サイト内検索|page:223

検索結果 合計:10324件 表示位置:4441 - 4460

4441.

新型コロナは日常診療にどう影響?勤務医1,000人に聞いたストレス・悩みの理由

 2020年初頭から続いたCOVID-19の感染拡大は、ようやく鈍化傾向を見せ始めた。各地で出されていた緊急事態宣言が先月までに相次いで解除となり、社会が“これまでの日常”に戻るべく動き出しているが、医療現場では依然、緊張した対応を迫られる状況が続いている。ケアネットでは、医師会員を対象に、コロナ対応を巡る経営・組織・心理面での影響についてアンケート調査を実施し、1,000人から回答を得た。 調査は、2020年5月16~22日、ケアネット会員のうち勤務医を対象にインターネット上で実施した。回答者の内訳は、年代別では30代が最も多く(32%)、40代(31%)、50代(23%)、60代以上(14%)だった。勤務先における立場は、「一般スタッフ」が最も多く(578人、58%)、次いで「部下6人以上のマネジメント層」(241人、24%)、「部下5人以下のマネジメント層」(181人、18%)だった。病床数別では、200床以上が77%で最も多く、100~199床(15%)、20~99床(8%)という順だった。なお今回のアンケート結果は、COVID-19感染者数が多かった地域のうち、9都府県(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡)で勤務する医師にご協力いただいたものである。 COVID-19感染拡大による影響として最も多かったのは、「院内感染防止のために特別な対応が必要になった」で、634人が回答に挙げていた(アンケートは選択形式、複数回答可)。続いて多かったのは、「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(574人)、「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(556人)、「衛生資材の確保が難しくなった」(539人)で、いずれも半数以上の医師が回答に挙げていた。このほか、「来院者が減り、経営面の不安が出るようになった」、「見通しが立たない状況が続くことに疲れやいらだちを感じる」なども多くの医師が回答に挙げていた。 各選択肢のうち、一般スタッフの割合が最も高かったのは、「院内感染防止のために特別な対応が必要になった」(58.5%)で、以下、「COVID-19感染リスクに自身・スタッフがさらされることに不安を覚える」(55.2%)「学会や勉強会などの直接的なコミュニケーションの機会が失われた」(51.7%)などが続いた。 マネジメント層においても、上記3項目を選択した人は多かった。これに加え、とくに部下6人以上のマネジメント層では「衛生資材の確保が難しくなった」(67.2%)を挙げる人の割合が高く、スタッフの身を守る立場の医師たちが感染防止対策に苦慮していることがうかがえる。同様に、「来院者が減り、経営面が不安」を半数以上が挙げているのも、部下6人以上のマネジメント層の回答の特徴だ。 アンケートでは、現況に対しストレスや悩みを解消するための工夫や取り組みについて記述式で聞いたところ、多くのコメントが寄せられた。今回の調査の詳細と、具体的な記述コメントの内容はCareNet.comに掲載中。

4442.

アテゾリズマブによる筋層浸潤性尿路上皮がん術後療法の結果(IMvigor010試験)/ASCO2020

 筋層浸潤性尿路上皮がんに対する術後療法としての免疫チェックポイント阻害薬(ICI)・アテゾリズマブの有用性を検討したIMvigor010試験の結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)で米国・Robert H. Lurie Comprehensive Cancer CenterのMaha H. A. Hussain氏より発表された。本試験は、筋層浸潤性尿路上皮がん(MIUC)に対する術後療法として初めてICIの有用性を検討した、日本も参加したオープンラベルの国際第III相試験である。・対象:再発リスクの高いMIUCであり、リンパ節郭清を伴う根治的膀胱摘除術/腎尿管摘除術施行から14日以内の症例。術後の放射線療法や術後化学療法の施行例は許容せず・試験群:アテゾリズマブ 1,200mg/日を3週ごと、16サイクルまたは1年まで(ATZ群)・観察群:経過観察。アテゾリズマブのクロスオーバー投与は許容せず・評価項目:[主要評価項目]全集団(ITT)における無病生存期間(DFS)[副次評価項目]ITTにおける全生存期間(OS)・統計学的設計:階層的な解析計画であり、ITTにおけるDFSがポジティブだった場合に、ITTでのOSの検討をする。 主な結果は以下のとおり。・2015年10月~2018年6月に、ATZ群406例、観察群403例の計809例が登録された。・2019年11月のデータカットオフ時点(追跡期間中央値21.9ヵ月)での、DFS中央値はATZ群19.4ヵ月、観察群16.6ヵ月で、ハザード比(HR)は0.89(95%CI:0.74~1.08)、p=0.2446で、統計学的な有意差は認められなかった。・事前の層別化因子として設定されていたPD-L1発現状況などを含むいずれのサブグループにおいても、両群間にDFSの有意な差は見いだされなかった。・中間解析としてのOSの検討では、両群ともに中央値に達しておらず、HRは0.85(95%CI:0.66~1.09)であった。・ATZ群では治療関連有害事象が71%に認められ、そのうちGrade 3/4が16%、治療中止が16%、1例の治療関連死があった。免疫関連有害事象は全Gradeで46%(主なものは皮疹、甲状腺機能低下、肝炎、大腸炎など)だったが、Grade 3/4は9%だった。 発表者のHussain氏は、「IMvigor010試験では、主要評価項目は達成されなかったが、OSの追跡は続いている。探索的なバイオマーカー解析やサブグループ解析により、新たな知見が示されるかもしれない。またアテゾリズマブの単剤や併用での尿路上皮がんに対する、他の臨床試験が進行中である」と述べた。

4443.

中国発・COVID-19ワクチン、接種28日後に免疫原性を確認/Lancet

 遺伝子組み換えアデノウイルス5型(Ad5)をベクターとして用いた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは、健康成人に接種後28日の時点で免疫原性を示し、忍容性も良好であることが、中国・江蘇省疾病管理予防センターのFeng-Cai Zhu氏らがヒトで初めて行った臨床試験で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年5月22日号に掲載された。2020年5月20日現在、215の国と地域で470万人以上が重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に感染し、31万6,000人以上が死亡したとされる。有効な予防策がない中で、現在、集団発生を抑制する方法として、検疫、隔離、身体的距離の保持(physical distancing)などが行われているが、SARS-CoV-2感染に伴う死亡や合併症の膨大な負担を軽減するには、有効なワクチンの開発が急務とされる。単施設の用量漸増第I相試験 研究グループは、中国CanSino Biologicsが開発中の、SARS-CoV-2のスパイク糖タンパク質を発現する非複製型Ad5ベクターCOVID-19ワクチンの用量漸増第I相試験(単施設、非盲検、非無作為化)を行った(中国国家重点研究開発計画などの助成による)。 年齢18~60歳の健康成人を連続的に登録し、3つのワクチン用量(ウイルス粒子が低用量:5×1010、中用量:1×1011、高用量:1.5×1011)に割り付け、筋肉内に注射した。 主要アウトカムは、ワクチン接種から7日以内の有害事象とした。安全性評価は、ワクチン接種から28日の時点で行った。 特異的抗体は酵素結合免疫吸着法(ELISA)で測定し、ワクチン接種によって誘発された中和抗体反応はSARS-CoV-2ウイルス中和試験と疑似ウイルス中和試験で検出した。T細胞応答は、酵素結合免疫スポット(ELISpot)アッセイとフローサイトメトリーアッセイで評価した。約半数に注射部位の痛みおよび発熱、中和抗体は28日にピークに 2020年3月16日~27日の期間に、108例(平均年齢36.3歳、女性49%)が登録された。各用量群に36例ずつが割り付けられ、全者が解析に含まれた。 ワクチン接種から7日以内に有害事象が報告されたのは、低用量群が30例(83%)、中用量群が30例(83%)、高用量群は27例(75%)であり、各群間に差は認められなかった。 最も多い注射部位の有害反応は痛み(58例[54%])で、低用量群は17例(47%)、中用量群は20例(56%)、高用量群は21例(58%)にみられた。 最も多い全身性の有害反応は発熱(50例[46%])で、次いで疲労感(47例[44%])、頭痛(42例[39%])、筋肉痛(18例[17%])であった。重度(Grade3)の発熱(腋窩温>38.5℃)が9例(低用量群2例[6%]、中用量群2例[6%]、高用量群5例[14%])で発現したが、全群で報告されたほとんどの有害反応は軽度~中等度だった。28日以内に重篤な有害事象の報告はなかった。 ワクチン接種から14日には、3つの用量群で受容体結合ドメイン(RBD)への迅速な結合抗体応答が認められ、28日には高用量群で結合抗体の幾何平均抗体価(GMT)が最も高くなった(低用量群615.8、中用量群806.0、高用量群1,445.8、p=0.016)。 SARS-CoV-2に対する中和抗体は、0日には3つの用量群とも認められなかったが、14日には中等度の増加がみられ、3群とも28日にピークに達した。28日の中和抗体のGMTは高用量群が最も高かった(低用量群14.5、中用量群16.2、高用量群34.0、p=0.0082)。 ELISpotによるT細胞応答は、ベースライン時には3つの用量群とも検出されず、ワクチン接種から14日後にピークに達した。14日時のspot形成細胞数の平均値は、100,000個あたり低用量群が20.8、中用量群が40.8、高用量群は58.0であり、高用量群は低用量群に比べ有意に高かった(p<0.0010)が、中用量群との間には差はなかった。 14日および28日に、すべての用量群でCD4陽性T細胞とCD8陽性T細胞からのインターフェロンγ(IFNγ)の分泌が検出された。14日時のCD4陽性T細胞での腫瘍壊死因子α(TNFα)の発現は、低用量群が高用量群(p<0.0001)および中用量群(p=0.0032)よりも低かった。また、CD4陽性T細胞から検出されたインターロイキン2(IL-2)の量は、CD8陽性T細胞に比べて多かった。 著者は、「現在、開発が進められているさまざまなワクチンは、いずれも利点と弱点があり、優劣の予測は時期尚早である。今回の研究で得られた知見は、このAd5ベクターCOVID-19ワクチンのさらなる検討を正当化するものである」としている。

