サイト内検索|page:314

検索結果 合計:10321件 表示位置:6261 - 6280

6261.

SGLT2阻害薬と1型糖尿病治療(解説:住谷哲氏)-760

 1型糖尿病の病因はインスリン分泌不全であり、治療は生理的インスリン補充(physiological insulin replacement)である。これを達成するためにこれまでインスリンアナログの開発、頻回インスリン投与法(multiple daily injection:MDI)、インスリンポンプ、SAP(sensor-augmented pump)が臨床応用されてきた。さらにclosed-loop systemによる自動インスリン投与の臨床応用も目前に近づいてきている。しかし依然として1型糖尿病治療におけるunmet needsとして、低血糖、体重増加、血糖変動(glycemic instability)の問題を避けることはできない。さらに1型糖尿病治療においては厳格な血糖管理による細小血管障害の予防に注目しがちであるが、2型糖尿病と同様に動脈硬化性心血管病(ASCVD)の予防が予後を改善するために重要であることを忘れてはならない1)。 SGLT2阻害薬の血糖降下作用はインスリン非依存性であり、従って1型糖尿病患者においても有効であることが期待される。さらにEMPA-REG OUTCOME、CANVASの結果から、SGLT2阻害薬の投与はハイリスク2型糖尿病患者において総死亡を含めた予後を改善することが明らかになりつつある。本試験はこれらを前提として、SGLT1/2阻害薬であるsotagliflozinの1型糖尿病患者における有効性と安全性を検討したものである。 対象は年齢43歳、罹病期間20年、BMI 28kg/m2、HbA1c 8.2%の1型糖尿病患者であり、4割がインスリンポンプ使用中であった。主要評価項目は重症低血糖および糖尿病ケトアシドーシス(DKA)を伴わずにHbA1c<7.0%を達成した患者の割合とされた。24週後、主要評価項目の達成率はsotagliflozin群28.6%、プラセボ群15.2%であり、sotagliflozin群で有意に高かった(p<0.001)。一方、DKAはsotagliflozin群で21例(3.0%)、プラセボ群で4例(0.6%)であった(有意差は記載されていない)。 SGLT2阻害薬であるダパグリフロジンを用いた試験(DEPICT-1試験)がほぼ同時に報告された2)。有効性についてはsotagliflozinを用いた本試験と同様であり。CGMのデータからダパグリフロジンがglycemic instabilityを改善することも明らかにされた。しかし安全性については、ダパグリフロジン投与によりDKAの増加は認められなかった。ダパグリフロジン投与によりDKAが増加しなかったのは、SGLT2阻害薬とSGLT1/2阻害薬との違いによるものか、試験デザインによるものか、対象患者の相違によるものかは明らかではない。さらに両試験ともに24週の短期間の観察であり、長期的な有効性および安全性については不明である。 日常臨床において、インスリンを増量しても体重が増加する一方で血糖コントロールが改善しない1型糖尿病患者は少なくない。この点で、血糖コントロールの改善と体重減少が同時に期待できるSGLT2阻害薬は魅力的である。しかし一方でDKAや性器感染症のリスクの増加は避けては通れない。今後の長期的な有効性および安全性のデータの集積を期待したい。■「SGLT2阻害薬」関連記事SGLT2阻害薬、CV/腎アウトカムへのベースライン特性の影響は/Lancet

6262.

認知症予防、緑茶 vs.紅茶 vs.ルイボス茶

 チャノキ(茶の木[Camellia sinensis])の緑茶(green tea)成分は、アルツハイマー病における、記憶障害などのさまざまな神経変性状態に対し神経保護的に作用する。しかし、チャノキのほかの茶成分が、類似の神経保護的な効果を示すかは不明である。ブラジル・Universidade Federal do PampaのHelen L. Schimidt氏らは、アルツハイマー様疾患のラットモデルにおいて、緑茶、ルイボス茶(red tea)、紅茶(black tea)の補充が記憶および海馬の酸化状態に及ぼす影響を調査した。Food research international誌2017年10月号の報告。アルツハイマー様疾患ラットモデルの神経保護に緑茶が有効 wistar雄ラットに緑茶、ルイボス茶、紅茶を8週間補充した後、Aβ海馬内注射(2μL of Aβ-25-35、CA1領域)を行った。アルツハイマー様疾患およびshamラットの記憶検査を行った。安楽死後、両側海馬の酸化状態を定量化した。 アルツハイマー様疾患ラットに緑茶、ルイボス茶、紅茶が及ぼす影響を調査した主な結果は以下のとおり。・緑茶とルイボス茶はアルツハイマー様疾患ラットの記憶障害を防ぎ、緑茶のみが海馬の酸化ストレスや損傷を防いだ。・チャノキの緑茶は、アルツハイマー様疾患ラットモデルにおいて、ルイボス茶と紅茶よりも神経保護に有効であった。■関連記事毎日5杯の緑茶で認知症予防:東北大なぜ、フィンランドの認知症死亡率は世界一高いのか認知症になりにくい性格は

6263.

