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GLP-1RA使用は脱毛を起こす可能性があるが、非瘢痕性で可逆的であるため、丁寧な説明をすることで患者さんの不安解消への配慮を忘れないでほしい(解説:島田俊夫氏)

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)は、2型糖尿病治療において体重減少・心血管保護効果を含む多面的な利点を有し、近年その使用が急速に拡大している。一方で、これら薬剤の導入後に脱毛を訴える症例が散見され、FDAも2023年以降、安全性シグナルとして評価を開始している1)。本稿では、BMJ誌2026年7月22日号に報告された大規模ターゲットトライアル・エミュレーション研究の結果2)を踏まえ、一般内科医が臨床で留意すべきポイントを整理する。 Penn Medicineの電子カルテデータ(2019~24年)を用いた本研究では、GLP-1RA新規使用者1万2,004例を対象に、SGLT2阻害薬1万5,221例およびDPP-4阻害薬1万1,233例との比較が行われた。主要アウトカムは新規発症の脱毛(ICD-10コード)であり、安定化逆確率重み付け(sIPTW)により背景因子を調整したうえでハザード比(HR)が推定された。 結果として、GLP-1RA使用は脱毛リスクの上昇と有意に関連していた。SGLT2阻害薬との比較ではHR:1.37(95%信頼区間[CI]:1.08~1.73)、DPP-4阻害薬との比較ではHR:1.68(95%CI:1.28~2.20)と、いずれも有意な増加を示した。さらにサブ解析では、この関連は非瘢痕性脱毛(telogen effluviumを含む)に特異的であり、SGLT2阻害薬比較でHR:1.53、DPP-4阻害薬比較でHR:1.72と、より明瞭なリスク上昇が確認された。一方、瘢痕性脱毛(cicatricial alopecia)では有意差は認められず、炎症性・破壊性の脱毛症を誘発する可能性は低いと考えられる。 GLP-1RAによる急速な体重減少や栄養摂取量の変化は、telogen effluviumの既知の誘因であり、本研究結果と整合的である。とくにセマグルチドやチルゼパチドなど、強力な減量効果を持つ薬剤では、体重減少速度が速い症例ほど脱毛を訴える可能性が高い。絶対リスクは低いものの、脱毛は患者の心への影響が大きく、治療継続に影響する場合もあるため、薬剤選択時のshared decision-makingにおいて忘れず説明すべき副作用の1つといえる。 臨床的には、GLP-1RA開始後の急激な体重減少を避けるため、栄養状態の維持(とくに蛋白摂取)を指導し、脱毛が生じた場合には非瘢痕性で多くが可逆的であることを説明することが重要である。心血管・腎保護効果などGLP-1RAの利点は大きく、本副作用は治療中止を要するものではないが、患者の不安軽減のため事前説明が望ましい。

2.

ESC心不全GL改訂、HFmrEF廃止・「急性心不全」は「非代償性心不全」へ/ESC2026

 欧州心臓病学会(ESC)による新たな心不全診療ガイドライン「2026 ESC Guidelines for the management of heart failure」がEuropean Heart Journal誌オンライン版2026年8月28日号でオンライン公開され1)、8月28~31日にドイツ・ミュンヘンで開催されたEuropean Society of Cardiology 2026(ESC2026、欧州心臓病学会)において改訂の要点が解説された2)。今回の改訂では、疾患の予防と早期治療の徹底、左室駆出率(LVEF)に基づく分類の簡素化、「急性心不全」から「非代償性心不全」へ名称変更、新たな治療分類(FMT・AMT・GDIT)の導入など、時代に即した大幅な再定義が行われている。 本ガイドラインにおける主な改訂のポイントは以下のとおり。【心不全の分類・定義の刷新】LVEFに基づく分類の簡素化(HFmrEFの廃止) 従来、LVEF 41~49%の病態は「軽度低下した心不全(HFmrEF)」と定義されていたが、今回の改訂でこの分類が廃止された。HFmrEF患者は、LVEF低下例(HFrEF)と同様の病態生理を共有し、同様の治療から恩恵を受けることが明らかになったためである。これにより、心不全のフェノタイプは以下の2つにシンプル化された。新LVEF分類・LVEFが低下した心不全(HFrEF):LVEF 50%未満で、心不全の症状・徴候を有する病態。・LVEFが保たれた心不全(HFpEF):LVEF 50%以上で、心不全の症状・徴候に加え、構造的・機能的異常やナトリウム利尿ペプチドの上昇を認める病態。予防・早期介入のためのステージ分類導入 発症予防と早期治療の徹底を目的として、心不全リスク段階(ステージA)から、前心不全(ステージB)、症候性心不全(ステージC)、重症/進行性心不全(ステージD)に至る段階的なステージ分類が採用された。また、高血圧またはステージBの心不全患者において、心不全発症リスクを低減するため、収縮期血圧130mmHg未満を目指す厳格な血圧管理がクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。「急性心不全」から「非代償性心不全」への名称変更 従来「急性心不全(Acute HF)」と呼ばれていた病態は、心機能の徐々の低下に伴い代償機構が破綻した状態を正確に表現するため、「非代償性心不全(Decompensated HF:DHF)」へ名称が変更された。DHFの初期管理においては、尿中ナトリウムモニタリングに基づく利尿薬調整(クラスIIb)や、初期安定化後のSGLT2阻害薬の院内早期導入(クラスI)が盛り込まれている。【治療分類の刷新と薬物治療のアップデート】「GDMT」から動的な3分類(FMT・AMT・GDIT)への移行 長年使用されてきた「ガイドラインに基づく薬物治療(GDMT)」という用語が見直された。新規薬剤や医療デバイスの承認に合わせて動的(dynamic)に対応し、常に最新の管理を行えるよう、治療法が以下の3クラスに再定義された。治療クラスの新たな3分類・基礎的薬物治療(FMT:Foundational medical therapy):対象を限定しない心不全患者全体に対して、罹患率や死亡率の低減に関する最も強いエビデンスを持つクラスI推奨の薬物治療。 ―HFrEFのFMT:β遮断薬、ACE阻害薬/ARNI/ARB、MRA、SGLT2阻害薬の4薬剤。  ―HFpEFのFMT:MRA、SGLT2阻害薬の2薬剤。・追加的薬物治療(AMT:Additional medical therapy):特定サブ集団における転帰改善、または症状・QOL改善に特化したエビデンスを持つ薬物治療(クラスIIa/IIb推奨、または特定の症状改善目的のクラスI推奨)。・ガイドラインに基づく介入治療(GDIT:Guideline-directed interventional therapy):推奨されるすべての心臓植え込み型電子デバイス(CIED)や経カテーテル治療などのインターベンション治療。FMTの主な推奨事項・全LVEF領域におけるSGLT2阻害薬とMRAの推奨 SGLT2阻害薬およびミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)は、LVEFを問わずすべての有症候性心不全患者に対し、心不全入院または心血管死のリスク低減を目的としてクラスI(エビデンスレベルA)で推奨された。具体的な対象薬剤は以下のとおり。・SGLT2阻害薬:ダパグリフロジン、エンパグリフロジン・MRA ―HFrEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン、エプレレノン) ―HFpEF:ステロイド性MRA(スピロノラクトン)、非ステロイド性MRA(フィネレノン) なお、慢性心不全の管理において、FMTは症状やバイタルサイン、血液検査を参考に少なくとも1~2週間ごとに漸増し、目標用量に達することがクラスIで推奨された。また、無症状化やLVEF改善が得られた場合であっても、原則として最高耐容用量でのFMT継続がクラスIで推奨されている。AMTの主な推奨事項・肥満を伴うLVEF 45%以上の心不全に対するGLP-1受容体作動薬 BMI 30kg/m2以上かつLVEF 45%以上の肥満を伴う有症候性心不全患者(糖尿病の有無を問わない)に対し、体重減少、運動耐容能・QOLの改善を目的としてセマグルチドまたはチルゼパチドの投与がクラスIIa(エビデンスレベルB1)で推奨された。・慢性心不全へのAMT 最適なFMTを実施しても有症候性のHFrEF(LVEF 40%以下)患者に対し、心不全入院リスク低減目的で強心配糖体(ジゴキシンまたはジギトキシン)の追加がクラスIIaで推奨された。また同様に、FMT 治療後のHFrEF(LVEF 45%未満)患者に対してはベリシグアトの追加もクラスIIbで考慮される。GDITの主な推奨事項・経カテーテル的Edge-to-Edge修復術(TEER) 最適なFMTや適応のある心臓再同期療法(CRT)を実施しても持続する、血行動態が安定した重症二次性僧帽弁閉鎖不全症を伴う有症候性HFrEF患者に対し、心不全入院リスク低減およびQOL改善を目的としたTEERがクラスI(エビデンスレベルB1)で推奨された。【早期介入の重要性と患者参加型医療への展望】 ガイドライン作成タスクフォースの共同委員長を務めたLars Kober氏(デンマーク・コペンハーゲン大学病院)は、「高齢化や肥満などのリスク因子の増加に伴い、心不全の全体的な疾病負担は高まると予想される。今回のガイドラインで特に強調したかったのは、予防と可能な限り早期からの治療開始の重要性である」とプレスリリースで述べている。さらに新たな治療用語の導入について、「10年以上前に導入された『GDMT』という用語は治療の進歩に伴い、今日において何を指すのか曖昧になっていた。新用語(FMT・AMT・GDIT)は、今後新たな薬剤やデバイスが承認された際にも柔軟に対応し、常に時代に即した概念であり続けられるよう設計されている」と解説している。 同じく共同委員長を務めたMarianna Adamo氏(イタリア・ブレシア大学)は、LVEF分類の簡素化について「軽度低下(HFmrEF)という分類は、従来臨床試験に含まれにくかった患者に光を当てるため導入されたが、これらの患者がHFrEFと同様の病態生理を共有し、同様の治療恩恵を受けることが判明したためシンプル化した」と説明している。また、「急性」から「非代償性」への変更点については「突然悪化するのではなく、心臓が欠陥を補いきれなくなるまで徐々に機能低下していく病態を明確にするための改訂である」と付言した。 本ガイドラインには患者教育とセルフケアに関するセクションが含まれている。Adamo氏は「患者教育とライフスタイルのアドバイスは、患者自身が心不全を管理し、医療者と意思決定を共有する力を与える。患者が自身のケアのパートナーとなることを目指し、患者向けバージョンのガイドラインも公開されている3)」と結んでおり、医療者と患者が一体となった包括的な心不全管理の重要性がさらに高まると期待される。

3.

