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境界性パーソナリティ障害の自殺リスク、ポイントは睡眠の改善か

 境界性パーソナリティ障害(BPD)患者の睡眠状態を英国・ウォーリック大学のCatherine Winsper氏らが調査した。Neuroscience and biobehavioral reviews誌オンライン版2016年12月15日号の報告。 BPD患者の客観的および主観的な睡眠特性結果を組み合わせるためのメタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・1980~2105年12月までに公表された32件の研究を特定した。・メタ解析では、客観的な睡眠持続性(睡眠潜時、総睡眠時間、睡眠効率)、睡眠構築(REM潜時、REM 密度、徐波睡眠)の評価、自己報告の睡眠問題(悪夢、睡眠の質)について、BPD群と健常対照群で有意な差が示された。・所見は、うつ病および向精神薬併用と無関係であった。・BPD群と臨床コントロール(大多数がうつ病)群との間に有意な差はほとんど認められなかった。 著者らは「BPDでは、うつ病と同様の睡眠障害との関連が認められた。この睡眠障害は、うつ病併存に起因するわけではなかった。睡眠障害が、情動調節不全や自殺リスクを悪化させる可能性があるとのエビデンスが増加したことを考慮すると、BPDの治療では、睡眠問題に取り組むべきであることが明確となった。」としている。関連医療ニュース 境界性パーソナリティ障害患者の自殺行為を減少させるには 境界性パーソナリティ障害と睡眠障害は密接に関連 境界性人格障害患者の自殺予防のポイントはリハビリ

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ドライアイ患者の主観的健康感を損ねる因子とは

 ドライアイでは、しばしば自覚症状と他覚所見の間に乖離がみられる。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのJelle Vehof氏は、この不一致が主観的健康感の指標であることを大規模な横断研究により示した。不一致に関与する因子も明らかにされ、「その因子を認識しておくことは、日常診療においてドライアイ患者の評価に役立つ」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2016年12月23日号掲載の報告。 研究グループは、オランダの3次ドライアイクリニックの患者コホートであるGroningen LOngitudinal Sicca StudY(GLOSSY)におけるドライアイ患者648例(女性82.7%、平均年齢±標準偏差55.8±15.6歳)を対象に、ドライアイの自覚症状と他覚所見の不一致に関する予測因子を検討した。 自覚症状はOcular Surface Disease Index(OSDI)質問票にて評価し、スコアに基づき0~1(合計スコアの最小値が0、最大値が1)にランク付けした。他覚所見は両眼の涙液浸透圧、シルマーテスト、涙液層破壊時間、角膜染色、結膜染色およびマイボーム腺機能不全により評価し、これら6つの検査から複合ドライアイ重症度スコアを算出後、同様にスコアに基づきランク付けした。 主要評価項目は、ドライアイの症状と所見の不一致に関与する因子(OSDIスコアランクと、ドライアイ重症度スコアのランクとの差)であった。 主な結果は以下のとおり。・他覚所見と比べ自覚症状がより強いことに有意に関連する因子は、慢性疼痛症候群の存在、アトピー性疾患、既知のアレルギー、抗ヒスタミン薬の使用(すべてのp<0.001)、うつ病(p=0.003)、変形性関節症(p=0.008)および抗うつ薬の使用(p=0.02)であった。・他覚所見と比べ自覚症状がより小さいことに関連する因子は、高齢者(p<0.001)、シェーグレン症候群(p<0.001)(原発性シェーグレン症候群:p<0.001、続発性シェーグレン症候群:p=0.08)、および移植片対宿主病(p=0.04)の存在であった。・他覚所見と比べ自覚症状がより強いことは、主観的健康感の低さ(p<0.001)と強く関連していた。

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150)名画『モナ・リザ』に描かれた病気【脂質異常症患者指導画集】

患者さん用説明のポイント(医療スタッフ向け)■診察室での会話医師この絵をちょっと見てもらえますか?患者ダ・ヴィンチの傑作『モナ・リザ』ですね。医師そうですね、この絵をよく見てください。患者あっ、私と一緒で左目の横に何かある!医師そうです。これがコレステロールの塊で、専門用語で「眼瞼黄色腫」といいます。患者へぇー、そうなんですね。医師それと、目をよく見てください。きらりと光る輪が見えるかもしれません。これが「角膜輪」です。モナ・リザは、コレステロール値が高かったのではないかと推測している人もいます。患者そうなんですか。面白いですね(興味津々)。●ポイント『モナ・リザ』を題材に、眼瞼黄色腫や角膜輪についてわかりやすく説明します●参考資料1)Ose L. Curr Cardiol Rev. 2008;4:60-62.

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魚を食べると認知症は予防できるのか

 ここ20年の研究では、魚類およびDHAなどのn-3脂肪酸が高齢者のアルツハイマー病を含む認知機能低下を抑制することが示唆されている。スウェーデン・ウプサラ大学のTommy Cederholm氏は、2015~16年の研究結果をレビューした。Current opinion in clinical nutrition and metabolic care誌オンライン版2016年12月12日号の報告。 主な結果は以下のとおり。・1件のプロスペクティブコホート研究より、高齢者ケア施設入居者の脳解剖では、海産物の摂取と神経性プラークおよび神経原線維変化との関連が認められた。・5年間の大規模介入研究より、n-3脂肪酸補充患者または対照患者において、認知機能への影響は認められなかった。・コミュニティ患者を対象とした2件のメタアナリシスより、高魚類摂取は、認知機能を保持することが認められた。・記憶愁訴の高齢者は、n-3脂肪酸の補充により、記憶課題に関する皮質血流を改善する可能性がある。・アルツハイマー病患者のレポートからの再計算では、血清n-3脂肪酸の増加と認知機能改善には用量反応性が示唆された。・しかし、コクランレビュー(3件の無作為化対照試験)では、n-3脂肪酸は、軽度/中等度アルツハイマー病患者において任意の6ヵ月間でメリットがないと結論付けた。 著者らは「魚類やDHAの摂取は、記憶愁訴やMCI高齢者において予防的メリットを有する可能性があり、軽度/中等度アルツハイマー病患者のサブグループにおいても、このようなメリットがあると考えられる」とし、「より一層の研究が必要である」としている。関連医療ニュース 日本食は認知症予防によい:東北大 魚を食べるほどうつ病予防に効果的、は本当か EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか

