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治療が変わる!希少疾病・難病特集 ~潰瘍性大腸炎~

潰瘍性大腸炎の治療は従来、5-ASA製剤と免疫抑制剤に不応であれば、TNFα抗体が用いられてきた。しかしTNFα抗体不応例も少なくないため、現在、TNF-α以外の経路に介入して炎症を抑制すべく、以下のような薬剤の開発が進められている。まず注射剤としては、IL-23p19モノクローム抗体のリサンキズマブである。中等症以上の活動性潰瘍性大腸炎を対象に、維持療法としての有用性を検討する第III相試験が、2013年末の終了を目指してわが国で進行中である [参考] 。同じくIL-23阻害剤のグセルクマブも、同様の第IIb/III相試験が国内で走っており、'24年夏の終了を見込んでいる。同様にミリキズマブでも第III相試験が進んでいるが、終了予定時期不明である[参考]。一方、IL-36モノクローム抗体のSpesolimabは、中等症以上の活動性潰瘍性大腸炎を対象とした第II/III相試験が2020年3月に終了している [NCT03482635]。新規免疫抑制剤の開発も進んでいる。TLR9アゴニストであるコビトリモド(cobitolimod)は治療抵抗性左側潰瘍性大腸炎を対象とした第IIb相試験で、プラセボに比べ、臨床的寛解が有意に多かった [Lancet GH 2020; 5: 1063]。経口薬では、JAK阻害薬と抗α4β7インテグリン抗体製剤が先頭を走っている。まずJAK阻害薬のウパダシチニブは、中等症以上例を対象とした第III相試験において、プラセボを上回る臨床的寛解が得られた [Abbvi Press Release 2020 Dec. 24] 。フィルゴチニブも現在、第III相試験が進んでいる[Gilead Press Release 2020 May 20]。一方抗α4β7インテグリン抗体製剤であるベドリズマブは、中等症以上の活動期潰瘍性大腸炎患者において、アダリアマブを上回る臨床的寛解率がすでに報告されている [NEJM 2019; 381:1215] 。なお、ベドリズマブと異なり、経口投与が可能なカロテグラストメチル(AJM300)は本年1月、第III相試験においてプラセボを上回る臨床的寛解率を達成したと公表された [Kissei Press Release 2021 Jan 13]。消化管へのリンパ球動員抑制を介した抗炎症作用が期待されるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P1)受容体1、5アゴニストは、オザニモド(RPC1063)による寛解率がプラセボを上回り [NEJM 2016; 374: 1754]、寛解例を延長介入した試験も昨年10月に終了したが、本年になり長期間の寛解維持作用が報告された [Sandborn WJ et al. J Crohns Colitis. 2021 Jan 13]。またIL-12や23情報系を下流でブロックするチロシンキナーゼ 2(TYK2)の阻害剤は現在、BMS-986165を用いた第II相試験が始まっており、2023年夏に終了予定である [NCT03934216] 。また、すでに注腸製剤として潰瘍性大腸炎に用いられているブデソニドは、経口投与による有用性も検討されており、メサラジンに対する非劣性を調べたわが国における第III相試験が、2020年5月に終了している [NCT03412682] 。

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中等~重症アトピー性皮膚炎、バリシチニブ+TCSの有効性・安全性を確認

 経口JAK1/2阻害薬バリシチニブについては、外用コルチコステロイド薬(TCS)で効果不十分な中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)への単独療法の有効性および安全性が、これまでに2件の第III相試験の結果で報告されている。今回、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らは、バリシチニブとTCSの併用療法について検討し、中等症~重症ADに対してバリシチニブ1日1回4mg+TCSが症状を有意に改善することを明らかにした。安全性プロファイルは、バリシチニブのこれまでの試験で既報されているものと変わらなかった。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年9月30日号掲載の報告。 研究グループは、TCS治療では効果不十分であった中等症~重症AD成人患者について、TCSを基礎療法としながらバリシチニブ4mgまたは2mg用量の有効性と安全性を評価する、二重盲検プラセボ対照第III相無作為化試験「BREEZE-AD7試験」を実施した。 試験は2018年11月16日~2019年8月22日まで、アジア、オーストラリア、欧州、南米の10ヵ国、68の医療センターで行われた。被験者は、18歳以上のTCSで効果不十分の中等症~重症AD患者であった。 被験者は無作為に3群(1対1対1)に割り付けられ、バリシチニブ1日1回2mg(109例)、同4mg(111例)、プラセボ(109例)のいずれかを16週間投与された。基礎療法として、低度~中等度効能のTCSの使用が認められた。 主要評価項目は、Validated Investigator Global Assessment for AD(vIGA-AD)スコアが16週時点の評価でベースラインから2ポイント以上改善し、0(改善)または1(ほとんど改善)を達成した患者の割合であった。 主な結果は以下のとおり。・被験者329例は、平均[SD]年齢33.8[12.4]歳、男性216例(66%)であった。・16週時点でvIGA-ADスコア0または1を達成した患者は、プラセボ群16例(15%)に対し、バリシチニブ4mg群34例(31%)、同2mg群26例(24%)であった。・対プラセボのオッズ比(OR)は、バリシチニブ4mg群2.8(95%信頼区間[CT]:1.4~5.6、p=0.004)、同2mg群1.9(0.9~3.9、p=0.08)であった。・治療関連有害事象の報告は、バリシチニブ4mg群で64/111例(58%)、同2mg群で61/109例(56%)、プラセボ群で41/108例(38%)であった。・重篤な有害事象の報告は、バリシチニブ4mg群4例(4%)、同2mg群2例(2%)、プラセボ群4例(4%)であった。・最も頻度の高い有害事象は、鼻咽頭炎、上気道感染症、毛包炎であった。・なお試験完了後、被験者は4週間のフォローアップもしくは拡大延長(長期)試験に登録された。

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生物学的DMARD抵抗性RA、ウパダシチニブvs.アバタセプト/NEJM

 生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)に抵抗性の関節リウマチ患者において、ウパダシチニブはアバタセプトと比較し、12週時の疾患活動性スコア(DAS28-CRP)のベースラインからの変化量および臨床的寛解率に関して優越性が認められた。ただし、重篤な有害事象の発現率は高かった。スイス・Cantonal Clinic St. GallenのAndrea Rubbert-Roth氏らが、24週間の多施設共同無作為化二重盲検実薬対照第III相試験「SELECT-CHOICE試験」の結果を報告した。ウパダシチニブは経口選択的ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、関節リウマチの治療薬として用いられているが、bDMARD抵抗性の関節リウマチ患者において、T細胞選択的共刺激調節薬のアバタセプトと直接比較したウパダシチニブの有効性および安全性は不明であった。NEJM誌2020年10月15日号掲載の報告。ウパダシチニブの有効性と安全性をアバタセプトと直接比較 研究グループは、2017年5月~2019年9月の期間に、bDMARDで効果不十分または不耐容の中等度~重度の活動性関節リウマチ患者を、ウパダシチニブ(1日1回15mg経口投与)群、またはアバタセプト(静脈内投与)群に1対1の割合で無作為に割り付け、いずれも従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)と併用投与した。 主要評価項目は、12週時の28関節とC-反応性蛋白(CRP)を用いて評価する疾患活動性スコア(DAS28-CRP:0~9.4、スコアが高いほど活動性が高いことを示す)のベースラインからの変化量の非劣性である。また、重要な副次評価項目は、12週時のDAS28-CRPのベースラインからの変化量、ならびに12週時の臨床的寛解率(DAS28-CRPが2.6未満を達成した患者の割合)の、アバタセプトに対するウパダシチニブの優越性とした。ウパダシチニブ、主要評価項目および重要な副次評価項目を達成 合計ウパダシチニブ群303例、アバタセプト群309例において、ベースラインのDAS28-CRPはそれぞれ5.70、5.88であった。 12週時のDAS28-CRPのベースラインからの平均変化量は、ウパダシチニブ群-2.52、アバタセプト群-2.00であり、アバタセプト群に対するウパダシチニブ群の非劣性および優越性が検証された(群間差:-0.52点、95%信頼区間[CI]:-0.69~-0.35、非劣性のp<0.001、優越性のp<0.001)。また、12週時の臨床的寛解率は、ウパダシチニブ群30.0%、アバタセプト群13.3%であった(群間差:16.8ポイント、95%CI:10.4~23.2、優越性のp<0.001)。 24週間の投与期間中にウパダシチニブ群で死亡1例、非致死的脳卒中1例、静脈血栓塞栓症2例が報告された。肝機能異常(アミノトランスフェラーゼ値上昇)を認めた患者は、ウパダシチニブ群がアバタセプト群より多かった。 結果を踏まえて著者は、「関節リウマチ患者におけるウパダシチニブの有効性および安全性を検証するため、より長期で大規模な臨床試験が必要である」とまとめている。

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レムデシビル、COVID-19入院患者の回復期間を5日以上短縮/NEJM

