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SPRINT試験:厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖 氏)-446

 これまで、フラミンガム研究あるいはわが国の久山町研究、HOMED-BP研究などの観察研究では、収縮期血圧120mmHg以上から心血管合併症が増えてくることが明らかにされており、120mmHgが至適血圧値とされてきた。しかし、降圧薬治療でこのレベルまで下げることの是非については、多くの議論があった。とくに、高齢者では降圧目標値は高めにすべき、という意見は少なくなかった。しかし、本研究は、高齢者や冠動脈疾患の高リスク症例ほど収縮期血圧120mmHgという厳格な降圧が、140mmHgというこれまでの標準値とされたレベルまでの降圧治療よりも、心不全発症を含む心血管合併症の発症予防効果が大きく、生命予後を改善することを示し、J曲線の存在を否定した点で意義がある。決め手は心不全発症が少なかったこと。しかし、なぜ心不全なのか 注目すべきは主要評価項目の中でも、心不全発症と心血管死のみが有意かつ大幅に減少しており、これが全体の主要評価項目を、厳格降圧治療群が好ましいという結果に導いていることである。 このような心不全発症の抑制効果が全体の流れに大きく影響するという現象は、かつてのALLHAT試験でも観察され、最近では糖尿病患者におけるSGLT2阻害薬の有用性を検証したEMPA-REG OUTCOME試験でもみられている。前者では降圧薬としてのサイアザイド系利尿薬、後者ではSGLT2阻害薬の利尿作用が、心不全発症の抑制に大きく貢献したと考えられている。 心不全発症を複合エンドポイントに含めるか否かは、結果に大きく影響する。たとえば、糖尿病症例における降圧目標値を120mmHgと140mmHgで比較したACCORD試験では、両群で主要エンドポイントに有意差がなかったが、そのエンドポイントに心不全は含まれておらず、心筋梗塞、脳卒中、心血管死のみである。複合エンドポイントに心不全を含めるか否かの基準が一定していない。 とくに、SPRINT試験のように非盲検法で行われた試験において、急性心不全発症をどのように客観的に定義したかが知りたいところである。 今回のSPRINT試験でも、サイアザイド類似薬を優先的に使うことが推奨されていることから考えると、やはり心血管合併症を構成する重要な要素である心不全の抑制には利尿薬が不可欠であることを示唆している。この結果を日常診療に反映することは、慎重に~血圧測定環境の違い しかし、SPRINT研究の結果を、そのまま臨床に適応することには慎重であるべきである。血圧測定環境が、医師のいない場所で自動血圧計による3回血圧測定の平均値であることは注目すべきである。すなわち、白衣高血圧を徹底的に除外している状態での血圧評価である。わが国の家庭血圧計を用いた観察研究でも、収縮期血圧がほぼ120mmHg以上から心血管イベントが上昇することをすでに発表していることから、実際の臨床応用に当たっては家庭血圧で静かな環境での収縮期血圧120mmHgを目標とすべきと思われる。 もう1つ注意が必要なことは、今回の結果は血圧が安定するまで1ヵ月ごとの受診という細かい観察を伴う、しかも臨床研究という究極の適正治療の場での結果であることに留意すべきである。 とくに今回明らかになったように、腎機能の悪化、電解質異常の悪化は重篤な病態を招きかねない。低ナトリウム血症、低カリウム血症が厳格降圧群で多いことは、サイアザイド類似降圧薬の影響と思われる。本剤は非常に強力である反面、電解質異常にはくれぐれも注意が必要である。糖尿病合併例や脳卒中既往例は除外されている 糖尿病合併例や脳卒中既往例は対象から除外されている点は、注意が必要である。糖尿病合併高血圧例の降圧レベルに関してはACCORD試験で、脳卒中合併例ではSPS3試験で決着済みという考えからであろうか。今回は、あくまでもJカーブ論争で問題になった冠動脈疾患での降圧レベルの検証ということであろう。 あくまでも臨床研究という適正治療下での結果であり、わが国の一般診療で行っている医師による1回測定ではなく、血圧安定までは毎月の受診という慎重な高血圧診療での結果であることは留意すべきである。 予後を改善することが示されたが、血圧測定環境が日本の一般臨床とは異なること、臨床研究という慎重な観察の下で行われた降圧治療であることを念頭に置くべきである。関連コメントSPRINT試験:75歳以上の後期高齢者でも収縮期血圧120mmHg未満が目標?(解説:浦 信行 氏)SPRINT試験:絶対リスクにより降圧目標を変えるべきか?(解説:有馬 久富 氏)

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梅毒に気を付けろッ! その1【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第13回となる今回は「梅毒」についてです。今回の梅毒流行の特徴「梅毒」というと、江戸時代に流行した記録もあるくらいに、日本では古くからある感染症です。そんな梅毒をなぜ今さら、この「気を付けろッ」が取り上げるのかと言いますと…今再び梅毒がすさまじい勢いで日本で流行しているからなのです! 梅毒は、日本における再興感染症なのですッ!図1は梅毒の患者数の推移です。見てのとおり、2013年から症例数が増加してきています。当初流行は、東京新宿区から始まったとされていますが、新宿区の病院で働く私としては「うーん…まあときどき診るなぁ」くらいの認識でおりましたし、「きっと医師がちゃんと報告する習慣がついただけで、報告バイアスが働いているんだな」などと思っておりました。 しかし、今こそハッキリ言いましょう! 梅毒は、流行ってます!! まあ、読者の皆さまは「おまえに言われんでも知っとるわ!」と思われるでしょうが、マジで流行ってます。ここ最近の梅毒の流行状況はヤバいことになっており、当院では週に数例診るペースで受診者が訪れています。2013年くらいまでは、主にMSM(Men who has sex with Men: 男性と性交渉する男性)の方を中心に流行していましたが、今では女性にも流行が及んでおります。画像を拡大する1回の性交渉で30%が感染梅毒は言うまでもなく性交渉で感染します。1期または2期梅毒に感染している人と性交渉をすると30%くらいの確率で感染すると言われています。主な性感染症の1回の性交渉で感染する確率を表にまとめました。HIVの1回の性交渉での感染率が0.05~0.1%くらいと言われていますので、30%というと結構な確率ですよね。そんなわけで梅毒になりたくなければセックスしなければ良いわけですが、それぞれ皆さまいろんな事情があるでしょうから、そういうわけにもいかないと思います。100%ではありませんが、コンドームの装着は予防に有効です。画像を拡大する初期症状に乏しい梅毒梅毒が広がりやすい理由の1つとして、症状に気付きにくい点が挙げられます。1期梅毒の「硬性下疳」と呼ばれる潰瘍病変は、一般的に痛みを伴わず、自覚症状に乏しいため気付かないうちにパートナーに梅毒をうつしてしまうことがあります。私自身は口唇に硬性下疳ができて、口唇ヘルペスと診断されて放置していたコマーシャルセックスワーカーの方を診たことがあります(図2)。画像を拡大するこの方はオーラルセックスをなりわいとされていましたので、1日何人もの梅毒患者が誕生していたものと思われます。また、2期梅毒も症状が多彩であり、なかなか診断に至らないことがあります。梅毒の皮疹は「これは典型的な梅毒疹だッ!」というものもありますが、「えー!これ梅毒の皮疹なの?」という非典型的なものもあり、さまざまなスペクトラムがあります。図3は乾癬のような皮疹で受診した2期梅毒の方です。「なんか最近様子がおかしい」ということで、上司に受診を勧められた会社員の方は神経梅毒でした。画像を拡大するというわけで、梅毒の診断は非常に難しいのですッ! 他の性感染症(淋菌、クラミジア、B型肝炎、HIVなど)を診たときも梅毒を疑ってみましょう。「いつも心に梅毒を!」これをわれわれの座右の銘にしようではありませんかッ!話が長くなってしまったのと、とっくに原稿の締め切りを過ぎている関係上、今回はここで終わります。次回「梅毒 その2」では性交渉歴の聴き方と、梅毒の診断・治療についてお話しさせていただきます。1)国立感染症研究所.IDWR 2014年第47号<注目すべき感染症> 梅毒 2014年における報告数増加と疫学的 特徴2)Holmes KK, et al. Am J Epidemiol.1970;91:170-174.3)Platt R, et al. JAMA.1983;250:3205-3209.4)Lycke E, et al. Sex Transm Dis.1980;7:6-10.

