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外科医の手術経験数に男女格差/岐阜大

 外科医不足が深刻化しているなか、外科医に占める女性の割合は増加している。しかし、指導的立場にある女性は極端に少ないとされる。 大阪医科薬科大学の河野 恵美子氏、東京大学の野村 幸世氏、岐阜大学の吉田 和弘氏らの研究グループは、女性外科医の手術修練に着目。日本の外科医の手術の95%以上が収録されているNational Clinical Databaseを用いて、6術式(胆嚢摘出術・虫垂切除術・幽門側胃切除術・結腸右半切除術・低位前方切除術・膵頭十二指腸切除術)における外科医1人あたりの執刀数を男女間で比較した。 その結果、全ての術式で女性外科医は男性外科医より執刀数が少ないことが判明した。格差は手術難易度が高いほど顕著であり、経験年数の増大とともに拡大する傾向にあった。 今回の研究で、研究者は「女性も一定以上の手術手技を獲得し、指導的立場で日本の外科診療を担っていくことが本来のあるべき姿。本研究結果が外科におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメントの実現につながることを期待している」とコメントしている。 この研究成果はJAMA Surgery誌2022年7月27日号にオンライン掲載された。

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COVID-19陽性者のメンタルヘルスに対するヨガの効果

 COVID-19パンデミックは、社会全体にストレス、不安、うつ病の増加をもたらした。とくにCOVID-19の検査で陽性となった人々では、メンタルヘルスやウェルビーイングへの影響が大きい。インド工科大学デリー校のNitesh Sharma氏らは、COVID-19の影響を受けた患者のストレス、不安、うつ病の軽減に対するヨガ介入療法の有効性を評価するため、COVID-19病棟における準ランダム化比較試験を実施した。また、COVID-19の影響を受けた患者のSpO2と心拍数の測定も実施した。その結果、ヨガ介入療法は、COVID-19陽性者のストレス、不安、うつ病の軽減に対し、実践可能な介入である可能性が示唆された。International Journal of Yoga Therapy誌2022年1月1日号の報告。 対象のCOVID-19陽性者62例を、従来の治療のみを行う対照群(31例)と従来の治療に50分間のヨガ介入療法を追加するヨガ介入群(31例)にランダムに割り付けた。隔離期間の開始時および終了時に、標準化されたHospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、7項目一般化不安障害質問票(GAD-7)、こころとからだの質問票(PHQ-9)、知覚されたストレス尺度(Perceived Stress Scale)による評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・ヨガ介入群では、ストレス、不安、うつ病の有意な軽減が観察された。・対照群では、不安の有意な軽減が認められたが、ヨガ介入群の減少率のほうがより大きかった。・ヨガ介入群では、酸素飽和度、心拍数レベルの有意な改善が認められたが、対照群では有意な改善は認められなかった。

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スタチン服用の日本人患者で発がんリスクが有意に低下

 スタチン製剤の服用によって、日本人の脂質異常症患者の発がんリスクが低下したことが報告された。東京理科大学の前田絢子氏らが、保険請求データを用いた大規模な人口ベースの後ろ向きコホート研究を行い、スタチン製剤と日本人患者における発がんリスクの関係を調査した。近年の調査において、スタチン製剤が特定のがんの発生率を低下させる可能性が示唆されている。しかし、臨床試験では明らかにされておらず、日本人患者での調査も限定的であった。Cancer prevention research誌オンライン版2022年8月2日掲載。スタチンの発がんリスク低下はとくに消化器がんで顕著 本調査の対象は、2006~2015年に脂質異常症と新たに診断された患者。日本の保険請求データを用い、期間中にスタチン製剤を服用開始した群(服用群)と、年齢・性別・診断年に応じて無作為に抽出した非服用群を比較した。解析対象は各群23,746例で平均追跡期間は約2年、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて評価した。 スタチン製剤と日本人脂質異常患者における発がんリスクの関係を調査した主な結果は以下のとおり。・スタチン服用群では、非服用群と比較して、有意に発がんリスクが低下した(調整ハザード比[aHR]:0.85、95%CI:0.72~0.97)。・サブグループ解析において、スタチン服用群の発がんリスクの低下は、とくに消化器がんで顕著であった(aHR:0.79、95%CI:0.63~0.99)

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新規抗体薬litifilimab、皮膚エリテマトーデスの疾患活動性を改善/NEJM

 皮膚エリテマトーデス患者の治療において、血液樹状細胞抗原2(BDCA2)のヒト化モノクローナル抗体製剤litifilimabはプラセボと比較して、治療開始から16週間後の皮膚疾患活動性の改善効果が優れ、有害事象の発生状況は同程度であることが、米国・ペンシルベニア大学のVictoria P. Werth氏らが実施した「LILAC試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2022年7月28日号で報告された。世界54施設の無作為化第II相試験 LILAC試験は、皮膚エリテマトーデス患者の治療におけるlitifilimabの有効性と安全性の評価を目的とする16週の二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2016年10月~2019年11月の期間に、アジア、欧州、中南米、米国の54施設で参加者の登録が行われた(米国Biogenの助成による)。 対象は、年齢18~75歳、全身症状の有無にかかわらず、生検で組織学的に皮膚エリテマトーデスと確定され、活動性の皮膚エリテマトーデス(皮膚エリテマトーデス疾患面積・重症度指数-活動性[CLASI-A]尺度[0~70点、点数が高いほど活動性が高い]のスコアが8点以上)を有する患者であった。 被験者は、litifilimabの3つの用量(50mg、150mg、450mg)またはプラセボを、0週、2週、4週、8週、12週目に皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、ベースラインから16週までのCLASI-Aスコアの変化の割合(%)とされた。用量反応モデルを用いて、4群における反応の有無が評価された。また、安全性の評価も行われた。より大規模でより長期の試験が必要 132例が登録され、litifilimab 50mg群に26例(平均年齢43.3歳、女性77%)、同150mg群に25例(43.6歳、80%)、同450mg群に48例(44.0歳、75%)、プラセボ群に33例(43.4歳、91%)が割り付けられた。各群のベースラインの平均CLASI-Aスコアは、それぞれ15.2点、18.4点、16.5点、16.5点であった。全身性エリテマトーデス(SLE)を併存する患者が、それぞれ42%、48%、42%、42%含まれた。 CLASI-Aスコアのベースラインから16週までの変化率の最小二乗平均(LSM)は、litifilimab 50mg群が-38.8%、150mg群が-47.9%、450mg群が-42.5%、プラセボ群は-14.5%と、いずれも改善されたが、プラセボ群では改善の程度が小さかった。 したがって、16週時におけるCLASI-Aスコアのベースラインからの変化率の、プラセボ群との差のLSMは、litifilimab 50mg群が-24.3ポイント(95%信頼区間[CI]:-43.7~-4.9)、150mg群が-33.4ポイント(-52.7~-14.1)、450mg群は-28.0ポイント(-44.6~-11.4)であった。3つの用量とプラセボについて最適な用量反応モデルを用いて主解析を行ったところ、いずれの用量でも、プラセボとの比較で有意な効果が確認された。 一方、副次エンドポイントの多くは、主解析の結果を支持しなかった。 有害事象は、litifilimab群(3用量群99例)の72%、プラセボ群の67%で発現し、多くは軽度~中等度であった。頻度の高い有害事象として、鼻咽頭炎(litifilimab群10%、プラセボ群6%)、頭痛(9%、9%)、注射部位紅斑(9%、3%)、SLE(7%、12%)、関節痛(6%、6%)、上気道感染症(6%、3%)などが認められた。重篤な有害事象は、litifilimab群が7例(7%)、プラセボ群は3例(9%)で発現した。 litifilimab群では、過敏症が3例、口腔ヘルペス感染症が3例、帯状疱疹感染症が1例でみられ、litifilimabの最終投与から4ヵ月後に1例で帯状疱疹髄膜炎が発生した。 著者は、「皮膚エリテマトーデスの治療におけるlitifilimabの効果と安全性を明らかにするには、より大規模でより長期の試験を要する」としている。

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英語で「…と診断されたことはありますか?」は?【1分★医療英語】第40回