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健康的な食生活を営むための10項目

食生活指針 10項目①②③食事を楽しみましょう。1日の食事のリズムから、健やかな生活リズムを。適度な運動とバランスのよい食事で、適正体重の維持を。④⑤⑥主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。ごはんなどの穀類をしっかりと。⑦⑧食塩は控えめに、脂肪は質と量を考えて。日本の食文化や地域の産物を活かし、 郷土の味の継承を。野菜・果物、牛乳・乳製品、豆類、魚なども組み合わせて。⑨食料資源を大切に、無駄や廃棄の少ない食生活を。⑩「食」に関する理解を深め、食生活を見直してみましょう。文部科学省, 厚生労働省, 農林水産省. 食生活指針(平成28年6月一部改正)Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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武田薬品 肺がん、血液腫瘍のポートフォリオ拡充

 武田薬品工業株式会社(本社:大阪市中央区、以下「武田薬品」)とARIAD Pharmaceuticals, Inc. (本社:マサチューセッツ州ケンブリッジ、以下「ARIAD社」)は、2017年1月9日(米国時間1月8日)、武田薬品がARIAD社の発行済株式のすべてを1株当たり24.00米ドル(企業価値では総額約52億米ドル)で、現金により取得し、ARIAD社を買収することについて合意したことを発表。本買収は両社の取締役会にて承認されており、競争法上のクリアランス等の手続きを経た後、2017年2月末までに完了する予定。 ARIAD社の買収により、武田薬品は、オンコロジーポートフォリオを拡充する、ターゲットを絞った2つの革新的な治療薬を獲得することになる。臨床試験段階の薬剤であるbrigatinibは、遺伝的要因を有する非小細胞肺がん患者に対してグローバルに使用される、画期的な治療薬になりうるものと期待がかかる。また、慢性骨髄性白血病および特定の急性リンパ性白血病を対象とする治療薬であるIclusigの獲得で、武田薬品の血液がん分野の強固なフランチャイズが拡大する。 Iclusigは上市済みであり、売上伸長の持続が見込まれていることから、ただちに武田薬品の売上収益に貢献する。臨床試験段階の薬剤であるbrigatinibは年間10億米ドルを超える売上を達成できるポテンシャルを有しており、売上収益に長期的に貢献する。brigatinib は2017年の前半に米国にて承認される見込み。また、Iclusigやbrigatinibのみならず、ARIAD社が有する標的キナーゼに関する専門技術は臨床応用に通じるトランスレーショナル・サイエンスと結びついており、さらなる長期的な貢献をもたらすパイプラインを生み出す可能性も期待できるという。武田薬品工業ニュースリリースはこちら

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せん妄に対するリスペリドン vs. ハロペリドール vs.プラセボ

 せん妄症状に苦慮している患者に対し抗精神病薬が使用されているが、緩和ケアにおけるプラセボ対象試験では、その有効性は確立されていない。オーストラリア・フリンダーズ大学のMeera R Agar氏らは、緩和ケア患者のせん妄症状緩和に対するプラセボまたはリスペリドン、ハロペリドールの有効性を検討した。JAMA internal medicine誌2017年1月号の報告。リスペリドン、ハロペリドール、プラセボをせん妄患者に投与 本検討は、2008年8月13日~2014年4月2日の間、オーストラリアの入院施設または病院緩和ケアサービス11件で行われた二重盲検並行群間用量漸増無作為化臨床試験。対象患者は、生命を脅かす疾患でせん妄を有し、せん妄症状スコア(Nursing Delirium Screening Scaleの行動、コミュニケーション、知覚項目の合計)が1以上とした。せん妄症状に基づき、年齢で調整したリスペリドン、ハロペリドール、プラセボ内用液剤を12時間ごとに72時間、漸増用量にて投与した。対象患者には、重度の苦痛や安全のために必要とされるサポーティブケア、せん妄の鎮静に対する個別治療、ミダゾラム皮下投与を行った。主要アウトカムは、ベースラインと3日目のせん妄症状スコア(重症度範囲:0~6)の平均群間差の改善とした。副次的アウトカムは、せん妄の重症度、ミダゾラム使用、錐体外路系作用、鎮静、生存とした。 リスペリドン、ハロペリドールおよびプラセボのせん妄症状緩和に対する有効性を検討した主な結果は以下のとおり。・247例(平均年齢:74.9歳[SD:9.8]、女性85例[34.4%]、がん患者218例[88.3%])がintention to treat(ITT)解析に含まれた(リスペリドン群:82例、ハロペリドール群:81例、プラセボ群84例)。・主要ITT解析では、リスペリドン群は、プラセボ群と比較し、試験終了時のせん妄症状スコアが有意に高かった(平均0.48高ユニット、95%CI:0.09~0.86、p=0.02)。・同様に、ハロペリドール群は、プラセボ群と比較し、せん妄症状スコアが平均0.24高ユニットであった(95%CI:0.06~0.42、p=0.009)。・リスペリドン群、ハロペリドール群共に、プラセボ群と比較し、錐体外路系作用がより多かった(リスペリドン群:0.73、95%CI:0.09~1.37、p=0.03、ハロペリドール群:0.79、95%CI:0.17~1.41、p=0.01)。・プラセボ群は、ハロペリドール群と比較し、より良好な生存期間を示したが(HR:1.73、95%CI:1.20~2.50、p=0.003)、プラセボ群とリスペリドン群に差はなかった(HR:1.29、95%CI:0.91~1.84、p=0.14)。関連医療ニュース 認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化 せん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大 せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか

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良い睡眠のために覚えておきたい12のこと

健康づくりのための睡眠指針 12箇条①②③④良い睡眠で、からだもこころも健康に。適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。⑤⑥⑦⑧年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。⑨⑩⑪⑫熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。いつもと違う睡眠には、要注意。眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。厚生労働省健康局.健康づくりのための睡眠指針2014Copyright © 2016 CareNet,Inc. All rights reserved.

