サイト内検索|page:4

検索結果 合計:152件 表示位置:61 - 80

61.

1ヵ月のDAPTとその後のP2Y12阻害薬によるSAPTが標準治療となるか?(解説:上田恭敬氏)-1122

 合併症なく成功したPCI症例3,045症例を対象として、アスピリンとクロピドグレルによるDAPTを12ヵ月行う群(12ヵ月DAPT群:1,522症例)とDAPTを1ヵ月施行後にクロピドグレルによるSAPTに変更する群(1ヵ月DAPT群:1,523症例)に無作為に割り付けて、1年間の心臓死、心筋梗塞、脳卒中、ステント血栓症、出血イベントの複合エンドポイントを主要エンドポイントとする、多施設オープンラベル無作為化比較試験であるSTOPDAPT-2試験の結果が報告された。 P2Y12阻害薬はクロピドグレルに限定し、ステントはCoCr-EES(Xience Series、Abbott Vascular)に限定している。また、ほかの抗血栓薬を必要とする症例は除外している。症例の約38%はACS症例であった。 主要エンドポイントの発生頻度は、12ヵ月DAPT群の3.70%に対して1ヵ月DAPT群では2.36%と有意に低くなり、「1ヵ月DAPT」は「12ヵ月DAPT」に比して、非劣性(p<0.001)のみならず優位性(p=0.04)が示された。有意差ではないものの、血行再建術施行頻度が、12ヵ月DAPT群で5.26%に対して、1ヵ月DAPT群で6.77%(p=0.08)とやや増加が見られる点が気になるが、ほかには副次エンドポイントの中で、1ヵ月DAPT群に有意に頻度の増加が認められる項目はなかった。 過去に報告されているDAPT試験の結果を念頭に置いて、本試験の結果を解釈する必要がある。まず、PCIを施行した患者全体を、出血リスクを考慮せずに対象として1年以内のイベントを見ると、虚血性イベントの発生頻度はDAPTの期間によって変わらず、出血性イベントは12ヵ月群で有意に多いことが本試験で示されたため、PCI後1年間については、1ヵ月のDAPTで十分であると思われる。しかし、本試験の結果は、1年以後長期にわたって生じてくる虚血性イベントを抑制するために、DAPTのほうがSAPTより優れている可能性を否定するものではない。 とくに、1年間のDAPTで出血性イベントを起こさなかった患者を対象とした場合には、出血イベントの高リスク患者を除外できるため、その後DAPTを長期間継続することが有用な可能性はDAPT試験の結果から十分に想定される。そのようなDAPTの長期使用が本当に無用あるいは有害なのかどうかについては、早急に結論するのではなく、今後の検討を待つ必要がある。もちろん、P2Y12阻害薬によるSAPTであれば、DAPTと同程度に有効である可能性もあるだろうから、その検証は非常に重要である。 さらに、有効性に個人差が大きいクロピドグレルではなく、有効性に個人差が小さく出血リスクはクロピドグレルと同程度である日本人投与量でのプラスグレルを使った場合には、さらにSAPT群に有利な結果が得られる可能性が想定されるのではないだろうか。いずれにしても、アスピリンではなく、P2Y12阻害薬の単剤投与によるSAPTの効果に対する期待は非常に大きい。

62.

高リスクPCI施行患者の出血、チカグレロル単独vs.DAPT/NEJM

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた出血・虚血イベントリスクの高い患者において、術後3ヵ月間チカグレロル+アスピリンの併用投与後、チカグレロル単剤投与への変更は併用投与継続の場合と比べて、死亡・心筋梗塞・脳卒中のリスクを上昇することなく臨床的に重大な出血リスクを有意に低下することが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のRoxana Mehran氏らが行ったプラセボ対照二重盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年9月26日号で発表された。これまでP2Y12阻害薬を早期に中断して抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を最短とするアプローチについて、いくつかの試験が行われていたが、概して低リスクの患者が対象で虚血イベントに関する検出力が不足していた。研究グループは、アスピリン投与期間を短縮することで、とくに消化器毒性についてのアスピリンに関連した出血リスクを回避でき、P2Y12阻害薬の効力を長期に受けられる可能性があるとの仮説を立て検討を行った。BARC出血基準タイプ2、3、5の発生リスクを比較 研究グループは、11ヵ国187ヵ所の医療機関を通じ、PCIで薬剤溶出ステントを1ヵ所以上に埋設し、担当医がチカグレロル+アスピリン療法下で退院させることを予定していた、出血または虚血イベントリスクが高い患者を対象に試験を行った。 PCIを施行しチカグレロル+アスピリンを3ヵ月投与した後、大出血イベントまたは虚血イベントのなかった患者を無作為に2群に分け、両群にチカグレロルを継続したまま、一方にはアスピリンを、もう一方にはプラセボを、いずれも1年間併用投与した。 主要エンドポイントは、BARC出血基準タイプ2、3、5の出血とした。また、全死因死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントについても評価。非劣性マージンは絶対差1.6ポイントとした。チカグレロル単剤投与群でBARC出血基準2、3、5発症リスクは0.56倍に  2015年7月~2017年12月に9,006例が試験に登録され、そのうち3ヵ月後に無作為化を受けたのは7,119例(intention-to-treat集団)だった。平均年齢は65歳、女性が23.8%、糖尿病を有していたのは36.8%で、64.8%が急性冠症候群によるPCI施行であった(29.8%が非ST上昇型心筋梗塞)。無作為化後1年間の服薬アドヒアランスはチカグレロル+アスピリン(併用)群、チカグレロル+プラセボ(単剤)群で同等だった(85.9% vs.87.1%)。 無作為化から1年間の主要エンドポイントの発生率は、単剤群4.0%、併用群7.1%で(ハザード比[HR]:0.56、95%信頼区間[CI]:0.45~0.68、p<0.001)、群間差は-3.08ポイント(95%CI:-4.15~-2.01)だった。BARC出血基準タイプ3または5の発生リスクの群間差も同様だった(発生率は単剤群1.0%、併用群2.0%、HR:0.49[95%CI:0.33~0.74])。 全死因死亡・非致死的心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイント発生率は、両群ともに3.9%だった(群間差:-0.06ポイント[95%CI:-0.97~0.84]、HR:0.99[95%CI:0.78~1.25]、非劣性のp<0.001)。■「DAPT」関連記事ステント留置後のDAPT投与期間、1ヵ月は12ヵ月より有効?/JAMA

63.

