サイト内検索|page:312

検索結果 合計:10321件 表示位置:6221 - 6240

6221.

アトピー性皮膚炎児、睡眠障害の原因は?

 アトピー性皮膚炎(AD)を有する小児の60%は、睡眠が妨げられているとされる。米国・Ann & Robert H. Lurie小児病院のAnna B. Fishbein氏らは、症例対照研究において、中等症~重症アトピー性皮膚炎の小児は健常児に比べ、就寝・起床時間、睡眠時間、睡眠潜時は類似していたものの、中途覚醒が多く睡眠効率が低いことを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年10月28日号掲載の報告。 研究グループは、中等症~重症アトピー性皮膚炎小児の睡眠の特徴ならびに睡眠障害の評価法を検討する目的で、6~17歳の中等症~重症アトピー性皮膚炎患児19例および年齢と性別をマッチさせた健常対照児19例を比較した。参加者は腕時計型のアクチグラフを装着し、睡眠および疾患特異的質問票に記入した。 主な結果は以下のとおり。・AD患児は、中途覚醒(WASO)時間が103±55分であったのに対して、対照児は50±27分であった。・AD患児は対照児より、睡眠時体動、日中の眠気、夜間の再入眠困難および教師の報告による日中の眠気の頻度が高かった。・重症度は、WASOとよく相関した。総SCORADスコア:r=0.61(p<0.01)、客観的SCORADスコア:r=0.58(p=0.01)、湿疹面積・重症度指数(EASI):r=0.68(p<0.01)。・小児皮膚疾患のQOL評価尺度はWASOと相関した(r=0.52、p=0.03)が、自己報告による痒みの重症度とは相関しなかった(r=0.28、p=0.30)。

6222.

化学療法制吐薬としてのオランザピンの本邦第II相試験/IJCO

 近年、がん化学療法に対する制吐薬としてのオランザピンの研究結果が報告されている。本邦においても、高度催吐性化学療法に対する、オランザピンの多施設無作為化二重盲検第II相用量設定試験が行われ、国立がん研究センター中央病院の矢内 貴子氏らがInternational Journal of Clinical Oncology誌に結果を報告した。 対象は、固形がんでシスプラチン50mg/m2以上の高度催吐性化学療法を受けている患者。登録患者は、無作為に標準的制吐療法(アプレピタント、パロノセトロン、デキサメタゾン)+オランザピン5mg/日、または標準的制吐療法+オランザピン10mg/日(両群ともオランザピンは1日目~4日目投与)に、無作為に割り付けられた。主要評価項目は遅発性嘔吐(シスプラチン投与後20~12時間)に対する完全奏効(嘔気なしか救済治療なし)率。 主な結果は以下のとおり。・153例の患者が5mg(n=77)と10mg(n=76)に無作為に割り付けられた。・遅発相における完全奏効率は、オランザピン10mg群では77.6%(80%CI:70.3~83.8、p=0.01)、5mg群では85.7%(80%CI:79.2~90.7、p<0.01)であった。・頻度の高い有害事象は眠気で、10mg群では53.3%、5mg群では45.5%の発現率であった。 オランザピン10mg、5mg群とも遅発性嘔吐に対して有意な改善を示したが、完全奏効率と眠気の少なさからオランザピン5mgが第III相以降の推奨用量となった。■関連記事高度催吐性化療の制吐薬としてオランザピン/NEJM

6223.

クリゾチニブ抵抗性ALK肺がんにおけるbrigatinibの成績:ALTA/WCLC2017

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)では、ほとんどの患者が耐性を獲得し進行する。クリゾチニブ治療後における第2世代ALK-TKI治療のPFSも1年に満たない。brigatinibはALK耐性変異に幅広い活性を示すべくデザインされた次世代のALK-TKIである。第18回世界肺癌学会(WCLC)では、クリゾチニブ耐性進行ALK肺がんにおけるbrigatinibの第II相ALTA試験の1.5年の追跡結果について、韓国・Samsung Medical CenterのMyung-Ju Ahn氏が発表した。 ALTA試験は無作為オープンラベル用量漸増試験。クリゾチニブで進行した局所進行または転移ALK陽性NSCLCをbrigatinib 90mg/日群(n=112)とbrigatinib180㎎/日群(n=110)に無作為に割り付け、進行するか許容できない毒性が現れるまで治療継続された。主要評価項目は治験担当医の評価による奏効率(ORR)。副次評価項目は独立放射線審査委員会(IRC)によるORR、IRCによるCNS奏効、奏効期間(DOR)、全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)安全性、忍容性など。 患者背景は両群で同様であった。患者の平均年齢は54歳、女性57%、白人67%(アジア人31%)、喫煙歴は非喫煙・不明が61%、ベースライン時の脳転移は69%に認められた。データカットオフ時、90mg群の32%、180mg群の41%が治療継続中であり、追跡期間中央値は、90mg群16.8ヵ月、180mg群18.6ヵ月であった。 brigatinibの治験担当医評価のORRは、90㎎群で46%、180㎎群で55%であった。IRC評価のORRは90㎎群で51%、180㎎群で55%であった。DORは90㎎群で12ヵ月、180㎎群で13.8ヵ月、IRCによるDORは90㎎群13.8ヵ月、180㎎群14.8ヵ月であった。治験担当医評価のPFSは90㎎群で9.2ヵ月、180㎎群15.6ヵ月であった(HR:0.64)。OSは90㎎群で未到達、180㎎群では27.6ヵ月という結果だが、生存曲線は早期から180mg群が上回っていた(HR:0.67)。 頭蓋内ORRは90㎎群(n=26)で50%、180㎎群(n=18)で67%であった。また、頭蓋内PFSは90mg群で16.6ヵ月、180㎎群では未到達であった。 治療関連有害事象(TRAE)は180mgで発現が多い傾向にあった。頻度の高いAEは、下痢、悪心・嘔吐、疲労感、高血圧であったが、ほとんどはGrade1~2であった。投与中止は90mgで4例、180mg群で11例であった。 brigatinibは、クリゾチニブ耐性例に対し、継続して良好な効果と忍容性の高さを示した。180mg群では55%のORRと1年を超える(15ヵ月)PFSを示し、さらに頭蓋内病変に対して67%のORRを示した。■参考ALTA試験(Clinical Trials.gov)

6224.