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酔っぱらってツキノワグマのオリに入ると危ない【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第82回

酔っぱらってツキノワグマのオリに入ると危ない FREEIMAGESより使用 動物園でツキノワグマを見る機会があったので、ツキノワグマ外傷について調べてみました。この連載のせいでおかげで、日常生活を無理やり医学論文に直結させるようになりました。 Mihailovic Z, et al.A case of a fatal Himalayan black bear attack in the zoo.J Forensic Sci. 2011;56:806-809.この論文は、22歳のセルビア人男性がツキノワグマ(Himalayan black bear)のオリの中に入って殺されたという法医学の症例報告です。彼はその事故の前夜、ベオグラードのビール祭り(Belgrade Beer festival)に参加しており、しこたまビールを飲んでいました。酔っぱらった彼は、動物園にあるツキノワグマのオリの中に入りました。彼の体は、ツキノワグマの鉤爪や牙によって無残に切り裂かれ、死に至りました。剖検では当然ながら、彼の血中から高濃度のアルコールが検出されました。ヒグマとは異なって、ツキノワグマはわざわざ人間に襲いかかることはないとされています。しかし、バッタリ遭遇した場合、驚いて襲ってきます。ネパールの森林で、ツキノワグマにバッタリ遭遇して突然頭をガブリされて、両目を失った事例も報告されています1)。また、本症例のように、自分のすみかであるオリの中に見知らぬ酔っ払いが入ってくれば、襲いかかる可能性はかなり高いといえます。そのため、皆さんもお酒をしこたま飲んで動物園に行かないように注意してください。うっかりツキノワグマのオリに入ってしまうとタイヘンなことになりますよ。ツキノワグマに限らず、クマは背中を見せて逃げるものを追う習性があるため、クマと遭遇した場合は後ずさりするのがベストな対策と考えられています。空手ウン段のおじいちゃんが果敢にも立ち向かって、クマを撃退したというニュースもちらほら見ますが……。1)Roka YB, et al. Emerg Med Australas. 2012;24:677-679.インデックスページへ戻る

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妊娠中のコーヒー摂取、子供のADHDへの影響は

 妊娠中のカフェイン摂取や長期的なアウトカム(子供の神経行動など)を評価した研究は、まだ不十分であり、研究結果は一貫していない。ブラジル連邦大学のBianca Del-Ponte氏らは、妊娠中の母親のカフェイン摂取とその子供が11歳時のADHDとの関連を評価するため検討を行った。BMJ open誌2016年12月5日号の報告。 対象は、2004年にブラジルペロタス市で出生したすべての子供。出産時に母親より、妊娠中のコーヒーおよびイェルバ・マテの摂取に関する情報についてインタビューを行った。子供の11歳時点でのADHD評価は、Development and Well-Being Assessment(DAWBA)を用いて、母親より収集した。ADHDの有病率は、95%CIで算出した。カフェイン摂取とADHDとの関連性評価には、ロジスティック回帰を用いた。 主な結果は以下のとおり。・3,485人の子供を分析した。・ADHD有病率は、全体4.1%(95%CI:3.4~4.7%)、男児5.8%(95%CI:4.7~6.9%)、女児2.3%(95%CI:1.5~3.0%)。・妊婦のカフェイン摂取率は、妊娠期間全体で88.7%(87.7~89.7%)、妊娠第1期で86.5%(85.4~87.5%)、妊娠第2期で83.0%(81.8~84.2%)、妊娠第3期で92.3%(91.4~93.1%)であった。・調整、未調整にかかわらず、妊娠期間におけるカフェイン摂取は、ADHDと関連が認められなかった。関連医療ニュース 日本でのADHDスクリーニング精度の評価:弘前大学 自閉症とADHD症状併発患者に対する非定型抗精神病薬の比較 ADHD女児に併存する精神疾患は

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飲み物に潜む糖尿病前症リスク

飲み物に含まれる糖分は、意外と見落としがち!?炭酸飲料を飲む習慣は糖尿病前症リスクを上昇させる!砂糖入り飲料の摂取量と糖尿病前症発症リスクの関係 糖尿病前症とは、糖尿病と診断されていないものの、血糖値(HbA1c)の値が5.7~6.4%と高く、糖尿病予備軍と考えられます。246%増に! 糖尿病前症は、砂糖の摂取量を減らすことで、完全な糖尿病への移行を防ぐことが可能です。 発 甘みを感じにくい炭酸飲料には、350mL/缶あたり、角砂糖10個相当の糖質が含まれています。炭酸飲料を飲むことが習慣化している人は、とくに注意が必要です。1.46症リ 1スク1.00砂糖入り飲料(350mL)をまったく飲まない人砂糖入り飲料(350mL)を平均6回/週 飲む人【対象】米国の中年男女1,700例年齢(平均±SD):51.9±9.2歳、BMI(平均±SD):26.3±4.4Jiantao Ma, et al. J Nutr. 2016 Nov 9. [Epub ahead of print]Copyright © 2016 CareNet, Inc. All rights reserved.

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認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化

