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米国でピーナッツバターが原因の集団食中毒を契機に、国内外に強制力を持つ食品安全システムが始動

米国CDC人畜共通感染症センターのElizabeth Cavallaro氏らは、2008年11月以降に全米各地で報告されたサルモネラ菌食中毒について、調査の結果、1ブランドのピーナッツバターとそれを原料としたピーナッツ製品の摂取が原因であり、3,918製品が回収されたことを報告した。報告によると、米国ではこの食中毒発生を契機に食品安全システムへの議論が再浮上、2009年3月に食品汚染事案を24時間以内に報告するFDA’s Reportable Food Registryが始動し、2011年1月4日のFood Safety Modernization Act制定により、FDAが国内外の食品供給元に対し、回収および安全計画提出を命じることができるようになったという。NEJM誌2011年8月18日号より。トレースバック調査と摂取環境調査にて、1企業のピーナッツバターが特定研究グループは、2008年9月1日から2009年4月20日の間にネズミチフス菌(Salmonella Typhimurium)集団発生株への感染が検査で確認された食中毒報告例を症例と定義。マッチ対照群とによる2つの症例対照研究(研究1:摂取製品のトレースバック調査、研究2:摂取環境調査)を行った。全米46州で同定された症例患者は714例、そのうち入院が166例(23%)、死亡が9例(1%)だった。研究1(症例群65例、対照群174例)の結果、疾患との関連が認められたのは、何らかのピーナッツバターを摂取(一致オッズ比:2.5、95%信頼区間:1.3~5.3)、ピーナッツバターを含んだ製品を摂取(同:2.2、1.1~4.7)だった。冷凍チキン製品の摂取も関連が認められたが(同:4.6、1.7~14.7)特定製品を食べたわけではなかった。一方でピーナッツバターについては、9企業に関連した限局的集団発生と単発症例の調査から、これら企業に供給していたピーナッツバター1企業のブランド製品(ここではブランドXと呼ぶ)が特定された。研究2(症例群95例、対照群362例)では、外出先でのピーナッツバター摂取(一致オッズ比:3.9、95%信頼区間:1.6~10.0)、2つのブランドのピーナッツバター・クラッカーを摂取(ブランドAの一致オッズ比:17.2、95%信頼区間:6.9~51.5、ブランドB:3.6、1.3~9.8)と疾患との関連が明らかになった。そして2つのブランドのクラッカーはいずれもブランドXのピーナッツペーストから作られていた。食品安全システムの今後は、予算確保と関係当事者の継続的な協力次第結果として集団発生株は、ブランドXのピーナッツバター、ブランドAのクラッカー、その他15の製品から分離され、2009年1月10日から4月29日までの間に合計3,918のピーナッツバター含有製品がリコールされた。研究グループは、「汚染されたピーナッツバターとそのピーナッツ製品が全国規模のサルモネラ症集団発生を引き起こした。成分由来の集団発生は検出が難しく、多数の食品を広範にわたって汚染する可能性がある」と警告。この事案を契機に食品安全システムが強化されたことを報告したうえで、最後に「システム成功のカギは十分な予算確保と、規制当局と州、保健担当者、企業担当者との継続的な協力による」とまとめている。(朝田哲明:医療ライター)

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ICU重症成人患者への静脈栄養法は8日目以降開始のほうがアウトカム良好

重症疾患でICUに入室となった成人患者への静脈栄養法の開始は、早期開始(48時間以内)するよりも後期開始(8日目以降)のほうが、回復が早く合併症が少ないことが明らかにされた。ベルギー・ルヴェン大学病院集中ケア内科学のMichael P. Casaer氏ら研究グループが行った4,640例を対象とする多施設共同無作為化試験の結果による。重症疾患は、摂食障害を来し重度の栄養障害、筋消耗、虚弱をもたらし回復を遅らせるため栄養療法が開始されるが、アウトカム改善については明らかになっていなかった。Casaer氏らは、投与ルート、タイミング、目標カロリー、栄養療法のタイプに着目し、特に議論となっている経腸栄養法単独では目標カロリーが達成できないICU重症成人患者への静脈栄養法開始のタイミングについて試験を行った。NEJM誌2011年8月11日号(オンライン版2011年6月29日号)掲載報告より。静脈栄養法開始について早期開始群と後期開始群とに無作為化し検討試験は、2007年8月1日~2010年11月8日の間にベルギー国内7つのICUから登録された、経腸栄養法では栄養不十分(栄養リスクスコア7段階で3以上)のICU成人患者4,640例を対象とし、静脈栄養法の早期開始(ヨーロッパのガイドラインに基づく)と後期開始(米国・カナダのガイドラインに基づく)とについて比較された。早期開始群(2,312例)は、ICU入室後48時間以内に静脈栄養が開始され、後期開始群(2,328例)は7日目においても栄養不十分な場合で8日目に開始された。経腸栄養の早期開始のプロトコルは両群同一に適用され、正常血糖達成にはインスリンが注入された。後期開始群の生存退室率・生存退院率が相対的に6.3%上回る結果、後期開始群の患者は、ICUからの早期生存退室率(ハザード比:1.06、95%信頼区間:1.00~1.13、P=0.04)と病院からの生存退院率(同1.06、1.00~1.13、P=0.04)が相対的に6.3%上回り、退院時の機能状態の低下を示す所見は認められなかった。ICU内死亡率、病院内死亡率、90日生存率は、両群で同程度だった。また後期開始群の患者は早期開始群患者と比較して、ICU感染症(22.8%対26.2%、P=0.008)、胆汁うっ滞発生率(P

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カロリー表示義務付けは、ファストフード店での購入エネルギー量減に結びついたのか?

2008年1月から米国ニューヨーク市では、チェーン・レストランに対し全メニューへの詳細なカロリー情報を表示する規制が実施となった。これまでカロリー表示が購入エネルギー量を減らす効果があったかどうかについて、入手可能なデータが限られていたため結果は判然としていなかったが、米国NY在住コンサルタントのTamara Dumanovsky氏らが、マクドナルドやバーガーキングなど人気ファストフード11社での顧客調査を実施し、表示義務化によるインパクトを調べた結果を報告している。BMJ誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月26日号)掲載報告より。ファストフード店で昼食の購入エネルギー量を顧客から聞き取り調査研究グループは、義務付け1年前の2007年春と義務付け9ヵ月後の2009年春に横断調査を実施した。昼食時間帯のニューヨーク市で、人気上位11社のファストフード・チェーン(マクドナルド、バーガーキング、ウェンディーズ、サブウェイ、オーボンパン、ケンタッキーフライドチキン〔KFC〕、ポパイピザ、ドミノピザ、ピザハット、パパジョンズピザ、タコベル)の中からランダムに168店を選択し、2007年は7,309人、2009年は8,489人の成人客に聞き取り調査を行った。主要評価項目は、顧客のレジ金額、メニュー全アイテムに用意されたカロリー情報に基づく個々の購入食品のエネルギー含有量(kcal)であった。6人に1人がカロリー表示情報を利用全サンプルの平均購入カロリーは規制の前と後とで変化はなかった(828対846kcal、P=0.22)。ただし、レストラン・チェーン、店舗位置から割り出した貧困度、性別、購入食品のタイプ、インフレ率補正後の料金などで補正した回帰モデルでは、わずかな減少がみられた(847対827kcal、P=0.01)。3つの大手チェーン(調査対象顧客の42%を占めた)では、購入平均エネルギー量に有意な減少がみられた(マクドナルド:829対785kcal、P=0.02、オーボンパン:555対475kcal、P

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全身性強皮症に対するHSCTの有用性を無作為化試験で確認

