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英国がん生存率の低さは、レジストリの問題ではない

がんレジストリ・データから推定するがん生存率が、英国のデータは他のヨーロッパ諸国よりも低いデータが示されることに関して、London School of Hygiene and Tropical medicineのLaura M Woods氏らは、最近のBMJエディトリアルで指摘された、登録プロセスにおける2つの特異的なエラーがミスリードの原因なのかどうかを検証した。英国の低過ぎるがん生存率をめぐっては、10年以上の間、それが治療によりもたらされる違いなのかどうかが議論されているという。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月9日号)掲載より。診断日ではなく再発日の記録、5年以上生存者未登録が問題なのかをシミュレーションWoods氏らはシミュレーション研究にて、仮定されている2つのエラーのエビデンスについて検証した。すなわち、(1)死亡診断書からの登録者について診断日の代わりに再発日を記録していること、(2)レジストリに登録されていない5年以上の長期生存者がいること、についてシミュレーションし、それらの相対生存率への影響の可能性を推定し、英国の低い生存率はいずれか一方のエラーまたは両方によるものかを確認した。対象としたのは、イングランドとウェールズの全国がんレジストリ。具体的には、1995~2007年の間にイングランドとウェールズで登録され、2007年12月31日まで追跡された、乳がん(女性のみ)、肺がん、大腸がんと診断された患者だった。主要評価項目は、各シミュレーションとの関連でみた、1年相対生存率、5年相対生存率の平均絶対パーセントの変化とした。たとえエラー要因のレベルが極端に大きくても説明がつかない結果、英国とスウェーデンとの間にみられる乳がん1年生存率の格差は、(1)の仮定によっては説明することができた。診断日が死亡に至った女性の70%以上で、平均1年以上の誤差を有し記録されていた。一方で、(2)の仮定については、長期生存者が40%であったとしても、1年生存率の格差を説明する半分にも満たなかった。肺がんと大腸がんについても、同様の結果だった。Woods氏は、「がん登録データについて仮定されたエラー要因のレベルが極端に大きくても、英国とその他のヨーロッパ各国とにみられる生存率の国際間格差は説明することが不可能だった」と結論。最後に、英国のがん患者の生存率は実際のところ低いと言え、診断の遅れ、ヘルスケアへの投資の低さ、最適とは言えないケアに関連していそうだと述べ、「問題とすべきは、根底にある原因は何か、何をすれば英国のがん患者のアウトカムが改善されるかである」とまとめている。

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ロタウイルス単価ワクチン「RV1」のリスク・ベネフィット

現在、WHOにより世界的に推奨使用されているロタウイルス単価ワクチン「RV1」について、米国疾病予防管理センター(CDC)のManish M. Patel氏らが、ブラジル、メキシコ両国での乳児への接種後の腸重積発症について評価した結果、短期リスクは約5.1万~6.8万人に1人の割合で認められたものの、ワクチン接種によるリスクよりもベネフィットがはるかに上回ると結論する報告をNEJM誌2011年6月16日号で発表した。ロタウイルスワクチンは、初期の「Rotashield」では初回接種後3~7日でリスクが最大に達し(約37倍)、約1万人に1人の割合で腸重積が認められたため1999年に市場から回収された。その後開発されたのが次世代ワクチン「RV1」や「RV5」(5価ウシ-ヒト組み替えワクチン)で、いずれも6万児以上を対象とした臨床試験を経て、「RV1」は接種後30日間、「RV5」は同42日間の腸重積リスクの上昇がみられなかったことから、世界的に推奨ワクチンとして使用されている。「RV1」接種は、ブラジルでは2006年3月に、メキシコでは2007年5月に、全国的な小児期予防接種プログラムに導入され、両国で600万例以上の乳児に接種されている。全国接種が導入されているメキシコとブラジルで症例集積および症例対照研究Patel氏らは、症例集積(case-series)および症例対照(case-control)の手法にて、RV1と腸重積との関連を評価した。2008年8月~2010年8月にかけて両国合わせて69の評価対象施設(メキシコ:10地域から16施設、ブラジル:7地域から53施設)で腸重積を有した乳児を特定し、対照群は年齢をマッチさせた乳児を近隣施設から登録した。ワクチン接種日は、接種カードまたはクリニックの記録を再調査し確認された。主要リスク観察期間は、接種後1~7日とされたが、8~14日(2週目)、15~21日(3週目)の期間もリスク評価がされた。結果、症例群に登録された腸重積を有した乳児は615例(メキシコ285例、ブラジル330例)だった。対照群には2,050例が登録された。年間超過入院96例、死亡5例に対し、年間入院8万例、死亡1,300例回避分析の結果、メキシコの乳児において、RV1の初回接種後1~7日に有意な腸重積リスクの増大が認められた。症例集積法における発生率比は5.3(95%信頼区間:3.0~9.3)、症例対照法におけるオッズ比は5.8(同:2.6~13.0)だった。なお、2回目接種後1~7日のリスク上昇はみられなかったが(症例集積法と症例対照法の各比1.8と1.1)、2週目(同:2.2と2.3)、3週目(同:2.2と2.0)に約2倍の増大が認められたブラジルの乳児においては初回接種後1~7日に有意なリスク増大は認められなかったが(同:1.1と1.4)、2回目接種後1~7日に、メキシコでの初回接種後ほどではなかったが、リスクの増大が認められた(同:2.6と1.9)。RV1接種に起因する両国合わせた腸重積の超過入院症例は年間96例(メキシコは約5.1万人に1人、ブラジルは約6.8万人に1人)、腸重積による超過死亡は年間5例だった。一方でRV1接種により、両国で入院は年間約8万例、下痢症状からの死亡は年間約1,300例が回避された。Patel氏は、「RV1と腸重積の短期リスクとの関連は、接種を受けた乳児の約5.1万~6.8万人に1人の割合で認められた。しかし、ワクチン接種により回避された死亡および入院の絶対数が、ワクチン接種と関連している可能性があった腸重積症例の数をはるかに上回った」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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医療訴訟件数、外来と入院でほぼ同等、過去5年で外来が増加:米国

米国で、医療訴訟(賠償金支払済み分)について外来と入院で比較したところ、2009年における件数は、ほぼ同等であることが明らかにされた。米国・コーネル大学医学部(Weill Cornell Medical College)公衆衛生部門のTara F. Bishop氏らが、2005~2009年のNational Practitioner Data Bankの記録を基に調べ明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月15日号で発表した。外来での医療訴訟の実態を分析することで、外来で重大イベントがどれぐらい、どの程度発生しているかを知り得るとして本研究を行ったという。2005年から2009年で、賠償金支払済み外来訴訟の件数が41.7%から43.1%へ研究グループは、入院および外来でのそれぞれの医療訴訟(賠償金支払済み)の件数、割合、種類ついて報告し比較を行った。後ろ向き解析にて、入院と外来での医療訴訟の傾向、特性、要因を、賠償金額と関連させながら評価した。結果、2009年に医師からの賠償金支払いが確認された医療訴訟件数は、全体で1万739件だった。そのうち、入院に関するものが4,910件(47.6%、95%信頼区間:46.6~48.5)、外来に関するものが4,448件(43.1%、同:42.1~44.0)、入院・外来両方へ行われたものが966件(9.4%、同:8.8~9.9)だった。賠償金が支払われた医療訴訟のうち、外来医療の占める割合は、2005年の41.7%から2009年の43.1%へと、わずかだが有意な増加傾向がみられた(p<0.001)。訴訟理由の筆頭、外来は診断ミス、入院は手術ミス訴訟の理由についてみたところ、外来で最も多かったのは診断に関するもので45.9%だったのに対し、入院では手術に関するものが最も多く34.1%だった。外来・入院ともに、医療ミスによるアウトカムで最も多かったのは、重篤な損傷と死亡だった。賠償金の平均支払い額は、入院36万2,965ドル(95%信頼区間:34万8,192~37万7,738ドル)に対し、外来が29万111ドル(同:27万8,289~30万1,934ドル)で、入院が有意に高額だった(p<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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脳卒中の2次予防におけるterutroban、アスピリンとの非劣性確認できず