第40回 英語で「…と診断されたことはありますか?」は?Have you ever been diagnosed with diabetes?(糖尿病と診断されたことはありますか?)No, but last year, I was told I had pre-diabetes.(いいえ、でも去年、糖尿病予備軍と言われました)《例文1》I was diagnosed with lung cancer 3 years ago.(私は3年前に肺がんと診断されました)《例文2》Have you ever been told that you have diabetes?(糖尿病と言われたことがありますか?)《解説》「診断」という名詞は“diagnosis”、「診断する」という動詞は“diagnose”です。「diagnose 人 with~」で、「人を~という病気と診断する」という意味になり、“Have you ever been diagnosed with~?”で「~と診断されたことはありますか?」と聞くことができます。特定の既往歴があるかどうかを聞く場合の他の表現として、“Have you ever been told that you have~?”(~と言われたことがありますか)や、さらにシンプルに“Do you have~?”(~がありますか)といった表現もあります。また、関連する用語として「鑑別診断」は“differential diagnosis”、「前糖尿病」や「糖尿病予備軍」は“prediabetes” “borderline diabetes”と表現することを覚えておくと役立ちます。講師紹介

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10代女性における不眠症と地中海食との関係

 これまでの研究で、食事の質の低さと睡眠障害との関連が示唆されている。地中海式食事療法は、高品質の食事療法であり、健康全体に対し有益な効果があるといわれている。イラン・Shahid Sadoughi University of Medical SciencesのZahra Yaghtin氏らは、思春期女性における地中海式食事パターンのアドヒアランスと不眠症スコアとの関連を調査した。その結果、イランの思春期女性では、修正済み地中海式食事スコアのアドヒアランスと不眠症レベルとの間に逆相関が認められた。BMC Nutrition誌2022年6月29日号の報告。 12~18歳の思春期女性733人を対象に横断的研究を実施した。食事摂取量の評価には、147項目の食事摂取頻度調査票(FFQ)を用いた。地中海式食事スコアを、修正モデルとして0~9ポイントの範囲で算出した。不眠症の評価には、検証済み不眠症重症度質問票(ISI)を用いた。修正済み地中海式食事スコアと不眠症との関連を評価するため、線形回帰(crude model、adjusted model)を用いた。モデルIではエネルギー摂取量で調整、モデルIIでは身体活動、両親の教育レベルでさらに調整、完全調整モデル(モデルIII)では年齢、BMI、腹部肥満で調整した。 主な結果は以下のとおり。・線形回帰(crude model)では、地中海式食事スコアと不眠症スコアとの間に有意な逆相関が認められた(β=-0.091、95%CI:-0.392~-0.046、p=0.013)。・交絡因子で調整した各モデルにおいても同様の結果が認められた。 ●モデルI:β=-0.098、95%CI:-0.423~-0.045、p=0.015 ●モデルII:β=-0.092、95%CI:-0.410~-0.029、p=0.024 ●モデルIII:β=-0.082、95%CI:-0.385~-0.006、p=0.044

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関節炎発症前のメトトレキサート、関節リウマチの発現を抑制するか/Lancet

 関節リウマチの治療は、通常、関節炎が臨床的に明らかになってから開始される。オランダ・ライデン大学医療センターのDoortje I. Krijbolder氏らは、「TREAT EARLIER試験」において、関節炎の発症前に関節の不顕性炎症がみられる段階で、関節リウマチの基本的な治療薬であるメトトレキサートの早期投与を開始すると、臨床的な関節炎の発現を予防し、疾病負担が軽減されるかについて検討を行った。その結果、プラセボと比較して、2週間以上持続する関節炎の予防効果は認められなかったものの、MRI上の炎症所見や関連症状、身体機能障害が持続的に改善したことから、疾患の経過が修飾されたと考えられた。研究の詳細は、Lancet誌2022年7月23日号に掲載された。オランダの概念実証試験 TREAT EARLIER試験は、単施設(ライデン大学医療センター)でスクリーニング、フォローアップのための受診、エンドポイントの評価が行われた二重盲検無作為化プラセボ対照概念実証試験であり、2015年4月~2019年9月の期間に、オランダ南西地域の13のリウマチ専門の外来診療所で参加者が登録された(オランダ科学研究機構[NWO]の助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、臨床的に関節リウマチへの進展が疑われる関節痛を有し、MRIで関節の不顕性の炎症が検出された患者であった。 被験者は、グルココルチコイド単回筋肉内注射(メチルプレドニゾロン120mg)後に経口メトトレキサート(最大25mg/週)を52週投与する群、またはプラセボ単回筋肉内注射後にプラセボ錠剤を52週投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。フォローアップは、1年の治療期間終了後、さらに1年間継続された。 主要エンドポイントは、2週間以上持続する臨床的関節炎(関節リウマチ分類基準[2010年]を満たす、または2ヵ所以上の関節で炎症を認める)の発現とされた。副次エンドポイントは、患者報告による身体機能、症状、労働生産性で、4ヵ月ごとに評価が行われた。また、MRIで検出された炎症の経過も調査された。有害事象は既知の安全性プロファイルと一致 236例が登録され、メトトレキサート群に119例(平均年齢46歳、女性62%)、プラセボ群に117例(47歳、68%)が割り付けられた。メトトレキサート群で抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)陽性例の割合が高かった(26% vs.20%)。フォローアップ期間中に、メトトレキサート群で3例(3%)、プラセボ群で5例(4%)が脱落した。 治療開始から2年の時点で、2週間以上持続する臨床的関節炎の発症は両群で同程度であり、メトトレキサート群が119例中23例(19%)、プラセボ群は117例中21例(18%)で認められた(ハザード比[HR]:0.81、95%信頼区間[CI]:0.45~1.48)。 身体機能は、最初の4ヵ月間はメトトレキサート群でより改善され、その後もプラセボ群よりも良好な状態が保持された(2年間の健康評価質問票身体機能障害指数[HAQ、0~3点]の平均群間差:-0.09点、95%CI:-0.16~-0.03、p=0.0042)。 同様に、関節痛(0[無症状]~100[考えうる最悪の症状]点で評価の平均群間差:-8点、95%CI:-12~-4、p<0.0001)、朝の関節のこわばり(0~100点で評価の平均群間差:-12点、95%CI:-16~-8、p<0.0001)、プレゼンティズム(疾病就業)(Work Productivity Impairment Scaleで評価した過去1週間の関節症状による労働生産性の低下の割合の平均群間差:-8%、95%CI:-13~-3、p=0.0007)、MRIで検出された関節の炎症所見(滑膜炎、骨炎、腱鞘滑膜炎の合計の平均群間差:-1.4点、95%CI:-2.0~-0.9、p<0.0001)も、プラセボ群に比べメトトレキサート群で持続的に改善された。 重篤な有害事象の発生は両群で同等であり(メトトレキサート群119例中13例[11%]vs.プラセボ群117例中13例[11%])、メトトレキサート群の有害事象は既知の安全性プロファイルと一致していた。フォローアップ期間中に死亡例はなかった。 著者は、「より長期の疾患の経過、疾患活動性、生物学的製剤(bDMARD)の必要性、臨床的に関節炎を発症した患者におけるDMARD-freeの寛解を評価するために、5年間のフォローアップを行う観察的継続試験が進行中である。また、今回のデータからは、有効性はメトトレキサートとグルココルチコイドのどちらによるものかが推定できないため、これを明らかにする研究が求められる」としている。

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未接種者とブレークスルー感染者、臨床転帰と免疫の違いは?

 国内における新型コロナ感染流行の第7波においては、ワクチン接種後の感染、いわゆるブレークスルー感染も多数報告されている。ワクチン接種を受けた感染者の大半は軽症か無症状だが、入院を要する者もいる。ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者について免疫および臨床的特徴を調べたイタリア・フローレンス大学のGiulia Lamacchia氏らの研究がJournal of Clinical Immunology誌2022年7月9日号オンライン版に掲載された。ワクチン未接種の新型コロナ感染者は有意に高い重症度指数を示した 本試験では、2021年11月~12月中旬のデルタ株の流行時に、イタリア・フィレンツェのカレッジ大学病院に入院した新型コロナウイルス感染症患者を、発症からの期間や重症度に関係なく対象とし、臨床データおよび検査データを収集した。ウイルスベクターまたはmRNAワクチンを完全接種した患者36例(うち4例はブースター接種まで完了)、ワクチン未接種者29例だった。最後のワクチン接種から感染までの平均時間は139±63日であった。 ワクチン接種者またはワクチン未接種者で新型コロナ感染により重症化した患者の症状を調べた主な結果は以下のとおり。・ワクチン接種群の平均年齢は73歳、ワクチン非接種群は67歳だった。入院時、ワクチン接種群は併存疾患がワクチン未接種群と比較して有意に多かった(平均4.3 vs. 2.9)。一方で、ワクチン未接種群はワクチン接種群と比較して血清フェリチン値、乳酸脱水素酵素(LDH)が有意に上昇していた。肺機能障害、他の炎症マーカー(反応性タンパク質、IL-6、Dダイマー)レベルについては両群間に有意差はなかった。・ワクチン未接種者群はワクチン接種群に比べ、有意に高い重症度指数を示した。肺炎の発症率はワクチン未接種群93%(27/29)に対し、ワクチン接種群69%(24/36)、死亡率はワクチン未接種群31%(9/29)、ワクチン接種群11%(4/36)であった。・ワクチン接種の有無にかかわらず、生存例(52例)と死亡例(13例)の入院時の抗SARS-CoV-2免疫を比較したところ、抗N IgGおよび抗S IgMは両群間に差がなかったが、抗S IgGおよび中和Igは生存例で有意に高かった(生存例は死亡例よりも高いレベルの抗S IgGとスパイク特異的CD4+T細胞を示した)。・新型コロナ感染入院時、65例中6例(9.2%)が高い抗IFN-α抗体価を示した。6例中の5例が男性で、女性は最年長者(90歳)のみであった。平均年齢は79歳で、他のコホートの平均年齢70歳よりも高かった。高抗IFN-α抗体保有者6例のうち、ワクチン未接種群の3例は死亡し、ワクチン接種群の3例は生存して退院した。 著者らは「ワクチン接種者はワクチン未接種者より入院前の身体状態が不良であったにもかかわらず、転帰は良好であった。抗SARS-CoV-2特異的免疫の迅速な活性化は、感染症の治癒のために不可欠であり、ワクチン接種による事前の免疫獲得は疾患の悪化防止に大きく貢献し、高リスク因子(高齢、合併症、抗IFN-α自己抗体)の存在さえも克服することが可能である」としている。

