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(膿疱性)乾癬〔(pustular) psoriasis〕

1 疾患概要■ 概念・定義表皮角化細胞の増殖あるいは角質の剥離障害によって、角質肥厚を主な病態とする疾患群を角化症という。なかでも炎症所見の顕著な角化症、つまり潮紅(赤くなること)と角化の両者を併せ持つ角化症を炎症性角化症と称するが、乾癬はその代表的疾患である1)。乾癬は、遺伝的要因と環境要因を背景として免疫系が活性化され、その活性化された免疫系によって刺激された表皮角化細胞が、創傷治癒過程に起こるのと同様な過増殖(regenerative hyperplasia)を示すことによって引き起こされる慢性炎症性疾患である2)。■ 分類1)尋常性(局面型)乾癬最も一般的な病型で、単に「乾癬」といえば通常この尋常性(局面型)乾癬を意味する(本稿でも同様)。わが国では尋常性乾癬と呼称するのが一般的であるが、欧米では局面型乾癬と呼称されることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の75.9%を占める3)。2)関節症性乾癬尋常性(局面型)乾癬患者に乾癬特有の関節炎(乾癬性関節炎)が合併した場合、わが国では関節症性乾癬と呼称する。しかし、この病名はわかりにくいとの指摘があり、今後は皮疹としての病名と関節炎としての病名を別個に使い分けていく方向になると考えられるが、保険病名としては現在でも「関節症性乾癬」が使用されている。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の14.6%を占める3)。3)滴状乾癬溶連菌性上気道炎などをきっかけとして、急性の経過で全身に1cm程度までの角化性紅斑が播種状に生じる。このため、急性滴状乾癬と呼ぶこともある。小児や若年者に多く、数ヵ月程度で軽快する一過性の経過であることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の3.7%を占める3)。4)乾癬性紅皮症全身の皮膚(体表面積の90%以上)にわたり潮紅と鱗屑がみられる状態を紅皮症と呼称するが、乾癬の皮疹が全身に拡大し紅皮症を呈した状態である。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の1.7%を占める3)。5)膿疱性乾癬わが国では単に「膿疱性乾癬」といえば汎発性膿疱性乾癬(膿疱性乾癬[汎発型])を意味する(本稿でも同様)。希少疾患であり、厚生労働省が定める指定難病に含まれる。急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する重症型である。尋常性(局面型)乾癬患者が発症することもあれば、本病型のみの発症のこともある。妊娠時に発症する尋常性(局面型)乾癬を伴わない本症を、とくに疱疹状膿痂疹と呼ぶ。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の2.2%を占める3)。■ 疫学世界的にみると乾癬の罹患率は人口の約3%で、世界全体で約1億2,500万人の患者がいると推計されている4)。人種別ではアジア・アフリカ系統よりも、ヨーロッパ系統に多い疾患であることが知られている4)。わが国での罹患率は、必ずしも明確ではないが、0.1%程度とされている5)。その一方で、健康保険のデータベースを用いた研究では0.34%と推計されている。よって、日本人ではヨーロッパ系統の10分の1程度の頻度であり、それゆえ、国内での一般的な疾患認知度が低くなっている。世界的にみると男女差はほとんどないとされるが、日本乾癬学会の調査ではわが国での男女比は2:16)、健康保険のデータベースを用いた研究では1.44:15)と報告されており、男性に多い傾向がある。わが国における平均発症年齢は38.5歳であり、男女別では男性39.5歳、女性36.4歳と報告されている6)。発症年齢のピークは男性が50歳代で、女性では20歳代と50歳代にピークがみられる6)。家族歴はわが国では5%程度みられる6,7)。乾癬は、心血管疾患、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、うつ病の合併が多いことが知られており、乾癬とこれらの併存疾患がお互いに影響を及ぼし合っていると考えられている。膿疱性乾癬に関しては、現在2,000人強の指定難病の登録患者が存在し、毎年約80人が新しく登録されている。尋常性(局面型)乾癬とは異なり男女差はなく、発症年齢のピークは男性では30~39歳と50~69歳の2つ、女性も25~34歳と50~64歳の2つのピークがある8)。■ 病因乾癬は基本的にはT細胞依存性の免疫疾患である。とくに、細胞外寄生菌や真菌に対する防御に重要な役割を果たすとされるTh17系反応の過剰な活性化が起こり、IL-17をはじめとするさまざまなサイトカインにより表皮角化細胞が活性化されて、特徴的な臨床像を形成すると考えられている。臓器特異的自己免疫疾患との考え方が根強くあるが、明確な証明はされておらず、遺伝的要因と環境要因の両者が関与して発症すると考えられている。遺伝的要因としてはHLA-C*06:02(HLA-Cw6)と尋常性(局面型)乾癬発症リスク上昇との関連が有名であるが、日本人では保有者が非常に少ないとされる。また、特定の薬剤(βブロッカー、リチウム、抗マラリア薬など)が、乾癬の誘発あるいは悪化因子となることが知られている。膿疱性乾癬に関しては長らく原因不明の疾患であったが、近年特定の遺伝子変異と本疾患発症の関係が注目されている。とくに尋常性(局面型)乾癬を伴わない膿疱性乾癬の多くはIL-36受容体拮抗因子をコードするIL36RN遺伝子の機能喪失変異によるIL-36の過剰な作用が原因であることがわかってきた9)。また、尋常性(局面型)乾癬を伴う膿疱性乾癬の一部では、ケラチノサイト特異的NF-κB促進因子であるCaspase recruitment domain family、member 14(CARD14)をコードするCARD14遺伝子の機能獲得変異が発症に関わっていることがわかってきた9)。その他、AP1S3、SERPINA3、MPOなどの遺伝子変異と膿疱性乾癬発症とのかかわりが報告されている。■ 症状乾癬では銀白色の厚い鱗屑を付着する境界明瞭な類円形の紅斑局面が四肢(とくに伸側)・体幹・頭部を中心に出現する(図1)。皮疹のない部分に物理的刺激を加えることで新たに皮疹が誘発されることをKoebner現象といい、乾癬でしばしばみられる。肘頭部、膝蓋部などが皮疹の好発部位であるのは、このためと考えられている。また、3分の1程度の頻度で爪病変を生じる。図1 尋常性乾癬の臨床像画像を拡大する乾癬性関節炎を合併すると、末梢関節炎(関節リウマチと異なりDIP関節が好発部位)、指趾炎(1つあるいは複数の指趾全体の腫脹)、体軸関節炎、付着部炎(アキレス腱付着部、足底筋膜部、膝蓋腱部、上腕骨外側上顆部)、腱滑膜炎などが起こる。放置すると不可逆的な関節破壊が生じる可能性がある。膿疱性乾癬では、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する8)(図2)。膿疱が融合して環状・連環状配列をとり、時に膿海を形成する。爪病変、頬粘膜病変や地図状舌などの口腔内病変がみられる。しばしば全身の浮腫、関節痛を伴い、時に結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼症状、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがある10)。図2 膿疱性乾癬の臨床像画像を拡大する■ 予後乾癬自体は、通常生命予後には影響を及ぼさないと考えられている。しかし、海外の研究では重症乾癬患者は寿命が約6年短いとの報告がある11)。これは、乾癬という皮膚疾患そのものではなく、前述の心血管疾患などの併存症が原因と考えられている。乾癬性関節炎を合併すると、前述のとおり不可逆的な関節変形を来すことがあり、患者QOLを大きく損なう。膿疱性乾癬は、前述のとおり呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがあり、生命の危険を伴うことのある病型である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多くの場合、先に述べた臨床症状から診断可能である。症状が典型的でなかったり、下記の鑑別診断と迷う際は、生検による病理組織学的な検索や血液検査などが必要となる。乾癬の臨床的鑑別診断としては、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、亜鉛欠乏性皮膚炎、ジベルばら色粃糠疹、扁平苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、類乾癬、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、ボーエン病、乳房外パジェット病、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚サルコイド、白癬、梅毒、尋常性狼瘡、皮膚疣状結核が挙げられる。膿疱性乾癬に関しては、わが国では診断基準が定められており、それに従って診断を行う8)。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明することが診断基準の1つにあり、診断上は生検が必須検査になる。また、とくに急性期に検査上、白血球増多、CRP上昇、低蛋白血症、低カルシウム血症などがしばしばみられるため、適宜血液検査や画像検査を行う。膿疱性乾癬の鑑別診断としては、掌蹠膿疱症、角層下膿疱症、膿疱型薬疹(acute generalized exanthematous pustulosisを含む)などがある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外用療法副腎皮質ステロイド、活性型ビタミンD3製剤が主に使用される。両者を混合した配合剤も発売されている。2)光線療法(内服、外用、Bath)PUVA療法、311~312nmナローバンドUVB療法、ターゲット型308nmエキシマライトなどが使用される。3)内服療法エトレチナート(ビタミンA類似物質)、シクロスポリン、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、メトトレキサート、ウパダシチニブ(JAK1阻害薬)、デュークラバシチニブ(TYK2阻害薬)が乾癬に対し保険適用を有する。ただし、ウパダシチニブは関節症性乾癬のみに承認されている。4)生物学的製剤抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル)、抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)、抗IL-17A抗体(セクキヌマブ、イキセキズマブ)、抗IL-17A/F抗体(ビメキズマブ)、抗IL-17受容体A抗体(ブロダルマブ)、抗IL-23p19抗体(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)、抗IL-36受容体抗体(スペソリマブ)が乾癬領域で保険適用を有する。中でも、スペソリマブは「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている膿疱性乾癬に特化した薬剤である。また、多数の生物学的製剤が承認されているが、小児適応(6歳以上)を有するのはセクキヌマブのみである。5)顆粒球単球吸着除去療法膿疱性乾癬および関節症性乾癬に対して保険適用を有する。4 今後の展望抗IL-17A/F抗体であるビメキズマブは、現時点では尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に承認されているが、関節症性乾癬に対する治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には関節症性乾癬にもビメキズマブが使用できるようになる可能性がある。膿疱性乾癬に特化した薬剤であるスペソリマブ(抗IL-36受容体抗体)は静注製剤であり、現時点では「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている。しかし、フレア(急性増悪)の予防を目的とした皮下注製剤の開発が行われており、その治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には急性期および維持期の治療をスペソリマブで一貫して行えるようになる可能性がある。乾癬は慢性炎症性疾患であり、近年は生物学的製剤を中心に非常に効果の高い薬剤が多数出てきたものの、治癒は難しいと考えられてきた。しかし、最近では生物学的製剤使用後にtreatment freeの状態で長期寛解が得られる例もあることが注目されており、単に皮疹を改善するだけでなく、疾患の長期寛解あるいは治癒について議論されるようになっている。将来的にはそれらが可能になることが期待される。5 主たる診療科皮膚科、膠原病・リウマチ内科、整形外科(基本的にはすべての病型を皮膚科で診療するが、関節症状がある場合は膠原病・リウマチ内科や整形外科との連携が必要になることがある)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 膿疱性乾癬(汎発型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本皮膚科学会作成「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」(現在、日本皮膚科学会が新しい乾癬性関節炎の診療ガイドラインを作成中であり、近い将来に公表されるものと思われる。一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本乾癬患者連合会(疾患啓発活動、勉強会、交流会をはじめとしてさまざまな活動を行っている。都道府県単位の患者会も多数存在し、本会のwebサイトから検索できる。また、都道府県単位の患者会では、専門医師を招いての勉強会や相談会を実施しているところもある)1)藤田英樹. 日大医誌. 2017;76:31-35.2)Krueger JG, et al. Ann Rheum Dis. 2005;64:ii30-36.3)藤田英樹. 乾癬患者統計.第32回日本乾癬学会学術大会. 2017;東京.4)Gupta R, et al. Curr Dermatol Rep. 2014;3:61-78.5)Kubota K, et al. BMJ Open. 2015;5:e006450.6)Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011;38:1125-1129.7)Kawada A, et al. J Dermatol Sci. 2003;31:59-64.8)照井正ほか. 日皮会誌. 2015;125:2211-2257.9)杉浦一充. Pharma Medica. 2015;33:19-22.10)難病情報センターwebサイト.11)Abuabara K, et al. Br J Dermatol. 2010;163:586-592.公開履歴初回2019年9月24日更新2022年12月22日