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DNA修復遺伝子異常の前立腺がん、olaparibで高い奏効率/NEJM

 DNA修復遺伝子に異常が認められる転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者には、ポリ(アデノシン二リン酸・リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害作用のあるolaparibが、9割近くの奏効率を示す可能性があることが示された。英国・Institute of Cancer ResearchのJ. Mateo氏らが50例を対象とした第II相非盲検単群2段階多施設試験の結果、報告した。前立腺がんは多様性があるが、現在の治療は遺伝子ベースに層別化したものはなかった。NEJM誌2015年10月29日号掲載の報告。50例を対象に、olaparib 400mgを1日2回投与 研究グループは、転移性去勢抵抗性前立腺がんの患者50例を対象に、olaparib 400mgを1日2回投与した。 主要評価項目は、奏効率で、その定義としては(1)固形がんにおける効果判定基準RECIST1.1に基づく客観的奏効、(2)前立腺特異抗原(PSA)値の50%以上低下、(3)血中循環腫瘍細胞数が5/7.5mL以上から5/7.5mL未満へ減少のいずれかとした。 腫瘍生検を行い、ターゲット領域のみの次世代シーケンシング、エクソーム/トランスクリプトーム解析、デジタルポリメラーゼ連鎖反応検査を実施した。 被験者の全員にドセタキセル治療歴があり、49例(98%)にアビラテロンまたはエンザルタミドによる治療歴が、29例(58%)にカバジタキセルによる治療歴があった。被験者全体の奏効率33%、DNA修復異常例の奏効率88% 結果、評価が可能だった49例のうち、奏効が認められたのは33%(95%信頼区間:20~48)で、そのうち12例は試験薬の服用期間が6ヵ月超だった。 次世代シーケンシングの結果、BRCA1/2、ATM、ファンコニ貧血遺伝子、CHEK2などのDNA修復遺伝子に、ホモ接合欠失や有害突然変異もしくはその両方が16例で見つかった。 この16例のうち、olaparibで奏効が認められたのは14例(88%)で、その中にはBRCA2欠失の7例すべてと、ATM変異を認めた5例中4例が含まれていた。 なおグレード3または4の有害事象としては、貧血が20%(10例)、疲労感が12%(6例)で、先行試験の結果と一致していた。

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妊娠に伴ううつ病、効果的なメンタルヘルス活用法

 スクリーニングでうつ病と診断された妊娠中あるいは分娩後の女性について、スクリーニング単独の場合はメンタルヘルスの活用は22%にとどまったが、周産期外来部門への介入や、本人へのリソース提供を行うことで、周産期うつ女性のメンタルヘルス活用は、2~4倍増大するという。米国・マサチューセッツ大学医学部のNancy Byatt氏らがシステマティックレビューの結果、示した。Obstetrics & Gynecology誌オンライン版2015年11月号の掲載報告。 レビューは、PubMed、CINAHL、PsycINFO、ClinicalTrials.gov、Scopus(EMBASE)を検索し、1999~2014年に発表された、周産期医療時におけるうつ病スクリーニング後のメンタルヘルスケアの活用を評価した研究を特定して行われた。研究の選択基準は、1)英語で発表、2)スクリーニングでうつ病と診断された妊娠中あるいは分娩後の女性が被験者、3)周産期外来で有効性の認められているうつ病スクリーニングを実施、4)メンタルヘルスケアの活用をアウトカムに含む、とした。392件の論文が検索され、このうち42件がフルテキストレビューであり、17件が選択基準を満たした。modified Downs and Black scaleを用いて研究の質を評価。2人の研究者が個別に論文をレビューし、コンセンサスを得ながら、試験デザイン、介入の内容、メンタルヘルスケアの活用を明らかにし、分類した。 主な結果は以下のとおり。・無作為化対照試験1件、クラスター無作為化対照試験1件を含む、さまざまな試験デザインの研究論文17件をレビューに包含した。研究論文の質に関する平均支持率は61%(31.0~90.0%)であった。・周産期外来部門へ介入が行われなかった場合、周産期うつ女性が1回以上メンタルヘルス外来を受診していた割合は平均22%(13.8~33.0%)だった。・しかし、患者への関与戦略(44%、29.0~90.0%)、実地アセスメント(49%、25.2~90.0%)、また周産期医療従事者へのトレーニング(54%、1.0~90.0%)といった介入を行うことで、外来受診の頻度は倍増した。・さらに、女性に対するリソースの提供、周産期医療従事者へのトレーニング、実地アセスメント、および周産期医療従事者対象のメンタルヘルスコンサルテーションという介入を行うことで、メンタルヘルスケアの活用はより高率となることが示唆された(81%、72.0~90.0%)。・詳細で正確なさらなる研究が必要ではあるが、スクリーニングに加えて本人および医療従事者を対象とした介入、また実地臨床レベルの障壁に対する介入を行うことは、うつ病の検出、評価、専門医への紹介、さらに周産期医療を改善すると思われた。関連医療ニュース 妊娠初期のSSRI曝露、胎児への影響は 妊娠初期のうつ・不安へどう対処する ヨガの呼吸法や瞑想、産前うつ軽減によい