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COPDの疾病負担、世界的には低下傾向に/BMJ

 近年、慢性閉塞性肺疾患(COPD)による世界的な疾病負担は減少傾向にあるものの、この疾患はとくに社会人口統計学的指標(0[開発が最も遅れている]~1[開発が最も進んでいる])が低い国々ではいまだに主要な公衆衛生上の課題であることが、イラン・タブリーズ医科大学のSaeid Safiri氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年7月27日号で報告された。GBD 2019のCOPDデータを用いた系統的解析 研究グループは、1990~2019年におけるCOPDの世界、地域別、国別の疾病負担および寄与リスク因子を、年齢、性別、社会人口統計学的指標に基づいて検討する目的で、系統的な解析を行った(イラン・Shahid Beheshti University of Medical Sciencesの助成を受けた)。 解析には、「2019年度世界疾病負担研究(GBD 2019)」のCOPDのデータが用いられた。GBDは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団の助成で進められている研究で、GBD 2019では、1990~2019年における世界の204の国と領域における369種の疾患と負傷、および87件のリスク因子について評価が行われている。COPDについてはGOLDの定義が使用された。 主要アウトカムは、COPDの有病者、COPDによる死亡、COPDによる障害調整生存年(DALY)と、寄与リスク因子とされ、その数と10万人当たりの発生割合が、95%不確実性区間(UI)とともに算出された。禁煙、大気の質の改善、職業的曝露の低減が重要 2019年における世界のCOPDの有病者数は2億1,230万人で、年齢標準化点有病率は10万人当たり2,638.2人(95%不確実性区間[UI]:2,492.2~2,796.1)であり、1990年から8.7%低下した。また、同年のCOPDによる死亡者数は328万600人で、年齢標準化死亡率は10万人当たり42.5人(95%UI:37.6~46.3)であり、1990年以降41.7%減少した。同年のDALYは7,443万2,400年で、年齢標準化DALYの割合は10万人当たり926.1年(95%UI:848.8~997.7)であり、1990年に比べ39.8%低くなった。 2019年に、COPDの年齢標準化点有病率が最も高かった国はデンマーク(4,299.5人/10万人)で、次いでミャンマー(3,963.7人/10万人)、ベルギー(3,927.7人/10万人)の順であった。また、調査期間中に年齢標準化点有病率が最も増加した国はエジプト(62.0%)で、ジョージア(54.9%)、ニカラグア(51.6%)がこれに続いた。 2019年に、COPDによる10万人当たりの年齢標準化死亡率が最も高かったのはネパール(182.5人)で、最も低かったのは日本(7.4人)だった。10万人当たりの年齢標準化DALYもネパール(3,318.4年)で最も高く、バルバドス(177.7年)が最も低かった。 一方、男性では、世界のCOPDによるDALYの割合は85~89歳まで上昇が続き、その後は加齢とともに低下したのに対し、女性は最も高い年齢層(95歳以上)まで上昇が続いた。この割合は、全年齢層で男性のほうが高かった。 地域別の解析では、社会人口統計学的指標とCOPDの年齢標準化DALYの割合には、1990~2019年にかけて全体的に逆V字型の関係が認められた。すなわち、年齢標準化DALYの割合は、社会人口統計学的指標の上昇に伴い指数関数的に増加したが、同指標が約0.4に達した後、減少に転じた。 COPDによるDALYの割合の増加に最も寄与している因子は喫煙(46.0%)であり、次いで環境中の粒子状物質による汚染(20.7%)、職業的な粒子状物質、ガス、煙/蒸気への曝露(15.6%)の寄与が大きかった。 著者は、「COPDの疾病負担をさらに減少させるために、予防プログラムでは、禁煙、大気の質の改善、職業的曝露の低減に焦点を当てるべきと考えられる」としている。

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コロナ禍にゲームが与えた影響【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第215回

コロナ禍にゲームが与えた影響pixabayより使用コロナ禍に入り、うちの子供は友達と遊ぶ時間が減って、勉強時間も増えたものの、ゲーム時間も増えています。時間があれば、「マインクラフト」をやりまくっています。小学生男子にはマインクラフトのほうが人気かと思うのですが、「どうぶつの森」シリーズも根強い人気があります。この精神的な効果を調べた研究があります。Yee A, et al.Animal Crossing and COVID-19: A Qualitative Study Examining How Video Games Satisfy Basic Psychological Needs During the Pandemic.Front Psychol. 2022 Apr 1;13:800683.具体的にはプレイヤーにインタビューをするもので、18~34歳までの17人が登録されました。ほとんどがシンガポール人でした。参加者にコンタクトを取って、Zoomでインタビューを試みました。「あつ森」をプレイすると、コロナ禍という物理的な孤独の中で、自由や逃避の感覚を得ることができ、また、友人や見知らぬ人と人間的なつながりができるといった欲求が満たされることがわかりました。また、ゲームの中の自分にアイデンティティを重ねることができ、それによって自己肯定感を維持することができました。反面、コロナ禍であっても外的な活動によってこれらが満たされると、プレイしなくなる現象があることもわかりました。以下、インタビューを受けたプレイヤーの意見です。「ロックダウンの間、誰も旅行なんてできなかったでしょう。でも、このゲームでは、空港に行って、飛行機に乗って、空を飛ぶというのがリアルに感じられるんです。空を飛んでいるような感覚になるので、そういう体験が嬉しいですね」「5歳の子供と一緒にプレイすることで、彼の心の中に入り込み、彼が何を考え、何を楽しみ、何を楽しまないかを理解することができました」いやゲームもほんと捨てたもんじゃありませんね。しかしうちの子供はマイクラをやり過ぎなんだよなーと思ってPubMedを調べてみたら、マイクラが記憶パフォーマンスの向上に寄与するのではないかという報告がありました1)。いやゲームもほんと捨てたもんじゃありませんね!1)Stark C, et al. Playing Minecraft Improves Hippocampal-Associated Memory for Details in Middle Aged Adults. Front Sports Act Living. 2021 Jul 5;3:685286.

