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【JSMO2015見どころ】最新のがん免疫療法

 2015年7月16日(木)から3日間にわたり、札幌にて、第13回日本臨床腫瘍学会学術集会が開催される。これに先立ち、6月25日、日本臨床腫瘍学会(JSMO)主催のプレスセミナーが開催され、今年のJSMOで取り上げられる各領域のトピックスや、期待が高まるがん免疫療法などについて、それぞれ紹介された。 いま最も注目されているがん免疫療法については、北野 滋久氏(国立がん研究センター中央病院 先端医療科)より、免疫チェックポイント阻害薬の開発状況や注目演題などが紹介された。 がん医療の進歩に貢献してきた「手術療法」「放射線療法」「化学(薬物)療法」の3大治療に続き、第4の治療として「がん免疫療法」への期待がますます高まっている。わが国でも昨年、「免疫チェックポイント阻害薬」の1つである抗PD-1抗体療法が進行悪性黒色腫に対して承認された。現在、非小細胞がんに対しても国内承認の期待が高まり、さらに他の多くのがん種においても後期臨床試験が実施されている。  「がん免疫療法」の中でも臨床開発が最も成功し、世界的な注目を集めている「免疫チェックポイント阻害薬」の開発状況は、以下のようである。●メラノーマ・進行メラノーマに対して、抗CTLA-4抗体(イピリムマブ)が2011年3月に米国FDA承認済みで、国内でも承認(2015年7月3日)。・進行メラノーマに対して、抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2014年7月国内承認、次いで米国FDAがペムブロリズマブ、ニボルマブの順で承認。・B-raf変異陰性進行メラノーマに対して、1次治療として抗PD-1抗体がダカルバジンを上回る臨床効果を認められた。●肺がん・進行扁平上皮肺がんに対して抗PD-1抗体(ニボルマブ)が2015年3月にFDA承認。国内申請中。・進行非扁平上皮非小細胞肺がんに対して抗PD-1抗体がFDA承認申請。・既治療進行非小細胞肺がんに対して、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第III相試験が施行されている。・進行非小細胞肺がんに対する1次治療として、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第II相試験が実施または計画中。●その他・既治療の腎細胞がん、頭頸部がん、胃がん、膀胱がんなどにおいて、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体の第III相試験が施行または準備されている。 また、JSMOでのがん免疫療法に関する注目演題は以下の通り。・Special LectureImmune checkpoint inhibitors日時:2015年7月17日(金)8:45~9:30会場:Room1(ニトリ文化ホール)・ESMO/JSMO合同シンポジウムImmune checkpoint blockade in cancer therapy: new insights, opportunities, and prospects for a cure日時:2015年7月17日(金)9:30~11:30会場:Room1(ニトリ文化ホール)・プレナリーセッションPS-2 A Phase III Study (CheckMate 017) of Nivolumab (NIVO; anti-programmed death-1) vs Docetaxel (DOC) in Previously Treated Advanced or Metastatic Squamous (SQ) cell Non-small Cell Lung Cancer (NSCLC)PS-3 Phase III study of pembrolizumab (MK-3475) versus ipilimumab in patients with ipilimumab-naïve advanced melanoma日時:2015年7月17日(金)14:05~15:20会場:Room1(ニトリ文化ホール)・教育講演EL-23 免疫チェックポイントの基礎日時:2015年7月18日(土)10:30~11:00会場:Room11(札幌市教育文化会館1F大ホール)EL-24 使って分かる免疫チェックポイント阻害薬日時:2015年7月18日(土)11:00~11:30会場:Room11(札幌市教育文化会館1F大ホール)・シンポジウムSY-5 がん免疫制御の現況と次なるホープ日時:2015年7月16日(木)9:00~11:00会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)SY-6 がん幹細胞の分子標的・免疫制御の新展開日時:2015年7月16日(木)12:30~14:30会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)・セミナーCAR-T細胞療法セミナー 基礎と臨床日時:2015年7月17日(金)16:00~17:30会場:Room6(ロイトン札幌2Fハイネスホール)【第13回日本臨床腫瘍学会学術集会】■会期:2015年7月16日(木)~18日(土)■会場:ロイトン札幌・ホテルさっぽろ芸文館・札幌市教育文化会館■会長:秋田 弘俊氏(北海道大学大学院医学研究科 腫瘍内科学分野 教授)■テーマ:難治がんへの挑戦 医学・医療・社会のコラボレーション第13回日本臨床腫瘍学会学術集会ホームページはこちら

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インスリンポンプ、1型糖尿病の心血管死抑制/BMJ

 1型糖尿病患者に対するインスリンポンプ療法は、インスリン頻回注射療法よりも心血管死のリスクが低いことが、デンマーク・オーフス大学のIsabelle Steineck氏らによる、スウェーデン人を対象とする長期的な検討で示された。糖尿病患者では、高血糖と低血糖の双方が心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)のリスク因子となるが、持続的皮下インスリン注射(インスリンポンプ療法)はインスリン頻回注射療法よりも、これらのエピソードが少なく、血糖コントロールが良好とされる。一方、これらの治療法の長期的予後に関する知見は十分ではないという。BMJ誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。約1万8,000例を約7年フォローアップ 研究グループは、1型糖尿病の治療において、インスリンポンプ療法が心血管疾患や死亡に及ぼす長期的な影響の評価を目的とする観察研究を行った(欧州糖尿病学会[EASD]の助成による)。 Swedish National Diabetes Registerに登録された1型糖尿病患者1万8,168例(インスリンポンプ療法:2,441例、インスリン頻回注射療法[MDI]:1万5,727例)のデータを解析した。被験者は、2005~2007年に初回受診し、2012年12月31日までフォローアップされた。 臨床的背景因子、心血管疾患のリスク因子、治療法、既往症の傾向スコアで層別化し、Cox回帰モデルを用いてアウトカムのハザード比(HR)を算出した。平均フォローアップ期間は6.8年(11万4,135人年)であった。 ポンプ療法群はMDI群よりも若く(38 vs.41歳)、収縮期血圧がわずかに低く(126 vs.128mmHg)、男性(45.0 vs.57.1%)や喫煙者(10.5 vs.13.5%)が少なかった(いずれもp<0.001)。また、ポンプ療法群は身体活動性の低い患者が少なかった(21.8 vs.24.0%、p=0.01)。 さらに、ポンプ療法群は、アルブミン尿(20.7 vs.24.0%)や腎機能が低い患者(10.4 vs.11.7%)が少なく、降圧薬(32.0 vs.36.7%)や脂質低下薬(21.0 vs.26.4%)、アスピリン(15.0 vs.18.8%)の使用例が少なかった(腎機能p=0.04、その他p<0.001)。また、心血管疾患(5.4 vs.8.0%)や心不全(0.9 vs.2.3%)の既往例が少なく、教育歴が高い患者(37.3 vs.27.6%)や既婚者(40.3 vs.36.5%)が多かった(いずれもp<0.001)。致死的冠動脈心疾患、致死的心血管疾患、全死因死亡リスクが著明に低下 Kaplan-Meier法による解析では、すべてのアウトカム(致死的/非致死的冠動脈心疾患、致死的/非致死的心血管疾患、致死的心血管疾患、全死因死亡)が、ポンプ療法群で有意に優れていた(いずれもp<0.001)。 ポンプ療法群のMDI群に対する主要エンドポイントの補正後HRは、致死的/非致死的冠動脈心疾患が0.81(95%信頼区間[CI]:0.66~1.01、p=0.05)、致死的/非致死的心血管疾患は0.88(0.73~1.06、p=0.2)であり、ポンプ療法群で良好な傾向がみられたものの有意な差はなかった。 一方、致死的心血管疾患(冠動脈心疾患、脳卒中)の補正後HRは0.58(0.40~0.85、p=0.005)、全死因死亡は0.73(0.58~0.92、p=0.007)であり、いずれもポンプ療法群で有意に良好であった。 また、副次エンドポイントである致死的冠動脈心疾患の補正後HRは0.55(95%信頼区間[CI]:0.36~0.83、p=0.004)と有意差を認めたが、致死的脳卒中は0.67(0.27~1.67、p=0.4)、心血管疾患以外による死亡は0.86(0.64~1.13、p=0.3)であり、有意な差はなかった。 致死的冠動脈心疾患の1,000人年当たりの未補正絶対差は3.0件であり、致死的心血管疾患は3.3件、全死因死亡は5.7件であった。また、低BMI(<18)および心血管疾患の既往歴のある患者を除外したサブグループ解析を行ったところ、結果は全症例とほぼ同様であった。 著者は、「インスリンポンプ療法の生理学的作用や、使用者が受ける臨床的管理、ポンプ使用の教育的側面が、これらの結果に影響を及ぼしているかという問題は未解明のままである」としている。

