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標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性【令和時代の糖尿病診療】第5回

第5回 標準薬ながら血糖降下薬を超えるメトホルミンの可能性今回のテーマであるビグアナイド(BG)薬は、「ウィキペディア(Wikipedia)」に民間薬から糖尿病治療薬となるまでの歴史が記されているように、なんと60年以上も前から使われている薬剤である。一時、乳酸アシドーシスへの懸念から使用量が減ったものの、今や2型糖尿病治療において全世界が認めるスタンダード薬であることは周知の事実である。そこで、メトホルミンの治療における重要性と作用のポイント、その多面性から血糖降下薬を超える“Beyond Glucose”の可能性もご紹介しようかと思う。なお、ビグアナイドにはフェンフォルミン、メトホルミン、ブホルミンとあるが、ここから先は主に使用されているメトホルミンについて述べる。作用機序から考えるその多面性まず、メトホルミンについて端的にまとめると、糖尿病治療ガイド2020-20211)の中ではインスリン分泌非促進系に分類され、主な作用は肝臓での糖新生抑制である。低血糖のリスクは低く、体重への影響はなしと記載されている。そして主要なエビデンスとしては、肥満の2型糖尿病患者に対する大血管症抑制効果が示されている。主な副作用は胃腸障害、乳酸アシドーシス、ビタミンB12低下などが知られる。作用機序は、肝臓の糖新生抑制だけを見ても、古典的な糖新生遺伝子抑制に加え、アデニル酸シクラーゼ抑制、グリセロリン酸シャトル抑制、中枢神経性肝糖産生制御、腸内細菌叢の変化、アミノ酸異化遺伝子抑制などの多面的な血糖降下機序がわかっている2)。ほかにも、メトホルミンはAMPキナーゼの活性化を介した多面的作用を併せ持ち、用量依存的な効果が期待される(下図)。図1:用量を増やすとAMPキナーゼの活性化が促進され、作用が増強する1990年代になって、世界的にビグアナイド薬が見直され、メトホルミンの大規模臨床試験が欧米で実施された。その結果、これまで汎用されてきたSU薬と比較しても体重増加が認められず、インスリン抵抗性を改善するなどのメリットが明らかになった。これにより、わが国においても(遅ればせながら)2010年にメトホルミンの最高用量が750mgから2,250mgまで拡大されたという経緯がある。メトホルミンの作用ポイントと今後の可能性それでは、メトホルミンにおける(1)多面的な血糖降下作用(2)脂質代謝への影響(3)心血管イベントの抑制作用の3点について、用量依存的効果も踏まえてみてみよう。(1)多面的な血糖降下作用メトホルミンもほかの血糖降下薬と同様に、投与開始時のHbA1cが高いほど大きい改善効果が期待でき、肥満・非肥満によって血糖降下作用に違いはみられない。用量による作用としては、750mg/日で効果不十分な場合、1,500mg/日に増量することでHbA1cと空腹時血糖値の有意な低下が認められ、それでも不十分な場合に2,250mg/日まで増量することでHbA1cのさらなる低下が認められている(下図)。また、体重への影響はなしと先述したが、1,500mg/日以上使用することにより、約0.9kgの減量効果があるとされている。図2:1,500mg/日での効果不十分例の2,250mg/日への増量効果画像を拡大するさらには高用量(1,500mg以上)の場合、小腸上部で吸収しきれなかったメトホルミンが回腸下部へ移行・停滞し、便への糖排泄量が増加するといわれており、小腸下部での作用も注目されている。これは、メトホルミンの胆汁酸トランスポーター(ASBT)阻害作用により再吸収されなかった胆汁酸が、下部消化管のL細胞の受容体に結合し、GLP-1分泌を促進させるというものである(下図)3)。図3:メトホルミンによるGLP-1分泌促進機構(仮説)画像を拡大するまた、in vitroではあるが、膵β細胞に作用することでGLP-1・GIP受容体の遺伝子発現亢進をもたらす可能性が示唆されている4)。よって、体重増加を来しにくく、インクレチン作用への相加効果が期待できるメトホルミンとインクレチン製剤(DPP-4阻害薬、GLP-1受容体作動薬)の併用は相性が良いといわれている。(2)脂質代謝への影響あまり知られていない(気に留められていない?)脂質代謝への影響だが、メトホルミンは肝臓、骨格筋、脂肪組織においてインスリン抵抗性を改善し、遊離脂肪酸を低下させる。また、肝臓においてAMPキナーゼの活性化を介して脂肪酸酸化を亢進し、脂肪酸合成を低下させることによりVLDLを低下させるという報告がある5)。下に示すとおり、国内の臨床試験でSU薬にメトホルミンを追加投与した結果、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、トリグリセリド(TG)が低下したが、有意差は1,500mg/日投与群のみで750mg/日ではみられない。糖尿病専門医以外の多くの先生方は500~1,000mg/日までの使用が多いであろうことから、この恩恵を受けられていない可能性も考えられる。図4:TC、LDL-C、TGは、1,500mg/日投与群で有意な低下がみられる画像を拡大する(3)心血管イベントの抑制作用メトホルミンの心血管イベントを減らすエビデンスは、肥満2型糖尿病患者に対する一次予防を検討した大規模臨床試験UKPDS 346)と、動脈硬化リスクを有する2型糖尿病患者に対する二次予防を検討したREARCHレジストリー研究7)で示されている。これは、体重増加を来さずにインスリン抵抗性を改善し、さらに血管内皮機能やリポ蛋白代謝、酸化ストレスの改善を介して、糖尿病起因の催血栓作用を抑制するためと考えられている8)。ここまで主たる3点について述べたが、ほかにもAMPKの活性化によるがんリスク低減や、がん細胞を除去するT細胞の活性化、そして糖尿病予備軍から糖尿病への移行を減らしたり、サルコペニアに対して保護的に働く可能性などを示す報告もある。さらに、最近ではメトホルミンが「便の中にブドウ糖を排泄させる」作用を持つことも報告9)されており、腸がメトホルミンの血糖降下作用の多くを担っている可能性も出てきている。しかし、どんな薬物治療にも限界がある。使用に当たっては、日本糖尿病学会からの「メトホルミンの適正使用に関するRecommendation」に従った処方をお願いしたい。今や医学生でも知っている乳酸アシドーシスのリスクだが、過去の事例を見ると、禁忌や慎重投与が守られなかった例がほとんどだ。なお、投与量や投与期間に一定の傾向は認められず、低用量の症例や投与開始直後、あるいは数年後に発現した症例も報告されている。乳酸アシドーシスの症例に多く認められた特徴としては、1.腎機能障害患者(透析患者を含む)、2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取など、患者への注意・指導が必要な状態、3.心血管・肺機能障害、手術前後、肝機能障害などの患者、4.高齢者とあるが、まずは経口摂取が困難で脱水が懸念される場合や寝たきりなど、全身状態が悪い患者には投与しないことを大前提とし、以上1~4の事項に留意する。とくに腎機能障害患者については、2019年6月の添付文書改訂でeGFRごとの最高用量の目安が示され、禁忌はeGFRが30未満の場合となっているため注意していただきたい。図5:腎機能(eGFR)によるメトホルミン最高投与量の目安画像を拡大するBasal drug of Glucose control&Beyond Glucose、それがBG薬まとめとして、最近の世界動向をみてみよう。米国糖尿病学会(ADA)は昨年12月、「糖尿病の標準治療2022(Standards of Medical Care in Diabetes-2022)」を発表した。同文書は米国における糖尿病の診療ガイドラインと位置付けられており、新しいエビデンスを踏まえて毎年改訂されている。この2022年版では、ついにメトホルミンが2型糖尿病に対する(唯一の)第一選択薬の座から降り、アテローム動脈硬化性疾患(ASCVD)の合併といった患者要因に応じて第一選択薬を判断することになった。これまでは2型糖尿病治療薬の中で、禁忌でなく忍容性がある限りメトホルミンが第一選択薬として強く推奨されてきたが、今回の改訂で「第一選択となる治療は、基本的にはメトホルミンと包括的な生活習慣改善が含まれるが、患者の合併症や患者中心の医療に関わる要因、治療上の必要性によって判断する」という推奨に変更された。メトホルミンが第一選択薬にならないのは、ASCVDの既往または高リスク状態、心不全、慢性腎臓病(CKD)を合併している場合だ。具体的な薬物選択のアルゴリズムは、「HbA1cの現在値や目標値、メトホルミン投与の有無にかかわらず、ASCVDに対する有効性が確認されたGLP-1受容体作動薬またはSGLT2阻害薬を選択する」とされ、考え方の骨子は2021年版から変わっていない。もちろん、日本糖尿病学会の推奨は現時点で以前と変わらないことも付け加えておく。メトホルミンが、これからもまだまだ使用され続ける息の長い良薬であろうことは間違いない。ぜひ、Recommendationに忠実に従った上で、用量依存性のメリットも感じていただきたい。1)日本糖尿病学会編・著. 糖尿病治療ガイド2020-2021. 文光堂;2020.2)松岡 敦子,廣田 勇士,小川 渉. PHARMA MEDICA. 2017;35:Page:37-41.3)草鹿 育代,長坂 昌一郎. Diabetes Frontier. 2012;23:47-52.4)Cho YM, et al. Diabetologia. 2011;54:219-222.5)河盛隆造編. 見直されたビグアナイド〈メトホルミン〉改訂版. フジメディカル出版;2009.6)UKPDS Group. Lancet. 1998;352:854-865.7)Roussel R, et al. Arch Intern Med. 2010;170:1892-1899.8)Kipichnikov D, et al. Ann Intern Med. 2002;137:25-33.9)Yasuko Morita, et.al. Diabetes Care. 2020;43:1796-1802.

