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認知症リスクが高い睡眠時間は?~久山町研究

 日本人高齢者において、「睡眠時間5時間未満もしくは10時間以上」「睡眠薬の使用」が、認知症や死亡の危険因子であることが示唆された。九州大学の小原 知之氏らが久山町研究での調査結果をJournal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2018年6月6日号に報告。1日睡眠期間と認知症および死亡リスクとの関連を判定 本研究は前向きコホート研究で、対象は認知症でない60歳以上の地域在住日本人。自己申告による1日睡眠期間を、5群(5.0時間未満、5.0~6.9時間、7.0~7.9時間、8.0~9.9時間、10.0時間以上)に分類し、Cox比例ハザードモデルを用いて、1日睡眠期間と認知症および死亡リスクとの関連を判定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、294人が認知症を発症し、282人が死亡した。・認知症発症率および全死因死亡率は、1日睡眠時間が5.0~6.9時間の参加者に比べ、5.0時間未満および10.0時間以上の参加者で有意に高かった。これらの関連は、潜在的な交絡因子調整後も維持された。ハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)は以下のとおり。 睡眠時間5.0時間未満  認知症 HR:2.64、95%CI:1.38~5.05  死亡  HR:2.29、95%CI:1.15~4.56 睡眠時間10時間以上  認知症 HR:2.23、95%CI:1.42~3.49  死亡  HR:1.67、95%CI:1.07~2.60・アルツハイマー病および血管性認知症でも、同様のU字型の関連が認められた。・睡眠薬の使用が認知症や死亡リスクに及ぼす影響を調べたところ、睡眠薬を使用している参加者は、睡眠薬を使用しない1日睡眠時間5.0~6.9時間の参加者に比べ、認知症リスクが1.66倍、死亡リスクは1.83倍であった。

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扁平上皮肺がん1次治療、アテゾリズマブ+化学療法でPFS延長。高PD-L1群で顕著(IMpower131)/ASCO2018

 Stage IV扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)1次治療に対するアテゾリズマブと化学療法の併用に関する第III相試験IMpower131の結果が、米国・シカゴにて開催された米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表された。 IMpower131試験は、化学療法未治療のStage IVの扁平上皮NSCLCを対象とし、アテゾリズマブと化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセルまたはパクリタキセル)の併用と、化学療法(カルボプラチン+nab-パクリタキセル)単独の有効性および安全性を比較検討する、オープンラベル多施設共同無作為化第III相試験である。本試験には、下記の3群に1:1:1に無作為に割り付けた1,021例が登録された。・対象患者:化学療法未治療のStage IVの扁平上皮NSCLC・試験薬群 ・A群:アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセル(Atezo+CP) ・B群:アテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル(Atezo+CnP)・対照群 ・C群(対照群):カルボプラチン+nab-パクリタキセル(CnP)・主要評価項目:B群対C群の治験担当医評価によるITT集団における無増悪生存(PFS)およびITT集団における全生存期間(OS)。今回はB群対C群のPFSの発表。 主な結果は以下のとおり。・PFS中央値は、Atezo+CnP群6.3ヵ月に対し、CnP群5.6ヵ月(HR:0.71、p=0.0001)、12ヵ月PFS率はそれぞれ24.7%と12.0%であった。・PD-L1サブグループによるPFS  PD-L1高発現(TC3またはIC3)では、Atezo+CnP群10.1ヵ月に対し、CnP群5.5ヵ月であった(HR:0.44)。  PD-L1低発現(TC1/2またはIC1/2)では、それぞれ6.0ヵ月と5.6ヵ月であった(HR:0.70)。  PD-L1発現陰性(TC0かつIC0)では、それぞれ5.7ヵ月と5.6ヵ月であった(HR:0.81)。・奏効率は、Atezo+CnP群49%に対し、CnP群41%であった。・奏効期間は、Atezo+CnP群7.2ヵ月に対し、CnP群5.2ヵ月であった。・全有害事象発現率は、Atezo+CnP群99%に対し、CnP群97%。各治療法における既知の事項と同様であった。 OSベネフィットは次回の中間解析で発表される。■参考ASCO2018 AbstractIMpower131試験(Clinical Trials.gov)■関連記事アテゾリズマブと化学療法の併用、扁平上皮肺がん1次治療でPFS延長(IMpower131)アテゾリズマブ、小細胞肺がんのOS、PFS改善(IMpower133)/NEJM※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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HER2陽性固形がんに対するDS-8201aの効果/ASCO2018

 HER2標的治療は、HER2陽性の進行乳がんおよび胃がんの生存を改善したが、さらなる改善が必要とされる。DS-8201a(トラスツズマブ・deruxtecan)は、HER2受容体をターゲットとした免疫複合体(ADC)であり、幅広い腫瘍に対して活性を示す。現在、進行固形がんの拡大コホートを用いた大規模な第I相試験が行われている。 米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)では、T-DM1治療後のHER2陽性(IHC3+またはISH+)乳がん、トラスツズマブ治療後のHER2陽性(IHC3+またはIHC2+/ISH+)胃がん、HER2低発現(IHC2+/ISH-、IHC1+/ISH-)乳がん、その他のHER2陽性(IHC≧1+またはHER2増幅またはHER2変異)固形がん患者を対象に実施された、この第I相試験の中間解析結果(2018年4月18日データカットオフ)が、愛知県がんセンター 岩田 宏治氏により発表された。 HER2陽性乳がん患者111例、HER2低発現乳がん患者34例、HER2陽性胃がん患者44例、その他のHER2陽性固形がん患者51例が、DS-8201aの推奨用量である5.4または6.4 mg/kgで治療を受けた。 主な結果は以下のとおり。・患者の前治療数の中央値は、HER2陽性乳がん患者7.0、HER2陽性胃がん患者7.5、HER2低発現乳がん患者3.0、その他のHER2陽性固形がん患者3.0であった。・全体として、86.3%の患者で腫瘍縮小効果が確認され、このうち91.5%の患者が6週後の画像評価時に縮小が確認された。全奏効率(ORR)は49.3%であった。・がん種別ORRは、HER陽性乳がん54.5%、HER2低発現乳がん50.0%、HER2陽性胃がん43.2%、その他のHER2陽性固形がん38.7%であった。・病勢コントロール率は、HER陽性乳がん93.9%、HER2低発現乳がん85.3%、HER2陽性胃がん79.5%、その他のHER2陽性固形がんでは83.9%であった。・奏効期間中央値は、HER2陽性乳がんでは未到達、HER2低発現乳がんでは11.0ヵ月、HER2陽性胃がんでは7.0ヵ月、その他のHER2陽性固形がんでは12.9ヵ月であった。・有害事象(Treatment-emergent adverse events)の発現は98.8%、うちGrade3以上は50.2%であった。 DS-8201aは、高度な前治療歴のあるHER2陽性の乳がんおよび胃がん患者に対し、高い抗腫瘍活性を示し、管理可能な安全性プロファイルを示した。■参考DS-8201a第1相試験(Clinical Trials.gov)※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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バージャー病〔Buerger's disease〕

