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irAE心筋炎の原因の一つに新たな知見が!!【見落とさない!がんの心毒性】第29回

免疫チェックポイント阻害薬(以下、ICI)の適応がますます広がっているが、同薬剤による免疫関連有害事象(以下irAE)による心筋炎の発症は臨床上の大きな問題となっている。これまで、irAE心筋炎の発症リスク・重症化リスクとして明らかなものはICI同士の併用療法だけであり、そのほかに女性のほうが男性より発症率が高いことも報告されている1)。ICI併用では単剤と比較して2〜6倍、女性は男性に比べて2〜3倍、心筋炎の発症率が高いとされてきた1)。致死的な合併症であるirAE心筋炎のリスクを把握することは安全ながん治療の実施のために極めて重要であるが、最近、irAE心筋炎の発症機序に関する新しい知見が発表された。2023年10月26日のNature Medicine誌オンライン版に胸腺異常がirAE心筋炎の発症に強く関与していることを明らかにした研究成果が掲載された2)ため、以下に紹介する。Thymus alterations and susceptibility to immune checkpoint inhibitor myocarditis.この論文はパリのソルボンヌ大学を中心としたグループからの発表である。グローバル副作用報告データベース(VigiBase)や臨床試験データなど、複数のデータベースを用いて、胸腺上皮性腫瘍(以下、TET)とほかのがん腫を比較したところ、TETの心筋炎や筋炎発症のオッズ比またはリスク比が15〜38倍であったことを明らかにした。VisiBaseの解析ではほかのがん腫では心筋炎の発症率が1%であったのに対して、TETでは16%と驚異的な発症率であったことも明らかにされた。また、VigiBaseデータより、TETに関連して有意に増加するirAEは重症筋無力症様症候群、筋炎、心筋炎、肝炎であり、ほかのirAEは有意な増加を認めなかった(ただし、肝炎の診断根拠はトランスアミナーゼの上昇のみであり、その背景には肝臓の炎症ではなくむしろ筋炎などがあったことが推察される)。また、ICI心筋炎の国際的レジストリデータから、TETに関連する心筋炎は発症がより早期で、筋炎や重症筋無力症様症候群の合併が多く、致死率も高いことが明らかにされた。さらに興味深いことに、非TET患者でも、ICI心筋炎を発症した患者ではCT画像上の胸腺の形態や大きさが心筋炎を来さなかった患者に比べて有意に異なっており、非TET患者のICI心筋炎の発症にも胸腺異常が関わっていることが示唆された。また、ICI心筋炎患者はICI心筋炎を発症しなかった患者と比べて抗アセチルコリンレセプター(AChR)抗体の陽性率が4〜9倍高く(16〜36% vs. 4%)、抗AChR抗体の存在は心筋炎の発症の独立した危険因子であり、致死性心イベントの増加とも関連していた。胸腺はT細胞が分化成熟するために必須の器官であり、自己抗原を強く認識するT細胞受容体を発現するT細胞を排除する(負の選択)ことにより、自己免疫寛容の成立に寄与する。しかし、一部のT細胞は負の選択をすり抜けて末梢に出現し、心臓に関しては、心筋αミオシンに反応するT細胞が健常人においても末梢に存在しているが3)、主にPD-1/PD-L1経路による末梢性自己免疫寛容が機能しており、自己免疫性心筋炎は滅多に生じることはない。ICI投与によりこの経路がブロックされることにより心筋炎が惹起されると考えられており4)、実際にICI心筋炎動物モデルやICI心筋症患者の末梢血中に心筋ミオシン反応性T細胞が存在することが最近明らかになってきている5,6)。今回の論文から胸腺異常が心筋炎の発症と密接に関わっていることが示されたことにより、ICI心筋炎の発症に胸腺で受けるべきT細胞の正常な分化成熟の阻害が関与していることが示唆され、胸腺をすり抜けたαミオシン反応性T細胞のような心筋反応性T細胞が心筋炎の発症に寄与していることが示唆される。この論文が持つ臨床的意義はとても大きい。抗AChR抗体の存在が有力な発症予測マーカーである可能性があり、そもそも胸腺腫の既往がある人やTETに対するICIの使用はハイリスクであることが明らかになった。また、これまで加齢に伴って生じる胸腺の生物学的および形態学的な変化や成人の免疫系における胸腺の役割に関して、あまり注目がされてこなかった。しかし、この論文においてCTによる胸腺の形態学的特徴がICI心筋炎の予測マーカーとなる可能性が示されたことは、今後がん免疫療法がますます発展していく中で、大きな発見であると考える。1)Yousif LI, et al. Curr Oncol Rep. 2023;25:753–763.2)Fenioux C, et al. Nat Med. 2023;29:3100–3110.3)Lv H, et al. J Clin Invest. 2011;121:1561–1573.4)Tajiri K, et al. Jpn J Clin Oncol. 2018;48:7–12. 5)Won T, et al. Cell Rep. 2022;41:111611.6)Axelrod ML, et al. Nature. 2022;611:818–826.講師紹介

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転移膵がん1次療法、ゲムシタビン+nab-パクリタキセル追加データ(JCOG1611、GENERATE)/日本臨床腫瘍学会

 膵がん1次治療の最適レジメンを検討する国内第II/III相JCOG1611試験1)。2023年10月に欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で中間解析結果が発表されたが、2024年2月22~24日に開催された第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)では、本試験の追加データについてがん研有明病院 肝胆膵内科の尾阪 将人氏が発表した。<JCOG1611試験の概要>・対象:切除不能転移膵がん、PS0~1・試験群:【GnP群】nab-パクリタキセル+ゲムシタビン【mFOLFIRINOX群】オキサリプラチン、イリノテカン、l-ロイコボリン、フルオロウラシル【S-IROX群】オキサリプラチン、イリノテカン、S-1 ・評価項目:[主要評価項目]全生存期間(OS)[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性 すでに発表されている発表されている結果は下記のとおり。・国内45施設から527例がGnP群(176例)、mFOLFIRINOX群(175例)、S-IROX群(176例)に1対1対1で割り付けられた。・OS中央値はGnP群17.1ヵ月、mFOLFIRINOX群14.0ヵ月(ハザード比[HR]:1.31、95%信頼区間[CI]:0.97~1.77)、S-IROX群13.6ヵ月(HR:1.35、95%CI:1.00~1.82)だった。・PFS中央値はGnP群6.7ヵ月、mFOLFIRINOX群5.8ヵ月(HR:1.15、95%CI:0.91~1.45)、S-IROX群6.7ヵ月(HR:1.07、95%CI:0.84~1.35)だった。 mFOLFIRINOX群、S-IROX群がGnP群を上回る可能性が1%未満となったため、本試験は中止となっている。 今回発表された追加データは下記のとおり。・病状進行し、2次治療に進んだのはGnP群で59.7%、mFOLFIRINOX群で63.4%、S-IROX 群で62.5%、2次治療のほぼすべてが化学療法だった。・増悪後生存期間(Postprogression survival)中央値は、GnP群で7.0ヵ月、mFOLFIRINOX群で5.5ヵ月、S-IROX群で5.6ヵ月だった。・プラチナ製剤が奏効しやすいとされるBRCA1/2遺伝子変異陽性例を層別化したデータが発表された。BRCA陽性はGnP群で9例、mFOLFIRINOX群で7例、S-IROX群で7例だった。陽性例のOSは3群すべてで全体集団よりも長く、GnP群25.9ヵ月、mFOLFIRINOX群18.6ヵ月、S-IROX群33.2ヵ月だった。 発表後のディスカッションのテーマは、同じく転移膵がん1次治療として、GnPとNALIRIFOX(ナノリポソーム型イリノテカン、5FU、ロイコボリン、オキサリプラチン)を比較し、NALIRIFOXが有意なOSの改善を示す結果となったNAPOLI‐3試験2)と本試験の結果をどう解釈するのかが中心となった。 尾阪氏は「JCOG1611はもともとGnPに対するmFOLFIRINOXとS-IROXの優越性を検証するためにデザインされた試験であり、GnPが有意差をもってmFOLFIRINOX群を上回る今回の結果にはわれわれも驚いている。NALIRIFOXレジメンは今後日本でも承認が見込まれているが、GnPとNALIRIFOXを比較した日本人のデータはまだなく、どちらを優先して使うかは今後の重要な臨床課題となるだろう」とした。