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青年期うつは自助予防可能か

 思春期はうつ病発症のピーク期であるが、青少年が自身でリスクレベルを低下可能かどうかは、ほとんど明らかとなっていない。オーストラリア・メルボルン大学のKathryn E. Cairns氏らは、デルファイ法を用いた検討で、青年期うつ病の自助予防戦略について専門家のコンセンサス確立を試みた。その結果、自助予防が可能だと支持される戦略が明らかになった。Affective Disorders誌オンライン版2015年5月18日号の掲載報告。 検討は、文献検索にて青年期に対する194の勧告を特定して行われた。それらについて、32人の国際研究者と臨床専門家から成るパネル、および49人の消費者団体から成るパネルに対して、3回繰り返しての質問票提示を行い、パネル委員は、各勧告の予防の重要性と青少年による実行可能性を評価した。 主な結果は以下のとおり。・両パネルの80%以上が、145の戦略について青年期うつ病発症リスクを低下すると支持した。・それらは、精神的健康、人格的アイデンティティ、生活能力、健全な関係性、健康的なライフスタイル、レクリエーションやレジャーにおけるメッセージなどであった。・127の戦略が、思春期初期と後期の両方のうつ病リスク低下に有用だと支持された。思春期初期にのみ有用と評価された戦略は1つ、後期にのみ有用と支持された戦略は17であった。・青年期において実行しやすいとパネル委員に評価された戦略は、概して中程度のものであった。・なお、本研究の専門家は、先進国で英語を母国語とする国の出身者であった。そのため特定された戦略は適切性に欠け、また同一国内のマイノリティや他国では適切ではない可能性があり、本検討は限定的なものであった。関連医療ニュース 魚をよく食べるほど、うつ病予防に:日医大 若者の新型うつ病へのアプローチとなりうるか 子供はよく遊ばせておいたほうがよい  担当者へのご意見箱はこちら

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よくある話【2】見えなかったリスクに対する過小評価:カテ前出血リスクの定量的評価(解説:香坂 俊 氏)-377

われわれはどうも昔から「見えないところ」の評価であっても、自分たちの経験による見立てはそれほど大きく的をはずさない、と考えるようである。今回は、冠動脈インターベンション(PCI)の合併症の予測に関する話題であるが、この手技には穿刺に伴う出血や造影剤使用による腎症といった問題点がつきまとう。そうした合併症を誰が起こしやすく、誰が起こさないのかということは、医師の評価の「正しさ」に関わる事象であり、これまでその領域があまり問題視されたことはなかった。John Spertus氏は、これまでそうしたリスク評価について、循環器分野で先駆的な役割を果たしてきた。そのSpertus氏がこれまでの集大成として提示したのが今回BMJ誌に掲載された論文である。扱われている内容はPCIに伴う出血の予測である。米国にはbivalirudinという、わが国のアルガトロバン(商品名:スロンノン)に近いトロンビン阻害薬が存在し、このbivalirudinはPCIに際し標準治療よりも出血率を下げることができる、とされている。ただ高額な薬剤であり、症例を選んで使わなくてはならない。Spertus氏がまず提示したのは、そのbivalirudinの使用率である。その使用率を客観的に計算された出血リスクに応じて振り分けたのが下図となる。わかりにくいかもしれないが、1本1本の曲線が各ドクターのbivalirudin使用率を示していて、人によって使い方がさまざまであることがおわかりいただけるかと思う。ただ、注目すべきは、ドクターによってはリスクが低い患者にbivalirudinを多く使用し、リスクが高い患者に使用していないといった傾向がみられるというところである(赤矢印方向)。これは本来のbivalirudinの用途からすると合目的ではない。そこで、Spertus氏は各施設にその客観的に計算された出血リスクを提示し、PCIの同意書に強制的にその数値を印刷する、という介入を行った。すると、その結果として、bivalirudinの使用は以下のように変化した。右上がりの曲線(赤矢印方向)が多くみられるようになり、bivalirudinの使用がその目的に沿ったものとなっていることがうかがえる。リスクの提示でここまで医師の判断や行動が変化するということも驚きであるが、この研究の成果はこれだけにとどまらない。上の図は、客観的に計算された出血リスクが同意書に提示されるようになる前後での実際の出血率を表したものである。グラフ右側に注目していただきたいが、高リスク患者における出血率が劇的に改善している。幾多もの薬剤、そしてデバイスの進歩よりも明確な「予後改善効果」がここには示されており、この分野注)での画期的な成果として特筆すべきことと(自分には)思われる。おそらく、これからの医療はデータを積極的に活用する時代を迎え、こうしたリスク計算なしには成立しえない方向に向かっていくであろう。好むと好まざるとにかかわらず、それが患者さんの安全の担保につながるからである(定量的なリスク評価なしに手技や手術に踏み込むことは、海図を持たずに航海に出るに等しい)。そのランドマークとなる発見がここにあった、といつの日かいわれる時がくるのではないか。注:Spertus氏はこうした研究分野を好んでOutcome Researchと呼び、米国では今後臨床研究はTranslational Research、Clinical Trial、そして Outcome Researchの3つに分かれていくと多くの研究者が考えている。

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肺がん患者が禁煙したときの延命効果は?

 米国・ロズウェルパークがん研究所のKatharine A Dobson Amato氏らは、同研究所の肺がん患者における禁煙パターンの特徴、および禁煙と生存率との関連を調査した。その結果、肺がんと診断された患者において、禁煙によって全生存期間が延長する可能性を報告した。Journal of thoracic oncology誌オンライン版2015年6月20日号に掲載。 この研究所を受診した肺がん患者について、標準化された喫煙評価でスクリーニングし、過去30日以内に喫煙した患者には、自動的に禁煙電話サービスが紹介された。2010年10月~2012年10月にこのサービスを紹介されたすべての肺がん患者について、電子カルテとロズウェルパークがん研究所の腫瘍登録を介して、人口統計的情報や臨床情報、および最終コンタクト時の自己申告による喫煙状況を取得した。禁煙およびその他の要因が2014年5月までの生存と関連するかを評価するために、記述統計とCox比例ハザードモデルを使用した。 主な結果は以下のとおり。・禁煙サービスを紹介された388例の肺がん患者のうち313例に、禁煙コールが試行された。・そのうち80%の患者(313例中250例)にコンタクトでき、これらの患者は少なくとも1回の電話による禁煙指導を受けた。・コンタクトできた患者のうち40.8%(250例中102例)は、最終コンタクトで禁煙したことを報告した。・年齢、喫煙歴(pack-year)、性別、ECOG performance status、診断から最終コンタクトまでの期間、腫瘍の組織、臨床ステージによる調整後、禁煙は、最終コンタクトで継続的に喫煙していた場合と比べ、統計的に有意な生存期間の延長と関連した(HR 1.79、95%信頼区間:1.14~2.82)。また、全生存期間中央値は9ヵ月改善した。

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治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬の比較

