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アルツハイマー病の今後の治療戦略予測

 アルツハイマー病は、最もよく見られる進行性の神経変性疾患である。コリン作動性機能障害は主要な病理学的変化の1つであり、コリン作動性ニューロンの枯渇は、βアミロイドプラークや神経原線維変化といった十分に確立された毒性によって引き起こされる。コリン作動性機能障害は、アセチルコリンの合成と放出の減少の結果であり、ムスカリン性およびニコチン性のコリン作動受容体の機能を変化させる。また、コリン作動性変化、アミロイドβ産生やタウのリン酸化と2つの主要なアルツハイマー病の病理的特徴との間には直接的な相関が同定されている。イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学のAnnamaria Confaloni氏らは、コリン作動性受容体の活性を調節できる新たなアロステリックやbitopicリガンドの同定を検討した。さらに、脳内で薬物を送達する薬物送達(drug delivery)法(ナノ粒子、リポソームなど)が、毒性や潜在的な副作用を低減するかも検討した。Current pharmaceutical design誌オンライン版2016年2月15日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・現在、多くの薬剤(たとえば、ドネペジル、リバスチグミンなど)が、アルツハイマー病に使用されていた。そして、ムスカリン性やニコチンアゴニストのような開発中のいくつかの薬剤は、コリン作動系を特異的にターゲットとしている。主なメカニズムは、神経毒性蛋白の集積を減少し、認知障害の原因であるコリン作動性の反応を改善するコリン作動性機能障害の改善を目指している。・有望なアプローチは、脳への薬物送達の改善、または既知もしくは新規の分子経路をターゲットとした新規化合物の開発である。・ナノ粒子やリポソームは、コリン作動系をターゲットとした化合物送達への利用にとくに焦点を当てた、従来の投与経路を克服する新規ナノテクノロジーツールとして評価されている。・最終的には、研究の新規フィールドでは、人工多能性幹細胞の使用が始まる。患者から直接細胞を入手することを可能にする技術は、無限に増殖することができ、感受性神経細胞サブタイプに分化できる。・このことは、アルツハイマー病の病理学的プロセスの理解を改善するために大きく貢献し、コリン作動性機能障害の先にある現在のアルツハイマー病の薬理学を高める可能性がある。・現在のレビューに記載された内容から、薬理学的研究と薬物送達のためのナノテクノロジーの手法、新規の特異的なモデルの同定を組み合わせることで、アルツハイマー病を含むさまざまな神経疾患の治療戦略を大いに改良し、向上させられる可能性がある。関連医療ニュース これからのアルツハイマー病治療薬はこう変わる 抗認知症薬の神経新生促進メカニズムに迫る:大阪大学 新たなアルツハイマー病薬へ、天然アルカロイドに脚光

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非STEMIに多段階PCIは必要か?:SMILE試験

 冠動脈完全血行再建術の非ST上昇心筋梗塞患者(以下、NSTEMI)における役割はいまだ明らかにはなっていない。この研究では、多枝冠動脈病変を有するNSTEMI患者に対する、単段階経皮的冠動脈インターベンション(以下、1S-PCI)と多段階の経皮的冠動脈インターベンション(以下、MS-PCI)という、2種類の冠動脈完全血行再建戦略の心血管・脳血管主要有害イベントの長期的結果を比較した。SMILE(Impact of Different Treatment in Multivessel Non ST Elevation Myocardial Infarction Patients:One Stage Versus Multistaged Percutaneous Coronary Intervention)試験として、Journal of the American College of Cardiology誌2016年1月26日号の掲載報告。 584例の患者が、1S-PCI群とMS-PCI群に1:1の比で無作為に割り付けられた。主要評価項目は主要心血管イベントと主要脳血管イベントの発生率で、1年時の心臓死、死亡、再梗塞、不安定狭心症による再入院、標的血管の冠動脈再血行再建術、脳卒中だった。 主な結果は以下のとおり。・主要評価項目の発生率は1S-PCI群で有意に低かった(13.63% vs.23.19%、HR:0.549、95%CI:0.363~0.828、p=0.004)。・1年時の標的血管再血行再建術はMS-PCI群で有意に高かった(8.33% vs.15.20%、HR:0.522、95%CI:0.310~0.878、p=0.01)。・心臓死および心筋梗塞に限り解析すると、2群間に有意な差は認められなかった。 多枝病変を有するNSTEMI患者に対する心血管および脳血管の主要有害イベントの発生に関しては、単段階PCIによる冠動脈完全血行再建術が多段階のPCIに比べ優れていた。

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処方率上位を伝えるレター、不要な抗菌薬処方削減に効果/Lancet

 英国一般医(GP)の不要な抗菌薬処方を減らす方法として、処方率の高い上位20%のGPに対し、英国主席医務官(England's Chief Medical Officer)名で、上位に位置していることを知らせるレター送付が有効であることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMichael Hallsworth氏らが、プラグマティックな試験を行い報告した。著者は、「低コストで全国規模の抗菌薬処方の削減が可能であり、抗菌薬管理プログラムに追加する価値があるものだ」と結論している。Lancet誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。抗菌薬処方率が高い上位20%のGP診療所を対象に介入 vs.非介入試験 試験は、2×2要因デザインを用いた無作為化比較試験で、一般公開されているデータベースを用いて、抗菌薬処方率が、所属するNHS Local Area Teamで上位20%に位置するGP診療所を同定して行われた。適格診療を、フィードバック介入群と非介入(対照)群にコンピュータで無作為に割り付け、NHS Local Area Teamによる層別化も行った。割り付けについて参加者は知らされなかったが、研究者には知らされた。 2014年9月29日に、フィードバック介入群の全GPに対し、英国主席医務官からレターと、患者への抗菌薬使用に関するリーフレットが送付された。レターには、「所属するNHS Local Area Teamで、抗菌薬処方率が上位20%に属する診療である」旨が書かれていた。一方、対照群のGPには一切の連絡がされなかった。 その後、試験対象者は再無作為化を受け、14年12月に、一方の群には抗菌薬使用の減少を推奨する患者中心の情報が送られ、もう一方には一切の連絡がされなかった。 主要評価項目は、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬で、過去の処方について調整し評価。解析はintention-to-treatにて行われた。レター送付群で抗菌薬処方が有意に減少 2014年9月8日~26日の間に、1,581のGP診療所が、フィードバック介入群(791ヵ所)または対照群(790ヵ所)に割り付けられた。 レターは、介入群791ヵ所の3,227人のGPに送られた。レター送付費用は4,335ポンドであった。 2014年10月~15年3月の、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬は、フィードバック介入群126.98(95%信頼区間[CI]:125.68~128.27)、対照群131.25(130.33~132.16)で、差は4.27(相対差:3.3%;群間差の発生率比[IRR]:0.967、95%CI:0.957~0.977、p<0.0001)であった。これは推定で、処方抗菌薬が7万3,406個減少したことを示す。 GP診療所は再び14年12月に、患者中心介入群(777ヵ所)、対照群(804ヵ所)に割り付けられた。結果、14年12月~15年3月の間の主要評価項目に有意な影響はみられなかった。1,000加重人口当たり処方抗菌薬は、患者中心介入群135.00(95%CI:133.77~136.22)、対照群133.98(133.06~134.90)で、群間差のIRRは1.01(95%CI:1.00~1.02、p=0.105)であった。

