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高齢者進行非小細胞肺がん、膵がん患者に対する早期運動・栄養介入の多施設共同ランダム化第II相試験(NEXTAC-TWO)

 高齢の進行期がん患者の多くは、がん悪液質による疲労、食欲不振、および身体機能の低下を有しているが、効果的な介入が確立されていない。静岡県立静岡がんセンターの内藤 立暁氏らは進行期がんに対する栄養療法および運動療法を組み合わせた早期介入プログラムNEXTAC(The Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer program)の第I相試験(NEXTAC-ONE)を実施し、がん悪液質高リスクの高齢患者におけるNEXTACの実現可能性を報告した(Journal of Cachexia, Sarcopenia and Muscle, 2018)。この結果に基づきNEXTACによる早期の運動・栄養介入の有効性を評価する多施設共同無作為化第II相NEXTAC-TWO試験が開始された。NEXTAC-TWO試験の実施の背景、設計などについて新潟県立がんセンター新潟病院 三浦 理氏らがBMC Cancer誌オンライン版2019年5月31日号で発表した。NEXTAC介入群と介入なしの対象群に130例の被験者を無作為に割り付け・対象:1次治療として化学療法実施予定の進行期非小細胞肺がん(NSCLC)または膵臓がん患者。年齢70歳以上、PS 2以下で適切な臓器機能を持ち介護を要しない患者・介入群:1次治療開始とともに、BCAA(分岐鎖アミノ酸)含有サプリメント摂取(大塚製薬:インナーパワー)と栄養カウンセリング、低強度在宅運動プログラム、身体活動計により測定された歩数に基づく身体活動量促進プログラムを医師のほか栄養士、理学療法士、看護師より成る多職種チームによる介入を行う・対照群:介入なし・評価項目:[主要評価項目]介護不要生存期間[副次評価項目]栄養状態、除脂肪体重、運動機能、ADL、QOL、全生存期間、安全性など わが国の15施設から130例の被験者を登録する。被験者を介入群と対照群に無作為に割り付け、無作為化から4回(登録時、4±2週、8±2週、12±2週)介入と評価を実施する。層別化因子は、PS(0~1対2)、原発がんの部位(肺と膵)、病期(Stage IIIとIV)、化学療法の種類(ドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ療法とその他)など。筆頭著者 三浦 理氏のNEXTAC-TWO試験についてのコメント がん治療、とくに非小細胞肺がんの世界ではドライバー遺伝子変異に対するキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬による治療開発が非常に活発に行われている。それに伴い、長期生存が得られる症例が増えており、今後はQOLの改善、維持ということが重要視されるだろう。2019年、抗悪液質治療薬であるグレリン誘導体のアナモレリンが臨床導入される予定である。この薬剤は食欲改善効果と共に除脂肪体重増加効果はあるが、筋力の改善、増強は得られがたいことが臨床試験で示唆されている。今まで前向き試験で示されることができなかった多職種介入の有効性が本試験で示されれば支持療法の分野における大きな一歩であると考えられる。本試験はすでに症例登録は終了し観察期間に入っており、結果の公表が待たれる。

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身体活動が活発な中高年者ほど、寿命は長い/BMJ

 心血管疾患やがんの患者を含む中高年者では、過去の身体活動の程度や確定したリスク因子(食事、体重、血圧、コレステロール値など)の変化にかかわらず、身体活動が活発なほど死亡リスクが低く、実質的に寿命が長くなることが、英国・ケンブリッジ大学のAlexander Mok氏らによる、EPIC-Norfolk試験のデータを用いた研究で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年6月26日号に掲載された。ある時点で評価した身体活動は、全原因死亡や、心血管疾患およびがんによる死亡のリスク低下と関連することが報告されているが、身体活動の長期的な変化を検討し、さまざまな身体活動の変化の過程が健康に及ぼす影響を定量化した研究は少ないという。40~79歳の1万4,599例を12.5年追跡したコホート研究 研究グループは、全原因、心血管疾患およびがんによる死亡に及ぼす、ベースラインの身体活動とその長期的な変化の過程の関連を前向きに評価する目的で、住民ベースのコホート研究を行った(英国医学研究協議会[MRC]などの助成による)。 European Prospective Investigation into Cancer and Nutrition-Norfolk(EPIC-Norfolk)コホートに登録された40~79歳の1万4,599例について、ベースライン(1993~97年)から2004年までに、3回のフォローアップ(1995~99年、1998~2000年、2002~04年)を行い、生活様式および他のリスク因子の評価を行った。次いで、これらの参加者の2016年までの死亡状況を調査した(身体活動の最終評価からのフォローアップ期間中央値12.5年)。 妥当性が検証された質問票を用いて、身体活動によるエネルギー消費量(physical activity energy expenditure:PAEE)を評価した。就業時の身体活動(座位、立位、重い肉体労働などで3つに分類)と余暇時の身体活動(週に0時間、0.1~3.5時間、3.6~7時間、>7時間)から、PAEE(kJ/kg/日)を算出した。 主要評価項目は、全原因、心血管疾患、がんによる死亡とし、多変量比例ハザード回帰モデル(年齢、性別、社会人口学的因子、病歴、全般的な食事の質、BMI、血圧、トリグリセライド値、コレステロール値で補正)を用いて解析した。最小限の身体活動の達成で、不活動関連死の46%が予防可能 1万4,599例の参加者のベースラインの平均年齢は58.0歳(SD 8.8)、女性が56.6%で、17万1,277人年のフォローアップ期間中に3,148例(心血管疾患死950例、がん死1,091例)が死亡した。 長期的なPAEEの増加は、ベースラインのPAEEとは独立的に、死亡と逆相関の関連が認められた。すなわち、PAEEの年間1kJ/kg/日の増加(ベースライン時に身体不活動で、その後5年をかけて徐々にWHOの身体活動ガイドラインの中強度身体活動[150分/週]に達した場合に相当)ごとのハザード比(HR)は、ベースラインのPAEEと確定したリスク因子で調整すると、全原因死亡が0.76(95%信頼区間[CI]:0.71~0.82)、心血管疾患死が0.71(0.62~0.82)、がん死は0.89(0.79~0.99)と、いずれも有意差がみられ、長期的な身体活動の増加による死亡率の低下が示された。心血管疾患およびがんの病歴で層別化した場合にも、同様の結果が認められた。 ベースラインの身体活動と、身体活動の変化の過程の統合解析では、一貫して身体不活動の集団と比較して、身体活動が経時的に増加した集団は、全原因死亡のリスクが、ベースラインの身体活動が低い集団で24%(HR:0.76、95%CI:0.65~0.88)、中等度の集団で38%(0.62、0.53~0.72)、高い集団では42%(0.58、0.43~0.78)、それぞれ有意に低下した。 住民集団レベルでは、少なくとも最小限の身体活動の推奨(中強度:150分/週)を達成し、これを維持することで、身体不活動に関連する死亡の46%が予防可能と推定された。 著者は、「公衆衛生戦略は、最小限の推奨の達成に向けた転換を目指すべきであり、中年~晩年における身体活動低下の予防に重点的に取り組む必要がある」と指摘している。

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強迫症患者における双極性障害合併率

 強迫症(OCD)患者は、主に不安障害や情動障害などの併存疾患を有することが多く、このことがOCDの経過や援助要請、治療反応に影響を及ぼす。これまで、OCD患者における双極性障害(BD)の併存についての研究が行われているが、多くは小規模サンプルで実施されていた。ブラジル・パウリスタ大学のMariana S. Domingues-Castro氏らは、大規模サンプルを用いて、OCD患者のBD生涯有病率を推定し、BD併存の有無における人口統計学的および臨床的特徴について比較を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2019年6月7日号の報告。 強迫性スペクトラム障害に関するブラジル調査コンソーシアム(C-TOC)より、成人OCD患者955例を対象とした横断的研究を実施した。評価尺度には、Yale-Brown強迫観念・強迫行為尺度(Y-BOCS)、ディメンジョン別強迫症状重症度尺度(DY-BOCS)、ベックうつ病自己評価尺度(BDI)、精神科診断面接マニュアル(SCID)を用いた。記述的および二変量解析に続いてロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・OCD患者におけるBDの生涯有病率は、7.75%(74例)であった。・BD併存と独立して関連していた因子は、広場恐怖症を伴うパニック症、衝動制御障害、自殺企図であった。 著者らは「BDを併発したOCD患者は、自殺リスクが高いなど、より重症な臨床的特徴を有するため、両疾患に対する適切な治療を行うためにも、慎重な治療アプローチが求められる」としている。

