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CKD治療抵抗性高血圧症、patiromer併用でスピロノラクトン服薬率上昇/Lancet

 治療抵抗性高血圧症の慢性腎臓病(CKD)患者に対し、カリウム吸着薬patiromerを用いることで、より多くの患者が高カリウム血症を呈することなくスピロノラクトンによる治療が継続可能なことが示された。米国・インディアナ大学のRajiv Agarwal氏らが、10ヵ国62外来医療センターを通じて行った第II相の国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果を報告した。スピロノラクトンは、治療抵抗性高血圧症で血圧コントロール不良の患者において、降圧効果があることが示されている。しかし、CKDが併存する患者では高カリウム血症を呈することからスピロノラクトンの使用は制限される場合があることが課題となっていた。Lancet誌オンライン版2019年9月15日号掲載の報告。12週後のスピロノラクトン服薬継続率を比較 研究グループは、10ヵ国(ブルガリア、クロアチア、ジョージア、ハンガリー、ウクライナ、フランス、ドイツ、南アフリカ共和国、英国、米国)、62ヵ所の外来医療センターを通じ、推定糸球体濾過量(eGFR)が25~45以下mL/分/1.73m2のCKDで、コントロール不良の治療抵抗性高血圧症を有する18歳以上を対象に試験を行った。最終スクリーニングですべての適格基準を満たした患者を、血清カリウム値(4.3~4.7未満mmol/Lまたは4.7~5.1mmol/L)と糖尿病歴の有無で層別化した。 被験者を双方向ウェブ応答システムで無作為に1対1の割合で割り付け、非盲検下で投与したスピロノラクトン(25mgを1日1回から開始)とベースラインで服用中の高血圧治療薬に加えて、patiromer(8.4gを1日1回)またはプラセボのいずれかを投与した。patiromerの用量漸増は1週間後、スピロノラクトンは3週間後に可能とした。 被験者、投薬管理と血圧測定を行う試験チーム、および研究者は、割り付け治療群に対してマスキングされた。 主要エンドポイントは、12週後のスピロノラクトン服薬継続率の群間差だった。有効性のエンドポイントと安全性は、無作為化を受けた全被験者(intention-to-treat集団)で評価された。スピロノラクトン服薬継続率、patiromer群86%、プラセボ群66% 2017年2月13日~2018年8月20日にスクリーニングを受けた574例のうち、すべての基準を満たした295例(51%)を対象に無作為化試験を行った。patiromer群147例、プラセボ群148例だった。 12週後、スピロノラクトンを服薬継続していたのは、プラセボ群98/148例(66%)に対し、patiromer群126/147例(86%)と有意に高率だった(群間差:19.5%、95%信頼区間[CI]:10.0~29.0、p<0.0001)。 有害イベントは大半が軽度~中等度で、プラセボ群79/148例(53%)、patiromer群82/147例(56%)で発生した。 これらの結果を踏まえて著者は、「こうしたCKDが進行した患者集団において、治療抵抗性高血圧症の治療のために、スピロノラクトン継続使用が可能となることは、臨床的に意味がある」と述べている。

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第7回 松本 尚先生に聞く、医療ドラマ監修の極意(後編)【外科医けいゆうの気になる話題】

第7回 松本 尚先生に聞く、医療ドラマ監修の極意(後編)医療の現実をドラマで表現するには―テレビならではの制約救急の現場では頻繁に遭遇する ものの、ドラマでは使えないテーマがあるそうです。1つはスポンサーとの関係で扱えないもの。交通事故、そして薬物中毒です。「ドラマの場合はとくに、自動車メーカーがスポンサーになっていることが多い。そうすると交通事故を扱えない。だからだいたい刺さるか、落っこちるか、というのばかりになってしまう」というのです。確かに前編に挙げた過去の事例も、「刺さる」ものですね。現実には薬物中毒の症例は多く、とくに洗剤や薬の多飲はよく経験されるそうです。ところが、これもスポンサーに洗剤やせっけんのメーカーが付いているため、こうした身近な薬物中毒はテーマに選べない。「覚せい剤中毒の設定も医学的には面白いけれど犯罪がらみになってしまうからNG」とのことでした。「事件モノ」も一度も扱っていないテーマの1つだそうです。「誰かに刺されるとか撃たれるというのも考えたけれど、それをやると犯人のほうに視聴者の目線が行ってしまう。なぜ刺したのか、とか、刺した人はどうなったのか、とか。そして『医療ドラマ』ではなくなってしまう」と指摘されたとのことでした。スペシャルでは列車の脱線事故、2ndシーズンでは飛行機の墜落事故が描かれましたが、制作側には「放送までに万が一同じような事故が現実に起こったら放送できなくなる」という怖さがあったそうです。ちなみに登場した飛行機についても、「美術さんが世界中に飛んでいるエアラインのデザインを調べて、絶対にないというものを作っていた」とのことでした。物語の主題を“医療”に据え続けるには、裏側にこんな事情や工夫があったのですね。想像していたよりもはるかに制限が多く、ドラマ制作の大変さを痛感しました。リアルとエンタメとのせめぎ合い実際の医療現場の常識を、ドラマの中でどう表現するかというのも、医療監修で関わって苦労をした点だそうです。『コード・ブルー』1stシーズンの最終回で多数傷病者が出るシーンがあります。この頃、救急医療界では「多数傷病者が出たらDMATが出動する」という習慣が根付き始めており、松本先生は「当然DMATを出さないといけない」と考えていたものの、制作側からはすぐにはOKが出なかったそうです。「登場人物を増やしたくないし、話がややこしくなると。あれは何? あの人は誰? と視聴者が混乱してしまうから。それに、DMATのユニフォームが主人公たちとは違うので視聴者がまた混乱してしまう」。「そもそも、ドラマとしては翔北救命センターの医師だけで対応させたい。でも50~60人も傷病者が出ているのに、たかだか5~6人の医師で何とかなるわけがない。それはおかしいから、そこにDMATがいるようにしてほしいという話をした」。リアリティーと視聴者へのわかりやすさの狭間でせめぎ合いがあり、けんかに近いくらいやりとりをしたとのことでした。最終的には、「DMATのユニフォームを着た人を後ろで活動させる。セリフももちろんない。でもとにかくユニフォームが見えて、その人たちに混ざって翔北の医師たちが活躍しているように見えればいい」という形に落とし込んだ、ということです。医師が見ても文句を言えないリアリティーを松本先生がドラマを通して最も強く意識したことは、「同業者が絶対文句を言えないようにしなくちゃいけない」ということでした。「医学的な説明はドラマの中ではできなかったとしても、後で聞かれたときに全部説明できるように、同業者からおかしいと言われないように作ると決めていた」というのです。それを実現するために、すでに出来上がった脚本にアドバイスをするのではなく、脚本制作から作品に関わり、多くのシーンで現場に赴いて指導したという松本先生。ドラマへのこだわりに、私は感嘆しました。通常は、話の筋を作る段階から医療監修が入るのはまれだそうです。「業界の慣例に捉われずここまで深く関わらせてくれたプロデューサーに感謝しています」とおっしゃる松本先生と制作陣との関わりもまた、ドラマのようで印象に残りました。ドラマが視聴者に与える影響は非常に大きいものです。描写の仕方によっては、業務に支障を来たしかねないほど大きな誤解を与えてしまうリスクもあります。一方で、多くの人に医療のことを正しく理解してもらうという目的では、ドラマというエンターテインメントは、その垣根を低くしてくれる素晴らしいツールだとも思っています。今回は、リアリティーを追求しつつエンターテイメントとしても魅力的な作品に仕上げていくことを目指した松本先生の熱意と努力を今回垣間見ることができたと感じます。前編を読む

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統合失調症の認知機能に対する身体能力の影響

 統合失調症患者では、神経認知機能と身体能力が低下することがわかっているが、これら2つの因子の関連性を示すエビデンスは十分ではない。韓国・翰林大学校のJiheon Kim氏らは、統合失調症患者のさまざまな身体的パフォーマンスと認知機能との関連について、他の障害に関連する臨床症状を考慮したうえで、調査を行った。European Psychiatry誌2019年9月号の報告。 対象は、統合失調症患者60例。心肺持久力と機能的可動性の評価には、それぞれ踏み台昇降、supine-to-standing(STS)テストを用いた。実行機能とワーキングメモリの評価には、それぞれストループ課題、スタンバーグワーキングメモリ(SWM)課題を用いた。臨床症状の評価には、簡易精神症状評価尺度(BPRS)、うつ病自己評価尺度(BDI)、特性不安尺度(STAI)を用いた。神経認知に関連する予測因子を特定するために、関連する共変量で調整し、多変量解析を行った。 主な結果は以下のとおり。・重回帰分析では、踏み台昇降は、ストループ課題(β=0.434、p=0.001)およびSWM課題(β=0.331、p=0.026)の時間と強い関連が認められ、STSテスト時間は、ストループ課題(β=-0.418、p=0.001)およびSWM課題(β=-0.383、p=0.007)の精度と強い関連が認められた。・他の臨床的相関を制御した後、総コレステロール値は、ストループ課題の精度と関連が認められた(β=-0.307、p=0.018)。・臨床症状とストループ課題またはSWM課題との関連は認められなかった。 著者らは「統合失調症患者の身体能力と神経認知機能との関連が示唆された。これらの因子は、修正可能であることを考慮すると、統合失調症患者に対する運動介入は、認知機能改善に役立ち、それにより機能や予後の改善につながる可能性がある」としている。

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周期性再分極動態、高値であるほどICDが有益/Lacnet