 うつ病に対する非定型抗精神病薬治療に関するメタ解析の報告では、2つの治療を直接比較した試験は限られている。中国・重慶医科大学のXinyu Zhou氏らは、無作為化比較試験の直接的または間接的なエビデンスを統合し、治療抵抗性うつ病に対する非定型抗精神病薬による補助的な治療の有効性と忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を行った。The international journal of neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年5月25日号の報告。 本レビューは、7種類の異なる用量の非定型抗精神病薬とプラセボを比較した18件の無作為化比較試験(n=4,422)を対象とした。 主な結果は以下のとおり。・すべての標準用量での非定型抗精神病薬治療は、プラセボと比較して有意な有効性が認められた(SMD:-0.27~-0.43)。また、これらの薬剤間で有意な差はなかった。・低用量の非定型抗精神病薬治療は、プラセボと比較して、有効性に有意な差はなかった。・忍容性に関しては、リスペリドン以外の標準用量の抗精神病薬治療において、プラセボと比較し、副作用による中止が有意に多かった(OR 2.72~6.40)。・受容性の面では、クエチアピン(平均250~350mg/日)だけがプラセボと比較し、全原因による中止が有意に多かった(OR 1.89)。・QOLおよび機能の面では、標準用量のリスペリドンとアリピプラゾールがプラセボと比較し、有益であった(SMD:各々-0.38、-0.26)。また、標準用量のリスペリドンはクエチアピン(250~350mg/日)よりも優れていた。 著者らは「治療抵抗性うつ病の抑うつ症状軽減に対し、すべての標準用量の非定型抗精神病薬治療は有効であった。なかでも、リスペリドンとアリピプラゾールは、患者のQOL改善にベネフィットが認められた。ただし、非定型抗精神病薬の処方に際しては、副作用のエビデンスに十分配慮する必要がある」とまとめている。■関連記事抗うつ薬が奏効しないうつ病患者への抗精神病薬追加投与は本当に有効か精神病性うつ病に、抗うつ薬+抗精神病薬は有効か双極性障害への非定型抗精神病薬、選択基準は治療抵抗性うつ病は本当に治療抵抗性なのかを検証

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急性虫垂炎は抗菌薬で治療が可能か?/JAMA

 単純性急性虫垂炎への抗菌薬治療は、虫垂切除術に対して非劣性ではないことが、フィンランド・トゥルク大学病院のPaulina Salminen氏らが実施したAPPAC試験で示された。本症の治療では、1世紀以上にわたり手術が標準とされてきた。一方、近年、3つの無作為化試験や5つのメタ解析など、抗菌薬治療を支持するエビデンスが増えていたが、個々の試験には限界があるため、依然として標準治療は虫垂切除術とされている。JAMA誌2015年6月16日号掲載の報告より。530例で非劣性を検証 APPAC試験は、急性虫垂炎は抗菌薬で治療が可能であるとの仮説を検証する非盲検無作為化非劣性試験。対象は、年齢18~60歳、単純性急性虫垂炎の疑いで救急診療部に入院し、CT検査で診断が確定された患者であった。 被験者は、ertapenem(1g/日)を3日間静脈内投与後、レボフロキサシン(500mg、1日1回)+メトロニダゾール(500mg、1日3回)を7日間経口投与する群(抗菌薬群)または標準的な開腹虫垂切除術を施行する群(手術群)に無作為に割り付けられ、1年間のフォローアップが行われた。 主要エンドポイントは、抗菌薬群が手術を要さない退院および1年時の非再発であり、手術群は虫垂切除術の成功であった。副次エンドポイントには、介入後の合併症、入院期間、介入後の疼痛スコア(視覚アナログスケール[VAS]:0~10、点が高いほど疼痛が強い)などが含まれた。 2009年11月~2012年6月の間に、フィンランドの6施設に530例が登録され、抗菌薬群に257例(年齢中央値:33.0歳、男性:60.3%)、手術群には273例(35.0歳、63.7%)が割り付けられた。抗菌薬群のうち1年以内に外傷で死亡した1例を除く256例がフォローアップを完了した。抗菌薬治療成功率72.7%、遅延的手術例に重度合併症を認めず 抗菌薬群のうち、70例(27.3%、95%信頼区間[CI]:22.0~33.2%)に対し初回虫垂炎発症から1年以内に手術が行われ、手術を要さなかったのは186例(72.7%、95%CI:66.8~78.0)であった。一方、手術群では、1例を除き虫垂切除術が成功し、成功率は99.6%(95%CI:98.0~100.0)であった。 intention-to-treat(ITT)解析では、両群間の治療効果の差は−27.0%(95%CI:-31.6~∞、p=0.89)であった。これは、事前に規定された非劣性マージンである24%を満たさないことから、虫垂切除術に対する抗菌薬治療の非劣性は示されなかった。 抗菌薬群で手術を受けた70例のうち、58例(82.9%)は単純性虫垂炎で、7例(10.0%)は複雑性急性虫垂炎であり、5例(7.1%)は虫垂炎は正常だが再発疑いで虫垂切除術が施行されていた。これら抗菌薬群の遅延的手術例には、腹腔内膿瘍や他の重度の合併症はみられなかった。 合併症発症率は抗菌薬群が2.8%であり、手術群の20.5%に比べ有意に低かった(p<0.001)。初回入院期間中央値は抗菌薬群が3.0日(四分位範囲:3~3)と、手術群の3.0日(2~3)よりも有意に長かった(p<0.001)。疼痛スコアは退院時がそれぞれ2.0点、3.0点(p<0.001)、1週間後が1.0点、2.0点(p<0.001)であり、いずれも抗菌薬群で疼痛が有意に軽度であった。 著者は、「抗菌薬治療の非劣性は確認できなかったが、72.7%という抗菌薬治療の成功率は、既報の3つの無作為化試験や最近の地域住民ベースの前向き研究と比較して良好であり、最終的に手術を受けた患者も重度の合併症を認めなかった」とまとめ、「患者に抗菌薬と手術に関する情報を提供し、意思決定できるようにすべきである。今後は、手術を要する複雑性急性虫垂炎患者を早期に同定する試験、および抗菌薬治療が至適と考えられる単純性急性虫垂炎患者を前向きに評価する研究を進めるべきである」と指摘している。

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小児アトピーへのpimecrolimus、がんリスク増大せず

 米国FDAにより、「アトピー性皮膚炎への外用pimecrolimus(国内未承認)の使用は悪性腫瘍リスクと関連する可能性がある」と黒枠警告されている。米国・ペンシルベニア大学ペレルマン医学大学院のDavid J. Margolis氏らは、2万5,000人年超をベースとした市販後調査コホートにおける同リスクの評価を行い、統計的にがんリスク増大との有意な関連はみられなかったことを報告した。JAMA Dermatology誌2015年6月1日号の掲載報告。 黒枠警告の掲示は、アトピー性皮膚炎への外用pimecrolimus使用に関して、臓器移植における経口カルシニューリン阻害薬使用と類似しており、リンパ腫および皮膚悪性腫瘍などの報告があるためとしている。 研究グループは、市販後調査コホートを対象に外用pimecrolimusに曝露された小児の悪性腫瘍リスクを評価した。具体的には、対象者は全米から小児を登録して行われている現在進行中の長期コホート試験Pediatric Eczema Elective Registry(PEER)の参加者で、アトピー性皮膚炎の病歴および外用pimecrolimus使用歴を有している。2014年5月時点で入手したデータを評価した。 PEER参加者における悪性腫瘍の発生報告と、Surveillance, Epidemiology, and End Results(SEER)プログラムにおける期待値を比較した。 主な結果は以下のとおり。・全体で、PEER試験に登録された小児は7,457例、総計2万6,792人年のデータが入手できた。・小児の試験登録時の外用pimecrolimusの使用量は、平均(SD)793(1,356)gであった。・2014年5月現在、報告された悪性腫瘍は5例であった。・内訳は、白血病2例、骨肉腫1例、リンパ腫2例で、皮膚がんの報告例はなかった。・年齢標準化SEER集団に基づく全悪性腫瘍の標準化発生比(主要アウトカム)は、1.2(95%信頼区間[CI]:0.5~2.8)であった。・副次解析の各悪性腫瘍の標準化発生比(それぞれ2例に基づく)、リンパ腫2.9(95%CI:0.7~11.7)、白血病2.0(同:0.5~8.2)であった。・これらの所見はいずれも、統計的に有意ではなかった。・結果を踏まえて著者は、「2万5,000人年超PEERコホートの追跡調査に基づき、アトピー性皮膚炎治療のために使用された外用pimecrolimusと、悪性腫瘍のリスク増大は関連していないようである」とまとめている。