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複雑性尿路感染症、CFPM/taniborbactam配合剤が有効/NEJM

 急性腎盂腎炎を含む複雑性尿路感染症(UTI)の治療において、セフェピム/taniborbactamはメロペネムに対する優越性が認められ、安全性プロファイルはメロペネムと同様であることが、ドイツ・ユストゥス・リービッヒ大学ギーセンのFlorian M. Wagenlehner氏らが15ヵ国68施設で実施した無作為化二重盲検第III相試験「Cefepime Rescue with Taniborbactam in Complicated UTI:CERTAIN-1試験」の結果、明らかとなった。カルバペネム耐性腸内細菌目細菌や多剤耐性緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、世界的な健康上への脅威となっている。セフェピム/taniborbactam(CFPM/enmetazobactam)は、β-ラクタムおよびβ-ラクタマーゼ阻害薬の配合剤で、セリンβ-ラクタマーゼおよびメタロβ-ラクタマーゼを発現する腸内細菌目細菌、および緑膿菌に対して活性を発揮することが示されていた。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。セフェピム/taniborbactamの有効性と安全性をメロペネムと比較 研究グループは、複雑性UTIまたは急性腎盂腎炎と診断された18歳以上の入院患者を、セフェピム/taniborbactam(2.5g:セフェピム2g、taniborbactam0.5g)群またはメロペネム(1g)群に、2対1の割合に無作為に割り付け、8時間ごとに7日間静脈内投与した。菌血症を有する患者には、投与期間を最大14日間まで延長可とした。 主要アウトカムは、微生物学的ITT(microITT)集団(両治験薬が有効である、特定のグラム陰性菌を有する患者)における投与(試験)開始後19~23日目の微生物学的成功および臨床的成功の複合であった。複合成功率の群間差の95%信頼区間(CI)の下限値-15%を非劣性マージンとし、非劣性が認められた場合に優越性を評価することが事前に規定された。有効性はメロペネムより優れ、安全性は類似 2019年8月~2021年12月に661例が無作為化され、このうち436例(66.0%)がmicroITT集団であった。microITT集団の平均年齢は56.2歳で、65歳以上が38.1%、複雑性UTI 57.8%、急性腎盂腎炎42.2%、ベースラインで菌血症を有した患者13.1%であった。 複合成功は、セフェピム/taniborbactam群で293例中207例(70.6%)、メロペネム群で143例中83例(58.0%)に認められた。複合成功率の群間差は12.6ポイント(95%CI:3.1~22.2、p=0.009)であり、セフェピム/taniborbactamのメロペネムに対する優越性が示された。 複合成功の差異は、後期追跡調査(試験開始後28~35日目)においても持続しており、セフェピム/taniborbactam群のほうが複合成功率および臨床的成功率が高かった。 安全性解析対象集団(657例)において、有害事象はセフェピム/taniborbactam群で35.5%、メロペネム群で29.0%に認められ、主な事象は頭痛、下痢、便秘、高血圧、悪心であった。重篤な有害事象の発現率は両群で同程度であった(それぞれ2.0%、1.8%)。

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乳がん周術期ICI治療、最新情報を総括/日本臨床腫瘍学会

 近年、いくつかのがん種で免疫チェックポイント阻害薬(ICI)を使用した周術期治療が開発されている。乳がん領域では2022年9月、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対するペムブロリズマブの術前・術後治療が承認されており、他のICIを用いた試験も実施されている。さらにHR+/HER2-乳がんに対する試験も進行中である。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で企画されたシンポジウム「ICIで変わる、周術期治療」で、乳がんの周術期ICI治療の試験成績や進行中の試験などの最新情報を、がん研究会有明病院の尾崎 由記範氏が紹介した。乳がん周術期ICI治療で現在承認されているのはペムブロリズマブのみ 近年、切除可能TNBCに対する治療は、術前化学療法を実施し、術後に病理学的に残存病変がある場合はカペシタビンとオラパリブ(BRCA変異がある場合)を投与することが標準治療となっている。そのような中、2022年9月、術前化学療法にペムブロリズマブを上乗せし術後にペムブロリズマブを投与する治療が、国際共同第III相KEYNOTE-522試験の結果を基に承認され、現在の標準治療となっている。KEYNOTE-522試験では、病理学的完全奏効(pCR)率、無イベント生存期間(EFS)が有意に改善し、Stage、PD-L1発現、pCR/non-pCRにかかわらず有効であったことが示されている。一方、non-pCR症例では予後不良であったことから、新たな治療戦略が検討されている(後述)。 KEYNOTE-522試験については、ペムブロリズマブ群における5年EFS割合の改善が9%であることと、Grade3以上の免疫関連有害事象(irAE)発現割合(術前薬物療法期)が13.0%ということが釣り合うのか、という議論がしばしば行われるが、尾崎氏は、TNBCの再発後の予後が約2年ということを考慮すると釣り合う、との理解だ。本試験では、ペムブロリズマブ群で薬物療法中止例が1割程度増えるが、手術実施割合の低下は1%未満である。これはirAEをしっかり管理することでほとんどの症例で手術可能であることを示しており、リスクベネフィットバランスを議論するうえで非常に重要なデータと考える、と尾崎氏は述べた。pCR症例の術後ペムブロリズマブは省略可能か?non-pCR症例の術後治療は? KEYNOTE-522試験では、術前化学療法+ペムブロリズマブでpCRが得られた症例は予後良好であることから、術後のペムブロリズマブは省略可能ではないかと考える医師が多い。この疑問を解決するために、現在、pCR症例にペムブロリズマブの投与と経過観察を比較するOptimICE-pCR試験が進行中である。 一方、non-pCR症例に対しては、ペムブロリズマブ単独で十分であると考える医師は少なく、従来使用されてきたカペシタビンやオラパリブ(BRCA変異がある場合)を逐次投与するという施設も増えているという。さらに、より有効な術後治療が検討されており、sacituzumab govitecan+ペムブロリズマブの効果を検討するASCENT-05/OptimICE-RD試験、datopotamab deruxtecan+デュルバルマブの効果を検討するTROPION-Breast03試験が進行中である。 また、ペムブロリズマブによる術前・術後治療後に再発した症例に対しては、西日本がん研究機構(WJOG)においてペムブロリズマブ+パクリタキセル+ベバシズマブの効果を検討するPRELUDE試験が計画中という。予後不良症例に対する新規治療戦略や、他のICIを用いた開発が進行中 TNBCの周術期ICI治療に現在承認されているのはペムブロリズマブのみだが、他の薬剤の試験も実施されている。 アテゾリズマブについては、術前・術後に投与したIMpassion031試験において、pCRの改善は認められたが、EFSは改善傾向がみられたものの統計学的に有意な改善が認められなかった。しかしながら、対照群がKEYNOTE-522試験と同様のGeparDouze/NSABP-B59試験が進行中であり、結果が注目される。 術前・術後の両方ではなく、どちらかのみICIを投与するレジメンも検討されている。術前のみの投与については、アテゾリズマブを用いたneoTRIP試験はnegativeだったが、デュルバルマブを用いたGeparNeuvo試験(第II相試験)において、pCRでは差がなかったもののEFSの改善が認められている。術後のみの投与については、アテゾリズマブを用いたAlexandra/IMpassion030試験ではEFSの改善が認められておらず、ペムブロリズマブを用いたSWOG1418/BR006試験は現在進行中である。尾崎氏は、これまでの成績からは術前・術後とも投与することが重要ではないかと考察している。HR+/HER2-乳がんに対する周術期ICI治療の開発 TNBCだけではなく、現在、他のサブタイプに対しても周術期ICI治療の開発試験が行われている。高リスクのHR+/HER2-乳がんに対して術前化学療法および術後内分泌療法へのICIの上乗せ効果を検討する試験として、ペムブロリズマブのKEYNOTE-756試験とニボルマブのCheckMate 7FL試験が進行中だが、どちらも有意なpCR率の改善が示されており、EFSの結果が期待される。 尾崎氏は、これらの開発状況を踏まえ、「乳がん領域においても、今後さらに周術期ICI治療が増えてくる」と期待を示し、講演を終えた。