4444.

漫然とした多剤併用に一石!(解説:桑島巖氏)-1239

 高齢者におけるpolypharmacy(多剤併用)が社会問題化している。確かに高齢者では複数の疾患が多くなり薬剤数が増えることはある程度やむを得ないかもしれない。しかし効果のない薬を漫然と処方することはぜひ避けなければならない。 英国から発表されたOPTIMISE研究は臨床に即した重要な論文である。 収縮期血圧が150mmHg未満で2種類以上の降圧薬を服用している80歳以上の症例(平均84.8歳)を、1種類降圧薬を減らす群(介入群)282例と従来どおりの治療群(対照群)に非盲検化にランダム化して12週後の血圧に差がないことを確認する非劣性試験である。 その結果、12週後の収縮期血圧が150mmHg未満を維持していた症例は、介入群86.4%、対照群87.7%で両群に有意差はなかった。 つまり1剤降圧薬を減らしても血圧は上がってこなかったということであり、無駄な降圧薬が処方されていたという訳である。 この結果はしばしば経験するところであり、当に我が意を得たりというところである 白衣高血圧は降圧薬の影響を受けにくいため、高齢者の研究では白衣高血圧の除外は必須である。その対策として、この研究ではBpTRUという自動血圧測定器を用いている。この機器は最初の1回だけ医療スタッフがボタンを押して血圧を測定するが、その後スタッフがいなくなっても1分おきに最低でも5分間自動的に血圧測定を行うことで“白衣効果”を除外する工夫をしている。 もう一つの可能性としては、両群とも降圧薬として、ACE阻害薬またはARBが84%に処方され、Ca拮抗薬も70%近く処方されているところから、ACE阻害薬/ARBとCa拮抗薬の併用が多かったことがわかる。 高齢者では、低レニンがほとんどでありACE阻害薬/ARBの降圧効果はCa拮抗薬に比べるとはるかに弱い。最強のARBと販売企業が宣伝するアジルサルタン(商品名アジルバ)とCa拮抗薬を1対1で比較したACS 1研究(Hypertension2015:65:729)の結果をみると一目瞭然である。 Ca拮抗薬とARBの併用はわが国でも非常に多いが、高齢者でもARBを除いてみても血圧は上昇してこない場合がほとんどであり、この研究はその臨床経験を裏付けるものである。 ただしこの研究に参加した高齢者は、英国のGP(総合医)が薬を減らしても問題がないと考えた症例のみが選ばれており、当然心不全、心筋梗塞、脳卒中既往などのリスクの高い症例は含まれていないことには注意が必要である。

4445.

COVID-19へのヒドロキシクロロキン、死亡・心室性不整脈が増加か/Lancet

※本論文は6月4日に撤回されました。 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者へのヒドロキシクロロキンまたはクロロキン±第2世代マクロライド系抗菌薬による治療は、院内アウトカムに関して有益性をもたらさず、むしろ院内死亡や心室性不整脈のリスクを高める可能性があることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らの調査で示された。研究の成果は2020年5月22日、Lancet誌オンライン版に掲載された。抗マラリア薬クロロキンと、そのアナログで主に自己免疫疾患の治療薬として使用されるヒドロキシクロロキンは、多くの場合、第2世代マクロライド系抗菌薬との併用でCOVID-19治療に広く用いられているが、その有益性を示す確固たるエビデンスはない。また、これまでの研究で、このレジメンは心血管有害作用としてQT間隔延長をもたらし、QT間隔延長は心室性不整脈のリスクを高める可能性が指摘されている。6大陸671病院の入院患者の多国間レジストリ解析 研究グループは、COVID-19治療におけるヒドロキシクロロキンまたはクロロキン±第2世代マクロライド系抗菌薬の有益性を評価する目的で多国間レジストリ解析を行った(ブリガム&ウィメンズ病院の助成による)。 レジストリ(Surgical Outcomes Collaborative)には6大陸671ヵ所の病院のデータが含まれた。対象は、2019年12月20日~2020年4月14日の期間に入院し、検査で重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)が陽性のCOVID-19患者であった。 診断から48時間以内に次の4つの治療のうち1つを受けた患者と、これらの治療を受けていない対照群を解析に含めた。(1)ヒドロキシクロロキン、(2)ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬、(3)クロロキン、(4)クロロキン+マクロライド系抗菌薬。マクロライド系抗菌薬はクラリスロマイシンとアジスロマイシンに限定された。 診断後48時間を超えてから治療が開始された患者や、機械的換気およびレムデシビルの投与を受けた患者は除外された。 主要アウトカムは、院内死亡と新規心室性不整脈(非持続性・持続性の心室頻拍および心室細動)とした。4レジメンすべてで、死亡と心室性不整脈が増加 試験期間中にCOVID-19患者96,032例(平均年齢53.8歳、女性46.3%)が入院し、適格基準を満たした。このうち、1万4,888例が治療群(ヒドロキシクロロキン群3,016例、ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬群6,221例、クロロキン群1,868例、クロロキン+マクロライド系抗菌薬群3,783例)で、8万1,144例は対照群であった。1万698例(11.1%)が院内で死亡した。 交絡因子(年齢、性別、人種または民族、BMI、心血管系の基礎疾患とそのリスク因子、糖尿病、肺の基礎疾患、喫煙、免疫不全疾患、ベースラインの疾患重症度)を調整し、対照群の院内死亡率(9.3%)と比較したところ、4つの治療群のいずれにおいても院内死亡リスクが増加していた。各群の院内死亡率およびハザード比(HR)は、ヒドロキシクロロキン群18.0%(HR:1.335、95%信頼区間[CI]:1.223~1.457)、ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬群23.8%(1.447、1.368~1.531)、クロロキン群16.4%(1.365、1.218~1.531)、クロロキン+マクロライド系抗菌薬群22.2%(1.368、1.273~1.469)であった。 また、入院中の新規心室性不整脈のリスクは、対照群(発生率0.3%)と比較して、4つの治療群のすべてで増加していた。各群の発生率とHRは、ヒドロキシクロロキン群6.1%(HR:2.369、95%CI:1.935~2.900)、ヒドロキシクロロキン+マクロライド系抗菌薬群8.1%(5.106、4.106~5.983)、クロロキン群4.3%(3.561、2.760~4.596)、クロロキン+マクロライド系抗菌薬群6.5%(4.011、3.344~4.812)。 著者は、「これらの薬剤の有用性を示唆するエビデンスは、少数の事例研究や小規模の非盲検無作為化試験に基づいているが、今回の研究は複数の地域の多数の患者を対象としており、現時点で最も頑健な実臨床(real-world)のエビデンスをもたらすものである」とし、「これらの知見は、4つの治療レジメンは臨床試験以外では使用すべきでないことを示唆しており、無作為化臨床試験により早急に確認する必要がある」と指摘している。 なお、本論文のオンライン版は、掲載後に、使用したデータベースに問題があることが判明し、修正のうえ2020年5月29日付で再掲されている。修正の前後で結論は変わらないとされるが(https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)31249-6/fulltext)、同じデータベースを用いた他の論文を含め調査が進められており、今後、さらに修正が加えられる可能性もある。