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VADT試験:厳格な血糖管理は2型糖尿病患者の心血管イベントの抑制に有用なのか(解説:吉岡 成人 氏)-374

厳格な血糖管理と血管障害の阻止 糖尿病の治療の目的は、血糖、血圧、血中脂質などの代謝指標を良好に管理することによって、糖尿病に特有な細小血管障害(網膜症、腎症、神経障害)および動脈硬化性疾患(冠動脈疾患、脳血管疾患、末梢動脈疾患)の発症・進展を阻止し、糖尿病ではない人と同様な日常生活の質(QOL:quality of life)を維持して、充実した「健康寿命」を確保することである。この点に関し、1型糖尿病患者を対象としたDCCT試験(Diabetes Control and Complications Trial)、2型糖尿病を対象としたUKPDS試験(United Kingdom Prospective Diabetes Study)などの長期にわたる大規模前向き介入試験で、HbA1c 7.0%前後の厳格な血糖コントロールを目指すことで、細小血管障害のみならず、大血管障害の発症・進展が抑止されうることが示唆された。しかし、動脈硬化性疾患のリスクが集積した2型糖尿病患者にHbA1cの正常化を目指すことの臨床的意義を検証したACCORD試験 (Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes)、ADVANCE試験 (Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and Diamicron Modified Release Controlled Evaluation )、VADT 試験(Veterans Affairs Diabetes Trial)では、数年間にわたって厳格な血糖管理を目指すことの有用性は確認できず、とくにACCORD試験では厳格な血糖管理を目指した群で死亡率が上昇するという予想外の結果が得られた。その理由として、厳格な血糖管理を目指すことで引き起こされる低血糖によって、炎症反応、好中球や血小板の活性化、凝固系の異常、心電図におけるQT間隔の延長と不整脈の惹起、血管内皮機能への影響などがあいまって心血管イベントに結び付く可能性が示唆された。観察期間も重要な要素 このようなランダム化試験(RCT)で問題になることの1つに観察期間がある。ほんのわずかの差であっても、長期間にわたって経過を観察することで、イベントの発症頻度に差が出てくるのではないかという考えである。 確かに、1型糖尿病患者を対象としたDCCT-EDIC試験(Epidemiology of Diabetes Interventions and Complications)であっても、2型糖尿病を対象としたUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)80試験でも、試験終了後10年を経過した時点で代謝指標に差がなくなったにもかかわらず、厳格な血糖管理を目指した群で、心血管イベントの発症が有意に少なく、病初期の厳格な血糖管理の影響が「metabolic memory」、「legacy effect」として、20年先に福音をもたらすことが確認されている。VADT試験終了後5年間の長期追跡 退役軍人の2型糖尿病患者、1,791例(男性が97%)を強化療法と標準療法の2群に分け、厳格な血糖管理を5.6年にわたって目指すことの有用性を検討したVADT試験では、虚血性心疾患や脳卒中などの心血管イベントに有意な差を示すことができなかった。そこで、その後通常の治療に移行し、1,391例の患者を対象として、中央値で9.8年間追跡した際の主要心血管イベント(心筋梗塞、狭心症、脳卒中、うっ血性心不全の新規発症または増悪、虚血性壊疽による下肢切断、心血管関連死)の初回発生までの期間を主要評価項目とし、心血管死亡率およびすべての死亡率を副次評価項目として再検討したのがこの論文である。 強化療法群と標準治療群のHbA1cの差は試験期間中で平均1.5%(中央値6.9% vs. 8.4%)だったが、試験終了1年時には平均0.5%(中央値7.8% vs.8.3%)に、2~3年時には0.2~0.3%にまで減少した。両群間で脂質や血圧に差はなかった。介入開始後9.8年時において、主要血管イベントの発症率は強化療法群で28.4%(892例中253例)、標準療法群では32.0%(899例中288例)で、強化療法群でリスクが減少しており(ハザード比[HR]:0.83、95%信頼区間[CI]:0.70~0.99、p=0.04)、絶対リスクでも1,000例/年当たり8.6イベント(116例/年当たり1イベント)の減少をしていた。しかし、Supplementary Appendixに添付されているデータでは心筋梗塞、脳卒中、心不全、壊疽による下肢切断のそれぞれの発生頻度には群間で有意な差はない。心血管死亡率(HR:0.88、95%CI:0.64~1.20、p=0.42)、全死因死亡(HR:1.05、95%CI:0.89~1.25、p=0.54)にも差は認められていない。 主要心血管イベントに包括される個々のイベントで発症頻度に差はなく、また、心血管死の頻度にも差はないものの、いくつかの項目をまとめてみると有意な差が生じている。このデータをもって、厳格な血糖管理群では長期間の観察によって心血管イベントが抑止しうると結論付けてよいのかどうか疑問が残る。統計学的に有意なことが必ずしも臨床的にも有意であるとは限らない。

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TECOS試験:DPP-4阻害薬は心血管イベントを抑止しうるか(解説:吉岡 成人 氏)-375

血糖管理と心血管イベント 2型糖尿病患者において、病初期から厳格な血糖管理を目指すことで心血管イベントや死亡のリスクを有意に低減できる可能性を示したUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)80試験は、legacy effectという言葉を生み出した1)。しかし、糖尿病の罹病期間が長く大血管障害のリスクが高い患者や、すでに大血管障害を引き起こした患者に厳格な血糖管理を試みた大規模臨床試験であるACCORD試験(Action to control Cardiovascular Risk in Diabetes)、ADVANCE試験(Action in Diabetes and Vascular Disease:Preterax and diamicron Modified Release Controlled Evaluation)、VADT試験(Veterans Affairs Diabetes Trial)では、厳格な血糖管理を目指すことの有用性は確認できず、とくに、ACCORD試験では低血糖による死亡率の上昇が大きな懸念として取り上げられた。メタアナリシスと臨床試験の乖離 このような背景の下、低血糖を引き起こさずに、良好な血糖管理を得ることができる薬剤としてDPP-4阻害薬が広く用いられるようになり、ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスからは心血管イベントを抑止する可能性が示唆された2)。しかし、DPP-4阻害薬であるサキサグリプチン、アログリプチンを使用した大規模臨床試験であるSAVOR(Saxagliptin Assessment of Vascular Outcomes Recorded in Patients with Diabetes Mellitus) TIMI 53試験、EXAMINE試験(Examination of Cardiovascular Outcomes with Alogliptin versus Standard of Care in Patients with Type 2 Diabetes Mellitus and Acute Coronary Syndrome)では、心血管イベントに対する薬剤の安全性(非劣性)を確認することができたが、HbA1cがプラセボ群に比較して0.2~0.3%低下したことのメリットは証明されず、SAVOR-TIMI53試験では心不全による入院のリスクが27%ほど高まったという、理解に悩む結果のみが残された。2015年3月に発表されたEXAMINE試験の事後解析の結果では、複合評価項目(全死亡+非致死性心筋梗塞+非致死性脳卒中+不安定狭心症による緊急血行再建術+心不全による入院)において、アログリプチン群とプラセボ群で差はなく、心不全による入院の発生率もアログリプチン群3.0%、プラセボ群2.9%(ハザード比[HR]1.07、95%信頼区間[CI]0.79~1.46、p=0.657)で差はなかったと報告されている。しかし、心不全の既往がない患者では、アログリプチン群で心不全による入院が有意に多かった(2.2% vs.1.3% p=0.026)ことが確認されている。期待されていたTECOS試験 このような背景を受けて、2015年6月8日、米国糖尿病学会でシタグリプチンを使用した臨床試験であるTECOS試験(The Trial to Evaluate Cardiovascular Outcomes after Treatment with Sitagliptin)のデータが公表され、即日、New England Journal of Medicine誌にオンライン版で掲載された。1万4,671例(シタグリプチン群7,332例、プラセボ群7,339例)の患者を対象とした、中央値で3.0年の観察期間に及ぶRCTであり、SAVOR-TIMI53試験、EXAMINE試験よりも観察期間が長く、多くの患者を対象とした試験であり、大きな期待を持って発表が待たれた試験である。 主要アウトカムは複合心血管イベントであり、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院のいずれかの発症と定義され、2次アウトカムとして主要アウトカムの構成要素、そのほかに急性膵炎、がんの発症などが包括された。血糖管理は試験開始後4ヵ月の時点で、シタグリプチン群においてHbA1cが0.4%低下しており、試験期間中に差は小さくなったものの有意な差が確認された。しかし、主要エンドポイント、心不全による入院、死亡についてはシタグリプチン群においてもプラセボ群においても差はなく、感染症、重症低血糖にも差はなかった。急性膵炎はシタグリプチン群で多い傾向を示したものの有意な差はなかった(p=0.07)。 HbA1cを0.2~0.4%低下させ、DPP-4阻害薬によって期待された心血管イベントの抑止効果は確認されなかった。3年という研究期間が短すぎるという考えもあるかもしれない。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するために 血糖値の管理によって心血管イベントを抑制できるパワーと、スタチンによって脂質管理を向上させることで得られる心血管イベントの抑制には大きな差がある。「食後高血糖の管理によって血管イベントを抑止する」、「DPP-4阻害薬の使用によって心血管イベントを抑えることができる可能性がある」というのは、「商業主義に基づく医療」(commercial based medicine:CBM )の世界でのキャッチコピーである。糖尿病患者において心血管イベントを抑止するうえで重要なのは、血糖の厳格な管理ではなく、脂質や血圧などの標準的な心血管リスクの管理である3)という意見は傾聴に値するのではないかと思われる。

