サイト内検索|page:431

検索結果 合計:11820件 表示位置:8601 - 8620

8601.

遺伝子型2/3型HCV、ソホスブビル+velpatasvirが有効/NEJM

 遺伝子型2および3型のC型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療において、ソホスブビル(SOF)とvelpatasvir(VEL)の併用療法は、従来の標準治療に比べ持続性ウイルス学的著効(SVR)の達成率が優れることが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のGraham R Foster氏らが実施した2つの臨床試験(ASTRAL-2、-3試験)で示された。ヌクレオチドアナログNS5Bポリメラーゼ阻害薬であるSOFは、リバビリン(RIB)との併用で2/3型HCVの治療薬として使用されている。VELは、すべての遺伝子型のHCVに抗ウイルス活性を有する新規NS5A阻害薬であり、SOFとの併用の第II相試験で慢性2/3型HCV感染患者において良好なSVR率が報告されている。NEJM誌オンライン版2015年11月17日号掲載の報告。遺伝子型別の2つの試験に800例以上を登録 ASTRAL-2試験は遺伝子型2型HCVを、ASTRAL-3試験は3型HCVを対象とする多施設共同非盲検無作為化第III相試験(Gilead Sciences社の助成による)。 対象は、両試験とも年齢18歳以上で、6ヵ月以上のHCV感染歴がある患者とし、インターフェロンを含むレジメンでSVRが達成されなかった患者を約20%、代償性肝硬変を有する患者を約20%登録することとした。 ASTRAL-2試験では、SOF(400mg)とVEL(100mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+VEL群)またはSOF(400mg)とRIB(体重<75kg:1,000mg、≧75mg:1,200mg)を1日1回、12週投与する群(SOF+RIB群)に無作為に割り付けられた。ASTRAL-3試験では、SOF+VEL群はASTRAL-2試験と同じく12週、SOF+RIB群は24週の投与を行った。 主要評価項目は、治療終了から12週時のSVRとし、SVRはHCV RNA<15IU/mLと定義した。 ASTRAL-2試験では、2014年10月15日~12月18日に米国の51施設に266例が登録され、SOF+VEL群に134例、SOF+RIB群に132例が割り付けられた。ASTRAL-3試験では、2014年7月30日~12月17日に北米、欧州、オセアニアの8ヵ国の76施設に552例が登録され、SOF+VEL群に277例、SOF+RIB群には275例が割り付けられた。12週時SVR達成率:2型 99 vs.94%、3型 95 vs.80% 平均年齢は、ASTRAL-2試験が両群とも57歳、ASTRAL-3試験はSOF+VEL群が49歳、SOF+RIB群が50歳で、男性がそれぞれ64%、55%、61%、63%であった。ASTRAL-2試験は肝硬変患者が両群とも14%、既治療例がそれぞれ14%、15%含まれ、ASTRAL-3試験は肝硬変患者が29%、30%、既治療例は両群とも26%だった。 治療終了から12週時のSVR達成率は、遺伝子型2型HCVではSOF+VEL群が99%(95%信頼区間[CI]:96~100)と、SOF+RIB群の94%(95%CI:88~97)に比べ有意に良好であった(p=0.02)。3型HCVでは、それぞれ95%(95%CI:92~98)、80%(95%CI:75~85)であり、SOF+VEL群で有意に優れた(p<0.001)。 治療終了後の再燃が、2型HCVではSOF+VEL群には認めなかったが、SOF+RIB群で6例(5%)にみられ、3型HCVではそれぞれ11例(4%)、38例(14%)に認められた。治療中のウイルス学的治療不成功が、3型HCVのSOF+RIB群で1例に認められた。 3型HCVでは、未治療の非肝硬変例の12週時SVR達成率はSOF+VEL群が98%、SOF+RIB群は90%、肝硬変例はそれぞれ93%、73%であり、既治療の非肝硬変例は91%、71%、肝硬変例は89%、58%と、いずれもSOF+VEL群で良好な傾向がみられた。 最も頻度の高い有害事象は、疲労(2型:SOF+VEL群15%、SOF+RIB群36%、3型:SOF+VEL群26%、SOF+RIB群38%)、頭痛(18、22、32、32%)、悪心(10、14、17、21%)、不眠(4、14、11、27%)であった。有害事象による治療中止は、2型HCVのSOF+VEL群で1例(不安、頭痛、集中力低下で第1日に中止)、3型HCVのSOF+RIB群で9例に認められた。 重篤な有害事象は、2型HCVのSOF+VEL群で2例(1%、肺炎が1例、腸炎と腹痛が1例)、SOF+RIB群で2例(2%、関節炎が1例、うつ状態が1例)、3型HCVではSOF+VEL群が6例(2%)、SOF+RIB群が15例(5%)に発現した。 著者は、「代償性肝硬変例を含む遺伝子型2および3型HCVに対し、ソホスブビル+velpatasvir併用療法は、前治療の有無にかかわらずソホスブビル+リバビリンによる標準治療よりも高いSVR率を達成し、有害事象や検査値異常の頻度が低かった」とまとめ、「遺伝子型1、2、4、5、6型HCVを対象としたASTRAL-1試験の結果と統合すると、SOF+VEL併用の12週投与は遺伝子型にかかわらず高い有効性を発揮すると考えられる」と指摘している。

8602.

エベロリムス溶出、生体吸収性スキャフォールドvs.金属ステント/Lancet

 エベロリムス溶出生体吸収性冠動脈スキャフォールド(BVS)は、エベロリムス溶出金属ステント(EES)に比べ、中期的には冠動脈造影上の性能が劣るものの1年時の標的病変の再血行再建率は同等であり、その一方で亜急性期のステント血栓症のリスクは増大することが、ドイツ・ミュンヘン工科大学のSalvatore Cassese氏らの検討で示された。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)では、生体吸収性冠動脈ステントがアウトカムを改善する可能性が示唆されている。エベロリムス溶出BVSは最も研究が進んでいるプラットホームであるが、EESと比較した性能は十分には知られていないという。Lancet誌オンライン版2015年11月16日号掲載の報告。6試験、3,738例のメタ解析で有用性を比較 研究グループは、経皮的血行再建を受けた虚血性心疾患患者において、エベロリムス溶出性のBVSとEESの有効性と安全性を比較するメタ解析を行った(研究助成は受けていない)。 2006年11月30日~15年10月12日に、4つの医学関連データベースおよびこれらのデバイスの無作為化試験関連のウェブサイトを検索して文献を選出し、各論文の文献リストも調査した。 有効性の主要評価項目は標的病変の血行再建、安全性の主要評価項目はdefinite/probableステント(スキャフォールド)血栓症とし、副次評価項目は標的病変不全(心臓死、標的病変心筋梗塞、虚血による標的病変血行再建の複合エンドポイント)、心筋梗塞、死亡、デバイス内遠隔期血管内腔損失とした。 6試験(ABSORB China試験、ABSORB II試験、ABSORB III試験、ABSORB Japan試験、EVERBIO II試験、TROFI II試験)に参加した3,738例(BVS群:2,337例、EES群:1,401例)が解析の対象となった。フォローアップ期間中央値は12ヵ月であった。より大規模な長期フォローアップ試験が必要 全体の年齢中央値は62.3歳(四分位範囲:58.6~65.0)、約4分の3が男性で、約4分の1が糖尿病を有し、おおよそ3分の1がPCI施行時に急性冠症候群(ACS)を呈していた。ベースラインの平均狭窄率は70.8%、対照血管径は2.70mm、病変長は13.4mmであった。 BVS群のEES群に対する標的病変血行再建のオッズ比(OR)は0.97(95%信頼区間[CI]:0.66~1.43)であり、有意差は認めなかった(p=0.87)。 また、標的病変不全(OR:1.20、95%CI:0.90~1.60、p=0.21)、心筋梗塞(同:1.36、0.98~1.89、p=0.06)、死亡(同:0.95、0.45~2.00、p=0.89)にも、両群間に有意な差はなかった。 definite/probableステント血栓症のORは1.99(95%CI:1.00~3.98)であり、BVS群で有意にリスクが高かった(p=0.05)。急性期(留置後24時間以内)のリスクは両群間に差はなかった(OR:0.36、95%CI:0.07~1.71、p=0.21)が、亜急性期(1~30日)に有意差が認められた(同:3.11、1.24~7.82、p=0.02)。 デバイス内遠隔期血管内腔損失(加重平均差:0.08、95%CI:0.05~0.12、p<0.0001)およびセグメント内遠隔期血管内腔損失(同:0.05、0.01~0.09、p=0.01)も、BVS群で有意に大きかった。 著者は、「エベロリムス溶出BVSの長期的な便益を十分に評価するには、より多くの患者で長期にフォローアップを行う臨床試験実施が必要だ」と指摘している。

8603.

