ロタウイルス単価ワクチン「RV1」のリスク・ベネフィット

提供元:ケアネット

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公開日:2011/06/29

 



現在、WHOにより世界的に推奨使用されているロタウイルス単価ワクチン「RV1」について、米国疾病予防管理センター(CDC)のManish M. Patel氏らが、ブラジル、メキシコ両国での乳児への接種後の腸重積発症について評価した結果、短期リスクは約5.1万~6.8万人に1人の割合で認められたものの、ワクチン接種によるリスクよりもベネフィットがはるかに上回ると結論する報告をNEJM誌2011年6月16日号で発表した。ロタウイルスワクチンは、初期の「Rotashield」では初回接種後3~7日でリスクが最大に達し(約37倍)、約1万人に1人の割合で腸重積が認められたため1999年に市場から回収された。その後開発されたのが次世代ワクチン「RV1」や「RV5」(5価ウシ-ヒト組み替えワクチン)で、いずれも6万児以上を対象とした臨床試験を経て、「RV1」は接種後30日間、「RV5」は同42日間の腸重積リスクの上昇がみられなかったことから、世界的に推奨ワクチンとして使用されている。「RV1」接種は、ブラジルでは2006年3月に、メキシコでは2007年5月に、全国的な小児期予防接種プログラムに導入され、両国で600万例以上の乳児に接種されている。

全国接種が導入されているメキシコとブラジルで症例集積および症例対照研究




Patel氏らは、症例集積(case-series)および症例対照(case-control)の手法にて、RV1と腸重積との関連を評価した。

2008年8月~2010年8月にかけて両国合わせて69の評価対象施設(メキシコ:10地域から16施設、ブラジル:7地域から53施設)で腸重積を有した乳児を特定し、対照群は年齢をマッチさせた乳児を近隣施設から登録した。ワクチン接種日は、接種カードまたはクリニックの記録を再調査し確認された。

主要リスク観察期間は、接種後1~7日とされたが、8~14日(2週目)、15~21日(3週目)の期間もリスク評価がされた。

結果、症例群に登録された腸重積を有した乳児は615例(メキシコ285例、ブラジル330例)だった。対照群には2,050例が登録された。

年間超過入院96例、死亡5例に対し、年間入院8万例、死亡1,300例回避




分析の結果、メキシコの乳児において、RV1の初回接種後1~7日に有意な腸重積リスクの増大が認められた。症例集積法における発生率比は5.3(95%信頼区間:3.0~9.3)、症例対照法におけるオッズ比は5.8(同:2.6~13.0)だった。なお、2回目接種後1~7日のリスク上昇はみられなかったが(症例集積法と症例対照法の各比1.8と1.1)、2週目(同:2.2と2.3)、3週目(同:2.2と2.0)に約2倍の増大が認められた

ブラジルの乳児においては初回接種後1~7日に有意なリスク増大は認められなかったが(同:1.1と1.4)、2回目接種後1~7日に、メキシコでの初回接種後ほどではなかったが、リスクの増大が認められた(同:2.6と1.9)。

RV1接種に起因する両国合わせた腸重積の超過入院症例は年間96例(メキシコは約5.1万人に1人、ブラジルは約6.8万人に1人)、腸重積による超過死亡は年間5例だった。一方でRV1接種により、両国で入院は年間約8万例、下痢症状からの死亡は年間約1,300例が回避された。

Patel氏は、「RV1と腸重積の短期リスクとの関連は、接種を受けた乳児の約5.1万~6.8万人に1人の割合で認められた。しかし、ワクチン接種により回避された死亡および入院の絶対数が、ワクチン接種と関連している可能性があった腸重積症例の数をはるかに上回った」と結論している。

(武藤まき:医療ライター)