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人工股関節全置換術、metal-on-metal関節で高い再置換率

人工股関節全置換術(THR)では、metal-on-metal関節は他の人工関節に比べ再置換を要する確率が高く、骨頭径が大きいほど5年再置換率が上昇することが、英国・ブリストル大学整形外科のAlison J Smith氏らの検討で示された。THRは極めて一般的な施術法だが、特に若年患者で人工関節が機能しなかったり、摩滅や転位に起因する弛緩によって再置換を要する場合があるという。これらの問題への対処法として、骨頭径が大きく摺動面がmetal-on-metalの人工関節の移植が行われるが、その耐用性は明らかではなく、セラミック製のceramic-on-ceramic関節の有用性も報告されている。Lancet誌2012年3月31日号(オンライン版2012年3月13日号)掲載の報告。3種の人工関節の耐用性を評価研究グループは、metal-on-metal関節は他のTHR用の人工関節(ceramic-on-ceramic関節、metal-on-polyethylene関節)に比べ耐用性が優れるかを評価し、さらに骨頭径の大きさが耐用性に及ぼす影響について検討を行った。2003~2011年までにNational Joint Registry of England and Walesに登録された初回THR施行患者40万2,051例(そのうち3万1,171例がmetal-on-metal関節)を解析の対象とした。多変量パラメータモデルを用いて、再置換術の施行率を推算した。骨頭径の大きなceramic-on-ceramic関節の有用性が高いmetal-on-metal関節は、ceramic-on-ceramic関節やmetal-on-polyethylene関節に比べ再置換率が高かった。60歳の男性の5年再置換率は骨頭径28mmで3.2%、52mmでは5.1%と、サイズが大きくなるに従って上昇した。若年女性の5年再置換率は、骨頭径28mmのmetal-on-polyethylene関節では1.6%であったが、46mmのmetal-on-metal関節では6.1%だった。これに対し、ceramic-on-ceramic関節では60歳男性の5年再置換率が、骨頭径28mmで3.3%、40mmでは2.0%と、サイズが大きくなるほど低下した。著者は、「metal-on-metal関節は耐用性が劣るため使用すべきではない」と結論づけ、「特に骨頭径の大きな人工関節を留置された若年の女性患者では注意深いモニタリングを要する。骨頭径の大きなceramic-on-ceramic関節は有用性が高く、継続的な使用が推奨される」としている。(菅野守:医学ライター)

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過活動膀胱治療剤ミラベグロン 米国FDA諮問委員会にて承認推奨を取得

アステラス製薬は6日、過活動膀胱(OAB)の適応症で現在審査中のミラベグロン(一般名、開発コード:YM178)に関して、4月5日(米国時間)に開催された米国食品医薬品局(FDA)の諮問委員会(Reproductive Health Drugs Advisory Committee)が、ミラベグロンの有用性を認め、承認の推奨を採択したことを発表した。諮問委員会の勧告は、FDAが新薬承認審査の最終判断を行う際に考慮されるが、FDAの判断を拘束するものではないという。なお、ミラベグロンに対するFDAの審査終了目標日(PDUFA date)は2012年6月29日に指定されているとのこと。ミラベグロンは、同社が創製・開発した1日1回経口投与の選択的β3アドレナリン受容体作動薬で、安全性と有効性は、これまで実施された数多くの臨床試験において検証されている。同社は、ミラベグロンについて2011年8月24日に欧州医薬品庁(EMA)、2011年8月26日にFDAに、それぞれ販売許可を申請している。また、日本国内においてはベタニス錠の製品名で2011年9月に発売している。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/fda-1.html

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災害時などの画像データ消失トラブルに備える クラウド型医用画像ストレージサービス

富士フイルムは5日、クリニックの診断画像をデータセンターで保管するクラウド型医用画像ストレージサービス「+STORAGE(プラスストレージ)」を、医療施設の診療業務を支援する同社の医療クラウドサービス「ASSISTA Portal(アシスタポータル)」の新たなサービスとして、富士フイルムメディカルを通じて、4月16日より提供開始すると発表した。同サービスは、クリニックで使用される医用画像診断ワークステーション「C@RNACORE(カルナコア)」に保管される診断画像データを、院外にある同社データセンターでバックアップし、災害などによる画像データ消失トラブルの際に迅速な復旧を行えるようにするもの。C@RNACORE上で医師が画像診断した後、診断確定ボタンを押すと、画像データがC@RNACOREに付属したハードディスクと同社データセンターに自動的に送信されてバックアップを行う仕組みとなっている。院内のハードディスクとデータセンターそれぞれで同じ画像データを保管するため、通常の診断業務の際の過去画像参照は院内ハードディスクから行うことができ、万一災害などで院内に保管された画像データが消失した場合も、データセンターから復旧することが可能だという。クリニックでのX線画像のデジタル化は、過去画像との比較読影の容易さや、病院間の連携が可能になるなどのメリットから着実に進んでおり、X線装置を保有するクリニックの約7割以上にまで拡大していると推定される。しかし、利便性が高い一方で、デジタル化された診断画像は記録メディアに大量に保管されるため、機器が故障した場合や災害時に、大切な患者の画像データをすべて失う恐れもある。昨年3月11日に発生した東日本大震災では、被災した多くのクリニックが画像データを失ったため、被災地での新たなスタートにあたり、「大切な診断画像情報の消失を何としても回避したい」という強いニーズがあったという。詳細はプレスリリースへhttp://www.fujifilm.co.jp/corporate/news/articleffnr_0624.html

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AHA推奨の健康指標、遵守項目が多いほど死亡リスクは有意に減少