猫は虎に劣っていない! 非劣性試験について考える【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】 第14回

第14回 猫は虎に劣っていない! 非劣性試験について考えるジャーン! 日本発の「STOPDAPT-2試験」(JAMA. 2019;321:2414-2427.)がJAMA誌に掲載され、「ジャーナル四天王」で解説されました。ジャーナル四天王は、NEJM、Lancet、JAMA、BMJという世界を代表する医学雑誌から臨床現場に影響が大きいものを紹介するCareNet.comの人気の連載企画です。そこで紹介される論文は欧米発のものがほとんどです。STOPDAPT-2試験は、PCI術後の2剤の抗血小板薬併用療法であるDAPT期間についての研究です。1ヵ月間のDAPT後にクロピドグレル単剤投与を行う介入治療群は、12ヵ月間のDAPTを継続する標準治療群に対して、“非劣性”でかつ“優越性”も有することを示したものです。ぜひとも一読をお薦めします。優越性試験では、P値が0.05より小さければ差がある、0.05以上なら差がないとします。差がないことと、非劣性であるということは決定的に異なります。P値は差があることは証明できても、非劣性の証明はできないのです。介入治療群と標準治療群を比較した差が、良くても悪くてもこのくらい範囲内であれば許容できるというマージンを研究開始前に定めておく必要があるのが非劣性試験です。これを非劣性マージンといいます。非劣性試験が必要となる理由の1つは優越性を求めることの非倫理性です。有意に優れる治療を証明するということは、劣っている治療効果を対照患者に期待することの裏返しともいえます。ここに倫理的な抵抗感があります。介入治療と標準治療との差が非常に小さく、優越性試験で差があることを示すには非現実的なほど多くの被験者数が必要になる場合なども、非劣性試験が必要となる理由です。少し話が難しくなってきました。論文片手にソファーでくつろいでいると、我が家の愛猫がやってきます。自分の膝の上に飛び乗って喉をゴロゴロと鳴らしながら「香箱座り」をします。これは、手首を内側に折り曲げ、その上に上半身を乗せるスタイルです。関節が柔軟な猫特有の座り方ですが、危険にさらされた時に即座に立ち上がって行動できないので、リラックスしている証拠です。自分は、本連載の自己紹介の中で「猫をこよなく愛する、いきおい余って虎にも挑戦中」と記しているように虎にも興味をもっています。写真で自分が頭を載せているのは「ぬいぐるみ」ではなく生きている虎です。猫と虎は同じネコ科です。虎にしてみれば、猫がトラ科に属するべきであり、虎がネコ科というのは釈然としないに違いありません。猫と虎を比較すると大きさが決定的に違います。他の外見上の違いとして、虎は鼻が大きく耳が丸くて小さいです。虎は体重を支えるため、猫に比べて足が太くしっかりとしています。身体が大きくなっても目の大きさはあまり変わらず、相対的に虎は目が小さく見えます。大きな目がクリクリする猫はかわいいペット、虎は獰猛な肉食獣という正反対のイメージがありますが、どちらもしなやかで魅力的なハンターです。猫と虎を比較するには、優越性と非劣性のいずれの検討を行えばよいのでしょうか? 非劣性試験ならば、猫が虎に劣らない非劣性マージンはどうなるのか? 猫の背を撫でながら、このように何の価値もないことに思索を巡らせる時間を楽しむ自分は幸せです。

64.

short DAPTとlong DAPTの新しいメタ解析:この議論、いつまで続けるの?(解説:中野明彦氏)-1105

【はじめに】 PCI(ステント留置)後の適正DAPT期間の議論が、まだ、続いている。 ステントを留置することで高まる局所の血栓性や五月雨式に生じる他部位での血栓性イベントと、強力な抗血小板状態で危険に晒される全身の出血リスクの分水嶺を、ある程度のsafety marginをとって見極める作業である。幾多のランダム化試験やメタ解析によって改定され続けた世界の最新の見解は「2017 ESC ガイドライン」1)に集約されている。そのkey messageは、・安定型狭心症は1~6ヵ月、ACSでは12ヵ月間のDAPTを基本とするが、その延長は虚血/出血リスクにより個別的に検討されるべきである(DAPT score・PRECISE DAPT score)。・ステントの種類(BMS/DES)は考慮しない。・DAPTのアスピリンの相方として、安定型狭心症ではクロピドグレル、ACSではチカグレロル>プラスグレルが推奨される。 一方本邦のガイドラインは、安定型狭心症で6ヵ月、ACSでは6~12ヵ月間を標準治療とし、long DAPTには否定的である。 言うまでもないが、DAPTの直接の目的はステント血栓症予防である。ステント血栓症の原因は複合的で、病態(ACS vs.安定型狭心症)のほかにも、患者因子(抗血小板薬への反応性・糖尿病・慢性腎臓病・左室収縮能など)、病変因子(血管径・病変長・分岐部病変など)、ステントの種類(BMS、第1世代DES、第2世代以降のDES)、さらには手技的因子(stent underexpansion、malappositionなど)が関連すると報告されている。そしてステント血栓症は留置からの期間によって主たるメカニズムが異なり、頻度も変わる2)。1年以降(VLST:Very Late Stent Thrombosis)の発生頻度は1%をはるかに下回り、in-stent neoatherosclerosisが主役となる。またVLSTの数倍も他病変からのspontaneous MIが発症するといわれている。こうした点がDAPTの個別的対応の背景であろう。【本メタ解析について】 ステント留置後のadverse eventは時代とともに減少し、したがって数千例規模のRCT でもsmall sample sizeがlimitationになってしまう。これを補完すべく2014年頃からRCTのメタ解析が年2~3本のペースで誌上に登場してきた。本文はその最新版で、これまでで最多の17-RCT(n=46,864)を解析した。DAPTはアスピリン+クロピドグレルに限定し、単剤抗血小板療法(SAPT)はアスピリンである。従来の「short DAPT=12ヵ月以内」を細分化して「short(3~6ヵ月)」と「standard(12ヵ月)」に分離、これを「long(>12ヵ月)」と比較する3アーム方式で議論を進めている。 その結論・主張は、(1)総死亡・心臓死・脳卒中・net adverse clinical eventsはDAPT期間で差がない(2)long DAPTはshort DAPTに比して非心臓死や大出血を増やす(だからlong DAPTは極力避けたほうがいい)(3)short DAPTとstandard DAPTではACSであってもステント血栓症や心筋梗塞に差がない(だからshort DAPTでいい) などである。しかし一方、long DAPTの超遅発性ステント血栓症・心筋梗塞抑制効果についてはほとんど触れられておらず、short DAPTに肩入れしている印象を受ける。筆者が、おそらく虚血患者に接する機会が少ないであろう臨床薬理学センター所属のためだろうか? 本メタ解析の構図は「DAPTに関するACC/AHA systematic review report(2017)」3)に似ていて、これに2016年以降発表されたRCTを中心に6報加えて議論を展開している。long DAPTほど血栓性イベント抑制に勝り出血性合併症が増える結論は同じだが、ACC/AHA reportはテーラーメードを意識してかリスクによる選択の余地を強調している。 さらにいくつか気になる点がある。評者もご多分に漏れず統計音痴なので、その指摘は的を射ていないかもしれないけれど、できれば本文をダウンロードしてご意見をいただきたい。 たとえば、MIやステント血栓症はlong DAPTで有意に抑制しているのに心臓死はshort DAPTで少ない傾向にあったこと。あるいは非心臓死(有意差あり)・心臓死のOdd Ratioが共に総死亡より大きかったこと。これらは各エンドポイントが試験により含まれたり含まれなかったりしていたためらしい。 また、たとえば各試験でのevent ratioが大きく異なること。同じshort vs.standard DAPTの試験でも12ヵ月MI発症率が0%(IVUS-XPL)~3.9%(I-LOVE-IT2)と幅がある。調べてみるとperiprocedural MIを含めるかどうかなど、そもそも定義が異なるようである。 そして、例えばランダム化の時期である。short vs.standardのほとんどがPCI前後に振り分けているのに対し、standard vs.longはすべてで急性期イベントが終了した12ヵ月後に振り分けランドマーク解析している。これでもshort vs.longの図式が成り立つのだろうか?【まとめ】 DAPT有用性の議論はあのゴツイPalmaz-Schatz stentから始まった。第1世代DESも確かに分厚かった。しかし技術の粋を集め1年以内のステント血栓症が大幅に減少した現時点において、short DAPTにシフトするのは異論がないところであろう。とりわけcoronary imagingを駆使してoptimal stentingを目指すことができる本邦においては、なおさらである。しかし一方、心筋梗塞二次予防に特化したメタ解析4)では、long DAPTが致死性出血や非心臓死を増やすことなく心臓死やMI・脳卒中を有意に抑制した、との結果だった。 ステント血栓症が減ったからこそ、二次予防に抗血小板薬(DAPT)をどう活かすかという視点も必要であろう。解析の精度はさておき「short term DAPT could be considered for most patients after PCI with DES」と結論付けたSAPT(アスピリン)vs.DAPT(アスピリン+クロピドグレル)の議論はそろそろ終わりにしても良いのではないだろうか。 現在はアスピリンの代わりにクロピドグレルやP2Y12 receptor inhibitor(チカグレロル)によるSAPT、少量DOACの有効性も検討されて、PCI後の抗血栓療法は新しい時代に入ろうとしている。 木ばかりでなく森を見るようにしたいと思う。