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高齢統合失調症患者の死亡率、その原因と他の精神疾患との比較

 統合失調症でみられる超過死亡は、その後の生活においても影響を及ぼす可能性がある。高齢統合失調症患者でみられる死亡率増加の具体的な原因、および向精神薬の潜在的な影響については、これまで十分にわかっていない。フランス・Corentin-Celton HospitalのNicolas Hoertel氏らは、高齢統合失調症患者の5年死亡率とその原因を調査し、双極性障害やうつ病との比較を行った。European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience誌オンライン版2024年1月31日号の報告。 高齢者の統合失調症、双極性障害、うつ病の入院および外来患者564例(平均年齢:67.9±7.2歳)を対象に、5年間のプロスペクティブコホート研究を実施した。1次分析では、社会人口学的要因、罹病期間と重症度、精神疾患と非精神疾患の併存などの交絡因子の影響を軽減するため、逆確率重み付け(IPW)多変量ロジスティックモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・死亡原因は、心血管疾患(CVD)、感染症などのCVD以外の疾患関連死、自殺、不慮の事故であった。・5年死亡率は、高齢統合失調症患者で29.4%(89例)、双極性障害またはうつ病の高齢者で18.4%(45例)であった。・調整後、統合失調症患者は、双極性障害またはうつ病患者と比較し、すべての原因による死亡率およびCVDによる死亡率の増加と有意な関連が認められた。【すべての原因による死亡】調整オッズ比(aOR):1.35(95%信頼区間[CI]:1.04~1.76)、p=0.024【CVDによる死亡】aOR:1.50(95%CI:1.13~1.99)、p=0.005・これらの関連性は、抗うつ薬を服用している患者において有意な減少が認められた。【抗うつ薬服用患者のすべての原因による死亡】相互作用オッズ比(IOR):0.42(95%CI:0.22~0.79)、p=0.008【抗うつ薬服用患者のCVDによる死亡】IOR:0.39(95%CI:0.16~0.94)、p=0.035 著者らは「高齢統合失調症患者は双極性障害またはうつ病患者と比較し、死亡率が高く、超過死亡の多くはCVDに関連していることが示唆された」とし、本分析において「抗うつ薬の使用は、すべての原因による死亡やCVDによる死亡の有意な減少と関連していたが、他の向精神薬では超過死亡に対し影響を及ぼさない」ことを報告した。

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「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第252回

「スーパーマリオ オデッセイ」でうつ病が劇的に改善Unsplashより使用大うつ病性障害に対する6週間のビデオゲーム介入が、抑うつ気分、訓練意欲、視覚空間(ワーキング)記憶機能の改善につながるかどうかを検討することを目的とした研究を紹介しましょう。選ばれたゲームは、任天堂の「スーパーマリオ オデッセイ」です。いやー、名作ですよね。あのゲームは本当に、色褪せない。RTA(リアルタイムアタック)の動画をよく見ています。まあそんな個人的な話はどうでもよくてですね、このマリオ オデッセイが、うつ病に有効というエビデンスが示されました。Bergmann M, et al. Effects of a video game intervention on symptoms, training motivation, and visuo-spatial memory in depression. Front Psychiatry. 2023 Aug 24;14:1173652.ドイツのボン大学の精神科において、大うつ病性障害(MDD)と診断された18~65歳の入院・通院患者46人を対象に行われた研究です。MDD患者さんを、マリオ オデッセイをプレイする「ビデオゲーム」群(n=14)、コンピュータプログラム「CogPack」を用いて訓練を行う能動的対照群(n=16)、心理療法や薬物療法を含む標準的な臨床治療を受ける通常治療群(n=16)の3群のいずれかにランダムに割り付けました。ちなみに、事前にマリオ オデッセイをプレイしたことがある患者さんは除外されています。いずれのグループも、トレーニングセッションの頻度は週3回、期間は6週間の合計18回で、各セッションは1回45分間でした。45分プレイして、マリオ オデッセイを途中で切られると、それはそれでイラっとしそうですが…。BDI-IIベック抑うつ質問票(BDI-II)で評価すると、マリオ オデッセイをプレイしたMDD患者さんの症状が劇的に改善することが示されました。BDI-IIスコアが「軽度」に該当する患者の割合をみたグラフですが、マリオ オデッセイをプレイした群では、3群の中で唯一統計学的に有意差がついています(図)。図. 各群の抑うつ改善効果(文献より引用)ただし、視空間記憶をテストするBVMT-Rなど、いくつかの試験ではCogPackのほうがよかったりして、一貫してマリオ オデッセイがよいという結論ではありませんでした。どれか1つがよいというよりも、おそらく組み合わせたほうがよいのではないかと考えられます。ゲームって結構バカにされがちですが、これだけの有効性が示されるとなると、そのうちガイドラインにも記載されるんじゃないでしょうか。「ゼルダの伝説」をやっている医師は多いですが、ああいうRPGモノもたぶん有効なんじゃないかと思います。

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週3個以上の卵が脂肪性肝疾患と高血圧を予防?