米国心臓協会(AHA)が推奨する7項目からなる心血管健康基準について、6項目以上を満たしている人は、1項目以下しか満たしていない人に比べ、全死亡リスクは半分以下、心血管疾患死や虚血性心疾患死リスクは3分の1以下に減少することが示された。米国疾病管理予防センター(CDC)のQuanhe Yang氏らが、約4万5,000人の成人データを調べて明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月28日号(オンライン版2012年3月16日号)で発表した。ただしYang氏は、同基準7項目すべてを満たしている人は、1~2%とごくわずかであったことについても言及している。同基準7項目を満たすのは、1~2%とごくわずか研究グループは、全米健康・栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey ;NHANES)の、1988~1994年、1999~2004年、2005~2010年の3つの調査データを用い、20歳以上成人4万4,959人について調査を行った。被験者について、AHAが推奨する「非喫煙」「運動をしている」「血圧値正常」「血糖値正常」「総コレステロール値正常」「標準体重」「健康な食事を摂取」の7項目からなる心血管健康基準の適用度合いと、全死亡と、心血管疾患や虚血性心疾患による死亡リスクとの関連を分析した。結果、被験者のうち、同基準7項目をすべて満たしていたのは、1988~1994年群で2.0%、2005~2010年群で1.2%と、ごくわずかだった。追跡期間は中央値14.5年。その間に、全死亡2,673人、心血管疾患死1,085人、虚血性心疾患死が576人、それぞれ発生した。6項目以上達成群、1項目以下達成群に比べ、全死亡リスクは半分以下同基準項目のうち1項目以下しか満たしていない人の、年齢・性別標準化絶対死亡リスクは、全死亡が14.8、心血管疾患死が6.5、虚血性心疾患死が3.7だった(いずれも1,000人・年当たり)。一方、同基準を6項目以上満たしていた人では、全死亡が5.4、心血管疾患死が1.5、虚血性心疾患死が1.1だった。6項目以上達成群の1項目以下達成群に対する補正後ハザード比は、全死亡が0.49(95%信頼区間:0.33~0.74)、心血管疾患死が0.24(同:0.13~0.47)、虚血性心疾患死が0.30(同:0.13~0.68)だった。補正後集団寄与比率は、全死亡59%、心血管疾患死64%、虚血性心疾患死63%だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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携帯電話の使用、神経膠腫の発生に影響せず

アメリカでは現在、携帯電話の使用率がほぼ100%に達しているが、関連が指摘されている神経膠腫のリスク増大は認めないことが、アメリカ国立がん研究所のM P Little氏らの検討で示された。国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer:IARC)は最近、2つの疫学試験[interphone試験(2010年)、スウェーデン試験(2011年)]で報告された相対的なリスクに基づいて、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクの関連について再評価を行い、発がん促進の可能性のある携帯電話のマイクロ波放射の分類を行った。その一方で、1990年半ば以降、脳腫瘍の発生率の傾向は携帯電話の使用増加を反映しておらず、一般にこの状況は現在も続いているという。BMJ誌2012年3月25日号(オンライン版2012年3月8日号)掲載の報告。神経膠腫発生の観測値と推定値を、携帯電話の使用状況との関連で比較研究グループは、IARCの発がん性分類における携帯電話の位置づけの観点から、神経膠腫のリスクに関する最近の2つの報告(IARC分類に基づく)と、アメリカにおける実際の発生状況の整合性について検討した。1997~2008年の神経膠腫発生の観測値と推定値を比較した。推定値は、2010年のInterphone試験、2011年のスウェーデンの試験で報告された相対リスクと、年齢・レジストリー・性別による調整値、携帯電話の使用データ、種々の潜伏期間を統合して算出した。アメリカのSurveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムの12のレジストリーから、1992~2008年の神経膠腫発生のデータを用いた。神経膠腫と診断された18歳以上の非ヒスパニック系の白人2万4,813例が解析の対象となった。使用状況は大きく変わったが、リスクは変化せず1992~2008年の間に、アメリカの携帯電話の使用状況はほぼ0%から100%へと大きく変化したが、この間に年齢特異的な神経膠腫の発生率は全般的に変化しなかった(年間発生率の変化率:-0.02%、95%信頼区間:-0.28~0.25%)。電話の使用と神経膠腫リスクが相関し、さらに潜伏期間10年、低相対リスクとした場合でも、推定値が観測値を上回っていた。腫瘍の潜伏期間と累積電話使用期間から算出されたスウェーデン試験の相対リスクに基づくと、アメリカの2008年の推定値は観察値を40%以上も上回っていた。一方、Interphone試験の携帯電話の使用頻度が高い群における神経膠腫発生の推定値は観測値と一致していた。携帯電話の使用頻度が低い群や相対リスクが1以上の群に限定した場合でも、これらの結果の妥当性は維持されていた。著者は、「IARCの再評価に基づくスウェーデン試験で報告された携帯電話の使用による神経膠腫のリスク増大は、アメリカの携帯電話使用者における観測値とは一致しなかったが、Interphone試験の中等度リスク群とアメリカの状況は一致していた」とまとめている。(菅野守:医学ライター)

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dutasteride、低リスク前立腺がんへの積極的治療の必要性を低減

