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手術中の強オピオイド鎮痛薬の使用は手術後の疼痛と関連

 手術中に強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルとスフェンタニルを使用することは、手術後の望ましくない「疼痛経験」と独立して関連することが示された。「疼痛経験」とは、単なる痛みの強度だけでなく、感情的・精神的・認知的な側面を含めた包括的な概念である。ニース・パスツール病院大学病院センター(フランス)のAxel Maurice-Szamburski氏らによるこの研究は、「Regional Anesthesia & Pain Medicine」に2月25日掲載された。 Maurice-Szamburski氏は、「オピオイド鎮痛薬は手術後の疼痛軽減に役立つことがあるが、手術中の使用、特に、強オピオイド鎮痛薬のレミフェンタニルやスフェンタニルの使用は、逆に疼痛を増大させる可能性がある」と述べている。 この研究では、フランスの5カ所の総合教育病院で、全身麻酔下で選択的手術を受けた18〜70歳の成人患者971人(年齢中央値49.6歳、65歳以下88%、男性48%)のデータの二次解析が行われた。対象者の手術前の不安は、アムステルダム術前不安・情報尺度(APAIS)により、また、疼痛、睡眠の質、ウェルビーイングは、手術の前後に視覚アナログ尺度(VAS)を用いて測定されていた。主要評価項目は、手術後1日目にEvaluation du Vecu de l'Anesthesie Generale(EVAN-G)質問票で測定した患者の疼痛経験とし、EVAN-G疼痛次元の25パーセンタイル未満の場合を「不良な疼痛経験」と定義した。手術の種類としては、整形外科または脊椎(37%)、耳鼻咽喉(29%)、消化器(15%)が多かった。 271人(27.9%)が手術後の不良な疼痛経験を報告していた。多変量解析では、手術中のレミフェンタニルとスフェンタニルの使用が、手術後の不良な疼痛経験の独立した予測因子であることが示された。これらの薬剤の使用により不良な疼痛経験が生じるオッズ比は26.96(95%信頼区間2.17〜334.23、P=0.01)と推定された。この結果について研究グループは、「これは、『オピオイド誘発性痛覚過敏』と呼ばれる既知の現象と一致している。高用量のオピオイドにさらされた患者では、痛みの刺激に対する感受性が高まる可能性がある」との見方を示している。 また、米国麻酔科学会(ASA)による全身状態分類であるASA-PS(ASA physical status)分類でクラスIIIに分類される重篤な全身疾患を有すること(オッズ比5.09、95%信頼区間1.19〜21.81、P=0.028)、手術後の抗不安薬の使用(同8.20、2.67〜25.20、P<0.001)、手術後の健忘(同1.58、1.22〜2.06、P=0.001)も、不良な疼痛経験のリスクを高める要因であることが示された。一方、手術前に鎮痛薬を使わないこと(同0.49、0.25〜0.95、P=0.035)と整形外科の手術(同0.29、0.12〜0.69、P=0.005)は不良な疼痛経験のリスクを低下させる要因であった。 研究グループは、「痛みは強さ以外の側面が見落とされがちだが、手術後の急性疼痛が慢性疼痛へ移行するリスクを予測する上ではそれらが非常に重要だ。したがって、不良な疼痛経験の要因を理解することにより、痛みの強度の管理だけにとどまらない、周術期ケアの新たな選択的ターゲットが明らかになる可能性がある」と述べている。

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末梢静脈カテーテルの治療完了前の不成功率は36.4%【論文から学ぶ看護の新常識】第7回

末梢静脈カテーテルの治療完了前の不成功率は36.4%末梢静脈カテーテル(Peripheral Intravenous Catheter[PIVC])の感染および不成功の発生率を調査した研究の結果、感染の発生率は低い一方で、治療完了前の不成功率は36.4%であることが示された。Nicole Marsh氏らによる研究で、International Journal of Nursing Studies誌の2024年3月号に掲載された。末梢静脈カテーテルの感染および不成功:システマティックレビューとメタアナリシス研究グループは、末梢静脈カテーテルに関連する感染および不成功の発生率を調査するため、システマティックレビューとメタアナリシスを実施した。対象となった69の研究には、41の観察研究と28のランダム化比較試験(RCT)が含まれ、47万8,586件のカテーテルが分析対象となった。主要な評価指標は、カテーテル関連血流感染(CABSI)、局所感染、治療完了前の不成功とした。データは2022年12月までに収集され、ランダム効果モデルを用いて統合された。「不成功」の定義は、カテーテル関連血流感染や局所感染が発生した場合を除き、意図した治療が完了する前または交換が指示される前にカテーテルが早期に抜去された場合とした。研究結果は以下の通り。カテーテル関連血流感染の統合割合は0.028%(95%信頼区間[CI]:0.009~0.081)、発生率は10万カテーテル日あたり4.40件(95%CI:3.47~5.58)。局所感染の統合割合は0.150%(95%CI:0.047~0.479)、発生率は10万カテーテル日あたり65.1件(95%CI:49.2~86.2)。治療完了前の全原因による不成功の統合割合は36.4%(95%CI:31.7~41.3)、発生率はカテーテル100日あたり4.42件(78,891カテーテル日、95%CI:4.27~4.57)。主な原因は、静脈炎、閉塞、漏出、脱落などであった。末梢静脈カテーテルの不成功は、世界的に重大な問題であり、カテーテルの3本に1本が治療完了前に適切に使用できなくなっている。末梢静脈カテーテル1本あたりの感染発生率は低いものの、全世界で年間20億本以上のカテーテルが使用されているため、感染の絶対数および関連する負担は依然として大きい。末梢静脈カテーテルの感染および不成功、ならびに治療中断の後遺症、医療費の増加、患者の予後の悪化に対処するためには、大規模かつ組織全体にわたる対策が必要である。この研究は、末梢静脈カテーテルの管理における現場の課題を浮き彫りにし、看護実践における改善の必要性を示唆しています。とくに、カテーテル関連血流感染の発生率は低い一方で、治療完了前の不成功率が36.4%、つまり「3本に1本は治療完了前に適切に使用できなくなっている」という結果から、維持管理や感染予防策の徹底が不可欠であることがわかります。不成功の定義には、静脈炎や閉塞だけでなく、広範な要因が結果に影響していることが示されています。これらの要因に対応するためには、挿入技術や維持管理のスキル向上に加え、“知識“つまり、定期的な教育プログラムの実施が必要です。みなさんの病院に末梢カテーテル管理のプロトコールやバンドルは導入されているでしょうか?中心静脈カテーテルやその他のドレーンなどに比べて、末梢静脈カテーテルは看護師が挿入できることからも、管理に関しては軽視されがちですが、現場での標準化されたケアの実践により、感染や不成功のリスクをさらに低減できると考えられます。この研究では、対策として(1)挿入および維持管理手技の教育、(2)患者の評価と最適なデバイス選択によって頻回な交換を防ぎ血管の健康を維持すること、(3)臨床判断ツールを活用し使用していないカテーテルを早期に抜去することをあげています。研究結果を受けて、今後世界的に末梢静脈カテーテル管理のためのプロトコールの検討、導入が進んでいきそうです。今すぐ職場にプロトコールを導入することは難しいかもしれませんが、まずは使用していないカテーテルの早期抜去から取り組んでみてはいかがでしょうか。論文はこちらMarsh N, et al. Int J Nurs Stud. 2024;151:104673.

