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統合失調症患者の副作用認識状況は:さわ病院

 多くの統合失調症患者において、服薬アドヒアランスは不良である。神戸学院大学、さわ病院の橋本 保彦氏らは、統合失調症患者における服用薬剤の副作用の認識について教育的介入効果の検討を行った。Australasian psychiatry誌オンライン版2016年2月24日号の報告。 対象は、国内の病院2施設に入院している統合失調症患者87例。対象患者は、「前月、服用した薬剤による何らかの副作用を経験したかどうか」の質問に回答し、薬剤の副作用認識の有無で2群に振り分けた。 主な結果は以下のとおり。・服用薬剤の副作用を認識していたのは、27.6%の患者のみであった。・薬剤師による教育および副作用リストを提示した後、認識率は著しく向上した(≦96.6%)。・ほとんどの統合失調症患者は、服用薬剤の副作用を明確に認識していなかった。・患者は不快感を経験した場合、服薬を中止する傾向があった。 結果を踏まえ、著者らは「副作用は、服薬中止の主な危険因子であり、これらの早期の発見・報告は、より早い患者対応につながる。服薬中止による再発リスクを考慮すると、統合失調症患者に対し専門家は積極的に不快感について教育し、副作用をマネジメントする必要がある」とまとめている。関連医療ニュース 統合失調症患者、どんな剤形を望んでいるのか 抗精神病薬注射剤を患者は望んでいるのか 精神疾患患者は、何を知りたがっているのか

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処方率上位を伝えるレター、不要な抗菌薬処方削減に効果/Lancet

 英国一般医(GP)の不要な抗菌薬処方を減らす方法として、処方率の高い上位20%のGPに対し、英国主席医務官(England's Chief Medical Officer)名で、上位に位置していることを知らせるレター送付が有効であることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのMichael Hallsworth氏らが、プラグマティックな試験を行い報告した。著者は、「低コストで全国規模の抗菌薬処方の削減が可能であり、抗菌薬管理プログラムに追加する価値があるものだ」と結論している。Lancet誌オンライン版2016年2月18日号掲載の報告。抗菌薬処方率が高い上位20%のGP診療所を対象に介入 vs.非介入試験 試験は、2×2要因デザインを用いた無作為化比較試験で、一般公開されているデータベースを用いて、抗菌薬処方率が、所属するNHS Local Area Teamで上位20%に位置するGP診療所を同定して行われた。適格診療を、フィードバック介入群と非介入(対照)群にコンピュータで無作為に割り付け、NHS Local Area Teamによる層別化も行った。割り付けについて参加者は知らされなかったが、研究者には知らされた。 2014年9月29日に、フィードバック介入群の全GPに対し、英国主席医務官からレターと、患者への抗菌薬使用に関するリーフレットが送付された。レターには、「所属するNHS Local Area Teamで、抗菌薬処方率が上位20%に属する診療である」旨が書かれていた。一方、対照群のGPには一切の連絡がされなかった。 その後、試験対象者は再無作為化を受け、14年12月に、一方の群には抗菌薬使用の減少を推奨する患者中心の情報が送られ、もう一方には一切の連絡がされなかった。 主要評価項目は、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬で、過去の処方について調整し評価。解析はintention-to-treatにて行われた。レター送付群で抗菌薬処方が有意に減少 2014年9月8日~26日の間に、1,581のGP診療所が、フィードバック介入群(791ヵ所)または対照群(790ヵ所)に割り付けられた。 レターは、介入群791ヵ所の3,227人のGPに送られた。レター送付費用は4,335ポンドであった。 2014年10月~15年3月の、1,000加重人口当たりの処方抗菌薬は、フィードバック介入群126.98(95%信頼区間[CI]:125.68~128.27)、対照群131.25(130.33~132.16)で、差は4.27(相対差:3.3%;群間差の発生率比[IRR]:0.967、95%CI:0.957~0.977、p<0.0001)であった。これは推定で、処方抗菌薬が7万3,406個減少したことを示す。 GP診療所は再び14年12月に、患者中心介入群(777ヵ所)、対照群(804ヵ所)に割り付けられた。結果、14年12月~15年3月の間の主要評価項目に有意な影響はみられなかった。1,000加重人口当たり処方抗菌薬は、患者中心介入群135.00(95%CI:133.77~136.22)、対照群133.98(133.06~134.90)で、群間差のIRRは1.01(95%CI:1.00~1.02、p=0.105)であった。

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血清尿酸値と心血管疾患死亡率の関係はJ字型

 アジア人における血清尿酸値と心血管疾患との関係を調査するために、大阪大学のWen Zhang氏らはEvidence for Cardiovascular Prevention from Observational Cohorts in Japan(EPOCH-JAPAN研究)のデータを用いて、日本における大規模なプール解析を実施した。その結果、血清尿酸値と心血管疾患死亡率との間にJあるいはU字型の関係が示唆された。また、日本人男女とも、血清尿酸値の最高五分位で心血管疾患の死亡率増加と関連していた。Journal of atherosclerosis and thrombosis誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。 著者らは、3万6,313人(ベースライン時、脳卒中・冠動脈疾患・がんの既往がなかった35~89歳の男性1万5,628人と女性2万685人)のデータを分析した。心血管疾患による死亡率の性特異的ハザード比(HR)を、コホートで層別化したCoxハザードモデルを用いて、血清尿酸値の五分位数に応じて推定した。 主な結果は以下のとおり。・44万1,771人年のフォローアップ中、心血管死亡は1,288件あった。・血清尿酸値と心血管疾患死亡率との間にJあるいはU字型の関係がみられた。・血清尿酸値の最低五分位と比較して、最高五分位は、男性(HR:1.28、95%CI:1.01~1.63)および女性(HR:1.51、95%CI:1.14~1.99)とも、心血管疾患の死亡率の増加と関連していた。・一方、男女とも、脳卒中・冠動脈疾患・心不全による死亡率との有意な関連はなかった。

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がんは最善の死に方なのか~中高年者の意識調査

 がんは転帰が改善しているにもかかわらず、依然として広く恐れられている。他の主な死亡原因である心疾患が早急な死と関連しているのとは対照的に、多くの場合、死亡までの期間が長いと思われているためである。それゆえ、BMJ誌の元編集長であるRichard Smith氏の“がんは最善の死に方(cancer is the best way to die)”という見解は多くの批判を集めた。今回、英国ロンドン大学のCharlotte Vrinten氏らは、中・高年者に対してこの見解に同意するかどうかを調査し、“良い死(good death)”かどうかという観点で、がんによる死と心疾患による死に対する考えを比較した。その結果、中・高年者の4割ががんを“最善の死に方”と見なし、がん死のほうが心疾患死より良いと評価した。著者らは、「2人に1人ががんと診断されることを考えると、がんによる良い死についての会話が、がんへの恐怖を少し軽減するかもしれない」と記している。European journal of cancer誌2016年3月号に掲載。 本研究は、英国の50~70歳のサンプル(n=391)における、性別および教育レベルでの割当抽出法によるオンライン調査(2015年2月実施)の一部である。“良い死”の5つの特徴は、終末期に関する文献から選択した。集団サンプルとがん・心疾患それぞれによる死亡の可能性との関連性を確保するために、彼ら自身の死について各特徴の重要性を評価するよう、回答者に依頼した。また、Smith氏の見解に同意するかどうかも尋ねた。 主な結果は以下のとおり。・少なくとも回答者の95%が、選択された5つの特徴が自分の死において重要かどうかを熟考した。・がんによる死は、心疾患による死と比べて、「起こることに対するコントロール」(p<0.001)、「痛みや他の症状に対するコントロール」(p<0.01)、「身辺整理のための時間」(p<0.001)、「愛する人に別れを言うための時間」(p<0.001)が提供される可能性が高いと評価された。一方、「死亡まで自立して生活することへの期待」においては差がなかった(p>0.05)。・ほぼ半数(40%)の回答者が、がんは“最善の死に方”という見解に同意し、年齢(p=0.40)、性別(p=0.85)、教育レベル(p=0.27)による差はなかった。