虚血性脳卒中や一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴のある患者に対する抗血小板薬治療として、terutrobanはアスピリンと同等の有効性を示しながらも、非劣性基準は満たさないことが、フランス・パリ-ディドロ大学のMarie-Germaine Bousser氏らが行ったPERFORM試験で示され、Lancet誌2011年6月11日号(オンライン版2011年5月25日号)で報告された。同氏は、「現在でもアスピリンがgold standard」としている。脳卒中は世界的に身体障害、認知症、死亡の主要原因であり、虚血性脳卒中やTIAの既往歴のある患者は脳卒中の再発や他の心血管イベントのリスクが高い。terutrobanは、血小板や血管壁に存在するトロンボキサン-プロスタグランジン受容体の選択的な拮抗薬で経口投与が可能であり、動物やヒトでアスピリンと同等の抗血小板活性が確認されているという。世界46ヵ国802施設が参加、勧告により早期中止PERFORM(Prevention of cerebrovascular and cardiovascular Events of ischaemic origin with teRutroban in patients with a history oF ischaemic strOke or tRansient ischaeMic attack)試験は、非心原性脳虚血イベントの既往歴のある患者を対象に、terutrobanとアスピリンの脳および心血管の虚血性イベントの予防効果を比較する無作為化並行群間比較試験。2006年2月22日~2008年4月7日までに、46ヵ国802施設から過去3ヵ月以内に虚血性脳卒中を発症した患者、あるいは8日以内にTIAをきたした患者が登録され、terutroban(30mg/日)あるいはアスピリン(100mg/日)を投与する群に無作為に割り付けられた。患者と主治医には治療割り付け情報は知らされなかった。有効性に関する主要評価項目は、致死的/非致死的な虚血性脳卒中、致死的/非致死的な心筋梗塞、他の血管死(出血死を除く)の複合エンドポイントとした。非劣性の解析を行ったのち、優越性について解析することとし、intention-to-treat解析を実施した。なお、本試験はデータ監視委員会の勧告に基づき早期中止となっている。主要評価項目は同等だが、非劣性基準満たさず、安全性の改善も得られず1万9,120例が登録され、terutroban群に9,562例が、アスピリン群には9,558例が割り付けられた。それぞれ9,556例(男性63%、平均年齢67.2歳)、9,544例(同:62%、67.3歳)が解析可能であった。平均フォローアップ期間は28.3ヵ月(SD 7.7)であった。主要評価項目の発現率は、terutroban群が11%(1,091/9,556例)、アスピリン群も11%(1,062/9,544例)で、非劣性の判定基準(ハザード比>1.05)は満たされなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間:0.94~1.12)。2次評価項目(14項目)、3次評価項目(6項目)にも有意な差は認めなかった。小出血の頻度がterutroban群で有意に上昇した[12%(1,147/9,556例) vs. 11%(1,045/9,544例)、ハザード比:1.11、95%信頼区間:1.02~1.21]が、その他の安全性に関する評価項目に有意な差はみられなかった。著者は、「事前に規定された判定基準により、terutrobanのアスピリンに対する非劣性は確証されなかった。主要評価項目の発現率は両群で同等であったが、terutrobanは安全性についても改善効果をもたらさなかった」と結論し、「世界的にみて、有効性、耐用性、医療コストの観点から、現在もアスピリンは脳卒中の2次予防における抗血小板薬治療のgold standardである」と指摘している。(菅野守:医学ライター)

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C型肝炎治療法をテレビ会議システムでプライマリ・ケア従事者に訓練:ECHOモデル

米国・ニューメキシコ大学で開発されたECHOモデル(Extension for Community Healthcare Outcomes model)は、必要な医療サービスを十分に受けられず、C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者のような複合的な健康問題を抱える集団へのケア提供改善を目的として開発されたもので、テレビ会議システムを用いて、現地のプライマリ・ケア従事者に複合疾患の治療技術訓練プログラムを提供する。その効果について、これまでプライマリ・ケア従事者への訓練不足のため治療が行われてこなかったという農村地帯と刑務所をプログラム対象として検討した、同大内科部門のSanjeev Arora氏らによる前向きコホート研究の結果、ECHOモデルはHCV感染治療を効果的に行ううえで有効であることが示されたという。NEJM誌2011年6月9日号(オンライン版2011年6月1日号)で掲載された。大学HCVクリニックでの治療とECHOプログラム実施施設での治療の成果を比較C型肝炎感染については治療の進展、治癒率の改善が著しいが(HCV遺伝子型1感染患者45%、2および3は75%)、米国では治療を受けている慢性C型肝炎感染患者は少なく、処方数は2002年から2007年に34%減少したという。抗ウイルス薬の投与は重大な副作用と関連しており、多くの専門家による積極的な管理が必要だが、訓練不足のためプライマリ・ケア従事者による治療は行われていなかったことが背景にあり、ECHOモデルが開発された。Arora氏らによる試験は、ニューメキシコ大学HCVクリニックでの治療と、ECHOプログラムによる訓練を受けたプライマリ・ケア従事者がいる21ヵ所の農村地帯および刑務所での治療を比較し行われた。被験者は、これまで治療を受けたことがない慢性HCV感染患者合計407例で、ウイルスが持続的陰性であることを示すSVRを主要エンドポイントとした。SVR率、大学治療群57.5%、ECHO施設治療群が58.2%結果、SVR率は、大学治療群が57.5%(84/146例)、ECHO施設治療群が58.2%(152/261例)だった(群間差:0.7ポイント、95%信頼区間:-9.2~10.7、P=0.89)。またHCV遺伝子型1感染患者におけるSVR率は、大学治療群が45.8%(38/83例)、ECHO施設治療群が49.7%(73/147例)だった(P=0.57)。重大な有害事象の発生率は、大学治療群で13.7%、ECHO施設治療群では6.9%だった。Arora氏は「サービスが不十分な地域におけるHCV感染治療に、ECHOモデルは効果的な方法であることが示された。このモデルを実施することで、他の州や米国以外でも、現在可能な患者数よりも多くのHCV感染患者を治療することが可能となるであろう」と結論している。(武藤まき:医療ライター)

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卵巣がん検診、卵巣がん死亡を低下せず、偽陽性による過剰検査を誘導