1 疾患概要■ 概念・定義動脈閉塞症の1つである。バージャー病(Buerger's disease)の呼称は、本疾患を閉塞性血栓血管炎(thromboangiitis obliterans:TAO)として初めて記述したLeo Buerger(ドイツ語読みではビュルガー)氏に由来する。四肢末梢の主として下腿以遠や前腕以遠の動脈に、分節的に炎症性の血栓閉塞を生じ、しばしば肢端に潰瘍や壊死を来す。動脈のみならず、皮下静脈にも移動性かつ再発性の血栓性静脈炎(逍遥性静脈炎/遊走性静脈炎)を生じる。発病や経過には喫煙が深く関与する。■ 疫学20~40代の喫煙者に好発し、男性患者が大半である。動脈病変が生じる頻度は、下肢のほうが上肢よりも高い。元より希少疾患であるが、先進国ではさらに減少し、わが国でも1970年代から減少の一途をたどっている。一方で、中国、インド、トルコなどでは依然として比較的多くの発症がみられる。■ 病因病因は未解明だが、喫煙は発病の強力な誘因であり、病気の進行を助長する。感受性遺伝子や免疫機序の関連を指摘した報告もある。近年では、歯周病菌感染の関与が注目されている。■ 症状初診時の症状は、足趾や手指の冷感、感覚異常、疼痛、虚血性紅潮やチアノーゼ、レイノー現象が多く、すでに潰瘍や壊死を生じている患者も少なくない。間歇性跛行や労作時痛は、初期には足底筋や手部に生じるが、患者にはあまりはっきりと自覚されないことが多く、虚血による症状とも気付かれにくい。あるいは整形外科的な疾患と判断されがちである。虚血のせいで、爪周囲のささくれや靴擦れなどささいな傷が、治りにくく易感染性で、しばしば急速に潰瘍形成や壊死へと進行する。潰瘍や壊死部には、強い疼痛を伴うことが多い。逍遥性静脈炎は、動脈病変に先行することも、後から生じることもある。皮下に索状の有痛性硬結を生じる。■ 予後喫煙が影響する。病勢は禁煙によって寛解することが多く、逆に喫煙を続ければ進行性で、肢の大切断への危険が高まる1)。肢の大切断は、患者の運動機能を低下させ、生活を著しく阻害する。通常は四肢以外の臓器が侵されることはなく、生命予後は良好とされるが、患者を生涯観察したデータは少ない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)特異的な診断マーカーがないため、臨床診断、すなわち症状および臨床所見と動脈の画像所見に基づき、他疾患を除外して診断を行う。若齢発症、喫煙歴、逍遥性静脈炎の既往は、本疾患の診断を後押しする2)。■ 臨床所見前述のような慢性虚血の症状や、逍遥性静脈炎がみられる。身体診察では、患肢の末梢部での皮膚温低下や、動脈拍動の減弱・消失をみる。下肢の虚血を確認する検査には、足関節血圧や足関節上腕血圧比(ankle brachial index:ABI)の測定がある。ただし、本疾患では足関節以遠に病変を有することが多く、ABIだけでは評価が不十分なこともありうる。したがって、手足の指尖容積脈波、足趾血圧や足趾上腕血圧比(toe brachial index:TBI)、手指血圧も測定する。皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)や経皮酸素分圧(transcutaneous oxygen tension:tcPO2)などの微小循環検査も虚血の重症度評価に役立つ。レイノー現象の再現には、冷水負荷でのサーモグラフィー検査が有用である。■ 動脈の画像所見通常、下腿以遠や前腕以遠の動脈に病変がある。病変部には、動脈硬化性の壁不整(虫食い像、石灰化沈着など)がない。閉塞は途絶状や先細り状が多く、多発的分節的閉塞を呈する。また、しばしば二次血栓による閉塞の延長を伴う。慢性閉塞であるため側副血行路が発達し、コルクの栓抜き状(コイル状)や樹根状、ブリッジ状を呈する3)。ただし、これらは動脈硬化のない慢性動脈閉塞に共通の非特異的な所見であり、膠原病などでも類似の所見がみられる。膠原病では側副血行路の発達が乏しいとされるが、画像だけから両疾患を鑑別するのは難しい。■ 鑑別すべき疾患とくに閉塞性動脈硬化症との鑑別が重要である。病理組織学的には明らかに異なる疾患であるが、動脈の組織診を行うのは容易ではないため、画像検査で罹患部位に動脈硬化の所見がないことが、1つの重要な鑑別点である。患者が動脈硬化の危険因子を喫煙歴以外に有さないことも、鑑別診断の材料になる。しかし、近年は若年者でも脂質代謝、耐糖能、血圧の異常を有することが多い。加えて、動脈硬化は10代から始まるともいわれる。さらに、画像診断が進歩し、微細な初期変化を捉える可能性もあるため、診断にはより慎重な判断が求められる。全身性エリテマトーデスや強皮症などの膠原病との鑑別のためには、発熱や体重減少などの全身症状、他臓器の血管炎症状、免疫学的血液検査の所見などを評価する。外傷性動脈血栓症との鑑別には外傷歴が重要で、慢性外傷の可能性も念頭に、職業歴やスポーツ歴など患者の訴えに上がらないことも含め、多方面から病歴聴取を行う。とくに上肢で近位部に病変がある場合は、胸郭出口症候群による血栓症や塞栓症も疑う。下腿の虚血性疾患として、膝窩動脈捕捉症候群や膝窩動脈外膜嚢腫との鑑別には、膝窩部の触診と、動脈周囲の軟部組織を含めた画像検査を行う。動脈と静脈の両者を侵す疾患である血管ベーチェット病とは、口腔内アフタや陰部潰瘍など、他の皮膚症状や眼病変、動脈瘤の検索などを行い鑑別する。心房細動や心筋梗塞後の左室瘤に起因する血栓塞栓症との鑑別には、心エコー図検査が有用である。動脈瘤からの飛散血栓による塞栓症や、動脈壁の不整形粥腫に起因するコレステリン塞栓症などとも鑑別を要する。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)バージャー病の治療目標は、救肢ならびに疼痛からの解放である。耐え難い疼痛は患者の精神をむしばむことがあり、若年での肢切断は生活と将来に多大なダメージを与える。治療における最重要かつ最難関の課題は、「禁煙」である。タバコは本疾患の誘発および増悪因子であるため、すべての患者で最初に行うのは禁煙を含めた保存的治療である。禁煙を厳守し続ければ、それだけで病状の寛解は期待できる。逆に、喫煙を続ければ、指趾や肢の切断に至る危険が高まる。保存的治療で重症虚血が軽快しない患者では、外科的治療を考慮する。いかなる治療も、有効性は禁煙を継続できるか否かによって左右されうる。■ 保存療法本疾患の炎症を抑える特効薬はない。禁煙を徹底し、受動喫煙も回避する。手足に傷や靴擦れをつくらないよう保護し、清潔を保つ。履物にも注意し、手足の皮膚に異常がないかを患者自身でも観察してもらう。本疾患の発症には歯周病菌の関与も示唆されており、口腔内の衛生も保つ。潰瘍や壊死、安静時痛がなく、ある程度の距離を歩行できる患者では、運動療法も間歇性跛行の歩行距離の延長に効果がある。血流改善を目的とした薬物治療では、プロスタグランジン製剤(アルプロスタジル注、リポPGE1、リマプラスト、ベラプロスト)が有効といわれる。ただし高いエビデンスは示されておらず、無効例も少なくない。経口投与で効果が不十分な場合は、経静脈投与やカテーテル留置による経動脈投与も考慮する。■ 外科的治療保存療法で安静時疼痛や潰瘍・壊死が改善しない場合は、血行再建術を考慮する。ただし、下肢では病変が下腿以下の細径動脈に多発し、良好なrun-offを期待できる開通先がないことが多い。下腿以下へのバイパス手術では、代用血管に自家静脈の使用が勧められるが、自家静脈が静脈炎で荒廃し、利用できない場合もある。近年では血管内治療について、再狭窄率が高く反復治療を要するものの、肢切断の回避率はバイパス術と劣らず、バイパス手術が不可能な患者に対しては選択可能との見解もある4)。血行再建術が不可能な患者では、上肢では胸部の、下肢では腰部の交感神経遮断術を考慮する。虚血が改善しない肢には、激しい疼痛を伴うことが多い。一般の鎮痛薬では疼痛制御が困難なことが多く、オピオイド系鎮痛薬がしばしば必要になる。フェンタニル貼付薬は、保険診療にて使用可能である。これらの治療で改善しない潰瘍や疼痛、広範囲な壊死や荷重部の壊死、制御できない感染を伴う場合などは、肢切断もやむを得ない。上肢では交感神経遮断で症状が落ち着くことが多く、血行再建術や大切断を要することは少ない。4 今後の展望血管内治療のデバイスや技術の進歩は、近年目覚ましい。バイオテクノロジーを駆使した、各種の血管新生療法(遺伝子治療、細胞移植療法など)5)や、抗血栓性に優れた人工血管の開発も著しい進展をみせており、本疾患の肢虚血でも治療の向上が期待される。また、病因の解明が進めば、本疾患の予防や根治的な治療にもつながりうる。5 主たる診療科血管外科、心臓血管外科、循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター バージャー病(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)厚生労働科学研究費補助金・難治性疾患等政策研究事業 難治性血管炎に関する調査研究(医療従事者向けの情報)患者会情報北海道バージャー病友の会(患者とその家族向けの情報)1)Shigematsu H, et al. Int Angiol. 1999;18:58-64.2)Shionoya S. Cardiovasc Surg. 1993;1:207-214.3)塩川優一 編集. 厚生省特定疾患系統的血管病変に関する調査研究班臨床分科会報告書.厚生省公衆衛生局難病対策課;1977.p.1-38.4)Ye K, et al. J Vasc Surg. 2017;66:1133-1142.5)Kondo K, et al. Circ J. 2018;82:1168-1178.公開履歴初回2018年06月12日