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血清尿酸値と心血管疾患死亡率の関係はJ字型

 アジア人における血清尿酸値と心血管疾患との関係を調査するために、大阪大学のWen Zhang氏らはEvidence for Cardiovascular Prevention from Observational Cohorts in Japan(EPOCH-JAPAN研究)のデータを用いて、日本における大規模なプール解析を実施した。その結果、血清尿酸値と心血管疾患死亡率との間にJあるいはU字型の関係が示唆された。また、日本人男女とも、血清尿酸値の最高五分位で心血管疾患の死亡率増加と関連していた。Journal of atherosclerosis and thrombosis誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。 著者らは、3万6,313人(ベースライン時、脳卒中・冠動脈疾患・がんの既往がなかった35~89歳の男性1万5,628人と女性2万685人)のデータを分析した。心血管疾患による死亡率の性特異的ハザード比(HR)を、コホートで層別化したCoxハザードモデルを用いて、血清尿酸値の五分位数に応じて推定した。 主な結果は以下のとおり。・44万1,771人年のフォローアップ中、心血管死亡は1,288件あった。・血清尿酸値と心血管疾患死亡率との間にJあるいはU字型の関係がみられた。・血清尿酸値の最低五分位と比較して、最高五分位は、男性(HR:1.28、95%CI:1.01~1.63)および女性(HR:1.51、95%CI:1.14~1.99)とも、心血管疾患の死亡率の増加と関連していた。・一方、男女とも、脳卒中・冠動脈疾患・心不全による死亡率との有意な関連はなかった。

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がんは最善の死に方なのか~中高年者の意識調査

 がんは転帰が改善しているにもかかわらず、依然として広く恐れられている。他の主な死亡原因である心疾患が早急な死と関連しているのとは対照的に、多くの場合、死亡までの期間が長いと思われているためである。それゆえ、BMJ誌の元編集長であるRichard Smith氏の“がんは最善の死に方(cancer is the best way to die)”という見解は多くの批判を集めた。今回、英国ロンドン大学のCharlotte Vrinten氏らは、中・高年者に対してこの見解に同意するかどうかを調査し、“良い死(good death)”かどうかという観点で、がんによる死と心疾患による死に対する考えを比較した。その結果、中・高年者の4割ががんを“最善の死に方”と見なし、がん死のほうが心疾患死より良いと評価した。著者らは、「2人に1人ががんと診断されることを考えると、がんによる良い死についての会話が、がんへの恐怖を少し軽減するかもしれない」と記している。European journal of cancer誌2016年3月号に掲載。 本研究は、英国の50~70歳のサンプル(n=391)における、性別および教育レベルでの割当抽出法によるオンライン調査(2015年2月実施)の一部である。“良い死”の5つの特徴は、終末期に関する文献から選択した。集団サンプルとがん・心疾患それぞれによる死亡の可能性との関連性を確保するために、彼ら自身の死について各特徴の重要性を評価するよう、回答者に依頼した。また、Smith氏の見解に同意するかどうかも尋ねた。 主な結果は以下のとおり。・少なくとも回答者の95%が、選択された5つの特徴が自分の死において重要かどうかを熟考した。・がんによる死は、心疾患による死と比べて、「起こることに対するコントロール」(p<0.001)、「痛みや他の症状に対するコントロール」(p<0.01)、「身辺整理のための時間」(p<0.001)、「愛する人に別れを言うための時間」(p<0.001)が提供される可能性が高いと評価された。一方、「死亡まで自立して生活することへの期待」においては差がなかった(p>0.05)。・ほぼ半数(40%)の回答者が、がんは“最善の死に方”という見解に同意し、年齢(p=0.40)、性別(p=0.85)、教育レベル(p=0.27)による差はなかった。

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妊娠とメトホルミン-本当に「禁忌」なのか?-(解説:住谷 哲 氏)-492

 肥満人口の増加とともに、耐糖能異常を合併した妊婦の数も増加している。耐糖能異常合併妊娠は、妊娠前糖尿病(pregestational diabetes)、overt diabetes in pregnancy、妊娠糖尿病(gestational diabetes:GDM)に分類されるが、その管理目標は母児の周産期合併症を予防することにある。妊娠中の血糖管理の基礎は食事療法であるが、血糖降下薬を必要とする場合は少なくない。ある薬剤が妊娠中に使用できるかどうかについては、わが国には明確な基準がなく、米国FDAのpregnancy category(薬剤胎児危険度分類基準)を参考にすることが多い。妊娠中に使用できる血糖降下薬はインスリンのみで、他の血糖降下薬は「禁忌」と一般的に考えられているが、本論文で使用されたメトホルミンはカテゴリーBに分類され、実は妊婦に対して使用可能である(ただし、わが国の添付文書には妊婦への投与は禁忌と記載されている)。 GDMに対するメトホルミン投与の有用性が広く知られるようになったのは、2008年に報告されたMiG(Metformin versus Insulin for the Treatment of Gestational Diabetes)試験が契機である1)。この試験では、751例のGDM患者を、メトホルミン2,500mg投与群とインスリン投与群に分け、本論文とほとんど同様のアウトカムを評価した。その結果、主要評価項目では両群に有意差を認めず、胎児に対する有害事象の発症率も両群で有意差を認めなかった。しかし、試験で割り振られた治療を再度選択したいと答えた患者がメトホルミン群で有意に多かった。さらに、この試験で誕生した新生児の満2歳時の体格および体組成を比較した結果が報告されているが、メトホルミン投与群の母親から誕生した子供は、インスリン投与群に比較して、より皮下脂肪が多く内臓脂肪が少ないことが示された(MiG TOFU)2)。その後も、GDMに対するメトホルミンの有用性を検討した試験が行われ、それらを統合したsystematic reviewにおいては、インスリンに対するメトホルミンの優越性が結論されている3)。 以上述べたように、GDMに対するメトホルミンの有用性はすでに確立している。そこで、本論文においてはさらに一歩進んで、耐糖能異常を合併しない肥満合併妊婦に対するメトホルミンの有用性が検討された。対象患者は、高リスクの妊婦を選択する目的でBMI>35とされた。また、メトホルミン投与量不足の可能性を最小にするため、投与量は3,000mg/日とされた。その結果は、主要評価項目である新生児出生体重Zスコア中央値は両群間に有意差を認めなかったが、妊娠高血圧腎症(妊娠中毒症)の発症率は、メトホルミン投与群でオッズ比0.24 (95%信頼区間:0.10~0.61、p=0.001)に減少した。さらに、新生児の有害アウトカムの発症率も両群に差はなかった。 本試験およびMiG試験の結果からいえることは、その有用性に加えて、妊婦に対するメトホルミンの安全性であろう。当然ながら両試験において、乳酸アシドーシスは1例も発生していない。もちろん、今後も引き続きメトホルミン投与群の妊婦から誕生した新生児に対する長期的な観察が必要であることは言うまでもない。しかし、耐糖能異常合併妊娠のみならず、肥満合併妊娠も増加しているわが国においても、妊娠におけるメトホルミンの位置付けを再考する必要があると考えられる。

