サイト内検索|page:327

検索結果 合計:10312件 表示位置:6521 - 6540

6521.

インクレチン薬で死亡リスク上昇せず、189件のRCTメタ解析/BMJ

 中国・West China HospitalのJiali Liu氏らは、インクレチン関連薬の無作為化試験についてシステマティックレビューとメタ解析を行い、2型糖尿病患者に対するインクレチン関連薬による治療が死亡リスクを上昇させるというエビデンスは得られなかったと報告した。大規模無作為化試験(SAVOR-TIMI 53)において、サキサグリプチンはプラセボと比較して死亡率が高い(5.1% vs.4.6%)傾向が示され、インクレチン関連薬による治療と死亡リスク増加との関連が懸念されていた。BMJ誌2017年6月8日号掲載の報告。インクレチン関連薬の無作為化比較試験189件をメタ解析 研究グループは、GLP-1受容体作動薬またはDPP-4阻害薬と、プラセボまたは糖尿病治療薬(実薬)を比較した、2型糖尿病患者対象の無作為化試験について、Medline、Embase、the Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、ClinicalTrials.gov.を用いて検索した。収集と解析として、2人の研究者が独立して、引用文献のスクリーニング、バイアスリスクの評価、データ抽出を行った。189件の無作為化試験(合計15万5,145例)が解析に組み込まれた。 統合効果推定値はPeto法を用いて算出し、感度解析には他の統計法を使用した。また、事前に設定された6つの項目(ベースライン時の心血管疾患、インクレチン関連薬の種類、追跡期間の長さ、対照薬の種類、治療の形態、使用したインクレチン関連薬)について、メタ回帰分析にて探索的に異質性を検証した。エビデンスの質の評価にはGRADE法を使用した。インクレチン関連薬の死亡リスクは対照薬と同程度 189件の無作為化試験すべてにおいてバイアスリスクは低~中程度で、そのうち77件では死亡の報告がなく、112件(計15万1,614例)において3,888例の死亡が報告された。 189件をメタ解析した結果、インクレチン関連薬と対照薬の間で全死因死亡に差は認められなかった(1,925/8万4,136例 vs.1,963/6万7,478例、オッズ比:0.96、95%信頼区間[CI]:0.90~1.02、I2=0%、5年間のリスク差:-3イベント/1,000例[95%CI:-7~1]、エビデンスの質:中程度)。 サブグループ解析において、DPP-4阻害薬ではなくGLP-1作動薬で死亡リスクが低下する可能性が示唆されたが、信頼性は低かった。感度解析で効果推定値に重要な差は示されなかった。 著者は、「GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の間に効果の違いがあるかどうか、今後の検証が必要である」とまとめている。

6522.

カナグリフロジン、CVリスク低下の一方で切断リスクは上昇/NEJM

 心血管疾患リスクが高い2型糖尿病に対し、SGLT2阻害薬カナグリフロジンの投与は、心血管リスクを約14%低減するものの、一方で足指や中足骨などの切断術リスクはおよそ2倍に増大することが明らかになった。オーストラリア・George Institute for Global HealthのBruce Neal氏らが、30ヵ国、1万例超を対象に行った2つのプラセボ対照無作為化比較試験「CANVAS」「CANVAS-R」の結果を分析し明らかにしたもので、NEJM誌オンライン版2017年6月12日号で発表した。平均188週間追跡し、心血管アウトカムを比較 試験は、30ヵ国、667ヵ所の医療機関を通じ、年齢30歳以上で症候性アテローム心血管疾患歴がある、または年齢50歳以上で(1)糖尿病歴10年以上、(2)1種以上の降圧薬を服用しながらも収縮期血圧140mmHg超、(3)喫煙者、(4)微量アルブミン尿症または顕性アルブミン尿症、(5)HDLコレステロール値1mmol/L未満、これらの心血管リスク因子のうち2項目以上があてはまる、2型糖尿病の患者1万142例を対象に行われた。 被験者を無作為に2群に割り付け、カナグリフロジン(100~300mg/日)またはプラセボをそれぞれ投与し、平均188.2週間追跡した。主要アウトカムは、心血管疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中のいずれかの複合だった。 被験者の平均年齢は63.3歳、女性は35.8%、平均糖尿病歴は13.5年だった。心血管イベントリスクは約14%減、一方で切断術リスクは2倍 主要アウトカムの発生率は、プラセボ群が31.5/1,000人年に対し、カナグリフロジン群は26.9/1,000人年と、約14%低率だった(ハザード比:0.86、95%信頼区間[CI]:0.75~0.97、非劣性p<0.001、優越性p=0.02)。 仮説検定シーケンス法に基づく腎機能のアウトカムに関する評価は、統計的な有意差は示されなかった。具体的に、アルブミン尿症の進行について、カナグリフロジン群のプラセボ群に対するハザード比は0.73(95%CI:0.67~0.79)、また推定糸球体濾過量(GFR)の40%減少保持、腎機能代替療法の必要性、腎疾患による死亡のいずれかの複合エンドポイント発生に関する同ハザード比は0.60(同:0.47~0.77)だった。 一方で有害事象については、既知のカナグリフロジン有害事象のほか、切断術実施率がプラセボ群3.4/1,000人年だったのに対し、カナグリフロジン群は6.3/1,000人年と、およそ2倍に上った(ハザード比:1.97、95%CI:1.41~2.75)。主な切断部位は足指と中足骨だった。

6523.