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第120回 コロナ第7波も行動制限したがらない岸田首相の意外な行動記録

新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の第7波が始まってからのSNS空間はもはや阿鼻叫喚と言って良い。外来がパンクし、疲弊していることを訴える医療従事者に対して「そんなの(感染症法上)の5類にすれば解決する」「感染者が増えても重症者が増えていないのだから騒ぎ過ぎ」「医療やメディアが煽ってきた結果」と無責任に言い放つ一般人との応酬だ。しかも、後者の論理に一部の文化人や医師免許を持つ人たちが組しているため、ぱっとSNS上を見るとそちら側が優勢に見える瞬間もある。正直、見ているこちら側は溜息しか出てこない。そもそも感染症法上の分類を5類に変更したところで現状のような医療逼迫が解決するわけではない。確かに全数把握がなくなることで保健所のひっ迫は解消するかもしれないが、「5類なんだからどこの医療機関でも見てくれる」と勘違いした一般人が近隣の医療機関に押し寄せ、混乱するだけだろう。そして読者の皆さんには釈迦に説法だが、5類になったところでクラスターを起こしやすく、重症化リスクのある人以外に特化した治療薬がない新型コロナを診察する医療機関は増えないだろう。もし一般のクリニックなどに無理やり診察させれば、動線確保などのクラスター防止対策の結果、新型コロナもそれ以外の患者も恐る恐る最低限しか受け入れなくなる。結局、「医療逼迫の構図になる」という想像もしたくない事態に陥る可能性は十分にあり得る。しかし、この現在のSNSのような状況がなぜ起こるのか。私見では現在の政治、有り体に言えば岸田政権があまりにも無策過ぎるとしか思えないのである。今回、第7波到来を最初に明言したのは内閣の下に設置された新型コロナウイルス感染症対策本部の諮問機関「新型コロナウイルス感染症対策分科会」会長の尾身 茂氏である。尾身氏は7月11日に首相官邸を訪問して岸田 文雄首相と面会後、記者のぶら下がりに応じて「1回落ち着いてきたものが、新たな波として来ていることは間違いない」と語った。当初、行動制限は必要ないと語っていた尾身氏だが、あまりの感染急拡大を受けて7月14日に開催された分科会がまとめた「第7波に向けた緊急提言」には「次頁に示すような取組をしっかりと行い、医療のひっ迫等の回避を目指すが、それでもひっ迫が生じる場合には、人々の行動や接触を抑えるような施策も選択肢の一つとなりうる」という一文がひっそり盛り込まれていた。この2年間、新型インフルエンザ等特別措置法に基づく「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」があまりにも乱発されたことに国民がややうんざりしていること、さらに経済への打撃が大きいことに相当配慮したのだろう。ちなみにこの文言で触れた「次頁に示すような取組」とは、(1)ワクチン接種の加速化(2)検査のさらなる活用(3)効率的な換気の提言(4)国・自治体による効率的な医療機能の確保(5)基本的な感染対策の再点検と徹底である。個々の詳細は原典に譲ることにする。では、これを受けて政府は今何をしているのか? 提言がまとめられた14日夜の岸田首相の記者会見では、まず第6波までを乗り越えた対応力を全面的に展開することで「新たな行動制限は現時点では考えていない」と断言。新たに医療従事者と高齢者施設の従事者約800万人を対象とした4回目接種の開始を発表するとともに、現在の感染の中心となり、3回目のワクチン接種率の低い30代までの若年層へワクチン接種を呼びかけた。さらに全国約1万3,000ヵ所の無料検査拠点で帰省前などに検査を受けられることや、主要な駅や空港などで100ヵ所以上の臨時の無料検査拠点を整備する方針も示した。しかし、提言に盛り込まれた(3)~(5)はいずれも軽く触れたのみだ。原典に当たればわかるように、換気に関して分科会はかなり具体的な対策を提示している。しかし、会見で岸田首相が言及したのは、「重ねてお願いになりますが、とくにこの夏は冷房で籠もりがちになる室内、飲食店内での十分な換気をお願いいたします」の一言のみ。もっとも大所高所からモノを語らなければならない岸田首相の口から会見でそこまで細かく語ることは必ずしも必要ないとの意見もあるだろう。それには一定程度同意する。ならば各閣僚を通じて省庁など関係各方面に情報発信の強化を指示すればよい。しかし、内閣官房が運営する「新型コロナウイルス感染症対策」、厚生労働省(以下、厚労省)の「新型コロナウイルス感染症情報」そして「政府広報」のいずれのページにもこの点に関して新たな記載はない。また、岸田首相が会見で新型コロナ関連の中で多くの時間を割いたワクチン接種についても、明らかに発信量が足りていない。会見では若年層の3回目接種率の低さを挙げて、若年でも重症化や後遺症のリスクはあることから、自分だけでなく家族や高齢者を守るためにも接種するように呼び掛けている。しかし、そもそも3回目接種に消極的な若年層は、接種する意味を理解できていないことに着目しなければならない。「あなた方は接種率が低いから…」という理由のみで進んで接種してくれるほど甘くはない。ならばこそ、3回目接種の効果などをグラフを使って説明するなど、もう一工夫が必要なのである。もちろんそれだけで若年層の接種率がぐんと伸びるとは言えないが、説明が足りていないことは明らかである。実際、政府広報にある岸田首相自らの呼びかけ動画も会見での語り以上のものはない。そしてSNSを見ればわかることだが、そもそも現時点はワクチンに関してかなり疑念が渦巻いている。端を発したのは、厚労省がワクチン接種歴ごとの陽性率集計で、接種歴不明者を未接種者に含めて集計をしていた事件だ。これを集計し直した結果、人口当たりの陽性率はわずかながら未接種よりも2回接種済みで留まっている人のほうが高くなった。読者の皆さんはよくおわかりのことだが、これで示された差は2回目接種のほうが高いと言っても有意差があるレベルではないし、半年も経てばワクチンの感染・発症予防効果がほぼなくなるのはすでに明らかになっている。ただ、一般人は後者をうっすらと理解していても、前者についての理解はないと言って良い。見た目の数字が高いことだけに着目してしまっている。そもそも論に立てば、この接種区分ごとの陽性率のデータは、あまりにも交絡因子や接種歴不明者が多過ぎてワクチンの効果そのものを議論するデータとしては使えない。ところが厚労省は一時期、このデータをワクチンの効果を示唆するものとして使った“前科”もあってか、この件について十分な説明をしていないという現実もある。いずれにせよワクチン接種については単に呼びかけるだけでなく、効果や疑念に応える積極的な情報発信が改めて必要な段階にあるということを、政府をはじめとする公的機関が再認識すべきなのだ。さらに言えば、こうした情報発信を強化しながら、最も政府がしたくないであろう「行動制限」をオプションとして準備していることぐらいは示しても良いのではないだろうか? 「伝家の宝刀」を使う英断とそのタイミングも重要だが、チラ見せにも一定の効果がある。感染拡大時にはそういう選択肢もありうると言及することで、これを嫌うであろう一般人の感染対策見直しには一定の効果も期待できるだろう。もっとも新聞の首相動静を見ていると、岸田首相が「行動制限」に踏み込みたくないのはご自身の行動を制限されたくないからなのではないかとも勘繰ってしまう。尾身氏の第7波発言以降も、日本料理の「千羽鶴」「新ばし金田中」「赤坂浅田」「山里」、フランス料理店「日比谷パレス」に「レ セゾン」、イタリア料理「IL RISTORANTE LUCA FANTIN」やステーキ店「ウルフギャング・ステーキハウス」「ピーター・ルーガー・ステーキハウス 東京」と、庶民もうらやむような飲食店で自民党や政権の幹部、各界有力者と会食を繰り返している。最近の感染動向の主流が、福祉施設、高齢者福祉施設、学校・教育施設などでのクラスターやそれに伴う家庭内感染であることは確かである。しかし、感染主流株がオミクロン株のBA.5に変化しようとも、いまだ会食の席での感染リスクが高いことに変わりはない。そのことを岸田首相も知らぬはずはないだろう。必要な情報の発信も不十分なまま、感染リスクの高い行動を続ける首相を目にして国民は感染対策を抜かりなくやってくれるだろうか。山火事がどんどん延焼を続けているにもかかわらず、部下の消防士に適当な消火作業を指示し、自らは消防署から外出して路傍で火遊びをする消防署長。言っては悪いが今の岸田首相はそんな感じである。

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日本人統合失調症患者における社会認知の認識調査

 社会認知は、統合失調症患者の社会機能に影響を及ぼす。しかし、患者自身が社会認知をどのように認識しているかは、ほとんど知られていない。東邦大学の内野 敬氏らは、統合失調症患者に対し、社会認知に関する知識、社会認知関連の臨床経験、社会生活における社会認知の役割の認識、社会認知の主観的困難感と社会機能の関係についてのインターネット調査を行った。その結果、統合失調症患者は社会認知に関して強く主観的困難を感じており、それが社会機能と関連していることを認識していたことが明らかとなった。しかし、「社会認知」という言葉やそれらに関する認識は十分とはいえず、社会認知の評価や治療は通常の臨床現場で普及していない可能性が示唆された。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2022年6月29日号の報告。 統合失調症外来患者232例および健康対照者494例を対象に、インターネット調査によるデータ収集を行い、人口統計に従い重み付けを行った。社会認知の知識、経験、認識に関する調査には、新たに開発した調査票を用いた。主観的困難感の評価には、Self-Assessment of Social Cognition Impairments(ASCo)およびObservable Social Cognition Rating Scale(OSCARS)を用いた。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症患者および健康対照者のいずれにおいても、社会認知という言葉を知っていた割合は25%未満(統合失調症患者:23.0%、健康対照者:24.5%)であった。・社会認知の評価または治療を受けた経験は、両群ともに5%未満であった(統合失調症患者:3.9%、健康対照者:0.8%)。・社会認知と社会機能は関連すると回答した割合は、両群ともに50%以上であった(統合失調症患者:64.8%、健康対照者:51.2%)。・統合失調症患者は、健康対照者と比較し、すべての社会認知領域において強い主観的困難を感じていた。・主観的困難感が強いほど社会機能が低いという関連性が認められた。