5α還元酵素阻害薬であるdutasterideは、積極的観察(active surveillance)を受けている低リスク前立腺がん男性において、積極的治療(aggressive treatment)の必要性を低減し、良好な補助的効果をもたらす可能性があることが、カナダ・トロント大学プリンセス・マーガレット病院のNeil E Fleshner氏らが実施したREDEEM試験で示された。局所前立腺がんは進行が遅く、疾患関連死のリスクが低い場合でも過剰な治療が行われることが多いとの指摘がある。dutasterideは5α還元酵素のタイプ1と2の双方を阻害する唯一の5α還元酵素阻害薬で、北米では症候性の良性前立腺過形成の治療薬として承認されている。局所前立腺がん患者の血清ジヒドロテストステロンを90%以上低下させ、一部の患者では病変の縮小も確認されているという。Lancet誌2012年3月24日号(オンライン版2012年1月24日号)掲載の報告。低リスク前立腺がんに対する安全性と有効性を評価REDEEM試験は、積極的観察によるフォローアップを選択した低リスク前立腺がん男性において、局所前立腺がんの病勢進行に対するdutasterideの安全性および有効性を評価する二重盲検無作為化プラセボ対照試験。アメリカとカナダの65施設から、腫瘍量が少なくGleasonスコア5~6の前立腺がんで、積極的観察によるフォローアップを選択した48~82歳の男性が登録された。これらの患者が、dutasteride 0.5mg/日あるいはプラセボを投与する群に無作為に割り付けられた。3年間のフォローアップが行われ、18ヵ月および3年目に12コア生検を行った。主要評価項目は、前立腺がんの無増悪期間とした。無増悪期間は、試験開始から病理学的な病勢進行(生検による評価)まで、あるいは臨床的な病勢進行(前立腺切除術、放射線療法、ホルモン療法の施行)までの期間とした。有害事象の頻度は同等2006年8月10日~2007年3月26日までに302例が登録され、そのうち生検を1回以上受けた289例(96%)が解析の対象となった。dutasteride群に144例、プラセボ群には145例が割り付けられた。フォローアップ期間3年までに前立腺がんの病勢進行を認めたのは、dutasteride群が54例(38%)、プラセボ群は70例(48%)で、有意な差がみられた(ハザード比:0.62、95%信頼区間:0.43~0.89、log-rank検定:p=0.009)。有害事象の頻度は両群ともに高かった(dutasteride群83%、プラセボ群87%、Fisher正確度検定:p=0.34)。そのうち治療関連有害事象はdutasteride群が23%、プラセボ群は15%(p=0.11)、治療中止の原因となった有害事象はそれぞれ3%、4%(p=0.75)、重篤な有害事象は15%、15%(p=1.0)であり、治療関連死は両群ともにみられなかった。性機能関連の有害事象あるいは乳房の隆起、圧痛を認めたのは、dutasteride群が35例(24%)、プラセボ群は23例(15%)だった。心血管の有害事象はそれぞれ8例(5%)、7例(5%)にみられたが、前立腺がんによる死亡や転移病変は認めなかった。著者は、「dutasterideは積極的観察を受けている低リスク前立腺がん男性において、積極的治療の必要性を低減し、良好な補助的効果をもたらす可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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双極性障害治療における課題と新たな治療選択肢への期待

 2012年2月22日、オランザピン(商品名:ジプレキサ)の「双極性障害におけるうつ症状の改善」の適応承認を受け、3月14日、日本イーライリリー株式会社による記者発表会が開催された。この会では、帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科科長・教授の張賢徳氏より、現在の双極性障害治療の課題や新たなる選択肢への期待などについて講演が行われた。双極性障害とは? 双極性障害は躁症状とうつ症状の二つの病相を繰り返す疾患であり、わが国における生涯有病率は0.6%程度 1) と決して珍しい疾患ではない。躁症状は自尊心の肥大や快楽的活動への熱中などにより人間関係や社会的信頼の失墜をもたらす一方で、うつ症状は無気力や種々の身体症状、自殺のリスクの増大などにより、患者やその家族の社会生活に大きな影響を及ぼすことが知られている。双極性障害診療の問題点 双極性障害の診断には躁症状の認識が重要であるが、患者が躁症状を自覚していないことが多く、医師に報告されないことも多いため診断が難しいと言われている。さらに、双極性障害におけるうつ症状と単極性うつ病の症状は類似しており、鑑別が難しいケースが少なくない。海外の報告によると、69%の患者が単極性うつ病など他の精神疾患と診断され、適切に診断されるまで10年以上かかる患者は35%にのぼると言われている 2)。 鑑別診断が難しい一方で、薬物治療に関してはそれぞれのうつ症状に対し、異なるアプローチを要する。しかし、これまで、わが国において双極性障害におけるうつ症状の改善の適応を有する治療薬はなく、気分安定薬や抗精神病薬、抗うつ薬などが用いられてきた。双極性障害におけるうつ症状に対し抗うつ薬治療を継続すると、躁転やラピッドサイクル化、衝動性の亢進などのリスクが伴うことが報告されており 3)、その使用の是非や適切な治療の重要性が長期にわたり叫ばれてきた。オランザピン、「躁」「うつ」両症状に適応をもつ唯一の双極性障害治療剤に このような背景のもと、非定型抗精神病薬であるオランザピンは双極性障害における躁症状に加え、わが国では初となるうつ症状の改善も承認され、両症状の改善に適応が認められた唯一の薬剤となった。 今回の適応取得の根拠となった国際共同第III相プラセボ対象二重盲検比較試験及び非盲検継続治療試験(HGMP試験)は、DSM-IV-TRにより『双極I型障害、最も新しいエピソードがうつ病』と診断され、大うつ病エピソードの基準を満たしている患者514例を対象としており、日本人156例も含まれる。結果をみると、最終観察時点(投与開始6週後)におけるMADRS(Montgomery-Asberg Depression Rating Scale:うつ症状の評価指標)合計点のベースラインからの変化量の平均値は、オランザピン群でプラセボ群と比較して有意な改善が認められ、日本人のみで検討した場合でも同様の結果が示された。また、うつ症状治療時における躁症状の発現率もプラセボと比較して有意に少ないことも示された。HGMP試験に続いて実施された長期投与試験(HGMS試験)では、HGMP試験を完了した日本人患者及びHGMS試験から参加した患者を対象に48週間、オランザピンの持続した効果が示された。張氏は講演の中で、「双極性障害の治療の基本は波のコントロールである。両症状の改善の適応をもつオランザピンは情動の安定化が期待できるのではないだろうか」と述べた。 なお、同試験における副作用は、頻度の高いものから体重増加、傾眠、食欲亢進、鎮静、過眠症などであった。 また、うつ症状の疾患自体に自殺のリスクが伴うため、十分に患者の状態を評価しながら投与することが必要であることから、添付文書の使用上の注意に自殺に対する注意喚起が追記された。今後への期待 双極性障害は患者の社会生活や健康、生命が脅かされる重大な疾患であり、薬物治療を中断すると再発するリスクが大きいことが知られている。さらに再発を繰り返すにつれて次の再発までの期間が短くなることに加え、薬剤の効果が得られなくなることが報告されており 4)、早い段階から適切な治療を行うことが必要である。 双極性障害の治療目標の一つに、「再発を防ぎ、患者が普通の社会生活を送れるようにする」ことが挙げられる。わが国で唯一、双極性障害における躁症状とうつ症状の両症状に適応を有するオランザピンは今後、長期的な症状のコントロールと再発の予防の観点からも、治療上重要な役割を担うことが期待される。