 米国・国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のJohn H. Beigel氏らは、「ACTT-1試験」において、レムデシビルはプラセボに比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の回復までの期間を有意に短縮することを示し、NEJM誌オンライン版2020年10月8日号で報告した(10月9日に更新)。COVID-19の治療では、いくつかの既存の薬剤の評価が行われているが、有効性が確認された抗ウイルス薬はないという。10ヵ国1,062例のプラセボ対照無作為化試験 研究グループは、COVID-19入院患者の治療におけるレムデシビルの臨床的な安全性と有効性を評価する目的で、日本を含む10ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験を行った(米国NIAIDなどの助成による)。 2020年2月21~4月19日の期間に、COVID-19感染が確定され、下気道感染症の証拠がある成人の入院患者1,062例が登録され、レムデシビル(541例)またはプラセボ(521例)を投与する群に無作為に割り付けられた。レムデシビルは、1日目に負荷投与量200mgを静脈内投与され、2日目から10日目または退院か死亡まで維持投与量として100mgを1日1回投与された。 主要アウトカムは、登録から28日以内における回復までの期間とした。回復は、退院または入院の理由が感染管理のみ、あるいはその他の非医学的事由の場合と定義された。回復までの期間中央値:10日vs.15日 全体の患者の平均年齢は58.9±15.0歳で、64.4%が男性であった。79.8%が北米、15.3%が欧州、4.9%がアジアの患者であった。登録時に、ほとんどの患者が1つ(25.9%)または2つ以上(54.5%)の併存疾患を有しており、高血圧が50.2%と最も多く、肥満が44.8%、2型糖尿病が30.3%であった。症状発現から無作為割り付けまでの期間中央値は9日(IQR:6~12)で、957例(90.1%)が重症COVID-19感染患者だった。 回復までの期間中央値は、レムデシビル群が10日(95%信頼区間[CI]:9~11)、プラセボ群は15日(13~18)であり、レムデシビル群で有意に短かった(回復の率比:1.29、1.12~1.49、log-rank検定のp<0.001)。重症例における回復までの期間中央値は、レムデシビル群が11日、プラセボ群は18日であった(1.31、1.12~1.52)。また、ベースライン時に機械的換気または体外式膜型人工肺(ECMO)を導入されていた患者の回復の率比は0.98(0.70~1.36)だった。 8つのカテゴリーから成る順序尺度による比例オッズモデルを用いた解析では、15日の時点で臨床的改善が達成される確率は、レムデシビル群がプラセボ群よりも高かった(実際の疾患重症度で補正後のオッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.2~1.9)。 Kaplan-Meier法による推定死亡率は、15日時がレムデシビル群6.7%、プラセボ群11.9%(ハザード比[HR]:0.55、95%CI:0.36~0.83)、29日時はそれぞれ11.4%および15.2%(0.73、0.52~1.03)であった。 重篤な有害事象は、レムデシビル群が532例中131例(24.6%)、プラセボ群は516例中163例(31.6%)で報告された。治療関連死は認められなかった。全体で頻度の高い非重篤な有害事象として、糸球体濾過量低下、ヘモグロビン低下、リンパ球数低下、呼吸不全、貧血などがみられ、発生率は両群でほぼ同等であった。 著者は、「米国食品医薬品局(FDA)は、レムデシビルの初期結果を考慮して、2020年5月1日、COVID-19感染が疑われる、または確定した成人および小児の入院患者において、レムデシビルの緊急時使用許可(EUA)を発出(8月28日に修正)したが、レムデシビルを使用しても死亡率は高いことから、抗ウイルス薬単独では十分な効果は得られないと考えられる」と指摘し、「患者アウトカムを改善するには、さまざまな薬剤との併用療法が必要であり、現在、レムデシビルと免疫調節薬(例:JAK阻害薬バリシチニブ[ACTT-2試験]、インターフェロンβ-1a[ACTT-3試験])との併用が検討されている」としている。

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バリシチニブ、中等~重症アトピー性皮膚炎への単剤有効性・安全性を確認

 経口JAK1/2阻害薬は、COVID-19重症患者のサイトカインストーム治療に有用と報告されている。その1つ、経口JAK1/2阻害薬バリシチニブは、わが国を含め70ヵ国で関節リウマチの治療薬として承認されているが、外用コルチコステロイド薬で効果不十分な中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)への同薬剤の有効性と安全性を検討した、米国・オレゴン健康科学大学のE. L. Simpson氏らによる、2件の第III相試験の結果が報告された。投与16週以内で臨床徴候と症状の改善が認められ、かゆみが速やかに軽減、安全性プロファイルは既知の所見と一致しており、新たな懸念は認められなかったという。これまで第II相試験において、バリシチニブと外用コルチコステロイド薬の併用が、ADの重症度を軽減することが示されていた。British Journal of Dermatology誌2020年8月号掲載の報告。 外用コルチコステロイド薬で効果不十分な中等症~重症AD患者に対する、バリシチニブの有効性と安全性の評価は、2件の多施設共同無作為化二重盲検並行群間比較プラセボ対照試験「BREEZE-AD1試験(2017年11月~2019年1月)」「BREEZE-AD2試験(2017年11月~2018年12月)」で検討された。 試験は欧州、アジア、中南米、オーストラリアの173施設で実施。中等症~重症AD成人患者を4群(1日1回のプラセボ、バリシチニブ1mg/2mg/4mg)に、2対1対1対1の割合で無作為に割り付けた(地域、ベースラインの疾患重症度による層別化も施行)。 有効性の主要エンドポイントは、バリシチニブ4mgまたは2mgのプラセボに対する優越性で、ベースラインから16週目にValidated Investigator's Global Assessment(vIGA)-ADスコアが2ポイント以上改善し、0(改善)または1(ほとんど改善)を達成した患者の割合で評価した。vIGA-ADは5段階評価(0[改善]~4[重症])で、医師の全体的な疾患重症度の印象で評価する。 主な結果は以下のとおり。・BREEZE-AD1試験(AD1)には624例、BREEZE-AD2試験(AD2)には615例が登録された。ベースラインの被験者特性は、割付治療群間で類似していた(平均年齢:AD1:35~37歳、AD2:33~36歳、女性の割合:33.3~40.6%、33.3~47.2%など)。ベースラインのvIGA-ADスコア4の被験者割合は、AD1が40%、AD2が50%だったが、EASIおよびSCORADスコアは同等であった。4mg群とプラセボ群は試験中断率が低く、試験完遂率はAD1が86.9%、AD2が88.0%だった(これらの被験者は、長期追跡の延長試験BREEZE-AD3試験に組み込まれている)。・16週時点で2試験ともに、4mg群と2mg群がプラセボ群と比べて、主要エンドポイントを達成した患者割合が有意に高率であった。・AD1では、プラセボ群4.8%に対し、バリシチニブ4mg群16.8%(プラセボ比較とのp<0.001)、2mg群11.4%(p<0.05)、1mg群11.8%(p<0.05)。AD2では、プラセボ群4.5%に対し、バリシチニブ4mg群13.8%(p=0.001)、2mg群10.6%(p<0.05)、1mg群8.8%(p=0.085)であった。・かゆみの改善は、4mg群は1週目から、2mg群は2週目からと、早期に達成された。・夜間覚醒、皮膚の疼痛、QOLの改善は、4mgと2mgの両方で1週目に観察された(すべての比較のp≦0.05)。・バリシチニブ投与群で最も頻度の高かった有害事象は、鼻咽頭炎、頭痛であった。・すべての用量のバリシチニブ投与群で、心血管イベント、静脈血栓塞栓症、消化管穿孔、重大な血液学的変化、死亡は観察されなかった。

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白斑治療、JAK阻害薬のクリーム剤が有望

 白斑は慢性の自己免疫疾患で、皮膚の脱色とともに生活の質の低下をもたらす。白斑には承認された治療薬がなく、現行の適応外療法の効果は限定的である。改善された治療の開発が待たれる中、JAK阻害薬ルキソリチニブ(本邦では骨髄線維症、真性多血症の適応で承認)のクリーム製剤が、有望な治療選択肢となりうることが報告された。米国・タフツ・メディカルセンターのDavid Rosmarin氏らによる最長52週間にわたる第II相多施設共同二重盲検無作為化対照試験において、ルキソリチニブ・クリームの治療により、かなりの白斑病変で再色素沈着が認められ、忍容性は検討した全投与量で良好であったことが示された。結果を踏まえて著者は、「示されたデータは、ルキソリチニブ・クリームは、白斑患者にとって効果的な治療オプションとなりうることを示すものであった」と述べている。Lancet誌2020年7月11日号掲載の報告。 研究グループは、白斑患者におけるルキソリチニブ・クリームの治療効果を調べるとともに、最長52週の二重盲検治療の有効性と安全性を評価した。 試験は米国18州26の病院および医療センターで行われた。色素脱失が顔面の体表面積(BSA)の0.5%以上および顔面以外のBSAで3%以上の患者を、1対1対1対1対1の割合でインタラクティブなレスポンス技術を用いて無作為に、(1)ルキソリチニブ・クリーム1.5%を1日2回、(2)同1.5%を1日1回、(3)同0.5%を1日1回、(4)同0.15%を1日1回、(5)溶媒(対照群)を1日2回それぞれ投与する5群に割り付けた。各群とも総BSAの20%以下の病変部に24週間塗布した。 対照群と0.15%塗布群の被験者は、24週時点の評価でF-VASI(facial Vitiligo Area Scoring Index)によるベースラインからの25%以上の改善が示されなかった場合、再無作為化を行い、(1)(2)(3)の高用量の3群のいずれかに割り付けた。(1)(2)(3)各群の被験者は、52週まで元の用量のままだった。 被験者、研究者、試験スポンサー(中間解析および主要評価項目解析のデータモニタリングチームのメンバーは除く)は、試験期間中、治療の割付は知らされないままだった。 主要評価項目は、24週時点のF-VASIのベースラインからの50%以上改善(F-VASI50)を達成した患者割合で、intention-to-treat解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。・2017年6月7日~2018年3月21日に、205例が適格性のスクリーニングを受け、48例が除外され、157例(平均年齢48.3[SD 12.9]歳、男性73例[46%])が無作為化を受けた。・157例は、33例(21%)が(1)群、30例(19%)が(2)群、31例(20%)が(3)群、31例(20%)が(4)群、32例(20%)が(5)の対照群に割り付けられた。・24週時点のF-VASI50達成患者割合は対照群との比較において、(1)群(15/33例[45%])と(2)群(15/30例[50%])で、有意に高率であった。・4例で治療に伴う重篤な有害事象がみられた。(1)群で1例が硬膜下血腫、(2)群で1例が痙攣発作、(3)群で冠動脈閉塞、食動アカラシア(各1例)がみられたが、いずれも試験治療とは無関係であった。・治療関連の有害事象は塗布部のかゆみが最も頻度が高く、(1)群1/33例(3%)、(2)群3/30例(10%)、(3)群3/31例(10%)、(4)群6/31例(19%)で、また対照群では3/32例(9%)報告された。・治療関連の有害事象としてのざ瘡は、ルキソリチニブ・クリーム投与群で13/125例(10%)、対照群で1/32例(3%)報告された。・すべての治療関連の有害事象の重症度は軽度~中等度で、治療群間で同等であった。

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中等~重症アトピー性皮膚炎へのabrocitinib、第III相試験結果/Lancet