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コロナワクチン、医師はいくらまで払う?/1,000人アンケート

 第7波の到来により、医療者へもコロナワクチン4回目接種が始まった。6月にCareNet.comが会員医師に行った『ワクチン4回目接種、あなたは受けたい?/会員医師1,000人アンケート』の結果によると、回答者の7割が接種したいと回答していた(対象となったらすぐに接種したい:33%、対象となったら時期をみて接種したい:36%)。コロナワクチンがいくらなら妥当かを調査 ところで、コロナワクチン接種は現時点では全額公費負担(厚生労働大臣の指示に基づき国の負担により実施することを踏まえ、全国統一の単価で接種1回あたり2,070円[消費税については、定期接種の予防接種と同様の取り扱い。ワクチン代はワクチンを国が確保し供給するため含まれていない1)])であり、自分の懐が痛むことはない。だが、将来的に新型コロナワクチン接種が定着した場合は自己負担になる可能性が高く、もしも費用負担が発生したら、医師も接種を控えたいと考えるのだろうか。さらには、ほかのワクチンとの兼ね合いを考慮した適正価格や、患者負担の許容範囲はいくらが妥当と捉えているのだろうかー。 そこで、今回『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』と題し、会員医師1,000人を対象に、以下の項目について調査を実施した。・コロナワクチンが自己負担/保険診療になった場合、受けたいか否か・コロナワクチン1回あたりの自己負担額とその理由・自身の患者がコロナワクチン接種を受ける場合、1回あたりいくらまでなら受けるか・コロナワクチンは、将来的に年に何回接種することになるか(予想回数)コロナワクチン自己負担…接種したい医師が減少 Q1「コロナワクチンが自己負担もしくは保険診療になった場合、受けたいと思いますか?」では、受けたいと回答したのは60%と、4回目接種希望者アンケートと回答者が異なるものの、自己負担に抵抗を感じている医師が一定数いることが明らかになった。なかでも、“受けたくない”との回答が最多だったのは30代で、わからないとの回答者も合算すると48%と約半数にのぼった。コロナワクチンを受けるなら中央値は2,500円 続いて、Q2「ご自身がコロナワクチン接種を受ける場合、自己負担がいくらまでなら受けたいと思いますか?(1回あたりの金額)」では、Q1の受けたくない・わからないの回答者も含むため、0円(33%)の回答者が最も多かった。次に3,000~4,000円未満(26%)、5,000円以上(15%)と続いた。0円(無料)を希望したのは20~40代が多く、その理由として以下のようなコメントがあった。・効果が限定的だから(20代、糖尿病・内分泌内科)・副反応がきついため(30代、消化器科)・基礎疾患のある者が受ければよい(30代、外科)・4回目以降のデータがまだ不完全(40代、呼吸器科)・コロナワクチンの効果と副反応のバランスに疑問があるため(40代、放射線科)なかには「お金をもらっても受けたくないです(30代、精神科)」と言う声も。年齢層が低いほど副反応が出やすいため、20~40代では上記のような意見が多くみられた。コロナワクチン、いくらまでなら患者は受けるか Q4「ご自身の患者さんがコロナワクチン接種を受ける場合、いくらまでなら受けると思いますか?(1回あたりの金額)」では、3,000~4,000円未満(30%)との回答者が最も多く、中央値は3,000円だった。インフルエンザワクチンの場合、全国平均は3,500円との試算があり、それに準ずる金額にすることで、多くの患者さんに打ってもらいたいと考える傾向にあった。コロナワクチン接種回数、医師の観測的希望は1~2回 ウイルス変異によるコロナワクチンの効果などにはまだまだ未知なる点が多いため、観測的希望に過ぎないが、将来の接種回数を現時点の印象から伺ったところ、「2回」が41%と最も多かった。 オミクロン株亜種であるBA.4および BA.5が猛威を振るい、これまで接種したコロナワクチンの有効性を疑問視する声もあるため、本結果ではワクチンの継続接種に難色を示す方もいた。だが、ファイザー社やモデルナ社(オミクロン株に対する2価追加接種ワクチン候補mRNA-1273.214)のオミクロン株対応ワクチンが今秋にも導入されると言われており、コロナワクチンの将来性に期待したい。アンケートの詳細は以下のページで公開中。『コロナワクチンが自己負担になったら、いくらなら妥当?』<アンケート概要>目的:新型コロナワクチンに自己負担が発生した場合、これまで通りに接種を希望するかどうかなどを調査するため。対象:ケアネット会員医師1,000人調査日:2022年7月15日方法:インターネット

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中等症~重症アトピーの外用薬併用、アブロシチニブvs.デュピルマブ/Lancet

 中等症~重症のアトピー性皮膚炎(AD)患者において、外用療法へのアブロシチニブ1日1回200mg併用はデュピルマブ併用と比較し、かゆみおよび皮膚症状の早期改善に優れており、忍容性は同様に良好であったことが、ドイツ・ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センターのKristian Reich氏らが実施した第III相無作為化二重盲検実薬対照ダブルダミー並行群間比較試験「JADE DARE試験」の結果、示された。先行の第III相試験では、中等症~重症の成人AD患者において、プラセボに対するアブロシチニブの有効性が確認されていた。Lancet誌2022年7月23日号掲載の報告。ステロイド外用薬等との併用で早期治療効果を評価 JADE DARE試験は、オーストラリア、ブルガリア、カナダ、チリ、フィンランド、ドイツ、ハンガリー、イタリア、ラトビア、ポーランド、スロバキア、韓国、スペイン、台湾、米国の151施設で実施された(2021年7月13日試験終了)。全身療法を必要とする、または外用薬で効果不十分な18歳以上の中等症~重症のAD患者を対象とし、アブロシチニブ(1日1回200mg経口投与)群またはデュピルマブ(2週間ごと300mg皮下投与)群に1対1の割合で無作為に割り付け、26週間投与した。全例が、ステロイド外用薬(弱~中力価)、外用カルシニューリン阻害薬、または外用ホスホジエステラーゼ4阻害薬の併用を必須とした。 主要評価項目は、2週時のPeak Pruritus Numerical Rating Scale(PP-NRS)スコアがベースラインから4点以上改善(PP-NRS4)達成、4週時の湿疹面積・重症度指数(Eczema Area and Severity Index:EASI)スコアが90%以上改善(EASI-90)達成に基づく奏効率とした。 無作為に割り付けされ、治験薬を少なくとも1回投与された患者を有効性および安全性の解析対象集団とし、両側有意水準0.05で逐次多重検定によりファミリーワイズの第1種の過誤をコントロールした。2週時のかゆみと皮膚症状、アブロシチニブで有意に改善 2020年6月11日~12月16日の期間に940例がスクリーニングされ、727例が登録・割り付けされた(アブロシチニブ群362例、デュピルマブ群365例)。 2週時にPP-NRS4を達成した患者の割合は、アブロシチニブ群(172/357例、48%[95%信頼区間[CI]:43.0~53.4])がデュピルマブ群(93/364例、26%[21.1~30.0])より高く(群間差:22.6%[95%CI:15.8~29.5]、p<0.0001)、4週時にEASI-90を達成した患者の割合も同様(アブロシチニブ群101/354例・29%[23.8~33.2]vs.デュピルマブ群53/364例・15%[10.9~18.2]、群間差:14.1%[8.2~20.0]、p<0.0001)であり、アブロシチニブ群のほうが主要評価項目を達成した割合が高かった。 有害事象は、アブロシチニブ群で362例中268例(74%)、デュピルマブ群で365例中239例(65%)に認められた。治療に関連しない死亡がアブロシチニブ群で2例報告された。

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CPB心臓手術、4%アルブミン溶液投与の効果は?/JAMA