卵巣がん検診は、卵巣がんによる死亡の低下に結びついておらず、むしろ偽陽性による過剰検査やそれによる有害事象の発生につながっていることが報告された。米国・ユタ大学健康科学センターのSaundra S. Buys氏らが行った無作為化比較対照試験の結果で、JAMA誌2011年6月8日号で発表した。本報告は、前立腺がん、肺がん、大腸がん、卵巣がんの検診有効性について行った試験「Prostate, Lung, Colorectal and Ovarian(PLCO)Cancer Screening Trial」の一環。これまで、腫瘍マーカーCA-125測定と経膣的超音波により行われる卵巣がん検診の、死亡リスクに対する効果は明らかになっていなかった。8万人弱を2群に分けCA-125・経膣的超音波で検診、中央値12年追跡Buys氏らは、1993年11月~2001年7月にかけて、55~74歳の女性7万8,216人を対象に試験を行った。被験者を無作為に2群に分け、一方の3万9,105人(検診群)は、年1回の腫瘍マーカーCA-125によるスクリーニングが6年間と、経膣的超音波による検査が4年間行われた。もう一方の3万9,111人(対照群)には、スクリーニングは実施されず、通常の医療的ケアが行われた。被験者は2010年2月末まで追跡された。追跡期間は最大で13年、中央値は12.4年だった。検診群の死亡リスク1.18倍、偽陽性で外科的フォローアップ受けた人の15%に重篤な有害事象結果、卵巣がんと診断を受けたのは、検診群が212人(1万人・年当たり5.7人)、対照群が176人(同4.7人)だった(リスク比:1.21、95%信頼区間:0.99~1.48)。卵巣がんによる死亡は、検診群が118人(同3.1人)で、対照群が100人(同2.6人)だった(死亡リスク比:1.18、95%信頼区間:0.82~1.71)。検診群における偽陽性は3,285人にみられた。そのうち1,080人が外科的フォローアップを受け、1つ以上の重篤な有害事象が163人(15%)に発生していた。なおその他の原因(卵巣がん、大腸がん、肺がんを除く)による死亡は、検診群が2,924人(1万人・年当たり76.6人)、対照群2,914人(同76.2人)だった(リスク比:1.01、95%信頼区間:0.96~1.06)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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小児がん生存者、40歳超で消化器と尿生殖器の新生物発症リスクが増大

15歳未満でがんの診断を受けた小児がん生存者が、40歳超で原発性新生物を発症するリスクは、消化器と尿生殖器で特に高いことが明らかにされた。また、全体の新生物発症に関する標準比罹患比(SIR)は3.9だった。英国・バーミンガム大学健康保健科学スクールのRaoul C. Reulen氏らが、小児がん生存者約1万8,000人について行ったコホート試験「British Childhood Cancer Survivor Study」で明らかにしたもので、JAMA誌2011年6月8日号で発表した。小児がん生存者が原発性新生物を発症するリスクが高いことは知られているが長期リスクについては明らかではなかった。中央値24年追跡、原発性新生物は1,354人に発症Reulen氏らは、1940~1991年にかけて、英国において15歳未満でがんの診断を受けた1万7,981人について、2006年12月まで追跡した。追跡期間の中央値は24.3年(平均25.6年)だった。その間、原発性新生物の発症が認められたのは1,354人だった。なかでも最も多かったのは中枢神経系(344人)で、次いで非黒色腫皮膚がん(278人)、消化器系(105人)、尿生殖器(100人)、乳がん(97人)、骨(94人)だった。すべての原発性新生物の標準比罹患比(SIR)は、3.9(95%信頼区間:3.6~4.2)、絶対超過リスク(AER)は1万人・年当たり16.8だった。40歳超の新生物発生に関する超過リスク、消化器5.9、尿生殖器6.0なかでも、40歳超で絶対超過リスクが大きかったのは、消化器と尿生殖器における原発性新生物で、AERは1万人・年当たりそれぞれ5.9(同:2.5~9.3)と6.0(同:2.3~9.6)だった。なお原発性新生物全体の絶対超過リスクのうち、消化器と尿生殖器が36%を占めた。また、腹部骨盤放射線照射を受けた小児がん生存者の、50歳までの大腸がんの累積発生率は1.4%(同:0.7~2.6)で、これは一親等親族の2人以上が大腸がんの診断を受けている人の1.2%と同程度だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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睡眠不足の小児、体脂肪量増加による過体重のリスク増大

睡眠時間が短い小児は過体重となるリスクが増大していることが、ニュージーランド・オタゴ大学のPhilippa J Carter氏らが行ったFLAME試験で示され、BMJ誌2011年6月4日号(オンライン版2011年5月26日号)で報告された。体重増加の原因としては、除脂肪体重の増加ではなく、むしろ脂肪蓄積の増大の影響が大きいという。子どもの睡眠不足が体重増加を招くとの指摘は多いが、最近の縦断的研究は睡眠時間や身体活動の客観的な反復測定を行っておらず、交絡変数の調整にもばらつきがみられるなどの限界があり、成長期の睡眠不足と体脂肪量、除脂肪量の変化の関連を評価した検討はないという。睡眠、身体活動、体脂肪量、除脂肪量を客観的に反復測定FLAME(Family Lifestyle, Activity, Movement and Eating)試験は、小児における睡眠時間の短縮と体格指数(BMI)、体脂肪量との関連の評価を目的に、反復測定に基づいて行われた縦断的研究である。ニュージーランド、ダニーデン市で、2001年7月19日~2002年1月19日までに出生した新生児コホートから選択基準を満たした413人が選出され、そのうち244人(59%)が参加した(女児44%、白人83%、3歳時の平均身長:95.5cm、平均体重:15.7kg、平均BMI:17.1)。3歳から7歳となるまで、6ヵ月ごとに大学のクリニックで診察を行った。BMI、生体電気インピーダンス法および二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)による体脂肪量、除脂肪量の測定、加速度測定法による身体活動と睡眠時間の測定、質問票を用いて食事の摂取状況(果物や野菜、非主要食品)、テレビ視聴時間、家族因子(母親のBMIや教育歴、出生時体重、妊娠中の喫煙)の測定を行った。睡眠1時間延長でBMIが0.48減少多数の交絡因子を調整したところ、3~5歳時に睡眠時間が1時間延長するごとにBMIが0.48(95%信頼区間:0.01~0.96)ずつ減少し、7歳時の過体重(BMI≧85パーセンタイル)リスクが0.39(同:0.24~0.63)ずつ低下することが示された。3歳時のBMIについてさらなる調整を行うと、これらの相関関係はいっそう強化された。このようなBMIの変化が生じる理由として、除脂肪量インデックス(-0.21、95%信頼区間:-0.41~0.00)よりも体脂肪量インデックス(-0.43、同:-0.82~-0.03)の変化の影響が大きかった。著者は、「睡眠が十分でない小児は、多数の交絡因子で調整後も過体重となるリスクが増大しており、その原因は男女とも、除脂肪体重の増加よりも、むしろ脂肪蓄積の増大によると考えられた」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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子宮頸がん集団検診でのDNA法、カットオフ値の増加は安全に女性の負担を有意に減らす