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第24回

第24回:痛風の診断と治療、そして予防監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 先日、痛風結節のある患者が受診されました。高齢女性で、かなり食生活が乱れているようでした。診断と治療に関しての基本的な流れを確認しつつ、家庭医として予防についても考えてみました。厳密なプリン体摂取制限による尿酸値低下の影響は少ないといわれているものの、食事習慣の改善については根拠を持ってアドバイスをしたいと思っています。 以下、文献1より(一部文献3を含む)痛風は尿酸ナトリウム結晶により、主に第1中足骨関節(MTP:metatarsophalangeal joint)が侵される、有痛性の関節炎である。ほかにも横足根関節(MT:midtarsal joint)、足関節にも多く、長期罹患例では膝関節、手指関節にも生じうるが、股関節、肩関節はまれである。女性ホルモンが尿酸排泄を増加させるので、閉経前の女性は男性に比べて痛風の有病率が低いとされている。また、アルコール(とくにビール)、肉類(とくに赤肉、ジビエ、内臓)、魚介類(貝、大型海水魚)、フルーツジュース、高濃度果糖液の入った飲料などの摂取は痛風のリスクを高める。(表1) 画像を拡大する痛風の診断基準としては、米国リウマチ学会のもの(表2)が用いられることが多く、発症リスクの計算については、オンラインで利用できるものがある2)。鑑別診断は、偽痛風、化膿性関節炎(まれだが痛風との合併あり)をはじめとした感染症、外傷である。表2. 痛風の診断基準1. 尿酸塩結晶が関節液中に存在することまたは2. 痛風結節の証明または3. 以下の11項目のうち6項目以上を満たすことa) 2回以上の急性関節炎の既往があるb) 24時間以内に炎症がピークに達するc) 単関節炎であるd) 関節の発赤があるe) 第1中足趾節関節の疼痛または腫脹があるf) 第1中足趾節関節の病変であるg) 片側の足関節の病変であるh) 痛風結節(確診または疑診)があるi) 血清尿酸値の上昇があるj) X線上の非対称性腫脹がある(骨びらん周囲に骨硬化像を伴うことと、関節裂隙が保たれていることで、RAとの鑑別可能)k) 発作の完全な寛解がある上記のような診断基準ではあるが、可能な限り関節液中の尿酸-ナトリウム結晶の証明が求められる。超音波やMRI、CTは必ずしも診断には必要ないとされる。ただし、超音波において、軟骨表面の尿酸塩結晶の検出は、Double contour signとして有名である。痛風性関節炎の診断上の注意点3)1.痛風発作中の血清尿酸値は低値を示すことがあり、診断的価値は高くない2.関節液が得られたら迅速に検鏡し、尿酸塩結晶の有無を同定する3.痛風結節は診断上価値があるが頻度は低い急性期の治療については、副腎皮質ステロイドの経口投与とNSAIDsが同等に効果的である (推奨レベルB)。第1選択はNSAIDsであり、歴史的にはインドメタシンが好んで使用されているが、他のNSAIDsに比べて効果があるというエビデンスはない。ステロイドは短期間で終了すると再燃がありうるため、10~14日で漸減していく。コルヒチンはやや高価であり、鎮痛効果はなく、発症後72~96時間経過していると効果に乏しいとされる。再発予防の治療については、痛風の既往があり、かつ年2回以上の発作(CKD stage2以上では年1回以上)、痛風結節、または尿酸結石の既往がある場合には尿酸を下げる治療を考慮する。症状がなくても発作後3~6ヵ月は治療を継続し、症状がみられる場合には引き続き継続する。服薬についても選択肢は多くあるが、ここではフェブキソスタットとアロプリノールが同等に効果がある(推奨レベルB)と述べるに留める。日本での目標値としては尿酸値6mg/dL以下に維持するのが望ましいとされている。食生活習慣の改善としては、体重減少はリスクを下げる。果糖液、プリン体を多く含む動物性蛋白、とくにビールを含むアルコールを避けるべきである。一方で、プリン体を多く含む野菜は痛風のリスクを上昇させないといわれている。野菜や低(無)脂肪の乳製品の摂取が推奨される。(ただし、推奨レベルはC)※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Hainer BL, et al. Am Fam Physician. 2014;90:831-836. 2) Gout diagnosis calculator. the GP education and training resource.http://www.gp-training.net/rheum/gout.htm (参照2015.11.4). 3) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版.http://www.tufu.or.jp/pdf/guideline_digest.pdf (参照 2015.11.4).

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MTX併用により関節リウマチのTKAは減少するか

 関節リウマチ(RA)が進行して関節破壊が進んだ場合、人工膝関節置換術(TKA)を行うケースが少なくない。そこで、名古屋大学の浅井 秀司氏らは、TNF阻害薬で長期治療中のRA患者における関節破壊の進行に起因するTKA発生に関して、MTXを併用するとどの程度の影響があるのか調査を行った。その結果、MTXを併用することでTKAの発生率を56%抑制することがわかった。The Journal of rheumatology誌オンライン版2015年10月1日号の掲載報告。 調査は、2001年5月1日から2008年5月31日までに同大学病院でTNF阻害薬治療を受けたRA患者155例(310の膝関節)のうち、関節破壊の徴候のある68例(111の膝関節)を対象とし、5年以上にわたって後ろ向きに行われた。フォローアップ期間の中央値(四分位範囲)は8.1年(7.0~9.3)であった。 主な結果は以下のとおり。・MTXを併用していた膝関節は79関節(71%)であった。・カプランマイヤー推定によると、TKAの累積発生率はMTX非併用群と比較して、MTXを併用した群で有意に低かった(5年時点での発生率:24% vs.45%、p=0.035)。・Cox比例ハザードモデルを使用した多変量解析によると、MTX併用(ハザード比 0.44、95%CI:0.22~0.89)、Larsenグレード(2.93、95%CI:1.94~4.41)、高年齢(1.04、95%CI:1.01~1.08)はTKAの独立した予測因子であることが明らかとなった。

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MetSリスクの高い抗うつ薬は

 メタボリックシンドローム(MetS)は双極性障害患者でよくみられ、一般集団と比較し相対リスクは1.6~2倍といわれている。このリスク増加は、不健康なライフスタイルや薬物治療に起因すると考えられている。これまで、抗精神病薬や気分安定薬は、体重増加やMetSと関連付けられてきたが、抗うつ薬の影響については総合的に評価されていなかった。イタリア・トリノ大学のVirginio Salvi氏らは、抗うつ薬の種類とMetSリスクとの関連を評価するため検討を行った。Psychopharmacology誌オンライン版2015年9月26日号の報告。 本横断的研究では、双極性障害患者294例を連続登録した。MetS診断には、修正NCEP ATP-III診断基準を用いた。患者に使用された抗うつ薬は、一般的な分類名(SSRI、TCA、SNRI、その他の抗うつ薬)、およびヒスタミン1(H1)受容体との親和性を考慮した薬理学的作用に従って分類した。 主な結果は以下のとおり。・全般的には、抗うつ薬の使用はMetSと関連していなかった(有病率[PR]:1.08、95%CI:0.73~1.62、p=0.70)。・ヒスタミン1受容体への高い親和性を有する抗うつ薬を使用した患者(15例)では、MetSの有病率の大幅な増加が認められた(PR:2.17、95%CI:1.24~3.80、p=0.007)。・連続共変量モデルとして阻害定数(Ki)を含めた場合、KiとMetS有病率との間に逆相関を認めた(p=0.004)。 結果を踏まえ、著者らは「本研究は、双極性障害患者のMetSリスクを予測するためには、抗うつ薬の古典的な分類よりも薬理学に基づいた分類のほうがより有用であることを、臨床現場で初めて示した報告であり、臨床経過に関連する可能性がある。しかし、これらの知見が一般化できるかどうかを検討する、より大規模な研究が必要である」とまとめている。関連医療ニュース 抗精神病薬による体重増加や代謝異常への有用な対処法は:慶應義塾大学 難治性うつ病発症に肥満が関連か 非定型うつ病ではメタボ合併頻度が高い:帝京大学  担当者へのご意見箱はこちら