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進行乳がんでのT-DXdの効果と関連するゲノム異常/日本臨床腫瘍学会

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の効果に関連するゲノム異常の影響については十分に解明されていない。今回、進行乳がん患者の組織検体における包括的ゲノムプロファイリング(CGP)検査データの後ろ向き解析により、CDK4およびCDK12異常がT-DXdへの1次耐性に寄与する可能性が示唆された。第22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)にて、国立がん研究センター中央病院の山中 太郎氏が発表した。 本研究では、2019年6月~2024年8月に組織検体のCGP検査を受け、国立がん研究センター・がんゲノム情報管理センター(C-CAT)に登録された進行乳がん患者のデータを後ろ向きに解析した。CGP検査には、NCCオンコパネルシステム、FoundationOne CDx、GenMineTOPが含まれる。T-DXd投与前の検体を用いてCGP検査を受けた患者を対象とし、actionableな遺伝子異常はpathogenic/oncogenicバリアントまたはlikely pathogenic/likely oncogenicバリアントに分類された場合にカウントした。 主な結果は以下のとおり。・進行乳がん5,229例のうち、最終的に437例が抽出された。年齢中央値は54歳、HER2は陽性が35.7%、陰性が56.3%、不明が8.7%、エストロゲン受容体は、陽性が62.7%、陰性が32.5%、不明が4.8%であった。最も多かったCGP検査はFoundationOne CDxで89.7%であった。・actionableな遺伝子異常の頻度が高かったのは、HER2陽性ではTP53異常(71.4%)、ERBB2増幅(70.1%)、PIK3CA異常(50.0%)、MYC異常(28.6%)、HER2陰性ではTP53異常(53.9%)、PIK3CA異常(36.3%)、MYC異常(20.4%)、FGFR1異常(18.8%)、GATA3異常(18.8%)であった。・無増悪生存期間(PFS)は、ERBB2増幅例で非増幅例より有意に長く(p<0.001)、HER2陽性例では陰性例より有意に長かった(p<0.001)。・多変量解析の結果、HER2の状態はPFSの延長と有意に関連(ハザード比[HR]:0.33、95%信頼区間[CI]:0.22~0.50、p<0.001)し、CDK4異常(HR:2.18、95%CI:1.06~4.51、p=0.035)およびCDK12異常(HR:2.28、95%CI:1.08~4.79、p=0.030)はPFSの短縮と関連していた。 山中氏は、「本研究の結果を裏付け、新たな戦略的アプローチを開発するためにさらなる研究が必要」としている。

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第258回 献血は誰かを救うのみならず自身の健康も増進しうる

献血は誰かを救うのみならず自身の健康も増進しうる足しげく献血することはたくさんの誰かのためになるだけでなく、自身の血液も健康にするようです。私が足を運ぶ姫路の献血センターには、輸血を受けた患者さんやその近しい人からの手紙が掲示されています。よっぽど困難な状況にあるかあったであろう人たちからのそのような言葉の数々に触れると、血液検査目当てのおよそ健康診断のつもりの輸血もいくらかは役に立っていると感じることができて、なんだか前向きな気持ちになれます。献血する人は多かれ少なかれ似たような思いを経験されているかもしれません。血液学で最高峰のBlood誌に先週掲載された新たな観察試験結果1)によると、献血を頻繁にすることは自身にいくばくかの心の滋養になりうることのみならず、健康な血液細胞をより生み出せるようにする効果もあるようで、もしかすると血液がんを生じにくくする効果さえ担うかもしれません。英国のフランシスクリック研究所のチームは、ドイツの赤十字献血センターおよびドイツのがん研究所と協力し、生涯の献血回数が100回を超える頻回献血(frequent donor、以下「FD」)男性217人と献血回数がわずかな(10回未満)男性212人の血液検体を調べました。年齢はそろえられ、どちらもおよそ60歳代です。老化に伴って骨髄の造血幹細胞(HSC)に変異が蓄積することに伴い、遺伝配列が他とわずかに異なる血液細胞の一団が幅を利かせるようになるクローン性造血が生じるようになります。FD男性と非FD男性のクローン性造血の発生率に有意差はありませんでした。一方、クローン性造血との関連が知られるDNMT3A遺伝子の変化にはっきりとした差がありました。その差の意味を調べるべく、FD男性に多いDNMT3A遺伝子変化(FD変異)を導入したHSCがそうでないHSCとの共存の中でどう振る舞うかが検討されました。失血に応じて作られる造血ホルモンのエリスロポエチン(EPO)を与えることで献血に似せた環境にして培養したところ、FD変異細胞はそうでない細胞に比べてより早く増えました。その現象はEPOがあるときに限られ、EPOがないときの増える速さは似たりよったりでした。献血するたびに体内でEPOが突発することで、頻繁な献血者に多いDNMT3A変異細胞が増えるのに好都合になるようだ、と著者の1人Hector Huerga Encabo氏は言っています。研究はさらに続き、FD変異の取り柄が示唆されました。FD変異細胞と白血病を生じ易くする変異を有する細胞を一緒にしたところ、やはりEPOがある環境でFD変異細胞はより増え、赤血球をより生み出しました。すなわちFD変異はがん細胞の増殖を抑制する作用を担うかもしれません。今回の結果によると、献血はHSCの調子やその補充能力を向上するように仕向け、誰かの命を救うのみならず自身の血液系もより好調にするようです2)。とはいえ、検証がまだまだ必要です。たとえば、白血病を生じ易くする変異の発生を減らすと今回の結果をもって結論することは当然できず、異なる人種、女性、他の年齢層を含むより大人数でさらに検討しなければなりません2,3)。参考1)Karpova D, et al. Blood. 2025 Mar 11. [Epub ahead of print] 2)Giving blood frequently may make your blood cells healthier / NewScientist 3)Beneficial genetic changes observed in regular blood donors / Eurekalert

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新たな時代に向けた白血病診療の在り方と展開/日本臨床腫瘍学会