65.

アジアの非喫煙女性の肺腺がんの危険因子

 アジアの非喫煙女性において、結核が肺がん発生の危険因子であることを支持する研究結果が、米国・国立がん研究所のJason Y. Y. Wong氏らにより報告された。この研究は、Female Lung Cancer Consortium in Asiaにおける結核ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果を用いて、結核への遺伝的な感受性が非喫煙者の肺腺がん発生に影響するかどうか調査したものである。Genomics誌オンライン版2019年7月12日号に掲載。 本研究では、5,512例の肺腺がん症例と6,277例のコントロールのGWASデータを使用し、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連をadaptive rank truncated product法によるパスウェイ解析を用いて評価した。なお、遺伝子セットは、以前の結核GWASでの遺伝的変異体と関連が知られている、もしくは示唆される31個の遺伝子から成る。続いて、以前の東アジアの結核GWASでの3つのゲノムワイドの有意な変異体を用いて、メンデルランダム化により結核と肺腺がんとの関連を評価した。 その結果、結核関連遺伝子セットと肺腺がんとの関連が認められた(p=0.016)。さらに、メンデルランダム化で、結核と肺腺がんとの関連が示された(OR:1.31、95%CI:1.03~1.66、p=0.027)。

66.

PCI技術の爛熟の時代―「不射の射」を目指す(解説:後藤信哉氏)-1086

 PCI日本導入直後のころ、1枝病変を対象に心臓外科のback upの下、POBAをしていた。5%が急性閉塞して緊急バイパスとなった。ステントの導入により解離による急性閉塞から、2週間以内のステント血栓症に合併症がシフトした。頑固なステント血栓症もアスピリンとチクロピジンの抗血小板薬併用療法により制圧された。安全性の改善されたクロピドグレルが標準治療となると、長期に継続する抗血小板療法による出血合併症が血栓イベントよりも大きな時代を迎えた。 PCIをしている先生方には外科的な直感があるのであろう。本邦のSTOPDAPT、 STOPDAPT-2、今回のSMART-CHOICEなどアスピリン早期中止の有用性を示唆する論文が多く発表されている。DAPTの長期継続の有無にかかわらず、総死亡を含む一次エンドポイントの発現率は3%程度にすぎない。また総死亡に占める心血管死亡の比率も半分を割っている。 歴史的に考えると、1)急性期に5%が急性冠閉塞したPOBA時代、2)亜急性期の10%近いステント血栓症を2~3%に低減させたステントと抗血小板薬併用療法の時代が終わり、3)補助的な抗血小板療法が不要となったPCI技術の爛熟の時代に入っている可能性が高い。 筆者は中島 敦の『名人伝』を愛読している。弓の名人を目指して鍛錬する若者が、「君は射の射をして不射の射を知らない」と諭され、修行の後「弓の名人になって」ついに弓を忘れるという物語である。PCIの黎明期に多くのinterventionistが技を極める鍛錬をした。これからは「不射の射」として心血管病の一次予防に注力する必要がある。

67.

DES留置後のクロピドグレル併用DAPT、至適期間は?/BMJ

 中国・中南大学のShang-He-Lin Yin氏らは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で薬剤溶出ステント(DES)留置後のクロピドグレルを用いる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)について、標準(12ヵ月間)または長期(>12ヵ月間)と短期(<6ヵ月間)の有効性と安全性を比較検証したシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果を報告した。すべての臨床症状を有する患者において短期と比較して、長期は大出血と非心臓死が増加し、標準で全出血のリスクが増加した。また、急性冠症候群(ACS)患者では、短期と標準で有効性と安全性は同様であった。新世代DES留置患者では、短期と比較して長期で全死因死亡が増加した。著者は、「DAPTの至適期間は、患者個々の虚血/出血リスクを考慮すべきではあるが、本検討において、DESを留置するPCIではほとんどの患者に短期DAPTを考慮することが望ましいことが示唆された」とまとめている。BMJ誌2019年6月28日号掲載の報告。無作為化比較試験17件についてネットワークメタ解析を実施 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane Library for clinical trials、PubMed、Web of Science、ClinicalTrials.govおよびClinicaltrialsregister.euを用い、1983年6月~2018年4月に発表された、PCIによるDES留置後のDAPTに関する無作為化比較試験を特定し、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を行った。 解析には、DAPTの3つの期間(短期、標準、長期)のうち2つを比較検証した研究17件(計4万6,864例)が組み込まれた。 主要評価項目は、心臓死または非心臓死、全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、すべての出血性イベントとした。DES留置後のクロピドグレルを用いたDAPTは6ヵ月未満が望ましい 短期DAPTと比較し、長期DAPTは大出血(オッズ比[OR]:1.78、95%信頼区間[CI]:1.27~2.49)および非心臓死(OR:1.63、95%CI:1.03~2.59)の発生率増加が、標準DAPTはあらゆる出血(OR:1.39、95%CI:1.01~1.92)の発生率が増加することが示された。他の評価項目については顕著な差は確認されなかった。 感度解析の結果、短期または標準DAPTと比較し、18ヵ月以上のDAPTでは非心臓死と出血がさらに増加することが明らかとなった。サブグループ解析では、新世代DESを留置した患者において、長期DAPTは短期DAPTより全死因死亡が増加した(OR:1.99、95%CI:1.04~3.81)。また、ACSを呈し新世代DESを留置した患者において、標準DAPTは短期DAPTと同様の有効性と安全性を示した。 著者は、プールした試験の異質性は低く、結果の解釈に対する信用性は高いと考えられるとする一方、研究の限界として、クロピドグレルを基本にしたDAPTの期間を主に評価したもので、他のP2Y12阻害薬では結論が異なる可能性があること、いくつかの試験では報告されていない評価項目があることなどを挙げている。

68.

