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第1回 食事療法・運動療法のキホン【糖尿病治療のキホンとギモン】

【第1回】食事療法・運動療法のキホン-糖尿病の食事・運動療法のポイントを教えてください。 糖尿病では、食事・運動療法は治療の大前提です。食事・運動療法を行っても目標とする血糖コントロールが達成できない場合は薬物療法を行いますが、その場合でも、食事・運動療法、とくに食事療法が守られなければ、薬剤の十分な効果を得ることはできません。食事療法が薬物療法の効果を左右する、といっても過言ではありません。ですので、私は患者さんに、“食事療法の代わりになる薬はない”こと、“食事療法が守られないと、どんな薬を使っても十分な効果が得られない”ことを必ず伝えています。 患者さんの血糖値にもよりますが、まず、食事・運動療法を数ヵ月行います。最初は1ヵ月に1回来院していただき、こまめに効果を確認します。HbA1cの低下が認められる間は、食事・運動療法のみで十分効果が得られていますので、そのまま継続します。HbA1cの低下が横ばい状態になり、低下する様子が2~3ヵ月みられなくなったら、食事・運動療法のみではこれ以上改善しないと判断し、薬物療法を開始します。-食事・運動療法を継続してもらうのが困難です。外来で短時間に行うことができる指導のコツはありますか。 最初に頑張りすぎてしまう人の場合、すぐに息切れしてダメになってしまうということは往々にしてあることです。食事・運動療法は糖尿病治療の根幹で、治療を続ける限りやっていく必要があります。そのために、“無理なく続けられる食事・運動療法”をやっていく、ということが大切です。食事・運動療法は、患者さんの欲求や嗜好、年齢や健康状態、生活スタイルが大きく影響します。そのため、いずれも通り一遍の方法を指導するのではなく、患者さんの置かれている環境の中で継続できる方法を一緒に考え、選んでいきます。効果が出ると、動機付けにもなります。 血糖コントロールが悪化した場合には、生活習慣が乱れている可能性があるので、食事・運動療法の状況を確認し、問題点を見つけて、是正する方法を一緒に考えます。また、そのときに「できていないですね」などと否定するのではなく、きちんとできているところを見つけて「ここはよくできていますね」などと褒め、「一緒に頑張りましょう」というのもよいでしょう。-高齢者にも、厳密な食事管理・運動を行ってもらうべきでしょうか。 高齢患者さんは、高齢になって発症した場合と、青壮年発症で高齢になった場合に分けて考えます。後者はとくに問題がなければ、それまでの食事・運動療法を続けていただきます。 高齢者の血糖コントロールについて、2015年4月に設置された「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」で、まずその目標値について議論され、2016年5月20日に、「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」が発表されました1)。 基本的な考え方として、 1.血糖コントロール目標は患者の特徴や健康状態年齢、認知機能、身体機能(基本的ADLや手段的ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して個別に設定すること、2.重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行うこと、 としたうえで、 3.高齢者ではこれらの目標値や目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、今回新たに設定された目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としたこと、 を挙げています。具体的には、患者を認知機能やADL、併存疾患や機能障害によって、カテゴリーI~IIIに分類し、それぞれ重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU薬、グリニド薬など)の使用有無で分けて考えます。これら薬剤を使用していない場合は、カテゴリIおよびIIとも7.0%未満、カテゴリIIIでは8.0%未満が目標値となります。一方、これら薬剤を使用している場合は、カテゴリIでは65歳以上75歳未満7.5%未満(下限6.5%)/ 75歳以上8.0%未満(下限7.0%)、カテゴリIIは8.0%(下限7.0%)、カテゴリIIIは8.5%未満(下限7.5%)となっています。 高齢患者さんの場合、上述の高齢者糖尿病の血糖コントロール目標にあるように、年齢や余命、合併症、ADL、腎・肝機能を中心とした生理機能の低下、運動能力の低下といった身体的特徴や、うつ状態やストレス状態といった心理的特徴、さらに家族との関わりや経済状態といった社会的特徴を考慮する必要があります。私は、これらを考慮しながら、まず、HbA1c 8%以下を目指します。しかし、いずれにしても、食事・運動療法は治療の大前提で、薬物治療の効果にも大きく影響しますので、個々の高齢患者さんのできる範囲で守っていただくようにします。-食事・運動療法は個人差が大きく、効果がばらばらです。患者の性別や体格、年齢によって運動と食事の指導をきめ細かに行うべきでしょうか。 前述したように、食事・運動療法は、患者さんの欲求や嗜好、年齢や健康状態、生活スタイルが大きく影響します。そのため、すべての患者さんに対して同じように指導しても、思うような効果が得られません。とくに、生活スタイルは非常に重要で、すでにリタイアされていて時間があり、食事・運動療法にかける時間が取れる方と、お仕事をされていらっしゃる方とでは異なります。その患者さんの生活の中で、できることを考えていく必要があります。また、合併症の有無や、高齢者であれば生理機能や運動能力の低下、家族の有無なども影響します。性別に関しては、私は、女性は男性に比べて比較的真面目に取り組むという印象を持っています。-糖質制限食を患者さんに勧めてよいでしょうか。本当に有効なのか教えてください。 近年、炭水化物(糖質)の摂取制限の体重減少が注目されており、私も患者さんから聞かれることがあります。糖質制限に関しては、これまでにさまざまに議論されており、現時点で糖尿病に関して有効であるという明確な根拠は見いだせていません。 厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」2)では、糖尿病の食事として、三大栄養素の摂取比率を定めており、炭水化物の摂取比率を50~60%エネルギーとしたうえで、1日摂取量150g/日以上を目安とすることを勧めています3)。 しかし、夜遅く摂取した炭水化物は翌朝の空腹時血糖値に影響し、それが続けば、ひいてはHbA1cの値に影響します。そのため、私は、朝・昼の炭水化物は普通に摂取し、夕食の炭水化物は少し控え目にするよう(子供用茶碗に軽く一杯程度)、指導しています。昼食の炭水化物を制限してしまうと、どうしても、夕食までにおなかが空き過ぎてしまい、強い空腹感から、かえって炭水化物を多く取ってしまいかねません。「昼間の炭水化物は、夜の炭水化物摂取を抑えるための薬だと思って、しっかり食べてください」と患者さんに指導しています。 夕食は早めに、寝るまでに時間を空けること、とよくいわれますが、働いている方の場合、どうしても帰宅してからの遅い夕食になり、食べてからすぐ寝てしまいがちです。また、昼食と夕食の間に時間が空いてしまうと、空腹感から、炭水化物を多く摂取してしまう可能性があるため、そのような方の場合は、職場で午後6~7時くらいに、軽く炭水化物を取り(おにぎり1~2個程度)、帰宅してからは、海藻類やきのこ類、緑黄色野菜、豆類などを食べるよう、指導するとよいでしょう。 「糖質を制限したら、後は何を食べてもよい」ということをよく聞きますが、糖尿病患者さんの場合、合併症として腎症がありますので、タンパク質の量は非常に重要になってきます。また、脂質を取り過ぎれば、動脈硬化や脂肪毒性※の問題も出てきます。 ※脂肪毒性:脂肪細胞から遊離される脂肪酸によってインスリン抵抗性が生じ、血糖が上昇する、また、インスリン分泌が減少し、膵β細胞が障害されること。-患者さんの何を指標に、どれくらいの負荷の運動をどれだけ勧めればいいのか、教えてください。 一般的に、健康状態に問題がなければ、中等度の強度の有酸素運動が勧められており、強度の目安として、最大酸素摂取量の50%前後、運動時の心拍数が50歳未満では1分間100~120拍、50歳以上は100拍以内とされています1)。しかし、適切な強度を見極めるのは難しいと思いますので、「ちょっときつい」と思う程度、少し息切れする程度・汗ばむ程度を目安としていただければと思います。 また、運動の頻度、負荷量としては、できれば毎日、少なくとも週に3~5回、強度が中等度の有酸素運動を20~60分間、計150分以上運動をすることが勧められています。また、同時に、腹筋や腕立て伏せ、スクワット、ダンベルを使ったレジスタンス運動、いわゆる筋トレですが、これを週に2~3回行うことが推奨されています。歩行運動であれば1回15~30分を1日2回、1日の運動量として、歩行は約1万歩(消費エネルギー約160~240kcal)が適当とされています1)。 これらを踏まえたうえで、患者さんの年齢や身体能力、合併症の有無や生活スタイルに合わせ、その方の日常生活に組み入れ、継続できる運動を一緒に考えていくとよいと思います。 私は、リタイアされて時間に余裕がある方であれば、毎食後のウオーキング(速歩)をお勧めしています。食事の食べ始めを0とし、1~2時間の間に、20分程度のウオーキングをします。食後1時間半~2時間で血糖値がピークを迎えますが、食後に20分程度のウオーキングをすることによって、食後の急激な血糖上昇を抑え、緩やかにするという効果が得られます。 働いている方であれば、このような運動を取り入れるのは難しいので、たとえば、電車で通勤されている方ならば一駅分歩く、エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使うなど、普段の生活の中でできる運動を考えます。1)日本糖尿病学会編・著.糖尿病治療ガイド2016-2017.文光堂;2016.2)健康局がん対策・健康増進課栄養指導室.「日本人の食事摂取基準(2015年版)策定検討会」報告書.2014年3月28日.3)日本糖尿病学会.日本人の糖尿病食事療法に関する日本糖尿病学会の提言.2013年3月.