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pembrolizumab、進行期胃がんで良好な成績

 2015年10月、京都で日本癌治療学会が開催された。同会議のシンポジウム「新たな時代のがん免疫療法を展望する」において、愛知県がんセンター中央病院薬物療法部の室 圭氏が切除不能進行・再発胃がんにおけるpembrolizumabのPhase Ib試験KEYNOTE012の現在までの結果を発表した。 進行期胃がんの生存期間中央値は、近年のdoublet、tripletの化学療法で10ヵ月前後、HER-2陽性胃がんにおけるトラスツズマブ治療で15~16ヵ月と、依然として予後不良である。そのような中、多くの分子標的治療薬の臨床試験が行われたが、現在OSのベネフィットが証明されているのはベバシズマブとラムシルマブのみである。一方、胃がんは体細胞突然変異が多く、免疫療法が奏効する可能性も示唆される。また、Nature2014年の報告では、EBウイルス関連、MSI関連の胃がんではPD-L1、PD-L2の発現が高いことが報告されており、抗PD-1、抗PD-L1抗体の可能性が期待される。 KEYNOTE012はpembrolizumabのphase Ib試験であり、トリプルネガティブ乳がんなど4つのがん種の成績が検討されている。胃がんもその1つとして実施されており、対象はPD-L1陽性の切除不能進行期患者。162例がスクリーニングされ、65例がPD-L1陽性(陽性率40%)であった。そのうち39例が試験に登録されている。患者の年齢中央値は69歳、胃切除例が約半数を占め、3分の2の患者が3次治療以降と重度治療例が多かった。アジア人と非アジア人の比率はほぼ同等である。 当試験におけるpembrolizumabの有害事象は疲労感、食欲不振、甲状腺機能低下、皮疹、関節痛など既報と同様であった。治療関連死亡、毒性による治療中止もなかった。包括的奏効率は担当医判定で33%、中央判定では22%であった。一方でPDが半数近くを占めている。奏効した患者については持続的な効果が得られ、奏効期間中央値は40週であった。PFS中央値は1.9ヵ月、OS中央値は2015年カットオフ時点で11.4ヵ月であった。生存についてアジアと非アジアで差がなかった。 pembrolizumabは進行期胃がんにおいて、単剤のサルベージラインや2次治療でのパクリタキセルとの比較などさまざまな開発が行われている。さらに、pembrolizumabは治癒切除不能な進行・再発胃がんの効能は、厚生労働省が審査機関を短縮と支援する先駆け審査指定制度の対象品目として指定された。

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腰痛と精神障害の併存、障害年金支給リスクを16~20倍に

 腰痛と神経症性障害やストレス関連障害などとの相乗的な影響について、オーストリア・ウィーン大学のThomas. E. Dorner氏らは障害年金の観点からコホート研究を行った。その結果、両者の併存はそれぞれ一方の場合より、障害年金支給のリスクを相乗的に高めることが明らかになった。結果を踏まえて著者は、「さらなる障害と労働市場からの排除を防ぐことが臨床的に重要」とまとめている。Psychological Medicine誌オンライン版2015年10月15日号の掲載報告。 本コホート研究の登録者は、2004年12月にスウェーデンに在住しており、2005年は年金非支給期間で、2004~05年にまたがった病欠のない16~64歳の482万3,069例であった。 2006年~10年の障害年金に関するハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)を算定した。曝露変数は、腰痛(ICD-10のM54:背部痛)[2005年における病欠、入院または専門外来受診]と、一般的な精神障害(ICD-10のF40-F48:神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害)[2005年の病欠、入院、専門外来受診、または抗うつ薬(ATC分類N06a)]とした。 主な結果は以下のとおり。・障害年金に関するHRは、腰痛を有する女性で4.03(95%CI:3.87~4.21)、同男性で3.86(同:3.68~4.04)、一般的な精神障害を有する女性で4.98(同:4.88~5.08)、同男性で6.05(同:5.90~6.21)であった。・腰痛と一般的な精神障害の両方を有する場合、障害年金に関するHRは女性で15.62(95%CI:14.40~16.94)、男性で19.84(同:17.94~21.94)であった。・女性において、相乗指数(synergy index)は1.24(95%CI:1.13~1.36)、相互作用による過剰相対リスクは0.18(同:0.11~0.25)、寄与割合は2.08(同:1.09~3.06)であった。同様に男性ではそれぞれ1.45(同:1.29~1.62)、0.29(同:0.22~0.36)および4.21(同:2.71~5.70)であった。

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統合失調症薬物治療、LAIは早く使うべきなのか

 一貫性がある抗精神病治療は治療の重大な部分を占めるが、統合失調症治療では、治療アライアンスの確立および継続、患者中心のアプローチがあらゆるケアの面で基本となることを、米国・Partners in Aging & Long-Term CaregivingのGeorgia L. Stevens氏らは文献レビューの結果、報告した。すなわち、意思決定やアドヒアランス共有の強化、長期にわたる回復を達成しうるなどの点においてである。臨床試験の結果は、早期または初回エピソードの統合失調症患者の治療について、経口抗精神病薬による治療を支持している。研究グループは文献レビューによって、統合失調症における早期治療開始の優位性と、持効性注射薬(LAI)の早期使用の臨床ベネフィットを調べた。Early Intervention in Psychiatry誌オンライン版2015年9月25日号の掲載報告。 統合文献レビューにて、統合失調症治療におけるLAI早期使用に関する公表文献を特定し、検討した。 主な結果は以下のとおり。・統合失調症初回エピソードに対する抗精神病薬治療導入への反応率は、それ以降の抗精神病薬治療と比べて非常に高かったが、この問題について研究グループは事実上、取り組むことはなかった。・不良な治療アドヒアランスが、次年度以降の再発や再入院の主要因であり、これは多大な影響と大幅な経済負荷に結び付く高い再発率と関連していた。・アドヒアランス不良のコストは、14億8千万ドルと推算された。統合失調症の治療における大きな課題は、抗精神病薬治療を持続的なものとするため、アドヒアランス不良を変えることであった。・LAIは、少なくとも抗精神病薬と同等の治療効果があることは知られているが、理解は十分ではなかった。・一方で、LAIは、経口治療のアドヒアランスに関連する多くの問題に対応するものであった。・LAIは、統合失調症の初回エピソードの治療および早期導入の効果があるという直近のエビデンスが示された。関連医療ニュース 2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは 初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る 持効性注射剤と経口薬の比較分析、どんなメリットがあるか  担当者へのご意見箱はこちら