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胃がん予防効果が得られるアスピリン投与量は?

 アスピリンが特定のがんの予防効果を有することが、多くの研究で報告されている。今回、米国・ワイルコーネル医科大学のMin-Hyung Kim氏らは、韓国の一般集団において、アスピリン使用と胃がんの用量反応関係を評価し、胃がん予防効果を得るためのアスピリン累積投与量の閾値を推定した。The American Journal of Gastroenterology誌オンライン版2018年6月1日号に掲載。 本研究では、韓国の国民健康保険サービス(NHIS)による集団ベース縦断コホートの46万1,489人について、2007~12年における胃がん発症を同定した。2002~06年のデータをレビューし、DDD(defined daily dose)システムを使用して累積投薬曝露を評価した。アスピリン使用の胃がんに対するハザード比(HR)を、多変量Cox比例ハザード回帰を用いて推定した。また、研究デザインによるばらつきを評価するために、傾向スコアマッチングおよびコホート内ケースコントロールデザインを含む感度分析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・296万5,500人年のフォローアップから5,674人に胃がんが確認され、胃がん全体の発症率は10万人年当たり191.00であった。・3DDD-年以上のアスピリン使用は、非使用に比べて有意な胃がん予防効果を示した。調整後HR(95%信頼区間)は、3~4DDD-年で0.79(0.63~0.98)、4~5DDD-年で0.63(0.48~0.83)であった(傾向のp<0.001)。・傾向スコアマッチングとコホート内ケースコントロールデザインを用いた感受性分析により、一貫したアスピリンの化学予防効果が示された。

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食の欧米化で前立腺がんリスクが高まる

 食の欧米化は前立腺がんのリスクを高める可能性があることが、国立がん研究センターのSangah Shin氏らの研究で明らかになった。Cancer Causes & Control誌2018年6月号に掲載。 食生活は前立腺がんの進行に影響を与えるとされる。そこで、著者らは日本人男性の食生活と前立腺がんのリスクの関係について大規模コホート研究を行った。今回の研究では、4万3,469例の日本人男性を対象に、食事のパターンと前立腺がんの進行度に関する5年間の追跡調査を行った。調査の開始は1995年から1998年で、2012年の調査終了までに1,156例の前立腺がんが認められた。 主な結果は以下のとおり。・探索的因子分析の結果、対象者の食事パターンは慎重的(野菜や果物、穀物を積極的に摂取し、肉は控える食事)、欧米的、伝統的の3種類に分類された。・3種類の食事パターンのうち、欧米的な食事パターンでは全前立腺がんのリスクが1.22倍(95%CI:1.00~1.49、p trend=0.021)、限局性前立腺がんのリスクが1.24倍(95%CI:0.97~1.57、p trend=0.045)、進行前立腺がんのリスクが1.23倍(95%CI:0.82~1.84、p trend=0.233)であった。・慎重的な食事パターンでは、全前立腺がんのリスクと限局性前立腺がんのリスクが有意に低かった。・伝統的な食事パターンは、前立腺がんのリスクとの関連性が認められなかった。

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妊娠中の抗うつ薬使用パターンに関するコホート研究

 フランス・Bordeaux Population Health Research CenterのAnne Benard-Laribiere氏らは、妊娠中の抗うつ薬使用パターンについて調査を行った。British journal of clinical pharmacology誌オンライン版2018年4月17日号の報告。 フランス人口の約99%が加入している医療保険制度のデータを用いて、2014年に妊娠した女性を対象としたコホート研究を実施した。妊娠前または妊娠中に開始した抗うつ薬使用を評価するため、抗うつ薬治療の変化に関して、妊娠中の抗うつ薬の併用、切り替え、中止、再開について検討を行った。 主な結果は以下のとおり。・コホート研究に含まれた妊娠件数は76万6,508件(75万5,529例)であった。・妊娠中の抗うつ薬使用は、1,000件当たり25.7件(95%CI:25.3~26.0)であった。・新規抗うつ薬使用は、1,000件当たり3.9件(95%CI:3.7~4.0)であり、最も使用された薬剤は選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であった。妊娠第2・3三半期で最も使用された薬剤は、アミトリプチリン、三環系抗うつ薬であった。・ほとんどの抗うつ薬治療の変化は、妊娠前および妊娠第1三半期に観察された。妊娠1年前に行われていた抗うつ薬治療のうち63%が、受胎前に中止された。受胎後に継続されていた抗うつ薬治療のうち68%が、妊娠第1三半期に中止された。抗うつ薬の切り替えまたは併用は、妊娠前後または妊娠第1三半期に多く行われていた。・最初の抗うつ薬の種類にかかわらず、セルトラリンへの切り替えが最も多かった。・主な併用は、SSRIに加えて、三環系/四環系抗うつ薬、ミルタザピン/ミアンセリンであった。・妊娠中に抗うつ薬治療を中断した妊婦のうち22%は、治療を再開した。■関連記事妊娠中の抗うつ薬治療、注意すべきは妊娠中のSSRI使用、妊婦や胎児への影響は妊娠中、血中濃度変化に注意が必要な抗精神病薬は