 卵の摂取が脂肪性肝疾患(steatotic liver disease)と高血圧症に対する保護的な効果を示し、週3個以上の摂取でそれらの発症リスクがより低くなることを、イタリア・Saverio de BellisのRossella Tatoli氏らが明らかにした。Nutrients誌2024年1月31日号掲載の報告。 卵にはミネラルやビタミンなどの豊富な栄養素が含まれているが、コレステロール含有量も卵黄1個当たり180~225mgと多いため、しばしば生活習慣病の“悪者”扱いされることがある。しかし、これまで卵の摂取と疾患、とくに脂肪性肝疾患のリスクとの関連を調査した研究は乏しく、さらにその結果には一貫性がない。そこで、研究グループは、脂肪性肝疾患や高血圧症の発症リスクに対する卵摂取の影響を調査した。 研究グループは、南イタリアの胆石症に関する多施設コホート研究であるMICOLプロジェクト(2017年開始)から60歳以上の908人を抽出して解析した。脂肪性肝疾患と高血圧症の有無によって、(1)脂肪性肝疾患なし/高血圧症なし、(2)脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり、(3)脂肪性肝疾患あり/高血圧症なし、(4)脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありの4つのグループに分類し、卵の摂取量との関連を調査した。 主な結果は以下のとおり。●脂肪性肝疾患なし/高血圧なしは236例(平均年齢61.3歳、男性49.2%)、脂肪性肝疾患なし/高血圧症ありは176例(70.5歳、50.0%)、脂肪性肝疾患あり/高血圧症なしは209例(61.7歳、60.3%)、脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありは287例(69.2歳、57.1%)であった。●1日当たりおよび1週間当たりの卵摂取量は、脂肪性肝疾患なし/高血圧なしのグループで最も多かった。●1週間当たり3個以上の卵の摂取は、脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり、脂肪性肝疾患あり/高血圧症ありとなるリスクを有意に低減させた。リスク比(95%信頼区間)とp値は以下のとおり。・脂肪性肝疾患なし/高血圧症あり:0.21(0.07~0.62)、0.005・脂肪性肝疾患あり/高血圧症なし:0.73(0.36~1.47)、0.38・脂肪性肝疾患あり/高血圧症あり:0.34(0.15~0.73)、0.006●この関連は、年齢、性別、1日の摂取カロリーで調整した後も同様であった。

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高齢になると糖尿病有病率が高くなる理由/順天堂大学

 加齢に伴うインスリン感受性と分泌の低下により、高齢者では糖尿病の有病率が高いことが知られている。一方で、インスリン感受性と分泌の両方が65歳以降も低下し続けるかどうかは、まだ解明されていなかった。この疑問について、順天堂大学大学院医学研究科代謝内分泌内科学の内藤 仁嗣氏らの研究グループは、65歳以降の糖代謝に対する加齢の影響を調査し、その決定因子を明らかにする研究を行った。その結果、高齢者では加齢に伴い、インスリン抵抗性が増加、膵β細胞機能が低下していることが明らかになった。Journal of the Endocrine Society誌オンライン版2023年12月20日号に掲載。内臓脂肪の蓄積などが関連する高齢者の糖尿病発症 本研究では、文京区在住高齢者のコホート研究“Bunkyo Health Study”に参加した65~84歳の糖尿病既往がなく、糖尿病の診断に用いられる検査である75g経口糖負荷検査(OGTT)のデータが揃っている1,438例を対象とした。 対象者全員に二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)による体組成検査、MRIによる内臓・皮下脂肪面積の測定、採血・採尿検査、75gOGTT、生活習慣に関連する各種アンケートを行い、5歳ごとに4群(65~69歳、70~74歳、75~79歳、80~84歳)に分け、各種パラメータを比較した。 主な結果は以下のとおり。・平均年齢は73.0±5.4歳、BMIは22.7±3.0kg/m2だった。・新たに糖尿病と診断された人の有病率は年齢とともに増加した。・食後初期のインスリン分泌を示す指標であるInsulinogenic indexや、血糖値に対するインスリン分泌指標である75gOGTT中のインスリン曲線下面積/血糖曲線下面積(AUC)は、各年齢群間で同等だった。・インスリン感受性の指標(Matsuda index)、膵β細胞機能の指標(Disposition index)は加齢とともに有意に低くなった。・加齢に伴う脂肪蓄積、とくに内臓脂肪面積(VFA)の増加、遊離脂肪酸(FFA)濃度の上昇が観察された。・重回帰解析により、Matsuda indexおよびDisposition indexとVFAおよびFFAとの強い相関が明らかになった。 研究グループでは、この結果から「高齢者において耐糖能が加齢とともに低下するのは、加齢によるインスリン抵抗性の増加および膵β細胞の機能低下によるもので、それらは内臓脂肪蓄積やFFA値上昇と関連する」としている。

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転移を有する腎細胞がん、ctDNAと予後の関連が日本人大規模データで示される(MONSTAR SCREEN)/日本臨床腫瘍学会

 転移を有する腎細胞がん(mRCC)における血中循環腫瘍DNA(ctDNA)の臨床的有用性が指摘されているが、大規模なデータは不足している。産学連携全国がんゲノムスクリーニングコンソーシアム(SCRUM-Japan)によるMONSTAR-SCREEN1の泌尿器がんグループから、大阪大学の加藤 大悟氏がmRCCにおけるctDNA解析結果を第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。 2019年4月~2021年9月、mRCC患者124例を対象に治療前後のctDNA解析(商品名:FoundationOne Liquid CDx)を実施した。34例については組織検体を用いたゲノムプロファイリング(商品名:FoundationOne CDx)も実施された。 主な結果は以下のとおり。・患者特性は年齢中央値が66(21~83)歳、男性が76.0%、淡明細胞型が91.0%、IMDCリスク分類はIntermediateが61.2%、Poorが21.5%であった。・1次治療の症例が74.4%を占め、うち92.7%が免疫チェックポイント阻害薬併用療法を受けていた。・組織検体と血漿検体の検査結果の一致率は16.8%で、18%という過去の報告1)と同様であった。・治療前ctDNAにおけるtumor fraction(TF)中央値は1.15%(四分位範囲:0.62~2.85)であり、治療前TF>1.2%の症例と比較し治療前TF<1.2%の症例で有意に予後が良好であった(全生存期間中央値:28.3ヵ月vs.NR、p=0.0143)。・84.5%で何らかの病的変異が検出され、1症例当たりの変異数中央値は3であった。・治療前ctDNAにおけるBAP1(p=0.0003)およびTP53(p=0.025)の変異は予後不良と有意に関連していた。・治療前後のctDNAの一致率は54.6%で、TP53、VHLなどで治療後に新たに変異が発現あるいは発現頻度が増加した。・病勢進行までの期間について、新規遺伝子変異が認められた症例ではそれ以外の症例と比較して有意に短く(中央値:14.1週vs.44.8週、p=0.046)、新規遺伝子変異数が多いほど短かった(p=0.032)。・治療後の新規遺伝子変異のうち7つについては、FDA承認済の薬剤の対象となりうることが明らかとなった。 加藤氏は、「本データはアジア人mRCC患者における最初の大規模なctDNAを用いた遺伝子プロファイリングデータであり、臨床予後との関連が示された。今後はリファレンスデータとして活用されることが期待され、現在はアジア人とヨーロッパ人の間のctDNAにおける特徴の違いの評価にも取り組んでいる」とした。