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軽度認知障害に対するγ-セクレターゼ阻害薬の可能性は

 アルツハイマー病(AD)の早期診断は臨床管理において重要であり、早期段階の患者を臨床試験に組み込むことで、疾患修飾薬の評価を行うことができる。米国・ブリストル・マイヤーズ スクイブ社のVladimir Coric氏らは、軽度認知障害(MCI)期の症候性前認知症期(prodromal AD:PDAD)における、γ-セクレターゼ阻害薬avagacestatの安全性を評価するとともに、脳脊髄液(CSF)バイオマーカーが認知症と臨床診断される前にPDADを特定できるかどうかを検討した。その結果、avagacestatの有効性は認められず、用量制限有害作用と関連していることが示された。また、PDAD患者はCSF陰性のMCI患者と比較すると、臨床的に認知症への進行率および脳萎縮率が高いことが明らかとなった。著者らは「CSFバイオマーカーとアミロイドPET所見は相関しており、いずれの方法も脳内アミロイドパチーの存在を確認したりPDADの鑑別に利用できる」とまとめている。JAMA Neurology誌オンライン版2015年9月28日号掲載報告。 研究グループは、2009年5月26日~2013年7月9日に、外来患者1,358例をスクリーニングして、MCIおよびCSFバイオマーカーの基準を満たしたPDAD患者263例を、avagacestat群(132例)とプラセボ群(131例)に無作為化し、avagacestatの安全性および忍容性について、無作為化プラセボ対照比較試験(第II相試験)を実施した。また、バイオマーカーの分析感度を評価するため、MCI基準を満たすがCSFバイオマーカー陰性の患者102例を、非無作為化観察コホートとして同様に観察した。 主な結果は以下のとおり。・avagacestat 50mg/日群は、中断率は19.6%と低く、忍容性は比較的良好であった。・avagacestat 125mg/日群は、主に消化管の有害事象のため中断率が43%と高かった。・avagacestat群では、非黒色腫皮膚がんおよび非進行性の可逆的な尿細管作用の増加が観察された。・重篤有害事象の発現頻度は、avagacestat群(49例、37.1%)がプラセボ群(31例、23.7%)より高かった。これは非黒色腫皮膚がんが高率に発現したためと考えられた。・2年後に認知症へ進行していた患者の割合は、観察コホート(6.5%)よりPDADコホート(30.7%)で高かった。・PDADコホートにおける脳萎縮率は、観察コホートの約2倍であった。・PETでの異常なアミロイド蓄積とCSF所見との一致率は約87%であった(κ=0.68、95%信頼区間:0.48~0.87)。・重要な臨床評価項目において、avagacestat群とプラセボ群とで有意な治療の差は観察されなかった。関連医療ニュース 早期アルツハイマー病診断に有用な方法は 認知症、早期介入は予後改善につながるか 軽度認知障害からの進行を予測する新リスク指標  担当者へのご意見箱はこちら

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2型糖尿病の超過死亡リスクは多様/NEJM

 2型糖尿病患者は一般集団よりも全死因死亡率が15%、心血管死亡率は14%高く、55歳未満では血糖値が目標値内であっても死亡リスクが約2倍に上昇するなど、超過リスクはきわめて多様であることが、スウェーデン・イエーテボリ大学のMauro Tancredi氏らの調査で示された。2型糖尿病患者の最も頻度の高い死因は心筋梗塞であり、そのリスクは脂質低下薬や降圧薬、良好な血糖コントロールにより低減するが、それでも一般集団に比べ死亡の超過リスクが残存する。同氏らは最近、1型糖尿病患者において、HbA1c値が目標値(≦6.9%)でも死亡リスクが2倍に達することを報告していた。NEJM誌2015年10月29日号掲載の報告より。約255万例で死亡の超過リスクを評価 研究グループは、血糖コントロールや腎合併症の病態が異なる2型糖尿病患者において、全死因死亡および心血管系の原因による死亡の超過リスクを評価するレジストリベースの検討を行った(スウェーデン政府などの助成による)。 対象は、1998年1月1日以降にスウェーデン全国糖尿病レジスター(Swedish National Diabetes Register)に登録された2型糖尿病患者であった。1人の患者に対し、一般集団から5人の対照を無作為に選び、年齢、性別、居住県を適合。全参加者は、スウェーデン原因別死亡登録により2011年12月31日まで追跡された。 255万2,852例(糖尿病群:43万5,369例、対照群:211万7,483例)が解析の対象となった。平均年齢は糖尿病群が65.8±12.6歳、対照群は65.5±12.5歳、女性はそれぞれ44.5%、45.1%であった。糖尿病群でスウェーデン生まれ(82.9 vs.87.6%)、大学卒以上(15.7 vs.23.4%)が少なかった。 糖尿病群の平均HbA1c値は7.1%、罹患期間は5.7年であった。平均フォローアップ期間は、糖尿病群が4.6年、対照群は4.8年だった。75歳以上の血糖コントロール良好例ではリスクが低下 全体の死亡率は糖尿病群が17.7%(7万7,117/43万5,369例)であり、対照群の14.5%(30万6,097/211万7,483例)に比べ有意に高かった(補正ハザード比[HR]:1.15、95%信頼区間[CI]:1.14~1.16)。 心血管死亡率も、糖尿病群が7.9%と、対照群の6.1%に比し有意に高かった(補正HR:1.14、95%CI:1.13~1.15)。 全死因死亡および心血管死の超過リスクは、年齢がより低いほど、血糖コントロールが不良なほど、腎合併症が重度であるほど増加した。 対照群と比較して、血糖コントロールが良好な糖尿病患者(HbA1c値≦6.9%)の全死因死亡HRは、55歳未満の患者では1.92(95%CI:1.75~2.11)と約2倍高かったが、75歳以上の患者では0.95(95%CI:0.94~0.96)と低かった。 また、正常アルブミン尿の患者では、対照群と比較した死亡のHRは、HbA1c値≦6.9%・55歳未満の患者が1.60(95%CI:1.40~1.82)と高リスクであったのに対し、75歳以上の患者は0.76(95%CI:0.75~0.78)と低リスクであり、65~74歳の患者もリスクが低かった(HR:0.87、95%CI:0.84~0.91)。 著者は、「一般集団と比較した2型糖尿病患者の死亡率はきわめて多様であった。大規模な患者群では著明な超過リスクが認められたが、年齢層や血糖コントロール、腎合併症の病態の違いによっては、死亡リスクが低下する場合もあった」としている。