子宮頸がん集団検診でhybrid capture-2法を用いる場合、カットオフ値は≧1 rlu/co(relative light units/cut-off level)とされているが、それ以上の値(≧10 rlu/coまで)を用いた場合も感度は良好で、特異度に関しては高度子宮頸部上皮内腫瘍とは無関係の陽性を半減できることが示された。デンマーク・コペンハーゲン大学公衆衛生部門のMatejka Rebolj氏らが、システマティックレビューを行い報告したもので、「集団検診でのカットオフ値を上げてよいことが示された。検診を受ける女性にとっては安全で負担が有意に減る」とまとめている。hybrid capture-2法は、ヒトパピローマウイルス(HPV)-DNA法の一つ。細胞診では感度が低いとして英国など数ヵ国でDNA法の導入が検討されているという。BMJ誌2011年5月28日号(オンライン版2011年5月23日号)掲載より。hybrid capture-2法を検証した無作為化試験をシステマティックレビューRebolj氏らは、PubMedをデータソースとしてシステマティックレビューを行った。hybrid capture-2法を用いた子宮頸がん集団検診の無作為化試験論文を検索し、陽性者数やカットオフ値により子宮頸部上皮内腫瘍を有した人を階層化していた、2010年8月までに発行された論文を選んだ。本研究では、各試験の不均一性のためにメタ解析はできなかった。解析対象となったのは6試験、25のカットオフ値のデータで、解析されたカットオフ値は≧1 rlu/co、≧2 rlu/co、≧3 rlu/co、≧4 rlu/co、≧5 rlu/co、≧10 rlu/coについてだった。感度、最低でも≧2 rlu/coで0.97、≧10 rlu/coで0.91グレードIII以上の子宮頸部上皮内腫瘍に関する相対的感度は試験により異なったが、最低でもカットオフ値≧1 rlu/coとの比較で、≧2 rlu/coは0.97、≧4 rlu/co(または≧5 rlu/co)は0.92、≧10 rlu/coは0.91を示した。同様の傾向が、グレードII以上の感度についてもみられた。特異度は、最低でも≧2 rlu/coで1%、≧4 rlu/co(または≧5 rlu/co)で2%、≧10 rlu/coで3%の上昇を示し、最大ではそれぞれ24%、39%、53%まで上昇した。その結果、高度子宮頸部上皮内腫瘍とは無関係の陽性者の検出を回避することができた。この総体的パターンにおいてアウトライアーは2例だけだった。Rebolj氏は「≧2 rlu/co~≧10 rlu/coのカットオフ値を用いることで感度は低下するが、国際的に推奨されているグレードII以上の検出感度として90%以上が必要という基準を満たしており、特異度については≧1 rlu/coは高かった。このことはhybrid capture-2法のカットオフ値を集団検診において増やしてよいということを示すものであり、女性にとってはかなり安全で、有意に負担が減ることになる」と結論している。

9590.

脳卒中後の体重免可トレッドミルトレーニングはPT訪問リハビリより有効か

米国で脳卒中後リハビリテーションとして取り入れられるようになっている、体重支持吊り下げ装置付きトレッドミル運動機器を用いた歩行訓練(体重免可トレッドミルトレーニング:BWSTT)の有効性について、理学療法士(PT)による訪問リハビリでの漸進的エクササイズとの比較での無作為化試験が行われた。米国NIHから助成金を受け脳卒中後リハビリの有効性、時期、強度、期間について調査研究をしているデューク大学地域・家庭医学部門のPamela W. Duncan氏らLEAPS(Locomotor Experience Applied Post-Stroke)研究グループが行った。BWSTTは、パイロット試験や小規模臨床試験で効果が示唆されている程度だが商業ベースに乗り導入が増えており、早急な無作為化試験の実施が求められていたという。NEJM誌2011年5月26日号掲載より。早期BWSTT群、後期BWSTT群、訪問リハ群に割り付け評価研究グループは、以下を仮定し第3相単盲検無作為化試験を行った。(1)標準的理学療法に加えてのBWSTTは、早期提供(脳卒中後2ヵ月)あるいは後期提供(同6ヵ月)とも1年時点の歩行機能レベルの高い患者の割合が、PTにより脳卒中後2ヵ月に行われる漸進的強度・バランス運動による割合よりも多い。(2)BWSTTの早期実施は同後期実施よりも歩行速度を改善(なぜならパイロット試験で早期の回復程度が最も大きいと示されているから)し、6ヵ月時点までに申し分ないものとなる。被験者は、脳卒中後2ヵ月未満の408例(62.0±12.7歳、男性54.9%、4,909例を2回のスクリーニングで絞り込んだ)で、歩行障害の程度に応じて中等度(0.4~0.8m/秒歩行可能、53.4%)か重度(<0.4m/秒、46.6%)に階層化し、3つのトレーニング群(早期BWSTT群:139例、後期BWSTT群:143例、訪問リハ群:126例)のいずれかに無作為に割り付けた。各群介入は90分のセッションを週3回、36回(12~16週の間に)行われた。主要アウトカムは、各群の1年時点の歩行機能改善者の割合とした。歩行機能改善について3群で有意差なし、歩行速度など改善同程度1年時点で歩行機能が改善したのは、被験者全体では52.0%だった。早期BWSTT群と訪問リハ群の改善について有意差はなかった(補正後オッズ比:0.83、95%信頼区間:0.50~1.39)。後期BWSTT群と訪問リハ群についても有意差はなかった(同:1.19、0.72~1.99)。3群の、歩行速度、運動機能回復、バランス感覚、機能状態、QOLの改善は同程度だった。また、BWSTT介入が遅いことや、初期の歩行障害が重度であることは、1年時点のアウトカムに影響はなかった。関連する重篤有害事象は10件報告された(早期BWSTT群2.2%、後期BWSTT群3.5%、訪問リハ群1.6%)。軽度有害事象は、訪問リハ群と比較して両BWSTT群で介入期間中、めまいや失神の発生頻度が高かった(P=0.008)。また歩行障害が重度の被験者において複数回転倒する人が、早期BWSTT群で他の2群よりみられた(P=0.02)。研究グループは「BWSTTが、PT訪問リハでの漸進的エクササイズよりも優れていることは立証されなかった」と結論。「訪問リハのほうがリスクが小さく、適しているといえるかもしれない。また重度歩行障害者に早期BWSTTを行った場合の複数回転倒の割合が高いことは、これら患者には歩行機能改善に加えてバランス感覚を改善するプログラムを組み込むべきであることを示唆するものである」と報告をまとめている。(武藤まき:医療ライター)