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脳梗塞急性期には血栓除去術が有益/Lancet

 患者特性などを問わず大半の脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中患者にベネフィットをもたらす脳血管内治療は、血栓除去術であることが明らかにされた。カナダ・カルガリー大学のMayank Goyal氏らHERMES共同研究グループが、5つの無作為化試験に参加した全被験者データをメタ解析した結果で、Lancet誌オンライン版2016年2月18日号で発表した。著者は、「この結果は、脳主幹動脈梗塞による急性虚血性脳卒中患者へのタイムリーな治療を提供するケアシステム構築において大きな意味を持つだろう」と述べている。5つの無作為化試験の患者データをメタ解析 2015年現在までに、5つの無作為化試験で、脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中(以下、脳梗塞急性期)患者には、血栓除去術が標準的内科治療よりも有効であることが示されている。研究グループは、それら試験に参加した全被験者データを分析し、背景が異なる患者集団全体で治療の有効性が認められるか、メタ解析で調べた。 対象となった試験は、2010年12月~14年12月に行われたMR CLEAN、ESCAPE、REVASCAT、SWIFT PRIME、EXTEND IA。これらの試験では、脳梗塞急性期患者を、発症後12時間以内に血栓除去術を行う群または標準的内科治療(対照)群に無作為に割り付けて、90日時点の障害重症度の軽減を修正Rankinスケール(mRS)で評価(主要アウトカム)する検討が行われていた。 研究グループは、各試験データベースから直接、被験者データを集めて、プール集団で90日時点のmRS評価による障害軽減について評価した。また、その治療効果の不均一性について、事前に規定したサブグループ全体で検証した。 試験間のばらつきは、混合効果モデルと着目したパラメータのランダム効果を用いて補足した。そのうえで、混合効果順序ロジスティック回帰モデルを用いて、全集団における主要アウトカムの共通オッズ比(cOR)を算出した(シフト解析)。また、年齢、性別、ベースライン脳卒中重症度(National Institutes of Health Stroke Scale score)、閉塞部位(内頸動脈 vs.中大脳動脈M1 vs.同M2)、rt-PA静注療法(実施 vs.未実施)、ベースラインのAlberta Stroke Program Early CTスコア、発症から無作為化までの時間で補正後のサブグループ評価も行った。標準的内科治療と比較した90日時点の障害重症度軽減オッズ比は2.49 解析には、1,287例の患者データが組み込まれた(血栓除去群634例、対照群653例)。 血栓除去群は、対照群と比べて90日時点の障害重症度が有意に低かった(補正後cOR:2.49、95%信頼区間[CI]:1.76~3.53、p<0.0001)。NTTを試算すると、血栓除去術2.6例施行につき1例の患者で、mRS評価で1単位以上の障害重症度の軽減が認められた。 主要エンドポイントのサブグループ解析では、事前規定のサブグループ全体で障害重症度軽減への治療効果の不均一性は認められなかった(交互作用p=0.43)。 また、80歳以上の患者(cOR:3.68、95%CI:1.95~6.92)、発症から無作為化までの時間が300分超の患者(1.76、1.05~2.97)、rt-PA静注療法不適の患者(2.43、1.30~4.55)といった注目すべき階層群で、対照よりも血栓除去術の効果サイズが大きかった。 90日時点の死亡率、硬膜下血腫および症候性頭蓋内出血リスクは、治療群間で差はみられなかった。

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性差という個体の特徴の意義~女性は心房細動の予後規定因子なのか~(解説:西垣 和彦 氏)-491

性差医療とその本質とは? 歴史的に医学は成人男性を標準個体とし、その病態や臨床経過・予後、診断から治療に至るまでを確立してきた。しかし近年、危険因子や薬剤の効果においても性差があることが明らかになるにつれ、性差の存在がクローズ・アップされるようになった。この性差という個体の特徴における相違は、生物学的要因としてのホルモンバランスの違いなどがその原因として挙げられている。現代医学は、この性差を無視して成立しなくなったこともあり、性差研究を通して医療に反映させる性差医療が発展してきた。しかし、この性差医療に関し危惧されることがある。それは、性差がもたらすだろう損得を種々追求するがあまり、性差は個体の特徴の1つに過ぎないという本質を失念し、人種や年齢などの寄与度の高い危険因子の存在を無視・偏重して解析することであり、さらに性差がその疾患の予後を規定する普遍の定理かのような提起をしてしまうことである。このことは厳に慎まなければならない。 本論文のポイントは? 本論文のポイントをまとめる。本論文は、女性であることが心房細動の予後規定因子としてより強い心血管イベント/死亡リスクであるのか、30件のコホート研究、計437万1,714例を解析対象として行ったメタ解析研究である。 その結果、心房細動の各アウトカムに対する相対危険の男女比(女性/男性)は、全死亡:1.12(1.07~1.17)、脳卒中:1.99(1.46~2.71)、心血管死:1.93(1.44~2.60)、心イベント:1.55(1.15~2.08)、心不全:1.16(1.07~1.27)であった。したがって、心房細動は、女性であることが心血管イベントや死亡リスクに対し、より強い予後規定因子であると報告している。著者らはその機序として、女性のほうが男性より治療が遅れるのではないかということや、抗凝固薬による出血が多いことが、より強い心血管イベント/死亡リスクとなったのではないかとしているが、あくまでも著者らの推論の域を出ない。 各国の心房細動に対する抗凝固療法ガイドラインにおける性差 心房細動患者の生命予後に対する性差の影響に関しては、わが国も含めてこれまでも多くの研究報告がなされているが、その結果は混沌としていて一定の見解が得られていない。 フラミンガム心臓研究の38年に及ぶ追跡調査では、心房細動の危険度は高血圧があれば男性1.5倍、女性1.4倍とほぼ同等であったが、糖尿病があれば男性1.4倍、女性1.6倍高いという結果が報告された1)。 わが国の心房細動の有無と死亡リスクの関連を検討した、1万人以上の住民を登録したNIPPON DATA80では、非心房細動患者の死亡リスクを1としたとき、心房細動患者の循環器疾患死亡リスクは、男性で1.4倍、女性で4.0倍と多く、総死亡リスクは男性で1.4倍、女性で2.4倍と、女性において心房細動は全死亡あるいは心血管死の独立した危険因子であることが示された2)。しかし、この研究データは1980年~1999年の追跡調査より得られていることから、ワルファリンによる抗凝固療法が普及する以前を反映しているものと考えられ、現状に即応していないものと考えられている。 一方、最近では、心房細動患者の生命予後に関して、女性という因子はそれほど強い危険因子ではないのではないかという報告がなされている。デンマークで行われた、ワルファリン療法を受けていない心房細動患者7万例を登録したコホート研究によると、うっ血栓心不全、高血圧、および糖尿病といったCHADS2スコア1点のリスクと比較して、女性という性差のリスクがきわめて低いことが示された3)。 このような混沌とした結果を受けて、各国のガイドラインも異なった取り扱いをしている。2014年10月にアップデートされた、カナダの心房細動に対する抗凝固療法のガイドラインでは、女性という因子のみはエビデンスがないと抗凝固の対象には入れないとしている4)。これに対して、2015年2月にヨーロッパ心血管プライマリケア学会から出された、心房細動における脳梗塞予防のコンセンサスガイドラインでは、65歳以上の女性あるいは75歳以上の男性であるならば、CHA2DS2-VAScスコアの他のリスクを評価して抗凝固療法の適応を判断することとしており、女性という性差を心房細動の予後規定因子として重要視している5)。 わが国のガイドラインにおいては、65歳未満でほかに器質的心疾患を伴わない心房細動患者において、女性であることは単独の危険因子にならないとし、さらに65~74歳は性別にかかわらず考慮可となりうることから、単独因子として女性という性差は記載されていない6)。さらに、昨年5月に報告されたわが国のJ-RHYTHMレジストリを用いたCHA2DS2-VAScスコアの妥当性を検討した論文では7)、血栓塞栓症は男性(年1.6%)に比較し、女性(年1.2%)ではかえって少ないこと、CHA2DS2-VAScスコアから女性を除いたスコアリングは、血栓塞栓症のリスク層別化の点で有用であり、さらに日本人では、65歳以上や血管疾患もあまりリスク因子として効いていないことから、かえってこれらの因子を含めると予測能が落ちるため、むしろCHADS2スコアで抗凝固薬の使用を評価するのがよいと結論付けられている。はたして女性は心房細動の危険因子なのか? これまでの結果から、心房細動患者に対する抗凝固療法の適応を考慮するとき、女性という性差をその危険因子として考えることよりも、やはり人種による差が大きいといわざるを得ない。その点、この論文は所詮欧米のガイドラインを構築するエビデンスに過ぎず、わが国のガイドラインを左右するほどの影響力は持ち合わせていない。 米国心臓協会 (American Heart Association)の活動として、“Go Red for Women”が提唱されている。この標語は、日本人にとってわかりづらい英語の表現であったこともあり、私が『女性の心血管疾患を減らすことを目的として、女性に積極的に呼びかけていこうという運動の名称』であると知ったのは、かなり経ってからである。米国における女性の心血管疾患罹患の深刻化が問題となっていることの一端であるが、わが国の現状とはかなり異なっているといわざるを得ない。参考文献1)Kannel WB, et al. Am J Cardiol. 1998;82:2N-9N.2)Ohsawa M, et al. Circ J. 2007;71:814-819.3)Olesen JB, et al. BMJ 2011;342:d124.4)Verma A, et al. Can J Cardiol. 2014;30:1114-1130.5)Hobbs FR, et al. Eur J Prev Cardiol. 2016;23:460-473.6)日本循環器学会ほか. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).PDF (2016.3.1参照)7)Tomita H, et al. Circ J. 2015;79:1719-1726.