 自己複製能と多分化能を備える造血幹細胞は、複数の過程を経てさまざまな血液細胞に分化し、体内の造血系を恒常的に維持している。一方、この分化過程の各段階で生じるがん化は、白血病やリンパ腫、骨髄腫を引き起こす。 2025年3月6〜8日に開催された第22回日本臨床腫瘍学会学術集会では、教育講演の1つとして「本邦における白血病診療」と題した講演が行われた。演者の藥師神 公和氏(神戸大学医学部附属病院 腫瘍・血液内科)は、「白血病に特異的な症状はない。多くの場合、血液検査で異常が指摘されると、造血の場である骨髄の検査が実施され、診断に至る」と説明し、白血病が急性または慢性、ならびに骨髄性またはリンパ性の違いで一般的に急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、急性リンパ性白血病(ALL)および慢性リンパ性白血病(CLL)の4つに分類されることから、「本講演では、日本血液学会より2024年に公開された『造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版』に沿って、各白血病の総論やアルゴリズム、クリニカルクエスチョン(CQ)の改訂点を紹介するとともに、今後の展望にも触れたい」とした。AMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について 従来のAMLの診断は、骨髄における白血病細胞がFAB分類では30%以上、WHO分類では20%以上とされてきたが、今回のガイドライン改訂版ではEuropean Leukemia Net(ELN)が2022年の改訂で採用した分類を引用している。すなわち、AMLを定義付けるような遺伝子異常(PML::RARA、CBFB::MYH11、RUNX1::RUNX1T1など)があれば、芽球比率が10%以上でAMLと診断することになった。ただし、BCR::ABL1については、CML移行期との混乱を避けるため20%以上とされた。 分類に関するほかの重要な変更点の1つとして、病歴よりも遺伝学的特徴のほうが生物学的AMLの分類に関連していることから、従来のAML-MRC(骨髄異形成関連変化を伴うAML)と治療関連骨髄性腫瘍の病型が削除された。 なお、遺伝子変異と染色体核型に基づく予後因子を組み合わせた予後層別化システムについては、2022年のELN改訂版でFLT3-ITD変異がアレル比やNPM1変異の有無にかかわらず、すべてIntermediate群に分類された点が今回のガイドライン改訂版に記載された(ただし、FLT3阻害薬が初回治療から使用できることが前提)。このほかにも、細かい遺伝子異常が予後層別化に追加された。 急性前骨髄球性白血病(APL)以外の若年者AMLにおける治療アルゴリズムとして、今回のガイドライン改訂版ではFLT3遺伝子変異の情報を診断時に取得することが明記された。また、高齢者AMLにおいてもFLT3遺伝子変異情報の取得が記載され、藥師神氏は「基本的に初発時からFLT3遺伝子変異検査を行うことになる。なお、強力化学療法非適応症例への寛解導入療法は、CQ8『強力化学療法が適応とならない高齢者(65歳以上)AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)を参照すること」と述べた。 これ以外の注目すべきCQとして、同氏はCQ3『若年者(65歳未満)初発AMLに対する寛解導入療法としてどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ13『治療関連・二次性AMLに対してどのような治療が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2Aおよび2B)を挙げた。一方、APLにおいては、CQ2『初発APLの寛解導入療法におけるDIC(播種性血管内凝固)対策として何が勧められるか』で、遺伝子組換えトロンボモジュリンによる治療が推奨グレード・カテゴリー3からカテゴリー2Bにアップグレードされた点を挙げた。CMLの治療指針や戦略、主なCQの改訂点について CMLの診断時に評価すべき予後スコアは、SokalスコアやELTS(EUTOS long-term survival)スコアを使用し、治療効果はELN 2020の判定規準に従い、血液学的奏効(血液・骨髄検査所見および臨床所見で判定)、細胞遺伝学的奏効(骨髄細胞中のPhiladelphia[Ph]染色体割合で判定)、分子遺伝学的奏効(PCRによる血液細胞中のBCR::ABL1遺伝子発現量で判定)の3つのレベルで判定する。加えて、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療効果のモニタリングと戦略が、同氏より解説された。 また、注目すべきCQとして、CQ1『初発CML-CP(慢性期)に対する治療として何が勧められるか』で、TKI阻害薬が新たに1剤追加されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、CQ3『ELNの効果判定規準によりWarningやFailureとされた症例に対する二次治療、三次治療以降は何が勧められるか』で、三次治療以降にSTAMP(specifically targeting the ABL myristoyl pocket)阻害薬が追記されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ5『同種造血幹細胞移植はCMLの治療中どのようなときに考慮すべきか』で、さまざまな状況に応じた移植の検討が推奨されること(推奨グレード・カテゴリー2A)を挙げた。 さらに、CQ6『DMR(分子遺伝学的に深い奏効)を達成しMRD(微小残存病変)が検出されなければTKI中止は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2A)、CQ7『CMLに対するTKI治療中にTKIの減量は勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー1、2Aおよび2B)、CQ8『CML患者もしくはそのパートナーの妊娠にはどのような対応が勧められるか』(推奨グレード・カテゴリー2B)の改訂点が紹介された。ALLおよびCLLの主なCQの改訂点について ALLの注目すべきCQとして、CQ4『寛解期成人ALLにおけるMRDは、どのような評価方法、評価時期、閾値の判定が勧められるか』で、定量PCRによる白血病特異的融合遺伝子測定および免疫グロブリン重鎖(Ig)/T細胞受容体(TCR)遺伝子再構成測定が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー1)、ならびに1回目のMRD測定は寛解導入療法後が推奨されたこと(推奨グレード・カテゴリー2A)が紹介された。同氏は、そのほかにCQ6『第一寛解期ALLの同種造血幹細胞移植には骨髄破壊的前処置と減弱前処置のどちらが勧められるか』で、適切な前処置に関する推奨(推奨グレード・カテゴリー2B)が明記された点や、CQ7『Ph陽性ALLに対する移植後TKIの維持療法は勧められるか』で、MRD陰性の時点で開始する予防的なTKI維持療法は推奨されない(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが記載された点を紹介。CQ9『再発ALLに対する再寛解導入療法の選択肢としてどのような治療が勧められるか、CAR-T細胞療法はどのようなときに考慮すべきか』で、新たな治療選択肢(推奨グレード・カテゴリー1)やCAR-T細胞療法(推奨グレード・カテゴリー2A)が追記された点についても言及した。 CLLの注目すべきCQとして、初回治療としてBTK(ブルトン型チロシンキナーゼ)阻害薬が推奨され(CQ2『CLL初回治療としてBTK阻害薬療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])、免疫化学療法は初回治療として推奨されない(CQ3『CLL初回治療として免疫化学療法は勧められるか』[推奨グレード・カテゴリー1])ことが紹介された。二次治療における治療方針の推奨(CQ4『イブルチニブ初回治療に治療抵抗性もしくは再発CLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』およびCQ5『イブルチニブ初回治療に治療不耐容のCLLに対する二次治療としてどのような治療が勧められるか』)が、ともにカテゴリー1として明記された点も紹介し、CQ7『自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少症を合併したCLLに対してステロイド治療は勧められるか』では、無症候性・非活動性CLLであればステロイド治療が推奨される(推奨グレード・カテゴリー2A)ことが説明された。これからの白血病診療の展望 造血器腫瘍の診断および治療について、ゲノム情報に基づく診療がWHOなどから提唱される中、つい最近、わが国においても造血器腫瘍を対象とした遺伝子パネル検査が登場した。「本邦での造血器腫瘍におけるがんゲノム医療の導入は喫緊の課題」と語る藥師神氏は、「日本血液学会が発行する『造血器腫瘍ゲノム検査ガイドライン2023年度版』で遺伝子パネル検査の基盤となる情報が提供されている。そのため、新規治療薬の導入とともに、白血病診療が今後さらに前進していくことが期待される」と締めくくった。

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抗ヒスタミン薬投与後も症状持続の慢性特発性蕁麻疹、remibrutinibが有効/NEJM