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骨髄異形成症候群-相次ぐ新薬発売で治療が大きく変化

骨髄異形成症候群(MDS)は、高齢者に多く見られる疾患で、高齢者の人口増加に伴い有病率の増加が懸念されている。MDS治療において、治癒を期待できるのは造血幹細胞移植のみであるが、高齢者には難しく、有効な治療手段がない。このような状況のなか、昨年から今年にかけてMDS治療における新薬の発売が相次ぎ、治療方法が大きく変化しつつある。 ここでは、2011年5月31日、帝国ホテル(東京)にて開催されたプレスセミナー「今だからこそ正しく知りたい『血液がん』~MDSの事例から~」(主催:セルジーン株式会社)での埼玉医科大学総合医療センター血液内科 教授 木崎昌弘氏の講演から、MDSの最新の治療についてレポートする。増加するMDS患者現在、日本におけるMDS患者は約10,000 人と推定され、高齢者の人口増加に伴い患者数は増加している。患者数の増加について、木崎氏は「疾患に関する理解が広まり、血液内科へ紹介、診断されるケースが増えていることも理由の1つではないか」と述べた。MDSは、骨髄不全と前白血病状態という2つの側面を持つ疾患である。男女比は2:1で、高齢者に多く発症し、他のがんに対する化学療法や放射線療法の前治療歴もリスク因子に挙げられている。MDSのリスク分類と治療の現状MDSの治療方針は、MDSの病型、リスク分類に加え、症状、年齢、全身状態、患者の意向を考慮し決定される。リスク分類については、国際予後判定システム(IPSS)では「骨髄中の芽球の割合」「血球減少が何種類か」「染色体異常の種類」の3項目により判定するが、各リスク群における生存期間中央値と急性骨髄性白血病(AML)移行率は、低リスク:5.7年/19%、中間リスク-1:3.5年/30%、中間リスク-2:1.2年/33%、高リスク:0.4年/45%である。現在、MDS治療で治癒を期待できるのは同種造血幹細胞移植のみであるが、高リスク群あるいは頻回の輸血を必要とする場合に適応となり、一般的には55歳位までに限られている。日本における移植成績は欧米よりも良好であり、MDS全体での移植後長期生存率は約40%と比較的良好といえる。比較的若年者には、AML治療に準じた強力な化学療法が行われるが、一般的に奏効率は低い。相次ぐ新薬発売このような状況のなか、2010年、新たな治療薬としてレナリドミド(商品名:レブリミド)が承認された。レナリドミドは、5番染色体長腕部欠失を伴うMDSに対して有用性が認められており、海外第3相試験において、プラセボ群に比べて赤血球輸血非依存率を有意に増加させ、ヘモグロビン値を増加させることが示されている。また、5番染色体異常が正常になる例も認められたことから、木崎氏は疾患の本態を改善している可能性もあると述べた。さらに自験例として、レナリドミドの投与により、へモグロビン値が徐々に増加し、5番染色体異常が正常となった症例(68歳女性)の治療経過を提示した。さらに今年、メチル化阻害剤であるアザシチジン(商品名:ビダーザ)が発売された。アザシチジンは高リスクMDSにおいて高い有効性を示し、多施設国際共同第3相試験において、従来の治療群と比較して全生存期間(24.5ヵ月 vs 15ヵ月)、2年生存率(50.8% vs 26.2%)を有意に改善したことが報告されている。輸血依存による鉄過剰症の治療一方、MDS治療においては、輸血依存による鉄過剰症がしばしば問題となる。鉄過剰症はさまざまな臓器障害の原因となり、全生存率(OS)を低下させるが、過剰となった鉄分を除去する鉄キレート剤デフェラシロクス(商品名:エクジェイド)が2008年に発売されている。フランスでのプロスペクティブ調査では、赤血球輸血を実施するMDS患者において、デフェラシロクス投与によりOSを有意に改善したことが報告されている。新たな治療薬を含めたリスク別治療方針木崎氏は、米国NCCN(National Comprehensive Cancer Network)ガイドライン2011年v.2を基にしたリスク別治療方針を紹介した。低リスク群では輸血頻度の軽減やAMLへの移行をできるだけ少なくするために、造血因子やレナリドミド、アザシチジンを投与する。高リスク群では生存期間の延長をゴールとして、アザシチジンの投与やAMLに準じた化学療法、同種造血幹細胞移植を行う。残念ながら、治療失敗あるいは治療に反応しない場合には臨床試験に頼るしかないという現状である。患者さんとの向き合い方MDS患者には、どのように向かい合えばよいのか。木崎氏はMDS患者に対して、MDSにはさまざまな治療の選択肢があること、加えて、治りにくい病気であるが病態解明に関する研究の進歩とともに新しい薬剤の開発も盛んなので、主治医と相談して最適な治療法を選択するように伝えていると紹介した。(ケアネット 金沢 浩子)

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全用量投与不適な進行大腸がんへの減量化学療法、オキサリプラチン追加で予後が改善傾向

標準治療の全用量投与が適切でないと判定された進行大腸がんに対する減量投与では、フッ化ピリミジン系薬剤へのオキサリプラチン(L-OHP、商品名:エルプラット)の追加により、フッ化ピリミジン系薬剤単独に比べ無増悪生存期間(PFS)が延長する傾向を認めたことが、イギリス・リーズ大学のMatthew T Seymour氏らが行ったFOCUS2試験で示された。イギリスでは、進行大腸がんによる死亡の年齢中央値は77歳で、75歳以上の死因の60%、80歳以上の死因の42%が大腸がんだという。一方、重要な臨床試験では通常、対象は75歳未満に限られ、75歳以上や体力が減退した患者などに対する減量投与を検討した試験はほとんどない。Lancet誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月12日号)掲載の報告。減量投与の有用性を評価する2×2ファクトリアル・デザインの非盲検無作為化試験FOCUS2試験の研究グループは、標準的化学療法薬の全用量投与が適切でないと判定された未治療の進行大腸がん患者を対象に、減量投与に関する2×2ファクトリアル・デザインの非盲検無作為化試験を実施した。2004年1月~2006年7月までにイギリス国内61施設から登録された患者が、包括的健康評価(comprehensive health assessment:CHA)を受けた後、次の4つのレジメンに無作為に割り付けられた。患者の年齢は問わなかった。(1)FU群:LV5FU2レジメン(48時間静注フルオロウラシル[5-FU]/レボホリナート[l-LV])の標準用量の80%、(2)OxFU群:FOLFOXレジメン(L-OHP+5-FU/l-LV)の標準用量の80%、(3)Cap群:カペシタビン(Cap)の標準用量の80%、(4)OxCap群:XELOX(L-OHP+Cap)レジメンの標準用量の80%を投与。主要評価項目は、PFSに基づくL-OHP追加の有効性([FU群 vs. OxFU群]+[Cap群 vs. OxCap群])およびベースラインから12週までのQOLの変化に基づく5-FUの代替としてのCapの有効性とした([FU群 vs. Cap群]+[OxFU群 vs. OxCap群])。PFS:L-OHP追加群5.8ヵ月 vs. 非追加群4.5ヵ月、QOL改善率:5-FUレジメン56% vs. Capレジメン56%459例が登録され、FU群、OxFU群、Cap群には115例ずつ、OxCap群には114例が無作為に割り付けられた。L-OHPの追加によりPFSが改善される傾向が認められたが、有意差はなかった(L-OHP追加群:5.8ヵ月 vs. 非追加群:4.5ヵ月、ハザード比:0.84、95%信頼区間:0.69~1.01、p=0.07)。QOL改善率は5-FUを含むレジメンが56%(69/124例)、Capを含むレジメンも56%(69/123例)であった。グレード3以上の有害事象の発現リスクは、L-OHPを追加しても増加しなかった(38%[83/219例] vs. 32%[70/221例]、p=0.17)が、Capを含むレジメンは5-FUを含むレジメンよりも有意に高かった(40%[88/222例] vs. 30%[65/218例]、p=0.03)。著者は、「L-OHPを含むレジメンは、フッ化ピリミジン系薬剤の単独投与よりも予後が良好な傾向を認めたが、PFSの有意な改善は得られなかった。経口フッ化ピリミジン系薬であるCapは、5-FUに比べQOLを改善しなかった。ベースラインのCHAは治療効果の客観的予測因子として有望と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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ピルフェニドン、特発性肺線維症の肺機能低下の抑制効果が明らかに