【GET!ザ・トレンド】服薬アプリとSNSの連動で、チーム医療に貢献する情報提供を目指す/中外製薬

中外製薬は自社製品カペシタビン(商品名:ゼローダ)の使用患者を対象に、患者と医療者のコミュニケーションの向上に、日本エンブレースと共に新たな取り組みを開始した。増える在宅治療がもたらす診療上の課題内服薬や自己注射などの開発が進み、在宅での患者自身による投薬が増加している。在宅治療の増加は、患者が医療者の手を離れる時間を増加させる。抗がん剤治療の場合、その投与期間が延びることで、治療を妨げる深刻な事象のリスクが増える。自己判断による服薬中断や有害事象(AE)の発生などである。この問題について中外製薬 安全性コミュニケーション部の竹本 信也氏は、“患者がAEに気づき医療者に知らせる”“医療者がAEの発現をいち早く認知し、評価し、対処する”といった、患者と医療者のコミュニケーションが重要だと述べる。実際に、最近の米国臨床腫瘍学会(ASCO)などでは、患者と医療者の良好なコミュニケーションが生命予後を改善するという研究結果が報告されている。そのような中、中外製薬は、患者と医療者のコミュニケーションの場を提供するプロジェクトを、カペシタビンの治療において限定的に開始した。アプリとSNSの連動で課題解決を図る新たな取り組み具体的には、自社で開発したカペシタビンの服薬適正化支援アプリを医療者専用SNSシステムと連動させ、患者とその患者を取り巻くすべての医療者で治療情報を共有するという取り組みである。当アプリに連動したのは、医療者専用SNSとして株式会社日本エンブレースが提供する「メディカルケアステーション」(以下、MCS)。MCSは、すでに全国201の医師会で正式採用され、2万6,000以上の医療関連施設で活用されている医療者専用の完全非公開SNS。患者ごとのグループを作り、タイムライン上で全員が情報を共有、交換することができる。このSNS基盤を服薬適正化支援アプリと連動することで、服薬やAEの情報を共有することが可能となった。ICTで患者が見守られる(サービスの実際)カペシタビン服薬適正化支援アプリは、オンラインのシステムであり、高齢者には難しいダウンロードが不要で利用できる。このアプリは、医師から招待された患者しかアクセスできない仕組みになっている。アプリの入力は簡単で、服薬の有無、服薬錠数、それと(バリデーション済の)QOLスケールから現在の体調を選び、送信ボタンを押すだけである。画像を拡大する一方、SNSのMCSでは、患者に対しては受診施設ごとに、医療者に対しては患者ごとに情報共有できる画面(タイムライン)が設けられている。医師が適切ログインの上、タイムラインを表示すると、医師、薬剤師、看護師、介護士、患者本人、家族というように、患者単位で必要なメンバーが参加した状態でアイコンが表示される。患者がアプリで入力した上記の情報は、瞬時にMCSのタイムラインに表示され、その患者のタイムライン参加メンバー全員に共有される。さらにAEに関するアラート機能も装備している。患者がアプリ上のAEの入力エリア「気になる症状」から、該当する症状とその程度を選択し送信すると、対応するCTCAEのGrade(予測)と共にアラートとして、タイムラインを通じて参加している医療者メンバーのみに入力結果を表示する仕組みである。左から中外製薬 オンコロジー製品政策部 大寺 昭雄氏、日本エンブレース 伊東 学氏、中外製薬 安全性コミュニケーション部 竹本 信也氏同社 オンコロジー製品政策部の大寺 昭雄氏は、臨床現場におけるカペシタビンの使用で見られる問題の多くは、患者が自己判断で服薬を中断してしまうこと、がんの進行を恐れるあまりAEが出ていても飲み続けてAEが重篤化してしまうことだという。このような事態も、患者とそれを取り巻くすべての医療者の間でコミュニケーションできることで、未然に防ぐことが期待される。また、患者は近年、基幹病院のみならず、薬局やかかりつけの診療所など多くの医療者と関わる。そのような背景からか、MCSでは20〜30名の医療者が一人の患者タイムラインのメンバーとして参加することも珍しくはないという。従来のFaxや電話といった手段で、この人数に迅速に情報共有することは容易ではない。しかし、SNSではそれが容易に実現できるため、幅広い医療者でのコミュニケーションが可能になっていると、日本エンブレース代表取締役社長の伊東 学氏は述べる。サービス検証して次のステップへ中外製薬は本年4月から安全性コミュニケーション部を設立。安全性の専任担当「セイフティエキスパート」を全国の統括支店に配置するなど安全性情報の提供に注力している。このプロジェクトも、そのアクションの一環である。今回の試行は、対象となる基幹病院で、倫理審査委員会の承認に基づき、利用者を限定して開始した。今後、第3者機関の検証を行い、その結果をもって、このプロジェクトの全国展開、さらに自己注射薬などがん以外での展開も検討する。このプロジェクトを通じ、チーム医療、地域連携医療に貢献していきたいと、前出の竹本氏は述べる。

6264.

統合失調症患者の脳活性、リスペリドン vs.アリピプラゾール

 前頭前野ネットワークの機能障害は、精神病性障害における陰性症状および神経認知の問題両方の原因となりうる。ほとんどの抗精神病薬は前頭前野の活性を低下させる可能性があるが、ドパミンD2パーシャルアゴニストであるアリピプラゾールは、前頭前野の機能を改善するといわれている。オランダ・フローニンゲン大学のEdith J. Liemburg氏らは、精神病性障害の患者を対象に、アリピプラゾールがリスペリドンと比較して、治療後の前頭前野および関連領域の活性を高めるかについて検討を行った。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌2017年10月3日号の報告。 この探索的かつ薬理学的な神経イメージング研究では、対象である精神病性障害の患者24例を、アリピプラゾールまたはリスペリドンのいずれかに無作為に割り付けた。ベースライン時および治療9週間後に、面接およびMRIセッションを行った。 主な結果は以下のとおり。・今回は、Tower of London(ToL)およびWall of Faces(WoF)の2つのタスク実行中の脳活性化(ASL[arterial spin labeling]で測定)について報告を行った。・アリピプラゾール治療は、中前頭回、上前頭回、後頭葉回(ToL)、内側側頭葉回、下前頭回、被殻、楔部(WoF)の活性を減少させ、リスペリドン治療は活性を増加させた。・アリピプラゾール治療は、腹側前帯状、後部島(ToL)、上前頭回、上側頭回、中心前回(WoF)の活性を増加させ、リスペリドン治療は減少させた。・両治療群ともに、腹側島活性(ToL)、中側頭回(WoF)を増加させ、後頭皮質、楔前部、尾状頭葉(ToL)の活性を減少させた。 著者らは「アリピプラゾール治療は、遂行計画に必要な頭部リソースが少なくて済む可能性があり、感情刺激に対する前頭側頭および前頭前野の反応性を増加しうる。これらの予備的知見を裏付けるためには、より多くの研究が必要である」としている。■関連記事統合失調症に対する短期治療、アリピプラゾール vs.リスペリドン統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs.リスペリドン日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果は

6265.

先天性ジカウイルス症候群、石灰化は診断指標にならず/BMJ

 新生児の先天性ジカウイルス症候群の診断では、「脳石灰化の検出を主要な基準とみなすべきではなく、石灰化の非検出を診断の除外基準として用いるべきではない」とする所見を、ブラジル・Barao de Lucena病院のNatacha Calheiros de Lima Petribu氏らが示した。先天性ジカウイルス症候群の小児について、出生直後と1年時点に受けた脳CT所見を比較した症例シリーズ研究の結果で、BMJ誌2017年10月13日号で発表した。37例の出生直後と1年時点の脳CT所見を比較 先天性ジカウイルス症候群でみられる水頭症の病態生理は、十分に解明されておらず、同症候群児の多くは水頭症のリスクのため、フォローアップ脳CTを受ける。勧告では、生後10~12ヵ月で少なくとも1回の脳スキャンを受けることとされているが、一方でそのような小児の脳画像所見の変化を報告したフォローアップ研究はなく、研究グループは、脳石灰化にフォーカスして初回脳CTとフォローアップ脳CTの所見を比較(石灰化パターンの違いを評価)した。 対象はBarao de Lucena病院で、2015年の小頭症アウトブレーク中に先天性ジカウイルス症候群の可能性例(probable)/確定例(confirmed)と診断され、出生直後と1年時点で脳CTを受けていた37例であった。 37例のうち、22例(59%)が男児。先天性ジカウイルス症候群の確定例は29例、8例は可能性例であった。フォローアップ脳CTでは、15例(41%、95%信頼区間[CI]:26~57%)が水頭症と診断されている。 初回脳CTが行われた対象児の年齢範囲は、生後1~138日(中央値11.5日)であり、フォローアップ脳CTは105~509日(中央値415日)で行われた。 37例中28例は、初回およびフォローアップ脳CTを同一の病院で受けていた。画像取得パラメータはすべての対象児で同一であり、9例は初回およびフォローアップ脳CTを同一の機器で受けていた。34例で石灰化が減退 初回脳CTでは、全37例で脳の石灰化が認められた。大部分が皮質-白質の境界面でみられた。 しかしフォローアップ脳CTでは、34例(92%、95%CI:79~97%)において石灰化の数、サイズ、密度、またはそれら複合の減少が認められた。1例では石灰化が視認できなくなっていた。一方、変化が認められなかったのは2例であった。石灰化の増加例はなかった。 フォローアップ時に視認ができなくなっていたのは、主に頭頂葉と後頭葉の皮質-白質境界面の石灰化であった。 これら画像所見は、臨床的改善とあらゆる面で関連していなかった。