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第3回 これぞ心リハによる恩恵!【今さら聞けない心リハ】

第3回 これぞ心リハによる恩恵!今回のポイント心臓リハビリテーション(心リハ)は心血管疾患患者の症状を改善するだけではなく、病因・病態を改善する「心血管治療」である心リハの効果は多くの臨床試験で証明されている心血管疾患を有するすべての患者に心リハが必要~薬剤を追加する前に心リハオーダを~ケアネットの読者の皆さん、心血管疾患患者に対する心リハの効果について、どの程度ご存じでしょうか?「運動耐容能を改善する」「自覚症状を改善する」と答えた方は正解ですが、それだけでは100点満点中30点程度です。心リハは、心血管疾患患者の運動耐容能(全身持久力・筋力・筋量)・自覚症状を改善するだけではなく、糖代謝、脂質代謝、血管内皮機能、自律神経機能を改善することで、疾患の再発・悪化を抑制し、生命予後をも改善させることが多くの臨床試験で示されています(表1)。(表1)心リハの効果画像を拡大する心リハの効果は、多くの薬剤による効果をひとまとめにしたようなものと言えますが、薬剤のような副作用はありません。また、心血管疾患を患うと多くの患者が鬱状態に陥りますが、心リハで運動療法や多職種介入を行うことでうつや不安が改善します(これがホントの“心”リハ!?)。なので「この患者は歩けるから心リハは必要ないだろう」などと言うことは誤りであり、虚血性心疾患や心不全などで通院加療を行うすべての患者に、心血管治療の一環として心リハが必要なのです。~運動制限と安静を一緒にすべからず~「心リハではエルゴメータを用いた自転車こぎ運動をするけれど、高齢で自転車にも乗れないような心不全患者のリハビリはどうなるの?」「慢性腎臓病(Chronic kidney disease:CKD)を合併している患者は運動してもいいの?」など、いろいろな疑問が湧き上がってくる方もいらっしゃるでしょう。まず、フレイルを合併した高齢者ですが、通常のエルゴメータに乗れなくても、普通の椅子に座ったまま専用の器具を使えば下肢の持久性運動は可能ですし、低強度の筋力トレーニングやバランス機能の改善を目的とした運動も生活機能改善や転倒予防に有用です。また、心リハ時に服薬状況の確認や薬剤の微調整を行うことで、病状悪化による再入院を防ぐことができます1)。次に、CKD患者はどうでしょう? 日本の急性心不全レジストリ研究によると、急性心不全の75%に腎機能障害が認められています2)。つまり、心血管疾患患者の多くがCKDを合併しているわけです。CKD患者で、「小さい頃に腎臓病になって以来、運動は制限されてきました。だから運動はしないんです。」と言う方にしばしば出会います。しかし、これは誤解です。小児が体育で長距離走やサッカーなどの激しい運動をすることと、成人がフィットネスとして自転車こぎ運動やウォーキングを行うことは、目的や身体への負荷量がまったく異なります。運動制限=安静ではないのです。~高齢者やCKD患者に適したプラン~中高年のCKD患者では、有酸素運動や軽度の筋力トレーニングを行うことで、腎機能が悪化することなく全身持久力や筋力、筋量を改善することが報告されており、CKDのガイドラインでも肥満やメタボリックシンドロームを伴うCKD合併心不全患者において運動療法は減量および最高酸素摂取量の改善に有効であるため、行うよう提案されています(小児CKDでも、QOLや運動機能、呼吸機能の点から、軽度~中等度の運動を行うよう提案3)されています)。一般的に中年以降は運動不足になりがちですから、意識的に運動習慣を作っていく必要があります。まだ研究数は多くはありませんが、保存期のCKD患者だけではなく、血液透析患者においても運動療法の有用性が明らかにされつつあります。日本では2011年に「日本腎臓リハビリテーション学会」が発足し、CKD患者に対する運動療法のエビデンス確立と普及を目指した活動が展開されつつあります。「えっ、心リハだけじゃなくて、腎リハもあるの?」そう、“腎リハ“もあるんです。CKD合併患者では、そもそも心血管疾患の合併が多く、透析患者の死亡原因の第1位は心不全です。CKD患者の生活の質と予後を改善するために、今後の心リハ・腎リハの普及が期待されています。心血管疾患と運動、本当に奥が深いですね。<Dr.小笹の心リハこぼれ話>実体験から心リハの有用性を学ぶ私が医学生の頃(約20年前)、心リハの講義はありませんでした。当然ながら、当時ほぼすべての医学生が持っていた医師国家試験の「バイブル」的参考書、イヤー・◯-トにも心リハについての記載はなかったと思います。その後、心リハを知ったのは研修医の時。急性心筋梗塞後の患者さんの離床にあたり、ベットサイド立位から1,000m歩行まで、日ごとに安静度をあげていくことを「心リハ」と呼んでおり、その際に立ち会い、12誘導心電図とモニタ心電図を確認することが研修医のDutyでした(今から思うと急性期の離床リハビリのみで、退院後の運動指導などはあまりできていませんでした)。当時、CCU(Coronary Care Unit)管理の重症患者を含め最大29人もの入院患者を担当し常にあくせくしていた私にとって、「心リハ」の時間はかなりゆったりとした、半ば退屈な時間でした。恥ずかしながら、その頃の私は、「循環器医の本命は救急救命医療!」と思っており、心リハの立ち会いは雑多なDutyの一つという認識でしかなかったのです。そんなある日、印象的な出来事が起こりました。“心リハ”プログラムの一環として、患者さんが500m歩行終了後、次のステップとして初回のシャワー浴前後で心電図・バイタルチェックがあり、シャワー後の心電図確認に呼ばれました。病室に入ると、ベッドに横たわり心電図検査中のその70代男性患者さんは「久々のシャワーは気持ちよかったです」と上機嫌でした。次の瞬間、「さっぱりしましたか、よかったですねー」と言いながら、12誘導心電図を見た私は凍りつきました。研修医の私が見てもびっくりするほど、心電図の胸部誘導でST部分が4~5mmほど“ガバ下がり”していたのです。「○○さん、胸、苦しくないですか!?」と尋ねると、「そういえば、ちょっともやもや…」とシャワーに入れた喜びもちょっと冷めて、少し不安そうな患者さん。ニトロを舌下すると、症状は少し改善しましたが、心電図は完全には戻りません。すぐに主治医へ連絡して、緊急カテーテル検査となりました。冠動脈造影では、2週間前に留置された前下行枝中間部のステント内に血栓性閉塞を認め、同部位に再度PCIを行いました。いわゆる亜急性ステント血栓症(Subacute stent thrombosis:SAT)でした。その後、2週間程度で患者さんは無事に自宅退院されましたが、あのとき、心リハでルーティンのシャワー後の心電図をとっていなかったら、その患者さんは元気に退院できていなかったかもしれません。この症例を含め、重篤な症状が明らかとなってから救命救急医療を行うのではなく、症状が出ていないうちから早期に異常を発見し対応することの大切さを、いくつもの症例で経験しました。病状が安定しているように見える場合であっても、循環器疾患の患者さんでは、“急変”がしばしば認められます。担当医とて一生懸命治療に取り組んでいるのに、なぜ急変してしまう患者さんがいるのか…それは常に後手後手に回っていた自分の診療姿勢や、患者さんのこれまでの生活歴・治療歴にも問題がある、と考えるようになりました。「発症してから、あるいは急変してから治療しても、できることは限られている…“急変”させないように早期から介入することが大事だ」-医師として3年目、もっと心血管疾患予防を学びたいと、私は大学院入学を決めていました。「患者さん自身が教科書である」とは、医学教育の父と言われるウィリアム・オスラーの名言ですが、私が今も心リハを専門にしているのは、研修医時代に担当させていただいた患者さんたちと、指導していただいた先生方のおかげです。1)Rich MW, et al. New Engl J Med. 1995;333:1190-1195.2)Yaku H, et al. Circ J. 2018;82:2811-2819.3)日本腎臓学会編. CKD診療ガイドライン2018