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー  CONNECTED PAPERSの活用 その2【「実践的」臨床研究入門】第16回

見逃していたかもしれない関連研究を調べる前回は“CONNECTED PAPERS”の概要と使い方のはじめのステップについて解説しました。今回は、われわれのリサーチ・クエスチョンのトピックについて、見逃していたかもしれない関連研究を調べてみたいと思います。“CONNECTED PAPERS”を用いると「Key論文」1)を中心とした関連研究の関係性がリンクのように中央のウィンドウに図示されます。個々の論文のノード(連載第15回参照)にマウスオーバーすると、その論文のタイトルとAbstractがWebページの向かって右側のウィンドウに表示されます。そこにはその論文のDigital Object Identifier(DOI)(連載第15回参照)やPubMedへのリンクも貼られています。向かって左側のウィンドウには「Key論文」1)を筆頭に関連研究が列挙されています。こちらのウィンドウにある“Expand”というボタンをクリックすると、ウィンドウが拡大し、関連研究論文各々の「論文タイトル」、「著者」、「出版年」、「被引用数」、「引用論文数」、(「Key論文」1)からの)「類似性」という文献情報が列記されていることがわかります。デフォルトでは「類似性」順に並んでいますが、上記の文献情報項目毎にソート(並べ替え)することができます。ここでは、コクラン・フル・レビュー論文である「Key論文」1)以降の関連研究をまずは見てみたいので、「出版年」の降順でソートしてみましょう。すると、連載第16回執筆時点(2022年1月)では、「Key論文」1)が出版された2007年以降に以下の関連研究論文が出版されていることがわかります(臨床研究かつDOIが確認されたものに限定)。ランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)1編2)システマティック・レビュー(SR: systematic review)8編3-10)総説1編11)なんと、RCTをメタ解析したSRが2008年以降に8編もヒットしました。そのうち連載第12回で取り上げた非糖尿病患者をP(対象)としたコクランSR1編4)、非糖尿病患者もPに組み入れている非コクランSR2編6,9)を除外し、Pを糖尿病性腎疾患患者にしぼった非コクランSR5編の一覧を下記の表にまとめました。「Key論文」1)でメタ解析されていた腎機能低下の指標である推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化(連載第14回参照)というO(アウトカム)について、点推定値と95%信頼区間(95% confidence interval:95%CI)を記述し整理してみました。表に示したとおり、非コクランSR3編3,7,8)ではコクランSRである「Key論文」1)の結果と同様、糖尿病性腎疾患に対する低たんぱく食の効果は認められなかった、と結論しています。一方、他の非コクランSR2編5,10)では、eGFR低下速度の変化の95%CIがゼロをまたいでおらず、低たんぱく食群は対照群と比較して統計学的有意に腎機能低下が緩やかであったことを示しています。1)Robertson L, et al. Cochrane Database Syst Rev.2007 Oct. 17:CD002181.DOI: 10.1002/14651858.CD002181.pub22)Koya D, et al. Diabetologia. 2009 Oct;52:2037-45.3)Pan Y, et al. Am J Clin Nutr. 2008 Sep;88:660-6.4)Fouque D, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2009 Jul 8; CD001892.5)Nezu U, et al. BMJ Open. 2013 May 28;3:e002934.6)Rughooputh MS, et al. PloS one. 2015;10:e0145505.7)Zhu HG, et al. Lipids Health Dis. 2018 Jun 19;17:141.8)Li XF, et al. Lipids Health Dis.2019 Apr 1;18:82.9)Yue H, et al. Clin Nutr.2020 Sep;39:2675-85.10)Li Q, et al. Diabetes Ther. 2021 Jan;12:21-36.11)Otoda T, et al. Curr Diab Rep. 2014;14:523.

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ゲフィチニブの非小細胞肺がんアジュバント、DFSとOSの結果(IMPACT)/JCO

 近年、非小細胞肺がん(NSCLC)のアジュバント療法として、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を使用したさまざまな臨床試験が実施されている。 このたび、吹田徳洲会病院の多田 弘人氏らが、アジュバント療法におけるゲフィチニブの有効性を検討した国内臨床試験、IMPACT試験の結果をJournal of Clinical Oncology誌2022年1月20日号で報告した。 IMPACT試験は、EGFR変異陽性患者に対する標準的なアジュバント療法であるシスプラチン+ビノレルビン療法を対照としたゲフィチニブのランダム化比較第III相試験であり、WJOG(西日本がん研究機構)が実施した。・対象:EGFR変異陽性(ex19delまたはL858R)でStageII〜IIIの完全切除後のNSCLC患者・試験群:ゲフィチニブ(250mg/日)を24ヵ月投与(Gef群)・対照群:シスプラチン(80mg/m2 day1)+ビノレルビン(25mg/m2 day1,8)を3週ごと4サイクル投与(CV群)・評価項目:[主要評価項目]無病生存期間(DFS)[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性と忍容性、再発様式など 主な結果は以下のとおり。・2011年9月〜2015年12月に232例が登録され、116例ずつ無作為に割り付けられた。・DFS中央値はGef群35.9ヵ月、CV群25.1ヵ月であった。しかし、カプランマイヤー曲線は術後4年前後で交差し、統計学的に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.92、95%信頼区間[CI]:0.67〜1.28、p=0.63)。・OSにも差はなく(HR:1.03、95%CI:0.65〜1.65、p=0.89)、5年OS率はGef群78.0%、CV群74.6%であった。・治療関連死はGef群では0例、CV群では3例報告された。 アジュバント療法におけるゲフィチニブ投与は、DFSとOSを延長しなかったが、同等のDFS、OSが認められたことから、プラチナダブレットのアジュバント療法が不適となる患者には有用かもしれない、と著者らは結論付けている。 なお、アジュバント療法におけるゲフィチニブの有効性を検討した海外の第III相試験として、中国で実施されたADJUVANT(CTONG1104)試験などが報告されている。

