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アトピー性皮膚炎重症度、黄色ブドウ球菌と多様なミクロフローラとの拮抗が関連?

 フランス・パリ第6大学のMuriel Bourrain氏らは、水治療中のアトピー性皮膚炎(AD)患者の生体内評価を行い、有益なミクロフローラと黄色ブドウ球菌コロニー形成とのバランスについて調べた。296検体を調べた結果、2つの異なる細菌群生と、多様なミクロフローラの存在を特定し、両者間でバランスを保とうとすることが、AD重症度と関連するキー要素であるように思われたことを報告した。European Journal of Dermatology誌オンライン版2013年11月26日号の掲載報告。 重症のAD病変において、黄色ブドウ球菌と共生細菌叢(フローラ)とのバランスが果たす役割は十分に解明されていない。本検討において研究グループは、AD患者の皮膚細菌群生の構造と、18日間の水治療コースの間におけるその変化を調べること、黄色ブドウ球菌と細菌コロニー形成、局所皮膚疾患、AD重症度との関連を評価することを目的とした。 中等度~重症のAD患者25例において、3つの皮膚部位(乾燥、炎症、健常)を特定し、治療前、治療開始直後(1日目)、10日後、18日後にサンプリングを行った。 検体の細菌群生の構造を、分子生物学アプローチである16S rRNA遺伝子プロファイリングを用いて評価し、外来受診時に毎回、AD重症度をSCORAD(SCORing Atopic Dermatitis)で測定した。 主な結果は以下のとおり。・296検体のクラスター解析の結果、2つの異なる細菌群生プロファイルが示された。1つは、黄色ブドウ球菌に対応する2つのピークを有するもので、もう1つは、多様なミクロフローラの存在を見分ける複数のピークを示すものであった。・ベースライン時に、乾燥部位は炎症部位よりも、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成が少ないように思われた。・水治療18日後、主に炎症部位と湿潤部位で、黄色ブドウ球菌によるコロニー形成数(p<0.05)とSCORAD(p<0.00001)が有意に減少し、多様なミクロフローラの出現が促進されていた。・以上の結果を踏まえて著者は、「今回の検討において、2つの細菌群生プロファイルと多様なミクロフローラを特定した。両者間でバランスを保とうとすることが、AD病変の重症度と関連するキー要素であるように思われた」と結論している。

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4価ワクチンでインフルエンザの予防率をどれくらい向上できるか/NEJM

 B型の2株(ビクトリア系、山形系)を含めた不活化インフルエンザ4価ワクチン(quadrivalent influenza vaccine:QIV)の有効性に関する、3~8歳児5,000例超を対象とした第3相無作為化対照試験の結果が発表された。ワクチン有効率は全体で59.3%、中等症~重症例では74.2%であったことなどが示された。試験を実施・報告したレバノン・アメリカン大学ベイルート病院のVarsha K. Jain氏らは、「QIVはインフルエンザA型とB型を予防する際に有効であることが示された」と結論している。インフルエンザワクチンはWHOではA型2株とB型1株の3価製剤を推奨し、日本でも採用されている。しかし、B型について2株が混合流行する傾向が続いており、4価製剤が開発された。米国では今シーズンから4価が導入されているという(http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr-sp/2257-related-articles/related-articles-405/4099-dj4053.html)。NEJM誌オンライン版2013年12月11日号掲載の報告より。3~8歳児5,168例を対象に無作為化試験 小児(3~8歳)のインフルエンザA型またはB型の予防に関するQIVの有効性を検討した無作為化試験は、多国間の15施設(バングラディシュ、ドミニカ共和国、ホンジュラス、レバノン、パナマ、フィリピン、タイ、トルコ)で行われた。各国で登録された被験児は、QIVを接種する群とコントロールとしてA型肝炎ワクチンを接種する群(以下、対照群)に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは、リアルタイムPCR(rt-PCR)法で確認されたインフルエンザA型またはB型で、副次エンドポイントは、rt-PCR確認の中等症~重症のインフルエンザと、rt-PCR陽性のインフルエンザウイルス培養株であった。 ワクチンの有効性と日常生活または医療サービス利用への影響に関する評価を、全ワクチン接種コホート群(計5,168例、各群2,584例)、パー・プロトコルコホート群(QIV群2,379例、対照群2,398例)について行った(平均年齢5.4歳、男女ほぼ同数)。全接種コホートでのQIV有効率59.3%、中等症~重症例では74.2% 被験児登録は2010年12月に開始され、インフルエンザ様疾患(37.8℃以上の発熱、咳・咽頭痛・鼻水・鼻閉のうち1つ以上の症状と定義)の発症に関するサーベイランスが6ヵ月以上、2011年10月まで行われた。疾患発症児は発症から14日間日記による記録が行われた。 結果、全ワクチン接種コホートにおけるインフルエンザ様疾患発生は、QIV群563例(422児)、対照群657例(507児)であった。rt-PCR確認インフルエンザの発生は、QIV群62例(2.40%)、対照群148例(5.73%)で、QIV有効率は59.3%(95%信頼区間[CI]:45.2~69.7)であることが示された。培養確認インフルエンザに対する効果は59.1%(97.5%CI:41.2~71.5)であった。 同コホートで中等症~重症であったrt-PCR確認インフルエンザ例についてみると、罹患率はQIV群16例(0.62%)、対照群61例(2.36%)で、QIV有効率は74.2%(97.5%CI:51.5~86.2)であった。 パー・プロトコル群では、QIV有効率は55.4%(95%CI:39.1~67.3)、培養確認インフルエンザに対する効果は55.9%(97.5%CI:35.4~69.9)であった。また、同コホートでの中等症~重症例の有効率は、73.1%(97.5%CI:47.1~86.3)だった。 QIVは対照と比較して、39℃超の発熱および下気道疾患のリスク抑制と関連していた。パー・プロトコル群における相対リスクはそれぞれ、0.29(95%CI:0.16~0.56)、0.20(同:0.04~0.92)だった。 QIVは、4株すべてについて免疫獲得を達成した(接種後6ヵ月時80~90%超)。 重篤な有害イベントの発生は、QIV群36例(1.4%)、対照群24例(0.9%)だった。

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うつ病と糖尿病の合併患者、臨床像は発症時期により異なる

 うつ病と2型糖尿病併存の臨床像は、うつ病が糖尿病より先行しているか、糖尿病発症後にうつ病を発症したかによって、大きく異なることが明らかにされた。オーストラリア・西オーストラリア大学のDavid G. Bruce氏らが、Fremantle Diabetes Study Phase IIの被験者について、分析を行い報告した。結果を踏まえて著者は、「時間的パターンに留意することで、2型糖尿病患者におけるうつ病の、病因、診断や治療の研究を前進させることに結びつくだろう」と結論している。PLoS One誌2013年12月号の掲載報告。 研究グループは、住民ベースの観察研究Fremantle Diabetes Study Phase IIの2型糖尿病患者を対象とした。被験者は、うつ病(lifetime depression)の評価をBrief Lifetime Depression Scale(本研究のために開発・検証したスケール)を用いて受けており、最近のうつ症状(Patient Health Questionnaire-9;PHQ-9)と抗うつ薬の使用に関する情報も補足して分析した。 主な結果は以下のとおり。・評価は、患者1,391例(平均年齢65.7±11.6歳、男性51.9%)を4群に層別化して行った。第1群「非うつ病群」58.7%、第2群「糖尿病診断前にうつ病を診断されていた群」20.8%、第3群「うつ病と糖尿病を2年以内に診断されていた群」6.0%、第4群「糖尿病診断後にうつ病を診断された群」14.5%であった。・第2群「糖尿病診断前うつ病診断群」のうつ病診断時期は、中央値15.6年前で発症時の年齢は37.2±14.7歳であった。・この第2群の患者の臨床的特徴は、セルフケア行動の減退、症候性末梢動脈疾患が多くみられることを除いて、非うつ病患者と類似していた。・第4群「糖尿病診断後うつ病診断群」のうつ病診断時期は、中央値9.9年後で発症時の年齢は59.8±13.0歳であった。・この第4群の患者の糖尿病罹患期間は長く、血糖コントロールが不良で、より強化された治療を受けており、糖尿病性合併症を多く有していた。・また第4群は第2群患者よりも現在うつ病を有している患者が多く、しかし抗うつ薬を投与されている患者は少ない傾向がみられた。・以上のように、うつ病と2型糖尿病の臨床像は、それらの時間的関係性によってさまざまであることが示された。これらの知見は、糖尿病患者におけるうつ病の発症には複数のパターンがあり、それが診断と治療において重要な意味を持つことが示唆された。関連医療ニュース SSRI、インスリン抵抗性から糖尿病への移行を加速! 「糖尿病+うつ病」に対する抗うつ薬の有効性は“中程度” 抗精神病薬性の糖尿病、その機序とは

