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SSRIの副作用プロファイル~自然主義的横断研究

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、最も一般的に使用されている抗うつ薬である。通常の臨床試験では、SSRIの副作用は過少報告されているといわれている。各SSRIの副作用プロファイルを完全に理解するためには、自然主義的な環境で構造化された手法を用いてシステマティックに評価することが求められる。インド・JDT Islam College of PharmacyのK. Anagha氏らは、自然主義的な治療環境で患者の主観的な症状を測定するために設計された自己評価法を用いて、3種類のSSRI(セルトラリン、エスシタロプラム、fluoxetine)によって誘発される副作用の頻度を調査した。The Primary Care Companion for CNS Disorders誌2021年7月29日号の報告。3種類のSSRIの副作用プロファイルを調査 対象は、3次医療施設の精神科より登録された外来患者。対象条件は、ICD-10基準でうつ病、不安スペクトラム障害、適応障害、心気症、衝動調節障害と診断されSSRI単剤治療を受けた18歳以上の患者とした。評価法には、42項目を含み、米FDAよりリリースされた抗うつ薬の最も一般的な副作用に関する添付文書データを用いて考案した。 自然主義的な治療環境でSSRIの副作用の頻度を調査した主な結果は以下のとおり。・対象患者数は100例、女性の割合は70%であった。・最も一般的な診断は、うつ病であった(49%)。・使用薬剤の割合は、セルトラリンが53%、エスシタロプラムが38%、fluoxetineが8%であった。・患者より報告された一般的な副作用は、腹部膨満感(64%)、傾眠(59%)、記憶障害(51%)、集中力低下(50%)、あくび(47%)、倦怠感(45%)、口渇(45%)、体重増加(45%)、ふらつき(43%)、発汗(38%)であった。・エスシタロプラムでは、頭痛、そう痒症、記憶障害、集中力低下、めまいの発生率が有意に高かった。・セルトラリンでは、食欲不振が有意に多かった。 著者らは「一般的に使用される3種類のSSRIに関する副作用の発生率やパターンが示された。また本結果は、他の同様な研究と比較するためのベースラインデータとなりうるであろう」としている。

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早期妊娠高血圧腎症、分娩時期の延伸にメトホルミンが有用/BMJ

 早期妊娠高血圧腎症を発症した妊婦(妊娠26~32週)への徐放性メトホルミン投与は、妊娠期間を延長できることが、南アフリカ共和国・ステレンボッシュ大学のCatherine A. Cluver氏らが行った無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、示された。投与群はプラセボ群と比較して妊娠期間が1週間延長し、出生児の新生児室入室期間を短縮できることが示された。著者は、「今回の試験で早期妊娠高血圧腎症の治療は可能であることが実証されたが、さらなる試験を行う必要はある」とまとめている。BMJ誌2021年9月22日号掲載の報告。南アで180例を対象に二重盲検プラセボ対照無作為化試験 無作為化試験は南アフリカ共和国・ケープタウンの紹介制病院で行われた。妊娠26+0週~31+6週の待機的管理を受けている妊婦180例を無作為に2群に割り付け、徐放性メトホルミン(3g/日を分割投与、90例)またはプラセボ(90例)を分娩時まで投与した。 主要アウトカムは、妊娠期間の延長であった。無作為化から分娩までの期間中央値、メトホルミン群17.7日、プラセボ群10.1日 180例のうち1例は、試験薬を服用する前に分娩した。 無作為化から分娩までの期間中央値は、メトホルミン群17.7日(四分位範囲[IQR]:5.4~29.4日、89例)、プラセボ群10.1日(3.7~24.1、90例)であり、群間差中央値は7.6日(幾何平均比[GMR]:1.39、95%信頼区間[CI]:0.99~1.95、p=0.057)であった。 すべての投与時点で試験薬を服用し続けた被験者において、妊娠期間延長の中央値はメトホルミン群17.5日(IQR:5.4~28.7、76例)、プラセボ群7.9日(3.0~22.2、74例)であり、群間差中央値は9.6日(GMR:1.67、95%CI:1.16~2.42)であった。 全投与量を服用した被験者において、妊娠期間延長の中央値はメトホルミン群16.3日(IQR:4.8~28.8、40例)、プラセボ群4.8日(2.5~15.4、61例)であり、群間差中央値は11.5日(GMR:1.85、95%CI:1.14~2.88)であった。 母体、胎児、新生児複合アウトカム、および血中の可溶性fms様チロシンキナーゼ-1(sFlt-1)値、PlGF(placental growth factor)値、可溶性エンドグリン(soluble endoglin)値に差はみられなかった。 メトホルミン群で、出生児体重は有意ではないが増加し、新生児室の入室期間は短縮した。試験薬関連の重篤な有害事象は観察されなかったが、メトホルミン群では下痢の発現頻度が高かった。

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無症候性高度頸動脈狭窄症に対するCAS vs.CEAの無作為化比較試験(ACST-2)(解説:中川原譲二氏)

 無症候性の高度頸動脈狭窄を有する患者に対する頸動脈ステント留置術(CAS)あるいは頸動脈内膜剥離術(CEA)はいずれも有効で、長期の脳卒中リスクを低減させる。しかしながら最近の全国規模のレジストリデータによると、いずれも後遺障害を伴う脳卒中や死亡について、1%程度の手技に関連するリスクを引き起こす。両者の長期的な予防効果を比較するためには、大規模な無作為化試験によるエビデンスが求められていた。CAS vs. CEA、多施設無作為化比較試験 ACST-2試験は、インターベンションを要する無症候性の高度頸動脈狭窄を有する患者を対象とした、CASとCEAに関する国際的な多施設無作為化比較試験であり、他の関連するすべての試験に通用する。被験者は、片側性または両側性に高度頸動脈狭窄があり、医師・患者共に頸動脈治療の施行に同意していた場合に適格とされたが、治療法は選択できなかった。被験者は無作為にCAS群またはCEA群に割り付けられ、1ヵ月後、その後は毎年の追跡を平均5年間受けた。術後30日以内に発生したイベントを、手技関連イベントとし、ITT集団を対象にテーブル解析による手技関連ハザードなどの解析を行った。手技非関連脳卒中については、Kaplan-Meier法やlog-rank検定法を用いて解析した。CAS vs. CEA、脳卒中発生リスクに関する長期効果に差はなし 2008年1月15日~2020年12月31日に、130施設の被験者3,625例をCAS群(1,811例)とCEA群(1,814例)に無作為に割り付けた。コンプライアンス、薬物治療はいずれも良好で、平均追跡期間は5年だった。全体で、手技関連の後遺障害を伴う脳卒中や死亡は1%(CAS群15例、CEA群18例)、手技関連の後遺障害を伴わない脳卒中は2%(それぞれ48例、29例)だった。Kaplan-Meier法による5年の手技非関連脳卒中の発生率は、致死的または後遺障害を伴う脳卒中については両群共2.5%、あらゆる脳卒中についてはCAS群5.3%、CEA群4.5%だった(rate ratio[RR]:1.16、95%CI:0.86~1.57、p=0.33)。すべてのCAS群vs. CEA群試験における手技非関連脳卒中の発生に関する一体的RRは、症候性・無症候性の患者で同等だった(全体RR:1.11、95%CI:0.91~1.32、p=0.21)。 適切なCASやCEA後に見られる重篤な合併症は同様に稀であり、致死的または後遺障害を伴う脳卒中に関して、これら2つの頸動脈治療法の長期効果は同等であった。CAS vs. CEA、予防効果の永続性の検証が必要 今回のACST-2試験では、無症候性高度頸動脈狭窄症に対するCAS vs. CEAの無作為化比較試験において、脳卒中発生リスクに関する長期効果は全体としては差はなしとされた。本研究の結果により、わが国においても、CASを第1選択とする介入フローがより加速するものと思われる。しかし、症候性の頸動脈狭窄症を対象とした他の比較試験でも見られたように、CEAは少なくとも後遺障害を伴わない脳卒中の発生に関して、有意差は出なかったが、CASよりも良好な結果となっていた。CEAやCASの予防的効果は、初期の数年間は同等であるが、その永続性(durability)については、ACST-2を含む臨床研究のさらなるフォローアップによって、検証されなければならない。

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なぜ、働き方改革は「現場主体」でないといけないのか?【今日から始める「医師の働き方改革」】第4回