全身性強皮症に対する骨髄非破壊的自家造血幹細胞移植(HSCT)は、標準治療に比べ2年間にわたって皮膚病変および肺障害を有意に改善することが、アメリカ・ノースウェスタン大学Feinberg医学校のRichard K Burt氏らの検討で示された。全身性強皮症は、病初期にはびまん性の血管障害を呈し、その後免疫系の活性化に伴って組織の線維化が進む慢性疾患である。HSCTは、非無作為化試験において、全身性強皮症の皮膚症状や肺機能を改善するものの治療関連死の発生率が高いことが示されている。Lancet誌2011年8月6日号(オンライン版2011年7月20日号)掲載の報告。HSCTの有用性を評価する単施設非盲検無作為化第II相試験ASSIST(American Scleroderma Stem Cell versus Immune Suppression Trial)試験は、ノースウェスタン記念病院(シカゴ市)で実施された骨髄非破壊的自家HSCTの安全性および有効性を標準治療であるシクロホスファミド(商品名:エンドキサン)療法と比較する非盲検無作為化第II相試験。対象は、60歳未満のびまん性の全身性強皮症[改訂Rodnan皮膚スコア(mRSS)>14、肺障害、消化器障害などで定義]および限局型(mRSS<14)で肺障害を伴う全身性強皮症患者であった。これらの患者が、HSCT(シクロホスファミド200mg/kg静注+抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリンによる前処置後、末梢血幹細胞を移植)あるいはシクロホスファミド1.0g/m2静注(月1回、6サイクル、対照)を施行する群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、診断時mRSS>14の患者で12ヵ月後のmRSSの25%以上の低下、あるいは努力性肺活量の10%以上の増加とした。対照群のうち病態が進行した患者は、12ヵ月後にHSCTに切り替えてもよいこととした。全例で皮膚症状および肺障害が改善2006年1月18日~2009年11月10日までに19例が登録され、HSCT群に10例(平均年齢:45歳、女性:9例、診断後の平均罹病期間:13.6年、平均mRSS:28、びまん性/肺障害を伴う限局型:8例/2例)、対照群には9例(同:44歳、8例、18年、19、7例/2例)が割り付けられた。フォローアップ期間12ヵ月の時点で、HSCT群は全例で皮膚病変および肺障害の改善が達成されたのに対し、対照群は全例とも改善が得られなかった(オッズ比:110、95%信頼区間:14.04~∞、p=0.00001)。HSCT群では病態の進行はみられなかったが、対照群の9例中8例は回復期間なしに病態が進行した。対照群のうち7例がHSCTに切り替えた。フォローアップ期間2年におけるHSCT施行例11例の解析では、ベースラインに比べmRSS(p<0.0001)および努力性肺活量(p<0.03)の有意な改善効果が持続していた。著者は、「全身性強皮症に対する骨髄非破壊的自家HSCTは、2年間にわたりの皮膚病変および肺機能を改善し、標準治療よりも良好な予後をもたらした。今後は、より長期のフォローアップが必要である」と結論している。無作為化試験で全身性強皮症の肺機能の改善効果が確認されたのは、骨髄非破壊的自家HSCTが初めてだという。(菅野守:医学ライター)

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多発性骨髄腫の治療戦略-日欧における現状と展望

 多発性骨髄腫の治療においては、近年、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)、サリドマイド(商品名:サレド)、レナリドミド(商品名:レブラミド)といった新規薬剤が開発・発売され、わが国では、現在、再発・難治性症例に対して承認されている。一方、欧米では、これらの薬剤が、再発・難治性症例だけでなく、他のステージでも使用され、次々と臨床研究結果が報告されている。 ここでは、2011年8月8日に都内で開催された多発性骨髄腫治療に関するセミナー(主催:セルジーン株式会社)における、トリノ大学血液学科骨髄腫ユニットチーフ Antonio Palumbo氏、がん研有明病院化学療法科・血液腫瘍科部長 畠清彦氏の講演から、欧米とわが国における多発性骨髄腫治療の現状と展望についてレポートする。欧米における治療戦略とレナリドミドの成績 Palumbo氏によると、多発性骨髄腫の治療には、まず完全寛解(CR)を達成すること、さらにCR期間を延長させるために治療を継続することが重要である。また、CRのなかでも、より深い寛解である分子生物学的寛解、すなわちDNAレベルでの効果が重要である。 今回の講演で、Palumbo氏は、主にレナリドミドによる維持療法の成績について取り上げ、移植適応の若年者に対する移植後の維持療法については、フランスIFMの試験では無増悪期間(PFS)が、また米国CALGBの試験ではPFS、全生存期間(OS)が、レナリドミド投与群において有意に延長したことを紹介した。 また、移植非適応の65歳以上の高齢者におけるレナリドミド維持療法については、MPR(メルファラン、プロドニゾン、レナリドミド)による寛解導入療法後にレナリドミド(10mg/日、3週間投与)で維持療法を行うMPR-R群を、維持療法を行わないMPR群、MP群と比較した海外多施設臨床試験を紹介した。この試験では、MPR-R群ではMPR群に比べ増悪リスクが約70%減少し、また、年齢、寛解の程度、病期(ISS)にかかわらずPFSが有意に延長したことが示されている。 Palumbo氏は、欧米における多発性骨髄腫患者に対する治療アルゴリズムを、多発性骨髄腫に関する最新のレビューにまとめている(N Engl J Med. 2011;364:1046)。それによると、移植適応症例では、新規薬剤を含む併用レジメン(主に欧州では3剤、米国では2剤併用)で寛解導入後に移植を実施し、サリドマイドもしくはレナリドミドによる維持療法を実施、また、移植非適応例では、新規薬剤を含む併用レジメンを実施し、そのうちレナリドミドを含むレジメンの場合は、増悪もしくは不耐容となるまで継続するとしている。日本における現状と展望 畠氏は、わが国における課題と展望について、レナリドミドの特徴やがん研有明病院における使用状況を交えて紹介した。 レナリドミドの特徴については、経口剤のため外来治療が可能で、頻回通院の必要がなく遠方の患者さんでも通院しやすい、2011年8月から長期投与可能となり使いやすくなった、と畠氏は評価している。その他の特徴として、高リスク例に対して有効である、細胞性免疫の増強作用がある、腎障害例における減量が必要、末梢血幹細胞は早期採取が必要であることを挙げた。また主な副作用として、好中球減少、疲労、筋痙攣などが報告されている。 がん研有明病院においては、7月28日時点のレナリドミド使用経験は14例で、投与症例は、経口剤が適している、遠方から来院、肺障害がある、高齢といった症例という。投与方法は、レナリドミド25mg(21日間投与、7日間休薬)+デキサメタゾン40mg(週1回投与)であり、血栓予防としてアスピリンを、またアスピリンによる消化器障害に対してプロトンポンプ阻害薬を併用しているとのことである。また、がん研有明病院の取り組みとして、レナリドミドの承認前から医師、病棟看護師、外来看護師、病棟薬剤師によってチームを立ち上げ、院内マニュアルの作成や投与すべき症例の選択などの準備を進めていたことを紹介した。 わが国における課題として畠氏は、海外とのドラッグラグはもちろん、臨床現場への普及の遅れを指摘している。多発性骨髄腫においては、日本で長い間標準治療であったMP療法、VAD(ビンクリスチン、ドキソルビシン、デキサメタゾン)療法から、新規薬剤による治療に移行しつつあり、現時点ではこれらの薬剤を年齢、病態、合併症に応じて選択し、日本での長期の成績により評価していく必要があると述べた。 最後に、畠氏は、今後はわが国では承認されていない初発例に対する治療や新規薬剤どうしの併用やアルキル化剤との併用、さらに維持療法など、より有効な治療法の確立が望まれると締めくくった。

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SRI抵抗性の慢性PTSD退役軍人に対するリスペリドンの有効性