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腫瘍循環器病学の基礎研究の1つとなる論文(解説:野間重孝氏)-1113

 腫瘍循環器病学(Onco-cardiology)という領域には、まだあまりなじみのない方が多いのではないかと思う。この領域が本格的に稼働し始めたのは今世紀に入ってからで、実際、最初の専門外来がテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター内に開設されたのは2000年の出来事だった。わが国で同種の外来が大阪府立成人病センターにおいて初めて設置されるには、その後10年を待たなくてはならなかった。こうした事情を考えると、この領域について少し解説を加える必要があるのではないかと思う。 がん治療における心毒性の歴史は、アントラサイクリン心筋症に始まる。抗がん剤において急性期心毒性に加え、1年以上も経過してから出現する亜急性期心毒性が報告されたことが、同剤の心毒性についての関心を大きく高めた。1970年代の出来事である。その後の研究で、アントラサイクリンの投与容量がドキソルビシン換算400~450mg/m2以上で、高い頻度で心不全の発症が見られることがわかり、投与量を計画的に制限することでその発症を大幅に減少させることが可能になった。この一連の研究が、腫瘍循環器病学のいわば基礎になったことは言うまでもない。 その後がんの病態の解析が進み、今世紀には分子標的薬が出現する。HER2受容体を特異的に阻害する抗体であるトラスツズマブの出現は、今まで増殖性が強く難治性であったHER2陽性乳がんの予後を著明に改善し注目された。しかし、投与前には予想されていなかった心不全例が出現し、その原因としてHER2受容体が心筋細胞にも存在することが証明されたことは、大きな驚きをもって迎え入れられた。最近の最大の話題の1つに、2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した免疫チェックポイント阻害薬があるが、この種の薬剤でも劇症心筋炎が報告され、対応が苦慮されている。つまり新しい抗がん剤が出現すると、さらに新しい作用に合わせた予想できない心毒性が出現する可能性が考えられるのである。 しかし一連の研究の流れが、薬剤の心毒性→薬剤性心筋症→心不全という方向だけだったなら研究は薬剤研究の範囲内にとどまり、腫瘍循環器病学という新しい分野が創出されるに至ったかどうかは疑わしいと思う。がんから回復した患者(がんサバイバー)にがん治療からかなり時期をずらして静脈血栓症が多発すること、そして何よりもがんサバイバーに冠動脈疾患の発生率が高いことが(数倍~10倍ともいわれる)、この領域の研究がぜひ必要と認知される決定的な理由になったのではないかと思う。これらの疾患は原因・病態が複雑でひとくくりにできる性格のものでないことは言うまでもないが、まだその細かな解析にまでは至っていないのが現状である。この領域は、まだ生まれたばかりなのである。 さて、本論文はそうした状況の中、代表的ながん20種について英国の権威あるデータベースであるUK Clinical Practice Research Datalinkを用い、がんサバイバー10万8,215例に対し、年齢・性別をマッチさせた52万3,541例の(つまり複数の)対象をおいて心血管疾患の発生を25年にわたって追跡した大規模疫学研究である。それぞれのがんについて心血管疾患の発生倍率を算出し、かつ信頼区間についても明示された。研究グループの地道な努力に敬意を表するものである。さらに、従来この種の疫学研究は比較的若年者を対象とすることが多かったが、本研究では高齢者も対象としており、かつ年齢が発生頻度と関係することを示したことも注目されるべき点だろう。なお著者らは今回の研究の限界として、投与された化学療法の種類や投与量、がんの再発、心血管疾患の家族歴、人種、食事、アルコール消費量などの情報に信頼できるデータを示すことができなかったことを挙げているが、評者にはこれは確かに限界と言えば限界には違いないが、この種の疫学調査では避けて通れない種類の限界であり、この研究の価値を下げるものではないと思われる。それぞれの患者がそれぞれ置かれた環境で至適治療を受けたという事実が問題で、その結果としてどうなったのかこそが問題だからである。 今後がん治療には、どんどん新しい分野が開拓されていくことが予想される。その際、最も問題になるのが心血管系合併症であることが、はっきりと示されたことは大変に重要なことだと考える。本論文は正確な実態を把握することを主目的とし、何か新しい知見を示すことを目的とはしていない。しかし、今後ますます重要性を増していくであろうこの分野における、記念碑的な論文の1つになるであろうと考えるものである。

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うつ病と糖尿病合併に関する調査結果

 うつ病と糖尿病合併との関連を明らかにするため、オーストリア・ウィーン医科大学のGernot Fugger氏ら欧州リサーチコンソーシアムの治療抵抗性うつ病研究グループ(GSRD)は、多施設共同研究を実施した。Progress in Neuro-Psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年8月30日号の報告。 DSM-IVでうつ病と診断された患者1,410例の2012~16年の人口統計および臨床情報を、横断的に検索した。糖尿病合併の有無により患者特性の比較には、記述統計、共分散分析(ANCOVA)、二項ロジスティック回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・うつ病患者の糖尿病合併ポイント有病率は、6%であった。・糖尿病合併うつ病患者は、高齢、重症、入院、慢性身体疾患の合併の割合が有意に高かった。・現時点での自殺リスクが有意に高く、メランコリックな特徴が顕著であった。・糖尿病合併うつ病患者は、さまざまな増強療法を組み合わせるよりも、1剤以上の抗うつ薬併用療法が行われていた。 著者らは「うつ病患者の糖尿病合併率は、これまでの研究よりも低かったが、研究の地理的要因における糖尿病有病率を考慮すると、一般人口と比較し、うつ病患者はリスクが高いことが示唆された。現時点では、自殺リスクが著しく増加しており、すべての糖尿病合併患者を徹底的に評価する必要がある。うつ病の重症度や治療反応は、糖尿病合併の影響を受けていなかった」としている。

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がん悪液質に対する早期の栄養・運動介入…NEXTAC試験 シリーズがん悪液質(5)【Oncologyインタビュー】第11回