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眼球に突き刺さったのは・・・まさかの【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第9回

眼球に突き刺さったのは・・・まさかの突然ですが、私は耳かきが上手です。いえ、他人の耳かきではなく、自分の耳かきが上手なのです。難易度が高い“モノ”が耳道の奥のほうにあっても、上手に耳かきで取り出せる自信があります。というわけで、今回は耳かきに関する医学論文を検索してみました。耳かきに関して医師が診察することがあるとすれば、多くは外傷性鼓膜穿孔だと思います。海外とは違って日本は耳かきの文化が根付いていますから、鼓膜穿孔の最も多い原因として耳かきを考えなければなりません。とくに耳かきの多くは木や竹でできていますから、“しなり”が良いために鼓膜穿孔だけでなく内耳まで障害をもたらす可能性もあります(日耳鼻 2010;113:679-686.)。耳かきによる外傷性鼓膜穿孔についてはいくつも報告があるため、臨床背景や手術適応などある程度確立されていますが、耳かきによる“眼の損傷”という想像すらしたくない世にも恐ろしい症例報告があります。今回はこの論文をご紹介したいと思います。Yamashita T, et al.Transorbital intracranial penetrating injury from impaling on an earpick.J Neuroophthalmol. 2007; 27:48-49.いったいどれだけお酒を飲んだのか、酩酊状態で86歳の男性がある日耳かきを触っていたそうです。その男性は、誤って自分の耳かきを上眼窩裂から奥深くに刺してしまいました。よほど酩酊状態にあったのでしょうか、脳幹の近くまで到達してしまったそうです。・・・・・・驚異的な深さです。患者さんは外側後頭下開頭法で緊急手術を受け、耳かきは海綿静脈洞の出血をコントロールしながら抜去されました。耳かきは第5脳神経・第6脳神経の間に横たわり、耳かきの先端は橋前槽まで到達していました。同側の眼筋麻痺と眼瞼下垂という後遺症を残したものの、彼は一命を取りとめたそうです。ちなみにこの症例報告では上眼窩裂に突き刺さった耳かきの写真があるのですが、いくら医療従事者が見ているこのウェブサイトとはいえあまりにショッキングな写真なので、掲載は控えさせていただきます。もう少し耳かきが奥まで到達していたら、完全に脳幹に到達していた可能性もあります。本症例では早急に手術が行えたことが功を奏しました。日本の場合、お箸や耳かきのように木や竹でできた長いものが多いため、これが頭蓋内に到達すると容易に感染を起こしうるため、できれば早期に手術で取り除くほうがよいとされています(Surg Neurol. 1977;7:95-103.)。ほかにも、日本独特の症例報告として、お箸が目に突き刺さった小児の症例報告もあります。これも想像したくないですね(Neurol Med Chir (Tokyo). 2001;41:345-348.)。皆さんも、酩酊状態で細長いものを触らないように気をつけましょう。

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CORAL研究が動脈硬化性腎動脈狭窄症の診療にもたらすもの(コメンテーター:冨山 博史 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(163)より-

CORAL研究は、重症動脈硬化性腎動脈狭窄(血管造影で80%以上狭窄あるいは60~80%未満狭窄で圧格差20mmHg以上と定義)で、高血圧(2剤以上の降圧薬服用だが収縮期血圧[SBP]155mmHg以上と定義)あるいは慢性腎臓病(eGFR 60mL/分/1.73m2未満と定義)を有する症例に対する腎動脈形成術・ステント留置術(renal revasculalization stenting: RRVS)の効果を検討した多施設共同前向き研究である。  被験者は、薬物療法+腎動脈ステントを受ける群(467例)と薬物療法のみを受ける群(480例)に割り付けられ、重大心血管・腎イベント(心血管あるいは腎イベントが原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全による入院、進行性腎障害、腎代替療法の必要性の複合エンドポイント発生)について平均3.5年の追跡を受けた。 動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVSは、腎機能障害増悪を予防し、透析導入回避、血圧コントロール改善、さらに心血管疾患発症予防に有用である可能性が報告されてきた1)。たしかに、RRVSにて腎機能改善、血圧コントロール改善、心不全改善の症例を経験する。しかし、われわれがRRVSの効果を認める症例は一部であり、多くの症例はRRVSの効果を明確に確認できないことを経験的に知っている。しかし、RRVSの恩恵を受ける症例を選別する方法がなく、一方、RRVS実施がデメリットである十分な根拠もない。ゆえに、血圧・腎機能が安定した動脈硬化性腎動脈狭窄症例について、その診療方針は十分確立されていなかった1)。 ASTRAL研究は、2009年に報告された動脈硬化性腎動脈狭窄症例における腎機能・血圧に対するRRVSの効果を検討する前向き研究であり、RRVSの効果に否定的な研究結果であった2)。しかし、ASTRAL研究では、“腎動脈狭窄の程度評価が厳密でなく”、“重症狭窄例は各施設試験担当者がRRVSを実施していた”などの問題が指摘されていた。 CORAL研究は、こうした先行研究の限界に解答を提示した。CORAL研究は、腎動脈狭窄の程度はCore laboで確認され、薬物治療群、薬物+RRVS群の割り振りもランダム化して実施された。そして血圧コントロールが不良でなく、かつ、腎機能障害がないか軽度で増悪を認めない動脈硬化性腎動脈症例では、RRVSを実施する大きなメリット(腎機能障害改善、心血管疾患発症予防、顕著な降圧効果)がないことを示した。 一方、高齢者では潜在性の動脈硬化性腎臓脈狭窄の症例は多数存在するとする報告がある(65歳以上では6%に腎動脈狭窄を合併する)3)。しかし、そういった症例を積極的に検出する臨床的意義は明確にされていなかった。CORAL研究の結果は、高齢者で腎機能・血圧が安定している症例では、積極的に腎動脈狭窄を検出する必要性が少ないことも示唆している。 これまでRRVS実施が推奨される症例として、1.血圧コントロールが不良になった。2.腎機能障害が進展増悪している。3.原因不明の肺水腫、心不全を繰り返す。などが挙げられていた1)。 しかし、CORAL研究では難治性高血圧、3ヵ月以内の心不全発症、血清クレアチニン 3.0mg/dL以上の症例は除外している。ゆえに、CORAL研究はこのようなRRVS実施推奨例へのRRVS実施の妥当性を検証する研究ではない。 CORAL研究の結果を踏まえてわれわれができることは、1.降圧薬で血圧がコントロールされ、血清クレアチニン 3.0mg/dL以下で腎機能障害の増悪のない症例にはRRVS実施の必要はなく、慎重な経過観察を行う。そして、血圧コントロール不良・腎機能の増悪を認めた場合にRRVS実施の可否を検討する。ただし、今後こういった症例に対する新たな治療法が開発される可能性もある4)。2.難治性高血圧、腎機能障害増悪、原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全の症例については基本、これまでと同様の診療方針となる。ただし、CORAL研究では、RRVS施行は薬物治療単独実施群にくらべて有意に血圧を低下させるが、顕著な降圧は得られなかった。ゆえに、難治性高血圧症例にはRRVSと腎交感神経焼灼術の併用も将来的に検討する必要がある1)。また、CORAL研究では3ヵ月以上前に発症した心不全の既往はRRVSの効果への有意な影響因子でないことが確認されている。ゆえに、単に心不全の既往のみでRRVS実施の有用性を判断するのは否定的と考えられる。原因不明の肺水腫・繰り返しの心不全をRRVS実施の根拠とする場合は慎重に適応を検討する必要がある。さらに、腎機能増悪については血清クレアチニン 3.0mg/dL以上への増加が一つの目安となるかも知れない。 いずれにしても、CORAL研究にて、動脈硬化性腎動脈狭窄に対するRRVS実施の可否をIntervention実施医師のみで決定することは終焉を迎えた。今後、動脈硬化性腎動脈狭窄症例の診療には、高血圧専門医、腎臓専門医、循環器専門医が、密接なコミュニケーションをもってあたることが適切である。