ピルフェニドン(商品名:ピレスパ)は、特発性肺線維症患者の肺機能低下を抑制し、適切な治療選択肢であることを示唆するデータが、米国・デューク大学のPaul W Noble氏らが実施したCAPACITY試験で示された。特発性肺線維症は進行性、致死性の肺疾患で、肺機能の喪失は不可避的だという。抗線維化/抗炎症薬であるピルフェニドンは経口投与が可能な合成分子で、形質転換増殖因子(TGF)βや腫瘍壊死因子(TNF)αの活性を調整することがin vitroで示され、肺線維症の動物モデルでは線維芽細胞の増殖やコラーゲンの合成を阻害し、線維化の細胞組織学的マーカーを低下させることが明らかにされている。Lancet誌2011年5月21日号(オンライン版2011年5月14日号)掲載の報告。ピルフェニドンの有効性を評価する2つの無作為化プラセボ対照第II相試験CAPACITY試験の研究グループは、ピルフェニドンの特発性肺線維症における肺機能低下の抑制効果を検討する2つの無作為化プラセボ対照第II相試験(004、006)を行った。004と006試験には、オーストラリア、ヨーロッパ、北米の13ヵ国110施設から40~80歳の特発性肺線維症患者が登録され、ピルフェニドン群あるいはプラセボ群に無作為に割り付けられ、72週以上の治療が行われた。004試験ではピルフェニドン2,403mg/日、1,197mg/日、プラセボを投与する群に2:1:2の割合で、006試験ではピルフェニドン2,403mg/日、プラセボを投与する群に1:1の割合で患者が割り付けられた。2,403mg群は801mgを、1,197mg群は399mgを1日3回経口投与した。主要評価項目は、72週における努力性肺活量(FVC)の変化率(%)とし、intention-to-treat解析を行った。004試験で、FVCの低下が有意に抑制004試験には435例が登録され、ピルフェニドン2,403mg群に174例が、1,197mg群に87例が、プラセボ群には174例が割り付けられた。006試験の344例のうち2,403mg群に171例が、プラセボ群には173例が割り付けられた。004試験では、ピルフェニドンによる有意なFVCの改善効果が認められた(p=0.001)。すなわち、72週におけるFVCの平均変化率は2,403mg群が-8.0%、プラセボ群は-12.4%であり、ピルフェニドンにより4.4%のFVC低下の抑制効果が得られた。1,197mg群のFVCの平均変化率は、2,403mg群とプラセボ群の中間であった。006試験では、両群で72週時のFVCの変化率に差を認めなかった(p=0.501)。すなわち、FVCの平均変化率は2,403mg群が-9.0%、プラセボ群は-9.6%であった。しかし、48週までは明らかなピルフェニドンによるFVC低下の抑制効果が認められた(p=0.005)。ピルフェニドン2,403mg群では、プラセボ群に比べ悪心(36% vs. 17%)、消化不良(19% vs. 7%)、嘔吐(14% vs. 4%)、食欲不振(11% vs. 4%)、光過敏症(12% vs. 2%)、皮疹(32% vs. 12%)、眩暈(18% vs. 10%)の頻度が高かったが、全死亡(6% vs. 8%)および特発性肺線維症関連死(3% vs. 7%)は少なかった。著者は、「ピルフェニドンはベネフィット/リスクのプロフィールが良好であり、特発性肺線維症の適切な治療選択肢と考えられる」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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加齢黄斑変性症に対するラニビズマブvs. bevacizumab:CATT

滲出型加齢黄斑変性症(AMD)に対する、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬のラニビズマブ(商品名:ルセンティス)とbevacizumabの有効性および安全性について検討した、多施設共同単盲検非劣性無作為化試験「CATT」の結果が発表された。ラニビズマブは臨床試験により滲出型AMDに対する有効性が認められる承認薬である。一方、bevacizumab(商品名:アバスチン、抗悪性腫瘍薬としてのみ承認)はAMDに対しては未承認で大規模臨床試験データもないが、ラニビズマブ同様VEGFをターゲットとすること、また投与コストがラニビズマブよりも安価であること(1回投与につきラニビズマブ約2,000ドル、bevacizumab約50ドル)から、ラニビズマブのFDA承認待ちの間に眼科医たちが適応外使用を始め、米国ではAMD治療薬として最も一般的に用いられるようになっているという。NEJM誌2011年5月19日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載報告より。ラニビズマブとbevacizumabは同等CATT(Comparison of Age-Related Macular Degeneration Treatments Trials)は、ラニビズマブとbevacizumabの有効性および安全性を評価すること、また「必要に応じて投与」が「月1回投与」と比べて長期的視力を損なうかどうかの検討を目的に行われた。2008年2月から2009年12月の間に米国内44のクリニックから登録された患者1,208例(50歳以上、未治療の滲出型AMDを片眼以上有する、電子視力検査による視力が20/25~20/320)を対象とした。被験者は無作為に、ラニビズマブかbevacizumabを硝子体内注射される群に、また月1回投与か月1回の評価で必要に応じて投与する群に割り付けられた。主要アウトカムは、1年時点の視力変化の平均とした。非劣性の範囲は、視力表5文字とした。結果、1年時点の視力変化の平均は、月1回投与bevacizumab群8.0文字増、同ラニビズマブ群8.5文字増で、両群は同等であることが認められた。必要に応じて投与bevacizumab群(5.9文字増)、同ラニビズマブ群(6.8文字増)も同等であることが認められた。また、ラニビズマブは投与法が異なっても(月1回投与か必要に応じて投与)、同等であることが認められたが、bevacizumab群については確証が得られなかった。中心窩網膜厚減少の平均は、月1回投与ラニビズマブ群196μmで、他の群(必要に応じて投与ラニビズマブ群168μm、月1回投与bevacizumab群164μm、必要に応じて投与bevacizumab群152μm)より大きかった(分散分析によるP=0.03)。入院リスク、bevacizumab群がラニビズマブ群の1.29倍だがさらなる検証が必要死亡、心筋梗塞、脳卒中の発生率は、bevacizumab群とラニビズマブ群で同程度であった(P>0.20)。一方で、重篤な全身有害事象(主に入院)リスクが、ラニビズマブ群よりもbevacizumab群でより高かった[発生率:bevacizumab群24.1%、ラニビズマブ群19.0%、リスク比:1.29(95%信頼区間:1.01~1.66)]。それらの多発したイベントは、先行研究のがんトライアルではみられなかった疾患カテゴリーにまで多岐にわたっていた。以上を踏まえCATT研究グループは、「1年時点で、ラニビズマブとbevacizumabの視力に対する効果は、投与スケジュールが同じ場合、同等であった。ラニビズマブの視力に対する効果は、月1回の評価で必要に応じて投与する群と月1回投与群で同等だった」と結論。重篤な有害事象発生率の差異については、偶然である可能性、病歴や多変量モデルに基線の健康状態が含まれなかったことなどが考えられ、より多くの症例数による「さらなる検討が必要」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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軽症バセドウ病、セレン投与で進行抑制、QOL改善

 日本ではバセドウ病と称されるグレーブス病眼症(GO)の軽症患者に対する治療として、健康栄養素セレンの投与が、QOL改善、眼症減少、GO進行抑制に寄与することが報告された。欧州グレーブス病眼症グループ(EUGOGO)を代表してイタリア・ピサ大学内分泌・代謝学部門のClaudio Marcocci氏らが、同グループに参加する4ヵ国6施設の患者を対象に二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行った結果による。軽症GO患者には症状が悪化するまで積極的な治療を行わないが、QOLの低下が問題視されていた。Marcocci氏らはGOの発症機序から、抗酸化作用を有するセレンと、抗炎症作用や種々の免疫調整作用を有するペントキシフィリンの可能性に着目。ペントキシフィリンが小規模パイロット試験でGO患者にベネフィットがあることが示唆されたことを踏まえ、本検討を行った。NEJM誌2011年5月19日号掲載報告より。セレン、ペントキシフィリン、プラセボで二重盲検無作為化試験 試験は2005年1月~2009年1月、イタリアとドイツ各2施設、スイスとギリシャ各1施設の計6施設で、軽症GO患者159例を対象に行われた。 被験者は無作為に、セレン投与群(セレンサプリメント、100μgを1日2回、54例)、ペントキシフィリン投与群(Trental、600mgを1日2回、48例)、プラセボ投与群(1日2回、50例)に割り付けられ6ヵ月間にわたる経口投与を受け、投与を中止した後6ヵ月間追跡された。 主要アウトカムは、6ヵ月時点での、治療割り付けを知らされていない眼科医による眼の全般的評価と、患者によるGO特異的QOL質問票による評価とした。またCAS(Clinical Activity Score)と複視スコアを副次的アウトカムとした。セレン群、プラセボとの比較でQOL改善、眼症減少、GO進行抑制 6ヵ月時点の評価でプラセボと比較して、セレン投与群は、QOLが改善(P<0.001)、眼症状がより少なく(P=0.01)、GO進行の抑制(P=0.01)が認められた。一方、ペントキシフィリン投与群ではいずれも認められなかった。 CASは3群とも低下が認められたが、セレン投与群での変化(平均3.5)が有意に大きかった。ペントキシフィリン投与群とプラセボ群の低下は有意差が認められなかった(平均3.0)。 これらの結果は、12ヵ月時点の探索的評価においても確認された。 なお、プラセボ群2例とペントキシフィリン投与群1例の患者で、病態悪化による免疫抑制療法が必要となった。有害事象は、セレン投与群ではそれとわかる事象が認められなかったが、ペントキシフィリン投与群では高頻度の胃腸症状が認められた。