4446.

腎移植者への細胞治療、免疫抑制による感染症を抑制/Lancet

 生体腎移植患者の免疫抑制療法において、制御性細胞療法は施行可能かつ安全であり、標準的な免疫抑制薬による治療と比較して感染性合併症が少なく、1年目の拒絶反応の発生率はほぼ同等であることが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のBirgit Sawitzki氏らの検討「The ONE Study」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年5月23日号に掲載された。免疫抑制薬は臓器移植の適応を拡大したが、副作用や慢性拒絶反応のため、この10年、生着期間は横ばいだという。長期の免疫抑制薬の使用は合併症や医療費の増加をもたらすため、拒絶反応の予防においては、免疫抑制薬への依存度を低減する新たな戦略が求められている。細胞由来医薬品(cell-based medicinal product:CBMP)は、臓器移植における免疫抑制薬の削減に寄与する最先端のアプローチとして期待を集めている。同一デザインの7つの非無作為化単群試験 本研究は、5ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国)の8つの病院が参加した、同一のデザインを共有する7つの医師主導の単群試験であり、2012年12月11日~2018年11月14日の期間に実施された(第7次欧州連合フレームワークプログラムの助成による)。 対象は、年齢18歳以上の生体腎移植患者であった。また、追跡期間は60週だった。 7つの試験のうち1つは参照群試験(RGT)であり、8病院で標準的な免疫抑制薬による治療(バシリキシマブ、ステロイド漸減、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス)が行われた。 RGTへの患者登録が終了した後、6つの非無作為化第I/IIa相試験として、細胞療法群(CTG)の試験が7病院で実施された。これらの試験では、各病院で6つのCBMPのうち1つが投与され、患者データをプールして解析が行われた。バシリキシマブによる導入療法をCBMPで代替し、ミコフェノール酸モフェチルの漸減療法を可としたものを除き、患者選択や免疫抑制療法はRGTと同様だった。 6つのCBMPは、2つの多クローン性制御性T細胞(pTreg-1、pTreg-2)、2つのドナー抗原反応性Treg(darTreg-CSB、darTreg-sBC)、自家免疫寛容誘導性樹状細胞(ATDC)、制御性マクロファージ細胞(Mreg)であった。 主要エンドポイントは、移植後60週以内に生検で確定された急性拒絶反応(BCAR)とした。BCAR発生率:12% vs.16%、感染症はRGTで約6倍 130例が登録され、治療を受けた104例が解析に含まれた。RGTで治療を受けた66例の年齢中央値は47歳、73%が男性であった。6つのCTG試験で治療を受けた38例は、それぞれ45歳および71%だった。 RGTの標準的免疫療法を受けた移植患者における60週時のBCAR発生率は12%(8/66例)であり、予測範囲内(3.2~18.0%)であった。また、6つのCTG試験のBCAR率は16%(6/38例)で、これも予測の範囲内だった。また、初発BCARの重症度別(Banff分類スコア)の患者分布は、RGTとCTG試験で類似していた。 CBMPの投与を受けた患者38例のうち15例(40%)はミコフェノール酸モフェチルからの離脱に成功し、試験終了時にはタクロリムス単剤による維持療法に移行していた。これに対し、RGTの患者では、98%(60/61例)が2剤以上の免疫抑制薬の併用療法を続けていた。 CTG試験の有害事象の統合データおよびBCARエピソードからは、RGTと比較して安全性に関する懸念は示されなかった。 治療関連の重篤な有害事象の発生状況は、感染症を除き全般にRGTとCTG試験で類似していた。治療関連の重篤な感染症エピソードの発生率は、RGTがCTG試験の約6倍であった。また、すべての感染症の発生率もCTG試験で低く、このパターンは6つの試験で共通しており、腎移植後の観察期間全体を通じて一貫して認められた。 著者は、「免疫細胞療法は、一般的な免疫抑制薬の負担を最小化し、腎移植患者における有用な治療アプローチとなる可能性がある」としている。

4447.

COVID-19に対するレムデシビルによる治療速報―米中のCOVID-19に対する治療薬・ワクチンの開発競争(解説:浦島充佳氏)-1238

 COVID-19に対して各国で治療薬・ワクチンの開発が進められている1)。エイズの治療薬であるカレトラは期待が持たれたが、ランダム化臨床試験でその効果を否定された2)。4月29日、レムデシビルは武漢のランダム化臨床試験で、明らかに治療薬群で有害事象による薬剤中止例が多く、途中で中止された。したがって十分な症例数ではないが、レムデシビル群の死亡率は14%、プラセボ群のそれは13%であり治療効果を確認することはできなかった3)。ところが同日、米国国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ博士は同じくランダム化臨床試験[NCT04280705]の結果、レムデシビルを投与された患者の回復期間の中央値は11日で、プラセボを投与された患者(15日)よりも31%短かったことにより、「レムデシビルには、回復までの期間を短縮させる効果がある」と発表した。通常、記者会見は論文が誌上で公表された直後に行われる。トップジャーナルでは、たとえば「○月○日の東部時間○時に誌上発表になる。それ以前よりメディアと打ち合わせして、ニュースをどのように構成するかを相談してもよいが、記者会見はそれ以降とすること」などと厳しく規定される。記者会見の場にはトランプ大統領も同席し、腕を組んでファウチ博士のことをにらみつけていたのが印象的であった。これを受けて米国はレムデシビルをCOVID-19の治療薬として認可し、日本政府も続いて承認手続きに入った。 しかしながら、この米国の臨床試験では、途中で研究計画上の変更が行われている。患者受け入れ期間を20日間延長し、研究対象の範囲も中~重症を酸素投与が不必要な軽症入院事例まで拡大し、対象人数も394人から1,063人に増やし、プラセボを途中から生理食塩水に変更し、効果判定項目も重症度の改善から酸素不要あるいは退院(在宅酸素を含む)に変更している。これは通常の治験あるいは臨床試験ではあり得ない変更だ。たとえば、プラセボが生理食塩水に切り替わったことにより、主治医は目の前の患者がレムデシビル群かプラセボ群かどちらに振り分けられたのかを知りえるかもしれない。主治医がレムデシビルに強い期待を持つことにより、意図的にレムデシビル群で早く酸素を中止したり、早めに退院を誘導し在宅酸素療法に切り替えたりする、逆に生理食塩水の群に含まれた患者で主治医がこの逆をすれば、本当はレムデシビルにCOVID-19患者の症状を改善する効果がないのに、「効果がある」という誤った結論を導く可能性がある。 この治験の詳細な結果は5月22日のNEJM誌に速報として掲載された。内容を精査すると、中等症から軽症の患者には有効であるが、人工呼吸器やECMO を使用するような重症例では効果を認めていない。今後のエビデンスに期待したいが、少なくとも現時点でレムデシビルは致死的COVID-19 に対して有効であるとはいえない。 これは私の考え過ぎかもしれないが、レムデシビルは米国の製薬会社、ギリアド社の開発した薬剤であり、中国はこれを否定し、米国がこれを是が非でも肯定したいという政府の思惑に見えてしまう。1)Borba MGS, et al. JAMA Netw Open. 2020;3:e208857.2)Cao B, et al. N Engl J Med. 2020;382:1787-1799.3)Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.

