サイト内検索|page:24

検索結果 合計:483件 表示位置:461 - 480

461.

変形性関節症患者、高い死亡リスクが明らかに

イギリスの膝および股関節の変形性関節症患者は、一般人口に比べて死亡リスクが有意に高いことが、スイス・ベルン大学のEveline Nuesch氏らの調査で示された。変形性関節症の罹患率については広範に調査されているが、死亡との関連の研究はさほど進んでいない。変形性関節症患者では死亡リスクが増大しているとする調査もあるが、これらの試験の多くは調査方法に問題が残るという。BMJ誌2011年3月19日号(オンライン版2011年3月8日号)掲載の報告。全死亡率、疾患特異的死亡率を評価する地域住民ベースのコホート試験研究グループは、膝および股関節の変形性関節症患者における全死亡率および疾患特異的死亡率を評価する地域住民ベースのコホート試験を実施した。イングランド南西部地域に居住する35歳以上で症状がみられ、画像検査で確定診断がなされた変形性膝関節症および変形性股関節症患者1,163人(女性660人、男性503人)が登録された。中央値14年間の追跡調査を行い、年齢と性別で標準化された死亡比(予測死亡数に対する実際の死亡数の比)を算出し、Cox比例ハザードモデルを用いてベースラインの背景因子と全死亡、疾患特異的死亡の関連について多変量解析を行った。糖尿病・がん・心血管疾患の既往歴、歩行障害が主なリスク因子変形性関節症患者は、全死亡率が一般人口に比べて有意に高かった(標準化死亡比:1.55、95%信頼区間:1.41~1.70)。疾患特異的死亡率も変形性関節症患者で高く、特に心血管疾患(同:1.71、1.49~1.98)や認知症(同:1.99、1.22~3.25)に関連した死亡率が高値を示した。多変量解析によるリスク因子の分析では、全原因死亡率は加齢とともに上昇し(傾向検定:p<0.001)、男性(調整ハザード比:1.59、95%信頼区間:1.30~1.96、p<0.001)、自己申告による糖尿病の既往歴(同:1.95、1.31~2.90、p=0.001)、がん(同:2.28、1.50~3.47、p<0.001)、心血管疾患(同:1.38、1.12~1.71、p=0.003)、歩行障害(同:1.48、1.17~1.86、p=0.001)で有意に高かった。一方、人工関節置換術の既往歴、肥満、うつ、慢性炎症性疾患、眼疾患、膝あるいは股関節の疼痛との関連は認めなかった。著者は、「変形性膝関節症および変形性股関節症の患者は、一般人口に比べ死亡リスクが高く、主なリスク因子は糖尿病・がん・心血管疾患の既往歴および歩行障害であった」とまとめ、「歩行障害を伴う変形性関節症患者は、心血管疾患による死亡率が高いため、その管理においては心血管リスク因子や併存疾患に有効な治療とともに、身体活動性の増強に有効な治療に重点を置くべきと考えられる」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

462.

心房細動患者のリスク層別化にはCHA2DS2-VAScスコアの方が優れる

心房細動患者のリスク層別化に、CHA2DS2-VAScスコアがCHADS2スコアよりも優れることが報告された。デンマーク・コペンハーゲン大学Gentofte病院循環器部門のJonas Bjerring Olesen氏らが、デンマーク国内登録心房細動患者データをベースにコホート研究を行った結果による。CHADS2スコアは脳卒中リスクの層別化に最もよく用いられてきたが、その限界も指摘され、2006年以降のACC・AHA・ESC各ガイドラインでは、その他リスク因子を加味することが示され、その後エビデンスが蓄積しCHA2DS2-VAScスコアとして示されるようになっていたという。BMJ誌2011年2月5日号(オンライン版2011年1月31日号)掲載の報告より。7万3,538例を対象に、CHADS2とCHA2DS2-VAScの血栓塞栓症の予測能を評価研究グループは、CHADS2スコアのリスク因子(うっ血性心不全、高血圧、≧75歳、糖尿病、脳卒中既往)と、CHA2DS2-VAScスコアのリスク因子(CHADS2因子に加えて、血管系疾患、65~74歳、性別、また75歳以上で脳卒中既往の場合はリスクの重みづけを倍加する)を評価し、いずれが血栓塞栓症の予測能に優れるシェーマかを検証することを目的とした。対象とした被験者は、1997~2006年にデンマーク国内データベースに登録された、ビタミンK拮抗薬を服用していなかった心房細動患者で、非弁膜症性心房細動患者12万1,280例のうち、適格であった7万3,538例(60.6%)を対象に検証を行った。主要評価項目は、脳卒中と血栓塞栓症であった。10年追跡時点のC統計量、CHADS2スコア0.812、CHA2DS2-VAScスコア0.888低リスク群(スコア0)における1年追跡時点での血栓塞栓症発生率は100人・年当たり、CHADS2では1.67(95%信頼区間:1.47~1.89)であったのに対し、CHA2DS2-VAScでは0.78(同:0.58~1.04)であった。中等度リスク群(スコア1)においては、同CHADS2スコアでは4.75(95%信頼区間:4.45~5.07)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアでは2.01(同:1.70~2.36)だった。これら発生率について示されたパターンは5年、10年追跡時点でも同様の結果が示された。また高リスク群はいずれのスコアも同じように、低・中等度リスク群よりも著しく高率な血栓塞栓症の発生を示した。血栓塞栓症の発生率は、スコアを構成しているリスク因子に依り、また両スコアとも血栓塞栓症イベントの既往に関連するリスクは過小に評価することが認められたという。低・中・高の各リスク群に層別化された患者の10年追跡時点でのC統計量は、CHADS2スコアが0.812(95%信頼区間:0.796~0.827)であったのに対し、CHA2DS2-VAScスコアは0.888(同:0.875~0.900)であった。

463.