 心肺バイパス術(CPB)による心臓手術を受ける患者において、心肺バイパス用プライミング液と術中・術後の静脈内充填液として、4%アルブミン溶液の投与は酢酸リンゲル液投与と比べ、術後90日の主要有害イベントリスクを有意に低下しなかった。フィンランド・ヘルシンキ大学のEero Pesonen氏らが、1,407例を対象に行った二重盲検無作為化試験の結果を報告した。心臓手術において、アルブミン溶液はクリスタロイドよりも血行動態を維持し、血小板数と体液過剰を抑制する可能性が示唆されていたが、手術に伴う合併症軽減に有効なのか、これまで無作為化試験は行われていなかった。著者は結果を踏まえて「CPB心臓手術を受ける患者における4%アルブミン溶液の使用を支持する所見は得られなかった」とまとめている。JAMA誌2022年7月19日号掲載の報告。死亡、心筋傷害、急性心不全などの主要有害イベント発生率を比較 研究グループは2017~20年にかけて、ヘルシンキ大学病院単施設で試験を行った。on-pump冠状動脈バイパス術(CABG)、大動脈弁・僧帽弁・三尖弁術、低体温循環停止を伴わない上行大動脈術、および/またはメイズ手術のいずれかを実施した患者を対象とし、術後90日追跡した(最終フォローアップは2020年4月13日)。 被験者を1対1の割合で無作為に2群に分け、心肺バイパス用プライミング液と術中・術後24時間までの静脈内充填液として、一方の群には4%アルブミン溶液を、もう一方の群には酢酸リンゲル液を投与した(各群ともに693例)。 主要アウトカムは、主要有害イベント(死亡、心筋傷害、急性心不全、再開胸、脳卒中、不整脈、出血、感染症、急性腎障害)の1つ以上の発生とした。有害イベント発生率、アルブミン群37%、リンゲル群34% 無作為化された1,407例のうち、1,386例が試験を完了した(男性1,091例[79%]、女性295例[21%])。アルブミン群の同溶液投与量中央値は2,150mL(四分位範囲[IQR]:1,598~2,700)で、リンゲル群の同投与量中央値は3,298mL(2,669~3,500)だった。 1つ以上の主要有害イベントの発生は、アルブミン群257/693例(37.1%)、リンゲル群234/693例(33.8%)だった。リンゲル群に対するアルブミン群の相対リスクは、1.10(95%信頼区間[CI]:0.95~1.27、p=0.20)、絶対群間差は3.3ポイント(95%CI:-1.7~8.4)だった。 最も多く発生した重篤な有害イベントは、肺塞栓症(アルブミン群11例[1.6%]、リンゲル群8例[1.2%])、心膜切開術後症候群(両群ともに9例[1.3%])、ICU入室または再入院を伴う胸膜滲出液(7例[1.0%]、9例[1.3%])だった。

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ASCO2022 レポート 泌尿器科腫瘍

レポーター紹介2022 ASCO Annual MeetingCOVID-19の影響で2年続けてバーチャル開催だったASCO Annual Meetingですが、本年は3年ぶりに現地開催(オンラインもあり)となりました。本年のPresidential Themeは“Advancing Equitable Cancer Care Through Innovation”でした。会長のDr. Everett E. Vokesによれば、腫瘍学におけるイノベーションは、新規治療法だけでなく、既存の治療法の改良、遠隔医療によるアクセスの改善、さらには臨床試験の適格基準の見直しなどにも及ぶとのことです。今年の泌尿器がん領域のScientific Programは、大規模臨床試験の長期フォローアップデータやpost-hoc解析の報告が多かったように思います。そのうちいくつかを紹介いたします。ENZAMET 5年フォローアップデータ(Abstract # LBA5004)ENZAMET[試験(NCT02446405)では、転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)患者の1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)にエンザルタミドを上乗せすることで、標準治療(ADT+第1世代抗アンドロゲン薬)と比べてOSを改善すること(HR:0.67、95%信頼区間[CI]:0.52~0.86、p=0.002)がすでに報告されています(Davis ID, N Engl J Med. 2019)。今回1,125例の組み入れ患者のうち、470のOSイベントが発生した約5年のフォローアップデータが公表されました。標準治療群の5年OSは57%だったのに対し、エンザルタミド群の5年OSは67%と有意な改善効果が示されました(HR:0.70、95%CI:0.58~0.84、p<0.001)。サブグループ解析でもほぼ一貫してエンザルタミド群のOSに対するベネフィットが示されました。中でも低腫瘍量かつドセタキセル非併用の患者においてエンザルタミド上乗せのベネフィットが顕著であったと報告されています。TheraP 3年フォローアップデータ(Abstract # 5000)TheraP試験(NCT03392428)からは3年フォローアップのデータが報告されました。本試験はドセタキセル治療後の転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者に対する、177Lu-PSMA-617 (LuPSMA)とカバジタキセルの有効性を比較したもので、すでにPSA response rate(66% vs.37%)、RECIST response rate(49% vs.24%)、PFS(HR:0.63)、Grade3~4 の有害事象の発生頻度(33% vs.53%)、そしてPRO(patient-reported outcomes)においてLuPSMAが有意に優れていたことが報告されています(Lancet. 2021)。今回は3年フォローアップに基づくOSのデータが公表されました。36ヵ月時点までのRestricted mean survival time(RMST)で評価されたOSは19.1ヵ月vs.19.6ヵ月で有意差を認めませんでした。ARAMIS post-hoc解析による転移進行パターン(Abstract # 5044)ARAMIS試験(NCT02200614)は高リスク(PSA-DT≦10ヵ月)の非転移性去勢抵抗性前立腺がん(nmCRPC)に対するダロルタミドの有効性を検証したもので、プラセボ群と比較してMFS(metastasis-free survival)を約2年延長することがすでに報告されています(Fizazi F, et al. N Engl J Med. 2019;380:1235-1246.)。今回はPSA上昇を伴う転移進行と臨床的進行(疼痛の出現が先行)についての検討結果が公表されました。データカットオフ時点でダロルタミド群の13.6%、プラセボ群の28.5%が転移進行を来していました。そのうち骨転移のみを示した患者はダロルタミド群で46.2%、プラセボ群で39.2%、リンパ節転移のみを示した患者はダロルタミド群で31.5%、プラセボ群で39.9%でした。転移進行前のPSA値はダロルタミド群で16.7ng/mL、プラセボ群で48.0ng/mLで、ダロルタミド群では、ベースラインよりも低かった(-0.71ng/mL、-3.2%)のに対し、プラセボ群では高い値(+29.5ng/mL、+181%)でした。PSA上昇を伴う転移進行を示した患者の割合は、ダロルタミド群では45.4%と、プラセボ群の63.9%より低い値でした。PSA上昇を伴う転移進行を示した患者においてPSA上昇から転移出現までの期間はダロルタミド群では7.0ヵ月、プラセボ群では5.6ヵ月でした。疼痛の出現による進行を示した患者の割合はダロルタミド群で16.9%、プラセボ群で17.7%といずれの群においても少数でした。結論として、nmCRPCに対するダロルタミド治療においては、とくにPSA上昇を伴わずに転移進行を来す患者の割合が高いため、PSA測定だけでなく、定期的な画像検査も含めてフォローアップを行うことの重要性が強調される結果となりました。REASSURE研究によるRa-223治療を受けたmCRPC患者におけるALP低下とOSとの関連(Abstract # 5041)REASSURE研究は、骨転移性CRPC患者におけるラジウム223(Ra-223)の長期安全性を評価するためのグローバル前向き観察研究で、今回は治療前(ベースライン)の血清アルカリフォスファターゼ(ALP)値、治療開始後12週時点でのALP値の変化とOSとの関連に関する解析結果が報告されました。ベースラインALPが147U/L以下の患者においては、ALPが低下した場合のOSの中央値は23.0ヵ月だったのに対し、低下しなかった場合のOSの中央値は16.4ヵ月でした。またベースラインALPが147U/L超の患者においては、ALPが低下した場合のOSの中央値は12.9ヵ月だったのに対し、低下しなかった場合のOSの中央値は8.1ヵ月でした。年齢、ヘモグロビン値、前治療の内容はOSに対して直接的な影響は示しませんでした。ベースラインALP値にかかわらず、治療開始後12週時点におけるALP低下は良好なOSを予測する所見となることが示されました。ARCHES post-hoc解析によるDNA損傷修復遺伝子異常(Abstract # 5074)ARCHES試験(NCT02677896)では、転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)患者の1次治療として、アンドロゲン除去療法(ADT)にエンザルタミドを上乗せすることで、標準治療(ADT+プラセボ)と比べてOSを改善すること(HR:0.66、95%CI:0.53~0.81、p<0.001)がすでに報告されています(Armstrong AJ, J Clin Oncol. 2022)。今回は、post-hoc解析として、生殖細胞系列のDNA損傷修復(DDR)遺伝子異常の有無と患者背景因子との関連が報告されました。全患者1,150例のうち652例が今回の解析の対象となりました(全体集団と背景因子に大きな差はなし)。652例中34例(5.2%)にCHEK2(n=8)、BRCA1/BRCA2/PALB2(n=5)、ATM(n=4)といったDDR遺伝子異常が検出されました。DDR遺伝子変異の有無と腫瘍量や診断時転移の有無といった背景因子の間には関連は見られませんでした。今回のARCHES集団における生殖細胞系列のDDR遺伝子異常の頻度はmCRPCで報告されている頻度(7~12%)(Lozano et al. Br J Cancer 2021、Pritchard et al. N Engl J Med 2016)と比べて低いものでした。KEYNOTE-426 のPFS2(Abstract # 4513)KEYNOTE-426試験(NCT02853331)は転移性のccRCCに対する1次治療としてペムブロリズマブ+アキシチニブがスニチニブと比較してOS、PFS、ORR等のアウトカムを改善することがすでに報告されています(Rini BI, et al. N Engl J Med. 2019, Powles T, et al. Lancet Oncol. 2020)。今回はいわゆるPFS2(Randomizationから後治療に対する抵抗性獲得までの期間)の解析結果が公表されました。今回の解析におけるフォローアップ期間は42.8ヵ月で、ペムブロリズマブ+アキシチニブ群の47.2%(204/432)およびスニチニブ群の 65.5%(281/429)が少なくとも1ライン以上の後治療を受けていました。後治療の内訳はペムブロリズマブ+アキシチニブ群では82.8%がVEGF/VEGFR阻害薬だったのに対し、スニチニブ群では54.8%がPD-1/PD-L1阻害薬でした。PFS2 はペムブロリズマブ+アキシチニブ群で40.1ヵ月だったのに対し、スニチニブ群では27.7ヵ月と前者で有意に良好でした(HR:0.63、95%CI:0.53~0.75)。本結果はIMDC favorable risk、intermediate/poor risk患者別のサブグループ解析においても一貫していました。CheckMate-274の膀胱がんサブグループ解析(Abstract # 4585)CheckMate-274試験(NCT02632409)では、術後再発高リスクの筋層浸潤性尿路上皮がん(膀胱・腎盂・尿管)の術後無再発生存期間(DFS)がアジュバント・ニボルマブ治療によって改善することがすでに報告されています(Bajorin DF, et al. N Engl J Med. 2021)。今回は筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)に絞った解析結果が報告されました。全709例中560例がMIBCを有し、279例がニボルマブ、281例がプラセボによる治療を受けていました。12ヵ月時点でのDFSはニボルマブ群で66%、プラセボ群で45%と前者で有意に良好でした。本結果は、年齢・性別・ECOG PS・リンパ節転移の有無・PD-L1発現別のサブグループ解析でも一貫していました。Grade3~4の有害事象の発生率はニボルマブ群で17%、プラセボ群で6%でした。MIBCでも全体集団と同様あるいはより顕著なDFS延長効果が示されたことになりますが、逆に上部尿路腫瘍における結果が気になるところです。EV-301の24ヵ月フォローアップデータ(Abstract # 4516)EV-301試験(NCT03474107) では、化学療法・チェックポイント阻害薬治療後の切除不能尿路上皮がんのOSをエンフォルツマブ・ベドチン(EV)が改善することがすでに報告されています(Powles T, et al. N Engl J Med. 2021)。今回は24ヵ月の追跡フォローアップデータが公表されました。OSの中央値はEV群で12.91ヵ月、化学療法群で8.94ヵ月と前者が有意に良好でした(HR:0.704、 95%CI:0.581~0.852、1-sided p=0.00015)。EV群のCR率は6.9%、ORRは41.3%でした。治療関連有害事象発生率は全Gradeで93.9% vs.91.8%、重篤な治療関連有害事象発生率は 22.6% vs.23.4%、Grade3以上の治療関連有害事象発生率は両群とも約50%と有意な差を認めませんでした。初回報告とほぼ同様の結果が今回の追跡調査でも確認されたといえます。ATRANTISの最終解析結果(Abstract # LBA4505)ATRANTIS試験(ISRCTN25859465)はプラチナベースの1次化学療法4~8サイクル後に進行を来さなかった転移性尿路上皮がん(mUC)に対するスイッチメンテナンス・カボザンチニブの有効性を検証する無作為割り付け第II相試験で主要評価項目はPFSでした。30例がカボザンチニブ群(40mg/日)、31名がプラセボ群に割り付けられました。PFSはカボザンチニブ群で13.7週、プラセボ群で15.8週とOSともに有意差を認めませんでした。また、有害事象は疲労(56.7% vs.32.2%)、高血圧(43.3% vs.12.9%)、嘔気(30.0% vs.19.4%)、下痢(40.0% vs.6.5%)等が認められました。結論としてこのセッティングにおけるスイッチメンテナンス・カボザンチニブの有効性は証明されませんでした。おわりに総じて、本年のASCO Annual Meetingでは、泌尿器腫瘍領域に関してはすでに初回報告がなされている大規模臨床試験のフォローアップデータやpost-hoc解析の結果がほとんどであり、大きなブレークスルーは乏しかった印象があります。来年はどのような開催形式で、どのような発表がなされるのか楽しみに待ちたいと思います。