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灌流画像を用いた血栓溶解療法は、発症後9時間までの脳梗塞と睡眠中に発症した脳梗塞にまで治療時間枠を拡大できる:個別患者データのメタ解析(解説:内山真一郎氏)-1072

 アルテプラーゼによる血栓溶解療法は脳梗塞発症後4.5時間までが推奨されているが、4.5時間以上か睡眠中に発症し、救済しうる脳組織がある患者に血栓溶解療法が有効であることを灌流画像が同定できるかどうかをメタ解析により検討した研究である。脳梗塞発症後4.5~9時間か起床時に脳卒中症状がある患者においてMRIかCTで灌流を評価しているアルテプラーゼのプラセボ対照無作為化比較試験を検索し、1次評価項目として3ヵ月後の転帰良好(改訂ランキン尺度0または1)、安全性評価項目として死亡または症候性頭蓋内出血を検討している。 実際に解析対象となったのは、EXTEND、ECASS4-EXTEND、EPITHETの3試験であった。合計411例、アルテプラーゼ群211例、プラセボ群201例の個別データが解析された。転帰良好例はアルテプラーゼ群で36%、プラセボ群で29%であり、アルテプラーゼ群で有意に多かった(オッズ比:1.86、95%信頼区間:1.15~2.99、p=0.011)。症候性頭蓋内出血はアルテプラーゼ群(10例)でプラセボ群(1例)より多かったが、この増加が血栓溶解療法の効果を打ち消すことはなく、灌流画像により選択された、発症後4.5~9時間か睡眠中発症例に対する血栓溶解療法の有効性が証明されたといえる。大血管閉塞例には機械的血栓回収療法のほうが有効であるが、まだ施行可能な施設が限られており、汎用性のある血栓溶解療法の治療時間枠が拡大できることが確認できた意義は大きい。

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デュルバルマブ、進展型小細胞肺がんのOSを有意に延長(CASPIAN)/AstraZeneca

 AstraZenecaは、2019年6月27日、進展型小細胞肺がん(SCLC)の1次治療を対象としたデュルバルマブの第III相CASPIAN試験で、主要評価項目である全生存率(OS)を達成したと発表。 CASPIAN試験は、進展型SCLC患者の1次治療における無作為化オープンラベル多施設共同国際第III相試験。この試験では、化学療法単独とデュルバルマブ+化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン)およびデュルバルマブ+トレメリムマブ+化学療法(上記と同様)とを比較しており、米国、欧州、南米、アジア、中東を含む22ヵ国、200以上の施設で実施されている。 独立データモニタリング委員会による中間分析では、デュルバルマブ+化学療法(エトポシド+シスプラチン)群は、化学療法単独に比べ主要評価項目であるOSを統計学的に有意に改善した。デュルバルマブ併用療法の安全性と耐容性は、これらの既知の安全性プロファイルと一致していた。 AstraZenecaは、今後の医学会での発表のために、今回のデータを提出するとしている。

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進行胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除は開腹術に匹敵するか?(解説:上村直実氏)-1071

 最近の疫学調査によると、ピロリ感染者数の減少や除菌治療の普及により胃がん死亡者は減少の一途をたどっている。さらに、全国の検診体制の充実や内視鏡検査の普及により早期発見される胃がんが多くなり、内視鏡的切除術の件数が著明に増加しているのが現状である。しかし、臨床現場では手術可能な進行胃がんに遭遇する機会も少なくなく、従来の開腹手術と腹腔鏡下手術の適応に迷うこともある。 日本、韓国および中国において両術式の有用性と安全性を検証する無作為介入試験(RCT)が進行中であるが、今回、進行胃がん(T2〜T4a)の約1,000症例を対象として中国で実施されたCLASS-01試験の結果が報告された。無作為割り付けによる多施設共同RCTの結果、3年無再発生存率(腹腔鏡術群76.5% vs.開腹術群77.8%)および3年累積再発率(18.8% vs.16.5%)は両群間に統計学的に有意な差を認めなかった。 わが国で実施されているRCT(JLSSG0901試験)の結果は未定であるが、世界に先駆けて実施している全国的な外科系手術症例の大規模データベースであるNational Clinical Database(NCD)を用いて施行されたコホート研究の結果では、胃がんに対する外科的切除における腹腔鏡下手術は術後の死亡率や縫合不全や膵液瘻など重篤な合併症の発生率で開腹手術と遜色がないと報告されている(Etoh T, et al. Surg Endosc. 2018;32:2766-2773.)。わが国の胃がん治療ガイドラインでは、現時点で腹腔鏡下手術は幽門側胃切除が適応となるStageI(T1、T2N0)に限定されているが、今後、適応範囲の拡大が期待される。 以上の結果から、手術可能な胃がんに対する腹腔鏡下手術は開腹手術にひけをとらない術式となっているものと思われる。ただし、実際の診療における術式の選択にあたっては、技術格差に基づく手術成績の施設間格差を考慮すべきであろう。その参考資料として、今後、施設ごとに開腹手術と腹腔鏡下手術の手術成績が開示されることが期待される。

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ドローンは人を傷つけるのか、助けるのか【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第142回

ドローンは人を傷つけるのか、助けるのかいらすとやより使用私の友人はドローンを持っているのですが、飛ばせるエリアが限られているらしくて、ほとんど使えないとボヤいています。皆さんはドローンと触れ合ったことがありますか?ドローンはいろいろな現場で用いられるようになってきました。とくに物流に対する期待は大きく、近い将来、自宅にドローンが荷物を届けてくれるようになるかもしれません。海外では試験的に運用されているところもありますね。今回は、ドローンの論文を2つ紹介しましょう。 Chung LK, et al.Skull fracture with effacement of the superior sagittal sinus following drone impact: a case report.Child’s Nerv Syst. 2017;33:1609-1611.1つ目は、ドローンによる悲劇。世界各国では、ドローンを上手に速く操作することを競う大会が開かれています。当然、ドローンのスピードも上がるため、ぶつかってしまうと大けがを負わせてしまいます。あるドローンレースの現場にいた13歳の男の子は、飛んできたドローンが頭を直撃するという事態に見舞われました。衝撃が非常に強く、頭蓋骨は陥没骨折し、その傷は上矢状静脈洞に達しました。神経症状を来すほどでしたが、保存的な治療で軽快し退院までこぎ着けたそうです。Claesson A, et al. Drones may be used to save lives in out of hospital cardiac arrest due to drowning. Resuscitation. 2017;114:152-1562つ目はまったく逆で、ドローンが人を救うことに役立つのではないかという論文です。スウェーデンの浅瀬で行われた研究で、14人のライフガードと、ドローンの性能を比較したものです。要は、目的とするマネキンまでどちらが早く到達できるかを検証したものです。そんなん、行く手に水があったら絶対にドローンのほうが早いに決まってるじゃんと思っていたら、まさにそのとおりの結果でした(p

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抑うつ症状と燃え尽き症候群との関係

 燃え尽き症候群とうつ病との間に重複する概念が存在するのか、あるいは互いに異なるのかについては、継続的に議論されており、入院患者における精査は行われていない。この関連性を明らかにするため、スイス・ベルン大学のKathleen Schwarzkopf氏らは、3つの異なるうつ病尺度を用いて検討を行った。さらに、抑うつ症状と燃え尽き症候群との関連における心理的苦痛、知覚されたストレスおよび睡眠の質への影響についても調査を行った。Zeitschrift fur Psychosomatische Medizin und Psychotherapie誌2019年6月号の報告。 対象は、職業性ストレス関連障害治療の専門病院に紹介された23~82歳の入院患者723例(女性の割合:51.2%)。評価には、燃え尽き症候群評価尺度(Maslach Burnout Inventory)、ベック抑うつ質問票、Hospital Anxiety and Depression Scale(HAD)、Brief Symptom Inventory、知覚されたストレス尺度(Perceived Stress Scale)、ピッツバーグ睡眠質問票を用いた。 主な結果は以下のとおり。・燃え尽き症候群の合計スコアやサブスケール(情緒的消耗感、脱人格化、達成感の低下)とうつ症状(うつ病尺度にかかわらず)との間に有意な相関関係が認められた。・共分散は、1.1~19.4%であった。・燃え尽き症候群のレベルは、認知情動的症状と直接的な関連が認められた。程度は低いものの、身体的情動的症状とうつ病との関連も認められた。・多変量解析では、燃え尽き症候群が有意に多かった因子は、うつ症状、若年、男性、精神的苦痛やストレスレベルの高さであった。 著者らは「燃え尽き症候群とうつ病は、同様な精神病理学を示すものではないが、2つの構成要素には重複する部分が多く、この程度は使用するうつ病評価尺度により変化する可能性が示唆された」としている。