セロトニン再取り込み阻害薬(SRI)抵抗性の、兵役に伴う心的外傷後ストレス障害(PTSD)が慢性的な退役軍人に対し、第二世代抗精神病薬(非定型抗精神病薬)リスペリドン(商品名:リスパダールほか)を投与しても、全般的症状やうつ症状などに改善は認められなかったことが報告された。米国・コネチカット州退役軍人ヘルスケアシステムのJohn H. Krystal氏らが、SRI抵抗性PTSDの300人弱の退役軍人について無作為化二重盲検プラセボ対照試験を行い明らかにしたもので、JAMA誌2011年8月3日号で発表した。米国FDAがPTSD治療薬として認可しているのはSRIのみだが、SRIの有効性は女性よりも男性で、また急性PTSDよりも慢性PTSDでそれぞれ劣ることが知られ、退役軍人に対する臨床ではSRI抵抗性には第二世代抗精神病薬が一般に用いられるようになっているという。本試験は、その有効性をプラセボと比較検証した初の大規模試験。247人を2群に分け6ヵ月追跡、全般的症状やうつ症状などを評価研究グループは、2007年2月~2010年2月にかけて、23ヵ所の退役軍人向け外来診療センターで試験を行った。スクリーニングの結果、2種以上のSRI服用後もPTSD症状が持続する296人のうち、247人について試験を行った。被験者を無作為に二群に分け、一方の群にはリスペリドン(1mgを就寝前1錠、1週間ごとに1錠増やし、1日3錠まで投与量増加、4週間目以降は4錠まで追加可)を、もう一方にはプラセボを投与し、6ヵ月間追跡した。主要アウトカムは、PTSD臨床診断スケール(Clinician-Administered PTSD Scale;CAPS)や、モントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)、ハミルトン不安評価尺度(HAMA)、臨床全般印象度(CGI)、退役軍人向けランド36項目健康に関する調査票(SF-36V)だった。リスペリドン群に症状全般、うつ症状、不安症状、QOLの改善なしその結果、試験開始後24週間の時点で、CAPSスコアの変化は、プラセボ群が-12.5(95%信頼区間:-15.7~-9.4)に対し、リスペリドン群は-16.3(同:-19.7~-12.9)と、両群で有意差はなかった(t=1.6、p=0.11)。混合モデル分析でも、治療開始後のいずれの時点でも、両群でCAPSスコアに有意差はなかった(p=0.12)。うつ症状についても、リスペリドン群でプラセボ群に比べ有意な改善はみられず、MADRSの両群の平均値格差は1.19(p=0.11)だった。不安症状でも、HAMAや患者によるCGI、観察者によるCGIのいずれも、両群の平均値格差に有意差はなかった(それぞれ、p=0.09、p=0.14、p=0.04)。生活の質(QOL)についても、SF-36Vの結果で両群に有意差はなかった(p=0.79)。一方で有害事象については、自己申告による体重増がプラセボ群2.3%に対しリスペリドン群15.3%、疲労感がプラセボ群0.0%に対しリスペリドン群13.7%、唾液分泌過多がプラセボ群0.8%に対しリスペリドン群9.9%と、いずれもリスペリドン群で高率に認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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塩分摂取によって血圧が上昇しやすい人と、そうでない人が存在するのはなぜか?―東大 藤田氏らが解明―

 血圧の塩分感受性の違いが生じるのはなぜか? 東京大学大学院医学系研究科の藤田敏郎氏らの研究チームが、腎臓のナトリウム排泄調節に関与する鉱質コルチコイド受容体(MR)の活性化に、細胞内シグナル分子であるRac1が関与していることを、米国の科学雑誌「Journal of Clinical Investigation」に発表した。 本研究について藤田氏を取材した内容より、今回の研究結果の科学的な意義をまとめる。「食塩感受性」の違いが何によって規定されるかは謎であった かつて、わが国には高血圧が多く、脳卒中が多発した理由の一つとして、食塩の過剰摂取が挙げられていた。食塩の摂取量が多くなると血圧が高くなることは、INTERSALT研究などの結果より、24時間蓄尿でみた食塩摂取量の多い集団では血圧が高く、個人の食塩摂取量と血圧の間にも正の相関がみられるなど疫学的な見地からも裏付けられている。しかし、塩分の摂取により、すべての人で一律に血圧が上昇するわけでなく、塩分に対する血圧の反応性には個人差があり、塩分摂取によって血圧上昇が鋭敏な集団が存在する。いわゆる「食塩感受性高血圧」だ。この「食塩感受性」の違いが何によって規定されるかは、最近まで明らかにされていなかった。アルドステロンに依存しない昇圧系が存在 血清アルドステロンの上昇によって、腎臓でナトリウムの再吸収が促進され、血圧が上昇することは古くから知られている。最近では、アルドステロンの受容体であるMRが腎臓以外にも脳、心臓、血管など見出され、腎臓を介する古典的な昇圧作用に加えて、アルドステロンの中枢性・末梢性昇圧作用が指摘されている。 一方、健康な人では塩分を過剰に摂取すると、ネガティブ・フィードバックが働いて血清アルドステロン濃度は低下する。それにもかかわらず、MRが活性化し、その結果、血圧が上昇するというアルドステロンに依存しない昇圧系が存在することが見出された。藤田氏らは、このアルドステロン非依存性の昇圧系に関して、細胞内シグナル分子Rac1に着目し、アルドステロンに依存しないMR活性化メカニズムを解明し、その研究結果を2008年Nature Medicine誌に発表した。食塩感受性高血圧にRac1を介したMRの活性化が関与 今回、明らかにされたのは、次の2点。1.腎Rac1活性の差異が食塩感受性の個体差を来す2.塩分過剰摂取によりRac1を介する経路でMRが病的に活性化され高血圧が引き起こされる 今回、藤田氏らは高食塩食により血圧上昇を来す食塩感受性高血圧ラット(Sラット)と、塩分負荷に対して血圧上昇を来さない塩分抵抗性正常血圧ラット(Rラット)の2種のモデルラットに対し、同量の塩分を負荷し、食塩感受性の差異を説明する分子の探索を試みた。 その結果、血清アルドステロン濃度は、塩分負荷に伴って両モデルラットで同程度抑制されていたにもかかわらず、Sラットでは塩分負荷により腎MR活性上昇し、Rラットでは抑制されていた。 一方、腎Rac1活性は、Sラットでは塩分負荷により上昇したのに対し、Rラットでは低下していることが明らかになった。すなわち、食塩感受性ラットでは塩分摂取によって、血清アルドステロン濃度は抑制されているにもかかわらず、腎Rac1活性が上昇し、腎MR活性も上昇する。逆に、Sラットに対し、Rac1阻害薬を投与し、腎Rac1活性を抑制したところ、MR活性の低下とともに高血圧の顕著な改善が認められた。 以上のことから、藤田氏らは食塩感受性高血圧にRac1を介したMRの活性化が関与していると結論づけている。 食塩感受性の個体差は3つの系が複合的に作用している藤田氏は、食塩感受性は、アルドステロンを介する系、交感神経を介する系、そしてRac1を介する系があるとし、これら3つの系が何らかの割合で寄与していると述べる。 既報の通り、今年4月には、塩分摂取などの環境因子が、腎臓における交感神経活性の亢進が血圧を上昇させるかについて、食塩排泄性遺伝子WNK4遺伝子の転写活性を抑制し、食塩感受性高血圧を発症させることを「Nature Medicine」誌に発表している。 WNK4遺伝子に関わるアセチル化を阻害する「ヒストン修飾薬」、アルドステロン非依存的なRac1-MR系を阻害する「Rac1阻害薬」などの開発において、選択性が高く、副作用を軽減でき最大限の主作用が発揮できる用量の探求が達成できると、これら薬剤の臨床応用が可能となり、我々が新たな血圧調整の手段を入手できる日も遠くはないと藤田氏は述べる。

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早期浸潤性乳がん患者の免疫化学染色法によるSLNまたは骨髄転移検出の意義

