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身体的障害の介護施設入所者のうつ病、複合的治療プログラムで効果/Lancet

 オランダ・ナイメーヘン・ラットバウト大学メディカルセンターのRuslan Leontjevas氏らは、うつ病に対する介入プログラムとして開発された、多職種による複合的治療プログラム「Act in Case of Depression」(AiD)について、身体的障害の介護施設入所者についてはうつ病改善の効果があることを報告した。一方で、認知症の介護施設入所者のうつ病については、同プログラムによる効果は認められなかったという。約800例の介護施設入所者を対象に、stepped-wedge法による無作為化比較試験を行い明らかにしたもので、Lancet誌オンライン版2013年5月2日号で発表した。認知症および身体的障害の施設単位でプログラムの効果について無作為化試験 AiDプログラムは、ナイメーヘン大学ナーシングホームネットワーク協会(UKON:加入者全体で認知症ユニット約5,500床、身体的障害ユニット3,300床からなる)が開発したもので、看護スタッフや行動療法士(activity therapist)、心理士(psychologist)、医師により提供される治療プログラムである。 Leontjevas氏は、2009~2011年にかけて、オランダの介護施設の認知症部門16ヵ所(入所者数403例)と身体的障害部門17ヵ所(同390例)を対象に、無作為化比較試験を行った。各部門の入所者をそれぞれ無作為に5群に分け、約4ヵ月タイミングをずらし、それぞれAiDプログラムを実施した。被験者は、同プログラムの実施時期や内容については知らされていなかった。研究スタッフも、同プログラムの内容やうつ病治療歴、前回アセスメントの結果は知らされていなかった。 主要エンドポイントは、各部門における、コーネル認知症抑うつ尺度(CSDD)スコアが>7のうつ病罹患率だった。身体的障害部門入所者、AiDプログラムでうつ病罹患率7%減 その結果、身体的障害部門では、AiDプログラムによってうつ病罹患率の低下が認められた(補正後効果量:-7.3%、95%信頼区間:-13.7~-0.9)。一方、認知症部門では、同罹患率の有意な低下は認められず(同:0.6、-5.6~6.8)、身体的障害部門との有意差が認められた(p=0.031)。 うつ病評価手法に関するアドヒアランスは、身体的障害部門では82%(標準偏差:15)だったのに対し、認知症部門では69%(同:19)と有意に低かった(p=0.045)。また、治療パスウェイへのアドヒアランスは、身体的障害部門38%(同:40)、認知症部門43%(同:33)で有意差はみられなかった(p=0.745)。

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ビタミンDの摂取がパーキンソン病の症状を安定化させる-本邦での報告-

 ビタミンD受容体遺伝子多型のうちFokⅠT/T型またはFokⅠC/T型を持つ患者が、ビタミンD3を摂取することで、高カルシウム血症を引き起こすことなく、短期的にパーキンソン病の症状を安定化させる可能性が、東京慈恵会医科大学の鈴木正彦氏らによって示唆された。しかしながら同氏は、この効果がパーキンソン病に限らない可能性も示唆している。The American journal of clinical nutrition誌2013年5月号(オンライン版2013年5月13日号)掲載の報告。 過去の研究では、血清25-ヒドロキシビタミンD[25(OH)D]値が高値であることと、ビタミンD受容体遺伝子多型のうちFokⅠC/C型をもつことが、パーキンソン病の症状軽減に関連していることが報告されている。本研究の目的は、ビタミンD3の摂取によりパーキンソン病の進行を抑制できるのは、どのようなビタミンD受容体遺伝子多型をもつ患者なのかを明らかにすることである。 本研究は12ヵ月間の二重盲検比較試験で行われた。対象となるパーキンソン病患者114例は、ランダムにビタミンD3投与群56例(1200IU/日)とプラセボ投与群58例に割り当てられた。評価項目は、統一パーキンソン病評価尺度(UPDRS)とHoehn and Yahr(HY)分類において悪化がみられなかった患者の割合と、ベースラインからの臨床的変化とした。 結果は以下のとおり。・プラセボ投与群と比較し、ビタミンD3投与群では有意にHYステージの悪化が抑制されていた(群間差のp=0.005)。ビタミンD3投与群の変化は+0.02±0.62(p=0.79)、プラセボ投与群の変化は+0.33±0.70(p=0.0006)であった。・相互作用解析によって、HYステージ(p=0.045)、UPDRS総スコア(p=0.039)およびUPDRS partIIスコア(p=0.021)それぞれに有意差が認められたことから、ビタミンD受容体遺伝子多型をもつことがビタミンD3の効果を変えることが示された。・とくに、FokⅠT/T型およびFokⅠC/T型の遺伝子多型をもつ患者では、プラセボ群と比較して、HYステージの悪化はビタミンD3投与群で有意に抑制されていたことが明らかとなった。FokⅠT/T型における、ビタミンD3投与群の臨床的変化は-0.38±0.48(p=0.91)、プラセボ投与群の臨床的変化は+0.63±0.77(p=0.009)であった(群間差のp=0.009)。FokⅠC/T型(p=0.020)におけるビタミンD3投与群の臨床的変化は±0.00±0.60(p=0.78)、プラセボ投与群の臨床的変化は+0.37±0.74(p=0.014)であった(群間差のp=0.020)。しかしながらFokⅠC/C型をもつ患者では違いが認められなかった。同様の傾向がUPDRS総スコアおよびUPDRS partIIスコアにおいても認められた。

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高齢者では喫煙が慢性疼痛を増悪させている可能性がある

 スウェーデン・ルンド大学のUlf Jakobsson氏らによる横断研究の結果、65歳以上の高齢者では喫煙が慢性疼痛の強さと関連していることが明らかになった。著者は、喫煙をやめさせるための介入が、高齢者の疼痛を緩和する一つの方法となるかもしれないとまとめている。Pain Practice誌オンライン版2013年4月12日号の掲載報告。 2011年に、スウェーデン在住の65歳以上の高齢者2,000人を無作為に抽出し、人口統計学的データ、生活状況、タバコ(喫煙用タバコまたは湿性嗅ぎタバコ)の使用、主観的健康、慢性疼痛(疼痛の強さ、持続期間、疼痛の場所)について郵送によるアンケート調査を行った。 慢性疼痛は、3ヵ月以上持続する痛みと定義した。  主な結果は以下のとおり。・1,141人から回答を得た(回答率57%、65~103歳、女性53.6%)。このうち38.5%が慢性疼痛を有しており、喫煙者は9%であった。 ・喫煙者のうち47.6%が慢性疼痛を有していた。 ・喫煙者は非喫煙者と比較して、慢性疼痛の強度は有意に高かったが、有病率はそうではなかった。 ・サブグループ解析において、女性は喫煙者と非喫煙者との間に疼痛強度と有病率のいずれも有意差を認めたが、男性は疼痛強度のみであった。 ・湿性嗅ぎタバコと疼痛には関連はなかった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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抗てんかん薬のプラセボ効果、東アジアと欧米で地域差

 北里大学薬学部の橘 洋介氏らは、抗てんかん薬の臨床試験でみられるプラセボ効果に関与する因子について検討を行った。その結果、東アジアと欧米諸国ではプラセボ効果に差がみられること、長い罹病期間と複雑部分発作の存在がプラセボ効果の減弱に関連していることを報告した。結果を踏まえて著者は、「プラセボ効果の地域差の理由は明らかでないが、将来的に部分てんかんに対する抗てんかん薬の臨床試験をデザインするにあたり、プラセボ効果に関与する患者特性を慎重に考慮する必要がある」と指摘している。Clinical Drug Investigation誌2013年5月号の掲載報告。 抗てんかん薬の臨床試験においてプラセボ効果が認められることが知られており、これに関する検討が行われている。最近のメタアナリシスでは、東アジアの試験で予想外の高いプラセボ効果が示された。多国間試験が広く実施されるようになってきている中、将来の臨床試験のために地域や国によるプラセボ効果の相違を理解しておくことは重要である。本メタ解析では、難治性部分てんかん成人患者に対する併用療法の臨床試験において、プラセボ効果に関与する因子を東アジア人と欧米人で比較検討することを目的に実施した。東アジアと欧米諸国で実施され、公表されている臨床試験論文を基にデータベースを作成し、プラセボ効果の程度と潜在的影響因子との関連について、ロジスティック回帰分析を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・5種類の抗てんかん薬(ガバペンチン、トピラマート、レベチラセタム、プレガバリン[本疾患には国内未承認]、ゾニサミド)に関連する33件の臨床試験よりデータベースを作成した。・プラセボ効果は、罹病期間、ベースライン時の複雑部分発作を有する患者の割合、2種類の抗てんかん薬が投与されている患者の割合、ベースライン時の発作頻度といった患者特性、および臨床試験の報告年と関連していた。・長い罹病期間とベースライン時の複雑部分発作は、プラセボ効果の減弱に関連していた。・ロジスティック回帰分析により、東アジアで実施された試験のプラセボ効果のほうが、欧米諸国で実施された試験と比較して統計学的に高かった。関連医療ニュース ・疼痛治療「プラセボでも一定の効果が」臨床試験に課題も ・抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害 ・てんかんと寄生虫感染との関連説を確認

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「自分には関係ない」「定年後にはアリかな」…“僻地医療”、どうお考えですか?