 中等症~重症アトピー性皮膚炎の青年および成人患者の治療において、経口選択的JAK1阻害薬abrocitinibの1日1回投与は、プラセボに比べ有効性が優れ、忍容性も良好であることが、米国・オレゴン健康科学大学のEric L. Simpson氏らが行った「JADE MONO-1試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年7月25日号に掲載された。中等症~重症アトピー性皮膚炎の全身療法では、高い有効性と良好なベネフィット・リスクプロファイルを有する経口薬が求められているという。abrocitinibは、第IIb相試験で、中等症~重症アトピー性皮膚炎の成人患者における有効性と良好な忍容性が報告されている。JADE MONO-1試験ではabrocitinibの2用量をプラセボと比較 JADE MONO-1試験は、オーストラリア、カナダ、欧州、米国の69施設が参加した二重盲検無作為化第III相試験であり、2017年12月~2019年3月の期間に患者登録が行われた(Pfizerの助成による)。 JADE MONO-1試験の対象は、年齢12歳以上、体重40kg以上の中等症~重症のアトピー性皮膚炎の患者であった。アトピー性皮膚炎は、医師による皮膚症状重症度の全般評価[IGA]スコア≧3点、湿疹面積・重症度指数[EASI]≧16点、アトピー性皮膚炎に罹患した体表面積(BSA)≧10%、最高そう痒数値評価尺度(PP-NRS)スコア≧4点と定義された。 被験者は、abrocitinib 100mg、同200mgまたはプラセボを1日1回投与する群に2対2対1の割合で無作為に割り付けられ、12週の治療を受けた。患者、担当医、研究資金提供者には、治療割り付け情報は知らされなかった。 複合主要エンドポイントは、12週の時点におけるIGAスコアが1点(0点:病変消失、1点:ほぼ消失)以下かつベースラインから2点以上低下した患者の割合(IGA≦1達成割合)と、EASIスコアがベースラインから75%以上改善した患者の割合(EASI-75達成割合)とした。有効性は最大の解析対象集団(FAS、試験薬の投与を1回以上受けた患者)で、安全性は無作為化の対象となったすべての患者で評価された。JADE MONO-1試験でabrocitinibが有意に優れた結果 JADE MONO-1試験には387例が登録され、100mg群に156例(平均年齢32.6、18歳未満22%、男性58%)、200mg群に154例(33.0歳、21%、53%)、プラセボ群には77例(31.5歳、22%、64%)が割り付けられた。全体の59%が中等症、41%が重症であった。全例が試験薬の投与を少なくとも1回受けた。 12週時のIGA≦1達成割合は、100mg群が24%(37/156例)と、プラセボ群の8%(6/76例)に比べて有意に高く(p=0.0037)、200mg群は44%(67/153例)であり、プラセボ群との間に有意差が認められた(p<0.0001)。 また、12週時のEASI-75達成割合も、100mg群(40%[62/156例]vs.プラセボ群12%[9/76例]、p<0.0001)および200mg群(63%[96/153例]vs.12%[9/76例]、p<0.0001)のいずれもが、プラセボ群に比べ有意に良好であった。 JADE MONO-1試験の主な副次エンドポイント(2、4、12週時のPP-NRS、12週時のアトピー性皮膚炎のそう痒・症状評価[PSAAD]総スコアのベースラインからの変化)についても、100mg群および200mg群のいずれもが、プラセボ群と比較して有意に優れた。 有害事象は、100mg群が69%(108/156例)、200mg群が78%(120/154例)、プラセボ群は57%(44/77例)で報告された。頻度の高い治療関連有害事象として、悪心(100mg群9%、200mg群20%、プラセボ群3%)、鼻咽頭炎(15%、12%、10%)、頭痛(8%、10%、3%)などが認められた。治療関連の単純ヘルペスウイルス感染症は、100mg群1例、200mg群3例で、帯状疱疹はそれぞれ1例および2例で、口腔ヘルペスは3例および1例で発現した。また、重篤な有害事象の発生率は、それぞれ3%(5/156例)、3%(5/154例)、4%(3/77例)であった。治療関連死の報告はなかった。 著者は、「abrocitinibは、外用薬による局所療法でコントロールされない、12歳以上の中等症~重症アトピー性皮膚炎患者の治療において、有望な新規の経口全身療法薬となる可能性がある」としている。

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経口JAK1阻害薬、中等症~重症ADに有用

 中等症~重症アトピー性皮膚炎(AD)に対する、1日1回服用の経口JAK1阻害薬abrocitinibの、第III相プラセボ対照無作為化試験の結果が発表された。米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らによる報告で、12歳以上の同患者における有効性および忍容性が確認された。JAMA Dermatology誌オンライン版2020年6月3日号掲載の報告。 試験は青年および成人について、同一試験デザインを用いて、二重盲検・並行群間比較にて行われた。被験者は12歳以上で、少なくとも1年以上の中等症~重症ADと臨床診断され、直近6ヵ月以内に4週間以上の外用薬治療を受けたが十分な奏効が得られなかった患者とした。オーストラリア、ブルガリア、カナダ、中国、チェコ、ドイツ、ハンガリー、日本、韓国、ラトビア、ポーランド、英国、米国の計115施設で2018年6月29日~2019年8月13日に被験者の登録が、2019年9月13日~10月25日にデータ解析が行われた。 適格患者は、2対2対1の割合で(1)経口abrocitinib(1日1回)200mg群、(2)同100mg群、(3)プラセボ群に無作為に割り付けられ、12週間投与を受けた。 主要評価項目は2つで、12週時点でInvestigator Global Assessment(IGA)反応(0:クリア、1:ほぼクリアのうち2グレード以上の改善を伴う)を達成した患者の割合、同じくEczema Area and Severity Indexスコア75%以上改善(EASI-75)を達成した患者の割合であった。 主な副次評価項目は、12週時点のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)反応(4ポイント以上の改善)を達成した患者の割合。その他の副次評価項目は、EASIスコア90%以上改善(EASI-90)を達成した患者の割合であった。安全性は、有害事象および検査室モニタリングにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・計391例(男性229例[58.6%]、平均年齢35.1[SD 15.1]歳)が、解析に含まれた(abrocitinib 200mg群155例、同100mg群158例、プラセボ群78例)。・12週時点でデータが入手できた被験者において、200mgおよび100mg群は、プラセボ群と比べて、2つの主要評価項目がいずれも有意に高かった。 IGA達成の割合:59/155例(38.1%)・44/155例(28.4%)vs.7/77例(9.1%)、p<0.001 EASI-75達成の割合:94/154例(61.0%)・69/155例(44.5%)vs.8/77例(10.4%)、p<0.001・PP-NRS達成の推定割合も有意に高かった(55.3%[95%CI:47.2~63.5]・45.2%[37.1~53.3]vs.11.5%[4.1~19.0]、p<0.001)。・EASI-90達成の割合も高かった(58/154例[37.7%]・37/155例[23.9%]vs.3/77例[3.9%])。・有害事象は200mg群102例(65.8%)、100mg群99例(62.7%)、プラセボ群42例(53.8%)で報告され、重篤な有害事象は2例(1.3%)、5例(3.2%)、1例(1.3%)で報告された。・200mg群で、血小板数の減少(2例[1.3%])、検査室で確認された血小板減少症(5例[3.2%])が報告された。

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JAK1を強く阻害する関節リウマチ治療薬「リンヴォック錠7.5mg/15mg」【下平博士のDIノート】第51回

JAK1を強く阻害する関節リウマチ治療薬「リンヴォック錠7.5mg/15mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ウパダシチニブ水和物(商品名:リンヴォック錠7.5mg/15mg、製造販売元:アッヴィ合同会社)」を紹介します。本剤は、中等度から重度の関節リウマチ患者において、メトトレキサート(MTX)などとの併用の有無にかかわらず、1日1回の投与で臨床的寛解を達成することが期待されています。<効能・効果>本剤は既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2020年1月23日に承認され、4月24日に発売されました。なお、2021年5月に「既存治療で効果不十分な関節症性乾癬」、同年8月に「既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎」の効能・効果が追加されました。<用法・用量>通常、成人にはウパダシチニブとして15mgを1日1回経口投与します。なお、患者の状態に応じて7.5mgを1日1回投与することもできます。免疫抑制作用の増強により感染症リスクの増加が予想されるので、本剤とほかのJAK阻害薬や生物学的製剤、タクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、ミゾリビンなどの免疫抑制薬(局所製剤以外)との併用はできません。<安全性>関節リウマチ患者を対象とした本剤のプラセボ対照第III相試験において、本剤が投与された1,035例中275例(26.6%)に臨床検査値異常を含む副作用が認められました。主な副作用は、悪心23例(2.2%)、上気道感染、頭痛、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加各19例(1.8%)、血中クレアチンホスホキナーゼ増加17例(1.6%)、気管支炎16例(1.5%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、肺炎(0.1%未満)、帯状疱疹(0.7%)、結核(頻度不明)などの重篤な感染症(日和見感染症を含む)、消化管穿孔(頻度不明)、好中球減少(1.4%)、リンパ球減少(0.8%)、ヘモグロビン減少(貧血:0.7%)、ALT上昇(1.8%)、AST上昇(1.4%)、間質性肺炎(頻度不明)および静脈血栓塞栓症(頻度不明)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬はJAKという酵素を強く阻害することで、関節リウマチの症状を改善します。2.薬の成分が少しずつ出るようにコーティングされているので、かみ砕かないでください。3.本剤の服用を長期間続けると、免疫力が低下する可能性があります。持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感、水疱、痛みを伴う皮疹などが現れた場合は、すぐにご連絡ください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合は主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および最終服用後一定の期間は、適切な避妊を行ってください。なお、国内治験においては、最終投与から30日まで避妊を行うよう定められていました。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。通常、発症初期はMTXをはじめとする従来型合成疾患修飾性抗リウマチ薬(csDMARD)が使用されますが、十分量用いても効果が不十分な場合には、生物学的製剤、もしくは本剤のようなJAK阻害薬が選択されます。本剤は、関節リウマチに適応を持つ4番目のJAK阻害薬です。JAKには4種類のサブタイプ(JAK1、JAK2、JAK3、Tyk2)があり、本剤は炎症性サイトカインシグナルの伝達においてとくに重要な役割を持つJAK1を強く阻害することで、TNFαやIL-6の働きを遮断し、炎症性サイトカインの産生を抑制すると考えられています。本剤は、MTXで効果不十分な関節リウマチ患者を対象とした第III相無作為化二重盲検比較試験で、12週時のACR50改善率、患者による疼痛評価およびHAQ-DIのベースラインからの変化量において、ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)に対する優越性が示されました。また、ウパダシチニブ+MTX群では、プラセボ+MTX群およびアダリムマブ+MTX群と比較して、有意に高い臨床的寛解達成率が示されました。安全性に関する留意事項としては、警告欄で結核、肺炎などの重篤な感染症について注意喚起されています。また、トファシチニブ(同:ゼルヤンツ)、ペフィシチニブ(同:スマイラフ)と同様に、重度の肝機能障害患者には禁忌となっています。本剤は徐放性フィルムコーティング錠であり、調剤時に半割・粉砕することはできません。患者に対しても、割ったりかみ砕いたりしないように伝えましょう。※2022年3月、添付文書の改訂情報を基に一部内容の修正を行いました。参考1)PMDA添付文書 リンヴォック錠7.5mg/リンヴォック錠15mg

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アトピー性皮膚炎を改善する世界初の外用JAK阻害薬「コレクチム軟膏0.5%」【下平博士のDIノート】第48回

