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日本初、TAVIの5年結果が明らかに:PREVAIL JAPAN

 日本における、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)の最初のピボタル研究であるPREVAIL JAPAN試験の5年結果が、Circulation Journal誌2017 March 17号に発表された。この結果はまた、大阪大学の澤 芳樹氏により、第81回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trialセッションにて発表された。 PREVAIL JAPAN試験には、日本の3施設から手術不能な重度大動脈弁狭窄症(AS)患者64例が登録された。患者の平均年齢は84.3歳、女性65.6%、STSスコア9.0であった。 経大腿動脈アプローチ(TF)および心尖部アプローチ(TA)は、それぞれ37例の患者および27例であった。試験にはSAPIEN XTの23mmと26mmのみが用いられた。  主な結果は以下のとおり。・5年間の全死亡率は52.7%、TFでは51.3%、TAでは56.3%であった。 ・5年間の全脳卒中リスクは15.8%、TFでは8.9%、TAでは25.5%であった。・5年間の主要心血管脳有害事象(MACCE)は58.0%、TFでは51.3%、TAでは69.2%であった。・術後、大動脈弁面積(AVA)は有意に増加(p<0.001)、圧較差(PG)は有意に減少(p<0.001)し、追跡期間中安定していた。 ・1週間時点の大動脈逆流症(AR)と全死亡増加との相関はみられず、AR軽度(+2)以上の5年後の全死亡率は69.1%に対し、ARなし(0)と少量(+)の全死亡率は48.3%であった(p=0.184)。・STSスコアによる死亡率は4未満で20.0%、4~8で45.3%、8超では65.0%であった。

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認知機能低下が懸念されるスタチン、運動併用が有効か

 スタチン使用と認知機能低下との関連が懸念されている。熊本大学循環器内科の研究グループでは、既に軽度の認知機能低下のある冠動脈疾患(CAD)患者におけるパイロット研究から、スタチンと定期的な運動の併用が認知機能障害の改善に役立つ可能性を報告した。Internal medicine誌オンライン版2017年3月17日号に掲載。 軽度の認知機能低下を伴うCAD患者43例を連続して登録し、スタチン治療と共に院内で週1回の有酸素運動を5ヵ月間実施した。血清脂質および運動能力を測定し、また、mini-mental state examination(MMSE)を用いて認知機能を評価した。 主な結果は以下のとおり。・軽度の認知機能低下を伴うCAD患者において、治療後、LDLコレステロール値が有意に減少し、最大運動能力(負荷)が有意に増加した。・スタチンと運動の併用療法により、コホート全体でMMSEスコア中央値(範囲)が24(22~25)から25(23~27)に有意に増加した(p<0.01)。・BMIの変化とMMSEスコアの変化との間に有意な負の相関がみられた。・治療後、BMIが減少した群ではMMSEスコアが有意に改善したが、BMIが増加した群では改善しなかった。・試験開始時にすでにスタチンを投与されていた患者は、スタチンを投与されていなかった患者よりも有意にMMSEスコアが改善した。・65歳以上・性別・糖尿病の有無で調整された多変量ロジスティック回帰分析において、 スタチンと運動の併用療法期間におけるBMI減少はMMSEスコア上昇と有意に相関していた(オッズ比:4.57、95%信頼区間:1.05~20.0、p<0.05)。

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iFRガイドPCI、FFRガイドに比べ非劣性/NEJM

 安定狭心症または急性冠症候群(ACS)の患者に対し、iFR(instantaneous wave-free ratio:瞬時血流予備量比)ガイド下の血行再建術は、FFR(fractional flow reserve:冠血流予備量比)ガイド下に比べ、術後12ヵ月以内の主要有害心イベント(MACE)発生リスクは非劣性であることが示された。スウェーデン・ルンド大学のMatthias Gotberg氏らが、2,037例の患者を対象に行った無作為化比較試験の結果、明らかにした。これまでに、小規模試験でiFRとFFRの診断精度が同等であることは明らかになっているものの、iFRとFFRガイド下での血行再建術に関する臨床アウトカムについては不明であった。NEJM誌オンライン版2017年3月18日号掲載の報告。12ヵ月以内のMACE発生率を比較 研究グループは、Swedish Coronary Angiography and Angioplasty Registry(SCAAR)から、安定狭心症またはACSで、冠状動脈狭窄の生理学的ガイド下評価が適応の2,037例を対象に、非盲検多施設共同無作為化比較試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、一方の群にはiFRガイド下で、もう一方にはFFRガイド下で、それぞれ血行再建術を実施した。 主要エンドポイントは、全死因死亡・非致死的心筋梗塞・術後12ヵ月以内の予定外の血行再建術の複合だった。 術中の胸部不快感はiFR群で大幅に減少 主要エンドポイントの発生は、iFR群1,012例中68例(6.7%)、FFR群の1,007例中61例(6.1%)であり、イベント発生率差の95%信頼区間の上限値が、非劣性マージンとして事前に規定した3.2ポイント以内で、iFR群の非劣性が示された(イベント発生率差:0.7ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.5~2.8、非劣性のp=0.007、ハザード比:1.12、95%CI:0.79~1.58、p=0.53)。この結果は、主なサブグループの検討でも同様に認められた。また、心筋梗塞、標的血管血行再建術、再狭窄、ステント血栓症の発生率も、両群で同等だった。 なお、術中に胸部不快感を訴えた患者の割合は、FFR群が68.3%だったのに対し、iFR群では3.0%と有意に低率だった(p<0.001)。

