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SGLT2阻害薬とGLP-1作動薬の有効性と有害事象をレビュー(解説:桑島巖氏)-1349

 最近の2型糖尿病治療薬の進歩は目覚ましい。DPP-4阻害薬登場によってHbA1cのコントロールは容易になったが、大規模臨床試験では心血管イベント抑制効果は見いだせなかった。しかし、その後登場したSGLT2阻害薬とGLP-1作動薬については、血糖値低下のみならず、心血管イベント、腎障害進展や死亡を抑制するという臨床試験の成績が相次いで発表されている。そして両薬剤は、いまや単に糖尿病治療薬の域を越え、心・腎・脳血管障害予防薬としての地位を確保しつつある。 本論文は、SGLT2阻害薬とGLP-1作動薬に関して、プラセボや従来治療、その他の血糖降下薬とを比較した764トライアル、約42万人についてのsystematic reviewとメタ解析のレビューである。その結論としては、SGLT2阻害薬は心不全による入院と死亡の回避という点でGLP-1作動薬よりも優れており、一方、非致死的脳卒中予防においてはGLP-1作動薬のほうが優れていたというものである。また有害事象に関しては、SGLT2阻害薬は、高率に生殖器感染を惹起する一方、GLP-1作動薬は重症な消化管イベントを惹起したという。 SGLT2阻害薬、GLP-1作動薬に関しては信頼性の高いプラセボ対照無作為ランダム化試験の成績がいくつか発表されており、上記の両薬剤の心血管イベント抑制効果に関する有効性はすでに明らかになっている。 それらは、SGLT2阻害薬の心血管アウトカム試験としては、エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)のEMPA-REG OUTCOME研究、カナグリフロジン(同:カナグル)のCANVAS研究、ダパグリフロジン(同:フォシーガ)のDECLARE-TIMI 58研究、ertugliflozin(本邦未発売)のVERTIS CV研究、sotagliflozin(同)のSOLOIST-WHF研究が発表されている。またGLP-1作動薬の心血管アウトカム試験としては、リラグルチドのLEADER研究、リキシセナチドのELIXA研究、デュラグルチドのREWIND研究、セマグルチドのSUSTAIN-6研究などである。 これらのランダム化試験の結果から、SGLT2阻害薬は高リスク症例で、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中は抑制しないものの、心不全の入院と死亡を減少させることがクラスエフェクトとして明らかになっている。これはSGLT2阻害薬の利尿作用とそれに伴う血圧低下、心負荷の軽減が心不全の抑制につながっている。 一方、GLP-1作動薬は心不全による入院や死亡の抑制効果は認められないが、死亡、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合エンドポイントは有意に抑制するという結果が発表されている。しかし、その機序については不明である。 しかしながら、本論文の膨大な数の比較試験を収集したメタ解析は、その異質性、多様性ゆえに、おおよその両薬剤の有効性、有害性をまとめるうえでは有用であっても、エビデンスレベルはランダム化試験のほうが上である。 しかし両薬剤が単に血糖値を下げるだけの薬剤ではなく、心血管保護薬として心血管疾患を有している症例の2次予防治療薬として有望であることを、あらためて示した点では意味がある。

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新型コロナ感染拡大、Go Toトラベルが影響か

 西浦 博氏(京都大学環境衛生学 教授)が率いる研究チームは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行中の旅行者向けキャンペーン(Go Toトラベル)実施による疫学的影響について、キャンペーン実施前後の旅行・観光関連の症例発生率を比較し検証を行った。その結果、Go Toトラベル開始後の1日当たりのCOVID-19発生率は、2020年6月22日~7月21日までの期間と比較して約3倍、7月15~19日の開始直前期間との比較では約1.5倍にまで増加していたことを明らかにした。また、観光目的で感染した人は、6月22日~7月21日の期間との比較では約8倍、7月15~19日との比較では2〜3倍も増加していた。研究者らは「日本での第2波は、8月中旬までに減少し始めたが、Go Toトラベル開始初期の7月22日~26日の間に旅行関連のCOVID-19症例が増加した可能性がある」としている。Journal of Clinical Medicine誌オンライン版2021年2月号掲載の報告。 日本政府は 7月22日よりGo Toトラベルを開始。ホテル料金の大幅割引を提供し、国内の旅行先での消費に使用できる地域共通クーポンを発行したが、人の移動性を高めることでCOVID-19感染拡大に繋がる恐れがあったため、世論からはキャンペーン実施に対して停止や延期が求められていた。 本研究では国内における旅行が原因とされるCOVID-19症例の疫学的パターンに焦点を当て、5月1日~8月31日までに県や政府から報告されたCOVID-19症例を分析した。旅行に関連するケースとして、県境を越えた人、国境を越えた人と接触した人と定義。旅行の目的は「ビジネス」「家族に会う」「観光(tourism/sightseeing)」に分類した。 主な結果は以下のとおり。・2020年5月1日~8月31日までに24都道府県で合計3,978件のCOVID-19症例が報告された。・症例のうち2,211例(57.3%)は男性で、119例は性別不明だった。・患者の平均年齢は42.6歳だった。・診断時に症状を有したのは3,060例(76.9%)で、そのうち軽症2,150例(70.3%)と無症状891例(29.1%) が含まれていた。・3,978例のうち817例(20.1%)は、県境を越えた旅行歴、または県境を越えた他人との接触歴があった。・旅行関連の症例の平均年齢は36.2歳で、残りの症例の平均年齢は44.2歳だった。・24都道府県の月別の全例報告数は、7月が2,074例(52.7%)、8月が1,597例(40.5%)で、そのうち旅行関連の症例は7月が482例(23.2%)、8月が289例(18.1%)だった。

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超急性期脳梗塞の血管内治療、rt-PA併用に対して非劣性を認めず/JAMA

 急性脳主幹動脈閉塞に対する機械的血栓回収単独療法は、機械的血栓回収+静脈内血栓溶解併用療法と比較し、良好な機能的アウトカムに関して非劣性は示されなかった。日本医科大学の鈴木 健太郎氏らが、医師主導型多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「Randomized study of endovascular therapy with versus without intravenous tissue plasminogen activator in acute stroke with ICA and M1 occlusion(SKIP study)」の結果を報告した。急性脳主幹動脈閉塞患者において、機械的血栓回収療法に静脈内血栓溶解の併用が必要かどうかは不明であった。JAMA誌2021年1月19日号掲載の報告。超急性期脳梗塞患者約200例で有効性を比較 研究グループは2017年1月1日~2019年7月31日に、全国23施設で脳主幹動脈閉塞による急性期脳梗塞患者204例を登録し、機械的血栓回収療法単独群(101例)(MT単独群)と機械的血栓回収+静脈内血栓溶解併用療法(アルテプラーゼ0.6mg/kg)併用群(103例)(MT+rt-PA併用群)に無作為に割り付け、2019年10月31日まで追跡調査した。 有効性の主要評価項目は、発症90日時点の修正Rankinスケール(mRS)スコア0~2で定義した良好な機能的アウトカムとした。非劣性マージンはオッズ比(OR)0.74、有意性水準は片側0.025(97.5%信頼区間[CI])とした。 事前に設定した副次評価項目は、発症90日までの死亡などを含む7項目、安全性評価項目は発症36時間以内の頭蓋内出血など4項目であった。90日時点の良好な機能的アウトカムに両群で有意差なし 204例(年齢中央値74歳、男性62.7%、米国国立衛生研究所脳卒中スケール[NIHSS]中央値18)が登録され、全患者が試験を完遂した。 主要評価項目を達成した患者の割合はMT単独群59.4%(60例)、MT+rt-PA併用群57.3%(59例)であり、両群間に有意差は認められなかった(群間差:2.1%[片側97.5%CI:-11.4~∞]、OR:1.09[片側97.5%CI:0.63~∞]、非劣性のp=0.18)。 有効性の副次評価項目7項目および安全性評価項目4項目のうち、90日死亡(7.9% vs.8.7%、群間差:-0.8%[片側95%CI:-9.5~7.8]、OR:0.90[95%CI:0.33~2.43]、p>0.99)を含む10項目で、有意差は確認されなかった。 なお、全頭蓋内出血の発生についてのみ、MT単独群がMT+rt-PA併用群と比較して有意に少ないことが確認された(33.7% vs.50.5%、群間差:-16.8%[95%CI:-32.1~-1.6]、OR:0.50[95%CI:0.28~0.88]、p=0.02)。症候性頭蓋内出血は、両群で差はなかった(5.9% vs.7.7%、群間差:-1.8%[95%CI:-9.7~6.1]、OR:0.75[95%CI:0.25~2.24]、p=0.78)。

