サイト内検索|page:313

検索結果 合計:11856件 表示位置:6241 - 6260

6241.

延命治療のお話【Dr. 中島の 新・徒然草】(268)

ニ百六十八の段 延命治療のお話外来診療をしていると、たまに延命治療の話になることがあります。主として高齢女性の場合です。「体が不自由になってまで生きたくない」「頭がボケてまで生きたくない」「だから、延命治療はやめて欲しい」だいたいこんな感じ。こういう話が出たら、ちょうどいいタイミングなのでご本人の意思を確認します。こういったイメージでしょうか。「皆さん、そうおっしゃいますよ」「線を引くとしたら、自分で食べて自分でトイレに行けるかどうか、その辺ですかね」ここは個人個人で違うので、本人の意思確認が必要です。四肢麻痺の寝たきり状態になっても生きたいという人もいるのは事実。さらに必要な確認があります。DNR(Do Not Resuscitate:蘇生処置拒否)とか、そんな大げさな話ではありません。何をもって延命治療と称するのか、です。痛いこと、苦しいこと。それがキーワードだと私は思います。「回復して自立できる見込みが高ければ、つらい治療でも耐える」「寝たきりの可能性が高ければ痛い治療は勘弁して欲しい」「奇跡的に回復するかもしれないので、苦しくない治療は続けて欲しい」その辺が最も多いようです。よく、「挿管はどうしましょう、心臓マッサージはどうしましょう、昇圧剤はどうしましょう」と尋ねる先生がいますが、そもそも挿管の何たるか、心臓マッサージの何たるかから説明しなくてはなりません。忙しい外来でできたモンじゃないし、何か違和感があります。どの程度まで回復したら意味があると思うのか痛いこと、苦しいこと、も我慢するのかその辺だけ確認しておきます。確認するだけでなく、カルテにも書きます。後は、自分が意思表示できなくなったら誰に意思決定を頼むか?それも大切です。とはいえ、いざ重大な局面になると何も決められない人が多いのが現実。だから、本人の意思を確認してカルテに書いておきます。そうそう、1つ大切な事を忘れていました。「いよいよの時は苦しみだけはとって欲しい」これを言う人もすごく多いですね。最も大切なことかもしれません。ということで最後に1句幕引きも 準備が大切 心せよ

6242.

第7回 頸部・肩・上肢の痛み【エキスパートが教える痛み診療のコツ】

第7回 頸部・肩・上肢の痛み頸部の痛みは、誰もが経験する痛みでありますし、一般的な受診理由の1つでもあります。また、それに引き続いて生じる肩痛や上肢痛はQOLの低下にも大いに関連しますので、患者さんの訴えを理解するために必要な知識であろうと思います。今回は、この頸部・肩・上肢の痛みを取り上げたいと思います。頸部の痛みの鑑別の重要性頸部の痛みの発生源としては、頸部の筋・筋膜、腱・靭帯、椎骨、椎間関節、椎間板、上位頸神経根など頸部の構成組織が関連しております。いわゆる筋・骨格系の痛みに通常の日常診療ではよく遭遇します。重要なのは、これらの良性疾患による痛みと、腫瘍、感染など重大な病変をもつ腫瘍浸潤や頸椎骨転移・病的骨折、また、椎間板炎、化膿性脊椎炎、頸部硬膜外膿瘍などの鑑別診断になります。筋・骨格系の痛みの場合、通常は患者さんの訴える部位を圧迫すると、いわゆる圧痛がみられます。加えて明確な神経学的欠損はほとんどみられません。そのほか、患者さんの訴えと神経学的所見が一致しない場合には、心因性疼痛が疑われます。「五十肩」「肩こり」発生のメカニズム肩の痛みは、下部頸椎性の原因に基づく場合もありますが、肩関節周囲炎がよく取り上げられます。肩関節は、体の中で最大の可動域を有する球関節です。そのためにさまざまな関節が関与して、この可動域を生み出しております。加齢とともに変性が加わり、さらに外傷や運動によって、関節内の炎症や損傷をもたらします。肩関節には上腕二頭筋長頭腱の走行があります。結節間溝表面は横上腕靭帯が覆い、腱鞘のような構造になっております。この部分では長頭腱は炎症や摩耗変性を生じやすい状態になっており、まさにこのようにして生じた一連の障害が肩関節周囲炎です。いわゆる「五十肩」は複雑な病変部位が明確でない場合に付けられる病名です。圧痛部は複雑な病変部を推定するのに役立ちます。頸肩部でよくみられ、いわゆる「肩こり」と呼ばれる筋・筋膜疼痛症候群もよくある疾患です。また、頸肩腕部の痛みを主訴とするものも、明確な原因を特定できない場合には、頸肩腕症候群として診断されます。上肢の痛みには2つタイプがある上肢の痛みは、頸椎由来の痛みと上肢に限定される痛みがあります。上肢が原因として生じる痛みとしては、上腕骨内側上顆炎・外側上顆炎、変形性肘関節症、変形性手関節症、母指CM関節症、正中神経が関連する手根管症候群や回内筋症候群、尺骨神経が含まれるギヨン管症候群や肘部管症候群、橈骨神経が関連する橈骨神経管症候群などの絞扼性末梢神経障害などがあります。いずれも知覚障害が初期症状として出現します。それに対して、頸部由来の上肢痛や痺れも珍しくありません。図に示しますように頸部由来の上肢痛が、それぞれの皮膚分節に沿ってみられます。疑うべき疾患としては頸椎症性神経根症、頸椎椎間板ヘルニア、外傷性頸部症候群、頸椎手術後疼痛症候群、頸椎椎間関節症、パンコースト腫瘍などが挙げられます。腫瘍疾患は高齢者に多いのですが、夜間痛、安静時痛が特徴です。図 皮膚の分節(Cは頸髄神経を示す)画像を拡大する次回は、「腹痛」を取り上げます。1)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:124-125.2)花岡一雄ほか監修. 痛みマネジメントupdate 日本医師会雑誌. 2014;143:136-137.3)花岡一雄ほか編集. ペインクリニック療法の実際. 南江堂;1996.p.331-345.

6243.

食べられない、食べても痩せる…シリーズがん悪液質(1)【Oncologyインタビュー】第5回

がん患者の強力な予後因子である悪液質。十分に解明されていなかったそのメカニズムが明らかになりつつある。悪液質の機序や治療への影響といった最新かつ基本的な情報について、日本がんサポーティブケア学会 Cachexia部会部会長である京都府立医科大学 医学研究科 呼吸器内科学の髙山 浩一氏に聞いた。日本がんサポーティブケア学会には独立した悪液質部会がありますが、設立された背景を教えていただけますか。日本がんサポーティブケア学会では、がんに伴うさまざまな症状や副作用への支持療法に特化して各部会を立ち上げています。がん患者が痩せるのは、がんによる1つの症状です。そこに光を当てるべく、新たに悪液質を独立したカテゴリとして集中的に扱う部会にしました。その背景には、悪液質の病態が徐々に明らかになってきたこと、悪液質の基準がはっきりしてきたこと、それに伴う薬剤の開発が見えてきたという背景があります。がん患者における悪液質の合併頻度はどの程度なのでしょうか。がん患者が痩せるというのは昔から知られていたことですが、体重減少の頻度は、がんの種類によって異なります。最も多いのは消化器がんで、胃がんやすい臓がんでは80%を超えます。次いで多いのは肺がんの60%程度です。どちらも、かなり高い割合で合併します。現在の悪液質の定義について教えていただけますか。2011年、European Palliative Care Research Collaborative(EPCRC)は、がん悪液質の定義と診断基準のコンセンサスの中で、「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無に関わらず)を特徴とする多因子性の症候群」と定義しています。また、悪液質を前悪液質、悪液質、不応性悪液質の3つのステージに分類し、(1)過去6ヵ月間の体重減少5%以上(2)BMI 20未満では体重減少2%以上、(3)サルコペニアでは体重減少2%以上、これら(1)~(3)の3つのいずれかに該当するものを悪液質としています。また、前悪液質からの早期介入の必要性を推奨しています。CRPやアルブミン値に基づくグラスゴースコアなどもありますが、臨床で現実的に使うことを考えると、体重で決まるこのコンセンサスレポートが使いやすいと思います。がん悪液質のメカニズムが徐々に解明されつつあるとのことですが、現在わかってきたことを教えていただけますか。悪液質の本態として、がん細胞が自ら出している因子と、がんにより生じる全身炎症の結果、がん細胞周辺の正常組織が出している因子が、すべてタンパク質や脂肪の分解、食欲抑制という方向に働いて、痩せていくというメカニズムがわかってきました。がん細胞が自ら放出するタンパク質分解誘導因子(PIF)や脂質動員因子(LMF)などが、タンパク質を分解し骨格筋を減少させ、脂肪分解を促進します。がん細胞は、タンパク質や脂肪を分解することで出るアミノ酸やエネルギーなどを利用している可能性があります。また、がんによる全身性炎症は、がん細胞周辺の正常組織から炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)を放出させます。炎症性サイトカインは、食欲を抑制すると共にタンパク質分解と脂肪分解を促進します。また、肝臓の糖新生を亢進し、インスリン抵抗性を生じさせます。インスリン抵抗性があると糖が肝臓に取り込まれない、つまり頑張って食べても身にならないという状態になります。悪液質のきっかけとして、治療初期の抗がん剤による食欲低下で食べられなくなる。つまり、カロリー摂取ができなくなること、これが悪液質の引き金になっている可能性があると思います。1)日本がんサポーティブケア学会 がん悪液質ハンドブック

6244.