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急性骨髄性白血病の遺伝子プロファイリング

急性骨髄性白血病(AML)患者について、その体細胞変異の遺伝子プロファイリングがリスク層別化に有用であり、予後および治療を決定することができる可能性があることが報告された。米国・Sloan-Kettering記念がんセンターJay P. Patel氏らが、60歳未満のAML患者398例の遺伝子プロファイリングについて検証した結果による。最近の研究成果として、体細胞突然変異に予後因子としての価値があることが示されていたが、AML治療における評価は、第3相試験では系統的になされていなかった。NEJM誌2012年3月22日号(オンライン版2012年3月14日号)掲載報告より。18遺伝子の変異解析から予後因子としての意義を調査Patel氏らは、60歳未満のAML患者398例をダウノルビシン(商品名:ダウノマイシン)による寛解導入療法を、標準用量または高用量で受ける2群に無作為に割り付け、それぞれについて18遺伝子の変異解析を実施した。そのうえで、104例の独立した患者群で同解析所見についての検証を行った。 結果、患者の97.3%で1個以上の体細胞変異が確認された。そして、FLT3遺伝子内の縦列重複(FLT3-ITD、P=0.001)、MLL遺伝子内の縦重複(MLL-PTD、P=0.009)、ASXL1遺伝子変異(P=0.05)、PHF6遺伝子変異(P=0.006)は、全生存率の低下と関連していることが、一方で、CEBPA遺伝子変異(P=0.05)、IDH2遺伝子変異(P=0.01)は、全生存率の改善と関連している所見が得られた。また、NPM1変異は、NPM1変異とIDH1変異またはIDH2変異の両方を有する患者に限って、好ましい効果をもたらすことも確認された。生存率を改善する遺伝子変異を確認それら所見を踏まえて、研究グループは、年齢、白血球数、導入量、寛解後の治療法とは独立した、リスク層化を改善する遺伝的予測因子を定めて、独立コホートで、その予測因子としての有意性を検証した。結果、高用量ダウノルビシン投与群は、同標準用量投与と比較して、DNMT3A変異かNPM1変異またはMLL転座のいずれかを有する患者で生存率を改善することが認められた(P=0.001)。野生型のDNMT3A、NPM1、MLL各遺伝子をを有する患者では改善は認められなかった(P=0.67)。(朝田哲明:医療ライター)

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急性虚血性脳卒中に対するtenecteplase対アルテプラーゼ

 急性虚血性脳卒中に対するrt-PA静注療法として、tenecteplase(遺伝子組み換え型変異体組織プラスミノーゲン活性因子)は、現在唯一の標準療法であるアルテプラーゼ(商品名:アクチバシン、グルトパ)よりも再灌流および臨床アウトカムが有意に優れることが無作為化試験の結果、報告された。本報告は、英国・ジョン・ハンター病院のMark Parsons氏らが、アルテプラーゼ標準療法と、2つの用量群でのtenecteplase療法とを比較検討したフェイズ2Bの無作為化オープンラベル単盲検試験の結果で、NEJM誌2012年3月22日号で発表された。無作為化前に、被験者にCT灌流イメージングを実施 研究グループは、75例の虚血性脳卒中患者を、発症後6時間以内にアルテプラーゼ(0.9mg/kg体重)またはtenecteplase(0.1mg/kg体重または0.25mg/kg体重)を投与されるよう3群に無作為に割り付け(各25例ずつ)比較検討した。無作為化に際し、血栓溶解療法のメリットを最も受けやすい患者を選択するため、基線でのCT灌流イメージングで梗塞巣よりも20%以上大きな灌流病変があり、CT血管造影でこれに関連した血管閉塞が認められる患者を適格とした。 共通主要エンドポイントは、24時間後の灌流強調MRI検査画像で再灌流が確認された灌流障害病変部の割合と、NIHSS(the National Institutes of Health Stroke Scale、42ポイントスケールでスコアが高いほど神経学的欠損が重い)で評価した24時間後の臨床的改善の度合いとした。高用量tenecteplase群が再灌流と臨床アウトカムに優れる 全患者の基線での平均(±SD)NIHSSスコアは14.4±2.6で、投与までに要した時間は2.9±0.8時間だった。24時間後、tenecteplase投与群は2群とも、アルテプラーゼ群より再灌流(P=0.004)と臨床状態(P

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高齢者は聴力低下の自覚に乏しい、スクリーニングには“ささやき検査”が有効