第24回 脳梗塞/TIA患者の抗血小板薬2剤併用療法はいつまで行うのがベスト?【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗血小板薬2剤併用療法(Dual antiplatelet therapy:DAPT)は、脳梗塞の既往がある患者さんやステント留置後の患者さんでよく行われるため、薬局で処方を見掛けることも多いと思います。今回は、2018年にBMJ誌に掲載された軽症虚血性脳梗塞または高リスク一過性脳虚血発作(TIA)患者におけるクロピドグレル+アスピリンのDAPTとアスピリン単独療法を比較したシステマティックレビュー(以下、SR)を紹介します1)。この研究が行われた背景には、BMJ Rapid Recommendations(RapidRecs)プロジェクトの一環として、治療方法の推奨を作るという目的があります。インパクトのある新規研究が発表されたら、診療ガイドラインの推奨を素早く作成するのが望ましいですが、現実的には特定の臨床上の疑問(Clinical question)に対して網羅的に研究を調査し、それらをまとめて分析統合を行う手順、つまりSRが行われ、新規研究が出てから推奨を作成するまでの時間的ギャップが課題となっています。たとえば、SRが最新かつ信頼があつい期間といえる“寿命”を調べた研究では、後行研究が出た後の統計的有意差の変化、効果量の50%を超える相対的な変化や意思決定に影響を与えるために十分な新情報、先行研究への重要な警告、より優れた治療法の出現を既存SRの寿命のシグナルとみた場合に、SRの“寿命”の中央値は5.5年で、1年以内に15%、2年以内に23%のエビデンスが覆り、7%はすでに出版時点で逆の結果が出ているという報告があり2)、タイムリーに新規研究を含めたまとめを作ることの大切さを物語っています。2020年には医学情報量が倍増するのにかかる期間はわずか0.2年(73日)になるという予測すらありますから3)、RapidRecsのように即座にSRを行う重要性は今後ますます増えるでしょう。DAPTを24時間以内に開始し、10~21日間の継続でベネフィット最大DAPT vs.アスピリン単独療法のSRに話を戻しますと、本研究は2018年7月にNew England Journal of Medicine誌に掲載されたPOINT trial(Johnston SC, et al. N Engl J Med. 2018;379:215-225.PMID: 29766750)の結果を受けて行われています。内容としては、急性軽症虚血性脳卒中または高リスクTIAと診断された患者で、クロピドグレル+アスピリンのDAPTを発症後3日以内に開始した場合と、アスピリン単独療法を発症後3日以内に開始した場合を比較し(最終的に組み入れられた研究は発症後24時間以内または12時間以内)、90日までの転帰(全死亡、脳卒中による死亡、非致死的虚血性/出血性脳卒中、頭蓋外出血、TIA、心筋梗塞、機能的転帰など)を調査した研究です。データベースのMEDLINE、EMBASE、CENTRAL、Cochrane Library、ClinicalTrials.gov、WHO website、PsycINFO、grey literatureを網羅的に検索して研究を集めています。2名の評価者によって、各研究のバイアスのリスクが評価され、最終的な合意形成は第三者を交えてされています。バイアスのリスクの評価基準は、Cochraneのrisk of biasツールの調整版が用いられており、各研究におけるランダム割り付けの有無、脱落データの割合、割り付けの隠蔽化、研究参加者/介入者/アウトカム評価者のマスキング、その他バイアスが評価されていますので、厳密な方法論で行われたSRとみてよいと思います。最終的に採用されたランダム化比較試験は3件(FASTER、CHANCE、POINT)で、合計症例数は1万447例でした。アウトカムごとに統合された結果をみると、DAPT群ではアスピリン単独群に比べ、非致死的脳卒中の再発が低減しており、リスク比は0.70(95%信頼区間[CI]:0.61~0.80)、絶対リスク減少率は1.9%(NNT換算すると53)でした。総死亡については両群で有意差はありませんでしたが(リスク比:1.27、95%CI:0.73~2.23)、中等度または重度の頭蓋外出血については、DAPT群のリスク比は1.71(95%CI:0.92~3.20)、絶対リスク上昇率は0.2%とアスピリン単独群よりも増加傾向にあり、軽微または小出血もDAPT群のリスク比は2.22(95%CI:1.60~3.08)、絶対リスク上昇率は0.7%と有意に増加しています。機能的転帰には有意差はありませんでした。経時的変化を見てみると、脳卒中イベントの発症の多くはDAPT群でもアスピリン単独群でもランダム化後10日以内に生じていますが、21日以降はほぼ平行線となっています。一方で、出血イベントはDAPT群で長期的にやや増えていきます。これらのことから、ハイリスクのTIAおよび軽度の虚血性脳卒中の患者における本研究の結果は、BMJ誌のClinical Practice Guideline4)のまとめとして以下の2点が強く推奨されています。イベント発生後24時間以内にDAPTを開始するDAPTは10~21日間継続し、21日を超える継続はしないDAPT継続中の患者さんの中には、脳卒中の再発が心配で治療を継続させたいという方もいるかもしれませんが、もし2剤で21日を超えて長期間投与されている場合は出血イベントのリスクを考慮し、処方医への情報提供を検討すべきと思います。1)Hao Q, et al. BMJ. 2018;363:k5108.2)Shojania KG, et al. Ann Intern Med. 2007;147:224-233.3)Densen P. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011;122:48-58.4)Prasad K, et al. BMJ. 2018;363:k5130.

69.

ステント留置後のDAPT投与期間、1ヵ月は12ヵ月より有効?/JAMA

 STOPDAPT試験(2016年)により、コバルトクロム合金製エベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)留置術後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を3ヵ月で終了するアプローチの安全性が確認されている。京都大学の渡部 宏俊氏らSTOPDAPT-2試験の研究グループは、今回、DAPT投与期間をさらに短縮して1ヵ月とし、その後クロピドグレル単剤投与に切り換える治療法について検討し、この超短期的DAPTは、主要な心血管イベント/出血イベントの抑制効果に関して、DAPTを12ヵ月投与する標準治療に対し非劣性で、優越性も有することが示された。JAMA誌2019年6月25日号掲載の報告。日本の90施設で1ヵ月DAPT群と12ヵ月DAPT群に無作為に割り付け 本研究は、日本の90施設が参加した多施設共同非盲検無作為化試験であり、2015年12月~2017年12月の期間に患者登録が行われ、2019年1月に最後の1年フォローアップを終了した(Abbott Vascularの助成による)。 対象は、CoCr-EES留置術による経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた患者であった。経口抗凝固薬を要する患者や、頭蓋内出血の既往を有する患者は除外された。 被験者は、術後にアスピリン+P2Y12阻害薬(クロピドグレルまたはプラスグレル)によるDAPTを1ヵ月行い、その後はクロピドグレル単剤に切り換える群(1ヵ月DAPT群)、または術後にアスピリン+P2Y12阻害薬によるDAPTを1ヵ月行い、その後はアスピリンとクロピドグレルによるDAPTを12ヵ月時まで継続する群(12ヵ月DAPT群)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、12ヵ月時の心血管死、心筋梗塞、虚血性または出血性脳卒中、ステント血栓症(definite)、TIMI出血基準の大出血または小出血の複合であり、相対的非劣性マージンは50%とした。1ヵ月DAPT群が心血管イベントを増加させずに出血イベントを抑制 3,009例(intention-to-treat集団)が登録され、2,974例(99%)が試験を完遂した。1ヵ月DAPT群に1,500例、12ヵ月DAPT群には1,509例が割り付けられた。全体の平均年齢は68.6歳、男性が78%で、糖尿病が39%、安定冠動脈疾患が62%、急性冠症候群が38%に認められた。多くが、血栓リスクおよび出血リスクが低~中等度の患者であった。 主要エンドポイントの発生率は、1ヵ月DAPT群が2.36%、12ヵ月DAPT群は3.70%であった(絶対差:-1.34%、95%信頼区間[CI]:-2.57~-0.11、ハザード比[HR]:0.64、95%CI:0.42~0.98)。非劣性の判定基準が満たされ(p<0.001)、優越性にも有意差が認められた(p=0.04)。 心血管イベントの副次エンドポイント(心血管死、心筋梗塞、虚血性または出血性脳卒中、ステント血栓症[definite])の発生率は、1ヵ月DAPT群が1.96%、12ヵ月DAPT群は2.51%であった(絶対差:-0.55%、95%CI:-1.62~0.52、HR:0.79、95%CI:0.49~1.29)。非劣性の判定基準は満たした(p=0.005)が、優越性は認めなかった(p=0.34)。 また、出血イベントの副次エンドポイント(TIMI出血基準の大出血または小出血)の発生率は、1ヵ月DAPT群が0.41%、12ヵ月DAPT群は1.54%であり(絶対差:-1.13%、95%CI:-1.84~-0.42、HR:0.26、95%CI:0.11~0.64)、1ヵ月DAPT群の優越性が確認された(p=0.004)。 著者は、「これらの知見により、薬剤溶出ステント留置術後に、DAPTを1ヵ月行った後クロピドグレル単剤投与を行うレジメンは、DAPTを12ヵ月継続する標準治療よりも高い有益性をもたらすことが示唆される」とまとめ、「このレジメンの有益性は、心血管イベントを増加させずに出血イベントを抑制することでもたらされたため、出血リスクが高くない患者でも治療選択肢となる可能性がある。また、虚血リスクが低~中等度の患者が多かったことから、虚血リスクの高い患者において、さらなる検討を要する」と指摘している。