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COPD患者へのβ遮断薬投与:原則禁忌だが、心筋梗塞後の予後は良好/BMJ

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者へのβ遮断薬治療は、気道けいれんを誘発する可能性があるため原則禁忌とされているが、心筋梗塞後の生存率を有意に増大することが、英国住民ベースのコホート研究の結果、明らかにされた。死亡ハザード比は、心筋梗塞発症前から服用していた患者で0.59、発症入院時に服用を開始した患者では0.50と、いずれの時期に開始した場合でも生存率の増加と関連していた。β遮断薬は心筋梗塞後の死亡および再発リスクを低下し、COPD患者にも有益であるとのエビデンスは積み上がってきているが、同患者への使用は制限され続けている。今回の結果を踏まえて著者は「処方されないことが同患者の心筋梗塞後の死亡を増大している可能性があり、われわれの知見は、心筋梗塞後のCOPD患者にβ遮断薬がより広く使用されなければならないことを示唆するものであった」とまとめている。BMJ誌オンライン版2013年11月22日号掲載の報告より。初発MIのCOPD患者、β遮断薬治療有無・開始時期と生存の関連を調査 本検討は、心筋梗塞(MI)初発のCOPD患者について、β遮断薬処方の有無および治療開始時期が生存と関連しているかどうかを調べること、また関連の規定因子を明らかにすることを目的とするものであった。 2003~2011年の英国MIレジストリ(Myocardial Ischaemia National Audit Project:MINAP)とGeneral Practice Research Database(GPRD)を結びつけ、電子カルテ記録を基に分析を行った。 被験者は、2003年1月1日~2008年12月31日に初発MIがMINAPに記録されたCOPD患者で、GPRDまたはMINAPにMI既往の記録がなかった患者だった。 主要評価項目は、β遮断薬処方有無別のCOPD患者におけるMI発症後の、死亡に関するCoxハザード比(HR)(年齢、性別、喫煙状態、服薬状況、併存疾患、MIタイプ、梗塞重症度などの共変量で補正)だった。退院日からのフォローアップ開始でも入院時処方開始と同程度の保護効果 解析には1,063例が組み込まれた。そのうち、β遮断薬の非処方患者は586例(55.1%)、MI発症前から処方を受けていたのは244例(23.0%)、MI入院時に処方が開始されたのは233例(21.9%)だった。 結果、追跡期間中央値2.9年において、MI入院時処方開始群において、有意に大幅な生存ベネフィットがあることが認められた(完全補正後HR:0.50、95%信頼区間[CI]:0.36~0.69、p<0.001)。また、MI発症前処方開始群でも、有意な生存ベネフィットが認められた(同:0.59、0.44~0.79、p<0.001)。これらの処方有無間の差は、傾向スコア分析でも同様の結果が得られた。 また、退院日からフォローアップを開始した場合でも、エフェクトサイズはわずかに減弱したものの、入院時処方開始と同程度の保護効果がみられた(同:0.64、0.44~0.94、p=0.02)。

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植込み型補助人工心臓と血栓症/NEJM

 米国・クリーブランドクリニックのRandall C. Starling氏らは、著者の施設を含めた3施設で行った調査の結果、植込み型補助人工心臓「HeartMate II」について、デバイスに関連したポンプ血栓症の発生が増加しており、病的状態や死亡と大きく関連していることが明らかになったと報告した。HeartMate IIの重要試験および市販後臨床試験の結果では、血栓症の発生は2~4%と報告されているが、著者の施設の質的レビューで、ポンプ血栓症の発生が予想外に突然、増大していることが観察され本検討を行ったという。NEJM誌オンライン版2013年11月27日号の掲載報告より。3施設で施術を受けた837例について調査 Starling氏らは複数施設において、ポンプ血栓症、乳酸脱水素酵素(LDH)値上昇の発生について調べ、LDH値が塞栓症(あるいは関連する溶血反応)の発生を予測するかどうか、また、異なる治療マネジメント戦略のアウトカムを調べた。 2004~2013年半ばまでに、3施設(クリーブランドクリニック、ワシントン大学バーンズ・ジューイッシュ病院、デューク大学医療センター)で施術を受けた患者837例(デバイス895個)のデータを解析した。被験者の平均年齢は55±14歳だった。 主要エンドポイントは、確認されたポンプ血栓症で、副次エンドポイントは、確認・疑い例を含む血栓症、LDH値の長期的変動、ポンプ血栓症後のアウトカムなどであった。2年間でポンプ血栓症が2.2%から8.4%へ上昇、前兆はLDH値の倍増 確認されたポンプ血栓症は総計72件(患者66例)だった。さらに36件の血栓症がデバイスと関連している可能性があった。 デバイス留置後3ヵ月時点の確認されたポンプ血栓症の発生率は、2011年3月頃では2.2%(95%信頼区間[CI]:1.5~3.4%)だったが、2013年1月1日には8.4%(同:5.0~13.9%)に上昇していた。 また、2011年3月1日以前は、デバイス留置から血栓症発生までの時間中央値は18.6ヵ月(95%CI:0.5~52.7)であったが、2011年3月1日以降は、2.7ヵ月(同:0.0~18.6)だった。 留置後3ヵ月以内のLDH値上昇の発生は、血栓症の発生を反映していた。確認されたポンプ血栓症の発生前6週間で、平均して同値が540 IU/Lから1,490 IU/Lへと上昇していたことが認められ、「LDH値の倍増」が血栓症発生の前兆であることが示された。 血栓症の治療管理は、患者11例は心臓移植によって(1例は移植後31日で死亡)、21例はポンプの代替によって行われた。これらの治療を受けた患者の死亡率は、血栓症が発生しなかった患者と同程度だった。心臓移植やポンプ代替を受けなかった患者は40例(血栓症40件)で、これら患者のポンプ血栓症発生後6ヵ月時点の保険統計上の死亡率は、48.2%(95%CI:31.6~65.2)であった。 結果を踏まえて著者は、「われわれは左室補助装置(LVAD)が、多くの進行性心不全患者の生命を維持する治療法であることは認める。しかし、LVADの治療レコメンデーションにおいて、この最新のリスクベネフィットの概要について説明されるべきである」と指摘している。

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植物性、天然由来の薬剤は色素沈着の治療に有効か

 米国・カリフォルニア大学のWhitney A. Fisk氏らは、皮膚色素沈着に対して使用される植物性薬剤(botanically derived agent)について、臨床所見を見直すことを目的にシステマティックレビューを行った。色素沈着障害に対する治療は、皮膚科医やプライマリ・ケア医の日常診療で求められることが多い。そうしたなかで、薬用化粧品やナチュラルプロダクトの産業が急速に成長しており、多くの植物性薬剤が、色素沈着障害を改善するとうたっていることから本検討を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2013年11月23日号の掲載報告。 研究グループは、MEDLINE、Embaseのデータベースを検索し、包含基準を満たした26本の論文を特定した。各論文の研究方法を分析し、試験の再現性を基準に等級分けをした。 主な結果は以下のとおり。・いくつかの植物性薬剤は治療オプションとして有望のようにみられた。しかし方法論的に厳密に行われた試験がほとんどなかった。・いくつかの植物エキスとフィトケミカル(phytochemical:植物中に存在する天然の化学物質)が、紫外線照射によって引き起こされた表皮のメラニン沈着および色素沈着を、明るくする効果があった。・老人性色素斑(日光黒子)あるいは皮膚色素沈着に対する治療の結果は混同していた。・厳密にデザインされた試験がなかったため、検討された結果を確認するためのさらなる検討が行われることが重要である。・治療に反応しにくい皮膚色素沈着では、色素沈着のサブタイプが治療効果に関して重要であることが示唆された。・植物エキスは、色素沈着の治療を統合するような役割を有する可能性があった。標準治療との統合についてさらなる検討が必要であることが示唆された。・また著者は、「植物性薬剤を用いた治療を検討する際は、色素沈着が悪化するなど副作用について検討すべきである」とも指摘した。