第4回 なぜ、働き方改革は「現場主体」でないといけないのか?私たちは、これまで1,000以上の組織の働き方改革を支援してきました。うまく進む働き方改革は、長崎大学病院での働き方改革も含め、「誰かに言われているからやる」のではなく「現場がやりたいと思うことを実現していく」を主眼に取り組みを進めていることが特徴です。今回は私たちが「現場主体」を重視する、その理由を紹介します。1)人口動態とマネジメント手法の変化表1は、ハーバード大学David E. Bloomが1990年に提唱した「どの国にも人口ボーナス期と人口オーナス期が存在する」という考え方を表しています(表1)。「人口ボーナス期」とは、若者が多数を占め、高齢者人口の割合が低い国の状態を指します。日本では1960年代~90年代半ばまでがこの時期に当たります。働き手が多く、市場にはまだモノが不足していたので1分1秒でも長く働き、隣の会社と同じ製品であっても早く安く大量に作って提供することが求められました。こうした時代、意思決定はトップダウンが合理的で、それに文句なく従う従業員が大勢いる組織が有利でした。賃金は現在より低く、労働時間の労働規制も厳しくなかったので、労働者をたくさん働かせてもしっかり利益が残ったのです。一方、現在の日本は「人口オーナス期」にあります。高齢者人口の割合が高く、若年の労働者が少ない人口構造です。経済成長は停滞し、市場は飽和状態にあります。早く安く大量に生産するやり方ではなく、市場から求められる、吟味された商品しか売れない時代になりました。こうした商品を生み出すにはトップダウンでは限界があり、現場発想をいかに速く商品・サービスに落とし込み、改良を続けるかが勝負を分けます。医療現場において少子高齢化による働き手不足と患者数増加によって、現場マネジメントの難易度は高まっています。男女ともに高学歴化が進み、男性が大半を占めていた医師の世界も今では医学部合格者の3割以上が女性です。結婚・育児にキャリアを阻まれることが少ない男性医師で成り立ってきた医療機関も、女性を含めた多様な人材が活躍できる環境整備を行わなければ経営が成り立たない状況です。このように人口ボーナス期・オーナス期は人口構造だけでなく、組織の勝ち筋、マネジメント手法にも大きな影響を与えます。つまりは、人口オーナス期に合わせた経済成長のルールに従い、現場の裁量を増やし、仕事のやり方を変えることが重要なのです。2)高まる不確実性今は「VUCAの時代」といわれます。VUCAとは「Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性」の頭文字で、「予測不可能な出来事が次々と起こる時代」を指します。2020年から続く新型コロナウイルス感染症の拡大は、まさしくそれを証明したといえるでしょう。これだけ急激な変化が起きると、トップが現場の情報を収集して、意思決定して、現場に展開するだけの十分な時間がありません。現場の意思決定の質を高め、スピーディーに変化する。それを促すための工夫が不可欠です。3)「やらされ感」の排除もうひとつ、職場の変革を現場主体で行うメリット、それは「持続性」です。どんな組織においても、対象者が「やらされている」と感じる取り組みは定着しにくいものです。やらせる人がいなくなったり何らかの理由で強制力がなくなったりした瞬間、元に戻る力が働きます。元に戻るだけならまだしも「忙しい中で無理やりやらされた」という不満が、上司や経営層への不信感や人材流出につながります。チームが集まって「ありたい姿」を作成するこうした理由から、私たちは「現場が主体となった働き方改革」を提唱しています。そのための第一歩が「ありたい姿」の作成です。働き方改革を始める際に、まずは「プロジェクトチーム」をつくる必要があります。日常業務とのつながりを確保するために同じ業務をしているメンバーで、人数は3~10人までがよいでしょう。10人は全員が議論に参加できる限界です。お互いの意見を尊重し、小さな意見も出せるようなメンバー選びも重要です。部門トップが入ると若手が萎縮するのであれば、トップはメンバーに入れないのも一手です。メンバーを選んだら、初回ミーティングのテーマは「働き方改革を行った結果、どうなりたいのか=ありたい姿の設定」です。用意するもの:大きめの付箋、ホワイトボード3~5人程度に分かれるファシリテーター役と付箋に記入する係を決める長崎大学の初回ミーティングの樣子1)問い掛けと意見出しファシリテーターは、次の問い掛けをします。「このチームのいいところはどこですか?」「もったいないな、と感じるところはどこですか?」「もっとよい時間の使い方をするためには、何の時間を増やし、何を減らしたいですか?」1つの問い掛けに対して3分ほど使ってファシリテーターも含めた意見出しを行い、出たそれぞれの意見を記入係が付箋に書き出します。「勤務時間短縮の要素を入れる」といった指定は不要です。チームのメンバーから「もっと早く帰りたい」といった言葉が出れば入れますが、強制や忖度が起きないように気を付けます。2)付箋をまとめる出た付箋を持ち寄り、ホワイトボードに貼り出します。ファシリテーターが内容の近いものをまとめてグルーピングします(KJ法と呼ばれる方法です)。付箋を使うのは意見をフラットに取り扱うためです。職位や年次によらず、どの意見も公平に扱うことが重要です(表2)。3)まとめて文章化する付箋をグループごとに整理し、それをつなげて参加者全員にとって納得感の高い「ありたい姿」を文章にします。チームのいいところは活用し、もったいないところを克服する、その結果○○に割く時間を増やす/○○という成果を出す、といった流れがよいでしょう。「みんなで早く帰る!」といった短い文章ではメンバー間でイメージがブレやすくなるため、「属人化を解消し、助け合うチームになることで、早く帰れる体制をつくる」など、アクションをイメージできる具体的なキーワードが入った文章にします(表3)。できた文章は、忘れないようにどこかに貼り出します。これは「一度決めたら変えられない」ものではなく、達成できたときや違和感が出たときなどに都度見直します。全員の意見を1つにまとめるのは難しいこともあるので、この作業はチームメンバー以外の取りまとめの上手な人や、私たちのような外部サポーターを入れることもお勧めです。このチームの「ありたい姿」を決める話し合いを観察していると、いくつか気付くことがあります。最初はどのチームも「そんなこと、考えたこともない」という沈黙が続きます。「組織のありたい姿なんて、経営者や教授が決めるものでしょう」と戸惑う方もいます。それでも、「どんな意見でもどうぞ」と促し続けると、ぽつりぽつりと意見が出てきます。はじめに出た意見を「なるほど、○○なんですね」としっかりと認めることで、次の意見が出るようになります。少し時間はかかりますが、この「ありたい姿」を決めるプロセスは非常に重要なので、チーム全員の納得感を確認しながらつくりましょう。「働き方改革=早く帰ること」というイメージを持つ方が多くいます。ベテランの方からは「若いうちは必死にやらないと。今さぼってどうする」「自分の時間を削ってきた若いころの努力やキャリアを否定された気になる」と不満や不安の声も上がります。また「医師の働き方改革によって、提供する医療の質が落ちることだけは避けねばならない」というのは、年齢にかかわらず、多くの医療者に共通した意見です。医師の働き方改革は「労働時間を減らす」という単純なものではありません。提供する医療の質を落とさないことは大前提です。あくまでも、提供する医療の質を上げつつ、チームの総労働時間を短縮する、そのための取り組みです。ありたい姿をどう現場に落とし込むのか、その方法は次回以降にご紹介します。

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肥大型心筋症〔HCM:hypertrophic cardiomyopathy〕

