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541.

新たな冠動脈疾患の予測モデル、有病率が低い集団でも優れた予測能

オランダ・エラスムス大学医療センターのTessa S S Genders氏らが新たに開発した冠動脈疾患の予測モデルは、有病率が低い集団においても優れた予測能を示すことが、同氏らが実施した検証試験で確認された。検査前確率は、患者にとって最も有益な検査法を決めるのに有用とされる。ACC/AHAやESCの現行ガイドラインでは、安定胸痛がみられる患者における冠動脈疾患の検査前確率の評価には、Diamond and ForresterモデルやDuke臨床スコアが推奨されているが、いずれの方法にもいくつか欠点があるという。BMJ誌2012年6月23日号(オンライン版2012年6月12日号)掲載の報告。新規予測モデルの予測能を後ろ向き統合解析で検証研究グループは、有病率の低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の評価に有用な予測モデルを開発するために、個々の患者データのレトロスペクティブな統合解析を行った。ヨーロッパおよび米国の18施設から、冠動脈疾患の既往歴のない安定胸痛患者が登録された。CTあるいはカテーテルベースの冠動脈造影所見に基づき、低有病率または高有病率の集団に分類した。主要評価項目は閉塞性冠動脈疾患(カテーテル冠動脈造影で1つ以上の血管に≧50%の狭窄)とした。予測モデルは、基本モデル(年齢、性別、症状、有病率の高低)、臨床モデル(基本モデルの因子、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙)および拡張モデル(臨床モデルの因子、CT冠動脈造影によるカルシウムスコア)で構成された。低有病率の集団のデータセットを用いて、交差検証法(cross validation)による解析を行い、識別能(C統計量)、キャリブレーション、純再分類改善度(net reclassification improvement; NRI)ついて評価した。冠動脈カルシウムスコアを加えると予測能がさらに改善解析の対象となった5,677例(男性3,283例[平均年齢58歳]、女性2,394例[同:60歳])のうち、5,190例(91%)でCT冠動脈造影が施行され、1,634例(31%)が閉塞性冠動脈疾患と診断された。このうち1,083例(66%)にカテーテル冠動脈造影が施行され、886例(82%)に閉塞性冠動脈疾患が確認された。CT冠動脈造影で閉塞性冠動脈疾患がみられなかった3,556例のうち、526例にカテーテル冠動脈造影が施行され、閉塞性冠動脈疾患が否定されたのは498例(95%)だった。全体として、カテーテル冠動脈血管造影が施行されたのは2,062例(36%)で、そのうち閉塞性冠動脈疾患と診断されたのは1,176例(57%)であった。単変量および多変量解析では、すべての予測因子が疾患の発現と有意に関連した。臨床モデルの予測能は、基本モデルに比べ優れていた(交差検証されたc統計量が0.77から0.79に改善、NRI:35%)。拡張モデルの冠動脈カルシウムスコアは主要な予測因子であった(同:0.79から0.88に改善、102%)。著者は、「年齢、性別、症状、心血管リスクなどから成る新たな予測モデルにより、有病率が低い集団における冠動脈疾患の検査前確率の正確な予測が可能となった。この予測モデルに冠動脈カルシウムスコアを加えると、予測能がさらに改善された」と結論している。(菅野守:医学ライター)

542.

10代うつ病患者の治療はファンタジーゲームで?

うつ病の認知行動療法のパソコン用ソフトとして開発された「SPARX(Smart, Positive, Active, Realistic, X-factor thoughts)」は、ファンタジーゲーム様式が特徴で、4~7週間にわたって提供される7つのモジュールを克服していくというものである。その治療効果について、ニュージーランド・オークランド大学のSally N Merry氏らによる12~19歳のティーンエイジャーを対象とした多施設無作為化非劣性試験の結果、プライマリ・ケアにおいて対面カウンセリングといった通常ケアの代替療法となり得るものであることが示された。Merry氏らは、「治療が必要にもかかわらず介入が行われていない患者を対象に適用していくことができるだろう」とまとめている。これまでパソコンソフトを活用した認知行動療法は成人についてはその効果が認められていたが、ティーンエイジャーにおける効果は明らかではなかった。BMJ誌2012年4月19日号より。12~19歳の187例をSPARX介入群と通常ケア群に無作為化試験は、ニュージーランドの24のプライマリなヘルスケア施設(小児科、一般診療所、学校のカウンセリング・サービス)で、うつ症状に対する支援を希望していて、自傷行為の重大リスクがなく、一般医が治療が必要と判断した12~19歳の187例を対象に、多施設無作為化非劣性試験を実施した。94例がSPARXを受ける群(平均年齢15.6歳、女性62.8%)に、93例は通常の治療を受ける群(平均年齢15.6歳、女性68.8%)に割り付けられた。通常ケア群には、訓練を受けたカウンセラーと臨床心理士が提供する対面カウンセリングが行われた。主要評価項目は、小児うつ病尺度改訂版(CDRS-R:children's depression rating scale-revised)スコアの変化とした。副次評価項目は、小児うつ病尺度改訂版、Reynoldのティーンエイジャーうつ病スケール第2版(Reynolds adolescent depression scale-second edition)、気分と感情質問票(mood and feelings questionnaire)、Spence小児不安スケール(SCAS:Spence children's anxiety scale)、小児用QOL・喜び・満足度質問票(paediatric quality of life enjoyment and satisfaction questionnaire)、小児用Kazdin絶望感測定尺度(Kazdin hopelessness scale for children)などの各スケールスコアの変化と、治療評価を含む全体的満足度を含めた。副次評価項目もすべてSPARX群の非劣性を支持170例(91%、SPARX群85例、通常ケア群85例)が介入後に評価を受け、168例(90%、83例、85例)が3ヵ月後のフォローアップ評価を受けた。パープロトコル解析(143例)の結果、SPARX群が通常ケア群に非劣性であることが示された。介入後、CDRS-R未処理スコアは、SPARX群で平均10.32の減少が認められた。通常ケア群では7.59の減少だった(群間差:2.73、95%信頼区間:-0.31~5.77、P=0.079)。寛解率は、SPARX群(31例、43.7%)が通常ケア群(19例、26.4%)より有意に高く(差17.3%、95%CI 1.6~31.8%)、P=0.030)、反応率はSPARX群(66.2%、47例)と通常ケア群(58.3%、42例)との間に有意差は認められなかった(格差:7.9%、95%信頼区間:-7.9~24%、P=0.332)。副次評価項目もすべて非劣性を支持するものであった。intention-to-treat解析はこれらの所見を確認し、得られた改善はフォローアップ後も維持された。介入に関連すると思われる有害事象の頻度も群間での差異は認められなかった(SPARX群11例、通常ケア群11例)。

543.