次世代JROADでバイオマーカーの予測目指す/日本循環器学会

 高齢化とともに心不全罹患率は上昇傾向を示し、治療の発展からその予後は短期的から長期的へ変遷する。2018年12月には、「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立し、がん患者以外の緩和ケア医療も進んでいくだろう。2019年3月29~31日、横浜で開催された第83回日本循環器学会学術集会で、井手 友美氏(九州大学医学研究院循環器病病態治療講座准教授)が、循環器疾患診療時実態調査(JROAD)を活用した心不全に対する新たな取り組みについて講演した。JROADが新たな時代へ始動 JROAD研究がスタートしたのは2004年。全国的に循環器診療の実態調査を展開して診療実態を具体的な数で把握、得られたデータは会員や社会へ発信し、循環器診療の質を向上させることが目的であった。そして、この研究を行ったDPC対象施設のデータからデータベース構築を2014年から開始したのが、JROAD-DPC databaseである。 このJROAD-DPCから心不全による過去の報告では、男性:75±12歳、女性:81±12歳と、男女ともに高齢化が進んでいることが報告され、NYHA分類で重症なほど、死亡退院数は増加傾向であった。これに対し、井手氏は「心不全患者の老化、重症化、とくに女性の心不全患者が非常に多い」と、現況について懸念した。ほかの心不全レジストリ研究との比較 しかし、JROAD-DPCのデータからは、本当にその患者が心不全であるかどうか、また具体的な心不全の基礎疾患、長期予後については不明である。そこで、患者・施設・地域レベルの横断的かつ縦断的な分析を可能とする全国的データベースの構築を目的として、“JROADHF”を開始。これは、日本循環器学会が実施しているJROAD登録施設をランダム抽出し、2013年1月1日~12月31日の1年間にDPCによって急性心不全による入院とされた、心不全入院患者1万例を対象とした多施設共同後向き観察研究である。実際には、1万4,847例(128施設)が登録され、各施設にてDPCデータに追加してカルテレビューを行い、心不全の臨床情報の詳細、さらには2017年12月31日までの予後調査を追加で行った。約10.2%(1,515例)は非心不全症例であり、これに対し同氏は、「DPCからの急性心不全病名での入院症例のうち約90%が心不全症例であることが確認された」とし、「全症例の詳細な再調査により、短期予後は1万3,238例を、長期予後は、入院中の死亡例7.7%(1,024例)と予後調査データ欠測症例8%(1,078例)を除いた1万1,136例を解析対象症例とした」と述べた。 このJROADHF研究をこれまでの後向きレジストリと比較すると、心不全の診断精度が高く、入院中の医療介入のすべての情報が正確に得られる、患者数が大規模、全国調査が可能、短期・長期予後の調査も可能、データ取得に要する時間の早さなど、さまざまな点で質の高さが伺える。 一方、後向き研究が故に、現在問題視されるような評価項目を入れる事ができないため、新たな研究として“JROADHF-NEXT”が立ち上げられた。フレイル、認知・運動機能について評価 JROADHF-NEXTは、急性心不全による入院患者を対象に、JROADHF研究では得られなかった、最近の知見や治療内容を反映したデータベースを構築。臨床情報やバイオマーカーを用いた心不全発症・重症化の新たな予測指標・リスク層別化法を開発するとともに、その有効性を検証することを目的とした、多施設共同前向き登録観察研究である。患者登録は2019年4月より開始している。 この研究によって、心不全患者の全国規模のフレイル、サルコペニアを含めた新たな臨床情報に加え、バイオバンク(血漿、血清、尿)を構築することで新たなバイオマーカーなどの新規予後予測因子の同定を行う。そして、日本での心不全診療における新たなエビデンスの創出が期待されている。 最後に同氏は、「JROADHF研究は、全国の先生方にご参加・ご尽力いただき、質の高い全国規模の心不全レジストリ研究としてデータベース作成が可能となった。JROADHF研究における今後の解析を進めて、わが国発のエビデンスの構築を行う予定である。前向き研究であるJROADHF-NEXT研究も、全国の先生方と力を合わせて世界に誇れるわが国の心不全レジストリとしたい」と締めくくった。■参考日本心不全学会JROADHF-NEXT参議院法制局:健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法■関連記事HFrEF患者へのivabradine、日本人でも有用(J-SHIFT)/日本循環器学会サルコペニア、カヘキシア…心不全リスク因子の最新知識【東大心不全】

6245.

がんゲノム解析と電カルの統合データが治療効果と関連/JAMA

 非小細胞肺がん(NSCLC)の患者を対象に、ルーチンの診療から得た電子健康記録(EHR)と網羅的ゲノム解析(CGP)をリンクしたデータが、治療選択などに有効であることが明らかにされた。遺伝子のドライバー変異と標的治療の有効性の関連や、遺伝子変異数(TMB)と抗PD-1/PD-L1療法反応性との関連などが確認されたという。米国企業Foundation MedicineのGaurav Singal氏らが、約2万9,000例のがん患者データベースの中から、NSCLC患者4,000例超について解析し明らかにしたもので、JAMA誌2019年4月9日号で発表した。今回の成果について著者は「ルーチンの診療に由来する臨床ゲノムデータベースの構築が可能であることを示すもので、オンコロジーにおけるこのようなアプローチを評価する、さらなる研究と発見があることを支持することが示された」とまとめている。 がんゲノミクスと患者の臨床アウトカムなどを探索的解析 研究グループは、米国内275ヵ所のがん診療外来患者2万8,998例について、EHR臨床データとCGPをリンクしたデータを基に試験を行った。2011年1月~2018年1月のデータが入手できたNSCLC患者4,064例のデータについて、がんゲノミクスと患者の臨床アウトカムを含む特徴との関連性を探索的に検証した。 具体的には、ドライバー変異を含む腫瘍CGP、TMB、EHRから得られた臨床的特徴と、全生存期間(OS)、治療を受けた期間、最大治療反応性(EHRの治療担当医による記録で確認)、治療の臨床的有効性(安定[SD]、部分奏効[PR]、完全奏効[CR]の患者割合)の関連を調べた。ドライバー変異、標的治療で生存期間7ヵ月超延長 NSCLC患者4,064例の年齢中央値は66.0歳、女性の割合は51.9%、喫煙歴ありは3,183例(78.3%)だった。3,153例(77.6%)が非扁平上皮NSCLCで、EGFR、ALK、ROS1に遺伝子変異が認められたのは、それぞれ701例(17.2%)、128例(3.1%)、42例(1.0%)だった。また、7年間で1,946例が死亡した。 ドライバー変異患者のうち、標的治療を受けた575例は受けなかった560例に比べ、OSが改善し、進行が診断されてからの生存期間中央値はそれぞれ18.6ヵ月(95%信頼区間[CI]:15.2~21.7)、11.4ヵ月(9.7~12.5)だった(p<0.001)。 TMBは、喫煙者が8.7(IQR:4.4~14.8)と、非喫煙者の2.6(1.7~5.2)より有意に高かった(p<0.001)。また遺伝子変異のある人が、ない人に比べ有意に低く、EGFRに関しては変異あり群3.5(1.76~6.1)vs.なし群7.8(3.5~13.9)(p<0.001)、ALKは同2.1(0.9~4.0)vs.7.0(3.5~13.0)(p<0.001)、RETは4.6(1.7~8.7)vs.7.0(2.6~13.0)(p=0.004)、ROS1は4.0(1.2~9.6)vs.7.0(2.6~13.0)(p=0.03)だった。 抗PD-1/PD-L1療法を行った1,290例(31.7%)についてみると、TMB値が20以上群は20/Mb未満群に比べOSが延長し(16.8ヵ月[95%CI:11.6~24.9]vs.8.5ヵ月[7.6~9.7]、p<0.001)、長期間治療を受けていた(7.8ヵ月[5.5~11.1]vs.3.3ヵ月[2.8~3.7]、p<0.001)。臨床的有効となった患者割合も高率だった(80.7% vs.56.7%、p<0.001)。

6246.