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肺がんマルチ遺伝子PCRパネルAmoyDx発売/理研ジェネシス

 理研ジェネシスは、複数の抗悪性腫瘍剤のコンパニオン診断薬「AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」の日本国内での販売を2022年1月11日に開始する。  同製品は、非小細胞肺がん(NSCLC)の5種のドライバー遺伝子(EGFR、ALK、ROS1、BRAF、MET)をカバーする、リアルタイムPCR法を原理としたコンパニオン診断薬である。 EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子、ROS1融合遺伝子、BRAF V600E変異、MET exon14スキッピング変異を1回の測定で同時に検出し、10種の抗がん剤の適応判定の補助が可能。保険点数は10,000点(5項目)。 リアルタイムPCR法を用いたマルチプレックスのコンパニオン診断薬が承認・保険適用されたのは本邦初であり、その感度の高さや短いターンアラウンドタイム、手軽さなどにより、早期治療戦略の立案やNSCLC患者への治療機会拡大に貢献することが期待されている。 製品概要・製品名:AmoyDx肺癌マルチ遺伝子PCRパネル(製品番号:A246)・承認番号:30300EZX00059000・使用目的:がん組織から抽出したDNA中の遺伝子変異(EGFR遺伝子変異及びBRAF遺伝子変異)及びRNA中の融合遺伝子(ALK融合遺伝子及びROS1融合遺伝子)の検出NSCLC患者への、以下の抗悪性腫瘍剤の適応を判定するための補助に用いる ・EGFR遺伝子変異 ゲフィチニブ、エルロチニブ塩酸塩、アファチニブマレイン酸塩、オシメルチニブメシル酸塩 ・ALK融合遺伝子 クリゾチニブ、アレクチニブ塩酸塩、ブリグチニブ ・ROS1融合遺伝子 クリゾチニブ ・BRAF V600E変異 ダブラフェニブメシル酸塩とトラメチニブジメチルスルホキシド付加物の併用投与 ・MET遺伝子 exon14スキッピング変異テポチニブ塩酸塩・検査原理:PCR法(リアルタイムPCR法およびRT-PCR法)・検体材料:腫瘍細胞の存在が確認されたFFPE組織、新鮮凍結組織・保険点数:10,000点(準用保険点数: D004-2 悪性腫瘍組織検査 1 悪性腫瘍遺伝子検査 イ 2項目4,000点と ロ 3項目6,000点を合算した10,000点)・包装 1キット(12テスト)・製造販売業者 株式会社理研ジェネシス・製造元 Amoy Diagnostics Co., LTD(中国)

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アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」【下平博士のDIノート】第89回

アトピー性皮膚炎を全身治療する経口JAK阻害薬「サイバインコ錠50mg/100mg/200mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「アブロシチニブ(商品名:サイバインコ錠50mg/100mg/200mg、製造販売元:ファイザー)」を紹介します。本剤は、全身療法が可能な経口剤であり、既存治療で効果不十分な中等症~重症のアトピー性皮膚炎の新たな選択肢として期待されています。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎(AD)の適応で、2021年9月27日に承認され、同年12月13日に発売されました。なお、ステロイド外用薬やタクロリムス外用薬などの抗炎症外用薬による適切な治療を一定期間施行しても十分な効果が得られず、強い炎症を伴う皮疹が広範囲に及ぶ患者に使用します。<用法・用量>通常、成人および12歳以上の小児には、アブロシチニブとして100mgを1日1回経口投与します。患者の状態に応じて200mgを1日1回投与することもできます。なお、中等度の腎機能障害(30≦eGFR<60)では50mgまたは100mgを1日1回投与し、重度の腎機能障害(eGFR<30)では50mgを1日1回経口投与します。本剤投与時も保湿外用薬は継続使用し、病変部位の状態に応じて抗炎症外用薬を併用します。なお、投与開始から12週までに治療反応が得られない場合は中止を考慮します。<安全性>AD患者を対象に本剤を投与した臨床試験の併合解析において、発現頻度2%以上の臨床検査値異常を含む有害事象が確認されたのは3,128例中2,294例でした。主な副作用は、上咽頭炎、悪心、アトピー性皮膚炎、上気道感染、ざ瘡、筋骨格系および結合組織障害などでした。なお、重大な副作用として感染症(単純ヘルペス[3.2%]、帯状疱疹[1.6%]、肺炎[0.2%])、静脈血栓塞栓症(肺塞栓症[0.1%未満]、深部静脈血栓症[0.1%未満])、血小板減少(1.4%)、ヘモグロビン減少(ヘモグロビン減少[0.9%]、貧血[0.6%])、リンパ球減少(0.7%)、好中球減少症(0.4%)、間質性肺炎(0.1%)、肝機能障害、消化管穿孔(いずれも頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、皮膚バリア機能を低下させたり、アレルギー炎症を悪化させたりするJAKという酵素の産生を抑えることで、アトピー性皮膚炎の症状を改善します。2.本剤には免疫を抑制させる作用があるため、発熱や倦怠感、皮膚の感染症、咳が続く、帯状疱疹や単純ヘルペスなどの感染症の症状に注意し、気になる症状が現れた場合は、すみやかにご相談ください。3.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は主治医に相談してください。4.(女性に対して)この薬を服用中、および服用中止後一定期間は適切な避妊をしてください。5.これまで使用していた保湿薬は続けて使用してください。<Shimo's eyes>近年、ADの新しい治療薬が次々と発売されており、難治例における治療が大きく変化しつつあります。本剤と同じ経口JAK阻害薬のほかにも、ヒト型抗ヒトIL-4/13受容体モノクローナル抗体製剤や外用JAK阻害薬などがすでに発売されています。本剤は、ADの適応を得た経口JAK阻害薬として、バリシチニブ(商品名:オルミエント錠)、ウパダシチニブ水和物(同:リンヴォック錠)に続く3剤目となります。また、12歳以上のアトピー性皮膚炎患者に使用できる製剤としてはウパダシチニブに続いて2剤目となります。相互作用については、フルコナゾール、フルボキサミンなどの強力なCYP2C19阻害薬、あるいはリファンピシンのような強力なCYP2C19および CYP2C9誘導薬との併用に注意が必要です。これらの薬剤と併用する場合、可能な限りこれらの薬剤をほかの類薬に変更する、または休薬するなどの対応を考慮します。経口JAK阻害薬は、肺炎、敗血症、ウイルス感染などによる重篤な感染症や結核の顕在化および悪化への注意が警告に記載されています。生ワクチンの接種は控え、帯状疱疹やB型肝炎ウイルスの再活性化にも注意する必要があります。調剤時の注意に関しては、抗うつ薬/慢性疼痛治療薬デュロキセチン(商品名:サインバルタカプセル)と販売名が類似していることから、取り違え防止案内が発出されています。薬剤の登録名や調剤棚の表示などを工夫して、取り違えを防ぎましょう。本剤は、米国においてブレークスルー・セラピー(画期的治療薬)の指定を受け、優先審査品目に指定されています。参考1)PMDA 添付文書 サイバインコ錠50mg/サイバインコ錠100mg/サイバインコ錠200mg

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2021年、がん専門医に読まれた記事は?「Doctors’Picks」ランキング