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境界性パーソナリティ障害併発、自殺に対する影響は

 最近の研究によると、精神病的体験と自殺行動との間には強い関連があることが報告されている。しかし、境界性パーソナリティ障害(BPD)は一般的な精神疾患と頻繁に併発し、再発の自殺行動や精神病的体験に関連しているにもかかわらず、この関係におけるBPDの役割について研究したデータはない。アイルランド王立外科医学院のI Kelleher氏らは、BPDや一般的な精神疾患との相互関係を含む、精神病的体験と自殺企図との関連を調査した。Acta psychiatrica Scandinavica誌2017年3月号の報告。 2007年の層別化されたイギリス世帯の多段確立サンプルである成人精神医学的罹患率調査より、16歳以上の国民サンプルを用いて行った。対象者の、一般的な精神疾患、BPD(臨床的および無症候)、自殺行動、精神病的体験を評価した。 主な結果は以下のとおり。・全サンプルの約4%(323例)が精神病的体験を有していた。・精神病的体験は、自殺企図のオッズ増加と関連していた。 ●BPD(OR:2.23、95%CI:1.03~4.85) ●一般的な精神疾患あり(OR:2.47、95%CI:1.37~4.43) ●一般的な精神疾患なし(OR:3.99、95%CI:2.47~6.43) ●BPD、一般的な精神疾患どちらもなし(OR:3.20、95%CI:1.71~5.98) 著者らは「精神病的体験は、精神病理の有無にかかわらず、自殺行動の高オッズと関連していた。この関係は、臨床的または無症候BPDでは説明できない」としている。関連医療ニュース 日本成人の自殺予防に有効なスクリーニング介入:青森県立保健大 自殺企図後も生き続けるためのプロセス 双極性障害の自殺企図、“だれ”よりも“いつ”がポイント

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夜間高血圧に対するARB/CCB併用の効果をICTモニタリングで証明~日本循環器学会

 夜間血圧の上昇は心血管イベントの増加につながることから、近年、夜間血圧が注目されている。自治医科大学の星出 聡氏は、2017年3月17~19日に行われた第81回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trialセッションにおいて、情報通信技術(ICT)による夜間血圧モニタリングによって、コントロール不能な夜間高血圧症に対する2パターンのアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)併用療法を評価したNOCTURNE試験の結果を報告した。この結果は、Circulation Journal誌に同時掲載された。 患者はARB療法(イルベサルタン100mg/日)を行ってもベースライン時の夜間血圧が120/70mmHg以上の患者411例。患者はARB/カルシウム拮抗薬(CCB)併用群(イルベサルタン100mg+アムロジピン5mg)とARB/利尿薬併用群(イルベサルタン100mg+トリクロルメチアジド1mg)に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、試験開始4週後(ベースライン)と12週後の夜間家庭血圧の変化である。 主な結果は以下のとおり。・夜間収縮期血圧は、ARB/CCB群は128.3mmHgから113.9mmHgに(p<0.0001)、 ARB/利尿薬群は128.3から117.9mmHg(p<0.0001)に、両群とも有意に低下した。・両群間の変化を比較すると、ARB/CCB群-14.4 mmHg、 ARB/利尿薬群-10.5mmHgと、ARB/CCB群で有意に低下していた(p<0.0001)。・サブグループ解析では、糖尿病、慢性腎臓病、高齢者(65歳超)を除き、ARB/CCB群で優れていた。・ICTベースの夜間家庭血圧モニタリングは、睡眠中も患者の客観的な夜間血圧測定を把握することができ、臨床試験に実用可能であった。

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チョコレート好きな人は脳卒中になりにくい!?

 チョコレート摂取は心臓血管に有益な効果をもたらす可能性があるが、前向きコホート研究でのエビデンスは少ない。今回、わが国の大規模コホート研究であるJPHC study(主任研究者:国立がん研究センター 津金昌一郎氏)において、チョコレート摂取と脳卒中リスクの関連を前向きに調査したところ、女性でのみ有意な逆相関を支持する結果が報告された。Atherosclerosis誌オンライン版2017年3月4日号に掲載。 本研究では、1995年および1998年のベースライン時に、心血管疾患・糖尿病・がんではなかった44~76歳の男性3万8,182人と女性4万6,415人を、それぞれ2009年および2010年末まで追跡調査した。138種類の飲食品を含む自記式食物摂取頻度調査法を用いて、各参加者のチョコレート摂取に関するデータを入手した。また、Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、チョコレート摂取に関連する脳卒中のハザード比(HR)を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中央値12.9年で、脳卒中の発症が3,558件にみられた(脳梗塞2,146件、出血性脳卒中1,396件)。・年齢・BMI・ライフスタイル・食事摂取量・他の危険因子の調整後、女性において、チョコレート摂取が脳卒中リスク低下に有意に関連していた(HR:0.84、95%CI:0.71~0.99)。・男性における関連は有意ではなかった(HR:0.94、95%CI:0.80~1.10)。・上記の関連性は、男女とも、脳卒中のサブタイプで同様であった。・しかしながら、残存交絡は除外できなかった。

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冠動脈疾患と脳卒中における危険因子の違い

 冠動脈疾患(CHD)と脳卒中には共通のリスク因子があるが、CHDと脳卒中との関連の大きさや向きが異なる因子がある。藤田保健衛生大学の松永 眞章氏らは、アジア人におけるCHDと脳卒中による死亡において、各リスク因子による影響が異なるかどうかを、日本人の大規模コホート研究であるJACC(Japan Collaborative Cohort)Studyで検討した。その結果、高血圧との関連は一致したが、喫煙や糖尿病など他のリスク因子については一致しなかった。Atherosclerosis誌オンライン版2017年3月6日号に掲載。 本研究は、ベースライン時にがん、CHD、脳卒中の既往がない40~79歳の10万4,910人について、1988~2009年に追跡調査した。競合リスク分析を用いて、各リスク因子と2つのエンドポイント(CHDと脳卒中)との関連の違いを調べた。また、各リスク因子の集団での影響を推定するために、これらのエンドポイントにおける人口寄与割合も計算した。 主な結果は以下のとおり。・中央値19.1年間の追跡期間中、CHDにより1,554人が死亡し、脳卒中により3,163人が死亡した。・高血圧とCHDとの関連性は、大きさ・向きとも脳卒中と類似していた(多変量調整ハザード比におけるCHD vs.脳卒中:男性 1.63 vs.1.73、女性 1.70 vs.1.66)。・これらの関連の大きさは、喫煙(同:男性 1.95 vs.1.23、女性2.45 vs.1.35)および糖尿病(同:男性 1.49 vs.1.09、女性 2.08 vs.1.39)では異なっていた。・人口寄与割合は、CHDにおいては男性では喫煙、女性では高血圧が最も高く、脳卒中においては男女とも高血圧が最も高かった。

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日本人の心房細動患者に適した脳梗塞リスク評価~日本循環器学会