認知症症状がある元NFL選手、脳内タウ増加が判明/NEJM

 認知症・精神神経症の症状が認められる元ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)選手について、脳内のタウなどを可視化するPET検査を行ったところ、症状のない男性コントロール群と比較して、慢性外傷性脳症(CTE)部位のタウ蓄積量はより多く、アミロイドβ蓄積量は同程度であることが示されたという。米国・ボストン大学のRobert A. Stern氏らによる検討結果で、NEJM誌2019年4月10日号で発表された。結果を踏まえて著者は、「さらなる研究を行い、CTE部位のタウ蓄積量上昇が、個々の患者で、検出に役立つかどうかを調べる必要がある」と述べている。SUVRと症状の程度、選手活動期間との関連を検証 研究グループは、タウのイメージング製剤flortaucipirと脳アミロイドイメージング製剤florbetapirを用いたPET検査を、認知症・精神神経症症状が認められる元NFL選手(26例)と、CTE歴のない無症状の男性(コントロール群、31例)に対し、それぞれ実施した。 自動画像処理アルゴリズムを用いて、脳局所のタウ標準蓄積率(standardized uptake value ratio[SUVR]、対小脳比で算出)を測定し、両群で比較した。SUVRと症状重症度との関連や、元NFL選手については選手としての活動期間との関連を検証した。タウ蓄積量は増加、アミロイドβ蓄積量増加みられず タウイメージング製剤flortaucipir SUVR平均値は、脳内3部位において元NFL選手群がコントロール群より高く、両側上前頭回では元NFL選手群が1.09に対しコントロール群が0.98(補正後平均群間差:0.13、95%信頼区間[CI]:0.06~0.20、p<0.001)、両側内側側頭葉が1.23 vs.1.12(0.13、0.05~0.21、p<0.001)、左頭頂部が1.12 vs.1.01(0.12、0.05~0.20、p=0.002)だった。 探索的解析の結果、元NFL選手の活動期間とこれら3部位のflortaucipir SUVR平均値の相関係数は、それぞれ0.58(95%CI:0.25~0.79)、0.45(0.07~0.71)、0.50(0.14~0.74)だった。 タウ蓄積量と認知症・精神神経症症状スコアとの関連は、認められなかった。さらに、元NFL選手のうち、アルツハイマー病の患者と同レベルのアミロイドβ蓄積量が認められたのは、1例のみだった。

6247.

エンドセリン受容体拮抗薬の糖尿病性腎症への効果は?:SONAR試験/国際腎臓学会

 2010年に報告されたASCEND試験1)において、糖尿病性腎症に対する腎保護作用を示しながら、心不全増加のため有用性を証明できなかったエンドセリン受容体拮抗薬だが、対象例を適切に絞り込めば有用であることが、ランダム化二重盲検試験“SONAR”の結果から明らかになった。本試験は、4月12~15日にオーストラリアで開催された国際腎臓学会(ISN)-World Congress of Nephrology(WCN)2019のBreaking Clinical Trialsセッションにおいて、Dick de Zeeuw氏(オランダ・グローニンゲン大学)らが報告した。エンドセリン受容体拮抗薬の短期服用でUACRが低下する例に限定 SONAR試験の対象は、最大用量のレニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬服用中の、慢性腎臓病(CKD)合併2型糖尿病例のうち、エンドセリン受容体拮抗薬atrasentan 0.75mg×2/日を6週間服用し(導入期間)、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が30%以上低下した例である。 「UACR低下率≧30%」を基準にした理由は、以下のとおり。 先述のASCEND試験において観察された心不全入院の増加は、エンドセリン受容体拮抗薬開始後に体重増加が大きい群で著明に高く2)、また別の臨床試験において、エンドセリン受容体拮抗薬による早期のUACR低下は、その後の体重と有意に逆相関していた3)。つまり、エンドセリン受容体拮抗薬の短期服用でUACRが低下する例に限定すれば、心不全発症高リスク例を除外できる可能性があると考えたわけである。無作為化されたのは適格例の約半数 適格例の5,630例が導入期間に入り、6週間後、52%に相当する2,648例で「UACR低下率≧30%」が認められた。 これら2,648例の、導入期間開始時における平均年齢は64.8歳、HbA1c平均値は7.8%だった。腎機能は、推算糸球体濾過率(eGFR)平均値が43.8mL/分/1.73m2、UACR平均値は約800mg/gであった。 治療薬としては、ほぼ全例がRAS阻害薬を服用、70%強がスタチンを服用していた。 これら2,648例は、atrasentan 0.75mg×2/日服用群(1,325例)とプラセボ群(1,323例)にランダム化され、二重盲検法にて2.2年間(中央値)追跡された。エンドセリン受容体拮抗薬で腎機能低下を抑制 その結果、主要評価項目である「血清クレアチニン(Cr)値倍増・末期腎不全への移行」の、atrasentan群における対プラセボ群ハザード比(HR)は、0.65(95%信頼区間 [CI]:0.49~0.88)の有意低値となった(atrasentan群:6.0% vs.プラセボ群:7.9%)。 内訳を見ると、atrasentan群で著明に減少していたのは「血清Cr値倍増」であり(HR:0.61、95%CI:0.43~0.87)、「末期腎不全への移行」には有意なリスク減少を認めなかった(HR:0.73、95%CI:0.53~1.01)。 またatrasentan群における主要評価項目抑制は、事前設定したすべてのサブグループにおいて一貫していた。エンドセリン受容体拮抗薬群の心不全リスクは高まらなかった 懸念される「心不全」(発症・増悪)は、atrasentan群で5.5%と、プラセボ群の3.9%よりも高値となったが、有意差には至らなかった(p=0.064)。一方、「貧血」はASCEND試験同様、エンドセリン受容体拮抗薬群で有意に多かった(18.5% vs.10.3%、p<0.001)。 また「重篤な有害事象」発現率も、atrasentan群で有意に高かった(36.3% vs.32.6%、p=0.049)。ただし「有害事象による脱落」は有意差とならなかった(10.4% vs. 9.2%、p=0.360)。 本研究は、報告と同時にLancet誌オンライン版で公開された。

6248.

若年性認知症の生存率に関するコホート研究

 若年性認知症患者の生存期間や平均余命、また年齢、性別、認知症サブタイプ、併存疾患との関係について、オランダ・Centre for Elderly CareのAdrie A. J. Gerritsen氏らが、調査を行った。International Psychogeriatrics誌オンライン版2019年3月27日号の報告。 対象は、アルツハイマー型認知症(AD)、脳血管性認知症(VaD)、前頭側頭型認知症(FTD)患者を含む、若年性認知症のニーズ調査に参加した198例。主要アウトカムは、症状発現後および診断後の生存期間とした。生存率と年齢、性別、認知症サブタイプ、併存疾患との関係を調査するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。また、平均余命への影響も調査した。 主な結果は以下のとおり。・6年のフォローアップ期間中に、77例(38.9%)が死亡、78例(39.4%)が生存、43例(21.7%)が調査から脱落した。・平均生存期間は、発症後では209ヵ月(95%CI:185~233)、診断後では120ヵ月(95%CI:110~130)であった。・AD患者の生存期間は、VaD患者と比較し、統計学的に有意に短かった(発症後生存率:p=0.047、診断後生存率:p=0.049)。・発症および診断時の年齢が若いほど、生存期間は長かった。・診断後の平均余命は、同年齢層において一般集団と比較し、男性で51%、女性で59%低下していた。 著者らは「若年性認知症患者やその家族に対し生存予後を告知する際、認知症サブタイプを考慮することが重要である。本研究における生存期間は、若年性認知症に関する他の研究よりも長く、老年期認知症に関する研究よりも延長していた。発症および診断時の年齢の若さは、生存期間と正の相関が認められているが、若年での診断は、それにもかかわらず、平均余命を劇的に短くする」としている。■関連記事日本人若年性認知症で最も多い原因疾患は:筑波大学日本人若年性認知症、診断1年後の離職率はレビー小体型認知症とアルツハイマー病における生存率の違い~メタ解析

6249.