 ケアネットが運営する、オンコロジーを中心とした医療情報キュレーションサイト「Doctors'Picks」(医師会員限定)は、2021年にがん専門医によく読まれた記事ランキングを発表した。がん横断的なトピックスやCOVID-19とがんに関連する記事のほか、米国腫瘍学会(ASCO)関連の話題が多くランクインしている。【1位】おーちゃん先生のASCO2021肺がん領域・オーラルセッション/Doctors'Picks 6月に行われた米国臨床腫瘍学会(ASCO)。4,500を超える演題から注目すべきものをエキスパート医師がピックアップして紹介。肺がん分野は山口 央氏(埼玉医科大学国際医療センター)が「CheckMate-9LA試験の2年アップデート」「IMpower130、IMpower132、IMpower150 の免疫関連の有害事象を分析」などを選定した。【2位】がん関連3学会、がん患者への新型コロナワクチン接種のQ&A公開/CareNet.com 3月末、がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)は合同で「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A―患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版―」を公開した。【3位】ASCO 乳がん 注目演題まとめ(1)オーラル/周術期/Doctors'Picks ASCO注目演題、乳がん分野は寺田 満雄氏(名古屋市立大学)が全オーラル演題をチェックしたうえで注目すべき10演題を選定、サマリーと共に紹介した。【4位】リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査が国内で初承認/日経メディカル 3月、中外製薬は血液検体を用いて固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングを行う検査「FoundationOne Liquid CDx がんゲノムプロファイル」の承認獲得を発表。リキッドバイオプシーを用いたがん遺伝子パネル検査は国内初承認となる。進行固形がん患者を対象に、血液中の循環腫瘍 DNA(ctDNA)を用いて324個のがん関連遺伝子を解析する。【5位】免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象…メカニズムと緩和戦略/Nature Reviews Drug Discovery チェックポイント阻害薬(ICI)治療に関連した免疫関連有害事象(irAE)の発生と、発生を予測するバイオマーカーを特定し、発症を抑制するメカニズムを解説する論文がNature Reviews Drug Discovery誌に掲載された。6~10位は以下のとおり。【6位】ASCO 消化器がん 注目演題まとめ/Doctors'Picks【7位】固形がん患者における新型コロナワクチン接種後の抗体価/Annals of Oncology【8位】がん免疫療法患者に対するCOVID-19ワクチン接種/SITC【9位】IMpower150試験、EGFR陽性・肝/脳メタ解析の最終報告/Journal of Thoracic Oncology【10位】「オンコタイプDX乳がん再発スコアプログラム」の保険適用を了承/中医協

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抗HER3抗体薬物複合体HER3-DXd、EGFR変異陽性非小細胞肺がんでFDAブレークスルーセラピーに指定/第一三共

 第一三共は、2021年12月24日、パトリツマブ デルクステカン (U3-1402/HER3-DXd)が、米国食品 医薬品局(FDA)より、第3世代EGFR-TKIおよびプラチナ製剤併用療法の治療歴のあるEGFR遺伝子変異陽性で転移のある非小細胞肺がんを対象とした「ブレークスルーセラピー」指定を受けたと発表。 今回の指定は、2021年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO 2021)で発表された、EGFR遺伝子変異を有する転移または切除不能な非小細胞肺がんを対象とした第I相臨 床試験の結果に基づくものである。

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世界初、RET融合遺伝子TKIのセルペルカチニブ発売/日本イーライリリー

 2021年9月末にセルペルカチニブ(商品名:レットヴィモ)が「RET融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌(NSCLC)」に対する治療薬として世界で初めて承認され、日本イーライリリーは発売に合わせ12月16日にプレスセミナーを開催した。セルペルカチニブはRET融合遺伝子陽性のがんでRETキナーゼを選択的に阻害 日本における肺がんの罹患全国推定数は約12万人(2017年)、がん種別の死亡数では男女とも1位(2019年)。従来の手術、化学療法、放射線療法に加え、近年の分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の登場により、治療が著しく進化している。セミナーでは国立がん研究センター東病院の後藤 功一氏が、肺がんにおける遺伝子治療の現状やセルペルカチニブ承認の基となったデータを解説した。 セルペルカチニブはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)の1つで、RET融合遺伝子変異はNSCLCの約2%に発生する希少変異。RET融合遺伝子陽性のがんでは、がん細胞の増殖と生存がRETキナーゼの活性化に依存しており、活性化されたRETキナーゼを選択的に阻害することで腫瘍の増殖を阻害する、というのが作用機序となる。 現在NSCLCではEGFR、ALK、ROS1、BRAF、NTRL、MET、そして今回のRETを含めた7つの変異をターゲットとした薬剤が承認済だが、発現頻度の高いEGFR、ALK変異等をターゲットにした薬剤が優先して開発されてきた経緯がある。後藤氏は「希少変異は製薬メーカー主導の開発が難しいため、国立がん研究センターを中心とした研究基盤であるLC-SCRUM-Asiaで遺伝子変異解析と医師主導治験を進めてきた」と説明した。 今回のセルペルカチニブの承認は、国際共同治験LIBRETTO-001の結果を受けたもの。後藤氏は「参加16ヵ国83施設746例中、日本からは13施設64例が参加し、大きな役割を果たした」と紹介した。LIBRETTO-001におけるセルペルカチニブの奏効率(CR+PR)は未治療例で70.5%(95%CI:54.8~83.2)、既治療例で56.9%(49.8~63.8)。「従来の化学療法の奏効率は30%程度、ICI単剤の場合15%程度なので、セルペルカチニブに限らずTKIは非常に奏効率が高い」(後藤氏)。さらにセルペルカチニブは中枢神経系に対する奏効率も82%と高く、脳転移に対する効果も期待される。 有害事象としては、高血圧36.6%(Grade3以上19.2%)、ALT増加32.6%(同9.8%)、AST増加32.6%(同8.3%)が高頻度だった。後藤氏は「セルペルカチニブはRETの選択性が高いために全体的に毒性が低く、外来でも十分マネジメントは可能と考える。発疹をはじめとした過敏症が認められるケースがあったが、そうしたケースも休薬・減薬とステロイド投薬で対応できており、投薬中止例はほとんどなかった」と解説した。 最後に「今後1、2年で肺がんではHER2、KRAS、EGFRエクソン20挿入変異に対するTKIも臨床応用されるようになり、遺伝子解析と個別化医療がさらに一般的なものとなるだろう」とした。

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CKDの早期透析導入の意義は?(解説:浦信行氏)

 末期腎不全(ESKD)では、その時点での腎移植が望めない場合には生命維持のための透析導入は必須である。あまりに導入が遅ければ、導入後の病状改善に時間を必要とし、また、回復にたどり着く以前に重症感染症や心血管事故などで不幸な転機を取る危険性も増加する。しかし、ほとんどすべての症例は透析導入には抵抗感が大きく、可能な限りの先延ばしを望む。 20年ほど前なので数字の記憶は曖昧であるが、実際に経験した症例では透析導入の必要性をお話ししたところ、了解を頂けずに間もなく連絡先不明となった。1年後に重度の倦怠感のため再診された時のBUNが230mg/dL程度であったと思うが、低Na血症が少し血清浸透圧上昇に代償的に働いたのと、若い男性であったので何とかイベントもなく経過したと考えられる。緊急透析はきわめて低い血流量と透析液流量で始めたが、一過性に脳浮腫を発症したか、中程度の意識障害を来した苦い経験がある。このような危険を避ける意味でも透析導入時期の適正化が必要であるが、明らかな臨床指標はないのが現状で、症例の病態、自覚症状、臨床検査値を総合的に勘案して開始時期を決定する。 このたび、BMJ誌に透析導入の際の最適eGFRに関する研究結果が報告された。透析開始時のeGFRが4~19mL/min/1.73m2の15段階で検討した結果、eGFRが15~16の早期の開始が、eGFRで6~7での開始より死亡の5年絶対リスクが5.1%低下し、主要有害心血管イベント(MACE)のリスクが2.9%低下したと報告された。すなわち早期の導入は死亡やMACEを有意に減少させたとする結果であった。しかし、死亡に関する絶対リスクの5.1%低下は5年の追跡期間中で1.6ヵ月の死亡の延期につながるが、一方で透析導入を4年早めることが必要との結果である。 この結果は、ほとんどの症例は透析導入に強い抵抗感があるため、臨床的な意義はほとんど考えられない。この成績は基礎疾患、年齢、血圧値、Ca、P、ヘモグロビン、アルブミンで調整していることから、これらが結果に影響している可能性は考えにくく、尿蛋白やK値も有意な影響はなかった。しかし、いくつかの限界がある。早期に透析導入に至った経緯が不明なのである。透析導入の理由が不明であり、栄養状態、筋肉量、自覚症状、体液量、QOL、ADLなど、透析導入時期に関連する因子が不明である。したがって、早期導入に至った背景の違いが結果を過小評価させた可能性は必ずしも否定できない。その点を勘案しても、4年前倒しの透析導入は臨床現場では受け入れられないであろう。