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複合免疫不全症の遺伝子欠損を特定/NEJM

 複合免疫不全症からの早期発症の侵襲性細菌・ウイルス感染症を発症した小児について、常染色体劣性のdedicator of cytokinesis 2 遺伝子(DOCK2)の欠損を特定したことを、米国・ボストン小児病院のKerry Dobbs氏らが報告した。複合免疫不全症は、存在するT細胞の量的および機能的不足というT細胞免疫の先天異常を特徴とする。液性免疫障害も一般的にみられ、患者は重度の感染症または自己免疫疾患、あるいは両方を呈する。複合免疫不全症は複数のタイプがみられ、特異的な分子、細胞および臨床的特徴は不明のままであった。NEJM誌2015年6月18日号掲載の報告より。5例の患児について検討 研究グループは、早期発症の侵襲性の細菌・ウイルス感染症を有した非血縁の小児5例について、遺伝子的および細胞免疫について検討した。 患児には、リンパ球減少症、T細胞、B細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞の反応低下がみられた。対象のうち2例は早期に死亡。その他3例は、同種異系造血幹細胞移植後、T細胞機能が正常となり臨床的改善を認めた症例であった。DOCK2欠損症の症状が共通 検討の結果、これら5例の患児について、DOCK2における両変異アレルが特定された。 また、T細胞におけるRAC1活性化の障害、T細胞、B細胞、NK細胞においてケモカインに誘導された遊走とアクチン重合の障害を確認した。NK細胞の脱顆粒の影響を受けていたことも確認された。 ウイルス感染後には、末梢血単核球によるインターフェロン-αおよびインターフェロン-λの産生低下がみられた。さらにDOCK2欠損線維芽細胞において、ウイルス複製が亢進しており、ウイルス誘導による細胞死の増加を認めた。これらの状態はインターフェロンα-2bによる治療後、または野生型DOCK2の発現後に正常化した。 これらを踏まえて著者は、「DOCK2欠損症は、造血性・非造血性免疫の多面的異常を伴う新たなメンデル遺伝性疾患である」と述べ、「複合免疫不全症の臨床的特徴、とくに早期発症の侵襲性感染症を発症した小児では、これらの症状がみられる可能性がある」とまとめている。

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大腸内視鏡検診、がんの生涯リスクを抑制/JAMA

 大腸内視鏡による大腸がん検診では、腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)が高いほど、大腸がんの発症や大腸がん死の生涯リスクが抑制され、費用は増大しないことが、オランダ・エラスムスMC大学医療センターのReinier GS Meester氏らの検討で示された。ADRは検診の質の指標とされるが、施術者によって3倍以上の大きなばらつきがみられ、最もADRが高い施術者に比べ最も低い施術者では、10年以内の大腸がんの発症リスクが約50%、がん死のリスクは約60%上昇するという。一方、ADRが高いと低リスクの小ポリープの検出が増加し、追加検査や合併症が増えるため、不利益が利益を上回る可能性が示唆されている。JAMA誌2015年6月16日号掲載の報告。非検診群と五分位群を比較 研究グループは、地域住民ベースのデータを用いて大腸内視鏡による大腸がん検診プログラムの利益や合併症、費用の評価を行った(米国国立がん研究所[NCI]の助成による)。 1998年1月1日~2010年12月31日の間に、136人の医師による大腸内視鏡検査を受けた5万7,588人について、マイクロシミュレーションモデルを用いた解析を行った。大腸内視鏡のADRを五分位群(Q1~5)に分け、非検診群と比較した。 五分位群の平均ADR値(範囲)は、第1五分位(Q1)群が15.32%(7.35~19.05)、第2五分位(Q2)群が21.27%(19.06~23.85)、第3五分位(Q3)群が25.61%(23.86~28.40)、第4五分位(Q4)群が30.89%(28.41~33.50)、第5五分位(Q5)群は38.66%(33.51~52.51)であった。 10万人年当たりの大腸がん発症率は、Q1群66.6件からQ4群39.0件へと低下したが、Q5群は49.7件であった。合併症が増加、ネットコストは減少 非検診群における大腸がん発症の生涯リスクは1,000人当たり34.2件(95%信頼区間[CI]:25.9~43.6)であり、大腸がん死リスクは13.4件(10.0~17.6)であった。 検診群では、Q1群の大腸がん発症率は1,000人当たり26.6件(95%CI:20.0~34.3)であったのに対し、Q5群は12.5件(9.3~16.5)で、大腸がん死亡率はQ1群の5.7件(4.2~7.7)に対しQ5群は2.3件(1.7~3.1)であり、いずれもADRが高いほどリスクが低かった。 Q1群と比較して、ADRが5%上昇するごとに、大腸がん生涯発症率が平均11.4%(95%CI:10.3~11.9)低下し、死亡率は平均12.8%(11.1~13.7)減少した。 合併症は、Q1群では大腸内視鏡検査2,777件当たり6.0件(95%CI:4.0~8.5)に認められたのに対し、Q5群では3,376件当たり8.9件(6.1~12.0)に増加した。 また、検診のネットコストは、Q1群の210万米ドル(95%CI:180~240万)から、Q5群では180万(130~230万)米ドルへと減少した。 著者は、「ADRの変動の原因解明や、ADRの上昇が患者アウトカムを改善するかを評価するには、さらなる検討を要する」としている。