早期浸潤性乳がん患者で、センチネルリンパ節(SLN)への転移が認められた人では全生存率は低下しなかったが、骨髄へ微小転移が認められた人は全生存率の低下(補正前ハザード比1.94)が認められたことが明らかにされた。しかし、多変量解析において両部位とも転移検出と生存率とに統計的に有意な関連は認められなかったことも報告された。米国Cedars-Sinai Medical CenterのArmando E. Giuliano氏らが、乳房温存療法とSLN生検を受けた患者5,210人を中央値6.3年間追跡した前向き観察試験の結果で、結論において「両検査の結果は臨床的根拠とならない」とまとめている。JAMA誌2011年7月27日号掲載報告より。中央値6.3年追跡、免疫化学染色法で骨髄およびSLNへの微小転移を検出研究グループは、早期浸潤性乳がん患者の生存率と、SLNおよび骨髄標本への免疫化学染色法によって検出される転移との関連を評価することを目的とした。1999年5月~2003年5月に126ヵ所でAmerican College of Surgeons Oncology GroupのZ0010試験に登録された、早期浸潤性乳がんで乳房温存療法とSLN生検を受けた5,210人について、2010年4月まで中央値6.3年追跡した。被験者のSLN検体と骨髄検体(手術時の骨髄穿刺は当初は任意で、2001年3月以後は全例に実施された)が中央ラボに送られ、免疫化学染色法により微小転移が調べられ、全生存率(主要エンドポイント)や無病生存期間(副次エンドポイント)について検討された。SLN検体について、HE染色法が行われた5,119人(98.3%)のうち腫瘍陰性だったのは3,904人(76.3%)だった。免疫化学染色法を行ったのは3,326人で、そのうち腫瘍陽性は349人(10.5%)だった。一方、骨髄検体の免疫化学染色法が行われたのは3,413人で、そのうち腫瘍陽性は104人(3.0%)だった。追跡期間中、435人が死亡、また376人に再発が認められた。骨髄への微小転移と全生存率との関連、補正前は有意だが補正後は有意差認められず解析の結果、SLN転移の免疫化学染色法のエビデンス(5年生存率:転移検出群95.1%、非検出群95.7%、補正前ハザード比0.90、p=0.64)は、全生存率との有意な関連が認められなかった。多変量解析の結果でも有意な関連は認められなかった(補正後ハザード比:0.88、p=0.70)。一方、骨髄への微小転移は、全生存率の低下との有意な関連が認められたが(死亡に関する補正前ハザード比:1.94、95%信頼区間:1.02~3.67、p=0.04)、多変量解析後は、統計的に有意な関連は認められなかった(同:1.83、p=0.15)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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米国飲食店のカロリー表示、総じて正確

米国レストランで行っている料理のカロリー表示は、実際の測定値とほぼ同等であることが、米国・タフツ大学のLorien E. Urban氏らが行った米国の飲食店42店を対象とする調査で明らかになった。米国人のカロリー摂取の約35%は飲食店の食事からだが、飲食店のカロリー表示の正確性については、これまで明らかになっていなかったという。JAMA誌2011年7月20日号掲載より。表示値と実測値の差、1人前当たり平均10kcal程度研究グループは、2010年1~6月にかけて、米国飲食店チェーンで、マサチューセッツ州、アーカンソー州、インディアナ州にある店の中から、各地域14店、合わせて42店を選び調査を行った。調査対象となった食事品目は269品目だった。結果、全体として、飲食店のカロリー表示は実際の測定値と有意な差はなかった(平均格差:10kcal/1人前、95%信頼区間:-15~34kcal/1人前、p=0.52)。一方で、個々の品目についてみると、カロリー表示とカロリー実測値にはばらつきがあり、50品目(19%)の実測値が表示値よりも1人前当たり100kcal上回っていた。高カロリー食品は実測値が表示値を上回り、低いものは下回る傾向初回測定で1人前当たりのカロリー摂取量が最も高いほうから10%内の17品目のうち、13品目については再測定が可能だった。その結果、初回測定では測定値が表示値を1人前当たり289kcal上回り、再測定では同258kcal上回っていた(表示と実測値の差が0kcal/ポーションに対するP<0.001)。さらに、表示カロリーが低い品目では表示値よりも実測値が高く、表示カロリーが高い品目では実測値が低い傾向が認められた(P<0.001)。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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未治療HIV-1感染患者に対するrilpivirine、エファビレンツに非劣性、安全性良好(1):THRIVE試験

未治療のHIV-1感染成人患者に対するHIV治療薬として、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NNRTI)rilpivirineが新たな治療オプションとなり得ることが示された。同一クラスのエファビレンツ(商品名:ストックリン)に対する非劣性を検討した第3相無作為化試験の結果による。本論は、米国・Community Research Initiative of New England(ボストン)のCalvin J Cohen氏らによる、全被験者がヌクレオシド系またはヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬(NRTI)レジメンも同時に受けていることを前提に行われた「THRIVE」試験の結果報告で、主要アウトカムとした48週時点でのrilpivirineの非劣性が認められ、安全性も良好であったという。Lancet誌2011年7月16日号掲載報告より。NRTIレジメンを受けた患者をrilpivirine群もしくはエファビレンツ群に無作為化THRIVE試験は、96週にわたる第3相無作為化二重盲検二重ダミー非劣性試験で、21ヵ国98医療施設から被験者を募って行われた。被験者は、18歳以上成人で抗レトロウイルス治療を受けたことがなく、スクリーニングで血漿ウイルス量5,000コピー/mL以上、NRTIに対するウイルス感度を有する患者とし、コンピュータシステムを使って1対1の割合で、rilpivirine群(25mgを1日1回)とエファビレンツ群(600mgを1日1回)に無作為化された。また全患者が、治験参加医師の選択により、いずれかのNRTIレジメン[テノホビル ジソプロキシルフマル酸(商品名:ビリアード)+エムトリシタビン(同:エムトリバ)、ジドブジン(同:レトロビル)+ラミブジン(同:エピビル)、アバカビル(同:ザイアジェン)+ラミブジン]を受けた。主要アウトカムは、全患者が治験薬を1回以上投与され反応が確認(ウイルス量<50コピー/mL、ウイルス学的失敗がintention-to-treat解析で確認)された48週時点の非劣性(ロジスティック回帰分析のマージン12%)とした。48週時点の有効性、rilpivirine群86%、エファビレンツ群82%2008年5月から947例がスクリーニングを受け、主要アウトカム検証のためにデータを打ち切った2010年1月までに340例が登録された。結果、1回以上投与での反応(ウイルス量<50コピー/mL)が認められたのはrilpivirine群86%(291/340例)、エファビレンツ群82%(276/338例)であり、両群差3.5%(95%信頼区間:1.7~8.8)でrilpivirine群の非劣性(p<0.0001)が認められた。基線から48週までのCD4細胞数増大は、両群でほぼ同等であった(rilpivirine群:189個/μL、エファビレンツ群:171個/μL、p=0.09)。一方、ウイルス学的失敗率はrilpivirine群7%、エファビレンツ群5%であった。投与中止となった有害事象の発生は、rilpivirine群4%、エファビレンツ群7%であった。治療関連のグレード2~4の有害事象は、rilpivirine群のほうが少なかった(rilpivirine群16%、エファビレンツ群31%、p<0.0001)。特に、発疹とめまいが少なかった(いずれもp<0.0001)。また、血漿脂質の増大が、エファビレンツ群に比べrilpivirine群のほうが有意に低かった(p<0.0001)。Cohen氏は、「ウイルス学的失敗はわずかに多かったが、rilpivirineはエファビレンツに比し、良好な安全性、有効性については非劣性であることが示され、未治療のHIV-1感染患者に対する新たな治療の選択肢と成り得るであろう」と結論している。(朝田哲明:医療ライター)

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早期限局性前立腺がん、放射線療法+短期ADTが全生存率上昇、死因別死亡率低下