急性重症出血、トラネキサム酸投与は3時間以内に/Lancet

 外傷性/分娩後出血死の多くは、出血が起きてから短時間で死に至っており、トラネキサム酸による抗線溶療法の開始がわずかでも遅れると、そのベネフィットは減少することを、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngele Gayet-Ageron氏ら研究グループが、被験者4万138例のデータを包含したメタ解析の結果、明らかにした。結果を踏まえて著者は、「重症出血患者は、ただちに治療が開始されなければならない」と提言するとともに、「さらなる研究で、トラネキサム酸の作用機序の理解を深める必要がある」と述べている。抗線溶療法は、外傷性/分娩後出血死を減らすことが知られている。研究グループは、治療の遅れが抗線溶薬の効果に及ぼす影響を調べる検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年11月7日号掲載の報告。治療ベネフィットについてメタ解析で評価 研究グループは、急性重症出血患者への抗線溶療法を評価した、1,000例以上参加の無作為化試験における被験者個人レベルのデータを用いてメタ解析を行った。MEDLINE、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Web of Science、PubMed、Popline、WHO International Clinical Trials Registry Platformの検索から、1946年1月1日~2017年4月7日に行われた試験を特定した。 治療ベネフィットの主要尺度は、非出血死。治療の遅れが治療効果に及ぼす影響を調べるため、ロジスティック回帰モデルを用いて評価した。また、感度解析で測定誤差(誤分類)の影響を調べた。急性重症出血が始まって3時間で治療ベネフィットは消失 検索により、急性重症出血患者に対するトラネキサム酸投与を評価した2つの無作為化試験(外傷性出血患者対象の「CRASH-2試験」、分娩後出血患者対象の「WOMAN試験」)の被験者計4万138例のデータ(各試験2万127例、2万11例)を入手し解析を行った。 全体で死亡は3,558例、そのうち1,408例(40%)が出血死であった。 出血死は、発症後12時間以内の死亡が最も多かった(884/1,408例[63%])。分娩後出血死は、出産後2~3時間がピークであった。 全体で、トラネキサム酸投与が出血後の生存を有意に増大したことが確認された(オッズ比[OR]:1.20、95%信頼区間[CI]:1.08~1.33、p=0.001)。出血部位別による不均一性はみられなかった(交互作用p=0.7243)。 治療の遅れは治療ベネフィットを減少することが(p<0.0001)、一方で、即時治療は生存率を70%超増と有意に改善することが認められた(OR:1.72、95%CI:1.42~2.10、p<0.0001)。その後3時間まで、治療開始が15分遅れるごとに10%ずつ生存ベネフィットは減少し、3時間以降はベネフィットを確認できなかった。 トラネキサム酸投与に伴う血管閉塞性イベントの増大はみられず、出血部位別による不均一性はみられなかった(p=0.5956)。また、トラネキサム酸投与に伴う血管閉塞性イベントへの、治療の遅れの影響は認められなかった。

6226.

日本人の飲酒量とインスリン分泌不全/抵抗性の発症率が相関

 日本人において、飲酒量がインスリン分泌不全およびインスリン抵抗性の発症率と相関することが、佐久研究における帝京大学の辰巳友佳子氏らの検討により示された。Diabetes research and clinical practiceオンライン版2017年10月27日号に掲載。 本研究は5年間のコホート研究で、佐久中央病院で2008年4月~2009年3月に75gOGTTを含む健康診断を受けた、2型糖尿病またはインスリン分泌不全またはインスリン抵抗性ではない30~74歳の日本人2,100人が参加した。参加者を週当たりの飲酒量によって、非飲酒者(0g)、軽度飲酒者(男性:1~139g、女性:1~69g)、中程度飲酒者(男性:140~274g、女性:70~139g)、多量飲酒者(男性:275g以上、女性:140g以上)に分けた。2014年3月末までのフォローアップ健康診断時にOGTTにより見つかったインスリン分泌不全(insulinogenic index:51.7以下)およびインスリン抵抗性(HOMA-IR:2.5以下)の発症率について、非飲酒者に対する軽度~多量飲酒者でのハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)を多変量調整Cox比例ハザードモデルで推計した。 *アルコール量20gの目安:ビール(5%)500mL、ワイン(14%)180mL 主な結果は以下のとおり。・インスリン分泌不全は708例、インスリン抵抗性は191例であった。・インスリン分泌不全のHR(95%CI)は、軽度、中程度、多量飲酒者の順に、1.16(0.96~1.40)、1.35(1.07~1.70)、1.64(1.24~2.16)であった(傾向のp<0.001のP)。・インスリン抵抗性のHR(95%CI)は、順に1.22(0.84~1.76)、1.42(0.91~2.22)、1.59(0.96~2.65)であった(傾向のp=0.044)。

6227.

進行ROS1肺がんの脳転移に対するクリゾチニブの有効性/WCLC2017

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1%にみられるROS1融合遺伝子陽性肺がんではとくに、脳転移が多くみられる。ROS1肺がんではクリゾチニブが治療適応となるが、脳転移への効果は明らかになっていない。ROS1肺がんにおける脳転移の状況と共に、ROS1肺がん脳転移に対するクリゾチニブの効果を評価した後ろ向き試験について、中国・Shanghai Lung Cancer CenterのShun Lu氏が発表した。 2014年4月~2016年10月の53例のROS1患者のうち13例(24.5%)がクリゾチニブ投与前に脳転移があった。27例がPDとなったが、そのうち12例(44.4%)に脳転移が発症した。 脳転移のある患者の無増悪生存期間(PFS)は11.0ヵ月、脳転移のない患者では20.4ヵ月であった(p=0.03)。全生存期間(OS)は、脳転移のある患者では16.5ヵ月、脳転移のない患者では未達成であった(p=0.27)。 ベースライン時に脳転移のあった患者全体の脳内ORRは84.6%、脳転移の前治療を行った患者では100%、行わなかった患者では71.4%であった。脳内PFSは、脳転移の前治療を行った患者では12.5ヵ月、行わなかった患者では11.0ヵ月で、脳転移の前治療の有無とは関連がなかった。 クリゾチニブ投与前の脳転移の有無は、クリゾチニブ治療後のPFSおよびOSに大きな影響を与えた。ROS1肺がんの脳転移に対しクリゾチニブは臨床ベネフィットを与えた。

6228.