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統合失調症発症予測に喫煙が関連

 米国バージニア・コモンウェルス大学のKenneth S. Kendler氏らは、喫煙と将来の統合失調症または非感情性精神病リスクとの関連を明らかにするため、スウェーデンの出生および徴兵登録より収集したデータを検討した。その結果、喫煙が統合失調症の将来リスクを予測しうることを報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年6月5日号の掲載報告。 研究グループは、スウェーデンの出生および徴兵登録より収集した女性141万3,849例、男性23万3,879例の喫煙状態を基に、統合失調症あるいは非感情性精神病の診断に対する将来リスクを予測した。予測に際しては、Cox比例ハザードおよび相関コントロールモデルを用いた。 主な結果は以下のとおり。・喫煙評価時の平均年齢は、女性27歳、男性18歳であり、追跡終了時の平均年齢は女性46歳、男性26歳であった。・統合失調症初発に対するハザード比は、軽度喫煙群[女性2.21(95%信頼区間[CI]:1.90~2.56)、男性2.15(同:1.25~3.44)]、重度喫煙群[女性3.45(同:2.95~4.03)、男性3.80(同:1.19~6.60)]のいずれにおいても増大がみられた。・喫煙評価打ち切りから3~5年後に統合失調症の発症を評価した際も、これらハザード比が低下することはなかった。・年齢、社会経済的状況、薬物乱用で調整した後も、ハザード比はどちらのサンプルにおいてもわずかな低下を認めるだけであった。・妊娠後期まで喫煙していた女性は妊娠早期に禁煙した女性に比べ、統合失調症リスクが高かった。・一般集団、親類、異母(異父)兄弟姉妹(half siblings)、両親とも共通の兄弟姉妹(full siblings)において、重度喫煙の状況が異なる場合の非感情性精神病の予測ハザード比はそれぞれ2.67、2.71、2.54、2.18であった。・all relative pairsを用いたモデルによると、喫煙状態の異なる一卵性双生児のうち重度喫煙者の非感情性精神病に対する予測ハザード比は、1.69(95%CI:1.17~2.44)であった。 著者らは、「喫煙と統合失調症発症との関連性は、統合失調症の前駆症状出現期の喫煙開始により生じるものではない。また、明らかに用量反応関連がみられた」と述べた。また、家族形態(父母のうちどちらかが共通の兄弟姉妹など)により非感情性精神病リスクが異なることも明らかになったことを踏まえ、「所見は、喫煙と統合失調症の関係に対するさまざまな病因学的仮説の妥当性を評価するうえで有用と思われる」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者は、なぜ過度に喫煙するのか 統合失調症のカフェイン依存、喫煙との関連に注意 統合失調症患者における「禁煙」は治療に影響を与えるか?

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第21回

第21回:全般性不安障害とパニック障害のアプローチ監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 プライマリケアの場において、原因がはっきりしないさまざまな不安により日常生活に支障を生じている患者を診療する経験があるのではないかと思います。またとくに若い患者たちの中でみることの多いパニック障害もcommonな疾患の1つと思われ、その数は年々増加しているともいわれています。厚労省の調査1)では、何らかの不安障害を有するのは生涯有病率が9.2%であるとされ、全般性不安障害1.8%、パニック障害0.8%という内訳となっています。医療機関を受診する患者ではさらにこの割合が高くなっていると考えられ、臨床では避けて通れない問題となっています。全般性不安障害とパニック障害の正しい評価・アプローチを知ることで患者の不要な受診を減らすことができ、QOLを上げることにつながっていくと考えられます。 タイトル:成人における全般性不安障害とパニック発作の診断、マネジメントDiagnosis and management of generalized anxiety disorder and panic disorder in adults.以下、American Family Physician 2015年5月1日号2)より1. 典型的な病歴と診断基準全般性不安障害(generalized anxiety disorder:GAD)典型的には日常や日々の状況について過度な不安を示し、しばしば睡眠障害や落ち着かなさ、筋緊張、消化器症状、慢性頭痛のような身体症状と関係している。女性であること、未婚、低学歴、不健康であること、生活の中のストレスの存在がリスクと考えられる。発症の年齢の中央値は30歳である。「GAD-7 スコア」は診断ツールと重症度評価としては有用であり、スコアが10点以上の場合では診断における感度・特異度は高い。GAD-7スコアが高いほど、より機能障害と関連してくる。パニック障害(panic disorder:PD)明らかな誘因なく出現する、一時的な予期せぬパニック発作が特徴的である。急激で(典型的には約10分以内でピークに達する)猛烈な恐怖が起こり、少なくともDSM-5の診断基準における4つの身体的・精神的症状を伴うものと定義され、発作を避けるために不適合な方法で行動を変えていくことも診断基準となっている。パニック発作に随伴する最もよくみられる身体症状としては動悸がある。予期せぬ発作が診断の要項であるが、多くのPD患者は既知の誘因への反応が表れることで、パニック発作を予期する。鑑別診断と合併症内科的鑑別:甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、不整脈や閉塞性肺疾患などの心肺疾患、側頭葉てんかんやTIA発作などの神経疾患その他の精神疾患:その他の不安障害、大うつ病性障害、双極性障害物質・薬剤:カフェイン、β2刺激薬、甲状腺ホルモン、鼻粘膜充血除去薬、薬物の離脱作用GADとPDは総じて気分障害、不安障害、または薬物使用などの少なくとも1つの他の精神的疾患を合併している。2. 治療患者教育・指導配慮のある深い傾聴が重要であり、患者教育自体がとくにPDにおいて不安症状を軽減する。また生活の中で症状増悪の誘因となりうるもの(カフェイン、アルコール、ニコチン、食事での誘因、ストレス)を除去し、睡眠の量・質を改善させ、身体的活動を促す。身体的活動は最大心拍数の60%~90%の運動を20分間、週に3回行うことやヨガが推奨される。薬物療法第1選択薬:GADとPDに対してSSRIは一般的に初期治療として考慮される。三環系抗うつ薬(TCA)もGADとPDの両者に対して有効である。PDの治療において、TCAはSSRIと同等の効果を発揮するが、TCAについては副作用(とくに心筋梗塞後や不整脈の既往の患者には致死性不整脈のリスクとなる)に注意を要する。デュロキセチン(商品名:サインバルタ)はGADに対してのみ効果が認められている。buspironeのようなazapirone系の薬剤はGADに対してはプラセボよりも効果があるが、PDには効果がない。bupropionはある患者には不安を惹起するかもしれないとするエビデンスがあり、うつ病の合併や季節性情動障害、禁煙の治療に用いるならば、注意深くモニターしなければならない。使用する薬剤の容量は漸増していかなければならない。通常、薬剤が作用するには時間がかかるため、最大用量に達するまでは少なくとも4週間は投与を続ける。症状改善がみられれば、12ヵ月間は使用すべきである。ベンゾジアゼピン系薬剤は不安の軽減には効果的だが、用量依存性に耐性や鎮静、混乱や死亡率と相関する。抗うつ薬と抗不安薬の併用は迅速に症状から回復してくれる可能性はあるが、長期的な予後は改善しない。高い依存性のリスクと副作用によってベンゾジアゼピンの使用が困難となっている。NICEガイドライン3)では危機的な症状がある間のみ短期間に限り使用を推奨している。中間型から長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬剤はより乱用の可能性やリバウンドのリスクは少ない。第2選択薬:GADに対しての第2選択薬として、プレガバリン(商品名:リリカ)とクエチアピン(同:セロクエル)が挙げられるが、PDに対してはその効果が評価されていない。GADに対してプレガバリンはプラセボよりは効果が認められるが、ロラゼパム(同:ワイパックス)と同等の効果は示さない。クエチアピンはGADに対しては効果があるが、体重増加や糖尿病、脂質異常症を含む副作用に注意を要する。ヒドロキシジン(同:アタラックス)はGADの第2選択薬として考慮されるが、PDに対しては効果が低い。作用発現が早いため、速やかな症状改善が得られ、ベンゾジアゼピンが禁忌(薬物乱用の既往のある患者)のときに使用される。精神療法とリラクゼーション療法精神療法は認知行動療法(cognitive behavior therapy:CBT)や応用リラクゼーションのような多くの異なったアプローチがある。精神療法はGADとPDへの薬物療法と同等の効果があり、確立されたCBTの介入はプライマリケアの場では一貫した効果が立証されている。精神療法は効果を判定するには毎週少なくとも8週間は続けるべきである。一連の治療後に、リバウンド症状を認めるのは、精神療法のほうが薬物療法よりも頻度は低い。各人に合わせた治療が必要であり、薬物療法と精神療法を組み合わせることで2年間の再発率が減少する。3. 精神科医への紹介と予防GADとPD患者に対して治療に反応が乏しいとき、非典型的な病歴のもの、重大な精神科的疾患の併発が考慮される場合に、精神科医への紹介が適用となる。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) 川上憲人ほか. こころの健康についての疫学調査に関する研究(平成16~18年度厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学研究事業). こころの健康についての疫学調査に関する研究,総合研究報告書). 2007. 2) Locke AB, et al. Am Fam Physician. 2015;91:617-624. 3) NICEガイドライン. イギリス国立医療技術評価機構(The National Institute for Health and Care Excellence:NICE).