進行期のホジキンリンパ腫への6サイクルBEACOPP+放射線療法

進行期のホジキンリンパ腫の最も有望な治療法と目されている多剤併用化学療法のBEACOPPに関して、標準としてきた8サイクルと比べて、6サイクル+PET活用の放射線療法が、無治療失敗(FFTF)についてより効果があり、かつ8サイクルで懸念される毒性を低減することが示された。ドイツ・ケルン大学病院のAndreas Engert氏らによる無作為化オープンラベル非劣性試験の結果で、Engert氏は、「6サイクル+PET活用の放射線療法を、進行期ホジキンリンパ腫の治療選択肢の一つとすべきであろう」と結論した。また化学療法後のPET活用の有用性について、「追加的な放射線療法に欠かせないもの」とまとめている。Lancet誌2012年5月12日号(オンライン版2012年4月4日号)掲載報告より。BEACOPPの強度と放射線療法の必要性について検討研究グループは、進行期ホジキンリンパ腫患者への化学療法の強度と放射線療法の必要性について明らかとするため、多施設共同オープンラベルパラレル平行非劣性試験「HD15」を行った。研究グループが以前標準レジメンとしていた8サイクルBEACOPP(8×Besc)と、2つの強度を弱めた、6サイクルBEACOPP(6×Besc)と、14日間を1サイクルとして8サイクル行うBEACOPP(8×B14)とを比較検討した。被験者は化学療法後、PET検査で2.5cm以上の腫瘍が認められた場合、追加で放射線療法(30Gy)を受けることとした。試験に登録されたのは、18~60歳の進行期ホジキンリンパ腫の新規患者2,182例だった。主要エンドポイントは無治療失敗(FFTF)とした。また12ヵ月時点のPETによる腫瘍再発の陰性予測値を独立エンドポイントとした。6×Besc群、標準の8×Besc群に対して非劣性登録被験者のうち2,126例が無作為に、8×Besc群705例、6×Besc群711例、8×B14群710例に割り付けられintention-to-treat解析が行われた。FFTFは、結果としては6×Besc群と8×B14群は、8×Besc群に対し非劣性だった。5年FFTF率は、8×Besc群84.4%[97.5%信頼区間(CI):81.0~87.7]、6×Besc群89.3%(同:86.5~92.1)、8×B14群85.4%(同:82.1~88.7)だった(6×Besc群と8×Besc群との差の97.5%CI:0.5~9.3)。3群の全生存率は、8×Besc群91.9%、6×Besc群95.3%、8×B14群94.5%で、8×Besc群よりも6×Besc群が有意に良好だった(両群間差の97.5%CI:0.2~6.5)。死亡率は8×Besc群(7.5%)が、6×Besc群(4.6%)、8×B14群(5.2%)よりも高値を示した。その差の要因は、主として治療関連のイベントにあり(各群2.1%、0.8%、0.8%)、副次的には二次性腫瘍によるものだった(各群1.8%、0.7%、1.1%)。追加放射線療法を受けたのは2,126例中225例(11%)で、12ヵ月時点のPET評価による陰性予測値は94.1%(95%CI:92.1~96.1)だった。

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未成年2型糖尿病患者の最適な治療は?(4月29日掲載NEJMオンライン速報版より)

メトホルミン単独療法で血糖コントロールが不十分な10-17歳の2型糖尿病患者に対する次の治療選択肢として、チアゾリジン薬の追加併用療法が、メトホルミン単独療法を継続するより有意に血糖を管理できることが、無作為化比較試験The Treatment Options for Type 2 Diabetes in Adolescents and Youth (TODAY) 試験の結果より明らかになった。この結果は4月29日、NEJM誌オンライン速報版に発表された。メトホルミン単独療法でHbA1c≧8%の未成年2型糖尿病患者を無作為化割り付け研究グループは、1日2回のメトホルミン(1,000mg/日)投与においても、HbA1c値が8%未満にコントロールできなかった10-17歳の2型糖尿病患者699例を、 1) メトホルミン単独療法群 2) メトホルミン+チアゾリジン薬(ロシグリタゾン)併用療法群 3) メトホルミン+減量を重要視した生活習慣改善強化群の3群に無作為に割り付けし、主要評価項目を「血糖コントロールの喪失」とし、各治療法を比較検証した。「血糖コントロールの喪失」は、6ヵ月にわたるHbA1c値8%以上の持続またはインスリン治療の必要な持続的な代謝不全と定義された。主な結果は下記のとおり。 1. 平均追跡期間は3.86年 2. 「血糖コントロールの喪失」と判定された症例は319例(45.6%)   1) メトホルミン単独療法群:51.7% (232例中120例)   2) チアゾリジン薬併用療法群:38.6% (233例中90例)   3) 生活習慣改善強化群:46.6% (234例中109例) 3. チアゾリジン薬併用療法群は、メトホルミン単独療法群に比べ、   有意に血糖コントロール喪失が少なかった(P = 0.006)。 4. 生活習慣改善強化群は、メトホルミン単独療法群、   チアゾリジン薬併用療法群のいずれの治療法とも有意な差がなかった。 5. チアゾリジン薬併用療法は、非ヒスパニック系黒人で効果が弱く、   少女で効果が強かった。

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リピート処方の質と安全に、受付・事務スタッフの創造的判断が貢献

リピート処方(repeat prescribing)、いわゆるDo処方について、受付または事務スタッフが、質および安全性に対して重大な「隠れた」貢献を行っているとの研究結果が報告された。英国・バーツ&ロンドン医科歯科大学校のDeborah Swinglehurst氏らによる。BMJ誌2011年11月12日号(オンライン版2011年11月3日号)掲載報告より。リピート処方をめぐる質・安全への貢献および障壁について調査Swinglehurst氏らは、GP(general practice)におけるリピート処方に関して、組織業務の様子を描出、調査、比較検討することで、質および安全に対する貢献者および障壁を特定する研究を行った。研究対象となったのは、電子患者記録を使用しており、患者への処方が準オートメーション化されている英国4都市の組織形態が多様なGP。395時間にわたって民族誌学的事例研究の手法でスタッフ(医師25人、看護師16人、ヘルスアシスタント4人、マネジャー6人、受付・事務スタッフ56人)を観察し、28の文書と、リピート処方に関わる部分的、全体的な人為的な現象について調べた。主要評価項目は、患者安全や良好な診療の特徴に対する潜在的な脅威とした。研究グループは、医師、受付・事務スタッフがリピート処方について、どのような貢献をしているか、また協同しているかを観察し、処方作業をマッピングすること、組織的実践を描出すること、それらを一緒に話し合って描画しているかなどについて解析した。これらは社会的モデルとして知られるもので、ICT(information and communications technologies)により形成化されているものであった。これからの患者安全の研究は、テクノロジーサポートを研究することが大切調査・解析の結果、リピート処方は複雑で、患者安全に重大な影響を有し、医師とスタッフの協働が求められるテクノロジーサポート・ソーシャルプラクティスであることが明らかになった。リピート処方の半数以上が、受付スタッフによって“例外”と判断されていた。大半は、電子リスト上にあったものと異なる薬、投与量、タイミングなどの理由によるものであった。形式的な処方プロトコルと、リピート処方を書くことにはギャップが存在する。そのギャップを埋める作業として、医師が知らないうちに、受付・事務スタッフの創造的な判断が貢献していた。Swinglehurst氏は、「一見、平凡で、標準的で、自動化されていると見られるテクノロジーサポート・ルーチンワークは、実際には高度な部分的な調整や判断が最前線のスタッフによって求められる。それらを研究することが、患者安全研究の新たなアジェンダになっていくだろう」と結論している。

