表された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のJohan Bjorklund氏らによる本研究結果は、JAMA Network Open誌2024年2月2日号に掲載された。  本試験は1998~2016年のスウェーデンの全人口データを用いた後ろ向きコホート研究であった。膀胱がん、乳がん、大腸がん、婦人科がん、腎臓・上部尿路上皮がん、肺がん、前立腺がん、胃・食道がんの8種のがんで手術を受けた全患者を、非がんの一般集団と1対10の割合でマッチさせた。データは2023年2月13日~12月5日に解析された。

いくつかの腸内細菌はコレステロールを低下させる

 腸内細菌叢の組成が、肥満や2型糖尿病、炎症性腸疾患を含む、さまざまな疾患のリスクと関連していることが明らかになってきているが、新たにコレステロール値の低下に関連している可能性のある腸内細菌が見つかった。この細菌は、心血管疾患のリスク低減というメリットをもたらす可能性もあるという。米ブロード研究所のRamnik Xavier氏らの研究によるもので、詳細は「Cell」に4月2日掲載された。論文の上席著者である同氏は、「われわれの発見は、腸内細菌叢の組成をわずかに変えることによって、心血管の健康を改善させるというアプローチのスタートラインと言えるのではないか」と述べている。

入院患者の死亡率、患者と医師の性別で異なる

 医師の性別と患者の性別の組み合わせによって臨床転帰は異なるのだろうか。東京大学の宮脇 敦士氏らが、米国で内科的疾患で入院した患者を男女に分け、医師の性別と臨床転帰の関連を調べたところ、女性医師による治療のほうが死亡率および再入院率が低く、女性医師による治療のベネフィットは男性患者よりも女性患者で大きいことが示唆された。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2024年4月23日号に掲載。  本研究は、米国で2016~19年に入院し、病院総合診療医の治療を受けたメディケア有料サービス受給者から無作為に抽出したサンプルを用いた後ろ向き観察研究で、主要評価項目は30日死亡率および再入院率とした。