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再発性多発性硬化症、抗CD40L抗体frexalimabが有望/NEJM

 再発性多発性硬化症患者において、抗CD40Lヒト化モノクローナル抗体のfrexalimabはプラセボと比較し、12週時におけるT1強調MRIでの新規ガドリニウム(Gd)増強病変数を減少させたことが示された。フランス・リール大学のPatrick Vermersch氏らが、10ヵ国38施設で実施した第II相臨床試験の結果を報告した。CD40-CD40L共刺激経路は、適応免疫応答と自然免疫応答を制御し多発性硬化症の病態に関与する。frexalimabは第2世代の抗CD40Lモノクローナル抗体で、抗原提示細胞表面に発現しているCD40へのCD40Lの結合を阻害することによりCD40-CD40Lシグナル伝達経路を阻害し、T細胞を介した免疫応答を抑制する。著者は、「多発性硬化症患者におけるfrexalimabの長期的な有効性と安全性を明らかにするため、より大規模で長期間の試験が必要である」とまとめている。NEJM誌2024年2月15日号掲載の報告。frexalimab 1,200mg静脈内投与と300mg皮下投与を、プラセボと比較 研究グループは再発性多発性硬化症患者を、frexalimab 1,200mgを4週間隔で静脈内投与する群(負荷用量1,800mg)、frexalimab 300mgを2週間隔で皮下投与する群(負荷用量600mg)、またはそれぞれのプラセボを投与する群に4対4対1対1で割り付け、二重盲検下で12週間投与した。投与経路は盲検化されなかった。12週後、全例が非盲検下でfrexalimabを投与した(プラセボ群の患者はそれぞれ対応するfrexalimabに切り替えた)。 主要エンドポイントは、8週時と比較した12週時におけるT1強調MRIでの新規Gd増強病変数。副次エンドポイントは、8週時と比較した12週時における新規または拡大したT2強調病変数、12週時のGd増強病変総数、および安全性であった。8週時と比較した12週時の新規Gd増強病変数はfrexalimab群で減少 2021年6月7日~2022年9月21日の間に、166例がスクリーニングを受け、129例が無作為に割り付けられ、うち125例(97%)が12週間の二重盲検期間を終了した。患者背景は、平均年齢36.6歳、66%が女性、30%がベースラインでGd増強病変を有していた。 12週時における新規Gd増強病変数の補正後平均値は、プラセボ群1.4(95%信頼区間[CI]:0.6~3.0)に対し、frexalimab 1,200mg静脈内投与群0.2(95%CI:0.1~0.4)、frexalimab 300mg皮下投与群0.3(95%CI:0.1~0.6)であり、プラセボ群に対する率比は1,200mg静脈内投与群0.11(95%CI:0.03~0.38)、300mg皮下投与群0.21(95%CI:0.08~0.56)であった。副次エンドポイントの結果は、主要エンドポイントの結果とおおむね同じであった。 12週間の二重盲検期間における有害事象の発現率は、frexalimab 1,200mg静脈内投与群29%(15/52例)、frexalimab 300mg皮下投与群45%(23/51例)、プラセボ群31%(8/26例)で、最も多くみられた有害事象(いずれかの群で発現率5%以上)は新型コロナウイルス感染症および頭痛であった。

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息子は選べんが……【Dr. 中島の 新・徒然草】(518)

五百十八の段 息子は選べんが……納税の季節になりました。毎年ながら、私は確定申告の書類と格闘しています。読者の皆さまはいかがでしょうか?さて、近ごろ私が熱中して読んでいるのが、漫画の『インベスターZ』。マジンガーZやフェアレディZみたいな名前ですね。実は「インベスターZ」のZには由来があります。中学に入学した主人公の財前 孝史くんが、投資部でつけられたニックネームが「インベスターZ」。このZは財前の頭文字に由来しているのです。さて、この本の何が面白いのか?漫画を読むこと自体が勉強になります。たとえば物語の中で紹介されていた格言として、大阪船場の商人の「息子は選べんが、婿は選べる」というものがあるのだそうです。私はこの言葉を見たときに、思わず吹き出してしまいました。というのは、遠い昔のことを思い出したからです。時は平成の最初の頃。裁判所で倒れて病院に担ぎ込まれてきたのが弁護士さん。瀕死の状態ではありましたが、治療の甲斐があってか、何とか復活しました。そしてすっかり回復した後で、担当医の私にこう言ったのです。「生死の境をさまよっているときに、良いことを思いついたんですよ。息子は司法試験に受かりそうにありませんが、それよりも娘に良い婿を見つけて、私の法律事務所を継いでもらえればいいんだ、と」司法修習生とか若手弁護士の中から娘の結婚相手を見つければいい、という逆転の発想ですね。この患者さんとはその後ずっと年賀状のやりとりをしていたんですけれども、何年か前にお亡くなりになりました。息子さんや娘さんがどうしておられるのか、あるいは法律事務所がどうなったのか、残念ながら私はまったくフォローできていません。それはともかく、大阪の商人と同じで、息子さんを難しい司法試験に受からせようとするよりは、すでに受かった人間の中から娘さんに相応しいお相手を見つけて、自分の後を継いでもらうというほうが現実的ではあります。このことは確かに一理あるのですが、令和になった今なら、さらに応用が可能です。娘さんに出来の良いお婿さんを見つけるのもいいけども、息子さんに優秀なお嫁さんを見つけてもいいわけです。今は女性の弁護士さんも多いわけですから「息子は選べんが、嫁は選べる」とも言えますね。考えてみれば、われわれの世界でも同じかもしれません。読者の中には、ご自分の病院やクリニックを子供が継いでくれたらなあ、と思っている方も大勢おられることでしょう。ひょっとしたら、大阪船場の商人の格言が役に立つかもしれません。ということで、何かと勉強になる『インベスターZ』。ほかにも良い格言がいろいろあります。興味を持った方はぜひとも読んでみてください。最後に1句納税の 季節に悩む 婿選びChatGPTが船場商人の「息子は選べんが、婿は選べる」をイラストにすると、こうなりました。

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何はさておき記述統計 その2【「実践的」臨床研究入門】第41回