高齢化が進む日本。過疎化も手伝って、全国各地で増加中なのが「限界集落」です。“人口の50%以上が65歳以上の高齢者となって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落”のことだそうですが、こういった地域の増加に伴ってますます重要になっているのが「僻地医療」。身も心もその地に…の“Dr.コトー”のイメージが強い僻地医療、しかし実際はドクターヘリや交代医師派遣、巡回診療など、現地に常駐する以外の形で僻地をサポートしている先生方も多くいらっしゃいます。今回はそんな僻地医療に対する先生のお考えを聞いてみました!コメントはこちら結果概要医師の3割以上が 『僻地医療に携わった経験がある』僻地医療に関する経験を尋ねたところ、全体の63.8%は『携わったことがない』と回答。現在『常勤で携わっている』が全体の7.5%。パートタイム、巡回、ドクターヘリなど『常勤以外』で携わっている医師が4.8%、「医局からの派遣」などで『以前携わっていた』とした医師は23.9%。全体の3割以上が何らかの形で僻地医療に携わった経験を持つことが明らかとなった。30代以下の約半数『条件次第で考えたい』、年を重ねる毎に『関心はあるが携われない』増加現在携わっていない(経験者含む)医師に対し、今後の考えを尋ねたところ、『将来的には考えたい』7.9%、『勤務体制次第』12.1%、『待遇次第』14.7%という結果となり、全体の34.7%が検討の可能性があると回答。30代以下では48.9%に上った。一方、“携われない”と回答した人の割合は30代以下で51.1%、60代以上で76.9%と年代と共に上昇。『全く関心がない』とする人は逆に減る傾向にあり「気持ちはあるが体力がついていかない」など、『関心はあるが携われない』人が多く見られた。若手「都市部でキャリアアップしたい」、中堅 「子供の教育が」、ベテラン「専門科以外自信がない」『携われない/関心がない』と回答した医師にその理由を尋ねたところ、『教育・介護などで住まいを移せない』36.1%、『多忙で余裕がない』32.8%、『開業しているため』27.1%などと続き、『自分が携わる必要があると思わないため』は7.2%であった。若手医師から「僻地ではキャリアアップにつながる仕事ができない」、ベテラン医師からは「医師が少ない中では診療科を問わず広く診る必要があるが、もう自分の専門科以外を診る自信がない」といったコメントが寄せられた。濃密な人間関係、ひとりにかかる重い責任…現状打開の鍵のひとつは“チーム制”携わるにあたってのハードルとして、経験者から「人員・設備不足の中で都市部と同レベルの医療を求められ、訴訟社会の今はリスクが高すぎる」「プライバシーがない・よそ者扱いされるなど人間関係の難しさ」といったことが挙げられた。ひとりの医師に24時間の負担をかけるのではなく、チーム制・輪番・期間限定などの体制を組めば携わる医師が増え、状況が改善するのでは、といった意見も複数見られた。設問詳細現在、全国各地で高齢化が進み、中山間地域・離島を中心とした地方では、過疎化と共に“限界集落”※が増加しているといわれています。※人口の50%以上が65歳以上の高齢者となって、冠婚葬祭など社会的共同生活の維持が困難になっている集落このような状況下、僻地診療所や小規模な病院による医療提供のほかに、診療所と大規模病院の連携・一時的な交代医師派遣・専門医による巡回診療・ドクターヘリの出動なども含めたかたちの“僻地医療”の充実が望まれています。医療分野における“僻地“とは:厚生労働省により『交通条件及び自然的、経済的、社会的条件に恵まれない山間地、離島その他の地域のうち、医療の確保が困難である地域。無医地区、無医地区に準じる地区、僻地診療所が開設されている地区等が含まれる』と定義されていますそこで先生にお尋ねします。Q1.現在、僻地医療に携わっていらっしゃいますか常勤で携わっている常勤以外(パートタイム・巡回・ドクターヘリなど)で携わっている以前携わっていた携わったことがない(「以前携わっていた」「携わったことがない」の回答者のみ)Q2.僻地医療に携わることについて、先生のお考えに近いものをひとつお選び下さい将来的には考えたい勤務体制(期間/曜日限定、要請時のみなど)次第で考えたい待遇(報酬・休息時間など)次第で考えたい関心はあるが携われない全く関心がない(「関心はあるが携われない」「全く関心がない」回答者のみ)Q3.僻地医療に携われない・関心のない理由をお聞かせ下さい(複数回答可)開業しており、自分の交代要員がいないため多忙で他の業務に携わる余裕がないため診療科を問わず総合的な診療を行うことが不安なため自分の専門科の必要性が薄いと思うため設備の充実していない施設での医療提供が不安なため医療技術が遅れないか不安なため住民・風土に馴染めるか不安なため僻地の生活環境で暮らせないと思うため子供の教育・親の介護など、現在の住まいを移せないため自分が携わる必要があると思わないためその他Q4.コメントをお願いします(現在携わっている/以前携わっていた先生はその内容、充実している点・困った点など日々感じることやエピソード、携わっていない先生は理由・懸念点、そのほか僻地医療に関わることであればどういったことでも結構です)2013年4月26日(金)実施有効回答数1,000件調査対象CareNet.com会員コメント抜粋(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承下さい)「住民にとっては無医村解消であっても、自分にとっては無医村なのが心配。医療はチームで考えるべき」(青森県,50代,循環器科)「僻地病院で約1週間単位での交代勤務をしている。常勤はやはりつらいと感じる。1週間交代での勤務は、医師によって「先送り診療」が生じ患者さんに不利益が生じることがある。もう少し長いスパンでの交代も望ましいかと思う。」(北海道,40代,産婦人科)「満足できる報酬と住民の理解が得られる事が最低条件。住民が「自分たちの税金で雇っている」という感覚で、いつでも診察を要求したり、生活を見張っていたりするような地域では、医師は居着かないのでは」(宮崎県,50代,循環器科)「赴任に関しては、ある程度の行政指導などの強制力(1-2年間くらい?)が必要なのかも」(福岡県,50代,外科)「僻地の方は病院へ2時間移動はざらですから、診療所が近くにあると喜ばれる。これだけでもやりがいに」(愛知県,50代,麻酔科)「本当に医療を必要に感じている人は自ら都会へ足を運びます。僻地医療という閉鎖的な響きを払拭し、各都市間で横の連携を深めないと、この時代に「あかひげ先生」を奨励してもしょうがないと思う」(北海道,40代,消化器科)「島に一人の医師でした。かなり重圧…」(京都府,50代,内科)「学会専門医や単位がいつとれるのか、維持できるのか?大学におけるインセンティブがとれるのか、不安になったことがあります。そのとき思ったのが交代制。必ず期間を区切ること、将来のキャリアアップにつなげることができれば、地域医療に一時的にかかわるのは悪くないと思いました」(北海道,40代,内科)「基幹病院の立場から協力しています。僻地の先生から無理難題を押し付けられることもありますが、できる範囲でこれからも協力したいと思います」(愛媛県,60代以上,脳神経外科)「東北の沿岸部で常勤。自然が豊かで、ダイビング・釣りなどできる。困ったのは、医師も住民も権利意識が強いこと、医療のレベルが低いこと(正しい医療より、保険点数重視)。今の病院・前の勤め先も津波でえらい目にあったが、楽しく前向きに仕事してます」(岩手県,60代以上,内科)「私のような特殊領域を専門とする医師は僻地の医療機関に常勤医としては不要である。但し、僻地の診療所の非専門医からのコンサルテーションは積極的に受託している。現在は当該医療機関の医師と私の個人的信頼感に基づいているが、公的ネットワーク(病理組織の遠隔診断のような)の構築が必要と思われる。」(京都府,50代,その他)「強制的にやっても無理でしょう。志のある人にやってもらえばいいと思う」(神奈川県,60代以上,消化器科)「広範囲の疾患に対応する必要があり、経験豊富な医師でないと務まらない」(秋田県,50代,内科)「一番の懸念は『一人きりの医師』として拘束される時間。それが解決できれば考える余地はある」(鹿児島県,50代,麻酔科)「期間限定ならかまいません。いろいろなところでの医療に携われるのは経験にもなって良いと思う」(北海道,40代,精神・神経科)「以前携わっていたのは風光明媚な所で、勤務ものんびりしていた。家族としては幸せだったらしいが、キャリアとしてはこのままではだめだという意識が常にあり、結局短期間でそこを離れることになった」(福島県,40代,内科)「定義によっては僻地とみなされない地域で勤務しています。子弟の教育に不利で、ちょっとした研究会への参加が困難。県庁所在地(むしろ医学部所在地か)や中央へ行くことが多く移動で疲労する。食事をする店もありません」(広島県,40代,内科)「非常勤で勤務していた先で、治療が必要な患者さんを診ても送り先を探すのに苦労した。人口も医療資源も少ない地域では現実的にできることは限られるし、勤務のストレスは大きくなる。医局制度があった当時のほうがまだよかったが、もう戻らない」(愛知県,40代,神経内科)「定年退職後、僻地とはいえませんが九州から北海道東部の重症心身障害児施設へ月に1週間けいれん患者の診療に行っています。そもそも重症心身障害児医療に従事する医師が少ない上に道東地区は医師の絶対数が少ない。多くの重症心身障害児を一人の医師が診て、巡回診療もしている。何とかならないかと愚考しています」(大分県,60代以上,小児科)「週2回、へき地のコミュニティーセンターの1室で1時間診療を行なっている。検査は心電図しかないが、患者さんには喜んでもらっています」(香川県,60代以上,循環器科)「常勤。郷里ではありますが、人間関係が濃厚すぎて…」(長崎県,40代,内科)「短期ボランティアで各地に行きます。外からの継続的な支援が、ずっと僻地医療に関わっている医療者の助けになればと」(神奈川県,30代以下,内科)「自分の老後にボランティア感覚で貢献したいとは思うが、現役バリバリのときはキャリアアップにつながる仕事をしたいので僻地医療をしているヒマはない」(京都府,30代以下,呼吸器科)「以前は数年おき交代の派遣で維持されていたが,医局制度の崩壊により片道切符になった」(石川県,40代,循環器科)「僻地医療は24時間の対応が必要でボランティア的な要素が大きい。自分の郷里若しくはお世話になった地域等でなければなかなかモチベーションを保てないのではないか。」(埼玉県,60代以上,内科)「50代後半にもなって僻地で生活したいとは思わない。24時間オンコールのような状態で、患者の転送システムもうまくいっている地域はごくわずかであろう。年収が3倍にでもしてくれないと」(宮城県,40代,内科)「へき地ではないが、田舎での勤務は経験あります。月に1週間、1年くらい通いました。どんな飲食店にいっても顔を知られていて、人々の話を時間的に並べるとその日の自分の行動が丸わかりになる。ちょっとしんどかった1年でした」(京都府,50代,呼吸器科)「僻地で長期間を経れば、現在の医療について行かれなくなり、離任した頃には次の行く先を失ってしまう。一定期間での確実な交代が不可欠であり、全く無関係の医師が行くことも好ましくない。かつてのように、医局単位で同門者から脈々と勤務者が派遣されることは、連続性という意味でも、非常に好ましい制度であったように感じている。」(東京都,50代,呼吸器科)「子供が成長して、一緒にいなくてもよくなれば考えるかも」(神奈川県,40代,小児科)「僻地医療の重症受け入れ機関で働いていたが、かかりつけ医との役割分担が不十分で、何でもかんでも大きな病院という患者が多く、体制づくりが必要と感じた」(千葉県,30代以下,総合診療科)「専門バカになっており、ジェネラリストとしてやっていけるかどうかが不安」(東京都,40代,神経内科)「家族の生活や子供の教育を考えると、一家揃って僻地に赴くことは現時点で不可能。ひとりで一手に引き受けるのも負担が大きく、複数の担当者でチームとして診療に当たれるような体制が望まれる」(福岡県,40代,泌尿器科)「離島での産科医療は、即断即決で常に背水の陣にあり、重圧を常に感じる。特に悪天候の折には、ヘリも高速ボートも使えず覚悟がいる」(佐賀県,60代以上,産婦人科)「以前は大学からのパートで僻地に行っていた。当時より高齢化しており、長期的には都市部に医療資源を集めるべきだと思うので、そちらに計画的に移ってもらうのが理想。それとは別に、医師全員が研修医の時期など一定期間必須で携わるべきだと思う。総合科の医療はそこにあるので勉強になる」(徳島県,40代,消化器科)「以前、僻地の公立病院に勤務。盆と正月は最悪。都会から患者の息子ら帰省、東京並みの医療を求めてクレーム。「しばらく見ないうちにこんなに弱っている。いったい今まで何を管理していたのか!」老親「先生、すみませんねえ」と申し訳なさそうに言うも、お亡くなりになれば、文句を言ってくるのは都会の息子らなので、もうこんな僻地ではやってられないと退職、都会に避難。僻地に住むなら、僻地で提供できる医療の範囲をわきまえてほしい」(大阪府,40代,呼吸器科)「妻帯者が通勤困難な僻地に単身赴任するのは家庭崩壊に繋がる為、独身の医師でないと務まらないと思われる」(宮城県,40代,循環器科)「お手伝いが出来ればいくらでもしたいという気持ちはあるが、かなりの専門性が問われるようになり、大変厳しい時代になっていると思う」(東京都,50代,皮膚科)「そもそも医療に限らず十分なサービスを望むものはそれが充実した地域に移住すべきだと考えています。僻地に住むのは、不便であることを含めて住むということ。よって、医療サービスを無理して僻地に持っていく必要は全くないと思う」(福岡県,40代,皮膚科)「若い時期は自分の能力を向上させるため僻地にとどまることができないと思うし、年をとると体力的に役立つことができなくなるしで、結局僻地医療に従事できなかった。 一度僻地に行くと交代の医師がいない限りやめることができない懸念があるので、派遣の形でも交代医師を確保する体制が必要だと思います。僻地医療の良さもあるはずですので、誰もが一度は経験する機会を制度として組み込むのも良いかと思う」(神奈川県,60代以上,精神・神経科)「5km四方に医療機関はなく救急車もないような山奥の寒村に、短期間ではあったが一人でいた。数十年前の話では参考にもならないだろうが、オートバイで峠を越えての往診で帰路の降雨で峠を越せず、患者宅に戻り車を預けて熊でも出そうな夜の山道を帰ってきて半日を消費し、その間の外来患者さんを診られなかったことや、簡単な手術と思ってもたった一人で実施したことなどを振り返ると、何も起こらなかったのはただ幸運だっただけ。実は冷や汗ものだったので、若気の至りでもなければ出来る事ではない」(東京都,60代以上,産婦人科)「私自身はいい思い出しかありません。住民の方も優しい方が多かったですし、むしろ地域病院で臨床力をつけたと思っています」(和歌山県,50代,内科)「単なる人員確保として高額な給与を提示したり、医学生や研修医の囲い込みを図っているようにしか見えないが、非効率な上に役にたたず、問題だらけだと思う。一番良いのは「経験もあって」「人脈もしっかりしていて」「自分の家族、特に子育てを終了している」一般に定年を過ぎた老人医師でグループを形成し(一人や二人にすべて押し付けるのではなく!)週2~3日程度の勤務であれば、人は集まると思うし実際の役に立つ。資源(老人医師)の有効活用にもなる。そういう勤務なら田舎暮らししようという気になる連中はたくさん知っている。 あとは、過疎地域の社会生活をどうやって成り立たせて行くのか、統廃合するのか、もっと高い視点から俯瞰した行政のビジョンと手腕が必要である。けして小手先の対応策に逃げないでほしい」(長野県,50代,外科)「常勤です。田舎なのでのんびりしてますが、子供を通わせたい進学校は遠く、いずれ息子を下宿させるか、自分が単身赴任するかを選ばなくてはいけなくなっています。 買い物も週に2回車で40分かかるスーパーに行ってますが、更に奥の部落からだと1時間半、救急車が指定病院に到着するまでも同じくらい掛かります」(秋田県,40代,内科)「自分の診療所を閉めたら考えたいが、その時自分は役に立たないかもしれません」(東京都,50代,内科)「僻地にも医師は不足していると思うが、都会でも医師が充実しているところは一部で、現職場では全くの人材不足。