初回化学療法開始時からがん悪液質に対する栄養・運動介入を行うNEXTAC試験が始まった。同試験の実務をリードする静岡県立静岡がんセンター 呼吸器内科の内藤 立暁氏に、同試験の内容を聞いた。がん悪液質の臨床研究試験について、がん治療の臨床研究とは異なる点を教えていただけますか。がん悪液質の患者に対する臨床試験の実施には、通常の抗がん剤の臨床試験と異なり、いくつかの障壁があることがわかっています。1つ目は単独介入の壁です。栄養療法、運動療法、薬物療法のいずれか単独で介入する臨床研究では、一貫した成果を証明できていません。多要因によって発生するがん悪液質にはこれらを組み合わせた治療が必要と考えられています。2つ目は脆弱性の壁です。たとえば、がん悪液質に対する栄養介入や薬物治療の臨床研究では、がんの増悪や病状悪化により治療の遵守率が悪化し、研究の脱落者が多発します。運動介入の研究においても、やはり病状悪化や骨転移による症状などで治療が中断してしまう症例が多く、多くの臨床試験がその脆弱性により妨げられてきました。3つ目は機能回復の壁です。いくつかの薬物治療の臨床研究では骨格筋を増加させることはできたものの、身体機能の回復は得られませんでした。現在も、さまざまな治療法が研究されていますが、現在のところ身体機能を改善した薬物治療は存在しません。そのような中、NEXTAC試験が開始されたのですね。NEXTAC(Nutrition and Exercise Treatment for Advanced Cancer)-ONEならびに-TWO試験は京都府立医科大学の高山浩一先生を研究代表者とした臨床研究であり、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の助成を受けて実施しています。前述の単独介入の壁、脆弱性の壁、機能回復の壁、この3つの悪液質の臨床研究を妨げる壁を乗り越えるために計画されました。NEXTACプログラムは、身体機能の回復を目的とし、進行がんの診断後に早期から運動療法と栄養療法を導入する集学的介入です。運動療法については、脆弱な高齢者のがん患者さんにもやり遂げられる低強度の在宅プログラムとし、下肢筋トレーニングと身体活動を促進するカウンセリングを取り入れています。栄養療法については、栄養カウンセリングを中心とし、分子鎖アミノ酸(BCAA)を含有したサプリメントを用いています。またいずれの治療においても、動機を維持し、行動変容を促進するような教育的なアプローチを取り入れています。第I相試験としてNEXTAC-ONE試験が行われましたが、どのようなものか具体的に教えていただけますか。NEXTAC-ONE試験は、NEXTACプログラムの実現可能性をみる前向き単群の第I相試験です。70歳以上の進行膵がんと肺がん患者さん30例に対し、初回化学療法と同時に、栄養・運動介入を開始し、試験期間は8週間です。海外の類似した集学的治療の研究では、多数の脱落者を出していたため、NEXTAC-ONE試験の実現可能性の主要評価は8週間のNEXTACプログラムへの参加割合としました。栄養・運動の介入が化学療法の開始時から始まるというのは従来では考えられないような早いタイミングではありませんか。従来は、化学療法開始の時期から始めるとは考えなかったかもしれないですね。しかし、進行肺がんや膵がんの患者さんは、診断の時点で半数以上が、すでにがん悪液質を有していることが疫学データで明らかになっており、その後は時間と共に悪液質の割合は増加します。従って、化学療法の開始時が最も適切な開始時期と考えました。NEXTAC-ONE試験の概要対象:1次治療としての化学療法を実施予定の進行期非小細胞肺がん、または膵臓がん患者。年齢70歳以上、PS 0~1、介護を要しない患者(Barthel Index 95点以上)介入:標準化学療法の開始とともに、BCAA含有サプリメント摂取(大塚製薬:インナーパワー®)と管理栄養士による栄養カウンセリング、理学療法士による低強度の在宅での下肢筋力トレーニングの指導、主に看護師による、身体活動量促進のカウンセリングを行う。8週間の治療期間で、3回の運動指導と3回の栄養指導の計6回のセッションで構成される。評価項目:[主要評価項目]実現可能性(治療期間の6回のセッションのうち4回以上参加した患者の割合[副次評価項目]安全性、コンプライアンス、アドヒアランスなど画像を拡大するNEXTACプログラムの詳細栄養介入:栄養カウンセリングでは自宅での食事の栄養組成と摂取量を調査し、体格から計算されたカロリー、蛋白、水分の一日所要量と比較して充足しているか否か評価し、不足分をいかに補うかを指導します。また化学療法中に生じる口腔粘膜炎、味覚障害、や下痢など「摂食に影響を及ぼす症状」Nutrition Impact Symptoms(NIS)に対する対策を指導します。サプリメントは骨格筋の材料となるBCAA含有の製品(大塚医薬:インナーパワー®)を提供しました。低強度下肢筋力トレーニング:がんの治療では、遠方より通院されている方も多いですので、運動療法のために通院が必要となる方法は参加率を低下させます。従って運動処方は自宅で実施できる内容となっています。過去の研究では、上肢・下肢を含めた総合的な筋力トレーニングが用いられてきたのですが、進行がん患者の臨床試験では脱落者が多発します。従って、NEXTACプログラムの運動介入では、歩行に関連した下肢筋力トレーニング絞った低強度の介入としています。画像を拡大する身体活動促進プログラム:身体活動量促進プログラムは、加速度計付き歩数計を用い、歩数目標のゴールを決めて、毎日達成することを目指すものです。その際、抗がん剤の皮疹など外見的要因、下痢などの身体的要因といった外出を妨げる症状のコントロールや転倒防止の指導もカウンセリングプログラムの中に含めています。NEXTAC-ONE試験の結果について教えていただけますか。主要評価項目の参加率(栄養・運動3回ずつのセッションのうち4回以上参加した患者)は30人中29人で参加率は97%と良好でした。コンプライアンスは、サプリメントの服用、筋トレ実施、歩数計装着日はいずれも9割を超えており良好でした。また、介入の成果は行動変容にも出ており、約7割の患者さんが屋外活動を増やし、約8割の患者さんが屋内活動を増やしました。6分間歩行、握力などの身体機能について、化学療法中も維持されている傾向がありました。従って、NEXTACプログラムは実現可能性があり、安全性の問題もなく、身体機能についても効果が期待されるということから、現在はNEXTAC-TWO試験を実施中です。NEXTAC-Two試験はどのようなものか教えていただけますか。NEXTAC-TWO試験は、対象患者の選択基準はNEXTAC-ONE患者とほぼ同じですが、無作為化試験であり、コントロール群と、NEXTAC介入群の各群65名の計130名に参加いただきます。治療期間は12週間です。主要評価項目は介護不要生存期間(Disability-free Survival)、つまり要介護にならずに生存している期間としています。NEXTAC-TWO試験の概要対象:1次治療として化学療法実施予定の進行期非小細胞肺がん(NSCLC)または膵臓がん患者。年齢70歳以上、PS 0~2で、介護を要しない患者(Barthel Index 95以上)介入群:標準化学療法の開始とともに、BCAA含有サプリメント摂取(大塚製薬:インナーパワー®)と管理栄養士による栄養カウンセリング、理学療法士による低強度の在宅での下肢筋力トレーニングの指導、主に看護師による、身体活動量促進のカウンセリングを行う。12週間の治療期間で、4回の運動指導と4回の栄養指導の計8回のセッションで構成される。対照群:標準化学療法のみでNEXTAC介入なし。評価項目:[主要評価項目]無障害生存期間(Disability-free Survival)[副次評価項目]栄養状態、除脂肪体重、運動機能、ADL、QOL、全生存期間、安全性など画像を拡大する本試験は2019年3月に全予定症例の登録が完了しました。現在は追跡期間中であり、2021年に主要評価項目に関する解析を予定しています。参考NEXTAC-ONE試験1.Naito T, et al. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2019;10:73-83. 2.Mouri T, et.al. Asia Pac J Oncol Nurs. 2018;5(4):383-390.3.立松典篤他. 日本緩和医療学会誌 2018;13(4):373-381.NEXTAC-TWO試験1.Miura S, et.al. BMC Cancer. 2019;19(1):528.

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抗不安薬使用とニコチン依存との関連

 医学生においても喫煙は一般的であり、将来のキャリアで禁煙を促進する能力に影響を及ぼす可能性がある。フランス・エクス=マルセイユ大学のA. Bourbon氏らは、フランス医学生における喫煙状況を調査し、心理社会的要因や向精神薬使用とニコチン依存の重症度や日々の喫煙行動との関連について検討を行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌2019年8月30日号の報告。 医学生の募集は、2016年12月13日~2017年5月15日にフランスの医科大学35校においてメーリングリストおよびソーシャルネットワークを通じて行った。日々の喫煙行動に関するアンケートは匿名で、インターネットを用いて収集した。重度のニコチン依存を、Fagerstromのニコチン依存度簡易テスト4以上と定義した。 主な結果は以下のとおり。・アンケート回答者は、医学生1万985人(平均年齢:21.8±3.3歳、男性の割合:31.6%)。・現在、毎日喫煙している医学生は、2,078人(18.9%)であり、重度のニコチン依存は59人(2.8%)で認められた。・多変量解析では、喫煙は、抗不安薬使用、アルコール使用障害、大麻使用障害、経済的困難、性的および身体的暴行歴と独立して関連していた。・重度のニコチン依存は、抗不安薬使用、大麻使用障害、家庭内暴力、身体的暴行、経済的困難と独立して関連していた。 著者らは「医学生のおよそ5人に1人は喫煙しており、職業的および個人的な要因と同様に、喫煙と抗不安薬の使用との関連が認められる」としている。

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メトホルミンとEGFR-TKIの併用、肺腺がんのPFSを有意に延長/JAMA Oncol

 糖尿病治療薬メトホルミンの抗がん剤としての研究は世界的潮流となっているようだ。メキシコ・Instituto Nacional de CancerologiaのOscar Arrieta氏らは非盲検無作為化第II相臨床試験を行い、EGFR-TKI標準治療へのメトホルミン併用投与が、進行肺腺がん患者の無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することを示した。これまで前臨床および後ろ向き研究で、メトホルミンが肺がんを含むさまざまな腫瘍の予後を改善することが示され、とくにEGFR-TKIとの相乗作用に関するエビデンスが蓄積されていた。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月5日号掲載の報告。肺腺がんのPFSがメトホルミン併用群で優位に延長 研究グループは、進行肺腺がん患者のPFSをEGFR-TKI単独療法とメトホルミン・EGFR-TKI併用療法を比較する非盲検無作為化第II相臨床試験を行った。 対象は、18歳以上のEGFR変異陽性StageIIIB/IV肺腺がん患者で、メトホルミン(500mg 1日2回)+EGFR-TKI(標準用量のエルロチニブ、アファチニブまたはゲフィチニブ)群またはEGFR-TKI単独群に無作為に割り付け、忍容できない毒性発現または同意撤回まで投与した。 主要評価項目はintent-to-treat集団におけるPFS。副次評価項目は客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)および安全性であった。 肺腺がんのPFSをEGFR-TKI単独療法とメトホルミン併用療法で比較した主な結果は以下のとおり。・2016年3月31日~2017年12月31日に、計139例のEGFR変異陽性StageIIIB/IV肺腺がん患者(平均年齢59.4歳、女性65.5%)が、EGFR-TKI群(n=70)またはメトホルミン+EGFR-TKI群(n=69)に無作為に割り付けられた。・PFS中央値は、EGFR-TKI群9.9ヵ月に対し、メトホルミン+EGFR-TKI群13.1ヵ月とメトホルミン+EGFR-TKI群で有意に延長した(HR:0.60、95%CI:0.40~0.94、p=0.03)。・OS中央値も、メトホルミン併用群で有意に延長した(31.7ヵ月vs.17.5ヵ月、p=0.02)。 著者は「今回の結果は、第III相プラセボ対照試験の実施を支持するものと考えてよいだろう」とまとめている。

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sacubitril -バルサルタンのHFpEFへの有効性/NEJM