高齢者の聴力スクリーニングでは、単一の質問ではなく10項目からなる質問票のほうが、また2フィート先からささやいた文字や数などを答える「ささやき検査」が有効であるとの報告が、JAMA誌2012年3月21日号で発表された。米国・ミネソタ大学のJames T. Pacala氏らが、高齢者の聴覚障害について行われた1,700超の研究結果を再調査し明らかにした。高齢者の聴力の低下は、自覚がないまま進行することも少なくないという。米国の2005~2006年のNational Health and Nutrition Examination Surveyによると、70歳以上のうち、聴力低下が認められる人の割合は63%で、そのなかでも中程度から重度の聴覚障害は27%に上ることがわかっている。10項目の聴覚障害調査票によるスクリーニング、単一質問より有効研究グループは、1980~2011年12月1日までに発表された、高齢者の聴力喪失に関する研究結果について、PubMedを用いて再調査を行った。抽出した1,742件の研究結果のうち、エビデンスの程度が、A(質が高い)、B(中程度の質)以上のものについてのみ、分析を行った。医師による聴力喪失に関する診察時のスクリーニングの種類とその検査能について、以下のような結果が得られた。問診時の質問で、「聞こえにくいことがありますか?」「聞く力が弱くなってきたと思いますか?」という質問による、聴力喪失に関する陽性尤度比は2.4~4.2、陰性尤度比は0.33~0.55だった。さらに、10項目の質問からなる、「聴覚障害調査票、高齢者スクリーニング版」(Hearing Handicap Inventory for the Elderly-Screening Version)で、8ポイント超の場合、陽性尤度比は2.4~7.9、陰性尤度比は0.25~0.70と、先の質問よりも検査能は高かった。2フィート先からのささやき検査、特に除外診断に有効聴力障害のスクリーニングとして、なかでも検査能が高かったのは、2フィート先からの「ささやき検査」だった。6つの文字または数字のうち、3つ以上について聞き取れなかった場合を失格とし、陽性尤度比は7.4、陰性尤度比は0.007と、特に聴力障害の可能性を除外するのに有効だった。一方、オーディオスコープを用いた聴力検査は、ささやき試験よりも検査能は劣り、陽性尤度比は3.1~5.8、陰性尤度比は0.03~0.40だった。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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クロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬「フィダキソマイシン」 アステラスが日本で独占的開発・販売へ

アステラス製薬は30日、米国のバイオ医薬品会社オプティマー社(英名:Optimer Pharmaceuticals, Inc.)と、同社のクロストリジウム・ディフィシル感染症治療薬である「Fidaxomicin(フィダキソマイシン)」について、日本における独占的開発・販売契約を2012年3月29日(米国時間)に締結したと発表した。「フィダキソマイシン」はオプティマー社が開発した新規の作用機序と選択的な抗菌スペクトルを有する経口の大環状抗菌剤で、同社の欧州子会社であるアステラス ファーマ ヨーロッパ Ltd.が、2011年2月に欧州、中東、アフリカ、独立国家共同体(CIS)の地域における本剤の独占販売権を、オプティマー社より取得している。欧州においては、「DIFICLIR」という製品名で販売の準備段階にあるという。また、日本国内においては同剤の開発は行われていないが、今後、同社が開発を進めていくとのこと。なお、欧米で実施されたクロストリジウム・ディフィシル感染症患者を対象とした第III相臨床試験において、同剤はバンコマイシンと同等の臨床治療効果が確認されているという。また、バンコマイシンに対して統計学的に有意に優れた総合治療効果と再発抑制効果があることも認められているとのこと。詳細はプレスリリースへhttp://www.astellas.com/jp/corporate/news/detail/post-141.html

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英国NHSで導入された簡易院内死亡率指数SHMIの特徴

英国・シェフィールド大学のMichael J Campbell氏らは、透明性、再現性、可視化に優れた、英国内全病院の入院データから導き出した簡易院内死亡率指数(summary hospital mortality index:SHMI)を開発した。これまでにも院内標準死亡率指数(hospital standardised mortality ratio:HSMR)など死亡率指数はいくつかあったが、SHMIはそれらと違い全入院・死亡データおよび退院30日以内データに基づくもので、2011年10月からNHS(英国保健サービス)の病院評価指標として採用されているという。BMJ誌2012年3月17日号(オンライン版2012年3月1日号)掲載報告より。5年間分の英国全入院データから導き出した指数Campbell氏らはSHMI開発に当たって、5年間分の英国内全入院データを用いて後ろ向き横断調査を行った。具体的には、2005年4月1日から2010年9月30日の、Hospital episode statistics for Englandのデータと英国統計局の死亡データとを突き合わせ、院内死亡と退院30日以内の死亡を主要評価項目として評価を行った。対象に含まれたのは、146の総合病院および72の専門病院に入院した3,650万例分のデータであった。簡易な予測因子で評価が可能評価を行った最終モデルで予測因子として含まれたのは、入院診断名、年齢、性、入院タイプ、共存症であった。院内死亡または退院30日以内死亡は、男性入院患者では4.2%、女性では4.5%で認められた。全入院の75%が救急入院で、それらの人での院内死亡は5.5%だった。対照的に、選択的入院者での院内死亡は0.8%だった。チャールソン共存症スコア0の院内死亡者の割合は2%であったのに対し、スコアが5以上の院内死亡者の割合は15%だった。これらの変数を用いると、地域性や救急外来の既往回数で補正後も、相対的標準院内死亡率が著しく変わることはなかった。Campbell氏らは、これらの予測因子を用いてSHMIを開発。その指数は、標準を逸脱するような病院を特定したり、また以前からの院内死亡率指数を強固なものとすることが示されたと述べている。

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ACC 2012 速報

2012年3月24日~27日まで米国・シカゴで『第61回米国心臓病学会(ACC.12)』が開催されます。Late-Breaking Clinical Trialsの発表を含めた主要トピックスの中から、事前投票で先生方からの人気の高かった上位6演題のハイライト記事をお届けします。ACC2012 注目の演題一覧2012年3月28日掲載現地時間:3月27日発表CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II現地時間:3月25日発表経カテーテル的腎除神経術、降圧作用は3年間持続:Symplicity HTN-12012年3月27日掲載現地時間:3月26日発表「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005現地時間:3月26日発表"On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験2012年3月26日掲載現地時間:3月24日発表自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験現地時間:3月24日発表動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

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ACC 2012 速報 自己骨髄単核球移植、虚血性心疾患例の心機能を改善せず:FOCUS-CCTRN試験