SSRIのescitalopram、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)のescitalopramは、閉経期のほてりの頻度や程度を軽減することが示された。服用後8週間で、ほてりの頻度が半分以下に減少したと報告した人は、escitalopram群の50%に上った。米国ペンシルベニア大学産科婦人科のEllen W. Freeman氏らが、200人超の女性を対象に行った無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年1月19日号で発表した。閉経後のエストロゲンとプロゲスチン投与に関して、効用よりもリスクが上回るとする試験結果が発表されて以来、閉経期のほてりに対する効果的治療薬は他にないのが現状という。escitalopramとプラセボを投与し8週間追跡研究グループは、2009年7月~2010年6月にかけて、40~62歳の閉経期の女性、205人(アフリカ系アメリカ人95人、白人102人、その他8人)について調査を行った。被験者の平均年齢は53歳だった。同グループは被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはescitalopram 10~20mg/日を、もう一方にはプラセボを8週間投与し追跡した。主要評価項目は、服用後4週と8週時点の、ほてりの頻度と程度で、被験者の日記に基づき評価を行った。副次評価項目は、ほてりの程度、臨床改善指数(基線から50%以上ほてりの頻度が減少と定義)とした。ほてりの頻度減少幅、escitalopram群4.6回に対しプラセボ群が3.2回試験開始時点での、被験者のほてりの回数は、1日平均9.78回(標準偏差5.60)だった。8週後、1日のほてりの頻度の減少幅は、プラセボ群が平均3.20回(95%信頼区間:2.24~4.15)だったのに対し、escitalopram群では平均4.60回(同:3.74~5.47)で、両群の平均差は1.41回(同:0.13~2.69)だった(p<0.001)。8週時点で、ほてりの頻度が半分以下に減ったと答えた人の割合は、プラセボ群が36%に対し、escitalopram群では50%だった(p=0.009)。ほてりの程度の軽減幅に関する平均スコアも、プラセボ群が-0.30(95%信頼区間:-0.42~-0.17)に対し、escitalopram群では-0.52(同:-0.64~-0.40)だった(p

464.

今後の心房細動治療はシンプルになる

 2010年12月7日、「変わる!!心房細動治療」をタイトルとしたプレスセミナーが開催された。演者は、財団法人心臓血管研究所常務理事(研究本部長)の山下武志氏。 このプレスセミナーにおいて、山下氏は、心房細動治療における「CHANGE」と「SIMPLE」を強調した。その内容をレポートする。患者と治療ツールの変化 今後の心房細動治療を考える中で、まず、患者側の変化を考えなければならない。ここ30年の間に患者数は増加し、背景因子も多様化した。その結果、心房細動を原因とする心原性脳塞栓症の発症が増加した。久山町研究では、第一集団(1961-1973年)に比べ、第三集団(1988-2000年)では、ラクナ梗塞は約0.8倍、アテローム血栓性脳梗塞では約1.3倍、心原性脳塞栓症では約2.3倍と報告されており、いかに心原性脳塞栓症が増加してしまったかがわかる。 次に、治療ツールにも変化が起こった。新しい抗不整脈薬が次々に開発されたのである。それは、新たな分類としてSicilian Gambit分類が生まれるほどであった。また、これまでの単純な電気生理学から、より広範な理論構築が行われるようになった。 その結果、21世紀の心房細動治療では、患者ごとに最適の治療を行う「個別化診療」という複雑な診療が模索され始めた。しかし、その裏で、誰がその複雑な診療を担うのか、それほど複雑化する必要があるのか、どういう形で患者の役に立ちたいのか、といった疑問も生じてきた。エビデンスが変えた治療戦略 「疾患を病態生理から理解する」ことと、「疾患を病態整理から治療する」ことは違う。現在の知識レベルは、疾患の病態整理をすべて網羅しているわけではないため、妥当だと思われる治療を行っても、それが必ずしも臨床的メリットにつながるとは限らない。臨床的メリットにつながっているかを検証するのが臨床試験である。 例えば、有名なCAST試験では、心筋梗塞後の心室性不整脈を有する患者に心室性不整脈薬を投与すると、死亡率が増加することが示された。 AFFIRM試験では、心房細動症例に対してリズムコントールを行った群とレートコントロールを行った群での死亡率に変化はなかった。これは日本人のみを対象としたJ-RHYTHM試験でも同様の結果が示されている。 ACTIVE-W試験では、脳卒中の危険因子を有する心房細動患者にクロピドグレル+アスピリンを投与した群は、ワルファリン投与群に比べ、脳心血管疾患の発症抑制という点で劣ることが示された。日本人を対象としたJAST試験でも、抗血小板薬による治療が無投薬群と有意な差がないことが示された。 さらに、心房細動の再発抑制を一次エンドポイントとしたGISSI-AF試験では、心房細動既往例において通常治療にARBを追加投与しても、心房細動の再発を抑制できなかったと報告された。同様に、CCB群とARB群で心房細動の発症抑制を比較検討したJ-RHYTHM IIでも、ARBがCCBに比べて心房細動の発症を抑制することは認められなかった。 これらの心房細動に関連したエビデンスを受け、ある二つの概念が重要視されてきた。それは、「“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ」「“複雑”から“シンプル”へ」という二つの概念である。今後の心房細動治療は3ステップで考える 今後の心房細動は、3つのステップで考えるべきである。その3つとは「命を護る」「脳を護る」「生活を護る」の3つで、むしろ、他のステップや考えは必要ない。実際、2010年のESCから発表された心房細動ガイドラインは、従来に比べ、驚くほどシンプルな内容になっている。(1)命を護る 心房細動患者の生命予後は、心房細動の背景因子により規定されており、これはすべての試験で共通した結果である。つまり、患者の生命予後を是正するには、一度心房細動の存在を頭から解き放ち、患者の背景因子を再確認して、それを改善すれば良い。(2)脳を護る 心房細動患者において、脳を守るツールは現在のところワルファリンのみである。ワルファリンの投与対象患者は、CHADS2スコアを用いればすぐに割り出すことができる。(3)生活を護る 患者のQOLを向上させる必要があれば、洞調率維持を目指す。唯一残された「複雑」も「シンプル」に 唯一残された「複雑」はワルファリンである。ワルファリンは説明事項、注意事項といった制約が多く、医師からみても、患者から見ても複雑である。しかし、新しい抗凝固薬の登場により大きく緩和されると予想されている。 新しい抗凝固薬は、ワルファリンと異なり、薬物相互作用、食事制限の必要性、血中濃度の測定の必要がなく、誰もがわかりやすい薬剤である。また、脳卒中の発症予防効果は、ワルファリンに対する非劣性を示した。 最後に山下氏は、「心房細動の治療は、今後、“心房細動”から、心房細動を有する“患者さん”へ、さらに、“複雑”から“シンプル”へと変化し、誰でも同じ治療が行えるようになる。心房細動治療が激変する時は、もうすぐそこまで来ている」と結んだ。