 周期性再分極動態(periodic repolarisation dynamics)は、虚血性/非虚血性心筋症患者において、予防的な植え込み型除細動器(ICD)の植え込み術に関連する死亡の予測に有用であることが、ドイツ・ミュンヘン大学病院のAxel Bauer氏らが行ったEU-CERT-ICD試験のサブスタディーで示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月2日号に掲載された。1次予防としてICDの植え込み術を受けた心筋症患者では、患者管理や技術の進歩に伴い悪性不整脈の発現は減少しているが、非虚血性心筋症では全死因死亡は改善されないとの報告があり、ICDの価値は一部のサブグループに限定される可能性が示唆されていた。また、約4人に1人が10年以内にデバイス感染症や不適切なショック(inappropriate shock)などの深刻な合併症を経験するという。周期性再分極動態は、心臓の再分極不安定性の交感神経活動に関連する低周波変動を定量化する新たな電気生理学的マーカーである。EU 15ヵ国44施設の非無作為化試験 本研究は、欧州連合(EU)の15ヵ国44施設が参加した医師主導の前向き非無作為化対照比較試験のサブスタディーであり、2014年5月~2018年9月の期間に患者登録が行われた(欧州共同体第7次枠組み計画の助成による)。 対象は、年齢18歳以上、虚血性または非虚血性心筋症で、左室駆出率が低下し(≦35%)、1次予防としてのICD植え込み術のガイドライン判定基準を満たす患者であった。 ICD植え込み群の患者は手術の前日に、保存的管理を受ける患者(対照群)は試験登録の当日に、盲検下に24時間ホルター心電図上の周期性再分極動態の評価が行われた。 主要エンドポイントは、全死因死亡とした。傾向スコアと多変量モデルを用い、死亡に関して周期性再分極動態とICDの治療効果の交互作用が評価された。予防的ICD植え込み術の決定に役立つ可能性 1,371例が登録された(ICD群968例、対照群403例)。非無作為化デザインにもかかわらず、ベースラインの臨床的因子や人口統計学的因子は両群間でよくバランスがとれていた。平均年齢はICD群が61.5(SD 11.8)歳、対照群は62.7(11.7)歳で、女性はそれぞれ18%および19%であった。主な心疾患は虚血性心筋症で、ICD群は699例(72%)、対照群は249例(62%)が本症であった。β遮断薬が、それぞれ917例(95%)、376例(93%)で使用されていた。 フォローアップ期間(ICD群2.7年[IQR:2.0~3.3]、対照群1.2年[0.8~2.7])中に、ICD群は138例(14%)が、対照群は64例(16%)が死亡した。ICD群は対照群と比較して、死亡率が43%有意に低かった(補正後ハザード比[HR]:0.57、95%信頼区間[CI]:0.41~0.79、p=0.0008)。 周期性再分極動態は、ICDが死亡に及ぼす影響と交互作用を示し(p=0.0307)、予測が可能であることが示唆された。周期性再分極動態の値が低いと、ICDは生存利益がないか、ほとんどなかったが、高くなるに従ってICDの生存利益は持続的に増加した。 カットオフ値は示されなかったが、ICD関連の死亡は、周期性再分極動態が7.5deg以上の患者では75%低下(199例、ICD群の対照群に対する補正後HR:0.25、95%CI:0.13~0.47、p<0.0001)したのに対し、7.5deg未満の患者では31%の低下(1,166例、0.69、0.47~1.00、p=0.0492)であり、死亡に関する有益性は前者で大きかった(交互作用のp=0.0056)。また、治療必要数は、周期性再分極動態7.5deg未満の患者が18.3件(95%CI:10.6~4,895.3)、7.5deg以上の患者は3.1件(2.6~4.8)だった。 これらの知見と一致して、周期性再分極動態はICD群における適切なショック(appropriate shock)の、有意で独立の予測因子であった(補正後HR:1.30、95%CI:1.08~1.56、p=0.0050)。 著者は「周期性再分極動態は、予防的ICD植え込み術に関して、治療決定の支援として役立つ可能性がある」としている。

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蛇足の教え(解説:今中和人氏)-1116

 SYNTAX試験は冠動脈3枝病変ないし主幹部病変症例に対する、バイパス手術と薬剤溶出ステントを比較した、まさにランドマークとなる多施設ランダム化試験で、予定観察期間の5年成績が公表されたのは2014年。死亡のほかに心筋梗塞、脳卒中、再血行再建などが解析され、ある程度の複雑病変(3区分でintermediateとなるSYNTAXスコア23以上)の症例にはバイパス手術が適切であると明瞭に示す、キレイな結果であった。 循環器領域だけでも「この議論、いつまでやるんですか?」という案件はさまざまあれど、冠動脈疾患に対する治療法選択はその横綱格。SYNTAX試験の最終結果を見て、私などは「やっとこれで結論が出た」と半ば安堵する思いだったのだが、寡聞に過ぎた。あれから5年経ち、生命予後をさらに5年追跡したSYNTAX extended survival、すなわちSYNTAXES試験がこの論文である。 生死だけとはいえ、80以上の施設にまたがる合計1,800人の患者さんの94%を10年も追跡・集計するのがいかに大変だったか、頭が下がる思いだが、何せ追跡項目は総死亡「だけ」なので心臓死以外が大量に含まれ、MACCE等はまったく不明で、学術的価値はSYNTAXとは比較するべくもない。そもそも治療時点で平均年齢65歳、80%は男性の患者である。欧米諸国の多くで男性の平均年齢は70代後半なので、治療後10年間でバイパス群もPCI群も約1/4が死亡し、有意差はなかった(HR:1.17)が、この間のイベントや、ましてQOLはまったく不明である。サブグループ解析では、3枝病変患者ではバイパス群の生存率が有意に良好(HR:1.41)だが、主幹部病変患者では有意差なし(HR:0.90)。SYNTAXスコアで言うと、低スコア(HR:1.13)と中スコア(HR:1.06)患者の10年生存率に有意差はなく、高スコアのみバイパス群が有意に良好(HR:1.41)だった。 極端な話、65歳の患者群を35年追跡すれば生存率は極限まで低下するわけで、総死亡だけをいたずらに長期に観察すると、かえって本質が見えなくなる。そんな雑な議論に終始したこのSYNTAXESは、ズバリ「蛇足プロジェクト」の感が強いが、SYNTAXで1年・3年・5年と開いていった両群の生存率の差が、5年目以降もますます開いてゆくわけではなかったのは興味深い。ただ今回、それ以上の教えをいただいた。 確かに総死亡のみの議論はまったく不十分で、治療後の患者が入退院を繰り返してよいわけがなく、われわれはバイパスが良いだのPCIが良いだのと、治療法の差を論じている。だが私も時々、他病死した方の御遺族から「最期、心臓がなかなか止まらなくて…素晴らしい手術をしていただいたんだとよくわかりました」なんて言われることがある。これまでそういうコメントに対して深く考えてこなかったが、心臓死だろうが他病死だろうが、要するにその方は亡くなっているのである。すると最適の心臓治療だったかどうかは、もちろん、どうでもよいわけではないが、鍵を握るというほどでもなかったのだ。本論文の結果は、われわれが熱く議論している「差」というのは、一部の患者以外では、わずか10年の歳月にあっさり飲み込まれる程度の「差」だ、ということを示している。 今後もわれわれは最適な治療方針を追求してゆくべきだし、治療方針提示に当たっては、日本人は欧米人より平均寿命が長いので、SYNTAX試験の患者年齢より数年、上乗せして考えるべきだと考えるが、それにしても人はいずれ死を迎えることは厳然たる事実である。たとえば、び漫性と言うほどではない病変の後期高齢者がバイパス手術をひどく嫌がった場合、PCIや薬物治療だって十分妥当性のある選択肢で、「イヤイヤ、あなたはバイパス手術『じゃなきゃダメです』」みたいな説得は、実にイケてない。ガイドラインの弾力的な適用を心がけたい。