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日本でのADHDスクリーニング精度の評価:弘前大学

 ADHD児は、生活するうえで複数の問題を抱えている。そのため、早期に発見し、適切な介入を行うことが重要である。弘前大学の髙柳 伸哉氏らは、5歳児のADHDをスクリーニングするため、家庭および学校でのADHD-Rating Scale-IV日本語版(P- and T-ADHD-RS)の心理的特性を評価した。Research in developmental disabilities誌オンライン版2016年5月7日号の報告。 子供838人(男児:452人[ADHD:28人]、女児:386人[ADHD:18人])の親および教師は、ADHD-RSおよびStrengths and Difficulties Questionnaireを行った。 主な結果は以下のとおり。・P- and T-ADHD-RSより、2因子モデル(不注意と多動性衝動性)と内部整合性を確認した(CFI:0.968、980、RMSEA:0.049、0.055、SRMR:0.030、0.024、α=0.86~0.93)。・日本の男児、女児は、米国児と比較し、P- and T-ADHD-RS総スコアが有意に低かった(d=0.65~1.14、0.36~0.59)。・P-ADHD-RSは、T-ADHD-RSと比較し、AUC(0.955、0.692)、感度(89.13%、30.23%)、PPV(46.59%、16.05%)の高い精度を示した。 著者らは、「P-ADHD-RSは、集団よりADHDの可能性がある子供をスクリーニングするうえで、高い信頼性と妥当性を示した。学校での子供の生活適応の予測妥当性を検討するために、縦断的研究が必要とされる」とまとめている。関連医療ニュース 2つのADHD治療薬、安全性の違いは 小児ADHD、食事パターンで予防可能か 成人期まで持続するADHD、その予測因子は

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左心室収縮能低下を伴う多枝病変、PCIかCABGか

 左心室の収縮機能低下を伴う多枝冠動脈病変について、ガイドラインは経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも冠動脈バイパス術(CABG)を推奨しているが、両者を比較した無作為化試験はこれまで行われていない。今回、レジストリに登録された患者から傾向スコアを用いて一致させた患者を抽出し、両者を比較した結果がCirculation誌2016年5月31日号(オンライン版2016年5月5日号)に発表された。傾向スコアを用いてPCI群とCABG群を比較 American College of Cardiology Foundation(ACCF)/American Heart Association(AHA)の安定虚血性疾患に対するガイドラインでは、左室駆出率(LVEF)35%以下の患者の生存率の改善に対してCABGがクラスII bの推奨度で推奨されている一方で、PCIは推奨されておらず、再灌流療法の選択に関しては付随する臨床情報を基に判断することになっている。 本試験のデータは、ニューヨーク州の非連邦病院で登録が義務付けられているレジストリ[New York State Percutaneous Coronary Intervention Reporting System(PCIRS)とthe Cardiac Surgery Reporting System(CSRS)]から抽出した。2008~11年にLVEF≦35%で多枝冠動脈病変を有し、エベロリムス溶出ステント(EES)を使用したPCIもしくはCABGを受けた患者が対象となった。なお、以下に当てはまる患者は除外された:1)50%以上の左主冠動脈病変を有する患者(CABGを優先的に施行するため)、2)CABGもしくは心臓弁の手術を受けた患者(再度開心術を受ける可能性が低いため)、3)PCIもしくはCABG前、24時間以内に心筋梗塞を起こした患者(PCIを優先的に施行するため)、4)PCI施行時にEES以外のステントを使用した患者、5)過去1年以内に再灌流療法の既往がある患者、6)血行動態が不安定もしくは心原性ショックの患者。 傾向スコアを用いてマッチングさせたPCIを受けた患者(PCI群)とCABGを受けた患者(CABG群)、各1,063例を比較した。1次評価項目は長期フォローアップ中の全死亡。2次評価項目は心筋梗塞、脳卒中、および冠動脈に対する再灌流療法の施行。フォローアップ期間の中央値は2.9年であった。死亡率は同等、2次評価項目に有意差あり 短期間(30日以内)のフォローアップでは、両群の死亡率に差は認められなかった(HR:0.62、95% CI:0.31~1.24、p=0.17)が、PCI群はCABG群に比べて脳卒中のリスクが95%も低かった(0.1% vs. 1.8%、HR:0.05、95% CI:0.01~0.39、p=0.004)。長期間のフォローアップでも両群の死亡率は同等であった(HR:1.01、95% CI:0.81~1.28、p=0.91)。PCI群は、脳卒中の発生率が有意に低かったが(HR:0.57、95% CI:0.33~0.97、p=0.04)、心筋梗塞(HR:2.16、95% CI:1.42~3.28、p=0.0003)および冠動脈再灌流の発生率(HR:2.54、95% CI:1.88~3.44、p<0.0001)は有意に高かった。 著者らは、日本でも使用が始まったエベロリムス溶出ステントなどの新世代のステントを使用したPCIがCABGの代替オプションになりうると結論付けている。しかし、傾向スコアを用いても測定されない交絡因子の可能性が否定できないこと、冠動脈病変の複雑性を評価するSYNTAXスコアやCABGリスクを評価するSTS、EuroSCOREなどを用いていないことを本試験の欠点に挙げている。

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治療抵抗性統合失調症、ビタミンDとの関連を検証

 低ビタミンDレベルは、統合失調症と関連しているが、ビタミンDレベルと疾患重症度や日光曝露量との関連はほとんどわかっていない。オランダ・High Care ClinicsのJan P A M Bogers氏らは、治療抵抗性の重度統合失調症患者とスタッフにおけるビタミンDレベルを比較し、ビタミンDレベルに対する日光曝露の影響を検討した。Nordic journal of psychiatry誌2016年5月号の報告。 ビタミンDレベルは、治療抵抗性統合失調症患者において4月に測定し、患者とスタッフにおいて6月の非常に晴れた春の日に測定した。4月と6月のビタミンDレベルを患者で比較し、6月のビタミンDレベルを患者とスタッフで比較した。日照の影響を検討するに当たり、患者が日中屋外で過ごした時間とビタミンD合成に推奨される最小時間との比較、および患者とスタッフにおける屋外で過ごした時間の比較を考慮した。 主な結果は以下のとおり。・患者は、ビタミンD欠乏症を高率で有し(79~90%)、スタッフと比較しビタミンDレベルが低かった(p<0.001)。皮膚の色素沈着とは独立していた。・患者において、皮膚への日光曝露時間は推奨時間よりかなり長く(p<0.001)、またスタッフよりも曝露時間が長いにもかかわらず(p=0.003)、ビタミンDレベルは正常値ではなかった。 結果を踏まえ、著者らは「治療抵抗性統合失調症患者のビタミンD欠乏症は、顕著であり、皮膚の色素沈着の違いや非活動性、病棟での屋内型ライフスタイルでは説明できない。さらに、患者の十分な日光曝露でも、ビタミンDレベルは改善しない」とし、「おそらくビタミンD欠乏症は、健康状態に関与しており、それが統合失調症の病態である。注目すべきは、著しく晴れた春の日光曝露でも、患者のビタミンD欠乏症を改善するには十分でなかった点である。そのため、統合失調症ではビタミンDレベルを測定し、適切に保つことが求められる」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症発症にビタミンDがどう関与しているのか EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか 治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C

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近隣の歩行環境が良いと肥満・糖尿病のリスクが低下/JAMA

 歩行環境に恵まれている都市近郊住民ほど過体重や肥満になる割合が低く、糖尿病の発症率も低いことが明らかにされた。カナダ・St Michael's HospitalのMaria I. Creatore氏らが2001~12年のオンタリオ州南部の都市住民データを分析した結果で、JAMA誌2016年5月24・31日号で発表した。肥満および糖尿病の罹患率はここ10年で大きく上昇しているが、その傾向に歯止めをかける環境的要因の役割については明らかにされていない。著者らは、都市近郊の歩行環境が良好な住区では不良な住区と比べて、過体重、肥満、糖尿病の増大が緩やかであるかどうかを調べた。歩行環境指標で住区を5分類、過体重・肥満・糖尿病の有病率を比較 検討は、オンタリオ州南部の都市成人(30~64歳)に関する地方都市ヘルスケア年報(300万人/年)と、隔年Canadian Community Health Survey(5,500人/サーベイ)のデータ(2001~12年)を時系列分析して行われた。 範囲0~100の標準化スコアで、スコア高値ほど近隣歩行環境が良好であることを示す指標を用いて、都市近隣住区を最低位(第1五分位)群~最高位(第5五分位)群に分類して評価した。 主要評価項目は、過体重、肥満、糖尿病の年間有病率で、年齢、性別、住区の所得状況、民族性で補正した。 分析には、8,777例の都市近隣住区が含まれた。歩行環境指標の中央値は16.8で、第1五分位群は10.1、第5五分位群は35.2であった。住民特性は類似していたが、貧困度は、歩行環境指標が高値群のほうが低値群と比べて高かった。歩行環境指標が高い住区の有病率は有意に低い 2001年において、過体重/肥満の補正後有病率は、第5五分位群が第1五分位群と比べて有意に低く(43.3% vs.53.5%、p<0.001)、また2001年から2012年の間に、有病率は歩行環境不良住区では有意な上昇がみられた(絶対変化:第1五分位群5.4%、第2五分位群6.7%、第3五分位群9.2%)。一方、歩行環境指標が高い住区では過体重/肥満の有病率の有意な変化はみられなかった(同:第4五分位群2.8%、第5五分位群2.1%)。 2001年において、糖尿病の補正後有病率は、第5五分位群がその他の群と比べて有意に低かった。また、同有病率は、第5五分位群では1,000人当たり2001年7.7から2012年に6.2へと低下し(絶対変化:-1.5、95%信頼区間[CI]:-2.6~-0.4)、第4五分位群でも同8.7から7.6へ低下していた(同:-1.1、-2.2~-0.05)。対照的に、歩行環境不良住区では有意な変化がみられなかった(同:第1五分位群-0.65、第2五分位群-0.5、第3五分位群-0.9)。 いずれの評価時点でも、第1五分位群と比べて第5五分位群のほうが、徒歩、自転車利用、公共交通機関の利用率が有意に高く、車の利用率は有意に低かった。ただし、歩行環境が良好な住区でも、2001年と比べて2011年における日々の歩行や自転車利用の頻度は、わずかな増大にとどまっている。余暇の身体活動度、食事、喫煙パターンについては、歩行環境による違いはみられず(各アウトカムの第1五分位vs.第5五分位のp>0.05)、安定的に推移していた。 なお今回の結果について著者は、生態学的要因や、より歩行環境に優れた都市住区デザインと身体活動度増大との関連についてのエビデンスは不足しており、さらなる研究を行い、観察された関連が普遍的なものかを評価する必要があると指摘している。