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子供の喘息・アトピーは在胎期間に関連する

 子供の喘息とアトピー性皮膚炎は、在胎期間と関係するのだろうか。フィンランドで、早産児における7歳までの喘息治療および喘息とアトピー性皮膚炎による入院の必要性を評価する目的で、全国登録研究が行われた。その結果、前期/後期早産(32~36週)児では、正期産児よりも学齢期の喘息リスクが高いこと、一方でアトピー性皮膚炎による入院リスクは低いことが明らかになった。European Journal of Pediatrics誌オンライン版2016年2月22日号掲載の報告。 本調査は、1991~2008年の間にフィンランドで生まれた子供101万8,302人を対象に行われた。在胎期間に応じて、以下の4つのカテゴリに分類し、この分類に基づき、7歳時までの各疾患の罹患との相関を評価した。・超早産(32週未満、very preterm;VP)・前期早産(32~33週、moderately preterm;MP)・後期早産(34~36週、late preterm;LP)・正期産(37週以降、term control;term) 主な結果は以下のとおり。・喘息の薬物治療は、在胎期間が短い子供ほど多く受けていた(VP>MP>LP>term、それぞれ15.4%、8.0%、5.7%、3.8%)。・喘息による入院も同様の傾向が見られた(VP>MP>LP>term、20.1%、10.6%、7.3%、4.8%)。・MPおよび・LPにおける喘息の薬物治療が生じるリスクは、子供の性別(男児がより高リスク)、妊娠中の喫煙歴、妊娠糖尿病、人口呼吸器による加療などにより予測することができた。・アトピー性皮膚炎による入院は、在胎期間が長くなるほどリスクが高まった(term>LP>MP、罹患率は5.2%、4.7%、4.2%)。

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妊娠とメトホルミン-本当に「禁忌」なのか?-(解説:住谷 哲 氏)-492

 肥満人口の増加とともに、耐糖能異常を合併した妊婦の数も増加している。耐糖能異常合併妊娠は、妊娠前糖尿病(pregestational diabetes)、overt diabetes in pregnancy、妊娠糖尿病(gestational diabetes:GDM)に分類されるが、その管理目標は母児の周産期合併症を予防することにある。妊娠中の血糖管理の基礎は食事療法であるが、血糖降下薬を必要とする場合は少なくない。ある薬剤が妊娠中に使用できるかどうかについては、わが国には明確な基準がなく、米国FDAのpregnancy category(薬剤胎児危険度分類基準)を参考にすることが多い。妊娠中に使用できる血糖降下薬はインスリンのみで、他の血糖降下薬は「禁忌」と一般的に考えられているが、本論文で使用されたメトホルミンはカテゴリーBに分類され、実は妊婦に対して使用可能である(ただし、わが国の添付文書には妊婦への投与は禁忌と記載されている)。 GDMに対するメトホルミン投与の有用性が広く知られるようになったのは、2008年に報告されたMiG(Metformin versus Insulin for the Treatment of Gestational Diabetes)試験が契機である1)。この試験では、751例のGDM患者を、メトホルミン2,500mg投与群とインスリン投与群に分け、本論文とほとんど同様のアウトカムを評価した。その結果、主要評価項目では両群に有意差を認めず、胎児に対する有害事象の発症率も両群で有意差を認めなかった。しかし、試験で割り振られた治療を再度選択したいと答えた患者がメトホルミン群で有意に多かった。さらに、この試験で誕生した新生児の満2歳時の体格および体組成を比較した結果が報告されているが、メトホルミン投与群の母親から誕生した子供は、インスリン投与群に比較して、より皮下脂肪が多く内臓脂肪が少ないことが示された(MiG TOFU)2)。その後も、GDMに対するメトホルミンの有用性を検討した試験が行われ、それらを統合したsystematic reviewにおいては、インスリンに対するメトホルミンの優越性が結論されている3)。 以上述べたように、GDMに対するメトホルミンの有用性はすでに確立している。そこで、本論文においてはさらに一歩進んで、耐糖能異常を合併しない肥満合併妊婦に対するメトホルミンの有用性が検討された。対象患者は、高リスクの妊婦を選択する目的でBMI>35とされた。また、メトホルミン投与量不足の可能性を最小にするため、投与量は3,000mg/日とされた。その結果は、主要評価項目である新生児出生体重Zスコア中央値は両群間に有意差を認めなかったが、妊娠高血圧腎症(妊娠中毒症)の発症率は、メトホルミン投与群でオッズ比0.24 (95%信頼区間:0.10~0.61、p=0.001)に減少した。さらに、新生児の有害アウトカムの発症率も両群に差はなかった。 本試験およびMiG試験の結果からいえることは、その有用性に加えて、妊婦に対するメトホルミンの安全性であろう。当然ながら両試験において、乳酸アシドーシスは1例も発生していない。もちろん、今後も引き続きメトホルミン投与群の妊婦から誕生した新生児に対する長期的な観察が必要であることは言うまでもない。しかし、耐糖能異常合併妊娠のみならず、肥満合併妊娠も増加しているわが国においても、妊娠におけるメトホルミンの位置付けを再考する必要があると考えられる。

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脳梗塞急性期には血栓除去術が有益/Lancet

 患者特性などを問わず大半の脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中患者にベネフィットをもたらす脳血管内治療は、血栓除去術であることが明らかにされた。カナダ・カルガリー大学のMayank Goyal氏らHERMES共同研究グループが、5つの無作為化試験に参加した全被験者データをメタ解析した結果で、Lancet誌オンライン版2016年2月18日号で発表した。著者は、「この結果は、脳主幹動脈梗塞による急性虚血性脳卒中患者へのタイムリーな治療を提供するケアシステム構築において大きな意味を持つだろう」と述べている。5つの無作為化試験の患者データをメタ解析 2015年現在までに、5つの無作為化試験で、脳前方循環近位部閉塞による急性虚血性脳卒中(以下、脳梗塞急性期)患者には、血栓除去術が標準的内科治療よりも有効であることが示されている。研究グループは、それら試験に参加した全被験者データを分析し、背景が異なる患者集団全体で治療の有効性が認められるか、メタ解析で調べた。 対象となった試験は、2010年12月~14年12月に行われたMR CLEAN、ESCAPE、REVASCAT、SWIFT PRIME、EXTEND IA。これらの試験では、脳梗塞急性期患者を、発症後12時間以内に血栓除去術を行う群または標準的内科治療(対照)群に無作為に割り付けて、90日時点の障害重症度の軽減を修正Rankinスケール(mRS)で評価(主要アウトカム)する検討が行われていた。 研究グループは、各試験データベースから直接、被験者データを集めて、プール集団で90日時点のmRS評価による障害軽減について評価した。また、その治療効果の不均一性について、事前に規定したサブグループ全体で検証した。 試験間のばらつきは、混合効果モデルと着目したパラメータのランダム効果を用いて補足した。そのうえで、混合効果順序ロジスティック回帰モデルを用いて、全集団における主要アウトカムの共通オッズ比(cOR)を算出した(シフト解析)。また、年齢、性別、ベースライン脳卒中重症度(National Institutes of Health Stroke Scale score)、閉塞部位(内頸動脈 vs.中大脳動脈M1 vs.同M2)、rt-PA静注療法(実施 vs.未実施)、ベースラインのAlberta Stroke Program Early CTスコア、発症から無作為化までの時間で補正後のサブグループ評価も行った。標準的内科治療と比較した90日時点の障害重症度軽減オッズ比は2.49 解析には、1,287例の患者データが組み込まれた(血栓除去群634例、対照群653例)。 血栓除去群は、対照群と比べて90日時点の障害重症度が有意に低かった(補正後cOR:2.49、95%信頼区間[CI]:1.76~3.53、p<0.0001)。NTTを試算すると、血栓除去術2.6例施行につき1例の患者で、mRS評価で1単位以上の障害重症度の軽減が認められた。 主要エンドポイントのサブグループ解析では、事前規定のサブグループ全体で障害重症度軽減への治療効果の不均一性は認められなかった(交互作用p=0.43)。 また、80歳以上の患者(cOR:3.68、95%CI:1.95~6.92)、発症から無作為化までの時間が300分超の患者(1.76、1.05~2.97)、rt-PA静注療法不適の患者(2.43、1.30~4.55)といった注目すべき階層群で、対照よりも血栓除去術の効果サイズが大きかった。 90日時点の死亡率、硬膜下血腫および症候性頭蓋内出血リスクは、治療群間で差はみられなかった。

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性差という個体の特徴の意義~女性は心房細動の予後規定因子なのか~(解説:西垣 和彦 氏)-491