アトピー性皮膚炎を改善する世界初の外用JAK阻害薬「コレクチム軟膏0.5%」今回は、外用ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「デルゴシチニブ軟膏(商品名:コレクチム軟膏0.5%、製造販売元:日本たばこ産業)」を紹介します。本剤は、20年ぶりに登場した外用アトピー性皮膚炎治療薬で、世界初の外用JAK阻害薬です。免疫細胞および炎症細胞の活性化を抑制することで、皮膚の炎症とかゆみを改善することが期待されています。<効能・効果>本剤はアトピー性皮膚炎の適応で、2020年1月23日に承認され、2020年6月24日に発売予定です。<用法・用量>通常、成人には、1日2回、1回当たり最大5gまでの適量を患部に塗布します。なお、治療開始4週間以内に皮疹の改善が認められない場合は使用を中止します。症状が改善した場合には、継続投与の必要性について検討して、漫然とした長期使用を避ける必要があります。<安全性>軽症、中等症または重症のアトピー性皮膚炎患者352例を対象とした第III相長期試験(QBA4-2試験)において、副作用は69例(19.6%)に認められました。主な副作用は、適用部位毛包炎11例(3.1%)、適用部位ざ瘡10例(2.8%)、適用部位刺激感9例(2.6%)、適用部位紅斑7例(2.0%)でした。なお、重篤な副作用として、カポジ水痘様発疹が1例(0.3%)に認められています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、皮膚の炎症とかゆみを抑えることで、アトピー性皮膚炎を改善します。2.大人の人さし指の先端から第1関節まで出した量(1FTU=約0.5g)で、手のひら2枚分くらいの面積に塗ることができます。塗った部分にティッシュが付く、または皮膚がテカテカする程度が適切な使用量の目安です。3.粘膜や皮膚の損傷、ただれている部位は避けて塗ってください。4.この薬を塗ったところに吹き出物ができるなど、気になる症状が現れた場合は、医師または薬剤師に相談してください。5.万が一、眼に入った場合はただちに水で洗い流してください。<Shimo's eyes>本剤は、アトピー性皮膚炎に適応を有する世界初の外用JAK阻害薬です。従来、アトピー性皮膚炎治療は、ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏(免疫抑制薬)が中心となっています。しかし、ステロイド外用薬には皮膚萎縮、毛細血管拡張、ステロイドざ瘡などの副作用、タクロリムス軟膏には皮膚刺激性などの副作用や投与条件の制約などの課題があるため、長期的な使用ができないこともあります。本剤は、JAK/STAT経路の活性化を阻害することで、種々のサイトカイン刺激により誘発される免疫細胞および炎症細胞の活性化を抑制し、アトピー性皮膚炎を治療する薬剤です。国内臨床試験において、抗炎症作用および抗そう痒作用による皮疹改善作用が確認されています。副作用としては、刺激感や紅斑などが報告されていますが、皮膚萎縮および血管拡張は認められていません。適用部位刺激感は、投与初期(0~4週後)に発現する傾向があるので、とくに初回の服薬指導時は注意を忘れないようにしましょう。なお、現在は16歳以上の患者が適応であり、ステロイド外用薬を併用する場合には、患者の状態を踏まえて部位によって使い分けるなど慎重に判断する必要があります。外用のアトピー性皮膚炎治療薬として、新たな治療選択肢になりうると期待されますが、世界で初めてわが国で承認された薬剤ですので、今後の安全性情報には注意しておきましょう。参考1)PMDA コレクチム軟膏0.5%

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COVID-19重症患者へ、ルキソリチニブによる臨床試験開始/ノバルティス

 2020年4月2日、ノバルティスファーマ株式会社は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者のサイトカインストーム治療におけるルキソリチニブ(商品名:ジャカビ)投与の評価を目的とし、インサイト社と共同で行う第III相臨床試験計画について発表した。 この試験では、 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染によって重篤なCOVID-19肺炎を発症した患者において、 標準治療(SoC:Standard of Care)とルキソリチニブ+SoC併用療法を比較、評価する予定。 サイトカインストームは重篤な免疫過剰反応の一種であり、COVID-19患者の呼吸障害の一因になりうる可能性がある。現在、非臨床エビデンスや予備的臨床エビデンスにおいて、 ルキソリチニブ投与によって集中治療や人工呼吸器を必要とする患者数を低減させる可能性が示唆されている。 ルキソリチニブはJAK1およびJAK2を阻害する経口薬であり、日本では血液内科領域の疾患(骨髄線維症、真性多血症[既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る])治療薬として承認されている。

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再発性多発軟骨炎〔RP:relapsing polychondritis〕