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乳がんリスクが高い9遺伝子を推定/NEJM

 英国・ケンブリッジ大学のLeila Dorling氏らBreast Cancer Association Consortium(BCAC)の研究チームは、乳がんリスクのゲノム関連解析の結果、乳がんリスクを予測する遺伝子パネルに組み込む臨床的に最も役立つ遺伝子を特定し、遺伝カウンセリングを導入するためのタンパク質切断型変異による乳がんリスクを推定した。乳がん感受性遺伝子検査は広く用いられるようになったが、多くの遺伝子は乳がんとの関連性に関するエビデンスが弱く、リスク推定値は不正確で、信頼できる亜型特異的リスクのデータも不足していた。NEJM誌オンライン版2021年1月20日号掲載の報告。11万3,000例以上を対象に、34の乳がん感受性遺伝子を解析 研究グループは、BCACの研究に参加している乳がん患者6万466例、および対照者5万3,461例の検体を対象に、感受性遺伝子と考えられている34の遺伝子パネルを用いDNAシークエンシングを実施した。 遺伝子変異は、タンパク質切断型変異とまれなミスセンス変異についてそれぞれ解析し、すべての乳がんおよびサブタイプ別のオッズ比を推定するとともに、ミスセンス変異の関連性を評価した。遺伝子間のリスクの差が明らかに 5つの遺伝子(ATM、BRCA1、BRCA2、CHEK2、PALB2)のタンパク質切断型変異は、乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.0001)。4つの遺伝子(BARD1、RAD51C、RAD51D、TP53)のタンパク質切断型変異も乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.05およびベイズ偽陽性確率<0.05)。残り25遺伝子のうち19のタンパク質切断型変異は、乳がん全体のオッズ比の95%信頼区間上限値が2.0未満であった。 ATMおよびCHEK2のタンパク質切断型変異では、エストロゲン受容体(ER)陰性乳がんと比較して、ER陽性乳がんの発症リスクが高かった。BARD1、BRCA1、BRCA2、PALB2、RAD51C、RAD51Dのタンパク質切断型変異では、ER陽性乳がんと比較してER陰性乳がんの発症リスクが高かった。 ATM、CHEK2、TP53のまれなミスセンス変異は、乳がん全体のリスクと関連していた(p<0.001未満)。BRCA1、BRCA2、TP53については、標準的な基準に従い病的変異に分類される可能性があるミスセンス変異が、乳がん全体のリスクと関連しており、そのリスクはタンパク質切断型変異と同程度であった。

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日本人双極性障害患者とうつ病患者の認知機能の比較

 国立精神・神経医療研究センターの松尾 淳子氏らは、双極性障害(BD)患者における病期別の認知機能を調査し、うつ病患者や健康対照者の認知機能との比較を行った。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年12月27日号の報告。 BD患者139例(寛解期:55例、非寛解期:84例)、うつ病患者311例(寛解期:88例、非寛解期:223例)、健康対照者386例を対象に、ウェクスラー成人知能検査(Wechsler Adult Intelligence Scale-RevisedまたはWAIS-III)を実施した。対象は、日本人の非高齢者で通常推定病前知能指数(IQ)が90超であり、年齢、性別、病前IQは、グループ間で一致していた。 主な結果は以下のとおり。・非寛解期BD患者は、健康対照者と比較し、言語IQ、パフォーマンスIQ、フルスケールIQ、知覚の体制化、ワーキングメモリ、処理速度のスコアが有意に低かった(すべて、p<0.001)。・同様に、非寛解期うつ病患者と比較し、言語IQ、パフォーマンスIQ、フルスケールIQ、ワーキングメモリのスコアが有意に低かった。・非寛解期うつ病患者は、健康対照者と比較し、パフォーマンスIQ(p<0.001)、フルスケールIQ、処理速度(p<0.001)のスコアが有意に低かった。・寛解期BD患者は、健康対照者と比較し、パフォーマンスIQのスコアが有意に低かった(p=0.004)。・寛解期うつ病患者は、健康対照者と比較し、処理速度のスコアが有意に低かった(p=0.030)。 著者らは「うつ病患者では、処理速度のみが明らかな問題であると思われる点と比較し、BD患者では、非寛解状態で全体的かつより重度の認知機能障害が出現している。双極性障害、うつ病患者ともに、寛解期であっても認知機能低下が認められるようである」としている。

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アベマシクリブ+内分泌療法、高齢乳がん患者での有効性と安全性(MONARCH-2、-3)

 ホルモン受容体(HR)陽性HER2陰性進行乳がんに対する、アベマシクリブと内分泌療法(ET)の併用は、第III相MONARCH-2試験(フルベストラント)およびMONARCH-3試験(アナストロゾールまたはレトロゾール)で有効性が示されている。米国・メイヨー・クリニックのMatthew P Goetz氏らは、両試験の年齢別サブグループ解析を実施。高齢患者における有効性と安全性について、Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2021年1月3日号で報告した。 MONARCH-2および-3試験における探索的解析が、3つの年齢グループ(<65歳、65~74歳、および≧75歳)に対して行われた。安全性については両試験からのプールデータが用いられ、有効性についてはPFSのサブグループ解析を各試験データでそれぞれ実施した。 主な結果は以下のとおり。・プールされた安全性データは、1,152例について利用可能であった。・臨床的に関連する下痢(Grade2/3)は、アベマシクリブ+ET群で多く発生し、65歳以上の2つのグループでより多くみられた(<65歳:39.5%、65~74歳:45.2%、≧75歳:55.4%)。プラセボ+ET群では、<65歳:6.8%、65~74歳:4.5%、≧75歳:16.0%。・VTE発生率(全Grade)は、アベマシクリブ+ET群では<65歳(4.1%)および65~74歳(5.0%)となり、≧75歳(13.3%)でより高い傾向がみられた。プラセボ群では<65歳:0.5%、65~74歳:0.9%、≧75歳:2.0%。・悪心や食欲不振は、アベマシクリブ+ET群で多く発生し、65歳以上の2グループでやや増加する傾向がみられた。・一方、好中球減少症、貧血、白血球減少症などの血液毒性(全Grade)は、プラセボ群と比較してアベマシクリブ+ ET群で多かったが、年齢グループ間で発生率に差はみられなかった。・アベマシクリブ+ ET群での用量調整(<65歳:63.1%、65~74歳:74.4%、≧75歳:75.9%)および有害事象(AE)による治療中止(<65歳:8.8%、65~74歳:14.2%、≧75歳:24.1%)は、65歳未満と比較して65歳以上でやや増加していた。・アベマシクリブ+ ET群は、患者の年齢に関係なく、プラセボ+ ET群と比較してPFSを改善し、3つの年齢グループ間で治療効果に有意差はみられなかった(MONARCH-2:相互作用のp=0.695、MONARCH- 3:相互作用のp=0.634)。推定ハザード比は、0.523~0.633(MONARCH-2)および0.480~0.635(MONARCH-3)の範囲であった。 著者らは、高齢の患者ではより高い割合の有害事象が報告されたが、それらは用量調整と併用薬で管理可能であり、すべての年齢層で一貫した有効性の利点が観察されたと結論づけている。