 左室駆出率(LVEF)の保たれた心不全(HFpEF)患者において、ネプリライシン阻害薬sacubitrilとARBバルサルタンの合剤(sacubitril/バルサルタン)は、心血管死およびすべての心不全入院の複合エンドポイントを有意に低下させるという結果には至らなかった。米国・ハーバード・メディカル・スクールのScott D. Solomon氏らが、HFpEF患者を対象にsacubitril/バルサルタンとバルサルタンを比較する無作為化二重盲検試験「PARAGON-HF試験」の結果を報告した。LVEFが低下した心不全患者においては、sacubitril/バルサルタンにより心血管死および心不全による全入院のリスクが低下することが示されていたが、HFpEFに対する有効性はこれまで不明であった。NEJM誌オンライン版2019年9月1日号掲載の報告。sacubitril/バルサルタンとバルサルタンの有効性をHFpEF患者約5,000例で比較 研究グループは、2014年7月18日~2016年12月16日の間に、NYHA心機能分類II~IV、LVEF 45%以上、NT-proBNP高値で構造的心疾患を認める50歳以上の心不全患者4,822例を、sacubitril/バルサルタン群(sacubitril97mg/バルサルタン103mgを1日2回)またはバルサルタン群(160mgを1日2回)に無作為に割り付けた。 sacubitril/バルサルタンとバルサルタンを比較する主要評価項目は、心血管死および心不全による全入院(初回および再入院を含む)の複合エンドポイントであった。 主要評価項目の各項目、ならびに8ヵ月後におけるNYHA心機能分類のベースラインからの変化、腎機能の悪化(e-GFRの50%以上の低下、腎不全末期、腎不全による死亡)、カンザスシティー心筋症質問票(KCCQ)による臨床スコア(スコア:0~100、スコアが高いほど症状と身体的制限が少ないことを示す)の変化などの副次評価項目、安全性についても評価した。intention-to-treat解析を実施した。sacubitril/バルサルタン群とバルサルタン群では心血管死と心不全入院で有意差なし 主要評価項目の複合エンドポイントは、sacubitril/バルサルタン群で562例894件、バルサルタン群で557例1,009件が確認された(率比:0.87、95%信頼区間[CI]:0.75~1.01、p=0.06)。心血管死の発生率はsacubitril/バルサルタン群8.5%、バルサルタン群8.9%(ハザード比[HR]:0.95、95%CI:0.79~1.16)、心不全による全入院はそれぞれ690件および797例(率比:0.85、95%CI:0.72~1.00)であった。 NYHA心機能分類は、sacubitril/バルサルタン群で15%、バルサルタン群で12.6%の患者に改善が認められた(オッズ比:1.45、95%CI:1.13~1.86)。腎機能悪化はそれぞれ1.4%および2.7%で確認された(HR:0.50、95%CI:0.33~0.77)。8ヵ月時点におけるKCCQ臨床スコアの平均変化量は、sacubitril/バルサルタン群が1.0ポイント(95%CI:0.0~2.1)高値であった。 sacubitril/バルサルタン群で、低血圧および血管性浮腫の発現率が高く、高カリウム血症の発現率が低かった。事前に定義したサブグループ解析の結果、LVEFが低い患者および女性患者においてsacubitril/バルサルタンが有効である可能性が示唆された。

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免疫関連有害事象もOncologic emergencyに【侍オンコロジスト奮闘記】第80回

第80回:免疫関連有害事象もOncologic emergencyにJohnson DB, et al. Fulminant Myocarditis with Combination Immune Checkpoint Blockade.N Engl J Med. 2016 Nov 3;375:1749-1755.Salem JE, et al. Abatacept for Severe Immune Checkpoint Inhibitor-Associated Myocarditis.N Engl J Med. 2019;380:2377-2379.Esfahani K, et al.Alemtuzumab for Immune-Related Myocarditis Due to PD-1 Therapy.N Engl J Med. 2019;380:2375-2376.

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多飲症と抗精神病薬との関連

 山梨県立北病院の桐野 創氏らは、多飲症と抗精神病薬との関連を明らかにするためシステマティック・レビューを行った。Progress in Neuro-psychopharmacology & Biological Psychiatry誌オンライン版2019年8月28日号の報告。 抗精神病薬により誘発または改善された多飲症に関する臨床研究および症例報告を含み、MEDLINE、Embase、PsycINFOよりシステマティックに検索した。 主な結果は以下のとおり。・二重盲検ランダム化比較試験(RCT)1件、single-arm試験4件、横断研究1件、ケースシリーズ3件、ケースレポート52件を含む61件が抽出された。・二重盲検RCTでは、多飲症の改善において、オランザピンとハロペリドールとの間に有意な差は認められなかった。・single-arm試験では、2件においてクロザピン治療中に多飲症の改善が認められたが、他の2件ではリスペリドンによる改善が認められなかった。・横断研究では、低ナトリウム血症が第1世代抗精神病薬(FGA)で26.1%、第2世代抗精神病薬(SGA)で4.9%認められた。・ケースシリーズでは、2件においてクロザピンの多飲症改善効果が認められた。他の1件において、FGAで治療された多飲症患者は、統合失調症(70.4%)および精神遅滞(25.9%)であることが示唆された。・ケースレポートでは、90例中67例(75.3%)が統合失調症と診断された。・多飲症発症前に抗精神病薬治療を開始した83例の使用薬剤は、FGAが75例(90.3%)、リスペリドンが11例(13.3%)であった。とくに、ハロペリドール治療が24例(28.9%)と多かった。・抗精神病薬治療後に多飲症が改善した40例では、SGAが36例であり、主にクロザピン(14例、35.0%)で治療されていた。 著者らは「多飲症と抗精神病薬との関連は、高品質なエビデンスが不足しているため因果関係は不明なままであるが、ドパミンD2受容体に対する親和性の高い抗精神病薬は、多飲症リスク増加と関連している可能性がある。また、クロザピンは多飲症治療に有効である可能性がある」としている。

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PCI後の心房細動、エドキサバンベース治療の安全性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた心房細動患者では、抗血栓薬による出血のリスクに関して、エドキサバンベースのレジメンはビタミンK拮抗薬(VKA)ベースのレジメンに対し非劣性であることが、ベルギー・ハッセルト大学のPascal Vranckx氏らが行ったENTRUST-AF PCI試験で示された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年9月3日号に掲載された。エドキサバンは、心房細動患者において、脳卒中および全身性塞栓症の予防効果がVKAと同等であり、出血や心血管死の発生率は有意に低いと報告されている。また、患者の観点からは、VKAよりも使用が簡便とされる。一方、PCI施行例におけるエドキサバンとP2Y12阻害薬の併用治療の効果は検討されていないという。18ヵ国186施設が参加した非劣性試験 本研究は、PCI施行心房細動患者におけるエドキサバン+P2Y12阻害薬の安全性の評価を目的に、18ヵ国186施設で実施された多施設共同非盲検無作為化非劣性第IIIb相試験であり、2017年2月24日~2018年5月7日の期間に患者登録が行われた(Daiichi Sankyoの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、安定冠動脈疾患または急性冠症候群でPCIを受け、経口抗凝固薬の投与を要する心房細動患者であった。 被験者は、PCI施行後4時間~5日の間に、エドキサバン(60mg、1日1回)+P2Y12阻害薬を12ヵ月間投与する群、またはVKA+P2Y12阻害薬+アスピリン(100mg、1日1回、1~12ヵ月)を投与する群に無作為に割り付けられた。エドキサバンの用量は、クレアチニンクリアランス15~50mL/分、体重≦60kg、特定の強力なP糖タンパク質阻害薬(シクロスポリン、dronedarone、エリスロマイシン、ケトコナゾール)の併用のうち1つ以上がみられる場合は、1日30mgに減量された。 主要エンドポイントは、12ヵ月以内の大出血または臨床的に重要な非大出血(ISTH基準)の複合とし、非劣性マージンは1.20であった。主解析はintention-to-treat集団で行い、安全性の評価は1回以上の薬剤投与を受けたすべての患者で実施した。大出血/臨床的に重要な非大出血:17% vs.20%、優越性は認めず 1,506例が登録され、エドキサバンレジメン群に751例、VKAレジメン群には755例が割り付けられた。全体の年齢中央値は70歳(IQR:63~77)で、386例(26%)が女性であった。 ベースラインで189例(13%)が脳卒中の既往歴を有しており、CHA2DS2-VAScスコア中央値は4.0(IQR:3.0~5.0)、HAS-BLEDスコア中央値は3.0(2.0~3.0)であった。456例(30%)にVKA投与歴があり、365例(24%)には新規経口抗凝固薬(NOAC)の投与歴があった。PCI施行から無作為割り付けまでの期間中央値は45.1時間(IQR:22.2~76.2)だった。 12ヵ月時の大出血または臨床的に重要な非大出血イベントの発生は、エドキサバンレジメン群が751例中128例(17%、年間イベント発生率20.7%)、VKAレジメン群は755例中152例(20%、年間イベント発生率25.6%)に認められた。ハザード比は0.83(95%信頼区間[CI]:0.65~1.05、非劣性のp=0.0010、優越性のp=0.1154)であり、エドキサバンレジメン群のVKAレジメン群に対する非劣性が確認され、優越性は認められなかった。 大出血の発生は、エドキサバンレジメン群が751例中45例(6%、年間イベント発生率6.7%)、VKAレジメン群は755例中48例(6%、年間イベント発生率7.2%)であり、両群間に有意な差はみられなかった(HR:0.95、95CI:0.63~1.42)。 致死的出血は、エドキサバンレジメン群が1例(<1%)、VKAレジメン群は7例(1%)に認められた。頭蓋内出血は、それぞれ4例(1%、年間イベント発生率0.6%)および9例(1%、年間イベント発生率1.3%)にみられた。 12ヵ月時の主要な有効性アウトカム(心血管死、脳卒中、全身性塞栓イベント、心筋梗塞、ステント血栓症[definite]の複合)は、エドキサバンレジメン群が49例(7%、年間イベント発生率7.3%)、VKAレジメン群は46例(6%、年間イベント発生率6.9%)に認められ、両群間に有意な差はなかった(エドキサバンのHR:1.06、95%CI:0.71~1.69)。 著者は「大出血/臨床的に重要な非大出血の発生に関して、エドキサバンベースの2剤併用抗血栓療法(DAT)は、VKAベースの3剤併用抗血栓療法(TAT)に対し非劣性であることが示された」とまとめている。