 認知症とせん妄の精神症状が合併すると、せん妄の診断は複雑化する。シンガポール・Tan Tock Seng病院のJennifer Abengana氏らは、認知症に合併したせん妄(DSD)患者において、BPSDの有無によりせん妄の発現および転帰の差異について検討を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年12月5日号の報告。 著者らは、特別なせん妄ユニットに入院したDSD高齢者における前向きコホート研究(2010年12月~2012年8月)を行った。患者背景、併存疾患、疾患重症度、せん妄発現、認知機能スコアに関連するデータを収集した。認知症の重症度は、Delirium Rating Scale Revised-98(DRS-R-98)とCognitive Assessment Method severity score(CAM-sev)を用いて評価した。患者は、行動心理学的障害に基づきBPSD+群とBPSD-群に分類した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、BPSD合併例37例(21.3%)を含むDSD患者174例(84.4±7.4歳)。・DRS-R-98によるせん妄重症度と症状頻度は類似していたが、BPSD+群では、多くは単一のせん妄発現であったが(40.5% vs.21.9%、p=0.07)、持続時間が有意に長かった(中央値:7日 vs.5日、p<0.01)。・せん妄の解消により、BPSD+群は、睡眠覚醒障害、不安定作用、運動興奮の有意な改善を示し、BPSD-群では運動遅延を除くすべての非認知症が改善された。・BPSD+群では薬理学的抑制がより頻繁であり(62.2% vs.40.1%、p=0.03)、高用量であった(CP換算:0.95±1.8 vs.0.40±1.2、p<0.01)。 著者らは「BPSDは、認知症者のせん妄への脆弱性を増加させ、遅発性のせん妄に対する回復を遅らせる可能性がある。睡眠覚醒障害、不安定作用、運動興奮は、せん妄の疑いを強めると考えられる」としている。関連医療ニュース せん妄に対する薬物治療、日本の専門家はどう考えているか せん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大 BPSDへの対応、どうすべきか

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RCTの先を行く?リアルワールドでのTAVR対象患者(解説:香坂 俊 氏)-630

循環器内科といえば冠動脈インターベンション!というわけでは現在すでになく、今は弁膜症に対してもさまざまなカテーテル手技が行われるようになってきています(こちらをストラクチャー・インターベンションといいます)。その代表例たるものこそTAVR(経カテーテル的大動脈弁置換術)ではないでしょうか?わが国でも80以上の施設で行われるようになっており、すでに2013年から4年間で5,000例近くのTAVRが施行されています。図1 TAVRはこのように行われるこのTAVRについて、臨床試験の対象となったのは術前予測死亡率8~15%程度のハイリスク患者でした(PARTNER 1試験)。だいたいこの領域の予測死亡率になると、外科医は手術することにためらいを覚えます。そうした重症例を対象としたPARTNER 1試験で、TAVRが外科手術とほぼ同等の成績を収めたため 「ではまあハイリスク患者限定ならよいだろう」 ということでTAVRは世界中で認可されました。こうした状況で、当然次のステップとしては、より予測死亡率の低い患者群でのTAVRの成績はどうなのかというところが気になります。今回のBMJ誌のメタ解析は、こうした低リスク(予測死亡率4%以下)、あるいは中等度リスク(同4~8%)の患者を対象とした前向き試験のメタ解析です。その結果ですが、全体としてみるとTAVRと外科手術はほぼ同等の成績であり、大腿動脈からアプローチできたTAVRに限ると、TAVRのほうが外科手術よりも成績が良いかもしれないというものでした(逆に、心尖部からアプローチせざるを得なかったTAVRは普通の外科手術よりも成績が悪かった)。図2 上部の心尖部アプローチのTAVR(図内ではTAVIと表記)では外科手術(SAVR)のほうが成績が良いが、下部の大腿動脈アプローチのTAVRは外科手術よりもリスクが低いとされる。こうした結果を踏まえ、おそらく今後TAVRはよりリスクの低い患者へと加速度を増して使用されることが予想されます(とくにきちんと大腿動脈からアクセスできる患者さんたち)。ただオチとして、実はリアルワールドで行われているTAVRのほとんどが中等度リスクの患者であるという報告がすでに多くなされており、たとえば、ドイツのレジストリからの報告でも、すでに2011年から2013年の間に、5,000例以上の中等度リスク患者がTAVRを受けているとされています(【Medscape】中等度リスク患者のTAVIの死亡率はSAVRよりも高い:GARYレジストリ)。さらに、わが国で行われているTAVR患者の術前予測死亡率の平均は、すでに5~6%の領域であるという学会報告もなされており、こうした RCTの結果を待つまでもなく、すでに広く中等度リスク患者へのTAVRはリアルワールドで行われているとも解釈できます(今回のメタ解析の結果はポジティブなものであったので、その先行投資は正しかったといえるのですが…)。今後、この領域で課題となるのは費用対効果、さらにまだ2~3年の追跡データからの報告がほとんどなので、さらに長期のデータがどうなのかというところではないでしょうか。また、さらにリスクの低い領域(予測死亡率4%以下、手術がほとんど失敗しない患者群)にどのくらいのスピードで浸透していくかというところも興味深いところです。

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飽和脂肪酸の不飽和脂肪酸による置換は冠動脈疾患リスクを低下させる!(解説:島田 俊夫 氏)-631