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2型糖尿病の寛解に低炭水化物食は有効か?/BMJ

 低炭水化物食を6ヵ月間継続した2型糖尿病患者は、有害事象なく糖尿病が改善する可能性があることを、米国・テキサスA&M大学のJoshua Z. Goldenberg氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析により明らかにした。これまでのシステマティックレビューでは、低炭水化物食の定義が広く(総カロリーの45%未満)、糖尿病の寛解について評価されていなかった。ただし、今回の結果に関するエビデンスの質は低~中であり、著者は「何を糖尿病の寛解とするか、また、長期にわたる低炭水化物食の有効性、安全性および食生活の満足度について、さらなる議論が必要である」との見解を示している。BMJ誌2021年1月13日号掲載の報告。12週間以上の超低~低炭水化物食を評価した無作為化試験についてメタ解析 研究グループは、CENTRAL、MEDLINE、Embase、CINAHL、CAB、臨床試験レジストリ(ClinicalTrials.govなど)および灰色文献ソース(BIOSIS Citation Index、ProQuest Dissertations & Theses Globalなど)から、2020年8月25日までに発表された研究を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。 適格研究は、成人2型糖尿病患者を対象に、12週間以上の低炭水化物食(炭水化物摂取量が1日130g未満、または2,000kcal食の26%未満)もしくは超低炭水化物食(総カロリーの10%未満)を評価した無作為化試験とした。2人の著者が独立して適格性のスクリーニングおよびデータ抽出を行った。 主要評価項目は、糖尿病の寛解(糖尿病治療薬の使用の有無にかかわらずHbA1c<6.5%または空腹時血糖値<7.0mmol/L)、体重減少、HbA1c、空腹時血糖値および有害事象、副次評価項目は健康関連QOLおよび生化学的検査データで、6ヵ月(±3ヵ月)および12ヵ月(±3ヵ月)時の報告とした。 Cochrane RoB 2.0を用いてバイアスリスクを評価し、Revman(ver.5.3)およびRのメタパッケージ(ver.3.6.1)を用いてメタ解析を行い、リスク推定値および95%信頼区間(CI)を算出し、事前に設定した最小重要差にしたがって臨床的意義を評価した。また、GRADEアプローチにより、各評価項目のエビデンスの質を評価した。6ヵ月時の寛解達成率が高く体重減少も大きいが、12ヵ月時はQOLやLDL-C悪化も 23の研究(1,357例)が適格基準を満たし解析に組み込まれた。これらは、バイアスリスクの評価において、全体で40.6%が低いと判定された。 6ヵ月時における糖尿病寛解率は、治療薬使用の有無は問わずHbA1c<6.5%と定義した場合は、低炭水化物食群(57%、76/133例)が対照食群(31%、41/131例)より高率であった(リスク差:0.32[95%信頼区間[CI]:0.17~0.47]、8研究、264例、I2=58%、p=0.02、GRADE:中)。一方、治療薬なしでHbA1c<6.5%達成を糖尿病寛解と定義した場合、低炭水化物食の相対的効果は低下した(リスク差:0.05[95%CI:-0.05~0.14]、5研究、199例、GRADE:低)。 信頼性基準を満たしたサブグループ解析の結果、インスリン使用患者を含む研究では、低炭水化物食による寛解率は著しく低下したことが示された。 なお、12ヵ月時の糖尿病寛解率を報告した研究は3つと少なく、効果が小さいとするものから、糖尿病のリスクをわずかに増大するというものまで、結果はさまざまであった。 体重減少、トリグリセライドおよびインスリン感受性に関しては、6ヵ月時は低炭水化物食による臨床的に重要で大きな改善が認められたが、12ヵ月時には効果がみられなかった。 信頼性基準を満たしたサブグループ解析で、6ヵ月時の体重減少効果は、超低炭水化物食群のほうが、より制限の少ない低炭水化物食群よりも小さかった。ただし、この効果については食事療法の順守が影響していることが示され、超低炭水化物食のアドヒアランスが高い患者は低い患者と比較し、臨床的に重要な体重減少が認められた。 低炭水化物食は、6ヵ月時におけるQOLに有意な影響は及ぼさなかったが、12ヵ月時のQOLおよびLDLコレステロール値については、臨床的に重要な悪化が認められた。そのほか有害事象または血中脂質に関して、6ヵ月時および12ヵ月時のいずれにおいても、グループ間で有意または臨床的に重要な差はみられなかった。

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第44回 南アの変異株は免疫をかわし、ワクチンは絶えず手入れが必要かもしれない~実際のワクチン効果

ひとしきり新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)を済ませるかワクチンを接種すればあとは大丈夫というわけではなさそうなことが示されつつあります。南アフリカで見つかった変異株は備わった免疫をかわしうるSARS-CoV-2変異株のうち南アフリカで去年遅くに見つかった501Y.V2は最も懸念されています1)。501Y.V2は免疫系の主な狙い所であるスパイクタンパクに多くの変異を有し、厄介なことにそれらの変異のいくつかは抗体を効き難くします。南アフリカの生物情報学者Tulio de Oliveira氏やウイルス学者Alex Sigal氏等は、同国で501Y.V2が急に広まったことへのその免疫回避の寄与を調べるべく、感染者から単離した501Y.V2を他のSARS-CoV-2感染を経た6人の血清と相見えさせました2,3)。感染を経た人の血清にはウイルスを中和、すなわち阻止する抗体が主に備わっています。検討の結果、感染者血清の501Y.V2の中和活性はより初期の感染流行で出回ったSARS-CoV-2の中和活性に比べてだいぶ劣りました。SARS-CoV-2そのものではなくその代理ウイルス(pseudovirus)を使った別の研究でも501Y.V2変異が中和活性を妨げうることが示されています4)。代理ウイルスはSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を使って細胞に侵入するように加工したHIVです1)。南アフリカのヨハネスブルクのウイルス学者Penny Moore氏のチームは501Y.V2の変異一揃いを持つ代理ウイルスと感染者検体(血清/血漿)をde Oliveira氏等の試験と同様に相見えさせました4)。その結果、44の感染者検体のうち約半数(48%;21/44人)は501Y.V2変異代理ウイルスを中和できませんでした。南アフリカでは501Y.V2の再感染がすでに確認されています1)。COVID-19が席巻した地域でその変異株が広まるのは先立つ感染で人々に備わった免疫を切り抜けうることを後ろ盾としていることはかなり確かになりつつあるようです1)。mRNAワクチンは定期的な手入れが必要かもしれないSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を作るmRNAを成分とするPfizer/BioNTechやModernaのワクチン(mRNA-1273やBNT162b2)が計画通り2回接種された20人の血液を調べたところスパイクタンパク質受容体結合領域(RBD)へのIgMやIgG抗体は先立つ報告と同様に豊富で、COVID-19を経た人と同等のSARS-CoV-2細胞侵入阻止(中和)活性やRBD特異的メモリーB細胞量を備えていました5,6)。しかし、英国や南アメリカで見つかって広まるスパイクタンパク質変異・E484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yを擁するSARS-CoV-2変異株へのワクチン接種者血漿の中和活性は劣りました。それに、ワクチン接種者に備わった最も強力なモノクローナル抗体一揃いの大部分(17のうち14)の中和活性はE484K、N501Y、K417N:E484K:N501Yで減じるか消失しました。英国ケンブリッジ大学のウイルス学者Ravindra Gupta氏が率いた別の研究でも、BNT162b2ワクチンが1回接種された後の血清は英国で見つかった変異株B.1.1.7のスパイクタンパク質変異に効き難いことが示されています7)。この研究に血清を提供した人はほとんどが高齢者で年齢の中央値は82歳でした。一方、BNT162b2を生み出したドイツのバイオテクノロジー企業BioNTechのチームの検討では変異の有意な影響はみられず、BNT162b2が2回接種された16人から採取した血清はB.1.1.7の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを対照ウイルスとほぼ変わらず中和しました8)。血清を提供した16人のうち8人は比較的若く18~55歳、あとの8人はより高齢で56~85歳です。いずれにせよそれらはいずれも試験管研究であり、実際(real life)はどうかを調べる必要があるとGupta氏は言っています7)。変異はいまのところワクチンの予防効果に差し支えないかもしれないが、備わった抗体が減ってきたら影響があるかもしれません。また、SARS-CoV-2感染予防mRNAワクチンはインフルエンザワクチンがそうであるように効果を保つために定期的な手入れが必要かもしれません5)。[追記] その予想どおり、南アフリカで見つかった変異株(南ア変異株)を標的とする新たなCOVID-19ワクチンの開発にModerna社が早くも着手しています(プレスリリース)。すでに世界で接種され始めたmRNA-1273が南ア変異株に弱いらしいことが接種者血清と代理ウイルスを使った実験(bioRxiv. January 25, 2021)で示されたからです。実験の結果、mRNA-1273が臨床試験で2回投与された8人(18~55歳)の血清は南ア変異株の変異スパイクタンパク質を纏った代理ウイルスを中和し、その抗体活性は感染防御に必要な水準を恐らく満たしていたものの低めでした(対照ウイルス中和活性の6分の1)。その結果を受けてModerna社は南ア変異株を専門とするワクチン候補mRNA-1273.351の開発に着手しており、前臨床試験が始まります。また、Modernaの現在のワクチン接種は2回ですが、さらに多く接種したときの中和活性増強を調べる第I相試験も始まります。イスラエルでPfizerのCOVID-19ワクチン1回目接種が感染の3割を防いだCOVID-19ワクチンのこれからは別にして、世界に出回り始めた現在のワクチン普及の効果の一端がイスラエルから発表されました。イスラエルはアラブ首長国連邦と並んでワクチン接種率が世界で最も高く、両国とも人口のおよそ4分の1を占める200万人超が接種を済ませています9)。イスラエルの今回の解析ではPfizer/BioNTechのワクチンBNT162b2が接種された60歳超高齢者20万人と非接種20万人が比較されました。その結果、2回接種が必要なそのワクチンの1回目を済ませてから2週間後の検査陽性(感染)率は非接種者より33%低いことが示されました。もう何週間かすると2回目の接種を済ませた人が揃ってさらに確かな結果が判明します9)。今回のひとまずの結果を受け、BNT162b2の1回目接種後の感染阻止効果は思ったより低いようだとイスラエル最大の医療団体Clalit Health Servicesの疫学者Ran Balicer氏は言っています10)。参考1)Fast-spreading COVID variant can elude immune responses / Nature 2)Escape of SARS-CoV-2 501Y.V2 variants from neutralization by convalescent plasm.medRxiv. January 21, 20213)New Covid-19 501Y.V2 variant escapes antibodies / Africa Health Research Institute 4)SARS-CoV-2 501Y.V2 escapes neutralization by South African COVID-19 donor plasma. bioRxiv. January 19, 20215)mRNA vaccine-elicited antibodies to SARS-CoV-2 and circulating variants. bioRxiv. January 19, 2021. 6)COVID vaccines might lose potency against new viral variants / Nature 7)Impact of SARS-CoV-2 B.1.1.7 Spike variant on neutralisation potency of sera from individuals vaccinated with Pfizer vaccine BNT162b2. medRxiv. January 20, 20218)Neutralization of SARS-CoV-2 lineage B.1.1.7 pseudovirus by BNT162b2 vaccine-elicited human sera. bioRxiv. January 19, 20219)Are COVID vaccination programmes working? Scientists seek first clues / Nature10)Single Covid vaccine dose in Israel 'less effective than we thought' / Guardian