メトホルミン長期投与が1型糖尿病の心血管リスク削減か: REMOVAL試験

 メトホルミンが1型糖尿病患者においても血糖値を改善し、インスリン必要量を減少させる可能性が報告されているが、心血管系のベネフィットについては明らかになっていない。心血管リスクがある成人1型糖尿病患者を対象に、メトホルミンの心血管障害の軽減作用を評価したREMOVAL試験の結果、ADAのガイドラインで提案されている血糖コントロールに対する効果は持続的なものではなく、むしろLDLコレステロール削減や動脈硬化予防など、心血管系のリスク管理において役割を果たす可能性が明らかとなった。この結果は第77回米国糖尿病学会(ADA)年次集会で報告され、論文がLancet Diabetes & Endocrinology誌オンライン版に6月11日同時掲載された。 REMOVAL試験は、5ヵ国(オーストラリア、カナダ、デンマーク、オランダ、英国)、23の病院または診療所で、5年以上の1型糖尿病罹患歴があり、10の特定の心血管リスク因子(BMI≧27kg/m2、HbA1c値> 8.0%、強いCVDの家族歴等)のうち少なくとも3つを持つ、40歳以上の1型糖尿病患者を対象に行われた二重盲検プラセボ対照試験である。被験者は1日2回経口メトホルミン1,000mg投与群(点滴によるインスリン治療と併用)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、メトホルミンがアテローム性動脈硬化症を減少させるかどうかについて、頸動脈内膜中膜肥厚(CIMT)の変化によって評価する3年間の追跡調査が行われた。 主要アウトカムは1年ごとの平均Far Wall CIMT値の変化で、反復測定に基づく修正intention-to-treat解析が行われた。副次アウトカムは、HbA1c値、LDLコレステロール、推定糸球体濾過量(eGFR)、体重、インスリン必要量、微量アルブミン尿(報告なし)、網膜症、および内皮機能とされた。 主な結果は以下のとおり。・3ヵ月間のリスク因子と血糖値の最適化期間を経て、428例の患者のうち、219例がメトホルミン投与群、209例がプラセボ群に無作為に割り付けられた。・平均CIMT値はメトホルミンによる有意な減少はなかったが(約-0.005mm/年、95%信頼区間[CI]:-0.012~0.002、p=0.1664)、最大CIMT値(3次アウトカム)は有意に減少した(-0.013mm/年、95%CI :-0.024~0.003、p=0.0093)。・メトホルミン投与群で、3年後のHbA1c値(ベースラインでのメトホルミン投与群:平均8.1%[SD 0.9]、プラセボ群:8.0%[SD 0.8])は減少していたが(-0.13%、95%CI:-0.22 ~-0.037、p=0.0060)、これは最初の3ヵ月以内の減少によるもので(-0.24%、-0.34~-0.13、p<0.0001)、その後は減少しなかった(p=0.0163 for visit-by-treatment interaction)。・メトホルミン投与群で、3年後の体重(-1.17kg、95%CI:-1.66~-0.69、p<0.0001)およびLDLコレステロール(-0.13mmol/L、95%CI:-0.24~-0.03、p=0.0117)が減少したが、eGFRは増加した(4.0mL/分/1.73m2、95%CI:2.19~5.82、p<0.0001)。またインスリン必要量の低下はみられなかった(体重1kg当たり-0.005単位、95%CI:-0.02~0.012、p=0.545)。・反応性充血指数または網膜症の有無により評価された内皮機能に影響はなかった。・治療中止はメトホルミン投与群59例(27%)、プラセボ投与群26例(12%)であり、主な原因は消化器系副作用の増加によるもので、メトホルミンによる低血糖症の増加はみられなかった(p=0.0002)。・メトホルミン投与群で5例、プラセボ群で2例が死亡したが、主任研究者により、本研究における治療との関連は判断されなかった。■参考ADA2017 Press ReleaseREMOVAL試験(Clinical Trials.gov)

6524.

クルクミン、うつ病治療への可能性

 強力な抗炎症作用、抗酸化作用、神経保護作用を有する植物ポリフェノールのクルクミンに、新規抗うつ薬としての関心が高まっている。臨床試験においては、うつ病への有効性に関する結論は矛盾している。シンガポール国立大学のQin Xiang Ng氏らは、うつ病におけるクルクミンの臨床的使用に関するメタ解析を行った。Journal of the American Medical Directors Association誌2017年6月1日号の報告。 1960年1月1日~2016年8月1日の間に英語で発表された論文を、PubMed、Ovid、Cochrane Collaboration Depressionなどより、クルクミンの異表記も含めた複数のキーワードで検索した。 主な結果は以下のとおり。・クルクミンとプラセボを比較した臨床試験6件より、合計377例がレビューされた。・うつ病患者では、HAM-Dスコアのベースラインからプールされた標準化平均差は、うつ症状の改善に対するクルクミンの有意な臨床効果を支持した(プールされた標準化平均差:-0.344、95%CI:-0.558~-0.129、p=0.002)。・有意な抗不安効果も、3件の臨床試験で報告された。・とくに、いずれの試験においても有害事象は報告されていなかった。・クルクミンのオープン試験および単盲検試験を除くほとんどの試験において、バイアスリスクは低かった。・利用可能な試験が少ないため、漏斗プロットまたは感度解析はできなかった。また、その試験期間も4~8週であるため、クルクミンの長期有効性および安全性に関するエビデンスも限られていた。 著者らは「うつ病患者に対するクルクミンの使用は、安全性、忍容性、有効性が高いと考えられる。大きなサンプルサイズと長期にわたるフォローアップ研究により、その妥当性を確認するためにも、しっかりした無作為化比較試験を計画するべきである」としている。■関連記事たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能うつ病の再発を予測する3つの残存症状:慶應義塾大うつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤は

6525.