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血圧と認知症サブタイプ別リスク~260万人を長期観察

 血圧上昇と認知症リスクの関連は、期間や認知症のサブタイプにより異なるのだろうか。今回、英国・London School of Hygiene & Tropical MedicineのJohn Gregson氏らによる約260万人の後ろ向きコホート研究から、血圧上昇は認知症リスク低下と短期的には関連するが、長期的な関連はあまり大きくないことがわかった。また、長期的な関連は、アルツハイマー型認知症と血管性認知症では逆であったことが報告された。European Journal of Neurology誌オンライン版2019年6月24日号に掲載。 本研究は、United Kingdom Clinical Practice Research Databaseにおいて、1992~2011年に血圧を測定し、それ以前に認知症ではなかった40歳以上の259万3,629人のデータを解析。ポアソン回帰モデルを使用して、収縮期血圧と認知症(医師の診断による)との関連を調べた。血圧は認知症発症前駆期に低下すると考えられているため、血圧測定からの経過時間のカテゴリー(5年未満、5~10年、10年超)および認知症のサブタイプ(アルツハイマー型、血管性)別に関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。・観察期間中央値は8.2年で、アルツハイマー型認知症4万9,161例、血管性認知症1万3,816例、その他の認知症2,541例の計6万5,618例の認知症が観察された。・平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクは9.2%(95%CI:8.4~10.0)低かったが、この関連は血圧測定からの期間によって著しく変化した。・血圧測定後5年未満では、平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクが15.8%(同:15.5~17.0)低く、血圧測定後5~10年ではリスクが5.8%(同:4.4~7.7)低かった。・血圧測定後10年超では、平均収縮期血圧10mmHg上昇につき、認知症リスクが1.6%(同:0.1~3.0)低かった。サブタイプ別にみると、アルツハイマー型認知症リスクは4.3%(同:2.5~6.0)低く、血管性認知症リスクは7.0%(同:3.8~10.2)高かった。■「サブタイプ」関連記事最もOSが良好な乳がんのサブタイプは?

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乳がん患者への予後情報の開示は効果的か/Cancer

 がん患者へ明確な予後を知らせる効果に関する知見が示された。聖隷三方原病院 緩和ケアチームの森 雅紀氏らは、日本人乳がん女性患者に対して、予後の明確な開示の有無という点で異なる2つのビデオ(患者と医師のコミュニケーション場面を撮影したもの)を見せ、患者が抱く不確実性や不安、満足感などに変化が認められるかを無作為化試験により調べた。その結果、明確な予後の開示はそれらのアウトカムを改善することが示されたという。結果を踏まえて著者は、「がん患者に予後について質問をされたら、医療従事者は、その要望を尊重すべきであり、適切であれば明快に話し合うことが推奨されるだろう」と述べている。Cancer誌オンライン版2019年6月17日号掲載の報告。 研究グループは、「アジアでは臨床において、進行がん患者への予後は、非開示が典型的なままである。予後を伝える重要性が世界的にますます認識されるようになっているが、アジア人の進行がん患者に対する、明確な予後の開示が及ぼす影響については、ほとんどわかっていない」として、がん再発を伴う患者に対する、明確な予後の伝達効果を、無作為化ビデオ描写試験にて調べた。 根治手術を受けた日本人乳がん女性に対して、再発難治乳がんを有する患者と患者のがん担当医との予後に関するコミュニケーションを撮影したビデオを見せた。ビデオは、明確な予後の開示の有無のみが異なる2つのパターンが用意された。 主要評価項目は、被験者が抱く不確実性(Uncertainty、範囲:0~10)である。副次評価項目は、不安(State-Trait Anxiety Inventory-Stateで測定、範囲:20~80)、満足度(Patient Satisfaction Questionnaire、範囲:0~10)、自己効力感(Self efficacy、範囲:0~10)、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)について話し合う意欲(範囲:1~4)などであった。 主な結果は以下のとおり。・合計105例の女性が参加した(平均年齢53.8歳)。・被験者の不確実性のスコアは、予後の開示が多いビデオを見た後のほうが、少ないビデオを見た後よりも有意に低下した(それぞれの平均スコアは5.3 vs.5.7、p=0.032)。・同様に、満足度は上昇し(それぞれ5.6 vs.5.2、p=0.010)、不安は増加しなかった(State-Trait Anxiety Inventory-Stateスコアの変化はそれぞれ0.06 vs.0.6、p=0.198)。・一方で、自己効力感(それぞれ5.2 vs.5.0、p=0.277)、ACPについて話し合う意欲(それぞれ2.7 vs.2.7、p=0.240)については、有意な変化はみられなかった。

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脳損傷急性期の15%は行動反応なくとも脳活動あり/NEJM

 急性脳損傷患者の15%で、運動指令に対する行動反応はなくても、脳波測定(EEG)では指令に反応を示す記録がみられ、脳が活性化していることが明らかになった。米国・コロンビア大学のJan Claassen氏らが、脳損傷患者を対象に、音声による運動指令に反応する脳活動と予後への影響を検証した前向き試験の結果を報告した。臨床的に無反応な患者において、体を動かすよう声掛けをした際に脳活動を示す脳波が検出される場合がある。そのような認知と運動の解離が、脳損傷後の数日間にみられる割合や予後についての重要性は、これまで十分に解明されていなかった。NEJM誌2019年6月27日号掲載の報告。無反応患者を対象に、声による運動指令に対する脳活動を脳波で確認 研究グループは、2014年7月~2017年9月の期間に、1施設の集中治療室で、さまざまな原因による急性脳損傷があり、音声による運動指令に無反応な患者(痛み刺激部位を特定できる患者や、視覚刺激で凝視または追視できる患者を含む)を前向きに連続登録した。 「手を動かして」という指令に対する脳活動を、機械学習を応用したEEGにより検出。また、12ヵ月時点の機能アウトカムを、Glasgow Outcome Scale-Extended(GOS-E:スコア範囲1~8、高いほうが良好であること示す)で評価した。15%の認知と運動の解離を認めた患者のうち、半数で解離が解消 脳損傷後の期間中央値4日の時点で、無反応患者104例中16例(15%)でEEGによる脳活動が検出された。これら16例中8例(50%)、ならびに脳活動が検出されなかった88例中23例(26%)は、退院前には指令に従うことができるまでに改善した。 12ヵ月時のGOS-Eスコアが4以上(8時間独力で機能することを意味する)であったのは、脳活動が検出された患者で44%(7/16例)、検出されなかった患者で14%(12/84例)であった(オッズ比:4.6、95%信頼区間:1.2~17.1)。 なお、著者は、さまざまな原因(心停止、脳内出血、頭部外傷または硬膜下血腫、クモ膜下出血)による脳損傷患者を対象としたこと、12ヵ月時の追跡調査は電話によるもので直接行っていないこと、鎮静が交絡因子である可能性などを挙げて、結果については限定的だとしている。

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統合失調症における抗精神病薬減量モデル~パイロット研究

 精神科医と統合失調症患者は、再発することを恐れ、抗精神病薬の減量をためらっているのではないか。このようなジレンマの克服を目的とし、米国・ニューヨーク州立大学バッファロー校のChisa Ozawa氏らは、個々の患者のドパミンD2受容体占有率に対応した経口投与量を算出するモデルを開発した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2019年6月10日号の報告。 本パイロット研究では、リスペリドンまたはオランザピンの単剤治療で臨床的に安定している統合失調症患者35例を対象に、減量群(17例)または維持群(18例)にランダムに割り付けた。減量群では、モデルを使用してランダムに収集した血漿濃度から算出したトラフ値D2占有率65%に対応するよう、抗精神病薬の減量を行った。 主な結果は以下のとおり。・投与量は、減量群においてリスペリドン4.2±1.9mg/日から1.4±0.4mg/日へ、オランザピン12.8±3.9mg/日から6.7±1.8mg/日へ減量した。維持群では、リスペリドン4.3±1.9mg/日、オランザピン15.8±4.6mg/日であった。・試験完了患者は、減量群で12例(70.5%)、維持群で13例(72.2%)であった(p=0.604)。臨床的な悪化が認められ脱落した患者は、減量群で3例(18.8%)であったが、維持群では認められなかった。・両群間で陽性・陰性症状評価尺度PANSSスコアの変化に有意な差は認められなかったが、臨床全般印象度(CGI-S)の陽性症状サブスコアで差が認められた(減量群:0.4±0.7、維持群:-0.1±0.7、p=0.029)。 著者らは「本モデルを用いた抗精神病薬の減量戦略は、脱落率の点では維持群と同等であったが、安全性の観点については、さらなる検討が必要である」としている。