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ミオシン活性化薬は駆出率の低下した心不全の予後を若干改善する(解説:佐田政隆氏)-1344

 omecamtiv mecarbilは2011年にScience誌に動物実験の結果が発表されたミオシン活性化薬である。心筋ミオシンに選択的に結合して、ミオシン頭部とアクチン間のATPを消費して生じる滑走力を強め、強心効果が示されている。平滑筋や骨格筋のミオシンには作用しないという。今までの臨床試験でも、短期間の観察で心機能を改善することが示されており、新しい機序の心不全治療薬として期待されていた。そのomecamtiv mecarbilに関する二重盲検の第III相試験の結果である。昨年、米国心臓協会学術集会で発表され、同時にNew England Journal of Medicine誌に公開された。 薬物(ACE阻害薬かARB 約87%、アンジオテンシン受容体・ネプリライシン阻害薬 約19%、β遮断薬 約94%、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 約77%、SGLT2阻害薬 約2.5%)、デバイス(心臓再同期療法 約14%、植込み型除細動器 約32%)を用いた標準的な治療を受けている左室駆出率35%以下の症候性心不全の8,256例が2群に割り付けされた。主要評価項目は初回心不全イベント(入院もしくは緊急受診)と心血管死であったが、観察期間中央値21.8ヵ月で有意な効果を認めた(37.0% vs.39.1%、ハザード比:0.92)。サブグループ解析では駆出率が28%以下で、正常洞調律で効果が大きかったようである。 過去に各種の経口強心薬が開発されてきたが、数々の大規模臨床研究にて心不全患者の予後を悪化させるという結果が報告されている。今までの強心薬は心筋内カルシウム動態に作用し、心筋虚血や心室性不整脈を誘発するためと考えられているが、今回は両群間で差がなかった。 ただ、主要評価項目で有意差がでた(p=0.03)といっても差はごくわずかである。副次評価項目である心血管死、自己記入式健康状態評価ツールであるKCCQ症状スコアでは両群間で差は認められなかった。NT-proBNP値がomecamtiv mecarbil群で10%低かったというが、試験開始早期である24週時の測定である。長期的な効果は不明である。今までの強心薬のように重篤な副作用が認められなかったのは幸いであるが、広く標準的な心不全治療薬とはならないようである。やはり、「痩せ馬に鞭」は厳しいようである。

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第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?【高齢者糖尿病診療のコツ】

第21回 高齢者糖尿病の感染症対策、どのタイミングで何をする?Q1 COVID-19流行による受診機会減少、運動不足解消への具体的な対応策は?COVID-19流行に不安を感じ、受診を控える患者さんは少なくありません。適切な通院間隔は個々の症例によって異なるため、一概には言えませんが、通院間隔が短いほうが血糖コントロールが良好となる傾向があります。糖尿病診療において血糖測定(およびHbA1c測定)は重要な要素であるため、自己血糖測定を行っていない場合にオンラインや電話診療のみで加療をするのは困難です。したがって、血糖コントロールが良好な状態が維持できていれば通院間隔を延長する(最大3ヵ月)、もともと不良であったり、悪化傾向がみられる場合には通院間隔を短縮するといった柔軟な対応が必要です。患者さんの背景にもよりますが、HbA1c 6%台であれば3ヵ月ごと(インスリン使用者は除く)、7%台であれば2ヵ月ごと、8%台であれば1ヵ月ごとなどの目安を患者さんに提示し、受診の必要性を理解していただくことも効果的です。COVID-19流行に伴い外出機会や活動量が低下した高齢糖尿病患者さんも多く経験します。高齢者は活動量が低下すると容易に筋力が低下しますので、活動量の維持は重要です。1人あるいは同居者とのウォーキングで感染リスクが高まることはまずないと考えますので、可能な方には、人込みを避けたウォーキングを推奨しています。また、室内でできる運動としてラジオ体操や当センター研究所 社会参加と地域保健チームで開発された「本日の8ミッション」などを提示しています。「本日の8ミッション」は、つま先あげや、ももあげ、スクワットなどからなり、チェックシートがホームページよりダウンロードできます。また、座位行動時間に注目した指導も有効です。ADA(米国糖尿病学会)によるStandards of medical care in diabetes 2020では座位行動時間の短縮が推奨されています。30分以上座り続けないことで血糖値が改善するといわれており1)、自宅にいても30分に1回は立ち上がるよう患者さんに指導しています。Q2 誤嚥性肺炎の効果的な予防法について教えてください高齢者肺炎の多くを占めると考えられているのが誤嚥性肺炎です。糖尿病患者は脳梗塞による嚥下障害や高血糖による免疫能低下を介し、誤嚥性肺炎のリスクが高いと考えられます。誤嚥性肺炎は、睡眠中などに口腔内の細菌が唾液とともに下気道に流入する不顕性誤嚥により生じると考えられており、口腔内を清潔に保つことが重要です。コロナ禍の現在でも歯磨き習慣の確認や口腔内のセルフチェックを促すことは重要です。嚥下機能が低下している場合には、嚥下機能の回復を目指したリハビリ(通院が困難な場合は在宅でも可能)や嚥下状態に合わせた適切な食形態への変更が必要です。鎮静薬や睡眠薬、抗コリン薬などの口腔内乾燥をきたす薬剤は嚥下障害をきたしやすいため、適切な使用がなされているか評価する必要があります。また、肺炎一般の予防として肺炎球菌やインフルエンザワクチンの接種も有効です。肺炎球菌ワクチン、インフルエンザワクチンとも肺炎による入院減少が示されており、両者の併用により、さらに入院頻度が減少することが示されています2)。なお、経鼻胃管や胃瘻造設による誤嚥性肺炎の予防効果は示されていません。Q3 尿路感染症の効果的な予防法・無症候性細菌尿への対応は?糖尿病は尿路感染症のリスクであることが知られており、そのリスクは血糖コントロール不良(HbA1c 8.5%以上)により高くなります3)。また、糖尿病患者では男女とも無症候性細菌尿の頻度が高いことも知られていますが4)、一部の例外(妊婦、好中球減少、泌尿器処置前)を除き、無症候性細菌尿に対するスクリーニングや治療は推奨されません5)。ただし、SGLT-2阻害薬の使用は尿路感染症のリスクとなる可能性があるため、現時点で明確なエビデンスがあるわけではありませんが、使用開始前に評価し、無症候性細菌尿が認められれば、使用を慎重に検討する必要があると考えます。閉経後女性140名を対象とした無作為比較試験では、1.5L以上の飲水により単純性膀胱炎の発症を50%低下することが示されています6)。膀胱炎を繰り返す場合には神経因性膀胱を念頭とした残尿測定やエコーによる尿路閉塞の有無を確認する必要があります。再発性尿路感染症予防におけるクランベリージュースの有効性を検討した研究では、50歳以上の女性においてその有効性が示されていますが7)、否定的な意見もあり8)注意を要します。Q4 歯周病に対する評価や歯科との連携について高齢糖尿病患者では歯周病の罹患率が高く、血糖コントロールが不良であると歯周病が悪化しやすいことが知られています。歯周病が重症化すると血糖コントロールが悪化します。逆に治療により歯周病による炎症が改善すると血糖コントロールも改善することが報告されています9)。歯周病による歯牙の喪失は嚥下障害のリスクとなるほか、オーラルフレイルを介し、身体的フレイルおよびサルコペニアのリスクとなる可能性があるため、歯周病の評価・治療は重要です。高齢糖尿病患者で歯牙の喪失または歯周病があると健康関連のQOL低下は1.25倍おこりやすく、過去12ヵ月間歯科治療を受けていないと1.34倍QOL低下をきたしやすいという米国の70,363人の調査結果も出ています10)。歯科との連携に際し、日本糖尿病協会が発行している「糖尿病連携手帳」を利用することが多いです。「糖尿病連携手帳」にはHbA1cなどの検査結果を記載するページとともに眼科・歯科の検査結果を記載するページもあり、受診時に患者さんに持参していただくことで情報の共有が可能です。もともとの状態や血糖コントロール状況にもよりますが、一般に3~6ヵ月間隔での評価が推奨されています。1)American Diabetes Association. Diabetes Care. 2020 Jan;43:S48-S65.2)Kuo CS, et al.Medicine (Baltimore). 2016 Jun;95:e4064.3)McGovern AP, et al.Lancet Diabetes Endocrinol. 2016 Apr;4:303-4.4)Renko M, et al.Diabetes Care. 2011 Jan;34:230-55)JAID/JSC 感染症治療ガイドライン2015-尿路感染症・男性性器感染症-,日本化学療法学会雑誌 Vol. 64, p1-3,2016年1月.6)Hooton TM, et al.JAMA Intern Med. 2018 Nov 1;178:1509-1515.7)Takahashi S, et al.J Infect Chemother 2013 Feb;19:112-7.8)Nicolle LE. JAMA. 2016 Nov 8;316:1873-1874.9)Munenaga Y, et al.Diabetes Res Clin Pract. 2013 Apr;100:53-60.10)Huang DL, et al.J Am Geriatr Soc. 2013 Oct;61:1782-8.