期待のがん悪液質治療薬ONO-7643、第II相試験の結果は?

 がん悪液質はがん患者の70%に発現し、とくに進行非小細胞肺がん患者で多く認められる。がん悪液質は複合的な代謝疾患であり、食欲不振および筋肉減少を主体とした体重減少を特徴とし、がん患者のQOLおよび予後を悪化させる。さらに進行すると難治性悪液質となり、PS不良や治療抵抗性を示し、生命予後3ヵ月未満と非常に重篤な状態になる。しかしながら、現在は有効な治療方法が存在しない。 そのようななか、第56回日本肺癌学会プレナリーセッションにおいて、杏林大学医学部 呼吸器内科 横山 琢磨氏が、非小細胞がん(NSCLC)にともなうがん悪液質に対するONO-7643の第II相試験の結果を発表した。 ONO-7643(anamorelin)は新たに開発された経口可能なグレリン様作用薬。経口投与でグレリンと同様の効果を発揮する。グレリンは食欲増進、摂食量の増加、また成長ホルモンやIGF-1の分泌を促進することで蛋白合成の促進、筋肉量の増加をもたらし、それにともない体重増加、QOLの改善をもたらす。ONO-7643は肺がんマウスによる動物実験で、成長ホルモンとIGF-1の有意な分泌促進が認められている。成長ホルモンとIGF-1の分泌促進作用から腫瘍増殖が危惧されたが、動物モデルでの腫瘍増殖効果はみられない。 当試験は、NSCLCに対するONO-7643の有効性と安全性を検討する、プラセボ対照二重盲検比較試験である。対象は手術不能のStageIII~IVのNSCLCで、過去6ヵ月以内に5%以上の体重減少を認め、4ヵ月以上の生存が期待できる患者。これらの患者をプラセボ(n=60)、ONO-7643 50mg(n=65)、同100mg(n=55)の3群に無作為に割り付け、それぞれ12週間投与した。主要評価項目は除脂肪体重(DEXA)、握力の平均変化率。副次的評価項目は体重、QOL、PS、KPS(Karnofsky Performance Status)などであった。 結果、ONO-7643 100mg群において除脂肪体重でプラセボ群に比べ有意な増加を認めたが、全体的にみると、用量依存的な増加を認めるものの、主要評価項目における統計学的な有意差はみられなかった。副次的評価項目である体重については、ONO-7643 50mg、100mgともにプラセボに比べ有意な増加を認めた。QOLについては合計スコアなどで100mg群に有意な改善を認め、とくに食欲に関する項目で顕著であった。さらに、KPSも優位に改善した。OSはプラセボ群と差は認めなかったが、体重減少の有無で比較すると体重減少なし群で有意に延長しており、この群ではONO-7643投与患者が多い傾向にあった。有害事象に関しては3群で有意な差はなかったが、副作用については実薬群で多かった。しかし、その頻度は少なく重篤なものも認めなかった。 ONO-7643は、がん悪液質の主要評価項目において優位性は示せなかったものの、除脂肪体重、体重増加傾向、食欲、QOLの改善を認めるとともに、副作用は軽度で少なく高い忍容性を示す。がん悪液質の新たな治療薬として期待される薬剤であり、今後もさらなる検討が行われるであろう。

8604.

あくびはヒトからイヌに伝染する【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第56回

あくびはヒトからイヌに伝染する FREEIMAGESより使用 こんな言葉をご存じでしょうか。 「あくびは感染症である」 この名言を残した偉人は、…いません。私が今思い付いただけです。すいませんすいません。 あくびがヒトからヒトへ伝染することはすでに知られており、私たちも日常的に経験するワケですが、今日紹介するのは、あくびはヒトからイヌへ伝染するという斬新な論文です。まさかイヌはないだろうとお思いのアナタ、ワンちゃんをナメたらあかんですよ。論文のタイトルもシンプルです。 Joly-Mascheroni RM, et al. Dogs catch human yawns. Biol Lett. 2008;4:446-448. ごく最近まで、あくびがうつるのはヒトの間だけだろうと考えられてきました。その後、チンパンジーでも確認され、ではもっともヒトに近い距離にいるイヌではどうだろうかという議論が起こりました。2008年に報告されたこの研究は、29人の被験者ならぬ、29匹の被験犬が参加したあくびの試験です。被験犬の平均年齢は6.4歳でした。方法はシンプルで、イヌの名前を呼んだ後にアイコンタクトを取りながらあくびをしてイヌのあくびを誘発するというものです。あくびではなくただ口をアーンと開ける疑似動作も取り入れました。その結果、ヒトがあくびをした場合、29匹中21匹であくびが伝染したそうです。疑似動作の場合は、誰1人として、いや、誰1匹としてあくびは伝染しませんでした。実はヒトのあくびというのはより親しい間柄では伝染しやすいことが知られています1)。さらに、イヌにおいてもその同様の機序が存在することが報告されています。飼い主と見知らぬ人のあくびを見た場合、飼い主のほうがより伝染性のあくびを生じやすいというのです2)。いやあ、こういう報告って探せばたくさんあるものですね。参考文献1)Norscia I, et al. PLoS One. 2011;6:e28472.2)Romero T, et al. PLoS One. 2013;8:e71365.インデックスページへ戻る

8605.

非定型抗精神病薬による体重増加・脂質異常のメカニズム解明か

 先行研究で、小胞体の4つのタンパク質複合体(ステロール調節配列結合タンパク[SREBP]、SREBP-cleavage-activating protein[SCAP]、インスリン誘導遺伝子[INSIG]、プロゲステロン受容体膜成分-1[PGRMC1])が、非定型抗精神病薬による脂質異常の重要な調節因子であることが示唆されている。今回、中国・中南大学湘雅二医院のHua-Lin Cai氏らは、ラットの肝臓を用い、定型および非定型抗精神病薬ならびにグルココルチコイド受容体拮抗薬mifepristoneの、PGRMC1/INSIG/SCAP/SREBP経路に対する作用および脂質への影響を調べた。その結果、非定型抗精神病薬による脂質異常は、体重増加が出現する前の初期段階で生じる可能性があることが示唆されたという。結果を踏まえ、著者らは「非定型抗精神病薬による脂質異常は、PGRMC1経路を増強するmifepristoneの追加投与により改善できる可能性があることを示すもので、PGRMC1/INSIG-2シグナル伝達が非定型抗精神病薬による体重増加治療のターゲットになりうる」と報告している。Translational Psychiatry誌2015年10月20日号の掲載報告。 研究グループは、ラットに各種薬剤を投与し、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)と、ウエスタンブロット解析を用いて肝臓のPGRMC1/INSIG/SCAP/SREBP経路への作用を調べるとともに、血清中のトリアシルグリセロール、総コレステロール、遊離脂肪酸および各種ホルモン(プロゲステロン、コルチコステロン、インスリン)も同時に測定した。 主な結果は以下のとおり。・クロザピン、リスペリドンを投与したラットでは、PGRMC1/INSIG-2の阻害およびSCAP/SREBP発現の活性化を介した脂質生成およびコレステロール生成の増加を認めた。・これらの代謝異常は、アリピプラゾール、ハロペリドールを投与したラットでは認められなかった。・mifepristoneの併用投与は、PGRMC1/INSIG-2発現の上方制御とそれに続くSCAP/SREBPの下方制御を介して、非定型抗精神病薬により誘発された脂質異常を改善する効果を示した。関連医療ニュース 抗精神病薬誘発性の体重増加に関連するオレキシン受容体 どのような精神疾患患者でメタボリスクが高いのか 抗精神病薬、日本人の脂質異常症リスク比較:PMDA  担当者へのご意見箱はこちら

8606.