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喫煙が不妊・早期閉経につながる

喫煙が不妊・早期閉経につながる?! 喫煙により、不妊・早期閉経の可能性が高まります。 受動喫煙に曝されている女性も同様です。喫煙経験・受動喫煙がない女性に比べて…喫煙経験者は受動喫煙者*は1.14倍不妊の確率が高い!1.18倍喫煙経験者は 21.7ヵ月閉経が早い!受動喫煙者*は 13.0ヵ月*喫煙者と10年以上同居しているなど、高レベルの受動喫煙に曝されている女性Hyland A, et al. Tob Control. 2015 Dec 14. [Epub ahead of print]Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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夢の早漏治療薬dapoxetineは本当に安全か?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第62回

夢の早漏治療薬dapoxetineは本当に安全か? >FREEIMAGESより使用 dapoxetine(商品名:Priligy、Poxet)という薬剤は泌尿器科医の間では有名だと思われます。これは、短時間作用性の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)で、早漏治療に用いられることがあります。早漏について知らない女性の方もいると思いますので、少し説明しましょう。 性行為のときに、男性は5分よりも30分、30分よりも1時間“楽しみたい”と考えているワケです。いやだ、おげれつ! しかし、世の中には自制が効かずにたった1分や2分で射精をしてしまう男性もいます。これを早漏と呼びます。医学的に難しく言うなら、「男性における性機能障害。性行為時において女性器へ男性器を挿入した後1分以内に射精してしまう、もしくは挿入前に射精してしまうこと。射精をコントロールできないことによるストレスなど精神的な負担を感じていること。あるいは、性行為自体を避けていること」を指します。 そんな悩める男性たちにとって、dapoxetineは非常に有効という報告が多いです。しかし、残念ながら保険適用されませんので病院では処方してもらえません。ご注意を。 Yue FG, et al. Efficacy of Dapoxetine for the treatment of premature ejaculation: a meta-analysis of randomized clinical trials on intravaginal ejaculatory latency time, patient-reported outcomes, and adverse events. Urology. 2015;85:856-861. 中国の吉林大学からの研究です。この研究は、早漏治療薬としてdapoxetineが有効かどうか、複数の論文を集めてメタアナリシスしたものです。しかるべき機関に登録されている、妥当性の高い論文のみを集めました。その結果、5つのランダム化比較試験が信頼性が高いと判断されました。いずれも、プラセボとdapoxetineを比較したものです。この5試験を合わせて解析したところ、dapoxetineはプラセボと比較してIELT:intravaginal ejaculation latency time(膣内に挿入してから射精するまでの時間)を延ばすことができました(加重平均差1.47分、95%信頼区間:1.22~1.71分、p<0.00001)。つまり、上述の“お楽しみ”の時間が1~2分ほど延びたというのです!患者さんの感想はどうかというと、全般的な印象、性行為の満足度、射精に対する苦悩感といったアンケートに対して「dapoxetineいいね!」という結果が多かったようです。dapoxetineは性行為1~2時間前に30mgあるいは60mg内服するのですが、一番の副作用は下痢と言われています(5~10%)(J Sex Med. 2010;7:2947-2969.)。さすがに行為中に下痢になることはまれでしょうが、下手すると頑張ったその夜のうちにひどい下痢を発症してムードが台無しに…ということにもなりかねません。10分ならともかく1~2分の延長ためにこの薬剤を飲むのもどうかなあ…と感じますが、本当に悩んでいる人にとっては救いの薬剤になるでしょうね。インデックスページへ戻る

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治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのか