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世界に先駆け前進するがん悪液質治療【Oncologyインタビュー】第26回

出演:京都府立医科大学 医学研究科 呼吸器内科学 教授 高山 浩一氏がん悪液質治療薬としては初となるグレリン様作用薬アナモレリンが承認された。ケアネットでは当該領域の第一人者である京都府立医科大学の高山浩一氏に単独インタビュー。長年にわたり課題となっていたがん悪液質の治療が、この新たな薬剤の登場でどう変化していくか聞いた。参考NEXTAC-ONE試験Naito T, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019;10:73-83.NEXTAC-TWO試験Miura S, et al. BMC Cancer.2019 May 31.1[Epub ahead of print]日本がんサポーティブケア学会 がん悪液質ハンドブック

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リサーチ・クエスチョンのブラッシュアップー関連研究レビュー 診療ガイドラインの活用 その1【「実践的」臨床研究入門】第4回

診療ガイドラインとは各専門分野の診療ガイドラインは、日本医療機能評価機構が運営するMinds*1ガイドラインライブラリで検索することができます。診療ガイドラインはMindsでは以下のように定義されています。「診療上の重要度の高い医療行為について、エビデンスのシステマティック・レビューとその総体評価、益と害のバランスなどを考量して、患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書」1)。Mindsガイドラインライブラリでは無料で閲覧できない診療ガイドラインもありますが、ご自身のRQに関連する先行研究をレビューする際に、まずはじめにチェックしてみる価値のある質の高い2次情報源です。*1:Medical Information Distribution Service診療ガイドラインを活用した関連研究レビューの実際近年の診療ガイドラインは、1)クリニカル・クエスチョン(CQ)および、2)CQに対する回答の提示とその推奨グレード、という2段階構造で記述されています。下記は本連載で、これまでに作成してきた架空の臨床シナリオに基づいたCQです。CQ:食事療法(低たんぱく食)を遵守すると慢性腎臓病患者の腎予後は改善するのだろうか↓P:慢性腎臓病患者E:食事療法(低たんぱく食)の遵守C:食事療法(低たんぱく食)の非遵守O:腎予後例えば、このCQに関連した診療ガイドラインを、まずはPである「慢性腎臓病」をキーワードにMindsガイドラインライブラリで探してみましょう。すると、「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」2)が検索結果の筆頭に挙げられてきます。この診療ガイドラインの目次を見てみると、「第3章 栄養」のセクションで列記されているCQの中に、われわれのCQにかなり合致した下記の記載が見つかります。C QCKD の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することは推奨されるか?推奨CKD の進行を抑制するためにたんぱく質摂取量を制限することを推奨する。ただし、画一的な指導は不適切であり、個々の患者の病態やリスク、アドヒアランスなどを総合的に判断し、腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理の下で行うことが望ましい (推奨グレード B 1)。推奨グレードは1)そのCQに対する回答の依拠するエビデンスの質と2)推奨の強さによって構成されます。推奨グレードの決定も含め、診療ガイドラインの作成にGRADE*システム3, 4)という手法を用いることが、現在では世界標準となっています。GRADEシステムでは、1)エビデンスの質および2)推奨の強さが、下記のとおり、それぞれ4段階と2段階に格付けされています4)。*2:Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation1)エビデンスの質A(高)真の効果が効果推定値に近いことに大きな確信がある。B(中)効果推定値に対し中等度の確信がある。C(低)効果推定値に対する確信性には限界がある。D(非常に低い)効果推定値に対し、ほとんど確信がもてない。2)推奨の強さ1:強い推奨:推奨する。2:弱い/条件付き推奨:提案する。この診療ガイドラインで挙げられた前述のCQに対する回答の内容は推奨グレードB1ですので、根拠となるエビデンスの質は中等度であるが強く推奨する、という意味合いになります。次回は、このCQに関する本文の解説を読み込んで、われわれが行う臨床研究で新たなエビデンスを積み上げる余地(ニッチ)があるかどうかを検討してみたいと思います。引用文献1)福井次矢、山口直人 監修.Minds診療ガイドライン作成の手引き2014.医学書院.2014.2)日本腎臓学会編集.エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018, 東京医学社. 3)Guyatt G et al. J Clin Epidemiol. 2011;64:383-94.4)診療ガイドラインのためのGRADEシステム 第3版.中外医学社1)福原俊一. 臨床研究の道標 第2版. 健康医療評価研究機構;2017.2)木原雅子ほか訳. 医学的研究のデザイン 第4版. メディカル・サイエンス・インターナショナル;2014.3)矢野 栄二ほか訳. ロスマンの疫学 第2版. 篠原出版新社;2013.4)中村 好一. 基礎から学ぶ楽しい疫学 第4版. 医学書院;2020.5)片岡 裕貴. 日常診療で臨床疑問に出会ったときに何をすべきかがわかる本 第1版.中外医学社;2019.