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心房細動合併安定CAD、リバーロキサバン単剤 vs.2剤併用/NEJM

 血行再建術後1年以上が経過した心房細動を合併する安定冠動脈疾患患者の治療において、リバーロキサバン単剤による抗血栓療法は、心血管イベントおよび全死因死亡に関してリバーロキサバン+抗血小板薬の2剤併用療法に対し非劣性であり、大出血のリスクは有意に低いことが、国立循環器病研究センターの安田 聡氏らが行ったAFIRE試験で示された。研究の成果は2019年9月2日、欧州心臓病学会(ESC)で報告され、同日のNEJM誌オンライン版に掲載された。心房細動と安定冠動脈疾患が併存する患者における最も効果的な抗血栓治療の選択は、個々の患者の虚血と出血のリスクの注意深い評価が求められる臨床的な課題とされている。日本の294施設が参加、単剤の非劣性を検証する無作為化試験 本研究は、日本の294施設が参加した多施設共同非盲検無作為化試験であり、2015年2月23日~2017年9月30日の期間に患者登録が行われた(バイエル薬品との契約を介して循環器病研究振興財団の助成を受けた)。 対象は、年齢20歳以上、心房細動と診断され、登録の1年以上前に経皮的冠動脈インターベンション(PCI)または冠動脈バイパス手術(CABG)を受けた患者、または冠動脈造影で血行再建術の必要がない冠動脈疾患(狭窄≧50%)と判定された患者であった。 被験者は、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬であるリバーロキサバン(クレアチニンクリアランス15~49mL/分の患者は10mgを1日1回、同≧50mL/分の患者は15mgを1日1回)の単剤療法を受ける群、またはリバーロキサバン+抗血小板薬(治療医の裁量でアスピリンまたはP2Y12阻害薬から選択)の2剤併用療法を受ける群に無作為に割り付けられた。 有効性の主要エンドポイントは、脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建術を要する不安定狭心症、全死因死亡の複合とし、非劣性の評価が行われた(非劣性マージンは1.46)。安全性の主要エンドポイントは、国際血栓止血学会(ISTH)基準による大出血とし、優越性の評価が行われた。 なお、本研究は、併用群で全死因死亡のリスクが高かったため、独立データ安全性監視委員会の勧告により2018年7月、早期中止となった。事後解析では有効性の優越性を確認 2,215例(修正intention-to-treat集団)が登録され、単剤群に1,107例が、併用群には1,108例が割り付けられた。全体の平均年齢は74歳、男性が79%であった。1,564例(70.6%)がPCI、252例(11.4%)がCABGを受けていた。 ベースラインのCHADS2スコア中央値は2、CHA2DS2-VAScスコア中央値は4、HAS-BLEDスコア中央値は2であった。併用群の778例(70.2%)がアスピリン、297例(26.8%)はP2Y12阻害薬の投与を受けていた。治療期間中央値は23.0ヵ月(IQR:15.8~31.0)、フォローアップ期間中央値は24.1ヵ月(17.3~31.5)だった。 有効性の主要エンドポイントは、単剤群が89例、併用群は121例で発生し、人年当たり発生率はそれぞれ4.14%および5.75%であり、単剤群の併用群に対する非劣性が確認された(ハザード比[HR]:0.72、95%信頼区間[CI]:0.55~0.95、非劣性のp<0.001)。 また、安全性の主要エンドポイントの人年当たり発生率は、単剤群が1.62%(35例)と、併用群の2.76%(58例)に比べ有意に優れ(HR:0.59、95%CI:0.39~0.89、p=0.01)、単剤群の優越性が確証された。 副次エンドポイントである全死因死亡の人年当たりの発生率は、単剤群は1.85%であり、併用群の3.37%と比較して有意に良好であった(HR:0.55、95%CI:0.38~0.81)。このうち、心血管死(1.17% vs.1.99%、0.59、0.36~0.96)および非心血管死(0.68% vs.1.39%、0.49、0.27~0.92)のいずれにおいても、単剤群が有意に優れた。 事前に規定されたサブグループ(性別、年齢、脳卒中リスク、出血リスク、腎機能など)の解析では、有効性の主要エンドポイントは全般に単剤群で一致して良好な傾向が認められ、大出血イベントに関しても、同様の効果が観察された。 著者は、「事前に規定されていない解析では、有効性の主要エンドポイントに関して、単剤群の併用群に対する優越性が確認された」としている。

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CABGが3枝病変には有益?SYNTAX試験の10年死亡率/Lancet

 冠動脈3枝病変および左冠動脈主幹部病変の治療において、第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)と冠動脈バイパス術(CABG)では、10年間の全死因死亡に差はなく、3枝病変患者ではCABGの生存利益が有意に大きいが、左冠動脈主幹部病変患者ではこのような利益はないことが、オランダ・エラスムス大学のDaniel J F M Thuijs氏らが行ったSYNTAX試験の延長試験であるSYNTAXES(SYNTAX Extended Survival)試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。SYNTAX試験は、de-novo 3枝および左冠動脈主幹部病変患者における第1世代パクリタキセル溶出ステントを用いたPCIとCABGを比較する非劣性試験であり、最長5年のフォローアップでは、全死因死亡率はPCIが13.9%、CABGは11.4%(p=0.10)と報告されている。3枝および左冠動脈主幹部病変患者をCABGとPCIに割り付け 本研究は、北米と欧州の18ヵ国85施設が参加した多施設共同無作為化対照比較試験であり、2005年3月~2007年4月の期間に患者登録が行われた(フォローアップ期間の5~10年目はGerman Foundation of Heart Research、0~5年目はBoston Scientific Corporationの助成を受けた)。 対象は、年齢21歳以上のde-novo 3枝病変および左冠動脈主幹部病変を有する患者であった。PCIまたはCABGの既往歴、急性心筋梗塞、同時に心臓手術が適応の患者は除外された。被験者は、PCIまたはCABGを受ける群に無作為に割り付けられた。 主要エンドポイントは10年全死因死亡であり、intention-to-treat解析で評価した。糖尿病の有無別、および3段階の冠動脈病変の複雑性(SYNTAXスコアが≦22点:複雑性が低い、23~32点:中等度、≧33点:高い)に基づき、事前に規定されたサブグループ解析が行われた。CABG群に比べ3枝病変患者はPCI群の死亡率が有意に高かった 1,800例が登録され、PCI群に903例(平均年齢65.2[SD 9.7]歳、女性24%)、CABG群には897例(65.0[9.8]歳、21%)が割り付けられた。10年時の生存転帰の情報は、PCI群841例(93%)、CABG群848例(95%)で得られた。 10年時までに、PCI群では244例(27%)、CABG群では211例(24%)が死亡し、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.17、95%信頼区間[CI]:0.97~1.41、p=0.092)。5年時をランドマークポイントとするランドマーク解析を行ったところ、0~5年(1.19、0.92~1.54)および5~10年(1.15、0.89~1.50)のいずれにおいても、両群間に死亡率の差はみられなかった。 また、3枝病変患者では、PCI群がCABG群に比べ死亡率が有意に高かったのに対し(151/546例[28%]vs.113/549例[21%]、HR:1.41、95%CI:1.10~1.80)、左冠動脈主幹部病変患者では両群間に差はなかった(93/357例[26%]vs.98/348例[28%]、0.90、0.68~1.20、交互作用のp=0.019)。 糖尿病患者(HR:1.10、95%CI:0.80~1.52)および非糖尿病患者(1.20、0.96~1.51)においても、PCI群とCABG群の間に死亡率の差はなかった(交互作用のp=0.66)。冠動脈病変の複雑性別の解析では、複雑性が低い群(1.13、0.79~1.62)と中等度の群(1.06、0.77~1.47)の死亡率には治療群間に差はなく、高い群(1.41、1.05~1.89)ではCABG群が良好であったが、これらの3つの群に線形傾向はみられなかった(傾向のp=0.30)。 著者は、「血行再建術を要する複雑な冠動脈3枝病変を有する患者はCABGを受けるべきと考えられるが、選定された左冠動脈主幹部病変患者では、PCIはCABGに代わる適切な選択肢であり、同様の10年生存率をもたらす」としている。

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閉経後ホルモン療法、5年以上で乳がんリスク増大/Lancet