新規携帯型デバイスd-NAVは2型糖尿病患者のインスリン治療を大きく前進させるか?(解説:住谷哲氏)-1026

 インスリン投与が必要となる2型糖尿病患者は少なくない。血糖降下薬としてのインスリンの特長は投与量に上限がないことであり、理論上インスリン投与量を増加すれば血糖は必ず低下する。しかし実臨床においてはインスリン投与にもかかわらずHbA1c>8.0%の患者は多く存在する。本論文の著者であるHodish氏らはこの状況を“insulin paradox”と名付けて、その原因は必要十分量のインスリンが投与されていないことにあると主張してきた1)。さらに必要十分量のインスリンが投与されないのは、多忙な医療従事者が個々の患者に対してインスリン投与量の変更(insulin titration)を実施する時間がないのが一因であるとして、insulin titrationを自動化するアルゴリズムDiabetes insulin guidance system DIGSTMを開発した。このDIGSTMを自己血糖測定器に組み込んだものが携帯型デバイスd-NAV(diabetes navigator)である。d-NAVを用いて自己血糖を測定するとまず血糖値が表示され、続いてボタンひとつで必要なインスリン投与量が表示されるので患者は指示に従ってインスリンを注射することになる。 少人数の患者を対象としたproof-of-concept試験ですでにその有効性が証明されたので2)、参加者を増やして実施されたのが本試験である。対象者はインスリン使用中の2型糖尿病患者であるが、insulin regimenは(1)基礎インスリンのみ(いわゆるBOT)、(2)混合型インスリン2回注射法、(3)Basal-bolus法、(4)カーボカウント併用のbasal-bolus法の4種が使用されていた。自己血糖測定はインスリン投与前に実施された。その結果は、6ヵ月後の試験終了時にHbA1c値は介入群が1.0%低下したのに対し、対照群は0.3%の低下であり、両群間に有意な差が認められた(p<0.0001)。さらにHbA1c<7%を達成した患者の割合は、介入群が22%と、対照群の5%に比べ有意に多かった(p=0.0008)。インスリン投与量は介入群の1.24単位/kg/日に対し対照群では0.76単位/kg/日であり介入群で有意に多かった(p=0.0001)。 d-NAVによるinsulin titrationはインスリン治療で常に問題となるclinical inertiaを克服する有用なツールとなる可能性が高い。d-NAVの基礎にある考えは前述したようにインスリン投与量の最適化、換言すれば十分量のインスリンを投与することで血糖コントロールを改善することにある。UKPDS33およびORIGINでインスリンが心血管イベントを増加しないことは証明されている。一方で、ACCORDの結果は血糖降下薬の多用によるHbA1cの低下のみを目指した治療が患者に不利益を与える可能性を示している。新たなツールを用いてHbA1cを低下させることは重要であるが、2型糖尿病治療においては生活習慣の改善を基礎とした全体的アプローチholistic approachが重要であることを忘れてはならない。

6250.

第15回 発熱の症例・全てのバイタルが異常。何を疑う?-2【薬剤師のためのバイタルサイン講座】

今回の症例は、発熱を来した症例です。発熱のため受診される高齢者は少なくありませんが、なかには早期に治療を開始しないと生命にかかわる場合もあります。患者さんDの場合◎経過──2 の続き観察とバイタルサインより今回の患者さんは、すべてのバイタルサインに異常があります。病態を知るためのヒントは数日間続いた発熱です。何らかの感染症(今回は尿路感染症)が増悪して、ABCのうちの呼吸や循環、さらに意識の状態にも異常を来したと考えられます。全身性炎症反応症候群(SIRS)と敗血症敗血症は、感染症によって生じた全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome; SIRS)と定義されます。と、いわれてもピンとこない人が多いと思いますので、図1をご覧ください。図1の右側の大きな円がSIRSで、感染症・外傷・熱傷・膵炎・その他の原因により、全身性に炎症反応を来した状態です。何らかの生体侵襲が加わると、まずは局所でサイトカインが産生されて炎症反応が起こります。さらに炎症が進むと炎症は局所に留まらず全身に広がります。そして、本来は有益であるはずの炎症反応が生体への破壊因子として働き、循環動態が悪くなり臓器不全が生じます。このように炎症反応は進行していきますが、表3の診断基準を満たすとき、私たちはSIRSと判断します。図1の左側の大きな円が感染症ですから、感染症によってSIRSを生じた場合(左右の大きな円が重なる部分です)、敗血症と診断されるわけです。ここで強調したいことは、SIRS診断基準の4項目〈表3〉のうち白血球数を除く3項目がバイタルサインであることです。詳しい診察や手間のかかる検査は必要なしにSIRSを見つけることができ、感染症があれば敗血症と診断できます。敗血症であれば一刻も早い抗菌薬の投与が必要になります。通常、補液(生理食塩液、乳酸リンゲル液)を開始しながら各種培養検査(細菌学的検査)を提出し、抗菌薬を開始しますが、この女性の場合は施設内での訪問診療なのでまずは補液を行いました。抗菌薬は広域の抗菌スペクトラムを持つ抗菌薬で開始し、細菌検査結果より狭域の抗菌薬にスイッチします。

6251.

J-COSMO(ジェイ・コスモ)Vol.1 No.1

臨床医の世界に新たなCommon Senseを提供する!当直・救急、外来診療、そして病棟管理。現代の医療現場の最前線で活躍する医師には、ジェネラリスト・スペシャリストの別なく、幅広い臨床力が求められています。超高齢化、ITやAIの急速な浸透、医療保険制度の限界…、激変する環境の中で必要となる新たな「Common Sense」を提供する医学雑誌、それが『J-COSMO[ジェイ・コスモ]』です。救急・総合診療から神経内科・Rheumatologyなどのコンサルテーションのほか、医学教育・研究から医師のライフプランニングまで、30を超える選りすぐりの連載と、旬のテーマを扱った毎号の「Special Topic」があなたにワクワク・ドキドキを運びます。各科のあたりまえを、全科のあたりまえに。『J-COSMO』LIFT OFF!画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。画像をクリックすると、内容の一部をご覧いただけます。    J-COSMO (ジェイ・コスモ) Vol.1 No.1定価2,500円 + 税判型B5判頁数184頁発行2019年4月創刊 偶数月10日発行(隔月刊)編集主幹坂本 壮編集委員岡 秀昭/柴田綾子/高橋宏瑞/水野 篤/和足孝之Amazonでご購入の場合はこちら

6252.

ペットと肺がん死亡率に意外な関連

 わが国でもペットを飼っている人は多く、ここ数年はネコがイヌを上回っている。今回、米国ジョージアサザン大学のAtin Adhikari氏らは、米国の全国コホートにおける18年間の追跡調査で、ネコを飼っている女性は飼っていない女性に比べ、肺がん死亡率が2.85倍と有意に高かったことを報告した。ペットによるこの影響は、喫煙やアトピー性疾患の交絡によって説明されないという。Environmental Research誌2019年2月25日号に掲載。 この研究の対象は、1988~94年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey:NHANES)IIIにおいて、ペット所有に関する質問に回答した19歳以上の1万3,725人で、2010年12月31日まで追跡調査を行った。 主な結果は以下のとおり。・対象者の約43%がペットを飼っており、20.4%がネコ、4.6%が鳥を飼っていた。・18万3,094人年(unweighted)の追跡期間中に肺がんで213人死亡し、肺がん特異的死亡率は1,000人年当たり1.00であった。・喫煙・飲酒・身体活動・BMI・アトピー性疾患歴・血清中コチニンについて調整後、女性では、ペット所有者は非所有者に比べて、肺がん死亡率が2倍以上であった(ハザード比[HR]:2.31、95%信頼区間:1.41~3.79)。ペット別のHRは、ネコが2.85(1.62~5.01)、鳥が2.67(0.68~10.5)、イヌが1.01(0.57~1.77)で、ネコおよび鳥の所有がこの関連に大きく起因していた。・男性では、ペットの有無やペットの種類にかかわらず、有意な関連はみられなかった。

6253.