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安定狭心症患者へのPCI前と退院時の至適薬物治療実施率、COURAGE試験発表後も微増にとどまる

COURAGE試験では、安定狭心症患者に対する、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施前の至適薬物治療(OMT)の妥当性を示したが、同試験発表前後のPCI前・退院時のOMT実施率を比べた結果、微増にとどまっていたことが明らかになった。米国・コーネル大学Weill Cornell医学校のWilliam B. Borden氏らが、47万人弱の安定冠動脈疾患患者を対象に行った観察研究の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年5月11日号で発表した。被験者全体のPCI前OMT実施率は44.2%、退院時実施率は65.0%同研究グループは、2005年9月から2009年6月にかけて、PCIを実施した安定冠動脈疾患患者、46万7,211人について観察研究を行った。主要評価項目は、COURAGE(Clinical Outcomes Utilizing Revascularization and Aggressive Drug Evaluation)試験発表前後の、PCI前と退院時のOMT実施率だった。なおCOURAGE試験は、安定冠動脈疾患患者を対象に、OMTのみと、OMTとPCIの併用について、その臨床アウトカムを比較した無作為化試験。同試験の結果から、生存率や心筋梗塞発症率に両群で有意差が認められず、すなわちPCI前の積極的なOMTの妥当性が示されていた。今回のBorden氏らによる試験の結果、被験者全体でPCI前のOMT実施率は44.2%(95%信頼区間:44.1~44.4)、退院時のOMT実施率は65.0%(同:64.9~65.2)だった(p<0.001)。PCI前OMT実施率は1.2ポイント増、退院時実施率は2.5ポイント増COURAGE試験の前後で比較してみると、同試験発表前の被験者17万3,416人のうち、PCI前にOMTを実施していたのは7万5,381人(43.5%、同:43.2~43.7)だったのに対し、同試験発表後の被験者29万3,795人中では13万1,188人(44.7%、同:44.5~44.8)であり、1.2ポイント増だった(p<0.001)。またPCI後の退院時OMT実施率も、COURAGE試験前63.5%(同:63.3~63.7)に対し、同試験後は66.0%(同:65.8~66.1)で、2.5ポイント増(p<0.001)と変化は微増だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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高齢患者におけるレボチロキシン用量と骨折リスクとの関連

甲状腺ホルモン製剤レボチロキシン(商品名:レボチロキシンナトリウム、チラーヂン)で治療中の高齢患者は、以前に使用経験のある患者よりも骨折リスクが高く、高~中用量群の患者は低用量群に比べてリスクが上昇していることが、カナダ・トロント大学のMarci R Turner氏らの調査で示された。甲状腺機能低下症で長期にレボチロキシン投与中の高齢患者の中には、過剰治療の状態にある者がおり、これらの患者は医原性の甲状腺機能亢進症を来す可能性があるという。また、高用量のレボチロキシンや無症候性甲状腺機能亢進症によって骨密度が低下し、転倒や骨折のリスクが上昇することが示唆されている。BMJ誌2011年5月7日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載の報告。レボチロキシン使用による骨折リスクを評価するコホート内症例対照試験研究グループは、レボチロキシンの用量が高齢者の骨折リスクに及ぼす影響を評価するコホート内症例対照試験(nested case-control study)を実施した。2002年4月1日~2007年3月31日までにレボチロキシンを処方された70歳以上の高齢患者について、2008年3月31日まで骨折のフォローアップが行われた。この間に骨折で入院した患者コホートを、骨折を起こしていないコホートから選ばれた最大5人の対照とマッチさせた。主要評価項目は、レボチロキシン使用(現在使用中、最近まで使用、以前に使用)による骨折(手首/前腕、肩/上腕、胸椎、腰椎/骨盤、股関節/大腿骨、下肢/足関節)とした。レボチロキシン使用中の群は、骨折前年の用量(高[>0.093mg/日]、中[0.044~0.093mg/日]、低[<0.044mg/日])で比較した。高~中用量群の骨折リスクは低用量群の2~3倍にレボチロキシン使用者21万3,511人(平均年齢82歳)のうち、平均フォローアップ期間3.8年の時点で2万2,236人(10.4%)が骨折を起こし、そのうち1万8,108人(88%)が女性であった。現在使用中の患者は2万514人(92.3%)で、このうち高用量群が6,521人(31.8%)、中用量群が1万907人(53.2%)、低用量群は3,071人(15.0%)であった。多数のリスク因子で調整しても、以前に使用経験のある者に比べ、最近まで使用していた者は骨折リスクが有意に高かった(調整オッズ比:1.88、95%信頼区間:1.71~2.05)。現在使用中の患者では、高用量および中用量の群は、低用量群に比べ骨折リスクが有意に上昇していた(それぞれ、調整オッズ比:3.45、95%信頼区間:3.27~3.65、同:2.62、2.50~2.76)。著者は、「現在レボチロキシン治療中の70歳以上の高齢患者では、強い用量-反応関係をもって骨折リスクが上昇していた」と結論し、「過剰治療を回避するには、治療中の用量のモニタリングが重要」と指摘する。(菅野守:医学ライター)

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非保護左冠動脈主幹部狭窄症患者に対するPCI vs. CABG

 韓国・峨山病院心臓研究所のSeung-Jung Park氏らによる、非保護左冠動脈主幹部狭窄症患者を対象とした無作為化試験の結果、シロリムス溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の重大心臓・脳血管イベント発生に関して、冠動脈バイパス術(CABG)に対する非劣性が証明されたとの報告が発表された。ただし「設定した非劣性マージンが広く、臨床への指示的な結果とみなすことはできないものである」と補足している。本試験「PRECOMBAT」は、非保護左冠動脈主幹部狭窄症へのPCIが徐々に増えているが、CABGも治療の選択肢とみなされるのではないかとして行われた。NEJM誌2011年5月5日号(オンライン版2011年4月4日)掲載より。600例の被験者を無作為化、PCIの非劣性マージンは絶対差7ポイントと設定 PRECOMBAT試験は、韓国厚生省委託のもと13施設で行われた前向き非盲検無作為化試験。18歳以上の安定狭心症、不安定狭心症、無症候性心筋虚血または非ST上昇型心筋梗塞の診断を受け、新規に50%以上の非保護左冠動脈主幹部狭窄症が認められた患者が適格とされた。 2004年4月~2009年8月の間に登録された1,454例のうち600例の被験者が無作為に、シロリムス溶出ステントを用いたPCI群(300例)かCABG群(300例)に割り付けられた。 主要エンドポイントは、1年時点の重大有害心臓・脳血管イベントの複合(全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中と虚血性標的血管血行再建)とし、副次エンドポイントは、主要エンドポイント項目(死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合)とステント血栓症とした。 非劣性マージンは、1年時点の重大有害心臓・脳血管イベントのCABG群発生は13%とみなし絶対差7ポイントまでとした。 解析は、1年時点のイベント発生率が予想を下回ったので2年時点の比較も行われた。1年時点絶対差2.0ポイント、2年時点でもPCIの非劣性が認められたが…… 結果、主要エンドポイントは、PCI群26例(累積発生率8.7%)、CABG群(6.7%)でリスクの絶対差は2.0ポイント(95%信頼区間:-1.6~5.6、非劣性P=0.01)だった。 2年時点の主要エンドポイント発生は、PCI群36例(12.2%)、CABG群24例(8.1%)で、PCI群のハザード比は1.50(95%信頼区間:0.90~2.52、P=0.12)だった。また、2年時点の死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合発生は、PCI群13例(4.4%)、CABG群14例(4.7%)、PCI群のハザード比は0.92(95%信頼区間:0.43~1.96、P=0.83)であり、虚血性標的血管血行再建は、PCI群26例(9.0%)、CABG群12例(4.2%)、PCI群のハザード比2.18(95%信頼区間:1.10~4.32、P=0.02)だった。 Park氏は「PCIのCABGに対する非劣性が示された。しかし非劣性マージンが広く、臨床への指示的な結果とみなすことはできない」と結論している。