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第29回 検脈法ふたたび~“妙技”をブラッシュアップせよ【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第29回:検脈法ふたたび~“妙技”をブラッシュアップせよここしばらく『心電図の壁』のエッセイや『空飛ぶ心電図』での対談などの企画が続きましたが、久しぶりに“いつもの”心電図レクチャー形式に戻りましょう。今日にでも出会いそうな症例を題材に、心電図クイズに続いて、心拍数の計算法に関して再考します。Dr.ヒロの最近の“気づき”を皆さんはどう考えるかなぁ。では、はじめましょう!症例提示64歳、男性。関節リウマチ、COPD(チオトロピウム吸入、テオフィリン内服)にて通院中。主訴は発熱と労作時呼吸苦。3月某日、定期受診当日の夕方より熱発、翌日いったん解熱するも再発した。息切れも増強したため来院した。やせ型。体温38.4℃、血圧145/87mmHg、脈拍103/分・整、酸素飽和度91%(室内気吸入)だが軽労作にて容易に80%台前半となる。WBC:18,720/μL、CRP:>20mg/dL。胸部X線で右下肺野の透過性低下あり。インフルエンザ迅速検査は陰性。受診時の心電図を示す(図1)。(図1)救急受診時の心電図画像を拡大する【問題1】心電図所見として正しいものを2つ選べ。1)心房細動2)右軸偏位3)左房拡大4)時計回転5)ST低下解答はこちら2)、4)解説はこちらCOPDの典型的な身体所見(やせ型、男性、熱発、呼吸困難)ですね。多くの方が、上気道感染や肺炎などによる急性増悪を第一に考えると思います。それでOKですが、こんな時でも心電図はとられるわけで、その読みを問うています。ええ、もちろん「系統的判読」です(第1回)。1)×:「心房細動」の診断基準を復習しましょう。「R-R不整」と「洞性P波を欠く代わりにf波(細動波)」でしたね(第4回)。一見してR-R間隔は整で、II誘導などでQRS波の手前に明瞭なP波がコンスタントに確認できます。2)○:QRS電気軸の定性判定は、IとaVF(またはII)誘導に着目でした(第8回)。I:下向き、aVF(II)誘導:上向きのパターンは「右軸偏位」ですね。QRS波高が変動*1して、やや難しいですが、“トントン法Neo”を駆使して「+100°」ないし「+105°」(“トントン・ポイント”はIと-aVR間でI寄り)と言えたら最高です(第11回)。3)×:これはDr.ヒロお得意の“左右違い”(笑)。正解は「右房拡大」です。診断基準を整理しておきましょう(図2)。(図2)右房拡大の診断基準画像を拡大する教科書そのほかでは、「II、III、aVF、V1、V2*2のいずれかの誘導でP波高2.5mm以上」という基準がよく示されますが、これはかなりハードルが高く、めったに満たしません。「右房拡大」ではP波が“ホッソリ”かつ“ツンッ”と尖った形になることが一番の特徴なので(尖鋭化)、こうした“人相”ならぬ“波相”にまず反応しましょう。その上でどれか1つでもP波が2mm以上なら積極的に診断する姿勢をボクは推奨しています。4)○:正常ではV1からV6誘導に向かうにつれてR波は増高、S波は減高してゆき、真ん中(V3~V4)あたりで入れ替わります(移行帯)。V5誘導時点でも“下向き”(R<S)な場合に「時計回転」と言います。いくつか原因があり、その一つは今回のようなCOPDなどの慢性肺疾患です。5)×:ST偏位は、基線(T-P/T-QRS/Q-Qライン)に対するJ点(QRS波の「おわり」)の相対位置で決まります(第14回)。“(スター)ト”のプロセスでは、目の“ジグザグ運動”で肢誘導から胸部誘導まで漏れなくST偏位をチェックしましょう。本例ではST低下・上昇いずれもありません。*1:V1誘導でとくに顕著なQRS波高の変動(QRS amplitude variation)は「呼吸」による影響が強いとされ、3秒強のサイクルは呼吸促迫状態なのかとボクなら推察します。QRS波が減高する部分が吸気相に一致し、その際、膨張した肺によりV1誘導が心臓から最も遠ざかることで理解されるようです。*2:ニサンエフ(下壁誘導)は“兄弟”で、V1とV2は“お隣さん”のイメージ。ともに波形が類似すること多し。【問題2】自動診断は「高度な頻脈」となっているが、正確な調律診断は何か? 具体的な心拍数とともに述べよ。解答はこちら135/分(新・検脈法)、洞(性)頻脈解説はこちら心電図に自信のない人がついつい頼ってしまいがちな自動診断。これを見ることについて、基本的にボクは全然OKだと思います。慣れないうちは、自分なりの判読に漏れがないかのチェックにも使えるので、積極的に“カンニング”しようと薦めているくらいです(笑)。ただし、以前よりだいぶ精度が上がっているとはいえ、機械は“万全”ではないのです。この方の自動診断には「高度な頻脈」の記載があるだけで、そのほか調律に関係するものはありません。自身で判定する際には基本に忠実に、はじめの“レーサー(R3)・チェック”を適用すれば答えは簡単です。正確に調律診断をすることも大切ですが、今回は心拍数の計算法に関して“検脈法”から最近感じたことを述べたいと思います。“「高度な頻脈」に喝!”皆さんが普段使っている心電計は、大半が国産メーカー製のはず。そこでしばしば見られる「高度な頻脈(または徐脈)」という診断表示*3は、心拍数がおおむね「120/分超」か「40/分未満」の時に出ることが多いようです。ただ、この「高度な~」は、調律でも不整脈の名称でもないんです。穏やかな日曜の朝、スポーツ選手のプレイに「喝!」という長寿番組がありますが(笑)、Dr.ヒロ的にはこの表現に“喝”!…これは「診断」ではありません。以前から言いたかったのはこのことだったんです。「調律」と「心拍数」は常にセットです。基本調律を述べずに心拍数の速い・遅いだけを宣言するような診断と、ほかの心電図所見を同列で語るから紛らわしくなるのです。機械(≒心電計)が診断できない時こそ人間の目が必要なんです。R-R間隔は整で5mm四方の太枠マスがほぼ2つ分ですから、“300の法則”(第3回)的には150/分に近い「頻脈」です。しかも、“イチニエフの法則”(第2回)にピッタリのP波がコンスタントにいるから…そう、「洞調律」ですね。2つをあわせて「洞(性)頻脈」*4、これが正しい調律診断です。*3:「極端な」という表現を用いるメーカーもあり。*4:循環器学用語集(第3版)では「性」はなく「洞頻脈」が「sinus tachycardia」の正式な表現とされる。“あとは心拍数を求めよう”「心拍数○○/分の洞(性)頻脈です」こう述べるべく、あと知りたいのは心拍数の数字だけ。“ドキ心”レクチャー受講生なら、“検脈法”でしょ。R-R間隔が整なら肢誘導か胸部誘導のどっちか片方(5秒間)かでQRS波を数えればいいわけでした(第3回)。肢誘導に11個、胸部誘導に12個とカウントすれば、132/分(肢誘導のみ)、144/分(胸部誘導のみ)、138/分(肢誘導+胸部誘導)のいずれかの数値となるでしょう。いずれの方法でも、心拍数は「130~140/分」程度だとわかります。検脈法を用いる時、“不整脈”がある場合は基本的に10秒間カウントすべし、というのがDr.ヒロ流。ここで言う「不整脈」とは、R-R間隔の整・不整ではなく“レーサー・チェック”の3項目のいずれかが正常でない場合*5を想定しています。ですから、通常の検脈法では、138/分、四捨五入して「心拍数約140/分の洞(性)頻脈です」と述べることになるでしょう。基本的にはこれで正解です。*5:今回は心拍数が「50~100/分」の正常範囲から外れるので「不整脈」に該当すると考えて欲しい。“両端が気になって仕方ない”「高度な頻脈(徐脈)」に対するネガティブ・キャンペーンと正しい調律診断をしてレクチャーを終えてもいいのですが、ボクが本当に伝えたいことは別にあります。検脈法を適用していたある日、ふと“端っこ”が気になったんです。肢誘導と胸部誘導から一つずつ、今回の心電図からIII誘導とV4誘導を抜き出してみましょう(図3)。(図3)気になる“両端”の心拍たち画像を拡大するオリジナルの検脈法では(1)、(3)、(4)は1個のQRS波とカウントし、(2)はノーカウントになります。一部分しかなくても、1周期まるまるある心拍と同じ扱いでいいんだろうか…そう悩んだのです。“両端が気になったワケ”以前から検脈法で求めた心拍数と心電計の表示する値とが、まぁまぁズレるなぁと感じる時がありました。たとえば次の心電図を見てください(図4)。(図4)検脈法の“弱点”?画像を拡大する肢誘導にはQRS波が4つあります。一方、胸部誘導のほうはどうかと言うと、最後の最後にちぎれた“見切れ”QRS波がありますね。これをどうカウントしますか? オリジナル検脈法では、これも立派に「1拍」とカウントして、4+4で計8個、これを60秒(1分)に換算して「48/分」です。一方の自動診断では「43/分」となっています。「検脈法」は驚くほどに正確な心拍数を提供してくれるんです、大半のケースでは。その“実力”を知っているがゆえ、ボクにはこのズレが大きく感じるのです。“たかが5”とはいえ、48と43の差は“されど5”と感じてしまうのはビビリだから?…いや否。なんとかこれを乗り越えようと、最近になってオリジナル検脈法を“改良”することにしたのです。名付けて“新・検脈法”。■新・検脈法のルール■1)「QRS-T」全体を“1組”として心拍と見なし、一部でも欠けていたらQRS波0.5個とカウントする2)「P波だけ」はカウントしない心拍数が1分間の「心室」拍動回数である以上、P波は無視してQRS波+T波に注目しようと思いました。心室の脱分極・再分極を表して常に“2つで1組”の「QRS-T」を“1心拍”とみなすルールです。ほんのちょびっと見切れていても、9割方あり残りわずかに足りない場合でも“恨みっこなし”。すべて「0.5個」分の心拍と数えるのがミソです。もう一度、心電図(図4)に戻りましょう。肢誘導と胸部誘導の境界はIIとV2間の微妙なギャップ部分であり、このラインまでに肢誘導4拍目はT波の“おわり”がギリギリ滑り混んでいますから、肢誘導のQRS数は4個でOKです。一方の胸部誘導は“見切れている”最後の1拍は“半分カウント”ですから「3.5個」です。4+3.5で計「7.5個」と考えれば…そう心拍数は「45/分」です。これで心電計の数値との差が2に縮まりました。これならDr.ヒロ的にも許容範囲です。今回の心電図(図1)に対しても“新・検脈法”を用いてみましょう。図3の(1)、(3)は「1個」、(2)は「0個」、そして(4)は「0.5個」分の心拍となります。すると肢誘導11個、胸部誘導11.5個(最後だけ0.5個)となるので、全部で22.5個と思えば、6倍して…「135/分」。なんと心電計の計算にぴったり一致しました! ちなみに、0.5があっても、6倍ないし12倍で算出するため、“新・検脈法”による心拍数は必ず整数で算出されるので安心です。“腕比べをやってみた”Dr.ヒロのふとした妄想から誕生した“新・検脈法”ですが、本当か?…そう悩んだらほかの人に相談するより、まず自分で確かめるまで決して納得しないのがDr.ヒロの悪いところ(笑)。心拍数に関しては、心電計の計算値が常に正しいと考えて、数千にも及ぶ“杉山ライブラリー”の心電図から抽出した計100例(洞調律45例、期外収縮20例[PAC:10例、PVC:10例]、心房細動20例、その他15例)を用いて“腕比べ”をしてみました。「しかし、果たしてそこまでやる必要あるの?」という批判も聞こえてきそうですが…その結果を表にして示します(表1)。(表1)画像を拡大する皆さんは結果をどう見ますか? 平均値、中央値や最大・最小値どれをみても“イイ線いってる”感じです。“半分(0.5個)カウント”の影響か、新・検脈法のほうがオリジナルの検脈法よりも小さい値で見積もるようです。フィッティングに関しては、最終列の「決定係数」、いわゆるR2値を見ると、両者とも99%以上の高精度の予測能力があると言えますでしょうか。煩雑さの面では、オリジナル法よりも“一手間”加わる新・検脈法の方でわずかにR2値が高く見えてしまうのは開発者の性、いや“親心”でしょうか。でも、こうした結果を得るちょっと前から、臨床研究で心電図を扱う場合にも、ボクは手動計算の心拍数値は新・検脈法で求めるようにしています。あくまでも印象として、こちらのほうが従来法よりも精度が上がっている気がするからです。皆さんはどう思われるでしょうか? “新・検脈法”に関するご意見・ご感想をお寄せいただけたら嬉しいです。Take-home Message「高度な頻脈(徐脈)」という診断は不要!~調律と心拍数で表現せよ。「T-QRS」を1組と見て“見切れQRS波”を「0.5拍」でカウントする“新・検脈法”が多少手間でも有用かも!?【古都のこと~随心院門跡~】随心院門跡(山科区)は、古来より「小野郷*1」として、そして現在も小野と呼ばれる場所にあり、地下鉄(東西線)に乗れば市内中心部から30分程度で行くことができます。正暦二年(991年)、“雨僧正”仁海(にんがい)*2の開基とされ、もとは牛皮山曼荼羅寺*3と言ったそう。その後、増俊阿闍梨(ぞうしゅんあじゃり)が曼荼羅寺(まんだらじ)の子房として随心院を建立し、後堀河天皇から宣旨を受け「門跡」となりました(寛喜元年:1229年)。総門をくぐってすぐ右方には「小野梅園」があり、ここもオススメ観梅スポットの一つです(早春以外も緑が溢れる)。長屋門から入って庫裡(くり)を通って書院の襖絵や調度品を楽しみ、普段は開かない薬医門を内側から眺めると独特の趣を感じました。回廊を少し歩けばお目当ての庭が姿を現します。コンパクトながら池をたずさえ、縁側から見える奥深い緑の景色が実に目に映えます。さぁ、これからは紅葉シーズン。あまり人混みのない“ひっそり系”ながら、母親への愛情に溢れた由緒ある寺院に一緒に来られたら、良い親孝行になるでしょう。*1:三宅八幡宮(左京区上高野)の回で登場した「小野郷」とは異なる。*2:宮中からの勅命でしばしば請雨の法を行った。“雨降らし”の達人の意味か。*3:仁海僧正は一夜の夢に牛に生まれ変わった亡母を見て、飼養したが日なくして死んだ。それを悲しみ、その皮に両界曼荼羅の尊像を描いて本尊にしたことにちなんだ名称。

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新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(1)【新型タバコの基礎知識】第9回