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太り過ぎのリスクは、血圧、脂質、血糖のコントロールによってかなり解消できる/Lancet

 高BMIにより冠動脈心疾患や脳卒中のリスクが増大した集団では、血圧、コレステロール、血糖を低下させることで、リスクの増分が大幅に減少することが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のGoodarz Danaei氏らGlobal Burden of Metabolic Risk Factors for Chronic Diseases Collaboration(BMI Mediated Effects)の調査で示された。この30年間で、世界的にBMIが上昇し糖尿病罹患者数が増加しているのに対し、全体的な平均血圧やコレステロールは低下または横ばいの状況だという。これら3つのメタボリック・リスク因子を改善することで、高BMIによる有害な作用をどの程度軽減できるかは、重要な臨床的かつ公衆衛生学的な課題であった。Lancet誌オンライン版2013年11月22日号掲載の報告。総計約1,800万人、冠動脈心疾患5万7,000件、脳卒中3万1,000件につき解析 研究グループは、冠動脈心疾患や脳卒中の発症に及ぼすBMIの影響が、どの程度血圧やコレステロール値、血糖値に依存しているかを定量化し、これらの因子の依存度を評価する調査を行った。 1948~2005年までに発表された97件(東・東南アジア33件、西ヨーロッパ32件、北米15件、オーストラリア・ニュージーランド10件、南米・中央/東ヨーロッパ・北アフリカ・中東7件)の前向きコホート試験(総参加者数約1,800万人)のデータをプールした。イベント発生数は、冠動脈心疾患が5万7,161件、脳卒中は3万1,093件だった。個々のコホートから、18歳未満、BMI値20未満の参加者、および冠動脈心疾患、脳卒中の既往歴のある参加者を除外した。 BMIの冠動脈心疾患および脳卒中に対するハザード比(HR)を、血圧、コレステロール値、血糖値のすべての組み合わせで調整した場合としない場合に分けて推算。ランダム効果モデルを用いてHRをプールし、3つのメディエーターで調整後の増分リスクの減少を算出した。冠動脈心疾患の増分リスクの約3分の1、脳卒中の約3分の2を血圧が占める BMI値が5増加するごとに、交絡因子調整済みのHRが冠動脈心疾患で1.27(95%信頼区間[CI]:1.23~1.31)、脳卒中で1.18(同:1.14~1.22)に上昇した。 3つのメタボリック・リスク因子で調整したところ、HRは冠動脈心疾患が1.15(95%CI:1.12~1.18)へ、脳卒中は1.04(同:1.01~1.08)へと低下し、BMIによる冠動脈心疾患の増分リスクの46%(同:42~50)、また脳卒中の増分リスクの76%(同:65~91)が、高血圧や高血糖、高コレステロールによって誘導されることが示唆された。 血圧が最も重要なメディエーターであり、BMIによる冠動脈心疾患のリスクの増分の31%(95%CI:28~35)、脳卒中の場合はその65%(同:56~75)を占めた。これら3つのメディエーターによって誘導されるリスクの増分の割合は、アジアと西欧(北米、西ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランド)との間で差は認めなかった。 正常体重(BMI:20~25未満)に比べ、過体重(同:25~30未満)および肥満(同:30以上)によって冠動脈心疾患および脳卒中のリスクが有意に増大し、3つのメディエーターによって誘導された過体重によるリスクの増分は50%(95%CI:44~58)、肥満による増分は44%(同:41~48)だった。脳卒中の発症に占める過体重のリスクは98%(同:69~155)、肥満のリスクは69%(64~77)だった。 著者は、「血圧、コレステロール、血糖を低下させる介入により、高BMIによる冠動脈心疾患の増分リスクが約半分に減少し、脳卒中の増分リスクは約4分の3にまで低下した。肥満よりも過体重でリスクが大きかった」とまとめ、「3つのメディエーターを低下させる介入により、高BMIが心血管疾患に及ぼす影響のかなりの部分が解消される可能性がある。すべてのベネフィットを達成するには最適な体重の維持が必要である」と指摘している。

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利尿薬に低用量ドパミンを上乗せするメリットは?:腎機能障害を有する急性心不全患者/JAMA

 急性心不全で腎機能障害を有する患者に対し、利尿療法に低用量ドパミン(商品名:イノバンほか)または低用量のBNP製剤ネシリチド(国内未承認)のいずれの追加療法を行っても、利尿療法単独の場合と比べて、うっ血除去の強化および腎機能改善への有意な効果は示されなかったことが報告された。米国・メイヨークリニックのHorng H. Chen氏らによる大規模な多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験「ROSE」からの報告で、先行研究の小規模試験では、いずれもアウトカム改善の可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2013年11月18日号掲載の報告より。低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群に急性心不全患者360例を割り付け ROSE(Renal Optimization Strategies Evaluation)試験は、プラセボ(利尿療法単独)と比較として、(1)利尿療法+低用量ドパミン(2μg/kg/分)、(2)利尿療法+低用量ネシリチド(0.005μg/kg/分、ボーラスなし)の2つの治療戦略がそれぞれ、腎機能障害を有する急性心不全患者のうっ血除去を強化する可能性、および腎機能を改善する可能性があるとの仮説を検証することを目的とするものであった。 2010年9月~2013年3月に北米26地点で被験者を登録し、急性心不全で入院し腎機能障害(15~60mL/分/1.73m2)が認められた360例を、入院から24時間以内に無作為化した。被験者は非盲検下に1対1の割合で、低用量ドパミン治療戦略群と低用量ネシリチド治療戦略群に割り付けられ、さらに各群患者は無作為二重盲検下に2対1の割合で、実薬治療群とプラセボ群に割り付けられた。 主要エンドポイントは、72時間累積尿量(うっ血除去のエンドポイント)、登録から72時間までの血清シスタチンC値の変化(腎機能のエンドポイント)などを含んだ複合とした。低用量ドパミン群も低用量ネシリチド群も有意な効果はみられず 低用量ドパミン群122例、低用量ネシリチド群119例を、プールプラセボ群119例と比較した。 結果、プラセボと比較して、低用量ドパミン追加投与の、72時間累積尿量に関する有意な効果はみられなかった。同値は低用量ドパミン群8,524mL(95%信頼区間[CI]:7,917~9,131)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は229mL(同:-714~1,171)だった(p=0.59)。 また、血清シスタチンC値の変化に関する有意な効果もみられなかった。同値は低用量ドパミン群0.12mg/L(95%CI:0.06~0.18)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は0.01mg/L(同:-0.08~0.10)だった(p=0.72)。 同様に、低用量ネシリチド追加投与についても、両エンドポイントに関する有意な効果がみられなかった。72時間累積尿量は、低用量ネシリチド群8,574mL(95%CI:8,014~9,134)vs. プラセボ群8,296mL(同:7,762~8,830)で、両群差は279mL(同:-618~1,176)だった(p=0.49)。血清シスタチンC値の変化は、低用量ネシリチド群0.07mg/L(同:0.01~0.13)vs. プラセボ群0.11mg/L(同:0.06~0.16)で、両群差は-0.04mg/L(同:-0.13~0.05)だった(p=0.36)。 副次エンドポイント(うっ血除去、腎機能あるいは臨床的アウトカムに関する)についても、低用量ドパミン群と低用量ネシリチド群の効果を示すものは認められなかった。

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人工股関節と膝関節置換術、肺塞栓症発生率はどちらが高いか?