また、やはり家族の問題が大きい。自分一人なら良いが、家族も一緒には連れて行けないし離れて暮らすつもりはない」(兵庫県,40代,内科)「僻地医療の充実に必要なコストと僻地に住む人が病院にアクセスできるよう道路整備を行うコストを比較してよりコストパフォーマンスの高い方法を選択すると良いのでは?僻地に常勤医は医療資源の無駄遣いのように思います。医療の不充実などのデメリットを承知の上で住んでいると思う。限られた予算ですべての要求を満たすことは不可能でしょ」(広島県,30代以下,整形外科)「僻地に都市並みの医療機関は必要ない。現状の僻地医療は補助金で運営されているのが現状であり、受益者負担になっていない。一票の格差同様、極めて不平等である」(北海道,40代,内科)「スタッフが多かった頃は離島の応援業務に出ていましたが、今は人数的に不可能です。離島に関しては、常勤を希望するDrが不在の場合は、回り持ちで応援するシステムを構築するのが理想だと思います。」(京都府,50代,産婦人科)「現在常勤である。敷居は高くないので、多くの先生方に積極的に関わって頂きたい」(長野県,50代,呼吸器科)「24時間365日の待機体制。1日外来数100名。有床診で重症者多数。深夜0時以降も毎日のように呼び出され、週1~2回は地域の集会にも呼ばれる。感謝されることもあるが、「当然」と思っている住民が多く、身が持たない。離島の診療所で2年間勤務したが、一時期は医師を辞めることも考えたくらいで、疲弊して帰ってきた。今は地方の病院勤務だが、二度と関わりたくない」(鹿児島県,40代,内科)「放射線治療をずっとやってきたので、大病院での勤務が続いたが、定年退職後は総合診療医としてへき地医療を考えている」(岡山県,60代以上,放射線科)「僻地医療に機会があれば一度は携わりたいと思います。しかし僻地医療に携わるためには総合内科としてのスキルがある程度必要であり、ある程度医療経験が必要であり、若いうちに行くことは難しいと思います。逆に30-40歳になると家庭があり難しい面もあると考えます」(香川県,30代以下,内科)「40才前半で医局より派遣。学位と引き換えでしたが。すべて1人ということで24時間勤務。対応をある程度断らないと自分の体がもたない。自分の体と、家庭、使命感のはざまでした。3~4人で埋めればなんとかなるのだろうが。人件費等を考えると、へき地医療は公立病院の使命ではないか。公費、税金でマイナスを補てんしているのですから。めんどくさいことはすべてお断り、9時~5時ただいるだけというような公立病院は廃止して、その分へき地医療に充てればよい。」(東京都,50代,内科)「家族のため現在は難しいのですが、その状況が変化すれば考えてみたいです。好きな地方があるのでそこへ行きたいです」(東京都,30代以下,泌尿器科)「結局、余所者という立場からは脱却できないのではないかという懸念がある。高待遇で呼ばれても、村長が『自分より高い給料はけしからん』といって待遇が変われば、それらの付加価値はすぐなくなるであろう。それに対して地元民が擁護してくれるとは思えず、結局使い捨てになるのではないか?自然の中でのんびりは幻想だと思う」(滋賀県,40代,小児科)「以前の勤務先で、無医地区での健診を行っていた。その際は自分の専門範囲のみ、1日ずつだったので、大きな支障はなかった。しかし、とかくそうした地域では、一人の医師に広範囲の役割を求められるので、長期にわたって「何でも屋になれ」と言われると、まったく自信がないしお役に立てない。」(北海道,40代,小児科)「山間部のへき地病院に大学から派遣されたことがあるが、給与は自治医大出身の先生の半分以下。同じ仕事をしているのに、とやる気が失われた。公平な対応が必要では」(佐賀県,40代,内科)「現在の職場を辞められないため無理ですが、嫌いではありません。またやってみたい気持ちはあります」(秋田県,40代,外科)「以前関わっていたが、地域住民・行政の理解が得られないことが多々あり、責任の押し付けをされる、協力してもらえない等、精神的に過酷な状況に追い込まれる医療であった」(北海道,40代,循環器科)「僻地において医療だけを充実させることは無理 すべてのインフラに対する投資が必要。投資をしないならば僻地から住民を都市部に移動させるしか選択枝は無い」(京都府,40代,皮膚科)「不定期の診療では、患者さんの変化に応じた医療の提供が難しい」(北海道,50代,泌尿器科)「24時間身をささげる覚悟(在宅死の看取りなど)はないが、慢性疾患の管理であれば考えたい」(熊本県,30代以下,循環器科)「現在携わっており、200床程度の病院、常勤医は18名のみ。小児科医師は私一人でして、限界を感じながらも奮闘中です」(熊本県,60代以上,小児科)「勤務は総合病院ですが、地理的に僻地。一番困るのは、信頼されていないこと。手術適応の患者は都会での手術を希望し、面倒くさい検査やその後の経過観察のみを要求します。そのため、紹介する時は終診として、今後の診察を拒否させてもらっています。医師としての態度が歪んでいると批判されるかもしれませんが、歪みの原因は患者側にもあると思っています」(青森県,40代,泌尿器科)「僻地医療の過疎化は以前からあったが、厚労省主導の新臨床研修制度により、ますますひどくなったのが現実。今や、東京の一人勝ちでしょう?何故各県に一医大を作って行ったのか、その原点に戻るべきじゃないのかな。僻地医療はその延長線上にあるんだから」(千葉県,40代,循環器科)「輪番制で強制的にいく制度を作るしかないと考えます」(北海道,50代,内科)「私は400床程度の急性期病院の院長です。近隣の国保の診療所にて週一度、半日の代診をしています。人口3000人余のこの地域は、地理条件的にへき地とはいえませんが常勤の医師がいません。しかし交通事情が良いので、住民は近郊の町の医療機関にかかっており、診療所を利用する方は多くありません。在宅医療などのニーズ把握が十分でなく、潜在的なニーズ把握調査を行ってくれる保健師などもおらず受身の代診医の限界を感じています。行政に働き掛けていますが、なかなかうまくいきません」(香川県,60代以上,外科)「病院の医師の数が少なく、研究会や講演会、学会などに参加する機会がほとんど与えられなかった。そのあたりの改善がはかられたら、うれしいです。」(大阪府,40代,精神・神経科)「現在の仕事に加えての僻地医療に関しては、まず時間を割くことが困難。 個人で関わるのではなくチームやグループで対応しないと個人の負担があり途中で疲弊してしまうのではないだろうか。現在の医療の実態・限界・経営面なども僻地に暮らす住民も含め相談し検討する必要がありと思われる。」(福岡県,40代,内科)「患者さんも僻地と認識しているので、当院でできる治療であっても、都会に行ってしまう傾向が残念」(北海道,30代以下,内科)「医療のみならず生活を支える様々なインフラの整備が困難となっており、医師・スタッフを派遣すれば問題が解決するわけではないと考える。経済性や効率面などから、居住地の集約化の議論が避けられないのでは」(岡山県,40代,血液内科)「子育てが落ち着き、ある程度の設備が整っていれば、一度は携わってみたいと思う」(三重県,30代以下,眼科)「皮膚科以外は全く診療不能なため、自分は無理」(神奈川県,40代,皮膚科)「できない、やるべきでないのに田舎でも高次医療を求められる」(広島県,40代,内科)「『リタイアしたら考えても良い』『リタイアしたら、もう医療はしたくない』との思いの間で揺れています。しかし実際に赴任するとなると、引っ越しや家族の説得、新たな人間関係の構築など、煩わしいことがいっぱいあるため、なかなか踏み出せないのが実情。そういう思いの高齢の先生方が実は多いのでは?そこをクリアできれば潜在的な供給源はあるようにも思う」(大阪府,60代以上,内科)「僻地医療は専門分野をまたいで様々な疾患を広く浅く診られなくてはいけない。 その点が足かせになっているのではないか」(秋田県,40代,消化器科)「以前過疎地に勤務していた先輩が、地域の政治対立に巻き込まれ辞任せざるをえなくなったのを経験しました。秋田の医師追い出し事件や愛媛での町立病院高給訴訟など、僻地住民が自分の土地に医療を必要としているのか、疑問に感じる事件を多々目にします。必要だと思ってもらえないなら、誰もそんな所に行きたくないのでは」(愛媛県,40代,代謝・内分泌科)「中山間地域の在宅医療に関わっています。今後高齢化が更に進むと病院へ足を運ぶことが困難な患者が更に増えていくため巡回診療等も必要ではないかと考えています」(静岡県,50代,外科)「関わっていた当時(約20年前)に比べると、必要な医療情報の入手は格段に容易となった。都市部の「地域医療」とは異なった独特の魅力を持つ「僻地医療」は、将来の選択肢の一つである」(北海道,50代,整形外科)「僻地医療の限界を、患者や住民、マスコミがある程度理解しないと医師は減り続けると思う。都会の高度医療圏と同じレベルの医療を受けることを当然としている人々が多すぎる」(北海道,40代,循環器科)「僻地にコストをかけて十分な医療を提供するのは国家にとってかなりの負担になる。住民にもしっかり負担させるべき」(長崎県,30代以下,皮膚科)「都市部の多忙な病院勤務で空き時間がないため携われていないし、子供の教育の問題で僻地に赴くことができない 年に何回か1~2週間ずつであれば行ける可能性がある」(兵庫県,50代,外科)「研修医です。将来携わる予定です。日本では在学中にそういう経験をする機会が少ないからか、僻地医療を見下したり興味がないと言い切れる先生が多いことを悲しく思っています」(石川県,30代以下,内科)「以前携わっていたが、とにかくよそ者に対する住民の目がうるさい」(静岡県,50代,呼吸器科)「地方で開業していますが、患者さんのブランド志向や家族の入院施設入所志向は強く、時間外診療とか往診等で苦労しても知らないうちに入院していたり、急に入院目的の紹介を頼まれたりして、自分の時間を削ったのにと思ったりします。心底信頼されるとか金銭になるとかの見返りを求めない方なら良いが、いろいろな意味で僻地診療は困難と思います(政府は在宅在宅といいますが、若い方で親の在宅医療を希望される方は今はごく少数派)」(広島県,50代,内科)「当科の診療には高度な検査機器が必要なため,僻地現場での精査・加療は困難である.むしろ,地域のネットワークでドクターヘリなどが広く準備される環境が望ましいと考える」(石川県,50代,脳神経外科)「奥能登など人口の著しい減少地帯では、もう手遅れではないかと思う。医師の倫理観だけでは何もできない。社会的な対応が必要である。」(富山県,50代,精神・神経科)「時々代診に行くのを楽しみにしています。普段は専門領域のみですが、代診で幅広い領域を診察したり、往診に行ったりするのは医師になった原点を思い出すことにもなりいい経験です。豪雪だと、行き帰りが大変で困りますが」(福井県,40代,循環器科)「携わるべき人材の育成をしないと成り立たない。自治医大が出来た時には各県から2名ずつ程、奨学金を貰って卒業し卒業後は県に戻るとなっていたが、結局お金を払って自分の選んだコースへ進む人が大部分で僻地へは行かない状況です。『僻地医療大学』でも作って、卒業したら20年位は僻地医療への従事義務を負わせる事にでもしないと解決出来ないと思います」(神奈川県,60代以上,泌尿器科)「30年間専門科のみの診療を行ってきており、言ってみれば大学卒業直後の研修医より他の診療科の知識が乏しい。自分の専門科として僻地病院で勤務するのなら可能だろうが、総合診療、一般救急を担当することは困難と考える」(新潟県,50代,産婦人科)「研修医のときに関わりました。結構楽しく充実した日々でしたが、自分の生活もあり長期では出来ないと思いました」(千葉県,30代以下,精神・神経科)「伊豆諸島のひとつに1ヶ月間いた。当時の住民人口約700人プラス観光客に対して、医師は自分一人。診療所の勤務は月曜から土曜の午前中だけであったが、交代の医師が来るまで島に缶詰なので、一人で24時間オンコール体制であった。夜中にステルベンがあったり、緊急でヘリや船をチャーターして患者を本土に送ったりしたときは大変で早く戻りたかったが、のんびりした時間が心地よく、帰る頃には『もう少し居たい」と思うようになった。」(東京都,50代,呼吸器科)「現在常勤。行政や議会が医療崩壊の実態に無理解で、自分たちのこととして考えていない。行政は医療になるべく金をかけまいとし、病院をお荷物であるかのように扱う。 定期的に医師の交替があるのに、住民は「田舎に来る医師は都市部よりレベルが低い」と信じ込んでいる。へき地であっても、コンビニ受診、クレームも多い。開業医は夜間診ないで中核病院に押し付ける。医師偏在があるのに大学は医師を引き上げて都市部へ異動させる」(大分県,50代,外科)「医療に対する目が厳しく、こちらが良しと考え行った治療も、結果が悪ければ訴えられる時代であり、困難な症例の場合、相談する医師のいない僻地ではリスクが大きすぎる。」(兵庫県,50代,代謝・内分泌科)「人口3000人程度の村の診療所に勤務していたが(診療所の2階に居住)、夜間・休日に遠方へ出かけた際、時間外の診察に応じられなかったことがある。特に義務があるわけでもないし、緊急の診察依頼でもなかったが(風邪程度)、拘束されている感じがしてかなりストレスだった。代診も頼めず、研修などを急遽中止したこともある」(鳥取県,40代,内科)「子供の教育を考えると難しい。子供を犠牲にしてまで僻地医療に貢献しなければならない、とは思わない。非常勤で月に何回か手伝いに行くという形でなら,もしくは報酬次第では手伝いに行きたい、という医師は多いだろう」(東京都,30代以下,小児科)「都会で生活している身には正直あまり考えたことない内容でしたが、僻地医療は大切だと思います。ただ、小規模な病院をたくさん作るよりは、基幹病院を充実させ、そことの連携を図る方が重要だと考えます」(大阪府,30代以下,呼吸器科)「地方都市の郊外で開業していますが、当医院より山奥はまさに僻地で、限界集落ばかりです。人口が少なく、医療機関の新規立地は困難。開業医も高齢化しつつあり、医療格差が広がっていると思います。僻地医療にインセンティブでもないとやっていられない」(新潟県,50代,内科)「できれば協力したいと考えている方ですが、休みの予定が全く立たないような勤務は私の年齢では無理です。ある程度の医師のいる施設や、非常勤や外来だけであれば将来的には可能」(熊本県,50代,循環器科)「医療圏に僻地を含んだ総合病院に勤務していた。僻地からの患者は、医療を受けず/受けられず、いよいよ重症という時になってようやく救急車で運ばれてくる、というパターンが多かった」(東京都,30代以下,代謝・内分泌科)「四十数年前に大学の医局から派遣されたことがある。大都会での研修ばかりでなく、制度として昔のように大学から赴任させる制度の復活が望まれる」(兵庫県,60代以上,小児科)「自分の専門性が活かせるとは思うが、家族の理解が得られない」(京都府,50代,総合診療科)「僻地自治体の取り組みに温度差が大きく、すぐに医師が辞めてしまう話を聞きます。地域住民も意識が低いようです。給与を多くすると住民が離れ、安いと誰も赴任してきません。私の元本籍地の現状です」(京都府,50代,産婦人科)「以前に僻地医療を行っていたことがあるが、特権意識がある、あるいは赴任してくる医師を小馬鹿にしたような意識がある方が住民の一部におられる。住民も街の医療機関への志向が強いようであり、医療機関がそこにある必要性がないのであろう」(広島県,50代,脳神経外科)「僻地勤務ですが,地域救急病院への搬送は遠くても40分以内で可能です。加齢と共に勤務は大変になってきましたが、気力のある限りは留まりたいと考えています」(岐阜県,60代以上,内科)「週一回、大学より山奥へ土日の一泊で行っていた。急患の手術必要時は麓まで下ろしていた。空気はうまいし人は温かかった」(徳島県,60代以上,内科)「自分は携わっていませんが、実家がへき地の診療所なので苦労は聞いています。家族含めて住民とその土地の雰囲気に慣れるか、教育レベルを維持できるか、給料格差に対して妬みなど受けないかなど気を使うことが多いようで、自分にはできないなと思います」(埼玉県,50代,代謝・内分泌科)「赴任期間が長くなると、近隣の市中病院との医療レベルの差が顕著に。意識的な自己研鑽の時間が必要になると思う」(青森県,50代,皮膚科)