卵巣明細胞がん治療薬リソバリシブ使用時の高血糖に関する注意喚起/日本糖尿病学会

 卵巣明細胞がんの新たな治療薬としてPI3Kα阻害薬リソバリシブ(商品名:ハイツエキシン)が発売された。リソバリシブはその薬剤特性から高い有効性とともに、高血糖リスクが懸念される。日本糖尿病学会は、同薬の高血糖などで紹介を受ける糖尿病医への情報共有を目的に「PI3Kα阻害剤リソバリシブメシル酸塩水和物使用時の高血糖発現についての注意喚起」を発出した。 卵巣明細胞がんではPIK3CA遺伝子変異が高頻度に認められ、PIK3CAがコードするPI3Kαは有望な治療標的である。リソバリシブはがん化学療法後のPIK3CA変異陽性の卵巣明細胞がん(日本人52例を含む)を対象としたCYH33-G201試験において、奏効率34.5%を示している。これらの結果から、国内では2026年3月に「がん化学療法後に増悪したPIK3CA遺伝子変異を有する卵巣明細胞癌」を効能・効果として承認された。 主な注意喚起は以下のとおり。・CYH33-G201試験におけるリソバリシブの高血糖の発現率は89.2%。尿中ケトン体陽性3例、ケトアシドーシス1例およびケトーシス1例も報告されている。・高血糖発現例のうち96.4%に血糖降下薬が開始され、インスリン治療を要した例も43.4%確認された。・高血糖発現日の中央値は4.0日と短いため、投与開始直後の血糖自己測定または持続グルコースモニタリングの使用を検討する。・リソバリシブの半減期は12.8~25.2時間と長いため、高血糖遷延に注意し、血糖モニタリングを実施する必要があると考えられる。・CYH33-G201試験における血糖降下薬はメトホルミンが中心であったが、リソバリシブは消化器系の副作用の発現率が高いため、状況に応じてSGLT2阻害薬などの使用も考慮する。・空腹時血糖250mg/dL以上の高血糖を認めた場合は、原則として糖尿病を専門とする医師に連絡してインスリン治療を含めた治療を検討する。 同学会は、急激な血糖値上昇のリスクや糖尿病ケトアシドーシスでインスリン投与を要する可能性も想定し、診療に当たっていただきたいとしている。

4.

高齢2型糖尿病、SGLT2阻害薬で死亡・透析リスク低く/統数研・横浜市大ほか

 高齢の糖尿病患者への薬物治療では、DPP-4阻害薬だけでなく、近年ではSGLT2阻害薬も使用されている。その一方で、SGLT2阻害薬の75歳以上の成人におけるエビデンス、とくにDPP-4阻害薬との比較データは限られている。このテーマについて野間 久史氏(統計数理研究所/総合研究大学院大学 教授)、後藤 温氏(横浜市立大学医学部 教授)らの研究グループは、レセプトデータなどを基に標的試験エミュレーションを実施した。その結果、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。Age and Ageing誌2026年8月3日号に掲載。高齢糖尿病患者へのSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の使用で違いはあるか 研究グループは、わが国のレセプトデータと健康診断データを連結し、標的試験エミュレーションを実施。SGLT2阻害薬またはDPP-4阻害薬の投与を新たに開始した75歳以上の2型糖尿病患者を対象に、死亡、心血管および腎臓の転帰について、1ヵ月の導入期間を設けたうえで、逆確率重み付け法を用いてITT(治療意図)解析による効果を推定した。 主な結果は以下のとおり。・本研究では8,486例(SGLT2阻害薬群2,204例、DPP-4阻害薬群6,282例)が解析された。・1ヵ月の導入後、SGLT2阻害薬群では全死因死亡リスクの低下(ハザード比[HR]:0.677、95%信頼区間[CI]:0.500~0.916)および末期腎不全または透析導入リスクの低下(HR:0.374、95%CI:0.157~0.890)に関連していた。・ITT解析において、心不全による入院(HR:1.103、95%CI:0.854~1.426)や心筋梗塞(HR:1.015、95%CI:0.768~1.341)については、明確な差は認められなかった。・脳卒中の発生頻度はSGLT2阻害薬群で高かった(HR:1.420、95%CI:1.165~1.828)が、この結果の解釈には慎重な検討が必要である。 以上の結果から研究グループは、「75歳以上の2型糖尿病患者においては、SGLT2阻害薬は、DPP-4阻害薬と比較し、全死因死亡および腎臓関連リスクの低下と関連していることが示唆された。観察された脳卒中リスクの上昇については、残存交絡因子、競合する死亡要因、および脆弱な高齢者における異質性がこの傾向に寄与している可能性があるため、慎重な解釈が必要」と結論付けている。

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視覚障害につながるまれな眼疾患とGLP-1受容体作動薬の関連性

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)の使用が、視覚障害につながるまれな眼疾患の発症リスク上昇と関連する可能性があるとする研究結果が報告された。米ラトガース大学のChintan Dave氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に7月14日付で掲載された。ただし、この病気を発症する絶対リスクは非常に低いという。 この研究では、虚血性視神経症(ION)という眼の病気に焦点が当てられた。IONは、網膜で受け取った情報を脳へ送る「視神経」に虚血(血流の不足)が生じる病気で、視野が欠けたり視力が低下したりすることがある。近年、GLP-1RAとIONとの関連について関心が高まっているが、これまで十分なデータは得られていなかった。Dave氏らは、米国の大規模医療保険請求データベースを用い、実際の臨床試験に近い条件を再現する解析手法(標的試験エミュレーション)で検討した。 18~65歳までの2型糖尿病患者のうち、GLP-1RAまたはSGLT2阻害薬(SGLT2i)、DPP4阻害薬(DPP-4i)の処方が開始された患者を解析対象とした。結果に影響を及ぼし得る80項目以上の交絡因子を統計学的に調整して、処方開始から18カ月間のIONの発症リスクを比較した。 SGLT2iとの比較では、1万人当たりのION発症率がGLP-1RA群では8.5、SGLT2i群では5.5だった(リスク差〔RD〕3.0〔95%信頼区間0.4~5.7〕)。DPP-4iとの比較では、GLP-1RA群7.8、DPP-4i群4.2だった(RD3.6〔同1.1~6.1〕)。つまり、GLP-1RAの処方が、わずかなION発症リスク上昇に関連している可能性が見られた。とはいえ、1万人当たりわずか数人のリスク差であった。 この報告は医療界の関心を集めているが、研究者らは、「患者個々の実際のリスクは非常に低い」と強調。また、「リスクは薬剤の直接的な影響というよりも、解析対象者(全員が2型糖尿病患者)の特徴を反映している可能性もある」とし、因果関係の究明にさらなる研究が必要としている。 論文の筆頭著者であるDave氏は、「IONはまれな病気ではあるが突然の視力喪失を引き起こすことがあるため臨床的に重要だ。リスクの上昇はわずかだが、この潜在的な関連性について、医師は患者とともに認識しておくべき」と述べている。 IONの症状は通常、完全な失明ではなく、片方の眼の視野がぼやけたり欠けたりするといった症状が多い。発症後数カ月たつとわずかに改善する患者もいるが、多くの場合、視力や視野の障害は永続的なものになる。本研究では、男性、50歳以上、心血管疾患や眼疾患がある人で、GLP-1RA使用者と比較薬使用者とのIONリスク差が大きい傾向がみられた。Dave氏はGLP-1RAの使用に関して、「IONのリスクが高い患者の症状の早期発見と迅速な眼科的評価が、特に重要ではないか」と語っている。