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STEMI患者、エビデンス治療の導入率増加に伴い死亡率低下

1996~2007年にかけて、ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)患者に対するエビデンスに基づく治療の導入率が上がるに従い、院内死亡率や30日・1年死亡率が低下していたことが明らかにされた。スウェーデン・カロリンスカ大学病院循環器部門のTomas Jernberg氏らが、同期間にSTEMIの診断を受け治療・転帰などを追跡された「RIKS-HIA」研究登録患者6万人超について調査し明らかにしたもので、JAMA誌2011年4月27日号で発表した。エビデンスベースやガイドライン推奨の新しい治療の実施状況や実生活レベルへの回復生存との関連についての情報は限られている。再灌流、PCI、血行再建術の実施率、いずれも増大研究グループは、1つの国で12年間以上追跡された連続患者の新しい治療導入率と短期・長期生存との関連を明らかにすることを目的に、1996~2007年にかけて、スウェーデンの病院で初めてSTEMIの診断を受け、基線特徴、治療、アウトカムについて記録された「RIKS-HIA(Register of Information and Knowledge about Swedish Heart Intensive Care Admission)」の参加者6万1,238人について、薬物療法、侵襲性処置、死亡の割合を推定し評価した。被験者の年齢中央値は、1996~1997年の71歳から、2006~2007年の69歳へと徐々に若年化していた。男女比は試験期間中を通じて有意な変化はなく、女性が34~35%であった。エビデンスベースの治療導入率は、再灌流が66%から79%へ、プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PCI)が12%から61%へ、血行再建術は10%から84%へと、いずれも有意に増加した(いずれもp<0.001)。スタチンやACEなどの薬剤投与率も増大、死亡率は院内・30日・1年ともに低下薬剤投与についても、アスピリン、クロピドグレル、β遮断薬、スタチン、ACE阻害薬の投与率がいずれも増加していた。具体的には、クロピドグレルは0%から82%へ、スタチンは23%から83%へ、ACE阻害薬もしくはARBは39%から69%へと、それぞれ投与率が増加した(いずれもp<0.001)。同期間の推定死亡率についてみてみると、院内死亡率は12.5%から7.2%へ、30日死亡率は15.0%から8.6%へ、1年死亡率は21.0%から13.3%へと、それぞれ有意な低下が認められた(いずれもp<0.001)。補正後、長期にわたる標準死亡率の一貫した低下傾向も認められ、12年生存解析の結果、死亡率は経年的に低下していることが確認された。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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3年ごとの前立腺がん検診、前立腺がん死を抑制せず:スウェーデンの20年追跡調査

3年ごとに4回の前立腺がん検診を行い、20年に及ぶ長期のフォローアップを実施した結果、検診群の前立腺がん死亡率は対照群と差がないことが、スウェーデンKarolinska研究所のGabriel Sandblom氏らの調査で明らかとなった。北欧では、最近、前立腺がん治療においては待機療法(watchful waiting)よりも根治的前立腺全摘除術の予後が良好なことが示され、特に前立腺特異抗原(PSA)検査による早期発見に関する議論が活発化している。早期発見を目的とする検診の短期的なベネフィットについては、前立腺がん死の抑制効果が示唆される一方で、過剰診断や過剰治療のリスクが増大するなど、これを疑問視する知見が得られているが、長期的なフォローアップを行った試験はないという。BMJ誌2011年4月23日号(オンライン版2011年3月31日号)掲載の報告。1987年に50~69歳の約1,500人を3年ごとに4回スクリーニング、2008年まで追跡研究グループは、前立腺がんの対策型検診(population-based screening)による前立腺がん死の抑制効果を検討する地域住民ベースの無作為化対照比較試験を実施した。対象は、1987年にスウェーデンのノーショーピング市に居住していた50~69歳の男性9,026人。このうち生年月日リストから6人ごとに選ばれた1,494人が検診群に割り付けられ、1987~1996年まで3年ごとに前立腺がん検診を受けるよう勧められた。残りの7,532人は非検診群(対照群)としてフォローアップが行われた。試験開始時はPSA検査導入前であったため、2回目の検診までは直腸指診のみが行われ、1993年以降はPSA検査が併用された(カットオフ値:4μg/L)。4回目の検診(1996年)は、この時点で69歳以下の男性(1927~37年生まれ)のみが受診を勧められた。スウェーデン南東地域の前立腺がん登録から腫瘍の病期、悪性度、治療のデータを収集し、2008年12月31日までの前立腺がんによる死亡率を算出した。前立腺がん診断率:5.7% vs. 3.9%、前立腺がん特異的死亡率:35% vs. 45%1987~1996年の4回の検診受診率は、第1回(1987年)が78%(1,161/1,492人)、第2回(1990年)が70%(957/1,363人)、第3回(1993年)が74%(895/1,210人)、第4回(1996年)は74%(446/606人)であった。前立腺がんと診断されたのは、検診群が5.7%(85/1,494人)、対照群は3.9%(292/7,532人)であった。検診群の前立腺がん患者のうち、検診で発見されたのは43人(2.9%)、検診と検診の間にみつかった中間期がん(interval cancer)は42人(2.58%)であった。前立腺がん診断例の前立腺がん特異的死亡率は検診群が35%(30/85人)、対照群は45%(130/292人)であり、前立腺がん死以外の死亡も含む全体の死亡率はそれぞれ81%(69/85人)、86%(252/292人)であった。前立腺がん特異的生存期間は、検診群201ヵ月、対照群133ヵ月であった。前立腺がん死のリスク比は1.16(95%信頼区間:0.78~1.73)であり、有意な差は認めなかった。Kaplan-Meier法による解析では、前立腺がん診断例の前立腺がん特異的死亡率および全体の死亡率は、検診群と対照群で同等であった(log-rank検定:それぞれ、p=0.065、p=0.14)。Cox比例ハザード解析によるハザード比は1.23(同:0.94~1.62、p=0.13)であり有意差はみられなかったが、試験開始時年齢で調整したハザード比は1.58(同:1.06~2.36、p=0.024)と有意な差が認められた。著者は、「フォローアップ期間20年における検診群と対照群の男性の前立腺がんによる死亡率に有意な差は認めなかった」と結論し、「任意型検診(opportunistic screening)がほとんど行われていない集団を対象とした無作為化対照比較試験において、検診群で前立腺がんが多くみつかり、患者は両群とも同じ施設で管理されたにもかかわらず、前立腺がん死亡率に差を認めなかったことは、検診によって、死亡率に影響を及ぼさない進行の遅い腫瘍が多く発見されたと考えられ、過剰診断や過剰治療の可能性が示唆される」「本試験は、明確な結論を提示するには集団の規模が十分とはいえないが、前立腺がん特異的死亡率の差を示すには十分な検出能を持つと考えられる」と考察している。(菅野守:医学ライター)

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