SSRI服用は白内障と関連するか

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の服用が白内障のリスク増加と関連しているとの報告があるが、本当だろうか。スイス・バーゼル大学のClaudia Becker氏らは、大規模なプライマリケアデータベースを用いたケースコントロール研究において、SSRIの使用は白内障のリスクとは関連していないことを示した。ただし、65歳未満の患者に関しては、長期のSSRI使用で白内障のリスクがわずかに増加しており、著者は「さらなる研究が必要である」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年5月29日号掲載の報告。 研究グループは、SSRIまたは他の抗うつ薬使用の白内障リスクについて評価する目的で、英国プライマリケアのデータベースであるClinical Practice Research Datalink(CPRD)を用いて解析した。 1995年~2015年の間に、初めて白内障と診断された40歳以上の患者20万6,931例、ならびにそれと同数の対照(年齢、性別、一般診療所、白内障が記録された日[インデックス日]、インデックス日以前のCPRDでの記録年数をマッチさせた白内障のない対照)を特定し、BMI、喫煙、高血圧、糖尿病、全身性ステロイド薬使用について補正した条件付きロジスティック回帰分析を行った。SSRIおよび他の抗うつ薬の処方の回数別に、白内障の相対リスク(オッズ比[OR]および95%信頼区間[CI])を推算した。 インデックス日を2年さかのぼり、過去に緑内障の診断がない症例と対照に限定した感度解析も行った。 主な結果は以下のとおり。・現在のSSRI長期使用(処方回数20回以上)は、白内障のリスク増加と関連していなかった(補正OR=0.99、95%CI:0.94~1.03)。・しかし、40~64歳においては、SSRI長期使用者は非使用者と比較して白内障のリスクがわずかに増加した(補正OR=1.24、95%CI:1.15~1.34)。

6528.

第3世代ALK阻害薬lorlatinibの成績発表/ASCO2017

 lorlatinibは、強力な活性を持ち、中枢神経系(CNS)への良好な移行を示す次世代ALK-TKIである。また、ALK-TKI耐性変異に対する最も広いスペクトラムを有する。とくにクリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブなど、すべてのALK-TKIの耐性に関わるG1202R変異に対しても、唯一有効な薬剤である。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、このlorlatinibの第I/II相試験の主要な結果について、University of California IrvineのSai-Hong Ignatius Ou氏が発表した。 同試験は、6つの拡大コホート(EXP1~6)で行われ、ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)はEXP1~5で評価された(EXP6はROS1陽性)。第I相試験であるEXP1では、未治療患者において強固な臨床活性を示した。第II相試験は、EXP2~5で行われ、主要評価項目は、独立評価委員会(IRC)による客観的奏効率(ORR)と頭蓋内ORR(IC ORR)であった。 全体で199例の患者が登録され、有効性はEXP2~5の82例で、安全性は全患者で評価された。EXP2~6全体のORRは32.9%、病勢コントロール率(DCR)は56.1%であった。EXP2(前治療クリゾチニブの1ライン)のORRは57.1%、DCRは、71.4%であった。EXP3(前治療1ラインのALK-TKI:クリゾチニブ+化学療法またはクリゾチニブ以外のALK-TKI±化学療法)のORRは44.4%、DCRは61.1%であった(11.1%は奏効未決定)。EXP4(前治療2ラインのALK-TKI±化学療法)の25.0%、DCRは54.5%であった(13.6%は奏効未決定)。EXP5(前治療3ラインのALK-TKI±化学療法)のORRは30.8%、DCRは46.2%であった(23.1%は奏効未決定)。EXP4では80%以上、EXP5では90%以上の患者が化学療法を併用していた。また、ALK-TKI前治療の程度にかかわらず、ほとんどの患者で標的病変サイズが縮小した。8例ではPD後もlorlatinibの投与は継続され、最も長期にわたる患者は300日を超えている。頭蓋内病変は52例で評価され、IC ORRは48.1%、12週時のDCRは75.0%であった。標的病変のみのIC ORRは51.4%に達した。 全Gradeの治療関連有害事象(AE)発現率は、97.4%。Grade3/4のAEは46.6%の患者で発現した。AEによる投与遅延は29.3%、減量は19.8%、治療中止は4例(3.4%)、死亡例はなかった。発現頻度が高い項目は、高脂血症(89.7%)、高トリグリセライド血症(72.4%)で、これらは脂質低下薬でコントロール可能であった。 新たなALK-TKIであるlorlatinibは、重度な前治療歴のあるALK陽性NSCLCに対し臨床的に意義のある持続性の高い効果を示すとともに、頭蓋内病変に対しても高い効果を示した。この試験の結果から、lorlatinibは本年(2017年)4月26日、米国食品医薬品によるブレークスルー・セラピー指定を受けている。■参考http://meetinglibrary.asco.org/record/153943/abstract■関連記事次世代ALK/ROS1阻害剤lorlatinib、ALK陽性肺がんでFDAのブレークスルー・セラピー指定ASCO2016レポートDriver oncogeneに対する標的治療と耐性克服

6529.

乾癬治療が血管炎症も改善?