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フィネレノンは非糖尿病CKDのeGFR低下を抑制する(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しい? 非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(non-steroidal mineralocorticoid receptor antagonist:nsMRA)であるフィネレノン(商品名:ケレンディア)の非糖尿病慢性腎臓病(CKD)の腎機能低下抑制効果について、最近、二重盲検無作為化比較試験(RCT)のFIND-CKD研究の2報が報告された。1報は非糖尿病CKD患者全体を対象とした解析(Heerspink HJL, et al. N Engl J Med. 2026;395:533-545.)であり、もう1報は、そのうち糸球体疾患を有する患者に限定した探索的サブ解析(CLEAR!ジャーナル四天王「フィネレノンは糸球体疾患由来のCKDに対しても腎保護的である可能性がある」)である。これらの解析から、フィネレノンには、非糖尿病CKD患者全体でeGFRスロープの低下を遅延化させる腎保護効果があることが示された。CKD腎保護薬としてのフィネレノンの位置付け 糖尿病を合併するCKDに対する腎保護療法としては、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nsMRA)、およびGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)の4剤が推奨されている。このうち、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は第1選択薬として推奨されている。一方、nsMRAおよびGLP-1 RAは、これらの薬剤に上乗せして使用する薬剤として推奨されている(KDIGOガイドライン:Levin A, et al. Kidney Int. 2024;105:684-701.)。これらの推奨の根拠となったエビデンスは、糖尿病CKD患者を対象としたFIGARO-DKD試験およびFIDELIO-DKD試験、ならびに両試験の統合解析であるFIDELITYの成績である。一方、非糖尿病CKDではフィネレノンに関するRCTは実施されていなかった。今回のFIND-CKD研究で得られた非糖尿病CKDにおける肯定的な結果と、これまでに蓄積されてきた糖尿病CKDにおけるエビデンスを合わせて考えると、フィネレノンの腎保護作用は糖尿病の有無にかかわらずCKD全般で期待される可能性が示唆された。本研究の主要結果 FIND-CKD研究は、世界24ヵ国で実施された国際共同第III相二重盲検RCTである。糖尿病を合併しないCKD患者1,584例を対象とし、フィネレノン群793例とプラセボ群791例を比較した。対象患者の腎機能はCKD G3bが中心で、UACRは大部分がA3に相当する中等度~高度アルブミン尿を呈していた。また、57.0%は糸球体疾患を原疾患とするCKDであり、99.8%が最大耐用量のRAS阻害薬による治療を受けていた。 主要評価項目は、ベースラインから32ヵ月時点までのeGFRの平均年間変化率である総eGFRスロープ。その結果、eGFRの平均年間変化率は、フィネレノン群で-3.3mL/分/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:-3.6~-3.1)、プラセボ群で-4.0mL/分/1.73m2/年(95%CI:-4.3~-3.8)であり、群間差は0.7mL/分/1.73m2/年(95%CI:0.3~1.1、p<0.001)であった。 副次評価項目には、腎・心血管複合イベント、腎複合イベント、心血管複合イベントなど。腎・心血管複合イベントの発生リスクは、フィネレノン群でプラセボ群と比較して有意に低かった(ハザード比[HR]:0.77、95%CI:0.60~0.99、p=0.04)。腎複合イベントのHRは0.78(95%CI:0.60~1.01)、心血管複合イベントのHRは0.60(95%CI:0.27~1.33)であった。 高カリウム血症の発現率は、フィネレノン群で17.0%(135例)、プラセボ群で13.3%(105例)であった。今後のCKD治療にどう影響する? CKDにおける腎保護の基本は、蛋白尿を減少させ、適切に降圧することである。加えて、糖尿病では血糖管理が重要であり、慢性糸球体腎炎・IgA腎症、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎などでは、ステロイド、扁桃摘出術、免疫抑制薬などが病態に応じて選択される。フィネレノンによるCKDの腎保護作用は、「MRの過剰活性化→炎症・線維化」という共通の経路を抑制することによる。FIND-CKDは、非糖尿病CKDにおいても同剤が腎保護作用を有するという仮説を検証したRCTである。本研究の意義と展望については、Dr. Robert TotoのEditorial(Toto R. N Engl J Med. 2026;395:600-601.)のコメントは参考になる。Totoは、「フィネレノンは、CKDや高血圧の病態の根底にあるMRの過剰活性化を抑制する可能性がある。FIND-CKD研究の成果は、フィネレノンを『糖尿病CKDの腎保護薬』から、非糖尿病CKDにおいても『MRの過剰活性化による残余リスクを抑制する薬剤』へと位置付ける可能性がある」と展望している。言い換えると、FIND-CKDはフィネレノンを、「糖尿病CKDの薬」から「CKD全般の腎保護薬」へと適応を拡大する根拠を提供した初めての研究ともいえる。もっとも、eGFR低下の遅延抑制に加えて、腎ハードエンドポイント(腎不全や透析開始など)への効果、CKD疾患別の効果、SGLT2阻害薬との併用効果など、今後検討すべき課題は残されている。 現在、国内外のガイドラインにおいて、非糖尿病CKDに対するフィネレノンの使用についての言及はない。しかし、本研究により、今後のガイドライン改訂において、同剤がCKD全般で新たな腎保護の治療選択肢として位置付けられる可能性が高い。実臨床で非糖尿病CKD患者において、フィネレノン投与を考慮すべき患者として、(1)UACRが中等度から高度、(2)eGFRが25mL/分/1.73m2以上、(3)ARBやSGLT2阻害薬による先行治療を行ってもなお残余リスクがある患者、が想定される。また、フィネレノン投与時には、高カリウム血症のリスクを念頭に入れ、血清カリウム濃度を適切にモニターすべきである。

7.

待機的心臓手術後のAKI発生、周術期ダパグリフロジン投与で抑制/JAMA

 待機的心臓手術を受ける患者において、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン(10mg)の周術期における4回投与(手術日前日~術後2日目まで1日1回経口投与)はプラセボと比較して、術後7日間の急性腎障害(AKI)の発生を減少させたことが示された。オランダ・アムステルダム大学医療センターのMaartina J. P. Oosterom-Eijmael氏らMERCURI-2 Study Groupが、同国で行った多施設共同二重盲検プラセボ対照無作為化試験の結果を報告した。待機的心臓手術を受ける患者の2~50%でAKI発生が認められるが、これを予防する薬物療法は確立されていない。SGLT2阻害薬は先行研究において、腎保護効果がある可能性やAKI発生の減少が示されていた。JAMA誌オンライン2026年7月30日号掲載の報告。オランダの7施設で無作為化試験、ダパグリフロジン群vs.プラセボ群 研究グループは、待機的心臓手術を受ける患者において、手術前日から開始するダパグリフロジンの投与が、プラセボとの比較において術後7日間のAKI発生を減少させるとの仮説について検証した。 試験はオランダの7施設(大学医療センター2施設、非大学病院5施設)で実施され、対象は待機的心臓手術を受ける18歳以上の成人患者とした。除外基準は1型糖尿病、2型糖尿病でBMI値25未満かつ1日複数回のインスリン注射を施行、ベースラインeGFRが20mL/分/1.73m2未満、糖尿病性ケトアシドーシスの既往、登録時評価の収縮期血圧100mmHg未満、SGLT2阻害薬服用中、SGLT2阻害薬に対する既知/疑いのアレルギーであった。また、妊娠(可能性を含む)・授乳中、妊娠を希望する女性なども除外された。 被験者を、1日1回経口投与のダパグリフロジン(10mg)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、手術前日(院内で午後3時~午後8時)に投与を開始し、術後2日目まで合計4回投与した(2回目は手術当日の朝、3回目は術後1日目、4回目は術後2日目)。 主要評価項目は、術後7日間におけるAKI発生の群間差とした。AKIは、Kidney Disease:Improving Global Outcomes(KDIGO診断基準)に基づき、術後48時間以内に血清クレアチニン値0.3mg/dL(26.5μmol/L)以上上昇、術後7日以内に血清クレアチニン値が基礎値より1.5倍以上増加、または術後6~12時間の尿量が0.5mL/kg/時未満と定義した。術後7日間のAKI発生率、28%vs.52%で有意差 被験者登録は2023年6月8日~2025年1月27日に行われ、最終追跡調査日は2025年5月16日であった。 784例が登録・無作為化され(各群392例)、778例(99%)が追跡評価を完了した(6例は手術を受けなかった)。ベースラインの両群の患者特性は類似しており、年齢中央値68歳(四分位範囲[IQR]:61~74)、76%が男性、97%が白人であり、BMI中央値27(IQR:25~30)、eGFR中央値80mL/分/1.73m2(IQR:67~89)であった。 7日間のAKI発生は、ダパグリフロジン群111/392例(28%)、プラセボ群205/392例(52%)であった(相対リスク:0.54、95%信頼区間:0.45~0.65、p<0.001)。 最も多くみられた術後の有害事象は、心房細動および再手術であった。心房細動の発現率はダパグリフロジン群45%(176/392例)、プラセボ群45%(176/392例)であり、再手術率はそれぞれ11%(43/392例)、10%(39/392例)であった。

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1日1回経口投与のzenagamtide、2型糖尿病の血糖改善効果は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、1日1回経口投与のzenagamtide(6、25、50mgの3用量ともに)はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。zenagamtide(旧称amycretin)は、GLP-1受容体、アミリン受容体、カルシトニン受容体に作用する単分子ペプチド作動薬である。2型糖尿病を伴わない過体重または肥満者を対象とした初期の臨床試験では、皮下投与および経口投与の両製剤について評価が行われ、いずれも2型糖尿病患者を対象とした第II相の用量反応試験における検討を支持する知見が示されていた。Lancet誌2026年8月15日号掲載の報告。1日1回経口投与の有効性と安全性に関する用量反応試験(6、25、50mg) 2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボと比較したzenagamtideの1日1回経口投与の有効性と安全性に関する用量反応関係を検討する試験は、11ヵ国(ブルガリア、クロアチア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、日本、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン、米国)の83の病院およびクリニックで行われ、3週のスクリーニング期間、36週の投与期間、4週のフォローアップ期間で構成された。 対象は、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%[53~86mmol/mol])の成人(18~75歳)で、SGLT2阻害薬投与の有無を問わずメトホルミン安定用量で治療を受けている患者とした。BMI値は23.0以上50.0未満を適格とした。 被験者は、無作為化・治験薬管理システムを用いて、1日1回経口投与のzenagamtide群またはプラセボ群に5対1の割合で割り付けられ、さらに3つの用量群(6、25、または50mg)のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。プラセボ群に割り付けられた被験者も同様に、各投与スケジュールに対応する適合プラセボ投与群に割り付けられた。無作為化では、スクリーニング時のHbA1c値(8.5%未満または8.5%以上)、居住国(日本またはその他)で層別化も行われた。 zenagamtide経口投与は1.5mgで開始し、維持用量(6、25、50mg)に到達するまで4週ごとに漸増した。被験者および試験スタッフは、各用量群においてプラセボまたはzenagamtideの割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ベースラインから36週までのHbA1c変化量とした。主要評価項目は、無作為化された全被験者を対象とし、レスキュー薬を投与することなく治験薬の投与を継続している間に収集されたデータに基づくefficacy estimandを用いて評価された。安全性は、無作為化された全被験者を対象に評価された。36週時点のHbA1c推定変化量は-0.9%~-1.4% 2024年8月7日~12月27日に、スクリーニングされた915例のうち186例(20%)が、経口zenagamtide群(6mg群54例、25mg群51例、50mg群51例)またはプラセボ群(30例)に無作為化され、全例が解析対象集団に組み入れられた。 ベースライン特性は治療群間で類似しており、平均年齢は55.6歳(SD 9.7)、平均HbA1c値は8.0%(SD 0.8、各群平均値の範囲:7.9~8.1%)、平均BMI値は34.8(SD 6.3)であり、平均糖尿病罹病期間は8年(SD 6)であった。113/186例(61%)が男性であった。 36週時点のベースラインからのHbA1c推定変化量は、zenagamtide 6mg群が-0.9%(対プラセボの推定治療群間差[ETD]:-0.54%、95%信頼区間[CI]:-1.04~-0.04、p=0.033)、zenagamtide 25mg群が-1.3%(ETD:-0.99%、95%CI:-1.49~-0.49、p=0.0001)、zenagamtide 50mg群が-1.4%(ETD:-1.09%、95%CI:-1.59~-0.59、p<0.0001)であった。 有害事象の大部分は消化器系の事象で、zenagamtide 6mg群14/54例(26%)、zenagamtide 25mg群21/51例(41%)、zenagamtide 50mg群24/51例(47%)、およびプラセボ群7/30例(23%)に発現した。 重篤な有害事象は、zenagamtide全投与群の7/186例(4%)で報告された(6mg群2例、25mg群2例、50mg群3例)。プラセボ群において重篤な有害事象は報告されなかった。試験期間中に死亡は認められなかった。 著者は、「全体として、試験で報告された知見は臨床的に意義のあるものであり、第III相試験におけるzenagamtideの1日1回経口投与に関する検討を支持するものであった」とまとめている。