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米国における新規医療機器の承認状況/BMJ

 論文発表された新規医療機器の大半が、当局による認可または承認を受けており、その際「510(k)申請」が使用されている頻度が最も高く、多くが最初の臨床試験公表前に承認がされているという。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンのHani J Marcus氏らが断面調査の結果、明らかにした。510(k)申請は、合法的に市販されている装置(predicate device)と実質的に同等であることを速やかに承認するためのシステムである。新規医療機器の承認過程は複数あるが、実際にどのように行われているのか、研究グループはバイオメディカル論文で発表された新規医療機器について調査を行った。BMJ誌オンライン版2016年5月20日号掲載の報告。試験報告発表とFDA認可・承認の状況を調査 調査は、2000年1月1日~2004年12月31日のPubMedを検索し、新規医療機器の臨床試験報告、または既報エビデンスがみられない論文を選定して行われた。医療機器の定義は、米国FDAに準拠したもの(instrument、apparatus、implement、machine、contrivance、implant、in vitro reagent)とし、それらまたは類似する医療機器を取り上げている論文、あるいは関連論文を適格とした。 主要評価項目は、装置の種類、ターゲット特性、臨床試験に関する学会または産業界の関与とした。その後、FDAのデータベースを検索し、認可・承認について調べた。発表論文の45%が認可・承認、うち79%が501(k)承認 5,574本のタイトルおよび要約についてスクリーニングを行い、適格性について493本のフルテキスト論文を評価、そのうち218の新規医療機器の臨床試験を包含した。 全体で、臨床試験で報告されていた医療機器のうち99/218(45%)が、最終的に当局の認可または承認を受けていた。 また、これら99の医療機器のうち、78(79%)が510(k)申請により承認を、17(17%)は高リスク医療機器の市販前承認を、また4(4%)がその他により承認されていた。 さらに、43(43%)の医療機器については、臨床試験の公表前に認可または承認がされていたという。

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医療機器臨床試験の事前届出システム:日米どちらのシステムが良いのか?(解説:折笠 秀樹 氏)-541

 米国FDAは医療機器をリスクの程度に応じて、Class I~IIIの3種類に分類している。承認プロセスとしては、免除(Exemption)・届出510(k)・承認(Premarket approval;PMA)の3種類がある。Class I(低リスク)ではほとんどが免除であり、Class II(中リスク)ではほとんどが届出510(k)、そしてClass III(高リスク)は承認(PMA)を課せられることが多い。先発機器と実質的同等(substantially equivalent)であれば届出で済ませられるが、そうでなければ承認が必要となる。承認の場合には、安全性・有効性を証明する臨床データ、つまり臨床試験が必須となる。今回の調査結果によると(n=99)、免除が4%、届出が79%、そして承認が17%という結果であった。臨床試験を必要とする承認の件数も意外に多いという印象を持った。 ちなみに、日本ではClass I(聴診器など)は届出、Class II(MRIなど)は認証(第三者機関による)、Class III/IV(ペースメーカーなど)は承認が原則となっている。 また、本調査では論文は出版されるも、約半数しか市販されていないことがわかった。これは臨床試験の結果が思わしくなく、申請に至らなかったためかと思われる。また、認可の時期についてだが、ほぼ半数の医療機器で論文が出る前に認可されていた。これは、論文出版より前にデータは明らかになっているはずであり、それを添付して申請していたためかと思われる。 このように、あまり目新しい調査結果とは思わなかったが、医療機器臨床試験の事前届出システムに関する日米の違いが気になる。日本では治験として臨床試験を実施するなら届出は必要だが、治験外なら不要とされる。一方、米国ではsignificant riskの医療機器では臨床試験の事前届出(IDE)は必要だが、non-significant riskの医療機器では不要とされる。私は、米国のほうが自然のような気がする。人体に危険が及ぶ可能性の場合には、より慎重に進めるのが筋であり、治験か治験でないかで分けるのは不自然のように思った。

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その灰皿、使用禁止です!

その灰皿、使用禁止です! いまや全席禁煙が当たり前の飛行機。しかし、航空法などの法令で、現在でもトイレなどに灰皿を設置することが義務付けられています。 その理由は、機内のトイレで隠れて喫煙した乗客が、火が消えていない吸い殻をトイレ内のゴミ箱に捨てたことが原因とみられる機内火災により多数の死者が出た事故※があったからです。※1973年に発生したヴァリグ・ブラジル航空820便墜落事故あっても使ってはいけません!!航空機の灰皿設置は、火災を避けるための苦肉の策。喫煙許可を意味するものではありません!社会医療法人敬愛会 ちばなクリニック 清水 隆裕氏Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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Vol. 4 No. 4 DAPTを検証した臨床試験の数々、それらが導いた「答え」とは?