アレクチニブ耐性の日本人進行NSCLCへのセリチニブの有効性は(ASCEND-9)/日本肺癌学会

 ALK遺伝子転座陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する一次治療として、アレクチニブが本邦で推奨されているが、多くの患者で耐性獲得とともに、再び進行する。第58回日本肺癌学会学術集会で、国立がん研究センター中央病院の堀之内 秀仁氏が、アレクチニブ治療歴のあるALK陽性NSCLC患者における第2世代ALK-TKIセリチニブの第II相非盲検単群試験、ASCEND-9の結果について発表した。 対象は、アレクチニブ治療歴(±クリゾチニブおよび/または1レジメンの化学療法歴)があり、全身状態が良好(WHO PS 0~1)なALK陽性の局所進行・転移性NSCLC患者で、日本国内の9施設から20例が組み入れられた。28日間を1サイクルとして、セリチニブ(750mg/日)が、増悪または許容できない有害事象が発現するまで投与された。主要評価項目は、RECIST v1.1による奏効率(ORR)で、副次評価項目は、疾患制御率(DCR)、奏効までの期間(TTR)、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などであった。 患者背景については、被験者の多くがStageIV (19例) で、StageIIIBが1例であった。12例で脳転移がみられた。前治療歴については、4例がクリゾチニブによる治療を受けており、14例が2レジメン以上の治療を受けていた。また、アレクチニブで完全奏効(CR)が得られていたのが3例、部分奏効(PR)が得られていたのが14例であった。 試験の結果、5例の患者で奏功が確認され(CRが1例、PRが4例)、ORRは25%(95%信頼区間[CI]:8.7~49.1)であった。DCRは70%(95%CI:45.7~88.1)、DORおよびTTRの中央値はそれぞれ6.3ヵ月(95%CI:3.5~9.2)、1.8ヵ月(1.8~2.0)。PFS中央値は、3.7ヵ月(95%CI:1.9~5.3)だった。 有害事象(AE)については、すべての患者でGrade1以上のAEが発現した。重篤な有害事象(SAE)は10例(50%)で発現した。AE発現のために投薬を中止したのが3例(15%;貧血、急性腎障害、および胸水)で、投薬中断が必要となったのは18例(90%;ALT増加、下痢、血中クレアチニン上昇など)であった。多くみられたAEは下痢(17 例[85%])、悪心(16例 [80%])および嘔吐(13 例[65%])であった。■参考NCT 02450903(Clinical Trials.gov)■関連記事セリチニブ、ALK陽性肺がん1次治療に国内適応拡大ALK阻害剤のコンパニオン診断薬発売/ロシュ・ダイアグノスティックス

6229.

抗PS抗体bavituximabは免疫チェックポイント阻害薬の活性を増強するか:SUNRISE試験サブグループの結果/WCLC2017

 phosphatidylserin(PS)は、がん微小環境にある細胞の表面に広範に発現し、腫瘍特異的T細胞の誘導を抑制し、高い免疫抑制作用を発現する。bavituximabは、PSを標的とするキメラIgG1モノクローナル抗体であり、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞を活性化し、免疫寛容を抑制して、抗腫瘍効果を発揮することが期待されている SUNRISE試験は、既治療の進行非扁平上皮肺がんの治療において、ドセタキセル・bavituximab併用(D+B群)とドセタキセル単独(D+P群)を比較した第III相試験である。最近発表された主要評価項目のITT解析による全生存期間(OS)では、D+B群、D+P群とも差がみられなかった(HR:1.06)。ほとんどのサブグループ解析で同等であったが、唯一免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の後治療を受けたグループのみ差がついていた。そこでこの集団のデータを収集し、分析した結果を、横浜で開催された第18回世界肺癌学会(WCLC)において、オーストラリア・Sydney Cancer CenterのMichael Boyer氏が発表した。 SUNRISE試験597例の無作為化患者のうち93例(16%)がICIの後治療を受けていた。ベースライン特性は、治療群間でバランスが取れ、ITT集団と一致した。無作為化からのOSは、D+B群(n=47)では未到達(15.2~NA)、D+P群(n=46)では12.6ヵ月(10.4~17.8)であった(HR:0.46、95%CI:0.26~0.81、p=0.006)。ICI投与開始時からのOSは、D+B群では未到達(10.2~NA)、D+P群では6.2ヵ月(3.9~8.7)であり(HR:0.42、95%CI:0.23~0.74、p=0.002)、いずれもD+B群で有意に優れていた。 限られたサブグループ分析であるが、ドセタキセル・bavituximab併用療法後にICIで治療された患者ではOSの改善が観察された。bavituximabは免疫関連の毒性と関連しないことから、ICIとの有益な併用薬となる可能性があると、Boyer氏は述べた。■参考SUNRISE試験(Clinical Trials.gov)

6230.