70.

DES留置後、DAPT3ヵ月+P2Y12阻害薬単剤vs.DAPT12ヵ月/JAMA

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で薬剤溶出ステント(DES)を留置した患者において、3ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)+P2Y12阻害薬単剤療法は、12ヵ月間のDAPTと比較し、主要心・脳血管イベント(MACCE:全死因死亡、心筋梗塞または脳卒中の複合エンドポイント)の発生に関して非劣性であることが検証された。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、同国の33施設で実施した非盲検無作為化非劣性試験「SMART-CHOICE試験」の結果を報告した。これまで、PCI後の短期間DAPT+P2Y12阻害薬単剤療法に関するデータは限定的であった。JAMA誌2019年6月25日号掲載の報告。DES留置患者約3,000例で、12ヵ月時の主要心・脳血管イベントを評価 研究グループは、PCIでDESを留置した患者2,993例を、アスピリン+P2Y12阻害薬3ヵ月間、その後P2Y12阻害薬単剤療法(P2Y12阻害薬単剤群、1,495例)、またはアスピリン+P2Y12阻害薬12ヵ月間(DAPT群、1,498例)のいずれかに無作為に割り付けた。登録は2014年3月18日に開始され、2018年7月19日に追跡調査が完了した。 主要評価項目は、PCI実施後12ヵ月時点でのMACCE(非劣性マージンは1.8%)、副次評価項目はMACCEの個別のイベントおよび出血(BARC出血基準のタイプ2~5)であった。 無作為化された2,993例(平均年齢64歳、女性795例[26.6%])のうち、2,912例(97.3%)が試験を完遂した。治験プロトコールの順守率はP2Y12阻害薬単剤群で79.3%、DAPT群で95.2%であった。P2Y12阻害薬単剤群、DAPT群に対して非劣性、出血は42%低下 12ヵ月時点で、MACCEはP2Y12阻害薬単剤群で42例、DAPT群で36例に認められた(2.9% vs.2.5%、群間差:0.4%、片側95%信頼区間[CI]:-∞~1.3%、非劣性のp=0.007)。副次評価項目は、全死因死亡(21例[1.4%]vs.18例[1.2%]、ハザード比[HR]:1.18、95%CI:0.63~2.21、p=0.61)、心筋梗塞(11例[0.8%]vs.17例[1.2%]、HR:0.66、95%CI:0.31~1.40、p=0.28)、脳卒中(11例[0.8%]vs.5例[0.3%]、HR:2.23、95%CI:0.78~6.43、p=0.14)のいずれも有意差はなかった。 出血の発現頻度は、P2Y12阻害薬単剤群がDAPT群と比較して有意に低かった(2.0% vs.3.4%、HR:0.58、95%CI:0.36~0.92、p=0.02)。 著者は、非劣性マージンが比較的広く検出力が不足している可能性や、非盲検試験で対象が低リスク集団であったことなどを指摘し、「他の集団でさらなる検証が必要である」とまとめている。

71.

TAVR導入後5年で、米国の術後脳卒中は減少したか/JAMA

 米国では2012~15年の期間に、経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVR)の施行数が5倍以上に増加したが、TAVR後の脳卒中リスクは知られていない。米国・クリーブランドクリニックのChetan P. Huded氏らは、全国的な調査を行い、2011~17年の術後30日以内の脳卒中発生率は2.3%で、この期間の年間発生率の推移に大きな変動はないことを明らかにした。研究の詳細は、JAMA誌2019年6月18日号に掲載された。約10万例のレジストリデータを後ろ向きに解析 研究グループは、米国におけるTAVR導入後5年間の術後30日以内の脳卒中の発生状況を調査し、脳卒中と30日死亡率、薬物療法と30日脳卒中リスクとの関連を評価する目的で、後ろ向きコホート研究を行った(米国心臓病学会[ACC]全国心血管データレジストリなどの助成による)。 2011年11月9日~2017年5月31日までに、米国胸部外科学会(STS)/ACC経カテーテル的弁治療レジストリに参加する521施設でTAVR(経大腿動脈、非経大腿動脈)を受けた患者10万1,430例のデータを解析した。30日フォローアップは、2017年6月30日に終了した。 術後30日時の一過性脳虚血発作および脳卒中の評価を行った。また、Cox比例ハザードモデルを用いて脳卒中と30日死亡率の関連を、傾向スコアマッチングを用いて抗血栓薬療法と退院後30日時の脳卒中の関連を評価した。約7割が術後3日以内に発生、死亡率:脳卒中16.7% vs.非脳卒中3.7% 10万1,430例の年齢中央値は83歳(IQR:76~87)、女性が4万7,797例(47.1%)で、8万5,147例(83.9%)が経大腿動脈アクセスであった。術後30日のフォローアップデータは全例で得られた。 30日時に、2,290例(2.3%)が脳卒中を、373例(0.4%)が一過性脳虚血発作を発症した。調査対象の期間中、術後30日脳卒中の発生率は増加も減少もせず、全例(傾向検定:p=0.22)および経大腿動脈アクセス群(p=0.47)の双方で安定的に推移した。 30日以内の脳卒中のうち、1,119例(48.9%)は術後の初日に、1,567例(68.4%)は3日以内に発生した。 脳卒中2,290例のうち383例(16.7%)が死亡したのに対し、非脳卒中9万9,140例では3,662例(3.7%)が死亡し、脳卒中の発生は30日死亡率の上昇と有意な関連を示した(p<0.001、リスク補正後30日死亡のハザード比[HR]:6.1、95%信頼区間[CI]:5.4~6.8、p<0.001)。 傾向スコアマッチングによる解析では、経大腿動脈アクセス群の30日脳卒中リスクは、退院時の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)による治療の有無とは関連がなく(DAPT例0.55% vs.非DAPT例0.52%、HR:1.04、95%CI:0.74~1.46)、経大腿動脈以外でのアクセス群でも、退院時DAPTの有無で30日脳卒中リスクに差はなかった(0.71% vs.0.69%、1.02、0.54~1.95)。 同様に、退院時の経口抗凝固薬療法の有無についても、経大腿動脈アクセス群(0.57% vs.0.55%、HR:1.03、95%CI:0.73~1.46)および経大腿動脈以外でのアクセス群(0.75% vs.0.82%、0.93、0.47~1.83)の双方で、30日脳卒中リスクに差は認めなかった。 著者は、本試験で得られたTAVR導入後5年の主な知見を次のようにまとめている。1)TAVR技術の改善や、術者の経験の積み重ねにもかかわらず、TAVR後30日脳卒中の経時的な発生率に変化はない、2)TAVR後30日脳卒中の多くが、施術後3日以内に発生している、3)早期脳卒中は、30日死亡率の上昇と独立の関連がある、4)DAPTと経口抗凝固薬は、いずれも30日時の神経学的イベントのリスクとは関連しない。