SPRINT試験:絶対リスクにより降圧目標を変えるべきか?(解説:有馬 久富 氏)-456

 SPRINT試験の結果が、国内外に衝撃を与えている。SPRINT試験は、高リスク高血圧患者を対象とした無作為化比較試験である。心血管病既往、慢性腎臓病、フラミンガムリスクスコアの高リスク、あるいは75歳以上のいずれかを認める高血圧(収縮期血圧130~180mmHg)患者9,361例が、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする積極的降圧療法群と、140mmHg未満を目標とする通常治療群に無作為に割り付けられた。糖尿病および脳卒中既往者については、SPRINT試験と同じNIH(米国立衛生研究所)からの研究費により実施されたACCORD BP試験およびSPS3試験により、積極的降圧療法の効果を検討されていたため、本研究の対象からは除外された。平均3.3年間追跡された時点で、積極的降圧療法の効果が明白となり、試験は予定より早く終了した。その結果は、収縮期血圧120mmHg未満を目標とした積極的降圧療法が、冠動脈疾患・脳卒中・心不全および心血管病死亡からなる複合主要評価項目を25%減少した(p<0.001)という素晴らしいものであった。 SPRINT試験は、高リスク高血圧患者において、現在のガイドラインよりも低い降圧目標(収縮期血圧120mmHg未満)を設定することにより、心血管病のさらなる予防が可能であることを明らかにした。以前より、血圧レベルにかかわらず(たとえ正常域血圧であっても)、降圧療法による心血管病の相対リスク減少は同程度であると報告されているので1)2)、収縮期血圧180mmHgで危険因子のない高リスク者においても、収縮期血圧130mmHgで臓器障害を有する高リスク者においても、同じような降圧療法の心血管病予防効果が期待される。しかし、多くの高血圧治療ガイドラインは、高リスクな正常域血圧者における降圧療法を推奨していない。一方、オーストラリアの高血圧治療ガイドライン3)は、高リスク者において血圧レベルにかかわらず(たとえ至適血圧であっても)降圧療法を行うよう推奨している。SPRINT試験の結果を考慮すると、現行の降圧目標を達成してもなお心血管病のリスクが高いと考えられる者については、オーストラリアのガイドラインが推奨するように、さらなる降圧を行ってもよいかもしれない。 前述したように、SPRINT試験では脳卒中既往および糖尿病のある対象者が除外されている。しかし、ラクナ梗塞既往者3,020例(平均追跡期間3.7年)を対象として、収縮期血圧130mmHg未満を目標とする積極的降圧療法の効果を検討した無作為化臨床試験SPS3では、統計学的に有意ではないものの、脳卒中再発が19%(p=0.08)、心血管病が16%(p=0.10)抑制された4)。2型糖尿病患者4,733例(平均追跡期間4.7年)を対象として、収縮期血圧120mmHg未満を目標とする積極的降圧療法の効果を検討した無作為化臨床試験ACCORD BPでは、心筋梗塞・脳卒中および心血管病死亡からなる複合主要評価項目が統計学的に有意ではないものの12%抑制され(p=0.20)、脳卒中は41%有意に抑制された(p=0.01)5)。 SPS3試験およびACCORD BP試験では、積極的降圧療法の主要評価項目に対する効果は統計学的に有意でなかったが、相対リスクの減少がSPRINT試験よりもやや小さいにもかかわらず、追跡人年がSPRINT試験よりもかなり小さいことを考慮すると、どちらの試験においも統計学的検出力が十分になかった可能性が高い。つまり、脳卒中既往や糖尿病を有する高リスク者においても積極的降圧療法が有用である可能性はあるので、この点についてさらなる検討が必要と考えられる。 SPRINT試験の結果を、実際に高リスク高血圧患者の治療に適用するに当たっては、いくつかの注意が必要と考えられる。まず、SPRINT試験の結果を低リスクおよび中等リスクの高血圧患者に当てはめることはできないので、このような患者さんの降圧目標は現状維持されるべきである。また、心血管病の高リスク者では、動脈硬化が進んでいる可能性がある。両側主幹脳動脈に狭窄のあるような症例では、血圧を下げることで脳卒中が増加するという報告もあるので6)、積極的降圧を行う前に全身をきちんと評価する必要がある。また、SPRINT試験では、積極的降圧療法群で低血圧・急性腎障害などの重篤な有害事象や電解質異常が増加していた。積極的降圧に当たっては、全身管理に十分な注意が必要と考えられる。 最後に、SPRINT試験は、高リスク高血圧者における降圧目標の設定に、重大な影響を与えうる重要な研究である。SPRINT試験に含まれなかった脳卒中既往や糖尿病を有する高リスク高血圧患者においても、積極的降圧療法は有用である可能性があるので、この点についてさらなる検討が必要である。また、これらの結果が、日本を含むアジア人に当てはまるかどうかについても、今後検討が必要と考えられる。参考文献1)Arima H, et al. J Hypertens. 2006;24:1201-1208.2)Czernichow S, et al. J Hypertens. 2011;29:4-16.3)National Heart Foundation of Australia. Guide to management of hypertension 2008, updated 20104)SPS3 Study Group, et al. Lancet. 2013;382:507-515.5)ACCORD Study Group, et al. N Engl J Med. 2010;362:1575-1585.6)Rothwell PM, et al. Stroke. 2003;34:2583-2590.関連コメント厳格な降圧が心血管発症を予防、しかし血圧測定環境が違うことに注意!(解説:桑島 巖 氏)75歳以上の後期高齢者でも収縮期血圧120mmHg未満が目標?(解説:浦 信行 氏)

8607.

LVEF低下の慢性心不全への新規sGC刺激薬の可能性/JAMA

 左室駆出率(LVEF)45%未満で慢性心不全の悪化が認められる患者に対し、新規開発中の可溶型グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬vericiguatの投与は、プラセボに比べ、NT-proBNP値を有意に低下しなかった。忍容性は認められ、またvericiguatの用量増加に伴うNT-proBNP値は有意に低下した。米国・ノースウェスタン大学のMihai Gheorghiade氏らが、456例を対象に行った第II相無作為化臨床試験の結果、明らかにした。JAMA誌オンライン版2015年11月8日号掲載の報告。12週間後のNT-proBNP値の対数変換値を比較 試験は2013年11月~15年1月にかけて、欧州、北米、アジアに住む456例を対象に行われた。被験者は、臨床的に安定したLVEFが45%未満で、慢性心不全の増悪から4週間未満の患者だった。 研究グループは被験者を無作為に5群に分け、vericiguatを1.25mg/日(91例)、2.5mg/日(91例)、5mg/日(91例)、10mg/日(91例)とプラセボ(92例)を、それぞれ投与した。 最終フォローアップは2015年6月で、主要評価項目は、12週間後のNT-proBNP値の対数変換値だった。高用量3群とプラセボ群、NT-proBNP値対数変換値の変化は同等 被験者のうち試験を終了した351例(77%)について分析を行った。 主要解析では、vericiguat高用量3群とプラセボ群について比較した。その結果、12週間後のNT-proBNP値の対数変換値は、vericiguat高用量3群とプラセボ群で有意差はなかった(変化値の差:-0.122、90%信頼区間:-0.32~0.07)。 探索的副次分析では、vericiguat用量増加に対するNT-proBNP値の対数変換値の変化を分析した。その結果、より高用量のvericiguat群で、低用量の群に比べ、NT-proBNP値対数変換値のより大幅な低下が認められた(p<0.02)。 研究グループは今回の結果を受けて、プラセボと統計的有意差はみられなかったが、忍容性は高く、用量反応関連に基づいたさらなる試験が必要だとまとめている。

8608.

うつ病へのECT、ケタミン併用の検討が進行

 英国・ニューカッスル大学のLiam Trevithick氏らは、うつ病に対する電気ショック療法(ECT)時にケタミンを併用することで、ECT後に認められる認知機能への影響を軽減しうるか否かを明らかにする多施設無作為化プラセボ対照二重盲検試験「ケタミン-ECT試験」を計画している。今回、その試験概要を報告した。試験について著者らは、「本研究は、補助的ケタミンをNHS臨床診療におけるうつ病に実施するECTにルーチンで適用すべきかどうかに関する、重要なエビデンスを提供するものになると思われる」と述べている。BMC Psychiatry誌2015年10月21日号の掲載報告。 重篤で治療抵抗性のうつ病に対し、ECTの急性効果を支持する強力な経験的エビデンスがある。しかし、重大な限界要因であり、おそらく本療法の使用を減少させる理由となっているのが、ECTが認知機能、とくに前向性記憶、逆行性記憶、実行機能に関する機能障害と関連するということである。一方で、前臨床およびヒトにおける予備的データにおいて、ケタミンが、麻酔薬として単剤あるいは他の麻酔薬との併用のいずれにおいても、ECTによる機能障害を軽減あるいは抑制することが示唆されている。そして、ケタミンがグルタミン酸受容体拮抗作用を通して、ECTの際に発生する過剰興奮性神経伝達刺激を防止するという仮説が想定される。 こうしたことから研究グループは、「ケタミン-ECT試験」により、ケタミンの併用がECTに起因する認知機能障害を軽減しうるか否かを検討することを計画した。副次目的は、ケタミンがECTによる臨床的改善のスピードを速めるか否かを検討することとした。 試験概要は以下のとおり。・ケタミン-ECT試験は、多施設無作為化プラセボ対照二重盲検試験である。・当初、ECTを実施している中等度~重度のうつ病患者160例の登録を予定したが、その後、登録人数の達成が困難という理由で100例に変更した。・患者は、ECTにおける標準的麻酔薬にケタミンを併用する群、または生理食塩水を投与する群に1対1に無作為に割り付けられた。・主要神経心理学的アウトカムは、4回のECT実施後の前向き言語記憶(Hopkins Verbal Learning Test-Revised delayed recall task)、副次的認知機能アウトカムは、発話の流暢性、自伝的記憶、視空間記憶、digit Span(数唱)であった。・有効性は、うつ症状に対する観察者の評価および自己報告に基づいて評価する。・サブサンプルを用い、認知機能課題実行中の皮質活性に対するECTおよびケタミンの影響を機能的近赤外線分光法(fNIRS)により検討する予定である。関連医療ニュース ケタミンは難治性うつ病に使えるのか 双極性障害のうつ症状改善へ、グルタミン酸受容体モジュレータの有用性は 統合失調症へのECT、アジア諸国での実態調査  担当者へのご意見箱はこちら

8609.