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週1回皮下投与のzenagamtide、2型糖尿病に対する有効性は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、zenagamtide 0.4~40mgの週1回皮下投与はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。zenagamtide(旧称amycretin)は、GLP-1受容体、アミリン受容体、カルシトニン受容体に作用する単分子ペプチド作動薬で、2型糖尿病を伴わない過体重または肥満者を対象に評価が行われた初期の臨床試験において、2型糖尿病患者を対象としたさらなる検討を支持する知見が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年7月30日号掲載の報告。週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応試験 2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボと比較したzenagamtideの週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応関係を検討する試験は、11ヵ国の83の病院およびクリニックで行われ、3週のスクリーニング期間、36週の投与期間、4週のフォローアップ期間で構成された。 対象は、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%[53~86mmol/mol])の成人(18~75歳)で、SGLT2阻害薬投与の有無を問わずメトホルミン安定用量で治療を受けている患者とした。BMI値は23.0以上50.0未満を適格とした。 被験者は、無作為化・治験薬管理システムを用いて、週1回皮下投与のzenagamtide群またはプラセボ群に6対1の割合で割り付けられ、さらに6つの用量群(0.4、1.5、5、10、20、または40mg)のいずれかに1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。プラセボ群に割り付けられた被験者も同様に、各投与スケジュールに対応する適合プラセボ投与群に割り付けられた。無作為化では、スクリーニング時のHbA1c値(8.5%未満または8.5%以上)、居住国(日本またはその他)で層別化も行われた。 zenagamtide皮下投与は0.2mgで開始し、維持用量(0.4~40mg)に到達するまで4週ごとに漸増した。被験者および試験スタッフは、各用量群においてプラセボまたはzenagamtideの割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ベースラインから36週までのHbA1c変化量とした。主要評価項目は、無作為化された全被験者を対象とし、レスキュー薬を投与することなく治験薬の投与を継続している間に収集されたデータに基づくefficacy estimandを用いて評価された。安全性は、治験薬の投与を受けた無作為化された全被験者を対象に評価された。36週時点のHbA1c推定変化量、6用量群で-0.9%~-1.7% 2024年8月7日~12月27日に、スクリーニングされた915例のうち262例(29%)が、zenagamtide群(225例)またはプラセボ群(37例)に無作為化された。被験者はさらに、6用量群のいずれか1用量群(0.4mg群38例、1.5mg群36例、5mg群37例、10mg群38例、20mg群38例、40mg群38例)またはプラセボ群(37例)に無作為化され、261例が治験薬の投与を受けた。 ベースラインにおける全群のHbA1c平均値は7.8%(SD 0.8)であった。36週時点で、HbA1c推定変化量は、zenagamtide 0.4mg群の-0.9%(対プラセボの推定治療群間差:-0.77%、95%信頼区間[CI]:-1.26~-0.28、p=0.0021)からzenagamtide 40mg群の-1.7%(同:-1.56、95%CI:-2.05~-1.07、p<0.0001)の範囲にわたっていた。 有害事象の大部分は消化器系のもので、重症度は軽度~中等度であった。重篤な有害事象は、21/261例(8%)で報告された(0.4mg群4例、1.5mg群3例、5mg群2例、10mg群5例、20mg群3例、40mg群1例、プラセボ群3例)。死亡は報告されなかった。

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orforglipronはSGLT2阻害薬を超えた存在になるか?:ACHIEVE-2試験から(解説:永井聡氏)

 orforglipronは、空腹時の服用や飲水制限といった条件が不要で、食後投与が可能な経口GLP-1受容体作動薬である。本剤の2型糖尿病に対する実薬対照RCTとしてはすでにACHIEVE-3試験が発表されており、低用量(12mg)でも経口セマグルチド14mgに対して有意なHbA1c低下を示し「勝利」を収めている1)。 今回取り上げるACHIEVE-2試験は、メトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、orforglipron(3/12/36mgカプセル)とSGLT2阻害薬ダパグリフロジン10mgを比較した国際多施設共同試験である。結果は、orforglipronが全用量においてダパグリフロジンに対し血糖降下作用の非劣性および優越性を示し、再び「完全勝利」となった。PIONEER 2試験において経口セマグルチド14mgがエンパグリフロジン25mgを凌駕したことを踏まえれば2)、この結果は想定内とも言えるが、実臨床に与える影響は小さくない。 本邦の2型糖尿病の薬物治療アルゴリズム3)では、病態に応じた薬剤選択(肥満)の推奨薬として、メトホルミン、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の順に記載されている。SGLT2阻害薬が優先される理由は、豊富な心血管・腎臓への保護効果のエビデンスに加え、既存の経口GLP-1受容体作動薬が服用条件に制約があるのに対し、処方や内服が容易であるためである。しかし、他の降圧薬等と一包化も可能で服薬条件に縛られないorforglipronの登場は、血糖降下作用と利便性の両面でSGLT2阻害薬を上回る存在になりうる。現在実施中の心血管アウトカム試験(ACHIEVE-4)の結果次第では、将来的に推奨順位が逆転する可能性もある。 一方で、試験結果の解釈は慎重にすべき点もある。第一に、orforglipron群は盲検化されたがダパグリフロジン群は非盲検であったため、新薬への「期待バイアス」が生じた可能性は否めず、orforglipronの臨床効果は過大評価となった可能性である。第二に、消化器症状による脱落率の高さである。本試験では、ダパグリフロジン群の6%に対し、orforglipron群では15%以上と高率であった。継続できなければ期待される恩恵にあやかれない。第三に、DECLARE-TIMI 58やDAPA-CKDなどで確立された長期安全性や心腎保護、二次予防の観点では、依然としてダパグリフロジンに軍配が上がることである。新薬への「期待バイアス」は患者だけではなく処方する医師にも起こりうる。さらに盲点となるのが薬物相互作用である。CYP3A4に関連する薬剤(クラリスロマイシンやイトラコナゾール)などではorforglipronとの併用注意・併用回避が必要な場合があり、多剤併用中の高齢者への処方はとくに注意が必要である。 ともあれ、かつて脂質異常症の治療は食事療法が主体であったが、ストロングスタチンの登場により、厳格な食事指導が緩和された歴史がある。糖尿病においても食事療法が基本であることに変わりはないが、強力な食事制限なしに血糖値と体重の改善をもたらすorforglipronは、まさに糖尿病領域における「ストロングスタチン」となる可能性がある。日進月歩でGLP-1関連薬は次々と新薬開発が進むが、個々のライフスタイルに合わせた処方や早期介入が進むことで、糖尿病寛解が夢物語でなくなることを願うばかりである。