アトピー性脊髄炎〔AM:atopic myelitis〕

1 疾患概要■ 概念・定義中枢神経系が自己免疫機序により障害されることは、よく知られている。中でも最も頻度の高い多発性硬化症は、中枢神経髄鞘抗原を標的とした代表的な自己免疫疾患と考えられている。一方、外界に対して固く閉ざされている中枢神経系が、アレルギー機転により障害されるとは従来考えられていなかった。しかし、1997年にアトピー性皮膚炎と高IgE血症を持つ成人で、四肢の異常感覚(じんじん感)を主徴とする頸髄炎症例がアトピー性脊髄炎(atopic myelitis:AM)として報告され1)、アトピー性疾患と脊髄炎との関連性が初めて指摘された。2000年に第1回全国臨床疫学調査2)、2006年には第2回3)が行われ、国内に本疾患が広く存在することが明らかとなった。その後、海外からも症例が報告されている。2012年には磯部ら4)が感度・特異度の高い診断基準を公表し(表)、わが国では2015年7月1日より「難病の患者に対する医療等に関する法律」に基づき「指定難病」に選定されている。画像を拡大する■ 疫学平均発症年齢は34~36歳で、男女比1:0.65~0.76と男性にやや多い。先行するアトピー性疾患は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息の順で多く、アトピー性疾患の増悪後に発症する傾向にあった。発症様式は急性、亜急性、慢性のものが約3割ずつみられ、症状の経過は、単相性のものも3~4割でみられるものの、多くは、動揺性、緩徐に進行し、長い経過をとる。■ 病因図1のようにAMの病理組織学的検討では、脊髄病巣は、その他のアトピー性疾患と同様に好酸球性炎症であり、アレルギー性の機序が主体であると考えられる。さまざまな程度の好酸球浸潤を伴う、小静脈、毛細血管周囲、脊髄実質の炎症性病巣を呈する(図1A)5)。髄鞘の脱落、軸索の破壊があり、一部にspheroidを認める(図1B)5)。好酸球浸潤が目立たない症例においても、eosinophil cationic protein(ECP)の沈着を認める(図1C)6)。浸潤細胞の免疫染色では、病変部では主にCD8陽性T細胞が浸潤していたが(図1D)6)、血管周囲ではCD4陽性T細胞やB細胞の浸潤もみられる。さらに、脊髄後角を中心にミクログリアならびにアストログリアの活性化が認められ(図1E、F)7)、アストログリアではエンドセリンB受容体(endothelin receptor type B:EDNRB)の発現亢進を確認している(図1G、H)7)。図1 アトピー性脊髄炎の病理組織所見画像を拡大する■ 臨床症状初発症状は、約7割が四肢遠位部の異常感覚(じんじん感)、約2割が筋力低下である。経過中に8割以上でアロディニアや神経障害性疼痛を認める。そのほか、8割で腱反射の亢進、2~3割で病的反射を生じ、排尿障害も約2割に生じる。何らかの筋力低下を来した症例は6割であったが、その約半数は軽度の筋力低下にとどまった。最重症時のKurtzkeのExpanded Disability Status Scale(EDSS)スコアは平均3.4点であった。■ 予後第2回の全国臨床疫学調査では、最重症時のEDSSスコアが高いといずれかの免疫治療が行われ、治療を行わなかった群と同等まで臨床症状は改善し、平均6.6年間の経過観察では、症例全体で平均EDSS 2.3点の障害が残存していた。全体的には大きな障害を残しにくいものの、異常感覚が長く持続し、患者のQOLを低下させることが特徴といえる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 検査所見末梢血所見としては、高IgE血症が8~9割にあり、ヤケヒョウヒダニやコナヒョウヒダニに対する抗原特異的IgEを85%以上の症例で有し、約6割で末梢血好酸球数が増加していた。前述のAMの病理組織において発現が亢進していたEDNRBのリガンドであるエンドセリン1(endothelin 1:ET1)は、AM患者の血清で健常者と比較し有意に上昇していた7)。髄液一般検査では、軽度(50個/μL以下)の細胞増加を約1/4の症例で認め、髄液における好酸球の出現は10%未満とされる。蛋白は軽度(100mg/dL以下)の増加を約2~3割の症例で認める程度で、大きな異常所見はみられないことが多い。髄液特殊検査では、IL-9とCCL11(eotaxin-1)は有意に増加していた。末梢神経伝導検査において、九州大学病院症例では約4割で潜在的な末梢神経病変が合併し、第2回の全国調査では、検査実施症例の25%で下肢感覚神経を主体に異常を認めていた3)。また、体性感覚誘発電位を用いた検討では、上肢で33.3%、下肢では18.5%で末梢神経障害の合併を認めている8)。図2のように脊髄のMRI所見では、60%で病変を認め、その3/4が頸髄で、とくに後索寄りに多い(図2A)。また、Gd増強効果も半数以上でみられる。この病巣は、ほぼ同じ大きさで長く続くことが特徴である(図2B)。画像を拡大する■ 診断・鑑別診断脊髄炎であること、既知の基礎疾患がないこと、アレルギー素因があることを、それぞれを証明することが必要である。先に磯部ら6)による診断基準を表で示した。この基準を脊髄初発多発性硬化症との鑑別に適用した場合、感度93.3%、特異度93.3%、陽性的中率は82.4%、陰性的中率は97.7%であった。鑑別として、寄生虫性脊髄炎、多発性硬化症、膠原病、HTLV1関連脊髄症、サルコイドーシス、視神経脊髄炎、頸椎症性脊髄症、脊髄腫瘍、脊髄血管奇形を除外することが必要である。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)第2回の全国臨床疫学調査の結果では、全体の約60%でステロイド治療が行われ、約80%で有効性を認めている。血漿交換療法が選択されたのは全体の約25%で、約80%で有効であった。AMの治療においてほとんどの症例はパルス療法を含む、ステロイド治療により効果がみられるが、ステロイド治療が無効の場合には、血漿交換が有効な治療の選択肢となりうる。再発、再燃の予防については、アトピー性疾患が先行して発症、再燃することが多いことから、基礎となるアトピー性疾患の沈静化の持続が重要と推測される。4 今後の展望当教室ではAMの病態解明を目的とし、アトピー性疾患モデルマウスにおける神経学的徴候の評価と中枢神経の病理学的な解析を行い、その成果は2016年に北米神経科学学会の学会誌“The Journal of Neuroscience”に掲載された7)。モデル動物により明らかとなった知見として、(1)アトピー性疾患モデルマウスでは足底触刺激に対しアロディニアを認める、(2)脊髄後角ではミクログリア、アストログリア、神経細胞が活性化している、(3)ミクログリアとアストログリアではEDNRBの発現が亢進し、EDNRB拮抗薬の前投与により脊髄グリア炎症を抑制すると、神経細胞の活性化が抑えられ、アロディニアが有意に減少したというもので、AMに伴う神経障害性疼痛に脊髄グリア炎症ならびにET1/EDNRB経路が大きく関わっていることを見出している。5 主たる診療科神経内科6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター アトピー性脊髄炎(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報アトピー性脊髄炎患者会 StepS(AM患者と家族向けの情報)1)Kira J, et al. J Neurol Sci. 1997;148:199-203.2)Osoegawa M, et al. J Neurol Sci. 2003;209:5-11.3)Isobe N, et al. Neurology. 2009;73:790-797.4)Isobe N, et al. J Neurol Sci. 2012;316:30-35.5)Kikuchi H, et al. J Neurol Sci. 2001;183:73-78.6)Osoegawa M, et al. Acta Neuropathol. 2003;105:289-295.7)Yamasaki R, et al. J Neurosci. 2016;36:11929-11945.8)Kanamori Y, et al. Clin Exp Neuroimmunol. 2013;4:29-35.公開履歴初回2017年11月14日

6231.