 日本人の非弁膜症性心房細動(AF)患者の心原性脳塞栓症リスク評価において、脳卒中の既往、高齢、高血圧、持続性心房細動、低BMIの5つの因子による層別化が、従来のCHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアによる層別化よりリスク予測能が高いことが報告された。本研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の支援による、層別化指標の確立を目的とした共同研究であり、第81回日本循環器学会学術集会(3月17~19日、金沢市)のLate Breaking Cohort Studiesセッションで弘前大学の奥村 謙氏が発表した。 非弁膜症性AF患者における心原性脳塞栓症リスクの層別化は 従来、CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアが用いられており、わが国のガイドラインでも推奨されている。一方、伏見AFレジストリでは、CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアの危険因子がすべてリスクとはならないということや、体重50kg以下がリスクとなることが示されている。したがって、CHADS2スコアやCHA2DS2-VAScスコアを日本人にそのまま当てはめることは、必ずしも適切ではないということが示唆される。 本研究では、5つの大規模心房細動レジストリ(J-RHYTHM Registry、伏見AFレジストリ、心研データベース、慶應KiCS-AFレジストリ、北陸plus心房細動登録研究)のデータを統合した。非弁膜症性AF患者1万2,127例について、登録時の観察項目・リスク項目を単変量解析後、ステップワイズ法、Cox比例ハザード法を用いて多変量解析し、心原性脳塞栓症における独立した危険因子を検討した。また、各因子についてハザード比に基づいてスコアを付与し、その合計によるリスク評価が実際にCHADS2スコアより優れているかを検討した。 患者の平均年齢は70.1±11歳、平均CHADS2スコアは1.7±1.3であり、74%の患者に抗凝固療法が施行されていた。脳梗塞発症は2万267人年で226例(1.1%)に認められた。 各因子の脳梗塞発症について単変量解析を行ったところ、うっ血性心不全、高血圧、高齢、脳卒中の既往、持続性AF、高クレアチニン、低BMI、低ヘモグロビン、低ALTで有意であった。さらに多変量解析で、脳卒中の既往(ハザード比2.79、95%CI 2.05~3.80、p<0.001)、年齢(75~84歳:1.65、1.23~2.22、p=0.001、85歳以上:2.26、1.44~3.55、p<0.001)、高血圧(1.74、1.20~2.52、p=0.003)、持続性AF(1.65、1.23~2.23、p=0.001)、BMI 18.5未満(1.53、1.02~2.30、p=0.04)が脳梗塞の独立した危険因子ということがわかった。 各因子のスコアはハザード比に基づいて、脳卒中の既往を10点、75~84歳を5点、85歳以上を8点、高血圧を6点、持続性心房細動を5点、BMI 18.5未満を4点とした。スコアの合計を0~4点、5~12点、13~16点、17~33点で層別化し、カプランマイヤーによる脳梗塞累積発症率をみたところ、0~4点の群を対照として有意にリスクが上昇することが示され、C-statisticは0.669であった。抗凝固療法なしの群ではこの結果がより明らかで、C-statisticが0.691と、CHADS2スコアでの0.631、CHA2DS2-VAScスコアでの0.581より高く、リスク評価法として予測能が高まったと言える。 今回の結果から、日本人の非弁膜症性AF患者の心原性脳塞栓症リスク評価として、今回の5つの因子による評価法が従来のリスク評価法より有用と考えられる。しかし、今回のC-statisticの値はリスク評価法としてはまだそれほど高いわけではなく、客観的指標(BNPレベル、心エコーの値など)を追加することでさらに予測能が高まるのではないかと奥村氏らは推察している。

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人工膝関節全置換術後の入院リハビリは必要か/JAMA

 人工膝関節全置換術(TKA)後に入院リハビリテーションを行っても、最初から在宅プログラムを開始した場合に比べ、26週後のモビリティは改善しないことが、オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のMark A Buhagiar氏らが実施したHIHO試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年3月14日号に掲載された。入院プログラムなどの形式化されたリハビリテーションプログラムは、TKAを受けた患者の至適な回復法と見なされることが多いが、外来や自宅でのプログラムとの比較は行われていないという。観察群を含む無作為化試験でモビリティを評価 HIHO試験は、TKAを受けた患者を対象に、10日間の入院リハビリテーションを行った後、監視型在宅ベースプログラムを開始するアプローチが、監視型在宅ベースプログラム単独と比較して、モビリティ、身体機能、QOLを改善するかを検証する非無作為化観察群を含む無作為化臨床試験である(HCF Research Foundationなどの助成による)。 2012年7月~2015年12月に、オーストラリア、シドニー市の2つの大規模な関節形成術専門施設でTKAを受けた骨関節炎患者165例が無作為割り付けの対象となり、入院+在宅群に81例、在宅単独群には84例が割り付けられた。観察群(自分の意思で監視型在宅ベースプログラムを選択した患者)には87例が含まれた。 主要評価項目は、術後26週時の6分間歩行試験に基づくモビリティとした。副次評価項目には、患者報告による疼痛、身体機能の尺度である膝関節疾患患者評価尺度(Oxford Knee Score:OKS、0~48点、点数が高いほど良好、臨床的に意義のある最小変化量:5点)、QOLの評価尺度であるEQ-5Dの視覚アナログスケール(EQ-5D VAS、0~100点、点数が高いほど良好、臨床的に意義のある最小変化量:23点)などが含まれた。6分間歩行試験:402.7 vs.403.7 vs.389.0m 無作為割り付けされた患者165例(ITT集団)のベースラインの平均年齢は66.9(SD 8.4)歳、女性が68%を占めた。平均BMIは34.7(SD 7)であった。主要評価項目のデータが得られたのは、入院+在宅群が79例(98%)、在宅単独群は80例(95%)だった。 26週時の6分間歩行試験は、入院+在宅群が402.7m、在宅単独群は403.7mであり、有意な差は認めなかった(平均差:-1.01、95%信頼区間[CI]:-25.56~23.55)。 26週時のOKSは、入院+在宅群が36.9点、在宅単独群は34.8点(平均差:2.06、95%CI:-0.59~4.71)、EQ-5D VASはそれぞれ78.8点、80.2点(平均差:-1.41、95%CI:-6.42~3.60)であり、いずれも有意な差はなかった。他の副次評価項目も、両群で同等だった。 また、観察群の6分間歩行距離は389.0mであり、在宅単独群との間に有意な差はなかった(平均差:-17.00、95%CI:-41.27~7.28)。副次評価項目も同様の結果であった。 合併症のデータにも、入院+在宅群と在宅単独群に差はなく、無作為割り付け患者で最も頻度の高い有害事象は麻酔下の処置を要する関節のこわばり(stiffness)であった(入院+在宅群:4.9%、在宅単独群:3.6%)。 事後解析では、患者評価による満足度が入院+在宅群で有意に高かった(p=0.004)が、職場復帰までの期間に有意な差はなかった(入院+在宅群:7.57週、在宅単独群:7.80週、平均差:-0.23、95%CI:-3.76~3.30)。 著者は、「優越性を示す知見が得られなかったため、費用対効果の解析は行わなかったが、最近のエビデンスでは、TKA後に入院リハビリテーションを行うと費用対効果は低下することが示唆されている」としている。