465.

10代でBMIが30以上の肥満者、30代早期までに重度肥満になるリスクは16倍

青年期に肥満の人は、そうでなかった人に比べ、成人期早期に重度肥満になるリスクが16倍に増大するという。米国ノースカロライナ大学のNatalie S. The氏らが、9,000人弱について約13年間追跡したコホート試験の結果明らかになったもので、JAMA誌2010年11月10日号で発表した。米国で肥満の罹患率は増加傾向にあるが、青年期の肥満と成人期の重度肥満の関連について、経年調査はほとんど行われておらず、重度肥満への回避やリスクを減らすための効果的な介入が限られているという。青年期の肥満はBMIが30以上、成人期の重度肥満は同40以上として追跡研究グループは、「US National Longitudinal Study of Adolescent Health」のデータから、1996年に12~21歳だった8,834人について、2007~2009年まで追跡した。青年期肥満の定義は、年齢が20歳未満、BMIが30以上もしくは性別のBMI年齢成長曲線で95パーセンタイル以上とした。成人期重度肥満の定義は、年齢が20歳以上、BMIが40以上とした。両定義はさらに、人種や年齢などによって補正が行われた。青年期に肥満だった女性は半数以上が、男性は3分の1以上が、成人期で重度肥満に1996年に、青年期で重度肥満だった人は79例(1.0%:95%信頼区間:0.7~1.4)で、そのうち60例(70.5%:同:57.2~83.9)は成人期になっても重度肥満だった。一方、2009年までに成人期重度肥満になっていたのは、703人(7.9%、95%信頼区間:7.4~8.5)だった。青年期に肥満だった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、男性が37.1%(同:30.6~43.6)、女性が51.3%(同:44.8~57.8)で、最も高率だったのは黒人女性の52.4%だった。多変量離散ハザードモデル分析の結果、青年期に肥満だった人は、そうでない人に比べ、成人期に重度肥満になるリスクは、16.0倍(同:12.4~20.5)に増大した。一方で、青年期に肥満ではなかった人で、成人期に重度肥満になった人の割合は、性別や人種にかかわらず5%未満だった。研究グループは、「本集団において、青年期の肥満は、成人期の重度肥満のリスク増大と有意に関連していた。またリスク増大は、性、人種による関連も認められた」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

466.

トラスツズマブ+化学療法が、新たな進行胃がんの標準治療に:ToGA試験

ヒト上皮増殖因子受容体2型(HER2、あるいはERBB2とも呼ばれる)陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療として、分子標的治療薬トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)をフッ化ピリミジン系薬剤+シスプラチン(同:ブリプラチン、ランダなど)による化学療法と併用する治療法が有用なことが、国立ソウル大学医学部のYung-Jue Bang氏らが行った無作為化第III相試験で示された。トラスツズマブはHER2を標的とするモノクローナル抗体で、すでに早期および転移性乳がんの有効な治療薬として確立されており、胃がんの前臨床試験ではカペシタビン(商品名:ゼローダ)やシスプラチンとの併用により少なくとも相加的な抗腫瘍効果が確認されている。乳がんでは良好な耐用性が示され、また胃がん患者のHER2陽性率は乳がん患者とほぼ同等だという。Lancet誌2010年8月28日号(オンライン版2010年8月20日号)掲載の報告。トラスツズマブの化学療法への上乗せ効果を評価ToGA試験の研究グループは、HER2陽性進行胃および胃・食道接合部がんの一次治療としてのトラスツズマブ+化学療法併用の有用性を評価する国際的なオープンラベル無作為化第III相試験を実施した。24ヵ国122施設から、免疫組織化学検査でHER2蛋白の過剰発現、あるいはFISH(fluorescence in-situ hybridisation)法でHER2遺伝子の増幅が確認された胃および胃・食道接合部がん患者が登録された。これらの患者が、化学療法[カペシタビン+シスプラチンあるいはフルオロウラシル(商品名:5-FU)+シスプラチン]を3週ごとに6サイクル施行する群あるいは同様の化学療法にトラスツズマブ静脈内投与を併用する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、無作為割り付けの対象となり一回以上の治療を受けた全患者の全生存期間(OS)とした。OS中央値が有意に26%延長594例(トラスツズマブ+化学療法群:298例、化学療法単独群:296例)が登録され、主要評価項目の解析の対象となったのは584例(それぞれ294例、290例)であった。フォローアップ期間中央値は、それぞれ18.6ヵ月(四分位範囲:11~25ヵ月)、17.1ヵ月(同:9~25ヵ月)であった。OS中央値は、トラスツズマブ+化学療法群が13.8ヵ月(95%信頼区間:12~16ヵ月)と、化学療法群単独群の11.1ヵ月(同:10~13ヵ月)に比べ有意に延長した(ハザード比:0.74、95%信頼区間:0.60~0.91、p=0.0046)。最も頻度の高い有害事象は、両群ともに悪心[トラスツズマブ+化学療法群:67%(197/294例)、化学療法単独群:63%(184/290例)]、嘔吐[それぞれ50%(147/294例)、46%(134/290例)]、好中球減少[53%(157/294例)、57%(165/290例)]であった。グレード3または4の有害事象の頻度[それぞれ68%(201/294例)、68%(198/290例)]および心毒性の頻度[6%(17/294例)、6%(18/290例)]は両群間に差を認めなかった。著者は、「トラスツズマブと化学療法の併用療法は、HER2陽性の進行胃および胃・食道接合部がんの新たな標準治療となる可能性がある」と結論している。なお、本試験の参加者の53%が日本人を含むアジア人である。(菅野守:医学ライター)

467.