72.

ISC 2019 速報

ISC(国際脳卒中学会議)が、米国・ハワイにて2月6~8日に開催されました。Late-Breakingの発表を含めた主要トピックスの中から、事前投票で先生方からの人気の高かった上位6演題のハイライト記事をお届けします。ISC 2019注目演題一覧※(掲載予定)の演題は変更となる場合がございます。2月6日発表演題Dual Antiplatelet Therapy Using Cilostazol for Secondary Stroke Prevention in High-risk Patients: The Cilostazol Stroke Prevention Study for Antiplatelet Combination (CSPS.com)高リスク患者における二次性脳卒中予防のためのDAPT:抗血小板薬併用療法のシロスタゾールによる脳卒中予防試験(CSPS.com)について2月7日発表演題Treatment of Carotid Stenosis in Asymptomatic, Non-Octogenarian, Standard Risk Patients with Stenting versus Endarterectomy: A Pooled Analysis of the CREST and ACT I Trials無症候性の標準リスク患者の頸動脈狭窄症治療における治療ステント留置術と動脈内膜摘出術の比較:CRESTおよびACT I試験の統合解析A Randomized Trial of Intensive versus Standard Blood-Pressure Control in Patients with a History of Stroke: The Recurrent Stroke Prevention Clinical Outcome (RESPECT) Study脳卒中歴のある患者における集中的血圧コントロールと標準的血圧コントロールの無作為化試験:再発性脳卒中予防臨床転帰(RESPECT)研究Main Results of the Enhanced Control of Hypertension and Thrombolysis Stroke Study (enchanted) of the Early Intensive Blood Pressure Control After thrombolysis急性期脳梗塞例に対する、SBP「<130-140mmHg」と「<180mmHg」による、90日後の「死亡・要介助」への影響を比較するRCTThe New Generation Hydrogel Endovascular Aneurysm Treatment Trial (HEAT): Final Results新世代ハイドロゲル血管内動脈瘤治療試験(HEAT):最終結果MISTIE III Surgical Results: Efficiency of Hemorrhage Removal Determines mRSMISTIE III手術成績:非外傷性頭蓋内出血に対する、低侵襲手術がmRSに与えた影響J-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)とはJ-CLEAR(臨床研究適正評価教育機構)は、臨床研究を適正に評価するために、必要な啓発・教育活動を行い、わが国の臨床研究の健全な発展に寄与することを目指しています。

73.

STEMIでの至適DAPT期間は6ヵ月それとも12ヵ月?(解説:上田恭敬氏)-974

オリジナルニュースSix months versus 12 months dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation in ST-elevation myocardial infarction (DAPT-STEMI): randomised, multicentre, non-inferiority trial(2018/10/2掲載) 第2世代DESによって治療されたSTEMI症例で6ヵ月間イベントがなかった症例を、その時点でDAPTからSAPT(アスピリン単独)へ変更する群とそのままさらに6ヵ月間DAPTを継続する群に無作為に割り付け、その後18ヵ月(PCIからは24ヵ月)までの全死亡、心筋梗塞、血行再建術、脳卒中、出血(TIMI major)の複合頻度を主要評価項目として非劣性が検討された。 432症例がSAPT群、438症例がDAPT群に割り付けられた。主要評価項目の発生頻度は、SAPT群で4.8%、DAPT群で6.6%となり、非劣性が示された。 本試験では1,100症例のSTEMIが6ヵ月間観察された後に各群に割り付けられているが、割付の時点で92症例は基準を満たしていたにもかかわらず割り付けられずに脱落している。イベント発生頻度がいずれの群においても予想より低かったことと合わせて、このことはlimitationとして記載されており、より低リスクの症例だけがエントリーされたとも考えられる。本試験の10倍以上の症例数で検討されたDAPT試験で認められた、DAPT継続群での心筋梗塞の減少や出血イベントの増加は、本試験では認められなかった。やはり、虚血イベントのリスクも出血イベントのリスクも低い症例が登録されたための結果ではないだろうか。 よって、本試験の結果について、「一般的に」STEMI症例でPCI後のDAPT期間を12ヵ月から6ヵ月に短縮しても大丈夫と解釈すべきではなく、「特定の症例を選択すれば」DAPT期間を12ヵ月から6ヵ月に短縮しても大丈夫と解釈すべきだろう。ただし、どんな特定の症例かは不明であり、そのような症例ではDAPT期間を短縮しても虚血イベントは増えないが、出血イベントが減るわけでもないという結果なので、積極的にDAPT期間を短縮する必要もないのかもしれない。逆に、出血イベントが減るメリットのある症例群では、その代わりに虚血イベントは増えてしまうかもしれない。臨床的に真に欲しいエビデンスを得るための臨床試験を実施するのは非常に難しいと思う。

74.