 第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬を投与しても症状が持続する慢性特発性蕁麻疹患者の治療において、プラセボと比較して経口ブルトン型チロシンキナーゼ阻害薬remibrutinibは、12週時のかゆみと蕁麻疹の複合評価尺度が有意に改善し、重篤な有害事象の発現は同程度だが点状出血の頻度は高かったことが、ドイツ・シャリテー-ベルリン医科大学のMartin Metz氏らが実施した「REMIX-1試験」および「REMIX-2試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2025年3月6日号で報告された。同一デザインの2つの第III相無作為化プラセボ対照比較試験 REMIX-1試験(日本の施設が参加)とREMIX-2試験は、慢性特発性蕁麻疹の治療におけるremibrutinibの安全性と有効性の評価を目的とする同一デザインの第III相二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Novartis Pharmaceuticalsの助成を受けた)。 年齢18歳以上、スクリーニングの6ヵ月以上前に慢性特発性蕁麻疹と診断され、第2世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬の投与でも症状が持続する患者を対象とした。症状の持続は、スクリーニング前に6週間以上連続でかゆみと蕁麻疹がみられ、無作為化前の7日間に、蕁麻疹活動性スコア(UAS7、0~42点、点数が高いほど重症度が高い)が16点以上、かゆみ重症度スコア(ISS7、0~21点、点数が高いほど重症度が高い)が6点以上、蕁麻疹重症度スコア(HSS7、0~21点、点数が高いほど重症度が高い)が6点以上のすべてを満たすことと定義した。 被験者を、remibrutinib(25mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、UAS7のベースラインから12週目までの変化量であった。UAS7で6点以下達成、同0点も達成と2試験で有意に良好 REMIX-1試験に470例(平均[±SD]年齢45.0±14.0歳、女性68.3%)、REMIX-2試験に455例(41.7±14.5歳、65.3%)を登録した。remibrutinib群に613例(REMIX-1試験313例、REMIX-2試験300例)、プラセボ群に312例(157例、155例)を割り付けた。ベースラインで重症の慢性特発性蕁麻疹(UAS7≧28点)であったのは、REMIX-1試験が63.4%、REMIX-2試験は59.1%で、UAS7の平均値はそれぞれ30.3点および30.0点、無作為化の時点での平均罹患期間は6.7±8.6年および5.2±7.2年だった。 ベースラインから12週目までのUAS7の低下は、プラセボ群に比べremibrutinib群で有意に大きく、変化量の最小二乗平均(±SE)は、REMIX-1試験でremibrutinib群が-20.0±0.7点、プラセボ群が-13.8±1.0点(p<0.001)、REMIX-2試験ではそれぞれ-19.4±0.7点および-11.7±0.9点(p<0.001)であった。この効果は24週目まで持続した。 12週目に、UAS7が6点以下であった患者の割合は、プラセボ群よりもremibrutinib群で有意に高く、REMIX-1試験でremibrutinib群が49.8%、プラセボ群が24.8%(p<0.001)、REMIX-2試験でそれぞれ46.8%および19.6%(p<0.001)であり、UAS7において0点を達成した患者の割合も、REMIX-1試験で31.1%および10.5%(p<0.001)、REMIX-2試験で27.9%および6.5%(p<0.001)と有意に優れた。重篤な有害事象の頻度は同程度だが、点状出血が多い 2つの試験を合わせた有害事象の頻度は両群同程度で、ほとんどが軽度または中等度であった(remibrutinib群64.9%vs.プラセボ群64.7%)。重篤な有害事象(3.3%vs.2.3%)および試験薬の投与中止に至った有害事象(2.8%vs.2.9%)の割合も両群に大きな差はなかった。 最も頻度の高い有害事象は、新型コロナウイルス感染症(remibrutinib群10.7%vs.プラセボ群11.4%)、鼻咽頭炎(6.6%vs.4.6%)、頭痛(6.3%vs.6.2%)であり、点状出血(3.8%vs.0.3%)がremibrutinib群で多くみられた。 著者は、「remibrutinibの効果は早期に現れ、投与1週目には症状(かゆみと蕁麻疹)が減少した」「24週目には、remibrutinib群の半数の患者で慢性特発性蕁麻疹の良好なコントロールが得られ、3分の1の患者でかゆみと蕁麻疹が完全に消失した」としている。

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HER2+乳がんへのtucatinib、日本人集団でも良好な有効性(HER2CLIMB-03)/日本臨床腫瘍学会

 前治療歴のある切除不能な局所進行または転移を有するHER2+乳がん患者に対し、トラスツズマブとカペシタビンに加えて経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibを追加投与した第II相HER2CLIMB-03試験の結果、日本人集団においても良好な有効性と安全性を示したことを、大阪国際がんセンターの中山 貴寛氏が22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。 グローバルなHER2CLIMB試験において、複数の前治療歴があり、局所進行/転移を有するHER2+乳がん患者に対するトラスツズマブ+カペシタビン+tucatinib併用療法は、臨床的に有意な有効性を示し、忍容性も良好であったことが報告されている。今回は、主に日本から患者を登録したHER2CLIMB-03試験の有効性と安全性が報告された。・試験デザイン:第II相単群試験・対象:タキサン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1による治療後に病勢進行が認められた局所進行/転移を有するHER2+乳がん患者(ECOG PS 0/1)・スケジュール:tucatinib(1日2回300mg、経口投与)+トラスツズマブ(21日ごとに6mg/kg[1サイクル目の1日目は8mg/kg]、静脈内投与)+カペシタビン(21日ごとの1~14日まで1日2回1,000mg/m2、経口投与)・評価項目:[主要評価項目]日本人集団における独立中央判定(ICR)による確定奏効率(cORR)[副次評価項目]全体集団におけるICRによるcORR、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性・データカットオフ:2023年7月17日 主な結果は以下のとおり。・合計66例(日本53例、韓国10例、台湾3例)が1サイクル以上の治療を受けた。全例が女性で、年齢中央値は53歳(範囲:31~84)、ECOG PS 0は77%、HR+は42.4%、HR-は48.5%、Stage IVは47.0%、内臓疾患を有したのは63.6%、転移に対する前治療ライン数中央値は3であった。・データカットオフ時に評価可能であった日本人集団(48例)のcORR率は35.4%(90%信頼区間[CI]:24.0~48.3)、全体集団(60例)では40.0%(29.3~51.4)であった。・DOR中央値は、日本人集団8.3カ月(90%CI:6.2~8.5)、全体集団8.5ヵ月(6.2~12.4)であった。・PFS中央値は、日本人集団7.4カ月(90%CI:5.3~7.6)、全体集団6.4ヵ月(5.3~7.5)であった。・12ヵ月OS率は、日本人集団80.2%、全体集団82.5%であった。・試験治療下における有害事象(TEAE)は全例で認められた(投与期間中央値7.6ヵ月)。Grade≧3のTEAEは日本人集団49.1%および全体集団43.9%に発現し、重篤なTEAEは11.3%および9.1%に発現した。Grade≧3のTEAEで多かったのは、ALT増加(15.2%)、好中球数減少(10.6%)、AST増加(9.1%)、貧血(7.6%)であった。 これらの結果より、中山氏は「トラスツズマブとカペシタビンへのtucatinib追加は、前治療歴があり、局所進行/転移を有するHER2+乳がんの日本人、韓国人、台湾人の集団において良好な有効性と安全性を示した。HER2CLIMB-03試験の結果はグローバルなHER2CLIMB試験と一貫したものであり、tucatinib+トラスツズマブ+カペシタビンはアジア人においても今後の治療選択肢として支持されるものである」とまとめた。

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救急隊員によるnerinetideの入院前静注は脳虚血患者に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 ESCAPE-NA1試験では、nerinetideが血栓溶解療法後の患者には効果がなかったのは、血栓溶解薬により産生されたプラスミンがnerinetideを分解して不活化してしまうためと考えられたことから、ESCAPE-NEXT試験では血栓溶解療法との併用は検討されなかった。 一方、FRONTIER試験では、病院に到着して血栓溶解療法が行われる前にnerinetideが投与されたので、神経保護と血栓溶解による再灌流の相乗効果が期待された。このアプローチは、発症から治療開始までの時間が短い利点があるが、脳梗塞以外に脳出血、TIA、脳卒中と紛らわしい疾患が混入する欠点もある。 nerinetideは、脳卒中が疑われるすべての患者に有効であるとはいえなかったが、最も効果があったのは血栓溶解療法を受けた症例であり、ターゲットとなる急性期脳梗塞患者には再灌流治療との併用療法として有益であると思われる。今後の臨床試験では、神経保護薬は動脈再開通前の虚血進行中の早期投与がとくに効果があるという仮説を検証すべきである。FRONTIER試験の結果は、血管内治療が可能な脳卒中センターの近くにいない患者に有用な戦略であることを支持している。