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閉経前乳がんへの2年の術後補助内分泌療法による20年間の有用性/JCO

 閉経前のエストロゲン受容体陽性乳がんにおいて、2年間の術後補助内分泌療法による20年間のベネフィットが示唆された。STO-5試験(Stockholm tamoxifen randomized trial)の2次解析結果について、スウェーデン・Karolinska InstitutetのAnnelie Johansson氏らがJournal of Clinical Oncology誌オンライン版2022年7月21日号に報告した。今回の解析では、長期にわたって一定の遠隔再発リスクを有する遺伝学的低リスク患者はタモキシフェンで長期にわたるベネフィットが得られ、早期のリスクを有する遺伝学的高リスク患者はゴセレリンからベネフィットが得られることも示された。なお、ゴセレリンとタモキシフェンの併用は、単剤療法を超える有用性は示されなかったという。 STO-5試験は、1990~97年に閉経前乳がん924例を2年間、ゴセレリン(4週間ごと3.6mg皮下投与)、タモキシフェン(1日1回40mg経口投与)、ゴセレリンとタモキシフェンの併用、補助内分泌療法なし(対照)に割り付けた無作為化比較試験で、今回は2次解析が実施された。無作為化割り付けはリンパ節転移の有無で層別化し、リンパ節転移陽性の459例は標準化学療法(シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシル)に割り付けた。2020年に、原発腫瘍の免疫組織化学的検査(731例)および遺伝子発現プロファイリング(586例)を実施した。また70遺伝子シグネチャーにより、遺伝学的低リスク患者と高リスク患者を同定した。カプランマイヤー解析、多変量Cox比例ハザード回帰、多変量時間変動柔軟パラメトリックモデリングにより、無遠隔再発期間(DRFI)を評価した。 主な結果は以下のとおり。・エストロゲン受容体陽性乳がん584例(年齢中央値47歳)において、ゴセレリン(HR:0.49、95%CI:0.32~0.75)、タモキシフェン(HR:0.57、95%CI:0.38~0.87)、およびその併用(HR:0.63、95%CI:0.42~0.94)は、対照と比較してDRFIを有意に改善した。・ゴセレリンとタモキシフェンの有意な相互作用がみられた(p=0.016)。・遺伝学的低リスク患者(305例)はタモキシフェンで有意なベネフィットが示され(HR:0.24、95%CI:0.10~0.60)、高リスク患者(158例)はゴセレリンのベネフィットが示された(HR:0.24、95%CI:0.10~0.54)。・遺伝学的高リスク患者において、ゴセレリンにタモキシフェンを追加することによるリスク増加がみられた(HR:3.36、95%CI:1.39〜8.07)。

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8種の中和抗体薬、BA.4/BA.5への有効性は?/東大医科学研究所