性差医療とその本質とは? 歴史的に医学は成人男性を標準個体とし、その病態や臨床経過・予後、診断から治療に至るまでを確立してきた。しかし近年、危険因子や薬剤の効果においても性差があることが明らかになるにつれ、性差の存在がクローズ・アップされるようになった。この性差という個体の特徴における相違は、生物学的要因としてのホルモンバランスの違いなどがその原因として挙げられている。現代医学は、この性差を無視して成立しなくなったこともあり、性差研究を通して医療に反映させる性差医療が発展してきた。しかし、この性差医療に関し危惧されることがある。それは、性差がもたらすだろう損得を種々追求するがあまり、性差は個体の特徴の1つに過ぎないという本質を失念し、人種や年齢などの寄与度の高い危険因子の存在を無視・偏重して解析することであり、さらに性差がその疾患の予後を規定する普遍の定理かのような提起をしてしまうことである。このことは厳に慎まなければならない。 本論文のポイントは? 本論文のポイントをまとめる。本論文は、女性であることが心房細動の予後規定因子としてより強い心血管イベント/死亡リスクであるのか、30件のコホート研究、計437万1,714例を解析対象として行ったメタ解析研究である。 その結果、心房細動の各アウトカムに対する相対危険の男女比(女性/男性)は、全死亡:1.12(1.07~1.17)、脳卒中:1.99(1.46~2.71)、心血管死:1.93(1.44~2.60)、心イベント:1.55(1.15~2.08)、心不全:1.16(1.07~1.27)であった。したがって、心房細動は、女性であることが心血管イベントや死亡リスクに対し、より強い予後規定因子であると報告している。著者らはその機序として、女性のほうが男性より治療が遅れるのではないかということや、抗凝固薬による出血が多いことが、より強い心血管イベント/死亡リスクとなったのではないかとしているが、あくまでも著者らの推論の域を出ない。 各国の心房細動に対する抗凝固療法ガイドラインにおける性差 心房細動患者の生命予後に対する性差の影響に関しては、わが国も含めてこれまでも多くの研究報告がなされているが、その結果は混沌としていて一定の見解が得られていない。 フラミンガム心臓研究の38年に及ぶ追跡調査では、心房細動の危険度は高血圧があれば男性1.5倍、女性1.4倍とほぼ同等であったが、糖尿病があれば男性1.4倍、女性1.6倍高いという結果が報告された1)。 わが国の心房細動の有無と死亡リスクの関連を検討した、1万人以上の住民を登録したNIPPON DATA80では、非心房細動患者の死亡リスクを1としたとき、心房細動患者の循環器疾患死亡リスクは、男性で1.4倍、女性で4.0倍と多く、総死亡リスクは男性で1.4倍、女性で2.4倍と、女性において心房細動は全死亡あるいは心血管死の独立した危険因子であることが示された2)。しかし、この研究データは1980年~1999年の追跡調査より得られていることから、ワルファリンによる抗凝固療法が普及する以前を反映しているものと考えられ、現状に即応していないものと考えられている。 一方、最近では、心房細動患者の生命予後に関して、女性という因子はそれほど強い危険因子ではないのではないかという報告がなされている。デンマークで行われた、ワルファリン療法を受けていない心房細動患者7万例を登録したコホート研究によると、うっ血栓心不全、高血圧、および糖尿病といったCHADS2スコア1点のリスクと比較して、女性という性差のリスクがきわめて低いことが示された3)。 このような混沌とした結果を受けて、各国のガイドラインも異なった取り扱いをしている。2014年10月にアップデートされた、カナダの心房細動に対する抗凝固療法のガイドラインでは、女性という因子のみはエビデンスがないと抗凝固の対象には入れないとしている4)。これに対して、2015年2月にヨーロッパ心血管プライマリケア学会から出された、心房細動における脳梗塞予防のコンセンサスガイドラインでは、65歳以上の女性あるいは75歳以上の男性であるならば、CHA2DS2-VAScスコアの他のリスクを評価して抗凝固療法の適応を判断することとしており、女性という性差を心房細動の予後規定因子として重要視している5)。 わが国のガイドラインにおいては、65歳未満でほかに器質的心疾患を伴わない心房細動患者において、女性であることは単独の危険因子にならないとし、さらに65~74歳は性別にかかわらず考慮可となりうることから、単独因子として女性という性差は記載されていない6)。さらに、昨年5月に報告されたわが国のJ-RHYTHMレジストリを用いたCHA2DS2-VAScスコアの妥当性を検討した論文では7)、血栓塞栓症は男性(年1.6%)に比較し、女性(年1.2%)ではかえって少ないこと、CHA2DS2-VAScスコアから女性を除いたスコアリングは、血栓塞栓症のリスク層別化の点で有用であり、さらに日本人では、65歳以上や血管疾患もあまりリスク因子として効いていないことから、かえってこれらの因子を含めると予測能が落ちるため、むしろCHADS2スコアで抗凝固薬の使用を評価するのがよいと結論付けられている。はたして女性は心房細動の危険因子なのか? これまでの結果から、心房細動患者に対する抗凝固療法の適応を考慮するとき、女性という性差をその危険因子として考えることよりも、やはり人種による差が大きいといわざるを得ない。その点、この論文は所詮欧米のガイドラインを構築するエビデンスに過ぎず、わが国のガイドラインを左右するほどの影響力は持ち合わせていない。 米国心臓協会 (American Heart Association)の活動として、“Go Red for Women”が提唱されている。この標語は、日本人にとってわかりづらい英語の表現であったこともあり、私が『女性の心血管疾患を減らすことを目的として、女性に積極的に呼びかけていこうという運動の名称』であると知ったのは、かなり経ってからである。米国における女性の心血管疾患罹患の深刻化が問題となっていることの一端であるが、わが国の現状とはかなり異なっているといわざるを得ない。参考文献1)Kannel WB, et al. Am J Cardiol. 1998;82:2N-9N.2)Ohsawa M, et al. Circ J. 2007;71:814-819.3)Olesen JB, et al. BMJ 2011;342:d124.4)Verma A, et al. Can J Cardiol. 2014;30:1114-1130.5)Hobbs FR, et al. Eur J Prev Cardiol. 2016;23:460-473.6)日本循環器学会ほか. 心房細動治療(薬物)ガイドライン(2013年改訂版).PDF (2016.3.1参照)7)Tomita H, et al. Circ J. 2015;79:1719-1726.

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夢の早漏治療薬dapoxetineは本当に安全か?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第62回

夢の早漏治療薬dapoxetineは本当に安全か? >FREEIMAGESより使用 dapoxetine(商品名:Priligy、Poxet)という薬剤は泌尿器科医の間では有名だと思われます。これは、短時間作用性の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)で、早漏治療に用いられることがあります。早漏について知らない女性の方もいると思いますので、少し説明しましょう。 性行為のときに、男性は5分よりも30分、30分よりも1時間“楽しみたい”と考えているワケです。いやだ、おげれつ! しかし、世の中には自制が効かずにたった1分や2分で射精をしてしまう男性もいます。これを早漏と呼びます。医学的に難しく言うなら、「男性における性機能障害。性行為時において女性器へ男性器を挿入した後1分以内に射精してしまう、もしくは挿入前に射精してしまうこと。射精をコントロールできないことによるストレスなど精神的な負担を感じていること。あるいは、性行為自体を避けていること」を指します。 そんな悩める男性たちにとって、dapoxetineは非常に有効という報告が多いです。しかし、残念ながら保険適用されませんので病院では処方してもらえません。ご注意を。 Yue FG, et al. Efficacy of Dapoxetine for the treatment of premature ejaculation: a meta-analysis of randomized clinical trials on intravaginal ejaculatory latency time, patient-reported outcomes, and adverse events. Urology. 2015;85:856-861. 中国の吉林大学からの研究です。この研究は、早漏治療薬としてdapoxetineが有効かどうか、複数の論文を集めてメタアナリシスしたものです。しかるべき機関に登録されている、妥当性の高い論文のみを集めました。その結果、5つのランダム化比較試験が信頼性が高いと判断されました。いずれも、プラセボとdapoxetineを比較したものです。この5試験を合わせて解析したところ、dapoxetineはプラセボと比較してIELT:intravaginal ejaculation latency time(膣内に挿入してから射精するまでの時間)を延ばすことができました(加重平均差1.47分、95%信頼区間:1.22~1.71分、p<0.00001)。つまり、上述の“お楽しみ”の時間が1~2分ほど延びたというのです!患者さんの感想はどうかというと、全般的な印象、性行為の満足度、射精に対する苦悩感といったアンケートに対して「dapoxetineいいね!」という結果が多かったようです。dapoxetineは性行為1~2時間前に30mgあるいは60mg内服するのですが、一番の副作用は下痢と言われています(5~10%)(J Sex Med. 2010;7:2947-2969.)。さすがに行為中に下痢になることはまれでしょうが、下手すると頑張ったその夜のうちにひどい下痢を発症してムードが台無しに…ということにもなりかねません。10分ならともかく1~2分の延長ためにこの薬剤を飲むのもどうかなあ…と感じますが、本当に悩んでいる人にとっては救いの薬剤になるでしょうね。インデックスページへ戻る