 乾癬は慢性の炎症性皮膚疾患で、血管炎症ならびに将来の心血管イベント増加との関連が知られている。一方、炎症はアテローム性動脈硬化の進展において重要である。米国・国立衛生研究所のAmit K. Dey氏らは、乾癬患者における皮膚の炎症の治療と血管性疾患の関連を検討する前向きコホート研究を行い、乾癬の皮膚重症度(PASIスコア)の改善が大動脈の炎症の改善と関連していることを明らかにした。とくにPASIスコアが75%以上改善した場合に、大動脈の炎症の改善がより大きいことが観察されたという。結果を踏まえて著者は、「皮膚など遠隔標的器官の炎症をコントロールすることで血管性疾患が改善するかもしれない」と述べ、無作為化臨床試験で今回の結果を確認する必要性を強調した。JAMA Cardiology誌オンライン版2017年5月31日号掲載の報告。 研究グループは、乾癬の皮膚重症度の変化と血管炎症の変化との関連を調べるとともに、血管炎症に対する抗TNF製剤治療の影響を検討する目的で、外来診療を受診した乾癬患者連続115例を登録し1年間追跡した。試験期間は2013年1月1日~2016年10月31日で、2016年11月に解析が行われた。 皮膚炎症はPASIスコアで、血管の炎症は18FDG-PETによるtarget-to-background ratio(TBR)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・115例の1年追跡時の平均(±SD)年齢は50.8±12.8歳で、68例(59%)は男性であった。・コホートは、軽度~中等度の乾癬(PASIスコア中央値:5.2、四分位範囲:3.0~8.9)を有しており、フラミンガムリスクスコアによる心血管リスクは低かった。・1年間追跡した後のPASIスコアは、中央値で33%改善していた(局所療法で60%、生物学的製剤療法[大部分は抗TNF製剤]で66%、光線療法で15%、p<0.001)。・乾癬のPASIスコアの改善は、TBRの6%改善と関連していた。・この関連は、従来のリスク因子を調整後も認められ(β=0.19、95%信頼区間[CI]:0.012~0.375、p=0.03)、抗TNF製剤で治療された場合が最も強かった(β=0.79、95%CI:0.269~1.311、p=0.03)。

6530.

ALK陽性肺がん1次治療におけるアレクチニブの成績発表:ALEX試験/ASCO2017

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の標準的1次治療は第1世代のALK‐TKIであり、優れた成績をあげている。しかし、時間経過とともにPDとなる患者も存在する。また、中枢神経系(CNS)転移は再発時に多く発現し、治療困難で、しばしば臨床上の問題となる。 アレクチニブは、強力な活性とCNSへの良好な移行性を有する次世代ALK-TKIであり、第1世代ALK‐TKIクリゾチニブ治療耐性症例において非常に優れた成績を示している。また、当患者集団の1次治療においては、アレクチニブ(300mg×2/日)とクリゾチニブを初めて直接比較した本邦のJ-ALEX試験で、アレクチニブ群が主要評価項目であるPFSを有意に改善している(HR:0.34、p<0.0001)。本年の米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、進行ALK陽性NSCLCの1次治療におけるアレクチニブとクリゾチニブを直接比較した、グローバル第III相試験ALEX試験の結果を、米国Massachusetts General HospitalのAlice Shaw氏が報告した。 この多施設オープンラベル無作為化第III相試験の対象患者は、無症候性のCNS転移症例を含む未治療の進行ALK陽性NSCLC。登録された患者は無作為に、アレクチニブ600mg×2/日またはクリゾチニブ250mg×2/日に1:1で割り付けられた。主要評価項目は治験担当医評価(INV)による無増悪生存期間(PFS)。副次評価項目は、独立評価委員会(IRC)によるPFS、CNS無増悪期間(CNS TTP)、客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、奏効期間、安全性などであった。 結果、2017年2月9日のデータカットオフ時に303例が登録された(アレクチニブ152例、クリゾチニブ151例)。追跡期間はアレクチニブ群18.6ヵ月、クリゾチニブ群17.6ヵ月であった。患者の半数以上(アレクチニブ群55%、クリゾチニブ群54%)は非アジア人で、約60%が非喫煙者、また約40%がベースライン時にCNS転移を有していた。 主要評価項目であるINVによるPFSは、アレクチニブ群で未達(17.7~NE)、クリゾチニブ群では11.1ヵ月(9.1~13.1)と、アレクチニブ群で有意に延長した(HR:0.47、95%CI:0.34~0.65、p<0.0001)。副次評価項目であるIRCによるPFSは、アレクチニブ群で25.7ヵ月(19.9~NE)、クリゾチニブ群は10.4ヵ月(7.7~14.6)で、こちらもアレクチニブ群に有意であった(HR:0.50、95%CI:0.36~0.70、p<0.0001)。 CNS転移例におけるPFSはアレクチニブ群では未達、クリゾチニブ群では7.4ヵ月であった(HR:0.40、95%CI:0.25~0.64)。CNS TTP(中央値は両群とも未達)は、競合リスクモデルを用いた生存時間解析において、アレクチニブ群で有意に延長した(cause specific HR:0.16、95%CI:0.10~0.28、p<0.0001)。 ORRは、アレクチニブ群83%(76~89)、クリゾチニブ群76%(68~82)で、アレクチニブ群が長かったが、統計学的に有意ではなかった(p=0.09)。OSは両群とも未達であった(HR:0.76、95%CI:0.48~1.20、p=0.24)。 Grade3~5の有害事象(AE)は、アレクチニブ群の41%、クリゾチニブ群の50%で発現した。致死的AEの発現率はアレクチニブ群で3%、クリゾチニブ群では5%であった。AEの発現項目は両群共新たなものはなかった。 Shaw氏は、このALEX試験の結果は、ALK陽性NSCLCの1次治療の新たな標準としてのアレクチニブの位置付けを確立した、と述べて本題を締めくくった。■参考ASCO2017 AbstractALEX試験(ClinicalTrials.gov)■関連記事ALK阻害薬による1次治療の直接比較J-ALEX試験の結果/Lancetアレクチニブ、ALK肺がん1次治療に海外でも良好な結果:ALEX 試験

6531.