 私たちは、炭水化物、脂肪、タンパク質と少量のミネラル、ビタミンを摂取することによりエネルギーを獲得している。しかしながら、炭水化物の過剰摂取と運動不足が糖尿病・肥満の主要因になっている。糖質制限は治療上重要だが、適切な供給カロリーを維持するためには炭水化物以外の栄養素からエネルギーを獲得することが必要となる1)。1g当たりの産生カロリーは、炭水化物4kcal、脂肪9kcal、タンパク質4kcalのエネルギーを産生する。単純計算から、糖質制限食は代替エネルギーを脂肪またはタンパク質から取らざるを得ない。飽和脂肪酸を不飽和脂肪酸置換することは冠動脈疾患死を減らす 今回取り上げた、BMJ誌2016年11月23日号に掲載された米国・ハーバード大学公衆衛生大学院のGeng Zong氏らが、米国男女大規模コホート2試験で1984~2012年の看護師健康調査に参加した女性7万3,147例と、1986~2010年の医療従事者追跡調査に参加した4万2,635例の2つのコホートによる前向き縦断コホート試験により、飽和脂肪酸の冠動脈疾患への関与に対して解析を行った。本研究の被験者はベースラインでは主たる慢性疾患を認めない人のみを対象とした。 被験者のうち、冠動脈疾患の発生(n=7,035)は自己申告により、関連死は全米死亡記録や親戚縁者、郵便局からの報告により裏付けられた。冠動脈疾患症例については診療記録により確認が行われた。 その結果、追跡期間中の総エネルギー摂取量に占める飽和脂肪酸の割合は9.0~11.3%で、ラウリン酸(12:0)、ミリスチン酸(14:0)、パルミチン酸(16:0)とステアリン酸(18:0、8.8~10.7%エネルギー)が主な構成脂肪酸であった。これら4種の脂肪酸は、冠動脈疾患発症と強い相関を示し、スペアマンの順位相関係数は0.38~0.93(すべてのp<0.001)であった。 生活習慣要因と総エネルギー摂取量については多変量調整後、各々の飽和脂肪酸の摂取量の最高5分位数群 vs.最小5分位数群のハザード比は、タウリン酸が1.07(95%信頼区間[CI]:0.99~1.15、傾向p=0.05)、ミリスチン酸が1.13(1.05~1.22、傾向p<0.001)、パルミチン酸が1.18(1.09~1.27、傾向p<0.001)、ステアリン酸が1.18(1.09~1.28、傾向p<0.001)、4種複合飽和脂肪酸で1.18(同:1.09~1.28、傾向p<0.001)であった。 4種の飽和脂肪酸から摂取するエネルギーの1%相当分を、多価不飽和脂肪酸で置換することにより同ハザード比は0.92(p<0.001)に、また1価不飽和脂肪酸で置換すると0.95(p=0.08)、全粒炭水化物で0.94(p<0.001)、植物性タンパク質で0.93(p=0.01)とリスクの減少がみられた。また、単体ではパルミチン酸での置換がリスクを最も低下させ、ハザード比は多価不飽和脂肪酸の置換で0.88(p=0.002)、1価不飽和脂肪酸で0.92(p=0.01)、植物性タンパク質で0.89(p=0.01)であった。糖質制限食使用上の注意点 糖質制限食の重要性がクローズアップされている今日、代替エネルギーを脂肪から取ることは一見理にかなっているが、本論文の結果から脂肪酸の質が重要となり2)3)、飽和脂肪酸の摂取を抑え、多価不飽和脂肪酸または1価不飽和脂肪酸、植物性タンパク質を糖質代替エネルギー源とすることは、糖質制限食の弱点強化につながる可能性を示唆する。

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2つの抗精神病薬持効性注射剤、その違いを分析

 安定期統合失調症患者に対するアリピプラゾール400mg月1回製剤(AOM400)とパリペリドンパルミチン酸(PP)の改善を評価した、28週間無作為化オープンラベル直接比較試験(QUALIFY)について、米国・カリフォルニア大学アーバイン校のSteven G Potkin氏らが、機能的アウトカムに関する多次元的評価を実施した。その結果、AOM400はPPと比較し、良好な改善を示し、より多くの患者が試験終了後、就労可能であることが示唆された。The international journal of neuropsychopharmacology誌オンライン版2016年12月8日号の報告。 副次的有効性は、Work Readiness Questionnaire、CGI-S、CGI-Iスコア、Heinrichs-Carpenter QOLスコアを用いて評価した。患者の治療満足度は、Subjective Well-Being under Neuroleptic Treatment-short version、忍容性、QOLアンケートにより評価した。 主な結果は以下のとおり。・アリピプラゾール群は、パリペリドン群と比較し28週目に就労の準備ができていた割合が有意に高かった(調整オッズ比:2.67、95%CI:1.39~5.14、p=0.003)。・アリピプラゾール群は、ベースライン、パリペリドン群と比較し、すべてのQOL項目において有意な改善効果を示した。・28週目において、アリピプラゾール群は、パリペリドン群と比較し、CGI-S(調整オッズ比:2.26、p=0.010)、CGI-I(調整オッズ比:2.51、p=0.0032)のレスポンスが有意に多く、CGI-Iスコアが有意に良好であった(最小二乗平均差:-0.326、95%CI:-0.60~-0.05、p=0.020)。・アリピプラゾール群は、パリペリドン群と比較し、Subjective Well-Being under Neuroleptic Treatment-short version、忍容性、QOLについて大幅な改善が認められた。関連医療ニュース 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは パリペリドン持効性注射剤、国内市販後の死亡例分析結果 アリピプラゾール持続性注射剤の評価は:東京女子医大

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PCI vs.CABG―左主冠動脈狭窄に対する効果と安全性

 左主冠動脈狭窄に対する望ましい再灌流療法の戦略は、いまだに結論が出ていない。現在のガイドラインにおいて、プロテクトされていない左主冠動脈の狭窄に対しては、冠動脈バイパス術(CABG)が望ましいとされている。Monash Cardiovascular Research Centre(MCRC)のNerlekar氏らオーストラリアと英国の研究グループが、最近のランダム化比較試験を踏まえて、プロテクトされていない左主冠動脈に対し、経皮的冠動脈形成術(PCI)がCABGと同様の安全性と効果を得られるかをメタ解析を用いて評価した。Circulation:Cardiovascular Intervention誌2016年11月29日号の掲載。5研究の4,594例で全死亡、心筋梗塞、脳梗塞と再灌流療法を評価 本研究では、プロテクトされていない左主冠動脈狭窄に対するPCIとCABGのランダム化比較試験について、デジタルおよび手動でのデータベース検索を実施した。検索には、MEDLINEおよびEMBASE、PubMedのデータベースを用い、期間は2000年1月1日~16年10月31日とした。その結果、本研究に関連する可能性がある3,887試験のうち、Syntaxなど5つの研究が本研究の基準と合致した。安全性の主要評価項目は、全死亡、心筋梗塞、脳梗塞および再灌流療法とした。メタ解析にはランダム効果モデルが用いられ、患者4,594例を対象とした。主要評価項目に両群に有意差なし、再灌流療法の有効性ではPCI群が劣勢 主要評価項目においては、PCI群とCABG群とでは有意差が認められなかった(オッズ比[OR]:0.97、95%信頼区間[CI]:0.79~1.17、p=0.73)。しかし、CABGと比較してPCIでは再灌流療法が行われる頻度が有意に高く(OR:1.85、95%CI:1.53~2.23、p<0.001)、有効性において劣勢であった(OR:1.36、95%CI:1.18~1.58、p<0.001)。 全死亡率(OR:1.03、95%CI:0.78~1.35、p=0.61)および心筋梗塞(OR:1.46、95%CI:0.88~2.45、p=0.08)、脳梗塞(OR:0.88、95%CI:0.39~1.97、p=0.53)に関しては、両群で有意差は認められなかった。プロテクトされていない左主冠動脈に対する薬剤溶出性ステントを用いたPCIは、開心術によるリスクが低い患者においてはCABGと同様に安全な方法である。しかしながら、CABG群ではPCI群と比べて再灌流療法の施行が有意に少なかった。本研究における限界として筆者らは、フォローアップ期間が12ヵ月、36ヵ月、60ヵ月とばらつきがあること、また、再灌流療法の定義が試験によって異なることなどを挙げている。