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治療抵抗性統合失調症は、クロザピンに期待するしかないのか

 治療抵抗性統合失調症では、クロザピンが標準治療として考えられている。しかし、クロザピンの使用は、多くの副作用により制限がある。また、他の抗精神病薬との無作為化比較試験の数も増加している。ドイツ・ミュンヘン工科大学のMyrto T Samara氏らは、ネットワークメタ解析により、治療抵抗性統合失調症に使用可能な抗精神病薬によるすべての無作為化試験を統合し分析した。JAMA psychiatry誌2016年3月号の報告。 MEDLINE、EMBASE、BIOSIS、PsycINFO、PubMed、Cochrane Central Register of Controlled Trials、WHO国際臨床試験レジストリ、clinicaltrials.govより、2014年6月30日までの報告を検索した。少なくとも2人以上の独立したレビュアーにより、公表または非公表の治療抵抗性統合失調症(各試験の定義による)を対象とした単盲検または二重盲検のRCTで抗精神病薬(任意の用量および投与形態)を他の抗精神病薬またはプラセボと比較した試験を選択した。少なくとの2人以上のレビュアーが標準フォームに全データを抽出、コクラン共同計画のリスクバイアスツールで、全試験の質を評価した。データは、ベイジアン設定でランダム効果モデルを使用しプールした。主要評価項目は、統合失調症症状の全体的な変化によって測定される有効性とした。副次評価項目は、統合失調症の陽性症状と陰性症状の変化、治療への分類上の反応、何らかの理由による中止、治療の無効性、重篤な有害事象とした。 主な結果は以下のとおり。・40の無作為化比較試験、5,172例(男性:71.5%、平均年齢[SD]:38.8歳[3.7歳])が分析に含まれた。・全アウトカムにおいて、有意な差は少なかった。・主要評価項目では、オランザピンはクエチアピン(標準化平均差[SMD]:-0.29、95%CI:-0.56~-0.02)、ハロペリドール(SMD:-0.29、95%CI:-0.44~―0.13)、sertindole(SMD:-0.46、95%CI:-0.80~―0.06)よりもより有効であった。クロザピンはハロペリドール(SMD:-0.22、95%CI:-0.38~―0.07)、sertindole(SMD:-0.40、95%CI:-0.74~―0.04)よりもより有効であった。リスペリドンはsertindole(SMD:-0.32、95%CI:-0.63~―0.01)よりもより有効であった。・オランザピン、クロザピン、リスペリドンの優位性のパターンは、他の有効性評価項目でも認められたが、結果は一貫せず、効果サイズは通常よりも小さかった。・また、クロザピン、ハロペリドール、オランザピン、リスペリドン以外の抗精神病薬が有用であるとしたRCTは比較的少なかった。・最も驚くべき発見は、クロザピンがほとんどの他の薬剤よりも有意に良好ではないことであった。 結果を踏まえ、著者らは「抗精神病薬は治療抵抗性統合失調症患者に対し、より効果的だとするエビデンスは不十分であった。そして、非盲検とは対照的に盲検無作為化比較試験の有効性の研究結果では、他の第2世代抗精神病薬と比較しクロザピンの優位性を示す研究は少なかった」とし、「最近のエビデンスを変更するため、今後は高用量や、非常に難治性の統合失調症患者におけるクロザピン研究が最も有望であると考えられる」とまとめている。関連医療ニュース 治療抵抗性統合失調症へ進展する重要な要因とは:千葉県精神科医療C 難治例へのクロザピン vs 多剤併用 治療抵抗性統合失調症へのクロザピン投与「3つのポイント」

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冠動脈手術前のアスピリンは中止すべきか?/NEJM

 冠動脈手術前のアスピリン術前投与は、死亡および血栓性合併症のリスクを低下させることはなく、出血リスクも増加しない。オーストラリア・アルフレッド病院のPaul S. Myles氏らが、冠動脈手術を受ける高リスク患者においてアスピリンが死亡率や血栓性合併症の発症率を減らすかどうかを評価する目的で行ったATACAS試験の結果、明らかとなった。ほとんどの冠動脈疾患患者は、心筋梗塞・脳卒中・死亡の1次または2次予防のためにアスピリンを投与されている。アスピリンは、出血リスクを高めるが、冠動脈手術前に中止すべきかどうかは不明であった。NEJM誌オンライン版2016年2月25日号掲載の報告。冠動脈手術予定患者を対象に2×2要因試験を実施 ATACAS試験は、2×2要因デザインを用いた二重盲検無作為化比較試験で、2006年3月~13年1月に5ヵ国19施設にて患者登録が行われた。対象は、冠動脈手術が予定されている周術期合併症リスクを有する患者で、アスピリン群またはアスピリンとマッチさせたプラセボ群、ならびにトラネキサム酸群またはトラネキサム酸とマッチさせたプラセボ群に無作為化された。 本論文は、アスピリン試験についての報告である。2,100例がアスピリン群(1,047例)とプラセボ群(1,053例)に無作為化され、それぞれ手術1~2時間前にアスピリン100mgまたはプラセボを投与された。ワルファリンとクロピドグレルは、手術の少なくとも7日前に中止されることになっていた。 主要評価項目は、術後30日以内の死亡・血栓性合併症(非致死的心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓、腎不全、腸梗塞)の複合エンドポイント。事前に定めた副次評価項目は、死亡、非致死的心筋梗塞、重大出血、心タンポナーデおよび輸血であった。主要評価項目および副次的評価項目いずれもイベント発生率に両群で有意差なし 主要評価項目のイベント発生は、アスピリン群202例(19.3%)、プラセボ群215例(20.4%)であった(相対リスク:0.94、95%信頼区間:0.80~1.12、p=0.55)。 再手術を要する大出血の発生率は、アスピリン群1.8%、プラセボ群2.1%(p=0.75)、心タンポナーデはそれぞれ1.1%、0.4%(p=0.08)であった。死亡、脳卒中、肺塞栓、腎不全、腸梗塞の発生率は両群間で類似していた。 主要評価項目に関して、治療群と患者の性別・年齢・左室機能・出血リスク・術式・直近のアスピリン曝露量との間に、有意な交互作用は認められなかった。 著者は、「アスピリン群で出血リスクが増加しなかったのは、患者の選択、低用量(100mg)、患者の半数で抗線溶療法を行っていたことが関与していると考えられる」との見解を示している。

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長時間労働とがんリスク

 長時間労働は心血管疾患リスクの増加と関連しているが、がんとの関連は不明である。英国London School of Hygiene & Tropical MedicineのKatriina Heikkila氏らのマルチコホート研究により、長時間労働は、がん全体、肺がん、大腸がん、前立腺がんのリスクに関連がないことが示唆された。一方、乳がんリスクとの関連については「さらなる研究が必要とされる」と記している。British Journal of Cancer誌オンライン版2016年2月18日号に掲載。 著者らは、登録時にがんを発症していない男女11万6,462人について、労働時間とがんリスクの関連を調査した。がんの発症は全国のがん・入院・死亡登録で確認、また週単位での労働時間は自己申告による。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値10.8年間に4,371人ががんを発症した(大腸がん393人、肺がん247人、乳がん833人、前立腺がん534人)。・労働時間とがん全体のリスクの間に明らかな関連は認められず、大腸がん、肺がん、前立腺がんのリスクとの間にも関連は認められなかった。・女性の乳がんにおいて、年齢、社会・経済的地位、シフト時間や夜間労働、ライフスタイル因子に関係なく、週55時間以上の労働で1.60倍(95%信頼区間:1.12~2.29)に増加した。ただし、この結果は出産歴による残余交絡が影響している可能性がある。

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ロコモは、身体能力だけでなくうつ病とも関連する?