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フィネレノンは糸球体疾患由来のCKDに対しても腎保護的である可能性がある(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しい? フィネレノン(商品名:ケレンディア)は、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)であり、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の活性を抑制する。従来、本剤は糖尿病性慢性腎臓病(CKD)を適応とし、心・腎保護を目的に使用されてきた。 今回のFIND-CKD試験では、新たに非糖尿病性CKD患者を対象として、フィネレノンの腎保護効果が評価された。FIND-CKD試験の結果は、非糖尿病性CKD患者全体を対象とした主要解析を報告したNEJM論文(Heerspink HJL, et al. N Engl J Med. 2026 Jun 4. [Epub ahead of print])と、糸球体疾患を有するCKD患者を対象に事前規定された探索的サブグループ解析を報告したJAMA論文(本論文)の2報として公表されている。 NEJM論文では、主要アウトカムとしてフィネレノンによるeGFRスロープの有意な改善が示された。一方、本JAMA論文では、糸球体疾患を有するCKD患者においても、先行するNEJM論文の結果を支持する腎保護効果が示された。MRAによる腎保護療法の流れ 現在、糖尿病性CKDに対する腎保護を目的とした薬物療法として推奨されているのは、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nonsteroidal mineralocorticoid receptor antagonist:nsMRA)、およびGLP-1受容体作動薬である。このうち、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は第1選択薬として推奨されている一方、nsMRAはこれら2剤に追加して使用する薬剤として位置付けられており、推奨度はやや低い(Levin A, et al. Kidney Int. 2024;105:684-701.)。 nsMRAであるフィネレノンは、糖尿病性CKD患者を対象としたFIGARO-DKD試験、FIDELIO-DKD試験、および両試験の統合解析であるFIDELITYにおいて、心血管アウトカムおよび腎複合アウトカムの改善効果が示されている。これらのエビデンスを踏まえ、2024年KDIGOガイドラインでは、RAS阻害薬およびSGLT2阻害薬に追加する治療薬として、糖尿病性CKDの早期から心・腎保護を目的に使用することが推奨されている。 今回報告されたFIND-CKD試験は2報から構成されており、NEJM論文では非糖尿病性CKD患者全体を対象としてフィネレノンの腎保護効果が検証された。一方、JAMA論文(本論文)では、その対象集団のうち糸球体疾患を有するCKD患者に限定した事前規定の探索的サブグループ解析が報告された。FIND-CKD試験(JAMA論文)の結果の概要 FIND-CKD試験は、24の国・地域で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、非糖尿病性CKD患者を対象とした。本試験の結果は2報として報告されており、NEJM論文では登録された全1,584例を対象とした主要解析が、一方、本JAMA論文では、そのうち糸球体疾患由来のCKDと診断された903例を対象とした事前規定の探索的サブグループ解析が報告された。 対象患者の平均年齢は51.1歳、女性は40.1%、アジア人は61.9%を占め、平均eGFRは48.8mL/min/1.73m2であった。また、尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)も評価された。約80%の患者では腎生検により組織学的診断が確定しており、その内訳はIgA腎症46.1%、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)23.8%、膜性腎症10.0%、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)1.8~3.9%で、一部は高血圧性腎硬化症であった。 全例で試験開始前に最大忍容量のRAS阻害薬が4週間以上投与されており、その上乗せ治療としてフィネレノンの有効性が検討された。その結果、ベースラインから32ヵ月までのeGFRスロープは、フィネレノン群で−3.50mL/min/1.73m2/年、プラセボ群で−4.23mL/min/1.73m2/年となり、群間差は0.73mL/min/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:0.22~1.24)であった。また、フィネレノン群ではベースラインから12ヵ月までのUPCRが42%(95%CI:35~48)低下した。さらに、腎不全への進行またはeGFRが40%以上低下する複合腎アウトカムの発生リスクは、プラセボ群と比較して26%低下した(100患者年当たり7.42件vs.9.60件、ハザード比:0.74、95%CI:0.57~0.97)。 以上より、フィネレノンは糸球体疾患を有する非糖尿病性CKD患者において、腎機能低下の抑制、蛋白尿の減少、および腎アウトカムの改善を示し、腎保護作用を有する可能性が示唆された。FIND-CKDから学ぶこと 本研究の最大のポイントは、非糖尿病性CKD患者を対象としたFIND-CKD試験において、糸球体疾患サブグループでもフィネレノンの腎保護効果を支持する結果が得られた点である。 まず留意すべき点は、既報のFIGARO-DKD試験およびFIDELIO-DKD試験と同様に、FIND-CKD試験もRAS阻害薬による標準治療にフィネレノンを上乗せした治療の有効性を検証した試験であり、フィネレノン単独の効果を評価したものではないことである。また、NEJM論文は、非糖尿病性CKD患者全体を対象としてフィネレノンの有効性を検証するために計画された確証的試験である。一方、本JAMA論文は、試験計画時から糸球体疾患患者を対象とした事前規定の探索的サブグループ解析として実施されたものである。したがって、その結果は仮説的・補足的な位置付けであり、統計学的な確証的結論を導くものではないことを明記しておく必要がある。 そのような制約があるにもかかわらず、本JAMA論文では、主要評価項目であるeGFRスロープの改善に加え、事前に設定された腎複合エンドポイントおよび心血管エンドポイントについても、一貫してフィネレノンに有利な傾向が認められた。したがって、IgA腎症をはじめとする糸球体疾患由来の非糖尿病性CKD患者においても、フィネレノンの腎保護作用を支持する結果が得られたと解釈することは妥当と思われる。ただし、その有効性が確立されたと結論付けるには、今後の独立した確証試験による検証が必要である。 MRA投与時の高カリウム血症について、糖尿病性CKDと非糖尿病性CKDで差異があるかどうかも興味深い点である。高カリウム血症の発現率は、糖尿病性CKDを対象としたFIGARO-DKD試験では10.8%(プラセボ群5.3%、群間差5.5%)、FIDELIO-DKD試験では18.3%(同9.0%、群間差9.3%)であった。一方、非糖尿病性CKDを対象としたFIND-CKD試験では17.0%(同13.3%、群間差3.7%)であり、プラセボ群との差は3試験中で最も小さかった。各試験の平均eGFRは、FIGARO-DKD試験で約68、FIDELIO-DKD試験で約44、FIND-CKD試験で約49mL/min/1.73m2であった。これらの試験間比較からは、(1)高カリウム血症の発現頻度は腎機能低下の程度と関連する可能性、(2)非糖尿病性CKDでは糖尿病性CKDと比べてフィネレノン投与に伴う高カリウム血症の増加幅が小さい可能性、の2点が示唆される。ただし、これらは異なる試験間の比較から得られた知見であり、患者背景や試験デザインの違いによる影響を受ける可能性があるため、これには慎重な解釈が必要である。一般に、糖尿病性CKDでは低レニン性低アルドステロン症(hyporeninemic hypoaldosteronism:HRHA)、インスリン作用不足、代謝性アシドーシスなどが高カリウム血症の誘因となりやすいことが知られている。今回のFIND-CKD試験の結果は、糸球体疾患を主体とする非糖尿病性CKDでは、nsMRA投与に伴う高カリウム血症の頻度が少ない可能性を示唆しており、副作用の観点からも注目される。 今後は、IgA腎症をはじめとする糸球体疾患由来の非糖尿病性CKD患者に対し、フィネレノンが真に腎保護作用を有するかどうかを検証する独立した確証試験の実施が期待される。

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GLP-1受容体作動薬、脱毛症リスクは高いか/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の潜在的な有害作用として、脱毛(脱毛症)が市販後調査により報告されている。米国・ペンシルベニア大学のHuilin Tang氏らは、2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬の使用はSGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬と比較して、臨床的に記録された脱毛症、とくに非瘢痕性脱毛症のリスク上昇と関連することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年7月22日号に掲載された。脱毛症リスクを標的試験エミュレーションで評価 研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の脱毛症リスクを評価する目的で標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 データの収集には、ペンシルベニア大学健康システム(Penn Medicine)の電子健康記録を用いた。対象は、年齢18歳以上、2019年1月~2024年9月に新たにGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の投与を開始した2型糖尿病患者であった。 主要評価項目は、新規発症の脱毛症およびその亜型とした。sIPTW調整後の発生率が高い GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の比較では、それぞれ1万2,004例(平均年齢58.1歳、女性55.5%)および1万5,221例(平均年齢64.5歳、女性38.1%)の新規投与開始例を、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の比較では、それぞれ1万1,964例(平均年齢58.0歳、女性55.5%)および1万1,233例(平均年齢66.9歳、女性48.1%)を登録した。 安定化逆確率重み付け(sIPTW)で調整後の脱毛症の発生率は、SGLT2阻害薬群(平均追跡期間2.36年)が5.04/1,000人年であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.39年)は6.91/1,000人年と高い値を示した(ハザード比[HR]:1.37、95%信頼区間[CI]:1.08~1.73)。 同様に、DPP-4阻害薬群(平均追跡期間2.95年)のsIPTW調整後の脱毛症発生率が3.89/1,000人年であったのに比べ、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.91年)は6.53/1,000人年であり、より高率だった(HR:1.68、95%CI:1.28~2.20)。円形・アンドロゲン性などとの関連はない 脱毛症の亜型別の解析では、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性は非瘢痕性脱毛症に特有のものだった。SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群と比較したGLP-1受容体作動薬群における非瘢痕性脱毛症のハザード比は、それぞれ1.53(95%CI:1.18~1.97)および1.72(95%CI:1.28~2.31)であった。一方、GLP-1受容体作動薬群は、SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群に比べ、円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症、瘢痕性脱毛症の発生率が高かったが、いずれも有意な関連は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、GLP-1受容体作動薬による治療を検討する際の共有意思決定に役立つ可能性があり、今後の研究において皮膚科関連アウトカムの評価をさらに進める必要性を強調するものである」としている。 また、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性の基盤となる最も可能性の高いメカニズムとして、治療による体重減少およびカロリー摂取量の減少を挙げ、「これが生理的ストレスや微量栄養素(鉄、亜鉛、ビオチンなど)の欠乏を招き、毛髪の成長サイクルを乱す可能性がある」とし、「すなわち、脱毛は薬剤の直接的な作用というよりは、代謝性変化による下流の影響を反映している可能性が示唆される」と指摘する。 さらに、「最も頻度の高い亜型である非瘢痕性脱毛症は、急速な体重減少と関連することが多く、通常は可逆的である。この事実は、患者を安心させ、治療継続を支援する一助となりうる」と指摘している。

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高リスクIgA腎症へのエンドセリンA受容体拮抗薬の腎機能低下抑制効果?(解説:浦信行氏)