オシメルチニブ、CNS転移例にも有効性示す:AURA3試験/ASCO2017

 中枢神経系(CNS)転移は、EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の経過中、40%にみられる。CNS転移例の予後は不良で、無増悪生存期間(PFS)は3~5ヵ月といわれる。オシメルチニブは、前臨床試験でCNSへの良好な移行が示されるとともに、臨床では2つの第II相試験(AURA2試験、AURA2拡大試験)においてCNSでの活性を示している。そこで、T790M陽性の進行NSCLCにおけるオシメルチニブの無作為化第III相試験であるAURA3試験から、CNS転移における同剤の最初の包括的評価を、イタリアFondazione IRCCS Instituto Nazionale dei TumoriのMaria Garrassino氏が、米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)で発表した。 AURA3試験では、対象患者をオシメルチニブ80mg/日またはプラチナダブレット化学療法3週間ごとに6サイクル(ペメトレキセド維持療法も許可)に、2:1で無作為に割り付けた。今回のサブグループ解析では、オシメルチニブ群は75例、化学療法群は41例であった。CNS客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)を評価するために、ベースラインでCNS転移のある患者に対し、独立第三者評価機関(BICR)による評価が行われた。解析は、ベースライン時に測定可能と測定不可能なCNS転移を有する患者のCNS全分析セット(CNS full analysis set:cFAS)と、測定可能なCNS転移のみを有する患者のCNS評価可能セット(CNS evaluable for response set:cEFR)の2グループで行われた。 結果、2016年4月15日時点で、cFAS患者は116例、cEFR患者は46例であった。cEFRにおけるCNS ORRは、オシメルチニブ群で70%(51~85)、化学療法群では31%(11~59)と、オシメルチニブ群で有意に高かった(OR:5.13、95%CI:1.44~20.64、p=0.015)。DORは、オシメルチニブ群で8.9ヵ月(4.3~NC)、化学療法群では5.7ヵ月(NC~NC)であった。cFASにおけるCNS PFSは、オシメルチニブで11.7ヵ月、化学療法群では5.6ヵ月と、オシメルチニブ群で有意に長かった(HR:0.32、95%CI:0.15~0.69、p=0.004)。また、オシメルチニブのCNSへの奏効は6.1週間でみられ、その効果は脳照射の前治療の有無にかかわらず現れた。■参考ASCO2017 AbstractAURA3試験(Clinical Trials.gov)AURA2試験(Clinical Trials.gov)AURA2拡大試験(Clinical Trials.gov)■関連記事オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCのPFSを有意に延長/NEJMオシメルチニブ、日本人のTKI耐性肺がんにも良好な結果:肺癌学会

6532.

うつ病評価尺度HAM-D6の有効性は

 世界でうつ病の重症度に関する情報を含む項目を特定するための調査では、ハミルトンうつ病評価尺度17項目(HAM-D17)に由来した、HAM-D6が使用されるようになり、幅広い研究に用いられてきた。デンマーク・コペンハーゲン大学のN. Timmerby氏らは、HAM-D17およびモントゴメリー・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)と比較した、HAM-D6の臨床的特性のシステマティックレビューを行った。Psychotherapy and psychosomatics誌86号の報告。 PubMed、PsycInfo、EMBASEのデータベースより、システマティックレビューおよびメタアナリシスのための優先的報告項目のガイドラインに従ってシステマティックに検索を行った。非精神病性の単極性または双極性うつ病におけるHAM-D6およびHAM-D17またはMADRSの臨床的妥当性に関するデータを報告した研究を抽出した。主な結果は以下のとおり。・検索により681件が特定され、そのうち51件が包含基準を満たした。・文献によると、HAM-D6がHAM-D17およびMADRSよりも優れていた点は以下であった。 ●scalability(各項目は症候群の重症度に関する固有の情報を含む) ●transferability(scalabilityは、時間経過とともに、性別、年齢、抑うつ症状のサブタイプに関係なく一定) ●responsiveness(治療中の重症度の変化に対する感受性) 著者らは「HAM-D6の臨床的特性は、HAM-D17およびMADRSよりも優れていた。HAM-D6の有効性は研究と臨床の両面で実証されているため、スケールをより一貫して使用することにより、ある設定から他の設定への結果の置き換えが容易になる」としている。■関連記事 たった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能 うつ病の再発を予測する3つの残存症状:慶應義塾大 うつ病診断は、DSM-5+リスク因子で精度向上

6533.