1 疾患概要■ 概念・定義肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)は、主に遺伝的変異を原因として不均一な心肥大を左室や右室に来し、心機能低下をもたらすとされる特発性心筋症であり、わが国では指定難病とされている。臨床的には左室流出路閉塞を来す閉塞性obstructive HCMと来さない非閉塞性non-obstructive HCMに分類され、前者では収縮期に左室内圧較差が生じることが臨床的に問題となることが多いのに対し、後者は予後が比較的安定しているとされている。■ 疫学日本全国に推計患者数が2万1,900人、有病率は人口10万人あたり17.3人と報告されている(1998年の全国疫学調査)。男女比は2.3:1と男性に多い。■ 病因心筋収縮関連蛋白の遺伝子異常が主な病因であり、2019年時点では11の原因遺伝子と、サルコメアを構成するタンパク質をコードする遺伝子の1,500以上の変異が報告されている。しかし、遺伝子異常が特定されない症例も多くみられ(20~50%)、病因に関しては不明な点も多い。 ■ 症状閉塞性肥大型心筋症では胸部症状(労作時呼吸困難や相対的心筋虚血による胸痛・胸部絞扼感)や神経学的症状(起立時のめまい・ふらつき、眼前暗黒感、失神)が認められる。非閉塞性肥大型心筋症患者は無症候であることも多く、健康診断での心電図などを契機にわが国では発見される場合も多い。■ 分類肥大型心筋症は以下の5つのタイプに分類される:1.閉塞性肥大型心筋症(HOCM)HOCM(basal obstruction):安静時に30mmHg以上の左室流出路圧較差を認める。HOCM(labile/provocable obstruction):安静時に圧較差は30mmHg未満であるが、運動などの生理的な誘発で30mmHg以上の圧較差を認める。2.非閉塞性肥大型心筋症(non-obstructive HCM):安静時および誘発時に30mmHg以上の圧較差を認めない。3.心室中部閉塞性心筋症(MVO):肥大に伴う心室中部での30mmHg以上の圧較差を認める。4.心尖部肥大型心筋症(apical HCM):心尖部に限局して肥大を認める。5.拡張相肥大型心筋症(dilated phase of HCM; D-HCM):肥大型心筋症の経過中に,肥大した心室壁厚が減少・菲薄化し、心室内腔の拡大を伴う左室収縮力低下(左室駆出率50%未満)を来し、拡張型心筋症様病態を呈する。■ 予後1982年の厚生省特定疾患特発性心筋症調査研究班の報告では肥大型心筋症の5年生存率および10年生存率は、それぞれ91.5%と81.8%であった。死因として若年者では心臓突然死が多く、致死性不整脈、失神・心停止の既往、突然死の家族歴、左室最大壁厚>30mmのうち2項目以上で突然死リスクが高いとされる。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)■ 心エコー検査心室中隔の肥大、非対称性中隔肥厚(拡張期の心室中隔厚/後壁厚≧1.3)など心筋の限局性肥大、左室拡張能障害(左室流入血流速波形での拡張障害パターン、僧帽弁輪部拡張早期運動速度低下)を認める。閉塞性肥大型心筋症では、僧帽弁の収縮期前方運動、左室流出路狭窄を認める。■ 心臓MRI検査ガドリニウム造影剤を用いた遅延相でのガドリニウム増強効果(Late Gadolinium Effect)は心筋線維化の存在を反映する。■ 心臓カテーテル検査圧測定で左室拡張末期圧上昇、左室−大動脈間圧較差(閉塞性)、Brockenbrough現象(期外収縮発生後の脈圧減少)が認められる。■ 心内膜下心筋生検他の原因による心筋肥大を鑑別する上で重要であり、病理検体で肥大心筋細胞、心筋線維化(線維犯行および間質線維化)、心筋細胞の錯綜配列などが認められる。■ 運動負荷検査心肺運動負荷試験により、肥大型心筋症症例では症状の出現閾値、Peak VO2を評価することで適切な運動制限を設定することが可能となる。■ 遺伝子検査ルーチンでの遺伝子検査は推奨されていないが、左室肥大を引き起こすことが知られている他の遺伝的疾患(ファブリー病、ライソゾーム蓄積病など)の除外診断のため、あるいは患者の一等親血縁者などを対象として希望があれば実施されることが多い。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)閉塞性肥大型心筋症に対する現在の治療は、β遮断薬、非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬、ジソピラミドなどによる対症療法が中心であるが、後述のmavacamtenが近い将来使用可能になることが予想される。薬物療法に抵抗性を示す症例では、外科的中隔切除術やアルコールを用いた中隔焼灼術(percutaneous transluminal septal myocardial ablation:PTSMA)などの侵襲的中隔縮小療法を検討するが、リスクを伴うことから事前に入念な評価を要する。また、心臓突然死リスクを評価することは重要であり、心停止の既往、持続性心室頻拍、原因不明の失神、左室壁30mm以上、2014ESCガイドライン計算式(HCM Risk-SCD Calculator)でハイリスク(5年間のイベント予測が6%より大きい)、第1度近親者の突然死、運動時の血圧反応異常などが認められる場合には致死的不整脈による心臓突然死リスクが高く、植込み型除細動器の植え込みを検討する。4 今後の展望肥大型心筋症に対しての根本的治療として世界初の疾患特異的治療薬であるmavacamtenの登場によってパラダイム・シフトを迎えている。mavacamtenは、肥大型心筋症筋組織のアクチン・ミオシンの架橋形成を抑制する低分子選択的アロステリック阻害剤であり、心筋の過剰収縮を低下させ、心筋エネルギー消費を改善するまったく新しい機序の経口薬である。EXPLORER-HCM試験では、症候性の閉塞性肥大型心筋症(左室流出路における圧較差50mmHg以上)の成人患者を対象とし、mavacamtenまたはプラセボに1対1で無作為に割り付け、それぞれを30週間投与し、主要評価項目である(1)最高酸素摂取量(peak VO2)が1.5mL/kg/分以上増加し、かつNYHAクラスが1つ以上低下した場合、または(2)NYHAクラスの悪化を伴わずにpeak VO2が3.0mL/kg/分以上の増加が、プラセボ投与128例中22例(17%)に対し、mavacamten投与123例中45例(37%)で達成し、有意な改善を認めており、2022年以降米国などで市販が望まれている。5 主たる診療科循環器内科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 肥大型心筋症(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本循環器学会/日本心不全学会合同ガイドライン 心筋症診療ガイドライン(2018年改訂版)(医療従事者向けのまとまった情報)2014 ESC HCM Risk-SCD Calculator(医療従事者向けのまとまった情報)1)Maron BJ. N Engl J Med. 2018;379:655-668.2)Ommen SR, et al. Circulation. 2020;142:e533-e557.3)Olivotto I,et al. Lancet. 2020;396:759-769.公開履歴初回2021年10月14日

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「クラビット」の名称の由来は?【薬剤の意外な名称由来】第73回

第73回 「クラビット」の名称の由来は?販売名クラビット®錠250mgクラビット®錠500mgクラビット®細粒10%※クラビット錠剤/細粒と点滴静注(バッグ)はインタビューフォームが異なるため、今回は情報を割愛しています。ご了承ください。一般名(和名[命名法])レボフロキサシン水和物(JAN)効能又は効果〈適応菌種〉本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、淋菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、炭疽菌、結核菌、大腸菌、赤痢菌、サルモネラ属、チフス菌、パラチフス菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、セラチア属、プロテウス属、モルガネラ・モルガニー、プロビデンシア属、ペスト菌、コレラ菌、インフルエンザ菌、緑膿菌、アシネトバクター属、レジオネラ属、ブルセラ属、野兎病菌、カンピロバクター属、ペプトストレプトコッカス属、アクネ菌、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、トラコーマクラミジア(クラミジア・トラコマティス)、肺炎クラミジア(クラミジア・ニューモニエ)、肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニエ)〈適応症〉表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎(扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍を含む)、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、 精巣上体炎(副睾丸炎)、尿道炎、子宮頸管炎、胆嚢炎、胆管炎、感染性腸炎、腸チフス、パラチフス、コレラ、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、化膿性唾液腺炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、炭疽、ブルセラ症、ペスト、野兎病、肺結核及びその他の結核症、Q熱用法及び用量通常、成人にはレボフロキサシンとして1回500mgを1日1回経口投与する。なお、疾患・症状に応じて適宜減量する。 肺結核及びその他の結核症については、原則として他の抗結核薬と併用すること。腸チフス、パラチフスについては、レボフロキサシンとして1回500mgを1日1回14日間経口投与する。警告内容とその理由該当しない禁忌内容とその理由(原則禁忌を含む)禁忌(次の患者には投与しないこと)1.本剤の成分又はオフロキサシンに対し過敏症の既往歴のある患者2.妊婦又は妊娠している可能性のある婦人3.小児等ただし、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人及び小児等に対しては、炭疽等の重篤な疾患に限り、治療上の有益性を考慮して投与すること。※本内容は2021年10月13日時点で公開されているインタビューフォームを基に作成しています。※副作用などの最新の情報については、インタビューフォームまたは添付文書をご確認ください。1)2019年11月改訂(第16版)医薬品インタビューフォーム「クラビット®錠250mg/500mg、クラビット®細粒10%」2)第一三共MedicaL Library:製品一覧

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胃腸症状とうつ病との関連~米国健康栄養調査

 最近、多くの調査において、うつ病の病因としてのマイクロバイオームの役割がトピックスとなっている。調査結果によると、腸内細菌叢による一般的な症状である腸内尿毒症が胃腸症状の問題の根底にあり、これがうつ病と関連していることが示唆されている。米国・タフツ大学のSarah J. Eustis氏らは、胃腸症状の徴候が認められる人では、抑うつ症状のオッズ比(OR)が有意に高いかどうかを検証するため、本研究を実施した。Journal of the Academy of Consultation-Liaison Psychiatry誌オンライン版2021年8月27日号の報告。 2005~16年に実施された米国健康栄養調査(3万6,287人)より、成人3万1,191人のデータを分析した。アウトカムには、過去1ヵ月間の粘液性または液性の排便および胃疾患、過去1年間の下痢、1週間当たりの排便回数を含めた。本分析では、マイクロバイオームのサンプルは含まず、自己申告による胃腸症状のみとした。抑うつ症状は、こころとからだの質問票(PHQ-9)を用いて評価した。中等度、中等度~重度、重度のスコアは、肯定的なアウトカムとしてレコード化した。 主な結果は以下のとおり。・中等度~重度の抑うつ症状を有する人は、抑うつ症状のない人と比較し、以下の胃腸症状のORが高かった。 ●腸粘液(OR:2.78、95%CI:1.82~4.24) ●腸液(OR:2.16、95%CI:1.63~2.86) ●胃疾患(OR:1.82、95%CI:1.31~2.53) ●下痢(時々あり対なしのOR:1.72、95%CI:1.30~2.29) ●便秘(時々あり対なしのOR:2.76、95%CI:2.11~3.62)・全体として、胃腸症状を有する人では、抑うつ症状を示す可能性が有意に高かった。 著者らは「複雑な脳腸軸(brain-gut axis)については、分子レベルで調査されている。そのような中で、抑うつ症状と腸内尿毒症の徴候との関連を示唆する本研究結果は、さらなるエビデンスの蓄積に貢献し、医療従事者や患者にとって有益な情報となる可能性がある」としている。

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デュルバルマブの小細胞肺がん1次治療、3年の成績(CASPIAN)/ESMO2021