 先進国の平均体重の女性では、閉経後ホルモン療法(MHT)を50歳から5年間受けた場合の50~69歳における乳がんリスクの増加は、エストロゲン+プロゲスターゲン毎日投与では約50人に1人であり、エストロゲン+プロゲスターゲンの月に10~14日投与では70人に1人、エストロゲン単独では200人に1人であるとの調査結果が、英国・オックスフォード大学のValerie Beral氏らCollaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancerによって示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月29日号に掲載された。MHTの種類別の乳がんリスクに関する既報の知見には一貫性がなく、長期的な影響に関する情報は限定的だという。MHTの種類別の乳がんリスク増加のメタ解析 研究グループは、MHTの種類別の乳がんリスクに関するエビデンスを、公表・未公表を問わず収集し、関連する無作為化試験のエビデンスをレビューするとともに、メタ解析を行った(Cancer Research UKと英国医学研究会議[MRC]の助成による)。 主解析には、MHTの種類と使用のタイミングを検討した前向き研究の個々の参加者のデータを用いた。この種類と使用時期に関する完全な情報のある参加者を中心に解析を行った。研究の特定は、1992年1月1日~2018年1月1日の期間に、公式・非公式の情報源を定期的に検索することで行った。 現MHT使用者では、MHT使用の最終報告から最長5年(平均1.4年)までのデータを解析に含めた。ロジスティック回帰を用いて、特定のMHTの使用者の非使用者との比較における補正リスク比(RR)を算出した。中止後も、ある程度の過度のリスクが10年以上持続 フォローアップ期間中に10万8,647例の閉経後女性が乳がんを発症し、発症時の平均年齢は65歳(SD 7)であり、このうち5万5,575例(51%)がMHTを使用していた。完全な情報のある患者では、平均MHT使用期間は、現使用者が10年(6)、元使用者は7年(6)であり、閉経時の平均年齢は50歳(5)、MHT開始時の平均年齢は50歳(6)だった。 MHTは、膣エストロゲンを除き、乳がんリスクの増加と関連しており、使用期間が長くなるほどリスクが増加し、エストロゲン/プロゲスターゲンはエストロゲン単独に比べリスクが高かった。 現使用者では、このような過度の乳がんリスクは使用期間が1~4年と短くても明確に認められた(エストロゲン/プロゲスターゲンのRR:1.60、95%信頼区間[CI]:1.52~1.69、エストロゲン単独のRR:1.17、95%CI:1.10~1.26)。 エストロゲン/プロゲスターゲンの使用期間5~14年の乳がんリスクは、エストロゲン+プロゲスターゲンの毎日使用が、エストロゲン+プロゲスターゲンの月に10~14日の使用よりも高かった(それぞれRR:2.30[95%CI:2.21~2.40]、1.93[1.84~2.01]、異質性のp<0.0001)。 現使用者の使用期間5~14年における乳がんのRRは、エストロゲン受容体陽性腫瘍が陰性腫瘍よりも高く、MHT開始年齢が40~44歳、45~49歳、50~54歳、55~59歳の女性でほぼ同じであり、60歳以降に開始した女性や肥満の女性では低下した(肥満女性では、エストロゲン単独のMHTによる乳がんリスクの増加はほとんどなかった)。 MHT中止後も、ある程度の過度のリスクが10年以上持続し、その強度は使用期間の長さに依存しており、使用期間が1年未満の場合はリスクがほとんど増加しなかった。 著者は「MHTを10年間使用した場合の乳がんリスクの増加は、今回の5年使用のリスクの約2倍に達すると考えられる」としている。

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不眠症患者の疲労に関連する因子

 不眠症患者では一般的に疲労が認められるが、臨床症状との関連についてはあまり知られていない。韓国・成均館大学校のSeog Ju Kim氏らは、不眠症患者の疲労と臨床症状との関連について調査を行った。Journal of Psychiatric Research誌2019年10月号の報告。 スタンフォード大学睡眠医学センターを受診した患者を対象に、不眠重症度指数(ISI)、不眠症状アンケート(ISQ)、疲労重症度尺度(FSS)、エプワース眠気尺度(ESS)、こころとからだの質問票(PHQ-9)を実施した。 主な結果は以下のとおり。・ISIおよびISQにより、6,367例中2,024例が不眠症と診断された(年齢:43.06±15.19、女性:1,110例、男性:914例)。・重度の疲労を伴う不眠症患者(1,306例)では、そうでない不眠症患者(718例)と比較し、不眠症状、日中の眠気、抑うつ症状の重症度が高く、習慣的な睡眠時間が長かった。これらは、高い疲労スコアの独立した予測因子であった。・日中の眠気(ESS≧10)を有する不眠症患者では、抑うつ症状と習慣的な睡眠時間のみが疲労スコアを予測した。・不眠症の重症度と日中の眠気との相互関係は、疲労の重症度を有意に予測した。・抑うつ症状は、不眠症と疲労の有意なメディエーターであった。・終夜の睡眠ポリグラフ検査(PSG)を受けている不眠症患者(598例)では、疲労とPSGパラメーターとの間に有意な関連は認められなかった。 著者らは「不眠症または抑うつ症状のマネジメントは、不眠症患者の疲労を軽減させる可能性がある。その一方で、睡眠時間を延長させる任意の介入は、疲労を悪化させる可能性がある」としている。

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外傷医学的に一番危ない球技はどれか?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第146回

外傷医学的に一番危ない球技はどれか?いらすとやより使用球技って、球そのものが凶器と化すので、スポーツの中ではリスクの高い部類に属します。もちろん、ハンマー投げのハンマーのほうが破壊力は高いですが…。2017年に男子高校生が投げたハンマーが、女性生徒の頭に直撃して、搬送先の病院で亡くなったという痛ましい事故もありました。Fraser MA, et al.Ball-Contact Injuries in 11 National Collegiate Athletic Association Sports: The Injury Surveillance Program, 2009-2010 Through 2014-2015.J Athl Train. 2017;52:698-707.これは、2009~2010年および2014~2015年における11の国立大学体育協会(NCAA)スポーツにおけるボール外傷のデータをまとめた疫学研究です。対象となったスポーツは、男子サッカー、女子フィールドホッケー、女子バレーボール、男子野球、女子バスケットボール、男子ラクロス、女子ラクロス、女子サッカーです。なんとなくですが、ホッケーが一番怖そうです。ものすごいスピードで飛んできますもんね、ボールが。顔面に当たったらもうトラウマになりそう…。さて、球技によるボール外傷の頻度を調査したところ、1,123のボール外傷がありました。アスリート曝露(AE)という単位ごとにその頻度を評価しました。AEというのは1人のアスリートが1回の競技に参加した場合に1と定めたものです。「人年」みたいな感覚でよいですね。これに基づくと、最も頻度が高かったのは女子ソフトボールで、1万AEあたり8.82という結果でした。私が高いかなと予測していた女子フィールドホッケーは7.71、その次は男子野球で7.20でした。また、女子のほうが男子よりも脳震盪と診断されたボール外傷の頻度が高いことが分かりました。アメリカの女子ソフトボールは、ヘルメットの大きさや保護部位などに、厳密な規定がないそうで、それが外傷を増加させた可能性があります。

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加熱式タバコによる受動喫煙の害は?【新型タバコの基礎知識】第8回

第8回 加熱式タバコによる受動喫煙の害は?Key Points加熱式タバコによる受動喫煙のリスクは、あるかないかで言えば、ある。ただし、紙巻タバコと比べると程度は低いと考えられる。すでに禁煙になっている場所を加熱式タバコはOKとすべきではない。加熱式タバコによる受動喫煙はどれぐらい発生するのでしょうか?屋内空間で加熱式タバコを使用したときにどれぐらいの濃度で、粒子状物質や有害物質が検出されるのか、調べた研究がこれまでに3つあります。その3つの文献の結果をまとめたのが表です。画像を拡大する一番左の文献を例として表の見かたを説明します。Ruprechtらによる2017年の研究は、イタリア国立がんセンターの研究者らが実施した研究です。アイコス・スティックと紙巻タバコのそれぞれを用いた場合に、屋内空間に充満する有害物質の濃度を1時間に1.5回換気するという設定で測定しています。基準となる紙巻タバコの場合の有害物質の濃度を100%とした場合に、アイコス・スティックの場合の有害物質濃度が何%に相当するのか、が表されています。たとえば、PM2.5の濃度は1.3~1.5%であり、アセトアルデヒドは5.0~5.9%、ホルムアルデヒドは6.9~7.1%でした。100%より小さな値=加熱式タバコの場合の濃度が低いことを表しています。3つの文献の結果をみると、右2つのタバコ会社からの報告では、粒子状物質(PM:particulate matter)が検出されていないのに対して、タバコ会社から資金提供のない研究機関からの報告では検出されていると分かります。しかも、タバコ会社による研究では測定されていなかったPM nmという10~1,000nmの大きさの粒子状物質が比較的多く出ていると分かりました。ただし、比較的多いといっても紙巻タバコと比べると4分の1から5分の1というレベルであり、他の大きさの粒子状物質の濃度は紙巻タバコに比べてかなり低く、PM2.5で100分の1から50分の1というレベルでした。3種のアルデヒド類の濃度を比較すると、タバコ会社による研究ではアクロレインが検出されていませんが、イタリア国立がんセンターの研究では検出されています。アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒドについては3つの研究すべてで検出されており、紙巻タバコの場合と比較して、おおよそ10分の1から20分の1の濃度でした。それでは、加熱式タバコによる受動喫煙の被害はあるといえるのでしょうか? あるかないかで言えば、あるが答えだといえるでしょう。ただし、程度が問題でもあります。加熱式タバコでは副流煙(吸っていない時にタバコの先端から出る煙のこと)がないため、受動喫煙は紙巻タバコと比べれば、かなり少なくなります。加熱式タバコであれば、屋内に発生する粒子状物質の濃度は紙巻タバコの数%というレベルに減らすことができるのです。とはいえ、受動喫煙がまったくないわけではなく、加熱式タバコからもホルムアルデヒドなどの有害物質が放出されています。加熱式タバコによる受動喫煙の被害については、それぞれケースバイケースで考える必要があるといえるでしょう。もともと屋内で紙巻タバコを吸っていた人が加熱式タバコに完全にスイッチできれば、受動喫煙の害は減らせるかもしれません。屋内での紙巻タバコの喫煙は、皆が考えているよりもはるかに危険といえます。屋内で喫煙すると、すぐに大気汚染の緊急事態レベルとなっているのです。たとえば、屋内で3人が喫煙するレストランではPM2.5濃度が600μg/m3となり、この値は大気汚染の緊急事態レベル濃度500μg/m3よりも高いものです*。また、喫煙する自動車内では、PM2.5の1時間平均値は750μg/m3と非常に高い値となります。紙巻タバコを加熱式タバコに置き換えることができれば、PM2.5を減らすことができるでしょう。一方、もともと禁煙だった場所なのに、加熱式タバコが使われるようになるケースもあることに、注意が必要です。自宅内ではタバコを吸わないルールだったのに、加熱式タバコならいいだろうと言って、禁煙から加熱式OKへと後退してしまうケースなどです。そういったケースが続出しているのです。その場合には、いままでなかった受動喫煙の被害が発生してしまうこととなります。家庭では、子どもや家族が受動喫煙の危険にさらされてしまうのです。また、世の中には、タバコの煙やエアロゾルから被害を受けやすい人もいます。狭心症などの虚血性心疾患、気管支喘息や化学物質過敏症の患者さんが代表例です。少量の曝露でも、発作を起こしたり、体調を崩したりするなどの健康被害が起きてしまう可能性があります。受動喫煙に関しては、加熱式タバコの方がましかもしれないからといって、単純に加熱式タバコならOK、とは考えるべきではないのです。第9回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?」です。*微小粒子状物質(PM2.5):大気中に浮遊する小さな粒子のうち、粒子の大きさが2.5µm以下の非常に小さな粒子のこと。PM2.5の健康影響について、米国の研究では、大気中のPM2.5値が10μg/m3増えると、心臓や肺の疾患による死亡率が9%、肺がん死亡率が14%、全死亡率が6%増えると報告された。2013年、日本の環境省は「健康影響が出現する可能性が高くなる濃度水準」をPM2.5日平均値で70μg/m3と定め、それを超えた場合には、不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らすこと、呼吸器系や循環器系疾患のある者・小児・高齢者などにおいては体調に応じてより慎重に行動することが望まれるとしている。