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キャッスルマン病〔Castleman's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義キャッスルマン病は多様な病態を呈する多クローン性リンパ増殖疾患であり、臨床的に限局型と多中心(全身)型に大きく分類される。限局型では無症状で経過することが一般的であるが、多中心(全身)型では多くが血清IL-6の上昇に伴う全身倦怠感、発熱、貧血、高CRP血症、低アルブミン血症、高γグロブリン血症などの多彩な症状を伴う。欧米では、human immunodeficiency virus(HIV)感染を基礎としたhuman herpes virus(HHV)-8の感染が原因となっている症例が多いが、わが国ではHIV感染と関連のないHHV-8陰性の症例がほとんどである。■ 疫学1)患者数希少な疾患であり、国内に約1,500人と推測する資料もあるが、正確な数は不明である。2)病型臨床的には限局型(localized type/unicentric Castleman's disease: UCD)と多中心(全身)型(multicentric Castleman's disease: MCD)に分類される。病理学的には、形態からhyaline-vascular type(HV type)とplasma cell type(PC type)に分類されるが、両者の中間型(mixed type)も見受けられる。一般的に限局型はHV typeの病理像を示し、多中心型はPC typeの病理像を示すことが多い。割合としてはHV typeが全体の約90%を占め、残りの約10%がPC typeまたは中間型とされている。上述の通り、限局型は無症状で経過することが多く発症年齢が若年の傾向があるが、多中心(全身)型はIL-6産生の亢進に伴う多彩な症状を呈することが多く、50~60代の中・高年に好発がみられる。■ 病因欧米ではHIV感染による免疫不全を背景としたHHV-8感染が基礎となるケースが多く、IL-6のviral homologyであるvIL-6がHHV-8によって産生されることが病因と考えられている。また、HIV感染のない症例でもHHV-8が陽性の症例が多い。一方、わが国ではHIV感染を伴う例は珍しく、HHV-8自体もほとんどの症例で検出されない。まったく別の病因が関係しているものと考えられるが、いまだ不明な点が多く、特定はされていない。■ 症状1)限局型典型的には縦隔リンパ節の腫脹がみられるが、他のリンパ節やリンパ節以外の部位に病変を形成することもしばしばある。周囲臓器の圧迫に伴う症状が出ることはあるが基本的には無症候性であり、画像検査で偶然発見されるケースもある。まれに多中心型のような症状を呈するもの例もみられる。2)多中心(全身)型多中心型では全身リンパ節腫脹がみられ、IL-6の過剰産生に伴うリンパ球・形質細胞の増加、慢性炎症、血管新生などにより、以下の表に示すような多彩な症状がみられる。リンパ節以外に肺、腎、神経、皮膚などにも病変を形成することがある。画像を拡大する■ 予後限局型は無症候で経過し、完全切除により予後は非常に良好である。一方、多中心(全身)型は、日本人の多くは緩徐な経過を辿るケースが多いが、時に進行性のものもある。ステロイド治療によりコントロール良好な例もあるが、多くは抗IL-6受容体抗体の適応になることが多い。また、治療抵抗性となり多臓器不全に陥って死亡するケースも存在する。HIV陽性例では陰性例よりも急速に進行することが多い。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 臨床診断1)限局型一般的に症状はないが、血液検査所見は正常範囲のものと炎症反応や貧血を伴うものがある。後者では病変部の摘出で正常化するものが多い。病変部の切除生検による病理組織診断が行われる。2)多中心(全身)型診断基準は確立されていない。症状も多彩で非特異的であるため、臨床経過や血液検査所見、画像所見を総合的に判断する必要がある。鑑別疾患としては、悪性リンパ腫、POEMS症候群、膠原病、感染症、IgG4関連疾患などが挙げられる。画像を拡大する画像を拡大する■ 病理診断最終的な確定診断は病理組織診断で行われる。上述のように、形態からHV typeとPC typeに分けられる。HV typeは以下に挙げる特徴的な所見を有することが多いが、PC typeの病理組織像は非特異的な所見が主体で、膠原病や薬剤に対する反応性リンパ節腫脹、IgG4関連疾患などと鑑別が困難なことが多い。そのため、キャッスルマン病は、初診から確定診断に至るのに長期間を要する場合もまれではない。臨床所見、血液検査結果、画像所見などとで総合的に判断する必要がある。画像を拡大する画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)キャッスルマン病の治療については、症例数の少なさもあり無作為化試験が組まれたことはなく、標準的な治療法は確立されていないのが現状である。限局型は、完全切除によりほぼ全例で治癒が見込まれる。全身型についてはステロイドの投与が基本であるが、ステロイド抵抗例では、抗IL-6受容体抗体(トリシズマブ)の適応となる。■ 限局型一般的に無症候性で予後良好であるが、悪性リンパ腫などの腫瘍との鑑別が必要となるため、病理組織による確定診断の意味も含め、病変部を切除することが多い。症状がある場合でも完全切除により症状の消失が期待できる。第1選択は完全切除であり、切除が難しい場合には局所放射線治療が選択されることもある。■ 全身型症状がある場合は、一般的にはステロイドの全身投与が行われる。無症状の場合は経過観察も選択肢となる。海外ではリツキシマブ(商品名:リツキサン)が使用されることがあるが、日本ではキャッスルマン病に対する使用については、まだ保険適応となっていないのが現状である。免疫抑制薬や化学療法が選択されることがあるが、見解の一致を得ない。抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブ(同:アクテムラ)が2005年に承認されてからは、ステロイド抵抗例で使用され、効果を挙げている。HIV陽性例についてはリツキシマブや抗がん剤などが使用されるが、わが国でのHIV陽性例はまれであり、知見は少ない。4 今後の展望全身型キャッスルマン病の治療には、ステロイドを用いるのが一般的であるが、ステロイド抵抗性の症例や耐糖能に問題のある症例では管理が難しくなる。近年では、抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブの有効性が示されてきており、今後はこのような分子標的薬がkey drugに加わっていくと考えられる。5 主たる診療科血液内科、免疫内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)患者会情報社会福祉法人 復生あせび会(希少疾病患者の会)1)Van Rhee F, et al. Clinical advances in hematology & Oncology. 2010; 8: 486-498.2)本田元人. HIV感染症とAIDSの治療. 2012; 3: 12-18.3)西本憲弘. 実験医学. 2010; 28: 2026-2031.