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IV期でも積極的な局所治療を?―オリゴメタ症例に対する治療戦略【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第8回

第8回 IV期でも積極的な局所治療を?―オリゴメタ症例に対する治療戦略1)Palma DA, et al. Stereotactic ablative radiotherapy versus standard of care palliative treatment in patients with oligometastatic cancers (SABR-COMET): a randomised, phase 2, open-label trial. Lancet. 2019;393:2051-2058.2)P Iyengar, et al. Consolidative radiotherapy for limited metastatic non-small-cell lung cancer: a phase 2 randomized clinical trial. JAMA Oncol. 2018 Jan 11.[Epub ahead of print]3)Gomez DR, et al. Local Consolidative Therapy Vs. Maintenance Therapy or Observation for Patients With Oligometastatic Non-Small-Cell Lung Cancer: Long-Term Results of a Multi-Institutional, Phase II, Randomized Study. J Clin Oncol. 2019;37:1558-1565.IV期NSCLCに対する局所治療(放射線照射や外科切除)は症状緩和が主な目的のため、無症状の時点で積極的に考慮される事はなかった。しかし近年、腫瘍量の少ない「オリゴメタ」に対する早期の局所治療が生存期間延長に寄与するのでは?という報告が相次いでいる。最近の主要な報告を概説する。1)についてSABR-COMET試験は欧州を中心に行われた無作為化第II相試験(SABR vs.経過観察)。「オリゴ」の定義は、転移巣が5つ以下(1臓器3個以下)で、全ての転移巣にSABR可能なもの。脳転移症例は除外されている。SABRは30-60Gy/3-8frs、状況によって単回照射も許容された。照射前後4週間の化学療法は休止が必須とされた。99例が登録され、乳がん・大腸がん・肺がんが各18例。16例登録された前立腺がんについては、14例がSABR群と偏りが大きい。登録症例の約80%は転移巣1~2個と、腫瘍量はかなり少なそう。主要評価項目であるOSはSABR群41ヵ月 vs.観察群28ヵ月と有意にSABR群で良好であった。PFSも12ヵ月 vs.6.0ヵ月とSABR群で良好であった。QOL評価としてFACT-Gが用いられているが、両群で有意差はなし(QOLが同等であった、というよりはFACT-GがQOL指標として適切でなかった可能性がある)。SABR群における治療関連死が3例(4.5%)に生じている(肺臓炎・肺膿瘍など)。2)について米国単施設における無作為化第II相試験(SABR vs.経過観察)。NSCLCのみ(遺伝子変異陽性例は除く)を対象とし、プラチナ併用後の維持療法にSABR追加の有無を比較している。免疫治療は含まれていない。「オリゴ」の定義は転移巣が5つ以下(肺・肝臓の転移は3個以内)とされ、未治療もしくは活動性の脳転移は不適格とされている。SABRは単回照射(21-27Gy)、26.5-33Gy/3frs、30-37.5Gy/5frs。状況によって、45Gy/15frsなども許容された。29例登録時点で有効中止となった(当初目標は36例)。主要評価項目であるPFSはSABR群9.7ヵ月 vs.3.5ヵ月。OSは未報告。治療関連死は認めなかったが、SABR群の4例(約30%)でgrade 3の有害事象を認めている(2例は呼吸器関連との事だが、詳細な情報は不明)。3)について米国を中心とした3施設での無作為化第II相試験。2016年にLancet Oncology誌に報告された内容のアップデート。NSCLCのみを対象とし、遺伝子変異陽性例は許容されている。「オリゴ」の定義は、転移巣が3つ以下。脳転移は既治療であれば適格。照射もしくは外科切除は無作為化時点で残存するすべての病変(原発巣を含む)に行われた。局所治療として外科切除を含んでいる点が前述した2つの試験と異なる。本試験も49例が無作為化された時点で有効中止となった(当初目標は94例)。主要評価項目であるPFSはSABR群14.2ヵ月 vs.4.4ヵ月。今回のアップデートで報告されたOSは41.2ヵ月 vs.17.0ヵ月。遺伝子変異以外の臨床背景(転移個数、初回化学療法の効果、N因子、脳転移の有無)はOSに影響せず。SABR群で4例(17%)がgrade 3以上の治療関連有害事象を発症している(食道炎2例(ともに入院が必要)、脾臓への照射に伴う貧血1例、肋骨骨折1例)。解説このところ、オリゴメタに対する臨床試験が立て続けにBig Journalに掲載されており、ニッチな対象ながら注目を集めている。ただ、いずれも様々な問題点を孕んでおり、現時点で日常臨床を変えるには至っていないというのが正直なところである。最も重要なポイントは「オリゴメタ」の定義・介入内容が試験によってまちまちであること。ちょうどJournal of Thoracic Oncology誌にオリゴメタに関するシステマティックレビューが掲載されているが(GiajLevra N, et al. J Thorac Oncol.2019 Jun 10. [Epub ahead of print])、この中でも定義の明確化(転移個数、臓器辺りの転移数のみならず、縦隔リンパ節の取り扱いも試験によって異なるとの事)が問題点として挙げられている。次に、これらはいずれも第II相試験であること、2)、3)は早期有効性中止となった試験ではあるが、主要評価項目はいずれもPFSであったことが挙げられる。1)はOSを主要評価項目としているものの、試験治療群に予後の良い前立腺がんが偏っていたり、乳がん、NSCLCについてもそのサブタイプが明確にされていないなどの問題がある(学会発表の際には前立腺がんを省いた解析が行われているようであるが、論文でははっきりしない)。最後に、IV期NSCLCでこの治療戦略を臨床導入する上での懸念事項を挙げる。IV期NSCLCの治療成績は近年、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害剤の導入によって飛躍的に向上した。今回紹介したオリゴメタに対する試験治療の成績は、これら新規薬剤の影響をほぼ受けていないにも関わらず非常に良好であり注目に値する。一方で、あくまで症状緩和・延命が最終目標であるにも関わらず、肺臓炎をはじめとする有害事象の増加は認容性に疑問を残す(新規薬物療法の多くが毒性が比較的軽いことと対照的)。進行期肺がんにおける積極的な局所治療はこれまでさまざまな点で失敗してきた。進展型SCLCでは予防的全脳照射は定期的な頭部画像検査に劣るという結果であったし(Takahashi T, et al. Lancet Oncol.2017; 18:663-671.)、III期NSCLCにおける化学放射線療法で検討された線量増加は、第II相試験では非常に有望視されたにも関わらず第III相試験では無効中止という結果に終わった(RTOG0617試験)。とくに放射線治療に関しては、参加施設が大幅に拡大される第III相試験においてこういった状況が得てして起こりうるようである。オリゴメタに対する局所治療戦略を成功させるためには、臨床医の納得しうる対象集団の定義づけ・適切な対照群設定(ランダム化)が重要と思われる。なお海外では既に第III相試験が開始されており、この結果が今後の標準治療を決めるのみならず、対象集団の定義についても重要な方向性を示すと思われる。