米国の非急性PCIの不適切施行、5年で大幅減/JAMA

 米国における2009~14年の経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の施行動向を調べた結果、非急性PCIの不適切施行は26.2%から13.3%に有意に減少していたことが、イェール大学医学部のNihar R. Desai氏らによる調査の結果、明らかにされた。一方で、非急性PCIの不適切施行率の病院間のばらつきは、2014年時点でも5.9%~22.9%にわたっており解消されていなかった。本検討は、2009年にリリースされたAppropriate Use Criteria for Coronary Revascularizationを踏まえて、PCI施行の動向を初めて調査した結果だという。JAMA誌2015年11月17日号掲載の報告。2009~14年の全米766病院、270万例のPCI施行例を分析 Appropriate Use Criteria for Coronary Revascularizationは、米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)、その他関連専門学会が、PCIのクリティカルな評価と患者選択の改善を目的にリリースしたものである。 研究グループは、同基準導入後の米国におけるPCI施行数、患者選択、施行の適切さについて、2009年7月1日~14年12月31日のNational Cardiovascular Data Registry CathPCIレジストリデータを基に分析し調べた。 主要評価項目は、2012年版 Appropriate Use Criteria for Coronary Revascularizationの評価で不適切な非急性PCIと分類された施行割合で、患者および病院単位で評価した。 分析には、総計766病院、270万例のPCI施行データが組み込まれた。このうち、76.3%が急性PCI例、14.8%が非急性PCI例であった。病院間のばらつきは変わらず 年間のPCI全施行数は、2010年53万8,076例から14年は45万6,507例と減少していた。このうち急性PCIの年間施行数は、2010年37万7,540例、14年も37万4,543とほぼ変わらなかったが、非急性PCIは8万9,704例から5万9,375例へと有意に減少していた(p<0.001)。 非急性PCIを受けた患者についてみると、重度の狭心症での施行率が有意に上昇しており(カナダ心臓血管学会分類III/IVの狭心症が2010年15.8%、14年38.4%)、PCI施行前の抗狭心症薬服用(2剤以上服用が2010年22.3%、14年35.1%)、非侵襲検査で認められた高リスク症例(22.2%、33.2%)の割合も、それぞれ有意に上昇していた(すべてのp<0.001)。多枝冠動脈疾患の施行割合も、わずかだが有意に増えていた(43.7%、47.5%、p<0.001)。 また、非急性PCI不適切施行例の割合は、2010年26.2%(95%信頼区間[CI]:25.8~26.6)から14年は13.3%(同:13.1~13.6)に、施行数でみると2万1,781例から7,921例に減少していた。 病院単位でみた非急性PCI不適切施行例の割合は、2009年中央値25.8%であったのに対し14年は同12.6%と減少していた。ただし病院間のばらつきは変わっておらず、2009年の分布範囲は16.7%~37.1%、14年は5.9%~22.9%であった。

8610.

小児の乾癬発症、抗菌薬や感染症との関連は?

 抗生物質(抗菌薬)はヒトの微生物叢を破壊し、いくつかの小児の自己免疫疾患と関連している。一方、乾癬は、A群溶連菌およびウイルス感染と関連していることが知られている。米国・ペンシルベニア大学のDaniel B. Horton氏らは、抗菌薬治療や感染症が小児における偶発的な乾癬と関連しているかどうかを調べる目的で、コホート内症例対照研究を行った。その結果、感染症は小児の乾癬発症と関連しているが、抗菌薬は実質的にはそのリスクはないことを報告した。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年11月11日号の掲載報告。 研究グループは、英国におけるプライマリケアの医療記録データベースであるThe Health Improvement Networkを用い、1994年6月27日~2013年1月15日のデータを2014年9月17日~2015年8月12日に分析した。 症例は、初めて乾癬と診断された1~15歳の小児(免疫不全、炎症性大腸疾患および若年性関節炎患児を除く)(845例)で、年齢および性別をマッチさせた乾癬の既往のない対照小児(8,450例)と比較した。対照は、乾癬と診断した小児が1例以上いるプライマリケアにおいて診断と同時期に受診した小児から無作為抽出された。 全身投与の抗菌薬処方、および乾癬と診断される前2年以内の皮膚ならびに他の部位の感染症について調べ、主要評価項目を乾癬の発症として、乾癬と抗菌薬治療ならびに感染症との関連性について条件付きロジスティック回帰分析を行った。 主な結果は以下のとおり。・マッチング、地域、社会経済的貧困、外来受診および過去2年以内の感染症に関して調整後、最近2年間の抗菌薬治療は偶発的な乾癬とわずかに関連していた(調整オッズ比[aOR]:1.2、95%信頼区間[CI]:1.0~1.5)。・皮膚感染症(aOR:1.5、95%CI:1.2~1.7)およびその他の感染症(同:1.3、1.1~1.6)の関連性は類似していた。・抗菌薬で治療した非皮膚感染症(1.1、0.9~1.4)ではなく、未治療の非皮膚感染症(1.5、1.3~1.8)が乾癬と関連していた。・曝露期間を生涯とした場合も、結果は類似していた。・抗菌薬の種類や抗菌薬を初めて投与された年齢は、乾癬と関連していなかった。・乾癬診断前の期間を2年からさまざまな期間に変えた場合でも、所見は実質上変化しなかった。

8611.

EGFR-TKI耐性肺がんの再生検 その現状

 EGFR-TKI耐性非小細胞肺がん(以下、NSCLC)に有効な第3世代EGFR-TKIの登場で、耐性獲得後の遺伝子変異が治療方針に大きな影響を及ぼすこととなり、同時に耐性獲得時の再生検も重要性が増すことになる。再生検は、診断時生検に比べ手技的難易度が高いといわれるものの、その実施状況についての情報は少ない。そのような中、2015年11月26日から開催された第56回日本肺癌学会において、EGFR-TKI耐性NSCLCの再生検が大きく取り上げられた。細胞診が半数を占める先進5施設の成績 ワークショップ「再生検」(座長:大阪府立成人病センター 今村文生氏、ディスカサント:兵庫県立がんセンター 里内美弥子氏)では、5人の演者(がん研究会有明病院 小栗知世氏、倉敷中央病院 横山俊秀氏、埼玉県立がんセンター 福泉 彩氏、大阪市立総合医療センター 津谷あす香氏、鹿児島大学 隈元朋洋氏)が、再生検の現状の研究結果を発表。5つの演題を総括して、里内美弥子氏は以下のように解説した。 第3世代EGFR-TKI、AZD9291(osimertinib)は、本邦でも早期に臨床の舞台に現れると予想される。AZD9291の使用にあたっては、コンパニオン診断薬cobas EGFR Mutation Test v2でのEGFR変異の確認が必要である(FDA、第3世代TKI(AZD9291)を承認 参照)。 5つの演題をまとめると、再生検の部位は、診断時と比べ原発巣からの採取が大きく減って3割程度となり、脊髄液や胸水からの採取が増えている。再生検時の手技は、診断時に比べ気管支鏡が大幅に減り、胸水および腹水穿刺が増加し半分以上を占める。また、いずれの施設も組織検体を採る難易度が高いためか、細胞診が半数程度であった。 T790M陽性率は全体で4割程度。採取部位によって陽性率は異なり、髄液での陽性率は低かった(髄液を除くと5割程度となった)。 EGFR変異の検査法については、今後使われるであろうCobas法での実施は少なく、発表施設中1施設のみ、他の施設はPCR Invader法であった。AZD9291のコンパニオン診断薬であるCobas法では細胞診検体は指定外であり、再生検で多くなると予想される細胞診検体に対し、どう対応していくか検討が必要となるだろう。ハイボリュームセンターにおける再生検の現状 次に、九州がんセンター 瀬戸 貴司氏らによる、本邦最大規模となる再生検の実態調査結果がポスターセッションで発表された。この調査は、再生検の経験がある国内の30施設における進行NSCLCの再生検の実態を調査した多施設共同後ろ向き観察研究である(胸水を用いた再生検例は対象から除外)。主要評価項目は再生検成功率(がん細胞が採取できた症例数/再生検症例数)であった。 調査の結果、成功率は79.5%(314例/395例)であった。再生検時の検体採取部位は原発巣55.7%、転移巣30.6%であった。転移巣は診断時の9.1%と比べ大きく増加していた。再生検の採取方法は経気管支アプローチが62.0%、経皮的アプローチが29.1%で、経皮的アプローチは診断時の7.6%から大幅に増加していた。採取部位と採取方法による成功率の差はみられなかった。再生検時の合併症は5.8%であった。 里内氏はワークショップの中で、現状の再生検の実施状況はばらつきが多いが、AZD9291の登場により、再生検は避けて通ることができないものになるだろう、と述べた。