dacomitinib、EGFR変異陽性肺がん1次治療の成績発表:ARCHER1050試験/ASCO2017

 dacomitinibは、不可逆的にEGFR/HER1、HER2、HER4を阻害する第2世代EGFR-TKIであり、第II相シングルアーム試験であるARCHER1017試験で、EGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療で良好な成績を示している。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、dacomitinibとゲフィチニブを1次治療で比較した、現在進行中の第III相無作為化オープンラベル試験ARCHER1050試験の成績を、香港Chinese University of Hong KongのTony Mok氏が発表した。 同試験では、EGFR活性化変異(exon19 delまたはexon21 L858R +/− exon20 T790M)を有するStage IIIB/IVの再発NSCLC患者(CNS転移患者は除外)を、1:1でdacomitinib 45mg/日(D)群またはゲフィチニブ250mg/日(G)群に無作為に割り付けた。主要評価項目は、独立評価委員会(IRC)による無増悪生存期間(PFS)であった。副次評価項目は、治験担当医師によるPFS、客観的奏効率(ORR)、奏効期間(DOR)、治療成功期間、全生存期間、安全性および患者報告アウトカムであった。 結果、452例が登録され、D群227例とG群225例で解析が行われた。IRC評価のPFSは、D群14.7ヵ月(95%CI:11.1~16.6)、G群9.2ヵ月(95%CI:9.1~11.0)と、D群で有意であった(HR=0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)。治験担当医評価のPFSは、D群16.6ヵ月(12.9~18.4)、G群11.0ヵ月(9.4~12.1)と、D群で有意であった(HR=0.62、95%CI:0.50~0.78、p<0.0001)。IRC評価のORRは、D群74.9%(95%CI:68.7~80.4)、G群71.6%(95%CI:65.2~77.4)と、両群間で同等であった(p=0.3883)。IRC評価のDORは、D群14.8ヵ月(95%CI:12.0~17.4)、G群8.3ヵ月(95%CI:7.4~9.2)と、D群で有意であった(p<0.0001)。 重篤な治療関連有害事象(AE)の発現率は、D群で9.3%、G群では4.5%。EGFR阻害に関連するAEである下痢、爪周囲炎、ざ瘡様皮疹、口内炎のGrade3の発現率は、D群では8.4、7.5、13.7、3.5%、G群では0.9、1.3、0、0.4%であり、D群で多かった。一方、Grade3のALT上昇はD群で0.9%、G群で8.5%と、G群で多かった。 Mok氏は個人的見解として、EGFR変異陽性の進行NSCLCにおいて、dacomitinibは1次治療の新たな選択肢として考慮されるべきだろうと述べた。■参考ASCO2017 AbstractARCHER1050試験(Clinical Trials.gov)

6534.

伝染性膿痂疹(とびひ)

【皮膚疾患】伝染性膿痂疹(とびひ)◆病状体のあちこちに紅斑、痂皮(かさぶた)、水ぶくれなどが出て、周囲や遠くの部位に次々と拡大する皮膚疾患です。◆原因皮膚表面への細菌感染が原因で、水ぶくれをつくる黄色ブドウ球菌、かさぶたをつくる溶血性レンサ球菌とに分かれます。ほとんどが前者の方です。小児に多く発症します。湿疹や虫刺され、けがなどから始まることがあります。◆治療と予防・抗菌薬の内服と外用薬で治療します。搔きこわして広がっていくことが多いので、ステロイド外用薬を併用することもあります。・抗菌薬の効果をみるため、2~3日後にあらためて診察をします。・多くの薬剤に耐性をもつMRSAなどの菌がついていると治りにくいです。・皮膚を清潔にする、湿疹をきちんと治す、爪を短く切っておく、手をよく洗うなどして予防しましょう。監修:浅井皮膚科クリニック 院長Copyright © 2017 CareNet,Inc. All rights reserved.浅井 俊弥氏

6535.

進行胃がん、ペムブロリズマブの治療効果は?KEYNOTE-059/ASCO2017

 ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)は、第I相試験で既治療の進行胃がんに関する有望な結果を示した。米国臨床腫瘍学会年次大会(ASCO2017)では、ペムブロリズマブの多施設国際第II相試験KEYNOTE-059試験の結果が、米国Yale Cancer CenterのCharles S. Fuchs氏より発表された。 KEYNOTE-059試験は3つのコホートから成るが、今回はペムブロリズマブ単剤療法を評価するコホート1の結果である。コホート1の評価対象は、2ライン以上の化学療法を受けて進行した再発・転移胃がん、胃・食道接合部がん患者259例。患者は、ペムブロリズマブ200mgを、3週間ごと2年間、あるいは病勢進行するまで投与された。主要評価項目は、客観的奏効率(ORR)と安全性・忍容性、副次的評価項目は奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)である。 患者の地理的分布は、米国47.9%、東アジア13.1%、その他39.0%。年齢中央値は62歳、男性が76.4%を占めた。PD-L1陽性(PD-L1発現1%以上)は57.1%、陰性は42.1%であった。また、ペムブロリズマブの投与ラインは2次治療が51.7%、3次治療が29.0%、4次治療以降が19.3%。 259例全体のORRは11.6%(8.0~16.1)であった。PD-L1状態別にみると、陽性患者のORRは15.5%(10.1~22.4)、陰性患者では6.4%(2.6~12.8)と、PD-L1陽性患者で良好であった。DORは全体で8.4ヵ月(1.6+~17.3+)、PD-L1陽性患者では16.3ヵ月(1.6+~17.3+)、陰性患者では6.9ヵ月(2.4~7.0+)であった。投与ライン別にみると3次治療でのORRは16.4%(10.6~23.8)、4次治療以降では6.4%(2.8~12.2)であった。 Grade3~5の治療関連有害事象(AE)発現率は16.6%であり、治療中断に至った患者は2例であった。頻度が高い項目は疲労感、掻痒感、皮疹であった。免疫関連(irAE)の発現率は全Gradeで17.8%だったが、ほとんどは低Gradeであった。頻度が高い項目は甲状腺機能亢進、甲状腺機能低下、腸炎であった。 Fuchs氏は、ペムブロリズマブ治療の忍容性は良好であり、2回以上の前治療歴がある場合においても、抗腫瘍効果と持続的効果を示した、と結論付けた。なお、ペムブロリズマブの早期治療ラインでの使用、あるいは化学療法との併用についての臨床試験が進行中である。■参考ASCO2017 AbstractKEYNOTE-059試験(Clinical Trials.gov)■関連記事

6536.