虚血性心不全〔左室機能障害〕に対する薬物治療の限界を受け、自己骨髄単核球(BMC)移植の有用性に期待が寄せられている。しかし残念ながら、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告された第II相無作為化試験 "FOCUS-CCTRN" では、心内膜への投与による虚血改善、心機能改善のいずれも確認されなかった。ただし、有用性が期待できるサブグループも示唆されており、米国テキサス・ハート・インスティチュートのEmerson C Perin氏は、今後に期待するとの姿勢を示した。本試験の対象は、症候性の左室機能低下(左室駆出率≦45%〕を認める安定冠動脈疾患92例である。全例、最大用量での薬物治療を受けている。平均年齢は63歳、NYHA心不全分類II度とIII度が90%以上を占めた。CCS狭心症分類は、Class IIが分類者の40%強と最も多かった。これら92例は、BMC群(61例)とプラセボ群(31例)に無作為化され、二重盲検法にて6か月間追跡された。BMC群では、腸骨上縁から採取した骨髄を自動化されたプロセス(Sepax)で純化し、100×106を心内膜に注入した。注入箇所は15箇所。いずれも、電気機械的マッピング(NOGAシステム)を用いて、"viable"と判断された部位である。6か月後、3つ設定されていた一次評価項目──「左室収縮末期容積(LVESV)」、「心筋酸素消費量(MVO2)」と「心筋SPECT上虚血」──はいずれも、BMC群とプラセボ群の間に有意差を認めなかった。ただし、試験前から定められていたサブ解析から、BMCが有用であるサブグループが浮かび上がった。すなわち、血管内皮前駆細胞(Endothelial Colony Forming Cell)濃度が中央値よりも高い群において、MVO2の有意な改善が認められた。また後付け評価項目だが「左室駆出率(LVEF)」も、CD34陽性細胞、CD133陽性細胞の血中濃度と有意な正の相関を示した。いずれも、内皮前駆細胞のマーカーとなり得る細胞だという。このような患者ではBMC移植が有用な可能性があると、Perin氏は述べた。ただし、年齢の中央値である「62歳未満」でもEFは有意に改善していたため、年齢とこれら細胞数の相関が気になる。しかしその点に関するデータは、現時点では持ち合わせていないとのことだった。なお、パネルディスカッションでは、採取骨髄の自動純化プロセスに問題はなかったのかとの指摘もあった。本試験は、今後、より詳細なデータが報告される予定だという。

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ACC 2012 速報 動脈硬化性疾患例に対するPAR-1阻害薬上乗せの有用性は確認されず:TRA 2°P-TIMI 50

経口プロテアーゼ活性化受容体1(PAR-1)拮抗剤は、「トロンビンによる血小板凝集」の抑制という、新たな機序を持つ抗血小板剤である。しかし、動脈硬化性疾患例全般に対する有用性は、TRA 2°P-TIMI 50試験の結果、疑問符がついた。ブリガム・アンド・ウィミンズ病院(米国)のDavid A. Morrow氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。なお、本試験は2月7日、米国Merck社から概要が公表されている。本試験の対象は、心筋梗塞(MI)、虚血性脳血管障害(iCVD)あるいは末梢動脈疾患(PAD)の既往を有する26,449例。全例、病態は安定しており、標準的薬物治療を受けていた。既往歴はMIが最多で67%、次いでiCVDの19%、PADの14%だった。チエノピリジン系を含む抗血小板薬併用(DAPT)は、MI既往例の80%弱、PADの28%、iCVDの8%に認められた。これら26,449例は、PAR-1拮抗剤 "vorapaxar" 2.5mg/日群(13,225例)とプラセボ群(13,224例)に無作為化され、二重盲検法で追跡された。しかし試験開始1年後、PAR-1拮抗剤群におけるiCVD既往例の頭蓋内出血増加を、安全性監視委員会から指摘される。iCVD例(4,883例)の追跡はこの時点で中止され、残り21,556例が、最終的に2.5年間〔中央値〕追跡された。ただし、評価項目の解析には、iCVD例も含めた。その結果、有効性の一次評価項目である「心血管系死亡、心筋梗塞、脳卒中」は、PAR-1拮抗剤群でプラセボ群に比べ有意に減少していた(9.3%/3年 vs 10.5%/3年、ハザード比 [HR]:0.87、95%信頼区間 [CI]:0.80~0.94、p<0.001)。iCVD例を除外しても同様で、PAR-1拮抗剤群におけるHRは0.84だった(p<0.001)。一方、PAR-1拮抗剤群では、出血も有意に増加していた。安全性一次評価項目である「GUSTO分類中等度~重度出血」(要輸血・血行動態著明増悪 [含む頭蓋内出血])発生率は、プラセボ群の「2.5%/3年」に対し「4.2%/3年」だった〔HR:1.66、p<0.001)。iCVD例を除外して解析しても同様だった(HR:1.55、p=0.049)。そこで、上記「有効性一次評価項目」と「安全性一次評価項目」を併せ、「全般的有効性」として発生リスクを比較した。その結果、PAR-1拮抗剤群とプラセボ群に有意差は認められなかった(HR:0.97、95%CI:0.90-1.04、vsプラセボ群)。iCVD例を除いて解析しても、同様の結果だった(HR:0.96、95%CI:0.88~1.05) 。この結果を受けMorrow氏は、PAR-1拮抗剤が全ての動脈硬化性疾患例に適しているとは思わないとした上で、有用性が期待できる患者群の特定が重要だと述べた。本試験のサブ解析からは、体重60kg以上でiCVD既往のないMI患者における、有用性が示唆されている。

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ACC 2012 速報 「マルチスライスCCTAによるACS除外」の有用性示唆:ACRIN PA 4005