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薬剤溶出ステント vs.ベアメタルステント、5年追跡結果/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者に対する、エベロリムス薬剤溶出ステントの安全性と有効性を評価したEXAMINATION試験の長期5年フォローアップの結果が、スペイン・バルセロナ大学病院のManel Sabate氏らにより報告された。エベロリムス薬剤溶出ステント(EES)群 vs.ベアメタルステント(BMS)群の主要複合アウトカム発生について、EES群の有意な低下が示されたという。これまで新世代薬剤溶出ステントの長期追跡の報告は少なく、著者は、「今回得られた所見はSTEMI患者を対象とした、新たな生体吸収性ポリマーベース金属ステントや生体吸収性スキャフォールドの評価基準とするべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年10月28日号掲載の報告。1,489例をEES群とBMS群に無作為化しフォローアップ EXAMINATION試験は、イタリア・スペイン、オランダの12施設で、2008年12月31日~10年5月15日に、発症から48時間以内のSTEMI患者1,489例をEES(751例)またはBMS(747例)を受ける群に無作為に割り付けて行われた。無作為化にはコンピュータ制御の中央システム(電話による)が用いられ、層別化も中央施設で行われた。 主要アウトカムは患者指向のエンドポイントで、全死因死亡・心筋梗塞・血行再建術の複合であった。これまで最長2年のフォローアップ評価では、EES群の血行再建術およびステント血栓症の発生が有意に抑制されたことが示されたが、同複合アウトカムの有意差は示されなかった。 今回、研究グループは、長期5年の同複合アウトカムをintention to treat解析にて評価した。全死因死亡・心筋梗塞・血行再建術の複合アウトカム発生が有意に低下 5年時点の評価データが入手できたのは、EES群731例、BMS群727例であった(両群とも97%)。両群特性は類似しており、抗血小板2剤併用療法の使用についても1年超以降に減少、5年時点の使用率はEES群10%(64/648例)、BMS群9%(57/622例)であった。 結果、5年時点の患者指向複合エンドポイントの発生は、EES群21%(159/751例)、BMS群26%(192/747例)で、EES群の有意な低下が認められた(ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.65~0.98、p=0.033)。この差は主にEES群の全死因死亡が有意に抑制されたことによるものであった(65例[9%] vs.88例[12%]、HR:0.72、95%CI:0.52~0.10、p=0.047)。 一方、2年時点評価で有意差が示された血行再建術の発生は、5年時点では有意な低下がみられなかった(12% vs.16%、HR:0.77、95%CI:0.59~1.01、p=0.06)。ステント血栓症も有意な低下がみられなかった(2% vs.2%、同:0.65、0.31~1.36、p=0.25)。 心筋梗塞の5年時点の発生は、EES群5%(35/751例)、BMS群4%(27/747例)であった(HR:1.27、95%CI:0.77~2.10、p=0.35;目標血管関連発生HR:0.90、p=0.71/非目標血管関連発生HR:2.44、p=0.07)。

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胃食道逆流症の患者は昼寝しないほうが良い?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第54回

胃食道逆流症の患者は昼寝しないほうが良い? FREEIMAGESより使用 夜間睡眠中の胃酸の逆流は、重度の胃食道逆流症(GERD)と関連しているといわれています。さて、じゃあ昼寝はどうなのよ? ということを調べた論文を見つけました。 私は呼吸器内科医ですから、消化器内科領域の論文にはあまり詳しくありません。専門家にとって当たり前の論文だと困るので、PubMedで「gastroesophageal」「reflux」「nap」のキーワードで調べて、該当論文が他にほとんどないことを確認しておきました。よし、昼寝とGERDの関連性はまだあまり知られていないゾ!(あるいは誰も興味を持たないのか…)。 Nasrollah L, et al. Naps are associated more commonly with gastroesophageal reflux, compared with nocturnal sleep. Clin Gastroenterol Hepatol. 2015;13:94-99. アリゾナ大学からの報告です。GERDの患者において、夜間の睡眠と昼寝はどう違うのかということを調べたのがきっかけのようです。なかなか斬新な発想ですね、私こういうの好きですよ。過去3ヵ月間において、少なくとも週に3回の胸焼けおよび逆流症状がある15人の患者(平均年齢58.5±18.4歳、10人が男性)を登録しました。条件として、夜間の睡眠以外に定期的に昼寝を取っている人という規定があります。そりゃあ年齢的に仕事をリタイアした人も含まれていると思いますが、定期的に昼寝を取る人ってそんなにいるものでしょうか…。登録患者の夜間の平均睡眠時間は446.0±100.7分で、昼寝の平均時間は61.9±51.8分でした。1時間昼寝できるんですか、ああ、私も昼寝がしたい。さて、1時間あたりの逆流イベントの平均は、夜間睡眠中よりも昼寝中で有意に多かったそうです(昼寝中:40.1±69.9/時間 vs. 夜間睡眠中:3.5±4.2/時間、p<0.05)。また、逆流イベントの時間についても昼寝中のほうがやや長かったそうです(昼寝中:1.9±2.8分 vs. 夜間睡眠中:1.5±2.7分)。患者さんも、昼寝中のほうが胸焼け症状が強かったと報告しています。この結果から、GERD患者さんは昼寝中のほうが夜間睡眠中よりも逆流症状を感じやすい可能性があります。睡眠の深さも関係しているんじゃないかなあ、と単純に思いましたが、とりあえずは、GERD患者さんはあまり昼寝を定期的に取らないほうが良いかもしれませんね。インデックスページへ戻る

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妊娠高血圧腎症と新生児の先天性心疾患リスク/JAMA

 妊娠高血圧腎症と新生児の先天性心疾患との関連について検証した結果、非重症の心疾患と顕著に関連していること、重症心疾患との関連は妊娠34週以前発症の場合にみられることなどが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のNathalie Auger氏らが、1989~2012年にケベック州の病院で誕生した新生児194万例超を対象とした住民ベースコホート研究の結果、報告した。妊娠高血圧腎症を呈した母親から生まれた新生児の先天性心疾患リスクは十分に解明されていない。今回の結果を踏まえて著者は、「先天性心疾患の絶対リスクは低かった」とまとめている。JAMA誌2015年10月20日号掲載の報告。有病率を、妊娠高血圧腎症曝露群と非曝露群で比較 検討は、1989~2012年のケベック州全住民を対象に行われた。同対象は、カナダの人口の4分の1を占める。分析には、心疾患の有無を問わず同期間にケベック州の病院で新生児を出産した全女性を包含、対象児は194万2,072例であった。 新生児誕生時の重症または非重症の先天性心疾患の有病率を、妊娠高血圧腎症曝露(妊娠34週未満または以後に発症)群と非曝露群で比較し評価した。全有病率比は1.57、重症例の有病率比は1.25、非重症例は1.56 先天性心疾患の絶対有病率は、妊娠高血圧腎症曝露新生児のほうが、非曝露新生児よりも高率であった。全有病率は、前者が16.7/1,000例、後者は8.6/1,000例で、有病率比は1.57(95%信頼区間[CI]:1.48~1.67)、有病率差(新生児10万例当たり)は577.1例(95%CI:483.0~671.1)であった。 重症先天性心疾患の有病率は、曝露群123.7/10万例、非曝露群75.6/10万例で、有病率比は1.25(95%CI:1.00~1.57)、有病率差は23.6例(同:-1.0~48.2)で、曝露群の増大は認められなかった。 一方、非重症の先天性心疾患有病率は、曝露群1,538.8/10万例、非曝露群789.2/10万例で、有病率比は1.56(95%CI:1.47~1.67)、有病率差は521.1例(同:431.1~611.0)で、曝露群の増大がみられた。 特異的疾患別にみた場合、有病率が最も高かったのは中隔欠損症で、曝露群の同有病率は1,090.9/10万例であった。 発症時期で比較した場合、後期(34週以後)発症と比べて早期(34週未満)発症群では、重症先天性心疾患の有病率比は2.78(95%CI:1.71~4.50)、有病率差は249.6例(同:89.7~409.6)であったが、非重症先天性心疾患については、有病率比5.55(同:4.98~6.19)、有病率差6,089.2例(同:5,350.0~6,828.3)であった。

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パーキンソン病への免荷歩行リハビリ どれほど有効?