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双極性障害に対する抗けいれん薬の使用は、自殺リスク要因か

 躁病または混合エピソードの治療を開始する患者における、自殺企図の危険因子について、フランス・パリ・ディドゥロ大学のF Bellivier氏らが検討を行った。Acta psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2017年2月12日号の報告。 欧州14ヵ国から募集された躁病または混合型の双極I型障害患者3,390例を対象に、2年間のプロスペクティブ観察研究を行った。新規自殺企図イベントに関連した患者および治療因子の特定には、ポアソン回帰モデルを用いた。2つの多変量モデルが構築され、過去の自殺企図の有無について層別化された。 主な結果は以下のとおり。・自殺企図は302件抽出された。ピーク発生率は、治療開始12週以内であった。・自殺企図歴を有する患者における、自殺企図の再燃リスクと関連する要因は以下のとおりであった。 ●初回躁病エピソード発現年齢の若さ(p=0.03) ●ラピッドサイクリング(p<0.001) ●アルコール使用障害、物質使用障害の病歴(p<0.001) ●向精神薬の処方数(p<0.001) ●試験開始時の抗けいれん薬の使用(p<0.001)・自殺企図歴のない患者における、自殺企図の発生リスクと関連する要因は以下のとおりであった。 ●ラピッドサイクリング(p=0.02) ●アルコール使用障害の病歴(p=0.02) ●試験開始時の抗けいれん薬の使用(p=0.002) 著者らは「発症して間もない躁病または混合エピソードを有する、双極性障害患者に対する抗けいれん薬の使用は、自殺企図リスクを増加させる可能性がある。これが原因であるかどうかを明確にするためにも、さらなる双極性障害の研究において検討する必要がある」としている。関連医療ニュース 双極性障害の自殺企図、“だれ”よりも“いつ”がポイント 自殺企図後も生き続けるためのプロセス 重度な精神疾患+物質使用障害、自殺リスクへの影響

7771.

感冒薬による薬疹の重篤化に特定の遺伝子が関与

 感冒薬によるスティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死症(CM-SJS/TEN)において、重篤な眼合併症の発症には特定の遺伝的素因が関与していることが示された。ブラジル・サンパウロ連邦大学のTais H Wakamatsu氏らによる研究の結果で、ブラジル人ではHLA-A*66:01が重篤な眼合併症を伴うCM-SJS/TENのマーカーであることが示唆されたという。また、HLA-B*44:03とHLA-C*12:03はヨーロッパ系ブラジル人においてのみ、HLA-A*11:01は疾患抵抗性のマーカーである可能性も示された。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年3月9日号掲載の報告。 研究グループは、重篤な眼合併症を伴うCM-SJS/TENとヒト白血球抗原(HLA)アレルとの関連を調べる目的で、2013年2月8日~2014年8月29日に症例対照研究を行った。 対象は、ブラジル人の重篤な眼合併症を伴うSJS/TEN患者74例(このうち39例がCM-SJS/TEN患者)、ならびに健康な対照133例。問診にて可能性がある病因について確認するとともに、HLAクラスI遺伝子(HLA-A、HLA-B、HLA-C)の解析を行い、重篤な眼合併症を伴うCM-SJS/TENに関する遺伝的素因を同定した。主な結果は以下のとおり。・74例の患者背景は、男性32例(43%)、平均(±標準偏差[SD])年齢36.01±15.42歳であった。・HLA-A*66:01(オッズ比[OR]:24.0、95%信頼区間[CI]:2.79~206.0、p<0.001)、HLA-B*44:03(2.71、1.11~6.65、p=0.04)、およびHLA-C*12:03(5.6、1.67~18.80、p=0.006)は、ブラジル人の重篤な眼合併症を伴うCM-SJS/TENと関連していた。・HLA-A*11:01(OR:0.074、95%CI:0.004~1.26、p=0.008)、HLA-B*08:01(0.15、0.02~1.15、p=0.048)、およびHLA-B*51:01(0.23、0.05~1.03、p=0.045)は、ブラジル人の重篤な眼合併症を伴うCM-SJS/TENと負の関連を認めた(39例中、パルド系19例/ヨーロッパ系16例、男性14例/女性25例、平均35.2±14.4歳:対照133例中、パルド系66例/ヨーロッパ系61例、男性55例/女性78例、41.2±12.9歳)。・HLA遺伝子座で多重検定補正を行うと、HLA-A*66:01およびHLA-C*12:03の関連が示された。・パルド系かヨーロッパ系かに分けて遺伝子座を検討すると、HLA-A*66:01は、いずれの集団においても、重篤な眼合併症を伴うCM-SJS/TENと関連していた(パルド系;OR:12.2、95%CI:1.19~125.0、p=0.03、ヨーロッパ系;21.2、0.97~465.0、p=0.04)。・HLA-B*44:03(OR:5.50、95%CI:1.47~20.50、p=0.01)およびHLA-C*12:03(8.79、1.83~42.20、p=0.008)は、ヨーロッパ系集団でのみ関連が認められた。

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Core Valve、日本人重度ASにおける中間成績~日本循環器学会