ペストに気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。今回はペストについてご紹介したいと思います。えっ? 前回は「次はバベシア症だ」と言ってたじゃないかですって? いやいや、今はバベシア症についてお話している場合じゃないんです! そもそもバベシア症の話なんて、誰が聞きたいんですかッ!?(じゃあそもそも予定すんなよって話ですが)人類とペストの歴史今、ペストがチャバイことになっています。アフリカ大陸の右下にあるマダガスカルでペストが、アウトブレイクしているのですッ! 我々は早急にペストに備えなければなりませんッ! こんなに原稿が遅れている場合ではないッ!さて、皆さんはペストについて、どれくらいご存知でしょうか。まず、ペストは別名「黒死病」ってご存知ですか? ヤバくないですか、「黒」・「死」・「病」ですよ。何か「邪王炎殺黒龍波」みたいな厨二病っぽい響きがありますね。というか、ペストは実際に超ヤバイ感染症なのですッ!人類とペストの歴史は古く、ヨーロッパでは西暦542~543年にかけて東ローマ帝国で流行したそうです。さらにさかのぼれば、2,800~5,000年前のアジアとヨーロッパのヒトの歯の化石から、ペストのDNAが検出されたという報告もあります1)。人間とペストとの戦いは少なくとも5,000年以上は続いているのですッ! 最大の流行は14世紀で、アジアから始まった流行はヨーロッパまで波及し、何とこのとき世界の人口の3割がペストで亡くなったと言われています。世界人口の3割…ペスト、恐るべしです。フランスのルーブル美術館にある『ジャファのペスト患者を訪れるナポレオン、1799年3月11日』は、その名の通り1799年にペスト患者を見舞うナポレオンの様子を描いた絵ですが、中央の患者は腺ペストの患者で、腋窩リンパ節が腫れているのが分かります。ナポレオンは、じかに触ろうとしていますね。腺ペストは、ノミに刺されることによって感染します。また、腺ペストの患者の体液に曝露すると、ヒト-ヒト感染が成立しますし、肺ペストの感染者やげっ歯類から飛沫感染によっても感染します。実際にこの時代、17世紀の医師はペスト患者を診察するときは図1のような衣装を着ていたそうです。いわゆる当時の個人用防護具(personal protective equipment:PPE)ですね。画像を拡大するそんなわけで、有史以来人類はペストと戦ってきたわけですが、日本も例外ではありません。1896年以降、ペスト患者が日本でも報告されています。『明治の避病院-駒込病院医局日誌抄』(磯貝元 編)という本には、当時の駒込病院の医師であった横田 利三郎氏が、「ペスト患者のリンパ節を切開し、血液が顔にかかったことで自身もペストに罹患し、亡くなった」と書かれています。このように日本でもペストはかつて被害をもたらした感染症なのです。と、ペストと人類の歴史を語ってきましたが、何だかこんな風に説明するとペストは過去の感染症のように思われるかもしれませんが、そうではありませんッ!ペストは今も局所的に流行しているのですッ!現在進行形のペストの流行図2は、世界保健機関が発表したペストの流行地域(2016年3月時点)を示した世界地図です。今でもペストに感染するリスクがある地域の存在が、お分かりいただけるかと思います。何とあのアメリカ合衆国でも、いまだにペスト患者が報告されているのです。とくにニューメキシコ州北部、アリゾナ州北部、コロラド州南部で症例が多く報告されています。アジアやアフリカでも流行していますね。画像を拡大するそして、この世界地図でも赤く塗られているように、マダガスカルでもペストは流行地域に指定されているのですが、今年はとくに大規模なアウトブレイクが起こっています(図3)。すでに1,800例以上のヒト感染例が報告されており、さらにチャバイことに、症例の大半が「肺ペスト」なのですッ!(図4)2)画像を拡大する画像を拡大する通常ペストは、ノミの刺咬によって起こる「腺ペスト」の病型が一般的であり、肺ペストの病型はまれだと言われています。しかし、今回のマダガスカルのアウトブレイクでは、肺ペストの症例が7割以上を占めているのです。この意味するところは、患者からのエアロゾル吸入による「ヒト-ヒト感染」が持続的に起こっているということなのですッ! マダガスカルでの死者は、すでに120例を超えているようです(致死率7%)。日本に住む我々も決して他人事ではない状況になってきています。というわけで、今回はペストの歴史と疫学について学びましたが、次回はペストに備えるために、ペストの感染経路、臨床像、そして治療について学びたいと思いますッ!1)Rasmussen S, et al. Cell.2015;163:571-582.2)Madagascar Plague Outbreak:External Situation Report #7: 31 October 2017.

6232.

せん妄と関連する薬剤は

 これまで、集中治療室(ICU)内でのせん妄に関する研究はよく行われているが、ICU外のデータは限られている。米国・Methodist Dallas Health SystemのAnthony Cahill氏らは、非クリティカルケア病棟(NCCA:non-critical care areas)におけるせん妄の発生率および関連する危険因子をプロスペクティブに評価を行った。The journal of trauma and acute care surgery誌オンライン版2017年10月16日号の報告。 IRB承認後、2015年12月~2016年2月まで都市のレベルI外傷センターにおいてプロスペクティブコホート研究を実施した。対象は、外傷外科医により指定されたNCCAに入院したすべての患者とした。退院まで12時間ごとのせん妄評価(CAM:Confusion Assessment Method)と、せん妄発生(CAM+)患者の重症度を定量化するCAM-Sを実施した。患者背景、検査値データ、入院時の薬物リストを分析した。 主な結果は以下のとおり。・対象患者148例中、CAM+患者12例(8%)、CAM-患者136例(92%)であった。・CAM+患者の平均CAM-Sは、7±3であった(平均年齢:52±20歳、男性率:45%)。・65歳以上の患者では、9例(21%)がCAM+であった。・せん妄と関連する薬剤は、albuterol(p=0.01)、アトルバスタチン(p=0.01)、デュロキセチン(p=0.04)、セルトラリン(p=0.04)、葉酸(p=0.01)、チアミン(p=0.01)、ビタミンD(p<0.001)、ハロペリドール(p=0.04)、メトプロロール(p=0.02)、バンコマイシン(p=0.02)であった。・せん妄と関連する異常な検査値は、アルブミン(p=0.03、OR:7.94、CI:1.1~63.20)、カルシウム(p=0.01、OR:4.95、CI:1.5~16.7)、ナトリウム(p=0.04、OR:3.91、CI:1.13~13.5)、ヘマトクリット(p=0.04)、平均血中ヘモグロビン濃度(p<0.05、OR:5.29、CI:1.19~23.46)であった。 著者らは「本研究では、NCCA入院患者の8%でせん妄が発生し、65歳以上の発生率は21%に上昇した。NCCA患者において同定された多くのリスク因子は、ICU患者での報告と一致しているが、これまでせん妄発生に関連していなかったリスク因子をCAM+患者が有していた。せん妄に対するNCCA患者のスクリーニングが考慮されるべきである」としている。■関連記事せん妄に対する非定型 vs.定型 vs.プラセボうつ病の薬物治療、死亡リスクの高い薬剤はたった2つの質問で、うつ病スクリーニングが可能

6233.

日本の喫煙者のがんリスク、禁煙何年で喫煙歴ゼロと同じに?