 ロコモティブシンドローム(LS)は、身体能力だけでなくうつ病の程度とも関係していることを愛知医科大学 運動療育センターの池本 竜則氏らが報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2016年2月10日号の掲載報告。 LSについての報告は最近増加しており、現在までに身体能力に関しての研究はなされてきたが、精神医学的評価を含めた研究はまれである。本研究では25-question geriatric locomotive function scale(GLFS-25)を用いて、LSの有無と重症度に関連する身体的および精神的パラメータを調査した。 対象は、同運動療育センターを利用している健康な60歳以上の高齢者150人で、事前に測定したGLFS-25カットオフ値(=16ポイント)から、LS群もしくは非LS群に割り付けられた。年齢、握力、timed-up-and-go test(TUG)、開眼片足立ち、背筋力、脚筋力、うつ病の程度、認知障害についてのパラメータは、Mann-Whitney U-test、および多重ロジスティック回帰分析を用いて比較検討した。 また、LS重症度と強い相関を示した変数は、多重線形回帰分析を用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・非LS群は110人(73%)で、LS群は40人であった。 ・LS群と非LS群間を比較分析したところ、年齢、握力、TUG、開眼片足立ち、背筋力、うつ病の程度において有意な差が認められた(p<0.006、Bonferroni補正)。・握力機能低下、TUG、片足立ち、うつ病の程度がLSに有意に関連していた(多重ロジスティック回帰分析)。・GLFS-25スコアに大きく寄与する要因は、TUGとうつ病の程度であった(多重線形回帰分析)。

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うつ病再発予防へ、インターネット介入の可能性は

 再発うつ病患者において生活を改善する戦略は、妥当性が高い。ドイツ・ハイデルベルク大学のHans Kordy氏らは、無症状期間の延長を目的としたインターネット配信による2つの増強戦略の有効性を検討した。Psychotherapy and psychosomatics誌2016年2月号の報告。 3アームの多施設共同無作為化比較試験(非盲検、評価者盲検)で有効性を検討した。対象は、メンタルヘルスケア入院から退院した3つ以上のうつ病エピソードを有する成人232例。対象患者は、SUMMIT介入群、SUMMIT-PERSON介入群、通常ケア単独群に無作為に割り付けられた。介入は12ヵ月間実施し、通常ケアに加え、eメールまたはスマートフォンを経由してモニターした(危機的な状況が近付くシグナル、個人的な危機管理の支援、早期介入促進を含む)。SUMMIT-PERSON介入群では、さらに定期的な専門家とのチャットも行った。主要評価項目は、治療開始後24ヵ月間における、Longitudinal Interval Follow-Up Evaluationで評価した「well weeks(最も症状の軽い1週間)」であった。 主な結果は以下のとおり。・SUMMIT介入群は、通常ケア単独群と比較し、体調不良状態の期間減少(OR:0.48、95%CI:0.23~0.98)、体調不良からの回復の早さ(OR:1.44、95%CI:0.83~2.50)、体調良好から不良への悪化の遅さ(OR:0.69、95%CI:0.44~1.09)が認められた。・仮説に反して、SUMMIT-PERSON介入群は、SUMMIT介入群(OR:0.77、95%CI:0.38~1.56)および通常ケア単独群(OR:0.62、95%CI:0.31~1.24)と比較し、優れているとはいえなかった。・SUMMIT介入の有効性は、介入後8ヵ月時点で最も強かった。 結果を踏まえ、著者らは「完全自動化インターネット配信増強戦略SUMMITは、再発うつ病患者の生涯負担を軽減させることで、通常ケアを改善する可能性がある。効果の減弱は、無制限の期間延長を示唆している」とまとめている。関連医療ニュース これからのうつ病治療はWebベース介入で変わるのか 近未来のうつ病治療に、会話システム「Help4Mood」 うつ病の新規発症予防へ、早期介入プログラム

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糖尿病患者への降圧治療、ベネフィットあるのは140mmHg以上の人/BMJ

 糖尿病患者に対する降圧治療は、ベースライン収縮期血圧値が140mmHg以上であれば、全死因死亡リスクや心血管疾患リスクの低減効果が認められるものの、140mmHg未満では、逆に心血管死リスクが増大することが示された。スウェーデン・ウメオ大学のMattias Brunstrom氏らが、システマティック・レビューとメタ解析の結果、明らかにした。糖尿病患者への降圧治療は、同患者で増大がみられる心血管疾患リスクを低減するが、至適血圧値については議論が分かれている。BMJ誌オンライン版2016年2月24日号掲載の報告。糖尿病患者100例以上のRCTを分析対象に 研究グループは、CENTRAL(Cochrane Central Register of Controlled Trials)、Medline、Embase、BIOSISを基に、システマティック・レビューとメタ解析を行った。 糖尿病患者100例以上を対象にした無作為化比較試験で、治療期間は12ヵ月以上、降圧薬対プラセボ、2種類の降圧薬対1種類の降圧薬の比較を行ったものや、目標血圧値の違いによる比較を行った試験を分析対象とした。 糖尿病患者の降圧治療について、ベースラインなどの血圧値の違いによる、死亡や心血管疾患発症への低減効果を検証した。 49試験、被験者総数7万例超についてメタ解析 49試験(被験者総数7万3,738例)について、メタ解析を行った。被験者のほとんどが、2型糖尿病の患者だった。 分析の結果、ベースライン収縮期血圧値が150mmHg超の群は、降圧治療により、全死因死亡(相対リスク:0.89、95%信頼区間[CI]:0.80~0.99)、心血管死亡(0.75、0.57~0.99)、心筋梗塞(0.74、0.63~0.87)、脳卒中(0.77、0.65~0.91)、末期腎不全(0.82、0.71~0.94)のリスクが、いずれも有意に低減した。 また、ベースライン収縮期血圧値が140~150mmHgの群でも、降圧治療により、全死因死亡(0.87、0.78~0.98)、心筋梗塞(0.84、0.76~0.93)、心不全(0.80、0.66~0.97)のリスクが有意に低減した。 一方で、ベースライン収縮期血圧値が140mmHg未満の群については、降圧治療により、心血管死リスクは増大し(1.15、1.00~1.32)、全死因死亡リスクも増大の傾向がみられた(同:1.05、0.95~1.16)。メタ回帰分析の結果、ベースライン収縮期血圧が低い人ほどアウトカムは不良で、心血管死(収縮期血圧値10mmHg低下ごとの相対リスク:1.15、95%CI:1.03~1.29、p=0.015)、心筋梗塞(同:1.12、1.03~1.22、p=0.011)については降圧治療による有意な悪影響がみられた。これらの結果を踏まえて著者は、「糖尿病患者で収縮期血圧140mmHg未満の人への降圧治療は、心血管死リスク増大と関連しており、ベネフィットはみられなかった」とまとめている。 なお、降圧治療のリスク低減効果について、治療達成収縮期血圧値(140mmHg超、130~140mmHg、130mmHg未満で分類)で分析した場合も、同様のパターンがみられた。

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脳卒中後の降圧目標、130mmHg vs.140mmHg/BMJ

 脳卒中または一過性脳虚血発作歴のある患者に対し降圧治療を行う際、目標収縮期血圧値を140mmHgに設定しても、130mmHgに設定した場合と比べて、12ヵ月後の両群間の降圧差は3mmHgとわずかで、臨床的重要性は同等であることが示された。英国・ケンブリッジ大学のJonathan Mant氏らが、529例を対象に行った非盲検無作為化試験「PAST-BP」の結果、明らかにした。プライマリケアにおいて、脳卒中/一過性脳虚血発作後患者の異なる目標血圧値に関する試験は、これが初めてという。BMJ誌オンライン版2016年2月24日号掲載の報告。99ヵ所の一般診療所を通じ529例を追跡 研究グループは2009~11年にかけて、英国99ヵ所の一般診療所を通じ、脳卒中または一過性脳虚血発作を発症し、収縮期血圧値が125mmHg以上の529例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、目標血圧値を130mmHg未満またはベースライン血圧値が140mmHg未満の場合には10mmHg低下を目標とする厳格降圧群と、目標血圧値を140mmHg未満とする標準降圧群に割り付けた。 目標血圧値が異なるほかは、両群の患者には同様に、プライマリケアチームによる積極的なマネジメントが実施された。 主要評価項目は、ベースラインから12ヵ月時点での収縮期血圧値の変化だった。降圧差は2.9mmHg、140mmHg未満目標で臨床的に意義ある降圧は得られる 被験者529例(平均年齢72歳)のうち、主要解析に含まれたのは379例(厳格降圧群182例、標準降圧群197例)だった。 厳格降圧群の平均収縮期血圧値は、ベースラインから12ヵ月間で16.1mmHg低下し、127.4mmHgだった。一方、標準降圧群は12.8mmHg低下の129.4mmHgで、両群間の差は2.9mmHg(95%信頼区間:0.2~5.7、p=0.03)だった。 結果を踏まえて著者は、「脳卒中または一過性脳虚血発作歴のある患者に対し、目標収縮期血圧値を140mmHg未満ではなく130mmHg未満に設定しても、降圧のさらなる延伸はわずかで、目標血圧値140mmHg未満で臨床的に重要な降圧は得られる」と結論している。