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COPDの重症度と冠状動脈疾患との関係は?

 長期間の喫煙歴があるCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者ではCACS(冠動脈カルシウムスコア)が高くなることが認められたが、COPDの重症度と冠動脈カルシウムスコアとの間に相関関係は認められないことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のThomas Rasmussen氏らによって報告された。European heart journal cardiovascular Imaging誌オンライン版2013年5月2日号の掲載報告。 冠動脈疾患(CAD)はCOPD患者において、最も頻度の高い死因であることが報告されているが、COPDの重症度とCADとの関係については明確ではなかった。 本研究は長期間の喫煙歴があった患者を対象に、COPDの有無や重症度と冠動脈カルシウム沈着の量(冠動脈疾患や心臓リスクの指標となる)がどのように関係しているのかを調べることを目的とした横断研究である。 デンマークの肺がんスクリーニング試験から、無症候性のCADで長期間の喫煙歴を有する患者を抽出し、GOLD(the Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)の基準により、肺機能のステージ分類を行った。無症候性のCADと心臓リスクの指標となる冠動脈カルシウム沈着はマルチスライスCTとCACSによって評価された。 対象患者はCACSにより5つの群に分類された。対象患者1,535例のうち、41%が非COPD、28%が軽度、31%が中等度から重度のCOPDであった。年齢、性別、高血圧、脂質異常症、喫煙の継続による多変量解析で、COPDの重症度とCACSとの関連を検討した。 この結果、非COPD患者に対する軽度のCOPD患者、中等度から重度のCOPD患者のオッズ比はそれぞれ1.28(1.01~1.63) 、1.32(1.05~1.67)であった。

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統合失調症へのアリピプラゾール持効性注射剤、経口剤との差は?

 オーストリア・インスブルック医科大学のW Wolfgang Fleischhacker氏らは、統合失調症患者の維持療法としてのアリピプラゾール持効性注射剤の月1回投与製剤(ARI-OM、国内未承認)の、長期安全性と忍容性について無作為化試験を行った。その結果、経口剤に匹敵する安全性および忍容性プロファイルが認められたことを報告した。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年4月22日号の掲載報告。 ARI-OMの長期の安全性と忍容性を評価することを目的としたピボタル試験は、4期から構成された。第1期は切り替え期として経口投与によるアリピプラゾール投与が行われ(4~6週間)、第2期は経口剤による安定化を図る治療期とした(4~12週間)。第3期はARI-OMの安定化を図る治療期とし、最初の2週は経口剤の同時投与が行われた(12~36週)。そして第4期に、52週の無作為二重盲検プラセボ対照による維持治療の検討を行った。安全性の評価は全試験期間を対象とし、有害事象の初回発生までの時間とした。錐体外路症状の客観的測定、空腹時の代謝指標および体重の測定が行われた。 主な結果は以下のとおり。・登録被験者数は、第1期633例、第2期710例(210例は第2期から参加)、第3期は576例、第4期は403例であった。・第4期の被験者の内訳は、ARI-OM群269例、プラセボ群134例であった。・すべての試験期において、5%超の有害事象の発生が認められたのは、不眠、頭痛、不安症、アカシジア、体重の増加、注射部位の痛み、振戦であった。・頭痛、傾眠、吐気の初回発生は、治療導入後4週間以内にピークに達していた。・錐体外路症状の発生は、すべての試験期で同程度であった。・体重の予想外の変化や空腹時代謝指標の変化は、すべての試験期にわたっているわけではなかった。・ARI-OMは、統合失調症の維持療法におけて、経口アリピプラゾールと同等の安全性と忍容性プロファイルを有することが認められた。関連医療ニュース ・統合失調症、双極性障害の急性期治療に期待!アリピプラゾール筋注製剤 ・アリピプラゾール筋注に関するコンセンサス・ステートメント(英国) ・統合失調症患者における持効性注射剤:80文献レビュー

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中高年の初回肩関節脱臼、救急外来で徒手整復後の上腕骨大結節骨折の発生頻度

 先行研究において、肩関節脱臼の整復操作に伴う医原性上腕骨頸部骨折の症例報告がなされている。英国・王立バークシャー病院のAtoun Ehud氏らはその有病率を調べることを目的とした後ろ向きコホート研究を行った。その結果、40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者において、上腕骨大結節骨折の合併率は21%で、これらの患者における徒手整復時の医原性上腕骨頸部骨折の発生頻度は26%と高率であることを明らかにした。Journal of Orthopaedic Trauma誌2013年4月号の掲載報告。 本研究の目的は、40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者における徒手整復後の医原性上腕骨頚部骨折の有病率を調査することであった。 対象は40歳以上の初回肩関節前方脱臼患者92例(平均66.6歳)で、救急外来で救急医療医により、意識下鎮静のもと徒手整復が行われた。  骨折の有無はX線写真にて確認し、医原性骨折は整復後のX線写真にて評価した。 主な結果は以下のとおり。・92例中19例(20.7%)は、最初のX線写真において上腕骨大結節骨折を合併していると診断された。・整復後のX線写真において、5例(5.4%)が整復後上腕骨頸部骨折と診断された。この5例は全例、最初のX線写真において上腕骨大結節骨折を認めた。 ・最初のX線写真における上腕骨大結節骨折所見と医原性上腕骨頸部骨折の発生には、有意な関連性が認められた(p<0.0001)。・医原性上腕骨頸部骨折患者の予後は不良であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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うつ病治療にビタミンD投与は有用か?

 近年、ビタミンD欠乏症とうつとの関連が指摘されており、賛否両論の知見が示されている。イラン・Yazd Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのHassan Mozaffari-Khosravi氏らは、ビタミンD欠乏症を認めるうつ病患者におけるビタミンD投与の有用性を検討した。その結果、ビタミンD投与がうつ状態を改善すること、ビタミンDの用量は、15万IUよりも30万IUのほうがより有効であると報告した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年6月号の掲載報告。 本研究は、2011~2012年にイラン・イスラム共和国のヤズド市にて、ビタミンD欠乏症を認めるうつ病患者において、ビタミンD製剤の2用量(15万IUおよび30万IU)単回注射による、うつ改善効果を検討することを目的として実施された。対象は、ベックうつ病自己評価尺度II(BDI-II)で17点以上かつビタミンD欠乏症を認める120例であった。被験者をG300群(40例、ビタミンD30万IUを単回筋注)、G150群(40例、同15万IUを単回筋注)、NTG群(40例、何も投与しない)の3群に無作為に割り付け、試験開始3ヵ月後に、うつ状態、血清ビタミンD値、カルシウム値、リン値、副甲状腺ホルモン値を評価した。 主な結果は以下のとおり。・介入後の血清ビタミンD値(中央値)は、G300群で60.2 nmol/L、G150群で54.6 nmol/L、NTG群では28.2 nmol/Lであった(p<0.001)。・介入後、ビタミンD欠乏症は、G300群18%、G150群20%、NTG群91.2%にみられた。・ビタミンDが投与された2群では、血清カルシウム値(中央値)の有意な増加が認められた。・G300群とNTG群の間においてのみ、BDI-IIスコアに有意差が認められ(p=0.003)、ビタミンD投与がうつ状態を改善することが確認された。また、用量については30万IUが安全であること、かつ15万IUに比べて有効であることが示唆された。関連医療ニュース うつ病患者の食事療法、ポイントは「トリプトファン摂取」 うつ病治療に「チューインガム」が良い!? アルツハイマー病にビタミンD不足が関連

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腰椎椎間板ヘルニア患者、オピオイド使用は手術回避には結びつかない

 The Spine Patient Outcomes Research Trial(SPORT)は、腰椎椎間板ヘルニアに対する手術的治療と保存的治療を比較する多施設前向き無作為化研究である。同研究参加者について、米国・トーマスジェファーソン大学のKris Radcliff氏らが行ったサブグループ解析の結果、オピオイド使用患者は試験開始時からの疼痛とQOLの悪化が著しかったこと、またオピオイド使用の有無で4年後の臨床転帰に差はなく、オピオイド使用により手術を回避できるわけではないことが明らかになった。また、オピオイド使用患者の大半は4年後に使用を中止していたという。Spine誌オンライン版2013年4月15日の掲載報告。 Kris氏らは、SPORT研究において、試験開始時にオピオイド薬を投与された患者542例(オピオイド群)と投与されなかった患者520例(非オピオイド群)を比較検討した。 主な結果は以下のとおり。・オピオイド群は、主要評価項目および副次的評価項目のベースラインのスコアが有意に低かった(p<0.001)。・オピオイド群は、症状や神経障害が悪化した患者の割合が増加し(p<0.001)、手術を受ける患者の割合も高かった(p<0.001)。・追跡4年時点において、主要評価項目、副次的評価項目あるいは手術の効果について、オピオイド群と非オピオイド群とで有意差は認められなかった。 ・オピオイド投与は手術的治療への変更を増加し(p=0.005)、手術回避の減少(p=0.01)と関連していた。・4年後におけるオピオイド使用率は、オピオイド群で16%、非オピオイド群で5%であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?  治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(94)〕 RCT論文を読むときは一層の注意が必要になるだろう!

メタ解析には、文献データを用いるものと個別データを用いるものがある。ほとんどは文献に公表された数値だけを用いるが、個別データを用いたメタ解析もたまに見られる。個別データは研究者に問い合わせて入手するのが一般的である。 たとえば、CTT(Cholesterol Treatment Trialists' CTT Collaboration. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet. 2010; 376: 1670-1681.)がその例である。 本研究は、個別データを用いたメタ解析13件を事例に挙げ、そこに含まれる95件のランダム化比較試験(RCT)を研究対象にしている。95件のRCTに内在するバイアスを評価した研究である。 バイアスは3種類考慮している。(1) 割り付け(sequence generation)、 (2) 盲検化(allocation concealment)、(3) アウトカム評価(outcome assessment)である。RCT論文だけを読んでこれらのバイアスを評価する方法と、それに加えてプロトコルなど付加情報を参照して評価する方法のあいだで、バイアス評価において相当の食い違いが見られた。割り付けでは両者の一致率は69.5%、盲検化では48.4%、選択的アウトカム報告(selective outcome reporting)では42.1%にすぎなかった。論文だけしか読まないと、実に30~60%もバイアスを見過ごす危険性を指摘したのである。 2005年より臨床試験の事前登録が義務付けられるようになった(DeAngelis CD, et al. Is this clinical trial fully registered? — A Statement from the International Committee of Medical Journal Editors. N Engl J Med. 2005; 352: 2436-2438.)。これにより、一部のバイアスに気づくこともある。事前に既定されたエンドポイントと論文上のそれが違っていたりするからである。また、論文掲載時にプロトコルや付加情報をウェブサイトとして掲載する傾向も増えてきた。これらを参照すればバイアスを減らせるかもしれないが、筆者も含め、ほとんどの読者はそこまで参照していないのが現実である。 本研究による戒めとしては、(1) RCT論文を読むだけでは気づかないようなバイアスが潜んでいることを念頭に入れておくこと、(2) できる限り付加情報(事前登録ウェブサイト、論文中に示される付加情報ウェブサイト)にも目を通すようにすることが挙げられる。