 早期の限局性前立腺がんに対する、放射線療法+4ヵ月の短期アンドロゲン遮断療法(ADT)の併用療法について、有意な死亡率(死因別)の低下および全生存率の上昇が認められたことが明らかにされた。米国・Radiological Associates of SacramentoのChristopher U. Jones氏らが、米国とカナダの212施設から被験者約2,000例を募り行った無作為化試験の結果による。これまで同併用療法の効果については明らかにされていなかった。NEJM誌2011年7月14日号掲載報告より。1,979例を、放射線療法単独群と4ヵ月ADT併用群に無作為化 被験者は、1994年10月~2001年4月の間に212施設から集められた、ステージT1b、T1c、T2a、T2bでPSA値20ng/mL以下の前立腺がん患者1,979例であった。被験者は無作為に、放射線療法単独群(992例)と、放射線療法2ヵ月間実施後に4ヵ月間の短期ADTを行う群(987例)に割り付けられ、中央値9.1年間追跡された。 主要エンドポイントは全生存率とし、副次エンドポイントには死因別死亡率、遠隔転移、生化学的治療の失敗(PSA値が上昇)、2年時点の再生検の陽性所見率などが含まれた。ベネフィットは低リスク群では有意ではなく、主として中間リスク群に 結果、10年全生存率は、放射線療法単独群57%に対し、併用群は62%であった(単独群の死亡ハザード比:1.17、P=0.03)。死因別死亡率は、単独群8%に対し、併用群は4%であった(単独群のハザード比:1.87、P=0.001)。 また併用群では、生化学的失敗(P<0.001)、遠隔転移(P=0.04)、2年時点の再生検陽性所見率(P<0.001)について有意な改善が認められた。 放射線照射による毒性は、急性(照射開始後90日まで)、遅発性とも、両群で同程度であった。またグレード3以上の毒性発現率は5%未満であった。 なお、低リスク(単独群:334例、併用群:351例)、中間リスク(同:544例、524例)、高リスク(同:114例、112例)別にみた事後解析の結果、全生存率の上昇と死因別死亡の低下は、主に中間リスク群で認められ(P=0.03、P<0.01)、低リスク群では有意ではなかった(P=0.60、P=0.42)。(武藤まき:医療ライター)

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がん検診に影響与える家族歴は30~50歳で変化が大きい、医師は5~10年ごとに問診を

がん検診の開始年齢や方法などに影響を与える家族歴は、30~50歳の間で変化が大きいことが明らかにされた。米国・カリフォルニア大学アーバイン校のArgyrios Ziogas氏らが、米国民ベースのがんレジストリ「Cancer Genetics Network」(CGN)を基に、約2万7,000人の登録被験者とその家族について行った追跡試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2011年7月13日号で発表した。がんレジストリ登録2万6,933人とその家族データを調査研究グループは、米国内14ヵ所の教育研究医療機関を通じて、1999~2009年間にCGNに登録された2万6,933人と、その家族54万578人について調査を行った。調査は、被験者が生誕時からCGN登録時点(調査開始)まで(後ろ向き調査)と、登録~最終追跡期間まで(前向き調査)について行われ、臨床的に意味のある家族歴を有した人の割合や変化が調べられた。前向き追跡期間の中央値は8年(範囲:0~11)だった。がんの種類ごとの被験者数は、後ろ向き調査が、大腸がん9,861人、乳がん2,547人、前立腺がん1,817人。前向き調査はそれぞれ、1,533人、617人、163人だった。家族歴に基づくハイリスク・スクリーニング適用者、大腸がんは30歳時2.1%が50歳時は7.1%結果、後ろ向き調査で、がん家族歴がありハイリスクの人向けのスクリーニングが適切であるとされた人の割合は、大腸がんについては30歳時家族歴で2.1%(95%信頼区間:1.8~2.4)、50歳時家族歴で7.1%(同:6.5~7.6)だった。乳がんは、同7.2%(同:6.1~8.4)と11.4%(同:10.0~12.8)、前立腺がんは、同0.9%(同:0.5~1.4)と2.0%(同:1.4~2.7)だった。一方、前向き調査で、家族歴をベースに新たにハイリスク・スクリーニングが必要とされたのは、100人・20年追跡あたり大腸がんが2人、乳がんが6人、前立腺がんが8人であった。後ろ向き調査と前向き調査の、がん家族歴の変化の割合は大腸がんと乳がんでは同等であった。研究グループはこれら結果を受けて、「家族歴は成人期早期から意味を持ち始めることが見いだされた。この時期に総合的な家族歴を聴取しておく必要がある。また、30~50歳の変化が大きく、医師は家族歴に関する問診を5~10年ごとに実施することが望ましい」と結論している。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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2型糖尿病に対する早期強化療法により心血管イベントがわずかに低下傾向に:ADDITION-Europe試験

2型糖尿病に対する早期の多元的な強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡が有意ではないがわずかに減少することが、イギリス・代謝科学研究所のSimon J Griffin氏らが行ったADDITION-Europe試験で示され、Lancet誌2011年7月9日号(オンライン版2011年6月25日号)で報告された。2型糖尿病では、複数の心血管リスク因子に対する多元的な強化療法によって死亡率が半減する可能性が指摘されているが、血圧、脂質、血糖などの個々のリスク因子の治療を診断直後から開始した場合の有効性は不明だという。3ヵ国の343プライマリ・ケア施設が参加したクラスター無作為化試験ADDITION-Europe(Anglo-Danish-Dutch Study of Intensive Treatment In People with Screen Detected Diabetes in Primary Care)試験は、2型糖尿病に対する診断後早期の多元的治療が心血管リスクに及ぼす効果を検討する並行群間クラスター無作為化試験である。2001年4月~2006年12月までに、デンマーク、オランダ、イギリスの343のプライマリ・ケア施設が、ルーチンの糖尿病治療を行う群あるいは早期に多元的強化療法を施行する群に無作為に割り付けられた。患者は、スクリーニング検査で2型糖尿病と診断された40~69歳(オランダのみ50~69歳)の地域住民であった。多元的強化療法群は、既存の糖尿病治療に加え、プライマリ・ケア医や看護師による教育プログラム(治療ターゲット、アルゴリズム、ライフスタイルに関する助言など)への参加をうながし、Steno-2試験などで使用された段階的レジメンに基づくガイドラインに準拠した薬物療法や、健康なライフスタイル実践の指導が行われた。全施設で同じアプローチが使用されたが、薬剤の選択などの最終決定は担当医と患者が行った。ルーチン治療群ではプライマリ・ケア医が患者に検査結果を伝え、標準的な糖尿病治療が施行された。主要評価項目は、初発心血管イベント(5年以内の心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、血行再建術、非外傷性四肢切断)の複合エンドポイントとした。心血管リスク因子がわずかに有意に改善、心血管イベントは有意差はないがわずかに低下ルーチン治療群に176施設(1,379例、診断時平均年齢60.2歳、男性57.3%)が、多元的強化療法群には167施設(1,678例、60.3歳、58.5%)が割り付けられ、主要評価項目の解析は3,055例(99.9%)で可能であった。全体の平均フォローアップ期間は5.3年(SD 1.6)。心血管リスク因子[HbA1c、総コレステロール、LDLコレステロール、収縮期血圧、拡張期血圧]は、強化療法群でわずかではあるが有意に改善された。初発心血管イベントの発生率は、ルーチン治療群が8.5%(15.9/1,000人・年)、強化療法群は7.2%(13.5/1,000人・年)であり(ハザード比:0.83、95%信頼区間:0.65~1.05、p=0.12)、評価項目の個々のコンポーネントも強化療法群で良好な傾向がみられたが、有意差は認めなかった(心血管死:1.6% vs. 1.5%、非致死的心筋梗塞:2.3% vs. 1.7%、非致死的脳卒中:1.4% vs. 1.3%、血行再建術:3.2% vs. 2.6%、非外傷性四肢切断:0% vs. 0%)。全体の死亡率はルーチン治療群が6.7%、強化療法群は6.2%であった(ハザード比:0.91、95%信頼区間:0.69~1.21)。著者は、「2型糖尿病に対する早期の多元的強化療法によって、5年後の心血管イベントや死亡がわずかに減少したが有意差はなかった」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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急性心不全へのnesiritideの有効性と安全性