日本の食品リスク因子は高Na摂取:GBD 2017/Lancet

 2017年の世界の健康的な食品および栄養素の摂取状況は、ほとんどすべてが最適ではなかった(suboptimal)ことが、米国・ワシントン大学のAshkan Afshin氏らGBD 2017 Diet Collaboratorsの調査で明らかとなった。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年4月3日号に掲載された。非最適食(suboptimal diet)は、非感染性疾患(NCD)の重要かつ予防可能なリスク因子だが、そのNCD負担に及ぼす影響を系統的に評価した研究は、これまでなかったという。195ヵ国の食品に起因する死亡数とDALYを評価 研究グループは、世界195ヵ国の主要な食品および栄養素の摂取状況を調査し、非最適食の摂取がNCD死亡率や罹患率に及ぼす影響を定量化した(Bill & Melinda Gates Foundationの助成による)。 最適な摂取量は、全死因死亡のリスクを最小化するリスク曝露量と定義された。相対的なリスク評価法を用い、25歳以上の成人において、個々の食品がリスク因子として寄与する疾患特異的負担の割合(人口寄与割合[PAF]とも呼ばれる)を評価した。解析の主要な情報には、個々の食品因子の摂取、食品因子が疾患エンドポイントに及ぼす効果量、最も死亡リスクが低い摂取量が含まれた。 次いで、疾患特異的PAF、死亡率、障害調整生命年(DALY、早死におよび障害を有することで失われた年数)を用いて、個々の疾患の転帰における食品に起因する死亡数およびDALYを算出した。主な食品リスク因子は、高ナトリウム・低全粒穀物・低果物摂取量 2017年の世界の健康的な食品および栄養素の摂取状況は、ほとんどすべてが最適ではなかった。最適食との乖離が最も大きかったのは、ナッツ・種子類、牛乳、全粒穀物であり、それぞれ1日の最適レベルの12%(3g)、16%(71g)、23%(29g)しか摂取されていなかった。 2017年の食品のリスク因子に起因した死亡数は1,100万人(95%不確実区間[UI]:1,000万~1,200万)であり、2億5,500万DALY(2億3,400万~2億7,400万)が食品リスク因子によるものだった。 世界的な死亡数およびDALYにおける主要な食品リスク因子は、高いナトリウム摂取量(死亡数:300万人[95%UI:100万~500万]、DALY:7,000万DALY[3,400万~1億1,800万])、低い全粒穀物摂取量(300万人[200万~400万]、8,200万DALY[5,900万~1億900万])および低い果物摂取量(200万人[100万~400万]、6,500万DALY[4,100万~9,200万])であった。 日本は、人口が多い上位20ヵ国のうち、年齢標準化全食品関連死の割合(10万人当たりの死亡数97人[95%UI:89~106])およびDALY(10万人当たり2,300 DALY[2,099~2,513])が最も低かった。また、日本は、食品関連の心血管疾患死の割合(10万人当たりの死亡数69人[63~75])およびDALY(10万人当たり1,507 DALY[1,389~1,639])と、糖尿病死の割合(10万人当たりの死亡数1人[1~1])およびDALY(10万人当たり234 DALY[161~321])が最も低かった。中国、タイと並び、日本の主要な食品リスク因子は、高いナトリウム摂取量だった。 食品データはさまざまな情報源によるもので、すべての国から得られたわけではない。そのため、食品リスクへの曝露の推定値の統計学的不確定性が増大した。また、ナトリウムは、随時尿検体のデータを含めなかったため、データ代表性の指標が、他の食品リスクに比べ低くなった。 著者は、「本研究は、NCDの死亡率および罹患率に及ぼす非最適食の潜在的な影響に関する包括的な全体像を提供し、国を超えた食品の改善の必要性を強調するものである。また、これらの知見は、エビデンスに基づく食品介入を実施する際に有益な情報をもたらし、その介入が毎年のヒトの健康に及ぼす影響の評価基盤を提供すると考えられる」としている。

6254.

脳卒中およびその病型を病院到着前から見分ける分類スコア(JUST)を開発

 兵庫医科大学脳神経外科講師 内田 和孝氏らは、病院到着前に脳卒中の病型(脳卒中、脳大血管閉塞[LVO]、頭蓋内出血[ICH]、クモ膜下出血[SAH])を予測する脳卒中病型分類スコア(JUST)を開発した。研究の成果は、Stroke誌2018年8月号に掲載された。 脳卒中は、その病型により治療アプローチや緊急度が大きく異なるため、病院到着前に脳卒中の病型が予測できれば、より早期により適切な治療を提供することが可能となる。しかし、現在報告されている病型予測ツールは、1つの病型のみを対象とするものや病型を分類せずに脳卒中全般を扱うものであった。そこで、本研究は、救急救命士が脳卒中を疑う患者に、脳卒中、LVO、ICH、およびSAHを予測するスコアを開発することを目的に実施された。Derivationと validationの2段階でJUSTスコアを構築・検証 JUSTスコアを開発する研究では、モデル作成(derivation)段階およびモデル検証(validation)段階のコホート研究がそれぞれ実施された。 DerivationおよびValidationは、それぞれ2015年6月~2016年3月の後向き多施設共同コホート、2016年8月~2017年7月の前向き多施設共同コホートにて行われ、それぞれ1,229例および1,007例が含まれた。 評価項目は、症状、徴候、病歴からなる29の予測変数であった。JUSTスコアが脳卒中およびその病型を病院到着前から見分ける有用なツールであることを証明 主な結果は以下のとおり。・Derivationコホート1,229例(年齢中央値72歳、男性55%)のうち、脳卒中 533例、LVO 104例、ICH 169例、SAH 57例が観察された。・DerivationコホートにおけるJUSTスコアの予測能は、AUCが、脳卒中 0.88、LVO 0.92、ICH 0.84、SAH 0.89であった。・Derivationコホートにおける多変量ロジスティック回帰モデルでは、21の変数が、脳卒中、LVO、ICH、SAHのいずれとも独立して関連していた。・Validationコホート 1,007例(年齢中央値75歳、男性56%)の脳卒中 617例、LVO 131例、ICH 183例、SAH 50例が観察された。・ValidationコホートにおけるJUSTスコアの予測能は、AUCが、脳卒中 0.80、LVO 0.85、ICH 0.77、SAH 0.94であった。・救命救急士による21項目の変数入力にかかる時間の中央値は37秒であった。 本研究で開発されたJUSTスコアは、病院前段階で脳卒中の病型を同時に分類する最初のツールであり、脳卒中疑い患者の適切な病院への搬送や、急性期脳卒中患者への適切な治療提供(血管内治療、tPA、手術など)に役立つことが期待される。 本論中において、著者らは、JUSTスコアの利用が患者の生命を救い、急性期脳卒中患者の機能予後を間違いなく減少させるだろうと結論した。

6255.