1 疾患概要■ 概念・定義再発性多発軟骨炎(relapsing polychondritis:RP)は、外耳の腫脹、鼻梁の破壊、発熱、関節炎などを呈し全身の軟骨組織に対して特異的に再発性の炎症を繰り返す疾患である。眼症状、皮膚症状、めまい・難聴など多彩な症状を示すが、呼吸器、心血管系、神経系の病変を持つ場合は、致死的な経過をたどることがまれではない。最近、この病気がいくつかのサブグループに分類することができ、臨床的な特徴に差異があることが知られている。■ 疫学RPの頻度として米国では100万人あたりの症例の推定発生率は3.5人。米国国防総省による有病率調査では100万人あたりの症例の推定罹患率は4.5人。英国ではRPの罹患率は9.0人/年とされている。わが国の全国主要病院に対して行なわれた疫学調査と人口動態を鑑みると、発症年齢は3歳から97歳までと広範囲に及び、平均発症年齢は53歳、男女比はほぼ1で、患者数はおおよそ400~500人と推定された。RPは、平成27年より新しく厚生労働省の指定難病として認められ4~5年程度経過したが、筆者らが疫学調査で推定した患者数とほぼ同等の患者数が実際に医療を受けているものと思われる。生存率は1986年の報告では、10年生存率55%とされていた。その後の報告(1998年)では、8年生存率94%であった。筆者らの調査では、全症例の中の9%が死亡していたことから、90%以上の生存率と推定している。■ 病因RPの病因は不明だが自己免疫の関与が報告されている。病理組織学的には、炎症軟骨に浸潤しているのは主にCD4+Tリンパ球を含むリンパ球、マクロファージ、好中球や形質細胞である。これら炎症細胞、軟骨細胞や産生される炎症メディエーターがマトリックスメタロプロテナーゼ産生や活性酸素種産生をもたらして、最終的に軟骨組織やプロテオグリカンに富む組織の破壊をもたらす。その発症に関する仮説として、初期には軟骨に向けられた自己免疫反応が起こりその後は、非軟骨組織にさらに自己免疫反応が広がるという考えがある。すなわち、病的免疫応答の開始メカニズムとしては軟骨組織の損傷があり、軟骨細胞または細胞外軟骨基質の免疫原性エピトープを露出させることにある。耳介の軟骨部分の穿孔に続いて、あるいはグルコサミンコンドロイチンサプリメントの摂取に続いてRPが発症したとする報告は、この仮説を支持している。II型コラーゲンのラットへの注射は、耳介軟骨炎を引き起こすこと、特定のHLA-DQ分子を有するマウスをII型コラーゲンで免疫すると耳介軟骨炎および多発性関節炎を引き起こすこと、マトリリン-1(気管軟骨に特異的な蛋白の一種)の免疫はラットにRPの呼吸障害を再現するなどの知見から、軟骨に対する自己免疫誘導の抗原は軟骨の成分であると考えられている。多くの自己免疫疾患と同様にRPでも疾患発症に患者の腫瘍組織適合性抗原は関与しており、RPの感受性はHLA-DR4の存在と有意に関連すると報告されている。臨床的にも、軟骨、コラーゲン(主にII型、IX、XおよびXIの他のタイプを含む)、マトリリン-1および軟骨オリゴマーマトリックスタンパク質(COMP)に対する自己抗体はRP患者で見出されている。いずれの自己抗体もRP患者の一部でしか認められないために、RP診断上の価値は認められていない。多くのRP患者の病態に共通する自己免疫反応は明らかにはなっていない。■ 症状1)基本的な症状RPでは時間経過とともに、あるいは治療によって炎症は次第に治まるが、再発を繰り返し徐々にそれぞれの臓器の機能不全症状が強くなる。軟骨の炎症が基本であるが、必ずしも軟骨細胞が存在しない部位にも炎症が認められる事があり、注意が必要である。特有の症状としては、軟骨に一致した疼痛、発赤、腫脹であり、特に鼻根部(鞍鼻)や耳介の病変は特徴的である。炎症は、耳介、鼻柱、強膜、心臓弁膜部の弾性軟骨、軸骨格関節における線維軟骨、末梢関節および気管の硝子軟骨などのすべての軟骨で起こりうる。軟骨炎は再発を繰り返し、耳介や鼻の変形をもたらす。炎症発作時の症状は、軟骨部の発赤、腫脹、疼痛であるが、重症例では発熱、全身倦怠感、体重減少もみられる。突然の難聴やめまいを起こすこともある。多発関節炎もよく認められる。関節炎は通常、移動性で、左右非対称性で、骨びらんや変形を起こさない。喉頭、気管、気管支の軟骨病変によって嗄声、窒息感、喘鳴、呼吸困難などさまざまな呼吸器症状をもたらす。あるいは気管や気管支の壁の肥厚や狭窄は無症状のこともあり、逆に二次性の気管支炎や肺炎を伴うこともある。わが国のRPにおいてはほぼ半数の症例が気道病変を持ち、重症化の危険性を有する。呼吸器症状は気道狭窄によって上記の症状が引き起こされるが、狭窄にはいくつかの機序が存在する。炎症による気道の肥厚、炎症に引き続く気道線維化、軟骨消失に伴う吸・呼気時の気道虚脱、両側声帯麻痺などである。気道狭窄と粘膜機能の低下はしばしば肺炎を引き起こし、死亡原因となる。炎症時には気道過敏性が亢進していて、気管支喘息との鑑別を要することがある。この場合には、吸引、気管支鏡、気切、気管支生検などの処置はすべて死亡の誘因となるため、気道を刺激する処置は最小限に留めるべきである。一方で、気道閉塞の緊急時には気切および気管チューブによる呼吸管理が必要になる。2)生命予後に関係する症状生命予後に影響する病変として心・血管系症状と中枢神経症状も重要である。心臓血管病変に関しては男性の方が女性より罹患率が高く、また重症化しやすい。これまでの報告ではRPの患者の15~46%に心臓血管病変を認めるとされている。その内訳としては、大動脈弁閉鎖不全症(AR)や僧帽弁閉鎖不全症、心筋炎、心膜炎、不整脈(房室ブロック、上室性頻脈)、虚血性心疾患、大血管の動脈瘤などが挙げられる。RP患者の10年のフォローアップ期間中において、心血管系合併症による死亡率は全体の39%を占めた。筆者らの疫学調査では心血管系合併症を持つRP患者の死亡率は35%であった。心血管病変で最も高頻度で認められるものはARであり、その有病率はRP患者の4~10%である。一般にARはRPと診断されてから平均で7年程度の経過を経てから認められるようになる。大動脈基部の拡張あるいは弁尖の退行がARの主たる成因である。MRに関してはARに比して頻度は低く1.8~3%と言われている。MRの成因に関しては弁輪拡大、弁尖の菲薄化、前尖の逸脱などで生じる。弁膜症の進行に伴い、左房/左室拡大を来し、収縮不全や左心不全を呈する。RP患者は房室伝導障害を合併することがあり、その頻度は4~6%と言われており、1度から3度房室ブロックのいずれもが認められる。高度房室ブロックの症例では一次的ペースメーカが必要となる症例もあり、ステロイド療法により房室伝導の改善に寄与したとの報告もある。RP患者では洞性頻脈をしばしば認めるが、心房細動や心房粗動の報告は洞性頻脈に比べまれである。心臓血管病変に関しては、RPの活動性の高い時期に発症する場合と無症候性時の両方に発症する可能性があり、RP患者の死因の1割以上を心臓血管が担うことを鑑みると、無症候であっても診察ごとの聴診を欠かさず、また定期的な心血管の検査が必要である。脳梗塞、脳出血、脳炎、髄膜炎などの中枢神経障害もわが国では全経過の中では、およそ1割の患者に認める。わが国では中枢神経障害合併症例は男性に有意に多く、これらの死亡率は18%と高いことが明らかになった。眼症状としては、強膜炎、上強膜炎、結膜炎、虹彩炎、角膜炎を伴うことが多い。まれには視神経炎をはじめより重症な眼症状を伴うこともある。皮膚症状には、口内アフタ、結節性紅斑、紫斑などが含まれる。まれに腎障害および骨髄異形成症候群・白血病を認め重症化する。特に60歳を超えた男性RP患者において時に骨髄異形成症候群を合併する傾向がある。全般的な予後は、一般に血液学的疾患に依存し、RPそのものには依存しない。■ RP患者の亜分類一部の患者では気道病変、心血管病変、あるいは中枢神経病変の進展により重症化、あるいは致命的な結果となる場合もまれではない。すなわちRP患者の中から、より重症になり得る患者亜集団の同定が求められている。フランスのDionらは経験した症例に基づいてRPが3つのサブグループに分けられると報告し、分類した。一方で、彼らの症例はわが国の患者群の臨床像とはやや異なる側面がある。そこで、わが国での実態を反映した本邦RP患者群の臨床像に基づいて新規分類について検討した。本邦RP症例の主要10症状(耳軟骨炎、鼻軟骨炎、前庭障害、関節炎、眼病変、気道軟骨炎、皮膚病変、心血管病変、中枢神経障害、腎障害)間の関連検討を行った。その結果、耳軟骨炎と気道軟骨炎の間に負の相関がみられた。すなわち耳軟骨炎と気道軟骨炎は合併しない傾向にある。また、弱いながらも耳軟骨炎と、心血管病変、関節炎、眼病変などに正の相関がみられた。この解析からは本邦RP患者群は2つに分類される可能性を報告した。筆者らの報告は直ちに、Dionらにより検証され、その中で筆者らが指摘した気管気管支病変と耳介病変の間に存在する強い負の相関に関しては確認されている。わが国においても、フランスにおいても、気管気管支病変を持つ患者群はそれを持たない患者群とは異なるサブグループに属していることが確認されている。そして、気管気管支病変を持たない患者群と耳介病変を持つ患者群の多くはオーバーラップしている。すなわち、わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆された。■ 予後重症度分類(案)(表1)では、致死的になりうる心血管、神経症状、呼吸器症状のあるものは、その時点で重症と考える。腎不全、失明の可能性を持つ網膜血管炎も重症と考えている。それ以外は症状検査所見の総和で重症度を評価する。わが国では、全患者中5%は症状がすべて解消された良好な状態を維持している。67%の患者は、病勢がコントロール下にあり、合計で71%の患者においては治療に対する反応がみられる。その一方、13%の患者においては、治療は限定的効果を示したのみであり、4%の患者では病態悪化または再発が見られている。表1 再発性多発軟骨炎重症度分類画像を拡大する2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在ではRPの診断にはMcAdamの診断基準(1976年)やDamianiの診断基準(1976年)が用いられる(表2)。実際上は、(1)両側の耳介軟骨炎(2)非びらん性多関節炎(3)鼻軟骨炎(4)結膜炎、強膜炎、ぶどう膜炎などの眼の炎症(5)喉頭・気道軟骨炎(6)感音性難聴、耳鳴り、めまいの蝸牛・前庭機能障害、の6項目の3項目以上を満たす、あるいは1項目以上陽性で、確定的な組織所見が得られる場合に診断される。これらに基づいて厚生労働省の臨床調査個人票も作成されている(表3)。表2 再発性多発軟骨炎の診断基準●マクアダムらの診断基準(McAdam's criteria)(以下の3つ以上が陽性1.両側性の耳介軟骨炎2.非びらん性、血清陰性、炎症性多発性関節炎3.鼻軟骨炎4.眼炎症:結膜炎、角膜炎、強膜炎、上強膜炎、ぶどう膜炎5.気道軟骨炎:喉頭あるいは気管軟骨炎6.蝸牛あるいは前庭機能障害:神経性難聴、耳鳴、めまい生検(耳、鼻、気管)の病理学的診断は、臨床的に診断が明らかであっても基本的には必要である●ダミアニらの診断基準(Damiani's criteria)1.マクアダムらの診断基準で3つ以上が陽性の場合は、必ずしも組織学的な確認は必要ない。2.マクアダムらの診断基準で1つ以上が陽性で、確定的な組織所見が得られる場合3.軟骨炎が解剖学的に離れた2ヵ所以上で認められ、それらがステロイド/ダプソン治療に反応して改善する場合表3 日本語版再発性多発軟骨炎疾患活動性評価票画像を拡大するしかし、一部の患者では、ことに髄膜炎や脳炎、眼の炎症などで初発して、そのあとで全身の軟骨炎の症状が出現するタイプの症例もある。さらには気管支喘息と診断されていたが、その後に軟骨炎が出現してRPと診断されるなど診断の難しい場合があることも事実である。そのために診断を確定する目的で、病変部の生検を行い、組織学的に軟骨組織周囲への炎症細胞浸潤を認めることを確認することが望ましい。生検のタイミングは重要で、軟骨炎の急性期に行うことが必須である。プロテオグリカンの減少およびリンパ球の浸潤に続発する軟骨基質の好塩基性染色の喪失を示し、マクロファージ、好中球および形質細胞が軟骨膜や軟骨に侵入する。これらの浸潤は軟骨をさまざまな程度に破壊する。次に、軟骨は軟骨細胞の変性および希薄化、間質の瘢痕化、線維化によって置き換えられる。軟骨膜輪郭は、細胞性および血管性の炎症性細胞浸潤により置き換えられる。石灰化および骨形成は、肉芽組織内で観察される場合もある。■ 診断と重症度判定に必要な検査RPの診断に特異的な検査は存在しないので、診断基準を基本として臨床所見、血液検査、画像所見、および軟骨病変の生検の総合的な判断によって診断がなされる。生命予後を考慮すると軽症に見えても気道病変、心・血管系症状および中枢神経系の検査は必須である。■ 血液検査所見炎症状態を反映して血沈、CRP、WBCが増加する。一部では抗typeIIコラーゲン抗体陽性、抗核抗体陽性、リウマチ因子陽性、抗好中球細胞質抗体(ANCA)陽性となる。サイトカインであるTREM-1、MCP-1、MIP-1beta、IL-8の上昇が認められる。■ 気道病変の評価呼吸機能検査と胸部CT検査を施行する。1)呼吸機能検査スパイロメトリー、フローボリュームカーブでの呼気気流制限の評価(気道閉塞・虚脱による1秒率低下、ピークフロー低下など)2)胸部CT検査(気道狭窄、気道壁の肥厚、軟骨石灰化など)吸気時のみでなく呼気時にも撮影すると病変のある気管支は狭小化がより明瞭になり、病変のある気管支領域は含気が減少するので、肺野のモザイク・パターンが認められる。3)胸部MRI特にT2強調画像で気道軟骨病変部の質的評価が可能である。MRI検査はCTに比較し、軟骨局所の炎症と線維化や浮腫との区別をよりよく描出できる場合がある。4)気管支鏡検査RP患者は、気道過敏性が亢進しているため、検査中や検査後に症状が急変することも多く、十分な経験を持つ医師が周到な準備をのちに実施することが望ましい。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)全身の検索による臓器病変の程度、組み合わせにより前述の重症度(表2)と活動性評価票の活動性(表3)を判定して適切な治療方針を決定することが必要である。■ 標準治療の手順軽症例で、炎症が軽度で耳介、鼻軟骨に限局する場合は、非ステロイド系抗炎症薬を用いる。効果不十分と考えられる場合は、少量の経口ステロイド剤を追加する。生命予後に影響する臓器症状を認める場合の多くは積極的なステロイド治療を選ぶ。炎症が強く呼吸器、眼、循環器、腎などの臓器障害や血管炎を伴う場合は、経口ステロイド剤の中等~大量を用いる。具体的にはプレドニゾロン錠を30~60mg/日を初期量として2~4週継続し、以降は1~2週ごとに10%程度減量する。これらの効果が不十分の場合にはステロイドパルス療法を考慮する。ステロイド減量で炎症が再燃する場合や単独使用の効果が不十分な場合、免疫抑制剤の併用を考える。■ ステロイド抵抗性の場合Mathianらは次のようなRP治療を提唱している。RPの症状がステロイド抵抗性で免疫抑制剤が必要な場合には、鼻、眼、および気管の病変にはメトトレキサートを処方する。メトトレキサートが奏功しない場合には、アザチオプリン(商品名:イムラン、アザニン)またはミコフェノール酸モフェチル(同:セルセプト)を次に使用する。シクロスポリンAは他の免疫抑制剤が奏功しない場合に腎毒性に注意しながら使用する。従来の免疫抑制剤での治療が失敗した場合には、生物学的製剤の使用を考慮する。現時点では、抗TNF治療は、従来の免疫抑制剤が効かない場合に使用される第1選択の生物学的製剤である。最近では生物学的製剤と同等以上の抗炎症効果を示すJAK阻害薬が関節リウマチで使用されている。今後、高度の炎症を持つ症例で生物学的製剤を含めて既存の治療では対応できない症例については、JAK阻害薬の応用が有用な場合があるかもしれない。今後の検討課題と思われる。心臓弁膜病変や大動脈病変の治療では、ステロイドおよび免疫抑制剤はあまり有効ではない。したがって、大動脈疾患は外科的に治療すべきであるという意見がある。わが国でも心臓弁膜病変や大動脈病変の死亡率が高く、PRの最重症病態の1つと考えられる。大動脈弁病変および近位大動脈の拡張を伴う患者では、通常、大動脈弁置換と上行大動脈の人工血管(composite graft)置換および冠動脈の再移植が行われる。手術後の合併症のリスクは複数あり、それらは術後ステロイド療法(および/または)RPの疾患活動性そのものに関連する。高安動脈炎に類似した血管病変には必要に応じて、動脈のステント留置や手術を行うべきとされる。呼吸困難を伴う症例には気管切開を要する場合がある。ステント留置は致死的な気道閉塞症例では適応であるが、最近、筆者らの施設では気道感染の長期管理という視点からステント留置はその適応を減らしてきている。気管および気管支軟化病変の患者では、夜間のBIPAP(Biphasic positive airway pressure)二相性陽性気道圧または連続陽性気道圧で人工呼吸器の使用が推奨される。日常生活については、治療薬を含めて易感染性があることに留意すること、過労、ストレスを避けること、自覚的な症状の有無にかかわらず定期的な医療機関を受診することが必要である。4 今後の展望RPは慢性に経過する中で、臓器障害の程度は進展、増悪するためにその死亡率はわが国では9%と高かった。わが国では気管気管支病変を持つ患者群と耳介病変を持つ患者群の2群が存在していることが示唆されている。今後の課題は、治療のガイドラインの策定である。中でも予後不良な患者サブグループを明瞭にして、そのサブグループにはintensiveな治療を行い、RPの進展の阻止と予後の改善をはかる必要がある。5 主たる診療科先に行った全国疫学調査でRP患者の受診診療科を調査した。その結果、リウマチ・免疫科、耳鼻咽喉科、皮膚科、呼吸器内科、腎臓内科に受診されている場合が多いことが明らかになった。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 再発性多発軟骨炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)聖マリアンナ医科大学 再発性多発軟骨炎とは(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報再発性多発軟骨炎患者会ホームページ(患者とその家族および支援者の会)1)McAdam P, et al. Medicine. 1976;55:193-215.2)Damiani JM, et al. Laruygoscope. 1979;89:929-946.3)Shimizu J, et al. Rheumatology. 2016;55:583-584.4)Shimizu J, et al. Arthritis Rheumatol. 2018;70:148-149.5)Shimizu J, et al. Medicine. 2018;97:e12837.公開履歴初回2020年02月24日