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第28回 生菌製剤は本当に抗菌薬関連下痢症に効果があるのか【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 抗菌薬(antibiotics)と生菌製剤(probiotics)の併用は日常的に見掛ける定番処方だと思います。双方の英語の語源からも対になっているイメージがあります。抗菌薬は腸内細菌叢を障害し、Clostridium difficile(以下、CD)感染症を含む抗菌薬関連下痢症を引き起こすことがありますので、生菌製剤によって腸内細菌叢のバランスを改善し、下痢症を予防することを期待した処方です。健康成人ではとくに併用しなくても問題ないことが多いですが、安価ですのでよく用いられています。今回は、抗菌薬とよく併用される生菌製剤の効果について紹介します。まず代表的な生菌製剤として、耐性乳酸菌製剤(商品名:ビオフェルミンR、ラックビーR)があります。「耐性」とあるように、商品名の「R」はresistanceの頭文字で、普通錠にはない抗菌薬への耐性が付加されています。これらはとにかく多用されていますので、適応のないニューキノロン系やペネム系などとの誤併用に対して疑義照会をした経験がある方は多いのではないかと思います。そのような場合、代替薬として何を提案すべきか迷いますよね。「R」の製剤ではなく普通錠を提案しがちですが、普通錠で抗菌薬投与時の下痢を予防できるのでしょうか?この疑問に関するエビデンスとして、PLACIDEという多施設共同ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験を紹介します。生菌製剤の抗菌薬関連下痢症の予防効果を検証した、それまでになかった大規模な試験です1)。対象は1剤以上の抗菌薬を投与された65歳以上の入院患者2,941例(99.9%が白人)です。対象患者は、乳酸菌2株とビフィズス菌2株を含む生菌製剤(総菌数6×1010)群またはプラセボ群に1:1で無作為に割り付けられ、1日1回21日間服用しました。主要評価項目は、8週以内の抗菌薬関連下痢症または12週以内のCD関連下痢症でした。8週以内の抗菌薬関連下痢症の発現率は、生菌製剤群10.8%(159例)、プラセボ群10.4%(153例)であり、有意差はありませんでした(RR:1.04、95%信頼区間[CI]:0.84~1.28、p=0.71)。また、CD関連下痢症の発現率はそれぞれ0.8%(12例)、1.2%(17例)であり、こちらも有意差はありませんでした(RR:0.71、95%CI:0.34~1.47、p=0.35)。抗菌薬の内訳はペニシリン72%、セファロスポリン24%、カルバペネムまたは他のβラクタム2%、クリンダマイシン1%、キノロン13%でした。ただし、検出力を考慮すると、本当は有意差があるのに有意差なしとなるβエラーが生じている可能性があり、実際には生菌製剤の効果があるのに無効と判断されているケースも除外できないので、乳酸菌とビフィズス菌には抗菌薬関連下痢症の予防効果がないと判断するのは注意が必要かもしれません。酪酸菌には抗菌薬関連下痢症を減少させるエビデンスありでは、他の菌株ではどうなのでしょうか? 酪酸菌(宮入菌)製剤(商品名:ミヤBM)を用いた研究がありますので紹介します。上気道感染症または胃腸炎の小児110例を、(1)抗菌薬のみ服用する群27例、(2)抗菌薬治療の中間時点から酪酸菌製剤を併用する群38例、(3)抗菌薬治療の開始と同時に酪酸菌製剤を併用する群45例の3グループに分けて腸内細菌叢の変化を調査しています2)。抗菌薬のみを服用した群では下痢が59%で観察され、総糞便嫌気性菌とくにビフィズス菌が減少していました。一方で、抗菌薬治療の中間時点または開始時から酪酸菌製剤を併用した群では、酪酸菌製剤が嫌気性菌を増加させるとともにビフィズス菌の減少を防ぎ、下痢の発現率はそれぞれ5%および9%に減少しました。本剤は酪酸菌の芽胞製剤で、胃酸によって死滅せず、腸で発芽して効果を発揮するため効果が期待できるというのは製剤特性からも説明できます。酪酸菌に加えて、糖化菌とラクトミンを配合した酪酸菌配合剤(商品名:ビオスリー配合錠)も同様に有効であるものと推察されます。薬局にいたときは、これらの生菌製剤を併用処方される患者さんもよく見掛けました。もしこれらの生菌製剤が無効の場合は、ラクトミン+ガゼイ菌で抗菌薬関連下痢症およびCD関連下痢症の頻度が減ることを示唆した研究も参考になります3)。抗菌薬関連下痢症は頻度が高く、治療継続への影響も大きいので、より適切な生菌製剤を提案できるようにしておくとよいかと思います。1)Allen SJ, et al. Lancet. 2013;382:1249-1257.2)Seki H, et al. Pediatr Int. 2003;45:86-90.3)Gao XW, et al. Am J Gastroenterol. 2010;105:1636-1641.

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D-Indexに基づくFNの抗真菌治療/日本がんサポーティブケア学会

 好中球減少期間の長い高リスク治療では、広域抗菌薬不応患者の発熱性好中球減少症(FN)に経験的抗真菌治療(EAT:empiric antifungal therapy)が推奨されるものの、過剰治療の問題が残る。そのため、バイオマーカーや画像所見に基づく抗真菌薬の先制治療が試みられるようになった。しかし、先制治療では深在性真菌症の増加が懸念されている。そこで好中球減少の深さと持続期間を面積で評価するD-Indexによる早期抗真菌治療(DET:D-index guided early antifungal therapy)を考案し、EATとの無作為比較試験(CEDMIC試験)を実施した。その結果を第4回日本がんサポーティブケア学会学術集会において自治医科大学附属さいたま医療センターの木村 俊一氏が発表した。D-Indexに基づく早期抗真菌治療は経験的治療と比べて抗真菌薬の使用を減少 対象:好中球減少期間(500/μL未満)が7日以上と予想される化学療法や造血幹細胞移植を受ける造血器腫瘍患者・試験群(DET):累積のD-Index(C-Index)5500未満の場合、真菌バイオマーカーで異常がみられたらミカファンギン150mg/日開始。C-Index5500以上の場合、FNが持続または再燃した時点で検査結果に関わらずミカファンギン150mg/日を開始・対照群(EAT):広域抗菌薬開始から4日目以降にFNが持続・再発した時点でミカファンギン150mg/日を開始・評価項目:[主要評価項目]Proven/Probable真菌感染症の発症、[副次評価項目]42、84日時点での全生存率、ミカファンギンの投与頻度、ミカファンギンの有効性評価 D-Indexによる早期抗真菌治療と経験的抗真菌治療を比較した主な結果は以下のとおり。・423例が登録され413例がITT解析対象となった(DET群212例、EAT群201例)。・Proven/Probable真菌感染症の発症はDET群0.5%(1/212例)、EAT群2.5%(5/201例)とDET群のEAT群に対する非劣性が証明された。・DET群とEAT群の全生存率は、42日目で98.6%対98.0%、84日目で96.2%対96.4%と両群間で差と認めなかった。・ミカファンギン投与症例はDET群で32.5%、EAT群では60.2%とDET群で有意に少なかった(p<0.001)。・ミカファンギンの有効性はDET群で68.7%、EAT群では79.6%とEAT群で良好な傾向がみられた。高リスク群に限定すると69.1%対78%で統計的な有意差は認めなかった(p=0.30)。 D-Indexに基づく早期抗真菌治療(DET)は経験的治療(EAT)と比べ、死亡や真菌症発症を増やすことなく、抗真菌薬の使用を減少させた。

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