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認知症の発症率が低下傾向:真打ち登場!(解説:岡村 毅 氏)-489

 Framingham Heart Study(以下フラミンガム心臓研究)から、認知症の発症率が時代とともに低下していることを示すデータが報告された。これまでも認知症発症率の低下を間接的に示す報告はあったが、本報告はフラミンガム心臓研究という古く巨大なコホート研究から得られた知見であり、信頼性は高い。 ただし、わが国においても同様にいえるかどうかに関しては、実証研究を待たねばならないだろう。また、仮に低下傾向であったとしても、今後認知症を持つ人の数は爆発的に増加すること(同時にすでに人口は減少局面にあり、若者はますます減ること)は決定的であり、著者らも考察の最後でいみじくも述べているが、狂喜乱舞するのではなく、「かすかな希望」をもたらす程度に考えたほうがよいだろう。 さて、フラミンガム心臓研究といえば、循環器領域で重大な結果を量産し続けるお化けスタディであるが、認知症に関しては、うつ症状の既往(若い頃のものでも)が認知症発症の危険因子という報告1)をまずは思い出す。近年は、ソーシャルネットワークの研究もよく目にする、つまり同性の友人が肥満だと肥満になるリスクが高まる2)とか、さらに幸福3)や孤独4)も凝集する(あるいは伝染する)とかいった類の報告である。ネットワークの先験性として、そもそも友人は遺伝的に近いのだ5)とまで報告されていた。素晴らしい研究だが、ここに至ると人間にとって自由とは何かと考えさせられてしまう。一方で批判もあるようで、BMJ誌は「同じ号で」批判の論文6)を載せており、「ダメな解析をしたら、ニキビ、身長、頭痛もソーシャルネットワークを通して伝染性しました(つまり、こんなのはでたらめです)」と述べていて、痛快な批判合戦である。まあ、私自身はこうした論文の解析方法は門外漢であり、以上はいち精神科医の単なる感想です。 フラミンガム心臓研究や、4大ジャーナルからは目が離せない。参考文献1)Saczynski JS, et al. Neurology. 2010;75:35-41.2)Christakis NA, et al. N Engl J Med. 2007;357:370-379.3)Fowler JH, et al. BMJ. 2008;337:a2338.4)Cacioppo JT, et al. J Pers Soc Psychol. 2009;97:977-991.5)Christakis NA, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2014;111:10796-10801.6)Cohen-Cole E, et al. BMJ. 2008;337:a2533.

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Vol. 4 No. 3 ACC/AHA 脂質管理ガイドラインコントロバーシー その経緯と現在の考え