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交通事故による高エネルギー外傷の死亡例

救急医療最終判決平成15年10月24日 大阪高等裁判所 判決概要38歳の男性、単独交通事故(乗用車運転席)のケース。来院時の意識レベルはJCS 30であり、頭蓋内疾患を疑って頭部CTを施行したが異常なし。体表面の外傷として頬からあごにかけて、および左鎖骨部から頸肋部にかけて打撲痕がみられた。バイタルサインや呼吸状態は安定し、胸腹部X線は異常なし。血液検査ではCPK上昇197mU/mL(正常値10~130mU/mL)を除いて貧血などもみられなかった。経過観察目的で一般病棟に入院としたが、来院から約2時間後に容態が急変し、心嚢穿刺を含む救急蘇生を行ったが改善せず、受傷から3時間半後に死亡確認となった。詳細な経過患者情報38歳男性経過平成5年10月8日16:23乗用車を運転中、民家のブロック塀に衝突する自損事故で受傷。現場にスリップ痕が認められないことから、通常走行する程度の速度で衝突した事故と考えられた。乗用車は前部が大破しハンドルは作動不能であり、シートベルトは装着しておらず、乗用車にはエアバッグ装置もなかった。救急隊到着時の意識レベルはJCS(ジャパンコーマスケール)で200(刺激で覚醒せず、少し手足を動かしたり、顔をしかめる状態)であった(なお助手席同乗者は当初意識清明であったが、外傷性心破裂のため容態急変し、三次救急医療機関へ転送され18:40死亡)。16:47救急車で搬送。脳神経外科専門医が担当し、救急隊員からブロック塀に自動車でぶつかって受傷したという報告を受けた。初診時不穏状態であり、意味不明の発語があり、両手足を活発に動かしており、呼びかけに対しては辛うじて名字がいえる状態で意識状態はJCS 30R(痛み刺激を加えつつ呼びかけをくり返すと辛うじて開眼する不穏状態)と判断された。血圧158/26mmHg。頬からあごにかけて、および左鎖骨部から頸肋部にかけて打撲痕を認めたものの、呼吸様式、胸部聴診では問題なし。明らかな腹部膨満や筋性防御はなく、腸雑音の消失、亢進はなかった。また、四肢の動きには異常なく、眼位や瞳孔に異常はみられなかったが、振り子状の眼振を認めた。17:00頭部CT検査:異常なし17:12血算:貧血なし生化学:CPK 197mU/mL(正常値10~130mU/mL)17:22頭部、胸部、腹部の単純X線撮影:異常なし以上の所見から、とくに緊急な措置を要する異常はないものと判断し、入院・経過観察を指示。18:00消化器外科専門医が診察。腹部は触診で軟、筋性防御などの所見はなく、貧血を認めず、X線写真とあわせて経過観察でよいと判断した。脳神経外科医は入院時指示票に病名を頭部外傷II型、バイタルサイン4時間(4時間毎に血圧などの測定や観察)と記載して看護師に手渡した。18:30一般病室へ入院。軽度意識障害は継続していたが、呼吸は安定。点滴が開始された。脳神経外科担当医は家族へ病状を説明し、家族はいったん帰宅した。19:00看護師から血圧測定不能との連絡あり。血液ガス分析のための採血中に突然呼吸停止となり、胸骨圧迫式(体外式)心マッサージ、気管内挿管などの蘇生術を施行。胸部ポータブルX線検査では明らかな異常を認めず。ここで外傷性急性心タンポナーデを疑い、超音波ガイドを使用せずに左胸骨弓の剣状突起起始部から心嚢穿刺を試みたが、液体を得ることはできなかった。その後も懸命の救急蘇生を続けるが効果なし。20:07死亡確認。死亡診断書には胸部打撲を原因とする心破裂の疑いと記載した。病理解剖を勧めたが家族は拒否した。被告病院の救急体制被告病院は院長ほか33名の医師を擁し、二次救急医療機関に指定されている(ただし常勤の救急認定医あるいは救急指導医はいない)。当直業務は医師2名(外科系、内科系各1名)、看護師2名でこなしていたが、時間外にも外科医、麻酔科医、看護師などに連絡し30分程度の準備時間をかければ手術をすることができる態勢を整えていた。なお県内の高度救命三次救急医療機関までは救急車で30分~1時間以上要する距離にあった。当事者の主張患者側(原告)の主張死亡原因は心筋挫傷などによる外傷性急性心タンポナーデのため、胸部超音波検査を実施すれば、心嚢内の血液の貯留を発見し、外傷性急性心タンポナーデによる容態急変を未然に防ぐことができた。病院側(被告)の主張死因を外傷性急性心タンポナーデであると推定するA鑑定がある一方で、腹腔内出血とするB鑑定もあり、わが国の代表的な救急医療専門家でも死因の判断が異なることは、死因を特定するのが難しいケースである。このうちA鑑定は特殊救急部での実践を基準とし、平均的な救命救急センターの実態をはるかに超える人的にも物的にも充実した専門施設を前提とした議論を展開しており、そのレベルの医療機関に適時にアクセスできる救急医療体制の実現を目指した理想論である。本件当時、当該病院周辺にはそのような施設はなく、他府県でも一般的に存在しなかったので、理想論を基準として病院側の過失や注意義務違反を判断することはできない。裁判所の判断患者はシートベルトを装着しない状態で、ブレーキ痕もなくブロック塀に衝突しており、いわゆる「高エネルギー外傷」と考えられる。そして、血液生化学検査によりCPK 197mU/mLと異常値を示していたこと、受傷後約2時間半は循環動態が安定していたにもかかわらず19:00頃に容態急変したこと、心肺蘇生術にもかかわらずまったく反応がなかったことなどは、A鑑定が推測したように外傷性急性心タンポナーデの病態と合致する。一方、腹腔内出血が死亡原因であるとするB鑑定は、胸部正面単純X線撮影で中心陰影が縮小していないことから、急速な腹腔内出血が死亡原因であるとは考えられず、採用することはできない。このような救急患者を担当する医師は、高エネルギー外傷を受けた可能性が高いことを前提として診察をする必要がある。まず着衣は全て取り去り、全身の体表を調べ、外力が及んだ部位を把握し、脈拍数の測定、呼吸に伴う胸壁運動の確認、呼吸音の左右差や心雑音の有無、冷汗やチアノーゼ、頸動脈怒張の有無、意識レベル、腹部所見、四肢の状態を確認する。その後、心嚢液の貯留、胸腔内出血、腹腔内出血に焦点を絞って、胸腹部の超音波検査をする(この検査は数分あれば可能である)。その他動脈血ガス分析、血液生化学検査、さらに胸部と腹部の単純X線撮影、頸椎の正・側面撮影をする。以上の診察および検査は、高エネルギー外傷患者については症状がない場合でも必須である。そして、診察および検査により特別な異常がない場合でも、高エネルギー外傷患者は入院経過観察が必要で、バイタルサインは連続モニターするか頻回に測定する。また、初回の検査で異常がなくても、胸腹部の超音波検査をはじめは1~2時間間隔でくり返し行う。本件の担当医師は、高エネルギー外傷による軽度の意識障害を伴った患者に対し胸腹部の単純X線撮影、頭部CT検査、血液検査は施行したが、高エネルギー外傷で起こりやすい緊急度の高い危険な病態(急性心タンポナーデ、緊張性気胸、腹腔内出血、頸椎損傷など)に対する検査を実施していない。しかも看護師に対しバイタルサイン4時間等チェックという一般的な注意をしただけで、連続モニターしなかったのは不適切である。本件は受傷から2時間半後に容態急変した外傷性急性心タンポナーデが疑われる症例なので、もし入院・経過観察とした時点で速やかに胸部超音波検査を実施していれば、心嚢内の出血に気づき、ただちに心嚢穿刺により血液を吸引除去し、あるいは手術的に心嚢を開放(心嚢切開または開窓術)することによって確実に救命できた可能性が高い。もし心嚢切開または開窓術を実施できなければ、すみやかに三次救急医療機関に搬送すれば救命することができたので、担当医師の過失・注意義務違反は明らかである。我が国では年間約2千万人の救急患者が全国の病院を受診するのに対し、日本救急医学会によって認定された救急認定医は2,000名程度にすぎず、救急認定医が全ての救急患者を診療することは現実には不可能である。救急専門医(救急認定医と救急指導医)は首都圏や阪神圏の大都市部、それも救命救急センターを中心とする三次救急医療施設に偏在しているのが実情である。そのため大都市圏以外の地方の救急医療は、救急専門医ではない外科や脳外科などの各診療科医師の手によって支えられているのが我が国の救急医療の現実である。したがって、本件病院が二次救急医療機関として、救急専門医ではない各診療科医師による救急医療体制をとっていたのは、全国的に共通の事情であること、一般的に、脳神経外科医は研修医の時を除けば心嚢穿刺に熟達できる機会はほとんどなく、胸腹部の超音波検査を日常的にすることもないことなどは、被告担当医師の主張の通りである。そのような条件下では、被告医師は自らの知識と経験に基づき、脳神経外科医としては最善の措置を講じたと考えられるため、脳神経外科医に一般に求められる医療水準は十分に実践したことになる。しかし救急医療機関は、「救急医療について相当の知識および経験を有する医師が常時診療に従事していること」とされ、その要件を満たす医療機関を救急病院などとして都道府県知事が認定することになっている(救急病院などを定める省令1条1項)。また、救急医療機関に勤務する医師は、「救急蘇生法、呼吸循環管理、意識障害の鑑別、救急手術要否の判断、緊急検査データの評価、救急医療品の使用などについての相当の知識および経験を有すること」が求められている(昭和62年1月14日厚生省通知)から、担当医の具体的な専門科目によって注意義務の内容、程度が異なるというわけではなく、二次救急医療機関の医師として、救急医療に求められる医療水準の注意義務をはたさなければならない。したがって、二次救急医療機関に勤務する医師である以上、本件のような高エネルギー外傷患者には初診時から胸部超音波検査を実施し、心嚢内出血と診断をしたうえで必要な措置を講じるべきであり、もし必要な検査や措置を講じることができない場合には、ただちにそれが可能な医師に連絡を取って援助を求めるか、三次救急医療機関に転送することが必要であった。以上のとおり、被告医師には明らかな注意義務違反を認めることができる。原告側6,645万円の請求に対し、4,139万円の判決考察この判決では、医療現場の実情がほとんど考慮されず、理想論ばかりが展開されて担当医師のミスと断言されたようにも思います。おそらく、救急専門医にとっては「preventable death」と考える余地があるケースでしょうけれども、日本の救急医療を支えている多くの外科医、脳神経外科医、整形外科医などからみれば、きわめて不条理な判断ではないかと思われます。なぜなら、この裁判が指摘したのは、「外傷患者に胸部超音波検査を施行できない医師は二次救急医療機関の外科系当直をするな」、ということにもつながるからです。症例は38歳の男性、単独交通事故のケースでした。来院時の意識レベル30、バイタルサインは異常なし、すぐに頭蓋内疾患を疑って頭部CTを施行したが異常なし。体表面の外傷として頬からあごにかけて、および左鎖骨部から頸肋部にかけて打撲痕がありました。その他、胸腹部X線、血算でも貧血などの異常はなく、CPKが197mU/mL(正常値10~130mU/mL)と上昇していました。緊急で処置するべき病態はなかったものの、意識障害がみられたためとりあえず経過観察の入院としたことは、妥当な判断と思われます。ところが、入院後の経過はきわめて急激でした。16:23交通事故16:47救急搬送17:00頭部CT検査:異常なし17:12血算:貧血なし、生化学:CPK 197mU/mL(正常値10~130mU/mL)17:22頭部、胸部、腹部の単純X線撮影:異常なし18:00消化器外科医の診察で腹部異常所見なし18:30一般病室へ入院、家族はいったん帰宅19:00血圧測定不能、呼吸停止20:07死亡確認、死体解剖せず脳神経外科担当医は、来院から約1時間10分で一通りの初期評価を行い、頭蓋内出血など緊急で対応しなければならない病態は除外し、バイタルサインや呼吸状態は安定していたため一般病棟に観察入院としました。ところが病棟へ上がった30分後に容態急変、外傷性急性心タンポナーデも考えて研修医時代に経験したことのある心嚢穿刺にもトライしましたが血液は得られず、蘇生への反応はなく死亡したという経過です。けっしてこのケースは見逃し、怠慢、不注意などといった、最近のマスコミがしきりに喧伝しているような事故状況ではありませんでした。しかも、結果からいえば救命できなかった残念なケースですが、死体解剖の同意は得られず死亡原因も確定しませんでした。もし当初から血圧が低いとか、呼吸状態が悪いなどの所見がみられたのであれば、胸腹部損傷を積極的に疑って急変前から精査を勧めていたと思います。しかし、胸部X線写真で肋骨骨折や血気胸はなかったし、頭部CTでも異常がなければ、それ以外の命に関わる病態を想定して(たとえ無症状でも)胸部超音波検査を積極的に施行したり、自分で検査できなければ容態が安定しているうちに高次医療機関へ転送するというのは、非常に難しい判断であったと思います。それにもかかわらず、裁判官は以下のように考えました。死亡原因は外傷性急性心タンポナーデがもっとも疑われる(注:確定されていない!)患者の受傷形態は高エネルギー外傷であった高エネルギー外傷であれば最初から胸腹部損傷を考えて、たとえ症状がなくても胸腹部超音波検査をしなければならない(数分でできる簡単な検査である)初回検査で異常なくても、胸腹部超音波検査をはじめは1~2時間間隔でくり返し行うそうしていれば心タンポナーデを診断できた心タンポナーデとわかれば心嚢穿刺または心嚢切開で確実に救命できた心タンポナーデの診断・治療ができないのなら、受傷から容態急変までの約2時間半は循環動態も安定していたので、はじめから三次救急医療機関に搬送していればよかったこのように、裁判官はすべて「仮定」を前提とした論理を展開しているのがわかると思います。そもそも、直接の死亡原因すら確定していない状況で、「外傷性急性心タンポナーデ」と診断を決めつけ、それならば数分でできる胸部超音波検査で診断できるはずだ、診断できれば心嚢穿刺で血を抜くだけで助かるはずだ、だから医者の判断ミスだ、とされました。しかし、今回担当したような脳神経外科を専門とする医師に、胸部超音波検査で外傷性急性心タンポナーデをきちんと診断しなさい、とまで要求するのは、現実的には不可能ではないでしょうか。ましてや、搬送直後には循環器系、呼吸器系の異常もはっきりしなかったのですから、専門医にコンサルトするといった考えもまったくといってよいほどなかったと思います。ところが裁判官は法令の記述を引用して、二次救急医療機関には「救急蘇生法、呼吸循環管理、意識障害の鑑別、救急手術要否の判断、緊急検査データの評価、救急医療品の使用などについての相当の知識および経験を有する」医師をおかなければいけないから、たとえ専門外とはいえ外傷性急性心タンポナーデを適切に診断する注意義務がある、と断言しました。となれば、高エネルギー外傷が疑われる交通事故患者には無症状であってもルーチンで胸部超音波検査を施行せよとなり、さらに胸部超音波検査に慣れていない一般的な脳神経外科医は二次救急医療機関の当直をするべきではない、という極論にまで発展しかねません。一方救急専門医は、外傷による死亡には多くの「preventable death」が含まれているという苦い教訓から、ことあるごとに警鐘を鳴らしています。とくに外傷急性期の「preventable death」の原因としては、以下の「TAFなXXX」が重要です。心嚢内出血(cardiactamponade)気道閉塞(airway obstruction)フレイルチェスト(flaii chest)緊張性気胸(tension pneumothorax)開放性気胸(open pneumothorax)大量血胸(massive hemothorax)本件では救急専門医による鑑定で心嚢内出血による死亡と推測されました。そのため救急医の立場では、交通事故で胸を打った患者が運ばれてきたならば、初診時にバイタルサインや呼吸状態は落ち着いていても、「頬からあごにかけて、および左鎖骨部から頸肋部にかけて打撲痕を認めた」のならば、すぐさまFAST(focused assessment with sonography for trauma)をするべきだという考え方となります。これは救急専門医だからこそ求められるのではなく、「外傷初期治療での必須の手技」、すなわち外傷医ならば救急室のエコー検査に習熟せよ、とまでいわれるようになりました(詳細は外傷初期診療の日本標準テキスト:JATEC Japan Advanced trauma Evaluation and Careを参照ください)。つまり医学の進歩に伴って、二次救急医療機関の当直医に求められる医療水準がかなり高くなってきているということがいえます。とはいうものの、二次救急医療機関で働く多くの外科医、脳神経外科医、整形外科医などに、当直帯で外傷性急性心タンポナーデを適切に診断し救命せよというのは、今の医療現場ではかなり厳しい要求ではないでしょうか。このあたりのニュアンスは、実際に医師免許を取得して二次救急医療機関で働かなければわからないと思われ、たとえこのような判決が出ようとも、同じような症例がこれからもくり返される可能性が高いと思います。しかし、たとえ救急医ではなくても「preventable death」とならないように配慮する義務がわれわれ医師にはありますので、やはり外科系当直を担当する立場では、超音波検査で出血の有無だけはわかるようにしておかなければならないと思います。そして、本件のように最初は状態が安定していても、あっという間に急変して死亡に至るケースがあることを想定しつつ、患者およびその家族へ「万が一」のことを事前に説明することが大事でしょう。本件では受傷から約2時間後に「検査の結果は大丈夫です」と説明して、家族へは帰宅を許可しました。ところがその30分後には容態急変しましたので、「誤診があったのではないか」と家族が不審に思うのも無理はないと思います。このように救急患者の場合には、できる限り「病態悪化を想定した対応」が望まれ、そうすることによって不毛な医事紛争を未然に防ぐことができるケースも数多くあると思います。救急医療