 新型コロナウイルスの研究を推進する東京大学医科学研究所の佐藤 佳氏らによる研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan(G2P-Japan)」は、新系統のBA.2.11、BA2.12.1、BA.4、BA.5を含むオミクロン株の各系統に対して、8種類の中和抗体薬の効果をin vitroで検証した。その結果、日本で未承認のbebtelovimabが、現在国内で主流となっているBA.5にも有効であることが確認された。本結果は、The Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2022年6月8日号のCORRESPONDENCEで報告。 研究対象となったのはFDA(米国食品医薬品局)で承認済み、および国内で一部承認済みの中和抗体薬で、カシリビマブ・イムデビマブ併用(商品名:ロナプリーブ、中外製薬)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ、GSK)、tixagevimab・cilgavimab併用(海外での商品名:Evusheld、AstraZeneca)、bebtelovimab(Lilly)、bamlanivimab・etesevimab併用(Lilly)となっている。 今回の試験では、オミクロン株の各系統のシュードウイルス(新型コロナウイルスのスパイクタンパク質を被り、レポーター遺伝子を保有する擬似ウイルス。複製能力、伝播能力を欠損しているため、人体に対する危険性はない)を作製し、対象の各中和抗体薬の単剤および併用について評価した。 主な結果は以下のとおり。・bebtelovimabは、BA.2、BA.2.11、BA2.12.1、BA.4、BA.5のすべてに対して、BA.1.1よりも高い有効性を示した。・カシリビマブ、イムデビマブ、tixagevimab、bamlanivimab、etesevimabの単剤使用、およびカシリビマブ・イムデビマブ併用、bamlanivimab・etesevimab併用では、BA.2以降のほぼすべての系統に対して効果が見られなかった(ただし、スパイクタンパク質にR493Qの変異を有するBA.2は、カシリビマブ、tixagevimab、カシリビマブ・イムデビマブ併用に感受性を示した)。・ソトロビマブは、BA.2に対する効果がBA.1.1の約23分の1、BA.4、BA.5に対する効果がBA.1.1の約13分の1となっていた。・cilgavimab単剤では、BA.2に対して有効だったが、BA.4、BA.5に対する効果はBA.2の約23分の1となっていた。・tixagevimab・cilgavimab併用では、BA.2に対して有効だったが、BA.4、BA.5に対する効果はBA.2の約18分の1となっていた。 現在国内で主流のBA.5や海外で拡大しているBA.4に対して、本研究で最も高い有効性を示したbebtelovimabは、2022年2月11日にFDAより緊急使用許可を受けており、対象は軽症から中等症IのCOVID-19に罹患した成人、および12歳以上で体重が40kg以上の小児のうち、重症化リスクの高い患者となっている。

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心筋ミオシン活性化薬、慢性HFrEF患者の運動耐容能を改善せず/JAMA

 左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者の治療において、選択的心筋ミオシン活性化薬omecamtiv mecarbilはプラセボと比較して、20週時の運動耐容能(最大酸素摂取量[peak V(・)O2])を改善しないことが、米国・マサチューセッツ総合病院のGregory D. Lewis氏らが実施したMETEORIC-HF試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2022年7月19日号に掲載された。北米と欧州の無作為化プラセボ対照第III相試験 METEORIC-HF試験は、慢性HFrEF患者におけるomecamtiv mecarbilによる運動耐容能の改善効果の検証を目的とする二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、2019年3月~2021年5月の期間に、北米37施設と欧州26施設の合計63施設で参加者の登録が行われた(AmgenとCytokineticsの助成を受けた)。 対象は、LVEF≦35%、NYHA心機能分類IIまたはIII、NT-proBNP値≧200pg/mL、V(・)O2は予測値の≦75%で、最大耐用量の標準的な薬物療法を受けており、病態が安定している患者であった。 被験者は、標準治療に加え、omecamtiv mecarbil(薬剤の血漿濃度の目標値に基づき、25mg、37.5mg、50mgのいずれかを、1日2回、経口投与)またはプラセボを20週投与する群に、2対1の割合で無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、ベースラインから20週までの運動耐容能(peak V(・)O2)の変化とされた。副次エンドポイントは、運動負荷試験中の総運動量、換気効率(V(・)E/V(・)CO2 slope)、平均1日身体活動量(アクチグラフィ)のベースラインから20週までの変化であった。主な有害事象は、めまい、疲労 276例(年齢中央値64歳[IQR:56~72]、女性42例[15%])が登録され、omecamtiv mecarbil群に185例、プラセボ群に91例が割り付けられた。 全体のLVEF中央値は28%(IQR:21~33)で、NYHA心機能分類IIが78.6%を占め、カンザスシティ心筋症質問票総合症状スコア(KCCQ-TSS)中央値は85.4点(IQR:67.2~95.8)であった。また、ベースラインのpeak V(・)O2中央値は、omecamtiv mecarbil群が14.2mL/kg/分(IQR 11.6~17.4)、プラセボ群は15.0mL/kg/分(IQR 12.0~17.2)だった。 ベースラインから20週までのpeak V(・)O2の平均変化量の最小二乗平均(LSM)は、omecamtiv mecarbil群が-0.24mL/kg/分、プラセボ群は0.21mL/kg/分と、むしろプラセボ群で良好な傾向で、両群間に有意な差は認められなかった(最小二乗平均の群間差:-0.45mL/kg/分、95%信頼区間[CI]:-1.02~0.13、p=0.13)。 副次エンドポイントのベースラインから20週までの平均変化量のLSMの群間差は、総運動量が-5.4W(95%CI:-10.1~-0.7)、換気効率が0.41(95%CI:-0.8~1.6)、平均1日身体活動量は0.3(95%CI:-0.6~1.1)であった。なお、主要エンドポイントの検定で帰無仮説が棄却されなかったため、階層的検定の規定により、これらの副次エンドポイントの正式な統計検定は示されなかった。 重篤な有害事象は、omecamtiv mecarbil群16.2%、プラセボ群14.3%で発現し、死亡は各群で1.6%および1.1%認められた。主な有害事象として、めまい(omecamtiv mecarbil群4.9%、プラセボ群5.5%)、疲労(4.9%、4.4%)、心不全イベント(4.9%、4.4%)、脳卒中(0.5%、1.1%)、心筋梗塞(0%、1.1%)がみられた。 著者は、omecamtiv mecarbilが運動耐容能を改善しなかった理由として、「病態が安定し、薬物療法と機器を用いたHFrEF治療の双方で質の高い治療を受けているHFrEF患者では、運動耐容能を制限する原因が、心機能だけとは限らないこと」などの諸点を挙げている。

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早期乳がんへの術前抗HER2療法+アテゾリズマブ、pCR61%(Neo-PATH)/JAMA Oncol

 ERBB2(HER2)陽性早期乳がんに対して、抗HER2療法にアテゾリズマブを加えた術前療法は病理学的完全奏効率(pCR)61%を示し、毒性は穏やかであることが示された。韓国・Gachon University Gil Medical CenterのHee Kyung Ahn氏らによる第II相Neo-PATH試験の結果が、JAMA Oncology誌オンライン版2021年10月7日号に報告された。 Neo-PATH試験は、前臨床試験で相乗効果が示されたERBB2陽性早期乳がんに対するアテゾリズマブ、ドセタキセル、トラスツズマブ、ペルツズマブの術前療法の有効性を検討する非無作為化オープンラベル多施設共同第II相試験。韓国の6施設から2019年5月~2020年5月にかけて患者が登録された。対象は、Stage IIまたはIIIのERBB2陽性乳がん(原発巣サイズ2cm以上または病理学的リンパ節転移陽性、遠隔転移なし)。 3週間ごとに術前療法としてペルツズマブ(初回840mg、2回目以降420mg)、アテゾリズマブ(1,200mg)、ドセタキセル(75mg/m2)、トラスツズマブ(600mg)を6サイクル投与し、その後手術が行われた。pCRが得られた症例には、術後3週間ごとにアテゾリズマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブの投与を12サイクル実施し、pCRが得られない症例には、アテゾリズマブ(1,200mg)、トラスツズマブ・エムタンシン(3.6mg/kg)を3週間ごとに14サイクル投与した。 主要評価項目はpCR率(ypT0/isN0)。副次評価項目は、臨床的客観的奏効率、pCR達成状況に応じた3年無イベント生存率、無病生存率、全生存率、毒性、QOLであった。 主な結果は以下のとおり。・計67例の女性(年齢中央値52[33~74]歳)が登録された。ホルモン受容体陽性は32例(48%)であった。・治療中に病勢が進行し、切除不能となった症例が2例あり、65例に根治手術が行われた。・全体のpCR率は61%(67例中41例)であった。・pCR率は、ホルモン受容体陽性例と比べ陰性例で高く(32例中14例[44%]vs.35例中27例[77%])、PD-L1陰性例と比べ陽性例で高かった(13例中13例[100%]vs.53例中28例[53%])。・Grade 3以上の有害事象は21例(31%)で発生し、多くみられたのは好中球減少症8例(12%)と発熱性好中球減少症5例(8%)であった。術前療法期における治療関連死は発生していない。 著者らは、ERBB2(HER2)陽性早期乳がんに対する、抗HER2療法にアテゾリズマブを加えた術前療法は許容可能なpCR率と穏やかな毒性作用を有していることが示されたとし、大規模な無作為化試験で引き続き検証する必要があるとまとめている。

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