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飲酒と心血管疾患・脳卒中、関連は逆?/BMJ

 アルコール摂取は、非致死的な冠動脈疾患(CHD)と負の相関がみられた一方、複数の脳卒中サブタイプとは正の相関が認められたことが、WHO国際がん研究機関のCristian Ricci氏らによる検討の結果、明らかにされた。著者は、「示された結果は、アルコール摂取と心血管疾患(CVD)の関連は種々存在することを強調するものであり、アルコール摂取の低減方針のエビデンスを強化するものである」とまとめている。BMJ誌2018年5月29日号掲載の報告。ヨーロッパの8ヵ国3万2,549例について前向きコホート研究 これまで多くの前向きコホート研究では、アルコール摂取に関して、コホート登録時のみ評価がされていた。それらの検討において、中程度のアルコール消費は、CHDの低リスクと関連しており、がんや全死因死亡の高リスクと関連することが示唆されている。また、アルコール消費は全脳卒中の高リスクとの関連が示唆されているが、脳卒中サブタイプに関するエビデンスは限定的であった。 研究グループは、多施設共同ケースコホート研究で、アルコール消費(ベースラインおよび一生涯について評価)と、非致死的・致死的なCHDおよび脳卒中との関連を調べた。 ヨーロッパの8ヵ国で被験者を募ったEuropean Prospective Investigation into Cancer and nutrition cohort(EPIC-CVD)内で、CVD決定因子の試験を設定。CVDイベント発生例、および下位コホートを含むベースラインで非CVDの3万2,549例について、非致死的・致死的なCHDおよび脳卒中(虚血性・出血性脳卒中含む)の発生を評価した。CHDとは負の相関、脳卒中とは正の相関 発生イベント件数の内訳は、非致死的CHDが9,307例、致死的CHDが1,699例、非致死的脳卒中は5,855例、致死的脳卒中は733例であった。 ベースラインにおけるアルコール摂取と非致死的CHDには負の相関が認められ、摂取量12g/日増加当たりのハザード比(HR)は0.94(95%信頼区間[CI]:0.92~0.96)であった。 また、ベースラインアルコール摂取と致死的CHDリスクにはJ曲線の関係がみられた。総アルコール摂取量0.1~4.9g/日群と比較したHRは、5.0~14.9g/日群が0.83(0.70~0.98)、15.0~29.9g/日群が0.65(0.53~0.81)、30.0~59.9g/日群が0.82(0.65~1.03)であった。 対照的に、非致死的および致死的脳卒中リスクとは正の相関がみられ、ベースラインアルコール摂取量12g/日増加当たりのHRは、非致死的脳卒中が1.04(1.02~1.07)、致死的脳卒中が1.05(0.98~1.13)であった。虚血性および出血性脳卒中別にみても、おおよそ類似の所見が認められた。 ベースラインアルコール摂取と生涯平均アルコール消費の心血管アウトカムとの関連は、試験が行われた8ヵ国すべてにわたって、おおよそ類似していた。 CVDイベントリスクへのアルコール摂取と喫煙状態の交互作用に関する強いエビデンスはなかった。

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抗うつ薬は長期の体重増リスク/BMJ

 抗うつ薬処方と体重増加の関連を10年間フォローアップした結果、抗うつ薬処方は長期にわたる体重増のリスクと関連している可能性が示された。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのRafael Gafoor氏らが、同国のプライマリケア・データベースを利用した住民ベースのコホート研究の結果、明らかにしたもので、BMJ誌2018年5月23日号で発表した。結果を踏まえて著者は、「抗うつ薬治療の必要性を示す場合は、体重増加の可能性を考慮すべきである」とまとめている。肥満は世界的な課題で、抗うつ薬の使用は広がりつつある。これまで短期試験において、抗うつ薬使用と体重増加の強い関連性が示されているが、個々の抗うつ薬に関する長期的リスクのデータは存在していなかった。英国プライマリケア・データベースで住民コホート研究 研究グループは、英国内にある一般診療所のデータを集めたUK Clinical Practice Research Datalinkの2004~14年のデータを用いて、抗うつ薬処方と体重増加の長期的な関連性を調べた。被験者は、BMIに関する3つ以上の記録があった男性13万6,762例、女性15万7,957例。 主なアウトカムは、抗うつ薬処方、5%以上体重増の発生率、過体重または肥満への移行であった。年齢、性別、うつ病の記録、併存疾患、同時に処方された抗てんかん薬または抗精神病薬、所得レベル、喫煙、食事療法のアドバイスについて補正後のPoissonモデルを用いて、補正後率比を推算し評価した。5%以上の体重増、処方群は非処方群の1.21倍、体重増リスクは6年間以上持続 試験開始年において、抗うつ薬を処方されていたのは、男性1万7,803例(13.0%)、女性3万5,307例(22.4%)で、平均年齢は51.5歳(SD 16.6)であった。 フォローアップ183万6,452人年において、5%以上体重増の新たなエピソード発生率は、抗うつ薬非処方群で8.1/100人年、処方群で11.2/100人年と有意差が認められた(補正後率比:1.21、95%信頼区間[CI]:1.19~1.22、p<0.001)。 体重増のリスクは、フォローアップ中、少なくとも6年間は増大が続いていた。治療2年目に、抗うつ薬治療群で5%以上体重増の新たなエピソードを認める被験者数は、27例(95%CI:25~29)であった。また、試験開始時に正常体重であった被験者で、過体重または肥満に移行した被験者の補正後率比は、1.29(1.25~1.34)、過体重だった被験者が肥満に移行した同率比は、1.29(1.25~1.33)であった。 体重増加との関連について、抗うつ薬のクラス間には大きなばらつきがみられた。 著者は、関連には因果関係がない可能性があり、残余交絡因子が関連の過大評価に寄与している可能性があるとしている。

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奥多摩で考える地域医療の将来と展望

 2018年5月19日、西多摩三師会と奥多摩町は「『健康長寿な地域づくりフォーラム』in 奥多摩」を共同で開催した。このフォーラムは、日本の縮図である西多摩地域で、地域の自然・文化・産業・医療資源を生かした「活力ある健康長寿地域づくり」をテーマに、観光・食などのリラクゼーションや健診・運動・湯治・リハビリなどを組み合わせた「ヘルスケアツーリズム」について議論するもの。当日は、西多摩地域の医療者、行政関係者、議会関係者など多数が参集した。本稿では講演の概要をお伝えする(写真は、左上:阿岸 祐幸氏、右上:伴 正海氏、下:武見 敬三氏)。奥多摩で「ヘルスリゾート」 はじめに「観光・湯治・医療資源を生かした健康増進地域づくりに向けて~西多摩ヘルスリゾート構想の可能性~」をテーマに、阿岸 祐幸氏(北海道大学名誉教授)が、奥多摩の自然をドイツやスイスの高原地帯になぞらえ、「ヘルスリゾート」の提案を行った。 自然環境(山、川、海、温泉など)は、健康に良い影響を与える。たとえば温泉について、奥多摩の温泉は、強いアルカリ性泉であり、肌に良い影響を与えるという。欧州では、温泉は「テルメ」と呼ばれ、温泉に付属した療養所は「メディカル・テルメ」と言い、医療の一翼を担うものとして広く利用されている。 また、都心からほどほどの距離にある奥多摩は、気候(転地)療法にも利用でき、「この環境が治癒の促進や健康の増進に役立つ可能性がある」と期待を膨らませた。また、奥多摩の豊富な森林も鎮静殺菌作用があるとされる「森林浴」の効能を高め、「多摩の植生を利用した科学的な遊歩道の設置などが期待できる」とも語る。 そして、同氏は、奥多摩に自然を活用した健康保養地として「Natural capital health resort」の設置を提唱した。「奥多摩地域以外からの療養者はもちろん、地域住民には地域包括ケアシステムへ温泉などの地元の資源を取りこむことで、生活支援や介護などともリンクさせる取り組みができる」と展望を語った。地域医療でできること、できないことの見極め 次に「住民が生きて逝くための地域包括ケアシステムづくりについて~高知のへき地や行政での6年間と国での2年間を踏まえて~」をテーマに伴 正海氏(医師・元厚生労働省 医政局地域医療計画課 医師確保等地域医療対策室)が、地域医療の展望について講演を行った。 伴氏は、地域医療の研修として6年間を過ごした国保梼原病院を例に説明。梼原町の取り組みとして、町立病院と保健福祉支援センターを同じ建物に収容することで、住民を24時間フォローする仕組みやへき地の医療・介護の成功例を紹介した。 たとえば初期認知症の患者であれば、医療者がそのきざしを覚知した時点で、介護の専門職へフォローを依頼することができ、症状が進行した場合、その逆もできることで迅速に、手厚い医療を提供することができるという。 次に「少産多死の時代」の医療について言及し、「今後は『死なせない医療』から『支え看取りの医療』への転換が必要であり、患者の社会背景をくんだ医療・介護の導入のために、地域の役割が大事になる」と語った。そのために地域でできること、できないことの議論と合意の形成が必要になると示唆した。 最後に多摩地域について触れ、「多摩は『地域が医師を育てる場』として最良の場所である。住民が医療者を育てるために教える、体験させるなど医療者を育成し、地域全体が納得する医療を作っていってもらいたい」と思いを語った。労働人口減少の将来の地域の在り方 次に「活力ある健康長寿地域づくりに向けて~西多摩モデルへの期待と行政のリーダーシップ~」をテーマに武見 敬三氏(参議院議員)が、医療、医療経済について解説を行った。 今後の人口動態について厚生労働省などの資料を基に解説。「今後3年間は谷間として一時的に75歳以上上昇率は減る一方で、その後一気に団塊の世代が増加するので上昇率は上がる。その間に国として、どのような政策提言、実行ができるかが試されている」と問題点を示した。 労働人口の減少はこれから全国的な事象であり、「アジア健康構想」の例に代表されるように、アジアの諸国から介護の担い手としての労働者の確保や健康寿命延伸への取り組みにより解決が望まれている。また、社会保険についても「国家財政上の見地から今後は、さまざまなデータベースを作成・活用し、費用対効果の分析を行い、支出を見直すことも国民に理解いただきたい。また、高齢者が活躍できる場を作ることで、働けるうちは元気に働いてもらいたい」と説明を行った。 最後に多摩地区の現状と将来に触れ、「極端に就業人口が少なくなる問題に直面している」と指摘し、医療介護の財政上の問題、住民負担の増大などに対し、地域包括ケアの充実などを活用することで上手に対応してもらいたい。行政と住民がよく話し合い、方針を決め、絶え間なく地域の活性化がされることを期待する」と述べ、講演を終えた。