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日本のがん遺伝子パネル検査、初回評価の結果は?/Int J Clin Oncol

 日本では2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載され、専門家で構成されるmolecular tumor board(エキスパートパネル)を備えた施設が検査実施施設として当局より指定されている。その実績に関する評価の結果が報告された。エキスパートパネルの標準化は、臨床現場でのがんゲノム医療の実装に重要な課題である。国立がん研究センター中央病院の角南 久仁子氏らは、中核病院でのエキスパートパネルの実績について初期評価を行い、臨床的意義付けの標準化についてさらに調査が必要であることを示した。International Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2021年1月1日号掲載の報告。 研究グループは、2019年6月~2020年1月に中核病院11施設においてがん遺伝子パネル検査を実施した連続症例のデータを収集し、検査結果に基づいて治験薬を含む遺伝子異常に合致する治療を行った症例、および遺伝カウンセリングが推奨された症例の割合を調査。また、模擬症例2例について各エキスパートパネルがアノテーションを実施。そのレポートについて中央評価した。 主な結果は以下のとおり。・エキスパートパネルの主要メンバーが事前に結果レポートをレビューしておくことによって、エキスパートパネル会議が双方向かつ効率的となり、時間を節約できたと報告された。・がん遺伝子パネル検査の実施数は計747例で、このうち28例(3.7%)が遺伝子異常に合致する治療を受けた。・遺伝カウンセリングの紹介に至った症例は17例(2.3%)であった。・模擬症例に関するアノテーションレポートは各エキスパートパネルで異なっており、とくに、推奨される治験数は、臨床試験への実際の参加者数に関連していると考えられた。

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DOAC でどこまで攻めるか?心房細動を合併した弁置換術後の場合(解説:香坂俊氏)-1345

ワルファリンの有効な代替薬としてDOACが販売されるに至り、さまざまな病態に関して抗血栓治療に関する知見が集まりつつある(本当に2011年以降たくさんのエビデンスが出てきている)。まず心房細動や静脈血栓症といった従来からワルファリンが第1選択とされる病態に対してDOACが有効な代替薬であるということが示された。さらにその後、安全性(副作用としての出血の発症率)に関しては完全に勝るというところが定着し、現在たとえば新規心房細動に対してのDOACの処方率は7割を越えている。最近では、そこからさらに心房細動を合併する冠動脈疾患患者に対しては抗血小板治療を最小限に抑えてよい(ステントなどを使用して抗血小板薬を2剤使用しなくてはならない患者はなるべく早期に1剤に落とし、その後落ち着いて1年ぐらいたったらその1剤も落として抗凝固薬だけに絞る)という知見が得られるに至っている。ワルファリンを使わなくてはならない病態として、心房細動や静脈系の血栓症以外に、人工弁患者が挙げられる。DOACは基本的にこの分野に関しては効果が不十分であるといわれており、ダビガトランというDOACで一度RCTが行われたことがあるが、有害事象が多く、基本的に機械弁に対しては今でもワルファリンが用いられる。が、しかし生体弁に関してはどうか? という疑問は解決されずにきた(生体弁は膜で覆われていてそもそも抗凝固薬が必要ないのだが、心房細動を合併している場合などに問題となる)。今回発表されたRIVER試験では、DOACの中でもとくに抗血栓作用が強いとされるリバーロキサバンを用いてワルファリンとの比較が行われた。詳細に関しては関連記事に譲るが(生体弁による僧帽弁置換術後のAF患者、リバーロキサバンの効果は?/NEJM)、総じてリバーロキサバンはワルファリンに劣らぬ結果を出すことに成功している(非劣性であり、やはりこの分野でもワルファリンの有効な代替薬となることが示された)。DOACの特徴としては、比較的に均一の患者を扱うRCTよりも、多彩な患者を治療しなくてはならないリアルワールドで力を発揮するところにある(https://pmc.carenet.com/?pmid=32341789)。RIVERで用いられたリバーロキサバンの用量は海外用量(20mg、腎機能低下例では15mg)であり、わが国の用量(15mg、同10mg)と若干異なるというところはあるものの、今後この試験結果をきっかけとして心房細動を合併する生体弁患者に関してもDOAC使用の理解が深まっていくのではないか。

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サンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2020)レポート