開発中止となった抗肥満薬rimonabantの市販後臨床試験の結果報告

重篤な精神神経系の副作用により早期中止となった抗肥満薬rimonabantの心血管アウトカムの改善効果を検討した市販後臨床試験(CRESCENDO試験)の結果が、アメリカScripps Translational Science Institute(ラ・ホーヤ)のEric J Topol氏らによりLancet誌2010年8月14日号で報告された。この結果を受けて、2008年11月、rimonabantは開発自体が中止されている。rimonabantは内在性カンナビノイド受容体を遮断することで減量効果を発揮し、トリグリセリド、HDLコレステロール、空腹時血糖などの代謝異常を改善することが示され、ヨーロッパでは抗肥満薬として市販されていた。悪心やうつ病などの副作用が懸念されていたが、長期投与による心血管リスクの改善効果に期待が集まっていた。重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討CRESCENDO試験の研究グループは、rimonabantによる重篤な血管イベントなしの生存率の改善効果を検討する二重盲検プラセボ対照無作為化試験を実施した。2005年12月~2008年7月までに、42ヵ国974施設から血管疾患の既往歴やリスクの増大がみられる患者1万8,695例が登録され、rimonabant 20mgを投与する群(9,381例)あるいはプラセボ群(9,314例)に無作為に割り付けられた。試験の関係者や患者には治療割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、中央判定委員会の評価による心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントとし、intention-to-treat解析を行った。いくつかの国の規制当局が重篤な精神的副作用を許容できないと判断平均フォローアップ期間13.8ヵ月の時点で、3ヵ国の医療関連規制当局がrimonabant群における自殺への懸念を表明したため、これらの国では試験が早期に中止された。解析は、無作為割り付けの対象となった全例について実施された。試験終了時(2008年11月6日)における心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントの発現率は、rimonabant群が3.9%(364/9,381例)、プラセボ群は4.0%(375/9,314例)であり、両群間に有意な差はみられなかった(ハザード比:0.97、95%信頼区間:0.84~1.12、p=0.68)。rimonabant群はプラセボ群に比べ、消化管副作用[33%(3,038/9,381例) vs. 22%(2,084/9,314例)]、精神神経系副作用[32%(3,028/9,381例) vs. 21%(1,989/9,314例)]、重篤な精神的副作用[2.5%(232/9,381例) vs. 1.3%(120/9,314例)]が有意に高頻度であった。rimonabant群の4例、プラセボ群の1例が自殺した。著者は、「抗肥満薬として上市された薬剤の心血管アウトカムの改善効果を検討したところ、重篤な精神神経系の副作用がみられ、規制当局が許容できないと判断したため、試験も薬剤の開発も早急に中止された」とまとめ、「本試験が早期終了となったことは今後の薬剤開発計画に重要な教訓をもたらすだろう」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

468.

自閉症児に対する親によるコミュニケーション介入は症状を改善するか?

コアな自閉症の患児に対して、通常の治療に加え親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入を行っても、症状の改善はわずかしか得られないことが、イギリス・マンチェスター大学精神科のJonathan Green氏らが行った無作為化試験で示された。自閉症は、その中核をなす患者のおよそ0.4%、広範な自閉症スペクトラムに属する患者の約1%が重篤で高度に遺伝性の神経発達障害をきたすと推察され、社会的な相互関係や意思疎通、行動の障害が、小児から成人への発達に多大な影響を及ぼすため、家族や社会に大きな経済的な負担が生じることになる。小規模な試験では、社会的コミュニケーションへの早期介入が自閉症児の治療に有効なことが示唆されているという。Lancet誌2010年6月19日号(オンライン版2010年5月21日号)掲載の報告。PACTによる介入群と非介入群を比較する無作為化試験研究グループは、中核的な自閉症の患児を対象に社会的コミュニケーションへの早期介入の有効性について検討する大規模な無作為化試験を実施した。イギリスの三つの専門施設(ロンドン、マンチェスター、ニューカッスル)に2歳~4歳11ヵ月の自閉症児が登録され、親によるコミュニケーションに焦点を当てた介入(Preschool Autism Communication Trial;PACT)を行う群あるいは通常の治療を行う群に1:1の割合で無作為に割り付けられた。PACT群の患児には通常の治療も施行された。主要評価項目は、治療13ヵ月後の自閉症症状の重症度[Autism Diagnostic Observation Schedule-Generic(ADOS-G)の社会的コミュニケーションに関するアルゴリズム項目の総スコア(スコアが高いほど重症度が高度)]とし、補足的な副次評価項目として親子間の相互応答、患児の言語能、学校での適応能を測定した。親子間のコミュニケーションには明確なベネフィットが152例が登録され、PACT群に77例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:25例)、通常治療群には75例(ロンドン:26例、マンチェスター:26例、ニューカッスル:23例)が割り付けられた。13ヵ月の時点における症状の重症度の改善効果は、施設、性別、社会経済的状況、年齢、言語能、非言語能で補正後のADOS-Gスコアが、PACT群で3.9点低下し、通常治療群では2.9点低下しており、両群とも症状の改善効果が認められた。各群間の効果量(effect size)は-0.24(95%信頼区間:-0.59~0.11)であり、PACTによる介入の症状改善効果は小さいと推察された。親の子どもへの同期的応答(効果量:1.22、95%信頼区間:0.85~1.59)、子どもからの親への応答(同:0.41、同:0.08~0.74)、親子の配慮の共有(同:0.33、同:-0.02~0.68)にはPACTによる改善効果が認められた。言語能や学校での適応能に対するPACTによる改善効果は小さかった。これらの知見に基づき、著者は「自閉症児の症状の低減を目的に、通常治療にPACTを併用するアプローチは推奨されない。その一方で、親子間の社会的コミュニケーションには明確なベネフィットが認められた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

469.