第9回 新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(1)Key Points加熱式タバコや電子タバコによるハーム・リダクションの可否を考えるためには、発がん性物質だけでなく、ニコチン依存症に関する理解も必要。ニコチンの本当のリスク:ニコチン依存症は実は“幸せ”を奪っている。最近、米国で電子タバコによるものと考えられる呼吸器症状・疾患のために6人が死亡したとする報道がなされ、トランプ大統領がフレーバー添加の電子タバコの使用を禁止する旨を発信したとして話題になっています。死亡は最大レベルの不可逆的有害事象であり、この電子タバコによると考えられる死亡の事実は重いものです。専門家団体が電子タバコなら害がほとんどない(95%少ない)と主張していた英国でも、電子タバコの扱いについて見直すべきではないかという意見も出ています。しかし、電子タバコによる害が本当に大きいのかどうかを判定するためには、死亡の件数よりも、死亡が発生する確率が高いのか低いのかを判定することが求められます。現在のところ、その情報は得られていません。私は、今回の死亡例の報告に関しては、電子タバコの極端なヘビーユーザーや、違法薬剤等を添加して使用するなどの変則的使用が原因なのではないかと推測していますが、これは想像の域を出ていません。まずは、米国がまとめる報告書を待ちたいと思います。さて、今回のテーマは、ハーム・リダクション(害の低減)です。ハーム・リダクションとは、簡単に言うと、大きな害のある行動をそれよりも小さな害の行動に置き換えることによって、害は完全にはなくせないが、害を少なくさせること、をいいます。具体例としては、薬物使用者らが1つの注射器を回し打ちすることによってHIVウイルス感染が蔓延するという問題に対して、薬物使用をやめさせる取組みとは別に、HIVウイルス感染を防止するために無料の注射器を配ったという事例があります。また、自動車事故による死亡を防ぐために、自動車事故をなくす取組みとは別に、運転時にシートベルトを着用する、ということもハーム・リダクションの一例として知られています。タバコ問題の場合のハーム・リダクション戦略として、どうしてもタバコをやめられない人に対して、タバコの代わりにニコチン入りの電子タバコ等を吸ってもらったら、有害物質への曝露を減らせるのではないか、というわけです。しかし、議論は単純ではありません。世界的にハーム・リダクションの効果や可能性が主に議論されているのは、ニコチン入りの電子タバコについてです。タバコ問題におけるハーム・リダクションについて考えていくために、今回はニコチン依存症について取り上げたいと思います。そもそもニコチン依存症とは何でしょうか?ニコチン依存症とは「血中のニコチン濃度がある一定以下になると不快感を覚え、喫煙を繰り返してしまう疾患」とされます1)。ニコチンを摂取していると、それなしでは不快感を感じるようになってしまい、摂取すればその不快感がなくなるので、繰り返し摂取するようになってしまうのです。 ニコチンは吸収が速く、体内から消失するのも速いため、喫煙してから30分程度ですぐにニコチン切れ症状を生じてしまい、「吸いたい、吸いたい」となってしまうのです。 しかし、この説明だけではニコチン依存症の本当の意味で残酷な病態については理解できないかもしれません。ニコチン依存症は実は、“幸せを奪っている”のです。ニコチン依存になると、楽しいことやうれしいことがあっても、楽しい! うれしい! と感じなくさせられてしまうのです。人生の楽しみや幸せを奪うのがニコチン依存なのです。禁煙した人が「禁煙したら、ご飯がおいしくなった」と言っているのを聞いたことがあるのではないでしょうか。でも実はそうではなくて、もともとご飯はおいしいのです。喫煙していると、ニコチンという物質が、人がおいしいと感じたり、楽しい、うれしい、幸せだと感じたりするときに機能する脳の中の報酬系(ほうしゅうけい)回路を邪魔してしまい、もともとおいしいご飯を食べても、おいしいと感じられなくさせられてしまっていたのです。喫煙していると、ご飯を食べても、楽しいことがあっても、幸せだと感じるようなタイミングでも、それを感じることができなくさせられてしまっているといえます。喫煙者はタバコを吸っていない時間はすぐにニコチン欠乏状態となり、いつも「吸いたい、吸いたい」という感情に支配されてしまうのです。ニコチンの欠乏状態を喫煙により補充した瞬間だけニコチンが足りているという満足感が得られ、喫煙者はそれでニコチンにより救われた気になってしまいます。本当は、ニコチンにより「おいしい、楽しい、うれしい、幸せ」を感じることが奪われているのに、です。このことを実証した実験研究があるので、紹介します2)。うれしいことがあると脳の報酬系回路の反応が活発になります。それをMRIを使って測定した研究です。多くの子どもは、チョコレートをもらったらうれしいと感じるものだと思います。この研究では、タバコを吸っている10代の男女43人と、吸っていない10代の男女43人に、チョコレートをあげたときの脳の反応を比べています。その結果、図のように脳の報酬系回路の反応性は、タバコを吸っているかどうかで大きく違っていました。光っている反応が強いほど、脳の報酬系回路の反応が強い(例えば、うれしいと感じている)ことを示しています。タバコを多く吸っているほど、脳の反応が弱くなっていたのです。チョコレートをもらうことは些細なことであって、そんなにうれしがることではない、と指摘する人もいるかもしれません。しかし、些細なことの積み重ねが人生ではないでしょうか。ニコチンという物質は、そんな些細な幸せを奪ってしまうのです。加熱式タバコには、紙巻タバコとほとんど変わらないレベルのニコチンが含まれています(第3回参照)。そのため、紙巻タバコから加熱式タバコにスイッチしても、ニコチン依存は維持されます。タバコが吸いにくい環境で、加熱式タバコなら吸うことができるからという理由で、加熱式タバコを吸っている人もいます。加熱式タバコによりニコチンを補充しやすくなり、より強固なニコチン依存状態に陥ってしまう可能性もあるのです。画像を拡大する第10回は、「新型タバコにおけるハーム・リダクションってなに?(2)」です。1)厚生労働省e-ヘルスケアネット「ニコチン依存症」2)Peters J et al. Am J Psychiatry. 2011; 168: 540-549.2

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糖尿病と食道腺がんリスク(プール解析)/Cancer

 糖尿病とさまざまながんの関係が研究されているが、食道/食道胃接合部の腫瘍との関係は明らかになっていない。米国国立がん研究所(NCI)のJessica L. Petrick氏らは、2,309例の食道腺がん(EA)、1,938例の食道胃接合部腺がん(EGJA)、1,728例のバレット食道(BE)、および1万6,354例の対照を含む、国際バレットおよび食道腺がんコンソーシアム(International Barrett's and Esophageal Adenocarcinoma Consortium:BEACON)の13の研究データを統合し、糖尿病とEA、EGJA、BEの関連についての研究固有のオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を、ロジスティック回帰を用いて推定した。Cancer誌オンライン版2019年9月6日号掲載の報告。 主な結果は以下のとおり。・糖尿病によるEAリスクのオッズ比は1.34(95%CI:1.00~1.80、I2=48.8%)、EGJAリスクのオッズ比は1.27(95%CI:1.05~1.55、I2=0.0%)、EAとEGJAを合わせたリスクのオッズ比は1.30(95%CI:1.06~1.58、I2=34.9%)であった。・胃食道逆流症状がある患者では、糖尿病によるEA/EGJAのリスクはさらに増加し、オッズ比は1.63(95%CI:1.19~2.22、交互作用のp=0.04)であった。・胃食道逆流症状がない患者では、糖尿病とEA/EGJAリスクとの関連はみられなかった(OR:1.03、95%CI:0.74~1.43)。・糖尿病とBEの間に一貫した関連性はみられなかった。

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PPCI前の遠隔虚血プレコンディショニング、STEMI予後に有意義か/Lancet

 プライマリ経皮的冠動脈インターベンション(PPCI)を受けるST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者では、PPCI前に遠隔虚血コンディショニング(remote ischaemic conditioning:RIC)を行っても心臓死/心不全による入院は減少しないことが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのDerek J. Hausenloy氏らが行ったCONDI-2/ERIC-PPCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月6日号に掲載された。RICは、上腕に装着したカフの膨張と解除を繰り返すことで、一時的に虚血と再灌流を引き起こす。これにより、PPCIを受けるSTEMI患者の心筋梗塞の大きさが20~30%縮小し、臨床アウトカムが改善すると報告されていたが、十分な検出力を持つ大規模な前向き研究は行われていなかった。欧州4ヵ国33施設の医師主導無作為化試験 本研究は、英国、デンマーク、スペイン、セルビアの33施設が参加した医師主導の単盲検無作為化対照比較試験であり、2013年11月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(英国心臓財団などの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、胸痛がみられてSTEMIが疑われ、PPCIが適応とされた患者であった。被験者は、PPCI施行前にRICを行う群または標準治療を行う群(対照群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。 RIC群では、上腕に装着した自動カフの膨張(5分間)と収縮(5分間)を交互に4回繰り返すことで、間欠的に虚血と再灌流を誘発した。英国の施設のみ、対照群にシャムRICを行った。 データ収集とアウトカムの評価を行う医師には、治療割り付け情報がマスクされた。主要複合エンドポイントは、12ヵ月後の心臓死と心不全による入院の複合とし、intention-to-treat解析を行った。新たな心臓保護の標的の特定が必要 5,115例(intention-to-treat集団)が登録され、RIC群に2,546例(平均年齢63.9[SD 12.1]歳、女性24.0%)、対照群には2,569例(63.1[12.2]歳、22.4%)が割り付けられた。 12ヵ月後の主要複合エンドポイントの発生率は、RIC群が9.4%(239/2,546例)、対照群は8.6%(220/2,569例)であり、両群間に有意な差は認められなかった(ハザード比[HR]:1.10、95%信頼区間[CI]:0.91~1.32、p=0.32)。 同様に、12ヵ月後の心臓死(3.1% vs.2.7%、HR:1.13、95%CI:0.82~1.56、p=0.46)および心不全による入院(7.6% vs.7.1%、1.06、0.87~1.30、p=0.55)にも、両群間に差はみられなかった。 事前に規定されたサブグループ解析では、年齢、糖尿病の有無、PPCI前のTIMI血流分類、梗塞部位、first medical contact to balloon timeの違いによる主要複合エンドポイントの発生に関して両群間に有意な差はなかった。 主要複合エンドポイントのper-protocol解析の結果も、intention-to-treat解析ときわめて類似しており、両群間に差はなかった(RIC群9.0% vs.対照群8.1%、HR:1.11、95%CI:0.90~1.36、p=0.35)。 30日以内の心臓死と心不全による入院の複合、および個々のイベントの発生には両群間に有意差はなく、30日以内の主要心血管イベント/脳有害事象(全死因死亡、再梗塞、予定外の血行再建、脳卒中)、および個々のイベントの発生にも差はなかった。また、12ヵ月以内の植え込み型除細動器の施術の頻度にも差は認められなかった。 また、試験治療関連の予想外の有害事象はみられなかった。RIC群で皮膚点状出血が2.8%、一過性の疼痛や知覚障害が5.8%で報告された。有害事象による治療中止はなかった。 著者は「RICは、STEMI発症後の臨床転帰改善の最も有望な心臓保護戦略であり、他の選択肢は少ない。それゆえ、新たな心臓保護の標的を特定し、複数の標的への併用治療のような革新的な保護アプローチを開発するために、新たな研究を要する」としている。

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子供のスキューバダイビングは要注意!【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第147回

子供のスキューバダイビングいらすとやより使用セレブな医師の中には、スキューバダイビングセットを持っていて、もしかすると子供と一緒にスキューバダイビングをしている人もいるかもしれません。自家用クルーザーとか持っていたりして…、きぃー!羨ましいったらありゃしない!…とまぁ、そんな嫉妬はさておき。子供のダイビングについて、指導団体ごとに規準は異なりますが、体験ダイビング・Cカード(ライセンス)取得講習を受けて、10歳から参加可能としている団体が多いです。浅瀬や安全なエリアであれば、8歳も許可しているところもあります。紹介するのは、子供におけるスキューバダイビングの脳動脈空気塞栓症の報告です。Johnson V, et al.Should children be SCUBA diving?: Cerebral arterial gas embolism in a swimming pool.Pediatr Emerg Care. 2012;28:361-362.この症例報告は、脳の動脈空気塞栓を起こした10歳の子供について紹介しています。肺の過膨脹により肺胞が破裂し、肺静脈から左心系に空気塞栓が起こる機序がもっとも多く、脳塞栓と心筋梗塞が空気塞栓の中ではもっとも致死的になります。とくにスキューバダイビングの場合、浮上するときに立位になるため、脳塞栓のリスクが倍増します。過去に、アイドルの12歳の女の子がヘリウムガスを胸いっぱいに吸い込んで、空気塞栓をおこした事例があり、テレビ番組のロケ中ということもあって話題になりました。これも上述した、肺気圧外傷という機序によって起こります。脳動脈空気塞栓症は、減圧症(decompression sickness)と似た症状を起こすことがあり、鑑別が重要になります(表)。これら2つをまとめて減圧病(decompression illness)と呼びます。表 減圧症と脳動脈空気塞栓症の違い画像を拡大する成人と比べて気圧外傷に弱い小児において、とくに致死的となりうる空気塞栓は回避したいところです。各種団体が書いているように、10歳を超えてから注意深く始めるのがよさそうですね。また、ダイビング中、少量の静脈ガスであっても卵円孔開存があれば右左シャントによって動脈にガスが入るので、脳動脈空気塞栓症のリスクは高くなります。喘息やブラ・ブレブなどの肺嚢胞もリスクになるので、小児喘息例では要注意です。