 日本人のがん罹患リスクは、男性で21年以上、女性で11年以上禁煙すれば、喫煙歴のない人と同レベルまで低下することが、東京大学の齋藤 英子氏らによる研究で明らかになった。男性では、20 pack-year※以上のヘビースモーカーにおいても同様の結果であるという。早いうちに禁煙することが、がん予防への近道であると考えられる。Cancer epidemiology誌オンライン版2017年11月2日号の報告。20 pack-year以上の男性でも21年間以上禁煙すると全がん罹患リスクが低下 東アジアは世界有数のタバコ普及地域であるが、喫煙や禁煙ががんに及ぼす影響についての前向き研究はほとんどない。そこで著者らは、日本における8つの前向きコホート研究(参加者32,000人以上)のデータを用いて、全がんおよび喫煙関連がん罹患リスクに対する禁煙の影響を評価した。 がん罹患リスクに対する禁煙の影響を評価した主な結果は以下のとおり。・潜在的な交絡因子の調整後、ベースライン以前に21年間以上禁煙していた男性の全がん罹患リスクは、喫煙歴のない人と同じレベルまで低下することが示された(ハザード比:1.01、95%CI:0.91~1.11)。・20 pack-year以上のヘビースモーカーであった男性でも、21年間以上禁煙した場合、全がん罹患リスクが低下することが示された(ハザード比:1.06、95%CI: 0.92~1.23)。・ベースライン以前に11年間以上禁煙していた女性の全がん罹患リスクは、喫煙歴のない人と変わらなかった(ハザード比:0.96、95%CI:0.74~1.23)※pack-year:生涯喫煙量の単位。1日に何箱のタバコを何年間吸い続けたかをかけ合わせて計算する。1 pack-yearは、1日1箱を1年、または2箱を半年吸った量に相当。

6234.

NSCLC1次治療における血漿サンプルEGFR変異検査の評価:FLAURA/WCLC2017

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)に対する1次治療の第III試験FLAURAにおいて、オシメルチニブは標準EGFR-TKI(ゲフィチニブ、エルロチニブ)と比べ、有意に無増悪生存期間(PFS)を延長した。 これらの患者はベースライン時に組織検査によりEGFR変異(Ex19del/L858R)が確認されている。一方、血漿ctDNA検査は低リスクであり、組織生検に代わるEGFR変異の評価手段となる可能性がある。横浜で開催された第18回世界肺癌学会(WCLC)では、FLAURA試験対象患者における、組織検査と血漿ctDNA検査との一致率と、血漿ctDNA検査でのEGFR変異陽性患者におけるPFSの成績を、米国・H.Lee Moffitt Cancer Center & Research InstituteのJhanelle E. Gray氏が発表した。 フル解析セット(施設評価・中央評価によるEGFR変異陽性患者)556例のうち、血漿サンプルでEGFR変異陽性となった患者は65%、変異陰性となった患者は22%、評価不能は13%であった。組織検査との一致率は、exon19では87%、L858Rでは88%であり、組織検査と血漿サンプル検査との高い相関が認められた。 フル解析セットにおけるPFSは、オシメルチニブ群18.9ヵ月、標準EGFR-TKI群10.2ヵ月(HR:0.46、95%CI:0.37~0.57、p<0.0001)であったのに対し、血漿サンプルでEGFR変異陽性の患者(組織陽性・血漿陽性)のPFSはオシメルチニブ群15.2ヵ月、標準EGFR-TKI群9.7ヵ月と、フル解析同様、オシメルチニブ群で有意に良好であった(HR:0.44、95%CI:0.34~0.57、p<0.0001)。一方、血漿サンプルでEGFR変異陰性の患者(組織陽性・血漿陰性)のPFSはオシメルチニブ群23.5ヵ月、標準EGFR-TKI群15.0ヵ月であり(HR:0.48、95%CI:0.28~0.80、p<0.0047)、PFSは両群で延長した。 これらの結果からGray氏は、オシメルチニブの1次治療において、血漿ctDNAによるEGFR変異検査の臨床的有用性を支持するものであると述べた。■参考FLAURA試験(Clinical Trials.gov)■関連記事HR0.46、オシメルチニブが1次治療で標準治療を上回る(FLAURA)/ESMO2017

6235.

ビタミンDはがんを予防するのか?/BMJ

 ビタミンDの血中濃度とがんリスクに因果関係は存在するのか。ギリシャ・University of IoanninaのVasiliki I Dimitrakopoulou氏らは、同関連を明らかにするため、大規模遺伝子疫学ネットワークのデータを用いたメンデルランダム化試験にて検討を行った。その結果、評価を行った7種のがんいずれについても、線形の因果関係を示すエビデンスはほとんどなかったという。ただし、臨床的に意味のある効果の関連を、完全に否定はできなかった。BMJ誌2017年10月31日号掲載の報告。大規模遺伝子疫学ネットワークを用いて、7種のがんについて関連を評価 検討は、がんにおける遺伝的関連とメカニズム(Genetic Associations and Mechanisms in Oncology:GAME-ON)、大腸がんの遺伝的研究・疫学コンソーシアム(Genetic and Epidemiology of Colorectal Cancer Consortium:GECCO)、前立腺がんのゲノム変異に関する研究グループ(Prostate Cancer Association Group to Investigate Cancer Associated Alterations in the Genome:PRACTICAL)とMR-Baseプラットホームを通じて、がん患者7万563例とその対照8万4,418例のデータを入手し評価を行った。 がん患者の内訳は、前立腺がん2万2,898例、乳がん1万5,748例、肺がん1万2,537例、大腸がん1万1,488例、卵巣がん4,369例、膵臓がん1,896例、神経芽細胞腫1,627例であった。 ビタミンDと関連する4つの一塩基遺伝子多型(rs2282679、rs10741657、rs12785878、rs6013897)を用いて、血中25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)のマルチ多型スコアを定義し評価した。 主要アウトカムは、大腸がん、乳がん、前立腺がん、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、神経芽細胞腫の発生リスクで、逆分散法を用いて特異的多型との関連を評価した。尤度ベースアプローチでの評価も行った。副次アウトカムは、性別、解剖学的部位、ステージ、組織像によるがんサブタイプに基づく評価であった。関連を示すエビデンスはほとんどない 7種のがんおよびそのサブタイプすべてにおいて、25(OH)Dマルチ多型スコアとの関連を示すエビデンスは、ほとんどなかった。 具体的に、25(OH)D濃度を定義した遺伝子の25nmol/L上昇当たりにおけるオッズ比は、大腸がん0.92(95%信頼区間:0.76~1.10)、乳がん1.05(0.89~1.24)、前立腺がん0.89(0.77~1.02)、肺がん1.03(0.87~1.23)であった。この結果は、その他2つの解析アプローチの結果と一致していた。なお、試験の相対的効果サイズの検出力は中程度であった(たとえば、大部分の主要がんアウトカムについて、25(OH)Dの25nmol/L低下当たりのオッズ比は1.20~1.25であった)。 著者は、「これらの結果は、既報文献と合わせて、がん予防戦略として、ビタミンD不足の広範な集団スクリーニングとその後の広範にわたるビタミンDサプリメントの推奨をすべきではないとのエビデンスを提供するものであった」とまとめている。

6236.