第8回 高齢者の運動療法の進め方、工夫のポイント【高齢者糖尿病診療のコツ】

第8回 高齢者の運動療法の進め方、工夫のポイントQ1 運動量(負荷)と時間の設定について、基本的な考え方を教えてください高齢の糖尿病患者さんでは、運動療法の効果は血糖降下作用のみにとどまりません。筋肉量や筋力低下の抑制、フレイルや認知機能低下の予防、抑うつ予防、心肺機能の維持、ストレス解消など多岐にわたります。また一口に運動療法といっても、有酸素運動やレジスタンス運動、柔軟性運動(ストレッチ)、バランス運動など様々です。有酸素運動は歩行や水泳などの全身運動を指し、骨格筋などで酸素を取り入れて糖質や遊離脂肪酸を燃焼させ、エネルギー(ATP)を生成する運動です。運動開始から10分ほど経過すると糖質が利用されはじめ、15分ほど経過すると遊離脂肪酸が利用されはじめるので、糖質と遊離脂肪酸の双方が利用されるには20分以上の運動時間が必要となります。また運動強度としては、Borgの自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)の「ややきつい」と感じる程度が適当であり、心拍数で120拍/分程度、安静時脈拍の1.5~2倍の拍動数を示すレベルが目安となります(図1)。ただし、自律神経障害がある場合には脈拍が参考にならないこともあるので注意が必要です。画像を拡大するジョギングであれば、「隣の人とおしゃべりしながら走れる程度」を目安とすれば良いと思います。糖尿病患者の糖代謝の改善が持続するのは、運動後12~72時間のため、頻度としては週に3~5回が必要となります。標準的な考え方としては、週に150分以上のウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動を行うと、血糖コントロールの改善や糖尿病合併症の進行予防が期待できます。ウォーキングであれば、1回につき20~30分、1日2回ずつ行うのが理想です。しかし、今まで運動習慣のなかった方がいきなり20分以上の運動量をこなすのは困難です。そのため、実践可能な量から開始していくのが良いでしょう。まずは1日に5分程度でも良いので、ペットを連れて散歩する、ごみを捨てに行く、買い物に行くなどから始めてもらいます。できれば毎日行っていただくよう指導しています。外出することを習慣づけてしまえば、運動量を増やしていくことも容易となるからです。なお、運動は食後1時間程度から開始すると、食後高血糖の抑制効果が得られます。高齢の糖尿病患者は食後高血糖を来しやすいため、食後に運動することを推奨しています。レジスタンス運動とは、ダンベルを利用した体操や、腹筋や腕立て伏せといった筋力トレーニングなどを指します。高齢の糖尿病患者が、軽度の負荷であるレジスタンス運動を継続して行うと、筋肉量が有意に増加したという報告があります1)。最近のメタ解析では、2型糖尿病患者がレジスタンス運動を行うと、筋力だけでなく、血糖コントロールが改善するとも報告されています2)。レジスタンス運動は、少なくとも週2回以上行うことが推奨されています。ただし、フレイルがあってレジスタンス運動が十分施行できない場合には、柔軟性運動から始めて、軽度の負荷のレジスタンス運動を行い、有酸素運動やバランス運動を加えて、さらにレジスタンス運動の負荷を強めていくという流れが良いと思います。こうした運動を多要素の運動といい、タンパク質の十分な摂取と組み合わせると、フレイルや身体機能を改善することが報告されています3)。市町村の運動教室(筋力トレーニングを含むもの)やジムに参加したり、ヨガや太極拳などに参加したりすることも有効です。Q2 効果的な運動の組み合わせってありますか?有酸素運動とレジスタンス運動の併用が有効であることはよく知られていますが、そのベストな割合ははっきりしていません。しかし、どちらから先に始めるのが適当かについて検証した論文はあります。1型糖尿病患者12人に対して、運動中および運動後の血糖変化を測定したもので、レジスタンス運動を先行させた方が血糖変動は少なく、運動後や夜間の低血糖発症頻度も少なくなる可能性が示唆されました4)。また、血管平滑筋の緊張状態はレジスタンス運動で増加し、有酸素運動で緩和されるとも報告されています5)。高齢の糖尿病患者では動脈硬化性変化も大きいことから、血管平滑筋の緊張状態を緩和する意味からも、レジスタンス運動を先に行い、その後有酸素運動を行う方が良いのではないかと考えています。Q3 膝や腰の悪い患者さんに、推奨できる運動はありますか?多くの高齢糖尿病患者が、膝や腰の痛みを抱えており、思うように運動療法が施行できないことが多々あります。また、腎障害や網膜症、大血管障害などの合併症を有することも多いため、十分な運動の施行はさらに難しくなるのが悩ましいところです。有酸素運動とレジスタンス運動の双方を満たし、さらに膝や腰などへの負担が少ない運動としては、水中歩行があります(図2)。普段から積極的にジムへ通っている方などには、週2回程度、水中をゆっくり30分程度歩いていただくことを推奨しています。画像を拡大するしかし、プールやジムに通う習慣がないと、新たに始めるのを躊躇される方も多いのが実情です。このような患者さんには、運動を行うための準備段階として、軽度の身体活動の機会をできるだけ増やし、日常生活の中で簡単に行うことができるプログラムを提供することが重要と考えられます。最近ではNEAT(non exercise activity thermogenesis:普段の生活の中で座ったり家の中をうろうろ動き回ったりするなど、日常生活活動で消費するエネルギーのこと)の効果が注目されており6)、軽度の身体活動でも高齢糖尿病患者における体力の維持に寄与する可能性は十分あると考えられます。そのため、まずは、坐位や臥位の時間をできるだけ短くすることを指導します。次に、家の中でもできる運動を開始するように勧めます。たとえば、椅子に座ったままで足踏みをしたり、膝を高く持ち挙げたり、下肢を水平に上げて保持するなどの運動は、テレビを観ながらでも行うことができます。これらは歩行時の足の振出しや、階段での足の持ち上げに有効な、腸腰筋群を強化します(図3)。画像を拡大するQ4 転倒・骨折リスク低減に、推奨できる運動はありますか?転倒・骨折リスクの低減には、バランス運動が効果的です。例えば片足立ちは、体幹を支える大腿四頭筋の筋力維持に有効です。転倒防止に机や椅子につかまって行っても構わないので、片足立ちを左右30秒ずつ、1日3回程度から開始して、徐々に時間を延ばしていきます。これらの運動は道具も不要で膝などへの負担も少ないため、取り組みやすく、おススメです。最近では、慢性腎臓病においても運動は腎機能を悪化させず、一部は改善するという報告があります。また、定期的な運動を行っている血液透析患者の生命予後は、運動を行っていない患者に勝るという報告もあります7)。合併症があり、思うように運動できない場合でも、「家の中の掃除や簡単な料理など、家事を行ってみる」ところから始めて、「少しでも外出してみる」方向へ進み、徐々に自信がついてから、「これなら続けられる」と感じて自己効力感を高めていくことができれば、運動の効果が期待できると思います。また、1つの運動に飽きてしまったら、いくらでも別の運動に変えていって構いません。高齢糖尿病患者に対する運動療法の目的は、健康寿命を延ばすことです。個人差が大きいため、個々に合った運動療法が見つかるまで色々な方法を提案し、その中から患者さん自身が選び、継続していけるようになることが望ましいでしょう。1)Singh NA, et al. J Am Med Dir Assoc.2012; 13: 24-30.2)Lee J, et al. Diabetes Therapy.2017; 8: 459-473.3)Liao C-D, et al. Nutrients.2018.Dec 4[Epub ahead of print]4)Yardley JE, et al. Diabetes Care.2012; 35: 669-675.5)Okamoto T, et al. J Appl Physiol.2007; 103: 1655-1661.6)Levine JA, et al. Science.2005; 307: 584-586.7)Greenwood SA, et al. J Kidney Dis.2015; 65: 425-434.

6256.

心不全患者の突然死、わが国でも高い精度で予測可能に/日本循環器学会

 欧米で開発された心不全患者の突然死の統計的な発症予測モデルSeattle Proportional Risk Model(SPRM)を用いることにより、日本人の心不全患者においても高い精度で突然死の発症を予測できることが示唆された。突然死の予防に有効な植込み型除細動器(ICD)を含めた治療方針を検討するうえで役立つことが期待される。2019年3月29~31日に開催された第83回日本循環器学会学術集会で、慶應義塾大学医学部循環器内科の福岡 良磨氏らが発表した。 心不全の患者では、突然死のリスクが高いことが知られている。わが国の急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改訂版)では、心臓の駆出率と心不全症状の程度の2項目による突然死リスク(ICD適応)の評価を推奨しているが、これだけの情報では突然死の発症予測は難しいと指摘されている。一方、欧米では、米国・ワシントン大学のWayne C. Levy氏らにより、患者の年齢/性別、身長/体重、血圧、心臓の駆出率、心不全症状の程度、血液検査所見などの10項目を加味して統計的にリスク予測を行うSPRMが開発され、高い精度での突然死予測能が得られている。今回、福岡氏らはワシントン大学との共同研究により、日本人心不全患者の突然死の発症頻度を調査するとともに、SPRMを用いた際の突然死の予測能を検証した。 本研究では、2009年1月から2015年8月までに慶應義塾大学病院、榊原記念病院、杏林大学病院、聖路加国際病院に入院し、West Tokyo Heart Failure Registryに登録された急性心不全患者2,240例を解析した。 主な結果は以下のとおり。・2年間の追跡の結果、356例(15.9%)の全死亡を認め、そのうち76例(3.4%)が突然死だった。・SPRMは日本人においても、欧米と同等に良好な精度で突然死を予測できた(C統計量:0.63[95%信頼区間:0.56~0.70])。・心臓の駆出率が低下した患者において、従来のガイドラインによる基準(心臓の駆出率の低下と心不全症状の程度の2項目)と、SPRMによる突然死の予測能を比較したところ、SPRMによる突然死の予測能のほうが精度は高かった(ガイドラインによる基準でのC統計量:0.53[95%信頼区間:0.42~0.63]、SPRMでのC統計量:0.65[95%信頼区間:0.55~0.75])。

6257.

統合失調症に対する抗炎症薬補助療法~メタ解析

 統合失調症に対する抗炎症薬補助療法が、症状改善に寄与することが最近のエビデンスで示唆されている。しかし、認知機能、全般的機能、副作用に対する抗炎症薬補助療法の効果については、システマティックに研究されていない。韓国・カトリック大学のMyeongju Cho氏らは、統合失調症に対する抗炎症薬補助の効果を包括的に調査するため、メタ解析を実施した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年3月13日号の報告。 PubMed、EMBASE、Cochrane Database of Systematic Reviewsを含むオンラインデータベースより、精神病理、神経認知、全般的機能、錐体外路系副作用を含む臨床アウトカムを調査したランダム化プラセボ対照二重盲検試験を検索した。調査対象抗炎症薬は、アスピリン、セレコキシブ、ω3脂肪酸、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体モジュレーター、プレグネノロン、N-アセチルシステイン、ミノサイクリン、davunetide、エリスロポエチンであった。 主な結果は以下のとおり。・定量分析のための選択基準を満たした研究は、62件(2,914例)であった。・抗炎症薬補助により、PANSSの総スコア、陽性症状スコア、陰性症状スコアの有意な減少が認められた。・ミノサイクリンおよびプレグネノロン補助療法では、認知機能の有意な改善が認められた。・全体的に抗炎症薬補助療法により、全般的な機能は有意に改善していた。・抗炎症薬補助療法は、プラセボと比較し、副作用に有意な差は認められなかった。・ベースライン時のPANSS総スコアおよび罹病期間は、精神症状改善に対する抗炎症薬補助療法の効果を緩和する因子として同定された。 著者らは「抗精神病薬単独療法よりも、抗炎症薬補助療法を用いた有効性および安全性が支持された。しかし、抗炎症薬補助療法のより詳細な効果を理解するためには同種の臨床プロファイルを有する患者に焦点を当てた研究が必要である」としている。■関連記事統合失調症治療に抗炎症薬は有用か初回エピソード統合失調症患者におけるアリピプラゾールとリスペリドンの抗炎症効果の比較精神疾患患者の認知機能と炎症マーカーとの関連が明らかに

6258.