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周術期のトラネキサム酸投与、前立腺がん手術においても輸血率を有意に低下

前立腺がんに対する開腹式の根治的恥骨後式前立腺摘除術は、腹腔鏡手技が普及後もなお標準的手術療法である。ただしこの処置で最も多い重大な合併症が、術中・術後の出血で、実際多くの患者が輸血を必要とする。イタリア・Vita-Salute San Raffaele大学のAntonella Crescenti氏らは、術中に止血剤の低用量トラネキサム酸(商品名:トランサミンほか)を用いることで輸血率が低下するかどうか、二重盲検プラセボ対照無作為化試験を行った。結果、安全で輸血率低下に有効であることが示された。BMJ誌2011年10月29日号(オンライン版2011年10月19日号)掲載報告より。根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に無作為化プラセボ対照試験トラネキサム酸は止血剤の中でも非常に安価で、最近の大規模無作為化試験で外傷大出血患者の死亡率を低下することが示されており、心臓外科では周術期輸血率を低下するため標準的となっている。整形外科手術、肝臓手術でもその有効性は示されているが、泌尿器科では明らかになっていなかった。そこでCrescenti氏らは、2008年4月~2010年5月にSan Raffaele大学病院で、18歳以上で本試験に参加することに同意した根治的恥骨後式前立腺摘除術を受けた200例を対象に試験を行った。本試験では、心房細動の人、薬剤溶出性ステント治療を受けた冠状動脈疾患の人、重症の慢性腎不全、先天性または後天性血栓形成傾向、トラネキサム酸に対するアレルギーがあるまたはその疑いがある人は除外された。被験者は無作為に、トラネキサム酸もしくはプラセボ(食塩水)を受ける群に割り付けられた。トラネキサム酸投与は、術前に負荷量500mg量を20分間、術中は250mg/時間の持続点滴が行われた。 主要アウトカムは、手術時に輸血を受けた患者数とし、副次アウトカムは術中の失血とした。トラネキサム酸群の輸血率、術中失血量が有意に低下被験者は200例全員が手術を受け、追跡も完了した。輸血患者の割合は、トラネキサム酸群34例(34%)、プラセボ群55例(55%)で、トラネキサム酸群の輸血率の有意な低下が認められた(P=0.004)。トラネキサム酸群の輸血率の絶対低下は21%(95%信頼区間:7~34)であり、相対的リスクは0.62(同:0.45~0.85)、治療必要数(NNT)は5(同:3~14)だった。術中の平均失血量は、プラセボ群よりトラネキサム酸群で有意に少なかった(P=0.02)。両群間の差は232 mL(同:29.7~370.7)だった。フォローアップにおいて死亡患者はいなかった。また血栓塞栓症イベント発生については、両群間に格差はなかった。

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プライマリPCI前のエノキサパリン、未分画ヘパリンよりネット臨床ベネフィット提供

ST上昇型心筋梗塞を呈しプライマリ経皮的冠動脈形成術(PCI)を受けた患者の前処置として、未分画ヘパリンに比べエノキサパリンを投与されていた患者のほうが、ネット臨床ベネフィットが有意であることが報告された。フランス・パリ大学Gilles Montalescot氏らが行った国際無作為化オープンラベル試験「ATOLL」の結果による。直接的な両者の比較はこれまで行われていなかった。Lancet誌2011年8月20日号掲載報告より。4ヵ国910例を対象に無作為化オープンラベル試験ATOLL試験は、ST上昇型心筋梗塞でプライマリPCIとエノキサパリンまたは未分画ヘパリンを受けた患者の、虚血性イベントおよび出血イベントの低下について短期的、長期的に追跡する試験。4ヵ国(オーストリア、フランス、ドイツ、アメリカ)64施設から、2008年7月~2010年1月の間にST上昇型心筋梗塞を呈した910例が登録され行われた。被験者はオープンラベルで無作為に、プライマリPCI前に、エノキサパリンか未分画ヘパリンの0.5mg/kg静脈内ボーラスを受ける群に割り付けられた。患者の選択、割付、治療は可能な限り搬送中に医療チームが、中央無作為化センターと音声連絡を取り合い行われた。無作為化前にすでに抗凝固療法を受けていた患者は試験から除外された。プライマリエンドポイントは、30日死亡率、心筋梗塞合併症、処置失敗または大出血。主要副次エンドポイントは、死亡・再発性急性冠症候群・緊急血管再生術の複合とされ、intention to treat解析にて評価が行われた。主なエンドポイントでエノキサパリン有意に低減プライマリエンドポイントは、エノキサパリン群(450例)126例(28%)、未分画ヘパリン群(460例)155例(34%)で発生した(相対リスク:0.83、95%信頼区間:0.68~1.01、p=0.06)。死亡発生は、エノキサパリン群17例(4%)vs. 未分画ヘパリン群29例(6%)(p=0.08)、心筋梗塞合併症は同20例(4%)vs. 29例(6%)(p=0.21)、処置失敗は同100例(26%)vs. 109例(28%)(p=0.61)、大出血は同20例(5%)vs. 22例(5%)(p=0.79)で、両群間で違いはなかった。一方、主なエンドポイントは、エノキサパリン群で有意な低減が認められた[30例(7%)vs. 52例(11%)、相対リスク:0.59、95%信頼区間:0.38~0.91、p=0.015]。また、死亡・心筋梗塞合併症・処置失敗・大出血[46例(10%)vs. 69例(15%)、p=0.03]、死亡・心筋梗塞合併症[35例(8%)vs. 57例(12%)、p=0.02]、死亡・心筋梗塞再発・緊急血管再生術[23例(5%)vs. 39例(8%)、p=0.04]のエンドポイントもすべてエノキサパリン群で低減が認められた。Montalescot氏は、「エノキサパリンは未分画ヘパリンと比べて、虚血性アウトカムを有意に減らした。大出血、処置的成功に違いはなかった。したがって、エノキサパリンは、プライマリPCIを受ける患者にネット臨床ベネフィットという点で改善をもたらした」と結論している。

548.