チカグレロル併用DAPT1ヵ月+単剤23ヵ月を標準DAPTと比較/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後2年の全死因死亡あるいは新規Q波心筋梗塞の抑制という点で、チカグレロルとアスピリンによる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)1ヵ月→チカグレロル単剤療法23ヵ月は、標準的DAPT 12ヵ月→アスピリン単剤療法12ヵ月と比較し優越性は認められなかった。ベルギー・ハッセルト大学のPascal Vranckx氏らが、18ヵ国130施設で実施した無作為化非盲検優越性試験「GLOBAL LEADERS」の結果を報告した。アスピリンとの併用において、チカグレロルはクロピドグレルより主要有害心イベントと全死亡率を有意に低下するが、アスピリン150mg/日以上がチカグレロルの治療効果を弱めることが示唆されていた。Lancet誌オンライン版2018年8月24日号掲載の報告。DES留置患者約1万6千例で検討したGLOBAL LEADERS試験 GLOBAL LEADERS試験の対象は、PCIを施行しバイオリムスA9薬剤溶出性ステント(DES)を留置する安定冠動脈疾患(安定CAD)/急性冠症候群(ACS)患者。アスピリン(75~100mg/日)+チカグレロル(1日2回90mg)を1ヵ月間、その後チカグレロル単剤療法を23ヵ月間行う介入群と、標準的DAPT(アスピリン75~100mg/日+クロピドグレル75mg/日[安定CAD患者]またはチカグレロル1日2回90mg[ACS患者])を12ヵ月間、その後アスピリン単剤療法を12ヵ月間行う対照群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は、2年時点の全死因死亡または中央評価による新規の非致死性Q波心筋梗塞の複合(評価者盲検)。主な副次安全性評価項目は、施設報告によるBARC出血基準Grade3または5の出血で、intention-to-treat解析で評価した。 2013年7月1日~2015年11月9日に、1万5,968例が介入群7,980例と対照群7,988例に無作為に割り付けられた。全死因死亡および非致死性心筋梗塞の発生に有意差なし 2年時点における死亡または非致死性新規Q波心筋梗塞の発生は、介入群で304例(3.81%)、対照群で349例(4.37%)に認められた(率比:0.87、95%信頼区間[CI]:0.75~1.01、p=0.073)。事前に定義したACSと安定CADのサブグループ解析においても、主要評価項目に関する治療効果に差はなかった(p=0.93)。 Grade3または5の出血は、介入群163例ならびに対照群169例で確認された(2.04% vs.2.12%、率比:0.97、95%CI:0.78~1.20、p=0.77)。 著者は、今回の試験は非盲検で行われており、全死因死亡と2年時点の複合エンドポイントに関して検出力不足であったことなどを研究の限界として挙げている。

75.

CABG後もSAPTよりDAPTが優れている?(解説:上田恭敬氏)-879

 SVGを用いた待機的CABG症例を対象とし、術後の抗血小板療法をチカグレロル+アスピリン併用(DAPT)、チカグレロル単独、アスピリン単独の3群に無作為に割り付け、1年後のSVG開存を主要評価項目としたRCTの結果が報告された。SVGの開存はCTあるいはCAGによって評価された。 本試験では、中国の6施設において500症例が、チカグレロル+アスピリン併用(168症例)、チカグレロル単独(166症例)、アスピリン単独(166症例)の3群に割り付けられた。主要評価項目である1年時点でのSVG開存率は、チカグレロル+アスピリン併用群で88.7%とアスピリン単独群の76.5%より有意に高値であったが、チカグレロル単独群の82.8%はアスピリン単独群と統計的に差を認めなかった。 出血性イベントについては、軽度のものまで含めるとチカグレロル+アスピリン併用群で頻度が多いように思われたが、出血性イベントおよびMACE(composite of cardiovascular death, nonfatal myocardial infarction, or nonfatal stroke)を統計的に比較するには症例数が少な過ぎたと結論している。 以上より、本研究で示されたことは、「CABG後1年でのSVG開存率がアスピリン単独群よりもチカグレロル+アスピリン併用群で有意に高かった」ということで、MACEや出血性イベントの違いについては十分評価できなかったということになる。しかし、試験がオープンラベルで行われたこともlimitationとして指摘されており、エビデンスとして確立するためには、今回の結果をより大規模のRCTで検証する必要がある。PCI後の抗血栓療法において、DAPT vs.SAPTが活発に議論されているが、CABG後においても、今後同様の議論が展開されるべきであろう。そのためには、CABG症例を対象としたさまざまなRCTが実施される必要がある。

76.

抗血小板薬2剤併用、CABG後グラフト開存率を改善/JAMA

 チカグレロル+アスピリンによる抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)は、アスピリン単剤に比べ、冠動脈バイパス術(CABG)後1年時の伏在静脈グラフトの開存率を改善することが、中国・上海交通大学医学院附属瑞金医院のQiang Zhao氏らが行った多施設共同試験(DACAB試験)で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年4月24日号に掲載された。CABG後の伏在静脈グラフトの開存に及ぼす、アスピリン+P2Y12受容体拮抗薬によるDAPTの効果については、いくつかの小規模な短期的臨床試験で相反する結果が報告されているという。1年後のグラフト開存率を3群で比較 研究グループは、CABG後の伏在静脈グラフトの開存におけるチカグレロル+アスピリンおよびチカグレロル単剤の効果を、アスピリン単剤と比較する非盲検無作為化試験を実施した(AstraZeneca社の助成による)。 対象は、年齢18~80歳の待機的CABGの適応例であった。緊急血行再建術、他の心臓手術の併用、CABG後にDAPTまたはビタミンK拮抗薬を要する患者や、重篤な出血のリスクを有する患者は除外された。 被験者は、CABG後24時間以内にチカグレロル(90mg×2回/日)+アスピリン(100mg/日)、チカグレロル単剤(90mg×2回/日)、アスピリン単剤(100mg/日)を投与する群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられ、1年間の治療が行われた。 主要アウトカムは、1年後の伏在静脈グラフトの開存(FitzGibbon分類:GradeA[狭窄<50%])とし、割り付け情報を知らされていない審査委員会が独立に判定を行った。探索的な事後解析として、グラフト非閉塞(GradeA+B[狭窄≧50%])の評価も行った。開存の評価には、マルチスライスCT血管造影法または冠動脈血管造影法を用いた。 2014年7月~2015年11月の期間に、中国の6つの3次病院に500例が登録された。2剤併用群に168例、チカグレロル単剤群に166例、アスピリン単剤群には166例が割り付けられた。1年グラフト開存率:88.7%、82.8%、76.5% ベースラインの全体の平均年齢は63.6歳で、91例(18.2%)が女性であった。461例(92.2%)が試験を完遂した。 1年時のグラフト開存率は、併用群が88.7%(432/487グラフト)、チカグレロル単剤群が82.8%(404/488グラフト)、アスピリン単剤群は76.5%(371/485グラフト)であった。併用群とアスピリン単剤群の差は12.2%(95%信頼区間[CI]:5.2~19.2)であり、有意な差が認められた(p<0.001)のに対し、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群の差は6.3%(-1.1~13.7)と、有意差は認められなかった(p=0.10)。 7日時のグラフト開存率には、併用群とアスピリン単剤群(94.9 vs.91.1%、p=0.11)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(94.3 vs.91.1%、p=0.17)のいずれの比較においても、有意な差はみられなかった。 事後解析では、1年時のグラフト非閉塞率は、併用群がアスピリン単剤群に比べ高かった(89.9 vs.80.6%、p=0.006)が、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(86.1 vs.80.6%、p=0.17)には差がなかった。また、7日時の非閉塞率は、併用群とアスピリン単剤群(95.3 vs.92.8%、p=0.26)、チカグレロル単剤群とアスピリン単剤群(95.7 vs.92.8%、p=0.16)のいずれの比較においても、有意な差はなかった。 主要有害心血管イベント(MACE:心血管死+非致死的心筋梗塞+非致死的脳卒中)は、併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群が4例(2.4%)、アスピリン単剤群は9例(5.4%)で発現し、大出血は併用群が3例(1.8%)、チカグレロル単剤群は2例(1.2%)に認められた。 著者は、「相対的な出血リスクの評価には、患者数を増やしたさらなる検討を要する」としている。

77.