 これまで、米国における、待機的初回人工股関節/膝関節置換術における入院中の肺塞栓症発生率は不明であった。以前の研究ではがん、外傷または再置換術の患者が含まれていたためである。今回、米国・メリーランド大学メディカルセンターのUsman Zahir氏らが行った後ろ向きコホート研究の結果、膝関節置換術は股関節置換術より入院中の肺塞栓症の発生率および発生リスクが高いことが明らかとなった。とくに複数関節置換術でのリスクが最も高く、死亡と関連していたという。Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年11月20日の掲載報告。 研究グループは、1998~2009年の「医療費および利用状況に関する調査プロジェクト:入院患者サンプルデータベース(Healthcare Cost and Utilization Project Nationwide Inpatient Sample)」を用い、後ろ向きコホート研究を行った。 解析対象は、待機的初回人工股関節または膝関節置換術を受けた60歳以上の患者504万4,403例で、主要評価項目は入院中の肺塞栓症、副次的評価項目は死亡率とした。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、片側人工膝関節置換術を受けた人が66%を占め、複数関節置換術(両側膝関節、両側股関節、または膝関節と股関節)を受けたのは5%未満であった。・肺塞栓症の全発生率は0.358%(95%信頼区間[CI]:0.338~0.378)であった。 ・肺塞栓症発生率は手術の種類によって異なり、複数関節置換術が最も高く(0.777%、95%CI:0.677~0.876)、次いで膝関節置換術(0.400%、95%CI:0.377~0.423)、最も低いのが股関節置換術(0.201%、95%CI:0.179~0.223)であった。・複数関節置換術施行患者の肺塞栓症発症の補正後オッズ比は、股関節置換術施行患者の3.89倍であった。~進化するnon cancer pain治療を考える~ 「慢性疼痛診療プラクティス」連載中!・知っておいて損はない運動器慢性痛の知識・身体の痛みは心の痛みで増幅される。知っておいて損はない痛みの知識・脊椎疾患にみる慢性疼痛 脊髄障害性疼痛/Pain Drawingを治療に応用する

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少し歩くだけでもうつ病は予防できる

 うつ病は有病率が高くQOLに影響を与えることから、うつ病の予防因子を特定するため多くの研究が求められている。カナダ・トロント大学のGeorge Mammen氏らは、運動がうつ病の発症を予防するかを前向き研究のメタアナリシスにより検討した。American journal of preventive medicine誌2013年11月号の報告。 身体活動とうつ病との関係を検討した縦断的研究を2012年12月までに各データベース(MEDLINE、Embase、PubMed、PsycINFO、SPORTDiscus,、Cochrane Database of Systematic Reviews)より検索を行った。抽出されたデータは、2012年7月から2013年2月の期間で分析された。研究の質は2名の独立したレビュアーが評価した。主な結果は以下のとおり。・検索結果より得られた6,363件のうち30件の研究が分析対象となった。・このうち25件の研究で、ベースラインの身体活動とその後のうつ病リスクとの間に負の相関があることが示されていた。・大半の研究は方法論的な質が高く、身体活動が将来のうつ病発症を予防することを示す結果であった。・身体活動はどのようなレベルであれ(たとえ1週間当たり150分未満のウォーキングなど低いレベルであっても)、うつ病の予防に有効であると考えられる。関連医療ニュース 食生活の改善は本当にうつ病予防につながるか 日本人のうつ病予防に期待?葉酸の摂取量を増やすべき 認知症を予防するには「体を動かすべき」  担当者へのご意見箱はこちら

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オメガ3脂肪酸は皮膚がん予防に有用?

 オメガ3多価不飽和脂肪酸(n-3 PUFA)には皮膚悪性腫瘍に対する予防的効果は、現状ではエビデンスに乏しいものであることを、オーストラリア・Albany Health CampusのSophie E Noel氏らがシステマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。ラボデータでは、n-3 PUFAは皮膚悪性腫瘍に対して予防的効果があることを示唆されているが、ヒトを対象とした大規模レビューは行われていなかった。International Journal of Cancer誌オンライン版2013年11月21日号の掲載報告。 本検討は、n-3 PUFA摂取と皮膚がん発生率との関連を明らかにすることを目的とし、2013年3月までに発表された無作為化対照試験と観察試験をレビューの対象とした。 n-3 PUFA経口摂取と、基底細胞がん(BCC)、扁平上皮がん(SCC)、メラノーマ(悪性黒色腫)(またはこれらの複合)の発生率との関連について検討していた5試験(2件はケースコントロール試験、3件はコホート試験)が特定され、ランダム効果メタ解析に組み込まれた。 さらに6試験について、非摂取性n-3 PUFA曝露(組織分析など)と皮膚がんリスクのバイオマーカー(p53など)について検討しており、質的解析に組み込んだ。 主な結果は以下のとおり。・n-3 PUFA摂取とBCCの関連は認められなかった(プールオッズ比[OR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.86~1.28)。・高値のn-3 PUFA摂取と悪性黒色種とは、逆相関の関連がみられたが、1試験のみの推定値であった(OR:0.52、95%CI:0.34~0.78)。SCCとの関連は有意ではなかった(プールOR:0.86、0.59~1.23)。・以上のように、入手できたエビデンスは示唆的ではあったが、現状では、n-3 PUFAに皮膚悪性腫瘍に対する予防的効果があるとの仮説を支持するには不十分であった。

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TAVR後の院内死亡率5.5%、脳卒中2.0%/JAMA

 経カテーテル大動脈弁置換術(Transcatheter aortic valve replacement:TAVR)を受けた米国患者のデバイス植込み成功率は92%であり、全院内死亡率は5.5%、脳卒中の発生は2.0%であったことなどが、Edwards Sapien XTデバイスの市販後調査報告として発表された。TAVRは2011年に米国食品医薬品局(FDA)によって、重症の症候性大動脈弁狭窄症で手術不能の患者に対する治療法として承認され、2012年には高リスクだが手術可能な症例にも適応となり施術が行われている。JAMA誌2013年11月20日号掲載の報告より。デバイス承認後の全米224病院・7,710例のアウトカムを分析 調査は、全米レジストリ(Society of Thoracic Surgeons/American College of Cardiology Transcatheter Valve Therapy:STS/ACC TVT)の登録患者を対象に行われた。STS/ACC TVTはメディケアでカバーするための条件を満たすために開始されたもので、アウトカムの評価や他試験や国際的なレジストリとの比較も容易にするものである。今回の検討は、2011年11月~2013年5月の間に224病院から登録されたすべてのTAVR症例7,710例の結果を入手して分析が行われた。 主要アウトカムは、TAVR後のすべての院内死亡と脳卒中であった。2次解析には、手術による合併症と臨床症状や手術部位などのアウトカムを含んだ。入院期間中央値6日間、63%が自宅に退院 TAVRを受けた7,710例のうち、手術不能例は1,559例(20%)で、残り6,151例(80%)は高リスクだが手術可能な症例であった。年齢中央値は84歳(範囲:78~88歳)、3,783例(49%)が女性であり、死亡リスク予測のSTS中央値は7%(範囲:5~11%)だった。 ベースライン時に、2,176例(75%)が症状の現状について「まったく満足していない」(45%)か「ほとんど満足していない」(30%)と回答していた。2,198例(72%)が、5m歩行時間が6秒以上(歩行速度が遅い)であった。 バスキュラーアクセスのアプローチ法として最も多かったのは、経大腿アプローチ(64%)で、次いで経心尖アプローチ(29%)、その他代替アプローチ(7%)であった。 デバイス植込み成功例は7,069例(92%、95%信頼区間[CI]:91~92%)、院内死亡率は5.5%(95%CI:5.0~6.1%)だった。その他の重大合併症は、脳卒中(2.0%、95%CI:1.7~2.4%)、透析が必要な腎不全(1.9%、同:1.6~2.2%)、重大血管損傷(6.4%:同:5.8~6.9%)だった。 入院期間中央値は6日間(範囲:4~10日間)で、4,613例(63%)が自宅に退院した。 30日アウトカムは、代表的な114施設・3,133例(40.6%)で評価された(フォローアップ報告の80%以上を占めていた)。同患者における死亡率は7.6%(95%CI:6.7~8.6%)だった(非心血管系原因52%)。脳卒中の発生は2.8%(同:2.3~3.5%)、透析新規導入は2.5%(同:2.0~3.1%)、再介入率は0.5%(同:0.3~0.8%)だった。