 エンドセリンA受容体拮抗薬の蛋白尿改善効果はIgA腎症をはじめとして、慢性腎臓病(CKD)や巣状糸球体硬化症等で次々に報告されるようになった。本研究(ALIGN研究)は高リスクIgA腎症を対象とし、エンドセリンA受容体拮抗薬atrasentanが36週での尿蛋白を36.1%有意に減少させたとすでに報告しているが、今回は136週までの最終評価(Lancet誌2026年6月13日号)においても尿蛋白抑制効果に関しては有意であった。 主要評価項目のeGFR減少抑制効果は残念ながらp=0.057と傾向にとどまり、後付けである追跡期間を除く132週ではp=0.039であった。しかしeGFRの年間変化量が-2.5であり、IgA腎症の長期腎予後を考えると、末期腎不全は避けられない。さらに、32週では対象になかったSGLT2阻害薬併用群がなぜか追加されており、その集団だけで評価するとatrasentan群ではeGFRの年間変化量は-0.6程度となり、腎機能低下抑制効果が期待できるが64例の少数例の成績でしかも後付けである。 今までもエンドセリンA受容体・アンジオテンシンII受容体デュアル拮抗薬のsparsentanの報告(PROTECT研究)があり、110週までのeGFRのスロープを対比しており、6週から110週までのそれに有意差があったが、1日目から110週までの全スロープでは残念ながらp=0.058と傾向にとどまっており、同様の成績であった。IgA腎症に対する治療薬として、現時点では2年間にわたる腸管に限定的に作用するグルココルチコイドのブデソニドが有意に腎機能低下を抑制した。さらに、投与期間は9ヵ月でその後の15ヵ月は観察期間の研究である。eGFRの年間変化量は-1.24にとどまっており、これを上回る薬剤の報告はいまだに見ない。

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J-CLEAR特別座談会(10)「慢性腎臓病(CKD)治療の新時代―新規治療薬の使い分けと注意点」

J-CLEAR特別座談会(10)「慢性腎臓病(CKD)治療の新時代―新規治療薬の使い分けと注意点」糖尿病や心不全の治療薬としても用いられるSGLT2阻害薬、非ステロイド型選択的MR拮抗薬フィネレノン、GLP-1受容体作動薬は、今や慢性腎臓病(CKD)治療を大きく変革する腎保護薬として主役を担っています。今回のJ-CLEAR特別座談会では、非糖尿病患者を含むCKDへの効果、IgA腎症の最新動向、脱水や高カリウム血症など、臨床現場での注意点と使い分けを専門医が多角的に議論します。なお、この番組は2026年6月10日に収録したもので、当時の情報に基づく内容であることをご留意ください。慢性腎臓病(CKD)治療の新時代―新規治療薬の使い分けと注意点司会    桑島 巖 氏臨床研究適正評価教育機構 理事長、東都クリニック 高血圧専門外来出演    栗山 哲 氏東京慈恵会医科大学 客員教授石上 友章 氏横浜市立大学 特任教授浦 信行 氏札幌西円山病院 名誉院長オブザーバー吉岡 成人 氏NTT東日本札幌病院 院長

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夏の理想的な水分補給は「4つのS」で/アボット

 糖尿病管理のための持続グルコース測定器「リブレ」や循環器疾患領域などの医療機器を全世界で開発・販売しているアボットは、夏の熱中症対策と高血糖リスクの関連について、都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、「ペットボトル症候群」への警鐘と夏期の糖尿病患者への対応などが解説された。負の連鎖を起こす夏の「ペットボトル症候群」 「『理想的な水分補給』と血糖管理~夏の熱中症対策が“高血糖のリスク”になる?~」をテーマに、川名部 新氏(おばな内科クリニック 院長)が、夏期の脱水予防と血糖管理の重要性について講演した。 20歳以上の男女で「糖尿病が強く疑われる人」が年々増加している中で、糖尿病診療では近年、新しい血糖管理の指標として「血糖トレンド」が注目されている。血糖トレンドとは、24時間の中で血糖値がどのように変動しているかを示すものであり、血糖自己測定(SMBG)や持続グルコース測定(CGM)により、1日の血糖変動の可視化を行うことができる。より良い糖尿病のセルフケアには、血糖トレンドの変動幅を小さくすることが重要と考えられている。 わが国は、近年、夏の平均気温が上昇し、日中・日没後の暑さが厳しくなっている。こうした環境の中では、飲料水を摂る機会も多い。糖分の多い清涼飲料水を大量に飲み続けることで高血糖となり、強いのどの渇きが生じ、さらに甘い飲料水を飲んでしまい、高血糖が悪化するという悪循環に陥る「ペットボトル症候群」(清涼飲料水ケトーシス)が懸念されている。本症候群になりやすい人としては、糖尿病患者または糖尿病予備群、糖分入り飲料水を1日1L以上飲む習慣のある人、運動不足であまり汗をかかない人などがいる。 本症候群は3つの段階を経て起こる。初期段階では「強いのどの渇き」「多飲」「多尿」などが起こる。中期段階では「倦怠感」「集中力低下」「眠気」などが起こる。そして、症状が進行すると「脱水症状」「意識障害」などが起こり、救急搬送が必要となるケースもある。 実際、ペットボトル飲料について、スポーツドリンクでは角砂糖約8個分、経口補水液では約3個分、オレンジジュースでは約10個分に相当する糖分が含まれており、適量摂取が重要となる。また、カロリーゼロを謳う飲料でも「厳密にはゼロではなく、水と同じように飲むべきではない」と川名部氏は警鐘を鳴らす。  高血糖を抑え、脱水を予防する水分摂取として夏期の理想的な水分補給の「4つのS」を川名部氏は提言する。 Soon:のどが渇く前にこまめに飲む Sugar less:糖分を含む飲料は控える  Simple drink:飲み物は水かお茶を基本とする Salt:汗をかいたら塩分補給 ただ、過度の飲水による「水中毒への注意が必要」とも川名部氏は指摘するとともに、SGLT2阻害薬などのように尿量が多くなる糖尿病治療薬では、夏期には脱水のリスクもあるために用量の変更や他剤への切り替えの検討も必要であると語った。血糖値の現在地を血糖トレンドで患者に説明する 続いて持続グルコース測定器を用いた血糖管理について触れ、糖尿病診療と夏の血糖トレンドの関係について説明した。通常、健康な人の血糖変動はほぼフラットであり、1日を通じて変動幅が少ない。その一方で、糖尿病患者の血糖は、血糖トレンドの変動幅が大きく(食事後に急上昇する)、とくに清涼飲料水を摂取した後は変動幅がさらに大きくなる。 持続グルコース測定器を活用して血糖管理に成功した症例(50代・男性、BMI26.0)を提示した。一定の食品(たとえば菓子パン、甘いアイスココアなど)の摂取後には、血糖値が急上昇する。患者にこうした血糖変動を可視化した図で示すことで、血糖変動の大きい食事を減らす指導が可能となり、血糖変動幅を減少させることができたと紹介した。 別の症例(30代・男性、BMI34.7)は、糖分の多い清涼飲料水を過剰に摂取していた糖尿病患者で、救急搬送後にインスリン教育入院となった。そのインスリン治療に加え、血糖トレンドと血糖自己管理を理解させることで、現在、血糖値は安定し、退院後は川名部氏のクリニックでフォロー中という症例を紹介した。患者には、血糖値の現在地を血糖トレンドをカーナビになぞらえて指導することで、理解されやすいという。また、高血糖リスク予防のため、食事と運動指導として次の項目を指導していると紹介した。【食事編】・朝食を食べる・野菜は最初に、炭水化物は最後に食べる・間食はできるだけ控え、食べるなら食後に・甘いドリンクは控える・アルコールの飲み過ぎに注意する・よく噛んでゆっくり食べる(30回程度)【運動編】・座りっ放しに気を付け、立位の時間を増やす・家事で積極的に体を動かす・家の中でもこまめに運動をする(椅子を使ったスクワットなど)・エスカレーターやエレベーターより階段を使う・ウォーキングなどの運動は朝夕の涼しい時間帯に行う 最後に川名部氏は「夏の猛暑には熱中症に加え高血糖にも注意が必要」と述べ、「ペットボトル症候群に注意して、『4つのS』と『血糖トレンド』を意識して乗り切りましょう!」とまとめ、講演を終えた。

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熱中症による入院患者、多い服用薬は?/MDV

 高温環境により体温調節機能が破綻して発症する熱中症。今年もこの対策が必要な季節が到来した。昨年までの天気予報では「猛暑日」(35℃以上)の表現が多用されていたが、2026年4月17日に気象庁が最高気温40℃以上の名称を「酷暑日」と正式決定し、これまで以上に熱中症対策の重要性が高まっている。 熱中症の重症例では中枢神経障害や循環不全、急性腎障害(AKI)などの多臓器障害を引き起こし、とくにAKIでは脱水や循環血液量減少、横紋筋融解症などを要因とし、集中治療や腎代替療法を要する場合もある。発症予防はもちろんのこと、重症化予防を行うためには患者背景や併存疾患、服用薬剤から重症化リスクをあらかじめ把握しておくことが極めて重要となる。 そこで、メディカル・データ・ビジョン(MDV)は自社が保有するDPCデータを基に、熱中症入院患者における事前処方薬の状況などの調査を行った。熱中症入院患者における事前処方薬の状況 対象期間:2022年4月~2025年5月対象:熱中症入院患者1万1,323例(総入院件数1万1,520件)結果:・処方割合が最も高かったのは精神安定剤(7.6%)で、次いでアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB、単剤7.4%)、β遮断薬(単剤6.2%)、ループ利尿薬(単剤5.4%)となった。・抗ヒスタミン薬、抗不安薬、SGLT2阻害薬、ビグアナイド系薬などでも一定割合で認められた。・いずれの薬剤群も熱中症入院患者全体に占める処方割合は10%未満であり、単一薬剤群への偏りは認められなかった。・熱中症入院患者では高血圧、糖尿病、精神・神経疾患などの慢性疾患治療薬が処方されているケースが多く、その背景は多岐にわたっていた。<処方薬上位5つの薬効群>◯精神安定剤:実患者数*859(7.6%)、入院数**871(7.6%)◯ARB(単剤):同842(7.4%)、同855(7.4%)◯β遮断薬(単剤):同704(6.2%)、同717(6.2%)◯ループ利尿薬(単剤):同608(5.4%)、同618(5.4%)◯抗ヒスタミン薬(全身用):同402(3.6%)、同408(3.5%)*入院日以前100日間での処方患者数/熱中症で入院患者数**入院日以前100日間での処方患者数/熱中症で入院数 このほか、熱中症かつAKI合併患者での事前処方薬の推移や重症熱中症における腎代替療法の実施状況についても検証されている。