6266.

うつ病と双極性障害、自殺企図リスクが高いのは

 自殺企図は主な気分障害と関連しており、成人における自殺企図のリスクは、うつ病よりも双極性障害で高いといわれている。この関係は、若者でも同様かもしれないが、システマティックかつ定量的に検討したエビデンスはない。イタリア・Catholic University of the Sacred HeartのFranco De Crescenzo氏らは、小児または青年の双極性障害およびうつ病患者の自殺企図について、ランダム効果メタ解析を実施した。Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry誌2017年10月号の報告。 双極性障害またはうつ病と診断された小児または青年における、自殺企図の割合を比較した研究報告を検索し、ランダム効果メタ解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・1995~2017年までの研究報告は6件であった。・対象は、米国および韓国の気分障害と診断された2,303例(3~18歳)。・自殺企図の割合は診断により有意に異なっており、双極性障害(31.5%)>うつ病(20.5%)>軽躁または躁病のみ(8.49%)であった。・メタ解析では、双極性障害>うつ病で自殺企図のリスクは有意に異なっており(OR:1.71、CI:1.33~2.20、p<0.0001)、自殺企図と自殺念慮を有する研究を除外した場合でも同様であった(OR:1.64、CI:1.26~2.15、p<0.0001)。 著者らは「若年気分障害患者における自殺企図のリスクは、双極性障害>うつ病>>軽躁または躁病のみ>>一般の若年集団であった」としている。■関連記事双極性障害患者の自殺、治療パターンを分析双極性障害の自殺企図、“だれ”よりも“いつ”がポイント双極性障害に対する抗けいれん薬の使用は、自殺リスク要因か

6267.

NSCLC1次治療におけるペムブロリズマブ単独治療のOS結果(KEYNOTE-024)/WCLC2017

 KEYNOTE-024試験は、未治療のPD-L1高発現(TPS≧50%)の転移性NSCLC患者305例を対象にペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)単独投与群(n=154)と標準治療のプラチナベース化学療法群(n=151)を比較した、国際無作為化オープンラベル第III相臨床試験。本年(2017年)9月の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)では、追跡期間11.2ヵ月の中間解析が発表され、ペムブロリズマブ群の有意なPFSの改善が報告されたが、全生存期間(OS)は未到達であった。10月に横浜で開催された第18回世界肺癌学会(WCLC2017)では、アップデートされたOSの結果が米国・The Sidney Kimmel Comprehensive Cancer CenterのJulie R Brahmer氏により発表された。 今回の報告は、追跡期間中央値25.2ヵ月の解析結果。OS中央値はペムブロリズマブ群30.0ヵ月(18.3~未到達)、化学療法群は14.2ヵ月(9.8~19.0)と、ペムブロリズマブ群で有意に死亡リスクが減少した(HR:0.63、95% CI:0.47~0.86、p=0.002)。奏効率はペムブロリズマブ群で45.5%(37.4~53.7)、化学療法群で29.8%(22.6~37.8)であった。奏効期間はペムブロリズマブ群では未到達(1.8+ヵ月~20.6+ヵ月)、化学療法群では7.1ヵ月(2.1+ヵ月~18.1+ヵ月)であった。 ペムブロリズマブの安全性は、転移性NSCLCのこれまでの試験と一貫していた。治療関連有害事象発生率はペムブロリズマブ群76.6%、化学療法群90.0%であった。ペムブロリズマブ群の免疫関連有害事象(irAE)発生率は33.8%、うちGrade3以上発生率は13.6%であった。irAEで多くみられるものは、甲状腺機能低下症、肺臓炎、甲状腺機能亢進症、重篤な皮膚毒性、infusion reactionであった。■参考KEYNOTE-024試験(Clinical Trials.gov)MSD株式会社ニュースリリース■関連記事PD-L1高発現NSCLC1次治療、ペムブロリズマブKEYNOTE-024試験の日本人データ/日本臨床腫瘍学会PD-L1高発現NSCLCの初回治療はペムブロリズマブ?KEYNOTE-024のPFS2データ/ASCO2017

6268.

国内初の慢性便秘症診療ガイドライン発刊―便秘の定義や治療推奨明確に

 日本消化器病学会関連研究会 慢性便秘の診断・治療研究会は、今月『慢性便秘症診療ガイドライン』を発刊した。高齢者を中心に有症状者は増え続け、その数は1,000万人超といわれる慢性便秘だが、これまで本邦においては診断や治療に関する明瞭な指針がなかった。本ガイドラインでは、診療に当たる医師らのコンセンサスを図るべく、「便秘」を定義。治療についてはClinical Question(CQ)を設定し、ステートメントとともにエビデンスレベルと推奨度を示した。以下でその概略を紹介する。「状態名」としての便秘を改めて定義 排便習慣には個人差が大きく、患者が「便秘」という言葉で意味する内容もさまざまだが、本ガイドラインでは、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状況」を便秘と定義。また、便秘症については、「便秘による症状が現れ、検査や治療を必要とする場合であり、その症状として排便回数減少によるもの(腹痛、腹部膨満感など)、硬便によるもの(排便困難、過度の怒責など)と便排出障害によるもの(軟便でも排便困難、過度の怒責、残便感とそのための頻回便など)がある」としている。 一方、何らかの理由で経口摂取量が不十分な場合は排便回数が減少するのは当然であり、この理由で排便の回数や量が少ないのは真の便秘ではない。また、残便感を訴える患者の中には強迫観念のために、「本来体外に排出すべき糞便」が直腸内に存在しないにもかかわらず、残便感(偽の便意)を訴え、過度に怒責したり、頻回にトイレに行ったりする排便強迫神経症も少なからず存在し、そのような患者も真の便秘症とはいえない、としている。治療法をエビデンスレベルと推奨度で評価 治療については、生活習慣の改善や薬物療法などの保存的治療に関するCQを11項目、順行性洗腸法や大腸切除術などの外科的治療に関するCQを3項目設定。それぞれにステートメントと、関連する文献エビデンスを評価したエビデンスレベル(A~D)と、推奨度(1:強い推奨、2:弱い推奨)を表記している。 このうち、浸透圧性下剤の使用については「慢性便秘症に対して有用であり使用することを推奨」している(推奨度1、エビデンスレベルA)。ただし高齢者については、腎機能が正常な場合も含めて、マグネシウムを含む塩類下剤は「慎重投与」とし、定期的に血清マグネシウム濃度を測定するよう注意を呼び掛けている。 上皮機能変容薬についても、本ガイドラインでは「有用であり、使用することを推奨する」としている(推奨度1、エビデンスレベルA)。ただし、ルビプロストンについては「妊婦には投与禁忌であり、若年女性に生じやすい悪心の副作用にも十分に注意する必要がある」としている。 一方、便秘型過敏性腸症候群の治療薬として本年、保険適応を取得したリナクロチドについては、「副作用として下痢がもっとも多く報告されており、腹痛、鼓腸なども報告されているが、深刻な副作用はこれまでに報告されていない」としたうえで、「日本では市販後間もないため、内服後の症状に注意して用いる必要がある」としている。■関連記事もはや「秘め事」ではない!? 患者1,000万人超の慢性便秘の考え方