8612.

梅毒に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。第14回となる今回は梅毒の続きで、性交渉歴の聴取の仕方と梅毒の臨床症状についてです。デリケートな内容へのアプローチ梅毒は性感染症ですので、梅毒を疑った時点で性交渉歴を聞かなければなりません。読者の皆さまは、性交渉歴をどのように聴取していますでしょうか?もちろん「ねえねえ、セックスやってる~?」という90年代のバブリーなノリで聞いてはいけません。ここはビーチやゲレンデ、ましてやジュリアナ東京ではありません! われわれがいるのは病院であり、相手にしているのは患者さんなのですッ!われわれは、常日頃から性交渉歴というきわめて個人的な内容について、聴取していることに自覚的でなければなりません。患者さんのセックスについて、けっして軽く聞いてはならないのです。しかし、いきなり初対面の患者さんに、性交渉歴を聞くのはちょっとためらいがあることと思います。そんなときには「これはすべての患者さんに聞いていることなのですが…」「診断で大事なことかもしれないので、聞かせていただきたいのですが…」などの前置きをすると、患者さんも回答に抵抗が少ないかもしれません。「5つのP」を重点に肝心の問診の内容ですが、性交渉歴を聴取する際には「5つのP」を意識して問診することが重要です。米国疾病対策予防センター(CDC)のSTDガイドラインには「5P」と書いてあるのですが、性交渉の話で5Pっていうと、わが国では何となく誤解を招きやすい表現である気がしますので、私は「5つのP」と言っています、はい。表がその「5つのP」になります。画像を拡大するとくに重要なのはパートナーのPとプラクティスのPです。パートナーについては、男性か、女性か、両方かを聞きます。男性だから女性と、女性だから男性としか性交渉しないとは限りません。また、特定の相手のみとしか性交渉がないのか、不特定の相手ともあるのかによってSTDのリスクが大きく異なります。プラクティスは性交渉の内容です。通常の生殖器同士の性交渉だけでなく、オーラルセックス、オーラル・アナル・セックスなどの性交渉を行っているかを聴取します。3つ目のプロテクションのPは、コンドームの使用の有無によって感染のリスクを推定することができますし、4つ目の既往歴は性感染症の既往のある人は、また性感染症になりやすいという、けっして偏見ではなくキラリと光る真実に基づいています。このような「5つのP」を意識しながら、性感染症のリスク評価を行うわけですが、前回もご紹介したとおり、現在梅毒は大流行している状況です。また、今回の梅毒の流行は、当初MSM(Men who has sex with Men:男性と性交渉する男性)の間で始まりましたが、現在は男性-女性間でも感染例が多数報告されている状況です。ですからわれわれ臨床医は、とくに梅毒に関して疑う閾値を低くして診療に望む必要があります。再確認、梅毒の病態どのような場合に梅毒を疑うか? それは、今どの時期の梅毒を診ているのかを意識することが重要です。図1は梅毒の自然経過ですが、見ておわかりのとおりかなり複雑です。画像を拡大する第1期梅毒は、梅毒の病原微生物であるTreponema pallidumが進入した部位(陰茎、膣、肛門、口唇など)に、約3週間の潜伏期の後に硬性下疳と呼ばれる丘疹を生じる病態です(図2)。画像を拡大するこの硬性下疳は痛くないのが特徴で、本人も気付かないことが多々あります。この際、鼠径リンパ節腫大を伴うこともあります。第1期梅毒のときに治療がされなければ、約4~10週を経て第2期梅毒に移行します。第2期梅毒で特徴的なのは前回もご紹介したとおり、皮疹です。梅毒の皮疹は手のひら、足の裏にも皮疹が出るのが特徴です(図3)。画像を拡大するちなみに梅毒以外で手のひら・足の裏にも皮疹がみられる感染症としては、手足口病、日本紅斑熱、感染性心内膜炎、髄膜炎菌感染症などがあります。第2期梅毒のその他の臨床症状としては、発熱、全身倦怠感、リンパ節腫脹、関節痛などを呈することもあります。あるいは「腹痛の原因精査で内視鏡をしたら胃梅毒だった」「ネフローゼ症候群の原因が梅毒だった」「ブドウ膜炎の原因(以下同文)」というような、さまざまな病態を呈することがあります。第2期梅毒の臨床症状は非常に多彩です。かと思うと、第2期梅毒の臨床症状をまったく呈さずに、潜伏期梅毒に移行する症例もあり、梅毒の診断は時に非常に難しいのです。症状の出ない潜伏期梅毒潜伏期梅毒はその名のとおり、とくに症状を有さない梅毒の状態ですが、感染後1年以内のものは早期潜伏期梅毒、1年を越えるものは後期潜伏期梅毒と定義されます。厳密にきっちり1年で分かれるものではありませんが、早期潜伏期梅毒は性交渉でも感染性を有し、第2期梅毒を再発することがあるのに対し、後期潜伏期梅毒は、性交渉で感染することは少なくなります(母胎感染はありえます)。感染後さらに時間が経過すると、晩期梅毒という病態に移行するといわれています。しかし、抗菌薬が頻繁に処方される現代では、非常にまれな病態とされています。臨床現場でも、とりあえずカッコつけのために、鑑別診断として挙げることはありますが、ぶっちゃけ私も診たことがありません。さらにさらに、このような第1期から晩期までの梅毒の流れとは別に、いつのステージであっても神経梅毒という中枢神経系の感染症を発症することがあります。神経梅毒は早期には無症状であることも多く、臨床症状はなく髄液検査でのみ異常がみられることも多々あります。時間が経過すると、慢性に進行する認知症状などを呈し「なんか最近言っていることがおかしい」「計算ができなくなった」などといった症状で、神経内科や精神科などを受診することもあります。こうなってくると、いわゆる「Treatable Dementia(見逃してはいけない認知症)」の鑑別になってきます。いやー、梅毒の病態は非常に複雑です。梅毒がひっそりと流行しているのは、このような「診断の難しさ」も関与しているものと思われます。さて、梅毒だけでけっこう引っ張ってしまいましたが、次回はいよいよ梅毒の診断と治療についてご紹介いたしますッ!!1)Workowski KA, et al. MMWR Recomm Rep.2015;64:1-137.2)柳澤如樹ほか. モダンメデイア.2008;54:14-21.

8613.