レポーター紹介2020年12月8日から12月11日まで4日間にわたり、SABCS 2020がVirtual Meetingとして行われた。最近のSABCSは非常に重要な演題が多く、今回もプラクティスを変えるものもあれば、議論が深まるものも多かった。リバーウォークでステーキを食べながら議論はできなかったが、その分オンデマンド配信を繰り返し見て、何度も発表の内容を確認することが出来た。また、例年よりも多くのSpotlight Poster Discussionが設定されていたように思う。今回は、それらの演題の中から3演題を紹介する。RxPONDER試験2018年にTAILORx試験の結果が発表されて以降、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんでリンパ節転移陰性の場合はOncotypeDXの再発スコア(recurrence score:RS)が25以下であれば原則として化学療法となった。一方、リンパ節転移陽性の場合のRSが低〜中間リスク(25以下)の場合の化学療法の上乗せ効果については閉経後女性に対する限られたデータのみしかなかった。RxPONDER試験は、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんでリンパ節転移が1〜3個の症例を対象として、RSが25以下の場合に化学療法を実施する群と内分泌療法単独群とで化学療法の上乗せ効果を検証した試験である。統計学的にはやや複雑な手法が取られており、まずRSと化学療法の間に無浸潤疾患生存率(invasive disease free survival:IDFS)において連続的な相関関係があるかどうかを検証している。RSと化学療法の間に相関関係が示された場合は、RS 0~25の症例においてRSが化学療法の有効性を示す指標として結論付けられるとされた。相関関係が示されなかった場合はRSと化学療法がそれぞれ独立したIDFSの予後予測因子となるかを検証している。2011年2月から2017年9月の間に9,383例がスクリーニングされ、最終的に内分泌療法単独群に2,536例、化学療法群に2,547例が割り付けられた。両群の患者背景はほぼ均等であり、RS 0~13が40%強、RS 14~25が60%弱であった。リンパ節転移は1個が65%前後、2個が25%前後、3個は10%弱であった。化学療法とRSの相関関係については証明されなかった。続いて化学療法とRSはそれぞれがIDFSの予測因子であること(化学療法を実施したほうがハザード比[HR]が低く、RSが高いほうがHRが高い)ことが示された。全体集団の解析での5年IDFSは化学療法群で92.4%、内分泌療法群で91.0%(HR:0.81、95%CI:0.67~0.98、p=0.026)であり、化学療法群で有意に良好であった。引き続いて閉経状態での解析が実施された。閉経後では5年IDFSは化学療法群で91.6%、内分泌療法群で91.9%(HR:0.97、95%CI:0.78~1.22、p=0.82)と両群間に差を認めなかったが、閉経前では化学療法群で94.2%、内分泌療法群で89.0%(HR:0.54、95%CI :0.38~0.76、p=0.0004)であり、化学療法群で有意に良好であった。RS 13までと14以上に更にサブグループに分けた解析も実施され、閉経後ではRSにかかわらず化学療法のメリットはなく、一方閉経前ではRSにかかわらず(RS 13までのほうが絶対リスク減少は減るものの)化学療法のメリットが認められた。リンパ節転移の個数による解析も同様であった。全生存(OS)においても閉経後は両群間に差を認めなかったが、閉経前では5年OSは化学療法群で98.6%、内分泌療法群で97.3%(HR:0.47、95%CI:0.24~0.94、p=0.032)であった。閉経前ではリンパ節転移陽性の場合は化学療法がOSに寄与することが示されたと言えよう。RxPONDER試験は今回のSABCSの演題の中で日常臨床に最もインパクトを与える試験であったと言える。PENELOPE-B試験前回の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)年次総会では2つのCDK4/6阻害剤の術後治療への上乗せに関する試験が発表された。アベマシクリブを上乗せするMonarchE試験と、パルボシクリブを上乗せするPALAS試験である。MonarchE試験はpositive、PALAS試験はnegativeとなり、明暗を分けた。そんなわけで、パルボシクリブをレスポンスガイドで用いるPENELOPE-B試験も非常に注目された。PENELOPE-B試験はホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対し術前化学療法を実施した後に病理学的完全奏効(pCR)が得られなかった症例(non-pCR)を対象として、CPS-EGスコアというnon-pCRの予後を予測するスコア(J Clin Oncol.2011 May 20;29:1956-1962, Eur J Cancer. 2016 Jan;53:65-74.)が3以上のハイリスク、もしくは2で術後にリンパ節転移が陽性であるという、本試験でのハイリスク症例を対象として、術後に標準的内分泌療法に加えパルボシクリブ(125mg/日、day1~21内服、28日間隔)もしくはプラセボを同スケジュールで13コース内服し、IDFSにおいてパルボシクリブ群で良好であることを検証する優越性試験である。両群間の患者背景に大きな差はなかった。追跡期間の中央値が42.8ヵ月のデータが発表され、2年IDFSではパルボシクリブ群で88.3%に対してプラセボ群で84.0%とパルボシクリブ群で良好な傾向を認めたものの、3年IDFSでは81.2% vs. 77.7%、4年IDFSでは73% vs. 72.4%と両群間の差は認められなかった(HR:0.93、95%CI:0.74~1.17、p=0.525)。様々なサブグループ解析も実施されたが、パルボシクリブの上乗せ効果が認められた群はなかった。OSの中間解析結果も発表され、4年IDFSで90.4% vs. 87.3% (HR:0.87、95%CI:0.61~1.22、p=0.420)と両群間の差は認めなかった。PALAS試験では内服に関する規定が非常に厳しく、完遂率が32%と非常に低かったことがnegativeとなった理由ではないかと考察されていたが、PENELOPE-Bでは完遂率は80%であり必ずしも内服のアドヒアランスで結果が左右されたとは言えなさそうである。non-pCRに対して術後に化学療法を追加したり、治療薬を変更するというアプローチはトリプルネガティブ乳がん(TNBC)やHER2陽性乳がんでは確立しているが、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんに対してはPENELOPE-Bが初の結果である。ひとつはnon-pCRの予後を推定する際にCPS-EGスコアが適切なリスク評価方法であったかということが重要である。CPS-EGスコアは術前と術後の病期と核異型度で予後を予測したものであり、病期の高いがん(あるいはダウンステージできなかったがん)では予後不良というある意味単純な事実を見ているだけかも知れない。また、ここには薬剤感受性の概念はなく、ホルモン受容体陽性HER2陰性乳がんにおけるpCR率は低いことから、正確にリスク層別ができていなかった可能性は高いであろう。加えて、術後にCDK4/6阻害剤を内服する際の至適投与期間は不明である。MonarchEとPALASは24ヵ月、PENELOPE-Bでは12ヵ月であり、その投与期間は(同じ薬であっても)試験によって異なる。PENELOPE-Bは2年IDFSではパルボシクリブ群で良好な傾向を認めており、もしかするとパルボシクリブの内服は再発を遅らせる働きを持っているのかも知れない(がわからない)。KEYNOTE-355試験乳がんでは他領域に遅れながらもTNBCを中心に免疫チェックポイント阻害薬の開発が進んでいる。とくに先行しているのが抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブと、抗PD-1抗体であるペムブロリズマブである。KEYNOTE-355試験は前治療歴のないTNBCを対象として化学療法(アルブミン結合パクリタキセル[nab-PTX]、パクリタキセル[PTX]、またはゲムシタビン+カルボプラチン[GEM+CBDCA])+ペムブロリズマブもしくは化学療法+プラセボを比較する第III相試験である。主要評価項目はPD-L1陽性集団(CPS≧10およびCPS≧1)とITT集団における無増悪生存期間(PFS)、PD-L1集団とITT集団におけるOSとされた。前回のESMO年次集会では主たるPFSの解析が発表され、SABCSではレジメンごとのサブグループ解析を含めて566例がペムブロリズマブ群に、281例がプラセボ群に2:1に割り付けられた。CPS≧1のPD-L1陽性が約75%、CPS≧10のPD-L1陽性が40%弱であった。化学療法としてはnab-PTXが30〜34%、PTXが11〜15%、GEM+CBDCAが55%であった。同クラスの化学療法を受けたことのある症例は22%程度であった。主要評価項目のPFSはCPS≧10ではペムブロリズマブ群で9.7ヵ月、プラセボ群で5.7ヵ月 (HR:0.65、95%CI:0.49~0.86、p=0.012)であり、ペムブロリズマブ群で有意に長かった。一方、CPS≧1では7.6ヵ月 vs. 5.6ヵ月 (HR:0.74、95%CI:0.61~0.90、p=0.0014 ※注:有意水準は0.00111)、ITTでは7.5ヵ月 vs. 5.6ヵ月 (HR:0.82、95%CI:0.69~0.97)であり、いずれも両群間の差は認められなかった。レジメンごとのサブグループ解析では、nab-PTX、PTXでは有意差を認めているものの、GEM+CBDCAでは有意差を認めなかった。このサブグループ解析はTNBCにおける免疫チェックポイント阻害薬の位置付けにおいて重要な結果となっている。ESMOではTNBC初回治療におけるアテゾリズマブの試験であるIMpassion131試験の結果が発表された。IMpassion130試験はnab-PTXに対するアテゾリズマブの上乗せ効果を証明した試験であったが、IMpassion131試験ではパクリタキセルに対するアテゾリズマブの上乗せが検証され、両群間の差は(傾向としても)認められなかった。対して、KN-355試験ではパクリタキセルに対するペムブロリズマブの上乗せ効果が示され、薬剤ごとに明暗を分けた。アテゾリズマブとペムブロリズマブは同じセッティングの薬剤であるものの、コンパニオン診断薬が異なり(SP-142と22C3)、また併用化学療法も異なっている。今後はこれら2剤の使い分けについての議論も必要であろう。

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irAE対策のステロイド投与は肺がんのOSに影響を与えず/Eur J Cancer

 免疫チェックポイント阻害薬(ICI)治療中の進行肺がん患者において、ステロイド投与は生存アウトカムに影響するのか。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のMarcus Skribek氏らが、同院の進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者について分析を行った結果、免疫関連の有害事象(irAE)を理由としたステロイド投与は、ICI治療の有効性を妨げないと考えられることが示された。一方で、がん緩和ケアを目的とした高用量ステロイド投与は、予後不良となる可能性を示唆するものであることが示されたという。European Journal of Cancer誌オンライン版2021年1月5日号掲載の報告。irAE対策のためのステロイド投与は進行肺がん患者のOSに影響なし 研究グループは、カロリンスカ大学病院でICI治療中の進行NSCLC患者を対象に、生存アウトカムへのコルチコステロイド投与のタイムラインと投与の理由の影響を評価する検討を行った。 ステロイド投与は、プレドニゾロン換算10mg超を10日以上と定義。投与の要因に基づいて患者を3群に分類した。1)がん緩和ケアではない支持療法のため、2)がん緩和ケアのため、3)irAE対策のため。 さらに、タイムライン分析のため、患者を「ICI開始の2週間前から投与2日後までコルチコステロイド投与を受けた」群と「ICI治療コース終了後にステロイドを受けた」群の2群に分類して評価した。 進行肺がん患者へのirAEを理由としたステロイド投与はICI治療の有効性に影響するのか調べた主な結果は以下のとおり。・進行肺がん患者196例の分析データにおいて、46.3%がコルチコステロイドを投与されたことが示された。・irAE対策のためのステロイド投与は、ステロイド未投与との比較において全生存(OS)期間について影響は認められなかった(p=0.38)。・がん緩和ケアのためのステロイド投与のみ、OSを短縮する独立した予測因子であった(ハザード比:2.7、95%信頼区間:1.5~4.9)。・ステロイド投与のタイムラインは、本試験対象コホートのOSについて影響は認められなかった(p=0.456)。