 進展型小細胞肺がん(ES-SCLC)の1次治療として、デュルバルマブと化学療法(エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン、EP)併用はEP単独と比較して、追跡期間中央値3年超の時点でも持続的な全生存期間(OS)の延長が示された。 スペイン・Hospital Universitario 12 de OctubreのLuis Paz-Ares氏が、「CASPIAN試験」の3年フォローアップの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。CASPIAN試験でデュルバルマブと化学療法併用が進展型小細胞肺がんのOS改善 CASPIAN試験は、進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブ±tremelimumab+EPとEP単独療法の安全性と有効性を比較した第III相の国際多施設共同無作為化非盲検無作為化試験。追跡期間中央値25.1ヵ月時点で、デュルバルマブ+EP併用群のEP単独群に対する有意なOS改善が示され(HR:0.73、p=0.0047)、2年フォローアップ時でも持続的な改善が確認されていた(HR:0.75、p=0.0032)。デュルバルマブ+tremelimumab+EP併用群は、数値上のOS改善は示されたが統計的な有意性の基準は達成しなかった。・対象:未治療進展型小細胞肺がん(WHO PS0/1、無症候性/治療安定性の脳転移許容、平均余命≧12週、RECIST v1.1測定可能病変)患者805例・試験群:デュルバルマブ(1,500mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+EP群)3週ごと4サイクル、その後病勢進行(PD)までデュルバルマブ4週ごとデュルバルマブ(1,500mg)+tremelimumab(75mg)+エトポシド+シスプラチン/カルボプラチン(D+T+EP群)3週ごと4サイクル、その後PDまでデュルバルマブ4週ごと・対照群:EP単独、3週ごと最大6サイクル、その後オプションで予防的全脳照射・評価項目[主要評価項目]OS[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性・忍容性、患者報告アウトカム(PRO) 進展型小細胞肺がんの1次治療としてデュルバルマブと化学療法併用とEP単独療法の安全性と有効性を比較したCASPIAN試験の主な結果は以下のとおり。・3年OSを評価したデータカットオフ時点(2021年3月21日、追跡期間中央値39.4ヵ月)で、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続していることが示された(HR:0.71、95%信頼区間[CI]:0.60~0.86、nominal p=0.0003)。・OS中央値は、D+EP群12.9ヵ月(95%CI:11.3~14.7)、EP群10.5ヵ月(9.3~11.2)であり、36ヵ月時点で生存していた患者はそれぞれ17.6%、5.8%であった。・年齢、性別、PSなどのサブグループ解析では、D+EP群のすべての患者にベネフィットがあることが認められた。・D+T+EP群のOS中央値は10.4ヵ月(95%CI:9.5~12.0)であり、EP群に対する数値上のOS改善は持続していた(HR:0.81、95%CI:0.67~0.97、nominal p=0.0200)。36ヵ月時点で生存していた患者は15.3%であった。・データカット時点でデュルバルマブ投与が継続されていたのは、D+EP群10.2%(投与回数中央値7.0)、D+T+EP群7.1%(6.0)であった。・重篤有害事象(あらゆる原因による)の発現率は、D+EP群32.5%、D+T+EP群47.4%、EP群36.5%であった。死亡に結びついた治療関連有害事象はそれぞれ、2.3%、4.5%、0.8%であった。 Paz-Ares氏は、「これまでに行われたES-SCLC患者を対象としたEP+抗PD(L)-1療法の第III相試験の中で、今回のOS解析の追跡期間中央値は3年超と最長であった。既報のとおり、D+EP群のEP群に対するOS改善は持続しており、安全性プロファイルも忍容されるものであった。3年時点でEP群と比べてD+EP群の生存患者の割合は3倍超高く、多くの患者のEP治療が継続されており、ES-SCLCの1次治療の標準治療としてのD+EPの地位を、さらに確固とする結果であった」とまとめた。

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肺炎での不要な抗菌薬、プロカルシトニン+肺超音波の診療現場検査で減らせるか/BMJ

 プライマリケアにおける下気道感染症患者への抗菌薬処方に関して、プロカルシトニンによるpoint-of-care検査は通常治療と比較して、28日の時点で患者の安全性に影響を及ぼさずに抗菌薬処方を26%減少させるが、これに肺超音波によるpoint-of-care検査を加えても、それ以上の処方率の減少は得られないとの研究結果が、スイス・ローザンヌ大学病院のLoic Lhopitallier氏らによって報告された。研究の詳細は、BMJ誌2021年9月21日号に掲載された。3群を比較するスイスの総合診療施設のクラスター無作為化試験 本研究は、プライマリケアの下気道感染症患者における、プロカルシトニンpoint-of-care検査と肺超音波point-of-care検査は安全性を保持しつつ不要な抗菌薬処方を削減できるかの検証を目的とする、スイスの実践的な非盲検クラスター無作為化試験であり、2018年9月に開始されたが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染爆発の影響で、2020年3月10日に早期中止となった(スイス国立科学財団[SNSF]などの助成による)。 本試験には、スイスの60の総合診療施設から、それぞれ1人の総合診療医(肺炎の診断にプロカルシトニンpoint-of-care検査や肺超音波point-of-care検査を使用した経験がない医師)が参加した。総合診療医は、急性咳嗽(≦21日)を呈する年齢18歳以上の患者をスクリーニングし、臨床的肺炎(急性咳嗽のほか、4日以上持続する発熱、呼吸困難、頻呼吸[>22回/分]、異常肺音の聴診のうち1つ以上を呈する)と診断した患者を選出した。 60の総合診療施設は、次の3つの群に20施設ずつ無作為に割り付けられた。(1)プロカルシトニンpoint-of-care検査を行い、濃度上昇(≧0.25μg/L)がみられた場合は、引き続き肺超音波point-of-care検査を行い、肺のコンソリデーションを認めた場合にのみ、抗菌薬の処方を推奨する群(UltraPro群)、(2)プロカルシトニンpoint-of-care検査を行い、濃度上昇(≧0.25μg/L)がみられた場合にのみ、抗菌薬の処方を推奨する群(プロカルシトニン群)、(3)通常治療群。 主要アウトカムは、28日の時点における抗菌薬処方が行われた患者の割合とされた。副次アウトカムは、14日以内における下気道感染症による活動制限の期間などであった。抗菌薬処方率:41% vs.40% vs.70%、活動制限の非劣性は証明できず 各群20人の総合診療医のうち、女性医師はUltraPro群が8人、プロカルシトニン群が8人、通常治療群が9人で、10年以上の臨床経験を持つ医師はそれぞれ8人、11人、10人だった。 解析に含まれた患者は469例(UltraPro群152例、プロカルシトニン群195例、通常治療群122例、intention-to-treat集団)で、このうち435例(93%)が電話によるフォローアップを完了した。全体の年齢中央値は53歳(IQR:38~66)、59%が女性であった。 UltraPro群では、9例(6%)がプロカルシトニン濃度≧0.25μg/Lであり、引き続き肺超音波検査を受けた。6例(67%)で肺浸潤影が確認された。肺超音波検査の所要時間中央値は15分(IQR:15~20)だった。プロカルシトニン群では、19例(10%)がプロカルシトニン濃度≧0.25μg/Lであった。 プロカルシトニン群は通常治療群に比べ、28日までの抗菌薬処方率が低かった(0.4[78/195例]vs.0.7[86/122例]、クラスター補正後群間差:-0.26[95%信頼区間[CI]:-0.41~-0.10]、オッズ比[OR]:0.29[95%CI:0.13~0.65]、p=0.001)。 UltraPro群とプロカルシトニン群には、28日の時点での抗菌薬処方率に差は認められなかった(0.41[62/152例]vs.0.40[78/195例]、クラスター補正後群間差:-0.03[95%CI:-0.17~0.12]、OR:0.89[95%CI:0.43~1.67]、p=0.71)。 14日までの活動制限日数中央値は、プロカルシトニン群が4日、通常治療群は3日であり(群間差:1日[95%CI:-0.23~2.32]、ハザード比[HR]:0.75[95%CI:0.58~0.97])、95%CIの上限値が事前に規定された非劣性マージンを超えたためプロカルシトニン群の通常治療群に対する非劣性は証明されなかった。UltraPro群とプロカルシトニン群にも差はみられなかった(4日vs.4日、群間差:0日[95%CI:-1.48~1.43]、HR:1.01[95%CI:0.80~1.29])。 抗菌薬の処方が減少しても、患者の臨床アウトカムや満足度に影響はなかった。 著者は、「肺超音波point-of-care検査からは、さらなる抗菌薬処方の減少は得られなかったが、CIの範囲が広いことから、肺超音波が新たな価値をもたらす可能性は排除できない」としている。

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第81回 安上がりなHEPAフィルターが病棟の空気中の新型コロナウイルスを除去

