COPD患者に対するミストタイプのチオトロピウムと死亡率との関連

提供元:ケアネット

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公開日:2011/07/01

 



慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者に対するミストタイプのチオトロピウム(商品名:スピリーバ・レスピマット)について、米国・ジョンズホプキンス大学医学校のSonal Singh氏らは、無作為化試験のシステマティックレビュー、メタ解析を行い、死亡率との関連を検討した。ミストタイプのチオトロピウムは世界55ヵ国で承認されているが、米国では未承認。著者らは2009年12月中旬、米国食品医薬品局(FDA)のウェブサイト上に、従来製剤である粉末タイプのチオトロピウム(同:スピリーバ・ハンディへラー)の安全性への懸念から行われた同年11月19日付ヒアリング文書を見つけ、粉末タイプとミストタイプは異なった製剤と考えられるとして、ミストタイプのチオトロピウムについての安全性を行ったという。結果、「当局の安全性に対する懸念を明らかとする、ミストタイプのチオトロピウムは死亡リスクを52%増大することが示された」と報告している。BMJ誌2011年6月18日号(オンライン版2011年6月14日号)掲載より。

プラセボ対照並行群間無作為化試験をメタ解析




Singh氏らは、創刊~2010年7月のMedline、Embase、製薬会社臨床治験レジスター、FDAウェブサイト、ClinicalTrials.govをデータソースとし、COPDに対するミストタイプのチオトロピウムとプラセボとを比較した並行群間無作為化試験で、治療期間が30日以上、死亡率についての報告があるものを選んだ。

適格条件を満たした試験は、5件だった。

全死因死亡の相対リスクについて、固定効果メタ解析を用いて評価した。不均一性はI(2)統計値で評価した。

死亡リスク増大との関連が有意




結果、ミストタイプのチオトロピウム(チオトロピウム群)は、死亡リスク増大との関連が有意であった[90/3,686例 vs. 47/2,836例、相対リスク:1.52、95%信頼区間:1.06~2.16、P=0.02、I(2)=0%]。

チオトロピウム群には10μg投与群と5μg投与群が含まれていたが、いずれの投与量群とも死亡リスク増大との関連は有意であった。10μg投与群は2倍強[相対リスク:2.15、95%信頼区間:1.03~4.51、P=0.04、I(2)=9%]、5μg投与群は46%増大[同:1.46、1.01~2.10、P=0.04、I(2)=0%]だった。

全体的な評価は実質的な変化は認められなかった。すなわち、感度分析(ランダム効果モデルを用いて5試験を統合した固定効果解析による)での相対リスクは1.45(95%信頼区間:1.02~2.07、P=0.04)だった。また、死亡率の評価は主に評価期間が1年だった3試験により行われ限定的であったが、相対リスクは1.50(同:1.05~2.15、P=0.03)だった。さらに、他の治験プログラムからデータを追加した6試験による解析の相対リスクは1.42(同:1.01~2.00、P=0.05)だった。

長期試験のコントロール群平均発生率をベースとする、5μg投与群で死亡が年間1例追加となるNTT(number needed to treat)は124(95%信頼区間:52~5,682)と推定された。