4448.

tucatinib追加、HER2+乳がん脳転移例でOS改善(HER2CLIMB)/ASCO2020

 脳転移を有する既治療のHER2陽性乳がん患者に対し、トラスツズマブ+カペシタビンへのtucatinib追加投与はプラセボの追加投与と比較して、頭蓋内奏効率(ORR-IC)が2倍となり、CNS無増悪生存(CNS-PFS)および全生存(OS)アウトカムが良好であったことが示された。米国・ダナファーバーがん研究所のNancy U. Lin氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で第II相HER2CLIMB試験の探索的解析結果を発表した。tucatinib群で全死亡リスクが42%減少・対象:18歳以上、ベースライン時に脳転移を有し、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1による治療後に病勢進行が認められた、HER2陽性乳がん患者(ECOG PS 0/1) 291例・試験群:tucatinib(1日2回300mg、経口投与)+トラスツズマブ(21日ごとに6mg/kg[1サイクル目の1日目だけ8mg/kg])+カペシタビン(21日ごとに1日目から14日まで1日2回1,000mg/m2、経口投与) 191例・対照群:プラセボ+トラスツズマブ+カペシタビン 93例・評価項目:[脳転移を有する全患者]CNS-PFS、OS[測定可能な頭蓋内病変を有する患者]ORR-IC、頭蓋内奏効期間(DOR-IC)[CNSの局所治療を受け、孤立性CNS病変の進行後に本試験の治療を継続した患者] 無作為化から2回目の進行あるいは死亡までの期間、1回目の孤立性CNS病変の進行から2回目の進行あるいは死亡までの期間 tucatinib群と対照群を比較した主な結果は以下のとおり。・ベースライン特性は、平均年齢tucatinib群53歳 vs.プラセボ群52歳、ECOG PS 1が53.5% vs.59.1%、ホルモン(ERおよび/またはPR)陽性が54.0% vs.63.4%。・CNS進行あるいは死亡リスクは、tucatinib群で68%減少した(ハザード比[HR]:0.32、95%信頼区間[CI]:0.22~0.48、p<0.00001)。CNS-PFS中央値は、9.9ヵ月 vs. 4.2ヵ月。・全死亡リスクはtucatinib群で42%減少した(OS HR:0.58、95%CI:0.40~0.85、p = 0.005)。OS中央値は18.1ヵ月 vs.12.0ヵ月。・ORR-ICは47.3%(95%CI:33.7~61.2)vs.20.0%(95%CI:5.7~43.7)とtucatinib群で高かった。内訳は完全奏効(CR):3例(5.5%)vs.1例(5.0%)、部分奏効(PR):23例(41.8%)vs.3例(15.0%)。・DOR-IC中央値は6.8ヵ月(95%CI:5.5~16.4)vs.3.0ヵ月(95%CI:3.0~10.3)であった。・局所治療後も本試験の治療を継続した孤立性CNS病変を有する患者(30例)では、2回目の進行または死亡リスクがtucatinib群で67%減少し(HR:0.33、95%CI:0.13~0.85、p=0.02)、無作為化から2回目の進行または死亡までの期間中央値は 15.9ヵ月 vs.9.7ヵ月で、tucatinib群で優れていた。 ディスカッサントを務めたスペイン・Hospital Clinic de BarcelonaのAleix Prat氏は、「トラスツズマブ+カペシタビンへのtucatinib追加投与は、脳転移例を含む既治療のHER2陽性乳がん患者の新たな標準治療となるだろう」と話した。またtucatinibのCNS転移・進行の予防効果について評価されるべきとし、より早期の治療段階での投与の可能性についても言及した。

4449.

EGFR陽性肺がん1次治療のオシメルチニブ・ゲフィチニブ併用は有望な可能性/ASCO2020

 EGFR変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)に対するオシメルチニブとゲフィチニブの併用療法は忍容性があり、奏効率も高く1次治療として有望な可能性があるという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で米国・Dana-Farber Cancer InstituteのJulia K. Rotow氏から発表された。本試験は、用量漸増相と拡大相からなる第I/II相試験である。・対象:未治療のEGFR変異(L858Rまたはdel19)を有するStage IVのNSCLC症例(T790M変異症例とコントロールのできない脳転移症例は不適格)・介入:用量漸増相では、オシメルチニブ40mgまたは80mg/日とゲフィチニブ250mg/日を連日投与。拡大相では、オシメルチニブ80mg/日とゲフィチニブ250mg/日を連日投与・評価項目:[主要評価項目]忍容性(28日間を1サイクルとして6サイクル以上実施できること)[副次的評価項目]Grade 3~5の治療関連有害事象、奏効率、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、血漿中EGFR変異(cfDNAによる)の消失、病勢進行時における遺伝子変異 主な結果は以下の通り。・2017年3月~2019年7月までに36例が登録され、27例が主要評価項目の解析対象となった。また、cfDNAの解析対象は26例であった。・27例の患者背景は、年齢中央値60歳、白色人種81%、アジア人種15%、脳転移あり59%であった。・主要評価項目である6サイクル以上の併用投与が実施できた症例は22例/81.5% (95%CI:63.3~91.8)であった。有害事象のため投与が中止された症例はゲフィチニブで8例/29.6%、オシメルチニブで1例/3.7%であった。・Grade 3以上の有害事象は、下痢11.1%、ALT上昇7.4%、皮疹3.7%、LVEF値低下3.7%などであった。Grade 4以上の有害事象報告はなかった。・奏効率は88.9%で、CR例はなかった。病勢安定(SD)11.1%を含む病勢コントロール率は100%であった。・血漿中(cfDNA)のEGFR変異の変化をデジタルPCRで解析したところ、ベースラインで65%のEGFR変異が検出されたが、治療開始2週間後時点では12%の検出と低下した。・観察期間中央値15.3ヵ月時点でのPFS中央値(十分な追跡ではない推定P値)は22.5ヵ月(95%CI:16.5~NE)であった。 演者は最後に「今後出てくるであろうPFSとOSのデータが、1次治療としてのEGFR-TKIの併用投与の意義を明らかにするだろう」と述べている。

4450.