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FDAに義務付けられた新薬市販後調査の実態/BMJ

 米国・Yale-New Haven HospitalのJoshua D. Wallach氏らが、米国食品医薬品局(FDA)が承認した新薬/生物学的製剤に義務付けられている市販後調査(postmarketing requirements:PMR)について検証した断面解析の結果を報告した。その結果、米国における新薬/生物学的製剤のPMRは、簡潔に述べられていることが多く、研究デザインに関する情報が十分ではないことが、また、前向きコホート研究、登録研究および臨床試験としてPMRの約4分の3はClinicalTrials.govに登録されていたが、結果が公表または論文発表されていたのは完了した試験の約4分の3で、調査が義務付けられている研究の少なくとも4分の1は、公的に発信されていないことが示されたという。FDAは製薬会社に対し、新薬/生物学的製剤の安全性および有効性に関する重要な疑問に回答するためPMRの実施を要求できるが、その遂行やエビデンスの厳密さについて懸念が高まっていた。BMJ誌2018年5月24日号掲載の報告。2009~12年に承認された97製品のPMRを検証 研究グループは、2009年1月1日~2012年12月31日の間にFDAが承認したすべての新薬/生物学的製剤に関するPMRを対象に、承認時に示されていたPMRとその特徴(FDAの規制、研究デザインおよび研究の特徴など)、必須とされる前向きコホート研究・登録研究・臨床試験のClinicalTrials.govへの登録の割合、適時性および結果の報告、ならびに査読誌での発表について調査した(追跡期間は2017年11月15日まで)。 FDAは2009~12年に、PMRの実施を要求した新薬/生物学的製剤97品目(適応症は計106)を承認しており、義務付けられたPMRは総計437件であった。PMRの少なくとも4分の1は結果が公表されていない 調査の結果、PMRの説明は短文で(単語数中央値:44、四分位範囲:29~71)、直近の進捗を明らかにする情報が不足しているものが多かった(131件、30%)。 437件中、220件(50.3%)は新たな動物試験や他の試験(薬物動態試験を含む)、134件(30.7%)は前向きコホート研究・登録研究・臨床試験、83件(19.0%)は二次解析または追跡調査であった。 臨床試験110件のうち、無作為化の方法、対照薬の種類、割り付け、評価項目、登録患者に関する情報が不足していたものがそれぞれ38件(34.5%)、44件(40.0%)、62件(56.4%)、66件(60.0%)、98件(89.1%)あった。 前向きコホート研究・登録研究・臨床試験134件のうち、102件(76.1%)はClinicalTrials.govに登録されていた。さらに登録され完遂していたのは50件で、そのうちClinicalTrials.govに結果が報告されていたのは36件(72.0%)であった。 非公表を含め完遂した65件のうち、結果が報告または論文発表がなされていたのは47件(72.3%)であった。FDA承認から報告・発表までの期間は中央値47ヵ月(四分位範囲:32~67)で、47件中32件(68.1%)はFDAへの最初の報告期限を過ぎていた。

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緑茶は口腔関連QOLに好影響~亀岡スタディ

 緑茶とコーヒーはどちらも健康によい効果をもたらすことが知られているが、口腔健康に関連する生活の質(OHRQoL)との関連は不明である。今回、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の南里 妃名子氏らは、高齢者コホートでの調査で、緑茶摂取量がOHRQoLと関連することを報告した。とくに男性では、1日3杯以上の摂取でOHRQoL不良リスクが減ることが示唆された。一方、コーヒー摂取量との関連は示されなかった。European Journal of Clinical Nutrition誌オンライン版2018年5月23日号に掲載。 著者らは、京都亀岡スタディ(亀岡市在住高齢者を対象としたコホート研究)において、2012年のベースラインの横断的データを分析した。参加者は65歳以上の日本人7,514人(男性3,563人、女性3,951人)で、緑茶とコーヒーの摂取頻度などの自記式調査票に回答した。OHRQoLの評価には、高齢者の口腔健康問題を調べる自己申告のGeneral Oral Health Assessment Index (GOHAI)を用いた。GOHAIスコアが50点未満の場合、OHRQoL不良とした。 主な結果は以下の通り。・年齢、BMI、総エネルギー摂取量、飲酒、喫煙、薬剤服用、コーヒー摂取量、果物・野菜摂取量の調整後、男女とも緑茶摂取量の増加がGOHAIスコアと強い正相関を示した(男女とも、傾向のp<0.001)。・一方、コーヒー摂取量は、すべての因子を調整後、男性(傾向のp=0.538)、女性(傾向のp=0.607)とも、GOHAIスコアとの間に統計的に有意な関連はみられなかった。・OHRQoL不良の多変量オッズ比(95%信頼区間)は、緑茶摂取が「なし」「1日1杯未満」「1日1~2杯」「1日3杯以上」の順に、男性が1.00、1.01(0.80~1.27)、0.95(0.74~1.21)、0.78(0.61~0.99)(傾向のp=0.024)、女性が1.00、1.19(0.90~1.57)、0.98(0.74~1.29)、0.86(0.67~1.12)(傾向のp=0.014)であった。