6269.

PARP阻害薬olaparib、乳がんに国内承認申請

 アストラゼネカおよびメルク・アンド・カンパニーは2017年10月23日、日本において、アストラゼネカ株式会社が、BRCA遺伝子変異陽性の手術不能または再発乳癌を予定効能・効果とするolaparibの医薬品製造販売承認申請を行ったことを発表した。医薬品医療機器総合機構(PMDA)による承認についての判断は、2018年下半期までになされる予定。 本申請はNew England Journal of Medicineに掲載された国際共同第III相試験OlympiADの良好な結果に基づき行われた。OlympiAD試験は302例の病的変異または病的変異疑いに分類される生殖細胞系列BRCA1またはBRCA2遺伝子変異を有するHER2陰性転移乳がん患者におけるolaparib(300mg×2/日)の有効性および安全性を、医師の選択した化学療法(カペシタビン、ビノレルビンもしくはエリブリンのいずれか1つ)と比較検討した非盲検無作為化多施設共同第III相試験。 olaparibの日本における承認申請は、現在審査中の、卵巣がんを対象とした申請に次いで2件目となる。現在、olaparibは、卵巣がんと乳がんに加え、前立腺癌およびすい臓癌を含む多岐にわたる癌腫を対象に臨床試験を実施中である。■参考アストラゼネカ株式会社プレスリリースOlympiAD試験(Cinical Trials.gov)■関連記事PARP阻害薬olaparib、既治療のBRCA乳がんの予後を改善/NEJMPARP阻害薬olaparib、BRCA変異乳がんの生存を42%改善/ASCO2017

6270.

新規インフルエンザ薬S-033188、先駆け審査指定制度下で国内承認申請

 塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功)は、自社創製の新規キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬S-033188について、成人および小児におけるA型又はB型インフルエンザウイルス感染症を適応症として、2017年10月25日付で日本国内における製造販売承認申請を行ったと発表。 S-033188は、既存の薬剤とは異なる作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制する新規化合物であり、2015年10月に厚生労働省より先駆け審査指定制度の対象品目に指定されている。S-033188は、成人または小児を問わず、経口による1回のみの錠剤の服用で治療が完結するため、利便性が高く、確実なアドヒアランスが期待できるという。 これまでに実施した健常なインフルエンザ患者を対象とした臨床試験(CAPSTONE-1)では、S-033188は、既存薬のオセルタミビルと比較して、抗ウイルス効果が高く、投与翌日には50%以上の患者(小児を含む)でウイルス力価の陰性化が認められている。そのため、家庭内や学校、職場等でのウイルス伝播、飛沫/空気感染拡大に対しても一定の抑制効果を示すことが期待される。また、薬剤との関係性が疑われる有害事象の発現率がオセルタミビルと比較して有意に低く、従来の治療と同等以上の安全性を示すと考えられる。さらに、S-033188は、非臨床試験において、鳥インフルエンザウイルス(H5N1やH7N9)や、既存のインフルエンザ治療薬に耐性を有するウイルス株を含む、さまざまな亜型のA型インフルエンザウイルスに対してもウイルス増殖抑制効果が確認されている。そのため、パンデミックへの備えとしても重要な薬剤になると考えられる。■参考シオノギ製薬株式会社ニュースリリース■関連記事新インフルエンザ治療薬S-033188、第III相試験結果発表/IDWeek2017

6271.

自傷行為を行った10代、自殺リスクは17.5倍/BMJ

 2001~14年の間に、英国に住む13~16歳の女子で自傷行為が68%増加していたことが明らかとなった。英国・マンチェスター大学のCatharine Morgan氏らが、地域住民を対象に、10代の若者における性別および年齢別の自傷行為発生率の経時的傾向、臨床管理パターン、自傷行為エピソード後の死因別死亡リスクを調査したコホート研究の結果を発表した。近年、小児および青年で自殺率が上昇していることや、精神的苦痛を訴える若年者の急増が報告されているが、非致死的な自傷行為の発生率については国のデータ源がなく定量化が困難であった。著者は今回の結果を踏まえ、「自傷行為増加の原因となるメカニズムをよく理解し、苦しんでいる子供たちへの支援に取り組むことが、公的機関にとって喫緊の課題である」とまとめている。BMJ誌2017年10月18日号掲載の報告。自傷行為の発生率とその後の死亡率を調査 研究グループは、英国のプライマリケア674施設における440万例超の患者記録を含むデータベースClinical Practice Research Datalink(CPRD)、病院データ(Hospital Episode Statistics:HES)、国家統計局(Office for National Statistics:ONS)の死亡記録と、社会経済的貧困の度合いについてはIndex of Multiple Deprivationを用いて検討を行った。 記述的分析として、2001~14年の間に自傷行為を行った10~19歳の患者1万6,912例のデータを調査した。また、このうちHESとONSに該当した8,638例について、年齢・性別・施設をマッチングさせた対照計17万274例とともに、自傷行為後の死因別死亡率について解析した。 主要評価項目は、第1に性別および年齢別の自傷行為年間発生頻度の経時的傾向、第2にメンタルヘルスサービスへの紹介や向精神薬の処方等の臨床管理、第3に全死因死亡・不慮の死(自殺や事故死など)・致死的急性アルコールまたは薬物中毒の相対リスクであった。自傷行為は女子に多く、とくに13~16歳の女子で発生率が急増 自傷行為の年間発生頻度(/1万人)は、男子が12.3に対し女子で37.4と高く、とくに13~16歳の女子では2011年の45.9から2014年の77.0へと68%増加した。 社会経済的貧困度が高い地域でプライマリケア施設に登録された若年患者の自傷行為発生頻度は非常に高かったが、自傷行為エピソード発生後12ヵ月以内のメンタルヘルスサービスへの紹介率は、社会経済的貧困度が最も低い地域の患者と比較して23%低い傾向がみられた。 自傷行為を行った小児および青年は、追跡期間中に不慮の死を遂げるリスクが約9倍高く、とくに自殺(社会経済的貧困を補正したハザード比[HR]:17.5、95%信頼区間[CI]:7.6~40.5)、致死的急性アルコールまたは薬物中毒(34.3、10.2~115.7)のリスクの顕著な上昇が認められた。

6272.