PCIは虚血性心疾患患者の長期生存に寄与するか/NEJM

 安定虚血性心疾患患者の初期管理において、至適な薬物療法に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を併用しても、薬物療法単独に比べ長期的な生存率に差はないことが、米国・ニューヨーク退役軍人省健康管理ネットワークのSteven P Sedlis氏らが行ったCOURAGE試験の拡張調査で確認された。PCIは、ST上昇急性心筋梗塞患者の生存率を向上させ、非ST上昇心筋梗塞患者の長期生存を改善して早期および晩期の心イベントを低減することが示されている。一方、安定虚血性心疾患患者では、PCIは狭心症を軽減し、心筋虚血の領域を減少させるが、生存の改善を示した臨床試験はないという。NEJM誌2015年11月12日号掲載の報告。最長15年の追跡期間の拡張調査で生存率を評価 COURAGE試験では、1999年6月~2004年1月に、安定虚血性心疾患患者2,287例が、至適な薬物療法のみを行う群(薬物療法群)または至適薬物療法+PCIを施行する群(PCI群)に無作為に割り付けられた。 追跡期間中央値4.6年の時点で、全死因死亡と非致死的心筋梗塞の複合エンドポイントの発生率は、PCI群が19.0%、薬物療法群は18.5%であり、両群間に差を認めなかった(ハザード[HR]:1.05、95%信頼区間[CI]:0.87~1.27、p=0.62)(Boden WE, et al. N Engl J Med 2007; 356: 1503-1516)。 研究グループは今回、本試験の拡張調査を行い、最長15年追跡した患者の死亡率を報告した(VA Cooperative Studies Programの助成による)。 米国退役軍人省(VA)の医療施設およびVA以外の米国のいくつかの施設で本試験に参加した患者から、社会保障番号の使用許可を得て、元の試験の終了以降の生存を追跡した。 VAの全国的なCorporate Data Warehouseおよび全米死亡記録(National Death Index)を検索して、生存情報および全死因死亡の日付のデータを収集した。生存率はKaplan–Meier法で算出し、ベースラインの背景因子の群間の有意差はCox比例ハザードモデルを用いて補正した。全体の死亡率:PCI群25%、薬物療法群24% 拡張調査の生存情報は、1,211例(元の患者集団の53%)で得られた(PCI群:613例、薬物療法群:598例)。全体の患者の追跡期間中央値は6.2年(範囲:0~15)であり、生存の追跡の許可が得られた施設の患者の追跡期間中央値は11.9年(範囲:0~15)であった。 全体で2,287例中561例が死亡し、死亡率は25%であった。このうち、元の試験の追跡期間中の死亡が180例、拡張調査の追跡期間中は381例であった。 治療群別の死亡率は、PCI群が25%(284/1,149例)、薬物療法群は24%(277/1,138例)であり、未補正HRは0.98(95%CI:0.83~1.15、p=0.77)、補正HRは1.03(95%CI:0.83~1.21、p=0.76)であった。 拡張調査期間の死亡率はPCI群が41%(253/613例)、薬物療法群は42%(253/598例)であり、未補正HRは0.95(95%CI:0.79~1.13、p=0.53)であった。 拡張調査の有無、年齢(60歳以下、60歳超)、喫煙歴の有無、性別など11項目のサブグループ解析では、両群間に有意な差を認めたものはなかった。 著者は、「最長15年間の拡張追跡調査において、安定虚血性心疾患患者の初期治療戦略として、PCI+薬物療法と薬物療法単独の間に生存率の差を認めなかった」とまとめ、「これは、糖尿病と安定虚血性心疾患の双方を有する2,368例を5.3年間追跡したBARI 2D試験(PCI、CABG)の全死因死亡の結果と一致する」と指摘している。

8614.

CKDリスクを予測する新たなバイオマーカーの可能性/NEJM

 可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクチベータ受容体(suPAR)の上昇は、ベースライン時の腎機能正常者において、慢性腎臓病(CKD)の発症および推定糸球体濾過量(eGFR)の加速度的な低下と有意に関連することが、米国・エモリー大学医学部のSalim S Hayek氏らの検討で示された。血漿中のsuPARの高値は、多様な病態の患者集団において、不良な臨床転帰や巣状分節性糸球体硬化症、糖尿病性腎症と関連することが知られている。これらの知見はまだ検証中であるが、腎臓病におけるsuPARの広範な役割が示唆されている。NEJM誌2015年11月12日号(オンライン版2015年11月5日号)掲載の報告。血漿suPAR値とCKD発症の関連を前向きコホート試験で評価 研究グループは、「血漿suPAR値はCKDの新規発症と関連する」との仮説を検証するために、心血管疾患患者を対象に大規模な前向きコホート試験を実施した(Abraham J and Phyllis Katz Foundationなどの助成による)。 2003~09年に、アトランタ市の3施設で心臓カテーテルを施行され、エモリー心血管バイオバンクに登録された3,683例(平均年齢63±12歳、男性65%、suPAR中央値3,040pg/mL)の血漿suPAR値を測定した。このうち2,292例(62%)で、登録時とフォローアップ期間中の受診時に腎機能の評価を行った。 suPAR値とベースラインのeGFR、eGFRの経時的変化、CKDの発症との関連につき、人口統計学的変量および臨床的変量で補正後に、線形混合モデルとCox回帰を用いて解析を行った。suPAR値の四分位数(Q1~Q4)別に、eGFRの変化およびCKDの発症の比較を行った。CKDは、eGFR<60mL/分/1.73m2と定義した。 ベースラインのsuPAR値が≧3,040pg/mL(中央値)の患者は、<3,040pg/mLの患者に比べ、年齢が高く、女性が多く、喫煙歴、高血圧、糖尿病、蛋白尿、冠動脈疾患、心筋梗塞歴の頻度が高く、高感度CRPが高値で、eGFRは低値であった(いずれもp<0.001)。CKD発症率が、Q3はQ1の2倍、Q4は3倍以上に ベースラインのsuPAR値が高い患者ほど、フォローアップ期間を通じてeGFR低下の程度が大きく、suPAR値が最大四分位群(Q4)の患者のeGFRの年間の変化が-4.2mL/分/1.73m2であったのに対し、最小四分位群(Q1)では-0.9mL/分/1.73m2であった(p<0.001)。 Q4のeGFRの年間の低下は、Q1およびQ2よりも大きく(いずれも、p<0.001)、Q3もQ1およびQ2に比べ年間の低下が大きかった(いずれも、p<0.001)。Q1とQ2、Q3とQ4の間には有意な差はなかった。 suPAR値関連のeGFRの低下は、ベースラインのeGFRが<60mL/分/1.73m2の患者では有意ではなく(-0.1%、95%信頼区間[CI]:-0.9~0.7)、≧60mL/分/1.73m2の患者では有意であり(-1.2%、95%CI:-1.8~-0.6)、これらの間には有意な差が認められた(交互作用検定:p<0.001)。 また、ベースラインのeGFRが低い患者ほどsuPAR値に関連するeGFRの変動が小さく、ベースライン時に正常(90~120mL/分/1.73m2)であった921例のsuPAR値関連eGFRの低下が最も大きかった(交互作用検定:p<0.001)。 一方、ベースラインのeGFRが≧60mL/分/1.73m2の1,335例におけるCKDの発症率は、suPAR値の四分位がQ1からQ4へ1段階ずつ上がるに従って有意に増加し(ハザード比[HR]:1.40、95%CI:1.26~1.55、p<0.001)、≧3,040pg/mLの患者は<3,040pg/mLに比べて約2倍高かった(HR:1.97、95%CI:1.53~2.54、p<0.001)。 また、suPAR値がQ1の患者に比べて、Q3の患者のCKD発症率は2倍(HR:2.00、95%CI:1.38~2.89、p<0.001)、Q4は3倍以上(HR:3.13、95%CI:2.11~4.65、p<0.001)に達し、Q4はQ3の約1.5倍であった(HR:1.51、95%CI:1.11~2.06、p=0.01)。 著者は、「suPAR高値は、ベースライン時の腎機能正常者においてCKDの発症およびeGFRの加速度的な低下とそれぞれ独立の関連を示した」とまとめ、「これらの結果は、suPARが、CKDのバイオマーカーとして不可欠の要件を満たすことを示唆する」と指摘している。

8615.

再発・難治性多発性骨髄腫治療に対するcarfilzomibレジメン

 多種類の前治療歴を有する再発・難治性の多発性骨髄腫患者に対する治療選択肢は限られている。米国・テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターのJatin J Shah氏らは、carfilzomib+ポマリドミド+デキサメタゾンからなるCPD療法の治療レジメンを、多施設共同オープンラベル第I相用量漸増試験により評価した。Blood誌2015年11月12日号の報告。 前治療後に再発または直近に実施した治療で難治性であった患者を対象とした。すべての患者は、レナリドミド前治療に対して不応であった。患者には、carfilzomib静注(初回用量20mg/m2、以降27mg/m2に増加、第1、2、8、9、15、16日目)、ポマリドミド(初期用量レベルとして4mg、第1~21日目)、デキサメタゾン(40mgを経口または静注、第1、8、15、22)を、28日サイクルで治療を行った。試験の主な目的は、安全性の評価とレジメンの最大耐量(MTD)を決定することとした。 主な結果は以下のとおり。・32例の患者が登録された。・レジメンのMTDは、用量レベル1(carfilzomib:20/27mg/m2、ポマリドミド:4mg、デキサメタゾン:40mg)であった。・血液学的有害事象は、全患者の60%以上(Grade3以上の貧血11例を含む)で発生した。・呼吸困難はGrade1/2に限られ、10例の患者で認められた。末梢神経障害は、まれでGrade1/2であった。・治療中に8例で投与量の減量を行い、7例は有害事象により治療を中止した。・2例の死亡例は、それぞれ肺炎、肺塞栓症によると考えられた。 結果を踏まえ、著者らは「再発・難治性の多発性骨髄腫患者に対するCPD療法は、良好な忍容性と非常に有望な活性をもたらす」としている。(ケアネット 鷹野 敦夫)参考文献Shah JJ, et al. Blood. 2015;126:2284-2290.血液内科関連Newsはこちらhttp://www.carenet.com/hemato/archive/news

8616.