安価で持ち運び自由な空気洗浄機・HEPA(high-efficiency particulate air)フィルターで新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)やその他の病原性微生物を病院の空気中から除去しうることが実際のSARS-CoV-2感染患者病棟での試験で示されました1,2)。HEPAフィルターは目の細かいメッシュに空気を通して微粒子を捕捉します。試験では病棟に設置されたHEPAフィルターのスイッチを入れず稼働させなかった1週目とスイッチを入れて稼働させた2週目以降の空気が調べられました1)。一般病棟でのHEPAフィルターの効果は明確で、その稼働時にはSARS-CoV-2は検出されず、稼働していない時には認められました。一方、集中治療室(ICU)病棟では不思議なことにSARS-CoV-2の検出は稀で、HEPAフィルターが稼働していなくてもそれは同じでした。より進行した段階のCOVID-19患者におけるウイルス複製はよりゆっくりであることがICUの空気中からの検出が稀である理由かもしれません。空気中からSARS-CoV-2を取り除く取り組みはICUより一般病棟でより意味をなすようですが、ICU病棟でHEPAフィルターはまったく役に立たないかといえばそうではなさそうです。SARS-CoV-2以外の黄色ブドウ球菌、大腸菌、化膿連鎖球菌などの病原性微生物がHEPAフィルター非稼働時には一般病棟とICU病棟の両方の空気中から検出され、HEPAフィルターを稼働したところ概ね除去されました。それらの病原体の感染は空気を介しては広まらないというのがこれまでの通説でした1)。しかし今回の試験ではHEPAフィルター非稼働時の空気中に検出可能な量が存在しており、エアロゾルによっても広まりうるのかもしれません。一般病棟やICU病棟に浮遊するSARS-CoV-2を含む病原体の面々を除去しうるHEPAフィルターは安上がりで容易に導入可能なエアロゾル感染予防対策となりうることを今回の結果は示唆しています。参考1)Real-world data show that filters clean COVID-causing virus from air / Nature2)The removal of airborne SARS-CoV-2 and other microbial bioaerosols by air filtration on COVID-19 surge units. medRxiv. September 22, 2021.

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「コネ」も大事な手段!? フェローシップ採用の突破法【臨床留学通信 from NY】第27回

第27回:「コネ」も大事な手段!? フェローシップ採用の突破法これまで述べたことのまとめになりますが、フェローシップ採用において、面接に呼ばれ、最終的にマッチに至るには、USMLEの点数、卒後年数、推薦状、学会/論文業績がいずれも重要です。そして、AMG(米国医学部卒業)>IMG(外国医学部卒業)、VISA、レジデント出身病院、という序列は、少なくともアプライの時点では如何ともしがたい要因です。しかしながら、米国ならではというところでコネは重要で、「あ、この人コネがかなり効いてるな」、というケースは散見されます。私自身、コネがそんなになかったのですが、知り合いを通じて面接に呼んでもらうということはありました。現在の勤務先であるMontefioreにマッチできたのも、大学の先輩がMontefioreにいる世界的に有名なStructural Heart DiseaseのInterventional CardiologistであるAzeem Latib氏と知り合いであったことから履歴書に目が止まり、Latib氏が私の論文業績を評価してくれてProgram Directorに話を通してくれたことが大きかったのではないかと思います。実際、ランク付けを決める締め切り直前に、Chief of Cardiologyからも面接の機会を追加でもらえたため、「これは大丈夫かな」と思いました。ただ、もしMontefioreがダメだったとしたら、その後どこまでランクが下がってしまうのかはわからなかったので、マッチングというのはこれという絶対的な正攻法のない恐ろしい仕組みだと改めて思いました。さて、米国では7月からの着任に備えて、1年前の7月からアプライが始まり、9~10月に面接、12月には合否が出るという流れで、日本の就職スケジュールと比べてかなり早いと思います。しかし、結果が出て契約書を受け取ったら、日本の厚生労働省とビザ更新のための手続きについてやりとりする必要があり、実際には時間的猶予はそれほどなかったというのが実際のところです。ちなみに、着任前でしたが人間関係を早めに築いておきたいと考え、Latib氏に論文の指導を受け、前回のコラムで紹介したJACC誌掲載の論文1)のcoauthorにもなっていただきました。参考1)Shoji S, et al. J Am Coll Cardiol. 2021 Aug 24;78(8):763-777.Column早いもので、臨床留学している日本人の後輩たちもフェローシップのアプライ時期となりました。私が2年ほど指導した人たちの研究は、心臓カテーテル系および心臓外科のトップジャーナルに載るまでになり、今後が楽しみです1,2)。1)Ueyama H, et al. JACC Cardiovasc Interv. 2021 Jul 12;14(13):1481-1492.2)Yokoyama Y, et al. J Thorac Cardiovasc Surg. 2021 Jul 29;S0022-5223(21)01133-8.

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ペムブロリズマブとルテチウム177の併用は去勢抵抗性前立腺がん治療に有望(PRINCE)/ESMO2021

 ルテチウム177-PSMA-617(LuPSMA)とペムブロリズマブの併用療法が、転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)に対して良好な効果と安全性を示すことが、オーストラリア・Peter MacCallum Cancer CentreのShahneen Sandhu氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 今回のPRINCE試験は第I相b試験であり、試験薬のLuPSMAは、すでに欧米で承認され、その放射線による殺細胞作用と免疫チェックポイント阻害薬の併用効果が期待されていた。・対象:エンザルタミド、アビラテロン、アパルタミド、ドセタキセルの治療歴を有し、画像上PSMAの高発現が確認され、測定可能病変があるmCRPC・試験群:ペムブロリズマブ200mg 3週ごと最大35サイクル(2年間)まで+LuPSMA 6週ごと最大6サイクル投与・評価項目[主要評価項目]PSA値を50%以上低下させる割合(P-RR)、安全性[副次評価項目]画像評価による無増悪生存期間(rPFS)、PSA上昇をイベントとした無増悪生存期間(P-PFS)、全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・登録症例数は37例、年齢中央値72歳、グリソンスコア8以上が62%、全例でエンザルタミドかアビラテロンの前治療があり、ドセタキセル治療歴ありも70%であった。・一般的な有害事象は、Grade1/2が、口腔乾燥76%、全身倦怠感43%、発疹25%など。血液毒性は血小板減少14%、貧血8%、好中球減少3%などであった。・Grade3の免疫関連有害事象として、大腸炎2例、膵炎、腎炎、糖尿病、筋無力症などがそれぞれ1例ずつ報告された。・追跡期間中央値38週時点のP-RRは73%であった。・治療開始から12週時点で、PSMAが発現なく血中循環腫瘍細胞(CTC)の検出がなかった症例は61%であった。・24週時点でのrPFS率は65%、P-PFS率は68%であった。 演者は最後に「ペムブロリズマブの生存に対する寄与を評価するためにはさらなる追跡期間が必要であり、腫瘍環境の精査にはバイオマーカーの評価も必要である」と結んだ。

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男性の抑うつ症状や肥満の改善に対するeHealthプログラムの影響

 肥満とうつ病は、男性において相互に関連する健康上の問題であるにもかかわらず、これらの問題を管理するためのサポートは十分に行われていない。オーストラリア・ニューカッスル大学のMyles D. Young氏らは、セルフガイドのeHealthプログラム(SHED-IT:Recharge)が過体重または肥満の改善および抑うつ症状の改善に寄与するかについて、検討を行った。Journal of Consulting and Clinical Psychology誌2021年8月号の報告。 抑うつ症状(PHQ-9スコア5以上)を有するBMI 25~42kg/m2の男性125例を対象に6ヵ月間のランダム化比較試験(RCT)を実施した。対象患者は、eHealthプログラム群62例または対照群63例にランダムに割り付けられた。3ヵ月間のプログラムは、印刷物およびオンライン(Webサイト、インタラクティブモジュールなど)を用いて実施した。プログラムは、エビデンスに基づく男性のダイエットプログラムにメンタルフィットネスを加えて行った。主要アウトカムは、3ヵ月後の体重および抑うつ症状の変化とした。評価は、ベースライン時、3ヵ月後、6ヵ月後に行った。プログラムのアウトカムを調査するため、治療企図(ITT)線形混合モデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・3ヵ月後、体重および抑うつ症状の改善に対する中程度の効果が認められた。 ●体重(調整後平均差:-3.1kg、95%CI:-4.3~-1.9、d=0.9) ●抑うつ症状(調整後平均差:-2.4、95%CI:-4.0~-0.9、d=0.6)・これらの効果は、6ヵ月間持続しており、他の健康アウトカムの継続的な改善によりサポートされた。 著者らは「ダイエットプログラムとメンタルヘルスサポートを組み合わせたセルフガイドのeHealthプログラムの実施により、男性の抑うつ症状や肥満の改善が認められた。身体的および精神的な問題を抱える患者を対象とした統合的介入は、効果的な治療戦略である可能性が示唆された」としている。

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COVID-19外来患者へのロナプリーブ、第III相試験結果/NEJM