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診療科別2026年上半期注目論文5選(糖尿病・代謝・内分泌内科編)

Orforglipron for maintenance of body weight reduction: the double-blind, randomized phase 3b ATTAIN-MAINTAIN trialArrone LJ, et al. Nat Med. 2026 May 13. [Epub ahead of print]<ATTAIN-MAINTAIN>:orforglipronは、チルゼパチド・セマグルチドによる減量維持に有用SURMOUNT-5研究(糖尿病のない肥満症者対象)でチルゼパチド・セマグルチドにより5%以上減量した人を対象に、注射薬から経口GLP-1受容体作動薬orforglipronへ切り替えたところ、52週後の減量維持率はプラセボ群より有意に高く、体重リバウンド予防への有用性が示されました。一方で消化器系副作用の多さが今後の課題です。Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and ObesityMalhotra A, et al. N Engl J Med 2024;391:1193-205.<SURMOUNT-OSA>:チルゼパチドは閉塞性睡眠時無呼吸を改善する肥満(BMI≧27)を伴う中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸患者において、52週間のチルゼパチド投与により体重が最大約20%減少しAHIが最大約29回/時間減少しました。2026年5月にチルゼパチドが本邦でも閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療薬としても承認されました。本論文は2024年発行ですが、保険適用に伴い改めて取り上げました。処方条件については最適使用推進ガイドラインを確認しましょう。Finerenone in Type 1 Diabetes and Chronic Kidney DiseaseHeerspink HJL, et al. N Engl J Med 2026;394:947-57.<FINE-ONE>:フィネレノンは1型糖尿病の腎症進展抑制に有用1型糖尿病で微量~顕性アルブミン尿期の腎症を合併している患者において、フィネレノンは6ヵ月間で尿中アルブミン/クレアチニン比を顕著に減少させました。ただし、短期間の介入であること、代用エンドポイントを指標としていることから長期的な臨床効果や安全性(とくに高カリウム血症のリスク)の評価は今後の課題です。Intensive LDL Cholesterol Targeting in Atherosclerotic Cardiovascular DiseaseLee YJ, et al. N Engl J Med 2026;394:1365-75.<Ez-PAVE>:心血管疾患合併者では、LDL-Cの超厳格管理により心血管リスクが低減する心血管疾患を有する韓国人では、LDL-Cの目標値を55mg/dL未満に設定すると、70mg/dL未満を目標とした場合よりもイベントリスクがさらに低下しました。ただし、非盲検試験であるため効果が過大評価されている可能性がある点と、低リスク者における有効性は未確立である点に注意が必要です。Histological efficacy of anti-diabetic agents in MASH and the mediating role of weight loss: A network meta-analysisBanerjee M, et al. Diabetes Obes Metab. 2026;28:287-295.<ネットワークメタアナリシス>:SGLT2阻害薬とインクレチン関連薬はMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)を改善するSGLT2阻害薬およびインクレチン関連薬は生検で確定診断されたMASHにおいて線維化を改善することが示されました。その効果には体重減少が大きく寄与していることが示唆されましたが、それ以外の直接的な作用の可能性も想定されています。2026年6月にセマグルチドが日本初のMASH治療薬として承認されました。処方条件については最適使用推進ガイドラインを確認しましょう。

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高齢の糖尿病を有する人の薬物治療の限界はどこか/日本糖尿病学会

 第69回日本糖尿病学会年次学術集会(会長:下村 伊一郎氏[大阪大学大学院医学系研究科 内分泌・代謝内科学 教授])が、5月21~23日の日程で、大阪国際会議場、リーガロイヤルホテル大阪をメイン会場に開催された。 今回の学術集会は「IMAGINE いのち輝く 糖尿病の医療・医学を共に目指して」をテーマに、41のシンポジウム、143の口演、ポスターセッション、会長特別企画による講演、特別企画「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病本態だけでなく、心血管障害や認知障害、運動器障害などさまざまな疾患を併存しているケースが多く、治療薬の選択やアドヒアランスのフォローなど考慮することが多岐にわたる。実臨床ではどのように診療を進めるべきであろうか。そこで本稿では、シンポジウム34「超高齢時代のダイアベティス治療はいかにあるべきか」(日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同シンポジウム)より清野 祐介氏(藤田医科大学医学部内分泌・代謝・糖尿病内科学/関西電力医学研究所糖尿病研究センター)の「超高齢2型糖尿病の至適な薬物治療の限界」の講演概要をお届けする。治療薬の工夫が重要な高齢の糖尿病を有する人 高齢の糖尿病を有する人では、糖尿病は高血糖、低血糖、フレイル、サルコペニア、認知機能低下の危険因子となる。また、加齢による肝機能、腎機能の低下がみられることから治療薬の選択では、バランス調整が必要になる。『糖尿病治療ガイド2024』(編集:日本糖尿病学会)では、高齢の糖尿病を有する人の治療の留意点を示しており、「低血糖を避けながら、高血糖をおだやかに是正することが必要」としている。また、糖尿病合併症や他の疾患との併存が多く、服薬数が多くなるのも特徴である。 このような多剤併用はアドヒアランスの低下を来し、高血糖や重症低血糖など致死的なリスクが高くなる。そのために服薬回数の減少や服薬タイミングの統一、一包化、配合薬の選択などが行われているが、緊急時の対応への準備も必要となる。日本糖尿病学会と日本老年医学会が共同制作した『高齢者糖尿病診療ガイドライン2023』(編集:日本老年医学会)では、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が示されており、3つのカテゴリー別と重症低血糖が危惧される薬剤(インスリンやスルホニル尿素薬[SU薬]など)の使用の有無で、HbA1cの目標値と下限値が示されている。現段階で、超高齢の糖尿病を有する人にこのHbA1cの目標値があてはまるかどうかは不明である。よく理解しておきたい糖尿病治療薬の高齢の患者への影響 糖尿病の治療において、体重を減らすことは、インスリン感受性や糖代謝を改善するのに効果的とされているが、高齢の糖尿病を有する人では、筋肉量や骨量の低下があり、配慮する必要があるとされる。また、高齢の糖尿病を有する人に糖尿病治療薬を使用する際の懸念点としては、たとえばα-グルコシダーゼ阻害薬では服用回数が多い、SGLT2阻害薬では体重減少、チアゾリジン薬では心不全の増悪や女性では骨折リスクの増加、ビグアナイド薬では腎機能低下時に乳酸アシドーシスのリスクの出現、GLP-1受容体作動薬では体重減少、SU薬やグリニド薬では単独で低血糖のリスクが高くなるなどが挙げられる。そのほか、高齢の糖尿病を有する人に頻用されているDPP-4阻害薬では、演者の経験としては便秘など消化器症状の頻度も高く、重症例では腸閉塞を来す例もみられたという。とくに高齢の糖尿病を有する人は、在宅で診療をされている患者が多く、主治医が適切なタイミングでこうしたリスクを防ぐことができるか課題であると指摘する。高齢の糖尿病を有する人にはSU薬とDPP-4阻害薬の使用が多い 糖尿病治療薬の使用などについて、清野氏らが行った多施設共同研究の一端に触れた。この研究では、65歳以上の糖尿病、慢性腎疾患、そのいずれかまたは両方の疾患の患者を対象としたもので、参加施設は糖尿病、腎臓病の専門医を中心とした多職種連携が行われている施設。参加者は1,355例で、65~74歳は767例、75~84歳が523例、85歳以上が65例。これらの参加者のBMI、骨格筋量(SMI)、HbA1c、eGFRなどの数値を計測した。 その結果、85歳を区切りとしてみると、85歳以上では握力、筋力が65~84歳群との比較で顕著に低下していた。使用されている治療薬について85歳以上では体重減少に働くようなSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の使用頻度が低くなっていた。また、乳酸アシドーシスのリスクからビグアナイド薬、心不全のリスクからチアゾリジン薬の使用頻度も低い一方で、SU薬とDPP-4阻害薬は高頻度で使用されていた。また、予想に反してグリニド薬、α-グルコシダーゼ阻害薬の使用が多く、その理由として「参加者の自己管理能力が高かったことが推定される」と述べた。 本研究では、糖尿病診療支援が整った医療施設で食事療法も薬物療法もしっかりでき、通院や歩行にも問題がない参加者を対象としていることから、このような結果につながったと推察している。しかし、実臨床の現場では、通院ができずに糖尿病非専門医による在宅医療を受けているケースが多く、治療薬剤の選択、血糖マネジメントの目標をどこにおくのかなど糖尿病学会の推奨があまり知られていないこと、あるいは超高齢の糖尿病を有する人の治療に関するガイドラインがないことが現状の問題点となっていると述べた。さらに90歳以上の2型糖尿病を有する人を対象とした大規模臨床試験は皆無であり、複雑な背景をもつ症例への的確なアプローチをいかに構築するかが課題であると指摘した。高齢の糖尿病を有する人の治療最適化には多職種・在宅医療連携が重要 高齢の糖尿病を有する人の症例を1つ挙げ、介護施設などでの診療の難しさを説明した。症例は施設入所している91歳女性(要介護3)で認知症があり、車いすを使用、BMIは15.7でやせ型。インフルエンザで突然の意識障害があり、救急搬送された。来院時の血糖値は35mg/dLで急性低血糖にてブドウ糖静脈投与で意識回復をした。普段は、DPP-4阻害薬と少量のSU薬を服用している。腎機能は保たれているがHbA1cは5.4%であり、高齢者にとっては過度な管理で、低血糖のリスクが予想される症例だったという。日常から糖尿病をきちんと診療できる環境ではないことが予想され、治療目標、とくに下限目標の情報が診療する人、介護する人にきちんと行き届いていないのではないかと警鐘を鳴らす。また、在宅医療など超高齢糖尿病を有する人の診療現場では糖尿病専門医が予想していないような治療上の悩みも多々見受けられる。そこで、日本糖尿病協会(JADEC)では、「JADEC在宅医療・介護支援Q&A集」を作成するとともに、在宅・介護の診療現場からの質問を募っている。清野氏は、今後、こうした診療現場の情報を集積し、在宅・介護の診療現場用のJADECカードシステムによる糖尿病支援ツールセットを作成していく必要があると提言を行った。 高齢の糖尿病を有する人の治療では、『高齢者糖尿病診療ガイドライン』があるものの、90歳以上の超高齢者を対象としたエビデンスは乏しい。実臨床では認知機能、ADL、介護力が治療を規定するが、高齢者では厳格な血糖管理より低血糖回避と何よりも患者の生活維持が重要だと考える。 おわりに清野氏は、「今後の高齢の糖尿病を有する人の診療では、患者の体重や握力測定など定期的な確認も大切であり、治療の最適化には多職種・在宅医療連携が重要になる」と語り、講演を終えた。