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経口フルオロキノロンは網膜剥離リスクを増大するのか?/JAMA

 経口フルオロキノロン系抗菌薬の服用は、網膜剥離のリスクを増大しないことが、大規模コホート試験で示された。デンマーク・Statens Serum InstitutのBjorn Pasternak氏らが住民ベースの約516万人を対象にしたコホート試験の結果、明らかにした。近年、眼科疾患患者を対象とした研究において、経口フルオロキノロン服用と網膜剥離との強い関連が報告されていた。JAMA誌2013年11月27日号掲載の報告より。経口フルオロキノロン、過去180日以内の服用について網膜剥離リスクを比較 研究グループは、デンマークで1997~2011年にかけて、約516万人の住民ベースコホート試験を行い、そのデータを用いて経口フルオロキノロン服用と網膜剥離の外科治療(強膜内陥術、硝子体切除術、気体網膜復位術)との関連を分析した。 同コホートのうち、経口フルオロキノロン服用が確認されたのは、74万8,792例だった。そのうち66万572例(88%)はシプロフロキサシン(商品名:シプロキサンほか)を服用していた。一方、非服用は552万446例で、対照群とした。 分析において、服用について、現在服用中(治療開始1~10日前に服用)、最近服用(同11~30日前)、服用後(同31~60日前)、過去に服用(同61~180日前)の4つのカテゴリーに分類した。網膜剥離発症リスク、経口フルオロキノロンの服用時期にかかわらず増大せず 網膜剥離が確認されたのは566件で、うち465件(82%)は裂孔原性網膜剥離だった。そのうち、フルオロキノロン服用者(時期を問わず)は72件、非服用者は494件だった。 網膜剥離の粗発生率(10万人年当たり)は、経口フルオロキノロンの現在服用中群が25.3件、最近服用群が18.9件、服用後群が26.8件、過去に服用群が24.8件であった。一方、非服用群は19.0件だった。 経口フルオロキノロン服用者は、非服用者に比べ、網膜剥離の発症リスクの有意な増大は認められなかった。非服用者に対する同発症の補正後リスク比は、現在服用中群が1.29(95%信頼区間:0.53~3.13)、最近服用群が0.97(同:0.46~2.05)、服用後群が1.37(同:0.80~2.35)、過去に服用群が1.27(同:0.93~1.75)だった。 現在服用中群の絶対リスク差は、100万件治療エピソード当たりの網膜剥離症例数で補正後、推定で1.5(同:-2.4~11.1)だった。 著者は、「先のカナダの研究報告とは対照的に、一般デンマーク人をベースとした今回のコホート試験において、経口フルオロキノロン服用は、網膜剥離のリスク増大と関連していなかった」とまとめた。ただし本試験には検出力に限界があり、現在服用中との関連における相対的リスクが3倍以上のものをルールアウトできるだけであり、あらゆる絶対リスク差は限定的なものであったと述べている。

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抗精神病薬治療は予後にどのような影響を及ぼすのか

 抗精神病薬治療中の患者では、いくつかの心血管リスク因子(糖尿病、肥満、喫煙、脂質異常症)を有する割合が高く、脳卒中の有病率が有意に高いことなどが明らかにされた。これには、服用する抗精神病薬が定型あるいは非定型かによる違いはみられなかったという。スペイン・Institut Catala de la SalutのX Mundet-Tuduri氏らがバルセロナで行った断面調査の結果、報告した。Revista de Neurologia誌2013年12月号の掲載報告。 研究グループは、プライマリ・ケアでの長期の抗精神病薬治療における心血管リスク因子(CVRF)および血管イベントについて明らかにするため断面調査を行い、抗精神病薬の治療を受けている患者と受けていない患者とを比較した。対象は、2008~2010年にバルセロナのプライマリ・ヘルスケアセンターを受診した患者。身体測定、臨床検査値、CVRFを評価し、また被験者を成人/ 高齢者、服用している抗精神病薬(定型/ 非定型)でそれぞれ層別化し評価した。 主な結果は以下のとおり。・被験者は、抗精神病薬を処方されていた1万4,087例(治療群)と、受けていなかった1万3,724例(処方を受けていた患者と同一の年齢・性別:非治療群)の合計2万7,811例であった。・治療群の患者のうち、非定型薬を処方されていたのは63.4%であり、リスペリドンの処方が最も多かった。・治療群は、肥満(16.9% vs. 11.9%)、喫煙(22.2% vs. 11.1%)、糖尿病(16% vs. 11.9%)、脂質異常症(32.8% vs. 25.8%)の有病率が非治療群よりも有意に高かった(p<0.001)。・また、治療群では脳卒中の有病率が、成人患者群(オッズ比[OR]:2.33)、高齢者群(同:1.64)のいずれにおいても、非治療群より有意に高かった。冠動脈性心疾患(CHD)の有病率は、両群で同程度であった(OR:0.97)。・治療群の患者において、抗精神病薬の定型または非定型の違いによる差はみられなかった。関連医療ニュース 抗精神病薬の高用量投与で心血管イベントリスク上昇:横浜市立大 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学 統合失調症患者、合併症別の死亡率を調査

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手術を受けた慢性副鼻腔炎患者では喘息の診断が不十分:日本人における検討

 副鼻腔の手術を受けた慢性副鼻腔炎患者では、喘息の診断が不十分であり、とくに高齢者でその傾向が強いことが、理化学研究所統合生命医科学研究センター 呼吸器・アレルギー疾患研究チームの田中 翔太氏らにより報告された。Allergology International誌オンライン版2013年11月25日の掲載報告。 慢性副鼻腔炎は臨床的に鼻ポリープの有無により二分される。慢性副鼻腔炎は地理的要因による差異が大きく、多様性のある疾患である。鼻ポリープのある好酸球性の慢性副鼻腔炎は症状が重症化しやすく、喘息合併の頻度も高い。異なる民族集団における疫学的研究の進展により、慢性副鼻腔炎の病理生理学についての理解が深まってきた。そこで、内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を受けた難治性の慢性副鼻腔炎患者の臨床的な特徴を報告する。 慢性副鼻腔炎の患者210例を集め、内視鏡検査、CTによるLund Mackayスコア、末梢血の好酸球増加、喫煙状況を調べた。ほかにも、喘息の合併や年齢、肺機能の影響について調べた。 主な結果は以下のとおり。・末梢血好酸球が増加していた患者において、鼻ポリープのない慢性副鼻腔炎患者の13%、鼻ポリープのある慢性副鼻腔炎患者の20%では、喘息と診断されていないにもかかわらず、閉塞性の肺機能障害(FEV1/FVC(一秒率)< 70%)が認められた。・過去に喘息と診断されたことがない60歳以上の非喫煙患者で、かつ末梢血の好酸球が増加していた鼻ポリープのある慢性副鼻腔炎患者の50%において、FEV1/FVCが 70%未満であった。 慢性副鼻腔炎と喘息の関連が明らかになったとはいえ、難治性の慢性副鼻腔炎の管理にあたり、今後もなお喘息のような閉塞性気道疾患の合併に十分注意していく必要がある。

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不眠症と自殺は関連があるのか

 不眠症患者は自殺念慮や自殺企図のリスクが高いことが報告されている。イタリアのローマ・ラ・サピエンツァ大学のM Pompili氏らは不眠と自殺関連の行動との関係を評価した。International journal of clinical practice誌オンライン版2013年12月号の報告。不眠症患者は自殺企図をより暴力的な方法を用いて行っていた 対象は、2010年1月から2011年12月までにサンタンドレア病院の救急部(ED)に入院した843例。ED入院患者に対し、精神科医による不眠症診断を実施し、関連因子の検討を行った。精神疾患簡易構造化面接法(MINI)に基づく面接と半構造化面接を行った。患者には継続的な自殺念慮や自殺計画について質問を行った。 不眠と自殺関連の行動との関係を評価した主な結果は以下のとおり。・対象患者のうち48%が双極性障害、大うつ病性障害、不安障害と診断された。また、17.1%は統合失調症または他の非情動性機能的精神病であった。・不眠症患者では、そうでない患者と比較して双極性障害(23.9% vs 12.4%)、大うつ病性障害(13.3% vs 9.5%、p<0.001)が多かった。・不眠症患者は、そうでない患者と比較して過去24時間における自殺企図の頻度がより少なかった(5.3% vs 9.5%、p<0.05)。・しかし、不眠症患者はより暴力的な方法を用いて自殺企図を行っていた(64.3% vs 23.6%、p<0.01)。関連医療ニュース パニック障害 + 境界性パーソナリティ障害、自殺への影響は? 日本人統合失調症患者における自殺企図の特徴は?:岩手医科大学 「抗てんかん薬による自殺リスク」どう対応すべきか?

