人工股関節と膝関節置換術、肺塞栓症発生率はどちらが高いか?

提供元:ケアネット

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公開日:2013/12/18

 

 これまで、米国における、待機的初回人工股関節/膝関節置換術における入院中の肺塞栓症発生率は不明であった。以前の研究ではがん、外傷または再置換術の患者が含まれていたためである。今回、米国・メリーランド大学メディカルセンターのUsman Zahir氏らが行った後ろ向きコホート研究の結果、膝関節置換術は股関節置換術より入院中の肺塞栓症の発生率および発生リスクが高いことが明らかとなった。とくに複数関節置換術でのリスクが最も高く、死亡と関連していたという。Journal of Bone & Joint Surgery誌2013年11月20日の掲載報告。

 研究グループは、1998~2009年の「医療費および利用状況に関する調査プロジェクト:入院患者サンプルデータベース(Healthcare Cost and Utilization Project Nationwide Inpatient Sample)」を用い、後ろ向きコホート研究を行った。

 解析対象は、待機的初回人工股関節または膝関節置換術を受けた60歳以上の患者504万4,403例で、主要評価項目は入院中の肺塞栓症、副次的評価項目は死亡率とした。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者は、片側人工膝関節置換術を受けた人が66%を占め、複数関節置換術(両側膝関節、両側股関節、または膝関節と股関節)を受けたのは5%未満であった。
・肺塞栓症の全発生率は0.358%(95%信頼区間[CI]:0.338~0.378)であった。
・肺塞栓症発生率は手術の種類によって異なり、複数関節置換術が最も高く(0.777%、95%CI:0.677~0.876)、次いで膝関節置換術(0.400%、95%CI:0.377~0.423)、最も低いのが股関節置換術(0.201%、95%CI:0.179~0.223)であった。
・複数関節置換術施行患者の肺塞栓症発症の補正後オッズ比は、股関節置換術施行患者の3.89倍であった。

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(ケアネット)