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精神疾患患者の作業記憶低下機序が解明か

 米国・ピッツバーグ大学/奈良県立医科大学の紀本 創兵氏らは、統合失調症患者における作業記憶低下の分子メカニズムを明らかにするため、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御に関わる初期遺伝子の定量化を試みた。その結果、NARPのメッセンジャーRNA(mRNA)発現量が低下しており、これがパルブアルブミン介在ニューロンへの興奮性入力を低下させ、ガンマアミノ酪酸の合成低下を通して作業記憶低下につながっている可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月3日号の掲載報告。 統合失調症において、作業記憶の欠損が背外側前頭前皮質におけるガンマ振動の発生異常を反映しているようである。ガンマ振動の発生には抑制性パルブアルブミン陽性介在ニューロンの興奮相を要する。このようにガンマ振動は、1つにはパルブアルブミン介在ニューロン上のグルタミン酸受容体シナプスの数に影響されるが、統合失調症におけるグルタミン酸受容体を介したパルブアルブミン介在ニューロンの興奮を制御する分子的要因に関しては、ほとんど知られていなかった。 研究グループは、統合失調症患者において、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御を担う初期遺伝子(NARP、ARC、SGK1)の定量化を行った。統合失調症、双極性障害、うつ病患者、そして十分にマッチさせた健常者(対照)より剖検脳標本(206例)を入手。定量PCR、in situハイブリダイゼーションまたはマイクロアレイ解析を用いて脳組織を検討し、灰白質と層の背外側前頭前皮質における転写レベル、および細胞分解レベルを測定した。検討は、2013年1月1日から2014年11月30日の期間に実施された。NARP、ARC、SGK1のmRNA発現量を統合失調症患者と対照者の標本において比較し、診断特異性は気分障害患者の標本におけるNARP mRNAレベルにより評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・定量PCRにより、対照群と比べて統合失調症患者の標本における。NARP mRNA発現量は25.6%と有意に低値であった(平均[SD]:0.036[0.018] vs 0.049[0.015]、F1,114=21.0、p<0.001)。・一方、ARC値(F1,112=0.93、p=0.34)およびSGK1値(F1,110=2.52、p=0.12)では、対照と統合失調症患者の間で有意な差はみられなかった。・これらの結果はin situハイブリダイゼーション(NARP;統合失調症患者vs.対照者:40.1%の低下、p=0.003)、およびマイクロアレイ解析(NARP;統合失調症患者vs.対照者:3層錐体細胞で12.2%の低下[p=0.11]、5層錐体細胞で14.6%の低下[p=0.001])により裏付けられた。・統合失調症患者の標本において、NARPとGAD67のmRNA値間に正の相関が認められ (r=0.55、p<0.001)、パルブアルブミン介在ニューロンにおけるGAD67 mRNA発現は活動性依存的であった。・またNARP mRNA値も、双極性障害患者の標本(-18.2%、F1,60 =11.39、p=0.001)、うつ病患者の標本(-21.7%;F1,30 = 5.36、p=0.03)において健常対照者に比べ低下しており、精神疾患患者の標本で顕著であった。・3つの診断群において、NARP mRNA値はソマトスタチンmRNAと正の相関を示し(すべてのr≧0.53、すべてのp≦0.02)、その発現は活動依存的であった。関連医療ニュース 統合失調症患者の認知機能に対するアリピプラゾール vs リスペリドン 統合失調症の認知機能改善に抗認知症薬は有用か 精神疾患患者の認知機能と炎症マーカーとの関連が明らかに  担当者へのご意見箱はこちら

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オピオイド服用中のBZD、過剰摂取死リスク増大/BMJ

 オピオイド鎮痛薬服用中のベンゾジアゼピン系薬投与は、過剰摂取による死亡リスクの増大と用量依存的に関連することが、米国・ブラウン大学のTae Woo Park氏らによる症例コホート研究の結果、報告された。また薬剤種別の検討において、クロナゼパムと比較してtemazepam(国内未承認)の同死亡リスクが低いことも明らかにされた。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告より。米国退役軍人を対象に症例コホート研究 研究グループは、退役軍人健康管理局(VHA)2004~2009年のデータを基に、オピオイド鎮痛薬を服用する主として男性の米国退役軍人(VA)を対象に検討を行った。用量、種類、服用スケジュールなどでみたベンゾジアゼピン系薬処方パターンと、過剰摂取による死亡リスクとの関連を調べた。 対象は、オピオイド鎮痛薬服用者で過剰摂取により死亡した全VA(2,400例)と、無作為に抽出したVHAの医療サービスを利用しオピオイド鎮痛薬を投与されているVA(42万386例)であった。 主要評価項目は、あらゆる過剰摂取による死亡(意図的か否かを問わず)、または薬物中毒によるものか判断不能の死亡で、National Death Indexの死亡情報で確認した。過剰摂取死の約半数で同時服用、用量依存にリスク増大 試験期間中、オピオイド鎮痛薬を服用していたVAのうち27%(11万2,069/42万386例)が、ベンゾジアゼピン系薬も服用していた。 過剰摂取による死亡の約半数(1,185/2,400例)が、ベンゾジアゼピン系薬とオピオイドを同時に処方されていた間に発生したものであった。 過剰摂取による死亡リスクは、ベンゾジアゼピン系薬処方歴とともに増大した。補正後ハザード比(HR)は、非処方との比較で、以前の処方歴あり群で2.33(95%信頼区間[CI]:2.05~2.64)、現在処方されている群では3.86(同:3.49~4.26)であった。 また、過剰摂取による死亡リスクは、ベンゾジアゼピン薬の1日用量増加とともに増大した。1日用量が>0~10mgとの比較において、>10~20mgのHRは1.69、>20~30mgは2.34、>30~40mgは2.65、>40mgは3.06であった。 薬剤種別にみると、クロナゼパムとの比較において、temazepamの過剰摂取による死亡リスクが最も低かった(HR:0.63、95%CI:0.48~0.82)。 ベンゾジアゼピン系薬の投与スケジュールと過剰摂取による死亡リスクとの関係はみられなかった。