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カルシウム摂取が多いほど大腸がんリスク低下

 カルシウム摂取が大腸がんのリスク低下と関連するとの報告があるが、この関連がカルシウム源や腫瘍部位によって異なるかは明らかではない。さらに、人種や民族によるカルシウム摂取量の差が大腸がんリスクに与える影響も不明である。米国・Division of Cancer Epidemiology and Genetics, National Cancer InstituteのSemi Zouiouich氏らはカルシウムの摂取源と腫瘍部位を考慮し、人種や民族を超えたカルシウム摂取と大腸がんリスクとの関連を調査した。本研究の結果はJAMA Network Open誌2025年2月17日号に掲載された。 米国国立衛生研究所の「NIH-AARP食事と健康研究」のデータを分析した。参加者はベースライン(1995年10月~1996年5月)時点での年齢が50~71歳、自己申告による健康状態が良好で、カロリーやカルシウム摂取量が極端に多過ぎず少な過ぎない人であり、最初の原発がん診断、死亡、追跡不能、または終了日(2018年12月31日)まで追跡調査された。データは2022年4月~2024年4月に分析された。カルシウム摂取量は、アンケート回答による摂取源(乳製品および非乳製品)、サプリメントの総摂取量から推定し、主要アウトカムは大腸がんの発生率だった。 主な結果は以下のとおり。・参加者はベースライン時点でがんのない47万1,396例で、平均年齢62.0(SD 5.4)歳、59.5%が男性だった。733万9,055人年の追跡調査(中央値18.4年[IQR:9.2~22.5年])中に1万618例の初発大腸がんが確認された。・総カルシウム摂取量について、最低五分位(Q1)の平均は女性401mg/日(SD 104mg/日)、男性407mg/日(95mg/日)であり、最高五分位(Q5)では女性2,056mg/日(412mg/日)、男性1,773mg/日(444mg/日)だった。・総カルシウム摂取源の平均の内訳は、乳製品42.1%、非乳製品34.2%、サプリメント23.7%だった。・総カルシウム摂取量の増加(Q5 vs.Q1)は大腸がんリスクの低下と関連しており(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.65~0.78、p<0.001)、摂取源および腫瘍部位(近位大腸、遠位大腸、直腸)にかかわらず、一貫した結果が得られた。・カルシウム摂取量が1日当たり300mg増えるごとに、大腸がんリスクは総摂取量で8%、食事由来で10%、サプリメント由来で5%減少した。とくに黒人ではそれぞれ32%、36%、19%減少した。 研究者らは「本コホート研究では、カルシウム摂取量の増加は、腫瘍部位および摂取源にかかわらず、大腸がんリスクの低下と一貫して関連していた。とくに摂取量が少ないグループにおいてカルシウム摂取量を増やすことで、回避可能な大腸がんリスクを低減できる可能性がある」としている。

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家族歴を有するCAD中等度リスク者、CACスコア併用の1次予防戦略が有用/JAMA

 家族歴を有する冠動脈疾患(CAD)中等度リスク者に対する1次予防戦略に、冠動脈カルシウム(CAC)スコアを組み合わせる利点を裏付けるデータが、オーストラリア・Baker Heart and Diabetes Research InstituteのNitesh Nerlekar氏らCAUGHT-CAD Investigatorsが行った無作為化試験の結果で示された。標準ケアのみと比較して、アテローム性脂質の減少とプラーク進展の制御が認められたという。CACスコアリングは、とくにCAD中等度リスクの患者において、予後情報を提供することが知られている。しかしながら、CACスコアと1次予防戦略の組み合わせの利点を検証する無作為化試験はこれまで行われていなかった。JAMA誌オンライン版2025年3月5日号掲載の報告。家族歴のある無症状の40~70歳を対象に無作為化試験 研究グループは、CACスコアと予防戦略を組み合わせることで、早発性CADの家族歴を有する中等度リスク患者のプラーク進展を制御可能かどうかについて評価する、前向きエンドポイント非盲検無作為化試験を、2013~20年にオーストラリアの7病院で実施した(最終追跡評価日は2021年6月5日)。 参加者を地域から募り、CADを60歳未満で発症した第1度近親者または50歳未満で発症した第2度近親者がいる、無症状の40~70歳を対象とした。 対象参加者にCACスコアリングを受けてもらい、スコアが0~400未満の場合は冠動脈CT血管造影(CCTA)を行い、CACスコアに基づく予防的介入(スタチンによる脂質低下療法を含む)を受けるCACスコア組み合わせ群または標準ケア群に無作為に割り付けた。 3年時点で行ったフォローアップCCTAと、独立中央検査施設で測定したプラーク量を入手。主要アウトカムは総プラーク量で、さらに石灰化および非石灰化プラーク量について解析した。3年時点でアテローム性脂質が有意に減少、プラーク進展が有意に低下 試験対象は365例(平均年齢58[SD 6]歳、男性57.5%)であった(CACスコア組み合わせ群179例、標準ケア群186例)。 標準ケア群と比較してCACスコア組み合わせ群は、3年時点で総コレステロール(平均[SD]-3[31]mg/dL vs.-56[38]mg/dL、p<0.001)およびLDLコレステロール(-2[31]mg/dL vs.-51[36]mg/dL、p<0.001)の持続的な低減が認められ、プールコホート計算式(心血管疾患の10年予測リスクツール)における変化量と関連していた(平均[SD]2.1[2.9]%vs.0.5[2.9]%、p<0.001)。 標準ケア群はCACスコア組み合わせ群と比べて、総プラーク量(平均[SD]24.9[37.7]mm3 vs.15.4[30.9]mm3、p=0.009)、非石灰化プラーク量(15.7[32.2]mm3 vs.5.6[28.5]mm3、p=0.002)、線維脂肪性および壊死性コアプラーク量(4.5[25.8]mm3 vs.-0.8[12.6]mm3、p=0.02)において、プラーク進展が大きかった。これらのプラーク量の変化は、その他のリスク因子(ベースラインのプラーク量、血圧および脂質のプロファイルなど)とは独立していた。

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脳保護薬nerinetideは血栓溶解療法を行わない血栓除去術施行患者に有効か?(解説:内山真一郎氏)

 nerinetideは、急性期虚血性脳卒中の前臨床モデルで多くの研究が行われてきたイコサペプチドであり、再灌流療法前の脳損傷の進行を阻止することによる転帰改善効果が期待されている。nerinetide投与前にアルテプラーゼ治療を受けなかった患者では効果があり、受けた患者では効果がなかったが、アルテプラーゼの先行投与により産生されるプラスミンがnerinetideを分解して不活化してしまうためであると考えられている。 ESCAPE-NEXT試験は、nerinetideが有効だったESCAPE-NA1試験のアルテプラーゼ無投与群の結果を再現するためにデザインされた。結果は、事前に血栓溶解療法を行わなかった、発症後12時間を過ぎた血管内血栓除去術を施行した患者においてnerinetideの効果は観察されなかった。中立的な結果に終わった理由としては、脳卒中ケアの経時的変貌、治療時間枠の遅さ、COVID-19流行の影響、年齢の高さ、薬剤投与と再灌流の間のインターバルの短さが挙げられている。 血管内治療は、脳保護療法の理想的な唯一の患者選択肢とはいえないのかもしれない。同時に行われたFRONTIER試験の統合解析が待たれるが、脳保護療法の未来には今後も多くの紆余曲折がありそうである。

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asthma(喘息)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第22回

言葉の由来「喘息」は英語で“asthma”ですが、この言葉の起源をたどると、古代ギリシャ語の“aazein”という動詞に由来するそうです。この動詞は、「激しく息をする」という意味合いを持つ言葉です。14世紀後半に英語に導入され、「息苦しい発作や胸の圧迫感を伴う呼吸障害」を表す医学用語として使用され始めました。この当時は、まだ現在のように病名として定義されておらず、呼吸困難がある患者全般に対する呼称として“asthma”あるいは、“asthmatic”という形容詞が使われてきたようです。なお、後者の“asthmatic”は、喘息患者をラベリングする(=患者を病気そのもので定義付けてしまう)使い方をされることが多いので、現在は使用を避けるのが好ましいといわれています。現代の医学では、喘息は慢性炎症性気道疾患の病名として用いられていますが、このような病気としての言葉の定義付けがされたのは、19世紀に入ってからのようです。併せて覚えよう! 周辺単語呼吸困難dyspnea喘鳴wheeze急性増悪acute exacerbation吸入ステロイドinhaled corticosteroids気管支拡張薬bronchodilatorsこの病気、英語で説明できますか?Asthma is a chronic inflammatory disease of the airways characterized by episodes of wheezing, shortness of breath, chest tightness, and coughing. These episodes can be triggered by allergens, physical activity, or respiratory infections.講師紹介