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アーリーダ:“Early-leader”―前立腺がん早期治療のリーダーを目指す薬剤

2019年3月、アンドロゲンシグナル伝達阻害薬(ARAT)アーリーダ(一般名:アパルタミド)は、「遠隔転移を有しない去勢抵抗性前立腺癌」を効能・効果とする製造販売承認を取得した。M0 CRPC治療の重要性ホルモン療法を実施しても進行する去勢抵抗性の前立腺がんのうち、遠隔転移がないものは、非転移性去勢抵抗性がん(M0 CRPC)と分類される。これまで「M0 CRPC患者の予後は総じて良好であり、あまり積極的な治療は必要ではない」との見方がなされることもあった。しかしM0 CRPC患者の中でも、前立腺がんの腫瘍マーカーである前立腺特異抗原(PSA)の倍加時間(PSADT)が短かったり、ベースラインのPSAが高値であったりすると、比較的早期にがんの転移を来し死亡に至る場合がある。そのため、M0 CRPCでも積極的な治療が必要となる場合があるが、M0 CRPCに特化した適応を有する治療薬は承認されていなかった。MFS延長が確認されたアンドロゲンシグナル伝達阻害薬M0 CRPCに適応を有するARATとして、アーリーダは、2018年に米国で承認・発売され、日本では2019年3月に承認された。M0 CRPC患者(PSADT10ヵ月以下)を対象とした、海外第III相臨床試験SPARTAN studyでは、主要評価項目としてアーリーダ投与による無転移生存期間(MFS)を検討している。その中央値は40.51ヵ月であり、プラセボと比較して約2年延長した。これによりアーリーダは製造販売承認を取得した。患者に、より安心を与える薬剤にさらにSPARTAN studyでは2次無増悪生存期間(PFS2)についても検討されている。プラセボ群のPFS2の中央値は39.3ヵ月であるのに対し、アーリーダ群は未到達と大きく差を広げている。PFS2が延長され、2次治療の効果を長く保ち増悪までの期間を延ばすことは、1剤目からアーリーダを投与するリーズナブルな理由となる。一つひとつの薬剤を長く使って症状を進行させないことが、前立腺がんの治療においては重要だからである。そしてPFS2の延長により、医師が患者に対して「この治療薬が効かなくても次の一手として他の薬剤もある」という安心感を伝えられることもアーリーダのベネフィットであろう。また、他のARATと比較して、アーリーダの安全性プロファイルは異なっており、皮疹は多いが、悪心、疲労などの副作用が少ないという特徴もある。前立腺がん治療の課題とアーリーダへの期待前立腺がん治療には、課題が残っている。とくに、M0 CRPCでは、積極的に治療を行わないケースが存在した。そのため適切なタイミングで画像を用いた転移の確認が行われていない場合もあり、裏を返せば骨転移がある症例に放射線治療やデノスマブなどを用いた薬物治療がなされていなかった場合も存在する。アーリーダがM0 CRPCを適応として承認されたことにより、M0 CRPCにスポットライトが当たった。このことでM0 CRPCがより適切に治療されることを期待したい。なおアーリーダは転移性去勢感受性前立腺がん(mCSPC)患者における有用性も報告され、すでに本邦においても効能・効果の追加承認申請が当局に提出されている。前立腺がんの早期ステージでの主要な位置づけ、“Early-leader”への可能性が、まさにその製品名からも感じられる。

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HFrEFへのsacubitril-バルサルタンは動脈スティフネスを改善?/JAMA

 左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者において、sacubitril/バルサルタンはエナラプリルと比較し中心動脈スティフネスを有意に改善しないことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAkshay S. Desai氏らが、sacubitril/バルサルタンによるHFrEFの治療が中心動脈スティフネスおよび心臓リモデリングを改善するかについて検証した無作為化二重盲検臨床試験「EVALUATE-HF試験」の結果を報告した。sacubitril/バルサルタンは、エナラプリルと比較しHFrEF患者の心血管死および心不全による入院を減少させることが示されており、血行動態や心臓リモデリングの改善と関連する可能性があった。著者は「今回の結果は、HFrEFに対するsacubitril/バルサルタンの作用メカニズムを理解するうえで手掛かりとなるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2019年9月2日号掲載の報告。HFrEF患者約460例でsacubitril/バルサルタンvs.エナラプリル 研究グループは、2016年8月17日~2018年6月28日に米国の85施設にて、LVEF 40%以下の心不全患者464例を、sacubitril/バルサルタン群(目標用量:97/103mg、1日2回、231例)とエナラプリル群(同10mg、1日2回、233例)に無作為に割り付け、12週間投与した(2019年1月26日追跡調査終了)。 主要評価項目は、中心動脈スティフネスの尺度である大動脈の特性インピーダンス(Zc)の、ベースラインから12週までの変化とした。また、NT-proBNP、LVEF、左室全体の長軸方向ストレイン(global longitudinal strain:GLS)、僧帽弁輪弛緩速度、僧帽弁E/e'比、左室収縮末期容積係数(LVESVI)、左室拡張末期容積係数(LVEDVI)、左房容積係数および心室血管整合比の、ベースラインから12週までの変化も副次評価項目として事前に規定された。特性インピーダンスの変化に両群間で有意差なし 464例(平均[±SD]年齢67.3±9.1歳、女性23.5%)のうち、427例が試験を完遂した。 Zcは、12週時においてsacubitril/バルサルタン群では低下し、エナラプリル群では増加したが、ベースラインからの変化は両群間で有意差は確認されなかった(群間差:-2.2dyne×s/cm5、95%信頼区間[CI]:-17.6~13.2、p=0.78)。 副次評価項目9項目のうち、LVEFを含む4項目(GLS、僧帽弁輪弛緩速度、心室血管整合比)でベースラインからの変化に有意な群間差はなかった。残りの、左房容積係数、LVEDVI、LVESVI、僧帽弁E/e'などの項目は、エナラプリル群よりsacubitril/バルサルタン群でベースラインからの減少が大きいことが示された。 有害事象については、低血圧症(sacubitril/バルサルタン群3.9%、エナラプリル群1.7%)も含め両群で類似していた。

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日常的な問診こそ、最大のハードル【臨床留学通信 from NY】第2回

第2回:日常的な問診こそ、最大のハードル今回から、USMLE全体の対策等について述べていきたいと思います。概略は下記の通りです。USMLE Step1: 基礎医学anatomy,behavioral science,biochemistry,microbiology,pathology, pharmacology, physiologyなどUSMLE Step2 CK: 臨床医学internal medicine, surgery, pediatrics, psychiatry, obstetrics/gynecology, preventive medicineUSMLE Step2 CS: Clinical skills医学的なアセスメント、患者への気遣い、英語力USMLE Step3: Case SimulationStep3は渡米してからの受験でもよいのですが、内容はStep2 CKに毛が生えたようなものです(ただし、Visaの関係でStep3が渡米前に必要になることもあります)。わたしにとって大きなハードルだったのは、Step2 CSでした。とにかく英語で問診し、英語で模擬患者の訴えを聞き、英語で説明し、英語でカルテを書くという、徹底的に英語力が問われる試験です。わたしの場合、医師3年目にUSMLE受験を志し、同年にStep1を受験したものの、4年目は忙しく循環器研修に没頭し、5年目にようやくStep2 CKとCSを受験しました。とにもかくにも、日本を出て外人と英語で話したことなど、これまでまったくと言っていいほどなかったわけですから、医学英語が頭には浮かんでも口からスラスラ出て来ず、CSには本当に苦労しました。しかも、ベースはあくまで問診なので、本当に試されるのは医学英語というより、むしろ日常英会話力です。USMLEを受けるといったん心に決めたら、USMLEの勉強はもちろんですが、英語 (特に話す力)を並行して勉強することを強くお勧めします。実際、1年程度で英会話を身に付けるのは、かなりの労力を要しました。USMLEは高得点での一発合格が必須!ここで最も大事なことは、USMLEを受験するからには、勝負は一度きりと肝に銘じ、一回で合格すること、それも高得点で、ということです。それが後々のレジデンシーのマッチングに影響するのみならず、仮にも不合格となると、レッテルは永続的に記録として残ってしまいます。そこで必要なのが、受験に向けた戦略の立て方です。例えば、受験の順序がStep1→2CK→2CSである必要はありません(ただし、Step3については必ず最後でなければいけません)。わたしの場合は順番通りでよかったのですが、Step2CKについては、臨床をある程度積んだ研修医2年目後半以降などがいいのかもしれません。Step 1と2CSは勤めている病院によりけりですが、対策に時間がかかるので、半年以上の時間が確保できるタイミングで受けるのが望ましいでしょう。また、試験対策にはいずれも1,000ドル前後の受験費用、およびそれぞれ参考書や問題集の購入、またCS対策として現地でKaplanの講習を受けるとなると相当な出費を余儀なくされます。更にCSは現地で受けなければいけません。そして、晴れて試験をパスして留学してからも何かとお金がかかりますので、貯蓄は必須です。臨床と並行した試験勉強は、ゴールを決めてから着手USMLEの各ステップとも参考書となるのはKeyとなるFirst Aidを、問題集についてはUSMLE worldというネット問題集をお勧めします(https://www.uworld.com)。ネット問題集は期間でいくらと決まっているため、集中的に利用するのがよいでしょう。わたしは学生のころ、何となくFirst Aidを買ってはみたものの、結局にらめっこしておしまいでした。また、参考書だけでは頭にも残りません。問題集を買ったり、実際に試験を申し込んだりするような形 (日付を決める)で、背水の陣で臨むべきです。日々の臨床をやりながら試験勉強を並行するのはモチベーションも上がりにくく、相当な労力と時間を要しますので、かなりの覚悟がないと合格までたどり着けません。ちなみに、USMLEを受験するにはECFMGのウェブサイトに飛び、アカウントを作成し、Application form(form 183)を提出して、初めて申し込むことができます。詳細はウェブサイトとなりますが、提出には学部長のサインが必要となるため、久々に学事課なるところへ足を運びました。次回は、各々の試験の対策事項について述べます。

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高齢者下肢手術、VTE予防の最適な目標INR値は/JAMA