 大阪大学の鳥飼慶氏らは、2017年3月17~19日に行われた第81回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trialセッションにおいて、高リスクの重度大動脈弁狭窄症(AS)における自己拡張型大動脈置換弁Core Valveの前向き多施設研究CoreValve Japan試験の中間成績を報告した。この結果は、Circulation Journal誌に同時掲載された。 CoreValve Japan試験は26mm/29mm弁のコホートと、23mm弁の2つのコホートで行われた。26mm/29mm弁のコホートには55例が、23mm 弁は1年後に20例の患者が登録された。 CoreValve Japan試験の主な結果は以下のとおり。26mm/29mmコホート・患者の平均年齢は82.5歳、男性30.9%、NYHAクラスIII/IV 100%、STSスコアは8.0であった。・3年間の全死亡率は32.6%で、重度大脳卒中は15.4%であった。・平均圧力勾配(MPG)、有効オリフィス面積(EOA)、NYHAクラスは持続的改善を示した。・3年目の弁周囲逆流(PVR)は、なし・少量54.3%、軽度40.0%、中等度5.7%、重度0%であった。23mmコホート・患者の平均年齢は81.0歳、男性5.0%、NYHAクラスIII/IV 100%、STSスコアは7.0%であった。・2年間の全死亡率は5.0%、重度脳卒中は5.0%であった。 ・MPG、EOA、およびNYHAクラスは持続的改善を示した。 ・2年間のPVRは、なし・少量50.0%、軽度44.4%、中等度5.6%、重度0%であった。 鳥飼 慶氏はプレスインタビューで、今まで海外では23mm弁のデータはなかったが、今回の試験でこの小さなサイズでも弁口面積が確保され、大きな弁径と変わりないデータが初めて示されたことは世界的にも大きな知見であると述べた。

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心房細動検出機能を搭載したシングルチャンバ植込みICDを販売開始:メドトロニック

 日本メドトロニック株式会社(本社:東京都港区、 代表取締役社長:島田隆)は、 2017年3月1日、 心房細動(AF)検出の診断機能を搭載したシングルチャンバの植込み型除細動器(以下ICD)「Visia AF MRI ICDシリーズ(ヴィジア エーエフ エムアールアイ アイシーディーシリーズ)」(以下「Visia AF」)の販売を開始した。 Visia AFは、 シングルチャンバのICDに心房細動検出の診断機能を搭載した製品である。 脳梗塞の主な原因の1つである心原性脳塞栓症のうち70%は心房細動が原因といわれており、 脳梗塞の発症予防は重要である。Visia AFでは、 従来のICDのシステムに心房細動検出のアルゴリズムを追加し、 従来製品からの除細動リードの構造を変更することなく長期の信頼性を維持しながら、 心房細動の把握を可能にした。 Visia AFの心房細動検出アルゴリズムは、 感度95.0%、 特異度99.6%で心房細動を検出することができると論文において報告されている。 Visia AFの特徴・T波オーバーセンシングを回避できるなど、 不適切作動防止のための独自のアルゴリズムSmartShock(スマートショック)テクノロジー2.0を搭載。不適切作動の頻度を年間2.5%まで低減し、 高い精度で致死性不整脈を検出することを可能した。 ・条件付きMRI対応テクノロジーSureScan(シュアスキャン)を採用している。 また、 MRI装置が1.5テスラおよび3テスラという条件下で、 全身のどの部位についても、 MRI撮像を可能とした。 ・体の表面と同じように曲線を描き、 植込み部の圧迫を軽減する滑らかなデバイス形状PhysioCurve(フィジオカーブ)デザイン、 高い耐久性を実現したSprint Quattro(スプリント クアトロ)ICDリード(販売名:Sprint クアトロ MRI スクリューインリード)などで低侵襲性を実現している。

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短期放射線+テモゾロミド、高齢膠芽腫患者の生存を延長/NEJM

 高齢の膠芽腫患者に対する短期放射線療法+テモゾロミドは、短期放射線療法単独と比較して生存期間を延長させることが、カナダ・オデットがんセンターのJames R Perry氏らによる、65歳以上の初発膠芽腫患者を対象とした第III相無作為化試験の結果、明らかになった。膠芽腫は高齢が予後不良因子となる。これまでの研究では、標準放射線療法(60Gy/6週間)+テモゾロミド追加投与により、70歳以下の患者で生存期間の延長が示されていた。一方、高齢患者には短期放射線療法が用いられることも少なくないが、短期放射線療法+テモゾロミド併用の有効性は不明であった。NEJM誌2017年3月16日号掲載の報告。65歳以上の初発膠芽腫患者約600例で、短期照射単独とテモゾロミド併用を比較 研究グループは、新たに膠芽腫(WHO grade IV)と診断された65歳以上の高齢患者562例(年齢中央値73歳、範囲65~90歳)を、放射線療法(40Gy/15分割/3週間)単独群と、放射線療法+テモゾロミド(75mg/m2/日を毎日、21日間)同時併用群(テモゾロミド併用群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要評価項目は全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)で、有効性に関してはintention-to-treat解析を実施した。テモゾロミド併用により、OS、PFSのいずれも延長 OS中央値は、放射線療法単独群7.6ヵ月に対し、テモゾロミド併用群は9.3ヵ月と有意な延長が認められた(死亡のハザード比[HR]:0.67、95%信頼区間[CI]:0.56~0.80、p<0.001)。同様にPFS中央値も有意に延長した(それぞれ3.9ヵ月と5.3ヵ月、疾患進行または死亡のHR:0.50、95%CI:0.41~0.60、p<0.001)。 O6-メチルグアニン-DNA メチルトランスフェラーゼ(MGMT)遺伝子のメチル化の有無別に検討すると、OS中央値は、メチル化症例165例では放射線療法単独群7.7ヵ月、テモゾロミド併用群13.5ヵ月(死亡のHR:0.53、95%CI:0.38~0.73、p<0.001)、非メチル化症例189例ではそれぞれ7.9ヵ月と10.0ヵ月(死亡のHR:0.75、95%CI:0.56~1.01、p=0.055、交互作用のp=0.08)であった。生活の質(QOL)は両群で類似していた。

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PCI後のDAPT期間決定に有用な新規出血リスクスコア/Lancet