「複合的減塩」のすすめ―まずは、カリウム代用塩の活用を!(解説:石上友章氏)-1237

 高血圧と食塩摂取との間には、緊密な関係が証明されており、高血圧の生活習慣指導の中心は「減塩」とされている。日本高血圧学会も、「減塩」に力を入れており、減塩サミット・適塩フォーラムといったイベントや、学会推奨の減塩食品の開発を行っている。したがって、公衆衛生的な取り組みが、高血圧ならびに、高血圧に起因する心血管病の制圧に有効とされている。英国では、国家的に食品(主にパン)中の食塩を減らすことで、血圧の低下、心血管イベントの抑制に成功している1)(CASH Project In UK、Consensus Action on Salt & Health:CASH)。中国では、パンに代わり、主要な食塩源が卓上塩であることから、卓上塩をカリウム代用塩に置き換えることで、同様の効果が期待できる。 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学、Matti Marklund氏らは、卓上塩をカリウム代用塩(25~67%の塩化カリウム含有)に置き換えることで、血圧ならびに、各種アウトカム(益のアウトカムである心血管イベントだけでなく、害のアウトカムであるCKD患者の高カリウム血症)へ与える効果を比較検討した。「comparative risk assessment model」を採用し、中国の既存のランダム化比較試験、大規模レジストリ研究のデータから計算した2)。その結果、卓上塩をカリウム代用塩に切り替えることで、心血管疾患死の約9分の1を予防できることが判明した。これは、年間にすると約46万1,000例(95%不確定区間[UI]:19万6,339~70万4,438)の心血管疾患死を防ぐと推定された。中国における、年間心血管疾患死の11.0%(95%UI:4.7~16.8%)、年間非致死的心血管イベント74万3,000例(95%UI:30万5,803~127万3,098)、心血管疾患に関連する障害調整生命年790万(95%UI:330万~1,290万)に相当する。一方で、慢性腎臓病(CKD)患者では、高カリウム血症関連死が推定1万1,000例(95%UI:6,422~1万6,562)増加すると推定された。 しかし、減塩一辺倒がよいかというと、そうではない。腎臓に生理的な異常がなければ、理論的に食塩摂取量は、食塩排泄量と一致するはずで、血圧の上昇は必発ではない。食塩摂取による、血圧上昇には、「食塩感受性」という病態があり、その機序の解明も進んでいる3-5)。したがって、「食塩感受性」の有無にかかわらず、一律の減塩により、すべての国民にメリットがあると言い切ることはできない。減塩と心血管イベントとの間に、Jカーブ現象があるとする研究成果も認められる6-8)。心血管イベントの抑制には、DASH食に代表される、「複合的減塩」にも、より効果があるとされている9)。参考文献1)Huang, L, et al. BMJ. 2020;368:m315.2)Marklund M, et al. BMJ. 2020;369:m824.3)Minegishi S, et al. Sci Rep. 2016;6:27137.4)Minegishi S, et al. Int J Mol Sci. 2017;18:1268.5)Kino T, et al. Int J Mol Sci. 2017;18;1250.6)O'Donnell M, et al. BMJ. 2019;364:l772.7)Stolarz-Skrzypek K. et al. JAMA 2011;305:1777-1785.8)O'Donnell MJ, et al. JAMA. 2011;306:2229-2238.9)Vollmer WM, et al. Ann Intern Med. 2001;135:1019-1028.

4451.

日本人アルコール依存症に対するナルメフェンの長期有用性

 久里浜医療センターの樋口 進氏らは、アルコール依存症におけるWHOの飲酒レベルリスクが高いまたは非常に高い日本人患者に対するナルメフェンの安全性および有効性を評価した多施設ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相(導入)試験完了後の患者を対象に、ナルメフェンの非盲検延長試験を実施し、長期の安全性および有効性を検討した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年5月2日号の報告。 24週間の導入試験を完了した患者を対象に延長試験を実施した。必要に応じてナルメフェン20mg/日による24週間の治療を行った。合計48週間におけるナルメフェン20mg/日による治療の長期安全性および有効性を評価した。研究期間中に治療で発生した有害事象を記録し、多量飲酒した日数および総飲酒量のベースラインからの変化量を算出した。 主な結果は以下のとおり。・全体として、ナルメフェン20mg/日の長期忍容性は良好であった。・患者の5%以上で報告された治療で発生した主な有害事象は以下のとおりであった。 ●鼻咽頭炎(37.2%) ●悪心(36.5%) ●傾眠(21.2%) ●めまい(16.8%) ●倦怠感(14.6%) ●嘔吐(12.4%)・多量飲酒した日数(-15.09±0.77日/月)および総飲酒量(-53.20±2.29g/日)は、ベースラインから48週までに減少した(反復測定混合モデル、最小二乗平均±標準誤差)。 著者らは「飲酒リスクの高いまたは非常に高い日本人アルコール依存症患者におけるナルメフェン長期評価は、忍容性が高く、効果的であることが示唆された」としている。

4452.

TN乳がんへのカペシタビンの術後メトロノミック療法(SYSUCC-001)/ASCO2020

 手術や術前または術後の標準的な化学療法を受けたトリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する、カペシタビンのメンテナンス投与(メトロノミック療法)が、経過観察に比べ無病生存期間(DFS)を改善するという報告が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で、中国・Sun Yat-Sen University Cancer CenterのXi Wang氏より発表された。 本試験は、中国国内で実施された多施設共同第III相比較試験である。・対象:Stage Ib〜IIIcのTNBCで、標準的な周術期治療(手術、術前または術後の化学療法、放射線療法)を終了した症例。症例登録期間は、2010年4月から2016年12月。・試験群:カペシタビン650mg/m2×2/日を1年間投与(Cape群)・対照群:経過観察(観察群)・評価項目:[主要評価項目]DFS[副次評価項目]全生存期間(OS)、無遠隔転移生存期間(DDFS)、安全性 主な結果は以下のとおり。・Cape群222例、観察群221例の計443例が無作為化割り付けされ、Cape群221例、観察群213例が解析対象とされた。・各群の平均年齢はCape群45.8歳、観察群46.1歳で、閉経前はそれぞれ71.0%、62.4%であった。また腫瘍径2cm以下が35.8%と37.1%、2.1~5cmが55.2%と58.2%であり、リンパ節転移陰性は61.1%と62.4%であった。Ki-67値は、30%以上が80.1%と73.2%であった。・Cape群の91.4%(202例)が1年間のプロトコール治療を完遂し、その相対的治療強度(RDI)の中央値は84.7%であった。・観察期間中央値57ヵ月時点における、主要評価項目である5年DFS率はCape群83% vs.観察群73%で、そのハザード比(HR)は0.63(95%CI:0.42〜0.96)、p=0.027と統計学的な有意差が認められた。・5年DDFS率は、Cape群85% vs.観察群76%で、HR0.63(95%CI:0.37〜0.90)、p=0.016と、こちらも統計学的な有意差が認められた。・5年OS率は、Cape群86%、観察群81%で統計学的な有意差はなかった(HR0.74、95%CI:0.47〜1.18、p=0.203)。・Cape群の主な有害事象は、手足症候群が全Gradeで45.2%、Grade3以上で7.7%であった。その他の主な有害事象はGrade3以上の事象はなく、全Gradeで白血球減少が23.5%、高ビリルビン血症が12.7%、腹痛・下痢が6.8%、ALT/AST上昇が5.0%だった。 演者のWang氏は「この第III相試験の結果から、1年間のカペシタビンのメトロノミック療法は、忍容性も問題なく、TNBC患者の予後改善に有望である」と結んだ。

4453.