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5~24歳の肥満者数、この30年で3倍に/Lancet

 1990~2021年にかけて世界のあらゆる地域で過体重と肥満が大幅に増加しており、増加を抑制するための現行の対策が小児期・青年期の世代で失敗していることが、オーストラリア・Murdoch Children 's Research InstituteのJessica A. Kerr氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2021 Adolescent BMI Collaboratorsの解析で明らかとなった。結果を踏まえて著者は、「2021年以降も、小児期・青年期の過体重の有病率は高いままで、将来的に肥満集団はさらに増加すると予測される。世界のすべての地域、すべての人口集団で増加が続き、2022~30年に大きな変化が起こると予測されるため、この公衆衛生上の危機に対処するため早急な行動が必要である」と述べている。Lancet誌2025年3月8日号掲載の報告。1990~2021年の180の国と地域5~24歳のデータを解析 研究グループは、GBD 2021の確立された方法論を用い、1990~2021年の小児期・青年期における過体重と肥満の推移をモデル化し、2050年までの予測を行った。モデルの主要データには、180の国と地域から収集された1,321件の測定データが含まれた。 これらのデータを用い、1990~2021年における204の国と地域での過体重と肥満の年齢標準化有病率を、性別、年齢層別、国・地域別に推定した。年齢層は、学童期(5~14歳、通常学校に通い児童保健サービスを受ける)と学生期(15~24歳、徐々に学校を離れ、成人向けサービスを受ける)に分けた。 1990~2021年の推定有病率は時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、2022~50年の予測有病率は現在の傾向が継続すると仮定した一般化アンサンブルモデリング法を用いてそれぞれ算出し、1990~2050年の各年齢、性別、地域の人口集団について、肥満の割合と過体重の割合の対数比から肥満の過体重に対する優位性を推定した。2050年までに世界的に過体重と肥満の有病率が増加 1990~2021年にかけて、小児期・青年期における過体重と肥満の合計有病率は2倍、肥満のみの有病率は3倍となった。2021年までに、肥満者数は5~14歳で9,310万人(95%不確実性区間[UI]:8,960万~9,660万)、15~24歳で8,060万人(7,820万~8,330万)と推定された。 2021年の過体重および肥満の有病率は、GBD super-regionの中で北アフリカ・中東(アラブ首長国連邦、クウェートなど)で最も高く、1990~2021年にかけて増加率が最も高かったのは東南アジア・東アジア・オセアニア(台湾、モルディブ、中国など)であった。 2021年までに、両年齢層の女性は、オーストララシア(オーストラリアなど)および北米の高所得地域(カナダなど)の多くの国で肥満優位状態であり、北アフリカ・中東(アラブ首長国連邦やカタールなど)およびオセアニア(クック諸島やサモアなど)の多くの国でも、男女ともに肥満優位状態に移行していた。 2022~50年にかけて、過体重(肥満ではない)の有病率は世界的に安定すると予測されたが、世界人口に対する肥満人口の絶対割合の増加は1990~2021年の間より大きくなり、2022~30年にかけて大幅に増加し、この増加は2031~50年の間も続くと予測された。 2050年までに、肥満有病率は北アフリカ・中東(アラブ首長国連邦、クウェートなど)で最も高くなると予測され、肥満の増加は依然として東南アジア・東アジア・オセアニア(東ティモール、北朝鮮など)に加え、南アジア(ネパール、バングラデシュなど)でも増加すると予想された。 15~24歳と比較して5~14歳のほうが、ほとんどの地域(中南米・カリブ海地域および高所得地域を除く)で2050年までに過体重より肥満の有病率が高くなると予測された。 世界的には、2050年までに5~14歳のうち15.6%(95%UI:12.7~17.2、1億8,600万人[1億4,100万~2億2,100万])、15~24歳のうち14.2%(11.4~15.7、1億7,500万人[1億3,600万~2億300万])が肥満になると予測された。 また、2050年までに、5~14歳の男性では、肥満(16.5%[95%UI:13.3~18.3])が過体重(12.9%[12.2~13.6])を上回り、5~24歳の女性および15~24歳の男性では過体重が肥満を上回ると予測された。 地域別では、北アフリカ・中東および熱帯中南米の5~24歳の男女、東アジア、サハラ以南のアフリカ中央部と南部、中南米の中央部の5~14歳の男性、オーストララシアの5~14歳の女性、オーストララシア、北米の高所得地域、サハラ以南のアフリカ南部の15~24歳の女性、北米の高所得地域の15~24歳の男性で、2041~50年までに肥満優位状態に移行すると予測された。

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標準治療+アニフロルマブが全身性エリテマトーデス患者の臓器障害の進行を抑制

 全身性エリテマトーデス(SLE)は、炎症を通じて肺、腎臓、心臓、肝臓、その他の重要な臓器にさまざまな障害を起こす疾患であり、臓器障害が不可逆的となることもある。しかし、新たな研究で、標準治療へのSLE治療薬アニフロルマブ(商品名サフネロー)の追加が、中等症から重症の活動性SLE患者での臓器障害の発症予防や進行抑制に寄与する可能性のあることが示された。サフネローを製造販売するアストラゼネカ社の資金提供を受けてトロント大学(カナダ)医学部のZahi Touma氏らが実施したこの研究は、「Annals of the Rheumatic Diseases」に2月1日掲載された。 SLEの標準治療は、ステロイド薬、抗マラリア薬、免疫抑制薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などを組み合わせて炎症を抑制するのが一般的である。しかし、このような標準治療でSLEによる臓器障害を防ぐことは難しく、場合によっては障害を悪化させる可能性もあると研究グループは指摘する。 アニフロルマブは、炎症亢進に重要な役割を果たす1型インターフェロン(IFN-1)受容体を標的とするモノクローナル抗体であり、2021年に米食品医薬品局(FDA)によりSLE治療薬として承認された。今回の研究では、標準治療にアニフロルマブを追加することで、標準治療単独の場合と比べて中等症から重症の活動性SLE患者での臓器障害発生を抑制できるのかが検討された。対象者は、標準治療(糖質コルチコイド、抗マラリア薬、免疫抑制薬)に加え、アニフロルマブ300mgの4週間ごとの静脈内投与を受けたTULIP試験参加者354人(アニフロルマブ群)と、トロント大学ループスクリニックで標準治療のみを受けた外部コホート561人(対照群)とした。 主要評価項目は、ベースラインから208週目までのSLE蓄積障害指数(Systemic Lupus International Collaborating Clinics/American College of Rheumatology Damage Index;SDI)の変化量、副次評価項目は、最初にSDIが上昇するまでの期間であった。SDIは0〜46点で算出され、スコアが高いほど臓器障害が進行していることを意味する。なお、過去の研究では、SDIの1点の上昇は死亡リスクの34%の上昇と関連付けられているという。 その結果、ベースラインから208週目までのSDIの平均変化量はアニフロルマブ群で対照群に比べて0.416点有意に低いことが明らかになった(P<0.001)。また、208週目までにSDIが上昇するリスクは、アニフロルマブ群で対照群よりも59.9%低いことも示された(ハザード比0.401、P=0.005)。 こうした結果を受けてTouma氏は、「アニフロルマブと標準治療の併用は、4年間にわたって標準治療のみを行う場合と比較して、臓器障害の蓄積を抑制し、臓器障害の進行までの時間を延ばすのに効果的である」と結論付けている。