飲酒は適量でも認知症のリスク要因/BMJ

 アルコール摂取は、たとえ適量であっても海馬の萎縮など脳に悪影響があることを、英国・オックスフォード大学のAnya Topiwala氏らが、30年にわたるWhitehall II研究のデータを用いた縦断研究の結果、報告した。今回の結果は、英国における最近のアルコール摂取制限を支持し、米国での現在の推奨量に異議を唱えるものだという。これまで、大量飲酒はコルサコフ症候群、認知症、広範囲の脳萎縮と関連するとされる一方、少量のアルコール摂取は認知機能障害の予防と関連があるとの研究報告がされていたが、適度なアルコール摂取が脳に与える影響を検証した研究はほとんどなかった。BMJ誌2017年6月6日号掲載の報告。30年追跡したWhitehall II研究から、550例を対象に追跡終了時にMRIを実施 研究グループは、英国の一般公務員を対象としたWhitehall II研究(1985~2015年)に登録され第11期(2011~12年)の調査に参加した6,306例の中から1,380例を無作為に抽出し、このうちimaging substudyへの参加に同意し安全に脳MRI検査を実施できる550例(CAGEスクリーニング質問票2点未満の非アルコール依存者、Whitehall II研究開始時の平均年齢43.0±5.4歳)を対象として、試験終了時(2012~15年)に脳MRI検査を実施し、30年にわたって前向きに収集されたアルコール消費に関するデータを用いて1週間のアルコール摂取量と認知機能について解析した。 550例のうち、画像データ不良あるいはアルコール摂取や認知機能等に関するデータ不備の23例は、解析から除外された。主要評価項目は、海馬萎縮、灰白質密度、白質微細構造などの脳構造評価と、研究期間中の認知機能低下や、画像撮影時の認知能力などの脳機能である。適度のアルコール摂取でも海馬萎縮のリスクが3倍 追跡調査期間中である30年間のアルコール摂取量が多いほど海馬萎縮のリスクが上昇し、摂取なし群(週1未満単位、1単位はアルコール8g)との比較において、週30単位以上のアルコール摂取群が最もリスクが高かった(オッズ比[OR]:5.8、95%信頼区間[CI]:1.8~18.6、p≦0.001)。また、適度なアルコール摂取群(週14~21単位)であっても、右側海馬萎縮のリスクが3倍に上昇し(OR:3.4、95%CI:1.4~8.1、p=0.007)、少量摂取群(週1~7未満単位)についても予防的効果は認められなかった。 アルコール摂取量の多さは、脳梁微細構造の違いや、言語流暢性の急激な低下とも関連していた。一方で、MRI検査時点の認知能力や、意味流暢性または語想起の経年的な変化との関連は確認されなかったという。 なお、今回の結果について著者は、観察研究の結果であり、アルコール摂取量は自己申告であるなど、研究の限界に留意が必要だとしている。

6537.

潰瘍性大腸炎に対する抗MAdCAM-1抗体の有用性-第II相試験(上村 直実 氏)-687

 潰瘍性大腸炎(UC)に関しては寛解導入および寛解維持を目的として、5-アミノサリチル酸(5-ASA)、ステロイド、免疫調節薬、抗TNFα薬、血球成分除去療法などによる治療が頻用されている。今回、従来治療に不耐容の中等症~重症活動性UCに対して、粘膜アドレシン細胞接着分子1(MAdCAM-1)を標的とする完全ヒトモノクローナル抗体(抗MAdCAM-1抗体)の有用性を検証した、国際間多施設共同第II相用量設定試験の結果が報告された。 主要エンドポイントを12週後の寛解達成率として、21ヵ国が参加した多施設共同試験の結果、抗MAdCAM-1抗体22.5mg群の寛解率が最も高く、プラセボ群2.7%と比べて有意に高い寛解効果を示した。また、安全性にも大きな問題がない結果であった。 MAdCAM-1は、小腸および大腸粘膜の血管内皮に表出し、リンパ球が血管系とリンパ組織の間を循環する際のホーミングに関連する重要な因子であり、腸管の炎症時にMAdCAM-1の表出が異常に亢進している現象が報告されていた。さらに、三浦らにより施行された動物実験ではMAdCAM-1の中和抗体が薬剤性腸炎を有意に抑制することも確認されており、炎症性腸疾患に対する薬剤として期待されていた1)。 以上の推移から抗MAdCAM-1抗体は、かなり難治で重症なUCに対する有用性が高い治療薬として期待されており、今回の用量設定試験の結果を受けて、今後、抗MAdCAM-1抗体の臨床的有用性を確認するための長期間のリスク・ベネフィットを明らかにする、第III相試験をはじめとする臨床試験結果が期待されるものと思われた。とくにMAdCAM-1分子は腸管で生理的な役割も果たしていることを鑑み、いつ投薬を中止したら良いのか、その後の再燃の可能性などの検討も待ち遠しい。■参考1) 三浦総一郎ほか. J Jpn Coll Angiol. 2008;48:143-149.

6538.