 スイス・ベルン大学のFrancesco Costa氏らは、簡易な5項目(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)を用いる新しい出血リスクスコア「PRECISE-DAPTスコア」を開発し、検証の結果、このスコアが抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)中の院外での出血を予測する標準化ツールとなりうることを報告した。著者は、「包括的に臨床評価を行う状況において、このツールはDAPT期間を臨床的に決める支援をすることができるだろう」とまとめている。アスピリン+P2Y12阻害薬によるDAPTは、PCI後の虚血イベントを予防する一方で、出血リスクを高める。ガイドラインでは、治療期間を選択する前に出血リスクの高さを評価することを推奨しているが、そのための標準化ツールはこれまでなかった。Lancet誌2017年3月11日号掲載の報告。約1万5,000例のデータで新たな出血リスクスコアを開発し、検証 研究グループは、それぞれ独立したイベント評価が行われている多施設無作為化試験8件から、PCI後にDAPT(主にアスピリン+クロピドグレル、経口抗凝固薬の適応なし)を受けた患者合計1万4,963例の個人レベルのデータを用い、プール解析を行った。解析にはCox比例ハザードモデルを使用し、院外出血(TIMI出血基準の大出血/小出血)の予測因子を試験で層別化して特定し、数値的出血リスクスコアを開発した。 新しいスコアの予測性能は、予測因子を導き出した抽出コホートで評価し、PLATelet inhibition and patient Outcomes(PLATO)試験(8,595例)およびBernPCI registry(6,172例)におけるPCI施行患者群(検証コホート)で評価した。また、異なるDAPT期間に無作為化された患者(10,081例)において、新しいスコアの四分位数でベースラインの出血リスクを4つに分類し(高、中、低、最低リスク)、長期治療(12~24ヵ月)または短期治療(3~6ヵ月)の出血/虚血への影響を評価した。5項目から成るPRECISE-DAPTスコア、院外出血の予測性能あり 開発したPRECISE-DAPTスコア(年齢、クレアチニンクリアランス、ヘモグロビン、白血球数、特発性出血の既往)は、院外でのTIMI大/小出血に関する予測性能を示すC統計値が、抽出コホートで0.73(95%信頼区間[CI]:0.61~0.85)、検証コホートのPLATO試験で0.70(95%CI:0.65~0.74)、BernPCI registryで0.66(95%CI:0.61~0.71)であった。 長期DAPTは、高リスク患者(スコア≧25)では出血を有意に増加させたが、低リスク患者では増加させなかった(相互作用のp=0.007)。一方、虚血イベントの予防に関して有意な有用性が認められたのは、低リスク患者群のみであった。 著者は、今回のモデルにはフレイル(高齢者の虚弱)など新しい出血予測因子が欠けている可能性を挙げ、スコアの予測性能を改善するためさらなる研究が必要だと述べている。

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HER2陽性早期乳がんに対するトラスツズマブ投与は1年間が依然として標準である(解説:下井 辰徳 氏)-655