妊娠歴有の女性から男性への輸血は死亡リスクが高い?/JAMA

 赤血球輸血を受けた患者において、妊娠歴がある女性ドナーからの輸血は男性ドナーからの輸血と比べ、男性レシピエントでは全死因死亡率の上昇との関連がみられ、女性レシピエントでは同様の関連は確認されなかった。また、妊娠歴のない女性ドナーからの輸血は、男女ともにレシピエントの死亡率上昇とは関連しなかった。オランダ・Sanquin ResearchのCamila Caram-Deelder氏らが、初回輸血レシピエントを対象にした後ろ向きコホート研究の結果を報告した。これまで、女性ドナーからの赤血球輸血は、男性ドナーと比較してレシピエントの死亡率が高いことが観察されていたが、ドナーの妊娠歴が関与するかは不明であった。JAMA誌2017年10月17日号掲載の報告。輸血患者の死亡率、男性ドナーと女性ドナーの妊娠歴の有無で評価 研究グループは、2005年5月30日~2015年9月1日に、オランダの主要6病院で初回輸血を受けた患者を登録し解析した(最終追跡日2015年9月1日)。主要解析は、単一ドナー(男性ドナーのみ、妊娠歴のない女性ドナーのみ、妊娠歴のある女性ドナーのみ)から赤血球輸血を受けた患者を対象とし、Cox比例ハザードモデルのライフテーブルや時間変数を用いて、各ドナーから受けた輸血と死亡との関連を調べた。主要評価項目は、追跡期間中の全死因死亡率とした。 主要解析対象となったレシピエントは3万1,118例(年齢中央値65歳[四分位範囲:42~77歳]、男性1万4,995例[48%]、女性1万6,123例[52%])で、計5万9,320単位の赤血球輸血を受けた。ドナーは、男性88%、妊娠歴のある女性6%、妊娠歴のない女性6%であった。妊娠歴がある女性からの輸血を受けた男性、死亡リスクが1.13倍 試験対象期間の死亡は、3万1,118例中3,969例であった(死亡率13%)。 男性レシピエントにおける赤血球輸血後の全死因死亡(件数/1,000人年)は、ドナーが妊娠歴のある女性の場合の101に対し男性ドナーの場合は80で、輸血当たりの時間依存性死亡ハザード比(HR)は1.13(95%CI:1.01~1.26、p=0.03)であった。一方、妊娠歴のない女性ドナーからの輸血と男性ドナーからの輸血を比較すると、全死因死亡は78 vs.80で、死亡HRは0.93(95%CI:0.81~1.06、p=0.29)であった。 女性レシピエントにおいては、妊娠歴のある女性ドナー vs.男性ドナーの全死因死亡は74 vs.62、死亡HRは0.99(95%CI:0.87~1.13、p=0.92)であり、妊娠歴のない女性ドナー vs.男性ドナーは74 vs.62、HRは1.01(95%CI:0.88~1.15、p=0.92)であった。 著者は、後ろ向きコホートで死因に関する情報がないことなどを研究の限界として挙げたうえで、「本研究の結果については、今後、さらなる研究で再現性を検証する必要があり、臨床的意義を明らかにするとともに、このような差異が起こるメカニズムを特定することが重要な課題である」とまとめている。

6273.

卵円孔開存は問題か?(解説:後藤信哉氏)-753

 胎児循環では心房中隔の一部としての卵円孔は開存している。出生とともに閉じるのが一般的である。剖検例を詳細に検討すると、20%程度の症例には機能的卵円孔開存を認めるとの報告もある。経食道心エコーでは心房の血流の詳細な検討が可能である。バブルを用いたコントラスト法により機能的卵円孔開存の診断精度も向上した。原因不明の脳梗塞の一部は、静脈血栓が開存した卵円孔を介して左房・左室と移動した血栓が原因と考えられた。とくに、出産時、潜水時などに比較的若いヒトに起こる脳塞栓には卵円孔開存を原因とするものが多いと想定された。 卵円孔が開存しても心負荷は増えない。将来の心不全を防ぐために卵円孔を閉鎖する必要はない。自分の患者が心房中隔欠損症の高齢出産のときには緊張する。1次予防は難しいとはわかっていても、入院時にできた静脈血栓が、腹圧増加時に欠損した心房中隔を介して重篤な脳卒中になるのが心配だからだ。卵円孔開存でも腹圧亢進時などには右・左シャントが起こりうる。1次予防は無理としても、卵円孔開存が明らかで、右・左シャントを介した脳梗塞を発症した後でも、われわれは診療に当たる必要がある。過去に抗血小板薬、抗凝固薬などの有効性が検証されたが明確な結論は得られなかった。卵円孔開存はまれではないが、原因不明の脳卒中を合併するリスクは少ないので、再発予防であってもランダム化比較試験を計画することは困難であった。今回はこの困難な領域において、複数のランダム化比較試験の結果が報告された。 Masらのフランスのグループは抗凝固療法よりも、抗血小板療法よりも、経カテーテル的卵円孔閉鎖と抗血小板薬の併用の予防効果が高いとした(Mas JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1011-1021.)。しかし、経カテーテル的卵円孔閉鎖時の合併症を考えると今後の標準治療に転換するほどのインパクトはない。難しいランダム化比較試験を完遂した努力は賞賛したい。Sondergaardらも同様のランダム化比較試験を行い、同様の結果をNEJM誌に発表した(Sondergaard L, et al. N Engl J Med. 2017;377:1033-1042.)。Saverらの結果も同様であった(Saver JL, et al. N Engl J Med. 2017;377:1022-1032.)。単独の試験の結果と比較して、複数の試験が同時に発表されれば、結果の信頼性は高い。しかし、SaverらはSt. Jude Medical社、SondergaardらはW.L. Gore & Associates社の助成研究である。自社のデバイスをうまく使える技術のある施設を選定したバイアスは否定できない。Masらの公的グラントによる研究も同様の成果を示しているので、技術の上手な術者であれば2次予防にはデバイスを考えてもよいのかもしれない。