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ジセレカ:幅広いRA患者で効果を示す経口選択的JAK1阻害薬

経口選択的JAK1阻害薬「フィルゴチニブ」関節リウマチの原因は完全には理解されていないが、いくつかの重要なサイトカイン経路を含むさまざまな因子が、その病因に関連している。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬は、複数のサイトカイン、成長因子、自己免疫に関与するホルモンを阻害する。そのため、JAK阻害薬は、関節リウマチを含む広範な炎症性疾患の治療選択肢としての可能性を持つとされる。フィルゴチニブは、JAKファミリーの中でもJAK1を選択的に阻害する経口の分子標的型合成抗リウマチ薬である。MTX未治療からMTX効果不十分、bDMARD効果不十分まで幅広い患者で有効関節リウマチに関するフィルゴチニブの第III相試験として、3つのFINCH試験が実施されている。FINCH 1試験1)(治療期間52週)は、MTXによる1次治療で十分な効果が得られなかった中等症〜重症の活動性関節リウマチ患者を対象に、MTX併用下に2つの用量(100mg、200mg)のフィルゴチニブを、アダリムマブおよびプラセボと比較した。その結果、有効性の主要評価項目である12週時の米国リウマチ学会基準の20%の改善(ACR20)が2つの用量で達成された(プラセボとの比較)。また、12週時の50%の改善(ACR50)および70%の改善(ACR70)も達成されている。FINCH 2試験2)(治療期間24週)は、生物学的DMARD(bDMARD)で十分な効果が得られなかった中等症〜重症の活動性関節リウマチ患者を対象に、従来型合成DMARD(csDMARD)併用下に2つの用量のフィルゴチニブをプラセボと比較した。有効性の主要評価項目である12週時のACR20は、フィルゴチニブ200mg群が66.0%、同100mg群は57.5%であり、プラセボ群の31.1%に比べ、いずれの用量とも有意に優れた(いずれも、p<0.001)。FINCH 3試験3)(治療期間52週)は、MTX治療歴のない中等症〜重症の活動性関節リウマチ患者を対象に、フィルゴチニブ単剤(200mg)と2つの用量のフィルゴチニブ+MTXおよびMTX単剤を比較した。有効性の主要評価項目である24週時のACR20は、2つの用量のフィルゴチニブ+MTXで達成された(MTX単剤との比較)。24週時のACR50およびACR70は、フィルゴチニブ単剤と2つの用量のフィルゴチニブ+MTXで達成された(MTX単剤との比較)。3つの試験すべてにおいて、良好な忍容性が示され、静脈血栓イベントや重篤な感染症、悪性腫瘍のリスクは低かった。フィルゴチニブに対する期待生物学的製剤の登場により関節リウマチ治療は飛躍的な進歩を遂げたが、未だ3分の1の患者では効果不十分であるという現状がある。また、経口投与により患者負担の軽減も期待できることから、フィルゴチニブの登場により関節リウマチ治療の選択肢が広がることが期待される。参考1)Combe B, et al. Ann Rheum Dis. 2019; 78: 77-78.2)Genovese MC, et al. JAMA. 2019; 322: 315-325.3)Westhovens R, et al. Ann Rheum Dis. 2019; 78: 259-261.

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強直性脊椎炎に、選択的JAK1阻害薬upadacitinibが有効/Lancet

 非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)への反応が不十分またはNSAIDが禁忌の強直性脊椎炎患者の治療において、upadacitinibはプラセボに比べ、疾患活動性、腰背部痛、身体機能、炎症の統合指標(ASAS40)を改善し、忍容性も良好であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのDesiree van der Heijde氏らが行ったSELECT-AXIS 1試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年11月12日号に掲載された。体軸性脊椎関節炎は、炎症性の腰背部痛、脊椎可動性の制限、付着部炎、末梢関節/関節外症状を特徴とする慢性進行性のリウマチ性疾患であり、X線所見で仙腸関節炎の十分な証拠がある場合に、強直性脊椎炎と呼ばれる。JAKシグナル伝達経路は、強直性脊椎炎の治療標的となる可能性が示唆されている。upadacitinibは選択的JAK1阻害薬であり、乾癬性関節炎や潰瘍性大腸炎、クローン病、アトピー性皮膚炎などの免疫性炎症性疾患の治療薬としても開発が進められている。14週時ASAS40達成を評価するプラセボ対照無作為化試験 本研究は、日本を含む20ヵ国62施設が参加した多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照第II/III相試験であり、2017年11月30日~2018年10月15日の期間に患者の割り付けが行われた(AbbVieの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、ニューヨーク改訂基準を満たす強直性脊椎炎で、生物学的疾患修飾抗リウマチ薬(bDMARD)による治療歴がなく、2剤以上のNSAIDの効果が不十分か、不耐または禁忌の患者であった。 被験者は、upadacitinib(15mg、1日1回)またはプラセボを経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられ、14週の治療が行われた。 主要エンドポイントは、14週時における国際脊椎関節炎評価学会(ASAS)アウトカム評価の40%改善基準(ASAS40)の達成とした。解析は、最大の解析対象集団(FAS、無作為割り付けの対象となり、試験薬の投与を1回以上受けた患者)で行われた。14週時ASAS40達成率:52% vs.26% 187例が登録され、upadacitinib群に93例、プラセボ群には94例が割り付けられ、178例(95%、各群89例ずつ)が治療を完遂した。 ベースラインの全体の平均年齢は45.4(SD 12.5)歳、男性が71%で、症状発現からの平均期間は14.4(10.8)年、診断からの平均期間は6.9(8.9)年であった。76%がHLA-B27陽性、81%がNSAIDの投与を受けていた。 14週時のASAS40達成率は、upadacitinib群が52%(48/93例)と、プラセボ群の26%(24/94例)と比較して有意に優れ(p=0.0003)、治療群間差は26%(95%信頼区間[CI]:13~40)であった。 upadacitinib群はプラセボ群に比べ、14週時に、以下の項目についても改善が認められた。ASAS20(p=0.0010)、ASAS部分寛解(p<0.0001)、強直性脊椎炎疾患活動性指標の50%以上(BASDAI50)の改善(p=0.0016)、カナダ脊椎関節炎研究コンソーシアム(SPARCC)のMRI脊椎スコア(p<0.0001)とMRI仙腸関節スコア(p<0.0001)、疾患活動性スコア(ASDAS、p<0.0001)、身体機能指標(BASFI、p=0.0013)、マーストリヒト強直性脊椎炎付着部炎スコア(MASES、p=0.0488)、強直性脊椎炎測定指数(BASMI、p=0.0296)、強直性脊椎炎QOL(ASQoL、p=0.0156)、ASAS健康指標(p=0.0073)。 有害事象は、upadacitinib群が62%(58/93例)、プラセボ群は55%(52/94例)で報告された。upadacitinib群で最も頻度の高い有害事象は、クレアチン・ホスホキナーゼ上昇(9%[8例])であり、次いで下痢、鼻咽頭炎、頭痛がそれぞれ5%(5例)に認められた。重篤な感染症、帯状疱疹、悪性腫瘍、静脈血栓塞栓イベントおよび死亡はみられず、重篤な有害事象は1例ずつ(upadacitinib群:変形性脊椎関節症、プラセボ群:心血管疾患)で発現した。 著者は、「これらのデータは、体軸性脊椎関節炎の治療におけるupadacitinibのさらなる検討を支持するもの」としている。現在、非盲検下での90週の継続試験が進行中だという。

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潰瘍性大腸炎に対するベドリズマブとアダリムマブの臨床的寛解効果は?(解説:上村直実氏)-1135