心房細動を有する75歳以上高齢者の脳卒中リスクは“高リスク”とするのが妥当

心房細動を有する高齢患者の脳卒中リスクの予測能について、近年開発提唱された7つのリスク層別化シェーマを比較検討した結果、いずれも限界があることが報告された。英国・オックスフォード大学プライマリ・ケア健康科学部門のF D R Hobbs氏らによる。脳卒中のリスクに対しては、ワルファリンなど抗凝固療法が有効であるとの多くのエビデンスがあるにもかかわらず、高齢者への投与率は低く、投与にあたっては特に70歳以上ではアスピリンと安全面について検討される。一方ガイドラインでは、リスクスコアを使いリスク階層化をした上でのワルファリン投与が推奨されていることから、その予測能について検討した。試験の結果を受けHobbs氏は、「より優れたツールが利用可能となるまでは、75歳以上高齢者はすべて“高リスク”とするのが妥当だろう」と結論している。BMJ誌2011年7月16日号(オンライン版2011年6月23日号)掲載報告より。プライマリ・ケアベースの被験者を対象に、既存リスクスコアの予測能を検証既存リスク層別化シェーマの成績の比較は、BAFTA(Birmingham Atrial Fibrillation in the Aged)試験の被験者サブグループを対象に行われた。BAFTA試験は、2001~2004年にイギリスとウェールズ260の診療所から集められた心房細動を有する75歳以上の973例を対象に、脳卒中予防としてのワルファリンとアスピリンを比較検討したプライマリ・ケアベースの無作為化対照試験。Hobbs氏らは、BAFTA被験者でワルファリンを投与されていなかった、または一部期間投与されていなかった665例を対象とし、CHADS2、Framingham、NICE guidelines、ACC/AHA/ESC guidelines、ACCP guidelines、Rietbrock modified、CHA2DS2-VAScの各シェーマの脳卒中リスク予測能を調べた。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓の発生。解析対象のうち虚血性脳卒中の発生は54例(8%)、全身塞栓症は4例(0.6%)、一過性脳虚血発作は13例(2%)だった。最も分類できたのは高リスク、予測精度は全体的に同等低・中間・高リスクへの患者の分類は、3つのリスク層別化スコア(改訂CHADS2、NICE、ACC/AHA/ESC)ではほぼ同等であった。分類された割合が最も高かったのは高リスク患者で(65~69%、n=460~457)、一方、中間リスクへの分類が最も残存した。オリジナルCHADS2スコア(うっ血性心不全、高血圧、75歳以上、糖尿病、脳卒中既往)は、高リスク患者の分類が最も低かった(27%、n=180)。CHADS2、Rietbrock modified CHADS2、CHA2DS2-VASc(CHA2DS2-VASc血管疾患、65~74歳、性別)は、スコア上限値でリスク増大を示すことに失敗した。C統計量は0.55(オリジナルCHADS2)~0.62(Rietbrock modified CHADS2)で、予測精度は全体的に同等であった。なお、ブートストラップ法により各シェーマの能力に有意差はないことが確認されている。

549.

QFractureScoresの高い骨折リスク予測能を確認

イギリスで開発された骨折リスクの予測スコア法であるQFractureScores(http://www.qfracture.org/)は、骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10年リスクを予測するツールとして有用なことが、イギリス・オックスフォード大学のGary S Collins氏らが行った外的妥当性の検証試験で確認された。国際的ガイドラインは、骨折リスクが高く、介入によってベネフィットがもたらされる可能性がある患者を同定するために、10年絶対リスクに基づいて高リスク例を絞り込むアプローチを提唱している。QFractureScoresは、イギリスの大規模な患者コホートの解析に基づいて開発された骨折リスクの予測モデルであり、内的妥当性の検証結果は2009年に報告されている。BMJ誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月22日号)掲載の報告。外的妥当性を検証する前向きコホート試験研究グループは、QFractureScoresの骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の予測能を評価するために、その外的妥当性を検証するプロスペクティブなコホート試験を行った。1994年6月27日~2008年6月30日までに、イギリスの364のプライマリ・ケア施設からThe Health Improvement Network(THIN)のデータベースに登録された224万4,636人(30~85歳、1,278万4,326人年)のうち、2万5,208人が骨粗鬆症性骨折(大腿骨近位部、橈骨遠位部、椎骨)を、1万2,188人が大腿骨近位部骨折を発症した。良好な予測能を示すデータが得られたQFractureScoresの独立した外的妥当性の検証結果は、この予測モデルの骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折に関する良好な予測能を示した。すなわち、大腿骨近位部骨折のリスクスコアの受信者動作特性(ROC)曲線下面積は女性が0.89、男性は0.86であった。また、骨粗鬆症性骨折のリスクスコアのROC曲線下面積は女性0.82、男性0.74であった。QFractureScoresのモデル・キャリブレーションも良好で、男女とも、骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10段階のリスクのすべてで予測リスクと実際のリスクがほぼ一致しており、判別可能な過大予測や過小予測は認めなかった。同様に、年齢層別の骨折リスクも全年齢層で予測リスクと実際のリスクがほぼ一致した。著者は、「QFractureScoresはイギリス人の骨粗鬆症性骨折および大腿骨近位部骨折の10年リスクを予測するツールとして有用である」と結論している。(菅野守:医学ライター)

550.

プライマリ・ケア患者におけるハイリスク薬処方の割合およびパターン

イギリス・ダンディー大学のBruce Guthrie氏らは、スコットランドの一般診療所(GP)を対象に、ハイリスク薬処方の処方割合とそのパターンを調べること、また、プライマリ・ケア患者が特に薬物有害事象の影響を受けやすい不適切処方を受ける可能性について明らかにするため、横断的集団データベース分析を行った。BMJ誌2011年6月25日号(オンライン版2011年6月21日号)掲載より。ハイリスク薬処方を15指標で検証対象となったのは、176万人の登録患者を受け持つ315のスコットランドの一般診療所のうち、年齢、共存症、同時処方(co-prescription)を理由として、特に薬物有害事象の影響を受けやすいと定義された13万9,404人(7.9%)の患者であった。主要評価項目は、15の処方指標(NSAID薬に関する4つの指標、ワルファリンとの同時処方についての4つの指標、心不全での4つの指標、メトトレキサートの服用量指示に関する2つの指標、認知症への抗精神病薬処方に関する1つの指標)がどれだけ信頼できるかであった。また15指標の組み合わせは、ハイリスク薬処方の割合という点で診療所を識別することができた。また、マルチレベル・モデルでの、患者および診療所のハイリスク薬処方との関連を特徴付けることができた。診療所間の大きな差は改善の余地あり結果、過去1年の間に、13万9,404人の患者のうちの1万9,308人(13.9%、95%信頼区間:13.7%~14.0%)が、1つ以上のハイリスク薬処方を受けていた。各指標は、ハイリスク薬処方率の尺度として合理的かつ信頼度が高いものであった(診療に対する信頼度>0.7が95.6%、>0.8が88.2%)。ハイリスク薬処方と最も関連が強い患者特性は、処方薬の数であった(長期処方薬>11対 0のオッズ比:7.90、95%信頼区間7.19~8.68)。患者特性による補正後、ハイリスク薬処方の割合は診療所間で4倍も変化したが、それについて診療所の特性からは説明できなかった。Guthrie氏らは、「特に薬物有害事象の影響を受けやすいと定義された患者の約14%が、1つ以上のハイリスク薬が処方されていた。ハイリスク薬処方に使われた複合指標は、診療所でのハイリスク薬処方割合が平均以上か以下かを合理的な信頼度で識別することが可能であった」と結論。「補正後、ハイリスク薬処方と強く関連していたのは、長期処方薬の剤数が増えることのみであったが、無視できない未解明なバリエーションが診療所間で存在した。ハイリスク薬処方は概ね妥当だが、診療所間の大きなバリエーションは改善の余地があることを示唆している」と述べている。