1型糖尿病児の血糖コントロール、持続皮下vs.頻回注射/BMJ

 英国の1型糖尿病の小児では、1年時の血糖コントロールに関して、持続皮下インスリン注入療法(CSII)には頻回注射法(MDI)を凌駕する臨床的有益性はないことが、同国Alder Hey Children’s NHS Foundation TrustのJoanne C. Blair氏らが行ったSCIPI試験で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年4月3日号に掲載された。CSIIは費用対効果が優れるとするメタ解析や経済評価の報告があるが、いずれも小規模な無作為化対照比較試験や観察研究のデータに基づくものであった。また、1型糖尿病の成人患者のクラスター無作為化試験(REPOSE試験)では、CSIIはMDIを超える有益性をもたらさないことが示されている。1年時の血糖コントールを比較する無作為化試験 研究グループは、1型糖尿病の小児における診断から1年間のCSIIとMDIの有効性、安全性、費用対効果を比較する目的で、プラグマティックな多施設共同非盲検無作為化対照比較試験を実施した(英国国立衛生研究所[NIHR]健康技術評価プログラムの助成による)。 対象は、1型糖尿病を新規に診断された7ヵ月~15歳の小児であった。1型糖尿病のきょうだいがいる患児や、血糖コントロールに影響を及ぼす可能性のある薬物療法またはほかの疾患の診断を受けている患児は除外された。 被験者は、診断から14日以内にCSIIまたはMDIを開始する群に無作為に割り付けられた。体重と年齢に基づき、インスリン アスパルト(CSII、MDI)、インスリン グラルギンまたはインスリン デテミル(MDI)の開始用量を算出し、血糖の測定値および各施設の診療方針に従って用量を調節した。 主要アウトカムは、12ヵ月時の血糖コントロール(HbA1c値[mmol/mol]で評価)とした。両群とも、血糖コントロール、目標値の達成率が低い 2011年5月~2017年1月の期間に、イングランドおよびウェールズの15の小児糖尿病に関するサービスを提供する国民保健サービス(NHS)施設で293例が登録され、CSII群に144例、MDI群には149例が割り付けられた。ベースラインの全体の年齢中央値は9.8歳(IQR:5.7~12.3)、女児が47.8%であった。 12ヵ月時のITT集団の平均HbA1c値は、CSII群とMDI群でほぼ同等であり、臨床的に意義のある差を認めなかった(60.9 vs.58.5mmol/mol、補正後平均群間差:2.4mmol/mol、95%信頼区間[CI]:-0.4~5.3、p=0.09)。また、per-protocol集団でも有意な差はなかった(p=0.67)。 HbA1c値<58mmol/mol(2015年8月時点での英国の目標値)の達成率は、2群とも低かった(CSII群46 vs. MDI群55%、相対リスク:0.84、95%CI:0.67~1.06、p=0.16)。また、重症低血糖(6 vs.2%、3.1、0.6~15.1、p=0.17)および糖尿病性ケトアシドーシス(2 vs.0%、5.2、0.3~106.8、p=0.24)の発生率も低かった。 CSII群では、重篤でない有害事象が54件発生し、重篤な有害事象は14件みられた。MDI群では、それぞれ17件、8件であった。また、PedsQL(子供の健康関連QOLの評価尺度)の糖尿病モジュールスコアは、患児の自己評価では両群に有意差はなかったが、親の評価ではCSII群のほうが良好だった(補正後平均群間差:4.1、95%CI:0.6~7.6)。 CSII群は、1例当たりの費用が1,863ポンド(95%CI:1,620~2,137;2,179ユーロ、2,474ドル)高かった(4,404 vs.2,541ポンド)。質調整生存年(QALY)には有意な差はなかった(0.910 vs.0.916、群間差:-0.006、95%CI:-0.031~0.018)。 著者は、「CSIIはMDIに比べ、1年時の臨床的有効性が高くなく、費用対効果も優れなかった」とまとめ、認識すべき重要なポイントとして次の3点を挙げている。(1)血糖コントロールは両群とも十分に良好とはいえない、(2)対象は新規診断例であり、1型糖尿病の治療をより多く経験した患児では、CSIIで良好な結果の達成率が優れる可能性がある、(3)技術の進歩が、CSII治療の負担を軽減し、優れた血糖コントロールの期間内の達成を促進する可能性がある。

6259.