急性冠症候群(ACS)診断が疑われる低~中等度リスク患者を対象に、マルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)を用いてACSを除外した場合、除外例における30日間「死亡・心筋梗塞」発生率は1%未満と極めて低いことが、無作為化試験 "ACRIN PA 4005" の結果、明らかになった。米国ペンシルバニア大学のHarold Litt氏が、Late Breaking Clinical Trialsセッションにて報告した。同氏は「CCTAを用いたACS除外は安全で効率的だ」と結論している。本試験の対象は、ACSを疑う症状がありながら、心電図上虚血性変化を認めない救急外来(ER)受診1,370例である。全米5施設から登録された。ACSを除外し得た例は含まれておらず、全例、TIMIリスクスコアは2以下だった。平均年齢は50歳弱、男女ほぼ半数ずつだった。これら1,370例が、即時CCTA施行群(908例)と、通常の診療を行う対照群(462例)に無作為化された。CCTA群では64列以上のモダリティを用い、狭窄が50%未満であれば加療せず帰宅、対照群では各施設の判断にゆだねた。Litt氏によれば米国の「通常診療」では、ER受診時に心電図検査と血中マーカーを検査し、それでACSが除外できない場合、入院または日を改めての「負荷試験」というのが一般的だという。30日間追跡した結果、CCTA所見に基づくACS除外の安全性が確認された。すなわち、CCTAにより「狭窄率<50%」とされ、加療せず帰宅した患者は83%に上ったが、それらの「30日以内の心臓死・心筋梗塞」(第一評価項目)発生リスクは、0%(95%信頼区間[CI]:0.00~0.57%)。95%CI上限が、当初仮説で設定した「1%」を下回った。「30日以内の重篤イベント発生率<1%」は、米国ガイドラインが「低リスク」とする基準だという。加えて、全CCTA群と対照群の「死亡・心筋梗塞」、「冠血行再建術施行」発生率にも有意差はなかった。CCTAを用いた鑑別はまた、医療経済的にも好ましいと考えられた。ERからの退院率は、CCTA群で50%と、対照群の23%に比べ有意に高い。院内滞在時間も、CCTA群で有意に短かった。一方、心臓カテーテル検査、ER再受診、再入院、心臓専門医受診──はいずれも、両群の頻度に差はなかった。現在、Litt氏らは、CCTAによるACS除外の安全性・経済性が長期間維持されるか、1年間の追跡を継続中だという。

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ACC 2012 速報 "On-pump" CABGに対する "Off-pump”の優越性示せず:CORONARY試験

わが国の冠動脈バイパス術(CABG)において、off-pump CABGの施行数はon-pumpをしのぐ。一方、off-pumpの予後改善作用がon-pumpを超えるとのエビデンスはない。Late Breaking Clinical Trialsセッションで報告されたCORONARY試験(CABG Off or On Pump Revascularization Study)もまた、off-pumpとon-pumpを比較した過去最大の試験ながら、off-pumpの優越性は証明されなかった。カナダ・マクマスター大学のAndré Lamy氏が報告した。CORONARY試験の対象は、正中胸骨切開によるCABGの適応がある4,752例。いずれも、「末梢血管疾患」、「腎機能低下」、「70歳以上」、「70歳未満だが危険因子保有」などのリスクを有する。試験開始時の平均年齢は68歳、男性が80%を占めた。EuroSCOREは「0~2」〔低リスク〕が3割弱、「3~5」〔中等リスク〕が半数強だった。また、40%弱は緊急手術例である。さらに、60%近くが3枝病変、20%弱が2枝病変例だった。これら4,752例が、”Off-pump”CABG群(2,375例)と"On-pump"CABG群(2,377例)に無作為化された。CABG術者は、off-pump、on-pumpともそれぞれ100例以上の経験がある、2年以上のキャリアを有する心臓外科医である。この点は、先に報告されているROOBY試験と大きく異なる。30日間追跡後、一次評価項目である「死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全」発生率は、off-pump群:9,8%、on-pump群:10.3%で両群間に有意差はなかった(ハザード比:0.95、95%信頼区間:0.79~1.14、p=0.59)。内訳を比較しても、いずれかの群で有意に減少していたイベントはなかった。ただし、血行再建術再施行は、off-pump群で有意に多かった。一方、輸血の必要、急性腎傷害はon-pump群で有意に多かった。Lamy氏は上記から、「熟練者が行う限り、off-pump、on-pumpいずれのCABGも合理的な選択肢」と結論した。これに対し壇上のパネリストからは「本試験はoff-pumpの優越性を証明できなかっただけであり、off-pumpとon-pumpの同等性は証明されているのか」との疑問の声があがった。確かに、当初仮説は「off-pump群で28%のリスク減少が見られる」というものである。これに対しLamy氏は、両群の結果の類似性を強調していた。なお、本試験には、もう一つの一次評価項目、「5年間の死亡、脳卒中、非致死性心筋梗塞、新規腎不全と冠血行再建術再施行」が設定されている。長期追跡によりoff-pumpとon-pumpの予後に差がつく可能性は否定できない。公表予定は2016年。結果が待たれる。

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ACC 2012 速報 CCTAを用いてACS鑑別改善:ROMICAT II

最終日のLate Breaking Clinical Trialsセッションでは、昨日のACRIN PA 4005試験に続き、急性冠症候群(ACS)鑑別におけるマルチスライス冠動脈CT造影(coronary CT angiography : CCTA)の有用性が示された。1,000例登録の無作為化試験 "ROMICAT II" である。CCTAを用いた結果、転帰を増悪させることなく、救急外来受診例の院内滞在時間は有意に短縮した。米国マサチューセッツ総合病院(MGH)のUdo Hoffmann氏が報告した。ROMICAT IIの対象は、ACRIN PA 4005と同じく「救急外来にて胸痛を訴え、ACSを確定も除外もできない」1,000例である。心電図上で虚血が確認された例、血中トロポニンT濃度上昇例、冠動脈疾患既往例などは除外されている。平均年齢は54歳、女性が45%強を占めた。これら1,000例は、501例がCCTA群に、499例が「通常診断」群に無作為化された。CCTA群では64列(以上)CCTAを施行、通常診断群ではストレステストなど、各施設が必要と判断した検査が行われた。ACSの有無は、参加施設が独自に判断する。なお参加9施設に、救急外来でCCTAをACS鑑別に用いた経験はない。CCTA読影者は本試験のために新たに教育を受けた。その結果、一次評価項目である「院内滞在時間」は。CCTA群:23.2時間、通常診断群:30.8時間と、CCTA群で有意(p=0.0002)に短縮していた。内訳を見ると、最終的にACSと診断された75例では両群間の滞在時間に有意差はなく、確定診断でACSが除外された例で著明に低値となっていた(CCTA群:17.2時間、通常診断群:27.2時間、p<0.0001)。背景には、CCTA群の46.7%が救急外来からそのまま帰宅したという事実がある(通常診断群:12.4%)。ちなみに、冠動脈造影を施行された患者は、CCTA群の12.0%、通常診断群の8.0%に過ぎなかった。さらに、CCTAによるACS除外の正確性も示唆された。全例の記録を研究グループが検証したところ、ACS偽陰性例は両群とも1例も認めなかった。また、診断後28日間の「死亡、心筋梗塞、不安定狭心症、緊急血行再建術施行」の発生率は、CCTA群で0.4%、通常診断群で1.0%と、有意差はなかった。本試験は米国国立心肺血液研究所(NHLBI)により実施された。