 パーキンソン病患者のリハビリテーションの1つとして、機械で足元にかかる重みを軽減した状態で流れるベルトの上を歩行する「部分免荷トレッドミル歩行訓練(PWSTT)」がある。PWSTTのパーキンソン病患者における有用性はこれまで検討されてきたが、運動を行わない場合や、従来の歩行訓練を行った場合と比較した検証はない。このことから、米国イリノイ大学のMohan Ganesan氏らは前向きに研究を行い、運動を行わない群、従来の歩行訓練を行った群と比較して、PWSTを行った群で歩行能力指標が有意に改善することを明らかにした。Archives of physical medicine and rehabilitation誌2015年9月号掲載の報告。 研究グループは、安定量のドパミン受容体作動薬を使用中の特発性パーキンソン病患者60例(平均年齢58歳[SD 15±8.7])を、「歩行訓練を行わない群」「従来の歩行訓練群」「PWSTT群」(各群n=20)の3群に無作為に割り付けた。歩行訓練はどちらも1日30分、週4日間、4週間実施した。主要アウトカムは臨床的重症度と歩行能力指標とした。臨床的重症度はパーキンソン病統一スケール(UPDRS)とそのサブスコアで測定した。歩行能力指標は歩く速度・左右のステップの長さとその変動係数であり、2分間のトレッドミル歩行と10m歩行テストより測定・算出された。アウトカムは、ベースライン時および2週、4週時に評価した。 主な結果は以下のとおり。・「従来の歩行訓練群」と「PWSTT群」では、4週間の歩行訓練により、UPDRS総スコアの有意な改善が見られた。(ベースライン時 vs.4週時 各々p=0.03、p<0.001)・「PWSTT群」は、ベースラインと比較して、4週時においてすべてのUPDRSサブスコア、すべての歩行能力指標で有意な改善を示した。・「PWSTT群」は、「従来の歩行訓練群」と比較して、4週時にすべての歩行能力指標を有意に改善した。 研究グループは、「PWSTTは、パーキンソン病患者における臨床および歩行能力のアウトカムを改善するための有望な介入ツールだ」と結論付けている。

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1万超の爪からの薬物検出分析、薬物乱用を見抜けるか

 米国・United States Drug Testing Laboratories社の Irene Shu氏らは、薬物の蓄積リスクが高いと考えられる1万を超える爪のサンプルを用いて、ELISA法またはLC-MS-MS法により薬物の検出を試みた。その結果、さまざまな薬物が検出され、薬物の長期使用および乱用を評価するうえで、爪の分析が有用な可能性を示唆した。Journal of Analytical Toxicology誌2015年10月号の掲載報告。 爪(手と足爪)はケラチンでできている。爪の成長に伴い、薬物はケラチン線維に取り込まれ、使用3~6ヵ月後にそのケラチン線維内から検出される。その特性を生かして本研究では、ハイリスク症例から3年間にわたり採取した1万349サンプルについて薬物テストを実施した。全指の爪2~3mmを切り取ってサンプルを採取した(100mg)。得られたサンプルについて、有効とされる方法を用いて分析を行った。最初のテストは主に酵素免疫吸着測定法(ELIZA)により行ったが、一部は液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS-MS)によって行った。陽性と推定されるサンプルについて、薬物の種類ごとに適した洗浄、微粉砕、分解、抽出などの過程を経て確認試験を行った。 主な結果は以下のとおり。・合計サンプル7,799例を用いてアンフェタミンに関する分析を行った。・すべてのアンフェタミン分析において、濃度は40~57万2,865pg/mg(中央値100~3,687)の範囲にあった。・サンプルの14%で、アンフェタミンとメタンフェタミンが認められ、22例で3,4メチレンジオキシメタンフェタミン陽性(0.3%)、7例でメチレンジオキシアンフェタミン陽性(0.09%)、4サンプルで3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン陽性(0.05%)であった。・サンプルの5%(合計7,787例における)で、コカインとその関連分析物が検出された。濃度は20~26万5,063pg/mg(中央値84~1,768)の範囲にあった。・オピオイド濃度は40~11万8,229pg/mg(中央値123~830)の範囲にあった。・オキシコドン(15.1%)、ヒドロコドン(11.4%)は、モルヒネ、コデイン、ヒドロモルフォン、メタドン、2-エチリデン-1,5-ジメチル‐3,3-ジフェニルピロリジン、オキシモルホンなど他のオピオイド(1.0~3.6%)に比べ高率で検出された。・カルボキシ-Δ-9-テトラヒドロカンナビノールカルボン酸の陽性率は18.1%(0.04~262pg/mg、中央値6.41)であった。・サンプル3,039例のうち756例(24.9%)が、エチルグルクロニド陽性(20~3,754pg/mg、中央値88)であった。・爪の中に認められる他の薬物にはバルビツール酸塩、ベンゾジアゼピン、ケタミン、メペリジン、トラマドール、ゾルピデム、プロポキシフェン、ナルトレキソン、ブプレノルフィンがあった。・高感度分析機器、主にLC-MS-MSが、爪における薬物をフェムトグラム(10-15g)単位での検出を可能にしている。本研究では、ハイリスク集団からサンプルを採取しているため、陽性率は非常に高かった。関連医療ニュース 薬物過剰摂取のリスクを高める薬物は 薬物依存合併の初発統合失調症患者、精神症状の程度に違いがあるか 日本人薬物乱用者の自殺リスクファクターは

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1日1単語【Dr. 中島の 新・徒然草】(092)

九十二の段 1日1単語前回は「イングレスからイングリッシュへ」ということで、通勤電車の中でスマホの英語ニュースを聴いているというお話をしました。とはいっても、イヤホンを忘れて出かけることもよくあり、そんな時はスマホで英語ニュースを読んでいます。いつも読んでいるのは BBC ニュースで、だんだん目が慣れてきたせいか、内容の理解にはあまり苦労しません。1つ1つの記事がさほど長くないのも有り難いところです。一方、NBCとかABCニュースなんかはかなり読みにくいです。記事が長めで、話題がアメリカ中心ということがあるのかもしれません。その点、BBCの方がやや視野が広い気がします。ヨーロッパに加えて旧大英帝国各地からニュースが集まってくるのでしょう。さて、いつも英語ニュースを読んでいると繰り返し出てくる単語があることに気づきます。受験英語や医学論文ではあまり遭遇しないけれど、ニュースでよく使われる単語です。で、1日1つ、このような単語をお互いに披露することによって1年後には英語名人になろう、という計画を女房に提案しました。「それはいい!」ということで1日1単語を始めたのですが、これまでのところ、私が一方的に出しているだけで、女房からは1つも単語が返ってきません。せっかくなので、これまでに私が挙げた英単語を7つ、読者の皆さんに紹介します。 reclamation, unleash, exodus, distraction, replicate, resume, demeanorどうですか?見たり聞いたりしたことはあるけれども意味は曖昧、というのが私の正直な気持ちです。どれもニュースでよく使われている単語ではあるのですが。 reclamation は「埋め立て」で、南沙諸島と辺野古で頻出です。leash が犬の鎖なので、un という接頭辞がついた unleash は「解き放つ」になります。exodus はもともと旧約聖書の出エジプト記のことですが、欧州の「大量難民」に転用されています。distraction は「注意散漫」のことで、attraction の反対だと思えばいいですね。replicate は「複製を作る」の意味で、レプリカから推測できます。resume は名詞なら「レジュメ」ですが、動詞だと「再開する」の意味で使われます。「取る」という意味の sume という語根に re という接頭辞がついて、「再びとる」すなわち「再開する」となるわけです。同じ語根を持つ単語として、consume 「消費する」、assume 「決めてかかる、仮定する」、presume 「推定する」があります。demeanor は「態度」で、あまり馴染みのない単語ですが、「目撃者によると、犯人の態度はまるで公園を散歩しているかのようだった」などという文脈で使われています。どれも難しいですが、何とか覚えられるレベルです。ということで、「本日の1語はどれにしようか」と思いつつ、日々英語ニュースを読んでおります。アウトプットを意識すると、心なしか集中力もあがるような気がするから不思議ですね。最後に1句本日の 単語はこれだ 知ってたか!