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まるでゾンビ映画? NYの集団薬物中毒の原因物質とは/NEJM

 街はゾンビ映画の1シーンのようだった…2016年7月12日朝、米国ニューヨーク市ブルックリン地区で発生した薬物の過剰摂取によると思われる33人の集団中毒について、ニューヨークタイムズ紙は目撃者の証言として、こう伝えた。調査を行ったカリフォルニア大学サンフランシスコ校のAxel J Adams氏らは、中毒の原因物質として合成カンナビノイドAMB-FUBINACAを同定し、今回、NEJM誌オンライン版2016年12月14日号で報告した。近年、米国では新たな精神活性物質が、乱用薬物クラスとして急速に成長、活発化しているという。8人の血清、全血、尿サンプルをLC-QTOF/MSで解析 合成カンナビノイドは、当初、研究用のツールとして開発された。2008年、欧州で「Spice」、北米で「K2」のブランド名で知られるハーブ混合物中に初期の合成カンナビノイドであるJWH-018やCP 47,497-C8が見つかり、乱用薬物に転用されるようになったという。それ以降、中国や南アジアの違法な密造所で開発が進められたと考えられている。 今回、同定されたmethyl 2-(1-(4-fluorobenzyl)-1H-indazole-3-carboxamido)-3- methylbutanoate(AMB- FUBINACA、別名:MMB-FUBINACA、FUB-AMB)は、Pfizer社が開発した合成カンナビノイドAB-FUBINACAのエステル化アナログである。同社は、2009年、AB-FUBINACAの特許を取得している。 2012年、AB-FUBINACAは、脱法ドラッグの成分として日本で初めて同定され、米国では2014年1月に、規制物質のスケジュールI(あらゆる状況で使用禁止)に指定された。一方、AMB-FUBINACAは、2014年7月、ルイジアナ州で「Train Wreck 2」と呼ばれる製品の成分として発見され、同州の緊急事態宣言により即座に禁止されている。 今回の集団薬物中毒の研究グループは、地域の2つの病院に搬送された18人のうち8人から血清、全血、尿のサンプルを採取し、検査を行った。また、今回のアウトブレイクに関与したと考えられるハーブ香料製品「AK-47 24 Karat Gold」のサンプルも検査した。解析には、液体クロマトグラフィ-四重極飛行時間型質量分析計(LC-QTOF/MS)を用いた。「超強力な」新規薬物クラスの実例 病院に搬送された18人の平均年齢は36.8歳(25~59歳)、全員が男性で、8人はホームレスだった。現場に立ち会ったニューヨーク市救急医療班(EMS)によれば、典型的な臨床的特徴を呈する28歳の男性は、質問への応答が緩慢で、「ぼんやりとした目つき」であった。また、搬送後の救急治療室では、だるそうにしていたが、触刺激には反応したという。 解析の結果、8つのAK-47 24 Karat Goldの試料から、12.5~25.2mg/g(平均16.0±3.9mg/g)のAMB-FUBINACAが同定された。また、8人全員の試料からはAMB-FUBINACAの親化合物は同定されなかったが、血清または全血から77~636ng/mLの脱エステル化された酸代謝物が検出された。また、1人の尿からは、AMB-FUBINACAの酸代謝物165ng/mLが検出された。他の違法薬物はみつからなかった。 AMB-FUBINACAは、カンナビノイド受容体作動薬の化学構造の継続的な進化を反映する強力なインダゾール型合成カンナビノイドである。最近のin vitroにおける薬理学的研究では、カンナビノイド受容体への作用は、テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)の85倍、JWH-018の50倍と報告されている。 著者は、「同定された合成カンナビノイドの影響として、強力な身体機能の抑制作用が一貫して確認されており、集団中毒の現場で報告された“ゾンビ様”行動の主な要因と考えられる。AMB-FUBINACAは、“超強力な”合成カンナビノイドの新たな薬物クラスの実例であり、公衆衛生上の懸念を引き起こす」とし、「今回は、臨床検査技師、医療者、法の執行機関が協働することで、タイミングよく化合物の同定が進み、保健当局が適切な行動を取ることが可能となった」と指摘している。