 治療抵抗性統合失調症では、クロザピンが標準治療として考えられている。しかし、クロザピンの使用は、多くの副作用により制限がある。また、他の抗精神病薬との無作為化比較試験の数も増加している。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMyrto T Samara氏らは、ネットワークメタ解析により、治療抵抗性統合失調症に使用可能な抗精神病薬によるすべての無作為化試験を統合し分析した。JAMA psychiatry誌2016年3月号の報告。 MEDLINE、EMBASE、BIOSIS、PsycINFO、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials、WHO国際臨床試験レジストリ、clinicaltrials.govより、2014年6月30日までの報告を検索した。少なくとも2人以上の独立したレビュアーにより、公表または非公表の治療抵抗性統合失調症(各試験の定義による)を対象とした単盲検または二重盲検のRCTで抗精神病薬(任意の用量および投与形態)を他の抗精神病薬またはプラセボと比較した試験を選択した。少なくとの2人以上のレビュアーが標準フォームに全データを抽出、コクラン共同計画のリスクバイアスツールで、全試験の質を評価した。データは、ベイジアン設定でランダム効果モデルを使用しプールした。主要評価項目は、統合失調症症状の全体的な変化によって測定される有効性とした。副次評価項目は、統合失調症の陽性症状と陰性症状の変化、治療への分類上の反応、何らかの理由による中止、治療の無効性、重篤な有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・40の無作為化比較試験、5,172例(男性:71.5%、平均年齢[SD]:38.8歳[3.7歳])が分析に含まれた。・全アウトカムにおいて、有意な差は少なかった。・主要評価項目では、オランザピンはクエチアピン(標準化平均差[SMD]:-0.29、95%CI:-0.56~-0.02)、ハロペリドール(SMD:-0.29、95%CI:-0.44~―0.13)、sertindole(SMD:-0.46、95%CI:-0.80~―0.06)よりもより有効であった。クロザピンはハロペリドール(SMD:-0.22、95%CI:-0.38~―0.07)、sertindole(SMD:-0.40、95%CI:-0.74~―0.04)よりもより有効であった。リスペリドンはsertindole(SMD:-0.32、95%CI:-0.63~―0.01)よりもより有効であった。・オランザピン、クロザピン、リスペリドンの優位性のパターンは、他の有効性評価項目でも認められたが、結果は一貫せず、効果サイズは通常よりも小さかった。・また、クロザピン、ハロペリドール、オランザピン、リスペリドン以外の抗精神病薬が有用であるとしたRCTは比較的少なかった。・最も驚くべき発見は、クロザピンがほとんどの他の薬剤よりも有意に良好ではないことであった。 結果を踏まえ、著者らは「抗精神病薬は治療抵抗性統合失調症患者に対し、より効果的だとするエビデンスは不十分であった。そして、非盲検とは対照的に盲検無作為化比較試験の有効性の研究結果では、他の第2世代抗精神病薬と比較しクロザピンの優位性を示す研究は少なかった」とし、「最近のエビデンスを変更するため、今後は高用量や、非常に難治性の統合失調症患者におけるクロザピン研究が最も有望であると考えられる」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 治療抵抗性統合失調症へのクロザピン投与「3つのポイント」

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頸動脈狭窄へのステント留置 vs.内膜切除の10年転帰:CREST試験/NEJM

 頸動脈狭窄に対する頸動脈内膜切除術(CEA)と頸動脈ステント留置術(CAS)を比較したCREST試験の10年追跡結果を、米国・メイヨークリニックのThomas G. Brott氏らが報告した。主要複合エンドポイント(周術期脳卒中・心筋梗塞・全死亡および周術期以降の同側性脳卒中)の10年発生率に両群で有意差は認められず、周術期以降の同側性脳卒中のみでも両群間で有意差はなかった。CREST試験では、これまで主要複合エンドポイントの4年発生率について、両群で差はないことが報告されていたが、さらなる長期追跡の解析結果が待たれていた。NEJM誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。主要複合エンドポイントほか周術期以降の同側性脳卒中も評価 研究グループは、米国およびカナダの117施設で、2000年12月~08年7月に症候性または無症候性頸動脈狭窄症患者2,502例を登録し、CAS群またはCEA群に無作為化して術後6ヵ月ごとに最大10年間追跡調査した(追跡期間中央値7.4年)。 主要複合エンドポイントは周術期(無作為化後30日以内の施術例は術後30日以内、無作為化後31日以後の施術例は無作為化後36日以内)の脳卒中・心筋梗塞・死亡および周術期以降の同側性脳卒中であった。また、長期評価として、周術期以降の同側性脳卒中を主要長期エンドポイントとした。CASとCEAで10年転帰は同等 主要複合エンドポイントの10年発生率は、CAS群11.8%(95%信頼区間[CI]:9.1~14.8)、CEA群9.9%(95%CI:7.9~12.2)で有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.10、95%CI:0.83~1.44)。 主要長期エンドポイントの10年発生率は、CAS群6.9%(95%CI:4.4~9.7)およびCEA群5.6%(95%CI:3.7~7.6)で、両群間に有意差はなかった(HR:0.99、95%CI:0.64~1.52)。 症候性患者と無症候性患者に分けて解析した場合、いずれのエンドポイントも両群間で有意差は認められなかった。再狭窄発症または再血行再建を行った患者の割合は、CAS群12.2%、CEA群9.7%であった(HR:1.24、95%CI:0.91~1.70)。 著者は、「CREST試験の長期追跡結果は頸動脈疾患の治療と管理に役立つものであり、CASおよびCEAともに周術期のリスクは低いことに注目すべきであろう」と述べている。ただし、CREST試験では内科的治療との比較が行われていないという限界があったため、現在、CAS、CEAおよび非介入(強化薬物療法)の3群を比較するCREST-2試験が行われている。

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冠動脈手術前のアスピリンは中止すべきか?/NEJM

 冠動脈手術前のアスピリン術前投与は、死亡および血栓性合併症のリスクを低下させることはなく、出血リスクも増加しない。オーストラリア・アルフレッド病院のPaul S. Myles氏らが、冠動脈手術を受ける高リスク患者においてアスピリンが死亡率や血栓性合併症の発症率を減らすかどうかを評価する目的で行ったATACAS試験の結果、明らかとなった。ほとんどの冠動脈疾患患者は、心筋梗塞・脳卒中・死亡の1次または2次予防のためにアスピリンを投与されている。アスピリンは、出血リスクを高めるが、冠動脈手術前に中止すべきかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年2月25日号掲載の報告。冠動脈手術予定患者を対象に2×2要因試験を実施 ATACAS試験は、2×2要因デザインを用いた二重盲検無作為化比較試験で、2006年3月~13年1月に5ヵ国19施設にて患者登録が行われた。対象は、冠動脈手術が予定されている周術期合併症リスクを有する患者で、アスピリン群またはアスピリンとマッチさせたプラセボ群、ならびにトラネキサム酸群またはトラネキサム酸とマッチさせたプラセボ群に無作為化された。 本論文は、アスピリン試験についての報告である。2,100例がアスピリン群(1,047例)とプラセボ群(1,053例)に無作為化され、それぞれ手術1~2時間前にアスピリン100mgまたはプラセボを投与された。ワルファリンとクロピドグレルは、手術の少なくとも7日前に中止されることになっていた。 主要評価項目は、術後30日以内の死亡・血栓性合併症(非致死的心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓、腎不全、腸梗塞)の複合エンドポイント。事前に定めた副次評価項目は、死亡、非致死的心筋梗塞、重大出血、心タンポナーデおよび輸血であった。主要評価項目および副次的評価項目いずれもイベント発生率に両群で有意差なし 主要評価項目のイベント発生は、アスピリン群202例(19.3%)、プラセボ群215例(20.4%)であった(相対リスク:0.94、95%信頼区間:0.80~1.12、p=0.55)。 再手術を要する大出血の発生率は、アスピリン群1.8%、プラセボ群2.1%(p=0.75)、心タンポナーデはそれぞれ1.1%、0.4%(p=0.08)であった。死亡、脳卒中、肺塞栓、腎不全、腸梗塞の発生率は両群間で類似していた。 主要評価項目に関して、治療群と患者の性別・年齢・左室機能・出血リスク・術式・直近のアスピリン曝露量との間に、有意な交互作用は認められなかった。 著者は、「アスピリン群で出血リスクが増加しなかったのは、患者の選択、低用量(100mg)、患者の半数で抗線溶療法を行っていたことが関与していると考えられる」との見解を示している。