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デュピルマブ、コントロール不良喘息にも有用/NEJM

 コントロール不良の喘息患者において、ヒト抗インターロイキン-4受容体αモノクローナル抗体のデュピルマブはプラセボと比較して、重度喘息増悪の頻度を減らし、肺機能および喘息コントロールを改善することが示された。米国・ワシントン大学のMario Castro氏らが、約1,900例の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2018年5月21日号で発表した。デュピルマブ200mg・300mgを52週間隔週投与 研究グループは、12歳以上のコントロール不良の喘息患者1,902例を、無作為に2対2対1対1の割合に4群に分け、デュピルマブ200mg・300mgまたは同量の各プラセボを2週ごとに、それぞれアドオン皮下注で52週間にわたり投与した。 主要エンドポイントは、重度喘息増悪の年間発生頻度と、気管支拡張薬使用前の1秒量(FEV1)でベースラインから12週後の変化とした。副次エンドポイントは、好酸球300/mm3カウント以上の被験者の喘息増悪発生頻度とFEV1だった。重度喘息増悪の年間発生頻度、デュピルマブ200mg群はプラセボ群の47.7%減 重度喘息増悪の年間発生頻度は、デュピルマブ200mgを2週ごとに投与する群で0.46(95%信頼区間[CI]:0.39~0.53)だったのに対し、同一投与の適合プラセボ群では0.87(同:0.72~1.05)で、デュピルマブ群がプラセボ群より47.7%低かった(p<0.001)。12週時点のFEV1は、デュピルマブ200mg群がプラセボ群と比べて0.32L増大した(p<0.001)。これらの結果は、デュピルマブ300mg群でも同様に認められた。 好酸球300/mm3カウント以上の被験者の重度喘息増悪の年間発生頻度は、デュピルマブ200mg群で0.37(95%CI:0.29~0.48)だったのに対し、プラセボ群では1.08(同:0.85~1.38)で、デュピルマブ群がプラセボ群より65.8%(同:52.0~75.6)低かった。同様の結果は、デュピルマブ300mg群でも認められた。 好酸球増加が認められたのは、デュピルマブ群52例(4.1%)、プラセボ群4例(0.6%)だった。

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カルボキシセラピーによる脂肪除去、効果はあるが持続せず

 非侵襲性の脂肪除去は、施術後のdowntime(回復期間)が短くリスクも低いため好まれている。安全性と有効性の両方を兼ね備えた新しい非侵襲性脂肪除去術の試みは重要であるが、米国・ノースウェスタン大学のMurad Alam氏らによるランダム化比較試験の結果、カルボキシセラピー(皮下脂肪への炭酸ガス注入)は忍容性が良好で皮下脂肪を一過性に減少させるものの、持続性はないことが明らかにされた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2018年4月23日号掲載の報告。 研究グループは、カルボキシセラピーがどの程度脂肪量を減らすかを評価する目的で、偽治療対照ランダム化比較試験を行った。対象は、BMIが22~29の成人16例で、腹部の片側に炭酸ガス1,000ccを週1回5週間注入し、もう片側には偽治療を行った。 主要評価項目は、超音波測定による脂肪層の厚さと治療前後の腹囲であった。 主な結果は以下のとおり。・最終治療終了1週間後、カルボキシセラピー施行部位の脂肪量は減少していたが(p=0.011)、28週後には維持されていなかった。・腹囲は名目上減少していたが、ベースラインと比較し、5週時点で有意差はなかった(p=0.0697)。・体重は、試験の全期間において変化しなかった。

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プロカルシトニン値は抗菌薬使用の指標となるか/NEJM

 下気道感染症が疑われる患者への、プロカルシトニン値を指標とする抗菌薬の開始/中止の決定は、抗菌薬曝露量を削減しないことが、米国・ピッツバーグ大学のDavid T. Huang氏らが行った「ProACT試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年5月20日号に掲載された。プロカルシトニンは、ウイルスに比べ細菌感染によって上昇するペプチドで、上昇の程度は感染の重症度と相関し、感染の改善に伴って経時的に低下する。欧州の試験では、プロカルシトニンに基づくガイダンスは、明確な有害性を呈することなく抗菌薬の使用を抑制することが報告されている。米国食品医薬品局(FDA)は、これらの試験を含むメタ解析の結果に基づき、2017年2月、下気道感染症疑い例における抗菌薬使用の指標としてプロカルシトニン測定を承認したが、日常診療への適用の可能性は不明だという。米国の14施設の救急診療部受診患者1,656例を登録 本研究は、プロカルシトニン値に基づく抗菌薬処方ガイドラインは、有害事象を増加させずに抗菌薬曝露量を削減するかを検証する無作為化試験である(米国国立一般医科学研究所[NIGMS]の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、下気道感染症の疑いで救急診療部を受診し、抗菌薬治療の適応の可否が不明な患者であった。被験者は、プロカルシトニン群と通常治療群に無作為に割り付けられた。 プロカルシトニン群の治療医には、プロカルシトニンの測定値と、測定値を4段階に分け、それぞれの推奨治療が記載された抗菌薬使用のガイドラインが提供された。通常治療群にもプロカルシトニンの測定が行われたが、臨床には使用されなかった。 登録後30日以内に、プロカルシトニン群は通常治療群に比べ、抗菌薬の総投与日数が削減され、有害なアウトカムを発症する患者の割合の差が4.5ポイント(非劣性マージン)を超えないとの仮説を立て、検証を行った。 2014年11月~2017年5月の期間に、米国の14施設1,656例が登録され、プロカルシトニン群に826例(平均年齢:52.9±18.4歳、男性:43.2%)、通常治療群には830例(53.2±18.7歳、42.7%)が割り付けられた。1,430例(86.4%)がフォローアップを完遂した。有害アウトカム率:プロカルシトニン群11.7% vs. 通常治療群13.1% 最終診断のデータが得られた1,645例のうち、646例(39.3%)が喘息の増悪、524例(31.9%)が慢性閉塞性肺疾患(COPD)の急性増悪、398例(24.2%)が急性気管支炎、328例(19.9%)が市中肺炎であった。782例(47.2%)が入院し、984例(59.4%)が30日以内に抗菌薬の投与を受けた。 プロカルシトニン群の治療医は、826例中792例(95.9%)のプロカルシトニン測定結果を受け取り、通常治療群の治療医も、830例中18例(2.2%)の測定結果を得た。プロカルシトニン群の血液サンプル採取から測定結果の取得までの時間の中央値は77分だった。両群とも、プロカルシトニン値が高いほど、救急診療部での抗菌薬処方の決定が多かった。 intention-to-treat(ITT)解析では、30日までの平均抗菌薬投与日数は、プロカルシトニン群が4.2±5.8日、通常治療群は4.3±5.6日と、両群間に有意な差はなかった(差:-0.05日、95%信頼区間[CI]:-0.6~0.5、p=0.87)。per-protocol解析、per-guideline解析、complete-case解析、missing-not-at-random解析でも、結果はほぼ同様だった。 ITT解析による有害なアウトカムを発症した患者の割合は、それぞれ11.7%(96例)、13.1%(109例)であり、プロカルシトニン群の通常治療群に対する非劣性が示された(差:-1.5ポイント、95%CI:-4.6~1.7、非劣性:p<0.001)。他の解析法による結果もほぼ同様だった。 30日までに抗菌薬投与を受けた患者の割合や、最終診断名別の平均抗菌薬投与日数にも、両群間に差はなかった。 著者は、「抗菌薬曝露量が削減されなかった原因として、通常治療群の医師は測定値を知らないにもかかわらず、高値例に比べ低値例への抗菌薬の処方が少なかった点などが挙げられる」とし、「以前の試験と対照的な結果であった理由としては、case mix、デザイン、セッティングなどの違いが考えられる」と指摘している。