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EGFR変異肺がん外科切除例の特徴と予後~肺癌登録合同委員会からの考察/日本肺癌学会

 外科手術の対象となるEGFR変異肺がんの特徴や予後について、肺がん治療例の全国集計を行う肺癌登録合同委員会による2010年手術例を対象とした第7次事業の報告(以下、合同員会報告)からの考察として、第62回日本肺癌学会学術集会において近畿大学の須田健一氏が発表した。 合同委員会報告のデータを用いて、EGFR変異陽性肺がん(2,410例)とEGFR変異陰性肺がん(3,370例)の臨床病理学的因子の比較や予後解析などを行った。 その結果、EGFR変異陽性肺がんは非喫煙者、女性、すりガラス陰影(GGO)、リンパ管や脈管への湿潤のない肺がんが多かった。また、多変量解析からEGFR変異陽性肺がんは変異陰性肺がんに比べて予後が良好であることが示されていた(無増悪生存期間[PFS]ハザード比[HR]:0.894、95%信頼区間:0.814~0.980、p=0.017)。 EGFR変異は主にexon19 deletion(Del 19)と L858R point mutation(L858R)の2種類が存在する。合同委員会報告ではDel 19(983例)はL858R(1,170例)に比べて若年齢(66.1歳 vs.69.0歳)で、腫瘍サイズが大きく(2.33cm vs.2.07cm)、GGO例が多く、また病期が進むほど増える傾向がみられた。L858Rに比べDel 19で予後が悪い傾向が示されたが、予後予測因子としてのインパクトは大きいものではなかった。 EGFR変異陽性肺がん(1,120例)とEGFR変異陰性肺がん(1,550例)の初再発部位を比較したデータからは、EGFR変異陽性肺がんは、脳での再発が15.9%と、陰性の12.2%に比べ高いことが明らかになった。 日本の肺癌診療ガイドライン(2020)では、病変全体径が2cm以上の病理病期IA/IB/IIA期の完全切除腺がんに対しては、デガフール・ウラシル配合剤療法が推奨されている。デガフール・ウラシル配合剤単剤療法は、EGFR変異陰性肺がんでより治療効果が高い可能性を示唆する報告があるが、現行の化学療法の有用性は、今後のより大規模な研究で評価していく必要がある。

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CKDの透析導入、最適なeGFRは?/BMJ

 進行した慢性腎臓病(CKD)患者において、非常に早期の透析導入は死亡および心血管イベントをわずかだが減少することが示された。オランダ・ライデン大学医療センターのEdouard L. Fu氏らが、進行性CKD患者における透析導入の最適な推算糸球体濾過量(eGFR)を明らかにすることを目的とした観察コホート研究の結果を報告した。検討により、導入参照値と比べた死亡の5年絶対リスク低下は5.1%で、平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものだったが、透析導入を4年早める必要があることも示された。著者は、「ほとんどの患者にとって、今回の試験で示されたぐらいの減少では、透析期間がより長期化することに伴う負担を上回るものにはならないと思われる」と述べている。BMJ誌2021年11月29日号掲載の報告。透析を開始するeGFRを4~19mL/分/1.73m2の15段階で検討 研究グループは、腎臓専門医に紹介された患者を登録するスウェーデンの全国腎臓登録(National Swedish Renal Registry)を用い、2007年1月1日~2016年12月31日の期間にベースラインのeGFRが10~20mL/分/1.73m2の患者を対象として、2017年6月1日まで追跡調査を行った。 主要評価項目は5年全死因死亡率、副次評価項目は主要有害心血管イベント(MACE:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合)である。無イベント時間バイアス、リード・タイム・バイアス、生存者バイアスを排除して厳格な臨床試験デザインを模倣し、動的周辺構造モデルを用いて、eGFR(mL/分/1.73m2)値4から1単位刻みで19までの、15の透析導入戦略に関して、補正後ハザード比および絶対リスクを推算した(参照値はeGFR6~7)。eGFR15~16で、5年全死因死亡5.1%低下、心血管イベント2.9%低下 進行したCKD患者1万290例(年齢中央値73歳、女性3,739例[36%]、eGFR中央値16.8)において、3,822例が透析を開始し、死亡が4,160例、MACEが2,446例で確認された。 死亡率には放物線型の関連が認められ、eGFR15~16で最も死亡リスクが低かった。eGFR6~7での透析導入と比較して、eGFR15~16での透析導入による死亡の5年絶対リスク低下は5.1%(95%信頼区間[CI]:2.5~6.9)、MACEの同リスク低下は2.9%(0.2%~5.5%)で、ハザード比はそれぞれ0.89(95%CI:0.87~0.92)、0.94(0.91~0.98)であった。 死亡に関する絶対リスク差5.1%は、5年の追跡期間中で平均1.6ヵ月の死亡の延期に相当するものだったが、一方で透析導入は4年早める必要があった。 Initiating Dialysis Early and Late(IDEAL)研究の強化戦略(eGFR10~14 vs.eGFR5~7)とIDEAL研究で達成されたeGFReGFR7~10 vs.eGFR5~7)を模倣した場合の全死因死亡のハザード比は、それぞれ0.96(95%CI:0.94~0.99)、0.97(95%CI:0.94~1.00)であり、無作為化試験のIDEAL研究の結果と一致していた。

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ICIによる非小細胞肺がんの術前・術後補助療法の有効性を探る(CheckMate 77T試験)/日本肺癌学会

 最近のStageIIAからIIIBの非小細胞肺がん(NSCLC)に対する術後の5年生存率は50%以下であり、その治療効果は十分とはいえず、何らかの追加治療が必要とされてきた。 1990年代から化学療法を用いた術前補助療法が行われてきたが、最近は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)が登場。周術期治療への可能性が期待されている。そこで、化学療法にICIを加えた周術期治療の有用性を検証するCheckMate 77T試験が現在進行しており、その概要が第62回日本肺癌学会学術集会において、神奈川県立がんセンターの伊藤宏之氏から紹介された。 StageIIIAのNSCLC患者46例を対象に、化学療法にニボルマブを併用する術前補助療法の後に手術を施行する第II相試験として、NADIM試験が実施された。その結果、残存するがん細胞の面積ががん組織中に占める割合が 10%以下の症例の割合を表すmajor pathological response(MPR)が83%、病理学的完全奏効(pCR)は59%との良好な成績を示し、18か月後の無増悪生存率は81%、全生存率は91%となっていた。この結果を受け、第III相試験としてCheckMate 77T試験がデザインされた。 CheckMate 77T試験は、切除可能なNSCLC患者を対象に、組織型に基づく化学療法にニボルマブ360mgまたはプラセボを加えた術前補助療法を行い、さらに術後補助療法としてニボルマブ480mgまたはプラセボを1年間投与する無作為化二重盲検第III相試験である。主要評価項目は盲検下独立中央評価委員会(BICR)による無イベント生存期間(EFS)、主な副次評価項目としてBICRによる全生存期間(OS)、pCR、およびMPR、安全性と忍容性などについても評価される。 対象は、切除可能なStage IIAからIIIBのNSCLCで、ECOG PS が0~1の患者。EGFR/ALK変異、脳転移、自己免疫疾患もしくはその疑いがある患者は除外された。 現在、日本を含む21ヵ国から115施設が参加し、2024年9月の修了を目指して試験が進行している。伊藤氏は、これまでICIは内科領域の治療で使われる薬剤であったが、今後は外科領域における周術期治療においても使用されるようになる可能性が高いとの期待を示した。