CKD患児、ramipril高用量服用の血圧コントロール強化群に大きなベネフィットが

慢性腎疾患(CKD)は成人でも小児でも、末期腎不全へと進行する傾向があり、臨床的に重大な問題である。腎不全は高血圧と糸球体の過剰ろ過によって進行するが、成人患者において、レニン・アンジオテンシン(RA)系を阻害する降圧薬服用が、腎機能を保護し腎不全の進行を遅らせることが明らかとなった。しかし、目標とすべき血圧値についてはなお議論の的となっている。欧州の33の小児腎臓病学部門が共同参画するESCAPE Trial Groupは、ACE阻害薬ramiprilを高用量服用する小児CKD患者(約50%が高血圧症を有するといわれる)を無作為に2群に分け、一方の血圧コントロール目標値を厳しく設定し、その長期的な腎保護作用の評価を行った。NEJM誌2009年10月22日号掲載より。24時間動脈圧目標値通常群と強化群に無作為化し、5年間追跡試験は、1998年4月~2001年12月の間に、3~18歳のCKD患者(糸球体濾過量15~80mL/分/1.73m2体表面積)385例が参加し行われた。被験者はramiprilを、試験導入(6ヵ月間)後に1日6mg/m2体表面積で投与され、通常の血圧コントロール群(目標値:24時間平均動脈圧50~95パーセンタイル)と、目標値を厳しく設定した血圧コントロール群(目標値:同50パーセンタイル未満)の2群に無作為に割り付けられ、5年間追跡された。ramiprilだけで目標値が達成できない場合は、RA系をターゲットとしない降圧薬を併用した。1次エンドポイントは、糸球体濾過量50%低下に要した時間または末期腎不全への進行までの期間とした。副次エンドポイントには、血圧、糸球体濾過量、蛋白尿の変化を含んだ。腎不全への進行等、通常群41.7%に対し強化群29.9%にとどまる5年間での1次エンドポイント達成は、通常群は41.7%だったが、強化群は29.9%にとどまった(ハザード比:0.65、95%信頼区間:0.44~0.94、P = 0.02)。有害事象の種類や発生率に両群に有意差はなく、試験からの累積脱落率(通常群26.5%対厳格群28.0%)も有意差はなかった。また、血圧コントロールが良好に維持されている一方で、蛋白尿は当初50%以下になった後、ACE阻害薬継続服用中に徐々にリバウンドし、目標血圧値達成と蛋白尿減少はそれぞれ、腎疾患進行を遅らせる独立した有意の予測因子であることが認められた。なお、この蛋白尿の再出現は、長期にわたるACE阻害薬服用患児に共通して見られ、研究グループは、「血圧コントロールの目標値を通常より厳しくすることは、小児CKD患者の腎機能に多大なベネフィットを与える」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

470.

HCV抗体検出試薬「エクルーシス試薬 Anti-HCV」発売

ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社は、C型肝炎ウイルス(以下、HCVと略す)抗体検出試薬「エクルーシス試薬Anti-HCV」が、2009年1月14日付で医薬品の製造販売承認を取得したことを受け、10月1日に発売する。 エクルーシス試薬Anti-HCVは、ECLIA法(Electro ChemiLuminescence Immuno Assay:電気化学発光免疫測定法)により、血清・血漿中のHCV抗体を、18分という短時間で全自動測定が可能。また、40μLの微量検体で測定が可能だという。今回の製品の発売により詳細はプレスリリースへhttp://www.roche-diagnostics.jp/news/09/09/29.html

471.

「フルバスタチン徐放製剤」血管手術後の心疾患転帰を改善

スイス・ノバルティス社は3日、「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(New England Journal of Medicine)」に掲載されたDECREASE (Dutch Echocardiographic Cardiac Risk Evaluation Applying Stress Echocardiography)III試験の結果によると、周術期にフルバスタチン徐放製剤(海外での製品名:Lescol XL)を投与し血管手術を行った患者において、術後30日以内の術後心疾患の転帰がプラセボ群に比べ有意に改善したことが示されたと発表した。エラスムスメディカルセンター(オランダ・ロッテルダム)で実施されたこの試験では、フルバスタチンを投与すると、総コレステロール値、LDLコレステロール(LDL-C)値が有意に低下し、高感度CRP値とインターロイキン-6濃度の低下によって反映される炎症の低下も有意に認められたとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.novartis.co.jp/news/2009/pr20090911.html#fn1

472.

ハイリスク非ST上昇型急性冠症候群への血管形成術実施のタイミング

ハイリスク非ST上昇型の急性冠症候群に対し、血管形成術を行う際、患者が来院してからできるだけ早く実施する場合と、翌日まで待って行う場合とを比較した結果、入院中のトロポニン最大値などのアウトカムに差はないことが明らかにされた。リスクの高い非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対しては、早期の侵襲的インターベンションの実施が国際的ガイドラインで勧告されているものの、その適切なタイミングについては明確ではないという。フランスPitie-Salpetriere大学のGilles Montalescot氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年9月2日号で発表されている。NSTE-ACSでTIMIスコア3以上の352人を対象に試験研究グループは2006~2008年にかけて、フランス13ヵ所の医療機関で、NSTE-ACSで、心筋虚血における血栓溶解リスクを示すTIMI(Thrombolysis in Myocardial Infarction)スコアが3以上の患者352人を対象に、試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方にはできるだけ早く血管形成術を行い、もう一方の群には試験開始後8~60時間後の翌(営業)日まで待って、血管形成術を行った。1次エンドポイントは、入院中の血中トロポニン最大値。また主な2次エンドポイントは、1ヵ月以内の死亡、心筋梗塞、緊急再血管再生術のいずれかの発生だった。来院直後実施も翌日実施も、アウトカムに有意差なし試験開始直後に血管形成術を行った群は、割り付けから手術開始までの経過時間中央値は70分、もう一方の翌日群は同21時間だった。入院中の血中トロポニン最大値の中央値は、直後群が2.1(四分位範囲:0.3~7.1)ng/mLで、翌営業日群は1.7(同:0.3~7.2)ng/mLであり、両群で有意差は認められなかった(p=0.70)。主な2次エンドポイントについても、その発生率は直後群で13.7%(95%信頼区間:8.6~18.8)、翌日群が10.2%(同:5.7~14.6)と、両群で有意差はなかった(p=0.31)。また主な出血や、その他のエンドポイントについても、両群で有意差は見られなかった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