うつ病にEPAやDHAは有用なのか

 大うつ病性障害(MDD)に対するn-3系多価不飽和脂肪酸(n-3PUFAs;オメガ3脂肪酸としても知られる)の有効性のエビデンスは、現時点では不明であるとする報告が、英国・ボーンマス大学のAppleton KM氏らにより発表された。プラセボを対照とした24件の試験および抗うつ薬治療を対照とした1件の試験、計25件の試験をレビューした結果、プラセボと比べうつ症状に対して低度~中等度のベネフィットがあること、抗うつ薬と同様の効果が得られることを示したが、いずれもエビデンスの質は非常に低いものであった。著者は、「今後さらなる検討が必要である」と指摘している。Cochrane Database Systematic Reviewオンライン版2015年11月5日号の掲載報告。 MDDへのn-3PUFAsの役割を示唆するエビデンスは、さまざまに報告されているが確定的なものはない。その中で、より重症のうつ症状を呈する患者を対象とした試験ではベネフィットが得られる可能性が示されていた。そこで研究グループは、成人MDDに対するn-3PUFAsと対照(プラセボ、抗うつ薬治療、標準治療、無治療、治療待機対照)の有効性を比較検討した。2015年5月時点で、Cochrane Depression, Anxiety and Neurosis Review Group's Specialised Registers(CCDANCTR)、国際臨床試験登録(International Trial Registries)を検索。また、2013年9月までの、データベースCINAHLの記録を検索した。主要アウトカムは、うつ症状(有効な評定尺度を使用して連続データを収集)および有害事象。副次アウトカムはうつ症状(寛解および反応に関する二分データ)、QOL、試験の非完遂とした。 主な結果は以下のとおり。・検索により26件を特定した。25件(1,438例)はn-3PUFA補給 vs.プラセボ、1件(40例)はn-3PUFA補給 vs.抗うつ薬治療の検討であった。・n-3PUFA補給はプラセボに比べ、うつ症状に対して低~中等度のベネフィットを示した(標準化平均差[SMD]:-0.32、95%信頼区間[CI]:-0.12~-0.52、25試験・1,373例、エビデンスの質は非常に低い)。ただし、この効果は臨床的意義につながる可能性は低かった。SMDの0.32はHDRS(17項目)のスコアにしておよそ2.2ポイント(95%CI:0.8~3.6)の差を示した。・信頼区間には、臨床的に重要な効果を示すものとわずかな効果の可能性のみに留まるものの両方が認められ、試験間に重大な不均質性も認められた。・介入群とプラセボ群で有害事象を経験した被験者数は同程度であった(オッズ比[OR]:1.24、95%CI:0.95~1.62、19試験・1,207例、非常に低い)。信頼区間は、n-3PUFAsに関して有害事象の有意な増加を示し、減少の可能性はほとんど認められなかった。・寛解率、反応率、QOL、非完遂率はいずれも群間で同程度であったが、信頼区間に関してはやはりばらつきが大きかった。・これらの結果を基盤とするエビデンスは、非常に限定的である。・解析に使用した試験は、すべて今回の研究課題に直接関連するものであったが、すべてのアウトカムのエビデンスに関し、質は低から非常に低いと評価した。・解析に使用した試験の数および被験者数が少なく、大半が小規模の試験であったため、複数の評価項目で高いバイアスリスクが認められた。・今回の解析は、3つの大規模試験の影響を大きく受けた可能性が高かった。これら試験についてバイアスリスクは低いと判断しているものの、それらはデータの26.9~82%を網羅していた。・今回算出したエフェクトサイズの推定値も正確といえないものであった。ファンネルプロットの非対称性および感度解析(固定効果モデルを使用、選択バイアス、パフォーマンス・バイアス、アトリションバイアスのリスクが低い試験のみを使用)では、n-3PUFAs に対するポジティブな所見のバイアス傾向が示された。・主要アウトカムであるうつ症状の解析においても重大な不均質性が存在した。この不均質性は併存疾患の有無、あるいは補助療法の有無により説明されなかった。・抗うつ薬との比較試験では、うつ症状(平均差[MD]:-0.70、95%CI:-5.88~4.48)、治療反応率、試験の非完遂における差異は認められなかった。また、有害事象については解析に適した形での報告はなされておらず、うつ寛解率およびQOLに関する報告はなかった。・以上より、現時点ではMDDの治療法としてn-3PUFAsの効果を判断する質の高いエビデンスが十分にない状況といえた。・今回の初回解析は、プラセボと比較してn-3PUFAsのうつ症状に対する低度~中等度の非臨床的なベネフィットを示している。しかし、この結果の基となっているエビデンスの質は低いあるいは非常に低いと判定されており、この予測は正確なものとはいえなかった。・感度解析、ファンネルプロット解析、そして適切に実施された大規模試験の結果と今回得た結果との比較により、今回の効果予測がn-3PUFAsに対するポジティブな所見のバイアス傾向が示され、実際の効果はさらに小さいものであることが示唆された。・今回のデータでは、n-3PUFA群とプラセボ群において同様の有害事象発現率、試験非完遂例数も示されているが、これも決して正確なものとはいえない。レビューの中でn-3PUFAsと抗うつ薬を直接比較した唯一の試験では、両群に同等のベネフィットが認められた。n-3PUFAsのMDDに対するポジティブおよびネガティブな影響に関する、より多くのエビデンス、そしてより完全なエビデンスが必要である。関連医療ニュース EPA、DHA、ビタミンDは脳にどのような影響を及ぼすか 双極性障害エピソードと脂肪酸の関連を検証 統合失調症の再発予防、ω-3脂肪酸+α-LAは有用か  担当者へのご意見箱はこちら

8617.

1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第25回

第25回:HbA1cだけではなく、患者もみるべし監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 ここ数年、糖尿病をめぐる状況は大きな変化を迎えています。治療目標を個別化することが世界的な流れとなり、日本糖尿病学会のガイドライン1)でも治療目標を患者の状況によって個別に設定することが明記されました。また複数の新薬も登場しています。 普段の診療でも、とくに高齢者では、HbA1cが高めであってもあまり全身状態が悪化しない例を多くの方が経験しているだろうと思います。欧米のガイドラインも含めた世界的な流れを確認しておきたいと思います。 Individualizing Target Goals and Treatment in Patients with Type 2 Diabetes2型糖尿病患者の個別化された治療目標と治療法以下、American family physician 2015年6月1日号1)より抜粋【治療目標について】アメリカとヨーロッパの糖尿病研究学会は、2型糖尿病患者に対して、いつどのように個別化された治療を行うかに焦点をあてたposition statement第2版を発表している。これまで同様に、治療法と治療目標の個別化が提案されている。次のような場合はあまり厳格なコントロールを行うべきではない(訳者注:厳格な目標とは、「HbA1c<7%」のこと)。 低血糖のリスクが高い 疾患の罹患期間が長い 生命予後が短い 進行した血管合併症を含む重大な併存疾患の存在 アドヒアランスの欠如やモチベーションの低さ 資源やサポートシステムが限られている【治療法について】メトホルミンは治療の基礎である。もし有効でなかった場合、ガイドラインでは他の6種類(訳者注:SU薬、チアゾリジン、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体拮抗薬、インスリンの6種類)の薬のどれかの併用を提案しており、有効性の差は臨床上問題にならないとしている。必要なら3剤目も同様であり、患者の好みなどによって個別に調整する。抜粋ここまで。厳しい目標を適用する患者を限定すべきという方向性が強く現れている反面、どの程度の目標が良いのかについては明確にされていません。複数の組織からいくつかの具体的な治療目標の提案がされていますが2)、内容も相互に異なっており、今後の検証が待たれます。肥満の少ない日本人の2型糖尿病患者に対するメトホルミンの血糖コントロール改善についてはMORE studyで検証されており、メトホルミンを第1選択とする本論文の提案は、日本人においても同様に考えてよいと思います。いずれにしろ、機械的にHbA1cの数値だけをみてコントロールをしてはいけないということをあらためて肝に銘じたいと思います。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Shaughnessy AF. Am Fam Physician. 2015;91:788. 2) 日本糖尿病学会. 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013.(参照2015.11.26) 3) M. Sue Kirkman, et al. Consensus Report: Diabetes in Older Adults. 2012 Oct 25.