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Dr.倉原の 喘息治療の不思議:知られざる喘息のリスク因子

はじめに喘息の患者さんを診療する場合、発作を起こさないようにコントロールすることが重要です。そのため、喘息治療薬を使いこなすだけでなく、患者さんの喘息発作の誘発因子を避ける必要があります。喘息発作のリスク因子として有名なのは、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎と同様のアレルゲンです。たとえば、スギ花粉、ブタクサ、ハウスダスト、ダニなどが挙げられます。しかし、世の中にはこんな因子によって喘息を起こすことがあるのか?という“軽視されがちなもの”や“知られざるもの”があります。教科書的なリスク因子はさておき、少し「へぇ」と思えるようなものを紹介しましょう。ストレス呼吸器内科医以外には実はあまり知られていませんが、ストレスは喘息のリスク因子として教科書的に重要です。これには炎症性サイトカインの産生亢進が関与していると考えられています。呼吸器疾患を診療している医師の間でも、ストレスは意外と軽視されがちなリスク因子だと思います。Busse WW, et al. Am J Respir Crit Care Med. 1995;151:249-252.徹夜明けや過労などの身体的ストレスによっても喘息発作が起こりやすいことが知られています。受験前、面接前、入社前、五月病といった精神的ストレスによっても喘息発作を起こすことがあります。私もそういった患者さんを何人か外来で診ています。世界的にも最大規模のストレスとして数多くの研究がなされたアメリカ同時多発テロ事件では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と喘息の関連が指摘されています。Shiratori Y, et al. J Psychosom Res. 2012;73:122-125.Centers for Disease Control and Prevention (CDC). MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2002;51:781-784.水泳喘息に対する呼吸リハビリテーションの一環として水泳が知られていますが、その反面、水泳そのものが喘息のリスクではないかと考える研究グループもあります。しかしながら、メタアナリシスではその関連は強いとは結論づけられていません。私の外来にも、ある水泳競技をしていた喘息患者さんがいました。その患者さんが引退後に吸入ステロイド薬のステップダウンができたのは、水泳をやめたからなのかどうか、いまだに答えは出ていません。Paivinen MK, et al. Clin Respir J. 2010;4:97-103.Goodman M, et al. J Asthma. 2008;45:639-647.ちなみにスキューバダイビングは喘息のリスク因子ではないかという議論もありますが、現時点では明らかな答えは出ていません。スキューバダイビングでは、温度や呼吸動態の急激な変化が呼吸機能上よくないと考えられています。Koehle M, et al. Sports Med. 2003;33:109-116.感情負の感情(怒り、悲しみなど)は前述のストレスと同じ機序で喘息のリスク因子と考えられていますが、これにはあまりエビデンスはありません。自宅で怒りを爆発させて喘息発作を起こし救急搬送されてきた患者さんを一度診たことがあります。これはおそらく怒鳴り散らしたことが主な原因でしょうが。ちなみに、面白い映像を見た場合と面白くない映像を見た場合を比較すると、面白い映像を見た場合に気道過敏性が有意に改善したという報告もあります。Kimata H. Physiol Behav. 2004;81:681-684.その一方で、あまり笑うと喘息発作を誘発するのではないかという報告もありますので、あまり感情の起伏は喘息にとってよくないものかもしれませんね。Liangas G, et al. J Asthma. 2004;41:217-221.排便トイレできばりすぎて、喘息発作を起こすことがあるそうです。これについてもリスク因子といえる研究はありません。個人的には一度も排便喘息を診たことはありません(問診が甘かったのかもしれませんが)。排便によってアセチルコリンの分泌が誘発され、これによって気管支攣縮を惹起するのではないかと考えられています。Rossman L. J Emerg Med. 2000 ;18:195-197.Ano S, et al. Intern Med. 2013;52:685-687.鼻毛これもリスク因子として書くにはかなり強引な気もしますが、結論からいうと鼻毛は長いほうがよいです。アレルギー性鼻炎の患者さんにおける喘息の発症に鼻毛の密度が与える影響について解析した論文があります。これによれば、鼻毛の密度の低さは喘息発症の有意な因子であると報告されています。厳密には鼻毛の“長さ”と“密度”は異なるのかもしれませんが……。Ozturk AB, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2011;156:75-80.おわりにこれ以外にも、症例報告レベルも含めると、アイスクリーム、くしゃみ、温泉、オリンピックなど数多くの喘息のリスク因子や喘息発作を誘発する因子があります。本稿でなぜ珍しい因子を記載したかといいますと、実は喘息診療においては多くのヒントが患者さんとの会話の中にあるのです。「実は最近インコを飼い始めたんです」、「おととい引っ越ししたばかりなんです」、「そういえば先月からシャンプーを東洋医学系の製品に変えたんです」・・・などなど。実はアレルゲンが明らかな喘息の場合、原因を回避すればよくなることがあります。何年も吸入ステロイド薬を使わなくても済むケースもあります。

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Vol. 2 No. 1 これからの血管内治療(EVT)、そして薬物療法