473.

蘇生処置を受けた新生児はIQ低下のリスクが増大

蘇生処置を受けた新生児は、その後の小児期を健康に過ごした場合でも、知能指数(IQ)低下のリスクが増大していることが、イギリスBristol大学のDavid E Odd氏らが実施したコホート研究で明らかとなった。低酸素状態など出生時の軽度の脳損傷によって、小児が成長してからようやく検出し得るような、わずかな認知機能障害の可能性が高まるという。Lancet誌2009年5月9日号(オンライン版2009年4月21日号)掲載の報告。ALSPACコホートの3つの群を比較研究グループは、出生時に蘇生処置を受けたが脳症の症状は見られなかった新生児において、小児期のIQスコアの低下ついて評価した。1991年4月1日~1992年12月31日の間にBristol市で生まれた小児が80%以上を占めるAvon Longitudinal Study of Parents and Children(ALSPAC)のコホートから、以下の3つの群に属する小児を選択した。出生時に蘇生処置を受けたが脳症の症状はなく、それ以上の治療は受けなかった群(815例)、蘇生処置を受け脳症の症状が見られたため新生児治療を受けた群(58例)、蘇生治療を受けず脳症の症状もないため新生児治療は受けなかったレファランス群(1万609例)。認知機能の評価は平均年齢8.6(SD 0.33)歳時に行い、IQのスコアが80未満の場合を「低IQ」と定義した。5,953人の小児で、WISC-III(Weschler intelligence scale for children)によるIQスコアが得られた。IQの全検定を完遂できたのは5,887人であった。蘇生処置を受けた新生児は、無症状、有症状とも8歳時の低IQリスクが増大8歳時の解析(5,887例)では、蘇生処置を受け脳症の症状のない小児(オッズ比:1.65、95%信頼区間:1.13~2.43)および症状が見られたため新生児治療を受けた小児(同6.22、同1.57~24.65)の双方において、低IQのリスクが増大していた。一方、無症状小児は有症状小児よりも人数が多かったことから、低IQのリスク増大が、出生時に蘇生処置を要する原因となった病態に起因すると考えられる小児は、無症状群が3.4%(96%信頼区間:0.5~6.3)、有症状群は1.2%(同0.2~2.2)であった。著者は、「蘇生処置を受けた新生児は、その後の小児期を健康に過ごした場合でも、IQ低下のリスクが増大していた」と結論し、「蘇生処置時に無症状の新生児は、脳症の神経症状を呈した新生児に比べ、成人期に低IQをきたす確率が高い可能性がある」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

474.

新世代抗うつ薬を比較

 新世代抗うつ薬12種類の有効性と受容性について、ベローナ大学(イタリア)Andrea Cipriani氏らが、複数の無作為化試験結果のメタ解析を行った(別名:混合治療比較メタ解析、ネットワークメタ解析)。ここ20年で登場したうつ病の新薬は構造やメカニズムが似通っており、またいわゆるジェネリック薬も多く、どれほど違いがあるのかが不明とされていた。解析結果は、Lancet誌2009年2月28日号(オンライン版2009年1月29日号)に掲載された。参加者総数25,928人の117の無作為化試験を系統的にチェック 対象となった抗うつ薬は、bupropion、citalopram、duloxetine、escitalopram、フルオキセチン(商品名:プロザック)、フルボキサミン(同:デプロメール、ルボックス)、ミルナシプラン(同:トレドミン)、mirtazapine、パロキセチン(同:パキシル)、reboxetine、セルトラリン(同:ジェイゾロフト)、venlafaxine。 1991年から2007年11月30日の間の、117の無作為化試験(参加者総数25,928人)を系統的にチェックし、急性の単極性成人うつ病に対する有効性を比較した。主要評価項目は、割り当てられた治療への反応率および脱落率とし、全例解析が行われた。有効性と受容性はセルトラリンとescitalopramが高い、一方最も低いのはreboxetine duloxetineとの比較で、mirtazapine(オッズ比:1.39)、escitalopram(1.33)、venlafaxine(1.30)、sertraline(1.27)は、有効性が有意に上回っていた。 フルオキセチンとの比較ではそれぞれ、mirtazapine(オッズ比:1.37)、escitalopram(1.32)、venlafaxine(1.28)、sertraline(1.25)。 フルボキサミンとの比較では、mirtazapine(オッズ比:1.41)、escitalopram(1.35)、venlafaxine(1.30)、sertraline(1.27)。パロキセチンとの比較では、mirtazapine(オッズ比:1.35)、escitalopram(1.30)、venlafaxine(1.27)、sertraline(1.22)。 reboxetineとの比較では、mirtazapine(オッズ比:2.03)、escitalopram(1.95)、venlafaxine(1.89)、sertraline(1.85)だった。 reboxetineは、他のどの抗うつ薬よりも有意に有効性が劣っていた。またescitalopramとセルトラリンは受容性の面で最も高く、duloxetine、フルボキサミン、パロキセチン、reboxetineとvenlafaxineは、脱落率が有意に少なかった。 これらからCipriani氏は「有効性と受容性に関してescitalopramとセルトラリンを支持する。臨床的に重要な違いが抗うつ薬の間に存在している。成人で中等度から重度の主要なうつ病治療を開始する際は、セルトラリンが最高の選択薬のようだ。有効性、受容性および価格の面で、とてもよくバランスがとれているからである」と結論している。

475.