6274.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第40回

第40回:失神の鑑別診断監修:表題翻訳プロジェクト監訳チーム 失神は日常診療で遭遇する病態の1つであるが、ほとんどの場合は神経調節性失神などの良性疾患である。しかし心原性失神など入院精査を要する場合もあり、的確な診断と必要に応じた適切な治療が求められる。国内のガイドラインとしては日本循環器学会などが合同で作成した「失神の診断・治療ガイドライン2012年改訂版」があり1)、「診断へのアプローチ」や「救急での対応」という項目で具体的対応についても記載されている。なお、米国心臓病学会(ACC)、米国心臓協会(AHA)、米国不整脈学会(HRS)が合同で、失神の評価・管理に関するガイドラインを2017年3月9日にオンライン公開しており、こちらも参考になる2)。 以下、American family physician 2017年3月1日号3)より失神とは、脳血流の低下によって招かれる突然の一過性の意識消失である。救急外来患者の1~1.5%を占めており、入院率が高く、医療費への影響も大きい。失神は神経調節性失神、心原性失神、起立性低血圧に分類される。このうち、神経調節性失神はもっとも頻度が多く、予後良好である一方、心原性失神は死亡へ繋がることもある。前失神を伴うものは失神と同様の転帰を辿るため、失神と同じように評価を行うべきである。標準化されたアプローチで失神を評価することは、入院や医療費を抑えつつ、診断精度を高めることができる。すべての失神患者に対して、詳細な病歴、身体診察、心電図を最初に行うことにより、半数を診断することができ、またリスク分類を図ることもできる。血液検査や頭部画像検査はあまり診断へ寄与しないため、臨床的に適応がある場合に限定すべきである。短期予後や入院の必要性を判断するために有用な臨床判断ツールが幾つかある。San Francisco Syncope Rule, Evaluation of Guidelines in Syncope Study, Osservatorio Epidemiologico sulla Sincope nel Lazioは妥当性確認がされているツールである。過去に失神歴がない低リスク群では、追加検査を必要としないことが多い。心血管疾患や不整脈の既往、心電図異常所見、重度の合併症をもつ高リスク群(表1)では、入院精査すべきである。原因不明の失神では、誘発試験、長時間心電図モニタリングを行うこと。神経調節性失神と起立性低血圧の多くは保存的に管理するが、重篤な場合は薬物治療を必要とすることもある。心原性失神はICD埋め込みやアブレーションを必要とすることがある。<推奨事項>前失神症状を呈する患者は、失神患者と同様に評価すること(推奨レベル:C)。うっ血性心不全や器質的心疾患、心電図異常所見、突然死の家族歴のいずれかを伴う失神では、入院精査を緊急で要する(推奨レベル:C)。失神患者では起立試験と12誘導心電図を行うこと(推奨レベル:C)。病歴と身体所見から臨床的に適応あるときのみ、血液検査と画像検査を行うこと(推奨レベル:C)。心原性失神が疑われる場合や原因が分からない失神では、植込み型ループ式心電計が診断に有用であり、コストパフォーマンスも高い(推奨レベル:C)。神経調節性失神または起立性低血圧による失神で、心疾患の既往がなく、突然死の家族歴もなく、心電図正常の場合は、追加検査をせず経過観察する(推奨レベル:C)。※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く<リスク分類(表1)>高リスク群:下記項目のいずれかに該当する場合は、入院精査を推奨病歴から不整脈による失神が疑われる場合(例:労作時失神、動悸、前駆症状を伴わない失神)併存疾患を伴う場合(例:高度貧血、電解質以上)心電図で失神を起こしうる不整脈を認める(例:2度ブロック、HR

6275.

留学体験その4【Dr. 中島の 新・徒然草】(193)

百九十三の段 留学体験その4今回は留学中に最も苦労した英語の壁について述べたいと思います。まず、聴く、読む、話す、書くという4技能のうち、1番苦労したのは聴くということでした。在米中、色々な「攻撃」に悩まされました。 会話が速すぎるスピード攻撃音が連結して別の音になるリエゾン攻撃(例)"アネン" は and then語彙の少なさを思い知らされるボキャブラリー攻撃(例)makeshift は「その場しのぎ」。ニュースにはしばしば出てくる聞いたことのない言い回しのスラング攻撃(例)10 bucks は「10ドル」のこと音そのものが聴き取れない/区別できないRL攻撃強烈な訛りに手も足も出ないアクセント攻撃(例)オーストラリア人が "ダイターバイス" と言ったら data base、ニュージーランド人が "フッシュンチュプス" と言ったら fish and chips のこと 1つだけ原因があるというより、大小の違いはあれど毎回これらが束になって攻撃してくるので歯が立たない、というのが現実でした。また、実生活での英語の聴き取りレベルにもいくつかの段階がありました。入門レベル:ラボの非アメリカ人との対面の会話。相手の語彙も限られているしスピードも速くないので、さほど苦労はしない。ラボのアメリカ人やイギリス人との対面の会話も、こちらのレベルに合わせてしゃべってくれるので何とかなる。中級レベル:電話対応。ホテルの予約で電話するのは定型文なのでさほど難しくない。しかし、ラボにかかってきた電話に対応するのは、恐怖以外の何物でもない。相手の顔が見えないし、会話の行き先の予想もつかない。上級レベル:アメリカ人同士の会話についていく。これは無茶苦茶難しい。超高速の上にスラング満載なので、何が何やらさっぱり分からない。なぜかヨーロッパやアジアの出身者がその会話に参加して一緒に盛り上がっているので、こちらの能力のなさを思い知らされる。で、どう対策していたのか? (1)しゃべっている相手の口元を見る。3割ほど聴き取り能力が上がる気がする。(2)カタカナで聴こえる音で覚える。「カロミター」と聴こえたら kilometer、「カナマジン」と聴こえたら can imagine、「コノミー」と聴こえたら economy。(3)地道な努力を繰り返す。スクリプトのある英会話やニュースを聴いて、聴き取れなかった部分を後でチェックする。そして「あっ、そうだったのか!」を繰り返す。 聴き取りさえできれば、こちらは yes, no, thank you くらいを言っておけば最低限のコミュニケーションは成立します。帰国してからも英語の勉強は続けていますが、私にとっては永遠の課題です。現在、心掛けていることを挙げておきましょう。 自分のレベルに合った教材を選んで勉強する。難しすぎるものに挑戦すると心が折れてしまう聴き取れない部分をカタカナで書きとり、スクリプトでチェックする出くわした知らない単語を覚えるスクリプトを何度も音読する1つの教材に飽きたら迷わず新しいものに移るインド英語やシンガポール英語などの聴き取りにも挑戦する「聴き取れないフレーズは有限である」と信じる 私にとってはあまり近道はないようで、これらの手順をひたすら繰り返しています。そのせいか、以前よりは少し聴き取りがマシになりました。私の経験した苦労が読者の皆様の参考になれば幸いです。最後に1句できるはず 努力次第で リスニング