中村 正人 氏東邦大学医療センター大橋病院循環器内科はじめに冠動脈インターベンションの歴史はデバイスの開発と経験の蓄積の反映であるが、末梢血管の血管内治療(endovascular treatment: EVT)も同じ道を歩んでいる。対象となる血管が異なるため、冠動脈とは解剖学的、生理学的な血管特性は異なるが、問題点を解決するための戦略の模索は極めて類似している。本稿では、末梢血管に対するインターベンションの現況を総括しながら、今後登場してくるnew deviceや末梢閉塞性動脈硬化症に対する薬物療法について展望する。EVTの現況EVTの成績は治療部位によって大きく異なり、大動脈―腸骨動脈領域、大腿動脈領域、膝下血管病変の3区域に分割される。個々の領域における治療方針の指標としてはTASCIIが汎用されている。1.大動脈―大腿動脈 この領域の長期成績は良好である。TASCⅡにおけるC、Dは外科治療が優先される病変形態であるが、外科治療との比較検討試験で2次開存率は外科手術と同様の成績が得られることが示されている1)。解剖学的外科的バイパス術は侵襲性が高いこともあり、経験のある施設では腹部大動脈瘤の合併例、総大腿動脈まで連続する閉塞病変などを除き、複雑病変であってもEVTが優先されている(図1、2)。従って、完全閉塞性病変をいかに合併症なく初期成功を得るかが治療の鍵であり、いったん初期成績が得られると長期成績はある程度担保される。図1 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢画像を拡大するDistal bypass術により救肢を得た透析例が数年後、膝部の難治性潰瘍で来院。腸骨動脈から大腿動脈に及ぶ完全閉塞を認めた(a)。ガイドワイヤーは静脈bypass graftにクロスし(b)、腸骨動脈はステント留置、総大腿動脈はバルーンによる拡張術を行った。Distal bypass graftの開存(黒矢印)と大腿深動脈の血流(白矢印)が確認された(c)図2 腸骨動脈閉塞による重症虚血肢(つづき)画像を拡大する2.大腿動脈領域 下肢の閉塞性動脈硬化症の中で最も治療対象となる頻度が高い領域である。このため、関心も高く、各種デバイスが考案されている。大腿動脈は運動によって複雑な影響を受けるため、EVTの成績は不良であると考えられてきた。しかし、ナイチノールステントが登場し、EVTの成績は大きく改善し適応は拡大した。EVTの成績を左右する最も強い因子は病変長であり、バルーンによる拡張術とステントの治療の比較検討試験の成績を鑑み、病変長によって治療戦略は大別することができる。(1)5cm未満の病変に対する治療ではバルーンによる拡張術とステント治療では開存性に差はなく、バルーンによる拡張を基本とし、不成功例にベイルアウトでステントを留置する。(2)病変長が5cm以上になると病変長が長いほどバルーンの成績は不良となるが、ステントを用いた拡張術では病変長によらず一定の成績が得られる。このためステントの治療を優先させる。(3)ステントによる治療も15cm以上になると成績が不良となりEVTの成績は外科的バイパス術に比し満足できるものではない2)。開存性に影響する他の因子には糖尿病、女性、透析例、distal run off、重症虚血肢、血管径などが挙げられる。また、ステント留置後の再狭窄パターンが2次開存率に影響することが報告されている3)。3.膝下動脈 この領域は、長期開存性が得難いため跛行肢は適応とはならない。現状、重症虚血肢のみが適応となる。本邦では、糖尿病、透析例が経年的に増加してきており、高齢化と相まって重症虚血肢の頻度は増加している。重症虚血肢の血管病変は複数の領域にわたり、完全閉塞病変、長区域の病変が複数併存する。本邦におけるOLIVE Registryでも浅大腿動脈(SFA)単独病変による重症虚血肢症は17%にとどまり、膝下レベルの血管病変が関与していた(本誌p.24図3を参照)4)。この領域はバルーンによる拡張術が基本であり、本邦では他のデバイスは承認されていない。治療戦略で考慮すべきポイントを示す。(1)in flowの血流改善を優先させる。(2)潰瘍部位支配血管すなわちangiosomeの概念に合わせて血流改善を図る。(3)末梢の血流改善を創傷部への血流像(blush score)、または皮膚灌流圧などで評価する。従来、straight lineの確保がEVTのエンドポイントであったが、さらに末梢below the ankleの治療が必要な症例が散見されるようになっている(図4)。創傷治癒とEVT後の血管開存性には解離があることが報告されているが5)、治癒を得るためには複数回の治療を要するのが現状である。この観点からもnew deviceが有用と期待されている。治癒後はフットケアなど再発予防管理が主体となる。図4 足背動脈の血行再建を行った後に切断を行った、重症虚血肢の高齢男性画像を拡大する画像を拡大する新たな展開薬剤溶出性ステントやdrug coated balloon(DCB)の展開に注目が集まっており、すでに承認されたものや承認に向け進行中のデバイスが目白押しである。いずれのデバイスも現在の問題点を解決または改善するためのものであり、治療戦略、適応を大きく変える可能性を秘めている。1.stent 従来のステントの問題点をクリアするため、柔軟性に富みステント断裂リスクが低いステントが開発されている。代表はLIFE STENTである。ステントはヘリカル構造であり、RESILIENT試験の3年後の成績を見ると、再血行再建回避率は75.5%と従来のステントに比し良好であった6)。リムス系の薬剤を用いた薬剤溶出性ステントの成績は通常のベアステントと差異を認めなかったが、パクリタキセル溶出ステントはベアメタルステントよりも有意に良好であることが示されている7)。Zilver PTXの比較検討試験における病変長は平均7cm程度に限られていたが、実臨床のレジストリーでも再血行再建回避率は84.3%と比較検討試験と遜色ない成績が示されている8)。Zilver PTXは昨年に承認を得、市販後調査が進行中である。内腔がヘパリンコートされているePTFEによるカバードステントVIABAHNは柔軟性が向上し、蛇行領域をステントで横断が可能である。このため、関節区域や長区域の病変に有効と期待されている9)。これらのステントの成績により、大腿動脈領域治療の適応は大きく変化すると予想される。膝下の血管に対しては、薬剤溶出性ステントの有効性が報告されている10)。開存性の改善により、創傷治癒期間の短縮、再治療の必要性の減少が期待される。2.debulking device 各種デバイスが考案されている。本邦で使用できるものはないが、石灰化、ステント再狭窄、血栓性病変に対する治療成績を改善し、non stenting zoneにおける治療手段になり得るものと考えられている。3.drug coated balloon(DCB) パクリタキセルをコーティングしたバルーンであり、数種類が海外では販売されている。ステント再狭窄のみでなく、新規病変に対しバルーン拡張後に、またステント留置の前拡張に用いられる可能性がある。膝下の血管病変は血管径が小さく長区域の病変でステント治療に不向きである上に開存性が低いためDCBに大きな期待が寄せられている。このデバイスも開存性を向上させるデバイスである。成績次第ではEVTの主流になり得ると推測されている。4.re-entry device このデバイスは治療戦略を変える可能性を秘めている。現在、完全閉塞病変に対してはbi-directional approachが多用されているが、順行性アプローチのみで手技が完結できる可能性が高くなる。薬物療法の今後の展開薬物療法は心血管イベント防止のための全身管理と跛行に対する薬物療法に分類されるが、全身管理における治療が不十分であると指摘されている。また、至適な服薬治療が重要ポイントとなっている。1.治療が不十分である 本疾患の生命予後は不良であり、5年の死亡率は15~30%に及ぶと報告され、その75%は心血管死である。このことは全身管理の重要性を示唆している。しかし、2008年と2011年に、有効性が期待できるスタチン、抗血小板薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)の投薬が、虚血性心疾患の症例に比し末梢動脈閉塞性症の症例では有意に低率であると米国から相次いで報告された11, 12)。この報告によると、虚血性心疾患を合併しているとわかっている末梢閉塞性動脈硬化症ではスタチンの無投薬率が42.5%であったのに対し、虚血の合併が不明の末梢閉塞性動脈硬化症では81.7%が無投薬であった12)。本邦においても同様の傾向と推察される。本疾患の無症候例も症候を有する症例と同様に生命予後が不良であるため、喫煙を含めた全身管理の重要性についての啓発が必要である。2.いかに管理すべきか? PADを対照に薬物療法による予後改善を検討した研究は少なくサブ解析が主体であるが、スタチンは26%、アスピリンは13%、クロピドグレルは28%、ACE阻害薬は33%リスクを軽減すると報告されている13)。さらに、これら有効性の高い薬剤を併用するとリスクがさらに低減されることも示されている12)。冠動脈プラークの退縮試験の成績は末梢閉塞性動脈硬化症を合併すると退縮率が不良であるが、厳格にLDLを70mg/dL以下に管理すると退縮が得られると報告されており14)、PADでは厳格な脂質管理が望ましい。 抗血小板薬に関しては、最近のメタ解析の結果によると、アスピリンは偽薬に比しPAD症例で有効性が認められなかった15)。一方、CAPRIE試験のサブ解析では、PAD症例に対しクロピドグレルはアスピリンに比しリスク軽減効果が高いことが示されている16)。今後、新たなチエノピリジン系薬剤も登場してくるが、これら新たな抗血小板薬のPADにおける有効性は明らかでなく、今後の検討課題である。また、本邦で実施されたJELIS試験のサブ解析では、PADにおけるn-3系脂肪酸の有効性が示されている17)。 このように、サブ解析では多くの薬剤が心血管事故防止における有効性が示唆されているが、単独試験で有効性が実証されたものはない。さらには、本邦における有効性の検証が必要になってこよう。3.再狭窄防止の薬物療法 シロスタゾールが大腿動脈領域における従来のステント留置例の治療成績を改善する。New deviceにおける有用性などが今後検証されていくことであろう。おわりにNew deviceでEVTの適応は大きく変わり、EVTの役割は今後ますます大きくなっていくものと推測される。一方、リスク因子に関しては、目標値のみでなくリスクの質的な管理が求められることになっていくであろう。文献1)Kashyap VS et al. The management of severe aortoiliac occlusive disease Endovascular therapy rivals open reconstruction. J Vasc Surg 2008; 48: 1451-1457.2)Soga Y et al. 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