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アルツハイマー病、46.8%で不適切な薬剤が処方

 フランス・トゥールーズ大学のFrancois Montastruc氏らは、アルツハイマー病(AD)患者における潜在的に不適切な医薬品(potentially inappropriate medication:PIM)の処方実態を調べた。その結果、AD患者の2人に1人がPIMを処方されていること、そのなかでも脳血管拡張薬の頻度が多いことを報告した。そのうえで著者は、「AD患者への処方に際し、疾患特性および処方薬の薬力学/薬物動態学的プロファイルが十分に考慮されていないことも示唆された」と結論している。これまで、AD患者におけるPIMの使用に関する研究はほとんどなかった。European Journal of Clinical Pharmacology誌オンライン版2013年4月16日号の掲載報告。 本研究は、軽度~中等度のADと診断された地域住民における、PIM処方の頻度およびそれに関連する臨床的因子を明らかにすることを目的に実施した。解析対象としたのは、専門施設で治療を受けているフランス人のADコホートを対象とした4年間の多施設共同前向き試験「REAL.FR試験」に登録された患者データ。PIMについてはLaroche listで評価し、多変量ロジスティック解析により関連する因子を検討した。 主な結果は以下のとおり。・AD患者684例が試験に登録された。平均年齢は77.9 ±6.8歳、女性が486例(71.0%)であった。・Laroche listに基づくと、PIMが1回以上処方されていた患者の割合は46.8%(95%CI:43.0~50.5%)であった。・処方されていたPIMは脳血管拡張薬が最も多く、全処方の24.0%(95%CI:20.9~27.3%)を占めていた。次いで、アトロピン製剤(17.0%、95%CI:14.1~19.8%)、長時間作用型ベンゾジアゼピン系薬剤(8.5%、95%CI:6.4~10.6%)の順であった。・アトロピン製剤投与患者の16%にコリンエステラーゼ阻害薬の使用がみられた。・多変量解析の結果、女性(オッズ比[OR]:1.5、95%CI:1.1~2.2)と、多剤服用(5種類以上、OR: 3.6、95%CI:2.6~4.5)の2つのみがPIM処方と関連する因子であった。関連医療ニュース ・抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か? ・日本人の認知症リスクに関連する食習慣とは? ・入院期間の長い認知症患者の特徴は?:大阪大学

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(93)〕 すべての非心臓手術症例でのβ遮断薬投与は必須か?

これまで心筋梗塞患者におけるβ遮断薬の投与はClass Iとされてきたが、すべての患者に投与することによる有用性は無いという報告がされるようになった。また、降圧薬としてのβ遮断薬も欧州のガイドラインからは除外された。さらに、β遮断薬間でも、心不全患者の予後改善効果に差があることがメタ解析から報告されている。  このようにβ遮断薬をめぐる種々の問題があるなかで、非心臓手術患者周術期β遮断薬投与の有効性や安全性は、現在も結論が得られていない。メタ解析やコホート研究では、周術期のβ遮断薬の有効性を示した報告も数多くあるが、現行の非心臓手術周術期の評価と治療に関するAHA/ACC(米国心臓協会/米国心臓病学会)ガイドラインでは、すでに他の疾患のためにβ遮断薬が投与されている患者に限って、周術期も継続投与すべき、とされるにとどまっている。  本研究では、米国の104の退役軍人医療センターで非心臓手術を受けた患者13万6,745例を対象に、β遮断薬の投与の有無でみた30日全死因死亡、副次的評価項目である心合併症(非致死的な心停止、Q波心筋梗塞)の発生率を調べ、後ろ向きにβ遮断薬の有効性について検討された。β遮断薬の投与は、改訂版心リスク指標(Revised Cardiac Risk Index:RCRI)のリスク因子(うっ血性心不全、心血管疾患、糖尿病、虚血性心疾患、高リスク手術、慢性腎臓病)数が増えるに従ってリスクを低下させることが示され、今後ランダム化試験が必要とされるものの、術前にRCRIを評価したうえでβ遮断薬の投与を考慮すべき、と本論文では結論付けられている。  ただ、わが国では多くの施設で術前の心疾患のスクリーニングがなされ、かつ心機能を含めた評価のうえで手術が行われている。このようにRCRI以上のリスク評価のうえで手術が行われている現状を考慮すれば、β遮断薬投与の新たな必要性が問題となることは少ないであろう。ただ、β遮断薬の投与量や薬剤の選択を含め、β遮断薬の投与の是非を検討することは今後とも必要である。

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腰部脊柱管狭窄症患者のQOLと機能に及ぼす疼痛の影響が明らかに

 変性腰部脊柱管狭窄症は「症候群」として定義されており、狭窄の形態学的タイプによりどのような臨床的特徴があるかなどは十分に明らかにはなっていない。スウェーデン・ルンド大学スコーネ大学病院のSigmundsson Freyr Gauti氏らは、全国脊椎レジスター(Spine Register)のデータを解析し特徴付けを試みた。その結果、腰痛と下肢痛のどちらが主であるかにかかわりなく、腰部脊柱管狭窄症の手術前の健康関連QOL(HRQoL)および機能は低いこと、また臨床的に重要な差ではないものの腰痛と下肢痛が同程度の患者ではHRQoLと機能が有意に低いことなどを明らかにした。Spine誌オンライン版2013年4月15日の掲載報告。 本研究では、腰部脊柱管狭窄症患者における術前の下肢痛および腰痛の程度と、形態学的タイプ別にみて疼痛がQOLならびに機能にどのように関連するかについて調査することが目的であった。 対象は、スウェーデン全国脊椎レジスター(Swedish Spine Register)に登録された腰部脊柱管狭窄症患者1万4,821例であった。 疼痛の違いにより、腰痛より下肢痛が強い(腰痛<下肢痛)群、腰痛が下肢痛より強い(腰痛>下肢痛)群、腰痛と下肢痛が同程度(腰痛=下肢痛)群に分け、「中心管狭窄症」「外側陥凹狭窄症」「脊椎すべり症を伴う脊柱管狭窄症」における疼痛の特性と、下肢痛または腰痛とHRQoLおよび機能との関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・疼痛部位分類で最も多かったのは「腰痛<下肢痛」群(49%)で、次いで「腰痛>下肢痛」群(39%)、「腰痛=下肢痛」群(12%)の順であった。 ・腰痛が最も強かったのは脊柱管狭窄症群(比:0.93、95%CI:0.92~0.95)、次いで中心管狭窄症群(同:0.88、0.88~0.89)で、外側陥凹狭窄症群は最も低かった(同:0.85、0.83~0.87)。・HRQoLおよび機能が最も低かったのは、「脊柱管狭窄症」の「腰痛=下肢痛」群で、55%(95%CI:50~59)の患者は100m以上歩くことができなかった。・外側陥凹狭窄症群は、自己評価による歩行距離が良好であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・腰椎圧迫骨折3ヵ月経過後も持続痛が拡大…オピオイド使用は本当に適切だったのか?治療経過を解説・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」痛みと大脳メカニズムをさぐる・「痛みの質と具体性で治療が変わる?!」神経障害性疼痛の実態をさぐる

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〔CLEAR! ジャーナル四天王(92)〕 胃食道逆流症に対する外科的手術と薬物療法(REFLUX試験)

本論文は、胃食道逆流症(GERD)の治療における薬物療法と外科的治療の有用性を比較検討したものである。研究デザインが複雑であるのが特徴で、研究デザインはRCTであるが、試験の経過観察中に実際に行われた治療法は、被験者の希望を尊重したものとなっている。すなわち、実際に外科的治療を受けたのは、当初の外科的治療割り付け群の63%および薬物療法割り付け群の13%であり、通常のRCTと異なる『partially randomised preference design』となっている。日常診療の実態に即した対処を加味した成績という点では評価されるものともいえるが、当然ながら、結果の解釈において選択バイアスによる影響が大きいことを考慮すべきである。 欧米における両治療法の評価に関して、大規模なRCT(LOTUS試験:Galmiche JP, et al. JAMA. 2011; 305: 1969-1977.)では、外科的治療と薬物治療の有用性についてはどちらもほぼ満足できるもので、手術の合併症などを考慮すると薬物療法で良い、とする内容であった。 一方、ACG(American College of Gastroenterology)のガイドライン(Katz PO, et al. Am J Gastroenterol. 2013; 108: 308-328.)では、「外科手術の副事象として運動機能障害に伴う嚥下障害や膨満感があるが、両者の有用性は同等」とされており、Cochrane Reviewでは、「外科手術の方が薬物療法よりもQOLが良いが、少数の患者では術後に嚥下障害が生じる」と意見が異なっている。このように外科的手術の有用性を検討する場合、Methodに表現できない『手術という技術力の格差』に伴うバイアスや『非盲検試験における患者の希望』が研究結果に大きな影響を及ぼす可能性に注意が必要である。 なお、日本におけるGERDに対する治療は欧米と大きく異なっている。医療経済的観点が重要視される欧米では、外科的手術が盛んになっている一方、わが国では欧米に比べて胃酸分泌能が低いこともあり、プロトンポンプ阻害薬を中心とした薬物治療が主流であり、現時点で外科的治療との比較試験は皆無である。