6276.

lorlatinibのALK/ROS1陽性NSCLCにおける成績発表/WCLC2017

 lorlatinibは、高い選択性と強力な活性を持ち、良好な脳浸透性を示す次世代ALK/ROS1-TKIである。とくにALKキナーゼ領域の変異に対する活性が知られており、第1世代、第2世代ALK-TKI後に発現するG1202Rなどの耐性変異に対し、最も広いスペクトラムを有する。横浜で開催された第18回世界肺がん学会(WCLC)では、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのBenjamin J Solomon氏が、lorlatinibの第II相試験の主要な結果について発表した。 この第II相試験(NCT 01970865)は、6つの拡大コホート(EXP1~6)で行われている。ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)は前治療歴に応じてEXP1~5で評価され、ROS1陽性NSCLCは前治療歴にかかわらずEXP6で評価された。今回の発表は、EXP6を含む全コホートの解析である。同試験の主要評価項目は、独立評価委員会(IRC)による客観的奏効率(ORR)と頭蓋内ORR(IC ORR)。副次評価項目は、安全性と忍容性、患者報告アウトカム(PRO)などであった。 全体で275例の患者が登録され、ベースライン時に165例が脳転移を有していた。コホート別、またクリゾチニブとその他のTKIによる前治療歴ごとに解析されたORR、IC ORRは以下の通り。・ALK陽性、未治療(EXP1):ORR 90%、IC ORR 75%・ALK陽性、前治療クリゾチニブ±化学療法(EXP2+EXP3A):ORR 69%、IC ORR 68%・ALK陽性、前治療クリゾチニブ以外のTKI±化学療法(EXP3B):ORR 33%、IC ORR 42%・ALK陽性、前治療クリゾチニブ以外のTKIを2~3ライン±化学療法(EXP4+EXP5):ORR 39%、IC ORR 48%・ROS1陽性(EXP6):ORR 36%、IC ORR 56% なお、EXP2~5で19例がG1202R変異を有しており、11 例(58%)で応答が確認された。 全コホートの治療関連有害事象(AE)発現率は、95%。Grade3/4のAEは41%の患者で発現した。AEによる投与延期は30%、減量は22%、治療中止は7例(3%)、死亡例はなかった。発現頻度が高い項目は、高脂血症(81%)、高トリグリセライド血症(60%)であった。 現在、ALK陽性NSCLC の1次治療での有効性をクリゾチニブと比較する、第III相試験(NCT 03052608)が進行中である。■参考NCT 01970865(Clinical Trials.gov)NCT 03052608(Clinical Trials.gov)■関連記事第2世代ALK-TKI既治療のNSCLCにおけるlorlatinibの成績/ESMO2017 第3世代ALK阻害薬lorlatinibの成績発表/ASCO2017 次世代ALK/ROS1阻害剤lorlatinib、ALK肺がんでFDAのブレークスルー・セラピー指定

6277.

双極性障害に対するアリピプラゾールの評価~メタ解析

 双極性障害(BD)に対するアリピプラゾールによる治療については多くの研究が行われている。台湾・高雄医学大学のDian-Jeng Li氏らは、BD治療におけるアリピプラゾールの有効性および安全性プロファイルを調査するため、総合的なメタ解析を実施した。Progress in neuro-psychopharmacology & biological psychiatry誌2017年10月3日号の報告。 著者2名により2017年5月14日までのBD患者を対象としたアリピプラゾールのランダム化比較試験(RCT)を、PubMed、ScienceDirectを用いてシステマティックに検索を行った。 主な結果は以下のとおり。・適格基準を満たしたRCTは20件であった。その内訳は、ハロペリドールとの有効性比較2件(アリピプラゾール群:340例、ハロペリドール群:337例)、リチウムとの有効性比較3件(アリピプラゾール群:208例、リチウム群:212例)、プラセボとの複合比較15件(アリピプラゾール群:1,923例、プラセボ群:1,499例)であった。・アリピプラゾール群はプラセボ群と比較し、急性躁状態における急性躁症状(Hedges' g:-0.299、p=0.001)および精神症状(Hedges' g:-0.296、p<0.001)の改善が認められたが、急性うつ状態におけるうつ症状(Hedges' g:-0.127、p=0.054)の改善は認められなかった。・維持療法においてアリピプラゾールを併用した場合、プラセボ群と比較し、双極性躁症状の再発率の低さとの関連が認められた(OR:0.522、p<0.029)。・アリピプラゾール群は、プラセボや他の薬物療法群(ハロペリドール群、リチウム群)と比較し、維持期における高比重リポ蛋白(HDL)高値や、脱落率の低さと関連が認められたが、錐体外路症状に差は認められなかった。 著者らは「アリピプラゾールは、双極性障害の躁症状の治療において有効かつ安全であることが示唆された。有効性、忍容性に関して、他の薬剤と比較評価するためには、さらなる研究が必要である」としている。■関連記事アリピプラゾールは急性躁病治療のファーストラインになりうるか日本人自閉スペクトラム症に対するアリピプラゾールの長期効果はアリピプラゾール維持治療の52週RCT結果

6278.

BRCA1レベルに基づくNSCLCアジュバントは生存率を上昇させたか(SCAT)/WCLC2017

 Stage II~IIIAの非小細胞肺がん(NSCLC)切除患者では、プラチナベースの術後補助化学療法が標準治療である。しかし、他レジメンとの直接比較研究はない。一方、BRCA1は、二本鎖DNA切断を修復する作用を有し、またその発現レベルにより予後および効果予測因子ともなる。SCAT研究は、BRCA1発現レベルに基づき個別化した術後補助化学療法が上記患者の生存率を改善するかを評価したSpanish Lung Cancer Cooperative Groupの試験。横浜市で開催された第18回世界肺癌会議(WCLC)において、スペイン・Alicante University HospitalのBartomeu Massuti氏が結果を発表した。 BRCA1低発現ではシスプラチン感受性を示し、BRCA1高発現ではシスプラチン耐性、タキサン感受性を示すといわれる。この研究では、完全切除したStage II~IIIAのNSCLC患者500例を、コントロール群(108例)と試験群(392例)に、無作為に割り付けた。コントロール群には標準治療のシスプラチン+ドセタキセル治療を、試験群はBRCA1発現レベルにより異なる化学療法治療を行った。BRCA1低発現患者にはシスプラチン+ゲムシタビン、BRCA1中程度発現患者にはシスプラチン+ドセタキセル、高BRCA1高発現患者にはドセタキセル単独治療を行った。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無病生存期間、毒性などであった。 追跡期間中央値53ヵ月後のコントロール群のOSは69.3ヵ月、試験群では82.4ヵ月(HR:0.946)、5年OSは54%と56%と両群で同等であった。両群のBRCA1発現によるサブ解析の結果、BRCA1低発現群において、シスプラチン+ゲムシタビンのOSは74ヵ月、シスプラチン+ドセタキセルは40.1ヵ月と、シスプラチン+ゲムシタビンで有意に良好(HR:0.622、p=0.005)であった。一方、BRCA1高発現において、ドセタキセル単独のOSは80.2ヵ月、シスプラチン+ドセタキセルは未到達(HR:1.289、p=0.436)と、レジメンによる差は示されなかった。 結果として、BRAC1発現レベルに基づいた化学療法による生存率の上昇は示されなかったものの、BRCA1はコントロール群における唯一の予後因子であった。また、ドセタキセル単独療法は他の療法と比べ、コンプライアンスが良好で(p<0.001)、減量も少なく(p<0.01)、がんによる死亡発生率も同等であった。Massuti氏は最後に、高BRCA1患者において、プラチナを用いないタキサン単独による術後補助療法は、プラチナの短期・長期毒性を回避できる可能性があると述べた。■参考SCAT試験(Clinical Trials.gov)WCLC2017プレスリリース