 トラスツズマブは、増殖因子であるHER2をターゲットとしたモノクローナル抗体薬である。早期乳がん患者全体の15~20%を占めるとされるHER2陽性乳がん患者に対しては、周術期治療にトラスツズマブを追加することで無病生存期間(DFS)、全生存期間(OS)ともに改善できることが、いくつものランダム化比較試験の結果で示されている。術後トラスツズマブの追加に関しては、その投与期間や投与スケジュールは試験により異なるものの、コクランにおけるメタアナリシスでは、DFS(HR:0.60、95%CI:0.50~0.71)、OS(HR:0.66、95%CI:0.57~0.77)ともに改善することが示されている1)。このように、現在の乳がん診療においてトラスツズマブは欠くことができない治療薬の1つとなっている。 術後トラスツズマブ追加について検証した試験の多くは、トラスツズマブの投与期間は1年とされていたが、むしろ至適投与期間について検討した試験は多くはない。とくに1年以上(2年間)と1年間投与とを直接比較した試験としては、本論文で報告されているHERA試験が唯一である。HERA試験はもともと、HER2陽性の早期乳がん患者で、術前または術後化学療法や必要に応じた放射線治療を終了した患者を対象として、トラスツズマブ1年間投与の経過観察に対する、トラスツズマブ2年間投与の経過観察に対する優越性をそれぞれ比較したオープンラベルの試験である。さらに、追加の解析として、ランダム化から12ヵ月時点に無再発で生存してトラスツズマブを投与されていた3,105例を対象に、以後2年投与群と1年投与群に分け、トラスツズマブ2年間投与の1年間投与に対する、無病生存期間の優越性も比較された。これまでに1年、2年、4年、8年フォローアップの報告がなされてきたが、今回がもともと予定されていた、フォローアップ中央値11年に基づく最終報告であった。 HERA試験は、2001年から2005年までの間に、5,102例(経過観察群1,698例、トラスツズマブ1年投与群1,703例、2年投与群1,701例)の患者が登録、割り付けされた。今回の最終解析の結果、DFSに関して、1年投与群、2年投与群ともに、経過観察群に比較してそれぞれ(HR:0.77、95%CI:0.69~0.87)、(HR:0.76、95%CI:0.68~0.86)と、有意に良好な結果であった。10年目時点でのDFSはトラスツズマブ投与群1年間も2年間投与もいずれも69%であり、経過観察群63%であった。同様に、OSに関しては、1年投与群、2年投与群ともに、経過観察群に比較してそれぞれ(HR:0.72、95%CI:0.62~0.83)、(HR:0.74、95%CI:0.64~0.86)と、こちらも有意に良好な結果であった。12年目時点でのOSはトラスツズマブ1年投与群79%、2年投与群80%であり、経過観察群73%であった。 過去の報告では、1年目と4年目の解析では、1年間トラスツズマブ投与の経過観察群に対するOSの優越性が示されていない結果が認められたが、今回の最終解析では、トラスツズマブ投与によるOSの優越性が示されている。ただし、死亡リスク減少の絶対リスク減は27%から21%の6%と限定的であるが、Table2をみると、トラスツズマブ追加による再発割合の低下は、主に遠隔転移再発の抑制によってなされており、これがOS改善につながっていることが推測される。また、10年間の再発はトラスツズマブ投与症例でも3割程度と、再発割合が高い。この理由として、本試験の対象患者がリンパ節転移を有する症例が7割弱と、大部分は再発リスクが高い患者を対象としており、35~59歳が8割弱を占めるなど、若年患者が対象である。 それに対して、周術期化学療法としてアンスラサイクリン系抗がん剤を受けている患者は97%に上るものの、アンスラサイクリン系とタキサン系薬剤が使用されている患者は、そのうち26%に限られているなど、現在の治療方針と若干異なる点が存在する。これが、再発割合の高さに影響していることは否めない。さらに、現在はトラスツズマブの投与に関しては、化学療法、とくにタキサンと同時投与を開始することが多い。過去のHERA試験の結果を含めた前出のコクランのメタアナリシスでも1)、トラスツズマブの追加に関しては逐次投与よりも同時投与のほうでOSの利益がより明確に示されており、同時投与が標準的な現在の診療においては、本試験結果より良い成績が期待される。 ホルモン受容体別の解析においては、Figure2で、ホルモン受容体陰性症例のほうが再発しやすく、早期に再発が多いことも示された。さらに、Figure3では、ホルモン受容体の有無によるトラスツズマブの効果は差がなく、いずれにせよ上乗せ効果は認められた。Table2では、ホルモン受容体の状況別に転移部位は示されているが、遠隔再発病変としてホルモン受容体陽性症例では骨転移が多く、陰性症例では内臓転移がより多い結果となっていた。 トラスツズマブ2年間投与の1年間投与に対するDFSとOSの解析については、ランドマーク解析が行われた。この結果、トラスツズマブ2年投与群の1年投与群に対するDFS(HR:1.02、95%CI:0.89~1.17)およびOS(HR:1.01、95%CI:0.84~1.21)の優越性はいずれも示されなかった。 この解析自体は、試験の主要評価項目や副次評価項目などとは別に予定されており、検定の多重性の問題がどのように解消されているかについては、プロトコルにも記載はされていなかった。統計学的には解析の妥当性が保証されているとして、この結果はこれまでに報告されてきたHERA試験の結果2) と変わりはなかった。さらに、PHARE試験やHORG試験の結果3)4)5)を踏まえ、6ヵ月のトラスツズマブの投与期間が1年間投与に対する非劣性を示すことができておらず、現状では術後トラスツズマブ投与期間は1年間が標準である。トラスツズマブの1年以上の継続に関しては今回の試験では否定的であったが、成績向上のための試みとして、近年、新規薬剤の追加が検証されている。APHYNITY試験ではトラスツズマブ術後併用療法に対するペルツズマブの上乗せが6)、また、ExteNET試験7) では、トラスツズマブ併用療法後のNeratinibの1年間の維持療法により浸潤性乳がんの無再発生存を改善させることが示されている。今後のHER2陽性乳がんの治療開発としては、トラスツズマブの投与期間延長よりは、新規薬剤の追加やHER2発現以外の、より有効なバイオマーカーに基づく治療開発など、precision medicineの推進が期待される。 本試験は、もともと左室駆出率55%以上の症例を対象としていた。重篤な心臓イベント(New York Heart Associationに定義される心不全ClassIII-IV、左室収縮率が50%未満へ低下し、10%以上の低下、心臓死)については経過観察群で0.1%、トラスツズマブ1年投与群で1%、トラスツズマブ2年投与群で1%と、いずれも低頻度であった。心毒性の頻度(無症状ないし軽度症状で左室駆出率がベースラインより10%以上低下、または左室駆出率50%以下となること)は経過観察群で0.9%、トラスツズマブ1年投与群で4.4%、トラスツズマブ2年投与群で7.3%と、長期間の投与でより高い頻度であった。 今回のHERA試験のように、治療終了後も長期間、定期的な心機能フォローアップがなされた試験はなかった8)。心毒性の頻度については、Figure4をみても、トラスツズマブ投与期間が終了までで心臓に関連したイベントはほぼプラトーに達している。過去のトラスツズマブの術後治療の試験をみても、心機能低下の出現時期は投与期間中がほとんどであるとされている9)。今回の結果はより詳細な心機能フォローアップの結果、これまでの知見が再現されていた。実臨床での心機能フォローアップをいつまで行うのかに関しては、さらなるデータの集積を待ちたいと思う。 以上より、今回のHERA試験の結果により、術後トラスツズマブ療法は1年が最適であり、長期間フォローアップにおいても、心毒性を含めた追加の有害事象の懸念がないことが示された。参考文献1)Moja L, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2012 Apr 18:CD006243.2)Goldhirsch A, et al. Lancet. 2013;382:1021-1028.3)Pivot X, et al. Lancet Oncol. 2013;14:741-748. 4)Pivot X, et al. Eur J Cancer. 2015;51:1660-1666.5)Mavroudis D, et al. Ann Oncol. 2015;26:1333-1340.6)F. Hoffmann-La Roche, Ltd.:メディアリリース(英語)7)Chan A, et al. Lancet Oncol. 2016;17:367-377. 8)de Azambuja E, et al. J Clin Oncol. 2014;32:2159-2165.9)Pondé NF, et al. ESMO Open. 2016;1:e000073.

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患者の性格と認知症タイプでBPSDを予測可能:旭川医大

 レビー小体型認知症(DLB)とアルツハイマー型認知症(AD)における患者の発症前の性格特性とBPSD(behavioral and psychological symptoms in dementia:認知症の行動・心理症状)との関連について、旭川医科大学の田端 一基氏らが検討を行った。Psychiatry and clinical neurosciences誌オンライン版2017年2月8日号の報告。 対象は、DLB患者41例、AD患者98例。対象患者のBPSD評価には、NPI(Neuropsychiatric Inventory)を用いた。各患者の中年期の性格特性は、NEO-FFI(NEO Five-Factor Inventory)を用いて、患者家族より評価を行った。 主な結果は以下のとおり。・DLB患者の重回帰分析において、NPI総スコアおよび不安と病前の開放性、妄想と病前の協調性、興奮と病前の勤勉性が有意に関連していた。・AD患者のうつ症状と病前の情緒不安定性、興奮、無関心、過敏性と病前の協調性が有意に関連していた。 著者らは「病前性格は、DLBおよびADにおいて、BPSDに異なった影響を及ぼしていることが示された。BPSDに対する病前性格の影響差を考慮すると、これら症状を軽減するための介入を開発するには、さらなる研究が必要である」としている。関連医療ニュース 認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化 たった2つの質問で認知症ルールアウトが可能 統合失調症患者の性格で予後を予測