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食直前投与が困難な血糖スパイクの患者、薬物動態から最適なα-GIを選択【うまくいく!処方提案プラクティス】第73回

 今回は、施設在住の高齢糖尿病患者の血糖スパイクに介入した事例を紹介します。担当医からα-グルコシダーゼ阻害薬(α-GI)追加の方針が示されたものの、施設では食直前投与が困難という制約があり、薬物動態の観点から最適な薬剤を提案しました。施設や在宅の現場では、薬効だけでなく、その患者の生活環境で本当に飲み続けられるかを考えることが処方提案の出発点になります。患者情報90歳、男性(施設入居中)基礎疾患2型糖尿病(2021年~)、高血圧症、便秘症、心房中隔瘤、前立腺肥大症(2023年~)既往歴尿路感染症による入院ADLほぼ自立認知機能問題なし服薬管理施設職員が管理(キーパーソンは妹)介入時の検査値HbA1c 7.1%薬学的管理開始時の処方内容1.リナグリプチン錠5mg 1錠 分1 朝食後2.テルミサルタン・アムロジピン配合錠AP 1錠 分1 朝食後3.シロスタゾールOD錠50mg 2錠 分2 朝・夕食後4.ルビプロストンカプセル24μg 2カプセル 分2 朝・夕食後5.イメグリミン錠500mg 2錠 分2 朝・夕食後6.デュタステリドカプセル0.5mg 1カプセル 分1 朝食後7.ミラベグロン錠25mg 2錠 分1 朝食後本症例のポイント本患者は尿路感染症で入院し、その際に糖尿病の管理方針が変更となりました。それまで服用していたSGLT2阻害薬が休薬となり、DPP-4阻害薬(リナグリプチン)単剤に切り替えられた状態で施設に入居しました。退院時の血糖コントロールは空腹時90~130mg/dL、食後180mg/dL前後とおおむね良好でしたが、施設入居後のモニタリングで食後血糖が313mg/dLに達する血糖スパイクが確認されました。心房中隔瘤を有し、心血管リスクも考慮が必要な患者であることから、食後高血糖の是正は重要な課題となりました。施設では食直前投与が困難担当医よりα-GI追加の意向が示され、候補としてボグリボースが挙がりました。しかし、ここで問題となったのが施設の服薬管理の制約です。施設では食事直前に薬を渡すことが難しく、食直前投与の薬剤の追加には現実的な壁がありました。ボグリボースやアカルボースは、食物とともに腸内に存在して初めて二糖類の消化・吸収を阻害するため、食直前投与が必須とされています1)。食後に投与した場合は消化・吸収が先行してしまい、治療効果が著しく減弱します。つまり、もし食後投与になってしまうと、処方は出たが効かないという状況になりかねません。この問題を解決するために、私はα-GIの中でも薬物動態が異なるミグリトールに着目しました。ミグリトールは他のα-GIとは異なり、小腸上皮に直接吸収されてα-グルコシダーゼを阻害する機序をもちます2)。この特性により、食後投与でもAUCは食前投与と同等であることが報告されており3)、施設の制約下でも十分な効果が期待できると判断しました。他の合併症との相性さらにもう1つのポイントとして、患者の合併症との相性がありました。患者はルビプロストンを服用している便秘症の患者です。ミグリトールは他のα-GIと比較して便秘よりも下痢を来しやすい特性があります2)。便秘傾向のある患者においては、この副作用プロファイルがむしろ適していると考えられました。医師への提案と経過担当医に対して、以下の内容をメディカルケアステーション(ICT)にて情報提供しました。【現状報告】施設の服薬管理上、食直前投与が困難な環境である。ボグリボースやアカルボースは食直前投与が必須であり、食後投与では効果が減弱する。【懸念事項】食直前投与が守られない場合、α-GI本来の食後血糖抑制効果が得られず、血糖スパイクの改善につながらない可能性がある。【提案内容】食後投与でも効果が保持されるミグリトール錠50mg 2錠 分2 朝夕食後への変更(超高齢、腎機能低下を考慮して2錠朝夕食後に減じる設計としました)。消化器副作用プロファイルが便秘症の患者に適している。担当医より提案が採用され、ミグリトール錠50mg 2錠 分2 朝夕食後に変更となりました。施設スタッフには食後投与のタイミングと、腹部膨満感や排便状況の悪化(下痢)の観察ポイントについて情報共有を行いました。ミグリトール開始1ヵ月後より食後血糖は200mg/dL前後へと改善傾向を示しました。2ヵ月の管理期間を通じて低血糖・消化器症状の著明な増悪は認められず、HbA1cは6.8と改善傾向で推移しました。施設での服薬管理上の問題も生じず、アドヒアランスは良好に維持されました。考察:この事例から学んだこと処方提案においては、何を提案するかと同じくらいその患者の環境で本当に実行できるかどうかが重要となります。薬効・薬物動態・患者背景・生活環境を掛け合わせて考える視点が、施設や在宅の現場ではとくに求められます。今回の症例は、薬剤師ならではの視点が患者のアドヒアランスと治療効果の両立につながった一例です。 1) 日本糖尿病学会編. 糖尿病治療ガイド2024. 文光堂;2024. 2) ミグリトール錠50mg「BMD」インタビューフォーム 3) Ito H, et al. J Diabetes Investig. 2014;5:165-170.

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CKD合併糖尿病へのセマグルチド、心血管疾患の既往を問わず腎予後を改善(FLOW)

 2型糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を併発している患者を対象に、GLP-1受容体作動薬セマグルチドの腎機能への影響を評価したFLOW試験のサブグループ解析の結果、セマグルチドは既往の心血管疾患や将来的なリスクにかかわらず、腎予後および生存を一貫して改善したことが、米国・University of Washington School of MedicineのKatherine R. Tuttle氏らによって示された。Journal of the American College of Cardiology誌2026年6月2日号掲載の報告。 FLOW試験は、2型糖尿病とCKDを有する患者集団において、セマグルチドの腎機能障害進行への影響を検討した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験。参加者をSGLT2阻害薬などを含む標準治療に加えて、セマグルチド1.0mgを週1回皮下投与する群またはプラセボを投与する群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、主要腎疾患イベント(透析、移植、eGFR<15mL/分/1.73m2の発生、eGFRのベースラインから50%以上の低下、腎臓関連または心血管関連の死亡の複合)とした。全死因死亡は副次的評価項目の1つであった。 主な結果は以下のとおり。・合計3,533例を中央値3.4年間追跡した。ベースライン時の平均年齢は66.6±9.0歳、女性が30.3%、平均eGFRは47.0±15.1mL/分/1.73m2、尿中アルブミン/クレアチニン比の中央値は567.6mg/gであった。・ベースライン時点で、アテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を有していた患者が33.9%、心不全を有していた患者が19.2%、ASCVDや心不全の既往がない患者のうち10年間の心血管疾患発症リスクが高い(PREVENT予測式≧20%)患者が66.5%であった。・セマグルチド群では、プラセボ群と比較して、全体集団において主要評価項目である主要腎疾患イベントのリスクが24%低かった(1,767例中331例vs.1,766例中410例、ハザード比[HR]:0.76、95%信頼区間[CI]:0.66~0.88、p=0.0003)。・セマグルチド群では、ASCVDの有無、心不全の有無、心血管疾患発症リスクの高低にかかわらず、一貫して主要腎疾患イベントのリスクが低かった。各サブグループにおけるセマグルチド群vs.プラセボ群のHRは以下のとおり。 -ASCVDあり群0.80 vs.なし群0.74(交互作用のp=0.62) -心不全あり群0.67 vs.なし群0.79(交互作用のp=0.40) -心血管疾患高リスク群0.73 vs.低リスク群0.73(交互作用のp=0.99)・3年間で1件の主要腎疾患イベントを予防するための治療必要数(NNT)は、ASCVD群で22、心不全群で13、心血管疾患発症高リスク群で17であった。・セマグルチドは、全死因死亡のリスクについても同様に一貫した低下をもたらした。 -ASCVDあり群0.82 vs.なし群0.78(交互作用のp=0.79) -心不全あり群0.75 vs.なし群0.81(交互作用のp=0.74) -心血管疾患高リスク群0.71 vs.低リスク群0.82(交互作用のp=0.63)・いずれのサブグループにおいても、セマグルチド群はプラセボ群に比べ、eGFRの年間低下速度を有意に抑制し、高感度C反応性蛋白(hsCRP)を約30%低下させた。 これらの結果より、研究グループは「セマグルチドは、2型糖尿病およびCKDを有する患者にとって、腎機能・心血管機能・生存の総合的なベネフィットをもたらすため、重要な治療戦略となりうる」とまとめた。

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