成人ADHDに対する中枢神経刺激薬、不眠を悪化させるのか

 注意欠如・多動症(ADHD)の成人における、不眠症の有病率と臨床サブタイプ、現在のADHD症状、中枢神経刺激薬治療との関連について、ノルウェー・Haukeland University HospitalのE.J.Brevik氏らが調査を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2017年5月26日号の報告。 DSM-IV基準に従って診断された成人ADHD患者268例(平均年齢:38.1歳)および、ランダムに選択されたコントロール群202例(平均年齢:36.5歳)を対象とし、診断情報、症状評価尺度、治療歴を収集した。不眠症は、Bergen Insomnia Scale(BIS)で測定した。ADHD症状の自己評価には、成人ADHD自己評価尺度を用いた。 主な結果は以下のとおり。・不眠症は、成人ADHD(66.8%)においてコントロール群(28.8%)よりも頻繁に認められた(p<0.001)。・不眠症は、ADHD不注意優勢型(55.6%)よりも混合型(79.7%)において、より好発していた(p=0.003)。・自己評価による現在のADHD症状では、不注意と不眠症は強く相関していた。・現在ADHDに対して中枢神経刺激薬を使用している患者では、使用していない患者と比較し、不眠症の総スコアが低かった(p<0.05)。 著者らは「不眠症は、ADHD成人において非常に一般的である。中枢神経刺激薬を現在使用している患者の不眠症スコアが低いことから、中枢神経刺激薬は、成人ADHDの不眠症の悪化と関連していないことが示唆された」としている。■関連記事 成人ADHD、世界の調査結果発表 中枢神経刺激薬の睡眠に対する影響を検証 ADHDに対するメチルフェニデートは有益なのか

6539.

直腸がん、局所切除術 vs.TME/Lancet

 Stage T2T3で腫瘍サイズが4cm以下、術前化学放射線療法反応性だった下部直腸がん患者について、直腸間膜全切除術(TME:total mesorectal excision)に対する局所切除術の優越性は示されなかった。2年後の臨床的アウトカムは両群で同等だった。フランス・Haut-Leveque HospitalのEric Rullier氏らが145例を対象に行った、第III相の非盲検前向き無作為化比較試験「GRECCAR2」(Organ preservation for rectal cancer)の結果で、Lancet誌オンライン版2017年6月7日号に掲載された。残存腫瘍サイズ2cm以下の患者を対象に試験 研究グループは2007年3月1日~2012年9月24日にかけて、直腸がん専門医のいるフランスの3次医療施設15ヵ所で、Stage T2T3の下部直腸がんで最大腫瘍サイズは4cm、術前化学放射線療法に対して良好な臨床的反応を示し、残存腫瘍サイズが2cm以下の18歳以上の患者を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方の群は局所切除術を、もう一方の群はTMEを行った。なお、局所切除群で最大浸潤径T2-3の場合には、TMEを行った。 主要エンドポイントは、無作為化後2年時点の複合アウトカム(死亡、再発、Clavien-Dindo分類III~Vの外科合併症罹患率、重度合併症)で、局所切除術のTMEに対する優越性を評価した(優越性を示す期待発生率は局所切除群25% vs.TME群60%)。エンドポイント発生率、局所切除群56%、TME群48%と同程度だが 試験には186例が登録され、良好な臨床反応を示した148例が無作為化を受けた。そのうち3例は除外となり(転移、腫瘍径>8cm、同意取り下げによる)、解析には145例が含まれた(局所切除群74例、TME群71例)。 結果として局所切除群のうち、26例にTMEが施行された。 術後2年の修正ITT集団の解析では、主要複合アウトカムの発生率は、局所切除群56%(41/73例)、TME群48%(33/69例)で有意差は示されなかった(オッズ比:1.33、95%信頼区間:0.62~2.86、p=0.43)。 この結果について著者は、局所切除群の多くにTMEを実施したため、外科合併症罹患率や重度合併症発生率が増加し、優越性を示すことができなかったと考察。そのうえで、患者の選択条件を改善することで、局所切除はより効果的な治療戦略となり得る可能性があるとまとめている。

6540.

既存の抗生物質は多発性硬化症を病初期の段階で押さえ込めるか?(解説:森本 悟 氏)-686

 多発性硬化症(Multiple sclerosis:MS)は若年成人に発症し、重篤な神経障害を来す、中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患である。根本的治療は確立されていないが、インターフェロンβなどの治療薬による再発予防が身体機能障害の進行の抑止に重要とされている。 また、一般に炎症性脱髄性疾患を示唆する中枢神経病巣を呈する状態が24時間以上続く急性発作で、それ以前には脱髄性疾患を示唆する発作がないものをclinically isolated syndrome(CIS)と称す。CIS患者のうち38~68%程度が、2回目のエピソードを発症しMSと診断されるが、必ずしもMSに進展しないうえに、MSの治療薬には重篤な副作用が報告されているため、いつの段階で治療を開始するべきか長らく議論されている。 このような背景から、CISの段階でMSへの進展を抑制できる効果が高く、重篤な副作用が少ない治療法が望まれている。本研究は、もともと抗生物質として広く使用されており、安価で比較的副作用の少ないミノサイクリンにMSの進展を遅らせる効果があると報告した。 CISと診断されて180日以内にミノサイクリンを100mg内服し続けた群とプラセボ群を比較したrandomized controlled trialであるが、ミノサイクリン群とプラセボ群で登録患者数に差があること、MSの予後不良因子とされている男性がプラセボ群で多い傾向にあること、登録時の造影病変がプラセボ群で有意に多い(造影病変の存在は疾患活動性が高いことを示唆する)ことは留意すべきである。 統計処理において、造影病変の「数」を調整しているが、プラセボ群で6ヵ月以内に再発した症例のうち、登録時に造影病変を有していた症例の割合が記載されていないため、疾患活動性の差が結果に与えた影響は否定できない。また、CISからMSへは数ヵ月後に進展する症例もあれば、20年以上経過してから進展する症例もあり、その中央値は約2年と報告されている。本研究では6ヶ月時点での再発がミノサイクリン群でわずかな有意差をもって少なかったが、24ヵ月後にはその差はなくなっていた。本研究は症例数が少なく観察期間も短いため、臨床的に有用と判断するにはさらなるデータの蓄積が必要と考える。

検索結果 合計:10312件 表示位置:6521 - 6540