特定の歯周病菌感染が頻脈性不整脈の進行に影響か

 頻脈性不整脈の患者は、徐脈性不整脈の患者と比較して、唾液中から特定の歯周病原菌が多く検出されることが、神奈川歯科大学の青山 典生氏らの研究により示された。BMC cardiovascular disorders誌 2017年10月17日号の報告。 頻脈性不整脈および徐脈性不整脈は、QOL低下をもたらす心調律異常である。歯周病の人は、心血管疾患のリスクが高いといわれるが、頻脈性不整脈および徐脈性不整脈との関連性についての報告はほとんどない。 著者らは、その関連性を明らかにするため、東京医科歯科大学病院を受診した頻脈性不整脈患者(n=98)と徐脈性不整脈患者(n=40)の2群を対象に、唾液中の歯周病原性細菌を調査した。 主な結果は以下のとおり。・頻脈性不整脈の患者からは、徐脈性不整脈の患者よりも、唾液中の歯周病原菌Porphyromonas gingivalisおよびPrevotella intermediaが多く検出された。・高血圧、脂質異常症をもつ患者の割合は、両群間で同等であった。

6237.

アストラゼネカ、epacadostatのIncyte社と肺がん臨床試験で連携

 AstraZeneca(本社:英国ロンドン、CEO:Pascal Soriot)と同社のグローバルバイオ医薬品研究開発部門MedImmuneは2017年10月31日、Incyte社(本社:米国デラウェア州、CEO:Herve Hoppenot)との共同臨床開発を拡大すると発表した。 本契約の一環として両社は、同時化学放射線療法(CCRT)後に病勢進行が認められなかった切除不能の局所進行(Stage III)NSCLC患者を対象とする第III相試験を実施。アストラゼネカの抗PD-L1抗体durvalumabとIncyte社のIDO1酵素阻薬epacadostatの併用とdurvalumab単剤との有効性および安全性を評価する。患者登録は、2018年上半期から開始予定。 Stage III肺がんはNSCLCの罹患数の約3分の1を占めており、2016年には上位7ヵ国において約10万5,000人が罹患したと推定される。これらの患者の70%超は切除不能である。現在の標準治療はCCRTで、その後は進行の有無について注意深い経過観察が行われる。予後は依然として不良であり、長期生存率は低率である。 epacadostatは、開発中の強力かつ選択的なIDO1酵素の経口阻害薬。すでに、切除不能または転移メラノーマ、NSCLC、肝細胞がん、頭頸部扁平上皮がん、および膀胱がん患者を対象とする単群試験により、epacadostatと免疫チェックポイント阻害剤の併用療法の概念実証(Proof-of-Concept)が示されている。これらの試験において、CTLA-4阻害薬イピリムマブもしくはPD-1阻害薬ペムブロリズマブまたはニボルマブとepacadostatの併用療法は、免疫チェックポイント阻害剤単剤に比べて奏効率を改善することが示された。■参考AstraZeneca(グローバル)メディアリリース■関連記事epacadostat・ペムブロリズマブ併用で進行性メラノーマのPFSが12ヵ月に(ECHO-202試験)/ESMO2017

6238.

dacomitinibによるEGFR変異肺がん1次治療のサブグループ解析:ARCHER 1050/WCLC2017

 ARCHER1050試験は、EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者の1次治療において第2世代EGFR-TKIのdacomitinibと第1世代TKIゲフィチニブを比較した第III相試験である。対象はStage IIIB~IVのEGFR変異陽性再発NSCLC患者452例で、主要評価項目はIRCレビューによる無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目はIRCおよび治験担当医の評価による全生存期間および客観的奏効率(ORR)である。 既報では、IRC評価のPFSは、dacomitinib群14.7ヵ月に対し、ゲフィチニブ群9.2ヵ月と、dacomitinib群で有意に延長している(p<0.0001)。横浜で開催された第18回世界肺癌学会(WCLC)では、EGFR変異サブタイプによって層別化した前向きサブグループ解析の結果を、中国・Guangdong Lung Cancer InstituteのYi-Long Wu氏が発表した。 結果、exon19delにおけるPFSはdacomitinib群16.5ヵ月(11.3~18.4)、ゲフィチニブ群9.2ヵ月(9.1~11.0)と、dacomitinib群で有意に長かった(HR:0.55、95%CI:0.41~0.75、p<0.0001)。ORRはdacomitinib群76.1%(68.0~83.1)、ゲフィチニブ群69.9%(61.4~77.6)であった(p=0.1271)。奏効期間(DOR)はdacomitinib群15.6ヵ月(13.1~19.6)、ゲフィチニブ群8.3ヵ月(7.9~10.1)と、dacomitinib群で有意に長かった(HR:0.454、95%CI:0.319~0.645)、p<0.0001)。 L858R変異におけるPFSはdacomitinib群12.3ヵ月(9.2~16.0)、ゲフィチニブ群9.8ヵ月(7.6~11.1)、とdacomitinib群で有意に長かった(HR:0.63、95%CI:0.44~0.88、p=0.0034)。ORRはdacomitinib群73.1%(62.9~81.8)、ゲフィチニブ群73.9%(63.7~82.5)であった(p=0.5487)。DORはdacomitinib群13.7ヵ月(9.2~17.4)、ゲフィチニブ群7.5ヵ月(6.5~10.2)と、dacomitinib群で有意に長かった(HR:0.403、95%CI:0.267~0.607、p<0.0001)。■参考ARCHER1050試験(Clinical Trials.gov)■関連記事dacomitinib、EGFR変異陽性肺がん1次治療の成績発表:ARCHER1050試験/ASCO2017

6239.