急性心不全へのnesiritideについて、死亡や再入院の増減との関連は認められなかったが、標準治療への上乗せ効果についても呼吸困難への効果は小さく有意差は認められないことが、無作為化二重盲検プラセボ対照試験「ASCEND-HF」の結果、報告された。米国・デューク大学メディカルセンターのC.M. O’Connor氏らがNEJM誌2011年7月7日号で発表した。組み換え型B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)製剤nesiritideは、急性心不全患者の呼吸困難を早期に緩和する治療薬として2001年に米国で承認されたが、その後の小規模無作為化試験データのプール解析で、プラセボとの比較で腎機能悪化が1.5倍、早期死亡が1.8倍に上ることが示され、独立委員会からnesiritideの有効性と安全性に関する大規模臨床試験の実施が勧告されていた。6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化の2つを主要エンドポイントにASCEND-HF(Acute Study of Clinical Effectiveness of Nesiritide in decompensated Heart Failure)試験は2007年5月~2010年8月にかけて、欧米、環太平洋アジアの398施設から急性心不全で入院した7,141例が登録され、標準治療(利尿薬、モルヒネ、他の血管拡張薬など)に加えてnesiritideあるいはプラセボを投与される群に無作為化され追跡された。nesiritideは、治験参加医師の裁量で任意の2μg/kgの静脈内ボーラス投与後、0.010μg/kg/分の持続点滴を24時間以上、最長7日間(168時間)投与された。主要エンドポイントは2つで、6時間時点と24時間時点の呼吸困難の変化であり、患者自身による7段階のリッカート尺度評価を用いて測定評価した。また、30日以内の心不全による再入院と全死因死亡を複合エンドポイントとし、安全性のエンドポイントについては、30日以内の全死因死亡、腎透析を要した腎機能悪化(推定糸球体濾過量低下が>25%)などが含まれた。無作為化後に治療を受けたintention-to-treat解析対象は7,007例(98%、nesiritide群:3,496例、プラセボ群:3,511例)だった。幅広く急性心不全患者へルーチン使用することは推奨できないと結論結果、呼吸困難の改善について「著しく」と「中程度に」を合わせた報告が、6時間時点でnesiritide群44.5% vs. プラセボ群42.1%(P=0.03)、24時間時点では同68.2% vs. 66.1%(P=0.007)と、いずれの時点でも、nesiritide群での報告が多かったが事前規定の有意差(両評価がP≦0.005かどちらかのP≦0.0025)には達していなかった。30日以内の心不全による再入院と全死因死亡は、nesiritide群9.4%、プラセボ群10.1%で、nesiritide群の絶対差は-0.7ポイント(95%信頼区間:-2.1~0.7、P=0.31)だった。また、30日時点の死亡率(nesiritide群:3.6% vs. プラセボ群:4.0%、絶対差:-0.4、95%信頼区間:-1.3~0.5)、腎機能悪化率(同31.4% vs. 29.5%、オッズ比:1.09、95%信頼区間:0.98~1.21、P=0.11)は有意差が認められなかった。しかし、低血圧症(中央値80mmHg)について、nesiritide群での有意な増大が認められた(26.6%対15.3%、P<0.001)。Connor氏は、「nesiritideの他療法と組み合わせての使用は、死亡率、再入院の増減とは関連しないが、呼吸困難に対する効果は小さく、有意な効果は認められなかった。また、腎機能悪化との関連も認められなかったが、低血圧症の増加との関連が認められた」と結論。結果を踏まえて「nesiritideを、急性心不全の患者に幅広くルーチン使用することは推奨できない」と提言している。(武藤まき:医療ライター)

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米国農村部の拠点病院、医療設備劣り、心筋梗塞やうっ血性心不全などの死亡リスク増大

米国農村部の病院は、それ以外の病院に比べ医療設備が劣り、急性心筋梗塞やうっ血性心不全などの死亡率も高いことが明らかにされた。米国・ハーバード大学公衆衛生校のKaren E. Joynt氏らが、全米約4,700の病院について調査した結果による。農村部の病院は、その地域の医療を担う、クリティカル・アクセス・ホスピタル(CAH)として重要視されているものの、その医療の質や患者のアウトカムについては、あまり知られていないという。JAMA誌2011年7月6日号掲載報告より。農村部病院、ICU設置は30%、電子カルテ整備は6.5%研究グループは、米国4,738の病院について調査を行った。高齢者向け公的医療保険メディケア出来高払いプランの加入者で、急性心筋梗塞、うっ血性心不全、肺炎の診断を受け2008~2009年に退院した人について、後ろ向きに、その治療過程やアウトカムを追跡した。主要アウトカムは、病院の集中治療室(ICU)など設備の有無、医療ケアの過程の質、30日死亡率などだった。その結果、ICUを設置していたのは、非CAHでは3,470病院中2581病院(74.4%)だったのに対し、CAHでは1,268病院中380病院(30.0%)と、有意に低率だった(p<0.001)。心臓カテーテル実施設備を備えていたのは、非CAHでは1,654病院(47.7%)だったのに対しCAHでは6病院(0.5%)、基本的な電子カルテを整備していたのは、それぞれ445病院(13.9%)と80病院(6.5%)で、いずれもCAHのほうが非CAHよりも低率だった(いずれもp<0.001)。農村部病院の30日死亡リスク、急性心筋梗塞は1.7倍、うっ血性心不全は1.28倍急性心筋梗塞(CAH:1万703人、非CAH:46万9,695人)、うっ血性心不全(CAH:5万2,927人、非CAH:95万8,790人)、肺炎(CAH:8万6,359人、非CAH:77万3,227人)について、米国の病院の質に関する提携プログラム(Hospital Quality Alliance:HQA)の治療過程に関する指標との一致率を比較したところ、急性心筋梗塞についてはCAHが97.8%に対し非CAHが91.0%、うっ血性心不全はそれぞれ93.5%と80.6%、肺炎は93.7%と89.3%で、いずれもCAH群のパフォーマンスが有意に低率だった(いずれもp<0.001)。また30日死亡率について、急性心筋梗塞では非CAHが16.2%に対しCAHが23.5%(補正後オッズ比:1.70)、うっ血性心不全はそれぞれ10.9%と13.4%(同:1.28)、肺炎は12.1%と14.1%(同:1.20)と、いずれもCAH群で有意に高率だった(いずれもp

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携帯電話メールへの禁煙支援メッセージ自動送信は禁煙の継続に有効