 ワルファリン治療を受けている65歳以上高齢者の股関節・膝関節置換術後に、国際標準化比(INR)目標値を1.8としても、同目標値2.5に対して、静脈血栓症(VTE)または死亡の複合アウトカムのリスクについて、非劣性の基準を満たさなかったことが報告された。米国・ワシントン大学セントルイス校のBrian F. Gage氏らが、1,650例の患者を対象に行った無作為化比較試験「Genetic Informatics Trial(GIFT)of Warfarin to Prevent Deep Vein Thrombosis」の結果で、JAMA誌2019年9月3日号で発表した。ワルファリン治療中の関節手術を受ける患者について、VTE予防のための最適なINR値は明らかになっていなかった。米国6ヵ所の医療機関で1,650例を対象に2×2要因デザイン試験 研究グループは、2011年4月~2016年10月にかけて、米国6ヵ所の医療機関を通じて、待機的人工股関節・膝関節置換術を行う65歳以上の患者1,650例を対象に2×2要因デザイン試験を行った。 被験者を、目標INR値1.8の群(823例)と2.5の群(827例)に、またワルファリン投与量について遺伝型または臨床的ガイド群にそれぞれ無作為に割り付けた。なお治療開始当初の11日間は、ワルファリン投与は非盲検下でウェブアプリケーションによるガイド下で行われた。 主要アウトカムは、60日以内のVTE発生または30日以内の死亡の複合だった。術後に二重超音波検査法でVTEスクリーニングを実施。目標INR値1.8は同2.5に対し、非劣性であるとする仮説を立て、非劣性マージンはVTE絶対リスク差3ポイントと規定した。副次エンドポイントは、出血、INR値4以上とした。VTE発生はINR値1.8群5.1%、INR値2.5群3.8% 被験者1,650例の平均年齢は72.1歳、女性は63.6%、白人が91.0%を占めた。主要解析は、ワルファリンを1回以上投与された1,597例(96.8%)を対象に行われた。 主要複合アウトカムの発生率は、INR値1.8群は5.1%(804例中41例)に対し、INR値2.5群は3.8%(793例中30例)で、群間の絶対差は1.3%だった(片側95%信頼区間[CI]:-∞~3.05、非劣性のp=0.06)。被験者の死亡はなく、すべての主要アウトカムはVTE発生で、事前に規定した非劣性の定義は満たされなかった。 大出血の発生は、1.8群0.4%、2.5群0.9%で群間差は-0.5%(95%CI:-1.6~0.4)だった。INR値4以上の発現頻度は、それぞれ4.5%、12.2%で群間差は-7.8%(-10.5~-5.1)だった。 なお同研究グループは、同試験は検出力不足であった可能性があるとし、さらなる研究を行う必要があると指摘している。

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エヌトレクチニブ発売、脳転移へのベネフィットに注目

 臓器横断的ながん治療薬として本邦で2剤目となる低分子チロシンキナーゼ阻害薬エヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)が販売開始したことを受け、9月5日、都内でメディアセミナー(主催:中外製薬)が開催された。吉野 孝之氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科長)が登壇し、同剤の臨床試験結果からみえてきた特徴と、遺伝子別がん治療の今後の見通しについて講演した。 エヌトレクチニブは、2018年3月に先駆け審査指定を受け、2019年6月に「NTRK融合遺伝子陽性の進行・再発の固形がん」を適応症とした承認を世界で初めて取得した。すでに承認・販売されているMSI-H固形がんへのペムブロリズマブの適応が、標準的治療が困難な場合に限られるのに対し、NTRK融合遺伝子陽性固形がんであれば治療歴および成人・小児を問わないことが特徴。遺伝子検査にはコンパニオン診断薬として承認されたFoundationOne CDxがんゲノムプロファイルを用いる。がん種ごとの陽性率は? NTRK融合遺伝子陽性率をがん種ごとにみると、成人では唾液腺分泌がん(80~100%)1,2)、乳腺分泌がん(80~100%)3-6)などの希少がんで多く、非小細胞肺がん(0.2~3.3%)7,8)や結腸・直腸がん(0.5~1.5%)7,9-10)、浸潤性乳がん(0.1%)7)などでは少ない。しかし患者の絶対数を考えると、1%であっても相当数の患者がいるという視点も持つ必要があると吉野氏は指摘した。 一方、小児では、乳児型線維肉腫(87.2~100%)11-14)、3歳未満の非脳幹高悪性度神経膠腫(40%)15)など陽性率の高いがん種が多く、同氏は「小児がんへのインパクトはとくに大きい」と話した。治療開始後“早く・長く効く”こと、脳転移への高い有効性が特徴 今回の承認は、成人に対する第II相STARTRK-2試験および小児に対する第Ib相STARTRK-NG試験の結果に基づく。STARTRK-2試験は、NTRK1/2/3、ROS1またはALK遺伝子陽性の局所進行/転移性固形がん患者を対象としたバスケット試験。このうち、とくにNTRK陽性患者で著明な効果が確認され、今回の迅速承認につながった経緯がある。 NTRK有効性評価可能集団は51例。肉腫が13例と最も多く、非小細胞肺がん9例、唾液腺分泌がんおよび乳がんが6例ずつ、甲状腺がんが5例、大腸がん・膵がん・神経内分泌腫瘍が3例ずつと続く。また、何らかの治療歴がある患者が約6割を占めていた。主要評価項目である奏効率(ORR)は56.9%、4例で完全奏功(CR)が確認された。本試験結果だけでは母数が少ないが、がん種ごとに有効性の大きな差はないと評価されている。吉野氏は、とくに奏効例のスイマープロットに着目。初回検査の時点で奏効が確認された症例、治療継続中の症例が多く、「奏功例では早く長く効くことが特徴」と話した。また、ベースライン時の患者背景として、脳転移症例が11例含まれることにも言及。評価対象となった10例での成績は、頭蓋内腫瘍奏効率50%、2例でCRが確認されている。 Grade3以上の有害事象は多くが5%以下と頻度が低く、貧血が10.7%、体重増加が9.7%でみられた。同氏は、「総じて、副作用は非常に軽いといえる」と述べた。3学会合同、臓器横断的ゲノム診療のガイドラインを発行予定 小児・青年期対象のSTARTRK-NG試験においても、エヌトレクチニブの高い有効性が確認されている(ORR:100%)。5例はCNS原発の高悪性度の腫瘍で、うち2例でCRが確認された。周辺組織への浸潤が早い小児がんにおいて、非常に大きなインパクトのある治療法と吉野氏は話し、「どのタイミングで、どんな患者に検査を行い、薬を届けていくかを標準化していく必要がある」とした。 今回の承認を受け、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本小児血液・がん学会は合同で、『成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン(案)』をホームページ上で公開、パブコメの募集を行った。同ガイドラインは、今回のエヌトレクチニブ承認を受け、2019年3月公開の『ミスマッチ修復機能欠損固形がんに対する診断および免疫チェックポイント阻害薬を用いた診療に関する暫定的臨床提言』を改訂・進化させた内容となっている。「NTRK融合遺伝子の検査はいつ行うべきか?」など、NTRK融合遺伝子の検査・治療についてもCQが設けられ、実践的な診断基準として知見が整理される。 最後に、同氏はこれまで消化器がん・肺がん領域を対象として行ってきたSCRUM-Japanのがんゲノムスクリーニングプロジェクトが、2019年7月からすべての進行固形がん患者を対象に再スタートしたことを紹介(MONSTAR-SCREEN)16)。リキッドバイオプシーおよび便のプロファイリング(マイクロバイオーム)を活用しながら、臓器によらないTumor-agnosticなバスケット型臨床試験を実施していくという(標的はFGFR、HER2、ROS1)。承認申請に使用できる前向きレジストリ研究を推進させ、全臓器での治療薬承認を早めていきたいと語り、講演を締めくくった。■参考1)Skalova A, et al.Am J Surg Pathol. 2016;40:3-13.2)Bishop JA, et al.Hum Pathol. 2013;44:1982-8.3)Del Castillo M, et al. Am J Surg Pathol. 2015;39:1458-67.4)Makretsov N, et al. Genes Chromosomes Cancer. 2004;40:152-7.5)Tognon C, et al. Cancer Cell. 2002;2:367-76.6)Lae M, et al. Mod Pathol. 2009;22:291-8.7)Stransky N, et al. Nat Commun. 2014;5:4846.8)Vaishnavi A, et al. Nat Med. 2013;19:1469-1472.9)Ardini E, et al. Mol Oncol. 2014;8:1495-507.10)Creancier L, et al. Cancer Lett. 2015;365:107-11.11)Knezevich SR, et al. Nat Genet. 1998;18:184-7.12)Rubin BP, et al. Am J Pathol. 1998;153:1451-8.13)Bourgeois JM, et al. Am J Surg Pathol. 2000;24:937-46.14)Chiang S, et al. Am J Surg Pathol. 2018;42:791-798.15)Wu G, et al. Nat Genet. 2014;46:444-450.16)国立がん研究センターSCRUM-Japan/MONSTAR-SCREEN

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レビー小体病とアルツハイマー病の生存率の違い

 アルツハイマー病(AD)とレビー小体病(LBD)は、2種類の代表的な認知症である。LBD患者の臨床経過がAD患者よりも不良であるかどうかについては、よくわかっていない。中国・香港大学のYat-Fung Shea氏らは、中国人LBD患者とAD患者の生存率や合併症発症について、レトロスペクティブレビューを行った。Singapore Medical Journal誌オンライン版2019年9月6日号の報告。 2008~16年にクイーン・メアリー病院のメモリークリニックに来院したADおよびLBD患者を対象に、すべてのバイオマーカーをレトロスペクティブにレビューした。ADおよびLBD診断は、臨床診断基準およびバイオマーカーによりサポートした。LBDには、レビー小体型認知症(DLB)およびパーキンソン病認知症(PDD)を含めた。ベースライン時の人口統計、臨床的特徴、認知機能障害の重症度、特定の臨床結果を収集した。 主な結果は以下のとおり。・対象は、AD患者31例、LBD患者25例(DLB:18例、PDD:7例)であった。・疾患発症時より測定した場合、LBD患者は、AD患者と比較し、全生存期間が短い(p=0.02)、転倒の早期発生(p<0.001)、嚥下困難(p<0.001)、肺炎(p=0.01)、褥瘡(p=0.003)、施設入所(p=0.03)といった特徴が認められた。・Cox回帰分析では、LBDは転倒(ハザード比[HR]:5.86、95%信頼区間[CI]:2.29~15.01、p<0.001)、嚥下困難(HR:10.06、95%CI:2.5~40.44、p=0.001)、褥瘡(HR:17.39、95%CI:1.51~200.1、p=0.02)、施設入所(HR:2.72、95%CI:1.12~6.60、p=0.03)、死亡(HR:2.96、95%CI:1.18~7.42、p=0.02)の予測因子であることが示唆された。 著者らは「LBD患者は、AD患者と比較し、生存期間が短く、事前に指定したいくつかの長期イベントが早期に発生していた。また、LBDは、これら長期イベントの独立した予測因子であることが示唆された」としている。

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アテゾリズマブがTNBCに適応拡大、免疫CP阻害薬で初/中外製薬