ACS症例におけるDAPTの期間は6ヵ月と12ヵ月のいずれが妥当か?(解説:上田恭敬氏)-848

 急性冠症候群症例(不安定狭心症、ST非上昇型急性心筋梗塞、ST上昇型急性心筋梗塞)を対象として、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の期間を6ヵ月とする群と12ヵ月以上とする群に無作為に割り付ける、韓国における多施設無作為化比較試験であるSMART-DATE試験の結果が報告された。 本試験では、韓国の31施設において2,712症例の急性冠症候群症例が、6ヵ月間のDAPT群(1,357症例)または12ヵ月以上のDAPT群(1,355症例)に無作為に割り付けられた。主要エンドポイントは18ヵ月時点での全死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合エンドポイントで、副次エンドポイントは主要エンドポイントの各構成要素、ステント血栓症(definite or probable)、出血性イベント(BARC type 2~5)である。 主要エンドポイントは、6ヵ月DAPT群で4.7%、12ヵ月以上DAPT群で4.2%と差を認めなかった。副次エンドポイントは、全死亡と脳卒中、ステント血栓症については群間に差を認めなかったが、心筋梗塞の発症は6ヵ月DAPT群で有意に高頻度に認められた(1.8% vs.0.8%、p=0.02)。出血性イベントは、6ヵ月DAPT群で2.7%、12ヵ月以上DAPT群で3.9%と有意な差は認めなかった(p=0.09)。 以上より、18ヵ月時点での主要エンドポイントに関しては、12ヵ月以上DAPTに対する6ヵ月DAPTの非劣性が示されたものの、主要エンドポイントの構成要素の1つである心筋梗塞の発症が6ヵ月DAPTで有意に高頻度であったために、6ヵ月DAPTが12ヵ月以上DAPTと同等に安全とは結論できなかったとしている。 通常、主要エンドポイントの結果が重要視され、副次エンドポイントの結果を強く主張することは控えるべきとされるが、本論文の記載は妥当なものと思われる。また、比較的低リスクの症例が登録されたかもしれないというselection biasの可能性などいくつかのlimitationが指摘されているが、それらはむしろ群間差をなくす方向に作用すると思われ、その中でも心筋梗塞の発症が6ヵ月DAPTで有意に高頻度であったことはやはり注目すべきである。著者も指摘しているように、現時点では、12ヵ月以上DAPTが急性冠症候群症例における標準的治療であることは揺らがず、安易にDAPT期間を短縮すべきではないと考える。

78.

日本のPCI患者のDAPT期間。リアルワールドでは6ヵ月?/日本循環器学会

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)における適正な抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の適正な期間は明らかになっていない。福岡山王病院 循環器センターの横井宏佳氏が、2018年3月23〜25日に大阪で開催された第82回日本循環器学会学術集会Late Breaking Cohort Studiesにて、リアルワールドデータを解析した日本人患者のDAPT継続期間とアウトカムの疫学研究を発表した。 この研究では、多数のDPC病院から成る、メディカルデータビジョン社のデータベースソースを使用した。2012年4月〜2013年6月までに登録された614万以上のデータのうちCADの診断がついた34万例以上から、登録基準に合致した7,473例が解析対象になった DAPT継続している患者の割合は、6ヵ月で63.4%、12ヵ月で41.9%であった。3ヵ月ランドマーク解析による虚血イベント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)は、DAPT継続3ヵ月未満17.8%、3ヵ月以上9.7%であった(p=0.001)。6ヵ月ランドマーク解析による虚血イベントは、DAPT継続6ヵ月未満17.8%、6ヵ月以上9.7%であった(p=0.002)。12ヵ月ランドマーク解析による虚血イベントは、DAPT継続12ヵ月未満8.1%、12ヵ月以上5.9%であった(p=0.242)。継続期間6ヵ月まではShort DAPTよりもLong DAPTで有意にイベントが少ないという結果となった。

79.

PCI後のDAPT、6ヵ月 vs.12ヵ月以上/Lancet

 急性冠症候群に対する薬剤溶出ステント(DES)での経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施後、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)において、6ヵ月投与群が12ヵ月以上投与群に対して、18ヵ月時点で評価した全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合エンドポイントの発生について非劣性であることが示された。一方で、心筋梗塞発症リスクは、6ヵ月投与群が約2.4倍高かった。韓国・成均館大学校のJoo-Yong Hahn氏らが、2,712例を対象に行った無作為化非劣性試験の結果で、Lancet誌オンライン版2018年3月9日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「DAPT投与は短期間が安全であるとの結論に達するには、厳しい結果が示された。過度の出血リスクがない急性冠症候群患者のPCI後のDAPT期間は、現行ガイドラインにのっとった12ヵ月以上が望ましいだろう」と述べている。18ヵ月時点の心血管イベントリスクを比較 研究グループは2012年9月5日~2015年12月31日に、韓国国内31ヵ所の医療機関を通じて、不安定狭心症、非ST上昇型心筋梗塞、ST上昇型心筋梗塞のいずれかが認められ、DESによるPCIを受けた患者2,712例について、非盲検無作為化非劣性試験を行った。急性冠症候群でPCI実施後のDAPT期間6ヵ月の群が、同じく12ヵ月以上の群に比べて非劣性かを評価した。 主要評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中のいずれかの複合エンドポイントとし、ITT解析で評価した。per protocol解析も行った。 副次評価項目は、PCI実施後18ヵ月時点の、主要評価項目に含まれた各イベントの発生、Academic Research Consortium(ARC)の定義に基づくdefinite/probableステント血栓症、BARC出血基準に基づくタイプ2~5の出血の発生だった。6ヵ月群の心筋梗塞リスクが2.41倍 被検者のうち、DAPTの6ヵ月投与群は1,357例、12ヵ月以上投与群は1,355例だった。P2Y12阻害薬としてクロピドグレルを用いたのは、6ヵ月群の1,082例(79.7%)、12ヵ月以上群の1,109例(81.8%)だった。 主要評価項目の発生は、6ヵ月群63例(累積イベント発生率:4.7%)、12ヵ月以上群56例(同:4.2%)で認められ、6ヵ月群の非劣性が示された(群間絶対リスク差:0.5%、片側上限値95%信頼区間[CI]:1.8%、事前規定の非劣性マージンは2.0%で非劣性のp=0.03)。 全死因死亡率は6ヵ月群が2.6%、12ヵ月以上群が2.9%と両群で同等だった(ハザード比[HR]:0.90、95%CI:0.57~1.42、p=0.90)。脳卒中発症率についても、それぞれ0.8%と0.9%であり、両群で同等だった(同:0.92、0.41~2.08、p=0.84)。 一方で心筋梗塞発症率については、6ヵ月群が1.8%に対し12ヵ月以上群が0.8%だった(HR:2.41、95%CI:1.15~5.05、p=0.02)。 ステント血栓症については、それぞれ1.1%と0.7%で、両群に有意差はなかった(p=0.32)。BARC出血基準2~5の出血発生頻度も、それぞれ2.7%、3.9%と有意差はなかった(p=0.09)。 per protocol解析の結果は、ITT解析の結果と類似していた。 著者は、「6ヵ月投与群の心筋梗塞リスクの増大と幅広い非劣性マージンによって、DAPTの短期間投与が安全であると結論付けることはできない」と述べている。

検索結果 合計:152件 表示位置:61 - 80