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー コクラン・ライブラリーの活用 その3【「実践的」臨床研究入門】第14回

コクラン・ライブラリー~該当フル・レビュー論文を読み込んでみる2今回は前回に引き続き、われわれのリサーチ・クエスチョン(RQ)のブラッシュアップに参考となりそうな、コクラン・ライブラリーの検索で挙がった2編目のフル・レビュー論文(下記)を読み込んでみましょう。Protein restriction for diabetic renal disease(糖尿病性腎疾患に対する蛋白摂取制限)1)このシステマティック・レビュー(systematic review:SR)に組み入れられたランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)は9編でした。末期腎不全(透析導入)というハードエンドポイント(連載第3回参照)についての解析に組み込まれたRCTは、前回読み込んだ非糖尿病の慢性腎臓病(Choronic kidney disease: CKD)患者を対象としたコクランSR2)では6編(解析対象患者数1,814名)でしたが、今回取り上げたフル・レビュー論文1)では1編(解析対象患者数72名)でした。したがって、複数の研究結果を統合するメタ解析は行われていませんが、下記のように1つのRCTで示された相対リスク(Rlative risk:RR)の点推定値と95%信頼区間(95% confidence interval:95%CI)は記述されています。0.6g/kg/標準体重/日の低たんぱく食群は対照群(通常食)と比較して末期腎不全(透析導入)または死亡に到るRRは0.23(95%CI:0.07~0.72)であった(筆者による意訳)。前回読み込んだ非糖尿病CKD患者における低たんぱく食の臨床効果を検証したフル・レビュー論文2)では、末期腎不全(透析導入)というハードエンドポイントについては6編のRCT(解析対象患者数1,814名)をメタ解析し、低たんぱく食群(0.5~0.6g/kg/標準体重/日)の対照群(通常食)に対する末期腎不全(透析導入)に到るRRは1.05(95%CI:0.73~1.53)であった(筆者による意訳)。と述べています2)。ここで着目したいのは、上述の2つの解析結果の95%CIの範囲の違いです。95%CIの範囲が狭いということは、その点推定値の精度の高さを示しており、解析対象患者数の増加によるメタ解析の「ご利益」のひとつです。さて、糖尿病性腎疾患に対する低たんぱく食の腎機能低下速度というサロゲートエンドポイント(連載第3回参照)についてはどうでしょうか。1型糖尿病患者のみを対象とした7編のRCT(解析対象患者数222名)を組み入れたメタ解析の結果1)が下記のように報告されています。対照群(通常食)と比較した低たんぱく食群での推定糸球体濾過量(eGFR)低下速度の変化は0.1 ml/分/月(95%CI:0.1~0.3)であり、統計学的有意ではなかった(筆者による意訳)。eGFR 低下速度0.1ml/分/月の改善は統計学的にだけでなく臨床的にも有意でない僅かな変化だと考えます。前回取り上げた非糖尿病CKD患者を対象としたフル・レビュー論文2)での結果も併せて、腎機能低下速度に対する低たんぱく食の効果は不確かであると言えるでしょう。下記はこれまでにブラシュアップしてきた、われわれのCQとRQ(PECO)です。CQ:食事療法を遵守すると非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O:腎予後まだ、O(アウトカム)が「腎予後」と漠然としています。これまで見てきたコクランSRや個別のRCTでは、末期腎不全(透析導入)やeGFR低下速度の変化、というように明確に定義されていました。われわれのRQのOもこれらの先行研究に準じて、下記のように改訂することとします。P:非ネフローゼ症候群の慢性腎臓病(CKD)患者↓E:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の遵守C:食事療法(低たんぱく食 0.5g/kg標準体重/日)の非遵守O:1)末期腎不全(透析導入)、 2)eGFR低下速度の変化 Oは1)プライマリと2)セカンダリに分けて設定されることが多くあります。一般的にプライマリなOはその研究で最もみたいOが置かれ、臨床的に重要なハードエンドポイントであればより望ましいかもしれません。セカンダリなOはプライマリの次に関心のあるOで、サロゲートエンドポイントが設定されることが多いかと思います。1)Robertson L et al. Protein restriction for diabetic renal disease. The Cochrane database of systematic reviews. 2007 Oct 17:CD0021812)Hahn D et al. Low protein diets for non-diabetic adults with chronic kidney disease. Cochrane Database Syst Rev 2020 Oct 29:CD001892.

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DAPA-CKD試験の新たなサブ解析結果/AstraZeneca

 AstraZeneca(本社:英国ケンブリッジ)は、ナトリウム-グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害薬であるダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)を対象とした第III相DAPA-CKD試験の3つの新たなサブ解析の結果を発表した。DAPA-CKD試験のサブ解析でダパグリフロジンのベネフィットをさらに裏付け DAPA-CKD試験の新たなサブ解析の結果、2型糖尿病の有無にかかわらず、慢性腎臓病(CKD)患者の治療で、ダパグリフロジンの心腎および死亡率に対するベネフィットが一貫して認められることをさらに裏付けた。また、リアルワールドエビデンス研究となるREVEAL-CKDでは、世界的にステージ3のCKD診断率が著しく低いことが明らとなった。 DAPA-CKD試験は、2型糖尿病合併の有無に関わらず、CKDステージの2~4、かつ、アルブミン尿の増加が確認された4,304例を対象に、ダパグリフロジン10mg投与による有効性と安全性をプラセボと比較検討した国際多施設共同無作為化二重盲検第III相試験。本剤は1日1回、標準治療と併用された。複合主要評価項目は、腎機能の悪化もしくは死亡リスクで、副次評価項目は、腎機能の複合評価項目、心血管死もしくは心不全による入院、および全死因死亡のいずれかの初発までの期間。DAPA-CKD試験は日本を含む21ヵ国で実施された。DAPA-CKD試験での死亡の相対リスク減少率は4地域で30~49% DAPA-CKD試験における腎臓、心血管(CV)および死亡率のアウトカムに関する地域別の解析データから、CKD患者におけるダパグリフロジンの有益性は、北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパおよびアジアを含む事前に規定された地理的地域間においても同程度であることが示された。複合主要評価項目である推定糸球体濾過量(eGFR、腎機能の重要な指標)の50%以上の持続的低下、末期腎疾患(ESKD)の発症および、心血管または腎不全による死亡の相対リスク減少率は、4つの地域で一貫して30~49%(プラセボと比較したダパグリフロジンの絶対リスク減少率は3.3~8.0%)だった。 また、別のDAPA-CKD試験のサブ解析では、ベースラインの心血管系併用薬がCKD患者におけるダパグリフロジンの効果に影響を与えるかが評価され、その結果、さまざまな心血管系併用薬使用の有無にかかわらず、CKD患者における腎臓、心血管評価項目および死亡率に対する本剤の明らかな有益性が示された。 具体的には、主要複合アウトカムの最初のイベント発生までの時間におけるダパグリフロジンの効果は、プラセボとの比較で、ベースライン時にアンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬を使用していた患者(ハザード比[HR]0.61、95%信頼区間[CI]0.51-0.74)と使用していない患者(HR0.54、95%CI0.20-1.46;交互作用のp=0.69)で同程度だった。また、利尿薬、カルシウム拮抗薬およびβ遮断薬など、解析された他の心血管系併用薬使用の有無にかかわらず、本剤の一貫した効果が示された。 そのほかのDAPA-CKD試験のサブ解析では、治療開始後早期のeGFRの低下は、ダパグリフロジンで治療した患者により多いことが示された。この早期のeGFRの変化は、本剤の作用機序と関連し、糸球体における好ましい血行動態変化を反映していると考えられる。なお、低下の程度にかかわらず、この早期におけるeGFRの低下は、重篤な有害事象、有害事象による治療中止、腎臓関連事象または体液量減少事象のリスク増加とは関連していなかった。 なお、これらのDAPA-CKD試験の解析データは2021年の米国腎臓学会(ASN)腎臓週間で発表された。