第17回 心電図界のギョーカイ用語、知りたくない?~QRS波の命名法~(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第17回:心電図界のギョーカイ用語、知りたくない?~QRS波の命名法~(前編)心室の収縮を表す「QRS波」。単一の波のように思えて、実は、いくつかの波が合わさっているんです。個々人で微妙に波形が異なったり、心臓病になって心臓に“キズ”がつくと、かなり複雑になったり…。そんなQRS波に焦点をあて、その命名法をDr.ヒロが2回シリーズでお届けします。前編の今回は、各波形の基本的な命名法を扱いましょう。【問題】次の(1)~(6)のQRS波は、どう呼んだらいいか? 波形に注目して「~型」と答えよ。(図1)さまざまなQRS波画像を拡大する解答はこちら(1)rS型、(2)qR型、(3)qRs型、(4)qRS型、(5)QR型、(6)QS型解説はこちら(1)と(2)は、基本中のキホンです。極論すれば、正常なQRS波形は、この2ついずれかのパターンしかありません。ここで、QRS波形の命名法として、以下2つの基本的ルールについて学びましょう。上向き波と下向き波をどう呼ぶか?アルファベット表記の大文字・小文字をどう使い分けるか?“暗号化されたQRS波”たとえば、皆さんが講義やカンファレンスで、『V1誘導のQRS波形は、「rSr'型」の不完全右脚ブロックパターンを示しています』と聞いて、どんな波形のことか、すぐに思い浮かべることはできますか? 心電図の世界では、QRS波形(configuration)の表現法に一定のルールがあります。まぁ、“業界用語”みたいなものかな。冒頭にも取り上げたように、ボクたちが通常「QRS波」と呼んでいるスパイク状の波は、単一ではなく、いくつかの上向き(陽性)波と下向き(陰性)波が合わさってできています。より正確な表現は「QRS群」(QRS complex)。つまり、“複合”ってコト。このQRS波の命名法について、詳しく説明している本は少ないですが、今回、具体例を用いて解説します。これを理解すると、波形に親しみが持てるようになるでしょう。“基本的な波形要素の名称と大きさ”まず、上向き(陽性)波から。これは「R波」の“一択”でOK。シンプルでしょ? QRS波の命名のスタートは、必ずこの「R波」を認識することから始まると考えて下さい。一方の下向き(陰性)波は、「Q波」と「S波」の2通りがあります。「最初のR波よりも手前に陰性波があったらQ波」のように述べている教科書もありますが、やや回りくどく感じますね(“最初”という表現は後編で扱いますが複数ある場合も踏まえます)。要はQRS波の最初の波が下向きで始まっていたら、それが「Q波」というワケ。それ以外の下向き波は、すべて「S波」と呼んじゃってOKです。そして、もう一つ。一般的な名称は「Q波」、「R波」、「S波」でいいんですが、振幅が小さな場合は、アルファベットの小文字で「q波」、「r波」、「s波」と表記するんです。Dr.ヒロ流の目安は3mm。これに満たない波は“小さい”と判断します。もちろん、これはローカル・ルールで絶対的なものではないので、大体でいいんです(ボクは3mmギリギリでも小文字で書いています)。さて、基本を知ったらすぐ適用。これがDr.ヒロ流心電図学習の極意の一つ。以上のことを踏まえて、問題の波形を1つずつ丁寧に確認してみましょう。(1)は、はじめに小さなR波、つまり「r波」があって、次に大きな「S波」ですね。あとは、時間の流れに沿って左から呼ぶだけですから、「rS型」です。これはV1~V3などの右前胸部誘導(または前壁誘導)で主に見られる波形で、「右室パターン」というニックネームもあります。QRS電気軸のところで、“下向き優勢”といった波形の代表です(第8回)。(2)はどうでしょう? 立派にツンッと立った「R波」が出現する前に小さな「q波」があります。下向き波から始まっているので、「s波」ではありません。よって、「qR型」となりますね。こちらは、V5、V6などの左側胸部誘導(または側壁誘導)で主に見られ、「左室パターン」と呼ばれます。こちらは“上向き優勢”のQRS波です。(3)は、(2)とほとんど一緒ですが、最後に小さな下向き波(s波)が出現しているので、「qRs型」が正解です。これも広義の「左室パターン」と呼べる類縁波形です。その調子でいってみましょう。(4)は「R波」を中心に、前後に下向き波。前は小さいので「q波」、後は大きさが十分ですから「S波」でいいでしょう。つまり「qRS型」が正解です。(5)は「R波」の手前に大きい「Q波」が存在するので、「QR型」が正しい呼び方です。どうです? わかってくるとポンポン名前が出てくるでしょう? 単純だけれど、こんな小さな“喜び”が勉強を続ける力になります。“右室パターンと左室パターンとは何ぞ”さて、(1)~(3)で突如として登場した「右室/左室パターン」という表現。これは、次の図を見ると理解が深まります(図2)。(図2)胸部誘導電極と両心室の位置関係画像を拡大するこの図は、心臓レベルの胸部CT画像(水平断)に、胸部誘導の電極位置を示したものです(“宇宙人”が心臓を眺めていますね)。QRS波は、両心室の興奮を示しますが、通常は心筋ボリュームの多い左室成分が主に反映されていると考えて下さい。医学生や研修医にレクチャーする際、ボクは「心室内の電気の流れは、心臓の中心から左室の“先っぽ”(心尖部)に向かう方向だよ」と説明しています。すると、左室をド真ん前に見据えるゴロク(V5、V6)誘導は、この“電流”をそのまま受け入れる場所ですから、(2)や(3)のように立派なR波がそびえる波形となります。これが「左室パターン」というのも納得ですよね?一方の右室に近いV1やV2誘導側はどうでしょうか? 起こっている電気現象は1つなので、心室中隔をはさんで、V5・V6と正反対に位置するV1やV2にとって、心室内の“電流”は自分たちからどんどん離れていくように感じられるでしょう。その結果、基本の左室パターン(2)を上下反転させた(1)のようなカタチがV1やV2誘導の基本波形となります。「右室パターン」というのは、右室収縮を主に表すという意味“ではなく”、“右室側から”左室収縮を見た様子と理解しておきましょう。“「Q波」は心筋梗塞の爪痕!?”ところで、(2)~(5)のいずれにも「Q波」がありますが、(5)の「Q波」だけ真の「Q波」で、ほかは「q波」なのがわかりますか? 大きさだけではなく、(5)の「Q波」は“幅”も広いですよね?これは、「陳旧性心筋梗塞」、つまり過去の心筋梗塞の“爪痕”として見られる「異常Q波」です。梗塞巣を反映しているとされます。おおむね、幅の広さで本物の“爪痕”かどうかを決めてOKですが、実は、小さな「q波」でも「異常Q波」と考えるべき状況もあるため(とくにV1~V3誘導)、いずれ詳しく扱いたいと思います。あえてここで「心筋梗塞」の話をしたのは、最後の(6)の波形にも関係するからです。どうです、この波形? 最初に上向きの「R波」を探そうとしても…ないんです。このような“下向き波だけ”という特殊な状況では、「R波」がない以上、「Q波」とも「S波」とも決めかねてしまいますね。では、どう呼ぶのが正解か…これは、なんと「QS型」です! 人によっては「QSパターン」とも呼称されます。ただ、QRS波の最初が下向き波から始まっているという観点では「Q波」ですし、しかもこれだけ幅広となると…そう、これも「異常Q波」の1つと考えていいんです。問題のV3誘導は、V1~V3(V4)の前壁誘導で「陳旧性心筋梗塞」の“証拠”として出てくる典型的な波形になります。「QS型(パターン)」を認識・命名し、心筋梗塞と関連付けて捉えることが大事ですね。さて、今回はQRS波形の命名法の基本を扱いました。最後はボクお得意の“脱線”で「Q波」と心筋梗塞の関係にも言及しました。心電図の“業界用語”に、少しは慣れましたか?『ザギンのかわいいチャンネーいる店バミっといたんで、テッペンあたりにシータクでおねがいしやーす!』おっと、これは本当の“ギョーカイ用語”(笑)。世代がバレてお恥ずかしいですが、中学・高校生の頃、勉強に疲れた時、ボクの秘かな楽しみはTVのバラエティ番組を見ることでした。うすピンク色のカーディガンを肩にかけ、怪しいサングラスのプロデューサーが放つ台詞を芸能人がイジる…。ウーン、なんか「昭和」。もう時代は「平成」から「令和」に変わろうとしているのに。まだまだ“オッサン”ではなく“若手”と呼ばれたいDr.ヒロなのでした(笑)。「後編」では、病気になった心臓でみられる、ギザギザ度の増した複雑な波形の命名法について扱います。乞うご期待!Take-home MessageQRS波形の命名では、上向きのR波を基盤に、下向き波(Q波、S波)をどう呼ぶか考える一部の「Q波」や「QS型」は心筋梗塞に関連する重要波形正常な心電図波形は、すべて「右室パターン」「左室パターン」のいずれか、またはその亜型である*杉山 裕章. 心電図のみかた、考え方[基礎編].中外医学社;2013.p.68-74.*杉山 裕章. 心電図のはじめかた.中外医学社;2017.p.71-91.【古都のこと~岡崎別院~】岡崎別院(左京区)は、梅の季節にお薦めしたい“隠れスポット”の一つです。浄土真宗の開祖、親鸞聖人が居したと言われ、岡崎神社に隣接しています。曇天の早朝、周りを見渡すと自分一人。親鸞聖人が後鳥羽上皇による承元の法難で越後国に流される間際、御姿を映して名残を惜しんだとされる「鏡池」をそっと眺めました。何とも言われぬ気分になり、横を向くと「八房の梅」が咲いていました。一つの花に八つの実をつけ、初代の木は聖人お手植えだそう。ここにまつわる時代背景を学ぶと、“人”にまつわるさまざまなことを考えさせられます。

6260.

認知症患者へのアミロイドPETが患者管理に影響/JAMA

 病因が不確定な軽度認知障害(MCI)および認知症の患者に対し、アミロイドPETを行ったところ、約6割の患者で施行前とは異なる患者管理に変更されたとの研究結果が、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のGil D. Rabinovici氏らが実施したIDEAS試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月2日号に掲載された。アミロイドPETは、アルツハイマー病の主要な神経病理学的特徴である脳アミロイド斑を検出する。アミロイドPETを臨床評価に追加すると、診断精度が向上するとされるが、アミロイドβの蓄積は他の神経変性疾患や認知機能が正常な高齢者にもみられるという。施行前後の患者管理の変更を評価する単群縦断研究 本研究は、MCIおよび認知症患者におけるアミロイドPET導入と、その後の臨床的管理の変更との関連を評価する単群縦断研究(米国Alzheimer's Associationなどの助成による)。 対象は、65歳以上のメディケア受給者で、過去24ヵ月以内にMCIまたは認知症の診断を受けた患者であった。また、次の3つのアミロイドPETの適正使用基準を満たすことが求められた。(1)専門医による包括的評価で認知機能障害の病因が不明、(2)アルツハイマー病の診断が考慮される、(3)アミロイドPETの導入で診断および患者管理の変更が予測される。 2016年2月~2017年9月に、米国の595施設の認知症専門医946人により1万6,008例が登録され、2018年1月までフォローアップが行われた。認知症専門医は、PET施行前と施行後90±30日時に、診断名と管理計画を記載した症例報告を作成した。 主要エンドポイントは、PET施行前後での患者管理の変更とし、アルツハイマー病の薬物療法、その他の薬物療法、安全性と将来の管理計画に関するカウンセリングを含む複合アウトカムで評価した。変更された患者の割合が30%の閾値を超えた場合に、臨床的に意味があると判定された。副次エンドポイントには、PET施行前後での診断名の変更(アルツハイマー病から非アルツハイマー病へ、またはその逆)の割合が含まれた。患者管理の変更の割合:MCI 60.2%、認知症63.5% 1万1,409例(71.3%、年齢中央値75歳[IQR:71~80]、女性50.9%)が試験を完遂し、最終解析の対象となった。このうち、MCIは6,905例(60.5%、75歳、49.6%)、認知症は4,504例(39.5%、77歳、52.8%)であった。また、アミロイドPET陽性は、MCIが3,817例(55.3%)、認知症は3,154例(70.1%)であった。9例のスキャンが評価不能だった。 PET施行による複合アウトカムの変更は、MCIでは6,905例中4,159例(60.2%、95%信頼区間[CI]:59.1~61.4)、認知症では4,504例中2,859例(63.5%、62.1~64.9)で行われており、いずれも30%の閾値を有意に上回っていた(p<0.001、片側検定)。 事後解析では、PET施行後のアルツハイマー病治療薬への変更は、MCIが43.6%、認知症は44.9%で、非アルツハイマー病治療薬(認知機能、気分、行動への作用薬、他の神経学的病態の治療薬、認知症のリスク因子の治療薬)への変更は、それぞれ22.9%、25.4%で行われ、カウンセリングが24.3%、20.7%で実施されていた。 また、病因診断がアルツハイマー病から非アルツハイマー病へ変更された患者は、1万1,409例中2,860例(25.1%、95%CI:24.3~25.9)で、非アルツハイマー病からアルツハイマー病への変更は、同1,201例(10.5%、10.0~11.1)で行われた。 著者は、「アミロイドPETが臨床アウトカムの改善に寄与するかを明らかにするには、さらなる検討を要する」としている。

検索結果 合計:11856件 表示位置:6241 - 6260