ISCHEMIA試験の解釈は難しい、試験への私見!(解説:中川義久氏)-1236

 ついに待ちに待った論文が発表された。それは、ISCHEMIA試験の結果を記載したもので、NEJM誌2020年3月30日オンライン版に掲載された。ISCHEMIA試験は、2019年AHAのLate-Breaking Clinical Trialで発表されたものの、論文化がなされていなかったのである。この試験は、安定虚血性心疾患に対する侵襲的な血行再建治療戦略(PCIまたはCABG)と至適薬物療法を優先する保存的戦略を比較したもので、侵襲的戦略は保存的戦略に比べ、虚血性冠動脈イベントや全死因死亡のリスクを抑制しないことを示した。 このISCHEMIA試験の結果については、さまざまな切り口から議論が行われているが、今回は血行再建の適応と、今後の循環器内科医の在り方、といった観点から私見を述べたい。 今後は、安定狭心症に対する冠血行再建法としてのPCIの適応はいっそうの厳格化が行われ、施行する場合には理由を明確に説明できることが必要となろう。患者の症状の改善という具体的な目標の達成のために、そのためだけにPCIをするというのは理解を得やすい説明であろう。一方で、ISCHEMIA試験の結果は、PCIやCABGはまったく役に立たないということを意味するものではない。さらに、血行再建群と保存的治療群の差異は非常に小さい(ない)ともいえ、その分だけ患者自身の考えを尊重する必要も高くなる。つまり、「シェアード・ディシジョン・メイキング(shared decision making)」の比重も増してくる。 生命予後改善効果が血行再建群で認められないことにも言及したい。冠血行再建で改善が見込まれる虚血という因子以外のファクター、つまり、年齢・血圧・糖代謝・脂質・腎機能・喫煙・心不全などの要因、さらには結果としての動脈硬化の進行のスピードのほうが生命予後においてはより重要な規定因子なのである。冠動脈という全身からみれば一部の血流を治すくらいで、人は長生きするようにはならないのであろう。心臓という臓器に介入したのだから生命予後が改善するはずだ、というのは医療サイドの思い込みなのかもしれない。 循環器内科医だけでなく医師として、ISCHEMIA試験の登録基準に該当する患者が目の前にいた場合に何をどうすれば良いのか? まず何よりも生活習慣の修正を含めた至適薬物療法をすぐに開始することである。循環器内科医として患者に関与するうえで、「PCIのことしか知りません」は容認されない。心不全、不整脈、糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、脂質低下療法、抗血栓療法などについての知識を習得し活用できることは、これまで以上に必須となる。 それにしても、ISCHEMIA試験の解釈は難しい。

4454.

嚥下困難患者に簡易懸濁を検討 不可の薬剤の変更を提案【うまくいく!処方提案プラクティス】第21回

 今回は、嚥下が困難な患者さんの内服薬を変更した提案を紹介します。簡易懸濁や粉砕対応を検討する際は、粉砕・懸濁可否のチェックが必要不可欠です。これらの対応が難しい薬剤は、他剤への変更を余儀なくされることがありますが、治療効果や安全性などが同等かどうかも確認しましょう。患者情報78歳、女性(在宅)基礎疾患:高血圧症、骨粗鬆症、脳梗塞、逆流性食道炎訪問診療の間隔:2週間に1回処方内容1.ベニジピン錠4mg 1錠 分1 朝食後2.テルミサルタン錠20mg 1錠 分1 朝食後3.エルデカルシトールカプセル0.75μg 1カプセル 分1 朝食後4.クロピドグレル錠25mg 2錠 分1 朝食後5.ラベプラゾール錠10mg 1錠 分1 朝食後6.プラバスタチン錠5mg 1錠 分1 朝食後本症例のポイントこの患者さんは、脳梗塞による高次機能障害として嚥下機能の低下があり、入院中に服用回数や薬剤数を必要最低限に抑えるための薬剤調整がなされていました。しかし、訪問時に患者さんより、「薬は全部飲みにくいけれど、とくに骨粗鬆症のカプセルはつるつるして飲みにくい」と相談がありました。そこで、粉砕対応または簡易懸濁法による服用法を検討し、変更提案が必要な薬剤を整理してみました。1.エルデカルシトールは懸濁も粉砕も不可エルデカルシトールの中身は液状ですので粉砕は不適です。簡易懸濁法はというと、油性溶剤を使用した薬剤のため水への親和性が低く、水またはお湯に融解した際には薬剤成分が容器やチューブへ付着することが懸念されています。有効成分の含量が非常に微量ですので、その場合は必要量を正確に投与できない可能性があります。さらに、添加物に使用している中鎖脂肪酸トリグリセリドは、一部のプラスチックを劣化・脆化させる恐れがあります。上記から、エルデカルシトールは簡易懸濁および粉砕が不可能な薬剤であり、他剤への変更が必要と考えました。同系統で懸濁や粉砕が可能なアルファカルシドール錠への変更がよいのではないかと考えましたが、エルデカルシトールのほうがアルファカルシドールよりも有意な骨折抑制効果を示しているので判断が難しいところです。今回は、懸濁や粉砕が可能であるという点に重きを置いて、アルファカルシドール錠1μgへの変更を、臨床効果が同等ではないことも添えて医師に相談することにしました。2.腸溶性製剤のPPIから胃酸に安定性の高いボノプラザンへ変更PPIは酸性条件下で不安定ですので腸溶性のコーティングが施されていますが、粉砕や簡易懸濁をするとコーティングが壊れて胃で失活してしまいます。カリウム競合型アシッドブロッカー(P-CAB)のボノプラザンであれば、胃酸に安定ですので簡易懸濁は可能です。なお、光には不安定なためフィルムコーティングがなされていますので、粉砕の場合は遮光する必要があります。強力な胃酸分泌抑制効果を有しているため、副作用リスクを考慮して、常用量の半量のボノプラザン錠10mgへの変更を検討しました。処方提案と経過医師には、電話にて患者さんが服薬を負担に感じており、粉砕対応または簡易懸濁法にて投与する必要性をお伝えし、上記の薬剤変更を提案しました。医師より、入院中に薬剤が調整されていたため、服用に問題がないものばかりだと思っていたと回答がありました。そこで、簡易懸濁法による投与に変更になり、提案のとおりの薬剤にするよう指示があったので、即日対応いたしました。同居のご家族にも服薬指導の際に同席してもらい、投与時の注意点などを説明して理解を得ることができました。処方変更後も胃部不快感などの症状はなく経過しています。藤島一郎監修, 倉田なおみ編集. 内服薬 経管投与ハンドブック 〜簡易懸濁法可能医薬品一覧〜 第3版. じほう;2015.中外製薬ホームページ「よくあるご質問」

4455.

ディズニー映画、がん患者のQOLに寄与

 腫瘍学において、治療効果に加え、有害事象および生活の質(QOL)の評価が重要になってきている。オーストリア・ウィーン医科大学のSophie Pils氏らは、がん化学療法中のディズニー映画観賞は婦人科がん患者の感情的機能、社会的機能、および疲労症状の改善に関連している可能性があることを明らかにした。JAMA Network Open 5月1日号掲載の報告。 研究者らは、2017年12月~2018年12月、がん化学療法中にディズニー映画の鑑賞と、感情的・社会的機能および疲労症状との関連の評価を目的とし、オーストリア・ウィーンのcancer referral centerにて無作為化試験を実施。対象者は2018年7月までに募集した婦人科がん患者で、適格基準は18歳以上、インフォームドコンセントへの同意、カルボプラチン・パクリタキセル療法またはカルボプラチン・ペグ化リポソームドキソルビシン(PLD)のいずれかを6サイクル実施予定であった。 参加者はディズニー映画観賞群と観賞しない群に割り付けられ、各サイクル実施前後に、欧州癌研究治療機関(EORTC)の調査票に回答した。主要評価項目は、がん化学療法6サイクル中のQOLの変化(EORTC Core-30[version 3]で定義)と、疲労症状(EORTC Quality of Life Questionnaire Fatigueで定義)だった。 主な結果は以下のとおり。・女性56人が研究に参加、50例が調査を完了した。・調査完了者の内訳は、ディズニー映画観賞群:25人(平均年齢±SD:59±12歳)と観賞しない群(対照群):25人(平均年齢±SD:62±8歳)だった。・感情機能に関する質問では、がん化学療法6サイクルの過程で観賞群は対照群よりも緊張感が低く、不安も少なくなった(平均スコア±SD:86.9±14.3 vs.66.3±27.2、maximum test p=0.02)。・社会的機能の質問では、ディズニー映画を観賞することで患者の家庭生活や社会活動への影響が少なくなった(平均スコア±SD:86.1±23.0 vs.63.6±33.6、maximum test p=0.01) 。・この介入により疲労症状が軽減した(平均スコア±SD:85.5±13.6 vs.66.4±22.5、maximum test p=0.01)。・Global health statusについては、ディズニー映画の観賞と関連がなかった(平均スコア±SD:75.9 ±17.6 vs.61.0±25.1、maximum testp=0.16)。

4456.