仮想データ・セットを用いて発生率を計算してみる今回は早速、仮想データ・セットを用いて、われわれのRQのプライマリアウトカムである末期腎不全の発生率を実際に計算してみましょう。はじめに、今回提供する仮想データ・セットの内容について説明します(仮想データ・セット[エクセルファイル]は下記よりダウンロード可能です)。仮想データ・セットをダウンロードする※ダウンロードできない場合は、右クリックして「名前をつけてリンク先を保存」を選択してください。A列:IDB列:Treat(1;低たんぱく食厳格遵守群、0;低たんぱく食非厳格遵守群)C列:Censor(1;アウトカム発生、0;打ち切り)D列:Year(at riskな観察期間)Treatという変数を作り、推定たんぱく質摂取量 0.5g/kg標準体重/日未満というE(曝露要因)の定義を満たすか否かで(連載第40回参照)、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群の2群に分類しています。変数Censorには、アウトカム発生を1、打ち切りを0として観察期間内でのアウトカム発生の有無の情報が入力してあります(連載第37回、第40回参照)。人年法による発生率の計算式は下記のとおりでした(連載第37回、第40回参照)。発生率=一定の観察期間内のアウトカム発生数÷at risk集団の観察期間の合計まず分子であるアウトカム発生数を、解析対象集団全体および、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群、それぞれで計算します。Excel関数のSUMおよびSUMIFを使用します。合計を算出するSUM(合計範囲)を用いた以下の式で、解析対象集団全体のアウトカム発生数が計算されます。=SUM(C:C)また、検索範囲におけるある条件を満たす合計を算出するSUMIF(検索範囲、検索条件、合計範囲)を用いた以下の式で、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群、それぞれの群でのアウトカム発生数が計算できます。=SUMIF(B:B、1、C:C)=SUMIF(B:B、0、C:C)計算の結果、アウトカム発生数はそれぞれ以下のとおりになります。解析対象集団全体 185イベント低たんぱく食厳格遵守群 70イベント低たんぱく食非厳格遵守群 115イベント次に、分母となるat risk集団の観察期間の合計を解析対象集団全体および、低たんぱく食厳格遵守群、低たんぱく食非厳格遵守群でそれぞれ計算しましょう。同様にSUM、SUMIF関数を用います。=SUM(D:D)=SUMIF(B:B、1、D:D)=SUMIF(B:B、0、D:D)at risk集団の観察期間の合計(小数点第1位表示)はそれぞれ以下のとおりになったでしょうか。解析対象集団全体 2476.4人年低たんぱく食厳格遵守群 776.0人年低たんぱく食非厳格遵守群 1700.4人年それでは上述した発生率の式に1,000を掛けて、1,000人年当たりの発生率をそれぞれの集団で求めてみましょう。解析対象集団全体 74.7イベント/1,000人年低たんぱく食厳格遵守群 90.2イベント/1,000人年低たんぱく食非厳格遵守群 67.6イベント/1,000人年次回からは生存時間曲線の比較について、筆者らが出版した英文臨床研究論文の実例や、仮想データ・セットを用いた実際の統計解析方法を解説します。

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レジオネラ症への効果、キノロン・マクロライド・2剤併用で比較

 レジオネラ症は、レジオネラ肺炎を引き起こす。レジオネラ肺炎は市中肺炎の1~10%を占め、致死率は6.4%という報告もある1)。『JAID/JSC感染症治療ガイド2023』では、第1選択薬として、キノロン系抗菌薬(レボフロキサシン、シプロフロキサシン、ラスクフロキサシン、パズフロキサシン)、マクロライド系抗菌薬(アジスロマイシン)が推奨されている2)。しかし、これらの薬剤による単剤療法や併用療法の有効性の違いは明らかになっていない。そこで、忽那 賢志氏(大阪大学大学院医学系研究科 感染制御学 教授)らの研究グループは、DPCデータを用いて、レジオネラ症に対するキノロン系抗菌薬単独、マクロライド系抗菌薬単独、これらの併用の有効性を比較した。その結果、併用療法と単剤療法には有効性の違いがみられなかった。本研究結果は、International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2024年2月15日号で報告された。 研究グループはDPCデータを用いて、2014年4月1日~2021年3月31日までにレジオネラ症により入院した3,560例の患者情報を分析した。対象患者を入院から2日以内に投与された抗菌薬に基づき、キノロン系単独群(2,221例)、マクロライド系単独群(775例)、併用群(564例)に分類した。傾向スコアを用いた逆確率重み付け法により、併用群を対照として院内死亡率、入院期間、入院費用を比較した。 主な結果は以下のとおり。・調整後の院内死亡率は、キノロン系単独群4.6%、マクロライド系単独群3.1%、併用群4.5%であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後の入院期間は、それぞれ12日、11日、13日であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。・調整後の入院費用は、それぞれ53万4千円、50万9千円、55万7千円であり、併用群と各単独群との間に有意差は認められなかった。 著者らは、本研究結果について「レジオネラ症の治療において、キノロン系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬を併用しても、単独療法と比較して大きな利点がないことが示唆された。副作用が増加する可能性を考慮すると、併用療法を選択する際には慎重な検討が必要である」とまとめた。

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進行乳がんへのDato-DXd、アジア人でもPFS延長(TROPION-Breast01)/日本臨床腫瘍学会

 化学療法の前治療歴のあるHR陽性(+)/HER2陰性(-)の手術不能または転移・再発乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験のアジア人サブグループ解析の結果、全体集団と同じく抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつ管理可能な安全性プロファイルで、治療薬の減量/中断が少なかったことを、昭和大学の鶴谷 純司氏が第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)のPresidential Sessionで発表した。 TROPION-Breast01試験は、HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移・再発の乳がん患者を、Dato-DXdを受ける群と治験医師選択の化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を受ける群に1:1に無作為に割り付けたグローバル第III相試験である。全体集団において、Dato-DXd群では化学療法群よりも有意にPFSが延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は少なかったことが、2023年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告されている。今回は、東アジア(日本、中国、韓国、台湾)で登録された患者における有効性と安全性が解析された(データカットオフ:2023年7月17日)。 主な結果は以下のとおり。・全体集団732例のうち、273例(日本70例、中国83例、韓国82例、台湾38例)がアジア人サブグループとして解析された。Dato-DXd群は134例(年齢中央値:54歳[範囲 29~83歳]、化学療法群は139例(52歳[33~79歳])であった。・主要評価項目の1つである盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS中央値は、Dato-DXd群は5.6ヵ月(95%信頼区間:5.4~8.1)、化学療法群は4.5ヵ月(同:4.0~5.8)であり、Dato-DXd群で有意に改善した(ハザード比:0.69[同:0.51~0.94])。・フォローアップ期間中央値の10.1ヵ月時点では全生存期間(OS)のデータは未成熟であったが、6ヵ月OS率はDato-DXd群91.5%、化学療法群89.6%であった。・奏効率は、Dato-DXd群は32.8%であったのに対し、化学療法群は26.6%であった。・全GradeのTRAEはDato-DXd群の95.4%(うちGrade3以上は20.8%)、化学療法群の84.4%(同:52.6%)に発現した。TRAEにより中止/減量/中断に至ったのはDato-DXd群では3.1%/14.6%/26.2%、化学療法群では0.7%/32.6%/31.9%であった。両群ともに死亡はなかった。・Dato-DXd群に発現した主なTRAEは、悪心54.8%、口内炎37.7%、脱毛症23.8%、嘔吐22.3%、ドライアイ20.8%などであった。・間質性肺疾患は、Dato-DXd群では3.8%(うちGrade3以上は1.5%)に認められたが、化学療法群では認められなかった。 これらの結果より、鶴谷氏は「TROPION-Breast01試験のアジア人解析において、Dato-DXdは全体集団と同様に高い有効性と安全性を示した。減量/中断に至るTRAEは化学療法群よりもDato-DXd群のほうが少なかった」としたうえで、「本解析の結果は、Dato-DXdは内分泌療法に不適でHR+/HER2-の進行乳がんの東アジア人にとって新たな治療オプションとなる可能性を支持するものである」とまとめた。