抗血小板剤プラスグレルの新薬承認申請審査を米国食品医薬品庁(FDA)が継続

第一三共株式会社(以下、第一三共)とイーライリリー・アンド・カンパニー(以下、イーライリリー、本社:米国、インディアナ州 NYSE:LLY)は、米国食品医薬品庁(FDA)が処方薬ユーザーフィー法(PDUFA:Prescription Drug User Fee Act)に基づく審査終了日である9月26日(米国東部時間)までにプラスグレルの新薬承認申請審査を完了せず、継続することになったと発表した。プラスグレルは、冠動脈ステント術を含む経皮的冠動脈形成術(PCI:percutaneous coronary intervention)を受けている急性冠症候群(ACS:acute coronary syndrome)患者の治療を適応症として申請された。プラスグレルは、第一三共と宇部興産株式会社が発見し、第一三共とイーライリリーが共同開発している経口抗血小板剤。まずはPCIを受けている急性冠症候群(ACS)患者への治療法として開発されている。プラスグレルは、血小板表面でP2Y12 アデノシン二リン酸(ADP:adenosine diphosphate)受容体を遮断し、血小板の活性化および凝集を抑制する。抗血小板剤は、動脈硬化および心臓発作、脳卒中を引き起こす可能性のある血小板の凝集を防ぐ。詳細はプレスリリースへhttp://www.daiichisankyo.co.jp/4less/cgi-bin/cs4view_obj.php/b_newsrelease_n1/700/080927v1-j.pdf

476.

アリスキレン、肥満の高血圧患者において利尿剤よりも有意な降圧効果を示す

ノバルティス ファーマ株式会社は、新しいクラスの直接的レニン阻害剤(Direct Renin Inhibitor:DRI)アリスキレン(製品名:米国ではTekturna、それ以外ではRasilez)が、肥満の高血圧患者において、利尿剤ヒドロクロロチアジド(HCT)単独よりも有意に血圧を低下させることが確認されたと発表した。2008年度欧州心臓病学会(ESC: European Society of Cardiology)で発表された事後解析では、アリスキレン300mgを単独で使用した場合、座位収縮期血圧が平均で16.7mmHg低下したということが示された。これに対し、HCTによる座位収縮期血圧の低下は平均で12.2mmHgだった。また、拡張期血圧の低下については、HCTの9.1mmHgに対してアリスキレンは12.3mmHgだった(p

477.

欧州心臓病学会にて大規模臨床試験「TRANSCEND」発表される

日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: ESC)において高血圧治療薬ミカルディス(テルミサルタン)のアウトカム試験TRANSCENDの結果が報告され、ミカルディス群はプラセボ群と比較して、心血管イベント高リスク患者での心血管死、心筋梗塞、脳卒中発症リスクの抑制効果が13%高いことが証明されたと発表した。TRANSCEND(Telmisartan Randomised AssessmeNt Study in ACE-iNtolerant subjects with cardiovascular Disease)は、ONTARGET試験に並行して実施された試験で、ACE阻害薬に忍容性の認められない心血管イベント高リスク患者5,926人(40ヵ国)を対象に、ミカルディス群のプラセボ群に対する心血管イベント抑制効果および忍容性を検討したもの。抗血小板薬、スタチンなどの標準的治療が施された上に、ミカルディスまたはプラセボ群ともにRAS抑制薬以外の降圧薬の併用が認められていたことも、試験の特徴として挙げられる。詳細はプレスリリースへhttp://www.boehringer-ingelheim.co.jp/news/p-release/08_0902.html

478.

オリンピックレベルの選手の突然死を防ぐために

心血管異常を見つけ突然死や症状悪化を防ぐために、スポーツ選手への事前スクリーニングは有効だとされる一方、ここ数十年にわたり臨床有用性が議論されてもいる。米国心臓協会は不支持の態度を示しているが、ヨーロッパ心臓病学会と国際オリンピック委員会は、イタリアで25年以上前から行われていることに注目し、若いアスリートへの事前スクリーニングは必要であるとの態度を表明した。本論は、イタリア・フィレンツェにあるスポーツ医学研究所のデータをフローレンス大学血栓治療センターFrancesco Sofiらが分析・検討した結果で、臨床有用性はあると報告された。BMJ誌2008年7月3日号より。アスリート30,065例(男性23,570例)の5年間のデータを横断的研究本研究は、スポーツ参加者に対して事前に心血管スクリーニングを実施することの臨床有用性を、大規模コホートで検討することを目的とした30,065例(男性23,570例)のアスリートを対象とする、5年間のデータの横断的研究。主要評価項目は、12心電図の安静時と運動負荷時の結果とした。30歳以上のアスリートで運動負荷試時の異常発見とリスク増加とに有意な関連12心電図結果が異常だったアスリートは、安静時は1,812例(6%)、運動負荷時は1,459例(4.9%)。1,227例に、安静時は正常だったものの運動負荷時に異常が示された。スクリーニング結果から、競技スポーツには不適格だとみなされるアスリートは196例(0.6%)だった。心臓を理由に競技スポーツが不適格とされた159例の対象者のうち一定の割合の者について(n=126、79.2%)、安静時の12心電図では良性あるいはネガティブな所見だったが、運動負荷によって明らかな病理学的変化が示された。影響を及ぼす可能性のある交絡因子を調整後にロジスティック回帰分析を行った結果、30歳以上の者について、運動負荷試験中に不適格な心臓所見が見出されたこととリスク増加とに有意な関連が認められた。Sofi氏は、「競技スポーツに参加しようとしている選手への運動負荷試験は、心血管異常者の同定を可能とする」と結論するとともに、「スポーツマンの心血管イベント発生率を低下させるかどうかは、検査によって資格を剥奪された人々を追跡調査することによって示されるだろう」とした。

479.