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長時間労働とがんリスク

 長時間労働は心血管疾患リスクの増加と関連しているが、がんとの関連は不明である。英国London School of Hygiene & Tropical MedicineのKatriina Heikkila氏らのマルチコホート研究により、長時間労働は、がん全体、肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスクに関連がないことが示唆された。一方、乳がんリスクとの関連については「さらなる研究が必要とされる」と記している。British Journal of Cancer誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。 著者らは、登録時にがんを発症していない男女11万6,462人について、労働時間とがんリスクの関連を調査した。がんの発症は全国のがん・入院・死亡登録で確認、また週単位での労働時間は自己申告による。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.8年間に4,371人ががんを発症した(大腸がん393人、肺がん247人、乳がん833人、前立腺がん534人)。・労働時間とがん全体のリスクの間に明らかな関連は認められず、大腸がん、肺がん、前立腺がんのリスクとの間にも関連は認められなかった。・女性の乳がんにおいて、年齢、社会・経済的地位、シフト時間や夜間労働、ライフスタイル因子に関係なく、週55時間以上の労働で1.60倍(95%信頼区間:1.12~2.29)に増加した。ただし、この結果は出産歴による残余交絡が影響している可能性がある。

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ロコモは、身体能力だけでなくうつ病とも関連する?

 ロコモティブシンドローム(LS)は、身体能力だけでなくうつ病の程度とも関係していることを愛知医科大学 運動療育センターの池本 竜則氏らが報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2016年2月10日号の掲載報告。 LSについての報告は最近増加しており、現在までに身体能力に関しての研究はなされてきたが、精神医学的評価を含めた研究はまれである。本研究では25-question geriatric locomotive function scale(GLFS-25)を用いて、LSの有無と重症度に関連する身体的および精神的パラメータを調査した。 対象は、同運動療育センターを利用している健康な60歳以上の高齢者150人で、事前に測定したGLFS-25カットオフ値(=16ポイント)から、LS群もしくは非LS群に割り付けられた。年齢、握力、timed-up-and-go test(TUG)、開眼片足立ち、背筋力、脚筋力、うつ病の程度、認知障害についてのパラメータは、Mann-Whitney U-test、および多重ロジスティック回帰分析を用いて比較検討した。 また、LS重症度と強い相関を示した変数は、多重線形回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・非LS群は110人(73%)で、LS群は40人であった。 ・LS群と非LS群間を比較分析したところ、年齢、握力、TUG、開眼片足立ち、背筋力、うつ病の程度において有意な差が認められた(p<0.006、Bonferroni補正)。・握力機能低下、TUG、片足立ち、うつ病の程度がLSに有意に関連していた(多重ロジスティック回帰分析)。・GLFS-25スコアに大きく寄与する要因は、TUGとうつ病の程度であった(多重線形回帰分析)。

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試みない後悔よりも、試みる勇気を持て、高齢者へのPCI(解説:中川 義久 氏)-490

 「後悔」とは、「ああすれば良かった、こうすれば良かった」と後から物事を悔いることで、皆ができれば避けたいと思っている感情の1つである。恋愛でも、仕事でも、対人関係でもそういう機会は多い。「あの時、勇気を出して告白すれば彼女の気持ちは変わったんじゃないか?」など、ギクシャクしたりした後で後悔の念は強まるものだ。“後悔先に立たず”というが、後悔しても取り戻せないとわかっていても執着心が勝ってしまうのが人間である。これはPCI施行医においても同様である。 非ST上昇型心筋梗塞と不安定狭心症の80歳以上の高齢者に対して、「早期侵襲的治療」と「保存的治療」を比較し、どちらの戦略が患者に利益をもたらすのかを調べた結果がノルウェーのグループからLancet誌に報告された。早期侵襲的治療とは、急性期に冠動脈造影を行い、必要に応じてPCIやCABGを選択し薬物療法の判断にも造影所見を利用する戦略である。保存的治療とは、至適薬物療法のみを行うもので冠動脈造影すら施行しない戦略である。主要エンドポイントは心筋梗塞、緊急血行再建、脳梗塞、全死亡の複合である。 その結果、主要エンドポイントは、早期侵襲的治療群93/229例(40.6%)vs.保存的治療群140/228例(61.4%)で、ハザード比0.53(95%信頼区間:0.41~0.69、p=0.0001)と早期侵襲的治療群が優れていた。出血性合併症は同程度であったという。 早期侵襲的治療を選択しPCI施術を試みたが、手技にまつわる合併症などで不幸な転帰をたどった場合には、「そっと保存的に様子をみれば良かった」と後悔するのが人間である。逆に、保存的治療を選択し結果が芳しくなかった場合には、「多少の危険を冒してでも本人と家族に説明し、勇気を出して侵襲的治療である冠動脈造影とPCIを施行していれば良かったのではないか」と考える場合もあろう。高齢患者の多い日本の実臨床の現場では、日々直面する問題である。 人間が自責の念を抱く最大の後悔は「できるのにしなかったこと」といわれる。つまり、一番大きな後悔は「わかっていたのにしなかった」「できるのにやらなかった」という罪悪感に基づくものである。試みたがうまくいかなかった場合には、その不成功の原因を究明し、次回の改善を期することも可能となる。これは、前向きな後悔といえる。 早期侵襲的治療と保存的治療の選択を迫られた場合に、個々の症例において得失を冷静に考えることは当然であるが、真にevenで迷った場合には、積極的方針を選択すること後押ししてくれる報告と思い、コメントさせていただいた。

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認知症の発症率が低下傾向:真打ち登場!(解説:岡村 毅 氏)-489

 Framingham Heart Study(以下フラミンガム心臓研究)から、認知症の発症率が時代とともに低下していることを示すデータが報告された。これまでも認知症発症率の低下を間接的に示す報告はあったが、本報告はフラミンガム心臓研究という古く巨大なコホート研究から得られた知見であり、信頼性は高い。 ただし、わが国においても同様にいえるかどうかに関しては、実証研究を待たねばならないだろう。また、仮に低下傾向であったとしても、今後認知症を持つ人の数は爆発的に増加すること(同時にすでに人口は減少局面にあり、若者はますます減ること)は決定的であり、著者らも考察の最後でいみじくも述べているが、狂喜乱舞するのではなく、「かすかな希望」をもたらす程度に考えたほうがよいだろう。 さて、フラミンガム心臓研究といえば、循環器領域で重大な結果を量産し続けるお化けスタディであるが、認知症に関しては、うつ症状の既往(若い頃のものでも)が認知症発症の危険因子という報告1)をまずは思い出す。近年は、ソーシャルネットワークの研究もよく目にする、つまり同性の友人が肥満だと肥満になるリスクが高まる2)とか、さらに幸福3)や孤独4)も凝集する(あるいは伝染する)とかいった類の報告である。ネットワークの先験性として、そもそも友人は遺伝的に近いのだ5)とまで報告されていた。素晴らしい研究だが、ここに至ると人間にとって自由とは何かと考えさせられてしまう。一方で批判もあるようで、BMJ誌は「同じ号で」批判の論文6)を載せており、「ダメな解析をしたら、ニキビ、身長、頭痛もソーシャルネットワークを通して伝染性しました(つまり、こんなのはでたらめです)」と述べていて、痛快な批判合戦である。まあ、私自身はこうした論文の解析方法は門外漢であり、以上はいち精神科医の単なる感想です。 フラミンガム心臓研究や、4大ジャーナルからは目が離せない。参考文献1)Saczynski JS, et al. Neurology. 2010;75:35-41.2)Christakis NA, et al. N Engl J Med. 2007;357:370-379.3)Fowler JH, et al. BMJ. 2008;337:a2338.4)Cacioppo JT, et al. J Pers Soc Psychol. 2009;97:977-991.5)Christakis NA, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014;111:10796-10801.6)Cohen-Cole E, et al. BMJ. 2008;337:a2533.