 重症化リスクを有する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の外来患者の治療において、REGEN-COV(モノクローナル抗体カシリビマブとイムデビマブの混合静注薬、商品名:ロナプリーブ)はプラセボと比較して、COVID-19による入院/全死因死亡のリスクを低減するとともに、症状消退までの期間を短縮し、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のウイルス量を迅速に低下させることが、米国・Regeneron PharmaceuticalsのDavid M. Weinreich氏らの検討で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2021年9月29日号に掲載された。外来患者4,000例の無作為化プラセボ対照第III相試験 本研究は、COVID-19外来患者におけるREGEN-COVの有用性の評価を目的とする適応的デザインを用いた第I~III相の二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験であり、今回は、第III相試験の初期結果が報告された(米国・Regeneron Pharmaceuticalsなどの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、SARS-CoV-2陽性と診断され、COVID-19の重症化のリスク因子を1つ以上有する非入院患者であった。被験者は、いくつかの用量のREGEN-COVまたはプラセボを単回静脈内投与する群に無作為に割り付けられ、29日間のフォローアップが行われた。 事前に規定された階層的解析法を用いて、エンドポイントであるCOVID-19による入院または全死因死亡、症状消退までの期間、安全性の評価が行われた。 解析には、2020年9月24日~2021年1月17日の期間に米国とメキシコの施設で登録された4,057例(修正最大解析対象集団[mFAS])が含まれた。全体の年齢中央値は50歳(IQR:38~59)、14%が65歳以上で、49%が男性、35%がヒスパニック系であり、最も頻度の高い重症化のリスク因子は肥満(BMI≧30、58%)、年齢50歳以上(52%)、心血管疾患(36%)であった。重篤な有害事象の発現はプラセボより少ない 投与後29日の時点でのCOVID-19による入院または全死因死亡は、REGEN-COV 2,400mg(カシリビマブ1,200mg+イムデビマブ1,200mg)群では1,355例中18例(1.3%)で発生し、プラセボ群の1,341例中62例(4.6%)に比べ有意に低かった(相対リスク減少率[1から相対リスクを引いた値]:71.3%、p<0.001)。 また、REGEN-COV 1,200mg(同600mg+600mg)群では736例中7例(1.0%)でCOVID-19による入院または全死因死亡が発生し、プラセボ群の748例中24例(3.2%)に比し有意に良好だった(相対リスク減少率:70.4%、p=0.002)。 同様に、ベースラインの血清SARS-CoV-2抗体陽性例を含む全サブグループで、REGEN-COV群はプラセボ群に比べ、COVID-19による入院または全死因死亡の低下が認められた。 一方、症状消退までの期間中央値は、REGEN-COV群の2つの用量(1,200mg、2,400mg)ともプラセボ群よりも短縮され、4日早く消退した(2つの用量群とも10日vs.プラセボ群14日、いずれもp<0.001)。 また、ウイルス量は、2つの用量のREGEN-COV群とも、プラセボ群に比べ迅速に減少した。すなわち、ウイルス量のベースラインから7日までの最小二乗平均値のプラセボ群との差は、1,200mg群が-0.71 log10コピー/mL(95%信頼区間[CI]:-0.90~-0.53)、2,400mg群は-0.86 log10コピー/mL(-1.00~-0.72)であった。 重篤な有害事象の頻度は、プラセボ群が4.0%と、REGEN-COV 1,200mg群の1.1%、2,400mg群の1.3%に比べて高かった(Grade2以上の注入に伴う反応の発生率は3群とも0.3%未満)。死亡の原因となった有害事象の頻度は、プラセボ群が0.3%であり、1,200mg群の0.1%、2,400mg群の<0.1%に比し高率だった。REGEN-COV群の2つ用量の安全性プロファイルはほぼ同様で、安全性のイベントに目立った不均衡はなかった。 REGEN-COVの2,400mg投与は、2020年11月、軽症~中等症の高リスクCOVID-19外来患者の治療において、米国食品医薬品局の緊急使用許可(EUA)を取得しており、本試験で1,200mgでも2,400mgと同程度の入院/死亡リスクの低減とウイルス学的有効性が示されたことから、2021年6月、2,400mgに代わり1,200mgでEUAを受けた。また、REGEN-COVは、高リスクCOVID-19外来患者の治療法として、米国国立衛生研究所(NIH)の診療ガイドラインにも含まれている。 著者は、「軽症例などではさまざまな程度で回復までの期間が長引くとのエビデンスが増えているため、今回のREGEN-COVはCOVID-19からの回復を早めるとの知見は、患者にとって新たな利点になると考えられる」としている。

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CRP POCT、介護施設入居者の抗菌薬処方を削減/BMJ

 下気道感染症が疑われる介護施設入居者において、C反応性蛋白(CRP)の臨床現場即時検査(point-of-care testing:POCT)は通常ケアと比較して、完全回復率や全死因死亡率、入院率には差がないものの、抗菌薬の処方を安全に削減することが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのTjarda M. Boere氏らが実施した「UPCARE試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2021年9月21日号で報告された。オランダの11施設のクラスター無作為化対照比較試験 研究グループは、介護施設入居者に対するCRP POCTが、下気道感染症への抗菌薬処方を安全に削減できるかを検証する目的で、実践的なクラスター無作為化対照比較試験を行った(オランダ・保健研究開発機構[ZonMw]の助成による)。 本試験には、オランダの11の介護施設(平均入居者数400人)が参加し、CRP POCT(QuikRead go、フィンランド・Aidian製)を行う介入群に6施設、CRP POCTを行わずに通常ケアを実施する対照群に5施設が無作為に割り付けられた。これらの施設に所属する医師84人が、2018年9月~2020年3月の期間に、下気道感染症が疑われる参加者241例の診療に当たった。 初診時(=ベースライン)、1週後、3週後に、臨床的状態や新たな診断結果、管理法のデータが収集された。また、介入群では、診断検査の一環としてCRP POCTを行うかの決定は治療医の裁量に委ねられ、CRP POCTは必須ではなかった。 主要アウトカムは初診時の抗菌薬処方とされた。副次アウトカムは3週時の完全回復などであった。初診時抗菌薬の非処方率、介入群は対照群の4.93倍に 参加者241例(平均年齢84.4歳、女性64%)のうち、162例が介入群、79例は対照群に割り付けられた。全体で慢性閉塞性肺疾患が32%、うっ血性心不全が29%、認知症が29%にみられ、77%は中等度の病態であった。初診時に咳が73%、異常肺音が63%、呼吸困難が60%に認められた。介入群の87.4%でCRP POCTが行われ、ベースラインのCRP値中央値は32.5mg/L(IQR:13~82)だった。 初診時に抗菌薬が処方されたのは、介入群が84例(53.5%)、対照群は65例(82.3%)であった。治療医とベースラインの背景因子で補正した、初診時の介入群の対照群に対する抗菌薬非処方のオッズは、4.93(95%信頼区間[CI]:1.91~12.73、p=0.001)であった。 初診からフォローアップ期間(1週後、3週後)のすべての時点での初回抗菌薬処方開始の割合は、介入群が62.5%、対照群は86.1%であり、その差は23.6%であった。 初診時の抗菌薬の処方率は、CRP値が低い患者では低値(0~20mg/L:6.38%、20~40mg/L:35.00%)であったが、40~60mg/Lの患者(66.67%)で増加し始め、60mg/L以上ではほとんどの患者で処方されていた(60~80mg/L:100%、80~100mg/L:100%、100~200mg/L:96.00%)。 両群間の3週時の完全回復率(介入群86.4% vs.対照群90.8%、オッズ比:0.49、95%CI:0.21~1.12、p=0.09)の差は4.4%、初診からフォローアップ期間(1週後、3週後)のすべての時点での全死因死亡率(3.5% vs.1.3%、2.76、0.32~24.04、p=0.36)の差は2.2%、すべての時点での入院率(7.2% vs.6.5%、1.12、0.37~3.39、p=0.85)の差は0.7%であり、いずれも有意な差はなかった。 著者は、「これらの知見により、介護施設におけるCRP POCTの実施は抗菌薬使用の削減に寄与し、抗菌薬耐性の対策として有効となる可能性が示唆される」としている。

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ショパンの死因は結核性心膜炎だった?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第195回

ショパンの死因は結核性心膜炎だった?pixabayより使用現在、ポーランドで第18回ショパン国際ピアノコンクールが開催されています。私も、時間があるときに注目のピアニストの演奏を聴いています。インターネットがなかった頃は、音楽誌の速報を見るしかなかったので、YouTubeすごいなと感心します。さて、ショパンは誰もが知る作曲家で、「別れの曲」や「革命のエチュード」などが有名ですね。そんな彼の死因についての論文です。ちなみに、10月17日が彼の命日です。Witt M, et al.Inheritance vs. infectivity as a mechanism of malady and death of Frederic ChopinJ Appl Genet . 2021 Aug 4. doi: 10.1007/s13353-021-00651-2.タイトルにもう答えが書いているんですが、ショパンは長らく結核を罹患していることはわかっていたものの、直接的な死因についてはよくわかっていませんでした。結核病棟の患者さんをたくさん診ていますが、結核の死亡は多くが呼吸不全です。しかし、ショパンは違ったのかもしれません。実は、2014年にショパンの心臓が肉眼的に解析されたことがあります。すると、どうやら結核性心膜炎を罹患していたことがわかりました。結核において心膜炎の合併はまれなのですが、当時は治療薬などなかったですから、これが急速な病状悪化につながったのではないかと、この論文では論じられています。ただ、ショパンを実際に診察した医師の記録によれば、彼は階段の昇り降りだけで強い呼吸困難感を訴えており、もしかすると在宅酸素療法が必要なくらい慢性呼吸不全がひどかった可能性があります1)。そのため、心膜炎も併発していたが、肺もボロボロだったのではないかと考えられます。一方で、20年間血痰の症状があったという記録もあって、さすがに結核の自然経過には合わないのではないかとする研究者もいます。家族にも同様の症状があったことから、嚢胞線維症だったのでは、という学説もあります2)。まぁ現時点で菌の証明ができていないので、すべて推測に過ぎないんですけど……。ショパンを病理解剖したCruveilhier医師の剖検記録は、第2次世界大戦のパリ戦火によって失われてしまいました。診断書に書かれている「肺結核」「喉頭結核」という言葉のみが、唯一残された病名なのです。1)Hazard J. The adventures of doctor Jean Matuszinski, friend of Frederic Chopin, from Warsaw in 1808 to Paris in 1842. Hist Sci Med. 2005 Apr-June;39(2):161-8.2)Majka L, et al. Cystic fibrosis--a probable cause of Frederic Chopin's suffering and death. J Appl Genet. 2003;44(1):77-84.