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白斑と甲状腺がんは有意に関連:韓国の住民ベース研究

 白斑は、自己免疫性甲状腺疾患および甲状腺がんと有意に関連していることが、韓国・カトリック大学校のJung Min Bae氏らによる、国民健康保険支払データベースを用いた調査研究の結果、報告された。これまでにも繰り返し白斑と甲状腺疾患の関連については報告があるが、今回研究グループは、全国的な住民ベース研究にて両者の関連について調査を行った。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年2月23日号掲載の報告。 調査はデータベースにおいて2009~13年に、主病名診断が白斑で4人以上の医師の受診記録がある患者を白斑患者と定義し、年齢および性別で適合した非白斑患者を対照患者(白斑患者1例に対し対照2例)として、バセドウ病と橋本病の併発(対象患者は至適薬物による治療中)、甲状腺がんについて評価した。 主な結果は以下のとおり。・本研究には、白斑患者7万3,336例、対照患者14万6,672例が登録された。・白斑患者は対照患者と比較して、バセドウ病(オッズ比[OR]:2.610、95%信頼区間[CI]:2.319~2.938)、橋本病(OR:1.609、95%CI:1.437~1.802)、甲状腺がん(OR:1.127、95%CI:1.022~1.242)のいずれの評価項目についてもリスク増加が認められた。・関連性は、男性、若年患者で、一貫してより強かった。・今回の研究では個々の患者の臨床的情報を入手しておらず、また均一性集団という点で、結果の一般化可能性は限定的なものである。

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日本における急性心筋梗塞のDoor to Balloon Time、90分を切るためには

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)の管理において、90分以内のDoor to Balloon Time(DTBT)は重要な指標となるが、とくに米国や欧州以外の国では、多くの患者がこの目標を達成していない。慶應義塾大学の池村 修寛氏らは、国内の現状とDTBT遅延の予測因子について分析を行った。Circulation journal誌オンライン版2017年2月23日号の報告。ST上昇型心筋梗塞の半数はDoor to Balloon Timeが90分以内に達していない 2008~13年にJCD-KiCS多施設レジストリに登録された患者より、症候発症12時間以内にプライマリPCIを施行したSTEMI症例2,428例を分析した。レジストリにおける本コホート内のDTBT推移と90分超のDTBT遅延の独立した予測因子を分析した。 DTBT遅延の予測因子について分析を行った主な結果は以下のとおり。・研究期間中のDTBT中央値は90分(IQR:68~115分)であり、年による有意な変化は認められなかった。・DTBT遅延の予測因子は、末梢動脈疾患(PAD)、血管再建術歴、時間外搬送、75歳以上、搬送時の心不全、IABPまたはVA-ECMOの使用であった。・とくに、大規模なPCI対応施設(PCI200件/年以上)は、小規模の施設(PCI200件/年未満)と比較し、DTBTが短縮されていた。 著者らは「現在、STEMI症例の半数は、DTBTが90分以内に達していなかった。高齢者や複数の併存疾患を有する患者、時間外にPCIを実施した患者をターゲットとすることが、この改善に役立つ可能性がある」としている。

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RAS阻害薬によるクレアチニン値増加、30%未満でもリスク/BMJ

 RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)服用開始後のクレアチニン値の上昇は、ガイドラインで閾値とされる増大幅が30%未満であっても、末期腎不全や心筋梗塞などの心・腎臓有害イベントや死亡リスクが漸増する関連があることが明らかにされた。クレアチニン値10%未満との比較で、10~19%の増加で死亡リスクは約1.2倍に、20~29%の増加で約1.4倍に増大することが示されたという。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学校のMorten Schmidt氏らが、RAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)の服用を開始した12万例超について行ったコホート試験の結果、明らかにした。BMJ誌2017年3月9日号掲載の報告。RAS阻害薬と末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡との関連を検証 研究グループは1997~2014年の、英国プライマリケア医の電子診療録を含むデータベース「Clinical Practice Research Datalink」(CPRD)と病院エピソード統計「Hospital Episode Statistics」(HES)を基に、RAS阻害薬(ACE阻害薬またはARB)の服用を開始した12万2,363例を対象に、ACE・ARB開始後のクレアチニン値上昇と、心・腎臓アウトカムとの関連を調べた。 ポアソン回帰分析法を用いて、クレアチニン値30%以上の増加や10%増加ごとと、末期腎不全、心筋梗塞、心不全、死亡との関連についてそれぞれ検証した。解析では、年齢、性別、歴期間、社会経済状況、生活習慣、CKD、糖尿病、心血管の併存疾患、その他の降圧薬、NSAIDsの使用で補正を行った。RAS阻害薬服用後のクレアチニン値増加に伴い心・腎イベントリスクも段階的に増加 RAS阻害薬服用後にクレアチニン値が30%以上増加したのは、被験者の1.7%にあたる2,078例だった。クレアチニン値の30%以上の増加は、評価項目としたすべての心・腎イベントの発症と関連が認められた。 クレアチニン値の増加30%未満での発生と比較した補正後罹患率比は、末期腎不全については3.43(95%信頼区間[CI]:2.40~4.91)、心筋梗塞は1.46(同:1.16~1.84)、心不全は1.37(1.14~1.65)、死亡は1.84(1.65~2.05)だった。 クレアチニン値の増加幅に応じた心・腎アウトカムについて調べたところ、10%未満、10~19%、20~29%、30~39%、40%以上と段階的にすべての評価アウトカムについてリスクが増加する傾向が認められた(いずれも傾向のp<0.001)。 死亡に関する補正後罹患率比は、クレアチニン値10%未満の増加との比較で、10~19%の増加で1.15(1.09~1.22)、20~29%の増加で1.35(1.23~1.49)だった。 これらの結果は、歴期間、サブグループ、服用継続の有無などで検討した場合も一貫して認められた。

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