脳卒中後うつ病予防の効果はescitalopram投与>問題解決療法

脳卒中経験者の半数以上がうつ病となり、それが日常生活動作の回復を妨げ、死亡率増加にも関与していることは、これまで多くの研究で示されている。米国アイオワ大学医学部のRobert G. Robinson氏らは、そうしたうつ病予防に対するSSRIの抗うつ薬escitalopramの効果を、問題解決療法(PST:problem-solving therapy)との比較で無作為化試験。どちらも効果があるが、escitalopram投与のほうが優位と報告した。JAMA誌2008年5月28日号掲載より。脳卒中発症後3ヵ月以内の患者176例を1年間追跡2003年7月9日から2007年10月1日にかけて複数施設から登録された、急性脳卒中後3ヵ月以内のうつ病ではない患者176例を対象に行われた。対象者は、二重盲検によるescitalopram投与群(n=59)およびプラセボ投与群(n=58)、非盲検によるPST群(n=59)の3群に無作為に割り付けられ、12ヵ月間にわたり介入が行われた。主要評価項目は、脳卒中後の大うつ病もしくは小うつ病の発症を、精神疾患構造化面接(SCID-IV)、DSM-IVの診断基準に基づき判定した調査結果。うつ病発症率がescitalopram投与群で有意に低下うつ病発症率は、プラセボ投与群がescitalopram投与群、PST群いずれよりも有意にたかった。プラセボ投与群の発症率は22.4%(大うつ病11例、小うつ病2例)で、escitalopram投与群は8.5%(同3例、2例)、両群間の補正後ハザード比(HR)は4.5(95%信頼区間:2.4~8.2、P<0.001)。またPST群は11.9%(同5例、2例)で、HRは2.2(1.4~3.5、P<0.001)。気分障害の既往歴で調整し、年齢、性、治療施設、モデル欠陥などを考慮しても、なお有意差があった。無作為化をせずに患者27例全員がうつ病を呈したと仮定して、ITT解析(Intention-to-Treat)を用い気分障害の既往歴を加味しても、escitalopramの優位性(対プラセボ)は変わらない(発症率23.1%対34.5%、HR:2.2、95%信頼区間:1.2~3.9、P=0.007)。しかし対PSTでは対プラセボほど有意に良好であると言える結果ではなかった(同30.5%対34.5%、HR:1.1、95%信頼区間:0.8~1.5、P=0.51)。有害事象については、各群間に有意差はなかった。以上の結果Robinson氏は、「脳卒中患者へのescitalopram投与とPSTによる治療は、いずれもうつ病予防に有効だが、効果はPSTのほうがやや小さい」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

480.

抗肥満薬rimonabantによりうつ症状が増加の可能性

米国食品医薬品局(FDA)に対し、同局の諮問委員会委員13名の全員一致で「非承認」を採択・答申した食欲抑制剤rimonabantの安全性に関し、Lancet誌11月17日号にメタ解析が掲載された。rimonabant服用例では抑うつ・不安による服薬中止がプラセボ群よりも有意に多いため「慎重な観察が必要である」と著者であるFrederiksberg Hospital(デンマーク)のRobin Christensen氏らは結論している。約4,000例を対象にメタ解析今回のメタ解析の対象としたのは、肥満例を対象にrimonabantと他剤・プラセボの体重減少作用を比較した無作為化二重盲検試験。結果としてRIO-Europe、RIO-Lipids,RIO-North America、RIO-Diabetes,の4試験が対象になった。それらの試験から、プラセボ群とrimonabant 20mg/日群の試験開始1年後のデータを抽出し、メタ解析を行った。rimonabant群2,503例、プラセボ群1,602例での比較となった。体重は有意に減少したが……その結果rimonabant群では1年間で体重が5.1kg、プラセボ群に比べ有意に低下した(95%信頼区間:3.57~7.31kg)。その一方、rimonabant群では「重篤な抑うつ」の増加が見られた。「全ての抑うつ」で比較すると発現リスクはプラセボ群と同等だが、「服薬中止を必要とする抑うつ」の発現はrimonabant群で有意にリスクが高かった(26例/2,503例 vs 5例/1,602例、オッズ比:3.03、95%信頼区間:1.09~8.42)。 一方「不安」は、服薬中止必要性の有無を問わず、rimonabant群で有意にリスクが増加していた。なお「抑うつ」・「不安」の評価に用いられていたのは 病院不安・抑うつ尺度(HADS:Hospital anxiety and depression scales)である。また「抑うつ」発現リスクと背景因子を検討したところ、「血中トリグリセライド(TG)値」と「年齢」がrimonabantによる「抑うつ」発現リスクと相関しており、高TG血症と高齢者が高リスクと考えられた。大規模試験CRESCENDOの今後の結果次第では盛り返しも「考察」において著者らも触れているとおり、冒頭のFDAの諮問委員会では開発社から提供されたデータを用い、同様のメタ解析を行っている。それによると肥満例を対象とした試験に限ればrimonabant 20mg/日による自殺傾向惹起リスクはプラセボと有意差はなく(オッズ比:1.8,95%信頼区間:0.8~3.8)、rimonabant群6,802例例中、自殺者はなく、自殺未遂が4例だった。ただしrimonabantは禁煙補助剤でもあるため、禁煙試験を含めて解析すると、自殺傾向の惹起リスクは1.9と有意に高かった(95%信頼区間:1.1~3.1)。なお、冠動脈イベント高リスク患者に対するrimonabantの1次予防作用をプラセボと比較する大規模試験CRESCENDOが現在進行中であり、結果によっては再び、rimonabantの「リスク・ベネフィット」が話題になるだろう。(宇津貴史:医学レポーター)

検索結果 合計:483件 表示位置:461 - 480