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サン・アントニオ2016 レポート-1

レポーター紹介はじめに2016年SABCSは12月6日~10日まで5日間開催された。今年から会場が新しくなり、非常に快適であった。しかし、外は風も強くとても寒い日が続いた。メイン会場は従来と雰囲気は変わらないが、柱やスクリーンが障壁となって、座席によりスライドの見えにくいところが多かったのが難点である。来年より改善して欲しいところである。今回私たちの臨床をすぐに変えるようなものはほとんどなかった。しかし、腫瘍浸潤リンパ球(TILs)をはじめとするがん免疫、ERやHER2も含めた体細胞変異、BRCA1/2以外の胚細胞変異、多遺伝子アッセイ、リキッドバイオプシー(循環癌細胞、セルフリーDNA)、マイクロRNA(miRNA)、がん幹細胞、腫瘍の不均一性といった話題は引き続き多くみられた。また、臨床試験デザインの演題も多く採用されていたように思う。まずはOral sessionから紹介する。NSABP B-42は閉経後乳がんにおいて、アロマターゼ阻害剤(AIs)を5年服用後(タモキシフェン3年以下服用も含む)に、さらにレトロゾールを5年延長した場合の効果をみる試験である。現在までにタモキシフェン5年服用後にレトロゾールを5年延長するMA.17試験でその有効性が示されている。MA.17R試験では、レトロゾール5年にさらにレトロゾール5年を追加したが、遠隔再発抑制効果はほとんどみられなかった。しかし、それ以前にタモキシフェンを5年使用していた患者も多く含まれているため、私たちが知りたい条件とは異なっていた。B-42試験では3,964例が2群に割り付けられた。約40%の患者が治療を完遂できず、そのうち治療拒否または中止は14%、有害事象によるものは10%であった。主要評価項目である無病生存期間は、7年でレトロゾール群84.7%、プラセボ群81.3%と有意差が認められた(p=0.048、 HR=0.85:0.73~0.99)。さらに遠隔再発もそれぞれ3.9%、5.8%で有意差を認めた(p=0.03、HR=0.72:0.53~0.97)。しかし全生存期間には差を認めなかった(92.3% vs.91.8%)。すなわち、アロマターゼ阻害剤5年にさらにレトロゾール5年を延長することによる利益は全体としてはわずかである。スライドでは示されなかったが、予後不良(リンパ節転移陽性など)群などでは効果が大きくなると思われる。そのため、TAM→TAM、TAM→AIs、AIs→AIs共に、より予後不良と考えられる患者には使うメリットがあろうと考えられ、個々の患者の状況により対策を立てるのが賢明である。DATA研究は2~3年のタモキシフェンの後に3年または6年のアナストロゾールを服用した際の効果を比較する第III相試験である。3年無病生存率は79.4% vs.83.1%で有意差はみられなかったが(p=0.07、HR=0.79:0.620~1.02)、ホルモン受容体陽性、HER2陰性、pN+、化学療法施行例に限ると75.9% vs.86.0%で有意差が認められた(p=0.01、HR=0.58:0.39~0.89)。なお、全生存率にはまったく差は認められていない。まだ観察期間も短く、何ら結論は出せないが、他の延長試験と合わせて考えると、やはり再発リスクが高いグループでアロマターゼ阻害剤の延長を考慮したほうが良さそうである。BRCA1/2乳がんにおける体細胞遺伝子の変化について、メモリアル・スローンケタリングがんセンターから報告があった。BRCA1/2乳がんは先天的に一方のアレルのBRCA1/2遺伝子が変異により機能喪失しており、2ヒットとしてもう一方のアレルも何らかの理由で機能喪失すると乳がんに進展していく。BRCA1では29例中28例で両アレルが失活していたが、1例では失活しておらず散発性の乳がん発症と考えられた。両アレルの失活に伴い、その他の遺伝子変異がTP53-76%(ER陰性-95%、ER陽性-25%)、NF1-10%、PTEN-10%、RB1-7%に認められた。BRCA2では10例中全例でLOHが認められた。BRCA1/2胚細胞変異保有者における散発性乳がんの割合とBRCA1/2遺伝子変異に伴う他の体細胞遺伝子変異は、私も兼ねてより知りたかったことの1つだったのでここに紹介した次第である。すなわち、BRCA1/2遺伝子変異保有者ではその大半が遺伝性乳がんとして発症し、散発性乳がんはごくわずかであるということである。当然のことながら散発性乳がんは遺伝の有無にかかわらず発症する訳であるが、遺伝を持っている方は散発性乳がん発症に加え、より大きな遺伝性乳がん発症のリスクを持っていると考えられ、やはり個別化医療としての選択的なサーベイランスを行うことが大切であろう。化学療法に伴う脱毛を予防するための頭皮冷却に関する無作為化比較試験SCALPの結果が報告された。本研究はPaxmanの頭皮冷却装置が用いられているが、これは国内でもすでに薬事承認されている。182例の患者が無作為化割り付け(冷却群119例、非冷却群63例)され、1レジメンでの効果が検討された。その結果、非冷却群での脱毛は100%であったのに対し、冷却群では脱毛を50.5%予防できていた。薬剤別での予防率はタキサンで65.1%であったが、アントラサイクリンではわずか21.9%であった。冷却により強い不快感を訴えた方はわずかであった。比較的良好な結果を示しているといえるが、本報告の問題点として、薬剤の詳細(種類や投与量)がわからないこと、最も多く使われているアントラサイクリン+タキサンレジメンでの脱毛の割合が不明であることが挙げられる。また、パクリタキセルの毎週投与では頭皮冷却の回数が非常に増えてしまうことが懸念される。実地臨床では、時間が長くなり化学療法室を1例で長く占拠してしまうこと、化学療法室のスペース不足、誰に行うのか、といった問題があるのが現実であり、データ不足と相まって普及にはまだ困難を伴いそうである。アロマターゼ阻害剤関連の筋骨格系症状(AIMSS)に対するデュロキセチンの効果をみる無作為化比較試験の結果が報告された(SWOG S1202))。慢性疼痛の治療薬としてFDAで認可されているセロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬(SNRI)の1つであるデュロキセチンの効果をみたものである。299例の患者をデュロキセチンとプラセボを12週間内服する群にそれぞれ割り付け、QOL評価を行った。その結果、関節痛や関節のこわばりはデュロキセチン内服群で有意に改善傾向がみられ、QOLも有意に向上していた。しかしながら、その差はわずかにみえる。デュロキセチン群の方で明らかに有害事象が多いこと、プラセボ群でもそれなりの効果と有害事象が出ていることから、直ちにデュロキセチンを使うというよりは1つの提案をしてみたい。まずは何らかの副作用の少ない薬剤(たとえば漢方薬、ビタミンD3など)を使って効果を確認し、改善が不十分であればデュロキセチンに変えてみるなどすると、有害事象を最小限にしながら治療効果を上げることができるのではないか。

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オシメルチニブ、日本人のTKI耐性肺がんにも良好な結果:肺癌学会