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カボザンチニブとアテゾリズマブの併用は去勢抵抗性前立腺がんに有用な可能性(COMIC-021)/ESMO2021

 カボザンチニブとアテゾリズマブの併用療法が、転移を有する去勢抵抗性の前立腺がん(mCRPC)に対して良好な抗腫瘍効果を示すことが、米国・The University of Utah Huntsman Cancer InstituteのNeeraj Agarwal氏より、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)にて発表された。 この試験はCOSMIC-021試験で、腎細胞がん、尿路上皮がん、肺がんなどを対象にした第I相b試験でる。今回はそのなかから、mCRPC(コホート6)の解析結果が報告された。・対象:エンザルタミドまたはアビラテロンの治療歴があり、測定可能病変を有するmCRPC 132例・試験群:カボザンチニブ40mg/日内服+アテゾリズマブ1,200mg 3週ごと・評価項目[主要評価項目]主治医判定による奏効率(ORR)[副次評価項目]安全性[探索的評価項目]バイオマーカー検索、独立評価委員会(BIRC)評価による無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS) 主な結果は以下のとおり。・登録症例数30例の目標で試験開始されたが、2回の登録数拡大により今回の解析時(データカットオフ2021年2月、観察期間中央値15.2ヵ月)では対象が132例となった。・登録症例の年齢中央値は70歳、グリソンスコア8以上が63%、ドセタキセル治療歴ありが25%、内臓転移ありが32%で、骨盤外リンパ節転移ありが60%であった。・主治医判定によるORRは23%(CR2%/PR21%)で、病勢制御率は84%、奏効期間中央値は6.9ヵ月であった。・内臓転移または骨盤外リンパ節転移あり(Vis/L)群101例のORRは、27%であった。これらの奏効率とPD-L1ステータスとの関連性は見い出されなかった。・BIRCによるPFS中央値は全症例で5.7ヵ月、Vis/LN群では6.8ヵ月であった。OS中央値は全症例Vis/LN群ともに18.4ヵ月であった・PSAが50%以上低下した症例割合は、全症例で23%、Vis/LN群では26%であった。・有害事象による用量減量は、カボザンチニブ、アテゾリズマブともに43%で、有害事象による投与中止はカボザンチニブ18%、アテゾリズマブ14%であった。・Grade3/4の主な有害事象は、高血圧、下痢、全身倦怠感が共に6.8%、肺塞栓が8.3%、膵炎6.1%、肝炎5.3%、腸炎3.0%、発疹3.0%などであり、高用量のステロイド剤投与が必要となった症例は17%であった。 mCRPCに対しては、今回のCOMIC-021と同レジメン(カボザンチニブとアテゾリズマブの併用)で、第III相試験CONTACT-02が進行中である。

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新世代ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬finerenoneは2型糖尿病性腎臓病において心・腎イベントを軽減する(FIGARO-DKD研究)(解説:栗山哲氏)

ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は心血管リスクを軽減 心・腎臓障害の一因としてミネラルコルチコイド受容体(MR)の過剰発現が知られている。MR拮抗薬(MRA)が心血管系イベントを抑制し、生命予後を改善するとのエビデンスは、RALES(1999年、スピロノラクトン)やEPHESUS(2003年、エプレレノン)において示されている。そのため、実臨床においてもMRAは慢性心不全や高血圧症に標準的治療として適応症をとっている。 2型糖尿病は、長期に観察すると高頻度(約40%)に腎障害(Diabetic Kidney Disease:DKD)を合併し、生命予後を規定する。DKDに対しては、ACE阻害薬やARBなどのRAS阻害薬が第一選択であるが、この根拠はLewis研究、MARVAL、RENAAL、IDNT、IRMA2など、多くの検証により裏付けされている。一方、RAS阻害薬によっても尿アルブミン低減が十分でない症例も少なからずあり、より一層の腎保護効果、尿アルブミン低減効果を期待できる薬物療法が求められている。ステロイド型MRAであるスピロノラクトンやエプレレノンは、降圧効果だけでなく、ACE阻害薬やARBとの併用で一層の尿アルブミン低減効果が示唆されている。しかし、これらのMRAは、高K血症の誘発や推算糸球体濾過量(eGFR)の低下を引き起こすことが問題視されている。とくにエプレレノンは、DKDや中等度以上のCKDでは禁忌である。 最近、新世代の非ステロイド型選択的MRAとしてエサキセレノンやfinerenoneなどが開発され、本稿で紹介するFIGARO-DKDなどの臨床研究が進んでいる、しかし、はたしてこれら新規薬剤がDKDの心・腎保護において真に「新たな一手」となりうるかは現時点で必ずしも明確でない。FIGARO-DKDの概要 Finerenoneは、MR選択性が高い非ステロイド型選択的MRAである。2015年Bakrisらは、finerenoneの初めてのランダム化試験を行い、DKD患者において尿アルブミン低減効果を報告した(Bakris GL, et al. JAMA. 2015;314:884-894.)。FIGARO-DKDは、2021年8月に開催された欧州心臓病学会(ESC 2021)において米国・ミシガン大学のPittらにより、2型糖尿病と合併するCKD患者においてfinerenoneの上乗せ効果が発表された。本研究は、欧州、日本、中国、米国など48ヵ国が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化イベント主導型第III相試験である。対象は、18歳以上の2型糖尿病患者とDKD患者7,352例が登録され、finerenone群に3,686例、プラセボ群に3,666例が割り付けられた。対象患者は、最大用量のRAS阻害薬(ACE阻害薬あるいはARB)が受容された患者であり、実薬群でfinerenoneの上乗せ効果を観察した。腎機能からは、持続性アルブミン尿が中等度(尿アルブミン/クレアチニン比[ACR]:30~<300)でeGFRが25~90mL/min/1.73m2(ステージ2~4のCKD)、あるいは持続性アルブミン尿が高度(尿ACR:300~5,000)でeGFRが≧60mL/min/1.73m2(ステージ1~2のCKD)の群について解析された。開始時の血清K値は4.8mEq/L以下であった。 主要エンドポイント(EP)は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院の心血管複合アウトカムであり、副次EPとして、末期腎不全(ESRD)、eGFRの40%以上の持続的な低下、腎関連死など、腎複合アウトカムである。結果は、主要EPのイベントは、finerenone群が12.4%(458/3,686例)、プラセボ群は14.2%(519/3,666例)であり、前者で有意に良好であった(HR:0.87、95%CI:0.76~0.98、p=0.03)。その内訳は、心不全による入院(3.2% vs.4.4%、HR:0.71、95%CI:0.56~0.90)がfinerenone群で有意に低かった。一方、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中には差異はみられなかった。なお、収縮期血圧は、4ヵ月で-3.5mmHg、24ヵ月で-2.6mmHg低下した。副次EPは腎関連で、ESRDへの進展がfinerenone群(0.9%)でプラセボ群(1.3%)に比し有意に低値であった(HR:0.64、95%CI:0.41~0.995)。さらに、尿ACRは、finerenone群でプラセボ群に比し32%低下した(HR:0.68、95%CI:0.65~0.70)。腎複合アウトカムであるeGFRの基礎値からの57%低下と腎関連死の評価においても、finerenone群(2.9%)はプラセボ群(3.8%)より低値であった(HR:0.77、95%CI:0.60~0.99)。一方、高K血症(5.5mEq/L以上)の発現頻度は、finerenone群はプラセボ群の約2倍であった(10.8% vs.5.3%)。 以上の成績から、RAS阻害薬へのfinerenoneの上乗せ療法は、CKDステージ2~4で中等度のアルブミン尿を呈するDKD患者と、CKDステージ1~2で高度のアルブミン尿を呈するDKD患者の両者において、心血管アウトカムを改善すると結論された。FIGARO-DKDとFIDELIO-DKD FIGARO-DKDに先行し、2020年のNEJM誌に類似の研究FIDELIO-DKDが発表されている。両者の基本的な差異は、(1)主要EP:FIDELIO-DKDは腎複合、FIGARO-DKDは心血管複合、(2)平均eGFR:FIDELIOで44mL/min/1.73m2、FIGAROで68mL/min/1.73m2、(3)追跡期間中央値:FIDELIOで2.6年、FIGAROでは3.4年と、やや長い点である。 FIDELIO-DKDの結果、主要EPは腎複合アウトカムで18%低下、副次EPとして心血管複合アウトカムは14%低下した。このことから、finerenoneの上乗せ療法は、CKDの進展と心血管系イベントを抑制し、心・腎リスクを低下させることが示唆された。ただし、FIDELIO-DKDにおいて高K血症の発現頻度は、finerenone群でプラセボ群(21.7% vs.9.8%)より多く、これはFIGARO-DKDの頻度に比べて約2倍であった。 研究の患者背景や試験デザインに差異はあるものの、2021年のFIGARO-DKDは、2020年のFIDELIO-DKDと同様、finerenoneの心・腎保護作用を追従した結果であった。とくに、腎機能が正常なDKD患者でのFIGARO-DKDにおいて心血管系イベントの抑制効果が再現されたことは、MRAによる早期介入の重要性を示唆するものであり、臨床的意義はある。わが国の新規透析導入の原因疾患の第1位が糖尿病によるDKDであることから、新規非ステロイド型MRA、finerenoneによる薬物治療は一定の光明をもたらす期待がある。MRAの上乗せはDKD治療として生き残れるか? 振り返ると、2010年ごろまでの状況においては、2型糖尿病を合併するCKD患者では、RAS阻害薬とMRAを併用することが標準治療となる可能性が期待されていた。しかし、2015年から普及したSGLT2阻害薬は、DKD治療に劇的なインパクトを与えた。すなわち、2015年から2019年にかけてEMPA-REG OUTCOME、CANVAS、CREDENCE、DECLARE-TIMI 58でSGLT2阻害薬の心血管イベント改善や腎保護が次々に明らかにされた。さらに、2019年から2021年にはEMPEROR-Preserved、Emperor-Reduced、DAPA-HF、DAPA-CKDなどにより、糖尿病CKDに限らず、非糖尿病CKDの心・腎保護のエビデンスも集積されてきた。これらのSGLT2阻害薬の成績は、血糖降下療法に確実な心・腎保護のエビデンスの報告が少なかった時代を経験してきた著者ら腎臓・糖尿内科医にとっては、まさに青天の霹靂なる大きな驚きであった。GLP-1受容体アゴニスト(GLP-1 RA)についても、SUSTAIN、REWIND、LEADERなどで心血管リスクや腎保護が観察され、DKD治療学の根幹が大きく変わろうとしている。欧米のレスポンスは迅速で、「KDIGOガイドライン2020年版」においては、DKDに対する第一選択としてRAS阻害薬と共にメトホルミンとSGLT2阻害薬の併用が推奨されている。 MRAのDKD治療上の位置付けに関しては、「KDIGOガイドライン2020年版」では、DKD治療の難治例に限り使用が推奨されている。確かに、SGLT2阻害薬やGLP-1 RAがなかった時代を時系列で振り返ると、治療抵抗性DKDの腎保護に対してRAS阻害薬とMRAの2剤によるdual blockadeで腎保護を目指すのは、一戦略ではあった。しかし、上述したごとくSGLT2阻害薬とGLP-1 RAの登場と関連する多くの心・腎保護のエビデンス集積から、MRAを上乗せする選択枝に疑問が生じつつある。その最も大きな問題点は、やはり高K血症であろう。MR阻害によるアルドステロン作用の低下が、高K血症を招来させることは自明である。DKDの病態には、普遍的に低レニン性低アルドステロン症(Hyporeninemic hypoaldosteronism:HRHA)が存在する。HRHAの病態下では、アルドステロン作用の低下から高K血症を来しやすい。また、DKDによる腎機能低下は、Kクリアランス低下から高K血症を助長する。RAS抑制薬とMRAのdual blockadeが、DKDでは期待するほどのベネフィットはないと考えるのは、腎臓専門医の立場からの著者の独断と偏見ではないであろう。とはいうものの、DKD治療を離れ循環器専門医の立場から考えると、MRAの慢性心不全への心保護のメリットは決して否定されるものではない。 なお、2019年に日本で開発された非ステロイド型選択的MRA・エサキセレノンもRAS阻害薬との併用療法に期待が持たれている。2型糖尿病で微量アルブミン尿(ACR:45~<300)を呈するDKD患者449例を対象にした第III相ランダム化試験(ESAX-DN試験、Ito S, et al. Clin J Am Soc Nephrol. 2020;15:1715-1727.)において、プラセボに比べ尿ACRの低下は認めるものの、5.5mEq/L以上の高K血症出現率は4倍と高頻度であった。本剤の適応症は高血圧症のみであり、現時点でDKDや慢性心不全への適応拡大は未定である。