8618.

遺伝子で抗うつ効果を予測可能か

 高齢者うつにおける抗うつ薬による寛解が、モノアミン系および代謝系経路の遺伝子発現プロファイルと関連していることを、オーストラリア・アデレード大学のHarris A. Eyre氏らが、ゲノムワイドの検討により明らかにした。検討は初となるパイロット試験であり、示された結果について著者らは「大規模なサンプルで再現する必要がある」と述べている。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2015年10月15日号の掲載報告。 研究グループは、高齢者うつにおける抗うつ薬反応の予測因子について、メチルフェニデートとcitalopramの無作為化プラセボ対照試験によりゲノムワイド転写プロファイルを調べた。被験者は、高齢大うつ病患者35例。メチルフェニデート+citalopram併用、citalopram+プラセボまたはメチルフェニデート+プラセボに無作為に割り付けた。メチルフェニデート投与量は10~40mg/日、citalopram投与量は20~60mg/日であった。被験者のベースラインと16週時点の末梢血白血球を用いて、ゲノムワイド転写プロファイルを調査した。寛解は、ハミルトンうつ病評価尺度6未満と定義し、治療開始4週時点で同スコアを達成した場合は早期寛解とした。ベースラインで確認した遺伝子発現の差異から抗うつ薬反応を予測可能であると仮定し、検証した。 主な結果は以下のとおり。・遺伝子発現の解析は、寛解者24例、非寛解者11例で行われた。・ベースラインで、寛解者全例に発現が認められた3つの遺伝子(HLA-DRB5、SELENBP1、LOC388588)を認めた。・それらの発現頻度は非寛解者と比べて寛解者では有意に高率で、規定の有意水準を満たした(倍率変化=2、p=0.05)。・非寛解者と比べて早期寛解者では、ベースラインにおいて、2つのゲノム転写の発現が高率にみられた。・1つは、呼吸機能に関係する8番染色体上のCA1炭酸脱水酵素遺伝子であった(倍率変化=2.54、p=0.03)。もう1つは、ドパミントランスポーター結合に関係するSNCA-α-synuclein遺伝子であった(倍率変化=2.1、p=0.03)。関連医療ニュース なぜ高齢期うつ病は寛解率が低いのか うつ病のリスク遺伝子判明:藤田保健衛生大 うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学

8619.

発症年齢、HbA1c、CKDが2型糖尿病患者の生命予後を規定する(解説:住谷 哲 氏)-453

 2型糖尿病患者の生命予後を改善するためのアプローチとしては、(1)2型糖尿病発症予防、(2)多因子介入(multifactorial approach)、(3)診断直後からの介入(legacy effect)が有用と考えられてきた。スウェーデンにおけるコホート研究である本論文は、これらのアプローチが正しかったことを支持すると同時に、その限界をも明らかにした点で重要である。 スウェーデン全国糖尿病レジスター(Swedish National Diabetes Register)に登録された2型糖尿病患者約40万例と、年齢・性別・居住地をマッチさせた対照患者約200万例を約5年間追跡した。これにより、スウェーデンにおけるほとんどの2型糖尿患者が網羅された。追跡期間中の総死亡率および心血管死亡率が比較されたが、重要なのは登録時の年齢、追跡期間中のHbA1c、アルブミン尿、eGFRによる層別解析がなされている点である。 2型糖尿病患者において、総死亡率の増加は年齢に関係なくHbA1cの上昇と単調に相関しており、全体ではHbA1cが1%上昇するごとに総死亡率は12%増加した。これはUKPDS35における疫学的検討の結果(総死亡率はHbA1c 1%の上昇につき14%増加)1)と一致していた。さらに総死亡率に関して、年齢とHbA1cとの間には交互作用を認めたが(p<0.001)、性別とHbA1cとの間には交互作用を認めなかった(p=0.21)。つまり、血糖コントロールが総死亡率に及ぼす影響は、年齢により異なるが性別による差はないことになる。表(原著Table 3)を詳細にみると、若年(<55歳)2型糖尿病患者においては、血糖コントロールが良好群(HbA1c<7.0%)の総死亡率のハザード比(HR)が1.92(95%信頼区間1.75~2.11)であり、不良群(HbA1c≧9.7%)では同4.23(3.56~5.02)であった。一方、高齢(≧75歳)2型糖尿病患者においてはそれぞれ0.95(0.94~0.96)、1.55(1.47~1.63)であり、血糖コントロールが総死亡率に及ぼす影響が、若年者に比較して減弱していることが示唆された。アルブミン尿、eGFRについても同様の解析がなされたが、HbA1cと同様に、高齢者においては若年者に比較して両者が総死亡率に及ぼす影響は減弱していた。 高齢(≧75歳)2型糖尿病患者におけるHbA1cの目標値を、どこに設定すべきか現時点でコンセンサスはない。この問題に対して、本論文は1つの答えを与えてくれると思われる。HbA1c 7.9~8.7%群における総死亡率のHRは、正常アルブミン尿群では1.01(0.97~1.05)、eGFR>60mL/min群では1.00(0.97~1.04)であり、対照群と差はなかった。したがって、正常アルブミン尿かつeGFR>60mL/minの高齢(≧75歳)2型糖尿病患者におけるHbA1cの目標値を8.7%以下とするのが1つの基準となるだろう。 これに反して、若年(<55歳)2型糖尿病患者においては、血糖コントロール良好(HbA1c<7.0%)かつ正常アルブミン尿群における総死亡率のHRは1.60(1.40~1.82)、HbA1c<7.0%かつeGFR>60mL/min 群においては1.73(1.55~1.92)であり、対照群に比較して有意に高値であった。この理由は明らかではないが、若年2型糖尿病患者群におけるスタチンおよびレニン・アンジオテンシンン・アルドステロン系阻害薬の服用率が、対照群に比較してそれぞれ8倍および5倍であったことを考慮すると、冒頭に述べた多因子介入のみでは、若年2型糖尿病患者における総死亡率抑制には不十分であることが示唆される。著者らが述べているように、禁煙の徹底、身体活動量の増加、新しい心血管保護薬の開発が必要であろう。 2型糖尿病患者の総死亡率は、対照群と比較して依然として高い。本論文により2型糖尿病発症年齢、血糖コントロール、アルブミン尿およびeGFRで規定される慢性腎臓病CKDが総死亡率の増加に関連することが再確認された。したがって2型糖尿病の発症をできるだけ遅らせること、早期からの多因子介入により良好な血糖コントロールを維持するとともに、CKD発症を予防することがきわめて重要であることも再認識する必要があろう。

8620.

加齢黄斑変性へのベバシズマブ、5年後の結果

 加齢黄斑変性に伴う脈絡膜新生血管の治療において、ベバシズマブ硝子体内投与(IVB)による初期の視力改善効果は、5年後には維持されていなかったことを、米国・ジョンズホプキンス大学 J. Fernando Arevalo氏らPan-American Collaborative Retina Study Groupが発表した。247例の後ろ向き症例シリーズによる報告で、IVBは地図状萎縮の発症または進行に関与している可能性も示唆されたという。Retina誌オンライン版2015年11月2日の掲載報告。 研究グループは、加齢黄斑変性続発性の中心窩下脈絡膜新生血管と診断され、IVB 1.25mgを1回以上行った連続247例(292眼)を5年以上追跡し、治療前および治療後受診時の最高矯正視力(BCVA)(スネレン視力表による)、光干渉断層計(OCT)検査および検眼鏡検査所見を評価した。 主な結果は以下のとおり。・1眼当たりの平均注入数は、10.9±6.4回であった。・BCVAは、ベースライン時20/150(logMAR 0.9±0.6)から、5年後は20/250(logMAR 1.1±0.7)に低下した(p≦0.0001)。・平均中心窩網膜厚(CMT)は、治療前343.1±122.3μmから、5年後は314.7±128.8μmに減少した(p=0.009)。・地図状萎縮は、治療前292眼中47眼(16%)で観察されたが、5年後には292眼中124眼(42.5%)に発症または拡大を認めた(p<0.0001)。

検索結果 合計:11820件 表示位置:8601 - 8620