第10回 COVID-19へのヒドロキシクロロキン、決着を付ける無作為化試験は計画通り続行

抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者死亡率上昇の関連を示した5月22日のLancet誌掲載の観察試験1)は発表後すぐに疑問視され始め2)、この週末の日曜日5月28日にはとうとう世界の専門家120人以上3)がその方法やデータを懸念する公開書簡の通知に踏み切りました。幸い、英国で進行中の無作為化試験(RECOVERY)はこれまでのデータを検討したところMehra氏等によるLancet報告の結果とは異なっており、安全性懸念による患者組み入れ停止の必要はないとして計画通り続行されています4)。対照的に、世界保健機関(WHO)はRECOVERYと同様の無作為化試験(Solidarity)のヒドロキシクロロキン投与群被験者組み入れをいったん停止しました5)。Mehra氏等によるLancet掲載の試験は臨床研究の絶対的な拠り所である無作為化試験(RCT)ではなく観察試験であるとはいえ、患者数が約9万6,000人と多数であることなどを、WHOは重く見たのです。WHOは検討の後にヒドロキシクロロキン群の今後の扱いを来週頃までに決める予定です。一方、英国のRECOVERY試験運営者の対応は息を呑むほど素早く、22日のLancet報告から24時間と経たない翌日23日に急遽データが検討され、明くる日の24日には患者組み入れ続行が試験担当医師に通知されています6)。RECOVERY試験のヒドロキシクロロキンと死亡率の関連はMehra氏等のLancet報告に似つかず、ヒドロキシクロロキン群の被験者組み入れ停止を要するような安全性懸念はないと判断されました。英国医薬品庁(MHRA)もその判断に同意しています。多数の専門家が声を上げたことが示すようにMehra氏等のLancet報告に対する疑問点は多く、たとえばどういうわけか世界のどこでも肥満率や喫煙率がほぼ同じです7)。また、人工知能(AI)技術・機械学習や統計の標準的な手法を守っておらず、倫理レビューがなされていません。データを提供した国や病院の説明が不足しています。データ提供への謝辞もありません3)。残念ながらそれら数々の疑問を調べる手立てはありません。Natureのニュース7)によると試験の原資料は占有物となっており、データやプログラムが公表されていないため、他の研究者が手に入れて検証することが今のところ不可能です。データを提供した国や病院を開示することを著者は拒否しています。ただし、それらデータを所有している米国ミシガン州のSurgisphere社は29日のニュース8)で情報提供に向けて準備を進めていると言っており、その説明が本当なら喜ばしいことに他の研究者による検証はやがて可能になるでしょう。それにしてもMehra氏の報告はWHOも言及しているように被験者数が多く、一流誌とみなされているLancetに掲載されたことも手伝ってか影響が大きく、低用量ヒドロキシクロロキンによるCOVID-19予防を検討しているオックスフォード大学主催の国際試験COPCOVも被験者組み入れ停止に追い込まれています9)。これまでの観察試験ですでに旗色が軒並み悪いヒドロキシクロロキンが、Mehra氏等のLancet報告でいよいよ無作為化試験停止を強いられるほど窮地に立たされているのです。しかしそのように無作為化試験を停止に追いやっているMehra氏等のLancet報告で、皮肉にも無作為化試験なしでは何も決まらないと結論されているように、ヒドロキシクロロキンや別のマラリア薬クロロキンによるCOVID-19治療の益害の決着を付けるには同氏等のLancet報告のような観察試験ではなく、無作為化試験が必要です。試験続行を早々に決めたRECOVERY試験の運営者もそれはよく分かっています。RECOVERYはヒドロキシクロロキンやその他のCOVID-19薬候補の世界最大の無作為化試験であり、その被験者組み入れを継続することこそ確かな結論を導く最善手だと、同試験を率いるオックスフォード大学教授の2人・Peter Horby氏とMartin Landray氏は言っています4)。参考1)Mehra MR, et al. Lancet. May 22, 2020. [Epub ahead of print]2)Disputed Hydroxychloroquine Study Brings Scrutiny to Surgisphere3)Concerns regarding the statistical analysis and data integrity4)Recruitment to the RECOVERY trial continues as planned5)WHO Halts Hydroxychloroquine Trial Over Safety Concerns6)Recruitment to the RECOVERY trial (including the Hydroxychloroquine arm) REMAINS OPEN7)Safety fears over hyped drug hydroxychloroquine spark global confusion8)Response to Widespread Reaction to Recent Lancet Article on Hydroxychloroquine9)COPCOV study paused

4457.

BRCA変異HER2-乳がんへのveliparib追加、HR+でもTNでもPFS改善(BROCADE3)/ESMO BC2020

 生殖細胞系列のBRCA遺伝子(gBRCA)変異のあるHER2陰性進行乳がんに対して、カルボプラチン+パクリタキセルへのPARP1/2阻害薬veliparibの上乗せ効果を検討した第III相BROCADE3試験のサブグループ解析で、ホルモン受容体(HR)陽性でもトリプルネガティブ(TN)でも無増悪生存期間(PFS)を改善させることが示された。カナダ・Centre Hospitalier de l'Universite de MontrealのJean-Pierre Ayoub氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)で報告した。なお、主要評価項目であるPFSについては、すでに2019年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO2019)で有意に改善することが報告されている。また、HRの有無によるPFSの解析は事前に規定されていた。・対象:gBRCA1/2変異陽性のHER2陰性進行乳がん(転移に対する細胞傷害性の抗がん剤治療が2レジメン以下、プラチナ製剤は1レジメン以下、投与終了から12ヵ月以内に進行なし)・試験群:veliparib(120mg 1日2回、Day -2~5)+カルボプラチン(AUC 6、Day 1)/パクリタキセル(80mg/m2、Day 1、8、15)21日ごと 337例・対照群:プラセボ+カルボプラチン/パクリタキセル 172例・主要評価項目:PFS 主な結果は以下のとおり。・ITT集団509例のうち、HR陽性が266例(52%)、TNが243例(48%)であった。・HR陽性患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(174例)が13.0ヵ月(95%CI:12.1~16.6)、プラセボ群(92例)が12.5ヵ月(95%CI:10.2~13.2)であった(ハザード比[HR]:0.69、95%CI:0.52~0.93、p=0.013)。2年PFSはveliparib群27.5%、プラセボ群15.3%、3年PFSはveliparib群17.5%、プラセボ群が8.6%であった。・TN患者において、治験責任医師の評価によるPFS中央値は、veliparib群(163例)が16.6ヵ月(95%CI:12.3~22.7)、プラセボ群(80例)が14.1ヵ月(95%CI:11.0~15.8)であった(HR:0.72、95%CI:0.52~1.00、p=0.051)。2年PFSはveliparib群40.4%、プラセボ群25.0%、3年PFSはveliparib群35.3%、プラセボ群13.0%であった。・HR陽性患者において、OS中央値は、veliparib群が32.4ヵ月(95%CI:26.5~37.9)、プラセボ群が27.1ヵ月(95%CI:22.9~35.2)であった(HR:0.96、95%CI:0.68~1.36、p=0.829)。・TN患者において、OS中央値は、veliparib群が35.0ヵ月(95%CI:24.9~NE)、プラセボ群が30.0ヵ月(95%CI:24.5~NE)であった(HR:0.92、95%CI:0.62~1.36、p=0.683)。・HR陽性、TNの両サブグループにおいて、全Gradeの貧血、好中球減少症、悪心、下痢の発現率がveliparib群でプラセボ群より5%以上高かった。

4458.