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キムリア:CAR-T細胞療法

国内初のCAR-T細胞療法が登場国内初のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法として、2019年3月、キムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル)が承認された。対象疾患は、再発または難治性のCD19陽性B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)である。アンメット・ニーズが高い再発・難治性 ALL / DLBCL急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、小児がんの中で最も高頻度にみられ、本邦における患者数は約5,000例であり、このうち約20%が再発する。再発・難治性B細胞性ALL(B-ALL)の治療では、化学療法、放射線療法、同種造血幹細胞移植などが行われるが、これらが無効となった場合の予後は不良である。また、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、本邦の非ホジキンリンパ腫の約30〜40%を占め、患者数は約21,000例と推定される。患者の約3分の1は1次治療が奏効せず、再発・難治性へと移行し、2次治療以降は自家造血幹細胞移植かサルベージ化学療法しかなく、移植が適応外または移植後1年以内の再発・難治性例の予後は不良である。B-ALL・DLBCL診療におけるキムリアの役割キムリアは、個々の患者のT細胞を遺伝子導入により改変し、体内に戻すことで、CD19を細胞表面に発現するB細胞性の腫瘍(B-ALL、DLBCL)を認識して攻撃するがん免疫細胞療法である。患者のT細胞の採取には、白血球アフェレーシスと呼ばれる血液濾過法が用いられる。採取されたT細胞は、がん細胞などの表面に発現しているCD19抗原を特異的に認識するように、遺伝子導入によって改変される(CAR-T細胞)。CAR-T細胞は、患者血液内で増殖するため、継続的な投与を必要とせず、投与は1回のみである。B-ALLにおける全寛解率/DLBCLにおける奏効率を達成承認の根拠となったのは、2つの国際多施設共同第II相試験(ELIANA試験、JULIET試験)である。ELIANA試験の対象は、再発・難治性のCD19陽性B-ALLの小児/若年成人患者であった。主要評価項目の全寛解率(完全寛解[CR]または血球数回復が不十分な完全寛解[CRi])は、中間解析時で82.0%(41/50例、98.9%信頼区間[CI]:64.5〜93.3%)、主解析時では寛解達成例における寛解持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値: 9.92か月)であり、持続する寛解が得られている。最も頻度が高い副作用はサイトカイン放出症候群(CRS)(77%、58/75例)で、重篤なCRS は 63%(47/75例) に発現したが、CRSによる死亡例はなかった。JULIET試験の対象は、再発・難治性のCD19陽性DLBCLの成人患者。主要評価項目の奏効率(完全奏効[CR]または部分奏効 [PR])は、中間解析時で58.8%(30/51例、99.06%CI: 39.8〜76.1%)、追加解析時では奏効例における奏効持続期間の中央値は未到達(追跡期間中央値: 13.9か月)であり、持続する奏効が得られた。最も高頻度の副作用はCRS(58%、57/99例)で、重篤なCRSは29%(29/99例)に認めたが、死亡例はなかった。今後のB-ALL・DLBCL診療への期待本薬は、治療選択肢が少なく、予後不良な再発・難治性CD19陽性B-ALL・DLBCLの新たな治療戦略として期待される。製造元のノバルティス社は、B-ALLとDLBCLを合わせて、最大で年間約250例の患者を想定している。

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CLEAR!ジャーナル四天王  プレゼントキャンペーン

『脳・心・腎血管疾患クリニカル・トライアル Annual Overview 2019』プレゼントプレゼントに応募する『脳・心・腎血管疾患クリニカル・トライアル Annual Overview 2019』(定価1,400円+税)はNPO法人「臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)」が編集。2019年11月に設立10周年を迎えるJ-CLEAR。今年の医療者必読のTOPICSとして、2018年4年1日施行の臨床研究法について施行後の現状と課題を収載。2018年発表の臨床試験を評価した概説では、生活習慣病・脳心腎血管疾患の最新知見から動向を読み解きます。『脳・心・腎血管疾患クリニカル・トライアル Annual Overview 2019』の3つの特徴その1NEJM、Lancet、JAMA、BMJ 4大医学雑誌に掲載された臨床試験のサマリーとそれに対するコメントを収録その2CareNet.comの「CLEAR!ジャーナル四天王」コーナーとコラボ同コーナーに掲載された記事を多数収録その3同じ分野で異なった結果が発表された臨床研究に関して専門領域のコメンテーターが、その結果をどう解釈すべきかを簡潔に解説知識をまとめるのに非常に役に立ちますプレゼントに応募する「CLEAR!ジャーナル四天王」とはCareNet.comの「ジャーナル四天王」コーナーに掲載された医学論文から、NPO法人「臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)」の評議委員の先生方が注目論文を適正に評価する大人気コーナーが「CLEAR!ジャーナル四天王」。「CLEAR!ジャーナル四天王」の最新記事はこちら「ジャーナル四天王」の最新記事はこちらJ-CLEARの詳細はホームページへDr.桑島の動画でわかる「エビデンスの正しい解釈法」MRの話はどこまで信じていいのか...と感じた経験はありませんか?「適切なエンドポイントか」「実験の実施主体はどこか」など、見極めるポイントをわかりやすく解説。2015年公開の「Dr.桑島の動画でわかる『エビデンスの正しい解釈法』」もぜひご覧ください。こちらから視聴できます(視聴時間 約10分)

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不眠症治療薬と自殺未遂リスク

 成人における慢性不眠症の薬理学的治療のためのガイドラインでは、エビデンスが不十分であるにもかかわらず、トラゾドンや他の適応外投与が一般的に行われているとされる。退役軍人保健局(VA)では、ベンゾジアゼピンやゾルピデムに加え、市販の鎮静性抗ヒスタミン薬、古い抗うつ薬などの安価な薬剤が大量に使用されている。これら薬剤の自殺行動に関する安全性の比較については、十分にわかっていない。米国・Canandaigua VA Medical CenterのJill E. Lavigne氏らは、VAにおいて、不眠症治療に一般的に使用されている薬剤の安全性について比較を行った。Journal of General Internal Medicine誌オンライン版2019年6月3日号の報告。 本研究は、傾向スコア一致サンプルを用いた効果比較研究である。対象は、初回薬物投与の12ヵ月前までに自殺念慮または自殺行動が認められず、不眠症治療薬未使用で不眠症を発症し、VAにおいて単剤治療を行った患者。薬物治療後、12ヵ月以内に多剤併用または切り替えを行った患者は除外した。VAでの処方およびデータを用いて、不眠症に対する薬理学的治療を特定した。すべての不眠症治療において、1%以上を占める薬剤は、トラゾドン200mg未満、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、ゾルピデム、ロラゼパム、ジアゼパム、temazepamであった。主要アウトカムは、初回薬物投与から12ヵ月以内の自殺未遂とした。 主な結果は以下のとおり。・基準を満たした患者34万8,449例を、ゾルピデムと一致した薬物クラスにより3つのバランスの取れたコホートを作成した。・投与量、メンタルヘルス健康歴、疼痛薬と中枢神経系薬の投与歴で調整した後、ゾルピデムと比較したハザード比は以下のとおりであった。●トラゾドン200mg未満(HR:1.61、95%CI:1.07~2.43)●鎮静性抗ヒスタミン薬(HR:1.37、95%CI:0.90~2.07)●ベンゾジアゼピン系薬(HR:1.31、95%CI:0.85~2.08) 著者らは「自殺未遂リスクは、トラゾドン200mg未満において、ゾルピデムと比較し、61%高かった。鎮静性抗ヒスタミン薬とベンゾジアゼピン系薬では、有意な差が認められなかった」としている。

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蜂窩織炎、丹毒、最適な抗菌薬治療は?

 蜂窩織炎や丹毒は、よくみる細菌感染症であり、抗菌薬治療が至適治療とされている。しかし、その治療法についてのコンセンサスは得られておらず、入手可能な試験データではどの薬剤が優れているのかを実証することができない。最適な投与ルート、治療期間のデータも限定的である。英国・ブリストル大学のRichard Brindle氏らは、システマティックレビューとメタ解析により、非外傷性の蜂窩織炎に対する抗菌薬治療の安全性と有効性を評価した。しかし、低質なエビデンス結果しか得られず、著者は「標準的なアウトカム(重症度スコア、用量、治療期間)を設定した試験を行う必要がある」と提言している。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年6月12日号掲載の報告。 研究グループは、システマティックレビューとメタ解析による分析を行うため、2016年6月28日時点で次のデータベースを検索した-Cochrane Central Register of Controlled Trials(2016、issue 5)、Medline(1946年~)、Embase(1974年~)、Latin American and Caribbean Health Sciences Information System(LILACS、1982年~)。さらに、5つの試験データベースとその試験内リファレンスのほか、2016年6月28日~2018年12月31日の期間におけるPubMedとGoogle Scholarも検索した。適格試験は、異なる抗菌薬、投与ルート、治療期間などを比較している無作為化試験とした。 データの抽出と解析は、Cochrane Collaborationの標準的な方法論的手法を用い、2値アウトカムのリスク比とその95%信頼区間(CI)を算出。エビデンスの質を評価するGRADEアプローチに合わせて、主要評価項目の結果要約テーブルを作成した。 主要アウトカムは、治療終了時に治癒、改善・回復が認められた、または症状が消失もしくは軽減した患者の割合(試験で報告されていたもの)。副次アウトカムは、あらゆる有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・43試験、5,999例(生後1ヵ月~96歳)の適格患者のデータが包含された。・蜂窩織炎が原発例であったのは15試験(35%)、そのほかの試験では蜂窩織炎患者の割合は中央値29.7%(四分位範囲:22.9~50.3%)であった。・全体として、どれか1剤がほかの製剤よりも優れていることを支持するエビデンスは見つからなかった。・MRSA活性のある抗菌薬に優位性があるとの所見は認められなかった。・経口剤より静脈内投与を支持、また5日超の投与期間を支持するエビデンスは、いずれもなかった。