 潰瘍性大腸炎(UC)は国の特定疾患に指定されている原因不明の炎症性腸疾患(IBD)であり、現在、国内に16万人以上の患者が存在している。UCの治療に関しては、最近、腸内フローラの調整を目的とした抗生物質や糞便移植の有用性が報告されつつあるが、通常の診療現場で多く使用されているのは薬物療法である。寛解導入および寛解維持を目的とした基本的な薬剤である5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤、初発や再燃時など活動期に寛解導入を目的として用いるステロイド製剤、ステロイド抵抗性および依存性など難治性UCに使用する免疫調節薬(アザチオプリン、シクロスポリンAなど)と生物学的製剤が使用されているのが現状である。 分子生物分野の進歩とともに、患者数が増加しているIBD(クローン病とUC)に対する生物学的製剤が次々と開発されている。日本の保険診療で最初に承認された薬剤は抗TNF-α抗体製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ)であるが、その後、作用機序の異なる抗α4β7インテグリン抗体製剤(ベドリズマブ)、JAK阻害薬(トファシチニブ)、ヒト型抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体製剤(ウステキヌマブ)が開発され多くの臨床研究結果が報告されている。今回、中等症から重症の活動期UCの治療において、ベドリズマブはアダリムマブに比べて、臨床的寛解導入および内視鏡的改善の達成に関して優れた効果を示した国際共同第III相臨床試験(VARSITY試験)の結果がNEJM誌に発表された。 活動期UCに対する寛解導入および寛解維持効果を検証する目的で投与開始から52週後の臨床的寛解を主要アウトカムとした抗α4β7インテグリン抗体製剤と抗TNF-α抗体製剤とのガチンコ勝負の直接比較で注目されていた試験である。試験の結果、ベドリズマブ群とアダリムマブ群の52週時の臨床的寛解はそれぞれ31.3%と22.5%であり、前者の寛解率が統計学的に有意に高かった。しかし、ステロイドなしの症例では逆に12.6%と21.8%とアダリムマブ群の臨床的寛解率の方が高率であった。筆者らが記述しているように、2つの薬剤を比較するためにはこのような直接比較試験が必要であるという意見に大賛成で、日本人を対象として市販されている2つの薬剤の直接比較試験が行われることが期待される。

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新たなJAK阻害薬、中等症~重症の成人アトピー性皮膚炎に有効

 アトピー性皮膚炎(AD)に対するJAK阻害薬の開発が進んでいる。開発中の経口JAK1選択的阻害薬abrocitinib(PF-04965842)について、中等症~重症の成人ADに対する短期使用の有効性および忍容性が、第IIb相プラセボ対照無作為化試験で確認された。カナダ・SKiN Centre for DermatologyのMelinda J. Gooderham氏らが報告した。abrocitinibは、ADの病理生理学的特性に重要な役割を担うサイトカイン(IL-4、IL-13、IL-31、インターフェロンγなど)のシグナル伝達を阻害する。今回の第II相試験では、200mg、100mg、30mg、10mgの各用量を1日1回投与し、プラセボとの比較検証を行った。なお、本試験の結果を受けてabrocitinibの200mgと100mgの有効性と安全性を評価する第III相試験が行われている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年10月2日号掲載の報告。 試験は2016年4月15日~2017年4月4日に、オーストラリア、カナダ、ドイツ、ハンガリー、米国の58施設で行われた。試験デザインには二重盲検並行群間比較が用いられた。 被験者は、中等症~重症との診断を受けてから1年以上、局所療法の効果不十分または禁忌(12ヵ月間で4週間以上)の18~75歳の患者267例であった。 被験者を無作為に1対1対1対1対1の5群に割り付け、abrocitinib(200mg、100mg、30mg、10mg)またはプラセボを12週間投与した。 主要アウトカムは、医師による全般的評価(IGA:Investigator's Global Assessment)による改善度が、12週時にベースラインから2グレード以上改善し、消失(0)またはほぼ消失(1)に達した患者の割合とした。副次アウトカムは、EASIスコア(Eczema Area and Severity Index)のベースラインから12週時の変化率とした。 有効性はFAS(full analysis set)で評価した。試験薬を1投与以上受けた全患者を包含し、1試験地での4例を除く修正intention-to-treat集団(263例)を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・267例のうち144例が女性であった(平均年齢40.8[SD 16.1]歳)。abrocitinib群(200mg群55例、100mg群56例、30mg群51例、10mg群49例)、プラセボ群56例であった。・12週時点で、主要アウトカムを達成した患者の割合は、abrocitinib 200mg群21/48例(43.8%、両側検定のp<0.001)、100mg群16/54例(29.6%、p<0.001)で、プラセボ群は3/52例(5.8%)であった。30mg群は4/45例(8.9%、p=0.56)、10mg群は5/46例(10.9%、p=0.36)であった。・上記の結果は、最大効果モデルベースの推定値では、200mg群44.5%(95%信頼区間[CI]:26.7~62.3)、100mg群27.8%(14.8~40.9)、プラセボ群6.3%(-0.2~12.9)に相当した。・EASIの低下率は、200mg群82.6%(90%CI:72.4~92.8、p<0.001)、100mg群59.0%(48.8~69.3、p=0.009)で、プラセボ群35.2%(24.4~46.1)であった。・治療関連有害事象(TEAE)は、184/267例(68.9%)、計402件報告されたが、そのほとんどが軽症であった。・TEAEはいずれの群でも3例以上報告があった。最も頻度が高かったのは、アトピー性皮膚炎の悪化、上気道感染症、頭痛、悪心、下痢であった。・abrocitinib群では用量依存の血小板数の減少が観察されたが、4週以降はベースライン値へと上昇に転じた。

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関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」【下平博士のDIノート】第30回

関節リウマチに対する3剤目の経口JAK阻害薬「スマイラフ錠50mg/100mg」今回は、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ペフィシチニブ臭化水素酸塩(商品名:スマイラフ錠50mg/100mg)」を紹介します。本剤は、1日1回の服用でJAKファミリーの各酵素(JAK1/2/3、チロシンキナーゼ2[TYK2])を阻害し、関節リウマチによる関節の炎症や破壊を抑制します。<効能・効果>本剤は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年7月10日より発売されています。なお、過去の治療において、メトトレキサート(MTX)をはじめとする少なくとも1剤の抗リウマチ薬などによる適切な治療を行っても、疾患に起因する明らかな症状が残る場合に投与します。<用法・用量>通常、成人はペフィシチニブとして150mg(状態に応じて100mg)を1日1回食後に投与します。なお、中等度の肝機能障害がある場合は、50mg/日を投与します。<副作用>後期第II相試験、第III相臨床試験2件および継続投与試験の4試験における安全性併合解析において、本剤が投与された患者1,052例中810例(77.0%)に副作用が認められました。主な副作用は、上咽頭炎296例(28.1%)、帯状疱疹136例(12.9%)、血中CK増加98例(9.3%)などでした(承認時)。なお、重大な副作用として、帯状疱疹(12.9%)、肺炎(ニューモシスチス肺炎などを含む)(4.7%)、敗血症(0.2%)などの重篤な感染症、好中球減少症(0.5%)、リンパ球減少症(5.9%)、ヘモグロビン減少(2.7%)、消化管穿孔(0.3%)、AST(0.6%)・ALT(0.8%)の上昇などを伴う肝機能障害、黄疸(5.0%)、間質性肺炎(0.3%)が報告されています。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ヤヌスキナーゼという酵素を阻害することにより、関節の炎症や腫れ、痛みなどの関節リウマチによる症状を軽減します。2.持続する発熱やのどの痛み、息切れ、咳、倦怠感などの症状が現れた場合はすぐにご連絡ください。3.痛みを伴う発疹や皮膚の違和感、局所の激しい痛み、神経痛などが現れた場合は速やかに受診してください。4.この薬を服用している間は、生ワクチン(麻疹、風疹、おたふく風邪、水痘・帯状疱疹、BCGなど)の接種ができません。接種の必要がある場合には主治医に相談してください。5.(妊娠可能年齢の女性の場合)この薬を服用中および服用終了後少なくとも1月経周期は、適切な避妊を行ってください。6.本剤を服用中の授乳は避けてください。<Shimo's eyes>関節リウマチの薬物療法は近年大きく進展しています。関節破壊の進行抑制を含めた病態コントロールのため、発症初期にはMTXをはじめとする従来型疾患修飾性抗リウマチ薬(cDMARDs)が使用されます。MTXなどを十分量で用いても効果不十分な場合には、生物学的製剤であるTNF阻害薬(インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブなど)やIL-6阻害薬(トシリズマブなど)、T細胞活性抑制薬(アバタセプト)、もしくは低分子標的薬であるJAK阻害薬(トファシチニブ、バリシチニブ)が使用されます。本剤は、関節リウマチに用いる3剤目のJAK阻害薬で、JAK1、JAK2、JAK3およびTYK2を阻害し、関節の炎症や破壊を抑制します。生物学的製剤は点滴または皮下注射での投与となりますが、しばしば発疹などの投与時反応や注射部位疼痛が問題となることがあります。JAK阻害薬は経口投与のため、非侵襲性の治療を望む患者さんや自己注射が困難な患者さんであっても、好みや生活環境に合わせた治療を選択することができると期待されています。また、本剤は相互作用も少なく、1日1回投与であるため、高齢者でも使用しやすいと考えられます。留意点としては、中等度の肝機能障害を有する患者については投与量の制限があることが挙げられます。また、本剤は免疫反応に関与するJAK経路の阻害により、結核、肺炎、敗血症などの感染症リスクが増大する懸念があることから、既存のJAK阻害薬2剤と同様に、生物学的製剤や他のJAK阻害薬などの免疫を抑制する薬剤との併用はできません。承認時の臨床試験では、副作用として12.9%で帯状疱疹が報告されているので、とくに高齢の患者さんでは、使用前に帯状疱疹ワクチン接種の有無などについて確認し、服用後に帯状疱疹が現れる可能性について注意喚起をしておく必要があるでしょう。

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難治性RA、filgotinibで短期アウトカムが改善/JAMA