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ACPA陽性患者へのアバタセプト、RA発症を抑制/Lancet

 抗シトルリン化ペプチド抗体(ACPA)陽性の高リスク患者において、アバタセプト6ヵ月投与は、MRIの炎症所見を改善し、関節リウマチの発症リスクを低下させ、その効果は1年間無投与の観察期間終了時まで持続した。ドイツ・フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン=ニュルンベルクのJuergen Rech氏らが、欧州の14施設で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Abatacept reversing subclinical inflammation as measured by MRI in ACPA positive arthralgia(ARIAA)試験」の結果を報告した。ACPA陽性で関節に触診で確認できない炎症性変化を有する患者は、関節リウマチを発症するリスクが高い。しかし、このような前臨床期疾患の進行を阻止する治療戦略は、まだ開発されていなかった。Lancet誌オンライン版2024年2月13日号掲載の報告。6ヵ月投与、12ヵ月無投与で観察 研究グループは、ACPA陽性で関節痛を有し(ただし腫脹はなし)、利き手のMRI検査で潜在性滑膜炎、腱鞘炎または骨炎を認める成人(18歳以上)患者を、アバタセプト(週1回125mg皮下投与)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付け、6ヵ月間投与した後、二重盲検下のまま無投薬で12ヵ月間観察した。 主要アウトカムは、6ヵ月時の利き手のMRI検査で潜在性滑膜炎、腱鞘炎または骨炎の改善を認めた患者の割合であった。副次アウトカムは、ACR/EULAR 2010分類基準を満たす関節リウマチの発症などで、主要有効性解析は、無作為に割り付けられ試験薬を投与されたすべての患者(修正ITT集団)を対象とし、安全性解析は試験薬を投与されベースライン後の観察が少なくとも1回あった患者を対象とした。6ヵ月時のMRI炎症所見の改善、アバタセプト群57% vs.プラセボ群31% 2014年11月6日~2021年6月15日に139例がスクリーニングされ、適格患者100例がアバタセプト群(50例)およびプラセボ群(50例)に無作為に割り付けられた。2例(各群1例)が投与失敗または治療拒否により除外され、98例が修正ITT集団に包含された。98例中70例(71%)が女性、28例(29%)が男性であった。 6ヵ月時にMRIで潜在性滑膜炎、腱鞘炎または骨炎の改善を認めた患者の割合は、アバタセプト群57%(28/49例)、プラセボ群31%(15/49例)であった(絶対群間差:26.5%、95%信頼区間[CI]:5.9~45.6、p=0.014)。また、関節リウマチを発症した患者の割合は、それぞれ35%(17/49例)、57%(28/49例)であった(ハザード比0.14、95%CI:0.04~0.47]、p=0.018)。いずれも、投与終了から12ヵ月経過した18ヵ月時も、両群間に有意差が認められた。 重篤な有害事象は、11例に12件発生した(アバタセプト群48例中4例[8%]、プラセボ群49例中7例[14%])。試験期間中の死亡例はなかった。

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肺がん診療ガイドライン2023押さえておきたい3つのポイント【DtoD ラヂオ ここが聞きたい!肺がん診療Up to Date】第4回

第4回:肺がん診療ガイドライン2023押さえておきたい3つのポイントパーソナリティ日本鋼管病院 呼吸器内科 部長 田中 希宇人 氏ゲスト岡山大学病院 ゲノム医療総合推進センター 呼吸器内科 二宮 貴一朗 氏参考1)日本肺癌学会 肺癌診療ガイドライン2023(オンライン版)関連サイト専門医が厳選した、肺がん論文・ニュース「Doctors'Picks」(医師限定サイト)講師紹介

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小児および青年における抗精神病薬関連体重増加パターン

 小児および青年に対する第2世代抗精神病薬(SGA)の使用では、抗精神病薬に関する体重増加が問題となる。米国・ヒューストン大学のNing Lyu氏らは、小児および青年における抗精神病薬関連体重増加の潜在的な軌跡および関連するリスク因子を特定するため、本研究を実施した。Journal of Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2024年1月23日号の報告。 2016~21年のIQVIA Ambulatory EMR-USデータベースをレトロスペクティブに分析した。対象は、SGA未治療後、90日以上継続してSGA処方を行った6~19歳の患者。SGA開始から24ヵ月間の抗精神病薬関連体重増加の潜在的な軌跡を特定するため、グループベースの軌跡モデリングを用いた。特定された抗精神病薬関連体重増加の軌跡に関連するリスク因子の調査には、多項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者数は、1万6,262例。・グループベースの軌跡モデリングにより、次の4つの特徴的な抗精神病薬関連体重増加の軌跡が特定された。●持続的な重度の体重増加(4.2%)●持続的な中等度の体重増加(20.1%)●軽度の体重増加(69.6%)●緩やかな体重減少(6.1%)・重度の体重増加が認められた患者は、軽度の体重増加が認められた患者と比較し、より若年で、ベースライン時のBMIのzスコアが低値、最初のSGA治療薬がオランザピンを投与されている可能性が高かった。【より若年】12~17歳vs.5~11歳、オッズ比(OR):0.634、95%信頼区間(CI):0.521~0.771【ベースライン時のBMIのzスコアが低値】OR:0.216、95%CI:0.198~0.236【最初のSGA治療薬がオランザピン】オランザピンvs.アリピプラゾール、OR:1.686、95%CI:1.673~1.699・多項回帰モデルでは、重度の体重増加と軽度の体重増加を比較したROC曲線下面積は0.91、中程度の体重増加と軽度の体重増加を比較したROC曲線下面積は0.8であった。 著者らは「SGA治療を行った小児患者の4例に1例は、SGA治療中の持続的な体重増加を経験しており、この持続的な抗精神病薬関連体重増加リスクは、SGA開始前の患者の特徴および最初に開始するSGAにより予測可能である」と報告した。

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大血管閉塞による急性期脳梗塞、血栓除去術へのメチルプレドニゾロン併用は?/JAMA