中川 義久 氏天理よろづ相談所病院循環器内科はじめに冠動脈疾患の治療においては、冠動脈血行再建を達成することが本質的に重要である。その手段として経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention:PCI)が主流を占めている。冠動脈血行再建においてバルーン拡張によるPCIの有効性が報告されてから30年以上になる。バルーン拡張のみでは再狭窄率や再閉塞率が高いことが問題であり、これを解決するために金属製ステント(baremetal stent:BMS)が導入された。BMSを用いたPCIは通常治療として受け入れられるようになったが、それでも長期的には再狭窄によって再血行再建を要することが多く克服すべき問題であった。薬剤溶出性ステント(drug-eluting stent:DES)は、BMSに比較して再狭窄を減少させることが示されている。第1世代DESであるシロリムス溶出性ステント(sirolimus-eluting stent:SES)とパクリタキセル溶出性ステント(paclitaxel-eluting stent:PES)が2004年8月から本邦で保険償還が認可され、実臨床において使用可能となった。これにより冠動脈ステント留置後1年の再狭窄率を10%以下に低下させた。現在のPCIではDES留置が通常である。DESは再狭窄を強く抑制するものの、これが血管内皮の修復反応の遅延をきたし、血栓性閉塞(ステント血栓症)の可能性が高い時期が長期間にわたってつづくことが問題とされる。ステント血栓症の予防のために抗血小板薬の適切な投与が重要となっている。ステント血栓症の予防のためにアスピリンと、チエノピリジン系抗血小板薬の併用投与(dual anti-platelet therapy:DAPT)が主流となっているが、その継続すべき期間については明確な指針はない。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上してステント血栓症は減少している。さらに、2015年末からは第3世代のDESも実臨床の現場に登場する。DAPTの期間を短縮しても安全性が保たれるという方向の報告がある一方で、DAPTの期間を延長したほうがよいとの報告もあり、議論がつづいている。DAPTを継続することは出血性合併症を増す危険性があり、血栓症予防と出血性合併症の両者のトレードオフで比較すべき問題である。ステント血栓症の予防のためにDAPTを継続すべき期間について明確な結論はない。DAPTを長期間継続することによる頭蓋内出血などの重大な出血性合併症は患者の不利益ともなり、DAPTの至適施行期間を明らかにすることは、DES留置後の患者にとって大切である。DAPT導入の背景現在は使用頻度が減少しているが、BMSの臨床試験が日本で始まったのは1990年(平成2年)であった。その当時、筆者は小倉記念病院に在籍し、その現場を体験した。当時はDAPTという概念はなく、抗血小板薬としてアスピリンを投与し、さらにワルファリンによる抗凝固療法を行っていた。そのうえ、PCI術後には数日間のヘパリンの持続点滴も加えていた。しかし3%前後という高いステント血栓症の発生率と出血性合併症に悩まされていた。この経験からも明らかなように、抗凝固療法を強化してもステント血栓症を予防できないことはみな痛感していた。チエノピリジン系薬剤とアスピリンによるDAPTをBMS留置後1か月間施行することでステント血栓症の発生を抑制することが示され、ステント留置後の標準治療となった1)。その当時はチエノピリジン系薬剤としてクロピドグレルは存在せずチクロピジンのみであった。STARS研究の結果1)をみると、アスピリン単独や、アスピリンとワルファリンによる抗血栓療法に比べて、DAPTによってステント植込み手技の安全性が高まることがわかる。このデータをもとに、現在のDES時代においてもステント術後のDAPT療法として継承されている。現在では、チエノピリジン系抗血小板薬としては、チクロピジンよりも副作用が少ないクロピドグレルが最も頻用されている。short DAPTとlong DAPTDAPT継続期間については12か月間を基準として、それよりも短い期間(3か月から6か月間)で十分とする意見をshort DAPT派、1年を超えてDAPTを継続したほうがよいという意見をlong DAPT派と総括され、両派による活発な議論がつづいている。しかし、第2世代のDESが普及しステント血栓症は減少し、DAPTの期間は短縮する方向での知見が増加している。抗凝固薬を必要とする患者における抗血小板療法については、DAPTを含む3剤の抗血栓薬は避けたほうがよいとのコンセンサスは得られつつあるが、明確な指針は未だ存在しない。明確な指針はない状況においても各担当医は実臨床の現場で方針を決定しなければならない。DES留置後のDAPT期間、short DAPTで十分か?日本循環器学会のガイドライン2, 3)では、2次予防における抗血小板療法として、禁忌がない患者に対するアスピリン(81~162mg)の永続的投与(レベルA)、DES留置の場合にはDAPTを少なくとも12か月間継続し、出血リスクが高くない患者やステント血栓症の高リスク患者に対する可能な限りの併用療法の継続(レベルB)が推奨されている。本邦でのデータとしてCREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2に登録されたDES(主としてシロリムス溶出性ステント)留置患者6,309例における4か月のランドマーク解析がある4)。4か月の時点でのチエノピリジン系抗血小板薬継続例と中止例でその後3年までの死亡、心筋梗塞、脳卒中の発症率に差はなく、出血性合併症の発症はチエノピリジン系抗血小板薬継続例で多いことが報告されている。これは、日本人におけるDES留置後の至適なDAPT施行期間は、現在の第2世代DESよりもステント血栓症の頻度が相対的に高かった第1世代DESの時代においてすら、4か月程度で十分である可能性を示唆しているもので貴重なデータである。第2世代DESが登場し、臨床成績が向上しステント血栓症は減少しており、DAPTの期間を短縮しても安全性が担保されるという方向の報告が多い。この至適DAPT期間を検討するために大規模なメタ解析の結果が報告された5)。無作為化試験を選択し、DAPT投与期間が12か月間である試験を標準として、12か月未満のshort DAPT試験と、12か月超のlong DAPT試験の比較を行っている。アウトカムは、心血管死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・重大出血・全死因死亡である。10の無作為化試験から32,287例が解析されている。12か月の標準群と比較してshort DAPT群は、有意に重大出血を減少させた(オッズ比:0.58、95%CI:0.36-0.92、p=0.02)。虚血性または血栓性のアウトカムについて有意差はなかった。long DAPT群は、心筋梗塞とステント血栓症は有意に減少させたが、重大出血は有意な増大がみられた。また、全死亡の有意な増大もみられた(オッズ比:1.30、95%CI:1.02-1.66、p= 0.03)。この結果を要約すれば、short DAPTは、虚血性合併症を増大させることなく出血を減らし、ほとんどの患者においてshort DAPTで十分であることが示されたといえる。さらにDAPT期間についてARCTIC-Interruptionという無作為化比較試験の結果が興味深い6)。DESの留置後1年の間に虚血性または出血性イベントを経験しなかった患者において、1年以降のDAPT継続は1剤のみの抗血小板療法と比較し、虚血性イベントの抑制効果は示されず、重症または軽症出血のリスクの上昇が認められた。つまり、留置後1年間でイベントが起きなかった場合、その後のDAPT継続には有益性はなく、むしろ出血イベントのリスクが増大し有害であることが示されたことになる。この試験だけでなく、PRODIGY7)、DES LATE8)、EXCELLENT9)、RESET10)、OPTIMIZE11)などのshort DAPTとlong DAPTを比較した試験でも、長期間のDAPTは心血管イベントを減らすことはなく、出血性合併症を増加させるという結果が一貫性をもって示されている。本邦におけるshort DAPTを示唆する研究:STOPDAPT研究長期間のDAPT施行が抗血小板薬単独治療に比べて出血性合併症を増加させ、長期のDAPT施行をつづけても心血管イベントの発症抑制効果がないのであれば、DAPT施行期間はできるだけ短いほうが望ましいことは明確である。このためのエビデンス構築をめざして、本邦においてはSTOPDAPT研究が行われた。日本心血管インターベンション治療学会2015年学術集会(CVIT2015)においてNatsuakiらによって結果が発表された。この研究は、ステント血栓症の発生リスクが低い第2世代DESを代表するコバルトクロム合金のエベロリムス溶出ステント(CoCr-EES)が留置された患者において、チエノピリジン投与期間を3か月に短縮可能と担当医が判断した連続症例を登録し、ステント留置後3か月の時点でチエノピリジン投与を中止し、ステント留置後12か月の心血管イベント、出血イベントの発生率を評価する研究である。冠動脈にCoCr-EESの留置を受けた3,580人のうち3か月でDAPT中止が可能と判断された患者1,525人が登録された。チエノピリジン投与は4か月までに94.2%で中止され、1年追跡率は99.6%であった。definiteのステント血栓症の発生は皆無であった。選択された患者においてではあるが、CoCr-EES留置後3か月でのDAPT中止の安全性が示唆されたSTOPDAPT研究の意義は大きい。DAPT期間は延長すべき? DAPT試験2014年の第87回米国心臓協会年次集会(AHA2014)でDAPT試験の結果が発表されるまでは、short DAPTの方向に意見は収束しつつあるように思われていた。つまり、DAPT期間を延長することにより出血性合併症の発症リスクは増加し、虚血性イベントの明確な抑制は認められない、というものである。1年間または6か月間のDAPTで十分であり、むしろ論点は3か月間などいっそう短いDAPT期間を模索する方向に推移していた。この方向性を逆転するような結果が「DAPT試験」として報告されたのである12)。DES後の患者で、DAPT期間12か月と30か月というlong DAPTを比較する無作為割り付け試験である。米国食品医薬品局(FDA)の要請により実施された多施設共同ランダム化比較試験であり、冠動脈ステントを製造・販売する企業など8社が資金を提供した大規模研究である。DES後の患者9,961例を対象に、DAPT期間の長短によるリスクとベネフィットが比較検討された。その結果、30か月のlong DAPT群でステント血栓症および主要有害複合エンドポイント(死亡、心筋梗塞、脳卒中)が有意に低く、出血性合併症はlong DAPT群で有意に高かった。long DAPTのベネフィットが報告されたDAPT試験ではあるが、このDAPT試験に内在する問題点についての指摘も多い。本試験のデザインは、DES植込み直後にDAPT期間12か月と30か月に割り付けたわけではなく、植込み当初の1年間のDAPT期間に出血を含めイベントなく経過した患者のみを対象としている。背景にいるDES植込み患者は22,866人おり、そのうちの44%にすぎない9,961人が無作為化試験に参加している。この44%の患者を選択する過程でバイアスが生じている可能性がある。この除外された半数を超える56%の患者に、本試験の結果を敷衍できるのかは不明である。また、この試験の結果では30か月DAPT施行による主要有害複合エンドポイントの抑制は、心筋梗塞イベントの抑制に依存している。心筋梗塞が増えれば死亡が増えることが自然に思えるが、心臓死・非心臓死ともにlong DAPT群において有意差はないが実数として多く発生している。本試験で報告されている心筋梗塞サイズは不明であるが、心筋梗塞イベントが臨床的にもつ意味合いについても考える必要がある。PEGASUS-TIMI 54研究もlong DAPTを支持する結果であった13)。これは、心筋梗塞後1年以上の長期にわたるDAPTが有用か否かを検証する試験で、アスピリン+チカグレロルとアスピリン単独の長期投与を比較した研究である。その結果、有効性はアスピリン+チカグレロル群で有意に優れていたが、安全性(大出血)は有意に高リスクであることが示された。short DAPTかlong DAPTかの問題について決着をつけるには、さらなる研究が必要と思われる。DAPT試験の結果が発表されたあとに、DAPT期間についてのメタ解析がいくつか報告されている。その代表がPalmeriniらによって報告されたものである14)。その論文の結論は明確にDAPT期間の長短を断じたものではなく、患者個別のベネフィットとリスクを考えることを薦めるものであることに注目したい。全患者に均一のDAPT期間を明示することは現実的には困難であり、リスク層別化を考えることが大切と思われる。出血リスクが低く心血管イベントの発生するリスクが極めて高い患者でDAPT期間の延長を考慮することが現実的であろう。文献1)Leon MB et al. A clinical trial comparing three antithrombotic-drug regimens after coronaryartery stenting. Stent Anticoagulation Restenosis Study Investigators. N Engl J Med 1998; 339: 1665-1671.2)日本循環器学会ほか. 安定冠動脈疾患における待機的PCIのガイドライン(2011年改訂版).3)日本循環器学会ほか. ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン(2013年改訂版).4)Tada T et al. Duration of dual antiplatelet therapy and long-term clinical outcome after coronary drug-eluting stent implantation: landmark analyses from the CREDO-Kyoto PCI/CABG Registry Cohort-2. Circ Cardiovasc Interv 2012; 5: 381-391.5)Navarese EP et al. BMJ 2015; 350: h1618.6)Collet JP et al. Dual-antiplatelet treatment beyond 1 year after drug-eluting stent implantation (ARCTICInterruption): a randomised trial. Lancet 2014; 384: 1577-1585.7)Valgimigli M et al. Randomized comparison of 6-versus 24-month clopidogrel therapy after balancing anti-intimal hyperplasia stent potency in all-comer patients undergoing percutaneous coronary intervention. Design and rationale for the PROlonging Dual-antiplatelet treatment after grading stent-induced Intimal hyperplasia study (PRODIGY). Am Heart J 2010; 160: 804-811.8)Lee CW et al. Optimal duration of dual Antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a randomized controlled trial. Circulation 2013; 129: 304-312.9)Gwon HC et al. Six-month versus 12-month dual antiplatelet therapy after implantation of drugeluting stents: the efficacy of Xience/Promus versus cypher to reduce late loss after stenting (EXCELLENT) randomized, multicenter study. Circulation 2012; 125: 505-513.10)Kim BK et al. A new strategy for discontinuation of dual antiplatelet therapy: the RESET trial (REal Safety and Efficacy of 3-month dual antiplatelet Therapy following Endeavor zotarolimus-eluting stent implantation). J Am Coll Cardiol 2012; 60: 1340-1348.11)Feres F et al. Three vs twelve months of dual antiplatelet therapy after zotarolimus-eluting stents: the OPTIMIZE randomized trial. JAMA 2013; 310: 2510-2522.12)Mauri L et al. For the DAPT study investigators: Twelve or 30 months of dual antiplatelet therapy after drug-eluting stents. N Engl J Med 2014; 371: 2155-2166.13)Bonaca MP et al. for the PEGASUS-TIMI 54 steering committee and investigators. Long-term use of ticagrelor in patients with prior myocardial infarction. N Engl J Med 2015; 372: 1791-1800.14)Palmerini T et al. Mortality in patients treated with extended duration dual antiplatelet therapy after drug-eluting stent implantation: a pairwise and Bayesian network meta-analysis of randomised trials. Lancet 2015; 385: 2371-2382.