6279.

緑内障進行の早期発見、OCT vs.視野検査

 緑内障の進行を早期に発見するためには、光干渉断層法(OCT)と視野検査のどちらが有用だろうか。米国・オレゴン健康科学大学のXinbo Zhang氏らは、Advanced Imaging for Glaucoma Studyに登録された患者について解析し、初期緑内障の進行を検出する感度は視野検査よりOCTが良好であることを示した。特に、乳頭周囲網膜神経線維層(NFL)厚は進行した緑内障で減少するのに対して、神経節細胞複合体層(GCC)厚は初期から進行期にわたって緑内障の進行を検出するのに役立つことも示した。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年9月27日号掲載の報告。 研究グループは、多施設共同研究であるAdvanced Imaging for Glaucoma Studyにおいて、6ヵ月ごとに5回以上受診した患者を対象に、フーリエ-ドメインOCTによるNFL厚とGCC厚、ならびに視野について分析した。 進行の定義は、OCTではNFLまたはGCCが有意に減少する傾向が見られた場合とし、視野検査ではイベントまたは傾向分析で有意に達した場合とした。 主な結果は以下のとおり。・解析対象は、緑内障疑い/極早期緑内障(GS/PPG)417眼、早期緑内障(PG)377眼であった。・GS/PPG群において、進行はOCTで38.9%に検出され、視野検査による18.7%より有意に高かった(p<0.001)。・PG群では、重症度別解析で、初期PGにおいてはOCTが視野検査より進行の検出率が有意に高かった(49.7% vs.32.0%、p=0.02)。しかし、中等度および高度PGにおいては有意差はなかった。・NFL菲薄化の割合は高度PGで劇的に減少したが、GCC菲薄化の割合は比較的安定したままで、高度PGでも進行を良好に検出し得た。・GS/PPG群とPG群の両方において進行検出の偽陽性率は、視野の傾向分析が10%を超えたが、GCCとNFLに関しては7%未満であった。

6280.

既存の抗アレルギー薬が多発性硬化症の慢性脱髄病変を回復させるかもしれない(解説:森本悟氏)-752

 多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)は若年成人に発症し、重篤な神経障害を来す中枢神経系の慢性炎症性脱髄性疾患である。何らかの機序を介した炎症により脱髄が起こり、軸索変性が進行する。急性炎症による脱髄病変には一部再髄鞘化が起こるが、再髄鞘化がうまくいかないと慢性的な脱髄病変となり、不可逆的な障害につながる。現在MSの治療は急性炎症の抑制、病態進行抑制が中心であり、慢性脱髄病変を回復させる治療はない。これまでの研究で、第一世代の抗ヒスタミン薬であるクレマスチンフマル酸(clemastine fumarate:CF)が、前駆細胞(oligodendrocyte precursor cell:OPC)からオリゴデンドロサイトへの分化促進、髄鞘膜の伸展、マイクロピラーの被覆、を介した再髄鞘化効果を有することが、疾患動物モデルにより証明されている1,2) 。 本研究は、CFがMSの慢性脱髄病変を回復させる可能性を示した初めての臨床報告である。単施設でのdouble-blind、randomized、placebo-controlled、crossover trialであり、MS患者50例(平均罹病期間約5年、平均年齢40歳)を25例ずつ2群に分け、CFまたはプラセボを3ヵ月間投与し、その後入れ替えて2ヵ月間投与した。主要評価項目には、視覚誘発電位(VEP)における遠位潜時を用いている。VEP検査は網膜から後頭葉の視覚野にかけての視覚経路における神経伝達を評価する検査であり、一般的にP100(一次視覚野由来の波形)の潜時が延長していると、その経路に脱髄をはじめとした障害があることが示唆される。本研究では、P100潜時の延長のある症例のみ登録され、その短縮効果を評価している。 結果、CF投与期間にはプラセボ投与期間に比べ、VEPのP100潜時が平均1.7ms短縮し、さらに6ms以上改善した例もプラセボ投与期間に比べてCF投与期間で有意に多かった。しかし、臨床的な神経症状の改善効果やMRIにおける病変の変化は証明できなかった。有害事象としては疲労感の増悪が報告されたのみであった。 本研究では、MRIによる視覚路病変の詳細な質的評価を行っていないこと、主要評価項目であるVEPの改善効果が小さく、臨床症状やMRI画像所見の改善が証明できなかったことから、脱髄病変が回復したと結論付けるには慎重を要する。さらに、MS患者における総合障害度の評価基準であるExpanded Disability Status Scale(EDSS[0:無症状~10:死亡])は、対象患者で2程度と障害の比較的軽度な患者が対象となっている点は、治療反応性の観点から(残存するOPCやオリゴデンドロサイト、神経軸索の数などが治療反応性の因子として推測されるが)留意すべきと思われる。また、CFは日本においても抗ヒスタミン薬として臨床的に使用されており、その用量は2mg/日である。しかしながら、本研究での投与量は10.72mg/日と約5倍量を使用しており、長期的に投与した場合の副作用や他の薬剤との相互作用が懸念される。 考慮すべき点は残るものの、in vitro/in vivoモデルにおいてしっかりとした有効性が確認された薬剤であり、慢性の脱髄病変が回復する可能性が見いだされた重要な臨床試験報告であるため、今後の研究が期待される。 余談だが、MSの亜型と言われ、視神経に病変が強調される視神経脊髄炎関連疾患(NMOSD:neuromyelitis optica spectrum disorder)という概念が存在する。これらは、病変の首座がオリゴデンドロサイトではなくアストロサイトにあるとされているが、二次的な脱髄を伴うため、NMOSDに対してのCFの応用なども興味深い点である。

検索結果 合計:10321件 表示位置:6261 - 6280