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GLP-1受容体作動薬、デュラグルチドは2型糖尿病患者の腎イベントを抑制するか?:REWIND試験の腎に関する予備解析結果(解説:栗山哲氏)-1069

REWIND研究の結論 2型糖尿病においてGLP-1受容体作動薬、デュラグルチドのadd-on療法は、新規アルブミン尿発症を抑制する。REWIND研究の概要 インクレチン薬であるGLP-1受容体作動薬の腎作用が解明されつつある。現在までにGLP-1受容体作動薬に関する大規模研究は、セマグルチドのSUSTAIN-6研究、リラグルチドのLEADER研究、リキシセナチドのELIXA研究の3つ報告がある。この中で、前二者において腎複合イベントに改善作用が示唆された(ELIXA研究では腎イベントは事前設定されていない)。 REWIND研究(Researching Cardiovascular Events with a Weekly Incretin in Diabetes)は、GLP-1受容体作動薬に関する4つ目の大規模研究である。研究結果は、第79回米国糖尿病学会(ADA 2019、6月7日~11日)においてDr. Gerstein氏により報告され、6月10日のLancet誌に2つの論文として発表された。1つは心血管アウトカム(便宜上、第1報)、もう1報は腎アウトカムの予備解析(第2報)である。 REWINDの主要評価項目として心血管死、非致死性心筋梗塞と脳卒中(MACE)初発(第1報)、副次的評価項目として腎複合イベントを観察した(第2報)。本研究は、世界24ヵ国の371施設における国際的規模で、50歳以上の2型糖尿病患者9,901例(平均年齢66.2歳、白人76%、女性46.3%、心血管疾患の既往歴31.5%、ベースラインHbA1c中央値7.2%、BMI 32%、糖尿病罹病歴9.5年、eGFR 77mL/min/1.73m2)を登録した大規模研究である。併用薬は、BG薬(プラセボ群81.3% vs.デュラグルチド群81.1%)、SU薬(45.9% vs.46.1%)、ARBあるいはACE阻害薬(81.0% vs.82.0%)などである。これらの糖尿病治療薬に追加して、週1回の長時間作用型の注射製剤であるデュラグルチド1.5mgを投与する群(4,949例)とプラセボを投与する群(4,952例)に1:1でランダム化割り付けをし、中央値で5.4年間追跡した。REWIND研究の結果 第1報において、主要評価項目とした追跡期間中のMACE初発は、プラセボ群の663例(13.4%、100人・年当たり2.7例)に比べてデュラグルチド群では594例(12.0%、同2.4例)と有意に低値であった(ハザード比[HR]:0.88、95%CI:0.79~0.99、p=0.026)。このデュラグルチドによるMACE抑制効果は、心血管疾患の既往歴の有無、ベースラインのHbA1c値、年齢、性、糖尿病の罹病期間、心血管疾患既往、BMI、地域差を問わず認められた。ただし、全死亡に関してはプラセボ群(12.0%、100人・年当たり2.3例)とデュラグルチド群(10.8%、同2.1例)で有意差はなかった(HR:0.90、95%CI:0.80~1.01、p=0.067)。 第2報ではexploratory analysis(予備解析)が発表され、副次的評価項目とした腎疾患の発症に関して解析が行われた。腎評価項目は、「微量アルブミン尿(UACR>33.9mg/mmol)の発症」、「基礎値から30%以上のeGFRの持続性低下」、「腎代替療法開始」、である。その結果、腎複合イベント発症数は、プラセボ群の970例(19.6%、100人・年当たり4.1例)に比べてデュラグルチド群では848例(17.1%、同3.5例)と有意に低値を呈した(HR:0.85、95%CI:0.77~0.93、p=0.0004)。その腎アウトカムの最も明らかな原因は、「新規の微量アルブミン尿発症抑制」(HR:0.77、95%CI:0.68~0.87、p<0.0001)であり、「30%以上の持続性eGFR低下」(HR:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.066)と「腎代替療法開始」(HR:0.75、95%CI:0.39~1.44、p=0.39)には有意差を認めなかった。以上から、従来の糖尿病治療に加えて、デュラグルチドの長期追加投与は、腎複合イベントを抑制することが示唆された。この主因は、新規の微量アルブミン尿発症抑制であった。さらに、デュラグルチド群においては軽度の体重減少、HbA1cの低下、LDLコレステロール値の低下、収縮期血圧の低下効果なども認められた。一方、心拍数は軽度の上昇がみられた。 なお、事前設定した、投薬中止率、有害事象である重篤な低血糖、膵がんや甲状腺がん、急性膵炎、不整脈などの点でデュラグルチド群とプラセボ群で差はなかった。ただし、消化管有害事象として、便秘および下痢を含む消化管有害事象の発現率は、プラセボ群(34.1%)に比べてデュラグルチド群(47.4%)で高かった(p<0.0001)。REWIND研究の腎予備解析:新知見は? 問題点は? 本研究の第2報である腎複合イベント解析は、副次的評価項目を予備解析したもので、REWINDの主要評価項目ではない。この解析結果を一言で要約すれば、「デュラグルチドのadd-on療法は新規の微量アルブミン尿発症を抑制する」ことである。腎複合イベント改善に、「腎機能低下抑制」や「腎代替療法開始抑制」は関与しなかった。本研究の対象が、腎機能良好群であること(eGFR 60mL/min/1.73m2以上でアルブミン尿なしが47%)を考慮すると、後二者が有意差に至らないのは自明でもある。なぜなら、一般的に糖尿病発症後の自然経過は、尿蛋白陽性例は5年間で30%、その後の経過観察25年間で30%が血清クレアチニン(Cr)値1.5mg/dL以上の慢性腎不全に至るとされる。つまり、糖尿病の自然経過を30年間追跡すると30%が慢性腎不全に至る。このことから、「30%以上のeGFR低下」と「腎代替療法開始」を腎アウトカムとした場合には相当な長期間観察を設定しなければ(仮にありうるにしても)有意差には至らない。インクレチン薬のアルブミン尿発症抑制の想定機序 現在、明確な腎保護作用のエビデンスが知られる薬剤は唯一RAS抑制薬(ACE阻害薬とARBの二者)であった。しかし、最近の新知見としてSGLT2阻害薬が心血管イベントを減少させるだけではなく、Class effectとして腎保護作用があることが、EMPA-REG OUTCOME、CANVAS Program、DECLARE-TIMI 58、CREDENCEにおいて明らかにされ、第3の腎保護薬として認識されつつある。 薬剤が腎保護を惹起する病態生理学的機序は複雑だ。腎の解剖学的見地からは、Glomerulopathy(糸球体障害)、Tubulopathy(尿細管障害)そしてVasculopathy(血管障害)の3系統を念頭に論じる必要がある。RAS阻害薬やSGLT2阻害薬は、糸球体高血圧を是正しGlomerulopathyを改善することが、主たる腎保護機序である(Tubulo-glomerular feedback:TGF)。また、これらの薬剤は、腎間質の低酸素環境改善や線維化抑制を介しTubulopathyやVasculopathyを改善する報告もある。 さて、GLP-1受容体が腎糸球体や尿細管に発現しているか否かには、いまだ議論がある。一方、腎血管系に発現している事実にはまったく異論はない。基礎実験でのインクレチン薬の主たる腎作用は、血圧低下作用、腎尿細管NHE3を介したNa利尿作用、ANP増加作用を介したNa利尿、そして、血圧低下作用と連関し、TGFを介した輸入細動脈収縮と腎内アンジオテンシンII低下による輸出細動脈拡張による糸球体内圧低下を惹起する(Tsimihodimos V, et al. Eur J Pharmacol. 2018;818:103-109.)。糸球体内圧低下は、アルブミン尿低下を惹起し腎保護的に働く。これらの作用はあたかもSGLT2阻害薬に類似するが、インクレチン薬の主たる薬理作用であるNa利尿作用は、利尿薬としてのpharmacological potencyは強くないためTGFを介した腎保護機序の関与度は、SGLT2阻害薬に比較して低いと想像される。実臨床における道のり REWIND研究の患者背景は、平均年齢60代、白人中心(76%)、肥満者(BMI 32)、腎機能はeGFRが77mL/min/1.73m2と保たれている患者での成績であり、本邦の糖尿病患者とは一致しない面がある。GLP-1受容体作動薬は、初期治療から用いられることは推奨されておらず、既存の糖尿病薬にステップ3ないし4でadd-onされる位置付けの薬剤である。 冒頭のDr. Gerstein氏はADA 2019での発表を、「幅広い中年の2型糖尿病患者において、デュラグルチドは血糖・血圧・脂質そして体重などに改善をもたらし心血管イベントならびに腎イベントを安全に低減されることが示された」、として締めくくったと取材班は伝えている。しかし、著者を含め腎臓・高血圧専門医の大多数は、同剤が腎イベントに対して有効との発言には、いささか抵抗感がある。現時点ではREWIND研究の結果から、「2型糖尿病の腎イベントを改善する」、との推論はいかにも時期早尚であり、正確には、「2型糖尿病の新規のアルブミン尿発症抑制に関連する」にとどめるべきである。今後、多くの研究と議論の集積が必要である。