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春生まれはアレルギーが多い【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第68回

春生まれはアレルギーが多い >FREEIMAGESより使用 「おひつじ座はアレルギーが多いので注意!」なんて星占いを見たら、何言ってんだよ、と思ってしまいますが、実はそれに似た医学論文が存在します。 Cervellin G, et al. Spring season birth is associated with higher emergency department admission for acute allergic reactions. Eur J Intern Med. 2016;28:97-101. 新たな生命が誕生する季節が、もし春だとしたら、その子供はいったいどういったアレルギープロファイルを有して成長するのか。そんな疑問を持った研究グループが出した1つの仮説がここにあります。紹介するのは、急性のアレルギー反応(蕁麻疹、血管浮腫、アナフィラキシーなど)を呈してイタリアの病院の救急部を受診した成人患者を連続登録し、解析した研究です。登録されたのは、588人の患者さん。男女比はおおよそ半々で、平均年齢は43±18歳、最年少が16歳、最高齢が96歳でした。そして、患者さんの誕生日を調べました。最も多かったのは春生まれ! そして最も少なかったのは秋生まれ! 春生まれの患者さんはどのくらいアレルギーのリスクが高いのかというと、秋生まれの患者さんと比べて、1.19倍! …うーん、微妙な結果でしょうか。そして、帰宅させられないほどの重度のアレルギー症状を呈して入院になるリスクは、秋生まれの患者さんと比べて1.86倍リスクが高いという結果でした。この結果を受けて、春生まれの人は、救急部を受診するほどのアレルギー反応を来すリスクがやや高いと結論付けられています。とはいえ、たとえば食物アレルギーは秋生まれに多いという報告もあり1)-3)、一概に生まれた季節によってアレルギーの頻度を断言するのは厳しいと思います。なにせ、赤ちゃんはいろいろな抗原に曝露されるわけですから。アレルギーの患者さんが多い外来の日にでも、患者さんの誕生月をチラリと見てみてはいかがでしょうか。参考文献1)Vassallo MF, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2010;104:307-313.2)Keet CA, et al. Allergy. 2012 ;67:775-782.3)Kusunoki T, et al. Pediatr Int. 2013;55:7-10.インデックスページへ戻る

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難治性てんかん患者へのケトン食療法、その有効性は?

 てんかんは、子供および成人の両方に影響を及ぼす脳障害である。1920年代より、難治性てんかん患者のための治療オプションとして、ケトン食療法が確立されている。チリ・Universidad de las AmericasのF Araya-Quintanilla氏らは、難治性てんかん患者における、単独ケトン食療法と他の食事療法を比較した無作為化臨床試験のシステマティックレビューを用い検討を行った。Revista de neurologia誌2016年5月16日号の報告。 ケトン食療法の有効性は、難治性てんかん患者の発作エピソード減少により判断した。検索には、無作為化対照試験と比較臨床試験が含まれた。データベースには、Medline、LILACS、Central、CINAHLを使用した。 主な結果は以下のとおり。・6件が適格基準を満たしていた。・ケトン食療法は、中鎖脂肪酸食療法と比較し、発作頻度の減少に有効であるとの限られたエビデンスがあった。・古典的なケトン食療法(2.5:1)は、段階的ダイエット(3:1)と比較し、発作の減少に有効であるとの中程度のエビデンスがあった。・古典的なケトン食療法は、アトキンスダイエットと比較し、発作の減少に有効であるとの中程度のエビデンスがあった。・食事療法のタイプを適切に判断するには、治療のコスト、好み、安全性に基づく必要がある。関連医療ニュース 難治性てんかん重積状態への有用な対処法 日本人難治性てんかん、レベチラセタムは有用か てんかん重積状態に対するアプローチは

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SOCRATES試験:薬剤開発は難しい~良いと示すか、良さそうで終えるかの大きな相違(解説:後藤 信哉 氏)-539

 薬剤の適応取得には、薬剤の有効性、安全性の科学的証明が必須と考えるのが世界のルールである。抗血小板薬を長期大量投与すれば出血イベントは増えると予想され、血栓イベントは減ると予想される。当局の認可承認を目指す試験では、過去の標準治療に比較して血栓イベントを減らし、出血イベントに差がないことを示すことが求められる。登録症例数が増えれば、臨床試験にかかるコストは増える。症例登録に時間がかかれば、認可承認されても十分利益を得る前に、薬剤の特許と独占販売権が消失してしまう。薬剤の認可承認を目指す臨床試験は本当に難しい。盲検のキーを開けるまで、試験関係者は胃がただれるほどのストレスであろう。 本試験は、新規の抗血小板薬ticagrelorの脳卒中領域の適応取得を目指す重要な試験である。本試験では、対照薬が100mgのアスピリン(初日は300mg)とされたが、もう少し時間が経過すれば75mgのクロピドグレルを対照とせざるを得なくなって、ticagrelorの有効性、安全性の科学的証明はさらに困難になったであろう。 TIA、軽症虚血性脳卒中は再発率が高いとされた。実際、1万3,199例を登録しても3ヵ月以内の1次エンドポイントの発現率は、アスピリン群にて7.5%と高かった。ticagrelor群での1次エンドポイント発現率は6.7%と低い傾向であったが、ハザード比の95%CIは0.78~1.01と1をまたぎ、有効性を科学的に示すことはできなかった。出血イベントには差がなかった。アスピリン群、ticagrelor群にて0.6%、0.5%という重篤な出血イベントは観察期間を3ヵ月にした利点であろう。ticagrelor群の1次エンドポイントがあと1~2例でもアスピリン群に回っていれば、ticagrelorの優越性を科学的に証明できたかもしれない。 EBMにおける「科学的証明」がきわめて困難になっていること、「科学的証明」とはいっても、推計学における「証明」は数学、物理などのハードサイエンスにおける「証明」よりはソフトであること、個別にはメリットを受ける患者さんがいるかもしれない薬の承認に、population scienceの方法を使いうるほどのイベント発症が起こりにくくなっている現状が、本試験により感じ取られた。 米国とオバマ大統領が主導する「Precision Medicine Initiative」で述べられているように、新薬によりメリットを受ける小集団を簡便に見いだす論理が必要である。時代は「患者集団の科学」から「個別患者の科学」に再度転換しようとしているように思える。

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DPP-4阻害薬の適正使用を再認識する(解説:吉岡 成人 氏)-538

糖尿病患者の半数以上がDPP-4阻害薬を使用している 日本では、糖尿病受療患者の半数を超える300万例以上にDPP-4阻害薬が投与されており、多くの医師により糖尿病治療の第1選択薬として広く使われている。 2009年12月にシタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)が上市され、現在では、ビルダグリプチン(同:エクア)、アログリプチン(同:ネシーナ)、リナグリプチン(同:トラゼンタ)、テネリグリプチン(同:テネリア)、アナグリプチン(同:スイニー)、サキサグリプチン(同:オングリザ)、さらには週1回製剤としてトレラグリプチン(同:ザファテック)、オマリグリプチン(同:マリゼブ)の9製剤が使用可能となっている。DPP-4阻害薬とSU薬の併用による低血糖 DPP-4阻害薬は、消化管ホルモンであるGLP-1(glucagon-like peptide-1)、GIP(glucose-dependent insulinotropic polypeptide)の作用を高めることによって、膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進する。DPP-4阻害薬のインスリン分泌促進作用は血糖依存性であり、単独投与で低血糖を引き起こすことはまれである。しかし、シタグリプチンの販売後、SU薬にDPP-4阻害薬を追加投与した患者で重篤な低血糖症例が報告され、2010年4月には「インクレチンとSU薬の適正使用に関する委員会」から、SU薬を減量したうえでDPP-4阻害薬を使用するよう勧告が出された1)。その後、医薬品医療機器総合機構に報告された副作用報告症例や診療報酬明細データを利用した調査では、SU薬の使用量の適正化、低血糖症例の減少が報告されている2)。 血糖値が上昇すると、膵β細胞に取り込まれたグルコースは代謝されATPが産生される。膵β細胞内で増加したATPは、細胞膜のATP感受性K+チャネル(KATP)チャネルを閉鎖し、細胞膜の脱分極を起こし電位依存性Ca2+チャネルを開口し、細胞内のCa濃度が上昇することでインスリン分泌顆粒からインスリンが動員され、分泌が促進される。SU薬はグルコース濃度にかかわらず、KATPチャネルに直接作用してインスリン分泌を促進する。 一方、インクレチンはインクレチン受容体に結合した後、アデニル酸シクラーゼを活性化することでcAMPを産生し、膵β細胞内のグルコース代謝に依存したインスリン分泌作用を増強する。高血糖が持続している状態では膵β細胞内の代謝が著しく低下し、細胞内のATP産生が低下する。細胞内のATP濃度が低い状態ではSU薬のチャネル閉鎖が障害され、SU薬を使用してもインスリン分泌が促進されないという状態を引き起こす。 しかし、インクレチンはcAMPの上昇を介してインスリン分泌を促進するのみならずATP産生を回復させるため、グルコースによるインスリン分泌にとどまらず、SU薬によるインスリン分泌も改善させる。この相乗効果が低血糖を引き起こす原因と考えられる。メタアナリシスによる臨床試験の解析論文 2型糖尿病患者で、SU薬とDPP-4阻害薬の併用を行っている患者とプラセボを比較した無作為化試験10件(6,546例)を対象として、試験ごとに低血糖のリスク比とその95%信頼区間を算出し、統合解析を行った試験がBMJ誌に報告されている。ビルダグリプチン、アログリプチンを用いた日本における臨床試験も2件含まれている。 本論文の解析結果では、SU薬とDPP-4阻害薬の併用による低血糖のリスク比は1.52(95%信頼区間:1.29~1.80)、何人の患者を治療すると1人が低血糖を引き起こすかを示す指標である有害必要数(number needed to harm:NNH)は治療後6ヵ月で17(95%信頼区間:11~30)、6~ 12ヵ月で15(同:9~26)、1年以降で8(同:5~15)であった。また、サブグループ解析では、DPP-4阻害薬の常用量(最大投与量を含む)を投与している場合の低血糖リスクは1.66(95%信頼区間:1.34~2.06)であったが、半量投与群では1.33(同:0.92~1.94)と有意差を示さなかったことも報告されている。 日本においては「インクレチンとSU薬の適正使用に関する委員会」では、グリメピリド(商品名:アマリール)2mg以下、グリベンクラミド(同:オイグルコン、ダオニール)1.25mg以下、グリクラジド(同:グリミクロン)40mg以下に減量したうえでDPP-4阻害薬の併用を行うことを2010年に推奨している。きわめて妥当性のある推奨で、勧告後はSU薬とDPP-4阻害薬の併用による低血糖の頻度は減少している。 しかし、低血糖を引き起こす背景には、SU薬を漫然と高用量で処方しているという背景がある。臨床効果という点では、SU薬に用量依存性はないことを認識すべきである。一般医としては、DPP-4阻害薬の併用にかかわらず、SU薬を使用する場合には、グリメピリドであれば1mgまで、グリクラジドであれば40mgまでとし、作用時間が長いグリベンクラミドは使用しないというスタンスで糖尿病患者の治療に当たることが望ましいと考えられる。