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目まぐるしく進歩する、肺がん治療

 2015年10月30日都内にて、「肺癌分子標的治療の変遷と最新治療」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である中西 洋一氏(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門内科学講座呼吸器内科学分野 教授)は、肺がん治療の変遷を中心に講演。免疫チェックポイント阻害薬の登場により、免疫療法が薬物療法の表舞台に立とうとしている現状に触れ、「将来的には判定方法や副作用への対応など、学会、国の方針自体を整備していく必要がある」と述べた。 以下、セミナーの内容を記載する。「分子標的治療」そして、「免疫療法」へ 肺がんによる死亡は、2012年時点で年間7万1,518人と急増している。その背景にある要因の1つとして、若年女性の喫煙率上昇が挙げられていたことからも明らかであるように、これまで肺がんといえば、タバコに代表される多段階発がん説が基本であった。 しかし、近年たった1つの遺伝子異常が原因で起こる「driver gene mutation」が判明した。これを機にALKやEGFRといった遺伝子の異常を調べて、薬剤を選択する時代が到来。driver oncogene変異陽性患者の予後やQOLが改善したのは記憶に新しい。 さらに、がん免疫を蘇らせるPD-1阻害薬やPD-L1阻害薬といった「免疫チェックポイント阻害薬」の登場で、「免疫療法」が新しいアプローチとして脚光を浴びつつある。「免疫療法」が薬物療法の表舞台に 従来の抗がん剤治療は、がん細胞をターゲットにして攻撃力を高めてきた。これに対し、「免疫チェックポイント阻害薬」のアプローチは異なる。その作用は免疫力の向上だ。 通常、がん組織において免疫細胞は、がん細胞が伝達する「私は味方だ」という偽のシグナルにより攻撃命令を止めていた。つまり、「がんにより免疫が眠らされた」状態にあった。免疫チェックポイント阻害薬であるPD-1阻害薬やPD-L1阻害薬は、このシグナルを解除し、がん細胞を「敵」と正しく判断させて、がん細胞を攻撃する。つまり免疫力の賦活化が作用のポイントとなる。 免疫チェックポイント阻害薬は、複数の試験で有効中止に至るなど、大きな治療効果が期待されている。免疫療法が薬物療法の表舞台に立とうとしているのだ。今後の治療は? 学会、国の方針策定が必要 講演後のディスカッションでは、この免疫療法に関する質問が多数寄せられた。免疫チェックポイント阻害薬は全例調査の対象であり、がん拠点病院など、未知の副作用が起こった場合に他診療科と連携可能な病院が主な拠点となりそうだ。中西氏は「現時点で皮膚科を中心に投与されているが、今後の適応拡大に備え、副作用を積極的に拾うことや、院内に専門チームを設置するといった他診療科にわたる活動が必要だ」と述べた。実際に九州大学では、専門チームの導入にむけた活動が進んでいるようだ。 また、「PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬との有効性、安全性の差は?」との質問には、中西氏、および2剤の開発を手掛けるアストラゼネカ株式会社 専務の益尾氏の両名が回答した。 益尾氏は「2剤とも検討段階にあり、優劣は現時点では判断しづらい。PD-1阻害薬とPD-L1阻害薬同士の併用やPD-L1阻害薬+他抗がん剤での併用など、さまざまな検討を行っている」とコメントした。中西氏は、「理屈で言うとPD-1抑制のほうが、がん細胞側のPD-L1抑制よりは危ないようにも思うが、各薬剤の用量設定、反応の強さで異なるため一概には判断できない」と述べた。また、PD-1やPD-L1の発現基準や判定方法がメーカー間でも異なっているため、フラットな状況下で比較できないのが現状課題、としたうえで「共通の判定基準を学会、国としても整えていかなければいけない」とコメントした。編集後記 分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場など、肺がん治療は目まぐるしい発展と進歩を遂げている。しかし、新しい治療に合わせて社会インフラを整備することも必要とされそうだ。 本講演を行った中西氏が委員長を務める「肺がん医療向上委員会 」では、チーム医療の推進や肺がん患者の知識向上を目指した活動を継続している。われわれも患者さんに早期にベストな医療がもたらされるよう、メディアとして活動を応援していきたい。肺がん医療向上委員会はこちら

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せん妄治療への抗精神病薬投与のメタ解析:藤田保健衛生大

 藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らは、2007年に報告した、せん妄治療に対する抗精神病薬のメタ解析のアップデートを行った。Journal of neurology, neurosurgery, and psychiatry誌オンライン版2015年9月4日号の報告。 本メタ解析には、せん妄の成人患者を対象とし、対照(プラセボまたは通常ケア)と比較した抗精神病薬の無作為化比較試験を用いた。主要評価項目は、試験終了時の反応率とした。副次評価項目は、せん妄の重症度改善、臨床全般印象・重症度尺度(CGI-S)、無作為化から奏効までの期間(time to response : TTR)、中断率、個々の有害事象とした。リスク比(RR)、治療必要数(NNT)および有害必要数(NNH)、95%CI、標準化平均差(SMD)が計算された。 主な結果は以下のとおり。・15件の系統的レビュー(平均期間9.8日、総症例数949例、amisulpride 20例、アリピプラゾール8例、クロルプロマジン13例、ハロペリドール316例、オランザピン筋注またはハロペリドール注62例、オランザピン144例、プラセボ75例、クエチアピン125例、リスペリドン124例、通常ケア30例、ziprasidone32例)、4件の学会抄録と未発表研究を同定した。・抗精神病薬治療群全体でまとめると、プラセボや通常ケアと比較し、反応率(RR:0.22、NNT:2)、せん妄の重症度スコア(SMD:-1.27)、CGI-S(SMD:-1.57)、TTR(SMD:-1.22)の点で優れていた。・また、抗精神病薬治療群はプラセボや通常ケアと比較し、口渇(RR:13.0、NNH:5)、鎮静(RR:4.59、NNH:5)の発生率が高かった。・第2世代抗精神病薬群でまとめると、ハロペリドールと比較し、TTRが短く(SMD:-0.27)、錐体外路症状の発生率が低かった(RR:0.31、NNH:7)。・第2世代抗精神病薬は、ハロペリドールと比較し、有効性・安全性の面でせん妄治療に有用であることが示唆された。ただし、より大規模なサンプルを用いた、さらなる研究が必要である。関連医療ニュース せん妄患者への抗精神病薬、その安全性は せん妄管理における各抗精神病薬の違いは 定型vs.非定型、せん妄治療における抗精神病薬

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