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COVID-19、重症患者で皮膚粘膜疾患が顕著

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)入院患者の皮膚症状に関する報告が寄せられた。これまで皮膚粘膜疾患とCOVID-19の臨床経過との関連についての情報は限定的であったが、米国・Donald and Barbara Zucker School of Medicine at Hofstra/NorthwellのSergey Rekhtman氏らが、COVID-19入院成人患者296例における発疹症状と関連する臨床経過との関連を調べた結果、同患者で明らかな皮膚粘膜疾患のパターンが認められ、皮膚粘膜疾患があるとより重症の臨床経過をたどる可能性が示されたという。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2020年12月24日号掲載の報告。COVID-19入院成人患者296例のうち35例が少なくとも1つの疾患関連の発疹 研究グループは2020年5月11日~6月15日に、HMO組織Northwell Health傘下の2つの3次医療機能病院で前向きコホート研究を行い、COVID-19入院成人患者における、皮膚粘膜疾患の有病率を推算し、形態学的パターンを特徴付け、臨床経過との関連を描出した。ただし本検討では、皮膚生検は行われていない。 COVID-19入院成人患者の発疹症状と臨床経過との関連を調べた主な結果は以下のとおり。・COVID-19入院成人患者296例のうち、35例(11.8%)が少なくとも1つの疾患関連の発疹を呈した。・形態学的パターンとして、潰瘍(13/35例、37.1%)、紫斑(9/35例、25.7%)、壊死(5/35例、14.3%)、非特異的紅斑(4/35例、11.4%)、麻疹様発疹(4/35例、11.4%)、紫斑様病変(4/35例、11.4%)、小水疱(1/35例、2.9%)などが認められた。・解剖学的部位特異性も認められ、潰瘍(13例)は顔・口唇または舌に、紫斑病変(9例)は四肢に、壊死(5例)は爪先に認められた。・皮膚粘膜症状を有する患者は有さない患者と比較して、人工呼吸器使用(61% vs.30%)、昇圧薬使用(77% vs.33%)、透析導入(31% vs.9%)、血栓症あり(17% vs.11%)、院内死亡(34% vs.12%)において、より割合が高かった。・皮膚粘膜疾患を有する患者は、人工呼吸器使用率が有意に高率であった(補正後有病率比[PR]:1.98、95%信頼区間[CI]:1.37~2.86、p<0.001)。・その他のアウトカムに関する差異は、共変量補正後は減弱し、統計的有意性は認められなかった。

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片頭痛患者の神経障害性疼痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体

 カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)は、末梢神経障害の一般的な特徴である神経因性疼痛の発症に関連することを示すエビデンスが増加している。臨床研究では、抗CGRPモノクローナル抗体が、片頭痛の予防に効果的であることが示唆されているが、ヒトの神経因性疼痛を含む非頭痛の慢性疼痛に対する効果は明らかになっていない。米国・ミズーリ大学のSeung Ah Kang氏らは、慢性片頭痛を合併している患者の神経因性疼痛に対する抗CGRPモノクローナル抗体の有効性について、評価を行った。Muscle & Nerve誌オンライン版2020年12月21日号の報告。 慢性片頭痛および末梢神経障害患者14例をレトロスペクティブにレビューした。すべての患者は、抗CGRPモノクローナル抗体による治療が行われていた。neuropathy pain scale(NPS)および1ヵ月間の片頭痛日数(MHD)に関するデータを、患者報告により収集した。データの収集は、抗CGRPモノクローナル抗体による治療の3ヵ月前、0ヵ月および3、6、9、12ヵ月後に行った。 主な結果は以下のとおり。・抗CGRPモノクローナル抗体による治療により、NPSスコアは、ベースライン時の89.3から治療12ヵ月後の52.1へ41.7%の減少が認められた(p<0.05)。・1ヵ月間のMHDは、ベースライン時の19.8から12ヵ月後の13.2へ33.3%の減少が認められた(p<0.05)。 著者らは「抗CGRPモノクローナル抗体による治療は、慢性片頭痛患者の神経障害性疼痛を有意に改善した。これらの結果を確認するために、より多くの患者集団を対象とした盲検化ランダム化研究は、実施する価値があるであろう」としている。

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第43回 ブラジルで広まるコロナ変異株P.1の再感染しやすさの検討が必要/去年の新発見を疑問視

ブラジルで広まるコロナ変異株P.1の再感染しやすさの検討が必要ブラジルでは急速に新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染(COVID-19)が広まり、アマゾン地域の流行はとりわけ強烈でした。同地域の最大都市で200万人超が暮らすマナウスでは実に4人に3人(76%)が10月までにCOVID-19を経たと献血検体の抗体を調べた試験で推定されています1)。4人に3人が感染したとなれば感染増加を防ぐ集団免疫の想定水準を十分に満たします。しかしそれにもかかわらず最近になってマナウスでCOVID-19が再び増え始めたことは試験に携わった英国インペリアル大学(Imperial College London)のウイルス学者Nuno Faria氏を驚かせました2)。ウイルスが行き渡ったことと病院がCOVID-19患者で再び混雑することは同氏によれば両立し難いことだからです。マナウスの新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のゲノム情報は乏しく、去年の春に採取されたものの記録しか存在しません3)。そこでFaria氏等は今どうなっているかを探るべく、COVID-19が再び急増し始めた時期と重なる去年12月中旬にマナウスで集めた検体のSARS-CoV-2ゲノムを読み取りました。その結果、31の検体の半数近い42%(13/31) から新たなSARS-CoV-2変異株が見つかり、P.1(descendent of B.1.1.28)と名付けられました3)。P.1は去年2020年の3月から11月にマナウスで採取された検体には存在せず、同市で先立って蔓延したSARS-CoV-2のおかげで備わった免疫を交わして感染しうる恐れがあり、すでに感染を経た人への再感染しやすさを調べる必要があるとFaria氏等は言っています2)。その問いを解くのにおそらく参考になる研究はすでに始まっています。サンパウロ大学の分子生物学者Ester Sabino氏はマナウスでの再感染の同定を開始しており、この1月からはマナウスでの検体のウイルス配列をより多く読んでP.1の広まりも追跡しています。英国で広まっていることが最初に判明してその後世界中に広まったSARS-CoV-2変異株B.1.1.7と同様にP.1もすでに国境をまたいでおり、ブラジルから日本への渡航者から見つかった変異株が後にP.1と判明しています2)。英国はSARS-CoV-2に発生する変異の影響を調べる取り組みG2P-UKを先週末15日に発表しました4)。世界保健機関(WHO)は変異株の監視や研究の協調を後押ししており、先週初めの12日の会議5)ではワクチンを接種した人や感染を経た人の血漿やウイルス検体を保管するバイオバンク体制を設けて試験に役立てる計画が話し合われています2)。本連載で紹介した新たな唾液腺発見の報告が疑問視されている新たな唾液腺(tubarial glands)を発見したという去年の報告を年初に本連載(第41回)で紹介しましたが、その報告を疑問視する意見がその出版雑誌Radiotherapy & Oncologyに複数寄せられているとわかりました。たとえば1つは新規性を疑うもので、tubarial glandsの特徴に見合う構造の存在は100年以上前から把握されていたとスタンフォード大学のAlbert Mudry氏等は指摘しています6,7)。また、唾液腺と分類することの妥当性も疑問視されています8)。その存在位置をみるに口腔に腺液は届きそうになく、唾液の生成には寄与していなさそうです。また、唾液の主成分アミラーゼもなく、唾液腺とみなすのは無理と指摘されています6)。臓器であれ技術であれ完全なる新発見を主張する報告をMudry氏はどれも疑ってかかります6)。というのも新規性の立証のために過去の報告を洗いざらい調べることを著者はたいてい怠るからです。Mudry氏によると1800年代に解剖学者2人や耳科医が既にtubarial glandsの領域の腺の存在を記録しています。新たな腺をひねり出そうとするのではなく別の観点を考察すればよかったのにとブラジルの口腔病理医Daniel Cohen Goldemberg氏は言っています。研究自体は優れているのだから撤回せずに訂正して残すべきと同氏は考えています6)。Cohen Goldemberg氏もRadiotherapy & Oncologyへの意見9)の投稿者の1人です。参考1)Buss LF, et al. Science. 2021 Jan 15;371:288-292.2)New coronavirus variants could cause more reinfections, require updated vaccines / Science3)Genomic characterisation of an emergent SARS-CoV-2 lineage in Manaus: preliminary findings / virological.org4)National consortium to study threats of new SARS-CoV-2 variants / UK Research and Innovation5)Global scientists double down on SARS-CoV-2 variants research at WHO-hosted forum / WHO6)Scientists Question Discovery of New Human Salivary Gland / TheScientist7)Mudry A, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 10:S0167-8140:31222-6. 8)Bikker FJ, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 10:S0167-8140:31224-X.9)Cohen Goldemberg D, et al. Radiother Oncol. 2020 Dec 11:S0167-8140:31223-8.

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