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携帯GPS機能で心肺蘇生実施率が向上/NEJM

 携帯電話使用者の位置情報を瞬時に特定する携帯電話位置情報システムを使って、救急通報があった院外心停止が疑われる患者の近くにいる心肺蘇生(CPR)訓練を受けたボランティア市民に連絡し、現場への急行を依頼することで、“居合わせた市民(バイスタンダー)によるCPR実施率”が有意に上昇したことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMattias Ringh氏らが、二重盲無作為化比較試験を行い明らかにした。バイスタンダーによるCPRは、院外心停止患者の生存率上昇と関連することが示されている。NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。携帯電話位置情報システム活用し、患者から500m以内のボランティアに連絡 試験は2012年4月~2013年12月にかけて、ストックホルムで行われた。 研究グループは、救急通報を受け、対象患者に院外心停止の疑いがあった場合、携帯電話位置情報システムを使い、患者の500m以内に居合わせたCPR訓練を受けた市民ボランティアの位置を特定した。 そのうえで、介入群の患者に対しては該当するボランティアに連絡し、患者の元に急行するよう依頼した。一方で対照群の患者については、該当ボランティアに連絡をしなかった。 主要評価項目は、救急隊や消防隊、警察が到着する以前の、バイスタンダーによるCPR実施率とした。 CPR訓練を受けた市民ボランティアは、試験開始当初の登録人数は5,989人で、試験実施中に計9,828人に増えた。バイスタンダーCPR実施率、介入群で62% 試験期間中、携帯電話位置情報システム起動となった院外心停止は667件だった。介入群は46%(306例)、対照群は54%(361例)だった。 バイスタンダーによるCPR実施率は、介入群が62%(305例中188例)であった。一方、対照群は48%(360例中172例)で、介入群のほうが有意に高率だった(絶対差:14ポイント、95%信頼区間:6~21、p<0.001)。

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障害生存年数の増加、主な原因は腰痛とうつ/Lancet

 188ヵ国を対象とした世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)2013の結果、世界的に高齢者人口が増加しており、また高齢者ほど疾患や外傷の後遺症を持つ人の割合が増加していることが判明した。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのTheo Vos氏らGlobal Burden of Disease Study 2013研究グループが、1990~2013年の188ヵ国の医療データをシステマティックに分析した結果、明らかになった。Lancet誌オンライン版2015年6月7日号掲載の報告より。301の疾患・外傷と2,337の後遺症について分析 世界疾病負担研究2013では、1990~2013年に188ヵ国を対象に、3万5,620のデータを基に、301の急性・慢性疾患や外傷と2,337の後遺症について、その発生率や罹患率、障害生存年数(YLD)などを分析した。 共存症シミュレーションにより、国や年、年齢、性別による後遺症数の予測を行った。 その結果、外傷や疾患の発生率・罹患率は高く、後遺症の認められない人の割合は低いことがわかった。共存症は年齢とともに、また1990~2013年にかけて増加していた。 急性後遺症(acute sequelae)の発生は、感染症と短期外傷によるものが大部分を占め、2013年には上気道感染症と下痢症が20億件に上った。さらに同年には、永久歯う蝕による歯の痛みの発生件数が2億件だった。 一方、慢性後遺症(chronic sequelae)の多くは非伝染病で、無症候性永久歯う蝕が24億件、緊張性頭痛が16億件だった。YLD要因の上位は腰痛と大うつ病性障害 YLDは男女ともに人口および加齢とともに増大し、1990年は5億3,760万年だったが2013年には7億6,480万年となっていた。一方で年齢調整罹患率は114.87/1,000人から110.31/1,000人とほとんど減少していなかった。 YLDの主な要因としては、全調査対象国で腰痛と大うつ病性障害が上位10位に入っていた。また、YLD率(各人の生存に占めるYLDの割合)増大の主な原因は、筋骨格系、精神および薬物乱用障害、神経障害、慢性呼吸器疾患だった。サハラ以南のアフリカではHIV/AIDSがYLD増加の顕著な要因だった。 また世界的に障害調整生存年数の占める割合は、1990年の21.1%から、2013年の31.2%に上昇していた。 著者はこれら結果について、「世界人口の高齢化とともに、疾患や外傷の後遺症を有する人が増えている。YLD率は死亡率よりもゆっくりとした上昇だが、健康システムにおいてはますます、非致死的疾患および外傷への注意が必要である。とくにサハラ以南アフリカ以外の地域では、疾病負担は非致死的疾患および外傷によるものへと移行しつつある」とまとめ、「これらの結果は、疫学的動向調査や各国間の差への理解を深めることで、今後の健康イニシアチブを導くものとなるだろう」と述べている。

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脊椎圧迫骨折治療に有望な、新たな椎体形成術

 Kivaシステムは、椎体内にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を素材としたデバイスを埋め込み、その中に骨セメントを充填する椎体形成術(Vertebral Augmentation)である。米国・ウィスコンシン医科大学のSean M Tutton氏らは、安全性、有効性について、有痛性の骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折患者を対象に多施設無作為化比較試験KAST研究を行った。その結果、主要評価項目である疼痛改善、機能の維持・改善および安全性の複合エンドポイントに関してKivaシステムのバルーン椎体形成術(BKP)に対する非劣性が確認されたことを報告した。副次的評価項目においてもKivaシステムで良好な結果が得られたという。Spine誌2015年6月15日号(オンライン版2015年5月27日号)の掲載報告。 試験は、有痛性の骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折(1~2椎体)を有する患者300例で、Kiva群(153例)とBKP群(147例)に無作為化して単盲検下にて手術を行い、12ヵ月間追跡した。 主要評価項目は、12ヵ月後における疼痛減少(視覚アナログスケール[VAS]による)、機能の維持または改善(オスウェストリー障害指数[ODI]による)、およびデバイスに関連した重篤な有害事象の複合エンドポイントであった。 主な結果は以下のとおり。・VASスコアはKiva群で70.8ポイント、BKP群で71.8ポイント改善した。・ODIはそれぞれ38.1ポイントおよび42.2ポイント改善した。・デバイスに関連した重篤な有害事象は認められなかった。・主要評価項目においてKivaのBKPに対する非劣性が示された。・副次的評価項目では、骨セメントの使用量および漏出に関してKivaの優位性が認められた。

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雌との遭遇意欲低下、うつモデルマウス:大阪大学

 大阪大学の吾郷 由希夫氏らは、うつ病を含む精神障害の重要な指標である意欲低下を評価する新たな手段として、雄マウスの雌マウスとの遭遇テストを検討した。その結果、雄マウスのうつ病モデルでは雌マウスとの遭遇を好む傾向が低下すること、この低下はフルボキサミンなどで軽減されることを報告し、本手法が雄マウスの意欲の評価に有用である可能性を報告した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年5月29日号の掲載報告。 意欲低下は、うつ病を含む精神障害の重要な指標である。研究グループは、マウスにおける報酬探索(reward-seeking)行動の新しい評価法である、雌との遭遇テスト(encounter test)について検討を行った。試験装置はパーテーションで区切られた3つのオープンな部屋で構成され、実験動物は1つの部屋から別の部屋に自由に行き来できるようにした。1匹の試験用の雄マウスはこの装置に前もって慣らしておき、その後、雌マウスと雄マウスを1匹ずつそれぞれ、左と右の部屋に設置した網の箱に入れた。雄のテストマウスが雌のあるいは雄のエリアで費やす時間は10分間とした。 主な結果は以下のとおり。・テストを実施した6系統のマウスすべてにおいて、雌との遭遇を有意に好むという結果を示した。・この嗜好傾向は、生後7~30週のマウスに認められた。・装置に慣らされていた雄のテストマウスのこの傾向は、去勢により阻害された。・また、後から侵入した雌マウスの月経周期のフェーズに影響されることはなかった。・この傾向は単独飼育、コルチコステロン投与、リポ多糖投与マウスを含む、うつ病モデルのマウスにおいて低下した。・示された意欲の低下は、単独飼育およびリポ多糖投与マウスではフルボキサミンの投与により軽減し、コルチコステロン投与マウスでは代謝型グルタミン酸受容体2/3アンタゴニストのLY341495投与により改善した。・雄でなく雌マウスとの遭遇により、雄のテストマウスの側坐核シェル部でのc-Fos発現が増加した。・さらに、この嗜好傾向と、遭遇により誘発されるc-Fos発現増加はどちらもドーパミンD1およびD2受容体アンタゴニストにより遮断された。・以上のように、成熟雄マウスの意欲は、雌との遭遇を定量化することで容易に評価できることが示された。関連医療ニュース うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大 NIRS、抗うつ効果の予測マーカーとなりうるか:昭和大 学歴とうつ病の関連は、遺伝か、環境か  担当者へのご意見箱はこちら

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