 大血管閉塞による急性期脳梗塞患者において、静脈内血栓溶解療法を含む血管内血栓除去術に低用量メチルプレドニゾロン静注を追加しても、90日後の機能的アウトカムに差はなかったが、死亡率および症候性頭蓋内出血の発生率は低かった。中国・人民解放軍第三軍医大学のQingwu Yang氏らが、中国の82施設で実施した医師主導無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「Methylprednisolone as Adjunctive to Endovascular Treatment for Acute Large Vessel Occlusion trial:MARVEL試験」で示された。JAMA誌オンライン版2024年2月8日号掲載の報告。メチルプレドニゾロン群とプラセボ群に無作為化、90日後のmRSスコア分布を比較 研究グループは、大血管(内頸動脈、中大脳動脈M1またはM2セグメント)閉塞による急性期脳梗塞を発症し、発症前は介助なしで日常生活が可能(修正Rankin尺度[mRS]スコア<2、mRSスコア範囲:0[症状なし]~6[死亡])で、無作為化時にNIHSSスコア≧6(範囲:0~42、スコアが高いほど神経学的重症度が高い)の18歳以上の成人患者を、健康状態に問題がなかったことが明らかな直近の時刻から24時間以内に登録し、メチルプレドニゾロン群またはプラセボ群に無作為に割り付け、2mg/kg/日(最大160mgまで)を3日間静脈内投与した。全例、血管内血栓除去術を行い、静脈内血栓溶解療法の前処置も可とされた。 試験薬は、無作為化後できるだけ速やかに、血管内治療のための動脈アクセスを閉鎖する前に投与したが、閉鎖後2時間以内は可とした。 有効性の主要アウトカムは、無作為化90日後のmRSスコア分布(シフト解析)、安全性の主要アウトカムは、90日全死因死亡率および血管内血栓除去術後48時間以内の症候性頭蓋内出血であった。機能的アウトカムに差はないが、メチルプレドニゾロン群で死亡率と頭蓋内出血発生率が低下 2022年2月9日~2023年6月30日の間に1,687例が無作為化され、同意撤回を除く1,680例(年齢中央値69歳、女性727例[43.3%])が解析対象集団に含まれた。このうち、1,673例(99.6%)が試験を完遂した。最終追跡調査日は2023年9月30日であった。 無作為化90日後のmRSスコア中央値は、メチルプレドニゾロン群3点(四分位範囲[IQR]:1~5)、プラセボ群3点(1~6)であった。mRSスコアの分布がメチルプレドニゾロン群で、より良好な方向へ変化する補正後一般化オッズ比は1.10(95%信頼区間[CI]:0.96~1.25)で、両群に有意差はなかった(p=0.17)。 90日全死因死亡率は、メチルプレドニゾロン群23.2%、プラセボ群28.5%であり、メチルプレドニゾロン群で有意に低かった(補正後リスク比:0.84、95%CI:0.71~0.98、p=0.03)。同様に症候性頭蓋内出血の発生率もメチルプレドニゾロン群で有意に低かった(8.6% vs.11.7%、0.74、0.55~0.99、p=0.04)。

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2型糖尿病のNAFLD、CVDや全死因死亡リスク増/BMJ

 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を併発した2型糖尿病(T2DM)患者では、NAFLDが軽症であっても、心血管疾患および全死因死亡のリスクが上昇する可能性があり、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDの間の心血管疾患および全死因死亡のリスク差は、非T2DMよりもT2DMで大きいことが、韓国・CHA Bundang Medical CenterのKyung-Soo Kim氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2024年2月13日号に掲載された。韓国の縦断的コホート研究 研究グループは、韓国のT2DM患者において、NAFLDが心血管疾患および全死因死亡のリスクに及ぼす影響を評価する目的で、全国規模の人口ベースの縦断的コホート研究を行った(特定の研究助成は受けていない)。 2009年のNational Health Screening Programmeの参加者779万6,763例を、NAFLDの状態に基づき、次の3つの群に分けた。(1)非NAFLD(脂肪肝指数[fatty liver index]<30)、(2)グレード1 NAFLD(30≦脂肪肝指数<60)、(3)グレード2 NAFLD(脂肪肝指数≧60)。 主要アウトカムは、心血管疾患(心筋梗塞、脳梗塞)または全死因死亡の発生とした。グレード1でも5年絶対リスクが上昇 779万6,763例の参加者のうち、6.49%(50万5,763例)がT2DMであった。非T2DM群のうちグレード1 NAFLDは21.20%、グレード2 NAFLDは10.02%であったのに対し、T2DM群ではそれぞれ34.06%および26.73%といずれも高率であった。また、1,000人年当たりの心血管疾患および全死因死亡の発生率は、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加し、非T2DM群よりT2DM群で高かった。 心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクは、非T2DM群、T2DM群とも、非NAFLD、グレード1 NAFLD、グレード2 NAFLDの順に増加した。すなわち、非T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは1.03(95%信頼区間[CI]:1.02~1.04)、全死因死亡の5年絶対リスクは1.25(1.24~1.26)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ1.23(1.22~1.25)および1.50(1.48~1.51)、グレード2 NAFLD患者は1.42(1.40~1.45)および2.09(2.06~2.12)であった。 同様に、T2DM群では、非NAFLD患者における心血管疾患の5年絶対リスクは3.34(3.27~3.41)、全死因死亡の5年絶対リスクは3.68(3.61~3.74)であり、グレード1 NAFLD患者はそれぞれ3.94(3.87~4.02)および4.25(4.18~4.33)、グレード2 NAFLD患者は4.66(4.54~4.78)および5.91(5.78~6.05)だった。T2DMでのNAFLDのスクリーニングと予防により、リスク低減の可能性 このように、非T2DM群のグレード2 NAFLDと比較して、T2DM群の非NAFLDは、心血管疾患および全死因死亡の5年絶対リスクが高かった。また、非T2DM群に比べT2DM群では、非NAFLDとグレード1 NAFLD、非NAFLDとグレード2 NAFLDで、心血管疾患および全死因死亡のリスク差が大きかった。 著者は、「非アルコール性脂肪性肝疾患のスクリーニングと予防により、2型糖尿病患者における心血管疾患および全死因死亡のリスクが低減する可能性がある」としている。

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高親和性TTR安定化薬acoramidisはATTR心アミロイドーシスの予後を改善する(解説:原田和昌氏)

 ATTR心アミロイドーシスは、単量体がミスフォールドされたトランスサイレチン(TTR)がアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することで引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。ATTR心アミロイドーシスの治療薬としては、TTR安定化薬であるタファミジスがすでに承認されている(ATTR-ACT試験)。また、トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの適応をすでに取得しているsiRNA静脈注射剤のパチシラン(3週に1回投与)により、ATTR心アミロイドーシス患者の12ヵ月時の機能的能力が維持されることが報告された(APOLLO-B試験)。acoramidisは四量体TTRの解離をより強力に阻害する高親和性TTR安定化薬であり、第II相試験でその有効性が示唆されていた。 英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのGillmore氏らは第III相無作為化二重盲検比較試験(ATTRibute-CM試験)において、ATTR心アミロイドーシスと診断され臨床的心不全を有する患者にacoramidisまたはプラセボを30ヵ月間投与した。全死因死亡、心血管関連入院、NT-proBNP値のベースラインからの変化量、6分間歩行距離のベースラインからの変化量について階層的に解析を行った。4段階の階層的解析においてacoramidis群がプラセボ群よりも有意に良好であることが示され、ペアワイズ比較のwin比は1.8(95%CI:1.4~2.2)であった。有害事象は両群で類似していた。タファミジスも中央値17.2ヵ月後からacoramidis群の14.9%、プラセボ群の22.8%で使用されていたが使用期間に差はなかった。 acoramidisの承認も確実とみられるが、全死因死亡への効果はタファミジスのほうがやや優れるようである。しかし、本試験のプラセボ群の30ヵ月の生存率74.3%は、6年前のATTR-ACT試験のプラセボ群の生存率70.5%よりも高く、acoramidis群の生存率80.7%は年齢をマッチさせた米国の一般人コホートの生存率85%に近かったからかもしれない。また、ATTR心アミロイドーシス治療において、TTR安定化薬とRNA干渉薬とどちらがより有効であるかは非常に興味深い問題である。

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