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EGFR陽性肺がんに対する術後オシメルチニブの効果は化学療法の有無で変わるか(ADAURA)/JTO

 Stage IB~IIIA期の非小細胞肺がん(NSCLC)には、術後補助化学療法が推奨されているが、その評価は必ずしも芳しくはないようだ。 そのような中、EGFR変異陽性NSCLCに対する術後補助療法の第III相ADAURA試験において、オシメルチニブが有意に無病生存期間(DFS)の改善を示した。このたび、化学療法による前治療の有無と、オシメルチニブの有効性を検討した、同試験の探索的研究の結果がJournal of Thoracic Oncology誌に発表されている。・対象:EGFR変異陽性(ex19del/L858R)でStage IB/II/IIIAの完全切除された非扁平上皮NSCLC患者、PS 0〜1・試験群:オシメルチニブ80mg/日 最大3年間治療・対照群:プラセボ 化学療法による前治療も許容された・評価項目:[主要評価項目]治験担当医師評価によるStage II/IIIA患者の無病生存期間(DFS)、推定HR=0.70[副次評価項目]全集団のDFS、全生存期間(OS)、安全性、健康関連QOL 主な結果は以下のとおり。・術後補助化学療法の前治療を受けたのは、全対象682例中410例(オシメルチニブ群203例、プラセボ群207例)であった。治療サイクルの中央値は4.0であった。・補助化学療法の実施は70歳以上の患者に比べ、70歳未満の患者(70歳以上対70歳未満:42%対66%)、Stage II〜IIIAの患者(Stage IB対 II〜IIIA:26%対76%)、アジアで登録された患者(アジア以外で登録対アジアで登録:53%対65%)で多かった。・DFSはオシメルチニブ群が良好で、対プラセボのハザード比(HR)は、補助化学療法施行患者で0.16(95%CI:0.10~0.26)、補助化学療法非施行患者では0.23(95%CI:0.13~0.40)であった。この傾向はStage関係なく観察されている。  今回の探索的研究の結果は、前治療の補助化学療法の実施にかかわらず、Stage IB~IIIA のEGFR変異NSCLCに対するオシメルチニブの術後補助療の有効性を支持するものだ、と筆者は結論付けている。

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EGFR陽性肺がん1次治療ラムシルマブ+エルロチニブの日本人サブセット(RELAY)/JTO Clin Res Rep

 未治療のEGFR変異非小細胞肺がん(NSCLC)に対するラムシルマブ+エルロチニブの1次治療は、国際第III相RELAY試験で無増悪生存期間を有意に延長した(ハザード比率[HR] =:0.59、p<0.0001])。同試験の日本人サブ解析の結果が発表された。グローバルと同様の良好な結果が示されている。 この日本人サブ解析では有効性、安全性および進行後のEGFRT790M変異発現率を評価している。 主な結果は以下のとおり。・RELAY試験449例中、日本人サブセットは211例(47.0%)で、ラムシルマブ+エルロチニブ(RAM+ERL群)106例、プラセボ+エルロチニブ(ERL群)105例に割り付けられた。・日本人ITT集団のPFS中央値はRAM+ERL群19.4ヵ月、ERL群11.2ヵ月(HR :0.610、95%:0.431~0.864)であった。・EGFRexon19欠失グループではRAM+ERL群16.6ヵ月、ERL群12.5ヵ月(HR:0.701、0.424~1.159)であった。・EGFRexon21 L858RグループではRAM+ERL群19.4ヵ月、ERL群10.9ヵ月(HR:0.514、0.317~0.835)であった。・RAM+ERL群のGrade3以上の有害事象は高血圧(24.8%)、ざ瘡様皮膚炎(23.8%)などであった。・治療進行後のエルロチニブ耐性によるEGFRT790M発現率はRAM+ERL群47%、ERL群50%、と両群間で同等であった。 ラムシルマブ+エルロチニブの1次治療は、日本人サブセットにおいて、臨床的に意味のある有効性を示し、新たな安全性の問題も認められなかった。ラムシルマブの追加が、治療進行後EGFRT790Mのへ発現に影響をおよぼすこともなかった。

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糖尿病、心不全、CKDと拡大するダパグリフロジン/AZ・小野薬品

 アストラゼネカと小野薬品工業は、選択的SGLT2阻害剤ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)が2021年8月25日に2型糖尿病合併の有無にかかわらず、わが国で初めて「慢性腎臓病(CKD)」の効能または効果の追加承認を取得したことを受けて、「国内における慢性腎臓病治療の新たなアプローチ -SGLT2阻害剤フォシーガの慢性腎臓病治療への貢献-」をテーマにメディアセミナーを開催した。 セミナーでは、今回の追加承認のもとになった“DAPA-CKD STUDY”などの概要などが説明された。人工透析の医療費は年1.6兆円 セミナーでは、柏原 直樹氏(川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 教授)を講師に迎え、「腎臓病の克服を目指して」をテーマに講演が行われた。 慢性腎臓病(CKD)の推定患者は、全国で約1,300万人と推定され、2017年時点での慢性透析患者数も約33万4,000人に上り、年間1.57兆円に上る医療費が人工透析に使用されている。CKDは加齢とともに増加し、高齢化社会の日本では腎機能症障害への対応は今後も大きな課題となる。 そこで、近年、腎疾患対策の推進のために厚生労働省は、全体目標として「CKDの早期発見・診断、良質で適切な治療の実施と継続」「重症化予防」「患者のQOLに維持向上」を掲げ、成果目標として2028年までに新規透析導入患者数を35,000人以下に減少させるという目標を謳っている。DAPA-CKD試験の概要 こうしたCKDの克服に期待されているのが治療薬である。今回、CKDへの効能または効果の追加承認を取得したダパグリフロジンは、DAPA-CKD試験でその効果が検証された。 本試験は、国際多施設共同試験として18歳以上の慢性腎臓病患者4,304例(うち日本人244例)を対象に行われ、対象患者をダパグリフロジン10mg群とプラセボ群に1:1に無作為に割付、標準治療に追加して1日1回経口投与した。主要複合エンドポイントは「eGFRの50%以上の持続的な低下、末期腎不全への進展、心血管死または腎臓死」のうち、いずれかのイベント初回発現までの期間で実施された。 その結果、32ヵ月時点での各エンドポイントの成績は以下の通りだった。・主要複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群で約20%だったのに対し、ダパグリフロジン群では約12%であり、ハザード比は0.61(95%CI:0.51、0.72)だった。・腎複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群が約17%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約9%であり、ハザード比は0.56(95%CI:0.45、0.68)だった。・心血管複合エンドポイントの累積発現率がプラセボ群が約7%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約6%であり、ハザード比は0.71(95%CI:0.55、0.92)だった。・全死亡までの期間の累積発現率がプラセボ群が約8.5%だったのに対し、ダパグリフロジン群は約5.5%であり、ハザード比は0.69(95%CI:0.53、0.88)だった。 また、サブグループ解析では、「糖尿病の有無」、「心不全の有無」、「腎機能低下例」、「IgA腎症」が行われた。 安全性としてダパグリフロジンでは、2,149例中で重篤な有害事象は594例(27.6%)が報告され、急性腎障害、肺炎、心不全、急性心筋梗塞、末期腎不全の順で多かったが、顕著な有害事象はなかった。 最後に柏原氏は、今回の適応拡大について私見としながら「ようやくわが国も世界に追いついた。今後既存薬の見直しの機運が上がる可能性がある。“DAPA STUDY”によりさらなる疾病の克服や患者への希望の共有がなされることを望む」と述べレクチャーを終えた。