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循環器内科 米国臨床留学記 第9回

第9回 面倒な電気的除細動―日米の違い日本と比べて大変面倒なのが、心房細動に対しての電気的除細動です。日本では、看護師が1人補助してくれれば、ミダゾラム、プロポフォールなどを投与し、鎮静を確認した後に除細動を施行することができました。米国ではこの鎮静の処置が非常に煩わしいのです。一般的に米国では、冠動脈造影の際にミダゾラム(versed)とフェンタニル(fentanyl)を使用した意識下鎮静(conscious sedation)を行いますが、除細動を施行する場合は、患者が刺激に対する反応を保つレベルである意識下鎮静よりも深い、患者の意識をほぼ完全に消失させる深鎮静(deep sedation)が必要です。深鎮静は舌根沈下による気道閉塞や自発呼吸の停止を引き起こす可能性が高く、その場合、気管挿管を含めた緊急の気道確保が必要になります。この気道確保の実施に関して、日本と米国では大きな違いがあります。そもそも日本と異なり、米国では内科医が気管挿管を行うことがほとんどありません。実際、内科医の大多数は挿管をする機会がありませんし、することができません。コードブルーなどの緊急の場合にも、院内に常駐している麻酔科医や呼吸療法士(respiratory therapist)で構成されるairway teamが挿管を行います。内科のレジデンシーのトレーニングカリキュラムに影響を与えるABIM(American Board of Internal Medicine:米国内科試験委員会)やACGME(Accreditation Council for Graduate Medical Education、卒後臨床研修プログラムを評価・認証する団体)はもとより、挿管のトレーニングを内科レジデンシー期間中に習得すべき手技として挙げていません(集中治療のフェローシップでは挿管のトレーニングが義務付けられています)。3年間の内科レジデンシー期間中も挿管の機会はかなり少ないので、結果として挿管に自信がない、もしくはできないという内科医がほとんどです。私が内科のレジデンシーを行ったシンシナティ(オハイオ州)のプログラムは卒業に必要な挿管件数を5例と独自に設定していましたが、その多くは病棟での挿管ではなく、麻酔科のローテーション中、術前に行うものでした。私は日本でトレーニングを修了し挿管にはある程度自信があったため、レジデンシー期間中も緊急の挿管を積極的に行うようにしていましたが、オハイオ州は米国の肥満度ランキングでも上位に入るほど肥満人口が多い州であるせいか、日本で施行していた時よりも挿管が難しいと感じることが多かったです。除細動の話に戻りますが、米国ではこういった事情もあり、深鎮静を行う際は気道管理に長けた麻酔科医のバックアップが必要であり、日本のように循環器内科医が単独で行うことができません。しかし、血行動態が不安定な患者は別として、心房細動患者などに予定外の除細動を実施しようとしても、麻酔科医はすぐには来てくれません。結果、かなりの待ち時間がかかってしまい、非常にストレスを感じます(多くの救急医師は鎮静薬を使用できるので、救急外来での電気的除細動は比較的容易にできます)。さらに、少し古いデータになりますが、除細動そのもののコスト(464ドル)より麻酔科医に払うコスト(525~650ドル)のほうが高くつくという事態が発生します。この辺りも米国特有の事情であり、日本人としては違和感を覚えてしまいます。次回は、不整脈の薬の違いについて書きたいと思います。

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ジャガイモは高血圧のリスク?/BMJ

 ジャガイモは、糖質(glycemic carbohydrate)とカリウム(高血圧などの慢性疾患の予防効果のエビデンスがある)の双方を豊富に含むため、高血圧の発症リスクへの影響は不明とされてきた。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のLea Borgi氏らは、今回、一般的なジャガイモ料理(焼き、ゆで、マッシュポテト)やフライドポテトをよく食べる人は、高血圧の発症リスクが増大するとの研究結果を、BMJ誌オンライン版2016年5月17日号で報告した。米国政府機関は、子供や低所得層へ健康的な食事を提供するプログラムにおいて、当初、ジャガイモなどのでんぷん質野菜に設けられていた制限を、最近、解除している。また、WHOはジャガイモを野菜に含めていないという。3つのコホート研究のデータで摂取量別のリスクを評価 研究グループは、3つの長期前向きコホート研究のデータを用いてジャガイモの摂取量別の高血圧の発症リスクについて検討を行った(米国国立衛生研究所[NIH]の助成による)。 米国看護師調査(Nurses’ Health Study:NHS、1976年登録開始、30~55歳の女性)、米国看護師調査II(NHS II、1989年登録開始、25~42歳の女性)、医療従事者追跡調査(Health Professionals Follow-up Study:HPFS、1986年登録開始、40~75歳の男性)に参加した医療従事者のうち、ベースライン時に高血圧を認めなかったそれぞれ6万2,175人(女性)、8万8,475人(女性)、3万6,803人(男性)のデータを解析した。 ジャガイモは、焼き(baked)/ゆで(boiled)/すりつぶし(mashed)、フライドポテト(French fries)、ポテトチップス(potato chips)の3つに分類し、1サービング/月以下、1~3サービング/月、1~3サービング/週、4サービング/週以上の4つの摂取量別に解析を行った。 ランダム効果モデルを用いて統合ハザード比(HR)を算出した。参加者の自己申告による高血圧の発症を主要評価項目とした。1日1サービングの非でんぷん質野菜への置き換えでリスク低下 フォローアップ期間は293万8,961人年であった。この間に7万7,726人(NHS:3万5,728人/103万4,257人年、NHS II:2万5,246人/134万4,475人年、HPFS:1万6,752人/56万229人年)が高血圧の診断を受けたと申告した。 摂取量が1サービング/月未満の集団と比較した4サービング/週以上の集団の高血圧発症リスクのHRは、焼き/ゆで/すりつぶしジャガイモが1.11(95%信頼区間[CI]:0.96~1.28、傾向性検定:p=0.05)、フライドポテトが1.17(1.07~1.27、p=0.001)、ポテトチップスは0.97(0.87~1.08、p=0.98)であった。 置換分析では、1サービング/日の焼き/ゆで/すりつぶしジャガイモを、1サービング/日の非でんぷん質野菜に置き換えると、高血圧の発症リスクは有意に低下した(HR:0.93、95%CI:0.89~0.96、p<0.001)。 著者は、「これらの知見は、重要な公衆衛生上の影響を持つ可能性がある」とし、「政府の食品プログラムに、ジャガイモを野菜として含めることで得られる潜在的なベネフィットを支持せず、代わりに食事制限試験でみられる高炭水化物食の有害作用と一致する悪い影響を証明するもの」と指摘している。

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新生児期の皮膚バリア機能が食物アレルギー発症予測の指標に?

 食物アレルゲンへの経皮曝露が、食物感作/食物アレルギーを引き起こす可能性がある。アイルランド・コーク大学のMaeve M. Kelleher氏らは、経表皮水分蒸散量(TEWL)を指標とした皮膚バリア機能と食物アレルギーとの関連を調べる出生コホート研究を行い、新生児期の皮膚バリア機能障害が、アトピー性皮膚炎の有無にかかわらず2歳時の食物アレルギー発症を予測することを明らかにした。この結果は経皮感作の概念を支持するもので、TEWLを用いることにより、アレルギーマーチを変化させる介入研究においてアトピー性皮膚炎または食物アレルギーを発症する前の新生児を、生後数日で層別化できる可能性があるという。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌2016年4月号(オンライン版2016年2月26日号)の掲載報告。 研究グループは、Babies After Scope:Evaluating the Longitudinal Impact Using Neurological and Nutritional Endpoints(BASELINE)出生コホートの1,903例を対象に、新生児期早期、生後2ヵ月および6ヵ月時にTEWLを測定するとともに、2歳時に皮膚プリックテストならびに経口食物負荷試験により食物感作/食物アレルギーのスクリーニングを行った。 主な結果は以下のとおり。・1,903例中、2歳時まで追跡されたのは1,355例で、このうち1,260例がスクリーニングを受けた。・食物感作は6.27%に認められた(79/1,260例、95%信頼区間[CI]:4.93~7.61%)。・食物アレルギーの有病率は4.45%(56/1,258例、95%CI:3.38~5.74%)。卵アレルギーが最も多く(2.94%)、次いでピーナッツ(1.75%)、牛乳(0.74%)の順であった。・生後2日時のTEWLが四分位最高位(>9g water/m2/時)群は、2歳時における食物アレルギーの有意な予測因子であった(オッズ比[OR]:4.1、95%CI:1.5~4.8)。・2歳時に食物アレルギーを認めた児の75%は、生後2日時のTEWLが四分位最高位群であった。・アトピー性皮膚炎を発症していない児においても、生後2日時のTEWLが四分位最高位群は同最低位群に比べ、2歳時に食物アレルギーを発症するリスクが3.5倍高かった(95%CI:1.3~11.1、p=0.04)。