心原性ショックを伴う急性心筋梗塞、まずは責任病変のPCIを/NEJM

 心原性ショックを伴う多枝病変の急性心筋梗塞(AMI)患者において、同時多枝経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を実施した患者よりも、最初に責任病変のみにPCIを実施した患者のほうが、死亡または腎代替療法につながる重症腎不全の30日複合リスクが低かった。ドイツ・ライプチヒ大学病院のHolger Thiele氏らが、CULPLIT-SHOCK試験の結果を報告した。心原性ショックを伴うAMI患者では、PCIによる責任動脈の早期血行再建が予後を改善するが、心原性ショック状態の患者の多くは多枝病変を有しており、非責任動脈の狭窄に対してPCIをただちに行うかどうかについては、なお議論の的となっていた。NEJM誌オンライン版2017年10月30日号掲載の報告。AMI患者約700例を、責任病変単独PCI群と多枝PCI群に無作為化 CULPLIT-SHOCK試験(Culprit Lesion Only PCI versus Multivessel PCI in Cardiogenic Shock trial)は、欧州で行われた多施設共同無作為化非盲検試験である。対象は心原性ショックを伴う多枝病変のAMI患者706例で、責任病変のみにPCIを施行する責任病変単独PCI群(段階的に非責任病変の血行再建術も行う選択肢を伴う)と、責任病変と同時に非責任病変に対してもPCIを施行する多枝PCI群に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、無作為化後30日以内の死亡または腎代替療法を要する重症腎不全の複合で、安全性エンドポイントは、出血(BARC出血基準でタイプ2・3・5)および脳卒中などとした。intention-to-treat解析を行い、カイ2乗検定を用いて事象発生率を比較した。責任病変単独PCI群で死亡/重症腎不全リスクが17%減少 30日時点で、主要複合エンドポイントは、責任病変単独PCI群344例中158例(45.9%)、多枝PCI群341例中189例(55.4%)に認められた(相対リスク:0.83、95%信頼区間[CI]:0.71~0.96、p=0.01)。多枝PCI群に対する責任病変単独PCI群の死亡の相対リスクは0.84(95%CI:0.72~0.98、p=0.03)で、腎代替療法の相対リスクは0.71(95%CI:0.49~1.03、p=0.07)であった。 血行動態安定までの期間、カテコラミン療法のリスクとその期間、トロポニンT値、クレアチニンキナーゼ値、および出血/脳卒中の発生率に関しては、両群間で有意差は確認されなかった。 著者は研究の限界として、非盲検試験であり、最終同意を得られず評価できなかった患者がいたこと、割り付けられた治療から他の治療に変更した患者が75例いたことなどを挙げている。

6240.

クローン病のタイトコントロールは有益/Lancet

 中等症~重症の早期クローン病患者において、臨床症状とバイオマーカーの組み合わせに基づく抗腫瘍壊死因子療法の適時escalation戦略は、症状のみで治療方針を決定するよりも、臨床的および内視鏡的アウトカムを改善することが示された。米国・マウントサイナイ医科大学のJean-Frederic Colombel氏らが、22ヵ国74施設で実施した無作為化第III相試験「CALM試験」の結果を報告した。便中カルプロテクチン(FC)やC反応性蛋白(CRP)など腸炎症のバイオマーカーは、クローン病患者のモニタリングに推奨されてきたが、これらを用いた治療方針の決定がクローン病患者の予後を改善するかどうかは不明であった。Lancet誌オンライン版2017年10月31日号掲載の報告。臨床症状+バイオマーカーに基づくクローン病の治療決定の有効性を評価 CALM試験の対象は、内視鏡的活動期(クローン病内視鏡的活動指数[CDEIS]>6、1つ以上の区域でのCDEISサブスコア合計>6、ベースラインのprednisone投与量に応じたクローン病活動指数[CDAI]150~450、免疫調整薬や生物学的製剤の治療歴がない)にある18~75歳の中等症~重症クローン病患者で、タイトコントロール群または標準コントロール群に1対1の割合で無作為に割り付けられた(喫煙状況、体重および罹患期間で層別化)。割り付け時期は、prednisone導入療法8週後、または疾患活動期の場合は早期に導入とした。 両群とも治療は、未治療→アダリムマブ導入→アダリムマブ隔週→アダリムマブ毎週→アダリムマブ毎週+アザチオプリン2.5mg/kg/日の連日投与へ、段階的に増量さらに免疫調整剤との併用療法を行った。このescalation戦略は、治療失敗基準(treatment failure criteria)に基づき両群で異なった。タイトコントロール群は、便中カルプロテクチン≧250μg/g、CRP≧5mg/L、CDAI≧150、または前週のprednisone使用に基づき、標準コントロール群は、ベースライン時と比較したCDAI減少<100点/CDAI≧200、または前週のprednisone使用に基づいた。また、アダリムマブ毎週+アザチオプリン投与、もしくはアダリムマブ単独を毎週投与の患者で、治療失敗基準を満たさない場合はde-escalation(いずれもアダリムマブ投与を毎週→隔週に)が可とした。 主要エンドポイントは、無作為化後48週間の深部潰瘍を伴わない粘膜治癒(CDEIS<4)とし、intention-to-treat解析にて評価した。クローン病のタイトコントロール群で粘膜治癒率は改善、有害事象は有意差なし 2011年2月11日~2016年11月3日の期間に、244例(平均[±SD]罹患期間:標準コントロール群0.9±1.7年、タイトコントロール群1.0±2.3年)が登録され、両群に122例ずつ無作為に割り付けられた。標準コントロール群29例(24%)およびタイトコントロール群32例(26%)が、有害事象等により試験を中断した。 48週時に深部潰瘍を伴わない粘膜治癒(CDEIS<4)に達した患者の割合は、タイトコントロール群が標準コントロール群よりも有意に高かった(56例[46%]vs.37例[30%])。Cochran-Mantel-Haenszel検定法を用いた補正後リスク差は16.1%(95%信頼区間[CI]:3.9~28.3、p=0.010)であった。 治療関連有害事象は、タイトコントロール群で105例(86%)、標準コントロール群で100例(82%)に認められた。治療関連死は発生しなかった。主な有害事象は、タイトコントロール群では悪心21例(17%)、鼻咽頭炎18例(15%)、頭痛18例(15%)、標準コントロール群ではクローン病の悪化35例(29%)、関節痛19例(16%)、鼻咽頭炎18例(15%)であった。 著者は、「CALM試験は、早期クローン病患者において、臨床症状とバイオマーカーの組み合わせに基づく抗腫瘍壊死因子療法の適時escalationが、症状のみの治療方針の決定よりも、良好な臨床的および内視鏡的アウトカムに結び付くことを示した初の試験である。さらなる試験を行い、腸損傷、手術、入院、障害などの長期アウトカムへの適時escalation治療戦略の効果を評価する必要がある」とまとめている。

検索結果 合計:10321件 表示位置:6221 - 6240