 中外製薬株式会社(本社:東京、代表取締役社長CEO:小坂 達朗)は2019年9月20日、PD-L1陽性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)に対する免疫チェックポイント阻害薬として国内で初めて、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブ(商品名:テセントリク)が適応拡大されたことを発表した。PD-L1発現状況の確認は、2019年8月20日にコンパニオン診断薬として適応拡大の承認を取得した、病理検査用キットベンタナOptiView PD-L1(SP142)によって行う。 今回の適応拡大は、第III相IMpassion130試験の成績に基づく。IMpassion130試験は、全身薬物療法を受けていない切除不能な局所進行または転移のあるTNBC患者を対象に、アテゾリズマブ併用群(アテゾリズマブ+nab-パクリタキセル)とnab-パクリタキセル単独群(プラセボ+nab-パクリタキセル)を比較した多施設共同無作為化プラセボ対照の二重盲検国際共同臨床試験。 併用群では、ITT(Intent to treat)解析集団およびPD-L1陽性集団において、単独群と比較して主要評価項目であるPFS(無増悪生存期間)の延長を示した(ITT集団のPFS中央値:7.2ヵ月 vs.5.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.80、95%信頼区間[CI]:0.69~0.92、p=0.0025/PD-L1陽性集団のPFS中央値:7.5ヵ月 vs.5.0ヵ月、HR:0.62、95%CI:0.49~0.78、p<0.0001)。もう1つの主要評価項目であるOS(全生存期間)については、第2回中間解析時点では、ITT解析集団におけるOS延長について、統計学的な有意差は認められなかった(OS中央値:21.0ヵ月 vs.18.7ヵ月、HR:0.86、95%CI:0.72~1.02、p=0.078)。一方、PD-L1陽性患者において、臨床的に意義のあるOSの延長が認められたものの、階層構造に基づいて統計解析を行う試験デザインであることから、今回の PD-L1陽性患者におけるOSの解析は検証的な位置づけではない(OS中央値:25.0ヵ月 vs.18.0ヵ月、HR:0.71、95%CI:0.54~0.93)。フォローアップは次回の計画されている解析まで継続される。 併用療法による安全性プロファイルは、これまで各薬剤で認められている安全性プロファイルと一致しており、本併用療法で新たな安全性のシグナルは確認されなかった。なお、同試験におけるアテゾリズマブの用法・用量が840mgの2週間間隔での投与であるため、至適用量製剤として開発が行われ、9月20日付けで840mg製剤の剤形追加についても承認された。 また、中外製薬株式会社は同日、HER2陽性乳がん患者に対するペルツズマブ(商品名:パージェタ)とトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)の配合皮下注製剤が、両剤の静注製剤に対して非劣性を示したことを発表。配合皮下注製剤の投与には、初回は約8分、2回目以降は約5分を要する。これに対して、両剤の静注製剤を併用投与する場合、初回は約150分、2回目以降は60~150分を要する。本結果は第III相FeDeriCa試験によるもので、詳細は今後開催される医学会で発表される予定。

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PCI後の糖尿病合併安定CAD、チカグレロル追加が有望/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けた糖尿病を伴う安定冠動脈疾患の治療では、チカグレロル+アスピリンはプラセボ+アスピリンに比べ、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合の発生を有意に抑制する一方で、大出血を増加させるものの、良好なネット臨床ベネフィット(net clinical benefit)をもたらすことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のDeepak L. Bhatt氏らが行ったTHEMIS-PCI試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年9月1日号に掲載された。PCIを受けた糖尿病合併安定冠動脈疾患患者は虚血性イベントのリスクが高く、とくにステント留置術を受けた患者のリスクは高いという。THEMIS-PCI試験は、THEMIS試験に参加した患者のうちPCIを受けた患者を対象とするサブスタディである。日本を含む42ヵ国のプラセボ対照無作為化試験 THEMIS試験は、日本を含む42ヵ国1,315施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第III相試験であり、2014年2月~2016年5月の期間に患者登録が行われた(AstraZenecaの助成による)。 対象は、年齢50歳以上、2型糖尿病が認められ、血糖降下薬の投与を6ヵ月以上受けており、安定冠動脈疾患を有し、3つの非除外基準(PCI既往歴、冠動脈バイパス術[CABG]の既往歴、冠動脈造影で1つ以上の冠動脈に50%以上の狭窄を認める)のうち1つに該当する患者であった。このうち、今回の解析には、PCI既往歴のあるサブグループが含まれた。 被験者は、チカグレロル(90mg、1日2回)またはプラセボを経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。すべての患者に、アスピリン(75~150mg/日)が経口投与された。 有効性の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞、脳卒中の複合とし、intention-to-treat解析が行われた。有効性の主要アウトカム:7.3% vs.8.6%、TIMI大出血:2.0% vs.1.1% THEMIS試験の参加者のうちPCI既往歴のある1万1,154例(58%)が解析に含まれた。チカグレロル群は5,558例、プラセボ群は5,596例であった。糖尿病の罹患期間中央値は10.0年、直近のPCI以降の経過期間中央値は3.3年であった。フォローアップ期間中央値は3.3年(IQR:2.8~3.8)だった。 有効性の主要アウトカムの発生は、チカグレロル群がプラセボ群に比べ有意に良好であった(チカグレロル群5,558例中404例[7.3%]vs.プラセボ群5,596例中480例[8.6%]、ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.74~0.97、p=0.013)。PCIを受けていない患者では、このような効果は観察されなかった(p=0.76、p interaction=0.16)。 心血管死(3.1% vs.3.3%、HR:0.96、95%CI:0.78~1.18、p=0.68)および全死因死亡(5.1% vs.5.8%、0.88、0.75~1.03、p=0.11)はいずれも、両群間に有意な差は認めなかった。一方、心筋梗塞(3.1% vs.3.9%、0.80、0.65~0.97、p=0.027)および脳卒中(1.7% vs.2.3%、0.74、0.57~0.96、p=0.024)はいずれも、チカグレロル群が有意に少なかった。 チカグレロル群は、TIMI出血基準の大出血の発生率(5,536例中111例[2.0%]vs.5,564例中62例[1.1%]、HR:2.03、95%CI:1.48~2.76、p<0.0001)が有意に高かった。一方、致死的出血(0.1% vs.0.1%、1.13、0.36~3.50、p=0.83)および頭蓋内出血(0.6% vs.0.6%、1.21、0.74~1.97、p=0.45)は、両群間に有意な差はみられなかった。 また、チカグレロル群は、事前に規定された探索的エンドポイントである総合的臨床ベネフィット(intention-to-treat集団における全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、致死的出血、頭蓋内出血の複合の初回イベント発生までの期間として評価される不可逆的な危害と定義)が有意に優れた(5,558例中519例[9.3%]vs.5,596例中617[11.0%]、HR:0.85、95%CI:0.75~0.95、p=0.0052)のに対し、非PCI患者ではこのような効果はなかった(p=0.39、p interaction=0.012)。 著者は、「これらの知見は、PCI既往歴を有し、抗血小板療法に忍容性のある糖尿病患者で、虚血性リスクが高く、出血リスクが低い場合には、チカグレロル+アスピリンによる長期治療を考慮すべきであること示唆する」と指摘している。

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AI技術で非黒色腫皮膚がんリスクモデルの精度が向上

 皮膚科におけるディープラーニング技術の活用報告が相次いでいる。今回発表されたのは、非黒色腫皮膚がんの予測モデル開発に関する研究報告で、台湾・台北医学大学のHsiao-Han Wang氏らがディープラーニング技術を活用し、高リスク集団を捉えることが可能な精度の高い予測モデルを開発した。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年9月4日号掲載の報告。 研究グループは、アジア人集団において、UV曝露または特異的病変に関する情報なしで、大規模で多次元的な非画像医学情報をベースとした非黒色腫皮膚がんのリスク予測モデルを、ディープラーニングを活用して開発する研究を行った。 1999年1月1日~2013年12月31日の台湾全民健康保険研究データベースから、200万例のサンプル患者を無作為抽出してデータベースを構築。初発のがんとして非黒色腫皮膚がんと診断された患者群と、非がん無作為対照群を抽出して解析した。リスク予測モデルにはディープラーニングアプローチである畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network:CNN)が使われ、3年間の臨床診断情報、医療記録、経時的な情報を使用して、翌年までの特定の患者の皮膚がんリスクを予測した。モデルの重要・確定因子を調査するため、段階的な特徴選択も行われた。統計的解析は2016年11月1日~2018年10月31日に実施。モデルの性能を感度、特異度、AUROC曲線を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・患者群1,829例(女性923例[50.5%]、平均年齢65.3歳[SD 15.7])と、対照群7,665例(女性3,951例[51.5%]、平均年齢47.5歳[SD 17.3])が含まれた。・時間統合型の特徴マトリクス(time-incorporated feature matrix)として連続的な診断情報と処方情報を用いた、非黒色腫皮膚がんの1年発生リスクの予測モデルは、AUROC 0.89(95%信頼区間[CI]:0.87~0.91)、平均感度83.1%(SD 3.5%)、平均特異度82.3%(SD 4.1%)を達成した。・予測のための識別特性因子は、皮膚上皮内がん(AUROC:0.867、-2.80%)およびほかの慢性併存疾患(骨の変性[AUROC:0.872、-2.32%]、高血圧[0.879、-1.53%]、慢性腎不全[0.879、-1.52%]など)であった。・トラゾドン、アカルボース、全身性抗真菌薬、スタチン、非ステロイド性抗炎症薬、サイアザイド系利尿薬などの薬剤は、このモデルにおける最上位の識別特性であった。・上記の薬剤はいずれも、個別に除外した場合にAUROCが1%超減少した(トラゾドン[AUROC:0.868、-2.67%]、アカルボース[0.870、-2.50%]、全身性抗真菌薬[0.875、-1.99%]など)。

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(膿疱性)乾癬〔(pustular) psoriasis〕