 1種類以上の生物学的製剤の疾患修飾性抗リウマチ薬(bDMARD)による治療が効果不十分または忍容性がない、中等度~重度の活動期関節リウマチ(RA)患者において、filgotinib(100mg/日または200mg/日)がプラセボとの比較において、12週時の臨床的アウトカムを有意に改善したことが示された。米国・スタンフォード大学のMark C. Genovese氏らによる、約450例を対象に行った第III相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果で、JAMA誌2019年7月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、長期の有効性・安全性を評価する必要がある」と述べている。filgotinibは、経口JAK1選択的阻害薬で、第II相治験で中等度~重度の活動期RAに対して、単独およびメトトレキサートとの併用の両療法において臨床的有効性が確認されていた。100mg/日または200mg/日、プラセボを投与しACR20達成率を比較 研究グループは2016年7月~2018年6月にかけて、世界114ヵ所の医療機関を通じて、1種類以上のbDMARDに効果不十分/忍容性のない中等度~重度の活動期RA患者449例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に3群に分け、filgotinibを200mg(148例)、filgotinibを100mg(153例)、プラセボ(148例)を、それぞれ1日1回、24週間投与した。被験者は、これまで服用していた従来の合成DMARD(csDMARD)も継続して服用した。 主要エンドポイントは、12週時の米国リウマチ学会基準で20%の改善(ACR20)の達成率だった。副次評価アウトカムは、12週時の低疾患活動性(疾患活動性スコア[DAS28-CRP]が3.2以下)、健康評価質問票による機能障害指数(HAQ-DI)、身体的側面のSF-36、Functional Assessment of Chronic Illness Therapy-Fatigue(FACIT-Fatigue)スコアの変化、および24週時の寛解(DAS28-CRPが2.6未満で定義)達成患者割合、有害事象などだった。ACR20達成率、200mg群66%、100mg群58% 被験者のうち448例が実際に試験薬の投与を受けた。平均年齢56歳(SD 12)、女性が360例(80.4%)、平均DAS28-CRPスコアは5.9(SD 0.96)、3種類以上のbDMARDs服用歴がある被験者は105例(23.4%)だった。試験は381例(85%)が完了した。 12週時のACR20達成率は、プラセボ群31.1%に対し、filgotinib 200mg群が66.0%、100mg群が57.5%と、両filgotinib群が有意に高率だった(対プラセボ群の群間差は200mg群:34.9%[95%信頼区間[CI]:23.5~46.3]、100mg群:26.4%[15.0~37.9]、いずれもp<0.001)。 3種類以上のbDMARDs服用歴がある被験者についても、ACR20達成率はプラセボ群が17.6%に対し、filgotinib 200mg群が70.3%、100mg群が58.8%と有意に高率だった(対プラセボ群の群間差は200mg群:52.6%[95%CI:30.3~75.0]、100mg群:41.2%[17.3~65.0]、いずれもp<0.001)。 最も発生頻度が高かった有害事象は、filgotinib 200mg群が鼻咽頭炎(10.2%)、filgotinib100mg群が頭痛、鼻咽頭炎、上気道感染症(それぞれ5.9%)、プラセボ群がRA(6.1%)だった。日和見感染症、活動性結核、悪性腫瘍、胃腸穿孔、死亡の報告例はなかった。

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潰瘍性大腸炎の炎症の程度を便で診断

 2019年6月26日、アルフレッサ ファーマ株式会社は、体外診断用医薬品として潰瘍性大腸炎(以下「UC」と略す)の病態把握の補助に使用されるカルプロテクチンキット「ネスコートCpオート」が、6月5日に製造販売承認を取得したことを機に、都内で「潰瘍性大腸炎の治療継続における課題とは」をテーマにプレスセミナーを開催した。潰瘍性大腸炎患者に有用な診断キット セミナーは、日比 紀文氏(北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療[IBD]センター長)の司会により進行し、同氏は「潰瘍性大腸炎は全世界で500万人の患者が推定され、わが国はアメリカについで患者数が多い国である。潰瘍性大腸炎は現在も原因不明の疾患であり、主な症状は、持続反復する下痢、血便、頻回のトイレなどがあり、活動期と寛解期を繰り返すのが特徴。治療では、5SAS製剤、JAK阻害薬などが使用されている。潰瘍性大腸炎の適切な治療では、病態の正確な把握が必要だが内視鏡検査が広く行われている。しかし、内視鏡検査は侵襲性が高く、患者負担も大きいため、非侵襲性の検査が長らく待たれていた。今回製造販売承認されたネスコートCpオートであれば10分で測定ができ、外来でも有用だと期待しているし、患者にも身体・経済面でメリットがある」と潰瘍性大腸炎の疾患概要と本診断キット開発の意義を説明した。潰瘍性大腸炎治療の要は適切なモニタリング つぎに、講演として「潰瘍性大腸炎診療~便中カルプロテクチン測定の展望と課題~」をテーマに、久松 理一氏(杏林大学医学部 第三内科学教室 消化器内科 教授)がレクチャーを行った。 久松氏は、はじめに潰瘍性大腸炎の病態、症状を詳説し、とくに症状について、直腸に炎症があると残便感が消えず、絶えず下痢や腹痛におびやかされる状態になること、10代後半の若年から発症し、進学や就職など大切なライフイベントと重なることもあり、潰瘍性大腸炎は患者の生活の質や活動領域を著しく悪化させることを説明した。 治療では、患者の将来を見据え、大腸全摘の回避と大腸がんへのリスクを軽減する必要がある。先述の治療薬を使用して再燃する活動期の寛解導入療法と寛解期の寛解維持療法が行われる。そして、治療で重要なのが、適切なモニタリングであり、内視鏡検査が病勢評価のゴールドスタンダードとして使用されている。 しかし、内視鏡検査は、さまざまな患者負担があり、安全かつ簡易に内視鏡と相関するバイオマーカーの開発が望まれてきたと開発までの経緯を説明した。潰瘍性大腸炎の診断が外来の待ち時間でわかる こうした要望により開発されたのが「ネスコートCpオート」であり、これは便中のカルプロテクチンを測定し、検出された濃度により活動期と寛解期を把握するものである。カルプロテクチンは、主に好中球から分泌されるカルシウム結合タンパクで、腸内に炎症が起こると、腸壁から浸潤した白球血とともに糞便に入り体外に排出される。便中のカルプロテクチンは室温で5~7日程度安定し、その濃度と内視鏡的活動性は高い相関を示すという。検査は、患者より採取した便を検査することで、10分でカルプロテクチン濃度が測定できる。とくに便中のカルプロテクチン濃度は臨床症状が出現する前から上昇することから、再燃時の事前予測にも活用できる可能性もある。また、欧米ではカルプロテクチン測定は、すでにIBD(炎症性腸疾患)の診断・活動性評価に使用されているという。 今後の展望として、同氏は「外来の待ち時間で測定が完了し、医療側も新しい機器をそろえる必要のないこの診断キットは、軽症の潰瘍性大腸炎患者のモニタリングとして内視鏡検査を減らすことができる。主治医は患者と検査結果を見ながら治療方針を決めていくことができるようになる」と期待を寄せ、レクチャーを終えた。 なお、本製品は、現在保険申請の準備中である。

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潰瘍性大腸炎治療の高度化に対応する方法とは

 2015~16年に行われた全国疫学調査1)によると、潰瘍性大腸炎の全国有病者数は推計22万人であり、クローン病(推計7.1万人)と合わせると29万人を超える。炎症性腸疾患(IBD)は、もはや“common disease”と言えるのかもしれない。 2019年5月、ファイザー株式会社が「潰瘍性大腸炎とチーム医療の重要性」をテーマに、都内にてセミナーを開催した。併せて、新しくオープンした潰瘍性大腸炎に関する情報提供サイト「UC tomorrow」の紹介が行われた。治療は進歩しているが、治療選択は容易でない セミナーでは、伊藤 裕章氏(医療法人錦秀会 インフュージョンクリニック 院長)が「潰瘍性大腸炎診療の歩み」について講演を行った。 潰瘍性大腸炎は指定難病だが、国は「難病の医療提供体制の在り方の基本理念2)」として、「診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けることができる体制」が望ましいと示しており、非専門医が診る機会も増えている。これに対し同氏は、「潰瘍性大腸炎の治療は高度化しており、たとえ消化器内科医であっても、必ずしも適切な治療選択ができるとは限らない」と、治療の難しさを指摘した。新薬登場も、揺るがないステロイドの立ち位置 潰瘍性大腸炎の治療は、2010年に抗TNF-α抗体製剤インフリキシマブ(商品名:レミケード)が承認されて以降、バイオ医薬品も1つの選択肢となり、2018年には抗α4β7インテグリン抗体製剤ベドリズマブ(同:エンタイビオ)、JAK阻害薬トファシチニブ(同:ゼルヤンツ)など、新しい作用機序を持つ新薬が発売されている。 一方で、ステロイドはいまだに重要な位置を占めているという。同氏は、「ステロイドの使用は全身的な副作用につながるため、できるだけ早くやめるべき。維持療法のゴールは、ステロイドがない状態での寛解維持だ。ステロイドの離脱にはチオプリン製剤が有用である」と注意を促した。患者個別の対応をするためにはチーム医療が不可欠 新薬についてはまだエビデンスが十分でないため、優先的な使用は推奨されていない。バイオ医薬品は患者への経済的・身体的負担が大きいこと、JAK阻害薬は経口投与可能だが、胎盤を通過しやすいため若年女性への投与には注意を要するなど、それぞれの薬剤に考慮すべき点がある。まずは従来使用されている薬から開始して、患者の年齢、性別、重症度などを考慮し、希望によってはバイオシミラーの使用も検討するなど、個別の対応が求められる。 最後に同氏は、「患者さんは不安を抱えながら治療を受けていることを念頭に置き、情報を共有したうえで治療を進めていくことが重要。一方的な治療は、薬の効果が十分に得られなくなったり、他の薬による副作用がこの薬のせいだと思い込まれたりする恐れがある。そういったことを防ぐためにも、医師、看護師、メディカルスタッフそれぞれが高い専門性を持ち、チームとして総合的なケアを行うことが不可欠だ」とまとめた。 同氏が院長を務めるインフュージョン・クリニックでは、患者の意思決定支援や自己管理能力の向上に積極的に取り組んでおり、アプリを使った遠隔診療システムなども導入しているという。潰瘍性大腸炎の疾患啓発サイトをリリース 講演後、湯井 篤志氏(ファイザー株式会社 炎症・免疫部門)により、伊藤氏らが監修を行った潰瘍性大腸炎に関する情報提供サイト「UC tomorrow」が紹介された。 本サイトは、潰瘍性大腸炎の患者や家族に向けた疾患啓発・説明サイトとして構成され、主なコンテンツは「病気を知る」「治療を知る」「医師への相談シート」の3つ。疾患や治療方法などの基本情報をQ&A方式で掲載し、疾患理解や治療ステージに応じた治療選択肢の認知向上を促す。医師と患者のコミュニケーションが円滑に進むように「治療目標の重要性」を伝えるページもある。 サイト名には、潰瘍性大腸炎の患者・家族が「未来(明日)を前向きに生活できるように」という思いが込められている。

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