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糖尿病発症や最適な食事療法を個別提示

 遺伝子解析を用いた個別化医療が進んでいるが、遺伝子を用いず糖尿病発症を予測し、個別に食事療法(低炭水化物食、エネルギー制限食、低脂肪食)を提案できたら、どんなに有益だろう。2018年5月24日より3日間、都内で開催された第61回日本糖尿病学会年次学術集会(学会長:宇都宮 一典)において、個別の糖尿病発症や食事療法の最適化に関する発表が行われた。 坂根 直樹氏(京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室)は、「個人毎の最適なエネルギー摂取やお勧めの栄養素バランスを提示する糖尿病発症予測システムの開発:機序計算モデルを用いて」と題し、現在の取り組みを講演した。 これは、従来の糖尿病リスクスコア(例:観察研究から年齢・性・BMI・HbA1c・家族歴や遺伝子多型などを利用)では、平均的なリスクの提示のみになってしまうといった短所を補うべく、米国糖尿病予防プログラム(DPP)でも用いられた臓器間のネットワークを取り入れた機序計算モデル“Bodylogical1)”が使用された。その方法として、糖尿病予防のための戦略研究J-DOIT1登録の2,607例のデータの中から、介入により減量と血糖改善効果が高かった者と低かった者の合計120例を抽出。個人ごとに生体指標(体重、空腹時血糖、HbA1c)を時系列データに近似させ、さらに減量成功と血糖改善のための食事療法の最適化を行った。 結果として予測データのRMSEは、通常の臨床的測定エラー範囲に収まったほか、個々人の生理学的特性(エネルギー必要量など)や実際のライフスタイルの変動を表すパラメータを推定することができた。具体的には、単純な食事と運動のエネルギー収支だけではBMIの変化を十分には説明できなかった。あるケースでは減量を成功させるには低炭水化物食にしたほうがよく、あるケースでは低脂肪食のほうがよかった。また、低炭水化物食でも低脂肪食でも、どちらでもよいケースもあった。減量と血糖改善の両方を成功させるためには、どのような食事療法が最適であるかを予測することもできた。 最後に、坂根氏は「従来の糖尿病リスクスコアでは平均的なリスクを提示するだけであったが、この機序計算モデルを用いることで、生活習慣の修正で体重やHbA1cがどのように変化するかを見せることができ、さらに個人ごとに食事療法を提案することもできる。療養指導だけでなく、臨床研究デザインの設計や介入研究の抽出にも活用することができる」と、これからの展望を述べた。■参考文献1)Sarkar J, et al. PLoS One. 2018;13:e0192472.

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心臓手術中の左心耳閉鎖、脳卒中リスクを減らせるか/JAMA

 心臓手術を受ける患者において、左心耳閉鎖(left atrial appendage occlusion:LAAO)の併施群は非併施群と比較して、その後の脳卒中および全死因死亡リスクが有意に低いことが、米国・メイヨー・クリニックのXiaoxi Yao氏らによる後ろ向きコホート研究の結果、明らかにされた。LAAOは、心臓手術中に行われる可能性があるが、長期的な脳卒中リスクとの関連に関するデータはほとんど存在せず、一方で術後の心房細動(AF)との関連を示唆するエビデンスが示されていた。今回の結果を受けて著者は、「無作為化試験を含む検討を行い、外科的LAAOの役割を明確にする必要がある」と述べている。JAMA誌2018年5月22日号掲載の報告より。後ろ向きコホート研究で、LAAO併施群と非併施群を比較、AF既往有無別評価も 研究グループは、米国大規模データを用いた後ろ向きコホート研究で、心臓手術中に行うLAAOと脳卒中、死亡および術後のAF発症リスクとの関連を評価した。 2009年1月1日~2017年3月30日の間に、冠動脈バイパス術(CABG)または弁手術を受けた、民間保険またはメディケアに加入する18歳以上について、2017年3月31日まで追跡した。 対象患者について1対1の傾向スコアマッチングを用いて76のベースライン特性で均等化し、LAAO併施群と非併施群を比較した。AF既往の有無別の層別化も行った。 主要評価項目は、脳卒中(虚血性脳卒中または、全身性塞栓症など)と全死因死亡とした。副次評価項目は、術後AF(既往のない患者の術後30日以内の発症)、長期のAF関連受診(外来および入院のイベント率)であった。非AF既往患者では有意差はみられず、術後AF増大 対象期間中に心臓手術を受けたのは7万5,782例で、平均年齢は66.0歳(SD 11.2)、女性が2万2,091例(29.2%)、AF既往患者は2万5,721例(33.9%)で、LAAO併施を受けたのは4,374例(5.8%)、平均追跡期間は2.1年(SD 1.9)であった。 傾向スコアをマッチングさせた8,590例において、LAAO併施は、脳卒中リスクの有意な低下(1.14 vs 1.59件/100人年、ハザード比[HR]:0.73[95%信頼区間[CI]:0.56~0.96、p=0.03]、死亡の有意な低下(3.01 vs.4.30、0.71[95%CI:0.60~0.84]、p<0.001)と、それぞれ関連することが示された。 一方で、LAAO併施群はAF関連の外来受診率が有意に高く(11.96 vs.10.26件/人年、絶対差:1.70件/人年[95%CI:1.60~1.80]、率比:1.17[95%CI:1.10~1.24]、p<0.001)、入院率も高かった(0.36 vs.0.32、0.04[0.02~0.06]、1.13[1.05~1.21]、p=0.002)。 AF既往患者(6,438/8,590例[74.9%])における比較(LAAO併施群 vs.非併施群)では、脳卒中リスクは1.11 vs.1.71件/100人年(HR:0.68[95%CI:0.50~0.92]、p=0.01)、全死因死亡リスクは3.22 vs.4.93件/100人年(HR:0.67[95%CI:0.56~0.80]、p<0.001)で、それぞれ有意差がみられた。 一方、AF非既往患者(2,152/8,590例[25.1%])における比較(LAAO併施群 vs.非併施群)では、脳卒中リスクは1.23 vs.1.26件/100人年(HR:0.95[95%CI:0.54~1.68]、p=0.87)、全死因死亡リスクは2.30 vs.2.49件/100人年(HR:0.92[95%CI:0.61~1.37]、p=0.67)で、それぞれ有意差はみられなかった。しかし、術後AFリスクについて、イベント発生率(100人年当たり)は27.7% vs.20.2%でLAAO併施群が有意に多かった(HR:1.46[95%CI:1.22~1.73]、p<0.001)。 AFとLAAOの相互作用の有意性は認められなかった(脳卒中のp=0.29、死亡のp=0.16)。

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肺がん1次治療、PD-L1低発現でもペムブロリズマブ単剤?(KEYNOTE-042)/ASCO2018

 非扁平上皮および扁平上皮非小細胞肺がん(NSCLC)に対する、ペムブロリズマブ単剤の1次治療を評価する第III相試験KEYNOTE-042試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO2018)で発表された。 KEYNOTE-042は、局所進行または転移を有するPD-L1陽性のNSCLC患者において、標準治療のプラチナベース化学療法とペムブロリズマブ単剤治療を比較する国際無作為化オープンラベル第III相試験。対象患者:PD-L1発現1%以上の局所進行または転移を有するNSCLC患者(いずれの組織型も含む)試験薬:ペムブロリズマブ3週ごと35サイクル対照薬:カルボプラチン+パクリタキセルまたはペメトレキセド3週ごと6サイクル評価項目:主要評価項目は全生存期間(OS)(TPS50%以上、20%以上、1%以上で評価)。副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)と奏効率(ORR)(TPS50%以上、20%以上、1%以上で評価)、安全性(TPS1%以上) 主な結果は以下のとおり。・1,274例の患者が、ペムブロリズマブの単剤治療またはプラチナベース化学療法に1:1で無作為に割り付けられた。・2年OS率は、TPS50%以上では、ペムブロリズマブ群44.7%に対して化学療法群30.1%(HR:0.69、p=0.0003)、20%以上では40.5%対29.6%(HR:0.77、p=0.0020)、1%以上では39.3%対28.0%であった(HR:0.81、p=0.0018)。・探索的研究での、TPS1~49%の2年OS率は、ペムブロリズマブ群34.6%に対して化学療法群26.5%であった(HR:0.92)。・2年PFS率はTPS50%以上では、ペムブロリズマブ群37.4%に対して化学療法群27.3(HR:0.81、p=0.017)、20%以上では32.4%対28.8%(HR:094)、1%以上では28.0%対26.6%であった(HR:1.07)。・ORRは、TPS50%以上では、ペムブロリズマブ群39.5%に対して化学療法群32.0%、20%以上では33.4%対28.9%、1%以上では、27.3%対26.5%であった。・治療関連有害事象発現は、ペムブロリズマブ群62.7%に対して化学療法群89.9%、免疫関連有害事象発現は、27.8%対7.2%であった。 ペムブロリズマブ単剤治療群は、PD-L1発現NSCLCの1次治療において、PD-L1の発現の程度にかかわらず、化学療法群に比べOSを有意に改善した。■参考ASCO2018 AbstractKEYNOTE-042試験(Clinical Trials.gov)■関連記事ペムブロリズマブ、PD-L1発現肺がんの1次治療に単剤でOS改善(KEYNOTE-042)※医師限定ASCO2018最新情報ピックアップDoctors’ Picksはこちら