携帯電話メールへの禁煙支援メッセージの自動送信による禁煙支援プログラムは6ヵ月後の禁煙継続率を有意に改善することが、イギリス・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のCaroline Free氏らが実施したtxt2stop試験で示された。タバコは予防可能な死亡の主要原因であり、喫煙が原因の死亡は毎年、世界で500万人以上に上ると推算されている。イギリスでは喫煙者の3分の2が禁煙の意思を表明しており、禁煙支援の効果的な介入法の確立が急務とされる。携帯電話のメッセージ送信機能を利用した禁煙支援は、短期的には自己申告による禁煙を増加させることが示されている。Lancet誌2011年7月2日号(オンライン版2011年6月30日号)掲載の報告。禁煙支援メッセージと行動変容支援から成るプログラムの禁煙継続効果を評価txt2stop試験の研究グループは、携帯電話のメール機能による禁煙支援メッセージの自動送信が禁煙の継続に及ぼす効果を評価する単盲検無作為化試験を実施した。2007年10月15日~2009年6月1日までに、16歳以上の禁煙の意思のある喫煙者で、携帯電話の所持者が登録され、禁煙の動機付けを促すメッセージと行動変容の支援から成る禁煙支援プログラム(txt2stop)を受ける群、あるいは禁煙とは無関係のメッセージを受信する群(対照群)に無作為に割り付けられた。アウトカムの評価を行う者には介入割り付け情報は知らされなかった。主要評価項目は、自己申告による禁煙の継続とし、6ヵ月の時点で生化学的検査(ニコチンの代謝産物であるコチニンの唾液中濃度を測定)による確認が行われた。6ヵ月禁煙継続率:txt2stop群10.7%、対照群4.9%適格基準を満たした1万1,914人のうち5,800人が無作為化の対象となり、介入群に2,915人が、対照群には2,885人が割り付けられた。重複して無作為化された8人を除く、それぞれ2,911人、2,881人が解析の対象となった。主要評価項目の評価は5,524人(95%)で可能であった。6ヵ月の時点で生化学的検査によって禁煙の継続が確認されたのは、txt2stop群が10.7%と、対照群の4.9%に比べ2倍以上に達していた(相対リスク:2.20、95%信頼区間:1.80~2.68、p<0.0001)。フォローアップができなかった者を喫煙者とした場合の禁煙継続率は、txt2stop群が9%(268/2,911人)、対照群は4%(124/2,881人)で(相対リスク:2.14、95%信頼区間:1.74~2.63、p<0.0001)、これらの集団を除外した場合はそれぞれ10%(268/2,735人)、4%(124/2,789人)であり(相対リスク:2.20、95%信頼区間:1.79~2.71、p<0.0001)、双方ともにtxt2stop群で有意に良好な結果が得られた。事前に規定されたいずれのサブグループの解析でも不均一性は認められず、年齢35歳以上/35歳未満、ファガストローム・ニコチン依存度指数≦5/>5、無作為化割り付け時の禁煙製品・サービスの使用の有無にかかわらず、txt2stopは有効であった。著者は、「txt2stop禁煙支援プログラムは6ヵ月後の禁煙継続率を有意に改善したことから、禁煙サービスに加えることを考慮すべき」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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座長:岩田健太郎先生「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる:CareNet+Style連携特別企画」

CareNet+Style連携特別企画】6月12日(日)神戸にて、震災の復興支援活動として災害発生時のリスク・コミュニケーションを考える機会を得ることを目的に、チャリティー・シンポジウムが開催されました。 これは、災害時の記者会見、メディア報道、言葉、コミュニケーションはどうあるべきなのか。当代きっての論客が登場し、東日本大震災時のコミュニケーションのあり方を総括し、あるべき姿を模索したものです。なお、収益は全額寄付し被災地の支援に役立てられます。ケアネットでは、チャリティー・シンポジウムの趣旨に賛同し、映像の撮影、配信、告知をサポートします。※「DocFun」はリニューアルし「CareNet+Style」に生まれ変わりました。1.シンポジウムPR用映像本編はCareNet+Style「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる」をご覧ください視聴者の皆様から義援金を募集しております。振込み先情報は上記ページに記載されております。ご協力賜れますようお願い申し上げます。 2.出演者プロフェール(敬称略、五十音順)※1岩田健太郎 神戸大学都市安全研究センター、大学院医学研究科教授島根医科大学卒業後、沖縄県立中部病院、セントルークス・ルーズベルト病院、亀田総合病院などを経て現職。専門は感染症学。著書に『バイオテロと医師たち』『悪魔の味方 米国医療の現場から』『予防接種は「効く」のか?『「患者様」が医療を壊す』『感染症は実在しない』など。上杉隆 ジャーナリスト 都留文科大学卒業。テレビ局・衆議院公設秘書・「ニューヨークタイムズ」東京支局取材記者などを経て、フリージャーナリストに。政治・メディア・ゴルフなどをテーマに活躍中。自由報道協会(仮) 暫定代表。著書に『石原慎太郎「5人の参謀」』『田中真紀子の正体』 『小泉の勝利 メディアの敗北』 『ジャーナリズム崩壊』『記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争』『ウィキリークス以後の日本 自由報道協会(仮)とメディア革命』など多数。内田樹 武道家、思想家。神戸女学院大学名誉教授東京大学卒業。東京都立大学人文科学研究科博士課程中退。同大学助手を経て神戸女学院大学へ異動。2010年3月に同学教授職を退職。神戸女学院合気道会主宰(合気道6段)。著書に『他者と死者 ――ラカンによるレヴィナス』『現代思想のパフォーマンス』『先生はえらい』『私家版・ユダヤ文化論』(第6回小林秀雄賞)『下流志向』『日本辺境論』(2010年新書大賞)『街場のメディア論』ほか多数。2011年 伊丹十三賞受賞。蔵本一也 神戸大学大学院経営学研究科准教授関西学院大学卒業後、ミズノ株式会社などを経て現職。33年間のサラリーマン経験を活かし、企業活動における社会的責任のあり方に関心を寄せる。コンプライアンス、消費者対応、消費者問題にも詳しい。消費者問題に関する論文多数。2009年 内閣府消費者担当大臣賞受賞。鷲田清一 哲学者 大阪大学総長京都大学大学院文学研究科博士課程修了。関西大学教授、大阪大学大学院文学研究科教授、同理事・副学長を経て、2007年8月大阪大学総長に就任。著書に『モードの迷宮』(サントリー学芸賞受賞)、『じぶん-この不思議な存在』『「聴く」ことの力』 (桑原武夫学芸賞受賞)、『「待つ」ということ』、『てつがくを着て、まちを歩こう―ファッション考現学』、『死なないでいる理由』、『新編 普通をだれも教えてくれない』、『臨床とことば』(河合隼雄氏との共著)、『わかりやすいはわかりにくい?-臨床哲学講座』 など多数。2004年紫綬褒章。※1岩田健太郎氏ブログ『楽園はこちら側から http://georgebest1969.typepad.jp/blog/ 』「災害時のリスクとコミュニケーションを考えるチャリティー・シンポジウム開催について(ご案内)」より転載。写真はシンポジウム時のもの。本編はCareNet+Style「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる」をご覧ください質問と回答を公開中!

