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【第52回】Letterを書いて医学論文トレーニング読者の皆さんはご存じと思いますが、「Letter」って手紙じゃないです。医学雑誌によってはLetter to the editorやCorrespondenceなどというコーナーになっている、あのLetterです。『医学論文の読み方2.0 論文を批判的に吟味し臨床適用するためのLetterの書き方』片岡 裕貴, 稲垣 雄士, 辻本 康/編著. 中外医学社. 2022年1月発売Letterは、掲載された論文に対するコメントや意見、また原著論文にするほどではないが小規模な研究記述を行う場合に投稿されます。私は平均して年1つくらいしか論文を書いていないのですが、Letterを実は一度も投稿したことがありません。医学論文書きまくっている医師でも、結構そういう人って多いんじゃないでしょうか?私が医学論文を読むとき、ダーっと読んで感想を書いて、それを自分用メモとして保存して、後からこういう研究があったなーという引き出しにしているくらいです。この本の恐ろしいところは、その過程をLetterという形(業績)にしてしまうというトレーニング法を勧めている点です。批判的に吟味して感想を持ったなら、Letterにすればよくね? ということです。すべてがLetterに特化した本ではなく、医学論文を読むスタンスを身に付ける上で重要なことはほとんど網羅されています。「医学論文の読み方」をただ学ぶのではなく「Letterを書きながら医学論文の読み方を勉強しましょう」という付録付き医学書と思ってもらえるとよいでしょう。注意点としては、決して初学者向けではないところです。「医学論文は全然読めないッス」という研修医にはハードルが高い本かもしれません。しかし、Case Reportを2~3本書いたあたりの若手医師には、ハートに突き刺さる本になるはずです。私たち医師は、どこかで科学という世界にザブンと飛び込まないといけません。飛び込み方は、ただROM(read-only member)って足湯するだけでも構わないのですが、せっかくなら遠泳合宿できるくらい参加型でいきましょうというのがこの本の趣旨です。何より、Letterの書き方って今まで参考書がなかったですから、そういう意味でも類を見ない本となっています。『医学論文の読み方2.0 論文を批判的に吟味し臨床適用するためのLetterの書き方』編著者片岡 裕貴, 稲垣 雄士, 辻本 康出版社名中外医学社定価4,840円(税込)サイズA5判刊行年2022年