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変形性関節症患者、高い死亡リスクが明らかに

イギリスの膝および股関節の変形性関節症患者は、一般人口に比べて死亡リスクが有意に高いことが、スイス・ベルン大学のEveline Nuesch氏らの調査で示された。変形性関節症の罹患率については広範に調査されているが、死亡との関連の研究はさほど進んでいない。変形性関節症患者では死亡リスクが増大しているとする調査もあるが、これらの試験の多くは調査方法に問題が残るという。BMJ誌2011年3月19日号(オンライン版2011年3月8日号)掲載の報告。全死亡率、疾患特異的死亡率を評価する地域住民ベースのコホート試験研究グループは、膝および股関節の変形性関節症患者における全死亡率および疾患特異的死亡率を評価する地域住民ベースのコホート試験を実施した。イングランド南西部地域に居住する35歳以上で症状がみられ、画像検査で確定診断がなされた変形性膝関節症および変形性股関節症患者1,163人(女性660人、男性503人)が登録された。中央値14年間の追跡調査を行い、年齢と性別で標準化された死亡比(予測死亡数に対する実際の死亡数の比)を算出し、Cox比例ハザードモデルを用いてベースラインの背景因子と全死亡、疾患特異的死亡の関連について多変量解析を行った。糖尿病・がん・心血管疾患の既往歴、歩行障害が主なリスク因子変形性関節症患者は、全死亡率が一般人口に比べて有意に高かった(標準化死亡比:1.55、95%信頼区間:1.41~1.70)。疾患特異的死亡率も変形性関節症患者で高く、特に心血管疾患(同:1.71、1.49~1.98)や認知症(同:1.99、1.22~3.25)に関連した死亡率が高値を示した。多変量解析によるリスク因子の分析では、全原因死亡率は加齢とともに上昇し(傾向検定:p<0.001)、男性(調整ハザード比:1.59、95%信頼区間:1.30~1.96、p<0.001)、自己申告による糖尿病の既往歴(同:1.95、1.31~2.90、p=0.001)、がん(同:2.28、1.50~3.47、p<0.001)、心血管疾患(同:1.38、1.12~1.71、p=0.003)、歩行障害(同:1.48、1.17~1.86、p=0.001)で有意に高かった。一方、人工関節置換術の既往歴、肥満、うつ、慢性炎症性疾患、眼疾患、膝あるいは股関節の疼痛との関連は認めなかった。著者は、「変形性膝関節症および変形性股関節症の患者は、一般人口に比べ死亡リスクが高く、主なリスク因子は糖尿病・がん・心血管疾患の既往歴および歩行障害であった」とまとめ、「歩行障害を伴う変形性関節症患者は、心血管疾患による死亡率が高いため、その管理においては心血管リスク因子や併存疾患に有効な治療とともに、身体活動性の増強に有効な治療に重点を置くべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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心房細動患者のリスク層別化にはCHA2DS2-VAScスコアの方が優れる

心房細動患者のリスク層別化に、CHA2DS2-VAScスコアがCHADS2スコアよりも優れることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院循環器部門のJonas Bjerring Olesen氏らが、デンマーク国内登録心房細動患者データをベースにコホート研究を行った結果による。CHADS2スコアは脳卒中リスクの層別化に最もよく用いられてきたが、その限界も指摘され、2006年以降のACC・AHA・ESC各ガイドラインでは、その他リスク因子を加味することが示され、その後エビデンスが蓄積しCHA2DS2-VAScスコアとして示されるようになっていたという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月31日号)掲載の報告より。7万3,538例を対象に、CHADS2とCHA2DS2-VAScの血栓塞栓症の予測能を評価研究グループは、CHADS2スコアのリスク因子(うっ血性心不全、高血圧、≧75歳、糖尿病、脳卒中既往)と、CHA2DS2-VAScスコアのリスク因子(CHADS2因子に加えて、血管系疾患、65~74歳、性別、また75歳以上で脳卒中既往の場合はリスクの重みづけを倍加する)を評価し、いずれが血栓塞栓症の予測能に優れるシェーマかを検証することを目的とした。対象とした被験者は、1997~2006年にデンマーク国内データベースに登録された、ビタミンK拮抗薬を服用していなかった心房細動患者で、非弁膜症性心房細動患者12万1,280例のうち、適格であった7万3,538例(60.6%)を対象に検証を行った。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓症であった。10年追跡時点のC統計量、CHADS2スコア0.812、CHA2DS2-VAScスコア0.888低リスク群(スコア0)における1年追跡時点での血栓塞栓症発生率は100人・年当たり、CHADS2では1.67(95%信頼区間:1.47~1.89)であったのに対し、CHA2DS2-VAScでは0.78(同:0.58~1.04)であった。中等度リスク群(スコア1)においては、同CHADS2スコアでは4.75(95%信頼区間:4.45~5.07)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアでは2.01(同:1.70~2.36)だった。これら発生率について示されたパターンは5年、10年追跡時点でも同様の結果が示された。また高リスク群はいずれのスコアも同じように、低・中等度リスク群よりも著しく高率な血栓塞栓症の発生を示した。血栓塞栓症の発生率は、スコアを構成しているリスク因子に依り、また両スコアとも血栓塞栓症イベントの既往に関連するリスクは過小に評価することが認められたという。低・中・高の各リスク群に層別化された患者の10年追跡時点でのC統計量は、CHADS2スコアが0.812(95%信頼区間:0.796~0.827)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアは0.888(同:0.875~0.900)であった。