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Vol. 4 No. 3 ACC/AHA 脂質管理ガイドラインコントロバーシー その経緯と現在の考え

荒井 秀典 氏国立長寿医療研究センターはじめに米国のNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)が中心となって作成したNCEP-ATP III(National Cholesterol Education Program-Adult Treatment Panel)のガイドラインが2001年に発表され、そのガイドラインが2004年に改訂された。心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患の予防のための脂質管理に関しては、本ガイドラインが作成された米国だけでなく、アジアを含め多くの国々で脂質管理のガイドラインとして使われてきたと思われる。2008年頃よりNCEP-ATP IIIの改訂版であるNCEP-ATP-IV作成に向けた作業が行われていたが、結局NHLBIはその作成を断念せざるをえなかったと聞く。その後、American College of Cardiology(ACC)とAmerican Heart Association(AHA)という米国を代表する循環器の学会が、NHLBIと共同で動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)のリスクを減少させるための脂質異常症治療に関するガイドラインを2013年11月に発表した1)。そのガイドラインは、これまでのガイドラインから180度転換を図るものであった。ACC/AHAガイドラインは、脂質異常症に関する3つのcritical questions(CQ)に対する回答の形で作成されており、質の高いrandomized controlled trial(RCT)とメタ解析の論文を中心に系統的にレビューし、作成された。したがって、フォローアップ期間の短いRCTやRCTのサブ解析などは採用されていない。ACC/AHAガイドラインは、これまで数多く実施されてきたスタチンによるRCTおよびそのメタ解析の結果をもとに脂質管理の指針が出された結果となっている。このため、実臨床とは解離したガイドラインとの批判もある。メタ解析についてはCholesterol Treatment Trialists' collaborationなどのメタ解析の結果から2-4)、ハイリスク群における高用量スタチンを推奨するガイドラインとなっている。スタチンによるASCVD発症予防効果が期待できる4つのグループを同定設定されたCQに対してシステマティックレビューを行った結果、スタチン治療による多くの心血管イベント抑制を示すエビデンスおよびそのメタ解析より、治療が有益と判断される以下の4つの患者群が同定された。その4つの患者群とは、「ASCVDを有する患者(2次予防患者)」、「LDL-コレステロール(LDL-C)が190mg/dL以上の患者(続発性は除く)」、「LDL-Cが70~189mg/dLで40~75歳のASCVD既往のない糖尿病患者」、「LDL-Cが70~189mg/dL、ASCVD既往も糖尿病もない40~75歳で、10年間のASCVDリスクが7.5%以上(10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく)の患者」である。治療方針は、図に示すようなアルゴリズムに従って決定される。まず、2次予防で75歳以下の患者に対しては高用量スタチンによる治療を行うべきであり、76歳以上の患者には中用量スタチンによる治療を行う。1次予防においては、家族性高コレステロール血症など極めて冠動脈疾患の発症リスクの高い原発性高脂血症に対する治療の必要性から、LDL-Cが190mg/dL以上で21歳以上であれば、高用量スタチン治療を行う。わが国のガイドラインにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上ある場合には家族性高コレステロール血症の可能性が強くなるため、スタチン治療を考慮すべきであるとしているが、家族性高コレステロール血症でなければ、高用量スタチン治療を推奨しているわけではない。次に40歳から75歳までの糖尿病患者は1型、2型を問わずスタチン治療が推奨されている。なかでも10年間のASCVD発症リスクが7.5%以上の患者においては高用量スタチンが、それ以外では中用量スタチンによる治療が推奨される。4つめのグループとしては、2次予防でもLDL-C 190mg/dL以上でも糖尿病でもなくても、10年のASCVD発症リスクが7.5%以上の群であり、この基準を満たす場合にはスタチン治療の適用となる(表)。このように、治療方針決定のための判断材料としては、10年間のASCVD発症リスクを用いる以外は理解しやすく、治療を行う医師は高用量か中用量のスタチンを選べばよいということで、decision makingが容易となっている。図 動脈硬化性疾患予防のためのスタチン治療の推奨画像を拡大する表 高用量、中用量スタチンの治療対象画像を拡大するLDL-Cおよびnon HDL-Cの管理目標値は設定しない本ガイドラインでは、LDL-Cやnon HDL-Cの管理目標値を設定せず、図に示すように高用量(50%以上のLDL-C低下)あるいは中用量(30~50%のLDL-C低下)のスタチンによる治療が推奨されている。その理由は特定のLDL-Cを目標として(例えば、130mg/dL未満と100mg/dL未満でどちらのグループでよりイベント発症が少ないかなど)比較をしたRCTがないからであると説明されている。わが国の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版でも20~30%のLDL-C低下を目標とすることも考慮すると記載されており、LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンスは現状ではないことに関して異論はないが、日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、アドヒアランスを維持するためには管理目標値が必要であると考えている。したがって、動脈硬化性疾患予防ガイドラインにあるようにLDL-Cの管理目標値を考慮しながら治療にあたるというのがより実際的ではなかろうか。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドラインではLDL-Cの管理目標を設定しているが、“脂質管理目標値は到達努力目標値である”ことも認識すべきである。すなわち、100%その値をクリアすることを求めているわけではない。また、ASCVD予防のための脂質低下治療に関しては、高用量、中用量のスタチンのみが推奨されているが、わが国の保険診療では認められていない用量が推奨されている。非常にリスクが高い場合には、高用量スタチンが選択されるであろうが、日本で認められている最大用量のスタチンを用いることになるであろう。さらに、スタチン以外の薬剤でASCVDの発症リスクを有意に減少させる、あるいはスタチンとの併用で相加的なリスク減少が得られるとのエビデンスは得られなかったとされているが、JELISやACCORD Lipidのサブ解析などのエビデンスも考慮し、わが国のガイドラインでは、スタチン以外の薬剤の使用についても妥当としている。1次予防のための包括的リスク評価本ガイドラインにおいては、米国における5つのコホート研究10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく。年齢、性別、人種(アフリカ系アメリカ人かそれ以外)、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無により、その患者の10年間のASCVD発症リスクが計算される。また、生涯リスクも計算される。しかしながら、このリスクチャートをアジア人に適用することは、リスクの過大評価につながることは容易に想像できる。すでに欧米人の解析でも、NCEP-ATP IIIを適用した場合と比べて、スタチンの治療対象となる患者がかなり増加するとの試算もある。例えば、60歳以上の高齢者はほとんどがスタチンによる治療対象となるといわれている。このようにスタチン治療の適応範囲を広げることは、日本人における動脈硬化性疾患発症リスクを考えても現実的ではない。現在わが国のガイドラインでは、NIPPON DATA80を元にしたリスクチャートを用いており、これが日本人のリスク予測には妥当と考えている。ただ、死亡がエンドポイントとなっているため、今後は発症をエンドポイントとしたリスク評価手法を検討していく必要性はあろう。なおこのガイドラインでは、当然ではあるが、スタチン治療を開始する前に患者とのdiscussionが必要であると述べられており、正しい方向性である。安全性への配慮本ガイドラインでは、採用したRCTの成績に基づいて安全性に関する推奨を行っているが、特にスタチンによる糖尿病の新規発症、筋症(CK上昇を伴わないケースも多い)、認知機能低下などである。スタチンによる糖尿病の新規発症に関してはメタ解析の結果も発表されており、明らかであるが、スタチンによる心血管イベント抑制効果をしのぐものではない。また、メタ解析の結果からスタチンによる糖尿病の新規発症は用量依存性であり、スタチンの用量が少ない日本においては糖尿病の新規発症が欧米に比べ低いことが予想できる。スタチンによる糖尿病の新規発症のメカニズムは十分に明らかになっておらず、今後の検討課題である。バイオマーカーや非侵襲性検査の役割本ガイドラインにおいて、すでに述べたように年齢、性別、人種、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無が主要な危険因子であり、これらの危険因子により計算された10年間のASCVD発症リスクが7.5%未満の際に、高感度CRP、冠動脈のカルシウムスコア、ankle brachial index(ABI)などのバイオマーカーあるいは非侵襲性検査を用いることも考慮してよいとなっているが、そもそも慢性腎臓病(CKD)がリスクとしてカウントされておらず、日本でよく使用されている頸動脈エコーについてもエビデンスの欠如から採用されていない。頸動脈エコーについては、もちろん症例を選ぶべきではあろうが、治療の意欲やアドヒアランスを考えると有用な検査であろう。もちろん、エビデンスの蓄積をさらに進めるべきである。脂質異常症ガイドラインの今後の方向性本ガイドライン作成委員は、本ガイドラインがASCVD抑制のみにフォーカスしたガイドラインであり、脂質異常症の包括的なマネジメントのためのガイドラインではないことは認めている。したがって、今後実施すべき臨床試験について以下のように記載している。すなわち、高TG血症の治療はどうすべきか、non HDL-Cを治療ターゲットとできるか、アポB、Lp(a)、LDL粒子数などのマーカーがリスク評価に使えるか、治療方針決定のための最もよい非侵襲検査はなにか、生涯ASCVDリスクは使えるか、心不全や透析患者のなかでスタチンの恩恵を受けることができるのはどのようなグループか、スタチンによる新規糖尿病発症の長期的な影響はどうなのか、RCTから除外されているグループ(HIV患者、臓器移植患者)へのスタチンの効果はどうなのか、などである。いずれも重要なテーマであるが、RCTにそぐわないものもあり、観察研究などの結果もガイドラインに反映させるべきであろう。まとめ今回のACC/AHAガイドラインの特徴の1つは、脂質管理目標値を設定しないことである。ACC/AHAガイドラインにおける治療指針はスタチンによるRCTのみに基づいているため、LDL-Cを中心とした管理のみが強調されている点は注意が必要であり、レムナントなど他の脂質マーカーにも着目して、残余リスクの管理を考慮しながら治療にあたるべきである。今後、ガイドラインの作成は、ACC/AHAガイドラインのようにRCTのみをベースとしたものになる可能性が高いが、時間、コストなどの問題を考えると観察研究などのエビデンスもある程度は取り入れながら、ガイドラインの作成を行うことが現実的ではないかと思われる。文献1)Stone NJ et al. 2013 ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol to reduce atherosclerotic cardiovascular risk in adults: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2014; 129: S1-45.2)Baigent C et al. Efficacy and safety of cholesterol-lowering treatment: prospective meta-analysis of data from 90,056 participants in 14 randomised trials of statins. Lancet 2005; 366: 1267-1278.3)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaboration et al. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet 2010; 376: 1670-1681.4)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators et al. The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. Lancet 2012; 380: 581-590.