1 疾患概要■ 概念・定義表皮角化細胞の増殖あるいは角質の剥離障害によって、角質肥厚を主な病態とする疾患群を角化症という。なかでも炎症所見の顕著な角化症、つまり潮紅(赤くなること)と角化の両者を併せ持つ角化症を炎症性角化症と称するが、乾癬はその代表的疾患である1)。乾癬は、遺伝的要因と環境要因を背景として免疫系が活性化され、その活性化された免疫系によって刺激された表皮角化細胞が、創傷治癒過程に起こるのと同様な過増殖(regenerative hyperplasia)を示すことによって引き起こされる慢性炎症性疾患である2)。■ 分類1)尋常性(局面型)乾癬最も一般的な病型で、単に「乾癬」といえば通常この尋常性(局面型)乾癬を意味する(本稿でも同様)。わが国では尋常性乾癬と呼称するのが一般的であるが、欧米では局面型乾癬と呼称されることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の75.9%を占める3)。2)関節症性乾癬尋常性(局面型)乾癬患者に乾癬特有の関節炎(乾癬性関節炎)が合併した場合、わが国では関節症性乾癬と呼称する。しかし、この病名はわかりにくいとの指摘があり、今後は皮疹としての病名と関節炎としての病名を別個に使い分けていく方向になると考えられるが、保険病名としては現在でも「関節症性乾癬」が使用されている。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の14.6%を占める3)。3)滴状乾癬溶連菌性上気道炎などをきっかけとして、急性の経過で全身に1cm程度までの角化性紅斑が播種状に生じる。このため、急性滴状乾癬と呼ぶこともある。小児や若年者に多く、数ヵ月程度で軽快する一過性の経過であることが多い。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の3.7%を占める3)。4)乾癬性紅皮症全身の皮膚(体表面積の90%以上)にわたり潮紅と鱗屑がみられる状態を紅皮症と呼称するが、乾癬の皮疹が全身に拡大し紅皮症を呈した状態である。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の1.7%を占める3)。5)膿疱性乾癬わが国では単に「膿疱性乾癬」といえば汎発性膿疱性乾癬(膿疱性乾癬[汎発型])を意味する(本稿でも同様)。希少疾患であり、厚生労働省が定める指定難病に含まれる。急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する重症型である。尋常性(局面型)乾癬患者が発症することもあれば、本病型のみの発症のこともある。妊娠時に発症する尋常性(局面型)乾癬を伴わない本症を、とくに疱疹状膿痂疹と呼ぶ。2016年の日本乾癬学会による調査では全体の2.2%を占める3)。■ 疫学世界的にみると乾癬の罹患率は人口の約3%で、世界全体で約1億2,500万人の患者がいると推計されている4)。人種別ではアジア・アフリカ系統よりも、ヨーロッパ系統に多い疾患であることが知られている4)。わが国での罹患率は、必ずしも明確ではないが、0.1%程度とされている5)。その一方で、健康保険のデータベースを用いた研究では0.34%と推計されている。よって、日本人ではヨーロッパ系統の10分の1程度の頻度であり、それゆえ、国内での一般的な疾患認知度が低くなっている。世界的にみると男女差はほとんどないとされるが、日本乾癬学会の調査ではわが国での男女比は2:16)、健康保険のデータベースを用いた研究では1.44:15)と報告されており、男性に多い傾向がある。わが国における平均発症年齢は38.5歳であり、男女別では男性39.5歳、女性36.4歳と報告されている6)。発症年齢のピークは男性が50歳代で、女性では20歳代と50歳代にピークがみられる6)。家族歴はわが国では5%程度みられる6,7)。乾癬は、心血管疾患、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症、肥満、メタボリックシンドローム、非アルコール性脂肪肝、うつ病の合併が多いことが知られており、乾癬とこれらの併存疾患がお互いに影響を及ぼし合っていると考えられている。膿疱性乾癬に関しては、現在2,000人強の指定難病の登録患者が存在し、毎年約80人が新しく登録されている。尋常性(局面型)乾癬とは異なり男女差はなく、発症年齢のピークは男性では30~39歳と50~69歳の2つ、女性も25~34歳と50~64歳の2つのピークがある8)。■ 病因乾癬は基本的にはT細胞依存性の免疫疾患である。とくに、細胞外寄生菌や真菌に対する防御に重要な役割を果たすとされるTh17系反応の過剰な活性化が起こり、IL-17をはじめとするさまざまなサイトカインにより表皮角化細胞が活性化されて、特徴的な臨床像を形成すると考えられている。臓器特異的自己免疫疾患との考え方が根強くあるが、明確な証明はされておらず、遺伝的要因と環境要因の両者が関与して発症すると考えられている。遺伝的要因としてはHLA-C*06:02(HLA-Cw6)と尋常性(局面型)乾癬発症リスク上昇との関連が有名であるが、日本人では保有者が非常に少ないとされる。また、特定の薬剤(βブロッカー、リチウム、抗マラリア薬など)が、乾癬の誘発あるいは悪化因子となることが知られている。膿疱性乾癬に関しては長らく原因不明の疾患であったが、近年特定の遺伝子変異と本疾患発症の関係が注目されている。とくに尋常性(局面型)乾癬を伴わない膿疱性乾癬の多くはIL-36受容体拮抗因子をコードするIL36RN遺伝子の機能喪失変異によるIL-36の過剰な作用が原因であることがわかってきた9)。また、尋常性(局面型)乾癬を伴う膿疱性乾癬の一部では、ケラチノサイト特異的NF-κB促進因子であるCaspase recruitment domain family、member 14(CARD14)をコードするCARD14遺伝子の機能獲得変異が発症に関わっていることがわかってきた9)。その他、AP1S3、SERPINA3、MPOなどの遺伝子変異と膿疱性乾癬発症とのかかわりが報告されている。■ 症状乾癬では銀白色の厚い鱗屑を付着する境界明瞭な類円形の紅斑局面が四肢(とくに伸側)・体幹・頭部を中心に出現する(図1)。皮疹のない部分に物理的刺激を加えることで新たに皮疹が誘発されることをKoebner現象といい、乾癬でしばしばみられる。肘頭部、膝蓋部などが皮疹の好発部位であるのは、このためと考えられている。また、3分の1程度の頻度で爪病変を生じる。図1 尋常性乾癬の臨床像画像を拡大する乾癬性関節炎を合併すると、末梢関節炎(関節リウマチと異なりDIP関節が好発部位)、指趾炎(1つあるいは複数の指趾全体の腫脹)、体軸関節炎、付着部炎(アキレス腱付着部、足底筋膜部、膝蓋腱部、上腕骨外側上顆部)、腱滑膜炎などが起こる。放置すると不可逆的な関節破壊が生じる可能性がある。膿疱性乾癬では、急激な発熱とともに全身の皮膚が潮紅し、無菌性膿疱が多発する8)(図2)。膿疱が融合して環状・連環状配列をとり、時に膿海を形成する。爪病変、頬粘膜病変や地図状舌などの口腔内病変がみられる。しばしば全身の浮腫、関節痛を伴い、時に結膜炎、虹彩炎、ぶどう膜炎などの眼症状、まれに呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがある10)。図2 膿疱性乾癬の臨床像画像を拡大する■ 予後乾癬自体は、通常生命予後には影響を及ぼさないと考えられている。しかし、海外の研究では重症乾癬患者は寿命が約6年短いとの報告がある11)。これは、乾癬という皮膚疾患そのものではなく、前述の心血管疾患などの併存症が原因と考えられている。乾癬性関節炎を合併すると、前述のとおり不可逆的な関節変形を来すことがあり、患者QOLを大きく損なう。膿疱性乾癬は、前述のとおり呼吸不全、循環不全や腎不全を併発することがあり、生命の危険を伴うことのある病型である。2 診断 (検査・鑑別診断も含む)多くの場合、先に述べた臨床症状から診断可能である。症状が典型的でなかったり、下記の鑑別診断と迷う際は、生検による病理組織学的な検索や血液検査などが必要となる。乾癬の臨床的鑑別診断としては、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、亜鉛欠乏性皮膚炎、ジベルばら色粃糠疹、扁平苔癬、毛孔性紅色粃糠疹、類乾癬、菌状息肉症(皮膚T細胞リンパ腫)、ボーエン病、乳房外パジェット病、亜急性皮膚エリテマトーデス、皮膚サルコイド、白癬、梅毒、尋常性狼瘡、皮膚疣状結核が挙げられる。膿疱性乾癬に関しては、わが国では診断基準が定められており、それに従って診断を行う8)。病理組織学的にKogoj海綿状膿疱を特徴とする好中球性角層下膿疱を証明することが診断基準の1つにあり、診断上は生検が必須検査になる。また、とくに急性期に検査上、白血球増多、CRP上昇、低蛋白血症、低カルシウム血症などがしばしばみられるため、適宜血液検査や画像検査を行う。膿疱性乾癬の鑑別診断としては、掌蹠膿疱症、角層下膿疱症、膿疱型薬疹(acute generalized exanthematous pustulosisを含む)などがある。3 治療 (治験中・研究中のものも含む)1)外用療法副腎皮質ステロイド、活性型ビタミンD3製剤が主に使用される。両者を混合した配合剤も発売されている。2)光線療法(内服、外用、Bath)PUVA療法、311~312nmナローバンドUVB療法、ターゲット型308nmエキシマライトなどが使用される。3)内服療法エトレチナート(ビタミンA類似物質)、シクロスポリン、アプレミラスト(PDE4阻害薬)、メトトレキサート、ウパダシチニブ(JAK1阻害薬)、デュークラバシチニブ(TYK2阻害薬)が乾癬に対し保険適用を有する。ただし、ウパダシチニブは関節症性乾癬のみに承認されている。4)生物学的製剤抗TNF-α抗体(インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブ ペゴル)、抗IL-12/23p40抗体(ウステキヌマブ)、抗IL-17A抗体(セクキヌマブ、イキセキズマブ)、抗IL-17A/F抗体(ビメキズマブ)、抗IL-17受容体A抗体(ブロダルマブ)、抗IL-23p19抗体(グセルクマブ、リサンキズマブ、チルドラキズマブ)、抗IL-36受容体抗体(スペソリマブ)が乾癬領域で保険適用を有する。中でも、スペソリマブは「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている膿疱性乾癬に特化した薬剤である。また、多数の生物学的製剤が承認されているが、小児適応(6歳以上)を有するのはセクキヌマブのみである。5)顆粒球単球吸着除去療法膿疱性乾癬および関節症性乾癬に対して保険適用を有する。4 今後の展望抗IL-17A/F抗体であるビメキズマブは、現時点では尋常性乾癬、乾癬性紅皮症、膿疱性乾癬に承認されているが、関節症性乾癬に対する治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には関節症性乾癬にもビメキズマブが使用できるようになる可能性がある。膿疱性乾癬に特化した薬剤であるスペソリマブ(抗IL-36受容体抗体)は静注製剤であり、現時点では「膿疱性乾癬における急性症状の改善」のみを効能・効果としている。しかし、フレア(急性増悪)の予防を目的とした皮下注製剤の開発が行われており、その治験が進行中(2022年11月現在)である。将来的には急性期および維持期の治療をスペソリマブで一貫して行えるようになる可能性がある。乾癬は慢性炎症性疾患であり、近年は生物学的製剤を中心に非常に効果の高い薬剤が多数出てきたものの、治癒は難しいと考えられてきた。しかし、最近では生物学的製剤使用後にtreatment freeの状態で長期寛解が得られる例もあることが注目されており、単に皮疹を改善するだけでなく、疾患の長期寛解あるいは治癒について議論されるようになっている。将来的にはそれらが可能になることが期待される。5 主たる診療科皮膚科、膠原病・リウマチ内科、整形外科(基本的にはすべての病型を皮膚科で診療するが、関節症状がある場合は膠原病・リウマチ内科や整形外科との連携が必要になることがある)※ 医療機関によって診療科目の区分は異なることがあります。6 参考になるサイト(公的助成情報、患者会情報など)診療、研究に関する情報難病情報センター 膿疱性乾癬(汎発型)(一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)日本皮膚科学会作成「膿疱性乾癬(汎発型)診療ガイドライン2014年度版」(現在、日本皮膚科学会が新しい乾癬性関節炎の診療ガイドラインを作成中であり、近い将来に公表されるものと思われる。一般利用者向けと医療従事者向けのまとまった情報)患者会情報日本乾癬患者連合会(疾患啓発活動、勉強会、交流会をはじめとしてさまざまな活動を行っている。都道府県単位の患者会も多数存在し、本会のwebサイトから検索できる。また、都道府県単位の患者会では、専門医師を招いての勉強会や相談会を実施しているところもある)1)藤田英樹. 日大医誌. 2017;76:31-35.2)Krueger JG, et al. Ann Rheum Dis. 2005;64:ii30-36.3)藤田英樹. 乾癬患者統計.第32回日本乾癬学会学術大会. 2017;東京.4)Gupta R, et al. Curr Dermatol Rep. 2014;3:61-78.5)Kubota K, et al. BMJ Open. 2015;5:e006450.6)Takahashi H, et al. J Dermatol. 2011;38:1125-1129.7)Kawada A, et al. J Dermatol Sci. 2003;31:59-64.8)照井正ほか. 日皮会誌. 2015;125:2211-2257.9)杉浦一充. Pharma Medica. 2015;33:19-22.10)難病情報センターwebサイト.11)Abuabara K, et al. Br J Dermatol. 2010;163:586-592.公開履歴初回2019年9月24日更新2022年12月22日

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