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SSRIのescitalopram、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のescitalopramは、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減することが示された。服用後8週間で、ほてりの頻度が半分以下に減少したと報告した人は、escitalopram群の50%に上った。米国ペンシルベニア大学産科婦人科のEllen W. Freeman氏らが、200人超の女性を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与に関して、効用よりもリスクが上回るとする試験結果が発表されて以来、閉経期のほてりに対する効果的治療薬は他にないのが現状という。escitalopramとプラセボを投与し8週間追跡研究グループは、2009年7月~2010年6月にかけて、40~62歳の閉経期の女性、205人(アフリカ系アメリカ人95人、白人102人、その他8人)について調査を行った。被験者の平均年齢は53歳だった。同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはescitalopram 10~20mg/日を、もう一方にはプラセボを8週間投与し追跡した。主要評価項目は、服用後4週と8週時点の、ほてりの頻度と程度で、被験者の日記に基づき評価を行った。副次評価項目は、ほてりの程度、臨床改善指数(基線から50%以上ほてりの頻度が減少と定義)とした。ほてりの頻度減少幅、escitalopram群4.6回に対しプラセボ群が3.2回試験開始時点での、被験者のほてりの回数は、1日平均9.78回(標準偏差5.60)だった。8週後、1日のほてりの頻度の減少幅は、プラセボ群が平均3.20回(95%信頼区間:2.24~4.15)だったのに対し、escitalopram群では平均4.60回(同:3.74~5.47)で、両群の平均差は1.41回(同:0.13~2.69)だった(p<0.001)。8週時点で、ほてりの頻度が半分以下に減ったと答えた人の割合は、プラセボ群が36%に対し、escitalopram群では50%だった(p=0.009)。ほてりの程度の軽減幅に関する平均スコアも、プラセボ群が-0.30(95%信頼区間:-0.42~-0.17)に対し、escitalopram群では-0.52(同:-0.64~-0.40)だった(p

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今後の心房細動治療はシンプルになる

 2010年12月7日、「変わる!!心房細動治療」をタイトルとしたプレスセミナーが開催された。演者は、財団法人心臓血管研究所常務理事(研究本部長)の山下武志氏。 このプレスセミナーにおいて、山下氏は、心房細動治療における「CHANGE」と「SIMPLE」を強調した。その内容をレポートする。患者と治療ツールの変化 今後の心房細動治療を考える中で、まず、患者側の変化を考えなければならない。ここ30年の間に患者数は増加し、背景因子も多様化した。その結果、心房細動を原因とする心原性脳塞栓症の発症が増加した。久山町研究では、第一集団(1961-1973年)に比べ、第三集団(1988-2000年)では、ラクナ梗塞は約0.8倍、アテローム血栓性脳梗塞では約1.3倍、心原性脳塞栓症では約2.3倍と報告されており、いかに心原性脳塞栓症が増加してしまったかがわかる。 次に、治療ツールにも変化が起こった。新しい抗不整脈薬が次々に開発されたのである。それは、新たな分類としてSicilian Gambit分類が生まれるほどであった。また、これまでの単純な電気生理学から、より広範な理論構築が行われるようになった。 その結果、21世紀の心房細動治療では、患者ごとに最適の治療を行う「個別化診療」という複雑な診療が模索され始めた。しかし、その裏で、誰がその複雑な診療を担うのか、それほど複雑化する必要があるのか、どういう形で患者の役に立ちたいのか、といった疑問も生じてきた。エビデンスが変えた治療戦略 「疾患を病態生理から理解する」ことと、「疾患を病態整理から治療する」ことは違う。現在の知識レベルは、疾患の病態整理をすべて網羅しているわけではないため、妥当だと思われる治療を行っても、それが必ずしも臨床的メリットにつながるとは限らない。臨床的メリットにつながっているかを検証するのが臨床試験である。 例えば、有名なCAST試験では、心筋梗塞後の心室性不整脈を有する患者に心室性不整脈薬を投与すると、死亡率が増加することが示された。 AFFIRM試験では、心房細動症例に対してリズムコントールを行った群とレートコントロールを行った群での死亡率に変化はなかった。これは日本人のみを対象としたJ-RHYTHM試験でも同様の結果が示されている。 ACTIVE-W試験では、脳卒中の危険因子を有する心房細動患者にクロピドグレル+アスピリンを投与した群は、ワルファリン投与群に比べ、脳心血管疾患の発症抑制という点で劣ることが示された。日本人を対象としたJAST試験でも、抗血小板薬による治療が無投薬群と有意な差がないことが示された。 さらに、心房細動の再発抑制を一次エンドポイントとしたGISSI-AF試験では、心房細動既往例において通常治療にARBを追加投与しても、心房細動の再発を抑制できなかったと報告された。同様に、CCB群とARB群で心房細動の発症抑制を比較検討したJ-RHYTHM IIでも、ARBがCCBに比べて心房細動の発症を抑制することは認められなかった。 これらの心房細動に関連したエビデンスを受け、ある二つの概念が重要視されてきた。それは、「“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ」「“複雑”から“シンプル”へ」という二つの概念である。今後の心房細動治療は3ステップで考える 今後の心房細動は、3つのステップで考えるべきである。その3つとは「命を護る」「脳を護る」「生活を護る」の3つで、むしろ、他のステップや考えは必要ない。実際、2010年のESCから発表された心房細動ガイドラインは、従来に比べ、驚くほどシンプルな内容になっている。(1)命を護る 心房細動患者の生命予後は、心房細動の背景因子により規定されており、これはすべての試験で共通した結果である。つまり、患者の生命予後を是正するには、一度心房細動の存在を頭から解き放ち、患者の背景因子を再確認して、それを改善すれば良い。(2)脳を護る 心房細動患者において、脳を守るツールは現在のところワルファリンのみである。ワルファリンの投与対象患者は、CHADS2スコアを用いればすぐに割り出すことができる。(3)生活を護る 患者のQOLを向上させる必要があれば、洞調率維持を目指す。唯一残された「複雑」も「シンプル」に 唯一残された「複雑」はワルファリンである。ワルファリンは説明事項、注意事項といった制約が多く、医師からみても、患者から見ても複雑である。しかし、新しい抗凝固薬の登場により大きく緩和されると予想されている。 新しい抗凝固薬は、ワルファリンと異なり、薬物相互作用、食事制限の必要性、血中濃度の測定の必要がなく、誰もがわかりやすい薬剤である。また、脳卒中の発症予防効果は、ワルファリンに対する非劣性を示した。 最後に山下氏は、「心房細動の治療は、今後、“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ、さらに、“複雑”から“シンプル”へと変化し、誰でも同じ治療が行えるようになる。心房細動治療が激変する時は、もうすぐそこまで来ている」と結んだ。

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10代でBMIが30以上の肥満者、30代早期までに重度肥満になるリスクは16倍