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アテゾリズマブ+ベバシズマブ+化学療法のNSCLC1次治療、EGFR変異、肝臓/脳転移例への有効性(IMpower150)/JTO

 アテゾリズマブ+ベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(ABCP)またはアテゾリズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(ACP)とベバシズマブ+カルボプラチン/パクリタキセル(BCP)を評価する第III相IMpower150試験の、EGFR変異および肝臓または脳転移サブグループに関する全生存(OS)の最終解析が報告された。 IMpower150試験の対象は、化学療法未治療の切除不能な進行・再発の非扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)患者1,202例。安定した既治療の脳転移症例は許可されている。 試験群はABCP群とACP群で対照群はBCP群である。対象患者は各群に無作為に割り付けられた。 主な結果は以下のとおり。・データカットオフ時(2019年9月13日)の追跡期間中央値は39.3ヵ月であった。[ABCP群対BCP群]・EGFR変異症例全体のOSハザード比[HR]は0.60(95%CI:0.31~1.14)、EGFR-TKI既治療例のHRは0.74(95%CI:0.38~1.46)、とABCP群はBCP群に比べOSの改善を維持した。・ベースライン時に肝転移を有する症例のOS HRは0.68(95%CI:0.45~1.02)、とABCP群のOS改善が維持されていた。[ACP群対BCP群]・EGFR変異症例全体のOS HRは1.0(95%CI:0.57~1.74)、EGFR-TKI既治療例のHRは1.22(95%CI:0.68~2.22)、とACP群は生存ベネフィットを示せなかった。・ベースライン時に肝転移を有する症例のOS HRは1.01(95%CI:0.68~1.51)、とACP群の生存ベネフィットを示されなかった。[脳転移]・新たな脳転移の発症全体は100例(8.3%)にみられた。・正式な評価ではないが、ABCP群ではBCP群に比較して、新たに脳転移が発現するまでの時間(TTD)に改善が見られた(HR:0.68、95%CI:0.39~1.19)。 今回の探索的研究の最終解析は、EGFR変異症例および肝転移を有する症例において、ABCP群のBCP群に対するOSベネフィットを示した。一方、ABCP群の脳病変のTTD延長については、さらなる調査が必要だと筆者は述べている。

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tirzepatideの効果、心血管高リスク2型DMでは?/Lancet

 心血管リスクが高い2型糖尿病患者において、デュアルGIP/GLP-1受容体作動薬tirzepatideの週1回投与は、インスリン グラルギンと比較し52週時点のHbA1c値低下について優越性が示され、低血糖の発現頻度も低く、心血管リスクの増加は認められないことが示された。イタリア・ピサ大学のStefano Del Prato氏らが、心血管への安全性評価に重点をおいた第III相無作為化非盲検並行群間比較試験「SURPASS-4試験」の結果を報告した。Lancet誌オンライン版2021年10月18日号掲載の報告。tirzepatideの3用量(5、10、15mg)とインスリン グラルギンを比較 試験は、14ヵ国、187施設において実施された。適格患者は、メトホルミン、SU薬、SGLT2阻害薬のいずれかの単独または併用投与による治療を受けており、ベースラインのHbA1c値が7.5~10.5%、BMI値25以上、過去3ヵ月間の体重が安定している2型糖尿病の成人患者で、心血管リスクが高い患者とした。心血管リスクが高い患者とは、冠動脈・末梢動脈・脳血管疾患の既往がある患者、または慢性腎臓病の既往がある50歳以上の患者で、推定糸球体濾過量(eGFR)が60mL/分/1.73m2未満またはうっ血性心不全(NYHA心機能分類クラスII/III)の既往がある患者と定義した。 研究グループは、被験者をtirzepatideの5mg群、10mg群、15mg群またはインスリン グラルギン(100U/mL)群に1対1対1対3の割合で無作為に割り付け、tirzepatideは週1回、インスリン グラルギンは1日1回皮下投与した。tirzepatideは2.5mgより投与を開始し、設定用量まで4週ごとに2.5mgずつ増量した。インスリン グラルギンは10U/日で開始し、自己報告による空腹時血糖値が100mg/dL未満に達するまで漸増した。52週間投与した時点で有効性の主要評価項目について解析し、その後、心血管疾患に関する追加データを収集するため最大で52週間の追加治療を行った。 有効性の主要評価項目はベースラインから52週までのHbA1c値の変化量で、tirzepatide(10mg、15mg)のインスリン グラルギンに対する非劣性(非劣性マージン 0.3%)および優越性を検証した。安全性として、心血管死、心筋梗塞、脳卒中および不安定狭心症による入院の複合エンドポイント(MACE-4)についても評価した。10、15mg群で血糖降下作用の非劣性・優越性を確認、心血管リスクに差はなし 2018年11月20日~2019年12月30日に、3,045例がスクリーニングされ、2,002例が無作為に割り付けられた。治験薬の投与を1回以上受けた修正ITT集団は1,995例で、tirzepatide 5mg群329例(17%)、10mg群328例(16%)、15mg群338例(17%)、インスリン グラルギン群1,000例(50%)であった。 52週時点におけるHbA1c値のベースラインからの変化量(最小二乗平均値±SE)は、tirzepatide 10mg群-2.43±0.053%、15mg群−2.58±0.053%、グラルギン群-1.44±0.030%であった。グラルギン群に対する推定治療差は、10mg群で−0.99%(97.5%CI:−1.13~−0.86)、15mg群で−1.14%(97.5%CI:−1.28~−1.00)であり、非劣性および優越性が確認された。 有害事象については、tirzepatide群で悪心(12~23%)、下痢(13~22%)、食欲不振(9~11%)、嘔吐(5~9%)の発現頻度がグラルギン群(それぞれ2%、4%、<1%、<2%)より高かったが、ほとんどが軽症~中等度で、用量漸増期に生じた。低血糖(血糖値<54mg/dLまたは重症)の発現頻度は、tirzepatide群(6~9%)がグラルギン群(19%)より低く、とくにSU薬を用いていない患者で顕著であった(tirzepatide群1~3%、グラルギン群16%)。 MACE-4のイベントは全体で109例に認められた。tirzepatide 5mg群19例(6%)、10mg群17例(5%)、15mg群11例(3%)で、tirzepatide群合計で47例(5%)、インスリン グラルギン群では62例(6%)であった。tirzepatide群のグラルギン群に対するMACE-4イベントのハザード比は0.74(95%信頼区間:0.51~1.08)であり、MACE-4のリスク増加は認められなかった。試験期間中の死亡はtirzepatide群で25例(3%)、グラルギン群で35例(4%)、計60例確認されたが、いずれも試験薬との関連性はないと判定された。

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