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医療コストが高い病院ほど、死亡率、再入院率、心イベント発生率は良好

カナダ・オンタリオ州の病院を対象とした調査の結果、医療コストが高い病院のほうが低い病院に比べ、急性心筋梗塞やうっ血性心不全、股関節部骨折などの30日死亡率が低いなど、治療アウトカムが良好であることが明らかにされた。カナダ・Institute for Clinical Evaluative SciencesのTherese A. Stukel氏らが、約39万人の入院患者について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月14日号で発表した。いわゆる国民皆保険下において、医療サービスの選択と集中が、よりよい患者アウトカムをもたらすのかを検討したもので、これまで明らかではなかった。30日・1年死亡率、再入院率、心イベント発生率などを比較研究グループは、カナダのオンタリオ州在住で、1998~2008年に、初回急性心筋梗塞(17万9,139人)、うっ血性心不全(9万2,377人)、股関節部骨折(9万46人)、大腸がん(2万6,195人)のいずれかで入院した18歳以上を、1年間追跡調査した。病院での終末期に支払われた医療コストや、医師、救急部門のサービスにかかる医療費と、入院患者の30日・1年死亡率、再入院率、主な心イベント発生率などアウトカムとの関連を調べた。うっ血性心不全30日死亡リスク、医療コスト最高三分位病院は最低三分位病院の0.8倍その結果、医療コストが最高三分位群の病院では、最低三分位群に比べ、患者アウトカムが有意に良好であることが示された。具体的には、年齢・性別補正後の30日死亡率は、医療コストが最高三分位群の病院と最低三分位群の病院ではそれぞれ、急性心筋梗塞で12.7%と12.8%、うっ血性心不全で10.2%と12.4%、股関節部骨折で7.7%と9.7%、大腸がんで3.3%と3.9%だった。完全補正後の最高三分位群の最低三分位群に対する相対30日死亡率は、急性心筋梗塞で0.93(95%信頼区間:0.89~0.98)、うっ血性心不全で0.81(同:0.76~0.86)、股関節部骨折で0.74(同:0.68~0.80)、大腸がんで0.78(同:0.66~0.91)だった。1年死亡率や再入院率、主な心イベント発生率も、同様の傾向を示した。医療コストが高い病院では、看護スタッフ比率が高く、入院中の専門医による診察回数が多く、急性心筋梗塞やうっ血性心不全患者は手術や内科的な専門治療を、大腸がん患者では術前の専門的治療をいずれも多く受けていた、などの特長が認められた。(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)

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両腕のSBP差15mmHg以上、血管疾患や死亡の指標に

両腕の収縮期血圧(SBP)の差が10mmHg以上の場合、末梢血管疾患などを想定した精査が必要で、差が15mmHg以上になると血管疾患や死亡の指標となる可能性があることが、英エクセター大学のChristopher E Clark氏らの検討で示された。末梢血管疾患は心血管イベントや死亡のリスク因子だが、早期に検出されれば禁煙、降圧治療、スタチン治療などの介入によって予後の改善が可能となる。両腕のSBP差が10~15mmHg以上の場合、末梢血管疾患や鎖骨下動脈狭窄との関連が指摘されており、これらの病態の早期発見の指標となる可能性があるという。Lancet誌2012年3月10日号(オンライン版2012年1月30日号)掲載の報告。両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連をメタ解析で検証研究グループは、両腕の血圧差と血管疾患、死亡率との関連を検証するために、系統的なレビューとメタ解析を行った。Medline、Embase、Cumulative Index to Nursing and Allied Health Literatureなどの医学関連データベースを検索して、2011年7月までに公表された文献を抽出した。対象は、両腕のSBPの差と鎖骨下動脈狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、生存のデータを含む論文とした。変量効果を用いたメタ解析を行い、両腕のSBP差と各アウトカムの関連について評価した。10mmHg以上の差があると、鎖骨下動脈狭窄のリスクが約9倍に28編の論文がレビューの条件を満たし、そのうち20編がメタ解析の対象となった。血管造影法を用いた侵襲的な試験では、狭窄率>50%の鎖骨下動脈狭窄の患者における両腕のSBP差の平均値は36.9mmHg(95%信頼区間[CI]:35.4~38.4)であり、10mmHg以上の差は鎖骨下動脈狭窄の存在と強い関連を示した(リスク比[RR]:8.8、95%CI:3.6~21.2)。非侵襲的な試験の統合解析では、両腕SBPの15mmHg以上の差は、末梢血管疾患(RR:2.5、95%CI:1.6~3.8、感度:15%、特異度:96%)、脳血管疾患の既往(RR:1.6、95%CI:1.1~2.4、感度:8%、特異度:93%)、心血管死の増加(ハザード比[HR]:1.7、95%CI:1.1~2.5)、全死因死亡(HR:1.6、95%CI:1.1~2.3)と関連を示した。10mmHg以上の差は末梢血管疾患と関連した(RR:2.4、95%CI:1.5~3.9、感度:32%、特異度:91%)。著者は、「両腕のSBPの10mmHg以上または15mmHg以上の差は血管の精査を要する患者の同定に役立ち、15mmHg以上の差は血管疾患や死亡の有用な指標となる可能性がある」と結論している。(菅野守:医学ライター)

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