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慢性疾患を持つ労働者の多くが職場で病気を隠している

 糖尿病、心臓病、喘息などの慢性疾患を持つ米国の労働者の60%は、そのような健康上の問題を職場の管理者に伝えていないという実態が報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のGillian SteelFisher氏らが行った調査の結果であり、2月11日、同大学院のサイトにニュースリリースが掲載された。 調査の結果、慢性疾患を持つ労働者の3分の1以上が、過去1年間に、仕事の都合で必要な受診をしない日があったことも明らかになった。SteelFisher氏は、「慢性疾患を持つ労働者は、自分の健康状態のために差別を受けていると感じることが多く、そのために仕事と健康の双方に深刻な影響が及ぶこともある」と話している。 この調査は2024年10月2~16日にかけて、米国内の従業員数50人以上の企業に所属しているフルタイムおよびパートタイムの成人労働者1,010人を対象に実施された。このうち58%は、糖尿病、高血圧、心臓病、喘息などの慢性疾患を1種類以上有していた。この慢性疾患有病者のうち76%は、「勤務時間中に健康管理のための時間を割く必要がある」と回答していたが、60%は自分の病気について会社に伝えていなかった。また、36%は、過去1年以内に仕事を優先して受診の予約を入れなかったり予約を延期したりしていた。「健康管理のために休暇を取る必要があったのに、それができなかった」との回答も49%に上った。 このほかにも、慢性疾患を有する労働者の25%は、「健康上の理由で過去1年間に昇進を逃したことがある」と考え、21%は「健康状態のために自分の勤務に対する否定的な評価を受けたことがある」と答えていた。SteelFisher氏は、「これらの問題は全て、労働者だけでなく雇用者側にも負の影響を及ぼす可能性がある。従業員を引きとめるために雇用主は、従業員ともっとコミュニケーションを取り、双方にとってベストな方法を模索すべきではないか」と提案している。 一方、本調査では、本人が健康であっても、自宅に慢性疾患を持ちケアを要する同居者がいるというケースが少なくないことも分かった。回答者の3分の1がこのような状況にあり、そのほぼ半数(45%)は「勤務時間中にもしばしばケアにあたる必要がある」と回答した。それにもかかわらず、慢性疾患を患う家族がいる人の37%は「ケアのために休暇を取るのは困難」と答え、25%は「その状況に対処するために労働時間を減らし、収入減を受け入れざるを得ない」と答えた。 これらの結果について、調査に協力した米ド・ボーモン財団の会長兼CEOのBrian Castrucci氏は、「雇用主にとり、自分自身や家族の慢性疾患に悩む従業員を支援することは、重要な責務であると同時に大きなチャンスでもある。それを行うことで、従業員とその家族の健康が改善されるだけでなく、従業員の定着率が向上し欠勤も減るのではないか」と論評している。

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PADISガイドライン改訂で「不安」が新たな焦点に【論文から学ぶ看護の新常識】第6回

PADISガイドライン改訂で「不安」が新たな焦点に米国集中治療医学会(Society of Critical Care Medicine[SCCM])は2025年2月21日、『フォーカスアップデート版 集中治療室における成人患者の痛み、不安、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床診療ガイドライン』を公開した。本ガイドラインは、2018年に発表された『集中治療室における成人患者の痛み、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床ガイドライン』(通称PADISガイドライン)のフォーカスアップデート版であり、新たに「不安」が主要領域として追加された。フォーカスアップデート版 集中治療室における成人患者の痛み、不安、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害の予防および管理のための臨床診療ガイドライン本ガイドラインは、2018年版『集中治療室における成人患者の痛み,不穏/鎮静,せん妄,不 動,睡眠障害の予防および管理のための臨床ガイドライン』を改訂、発展させることを目的として、成人ICU患者に関する5つの主要領域、不安(新規トピック)、不穏/鎮静、せん妄、不動、睡眠障害に焦点を当てて作成された。主な改定点は下記の通り。2018年版 PADISガイドラインの内容は()内に記載。1.ICU入室中の成人患者の不安治療にベンゾジアゼピンを使用することに関して、推奨を行うのに十分なエビデンスが存在しない。(2018年版:この領域についての推奨なし)2.ICU入室中の人工呼吸器管理下の成人患者において、浅い鎮静および/またはせん妄の軽減が最優先される場合は、プロポフォールよりもデクスメデトミジンの使用を推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:中等度)。(2018年版:人工呼吸器管理下の成人患者の鎮静には、ベンゾジアゼピンよりもプロポフォールまたはデクスメデトミジンの使用を推奨する[条件付き推奨、エビデンスの質:低い])3.ICU入室中の成人患者のせん妄治療において、通常のケアよりも抗精神病薬を使用することの是非について推奨を行うことはできない(条件付き推奨、エビデンスの確実性:低い)。(2018年版:せん妄の治療にハロペリドールまたは非定型抗精神病薬を日常的に使用しないことを推奨する [条件付き推奨、エビデンスの質:低い])4.ICU入室中の成人患者に対しては、通常のモビライゼーション/リハビリテーションよりも強化されたモビライゼーション/リハビリテーションを行うことを推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:中等度)。(2018年版:重症の成人患者に対してリハビリテーションまたはモビライゼーションを実施することを推奨する[条件付き推奨、エビデンスの質:低い])5.ICU入室中の成人患者に対しては、メラトニンを投与することを推奨する(条件付き推奨、エビデンスの確実性:低い)。(2018年版:重症の成人患者の睡眠改善に対するメラトニンの使用については、推奨を行わない[推奨なし、エビデンスの質:非常に低い])PADISガイドラインは、痛み(Pain)、鎮静(Agitation/Sedation)、せん妄(Delirium, Immobility)、睡眠障害(Sleep)の頭文字をとった名称であり、これらの症状への推奨される治療やケアなどを包括的に示したガイドラインです。今回、2018年に発表されたPADISガイドラインのフォーカスアップデート版が発表されました。今回のアップデートでは、とくに、これまでせん妄と混同されがちだった「不安」を新たに焦点化した点が大きな変化といえます。海外ではICU入室中の不安を訴える患者にベンゾジアゼピンが一般的に使用されるケースがあるようですが、明確なエビデンスはなく推奨は行われていません。ただし、入室前から慢性的に不安症状がありベンゾジアゼピンを服用している患者に対しては、継続を検討する余地があると示されました。不安の評価には、痛みの評価で使われる「Face Scale」と同様の絵を用いた「Faces Anxiety Scale」などが推奨されています。患者自身が表情のイラストを見て不安度を評価できるため、日本の医療現場でもすぐに応用できるでしょう。薬物療法はまだ確立していない部分がありそうですが、音楽療法やバーチャルリアリティ(VR)など一部の非薬理学的アプローチは推奨されており、患者さんの好みに合った音楽を流すなどの工夫は有効かもしれません。また、睡眠管理ではメラトニン投与が条件付きで推奨され、生理的な睡眠リズムの補完が重要なテーマとなっています。さらにリハビリテーションでは、早期離床だけでなく、より強化されたリハビリプログラムの導入も提案されており、ICU退室後の身体機能回復やQOL向上に寄与すると期待されています。今後のスタンダードなケア・治療の一つになる可能性があるため、興味のある方はぜひ詳しい内容にも目を通してみることをおすすめします。論文はこちらLewis K, et al. Crit Care Med. 2025;53(3):e711-e727.