荒井 秀典 氏国立長寿医療研究センターはじめに米国のNHLBI(National Heart, Lung, and Blood Institute)が中心となって作成したNCEP-ATP III(National Cholesterol Education Program-Adult Treatment Panel)のガイドラインが2001年に発表され、そのガイドラインが2004年に改訂された。心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患の予防のための脂質管理に関しては、本ガイドラインが作成された米国だけでなく、アジアを含め多くの国々で脂質管理のガイドラインとして使われてきたと思われる。2008年頃よりNCEP-ATP IIIの改訂版であるNCEP-ATP-IV作成に向けた作業が行われていたが、結局NHLBIはその作成を断念せざるをえなかったと聞く。その後、American College of Cardiology(ACC)とAmerican Heart Association(AHA)という米国を代表する循環器の学会が、NHLBIと共同で動脈硬化性心血管疾患(atherosclerotic cardiovascular disease:ASCVD)のリスクを減少させるための脂質異常症治療に関するガイドラインを2013年11月に発表した1)。そのガイドラインは、これまでのガイドラインから180度転換を図るものであった。ACC/AHAガイドラインは、脂質異常症に関する3つのcritical questions(CQ)に対する回答の形で作成されており、質の高いrandomized controlled trial(RCT)とメタ解析の論文を中心に系統的にレビューし、作成された。したがって、フォローアップ期間の短いRCTやRCTのサブ解析などは採用されていない。ACC/AHAガイドラインは、これまで数多く実施されてきたスタチンによるRCTおよびそのメタ解析の結果をもとに脂質管理の指針が出された結果となっている。このため、実臨床とは解離したガイドラインとの批判もある。メタ解析についてはCholesterol Treatment Trialists' collaborationなどのメタ解析の結果から2-4)、ハイリスク群における高用量スタチンを推奨するガイドラインとなっている。スタチンによるASCVD発症予防効果が期待できる4つのグループを同定設定されたCQに対してシステマティックレビューを行った結果、スタチン治療による多くの心血管イベント抑制を示すエビデンスおよびそのメタ解析より、治療が有益と判断される以下の4つの患者群が同定された。その4つの患者群とは、「ASCVDを有する患者(2次予防患者)」、「LDL-コレステロール(LDL-C)が190mg/dL以上の患者(続発性は除く)」、「LDL-Cが70~189mg/dLで40~75歳のASCVD既往のない糖尿病患者」、「LDL-Cが70~189mg/dL、ASCVD既往も糖尿病もない40~75歳で、10年間のASCVDリスクが7.5%以上(10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく)の患者」である。治療方針は、図に示すようなアルゴリズムに従って決定される。まず、2次予防で75歳以下の患者に対しては高用量スタチンによる治療を行うべきであり、76歳以上の患者には中用量スタチンによる治療を行う。1次予防においては、家族性高コレステロール血症など極めて冠動脈疾患の発症リスクの高い原発性高脂血症に対する治療の必要性から、LDL-Cが190mg/dL以上で21歳以上であれば、高用量スタチン治療を行う。わが国のガイドラインにおいてもLDL-Cが180mg/dL以上ある場合には家族性高コレステロール血症の可能性が強くなるため、スタチン治療を考慮すべきであるとしているが、家族性高コレステロール血症でなければ、高用量スタチン治療を推奨しているわけではない。次に40歳から75歳までの糖尿病患者は1型、2型を問わずスタチン治療が推奨されている。なかでも10年間のASCVD発症リスクが7.5%以上の患者においては高用量スタチンが、それ以外では中用量スタチンによる治療が推奨される。4つめのグループとしては、2次予防でもLDL-C 190mg/dL以上でも糖尿病でもなくても、10年のASCVD発症リスクが7.5%以上の群であり、この基準を満たす場合にはスタチン治療の適用となる(表)。このように、治療方針決定のための判断材料としては、10年間のASCVD発症リスクを用いる以外は理解しやすく、治療を行う医師は高用量か中用量のスタチンを選べばよいということで、decision makingが容易となっている。図 動脈硬化性疾患予防のためのスタチン治療の推奨画像を拡大する表 高用量、中用量スタチンの治療対象画像を拡大するLDL-Cおよびnon HDL-Cの管理目標値は設定しない本ガイドラインでは、LDL-Cやnon HDL-Cの管理目標値を設定せず、図に示すように高用量(50%以上のLDL-C低下)あるいは中用量(30~50%のLDL-C低下)のスタチンによる治療が推奨されている。その理由は特定のLDL-Cを目標として(例えば、130mg/dL未満と100mg/dL未満でどちらのグループでよりイベント発症が少ないかなど)比較をしたRCTがないからであると説明されている。わが国の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2012年版でも20~30%のLDL-C低下を目標とすることも考慮すると記載されており、LDL-Cの管理目標値を決定するに足るエビデンスは現状ではないことに関して異論はないが、日本の実臨床の場では管理目標値があったほうが治療しやすく、アドヒアランスを維持するためには管理目標値が必要であると考えている。したがって、動脈硬化性疾患予防ガイドラインにあるようにLDL-Cの管理目標値を考慮しながら治療にあたるというのがより実際的ではなかろうか。なお、動脈硬化性疾患予防ガイドラインではLDL-Cの管理目標を設定しているが、“脂質管理目標値は到達努力目標値である”ことも認識すべきである。すなわち、100%その値をクリアすることを求めているわけではない。また、ASCVD予防のための脂質低下治療に関しては、高用量、中用量のスタチンのみが推奨されているが、わが国の保険診療では認められていない用量が推奨されている。非常にリスクが高い場合には、高用量スタチンが選択されるであろうが、日本で認められている最大用量のスタチンを用いることになるであろう。さらに、スタチン以外の薬剤でASCVDの発症リスクを有意に減少させる、あるいはスタチンとの併用で相加的なリスク減少が得られるとのエビデンスは得られなかったとされているが、JELISやACCORD Lipidのサブ解析などのエビデンスも考慮し、わが国のガイドラインでは、スタチン以外の薬剤の使用についても妥当としている。1次予防のための包括的リスク評価本ガイドラインにおいては、米国における5つのコホート研究10年のASCVD発症リスクはPooled Cohort Equationsによる計算に基づく。年齢、性別、人種(アフリカ系アメリカ人かそれ以外)、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無により、その患者の10年間のASCVD発症リスクが計算される。また、生涯リスクも計算される。しかしながら、このリスクチャートをアジア人に適用することは、リスクの過大評価につながることは容易に想像できる。すでに欧米人の解析でも、NCEP-ATP IIIを適用した場合と比べて、スタチンの治療対象となる患者がかなり増加するとの試算もある。例えば、60歳以上の高齢者はほとんどがスタチンによる治療対象となるといわれている。このようにスタチン治療の適応範囲を広げることは、日本人における動脈硬化性疾患発症リスクを考えても現実的ではない。現在わが国のガイドラインでは、NIPPON DATA80を元にしたリスクチャートを用いており、これが日本人のリスク予測には妥当と考えている。ただ、死亡がエンドポイントとなっているため、今後は発症をエンドポイントとしたリスク評価手法を検討していく必要性はあろう。なおこのガイドラインでは、当然ではあるが、スタチン治療を開始する前に患者とのdiscussionが必要であると述べられており、正しい方向性である。安全性への配慮本ガイドラインでは、採用したRCTの成績に基づいて安全性に関する推奨を行っているが、特にスタチンによる糖尿病の新規発症、筋症(CK上昇を伴わないケースも多い)、認知機能低下などである。スタチンによる糖尿病の新規発症に関してはメタ解析の結果も発表されており、明らかであるが、スタチンによる心血管イベント抑制効果をしのぐものではない。また、メタ解析の結果からスタチンによる糖尿病の新規発症は用量依存性であり、スタチンの用量が少ない日本においては糖尿病の新規発症が欧米に比べ低いことが予想できる。スタチンによる糖尿病の新規発症のメカニズムは十分に明らかになっておらず、今後の検討課題である。バイオマーカーや非侵襲性検査の役割本ガイドラインにおいて、すでに述べたように年齢、性別、人種、総コレステロール、HDL-C、収縮期血圧、降圧剤内服の有無、喫煙の有無、糖尿病の有無が主要な危険因子であり、これらの危険因子により計算された10年間のASCVD発症リスクが7.5%未満の際に、高感度CRP、冠動脈のカルシウムスコア、ankle brachial index(ABI)などのバイオマーカーあるいは非侵襲性検査を用いることも考慮してよいとなっているが、そもそも慢性腎臓病(CKD)がリスクとしてカウントされておらず、日本でよく使用されている頸動脈エコーについてもエビデンスの欠如から採用されていない。頸動脈エコーについては、もちろん症例を選ぶべきではあろうが、治療の意欲やアドヒアランスを考えると有用な検査であろう。もちろん、エビデンスの蓄積をさらに進めるべきである。脂質異常症ガイドラインの今後の方向性本ガイドライン作成委員は、本ガイドラインがASCVD抑制のみにフォーカスしたガイドラインであり、脂質異常症の包括的なマネジメントのためのガイドラインではないことは認めている。したがって、今後実施すべき臨床試験について以下のように記載している。すなわち、高TG血症の治療はどうすべきか、non HDL-Cを治療ターゲットとできるか、アポB、Lp(a)、LDL粒子数などのマーカーがリスク評価に使えるか、治療方針決定のための最もよい非侵襲検査はなにか、生涯ASCVDリスクは使えるか、心不全や透析患者のなかでスタチンの恩恵を受けることができるのはどのようなグループか、スタチンによる新規糖尿病発症の長期的な影響はどうなのか、RCTから除外されているグループ(HIV患者、臓器移植患者)へのスタチンの効果はどうなのか、などである。いずれも重要なテーマであるが、RCTにそぐわないものもあり、観察研究などの結果もガイドラインに反映させるべきであろう。まとめ今回のACC/AHAガイドラインの特徴の1つは、脂質管理目標値を設定しないことである。ACC/AHAガイドラインにおける治療指針はスタチンによるRCTのみに基づいているため、LDL-Cを中心とした管理のみが強調されている点は注意が必要であり、レムナントなど他の脂質マーカーにも着目して、残余リスクの管理を考慮しながら治療にあたるべきである。今後、ガイドラインの作成は、ACC/AHAガイドラインのようにRCTのみをベースとしたものになる可能性が高いが、時間、コストなどの問題を考えると観察研究などのエビデンスもある程度は取り入れながら、ガイドラインの作成を行うことが現実的ではないかと思われる。文献1)Stone NJ et al. 2013 ACC/AHA guideline on the treatment of blood cholesterol to reduce atherosclerotic cardiovascular risk in adults: a report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Practice Guidelines. Circulation 2014; 129: S1-45.2)Baigent C et al. Efficacy and safety of cholesterol-lowering treatment: prospective meta-analysis of data from 90,056 participants in 14 randomised trials of statins. Lancet 2005; 366: 1267-1278.3)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaboration et al. Efficacy and safety of more intensive lowering of LDL cholesterol: a meta-analysis of data from 170,000 participants in 26 randomised trials. Lancet 2010; 376: 1670-1681.4)Cholesterol Treatment Trialists' (CTT) Collaborators et al. The effects of lowering LDL cholesterol with statin therapy in people at low risk of vascular disease: meta-analysis of individual data from 27 randomised trials. Lancet 2012; 380: 581-590.

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高校スポーツ界の皮膚感染症、初の全国疫学調査

 米国では高校のスポーツ選手、とくにレスリング選手において以前から、皮膚感染症が大きな問題であったが、これまで全国的に高校のスポーツ選手における皮膚感染症についての疫学を調査した報告はない。米国・ミシガン州立大学のKurt A. Ashack氏らは、便宜的標本を用いて解析し、皮膚感染症は高校のスポーツ関連有害事象の1つとして重要であることを明示した。著者は、「スポーツ関連皮膚感染症の疫学を理解することが、皮膚感染症の認識とエビデンスに基づく予防を促進するだろう」とまとめている。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2016年1月29日号の掲載報告。 研究グループは、High School Reporting Information Onlineにおける2009/2010から2013/2014までの便宜的標本を用い、報告されたスポーツ関連皮膚感染症について調査した。 主な結果は以下のとおり。・調査期間において、athlete-exposures(1人の選手が1回の練習または試合へ参加する単位。以下、AE)は2,085万8,781例で、474件の皮膚感染症が報告された。発生頻度は、2.27件/10万AEであった。・皮膚感染症の発現率が最も大きかったスポーツはレスリング(73.6%)で、次いでフットボール(17.9%)であった。・最も頻度の高い皮膚感染症は、細菌感染症(60.6%)と白癬感染症(28.4%)であった。・発現部位は頭部/顔面(25.3%)が最も多く、次いで前腕(12.7%)であった。・本研究の限界として、全米アスレチックトレーナー協会(NATA)に加入しているスポーツトレーナーがいる高校のみを対象としていることが挙げられる。ただし、データの報告者はスポーツトレーナーであり、データの質改善に寄与していた。

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らい性結節性紅斑〔ENL : erythema nodosum leprosum〕