 第57回日本肺癌学会プレナリーセッションにて、EGFR-TKI耐性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)に対する第3世代EGFR-TKIオシメルチニブの第III相試験AURA3について、第17回世界肺癌学会議(WCLC)で発表された主要結果とともに日本人サブ解析の結果を、愛知がんセンターの樋田豊明氏が発表した。 AURA3試験は、1次治療のEGFR-TKIで進行したT790M変異陽性のNSCLCに対し、オシメルチニブとプラチナベース化学療法とを比較した無作為化比較試験。主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)である。 全体集団のPFSは、オシメルチニブ群10.1ヵ月、化学療法群4.4ヵ月(HR:0.30、p<0.001)と、オシメルチニブ群で有意に延長した。日本人集団においては、オシメルチニブ群で12.5ヵ月(95%CI:6.9~NC)、化学療法群では4.3ヵ月(95%CI:4.0~6.7)と、全体集団と同じくオシメルチニブ群で延長した(HR:0.27、95%CI:0.13~0.56)。オシメルチニブは、中枢神経系においても効果を発揮することが示されている。当試験での脳転移例におけるPFSは、オシメルチニブ群8.5ヵ月、化学療法群4.2ヵ月(HR:0.32、95%CI:0.21~0.49)と、オシメルチニブ群で優れていた。ちなみに、脳転移のない例においては、オシメルチニブ群10.8ヵ月、化学療法群5.6ヵ月であった(HR:0.40、95%CI:0.29~0.55)。 Garde3以上の有害事象の発現率は、全体集団ではオシメルチニブ群で23%、化学療法群で47%であった。日本人集団ではオシメルチニブ群32%、化学療法群68%、と全集団と同様にオシメルチニブ群で少なかった。その中で、オシメルチニブ群の間質性肺疾患の発現は、全体集団では10例(Grade3以上は1例)、日本人集団では3例(Grade3以上は0)であった。 ディスカッサントである和歌山県立医科大学の山本信之氏は以下のように論述した。 今回のAURA3の日本人サブ解析の結果は、有効性についても有害事象についても、第II相試験の結果を踏襲するものである。オシメルチニブはT790M変異陽性NSCLCに対する標準治療として確立されたといえる。さらに、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療としての効果も期待される。このセッテイングにおいても、早期臨床試験で良好な結果が示されており、今後発表される第III相試験でも同様の良好な結果が示される可能性がある。しかし、耐性評価のための再生検については問題が残る。現状、T790Mは組織生検で評価するが、組織からのサンプル採取は容易ではない。自施設の経験では、4例に1例は複数回の生検を行っており、他科に組織採取を依頼せざるを得ない症例も少なくない。PDからオシメルチニブ投与の開始までの時間もかかる。リキッドバイオプシーの早期保険償還を期待したいと、同氏は述べた。参考AURA3試験(ClinicalTrials.gov)関連ニュース記事【ジャーナル四天王】オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長/NEJMオシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCのPFSを6ヵ月延長:AURA3 試験T790M変異陽性NSCLCに対するオシメルチニブの有効性:AURA2試験

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ミオシンアクティベータは予後を改善する初の経口強心薬たりうるか?(解説:絹川 弘一郎 氏)-628

 収縮力の低下した心不全を治療するとき、誰しもまず考えるのは収縮力を元に戻すことができれば、ないしは少しでも収縮力を高めれば、心不全症状は良くなるであろうということである。それは確かにその通りで、いわゆる強心薬は経口薬も静注薬もたくさん開発されてきて、とくに静注強心薬は常に急性心不全の低心拍出量を伴う患者の治療の最前線に位置してきた。ところが、収縮不全の治療は、これを慢性に継続するとすべからく予後が悪い、すなわち患者が死亡するという事態が生じることがわかって以来、急性期から慢性期にかけて収縮力という観点ではまったく逆の治療を施すというparadoxicalな、そして誤解を恐れずにいえば面倒なことになって20年近くが経つ。β遮断薬という少なくとも薬理学的には収縮力を落とすはずの薬剤を長期(数ヵ月から1年)投与していくと左心室の容量が減少し、収縮力が増加する。いわゆるリバースリモデリングを伴うことも現象として記述されて久しいが、心拍数の減少のみで説明できるほど単純ではないと思っているのは筆者だけではないであろう。 前置きはこのくらいにして、収縮力を増強させる強心薬はこれまでの薬剤はすべて心筋のCa濃度を上昇させる機序に基づくものであり、多くの場合、心拍数の増加も伴った。Ca濃度の増加は、心筋細胞内のシグナリングにおいて好ましからざる影響を与えることは心筋細胞の肥大のメカニズムの研究からもすでに明らかであり、Ca濃度の増加を伴わない強心薬ならば悪影響を排して強心効果のみで長期的な使用に耐えうるのではないかと考えられてきた。心筋の収縮は、ミオシンとアクチンのクロスブリッジによって引き起こされるものであり、omecamtiv mecarbilはミオシンと結合して力を発生する段階にあるアクトミオシン結合状態を増加させることで、Ca濃度を変化させずに収縮力を増強させると考えられる。この薬剤を慢性収縮不全LVEF<40%の患者に投与してプラセボ対象の下、20週後のサロゲートマーカーの動向をみたのがCOSMIC-HF試験である。一定の血中濃度で明確な強心作用が発揮されるという以前の研究を基に、血中濃度をモニタリングして投与用量の調節を行う一群も設定された。 サロゲートマーカーは、心エコーによる駆出時間、左室容積、NT-proBNP、心拍数などであり、血中濃度をモニタリングして用量調節する群でより明確に左心室のリバースリモデリングと心拍数の低下が認められた。この2つはまさにβ遮断薬での変化と同様であり、サロゲートマーカーの変化が生命予後の改善と密にリンクしているならば、この薬剤でも生命予後の改善が得られる可能性がある。この作用はほぼ全例にβ遮断薬を投与したうえでのものであり、まったくもって上乗せ効果であるといえる。今後は、用量調節をするプロトコルで大規模な生命予後をエンドポイントにした第III相試験が計画されるであろう。ただし、サロゲートマーカーだけ模倣しても予後は改善しないという結果が得られる可能性もある。この意味で、真に重要なことがなんであるかを知らしめてくれる可能性のある試験ともいえ、omecamtiv mecarbilの予後改善効果があるのかないのか、興味深く今後を見届けたい。

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