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歯周病治療で糖尿病患者における人工透析リスクが低下か

 歯周病を治療している糖尿病患者では、人工透析に移行するリスクが32~44%低いことが明らかになった。東北大学大学院歯学研究科歯学イノベーションリエゾンセンターの草間太郎氏、同センターの竹内研時氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Clinical Periodontology」に1月5日掲載された。 慢性腎臓病は糖尿病の重大な合併症の一つであり、進行した場合、死亡リスクも高まり人工透析や腎移植といった高額な介入が必要となる。したがって、患者の疾病負荷と医療経済の両方の観点から、慢性腎臓病を進行させるリスク因子の同定が待たれている。 歯周病は糖尿病の合併症であるだけでなく、糖尿病自体の発症やその他の合併症の要因でもあることが示唆されている。また、歯周病と腎機能低下との関連を示唆する報告もされていることから、研究グループは糖尿病患者における定期的な歯周病ケアが腎機能低下のリスクを軽減または進行を遅らせる可能性を想定し、大規模な糖尿病患者のデータを追跡した。具体的には、歯周病治療を伴う歯科受診を曝露変数として、人工透析に移行するリスクを後ろ向きに検討した。 本研究では、40~74歳までの2型糖尿病患者9万9,273人の医療受診データ、特定健診データが用いられた。2016年1月1日~2022年2月28日までの期間に、2型糖尿病を主傷病としていた患者を登録した。 9万9,273人の参加者(平均年齢は54.4±7.8歳、男性71.9%)における人工透析の発生率は1,000人あたり1年間で0.92人だった。交絡因子については、年齢、性別、被保険者の種類、チャールソン併存疾患指数、糖尿病の治療状況(外来の頻度、経口糖尿病治療薬の種類、インスリン製剤使用の有無、治療期間)、健診結果(高血圧、高脂血症、蛋白尿、HbA1c)、喫煙・飲酒といった生活習慣などが共変量として調整された。 交絡因子を調整後、人工透析開始のハザード比(HR)を分析した結果、歯科受診をしていなかった患者と比較して、1年に1回以上歯周病治療を受けている患者で32%(HR 0.68〔95%信頼区間0.51~0.91〕、P<0.05)、半年に1回以上治療を受けている患者で44%(同0.56〔0.41~0.77〕、P<0.001)、人工透析開始のリスクが低いことが示された。 研究グループは本研究の結果について、「これらの結果は、糖尿病性の腎疾患の進行を緩和し、患者の転帰を改善するためには、糖尿病治療に日常的な歯周病治療を組み込むことが重要であることを示唆している。また糖尿病患者の管理における専門医と歯科の連携欠如は以前より報告されており、本研究でも患者の半数以上が歯周病ケアを受けていなかった。今後、糖尿病患者の健康を維持するためには、専門医と歯科のさらなる連携が必要と考える」と総括した。なお、本研究の限界について、登録データは企業が提供する雇用保険に加入する個人のみが含まれていたことから、研究の参加者は日本人全体の特徴を表していない点などを挙げている。

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「nanacoギフト」交換レート変更のお知らせ

このたび、ケアネットポイントの交換先である「nanacoギフト」につきまして、2025年4月1日(火)11:00より、交換レートを以下のとおり変更いたします。【変更前】 3月31日(月)13:59まで100pt=100円分【変更後】 4月1日(火)11:00より100pt=95円分※2025年3月31日(月)13:59までにお申し込みいただいた分は、現行のレート(100pt=100円分)で交換いたします。※2025年3月31日(月)14:00~4月1日(火)11:00 に、ポイント交換システムのメンテナンスを実施いたします。状況により、メンテナンスの時間帯は前後する場合がございます。ご利用中の皆さまにはご不便をおかけしますが、何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。ケアネットポイントの交換はこちらよりお手続きください。https://point.carenet.com/exchange※ログインが必要です

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介護が必要となった主な原因(男女別)

介護が必要となった主な原因(男女別)視覚・聴覚障害1.1%呼吸器疾患3.4%視覚・聴覚障害 1.0%呼吸器疾患 1.3%脊髄損傷 1.6%その他11.4%脳卒中25.2%脊髄損傷3.4%男性がん3.9%認知症13.7%パーキンソン病5.4%n=3万4,777人パーキンソン病2.5%女性骨折・転倒17.8%脳卒中11.2%関節疾患12.7%高齢による衰弱8.7%骨折・転倒6.6%認知症18.1%がん 2.1%心臓病4.4%糖尿病5.2%関節疾患 心臓病5.4% 6.5%その他10.0%糖尿病 1.7%高齢による衰弱15.6%n=6万5,223人厚生労働省「2022(令和4)年国民生活基礎調査」第023表「介護を要する者数、介護が必要となった主な原因・通院の有無・性・年齢階級別」を基に作成Copyright © 2025 CareNet,Inc. All rights reserved.

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第257回 アスピリンのがん転移抑制の仕組みが判明

アスピリンのがん転移抑制の仕組みが判明アスピリンが免疫を促進してがんの転移を抑制する仕組みが判明しました。原発がんの治療は進歩しました。しかし、早期がんの段階で幸いにも治療できたところで多くの患者はやがて転移を来します。COX阻害薬であるアスピリンの連日服用と固形がんの肺、肝臓、脳などへの転移が36%低くて済むことの関連が大規模無作為化試験のメタ解析で示されています1)。また、診断時点で転移がなかったがん患者の低用量アスピリン使用とがんによる死亡率の低下の関連もいくつかの試験で認められています。大腸がん患者のアスピリン使用と生存改善の関連はHLAクラスI抗原が腫瘍で発現している場合に限られ2)、アスピリンのがんへの効果はどうやら免疫絡みのようです。アスピリンが阻害する2つのCOX酵素の1つのCOX-1はほとんどの組織で発現しており、血小板では凝固因子であるトロンボキサンA2(TXA2)の生成に携わります。もう1つのCOX-2はもっぱら炎症の際に生じます。アスピリンは体内で短命(半減期約20分)であり、有核細胞のCOX-1やCOX-2を阻害し続けるには高用量を頻回投与する必要があります。一方、毎日の低用量アスピリン服用の主な矛先は血小板のCOX-1と同酵素が携わるTXA2生成です。無核の血小板のCOX-1は新調(resynthesize)が不可能であり、低用量アスピリンで永続的に阻害されます。英国のケンブリッジ大学の研究者が率いた先立つ研究でARHGEF1という名称のタンパク質がどうやら転移に絡むことが示されています。同チームの新たな研究でARHGEF1は転移へのT細胞免疫を妨げており、ARHGEF1を省くとT細胞機能が向上すると判明しました。さらに調べたところ、血小板でCOX-1に依存して作られるTXA2からの伝達もT細胞を抑制し、ARHGEF1がその伝達経路の一員であることが示されました。そうとなればCOX阻害によってTXA2生合成を阻止するアスピリンは、TXA2がARHGEF1依存的に強いるT細胞抑制を解消して転移を防ぐ効果を担いそうです。マウスで試したところその予想どおりの結果が得られました。アスピリンはT細胞のARHGEF1を欠くマウスの転移を減らせませんでした。また、長持ちなTXA2の類い(U46619)をアスピリンとともに投与した場合もアスピリンは転移を減らせなくなりました。一方、T細胞のARHGEF1を欠くマウスにTXA2を与えたところで転移頻度は変わりませんでした。それらの結果は、アスピリンの転移阻止活性はTXA2を減らし、TXA2のARHGEF1依存的なT細胞抑制を解く作用のおかげであることを示しています3)。COX-1選択的阻害薬や血小板のCOX-1除去でTXA2を減らすこともアスピリンと同様に転移を抑制しました。研究チームは、国際共同無作為化試験Add-Aspirin4)のリーダーRuth Langley氏と提携し、今回の発見を治療の現場で役立つようにすることを目指します5)。Add-Aspirin試験は早期がんの治療を終えた患者がアスピリンを常用することで再発や死亡を防げるかどうかを調べています。今回の成果はさらなる提携や新たな研究の契機を生み出してより効果的な転移抑制手段の開発の道を開くでしょう3)。参考1)Rothwell PM, et al. Lancet. 2012;379:1591-601.2)Reimers MS, et al. JAMA Intern Med. 2014;174:732-739.3)Yang J, et al. Nature. 2025 Mar 5. [Epub ahead of print]4)Add-Aspirin Trial5)Scientists discover how aspirin could prevent some cancers from spreading / Eurekalert

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