1 疾患概要■ 概念・定義ハンセン病はらい菌(Mycobacterium leprae)による慢性抗酸菌感染症である。しかし、病気の経過中にらい菌の成分に対する免疫反応が亢進し、急性の炎症症状を呈することがあり、これをらい反応(lepra reaction)という1、2)。この反応によって組織障害、とくに末梢神経障害が起こり、後遺症となることがある。らい反応には2つの型、すなわち1型らい反応(type 1 reaction、同義語として境界反応〈borderline reaction〉、あるいはリバーサル反応〈reversal reaction:RR〉)と、2型らい反応(type 2 reaction、同義語としてらい性結節性紅斑〈erythema nodosum leprosum:ENL〉)がある。本項ではENLについて記載するが、理解を深めるためハンセン病についても適宜記載する2、3、4)。なお、ハンセン病、ENLは一般病院で保険診療として取り扱っている。■ 疫学ENLはハンセン病患者のうち、菌の多いタイプ(多菌型〈multibacillary:MB〉)に発症する(表1)。らい菌に対する生体の免疫応答を基にした分類であるRidley-Jopling分類では、LL型とBL型に発症する。ENLはMB患者の10~50%にみられる。発症はハンセン病治療前に1/3、1/3は治療6ヵ月以内(とくに治療数ヵ月後)に、残り1/3は6ヵ月後に起こるとされている。画像を拡大する■ 病因多菌型(MB)のLL型、BL型の患者では、らい菌に対する細胞性免疫能は低下しているが、十分なB細胞と形質細胞が存在するので、それらの細胞が活性化を受け、大量の菌抗原が大量の抗体を作る。この場合、過剰に作られた抗体と菌抗原と補体との間で免疫複合体(immune complex)が作られ、皮膚、神経、血管壁やほかの臓器に沈着し、多数の好中球浸潤を伴った炎症性反応を生む。TNF-αは、ENL発症で重要な役割を演じると考えられている。■ 症状ENLは、らい菌抗原があれば、すなわちLL型やBL型の病巣のある所では、皮膚、リンパ節、神経、関節、眼、睾丸など、どこでも急性炎症を起こしうる(表2)。画像を拡大する典型的なENLは、いわゆる発熱を伴って発症する。39~41℃ほどの高熱を発し、全身倦怠・関節痛が起きる。皮膚では一見正常の皮膚に、小豆大から拇指頭大までの圧痛を伴う硬結や隆起性紅斑を生ずる(図1)。画像を拡大する四肢によくみられるが半数の症例で顔面にも生じる。個疹は数日で消退するが、次々と皮疹が新生する。重症例では圧痛を伴う膿疱ができたり、膿瘍形成や、平坦な紅斑に囲まれた紫斑様皮疹、中心臍窩を有する結節性紅斑、水疱をもつもの、自壊して潰瘍を形成し瘢痕化するものもある。白斑や瘢痕を残すことがある。鼻腔粘膜のENLは、結節形成よりも浸潤性変化として、鼻閉、鼻汁、痂皮、鼻中隔の萎縮が起こる。病理組織学的には真皮から皮下脂肪織に多数の好中球の集積を認める。血管壁に多核球が浸潤し壊死性血管炎を認めたり、免疫組織化学染色で免疫複合体が沈着したりすることもある。末梢神経炎を起こし、耐え難い疼痛に苦しめられる。とくに尺骨神経の上方の部分に腫脹疼痛がよく起こり、ENLの経過中に手指などに変形を起こしてくる例も少なくない。神経炎だけで不眠・食欲減退・うつ状態が起こる。ENLの末梢神経炎が引き起こす機能障害は、急激に高度に現れるものではないが、目立たない形で徐々に障害が起こる。眼に急性の虹彩毛様体炎や上強膜炎を起こし、充血・眼痛・羞明・視力低下を来す。ENLを繰り返すと慢性の虹彩毛様体炎を起こし、虹彩癒着・小瞳孔の原因ともなり、続発性緑内障につながって失明の遠因になる。感覚神経障害性の難聴が起こる。精巣炎や陰嚢水腫を起こすが、その後の睾丸の萎縮の程度は、罹病期間とENLの既往歴に深く関係する。■ 予後通常良好である。しかし、軽度の炎症が数ヵ月から数年にわたって持続し、神経障害が少しずつ進行することもある。ENLは再発しやすいので、ENLを発症したときには長く経過観察を続けるようにする。ENLが起こっても、この反応自体が菌を殺したり、排除するためには役に立たないので、菌陰性化が進むわけではない。したがってハンセン病そのものの予後とは関係がない。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)現在、反応状態であるという診断は、主に臨床像で決められている。らい反応を診断するには、らい反応を疑うことから始まる。ハンセン病の診断がなされていなくてENLを主訴として初めて外来受診することもある。診断は臨床症状(表2)と検査所見(白血球数増加、好中球数増多、血沈亢進、CRP高値、血清TNF-α上昇など)、皮膚病理組織所見などを総合して行う。ENLとその他の主な皮膚疾患との鑑別を表3に示した。画像を拡大する3 治療 (治験中・研究中のものも含む)基本的な注意として安静を守らせる。仕事、学校などは無理のない程度に行う。飲酒を控え睡眠を十分にとる。多臓器症状を呈する場合には、入院安静も考慮する。ENLを軽症と重症に分類し、それに従って治療方針を立てる(表4)。なお、ハンセン病の治療については、ENLを起こしていても継続する。画像を拡大する軽症では、疼痛に対して非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)や鎮静薬などを適宜投与する。重症と診断すれば、積極的に反応を抑制する治療を行う。ENLにはサリドマイド(thalidomide)が著効する。投与したその日から、ENLの自覚症状や発熱などの全身症状が劇的に消退する。サリドマイドは、ENLの90%の患者で効果的であり、第1選択薬である。サリドマイドが効果的であることが、ENLの診断を確定する方法としても有用である。サリドマイドの使用法を図2に示した。「らい性結節性紅斑(ENL)に対するサリドマイド診療ガイドライン」が作成されているので、使用にあたっては熟読する5)。画像を拡大するサリドマイドは、ヒトにおいて催奇形性が確認されているので、安全管理手順を順守する。現在日本で保険適用になっているサリドマイドは、サレド(商品名)カプセルであり、「サリドマイド製剤安全管理手順(Thalidomide Education and Risk Management System:TERMS®)」を厳守する。何らかの事情でサリドマイド治療が困難な場合、ステロイド内服薬の全身投与も有効である。投与量は0.5~1mg/kg/日で開始する。減量方法は通常の漸減方法と同様であるが、とくに少量になってからは漸減の間隔を延ばすほうがよい。ステロイド内服薬の長期投与が必要なときは、クロファジミン(clofazimine:CLF、B663〈商品名:ランプレン〉)を併用するとよい。CLFはENLを抑制する効果がある。虹彩毛様体炎を抑制するともいわれている。したがって、ENLが生じた場合に、あるいは神経痛などの症状があり、らい反応も疑われるような時期にCLFの投与を行うことがある。しかし、サリドマイドやステロイド内服薬に認められるような明らかな抗ENL作用はないと考えられる。通常50mg/日を100mg/日(外国では最大200mg/日処方する例もある)にすることで、サリドマイドやステロイド内服薬の投与量の減少を試みる。ただし100mg/日の投与で色素沈着が顕著になり、まれに下痢・腹痛も起こる。ENLについては、何か自覚症状に気付いたら、すぐに受診させる。皮疹の発赤と腫脹、新しい皮疹、神経の急な腫脹、神経痛、羞明、発熱などのほかに、かすかな筋力の低下や感覚異常、時にはかゆみ、神経過敏にも注意深い観察をするように指導する。ハンセン病治療終了後に初めてのENLが起きることがあること、3年以内は皮膚症状も生じうること、それ以降も数年にわたって神経症状だけが出ることがあることも事前に説明しておく。ENLは、年余にわたり服薬指導の厳しいサリドマイド、副反応の起こりやすいステロイド内服薬を長期間内服し、さらに全身の痛みや発熱、失明の不安などもあるため、精神的なケア(カウンセリング、抗うつ薬投与など)も重要である。4 今後の展望ENLの治療薬であるサリドマイドは、ブラジル、日本、米国などでは使用されているが、患者の多い途上国では催奇形性の関係から使用されていない。安全で有効性の高い抗ENL薬の早期の開発が望まれる。5 主たる診療科皮膚科※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報国立感染症研究所 ハンセン病研究センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)WHOのハンセン病ページ(医療従事者向けのまとまった英文情報サイト)国立感染症研究所 感染症疫学センター(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)1)熊野公子. 日ハンセン病会誌.2002;71:3-29.2)石井則久著 中嶋 弘監修. 皮膚抗酸菌症テキスト.金原出版;2008.p.1-130.3)石井則久ほか責任編集. ハンセン病アトラス.金原出版;2006.p.1-70.4)後藤正道ほか. 日ハンセン病会誌.2013;82:143-184.5)石井則久ほか. 日ハンセン病会誌.2011;80:275-285.公開履歴初回2013年11月28日更新2016年03月01日

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