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Vol. 1 No. 1 ACSの治療-2次予防を考えた長期治療

大倉 宏之 氏川崎医科大学循環器内科はじめに急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)の慢性期治療には、責任病変での再発防止と非責任病変の新規発症防止、すなわち2次予防が含まれる。責任病変の再発予防には、薬剤溶出ステント(DES)による再狭窄抑制と、適切な抗血小板療法によるステント血栓症の予防が重要である。一方、非責任病変の新規発症を防ぐには、抗血小板薬を含むさまざまな薬物による長期にわたる2次予防が必要である。ACSの予後:欧米と日本の違いACS患者の予後は不良である。欧米のデータでは、その20%は1年以内に再入院し、男性の18%、40歳以上の女性の23%が死亡するとの報告がある1)。また、心筋梗塞(AMI)後の患者は退院後1年以内にその8~10%がAMIを再発するとも報告されている2)。ただ、その再発率は保有するリスクによって異なる。Finnish studyでは、糖尿病例(年率7.8%)は非糖尿病例(年率3%)と比較して心筋梗塞再発が高率であることが示されている3)。ランダム化試験のデータでは、AMIの再発率は1~5%程度とおおむねレジストリーよりも低めである。AMIに対するDESと金属ステント(BMS)を比較したランダム化試験のメタ解析によると、AMI再発はDES留置例で3.1%、BMS留置例で3.3%であった4)。日本のデータでも非ACS症例と比較すると、ACS例の予後は不良であるが(図:本誌p21参照)5, 6)、ACS発症後のAMI再発率は、日本や韓国では1%以下と欧米と比較すると低率である7, 8)。もともとAMIの発症自体が少ないことに加えて、急性期に速やかに経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)による治療がなされていることと、その後も主治医によるきめ細やかな2次予防が行われていることがその理由かもしれない。至適薬物療法によるACSの2次予防欧米では、ACSの予後は経年的に改善していることが示されている。The Global Registry of Acute Coronary Events(GRACE)レジストリーに登録されたACS患者約4万例のデータ(図:本誌p21参照)において、入院中の死亡や心不全、6か月後のAMI新規発症が2000年から2005年にかけて有意に減少していることが示された9)。これは、エビデンスに基づいた薬物治療の浸透と、急性期のPCI施行率が高くなってきた結果である(図:本誌p22参照)。ACS後の2次予防を目指した薬物療法についてはガイドラインに詳細に述べられており10-15)、β遮断薬、ACE阻害薬(またはARB)、アルドステロン阻害薬、スタチン等の有用性が示されている。これらの薬物療法が、日本の臨床の現場にどの程度浸透しており、その結果、日本人のACS患者の予後が実際に改善しているのかどうかについては今後検証すべき課題である。ACS患者では、非責任病変の血管内超音波所見によって、ハイリスク病変を予測可能との報告がなされている16)。もともとイベント発生率の低い日本人でも、同様の予測が可能であるのかについても明らかにすべきである。抗血小板薬によるACSの2次予防薬物による2次予防のうちでも、特に重要な役割を果たしているのが抗血小板療法である。表に日本、米国、欧州の各ガイドライン10-15)に記載されている抗血栓療法の推奨をまとめた(Class I、Class IIaのみ記載)(表:本誌p23参照)。アスピリンが第1選択である点はすべてのガイドラインに共通である。欧州、米国のガイドラインでは、アスピリンに加えてクロピドグレル(または他のP2Y12阻害薬)を12か月間投与することが推奨されている。日本のガイドラインにはその期間は特定されていない11)。抗血小板薬2剤併用療法の至適期間抗血小板薬2剤併用療法(dual anti-platelet therapy: DAPT)の至適投与期間は、ステントの種類(BMSかDESか)と病型(安定狭心症かACSか)により異なる。一般に、DESの場合は12か月間以上のDAPTが推奨されているが20)、至適期間についてのエビデンスは十分ではない。j-Cypherレジストリーでは、ACS例において6か月以上DAPTを継続していた例と、DAPTを6か月時点で中止していた例との間には、その後2年間のイベント発生率に差を認めなかったことが示されている5)。日本では、患者背景や病変背景を考慮した至適な抗血小板薬療法が行われていることが反映されているのかもしれない。ACSの研究ではないが、韓国からはステント留置後12か月以上イベントのなかった2,701例を、DAPT群とアスピリン単剤群にランダム化した試験が報告されている18)。2年間の観察期間中、両群間に心筋梗塞+心臓死の頻度に差はなく、ステント血栓症にも差はなかった(図:本誌p24参照)。EXCELLENT試験は、CypherもしくはXience/Promusステント留置例1,443例のDAPT期間を、6か月間と12か月間にランダム化したものである19)。12か月後のTVF(target vessel failure)や死亡もしくは心筋梗塞の発生には両群間に差を認めなかったが、ステント血栓症はDAPT6か月間群で多い傾向にあった。ただし、6か月間群のステント血栓症発症例6例中5例は6か月以内の発生であり、DAPTの期間が影響した可能性は低い。Prolonging Dual Antiplatelet Treatment after Grading Stent-induced Intimal Hyperplasia study(PRODIGY)では、ステント留置例約2,000例を対象にランダム化し、DAPTの期間を6か月間と24か月間で比較したものである。2年間の追跡期間中に全死亡+心筋梗塞+脳血管障害+ステント血栓症の頻度は6か月間群と24か月間群は同等であったが(10.0% vs. 10.1%, p=0.91)、出血は6か月間群で少なかったとの結果であった(ESC2011で報告)。The Dual Antiplatelet Therapy(DAPT)study20)は、15,000例のDES留置例と5,400例のBMS留置例を登録し、DAPTの投与期間を12か月間と30か月間にランダム化して両者を比較する大規模臨床試験である。すでに患者登録は終了し、現在フォローアップが進行中である。本邦においても、Optimal Duration of DAPT Following Treatment with Endeavor in Real-world Japanese Patients: A Prospective Multicenter Registry (OPERA) studyやNobori Dual antiplatelet therapy as appropriate duration (NIPPON) studyが現在進行中である。これらの研究にはACSも含まれており、日本人独自のエビデンスが得られるものと期待される。抗血小板薬投与と出血性合併症抗血小板薬投与に関連した問題点には出血性合併症がある。ACSに出血性合併症を発生した場合には、その長期予後は不良である21)。DAPT継続にあたっては、そのベネフィットのみならず出血のリスクも考慮せねばならない。ACSにおいて、出血のリスクが特に問題となるのが心房細動合併例である。欧州心臓病学会の心房細動ガイドライン22)では、心房細動合併例に対するステント留置術後の抗血栓療法は表のごとく推奨されている(Class IIa)(表:本誌p25参照)。注目すべき点は、塞栓症のリスクを有する心房細動例では最後的には抗血小板薬は中止し、ワルファリンのみを一生継続することが推奨されている点である。日本でも、心房細動合併ACS例に対する至適抗血栓療法をいかにすべきかは重要な検討課題である。おわりにACSの予後改善には、急性期治療に加えて、抗血小板薬を中心とした長期にわたる2次予防が重要な役割を演じている。ただし、これら多くは欧米のデータに基づいたものであるため、今後、日本人における検証はぜひとも行われるべきである。文献1)Menzin J et al. 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MTX治療乾癬患者には葉酸補充を考慮すべき

 米国・ウェイクフォレスト大学皮膚科研究センターのAmir Al-Dabagh氏らは、メトトレキサート(MTX、商品名:リウマトレックスほか)治療を受ける患者(とくに乾癬患者)の葉酸使用について検討した文献をレビューし、葉酸使用の傾向を検証した。その結果、皮膚科医による処方が少ない傾向や、葉酸の使用は文献的にはMTXの有害事象を減少させることが確認されたが、MTXの有効性を低下させるかについては不明であることなどを報告した。そのうえで「葉酸がMTXの有効性を減じる可能性を心に留めつつ、MTX治療を受ける患者には葉酸補充を考慮すべきである」と報告した。American Journal of Clinical Dermatology誌オンライン版2013年4月11日号の掲載報告 MTXは乾癬治療に効果を示すが、毒性のために使用は制限される。このMTXの有害事象減少を目的に葉酸の補充が行われており、効果を示す可能性も示唆されているが、その特徴はほとんど明らかになっていない。よって、研究グループは本検討を行った。 1989年5月1日~2012年4月1日のPubMedにて、「葉酸(folic acid、folinic acid、folate)」「補充(supplementation)」「メトトレキサート」をキーワードに文献を検索した。また、1993~2009年の全米外来医療調査(NAMCS)データベースを用いて医師のMTX使用と葉酸補充の傾向に関するデータを収集した。 解析には、MTX治療の受療者数、葉酸使用率、診断、医師の専門科、患者の人口統計学的特性などを組み込み、線形回帰分析を用いて葉酸使用の経年変化を調べた。 主な結果は以下のとおり。・解析には26試験が組み込まれた。・大半の試験が葉酸補充について多くのベネフィットを認めていたが、乾癬治療試験については7試験のみであった。・皮膚科医は、MTXを処方する最も多い専門医の一員であった。また、乾癬患者はMTX治療を受けている頻度が高かった。・葉酸補充は、本試験対象期間中に有意に増加していた(p<0.0001)。・しかし、皮膚科医の葉酸使用率は最も低く、MTX治療を受けている患者の9.1%にしか葉酸を処方していなかった。・本検討については次の限界がある。第一に、関節リウマチとは対照的に、乾癬患者におけるMTXの毒性および有効性に対する葉酸の効果を検証した文献が少ない。また、NAMCSデータは、連邦政府に雇用されていない医師の外来患者のみを対象としており、OTCの葉酸使用を記載していない医療供給者を含んでいる可能性がある。またMTXと葉酸の投与量はデータベースに記録されていない。

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統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法は有用か?:藤田保健衛生大学

 これまで、統合失調症患者に対するフルボキサミン(本疾患には未承認)併用療法に関する発表がいくつか行われている。藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、抗精神病薬で治療中の統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法のメタ解析結果の更新を行った。European archives of psychiatry and clinical neuroscience誌オンライン版2013年4月21日号の報告。 著者は、これまでSepehry氏らやSingh氏らによって行われた統合失調症患者に対するフルボキサミン併用療法のメタ解析結果を更新した。2013年1月までのPubMed、コクランライブラリデータベース、PsycINFOを検索し、フルボキサミン併用療法群とプラセボ群を比較したランダム化試験より抽出した患者データを用い、系統的レビューとメタ解析を行った。リスク比(RR)、95%CI、標準化平均差(SMD)を算出した。 主な結果は以下のとおり。・7件の研究(クロザピン研究2件、オランザピン研究1件、第二世代抗精神病薬単剤研究1件、第一世代抗精神病薬単剤研究3件)が同定され、対象患者272例が抽出された。・フルボキサミン併用療法は、全体的(SMD=-0.46、95%CI=-0.75~-0.16、p=0.003、I2=0%、5試験、180例)および陰性症状(SMD=-0.44、95%CI=-0.74~-0.14、p=0.004、I2=0%、5試験、180例)に対し有意な効果が認められた。・しかしながら、陽性症状、抑うつ症状、何らかの原因や有害事象による中止への有意な効果は認められなかった。・主に第二世代抗精神病薬による治療を受けていた患者において、フルボキサミン併用療法は、全体的な改善は認められたが(p=0.02)、陰性症状の改善は認められなかった(p=0.31)。・一方、主に第一世代抗精神病薬による治療を受けていた患者では、プラセボ群と比較して、全体的および陰性症状の改善が認められた(各々p=0.04、p=0.004)。関連医療ニュース ・陰性症状改善に!5-HT3拮抗薬トロピセトロンの効果は? ・統合失調症治療にベンゾ併用は有用なのか? ・統合失調症患者の認知機能改善にフルボキサミンは有効か?

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