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高齢の進行乳がん、実臨床でのパルボシクリブ上乗せ効果は/ESMO2021

 米国のリアルワールドデータから、高齢のホルモン受容体陽性HER2陰性(HR+/HER2-)進行乳がん(MBC)患者の1次治療で、パルボシクリブ+レトロゾールがレトロゾール単独に比べて無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に延長したことが示された。米国・UCSF Helen Diller Family Comprehensive Cancer CenterのHope S. Rugo氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2021)で発表した。 HR+/HER2- MBCに対してはパルボシクリブ+内分泌療法が標準治療となっている。しかし、高齢患者を対象としてパルボシクリブ+内分泌療法と内分泌療法単独の効果を比較したデータは少ない。今回、Rugo氏らは、Flatiron Health(ニューヨーク市)の縦断的データベースを用いたMBC患者の後ろ向き解析を実施した。対象は、2015年2月~2018年9月にHR+/HER2- MBCと診断され、1次治療としてパルボシクリブ+レトロゾール(パルボシクリブ併用群)またはレトロゾール(単独群)による治療を開始した65歳以上の女性796例。治療開始から2018年12月または死亡または最終受診の早い時点まで評価した。PFSは、臨床評価またはX線スキャン/組織生検に基づき、パルボシクリブ+レトロゾールまたはレトロゾール単独による治療開始から死亡または病勢進行までの期間とした。安定化逆確率治療重み付けにより患者特性のバランスがとれた、パルボシクリブ併用群450例と単独群335例を比較した。 主な結果は以下のとおり。・両群とも年齢中央値は74.0歳、白人は71%だった。・PFS中央値は、パルボシクリブ併用群が22.2ヵ月(95%信頼区間[CI]:20.0~30.4)で、単独群(15.8ヵ月、95%CI:12.9~18.9)より有意に長かった(ハザード比[HR]:0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)。・OS中央値は、パルボシクリブ併用群が未到達(NR)で、単独群(43.4ヵ月、95%CI:30.0~NR)より有意に長かった(HR:0.55、95%CI:0.42~0.72、p<0.0001)。・これらの結果は、65~74歳と75歳以上に層別しても同様だった。・腫瘍縮小における最良総合効果は、パルボシクリブ併用群が52.4%で、単独群(22.1%)より有意に高かった(オッズ比:2.0、95%CI:1.4~2.7、p<0.0001)。 Rugo氏は「この結果は、PALOMA試験の高齢患者で示されたパルボシクリブ+レトロゾールの有効性を補足するもの」としている。

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AZ製ワクチン第III相試験主要解析結果/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンAZD1222(ChAdOx1 nCoV-19、AstraZeneca製)は、高齢者を含む多様な集団においてCOVID-19の発症・重症化を安全・有効に予防することが示された。米国・ロチェスター大学のAnn R. Falsey氏らが、米国、チリ、ペルーにおいて現在進行中の、高齢者を含む3万例超を対象とした第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験「AZD1222試験」の結果を報告した。同3ヵ国では、AZD1222の安全性および有効性が明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2021年9月29日号掲載の報告。米国、チリ、ペルーで3万2,451例を対象に試験 試験は、米国、チリ、ペルーで高齢者を含む成人集団を対象に、AZD1222の2回投与の安全性、有効性、免疫原性をプラセボと比較し、AZD1222の2回目投与後15日以降のCOVID-19発症および重症化の予防効果を調べた。 研究グループは被験者3万2,451例を2対1の2群に分け、一方にはAZD1222を(2万1,635例)、もう一方にはプラセボを(1万816例)投与した。完全接種者約1万8,000人中重症者はなし AZD1222群は重篤・医師の診察を要する有害事象や、特定の有害事象の発生率は低く、安全であることが確認された。事象はプラセボ群で観察されたものと類似しており、非自発的な局所および全身性反応は、両群において概して軽度または中等度だった。 ワクチンの推定有効率は、全体で74.0%(95%信頼区間[CI]:65.3~80.5、p<0.001)、65歳以上では83.5%(54.2~94.1)だった。ワクチンの高い有効性は、年齢や職業などの人口統計学的サブグループにおいても一貫して認められた。 完全接種者(AZD1222またはプラセボ2回接種後15日以降)を対象に行ったサブグループ解析では、重症または命に関わるCOVID-19の発症例は、AZD1222群1万7,662例では認められなかった。一方、プラセボ群8,550例では8例(<0.1%)報告された。 SARS-CoV-2感染予防(ヌクレオカプシド抗体セロコンバージョン)の推定有効率は64.3%(95%CI:56.1~71.0、p<0.001)だった。SARS-CoV-2スパイクタンパク質結合と中和抗体は初回投与後に増加し、2回目投与後28日の測定ではさらに増加が認められた。

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