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高校スポーツ界の皮膚感染症、初の全国疫学調査

 米国では高校のスポーツ選手、とくにレスリング選手において以前から、皮膚感染症が大きな問題であったが、これまで全国的に高校のスポーツ選手における皮膚感染症についての疫学を調査した報告はない。米国・ミシガン州立大学のKurt A. Ashack氏らは、便宜的標本を用いて解析し、皮膚感染症は高校のスポーツ関連有害事象の1つとして重要であることを明示した。著者は、「スポーツ関連皮膚感染症の疫学を理解することが、皮膚感染症の認識とエビデンスに基づく予防を促進するだろう」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年1月29日号の掲載報告。 研究グループは、High School Reporting Information Onlineにおける2009/2010から2013/2014までの便宜的標本を用い、報告されたスポーツ関連皮膚感染症について調査した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間において、athlete-exposures(1人の選手が1回の練習または試合へ参加する単位。以下、AE)は2,085万8,781例で、474件の皮膚感染症が報告された。発生頻度は、2.27件/10万AEであった。・皮膚感染症の発現率が最も大きかったスポーツはレスリング(73.6%)で、次いでフットボール(17.9%)であった。・最も頻度の高い皮膚感染症は、細菌感染症(60.6%)と白癬感染症(28.4%)であった。・発現部位は頭部/顔面(25.3%)が最も多く、次いで前腕(12.7%)であった。・本研究の限界として、全米アスレチックトレーナー協会(NATA)に加入しているスポーツトレーナーがいる高校のみを対象としていることが挙げられる。ただし、データの報告者はスポーツトレーナーであり、データの質改善に寄与していた。

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臨床試験の公表率は低く、病院間で格差も大きかった(解説:折笠 秀樹 氏)-488

 臨床試験は行うだけでなく、結果を公表することが研究者の務めである。しかしながら、過去の調査によると25~50%程度が公表されなかったという。 今回は、大学病院を対象に調査した。具体的には、2007年~2010年9月のおよそ4年間に、40件以上の臨床試験をClinicalTrials.govサイトへ事前登録した、51の米国の大学病院が調査対象となり、4,347件の臨床試験が行われた。100例を超える臨床試験は23%、二重盲検試験は28%、そしてRCTは56%を占めていた。結果を公表した割合は66%であり、2年以内に公表した割合は36%であった。過去の調査とほぼ同様の統計数字であった。 ここで日本では考えられないことは、51の大学病院の実名が出ている点である。最も臨床試験数の多かった病院はメイヨークリニックの268件、最も少なかった病院は、バージニア大学病院の32件であった。40件以上実施した大学病院を対象としたとあるが、32件が最小になっていた。それに満たない大学病院もあることだろう。また、2年以内での公表率が最も高かったのはミネソタ大学病院で55.3%、最も低かったのはネブラスカ大学病院の16.2%であり、かなり病院間で格差があった。ClinicalTrials.govへの事後報告率でいうと、1.6%~40.7%とさらに低く、格差もみられた。

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