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特発性拡張型心筋症〔DCM : idiopathic dilated cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義拡張型心筋症(idiopathic dilated cardiomyopathy: DCM)は、左室の拡張とびまん性の収縮障害を特徴とする進行性の心筋疾患である。心不全の急性増悪を繰り返し、やがて、ポンプ失調や致死性不整脈により死に至る。心筋症類似の病像を呈するが、病因が明らかで特定できるもの(虚血性心筋症や高血圧性心筋症など)、全身疾患との関連が濃厚なもの(心サルコイドーシスや心アミロイドーシスなど)は特定心筋症と呼ばれ、DCMに含めない。■ 疫学厚生省特発性心筋症調査研究班による1999年の調査では、わが国における推計患者数は約1万7,700人、有病率は人口10万人あたり14.0人、発症率は人口10万人あたり3.6人/年とされる。男女比は2.5:1で男性に多く、年齢分布は小児から高齢者まで幅広い。■ 病因DCMの病因は一様ではない。一部のDCMの発症には、遺伝子異常、ウイルス感染、自己免疫機序が関与すると考えられているが、その多くがいまだ不明である。1)遺伝子異常DCMの20~30%程度に家族性発症を認めるが、孤発例でも遺伝要因が関与するものもある。心機能に関与するどのシグナル伝達経路が障害を受けても発症しうると考えられており、心筋のサルコメア構成蛋白や細胞骨格蛋白をコードする遺伝子異常だけでなく、Caハンドリング関連蛋白異常の報告もある。2)ウイルス感染心筋生検検体の約半数に、何らかのウイルスゲノムが検出される。コクサッキーウイルス、アデノウイルス、C型肝炎ウイルスなどのウイルスの持続感染が原因の1つとして示唆されている。3)自己免疫機序βアドレナリン受容体抗体や抗Caチャネル抗体といったさまざまな抗心筋自己抗体が、患者血清に存在することが判明した。DCMの発症・進展に自己免疫機序が関与する可能性が指摘されている。■ 症状本疾患に疾患特異的な症状はない。初期には無症状のことが多いが、病状の進行につれて、労作時息切れ、易疲労感、四肢冷感などの左心不全症状を認めるようになり、運動耐容能は低下する。また、動悸、心悸亢進、胸部不快感といった頻脈・不整脈に伴う症状を訴えることもある。一般には、低心拍出所見よりもうっ血所見が前景に立つことが多い。両心不全へ至ると、全身浮腫、頸静脈怒張、腹水などの右心不全症状が目立つようになる。右心機能が高度に低下している重症例では、左心への灌流低下から、肺うっ血所見を欠落する例があり、重症度判断に注意を要する。■ 予後一般に、DCMは進行性の心筋疾患であり、予後は不良とされる。5年生存率は、1980年代には54%と低かったが、最近では70~80%にまで改善したとの報告もある。標準的心不全治療法が確立し、ACE阻害薬、β遮断薬、抗アルドステロン薬といった心筋保護薬の導入率向上がその主たる要因と考えられている。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)DCMの診断は、特定心筋症の除外診断を基本とすることから、二次性心筋症を確実に除外することがDCMの診断に直結する。■ 身体所見一般に、収縮期血圧は低値を示すことが多く、脈圧は小さい。聴診所見では、心尖拍動の左方偏移、ギャロップリズム(III・IV音)、心雑音および肺ラ音の聴取が重要である。■ 胸部X線多くの症例で心陰影は拡大するが、心胸郭比は低圧系心腔の大きさに依存するため、正常心胸郭比による本疾患の除外はできない。心不全増悪期には、肺うっ血像や胸水貯留を認める。Kerley B line、peribronchial cuffingが、肺間質浮腫所見として有名である。■ 心電図疾患特異度の高い心電図所見はない。ST-T異常、異常Q波、QRS幅延長、左室側高電位、脚ブロック、心室内伝導障害など、心筋病変を反映した多彩な心電図異常を呈する。また、心筋障害が高度になると、不整脈を高頻度に認めうる。■ 血液生化学検査心不全の重症度を反映し、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)およびその前駆体N末端フラグメントであるNT-proBNPの上昇を認める。また、交感神経活性の指標である血中カテコラミンや微小心筋障害を示唆するとされる高感度トロポニンも上昇する。低心拍出状態が進行すると、腎うっ血、肝うっ血を反映し、クレアチニンやビリルビン値の上昇を認める。■ 心エコー検査通常、びまん性左室収縮障害を認め、駆出率は40%以下となる。心リモデリングの進行に伴い、左室内腔は拡張し、テザリングや弁輪拡大から機能性僧帽弁逆流の進行をみる。最近では、僧帽弁流入血流や組織ドップラー法を用いた拡張能の評価、組織ストレイン法を用いた収縮同期性の評価など、より詳細な検討が可能になっている。■ 心臓MRI検査シネMRIによる左室容積や駆出率計測は、信頼度が高い。ガドリニウムを用いた心筋遅延造影パターンの違いによるDCMと虚血性心筋症との鑑別が報告されており、心筋中層に遅延造影効果を認めるDCM症例では、心イベントの発生率が高く、予後不良とされる。■ 心筋シンチグラフィ123I-MIBGシンチグラフィによる交感神経機能評価では、後期像での心臓集積(H/M比)の低下や洗い出し率の亢進を認める。201Tlあるいは99mTc製剤を用いた心筋シンチグラフィでは、patchy appearanceと呼ばれる小欠損像を認め、その分布は、冠動脈支配に一致しない。心電図同期心筋SPECTを用いて、左室容積や駆出率も計測可能である。■ 心臓カテーテル検査冠動脈造影は、冠血管疾患、虚血性心筋症の除外を目的として施行される。血行動態の評価目的に、左室内圧測定や左室造影による心収縮能評価、肺動脈カテーテルを用いた右心カテーテル検査も行われる。左室収縮能(最大微分左室圧: dP/dtmax)の低下、左室拡張末期圧・肺動脈楔入圧の上昇、心拍出量低下を認める。■ 心筋生検DCMに特異的な病理組織学的変化は確立されていない。典型的には、心筋細胞の肥大、変性、脱落と間質の線維化を認める。心筋炎や心サルコイドーシス、心ファブリー病などの特定心筋症の除外目的に行われることも多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)DCMに対する根本的な治療法は確立していない。そのため、(1) 心不全、(2) 不整脈、(3) 血栓予防を治療の根幹とする。左室駆出率の低下を認めるため、収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠する。■ 心不全の治療1)心不全の生活指導生活習慣の是正を基本とする。適切な水分・塩分摂取量および栄養摂取量の教育、適切な運動の推奨、禁煙、感染予防などが指導すべきポイントとされる。2)薬物療法収縮機能障害を伴う心不全の治療指針に準拠し、薬剤を選択する。心臓のリバースリモデリングおよび長期予後改善効果を期待し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬あるいはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)といったレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬とβ遮断薬、抗アルドステロン薬を導入する。原則として、β遮断薬は、カルベジロールあるいはビソプロロールを用い、忍容性のある限り、少量より漸増する。さらに、うっ血症状に応じて、利尿薬の調節を行う。急性増悪期には、入院下に、強心薬・血管拡張薬といったより高度な点滴治療を行う。3)非薬物療法(1)心室再同期療法(CRT)左脚ブロックなど、心室の収縮同期不全を認める症例に対し、心室再同期療法が行われる。除細動機能を内蔵したデバイス(CRT-D)も普及している。心拍出量の増加や肺動脈楔入圧の低下、僧帽弁逆流の減少といった急性期効果だけでなく、慢性期効果としての心筋逆リモデリング、予後改善が報告されている。CRTによる治療効果の乏しい症例(non-responder)も一定の割合で存在することが明らかになっており、その見極めが課題となっている。(2)陽圧呼吸療法、ASVわが国では、心不全患者に対するASV(adaptive servo ventilation)換気モード陽圧呼吸療法の有用性が多く報告されており、自律神経活性の改善、不整脈の減少、運動耐容能およびQOLの向上、心および腎機能の改善などが期待されている。しかし、海外で行われた大規模臨床試験ではこれを疑問視する研究結果も出ており、いまだ議論の余地を残す。(3)心臓リハビリテーション“包括的心臓リハビリテーション”の概念のもと、運動のみならず、薬剤、栄養、介護など各領域からの多職種介入による全人的心不全管理が急速に普及している。(4)和温療法遠赤外線均等温乾式サウナを用いた低温サウナ療法が、心不全患者に有用であるとの報告がある。心拍出量の増加、前負荷軽減、肺動脈楔入圧の低下といった急性効果のみならず、慢性効果として、末梢血管内皮機能の改善、心室性不整脈の減少も報告されている。(5)僧帽弁形成術・置換術、左室容積縮小術高度の僧帽弁逆流を伴うDCM例では、僧帽弁外科的手術を考慮する。しかしながら、その有効性は議論の余地を残すところであり、左室容積縮小術の1つに有名なバチスタ手術があるが、中長期的に心不全再増悪が多いことから、最近は推奨されない。(6)左室補助人工心臓(LVAD)重症心不全患者において、心臓移植までの橋渡し治療、血行動態の安定を目的として、LVAD装着が考慮されうる。2011年以降、わが国でも植込型LVADが使用可能となり、装着患者のQOLが格段に向上した。現在、植込型LVAD装着下に長期生存を目指す“destination therapy”の是非に関する議論も始まっており、今後、重症心不全治療の選択肢の1つとして臨床の場に登場する日も近いかもしれない。しかし、ここには医学的見地のみならず、医療倫理や医療経済、日本人の死生観も大きく関わっており、解決すべき課題も多い。(7)心臓移植重症心不全患者の生命予後を改善する究極の治療法である。わが国における原疾患のトップはDCMである。不治の末期的状態にあり、長期または繰り返し入院治療を必要とする心不全、β遮断薬およびACE阻害薬を含む従来の治療法ではNYHA3度ないし4度から改善しない心不全、現存するいかなる治療法でも無効な致死的重症不整脈を有する症例が適応となる。(8)緩和医療高齢化社会の進行につれ、有効な治療効果の得られない末期心不全患者へのサポーティブケアが、近年注目されつつある。このような患者のエンドオブライフに関し、今後、多職種での議論・検討を重ねていく必要がある。■ 不整脈の治療致死性不整脈の同定と予防が重要となる。DCMによる心筋障害を基盤として発生し、心不全増悪期により出現しやすい。また、電解質異常も発生要因の1つである。そのため、心不全そのものの治療や不整脈誘発因子の是正が必要である。DCMにおける不整脈治療には、アミオダロンがよく使用される。カテーテルアブレーションが選択されることもあるが、確実に突然死を予防できる治療手段は植込型除細動器(ICD)であり、症候性持続性心室頻拍や心室細動既往を有する心不全患者の二次予防あるいは一部の心不全患者の一次予防を目的として適応が検討される。また、心房細動も高率に合併する。これまでリズムコントロールとレートコントロールで死亡率に差はないと考えられてきたが、近年これを否定するメタアナリシス結果もでており、さらなる研究結果が待たれる。■ 血栓予防治療非弁膜症性心房細動合併例では、ワルファリンのみならず、新規経口抗凝固薬の使用が考慮される。また、左室駆出率30%以下の低心機能例では、心腔内血栓の予防目的に抗凝固療法が望ましいとされるが、新規経口抗凝固薬の適応はなく、ワルファリンが選択される。4 今後の展望現在のところ、確立された根本治療法のないDCMにおける究極の治療法は、心臓移植であるが、わが国では、深刻なドナー不足により汎用性の高い治療法としての普及にはほど遠い。そのため、自己の細胞あるいは組織を用いた心筋再生治療の研究・臨床応用が進められている。しかしながら、安全な再生医療の確立には、倫理面などクリアすべき課題も多く、医用工学技術を応用した高性能・小型化した人工機器の開発研究も進められている。5 主たる診療科循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 特発性拡張型心筋症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)友池仁暢ほか. 拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン. 循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009−2010年度合同研究班報告).2)奥村貴裕, 室原豊明. 希少疾患/難病の診断・治療と製品開発. 技術情報協会; 2012:pp1041-1049.3)奥村貴裕. 心不全のすべて.診断と治療(増刊号).診断と治療社;2015:103.pp.259-265.4)松崎益徳ほか. 慢性心不全治療ガイドライン(2010年改訂版).循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2009年度合同研究班報告).5)許俊鋭ほか. 重症心不全に対する植込型補助人工心臓治療ガイドライン.日本循環器学会/日本心臓血管外科学会合同ガイドライン(2011-2012年度合同研究班報告).公開履歴初回2014年11月27日更新2016年05月31日