青年期に肥満の人は、そうでなかった人に比べ、成人期早期に重度肥満になるリスクが16倍に増大するという。米国ノースカロライナ大学のNatalie S. The氏らが、9,000人弱について約13年間追跡したコホート試験の結果明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表した。米国で肥満の罹患率は増加傾向にあるが、青年期の肥満と成人期の重度肥満の関連について、経年調査はほとんど行われておらず、重度肥満への回避やリスクを減らすための効果的な介入が限られているという。青年期の肥満はBMIが30以上、成人期の重度肥満は同40以上として追跡研究グループは、「US National Longitudinal Study of Adolescent Health」のデータから、1996年に12~21歳だった8,834人について、2007~2009年まで追跡した。青年期肥満の定義は、年齢が20歳未満、BMIが30以上もしくは性別のBMI年齢成長曲線で95パーセンタイル以上とした。成人期重度肥満の定義は、年齢が20歳以上、BMIが40以上とした。両定義はさらに、人種や年齢などによって補正が行われた。青年期に肥満だった女性は半数以上が、男性は3分の1以上が、成人期で重度肥満に1996年に、青年期で重度肥満だった人は79例(1.0%:95%信頼区間:0.7~1.4)で、そのうち60例(70.5%:同:57.2~83.9)は成人期になっても重度肥満だった。一方、2009年までに成人期重度肥満になっていたのは、703人(7.9%、95%信頼区間:7.4~8.5)だった。青年期に肥満だった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、男性が37.1%(同:30.6~43.6)、女性が51.3%(同:44.8~57.8)で、最も高率だったのは黒人女性の52.4%だった。多変量離散ハザードモデル分析の結果、青年期に肥満だった人は、そうでない人に比べ、成人期に重度肥満になるリスクは、16.0倍(同:12.4~20.5)に増大した。一方で、青年期に肥満ではなかった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、性別や人種にかかわらず5%未満だった。研究グループは、「本集団において、青年期の肥満は、成人期の重度肥満のリスク増大と有意に関連していた。またリスク増大は、性、人種による関連も認められた」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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トラスツズマブ+化学療法が、新たな進行胃がんの標準治療に:ToGA試験

ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2、あるいはERBB2とも呼ばれる)陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療として、分子標的治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をフッ化ピリミジン系薬剤+シスプラチン(同:ブリプラチン、ランダなど)による化学療法と併用する治療法が有用なことが、国立ソウル大学医学部のYung-Jue Bang氏らが行った無作為化第III相試験で示された。トラスツズマブはHER2を標的とするモノクローナル抗体で、すでに早期および転移性乳がんの有効な治療薬として確立されており、胃がんの前臨床試験ではカペシタビン(商品名:ゼローダ)やシスプラチンとの併用により少なくとも相加的な抗腫瘍効果が確認されている。乳がんでは良好な耐用性が示され、また胃がん患者のHER2陽性率は乳がん患者とほぼ同等だという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載の報告。トラスツズマブの化学療法への上乗せ効果を評価ToGA試験の研究グループは、HER2陽性進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療としてのトラスツズマブ+化学療法併用の有用性を評価する国際的なオープンラベル無作為化第III相試験を実施した。24ヵ国122施設から、免疫組織化学検査でHER2蛋白の過剰発現、あるいはFISH(fluorescence in-situ hybridisation)法でHER2遺伝子の増幅が確認された胃および胃・食道接合部がん患者が登録された。これらの患者が、化学療法[カペシタビン+シスプラチンあるいはフルオロウラシル(商品名:5-FU)+シスプラチン]を3週ごとに6サイクル施行する群あるいは同様の化学療法にトラスツズマブ静脈内投与を併用する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、無作為割り付けの対象となり一回以上の治療を受けた全患者の全生存期間(OS)とした。OS中央値が有意に26%延長594例(トラスツズマブ+化学療法群:298例、化学療法単独群:296例)が登録され、主要評価項目の解析の対象となったのは584例(それぞれ294例、290例)であった。フォローアップ期間中央値は、それぞれ18.6ヵ月(四分位範囲:11~25ヵ月)、17.1ヵ月(同:9~25ヵ月)であった。OS中央値は、トラスツズマブ+化学療法群が13.8ヵ月(95%信頼区間:12~16ヵ月)と、化学療法群単独群の11.1ヵ月(同:10~13ヵ月)に比べ有意に延長した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0046)。最も頻度の高い有害事象は、両群ともに悪心[トラスツズマブ+化学療法群:67%(197/294例)、化学療法単独群:63%(184/290例)]、嘔吐[それぞれ50%(147/294例)、46%(134/290例)]、好中球減少[53%(157/294例)、57%(165/290例)]であった。グレード3または4の有害事象の頻度[それぞれ68%(201/294例)、68%(198/290例)]および心毒性の頻度[6%(17/294例)、6%(18/290例)]は両群間に差を認めなかった。著者は、「トラスツズマブと化学療法の併用療法は、HER2陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの新たな標準治療となる可能性がある」と結論している。なお、本試験の参加者の53%が日本人を含むアジア人である。(菅野守:医学ライター)

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開発中止となった抗肥満薬rimonabantの市販後臨床試験の結果報告

重篤な精神神経系の副作用により早期中止となった抗肥満薬rimonabantの心血管アウトカムの改善効果を検討した市販後臨床試験(CRESCENDO試験)の結果が、アメリカScripps Translational Science Institute(ラ・ホーヤ)のEric J Topol氏らによりLancet誌2010年8月14日号で報告された。この結果を受けて、2008年11月、rimonabantは開発自体が中止されている。rimonabantは内在性カンナビノイド受容体を遮断することで減量効果を発揮し、トリグリセリド、HDLコレステロール、空腹時血糖などの代謝異常を改善することが示され、ヨーロッパでは抗肥満薬として市販されていた。悪心やうつ病などの副作用が懸念されていたが、長期投与による心血管リスクの改善効果に期待が集まっていた。重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討CRESCENDO試験の研究グループは、rimonabantによる重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年12月~2008年7月までに、42ヵ国974施設から血管疾患の既往歴やリスクの増大がみられる患者1万8,695例が登録され、rimonabant 20mgを投与する群(9,381例)あるいはプラセボ群(9,314例)に無作為に割り付けられた。試験の関係者や患者には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、中央判定委員会の評価による心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を行った。いくつかの国の規制当局が重篤な精神的副作用を許容できないと判断平均フォローアップ期間13.8ヵ月の時点で、3ヵ国の医療関連規制当局がrimonabant群における自殺への懸念を表明したため、これらの国では試験が早期に中止された。解析は、無作為割り付けの対象となった全例について実施された。試験終了時(2008年11月6日)における心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントの発現率は、rimonabant群が3.9%(364/9,381例)、プラセボ群は4.0%(375/9,314例)であり、両群間に有意な差はみられなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.84~1.12、p=0.68)。rimonabant群はプラセボ群に比べ、消化管副作用[33%(3,038/9,381例) vs. 22%(2,084/9,314例)]、精神神経系副作用[32%(3,028/9,381例) vs. 21%(1,989/9,314例)]、重篤な精神的副作用[2.5%(232/9,381例) vs. 1.3%(120/9,314例)]が有意に高頻度であった。rimonabant群の4例、プラセボ群の1例が自殺した。著者は、「抗肥満薬として上市された薬剤の心血管アウトカムの改善効果を検討したところ、重篤な精神神経系の副作用がみられ、規制当局が許容できないと判断したため、試験も薬剤の開発も早急に中止された」とまとめ、「本試験が早期終了となったことは今後の薬剤開発計画に重要な教訓をもたらすだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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自閉症児に対する親によるコミュニケーション介入は症状を改善するか?