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微量元素含有の高カロリー経腸栄養剤「イノラス配合経腸用液」【下平博士のDIノート】第28回

微量元素含有の高カロリー経腸栄養剤「イノラス配合経腸用液」今回は、経口・経管両用の経腸成分栄養剤「イノラス配合経腸用液」を紹介します。本剤は、1袋(187.5mL)で1日に必要なビタミン・微量元素の約3分の1が摂取できるように配合設計された半消化態経腸栄養剤です。経口での栄養摂取が困難または不十分な場合であっても、少量で効率的に栄養を補給することができます。<効能・効果>本剤は、手術後患者の栄養保持、とくに長期にわたり、経口的食事摂取が困難な場合の経管栄養補給の適応で、2019年3月26日に承認され、2019年6月6日より発売されています。なお、経口食により十分な栄養摂取が可能となった場合には、速やかに経口食に切り替えます。<用法・用量>通常、成人標準量として、本剤を1日562.5~937.5mL(3~5袋)を経管または経口投与します。経管投与の場合は、投与速度50~400mL/hで持続的または1日数回に分け、経口投与の場合は、1日1回または数回に分けて投与します。なお、年齢、体重、症状により投与量、投与速度を適宜増減します。<副作用>第III相比較試験(検証的試験)の安全性評価対象107例のうち、副作用発現数は11例(10.3%)でした。その内訳は、消化器系の副作用が下痢5例(4.7%)、軟便、便秘各1例(各0.9%)であり、その他は血中ナトリウム減少、血中ブドウ糖増加1例、血中トリグリセリド増加、白血球数増加が各1例(各0.9%)でした(承認時)。<患者さんへの指導例>1.経口での食事が摂れない場合や通常の食事だけでは十分な栄養が摂れない場合に、必要なエネルギーや栄養分を補うことができます。2.胃ろうや栄養チューブを使って投与する場合、最初は少量から始めてください。3.ヨーグルト風味とりんご風味の2種類がありますので、好みのフレーバーを医師または薬剤師に伝えてください。4.開封前はよく振ってください。開封後、飲む際はコップなどの容器に移し、残った場合はクリップなどで止めて冷蔵庫に保管して、24時間以内に飲みきってください。5.温めて使用する場合は、未開封の状態で70℃未満の湯せんで温めてください。温め過ぎるとタンパク質が変性する恐れがあります。6.下痢、便秘など、おなかの調子が普段と異なる場合は、1回量を減らすなどの調節をしてください。<Shimo's eyes>経腸栄養剤は、経口での食事摂取が困難または不十分な患者さんに使用することで、栄養状態を維持・改善させることができます。一般的にそのような患者さんは、活動性が低く、必要な維持エネルギー量が少ないですが、本剤は3袋(187.5mL×3=562.5mL)で900kcalのエネルギーに加えて、ビタミンと微量元素もほぼ充足できるように配合されています。本剤は高濃度(1.6kcal/mL)の半消化態経腸栄養剤であり、既存のエンシュア、ラコール、エネーボと比較して、同じカロリーを摂取する際の用量が少なくなります。1回量が少ないことで誤嚥のリスクが低減し、さらに運搬・保管も容易というメリットもあります。なお、本剤は濃縮乳蛋白質とカゼインナトリウムを含むため、牛乳アレルギーの患者さんには禁忌です。また、ビタミンK(メナテトレノン)を含むため、ワルファリンを服用中の患者さんでは、相互作用に注意が必要です。経口栄養剤を摂取している患者さんでは、下痢などを引き起こす可能性があるので、服薬指導ではおなかの調子を具体的に確認するようにしましょう。

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ASCO2019レポート 消化器がん(Upper GI)