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Stage III 肺がん、化学放射線療法+免疫療法が期待される理由

 2018年5月25日、第11回アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー「肺がんの早期治療における免疫治療への期待」が開催された。山本 信之氏(和歌山県立医科大学 呼吸器内科・腫瘍内科 教授)、髙山 浩一氏(京都府立医科大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 教授)が登壇し、Stage III切除不能非小細胞肺がん(NSCLC)治療における課題と免疫療法による可能性、およびこれまでほとんど明らかにされてこなかった、Stage III肺がん患者の心理的負担感をテーマに講演した。化学放射線療法と免疫療法の併用による可能性 はじめに山本氏は、NSCLC患者の約2割を占めるStage IIIの患者に対する治療では、根治を目指し、化学療法と根治的胸部放射線療法の併用が標準治療として推奨されていることを説明。第2世代レジメン(MVP)から、第3世代レジメン(カルボプラチン+パクリタキセル、シスプラチン+ドセタキセル等)へと新しい抗がん剤が登場しているものの、放射線と併用したときの生存期間延長という意味では、約20年間ほぼ治療の進歩がないことを指摘した。 一方、標準治療が化学療法のみとなるStage IVでは、分子標的治療薬と免疫チェックポイント阻害薬による治療の進歩が著しい。このうち分子標的治療薬については、「放射線との併用でベネフィットがある可能性はゼロではないが、薬剤性肺炎のリスクがあることから、大規模な臨床試験を実施してその効果を確かめることは難しい」と山本氏は語った。 そこで期待されるのが、免疫チェックポイント阻害薬だ。山本氏は、Stage IV肺がん患者対象の複数の試験で、腫瘍のPD-L1発現率が高いほど免疫チェックポイント阻害薬の奏効率が高いと確認されていること(KEYNOTE-0011)、CheckMate017/0572))、マウスによる実験段階ではあるが、放射線治療によりPD-L1発現が高まり、抗PD-L1抗体と放射線療法を併用すると、各単独療法よりも生存期間が延長すると示唆されていること3)から、「放射線療法が免疫療法の効果を高める可能性がある」と話した。 続いて山本氏は、放射線療法と免疫療法の併用により、放射線照射部位のみでなく、遠方の転移巣においても抗腫瘍免疫反応が活性化される“アブスコパル効果”について言及。悪性黒色腫に対する試験では、イピリムマブ+放射線療法によるアブスコパル効果が確認され、放射線を照射していない部位でも腫瘍縮小効果が確認されている4)という。免疫療法そのものの効果も、早期でより高い? 「腫瘍量が少ないほど免疫療法による治療効果が高いと示唆されていることも5)、Stage IIIでの免疫療法に期待ができる理由の1つ」と山本氏。より早期でより腫瘍量の少ない、手術適応の肺がん患者に対し、術前に免疫チェックポイント阻害薬を投与した結果、ほぼ全例で腫瘍縮小効果が確認されたデータ6)を紹介し、「早期の腫瘍量の少ない病変や微小転移に対し、免疫療法の効果はStage IVよりもさらに高いのではないかと期待される」と話した。心理的な不安感、進行期よりもStage IIIの患者でより強い傾向 続いて髙山氏は、インターネットによる患者調査の結果7)を基に、Stage III肺がん患者における心理的負担感について講演した。「進行期であるStage IVの患者さん対象の調査は行われてきたが、Stage IIIの患者さんの心理的負担感についてはほとんどわかっていなかった」と髙山氏。本調査では、心理的ストレスを数値化するための尺度として、HADS質問票を使用。この質問票は、不安7項目、抑うつ7項目の計14項目からなり、それぞれの状態を点数化して評価する。 調査の結果、化学放射線療法を受けた肺がん患者は、薬物療法を受けた肺がん患者と比較してHADSスコアが高くなる傾向がみられ、特に不安の度合いが高いことが確認された。なかでも、“だんだんと不安が大きくなっていくように感じた”という項目で化学放射線療法を受けた患者の負担感が高かったことに髙山氏は着目。「分子標的治療薬、免疫チェックポイント阻害薬が使われるStage IVよりも、従来の抗がん剤が使われるStage IIIの治療でより副作用による負担が大きい場合があること、また放射線療法後半における、食事摂取への影響などが背景にあるのではないか」と推察した。 さらに、「Stage IIIでは、初回治療後に無治療で経過観察をする期間が続く。いつ再発するかという不安を抱えながら、“何もしない”ことは大変なストレスだろう」と話し、「免疫療法を含め、このタイミングで何らかの治療の選択肢が生まれれば、心理面でも大きなプラスなのではないか。そしてもちろん、生存期間延長につながる治療法の登場が、病気と治療に直面する患者さんたちにとって、何よりの励みになると期待している」と結んだ。■参考1)Garon EB, et al. N Engl J Med.2015;372;2018-2028.2)Felip E, et al. ESMO 2017.3)Dovedi SJ, et al. Cancer Res.2014;74:5458-5468.4)Postow MA, et al. N Engl J Med.2012;366;925-931.5)Huang AC, et al. Nature.2017;545;60-65.6)Forde PM, et al. N Engl J Med. 2018;378;1976-1986.7)アストラゼネカ株式会社プレスリリース

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目にクギが刺さった男児【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第116回

目にクギが刺さった男児 いらすとやより使用 目に刺さった異物って基本的に後遺症を残すことが多いのですが、奇跡的に後遺症を残さなかった症例報告を紹介しましょう。 Weill Y, et al.An unusual case of globe-sparing penetrating orbital injury by a nail.Oman J Ophthalmol. 2018;11:92-93.ある日、保護者が28ヵ月男児の目にクギが刺さっているのに気付きました。興味がある人は、論文をクリックして画像を閲覧してもらえればよいですが(フリーで閲覧可能)、内眼角近傍に深々とクギが刺さっています。イタイイタイイタイ! 閲覧注意! し、しかし…、見ちゃダメだと思いながら見てしまうのが異物論文!(図)Wikipediaより使用「えー、子供にクギが刺さってる原因なんて知らないよー、私はネイルガン(図)なんて持ってないよー」と保護者は怪しそうに否定しましたが、いや、どう考えてもネイルガンで入ったでしょ、このクギ! と言わんばかりに深々と刺さっている異物。この論文を読むかぎり、真相はわからなかったそうです。そこから先は警察の管轄ですしね。眼科的検査を行いましたが、驚くべきことに何も異常はありませんでした。どうやらクギがわずかにそれていたようです。また、眼筋にも障害は残りませんでした。さらには、骨折所見すらもなかったそうです。刺入部以外にほとんど異常がみられず、全身麻酔の下、クギが摘出されました。入院して1週間後、まったく合併症や後遺症を起こさずに患児は無事に退院したそうです。めでたしめでたし。異物論文をたくさん読んでいると、ネイルガンは怖いなと思い知らされます。間違ってもDIY目的でネイルガンを買わないようにしよう、と心に誓いました。子供が誤ってスパン!とやってしまったら、大変なことになりますしね。

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