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抗精神病薬の血漿中濃度とEPS発現

 抗精神病薬は、錐体外路系副作用(EPS)など、さまざまな望ましくない運動反応を誘発することがある。広く認識されているEPSの根底にある薬理学的メカニズムとして、線条体のD2受容体占有率がある。しかし、EPSの薬物動態の背景についてはわかっていない。ドイツ・アーヘン工科大学のGeorgios Schoretsanitis氏らは、リスペリドン(RIS)を処方され、EPSのためにビペリデンを用いた患者の薬物動態パターンをin vivoで分析した。International clinical psychopharmacology誌オンライン版2016年5月10日号の報告。 大規模治療薬物モニタリングデータベースより、成人入院外来患者2,293例のRISおよび代謝物9-ヒドロキシリスペリドン(9-OH-RIS)の血漿濃度を分析した。RIS単独群772例とビペリデン併用群68例の比較を行った。血漿濃度、RISおよび9-OH-RISの用量調節血漿濃度(C/D)、と活性部分(AM)[RIS+9-OH-RIS]、同様に濃度比(9-OH-RIS/RIS)を算出した。EPSの間接的な報告とし、ビペリデン処方を考慮した2群間の異なる化合物の血漿中濃度比を比較した。 主な結果は以下のとおり。・RISの1日投与量に2群間で差はなかった。・血漿濃度およびRIS、代謝物のC/Dは、2群間で差は認められなかった。・しかし、AMの血漿中濃度は、ビペリデン併用群で有意に高く(p=0.032)、活性代謝物の9-OH-RISにおいて、高い傾向が示された(p=0.053)。・EPS治療のためにビペリデンを投与した患者において、リスペリドンのAM血漿中濃度を高めることが示唆された。・AMの高い血漿中濃度と治療が必要なEPSとの関連性が認められた。関連医療ニュース 統合失調症患者のEPSと認知機能の関連は 統合失調症患者の副作用認識状況は:さわ病院 抗精神病薬の併用療法、有害事象を解析

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関節リウマチへのリツキシマブ、TNF阻害薬に非劣性/Lancet

 関節リウマチ(RA)治療の生物学的製剤導入療法として、TNF阻害薬とリツキシマブを比較する、初となる無作為化比較試験が、英国・グラスゴー大学のDuncan Porter氏らにより行われた。有効性、安全性、費用対効果について調べた結果、リツキシマブのTNF阻害薬に対する非劣性が認められたという。Lancet誌オンライン版2016年5月16日号掲載の報告より。有効性、安全性、費用対効果を比較検証 検討は、非盲検無作為化対照非劣性試験として、英国内35のリウマチ治療部門から患者を集めて行われた。 被験者は、活動性、リウマチ因子陽性で、従来型合成DMARDs効果不十分のRA患者であった。 研究グループは被験者を、リツキシマブまたはTNF阻害薬を投与する群に、メトトレキサート不耐性に留意しながら、webベースの無作為化システムを用いて無作為に割り付けた。 リツキシマブ群には、1gを1、15日目に投与し、その後治療反応が認められるがDAS28-ESRスコア>3.2の場合26週後に投与を行った。TNF群には、アダリムマブ(隔週1回40mg皮下注)またはエタネルセプト(週1回50mg皮下注)を、患者またはリウマチ専門医の選択によって投与した。なお患者には、薬物関連の毒作用や効果不十分または減弱の場合、治療を切り替える選択肢が認められていた。 主要評価項目は、per-protocol集団(割り付けを行い1年時点でフォローアップできた被験者)における、DAS28-ESRスコアのベースラインから12ヵ月時点までの変化であった。安全性の評価は、試験薬を少なくとも1回投与した全患者を対象に行った。また、各治療戦略の費用対効果も評価した。 非劣性マージンは、DAS28-ESRスコアで0.6とした。有効性、安全性は同等、健康関連費用はリツキシマブが有意に低額 2009年4月6日~2013年11月11日に、295例の患者が無作為に割り付けられ、リツキシマブ(144例)またはTNF阻害薬(151例)の投与を受けた。 12ヵ月時点で、DAS28-ESRスコアの変化は、リツキシマブ群が-2.6(SD 1.4)、TNF阻害薬群が-2.4(SD 1.5)であり、両群差は-0.19(95%信頼区間[CI]:-0.51~0.13、p=0.24)で事前規定の非劣性マージン内であった。 健康関連費用(薬剤費、診療費、血液検査、画像検査の計)については、リツキシマブ群はTNF阻害薬群と比べて有意に低かった(9,405ポンド vs.1万1,523ポンド、p<0.0001)。 有害事象の報告は、リツキシマブ群137/144例(95%)、TNF阻害薬群143/151例(95%)であった。重篤有害事象の報告は、リツキシマブ群37件、TNF阻害薬群26件であったが、そのうち薬剤関連のもの(possibly、probably、definitelyを含む)は27件で、発現頻度は両群で同程度であった(15 vs.12、p=0.5462)。死亡は各群1例ずつであった。

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COPDの基準を満たさない喫煙者は健康なのか?(解説:倉原 優 氏)-536

 COPDを診断する際、誰もが知っているように1秒率70%未満という呼吸機能検査上の診断基準がある1)。ただし、この診断は絶対ではない。COPDの診断基準を満たさない一般人でも、COPDと同じような臨床経過をたどる一群が存在する。たとえば、胸部CTで明らかに気腫肺があっても、10人に1人はGOLD基準あるいはATS/ERS基準(LLN)のいずれのCOPDの診断基準も満たさないという報告すらある2)。 つまり、未診断のCOPDだけでなく、診断基準という枠組みから漏れたCOPDのような患者(本当はCOPDと同じ病理学的変化が起こっているのに病的でないと判断されたCOPD予備軍)がいるのは間違いない※。 今回のWoodruff氏らの報告は、喫煙歴のある人と喫煙歴のない人に対してCATスコアおよびスパイロメトリーを実施した観察研究で、「COPDの診断基準を満たさないものの呼吸器症状がある人(CATスコア10点以上)は健康なのかどうか」を調べたものである。COPDの診断基準を満たさない、というのは具体的には1秒率が70%以上で努力性肺活量が正常下限値を上回るということである。GOLD I期の軽症例であっても呼吸器症状を呈さない患者がいる中で、非COPD例でも呼吸器症状を呈する人がいるという不可解な現状に一石を投じてくれる臨床試験だ。 その結果、喫煙歴を有する有症状の非COPDの人は、呼吸機能悪化率が無症状者や非喫煙者と比べて有意に高いことがわかった。また、有症状の喫煙者では活動制限が大きいことも明らかになった。つまり、間違いなく一般人の中にCOPD予備軍が存在するということである。 実臨床でもこうした患者をよく診る。COPDにマッチした強い呼吸器症状があるにもかかわらず、何度測定しても1秒率が70%を下回らないのだ。この研究でも多くの患者が気管支拡張薬を処方されていたが、日本のプライマリケアでも同様の結果になるかもしれない。こうした安易な吸入薬の処方が、「現場は至極柔軟に対応している」と評価されるべきなのか、「不適切な治療をしている」と非難されるものなのか、答えはまだない。 ※この研究に照らし合わせると、「smokers with preserved pulmonary function」という呼び方が妥当なのだろう。「COPD with preserved pulmonary function」のほうがわかりやすいかと思ったが、これだと用語自体が定義上矛盾してしまう。

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