双極性障害外来患者に対する薬理学的治療~20年の変遷

 双極性障害に対する薬理学的治療オプションは、1990年代にいくつかの第2世代抗精神病薬が承認を受けたことにより、この20年間で増加した。米国・コネチカット大学のTaeho Greg Rhee氏らは、双極性障害外来患者のマネジメントにおける薬理学的治療の傾向について報告を行った。The American Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年4月21日号の報告。 1997~2016年のNational Ambulatory Medical Care Survey(NAMCS)の全国データを用いて、プライマリ診断でリストアップされた精神科を受診した双極性障害患者における、気分安定薬、第1世代および第2世代抗精神病薬、抗うつ薬の使用傾向について調査を行った。年齢、性別、人種/民族、保険を含む共変量とともにロジスティック回帰モデルを用いて、統計学的に有意な傾向を特定した。 主な結果は以下のとおり。・双極性障害外来患者に対する抗精神病薬の使用は一般的となっており、12.4%(1997~2000年)から51.4%(2013~16年)へ増加していた(調整オッズ比:5.05、95%CI:3.65~7.01)。・気分安定薬の使用は、62.3%(1997~2000年)から26.4%(2013~16年)へ減少していた(調整オッズ比:0.18、95%CI:0.13~0.27)。・抗うつ薬の使用は、47.0%(1997~2000年)から57.5%(2013~16年)の変化であった。・気分安定薬を含まない抗うつ薬の使用は、17.9%(1997~2000年)から40.9%(2013~16年)へ大幅に増加していた(調整オッズ比:2.88、95%CI:2.06~4.03)。 著者らは「この20年間で、双極性障害治療に変化が認められており、従来の気分安定薬に代わり第2世代抗精神病薬の使用が増加していた。抗うつ薬の使用は、双極性障害に対する有効性に関してエビデンスの欠如や躁転リスク増加の懸念があるにもかかわらず持続していた」とし、「新規抗精神病薬の実際の有効性や忍容性について、従来の気分安定薬と比較した研究が必要とされる」としている。

4459.

切除可能NSCLC、アテゾリズマブ+化学療法は新たな術前治療の選択肢/Lancet Oncol

 切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者の新たな術前補助化学療法として、PD-L1阻害薬アテゾリズマブ+化学療法の有効性と安全性を評価した第II相試験の結果が示された。米国・コロンビア大学のCatherine A. Shu氏らによる多施設共同単群試験で、高い病理学的奏効率が得られ、忍容性も良好であったという。著者は「切除可能NSCLC患者にとってアテゾリズマブ+化学療法は、新たな術前補助化学療法となりうることが示された」と述べている。NSCLCの約25%は切除可能なStageIB~IIIAであり周術期化学療法が標準治療だが、この治療戦略は生存期間をわずかに改善するのみである。一方で免疫チェックポイント阻害薬が転移NSCLCに有効であることから、著者らは本検討を行った。Lancet Oncology誌オンライン版2020年5月7日号掲載の報告。 研究グループは米国の3施設において、切除可能なStageIB~IIIAのNSCLC患者を対象にアテゾリズマブ+カルボプラチン+nab-パクリタキセル併用による術前化学療法の有効性および安全性を評価する第II相多施設共同単群試験を実施した。 ECOG PSが0~1で喫煙歴を有する18歳以上のStageIB~IIIAのNSCLC患者を登録し、1サイクルを21日間として、アテゾリズマブ1,200mgをDay1に、nab-パクリタキセル(100mg/m2)をDay1、8および15に、カルボプラチン(AUC5)をDay1に投与した。2サイクル後に病勢進行を認めなかった患者に、さらに2サイクル投与し、その後手術を行った。 主要評価項目は、病理学的奏効率(major pathological response)で、手術時の残存腫瘍が10%以下と定義された。 主な結果は以下のとおり。・2016年5月26日~2019年3月1日に、30例が登録された。うち23例(77%)はStageIIIAであった。・30例中29例(97%)に手術が行われ、26例(87%)がR0切除に成功した。・データカットオフ日(2019年8月7日)の追跡期間中央値12.9ヵ月において、30例中17例(57%)で病理学的奏効が得られた。・主なGrade3/4の治療関連有害事象は、好中球減少症50%(15/30)、ALT増加7%(2/30)、AST増加7%(2/30)、および血小板減少症7%(2/30)であった。・重篤な治療関連有害事象は、Grade3の発熱性好中球減少症1例(3%)、Grade4の高血糖1例(3%)、およびGrade2の気管支肺出血1例(3%)であった。治療に関連した死亡は報告されなかった。

4460.

T-DXd、HER2+乳がん脳転移例で良好な結果(DESTINY-Breast01)/ESMO BC2020

 CNS転移を有する既治療のHER2陽性乳がん患者に対する、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、DS-8201)の有効性が示された。ベルギー・リエージュ大学のGuy Jerusalem氏が、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer Virtual Meeting 2020、2020年5月23~24日)でDESTINY-Breast01試験のサブグループ解析結果を報告した。 DESTINY-Breast01試験は、トラスツズマブ エムタンシン(T-DM1)治療を受けたHER2陽性の再発・転移を有する乳がん患者を対象としたグローバル第II相試験。独立中央判定委員会による奏効率は60.9%、PFS中央値は16.4ヵ月であり、持続的な腫瘍縮小効果が示されている。 この結果に基づき、本邦では2020年3月に「化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」を適応として、国内製造販売承認を取得。5月25日に発売された。・対象:切除不能または転移を有するHER2陽性乳がんで、全身状態(ECOG PS)が0/1であり、T-DM1による治療歴のある患者。今回のサブグループ解析は、ベースライン時にCNS転移を有する患者が対象。・第1部では、5.4、6.4、7.4mg/kg(3週ごとに静脈内投与)の3つの用量に無作為に割り付けられ、推奨用量が決定された。第2部では、5.4mg/kg(3週ごとに静脈内投与)の用量で登録された184例を対象にT-DXdの有効性と安全性の評価が行われた。・評価項目:[主要評価項目]中央判定による奏効率(ORR、完全奏効[CR]+部分奏効[PR])[副次評価項目]病勢コントロール率(DCR、CR+PR+安定[SD])、臨床的有用率(CBR)、奏効期間、無増悪生存(PFS)期間、安全性など 主な結果は以下のとおり。・ベースライン時に24例(13%)がCNS転移を有していた。・CNS転移を有する患者は全体集団と比較して、全身状態が良好で(ECOG PS 0がCNS転移有:62.5%、全体集団:55.4%)、ホルモン受容体陰性患者が多かった(58.3%、45.1%)。・治療歴数の中央値は全体集団と同じく6。CNS転移を有する患者の治療歴は、トラスツズマブ、T-DM1が100%、ペルツズマブ、HER2 TKIが62.5%、ホルモン療法が45.8%、その他の全身療法が100%、放射線療法が88.3%であった。・CNS転移を有する患者において、ORRは58.3%(95%信頼区間[CI]:36.6~77.9]。DCRは91.7%で、内訳はCR :4.2%、PR:54.2%、およびSD:33.3%であった。・PFS中央値は18.1ヵ月(95%CI:6.7~18.1)であった。・増悪がみられた部位は全体集団と同様の傾向がみられ、肺、肝臓、リンパ節などであった。CNS転移を有する患者のうち、脳において増悪がみられたのは2例(8.3%)。全体集団では4例(2.2%)であった。・脳における増悪は、CNS転移を有する患者では78日目と85日目に、CNS転移のない患者では323日目と498日目に発生した。・TEAEは、CNS転移を有する患者と全体集団の間で一致しており、主に消化器系または血液系であった。TEAEによる治療中止(2例以上みられたもの)は、全体集団で肺炎(11例)、ILD(5例)だったのに対し、CNS転移を有する患者では、肺炎とILD以外のTEAEにより2例が中止された。 発表では、HER2陽性(IHC3+)/ホルモン受容体陰性の転移を有する乳がん患者で、治療歴数17の48歳の女性が、T-DXd投与中に転移性脳病変の55%の退縮を示した症例についても報告された。 T-DXdについては、HER2陽性患者対象にT-DM1後の標準治療と有効性を比較するDESTINY-Breast02試験のほか、2つの第III相試験が進行中である。

検索結果 合計:10324件 表示位置:4441 - 4460