レポーター紹介今年のASCOも消化器がん領域では免疫チェックポイント阻害薬が主役であった。胃がん初回化学療法におけるペムブロリズマブの効果を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。また、ポスターセッションでは、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果をより高めるために、血管新生阻害薬との併用効果を検討したり、食道がん術前化学放射線療法に免疫チェックポイント阻害薬を併用した試験が多く認められた。膵臓がんでは、gBRCA陽性患者に対するPARP阻害薬のメンテナンス治療の効果をみた試験の結果がプレナリーセッションで報告された。また、支持療法では、消化器がんで用いることが多い、50mg/m2以上のCDDPを使用する患者に対して、4剤併用の有効性を検証したJ-FORCE試験が報告された。LBA-4007 胃がん初回化学療法KEYNOTE-062試験(Non-colorectal, Oral presentation)胃がんにおける免疫チェックポイントの位置付けは、3次治療以降でのニボルマブの単剤投与であり、昨年報告されたKEYNOTE-061試験の結果では、2次治療としてのペムブロリズマブは、パクリタキセル単剤に対してCPS(Combined Positive Score:腫瘍細胞および腫瘍浸潤免疫細胞でのPD-L1陽性割合)が1%以上の胃がんでの優越性を示すことはできなかった。今回は初回化学療法例を対象に、5-FU(あるいはカペシタビン)+CDDP療法(C群)に対する、ペムブロリズマブ併用療法(C+P群)の優越性と、単剤療法(P群)の非劣性を検証したKEYNOTE-062試験の結果が報告された。対象はCPS 1%以上の切除不能再発胃がんで、763例が登録された。日本を含む東アジアからは約25%が登録され、欧州・米国・オーストラリアからの登録が約60%と多数を占めた。主要評価項目は4つあり、C群に対するP+C群の無増悪生存期間(PFS)の優越性(≧CPS 1)、全生存期間(OS)の優越性(≧CPS 1)および(≧CPS 10)、P群のOSでの非劣性(≧CPS 1)であった。C群とP群の比較においては、OS中央値、12ヵ月OS割合、24ヵ月OS割合は、C群とP群でそれぞれ11.1ヵ月と10.6ヵ月、46%と47%、そして19%と27%であり、HR:0.91(99.2%CI:0.69~1.18)と、HRの信頼区間の上限は、あらかじめ決めておいた非劣性マージン1.20を下回ったため、P群の非劣性が示された。探索的な検討であるが、≧CPS 10の患者群では、24ヵ月生存割合がC群とP群で22%と29%と、よりP群で良好な結果であった。しかし、PFS中央値は、C群とP群で6.4ヵ月と2.0ヵ月、12ヵ月PFS割合は19%と14%と、P群で不良な傾向であった。後治療はP群で52.8%実施されていることから、後治療を含めた治療により、長期生存が得られていると考えられた。C群とC+P群の比較では、OS中央値はC群とC+P群でそれぞれ11.1ヵ月と12.5ヵ月、12ヵ月OS割合は46%と53%、24ヵ月OS割合は19%と24%であり、HR:0.85(95%CI:0.70~1.03、p=0.046)と、統計学的に有意な生存期間の延長は認められなかった。驚いたことに、≧CPS 10の患者群でも両者のHRは0.85であり、より有効性が期待できる手段においてもC+P群の効果は変わらなかった。有害事象はいずれの群も許容される範囲内であった。まず、CPSにて対象を絞っても、他のがん種で示されているような、プラチナ併用初回化学療法に対する免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が胃がんでは示せなかったこと、C+P群で思ったほど治療効果が持続していないこと、KEYNOTE-061試験で示されたCPSでの対象選択が、併用群では打ち消されていることなど、いくつかのポイントがクエスチョンとして挙がってくるが、今後の検討が必要である。非劣性が示され、CPS 1以上の胃がんでの初回化学療法の選択肢となりうるとされたペムブロリズマブも、効果のある症例は長く持続するが、半数の患者が2ヵ月で病勢進行を来している。従来の化学療法を受ける機会を逸しないためにも、対象は慎重に選択されるべきで、CPS 10以外にも効果のありそうな対象が絞り込める情報が必要である。また、薬剤コストの面についても問題が指摘されており、臨床的意義についてディスカッションが必要である。また、現在実施中である、ATTRACTION-4試験(胃がん初回化学療法SOX/XELOX±ニボルマブ)、CheckMate-649試験(胃がん初回化学療法XELOX/FOLFOX±ニボルマブ、およびニボルマブ+イピリムマブ)の比較試験の結果がどうなるのか、同じ結果なのか、異なる結果になるのか、大変興味深い。消化管がんに対する免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬、放射線療法の併用(Non-colorectal, Developmental therapeutics, poster)KEYNOTE-062試験の結果で、改めて消化管がんの研究者が思ったことは、胃がんは免疫原性が低い、CPSも堅牢なバイオマーカーではなく、化学療法との併用も微妙で、より強力な治療が必要、である。以前より、ニボルマブ(Nivo)とラムシルマブの併用が有効性を高めることが報告されていたり、肝細胞がんでのペムブロリズマブとレンバチニブとの併用で、奏効割合の改善が報告されたりしていたが、同様に、免疫チェックポイント阻害薬と血管新生阻害薬の併用療法を検討した、Nivoとレゴラフェニブ(Rego)の併用Phase I試験の結果が報告された(#2522)。REGONIVO試験では、標準投与量のNivoにRegoを通常量の半量である80mgより併用し、毒性をみながら増量し安全性をみる試験である。Regoが腫瘍関連マクロファージ(TAM)を抑えることで免疫抑制状態を解除し、抗腫瘍効果を高めるということが報告されている。胃がん、大腸がんそれぞれ25例が登録されたが、Rego 80mgとRego 120mgのコホートでは用量制限毒性(DLT)を認めず、160mgへ増量された。160mgのコホートでは、3例中3例にDLT(皮膚毒性、蛋白尿、消化管穿孔)が認められ、また120mgのコホートでも継続投与にて頻繁にGrade3の皮膚毒性が認められたため、Rego 80mgが推奨投与量とされた。奏効割合はマイクロサテライト安定(MSS)大腸がんに対して36%、胃がんに対して44%と高い効果を認め、さらなる治療開発が期待されている。また、胃がん初回化学療法例に対して、XELOX療法に抗PD-1抗体であるcamrelizumabを併用し、4~6回投与した後、XELOXを休止、血管新生阻害薬であるapatinibとcamrelizumabの併用療法によるメンテナンスを行うPhase II試験(#4031)では奏効割合58.6%、食道扁平上皮がんの初回化学療法例に対するリポソーマルパクリタキセルと、ネダプラチンにcamrelizumabとapatinibの併用を評価したPhase II試験(#4033)では奏効割合80%と報告されている。いずれも併用により毒性が強くなるため、血管新生阻害薬の単剤での投与量を大幅に減量する必要があるが、有効性は、探索的な検討ながら、良好にみえる。さらなる結果を待って、使いどころを検討する必要がある。肺がんなど他がん腫ですでに示されている、放射線療法と免疫チェックポイント阻害薬の探索的な試験の結果が報告されている。韓国からは食道扁平上皮がんに対する術前化学放射線療法にペムブロリズマブを併用したPhase II(#4027)が報告された。病理学的完全奏効割合(pCR)は46.1%と高く、懸念された間質性肺炎は認められなかったが、手術症例26例中2例がARDSなどの肺障害により死亡しており、術前のペムブロリズマブの影響が懸念された。また食道胃接合部腺がんに対しては、欧米での標準治療の1つである術前カルボプラチン+パクリタキセル+放射線療法に、PD-L1抗体であるアベルマブを併用し、術後にもアベルマブを継続するPhase I/II試験(#4041)が行われ、7例のPhase I部分のみの発表であったが、重篤な毒性はなく、pCR割合も43%と比較的良好であった。また、術前化学放射線療法後に切除を行った食道胃接合部腺がんの術後にデュルバルマブを1年投与するPhase II試験(#4058)では、重篤な有害事象はないと報告されている。今後の免疫療法は、“併用療法”“周術期”といったところへシフトしていくと思われる。LBA4 膵臓がんに対するPARP阻害薬メンテナンス:POLO試験(Plenary session)PARP阻害薬であるオラパリブは、生殖細胞系列遺伝子のBRCA(gBRCA)に変異のある乳がんや卵巣がんに用いられているが、他がん腫での検討はまれである。POLO試験では、gBRCA1/2に変異のある進行膵がんに対してプラチナ併用化学療法を行い、進行がみられなかった患者をオラパリブとプラセボに割り付け、メンテナンス治療としての有効性をみた試験である。gBRCA1/2変異は、3,315例の患者をスクリーニングし、247例(7.4%)に認められ、うち、92例がオラパリブ群、62例がプラセボ群に割り付けられた。前治療はFOLFIRINOXが約80%と多く、治療効果も群間で差異はなかった。主要評価項目である無増悪生存期間中央値はオラパリブ群7.4ヵ月、プラセボ群3.8ヵ月であり、HR:0.53と有意に改善が認められた。生存期間を評価するにはイベントは不十分であるが、中央値オラパリブ群18.9ヵ月、プラセボ群18.1ヵ月と差を認めなかった。有害事象は予想されたものであった。また、すべてのサブグループにて同様の傾向であった。日本ではこの試験は実施されておらず、この結果が今後の日常診療にどのように取り込まれるのか、今後注目される。#11503 標準的制吐薬に対するオランザピンの上乗せ効果を検証したJ-FORCE試験(Symptom and Survivorship, Oral presentation)高度催吐性化学療法(Highly Emetogenic Chemotherapy:HEC)における標準制吐療法である、アプレピタント(APR)、セロトニン受容体拮抗薬、デキサメタゾン(DEX)にオランザピン(OLZ)10mgを併用することが遅発期の制吐に有効であることが証明されているが、眠気が問題点であった。この試験では予備的試験を行ったうえ、OLZ:5mgを試験治療群とし、プラセボ群に対する、遅発期(CDDP投与開始24時間後から120時間以内)の嘔吐完全抑制割合における優越性を検証した。705例が登録され、試験治療群が354例、プラセボ群が351例、患者背景は、55歳以上が80%以上、男性が65%、肺がん(50%)、食道がん(20%)、婦人科がん(10%)、その他であった。主要評価項目である遅発期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の66%に対して、試験治療群が79%(p<0.001)と有意に優れた結果であった。また、副次的評価項目である急性期の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の89%に対して、試験治療群が95%(p=0.002)、全期間の嘔吐完全抑制割合は、プラセボ群の64%に対して、試験治療群が78%(p<0.001)と有意に良好な結果であった。試験治療群の有害事象のうち、全グレード(Grade3)の眠気が43%(0.3%)、めまいが8%(0%)と口腔内乾燥が21%(0%)と有意に多かったが、両群ともにGrade4は認めなかった。しかしながら、治療期間中の生活経過記録の解析結果から、試験治療群はプラセボ群と比較して有意(p<0.05)に良好であったことが示され、新たな標準治療であることが示された。日本の支持療法研究グループで行われた臨床試験が、世界の標準治療を塗り替えた非常に意義深い試験である。今回のASCOでも依然として免疫チェックポイント阻害薬の演題が多数を占めた。単剤の治療の時代から、併用療法や集学的治療へシフトしている。また、免疫細胞療法などの演題も多数認められ、新時代の到来を予感させられる。また、J-FORCE試験がOral Presentationに選ばれるなど、支持療法のエビデンス創出が日本でも盛んになってきており、今後にも期待したい。

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