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岩田健太郎先生の回答

PTSD日本人はPTSDの頻度は低いと聞きますがその理由は何が考えられますか?そういう話は初耳でした。僕は専門家ではないのであまりうまいコメントはできませんが、PTSDってシチュエーションによって発症頻度にものすごい差があるのですね(1-80%以上まで)。日本ではPTSDという概念の認知そのものが遅いみたいですし、その頻度が本当に低いかは僕にはよく分かりません。阪神淡路大震災後16ヶ月のフォローでは被害の程度にもよりますがだいたい3%くらいの有病率だったそうです(窪田 予防時報2005)。新しいメディアの形内田先生のお話の中で、巨大メディアが崩壊したときに情報難民が生まれる、この層に向けた対処が必要とのお話があったかと思います。岩田先生が考える情報難民を救う新しいメディアの形とは?もしアイデアがありましたらご教示願います。多分、ある特定の新しいメディアというより、いろいろなメディアのミックスをあちこちつまみ食いする、、、というのが新しい形だと思います。新聞とテレビだけ、という定型から脱却するところからスタートではないかと。健康被害が懸念されたタイミングについて医師の目からみて、今回どのあたりの段階から放射性物質による健康被害が懸念されたのでしょうか?医師の中には震災直後から疎開された方がいると聞きました。医師のネットワークの中で何か特別な情報等が流れていたのでしょうか?「懸念」は震災直後からありました。その懸念がどれくらいのものかを見積もるのは、とても困難だと思いましたが(今でも困難を感じています)。医師のネットワークだけで「特別な」情報が流れていたとは思いません。ただ、ネット上にも公開されているチェルノブイリ関係の論文とかの多くは英語ですし、そういう論文へのアクセスや読み方には医師は慣れている傾向があります。メディア今回の論客は皆さん素晴らしい方だと思います。皆さんとは、普段からメディアのあり方について議論するようなお知り合いだったのでしょうか?上杉さん、藏本さん、鷲田さんとは初対面。内田さんとはよくメディアの話をする機会がありました。「街場のメディア論」も愛読しましたし。内田さんと鷲田さんはお知り合いですが、それ以外はみな初対面だったと思います。メディア崩壊について利益相反のお話、大変興味深く拝聴しました。巨大メディアがスポンサーに逆らえない。とはいえ、昔から収益の構造は同じはず。ここまで廃れた原因はなんでしょうか?昔から同じだと思います。露呈しただけで。潔癖症の方へのケア被災された方の中には潔癖症の方もいらっしゃったかと思います。避難所ではどのような行動を取っていたのでしょうか?また、そんな方へのケア方法などございましたら教えてください。避難所で潔癖症の方がどうされていたかは寡聞にして存じません。清潔の維持やプライバシーについては皆さん、大分お悩みだったと思います。避難所での簡易住宅を提供している建築家もいたとききました(段ボールだけだとさすがに、と僕も思います)。アルコールの手指消毒薬はわりとふんだんに提供されていたようですが、お風呂とかはたいへんでしょうね。仮設住宅入居者へのケア避難所と仮設住宅では、ケアの方法も変わってくるかと思います。仮設住宅にいる方々のQOLを考えた場合、必要なケアは何ですか?また、仮設住宅地で懸念される感染症についてもご教示いただければ幸いです。僕の意見では、やはりコミュニケーションだと思います。阪神淡路大震災でも仮設住宅で孤独になってしまった人は多かったとききます。仮設住宅に特化して増える感染症は特にないと思います。高齢者とのコミュニケーション仮設住宅地をボランティアで回っている医学生です。高齢者とうまくコミュニケーションがとれる秘訣があればご教示下さい。一般のコミュニケーションと同じです。相手の話を聞くこと。岩田先生の情報ソースを教えて下さい。岩田先生は、基本テレビは見ない(サッカーしか見ない)、ニュースも最低限だけとおっしゃっていましたが、そんな中で、岩田先生の一番重要な情報ソースは何でしょうか?一番、というのを作らないようにしています。いろいろな情報ソースからトライアンギュレーションをかけています。上杉さんもそんなことおっしゃってましたよね。総括みなさんするどい質問ばかりですね。緊張しました。座長:岩田健太郎先生「メディアに振り回されない、惑わされない医療者になる:CareNet+Style連携特別企画」

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初発慢性骨髄性白血病の治療選択肢が増加、使い分けの時代へ

 2011年6月16日、抗悪性腫瘍剤ダサチニブ(商品名:スプリセル)が慢性骨髄性白血病(CML)のファーストライン治療薬としての新たな効能が承認されたことを受け、同月30日、ブリストル・マイヤーズ株式会社と大塚製薬株式会社による記者説明会が開催された。本会では、名古屋第二赤十字病院血液・腫瘍内科部長の小椋美知則氏より、CML治療の変遷と国際共同第3相試験「DASISION試験」の結果、さらにCML治療の今後の展望について講演が行われた。初発CMLに対する治療選択肢が3剤に 2001年、チロシンキナーゼ阻害薬イマチニブが登場し、CMLの治療成績は著明に改善した。その後、より強力なBCR-ABLチロシンキナーゼ阻害作用を持つ第2世代チロシンキナーゼ阻害薬、ニロチニブ、ダサチニブが開発され、イマチニブ抵抗性・不耐容のCMLに対して承認された。さらに、初発慢性期CMLに対してイマチニブと比較した臨床第3相試験の成績から、2010年12月にニロチニブが、また今月2011年6月にダサチニブが初発CMLに対して承認された。 これで、初発CML治療にイマチニブ、ニロチニブ、ダサチニブの3剤が使用できることになり、年齢や合併症など患者さんの状態を考慮した治療薬の使い分けが可能となった。 現在、米国のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)の治療ガイドライン(CML Treatment Guideline Ver2. 2011)では、慢性期CMLと診断された場合の治療選択肢として、チロシンキナーゼ阻害薬(イマチニブ400mg、ニロチニブ300mg1日2回、ダサチニブ100mg1日1回)がCatedory1として推奨されている。国際共同第3相試験「DASISION試験」におけるダサチニブの成績 DASISION試験は、初発慢性期CMLを対象にダサチニブ100mg1日1回投与とイマチニブ400mg1日1回投与を比較した、非盲検・ランダム化・国際共同第3相試験である。519例(うち日本人49例)が登録され、ダサチニブ259例(同26例)、イマチニブ260例(同23例)がランダムに割り付けられた。主要評価項目は、12ヵ月間のConfirmed CCyR(細胞遺伝学的完全寛解)率、すなわち28日間以上の間隔で連続したCCyR率である。 本試験において、12ヵ月時点のConfirmed CCyR(ダサチニブvsイマチニブ:77% vs 66%、p=0.0067)、CCyR(同:83% vs 72%、p=0.0011)、分子遺伝学的Major寛解(MMR)(同:46% vs 28%、p

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COPD患者に対するミストタイプのチオトロピウムと死亡率との関連

慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対するミストタイプのチオトロピウム(商品名:スピリーバ・レスピマット)について、米国・ジョンズホプキンス大学医学校のSonal Singh氏らは、無作為化試験のシステマティックレビュー、メタ解析を行い、死亡率との関連を検討した。ミストタイプのチオトロピウムは世界55ヵ国で承認されているが、米国では未承認。著者らは2009年12月中旬、米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイト上に、従来製剤である粉末タイプのチオトロピウム(同:スピリーバ・ハンディへラー)の安全性への懸念から行われた同年11月19日付ヒアリング文書を見つけ、粉末タイプとミストタイプは異なった製剤と考えられるとして、ミストタイプのチオトロピウムについての安全性を行ったという。結果、「当局の安全性に対する懸念を明らかとする、ミストタイプのチオトロピウムは死亡リスクを52%増大することが示された」と報告している。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月14日号)掲載より。プラセボ対照並行群間無作為化試験をメタ解析Singh氏らは、創刊~2010年7月のMedline、Embase、製薬会社臨床治験レジスター、FDAウェブサイト、ClinicalTrials.govをデータソースとし、COPDに対するミストタイプのチオトロピウムとプラセボとを比較した並行群間無作為化試験で、治療期間が30日以上、死亡率についての報告があるものを選んだ。適格条件を満たした試験は、5件だった。全死因死亡の相対リスクについて、固定効果メタ解析を用いて評価した。不均一性はI(2)統計値で評価した。死亡リスク増大との関連が有意結果、ミストタイプのチオトロピウム(チオトロピウム群)は、死亡リスク増大との関連が有意であった[90/3,686例 vs. 47/2,836例、相対リスク:1.52、95%信頼区間:1.06~2.16、P=0.02、I(2)=0%]。チオトロピウム群には10μg投与群と5μg投与群が含まれていたが、いずれの投与量群とも死亡リスク増大との関連は有意であった。10μg投与群は2倍強[相対リスク:2.15、95%信頼区間:1.03~4.51、P=0.04、I(2)=9%]、5μg投与群は46%増大[同:1.46、1.01~2.10、P=0.04、I(2)=0%]だった。全体的な評価は実質的な変化は認められなかった。すなわち、感度分析(ランダム効果モデルを用いて5試験を統合した固定効果解析による)での相対リスクは1.45(95%信頼区間:1.02~2.07、P=0.04)だった。また、死亡率の評価は主に評価期間が1年だった3試験により行われ限定的であったが、相対リスクは1.50(同:1.05~2.15、P=0.03)だった。さらに、他の治験プログラムからデータを追加した6試験による解析の相対リスクは1.42(同:1.01~2.00、P=0.05)だった。長期試験のコントロール群平均発生率をベースとする、5μg投与群で死亡が年間1例追加となるNTT(number needed to treat)は124(95%信頼区間:52~5,682)と推定された。

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