コアな自閉症の患児に対して、通常の治療に加え親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入を行っても、症状の改善はわずかしか得られないことが、イギリス・マンチェスター大学精神科のJonathan Green氏らが行った無作為化試験で示された。自閉症は、その中核をなす患者のおよそ0.4%、広範な自閉症スペクトラムに属する患者の約1%が重篤で高度に遺伝性の神経発達障害をきたすと推察され、社会的な相互関係や意思疎通、行動の障害が、小児から成人への発達に多大な影響を及ぼすため、家族や社会に大きな経済的な負担が生じることになる。小規模な試験では、社会的コミュニケーションへの早期介入が自閉症児の治療に有効なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載の報告。PACTによる介入群と非介入群を比較する無作為化試験研究グループは、中核的な自閉症の患児を対象に社会的コミュニケーションへの早期介入の有効性について検討する大規模な無作為化試験を実施した。イギリスの三つの専門施設(ロンドン、マンチェスター、ニューカッスル)に2歳~4歳11ヵ月の自閉症児が登録され、親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入(Preschool Autism Communication Trial;PACT)を行う群あるいは通常の治療を行う群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。PACT群の患児には通常の治療も施行された。主要評価項目は、治療13ヵ月後の自閉症症状の重症度[Autism Diagnostic Observation Schedule-Generic(ADOS-G)の社会的コミュニケーションに関するアルゴリズム項目の総スコア(スコアが高いほど重症度が高度)]とし、補足的な副次評価項目として親子間の相互応答、患児の言語能、学校での適応能を測定した。親子間のコミュニケーションには明確なベネフィットが152例が登録され、PACT群に77例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:25例)、通常治療群には75例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:23例)が割り付けられた。13ヵ月の時点における症状の重症度の改善効果は、施設、性別、社会経済的状況、年齢、言語能、非言語能で補正後のADOS-Gスコアが、PACT群で3.9点低下し、通常治療群では2.9点低下しており、両群とも症状の改善効果が認められた。各群間の効果量(effect size)は-0.24(95%信頼区間:-0.59~0.11)であり、PACTによる介入の症状改善効果は小さいと推察された。親の子どもへの同期的応答(効果量:1.22、95%信頼区間:0.85~1.59)、子どもからの親への応答(同:0.41、同:0.08~0.74)、親子の配慮の共有(同:0.33、同:-0.02~0.68)にはPACTによる改善効果が認められた。言語能や学校での適応能に対するPACTによる改善効果は小さかった。これらの知見に基づき、著者は「自閉症児の症状の低減を目的に、通常治療にPACTを併用するアプローチは推奨されない。その一方で、親子間の社会的コミュニケーションには明確なベネフィットが認められた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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CKD患児、ramipril高用量服用の血圧コントロール強化群に大きなベネフィットが

慢性腎疾患(CKD)は成人でも小児でも、末期腎不全へと進行する傾向があり、臨床的に重大な問題である。腎不全は高血圧と糸球体の過剰ろ過によって進行するが、成人患者において、レニン・アンジオテンシン(RA)系を阻害する降圧薬服用が、腎機能を保護し腎不全の進行を遅らせることが明らかとなった。しかし、目標とすべき血圧値についてはなお議論の的となっている。欧州の33の小児腎臓病学部門が共同参画するESCAPE Trial Groupは、ACE阻害薬ramiprilを高用量服用する小児CKD患者(約50%が高血圧症を有するといわれる)を無作為に2群に分け、一方の血圧コントロール目標値を厳しく設定し、その長期的な腎保護作用の評価を行った。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。24時間動脈圧目標値通常群と強化群に無作為化し、5年間追跡試験は、1998年4月~2001年12月の間に、3~18歳のCKD患者(糸球体濾過量15~80mL/分/1.73m2体表面積)385例が参加し行われた。被験者はramiprilを、試験導入(6ヵ月間)後に1日6mg/m2体表面積で投与され、通常の血圧コントロール群(目標値:24時間平均動脈圧50~95パーセンタイル)と、目標値を厳しく設定した血圧コントロール群(目標値:同50パーセンタイル未満)の2群に無作為に割り付けられ、5年間追跡された。ramiprilだけで目標値が達成できない場合は、RA系をターゲットとしない降圧薬を併用した。1次エンドポイントは、糸球体濾過量50%低下に要した時間または末期腎不全への進行までの期間とした。副次エンドポイントには、血圧、糸球体濾過量、蛋白尿の変化を含んだ。腎不全への進行等、通常群41.7%に対し強化群29.9%にとどまる5年間での1次エンドポイント達成は、通常群は41.7%だったが、強化群は29.9%にとどまった(ハザード比:0.65、95%信頼区間:0.44~0.94、P = 0.02)。有害事象の種類や発生率に両群に有意差はなく、試験からの累積脱落率(通常群26.5%対厳格群28.0%)も有意差はなかった。また、血圧コントロールが良好に維持されている一方で、蛋白尿は当初50%以下になった後、ACE阻害薬継続服用中に徐々にリバウンドし、目標血圧値達成と蛋白尿減少はそれぞれ、腎疾患進行を遅らせる独立した有意の予測因子であることが認められた。なお、この蛋白尿の再出現は、長期にわたるACE阻害薬服用患児に共通して見られ、研究グループは、「血圧コントロールの目標値を通常より厳しくすることは、小児CKD患者の腎機能に多大なベネフィットを与える」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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HCV抗体検出試薬「エクルーシス試薬 Anti-HCV」発売

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社は、C型肝炎ウイルス(以下、HCVと略す)抗体検出試薬「エクルーシス試薬Anti-HCV」が、2009年1月14日付で医薬品の製造販売承認を取得したことを受け、10月1日に発売する。 エクルーシス試薬Anti-HCVは、ECLIA法(Electro ChemiLuminescence Immuno Assay:電気化学発光免疫測定法)により、血清・血漿中のHCV抗体を、18分という短時間で全自動測定が可能。また、40μLの微量検体で測定が可能だという。今回の製品の発売により詳細はプレスリリースへhttp://www.roche-diagnostics.jp/news/09/09/29.html

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